将来構想部会(第9期~)(第17回) 議事録

1.日時

平成30年5月11日(金曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省 旧庁舎6階 第二講堂

3.議題

  1. 我が国の高等教育に関する将来構想について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)日比谷潤子副部会長
(委員)有信睦弘,山田啓二の各委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,石田朋靖, 金子元久,小杉礼子,小林雅之, 鈴木典比古, 鈴木雅子, 伹野茂, 千葉茂,福田益和,古沢由紀子,益戸正樹, 両角亜希子, 吉岡知哉の各臨時委員

文部科学省

(事務局)小松文部科学審議官,常盤生涯学習政策局長,藤野サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官, 村田私学部長,信濃大臣官房審議官(高等教育局担当),塩見生涯学習総括官,三浦大学振興課長,小山国立大学法人支援課長,石橋高等教育政策室長 他

5.議事録

【永田部会長】  おはようございます。第17回目の将来構想部会を始めさせていただきます。前回は,世界の高等教育をめぐる状況について委員の皆様からいろいろな観点から御意見をいただきました。本日は,それを受けて,3名の委員の方から,それぞれが考える2040年の具体的な高等教育像を示していただいて,それを基に議論をしようと考えています。
 なお,その前に,以前に御質問のありました,多様な高等教育機関がお互いにどういう接続になっているか、ということについて事務局で参考資料を用意しました。冒頭にそれを御説明して,次に先ほど申し上げたテーマの議論に移りたいと思います。
 それでは,事務局から資料の確認をまずお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。配付資料の確認をさせていただきます。
 今回は資料が1-1,1-2ということで,先ほど座長からありました参考資料のところでございまして,それから資料2,資料3,資料4が委員の御発表資料になっております。資料5は日程でございます。不足がございましたらお申し付けください。
【永田部会長】  ありがとうございます。それでは,先ほど申し上げましたように,最初に資料1-1と1-2を事務局から説明をお願いします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。資料の1-1と1-2を用いて御説明をさせていただきます。これは以前,委員の方から,高等教育機関の接続がどのような関係になっているのかということを一度おさらいしておいた方がいいのではないかという御意見を賜っておりまして,その説明の資料でございます。
 資料1-1を御覧いただきますと,中学校のところから高校,大学,それから大学院ということで,左側の部分でございまして,それから高校の中にも専攻科というものが真ん中のところにあります。それから短期大学,それから短期大学の専攻科,そして高等専門学校が右の方,そして一番右に専修学校の高等課程から専修学校の専門課程ということで,高等教育機関を図式したところになっております。矢印が3種類ございまして,赤い矢印が飛び入学が可能,それから緑の矢印が編入学が可能,それから青い矢印が大学院への入学が可能というところになっておりますので,このような関係であるということで御確認いただければと思っております。
 2枚目は高等教育機関の役割分担のイメージということで,職業の関係に専門教育の方をしっかりやっている部分と,学術の方を重視している部分ということで,少しグラデーションがありますけれども,このような形で整理ができるのではないかということで図式させていただいたものになっております。
 それから資料1-2に関しましては,今のような整理を図式する際にそれぞれの高等教育機関の役割というものを平成17年の「我が国の高等教育の将来像(答申)」のときに整理をしておりますので,その旨の整理を左側に,それから関連の条文ということで各関係条文を入れさせていただいております。これも御議論の御参考にしていただければと思います。
 以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。これに関して何か御質問はございますでしょうか。おおむね御了解のことかと思います。千葉委員、どうぞ。
【千葉委員】  この図表を見ると,高等学校との接続が大学,短大,専門職大学というところに限られているように,特に資料1-1に関してはそのように見えますが,できましたら,専修学校専門課程のところについては大学,専門職大学,短期大学等と同等にしていただいて,中卒を対象としている高等課程と高等専門学校のところをその欄の右側に書くような工夫をしたらいかがかと思いますので,提案をさせていただきます。
【永田部会長】  より分かりやすくなるように工夫をしてはどうか、というご提案でした。 そのほかいかがでしょうか。このように見てみると、新しく設置される専門職大学などがどこに位置づけられているかということも御覧いただけますし,多様な接続があるということもお分かりいただけるのではないかと思います。
 それでは御質問はないということなので,本日の一番大切な議論に資する委員からのプレゼンテーションをお願いしようと思います。本部会では、2040年を念頭に置いて高等教育の将来像を考えています。その際,理念も大切ですが,同時に、人口減少等の背景を念頭に,一体どのような形になるのかということを、ある意味客観的かつフィロソフィカルにまとめていただいたものと認識しております。
 本日は,石田委員,鈴木(典)委員,但野委員にお願いしております。まず、石田委員から御発表をお願いしたいと思います。
【石田委員】  これは当然のことながら,私の所属している大学のことではありませんし,あるいは一般的な全ての国立大学を意識したというわけでもございませんが,一つの地方大学,バーチャルな地方大学が2040年においてどんな姿になっているかということを考えてみたところでございます。
 地方にあるX大学は,ある意味で地方にある基幹的な総合大学として,地域の知の中核拠点として,新たな価値創造を支える良質な人材の輩出,あるいは地域イノベーションの創出などの機能を十分に発揮することが大きな存在意義あるいはミッションであると想定しています。そしてそれを支える基盤となる研究については,社会課題に対応した学際的な領域も含め,強み・特色ある分野で全国的・世界的な教育研究を推進するというような形の大学を想定しています。やはり活力ある社会を形成していく上で,さらにそれが持続的に発展していく上では,単純にトップリーダーだけを育てるのではなくて,サブリーダーも含めた多様性に富んだ良質な人材が不可欠であり,それは研究面であっても当然で,研究や人材育成の多様性を支えて良質な人材層の形成に大きく寄与しているという形がX大学だろうと思っています。
 さて,そうした存在意義,ミッションのある大学がどういうふうに変わっていくのか。変化を引き起こす一つの要因は,社会状況の変化ということです。人材養成の観点から幾つか考え付くものを挙げてみましたけれども,長寿社会の到来によって,当然18歳レベルでの進学者が大幅に減少する一方で、長寿社会に対応してリカレント教育をさらに拡大していく必要がある。さらに,グローバル化による競争が激化する中で,例えば人材という観点でも優秀な外国人を雇い入れる等々も含め,人材獲得競争というものが激化することが想定され,養成人材の質の維持あるいは向上というものが不可欠になってくるだろう。加えて,第4次産業革命あるいは超スマート社会という中で,労働市場の規模感あるいは要請される人材の変化等々,労働市場での量あるいは質の変化というものも起きてくるだろうということでございます。
 さらにもう一つの要因として,このX大学の入学者の変化を考えてみました。これはあくまでバーチャルな大学ですので,例えば入学定員が1,500名程度,入学者の出身地が東北あるいは関東中心にということ,入学者の平均の偏差値でいえば60レベルの大学ということをバーチャルに想定してみました。この条件下で幾つかシミュレーションしてみましたところ,2040年の予想図というのは,もしも同じ偏差値に保つならば,入学者は25%程度,1,115名に減少するというのが想定されます。当然,偏差値が入学を決める唯一の要素ではありませんけれども,話をシンプルにするために一つの尺度として用いているわけです。
 こうした中で,ではどういう選択肢があるかというと,三つほど私は考えてみました。大きく分けると二つでございます。偏差値レベルで,入学者の質を維持する場合,それと入学者の質の低下を容認,許容する場合という二つです。
 まず,質を維持する場合には二つのことが考えられます。一つは,母集団を増やして入学者を確保するということです。当然のことながら,高・大の接続の強化あるいは入試広報充実や多様な入試等々,様々な形で個々の大学は頑張るでしょうし,あるいは場合によっては東京圏に流出している者を地方に戻すというような形での数を増やすという努力は当然考えられますけれども,トータルで見れば大幅な増はなかなか困難ではないかということです。さらに,昨今の様々な経済支援によって,場合によっては従来の合格偏差値以上の進学困難者の増加も見込める場合もあるかもしれませんが,それもやはり限界があるだろうということ。そうなってくると,残りとして考えられるのは,留学生,社会人,シルバー人材です。留学生を増やしていくということに関しましては,当然のことながら教育の国際標準を一層意識した教育内容あるいは質の向上・保証ということが不可欠でしょう。あるいは日本そのものの国の魅力がどう変化するかということ,さらには卒業後の日本での雇用も含めた様々な国の施策が必要になってきます。さらに,個別大学でやるには限界がある広報や試験の共同実施,またこれはなかなか難しいところではありますけれども,可能性の一つとして、高等教育の輸出という観点で、共同での海外キャンパスということもあるかもしれません。さらにそれに対応できる教職員をどこまで確保できるのかということももう一つの課題になろうかと思います。
 社会人については,社会人リカレント教育,学び直しですけれども,やはりリカレント教育等は短期プログラム,あるいは大学院レベルでの需要が多く,正規入学の形でどれだけの人数が学士課程へ入ってくるだろうかということを考えてみますと,その数としては必ずしも多くないのではないだろうか。また,学ぶことによる付加価値というものをいかに付けていくかということは非常に重要なことでございます。さらに,そうした学び直しを行う上での産業界での対応や待遇,さらには転職していくような風土が今後とも熟成されていくかということも一つの課題かと思っています。
 さらにもう一つは,現役を離れたシルバー世代ということでございますけれども,欧米でよくあるようなUniversity of the Third Ageのような形での学びということも当然出てまいりますけれども,これが正規入学者としてどの程度かということもまだ分からないところです。いずれにしても,先ほど言いました1,500名から1,115名に減る385名をどこまで確保できるかということは非常に大きな課題となってくると思います。
 二つ目は,入学者を減らすということです。バーチャルなX大学では385名,約25%の減です。そうした結果として表れるのは,入学者の減に当然対応した予算の減,そして教職員の減少ということであり、教育や研究の質をどこまで維持できるのかということが非常に大きな課題になってまいります。そうした中で,ニーズの低い分野の定員削減あるいは廃止という選択をせざるを得ない場合も出てくるでしょうし,もう一つは大学院へ定員を振り替えていくということも考えられます。学部定員に変えて,修士を中心に大学院定員を増やすということです。そこにおいては,まだまだ大学院進学者が少ないリケジョへの対応あるいは社会人などの開拓ということが必要となります。その上で,社会人という観点で言えば,先ほども述べたリカレント教育の充実に向けて,社会人にとって学び直すことが魅力的な教育プログラムをしっかりと開発する必要があるでしょうし,働きながらということを考えると,夜間や休日開講ということが必要になってくるかもしれません。
 もう一つの可能性としては,右側にあります3として,偏差値レベルを下げて入学者を確保するかということです。このX大学の場合,雑なシミュレーションですけれども,平均偏差値が60程度であったものが56程度に低下するという結果になります。こうした低下が2040年以降もさらに進む可能性があるということも含め考えると,国立大学の質的転換になってしまい、先ほどもミッションの中で述べた、地域の知の拠点として良質な人材輩出あるいは技術革新の質の向上が維持できるかという問題が出てまいります。当然のことながら,輩出された人材の質保証を行うため,教育改善を実質化していくことは当然であり重要なことですけれども,それがどこまで効果がもつのかということもまだ不明な点です。
 そうした中で,想定したのは1番あるいは2番が中心になるということで,それを進める上でどんな戦略あるいは施策というものが考えられるだろうかということです。具体的な施策等は途中にも述べましたように,例えば教育改革等々は当然重要です。それに加え、やはり地域にある大学としては地域からの信頼性を向上し,出口の需要の開発というものが必要になり、地域との競争協創の強化あるいは地域を中心とした産学連携によるイノベーション創出とその実用化というような観点を強化する必要がございます。もう一つは,アンブレラ型の国立大学法人による,圏域でのレベルでの機能強化ということもあろうかと思います。そうした中で,個々の大学でのブランド力を高めていく。さらに,and/orですけれども,国公私の比較的近接している地域の大学で連携しながらプラットフォームを作り協働して人材育成に当たるということも出てくるかもしれません。もう一つは,やはり研究力アップということが人材育成の質保証で非常に重要なことで,若手教員層の強化あるいは縦割りでない学際的研究の活性化ということも重要になってくる。最後に,教員だけではなくて,学生の地理的なダイバーシティーあるいは世代間のダイバーシティーの拡大ということも,人数の確保の観点だけではなくて,質向上の面でも重要だと考えてございます。
 以上のように三つのケースを想定してみましたけれども,1,2,3それぞれどれを中心とするかというのは,大学の特性や規模感によっていろいろ変わってくるところだと思います。できるなら,2,3はどこの大学でもとりたくはないということになろうかと思います。ただ,現実問題としては,1,2あるいは3,重みはいろいろ違うとは思いますけれども,それのミックス形にならざるを得ないのではないかということを想定してみました。
 雑駁なシミュレーションをベースとしたものですけれども,以上,報告させていただきました。
【永田部会長】  どうもありがとうございました。質疑あるいは議論は、お三方のプレゼンテーションをお聞きしてからとしたいと思います。
 次は鈴木(典)委員、お願いいたします。
【鈴木(典)委員】  私の資料は,「2040年における大学教育国際化―視覚化の試み―」ということで,2040年というと25年後ということで,私は今,公立大学におりますので,25年後の公立大学がどうなるかということも非常に重要な問題ですが,大体25年後に地方自治体自体がどういうふうな生き残りが可能なのかということと非常に関連しておりますので,そのことも考えなければいけないと思います。今から申し上げることは,余り現実的でない面もあります。しかし,25年後にはこういうところにまで行くのではないかということで,イメージ的な面を申し上げたいと思います。ただ,私のおります国際教養大学は,25年後あたりにはこういう方向にまで行きたいというふうな希望も持っておりまして,その意味も含めて25年後の世界というものを描いてみたいということであります。
 1ページ目を御覧いただくと,高等教育財のグローバル生産軌跡ということになっておりまして,教育というのは教育財を生産するという考え方に立っております。この表によりますと,2010年は国内生産,すなわち大学は国内で主に教育を行うということです。それが2020年になりますと,海外留学というものが,今でももちろん盛んですけれども,学生が海外に出ていく,あるいは学生を海外から受け入れるという動きがどんどん盛んになってきている。今では大体600万人くらいの学生が全世界で留学を行っているという数値があると記憶しております。ここで輸入・輸出という言葉が使われていますが,海外に留学させるということは,海外で加工してもらって,海外から完成された学生を戻すということですが,これは輸入に当たります。それから輸出というのは,海外から学生を受け入れて,そして教育を授けて加工して海外に送り戻すという意味で輸出ということになります。これからもう一歩進みますと,大学の機能自体が海外に展開していくということで,海外分校を開設するということになりますが,これは教育財を生産する海外直接投資ということになるわけです。現在,大体250くらいの大学が海外に分校を開設しているというデータがございます。
 それから次に,2030年から40年になりますと,Onlineの世界配信ということで,いわゆるMOOCs(Massive Open Online Courses)によってオンラインで教材,教科,授業が世界へ配信されるようになるのではないかと。そうなりますと,グローバルな教育財の世界標準化ということが起こってくるということで,これに対する対応を考えなければいけないということであります。
 2枚目を見ていただきますと,大学教育国際化の三次元ということで,大学教育の国際化を分析するのにどのくらいの尺度が必要かということですが,私は三つほど考えてみました。大学教育の国際化ということに関しては,文部科学省が平成17年に設置基準を改正しまして,日本の大学の海外展開も可能だと,日本の大学の一部として海外での分校あるいは海外での教育活動を位置付けるということがなされております。特にこの場合に,海外に校地・校舎を所有する,そしてそこで教育を行うということが非常に難しいということもありまして,大体海外での校地・校舎の使用が20年以上保証されるとか,あるいは最近では修業年限相当の期間,この校地・校舎を所有できるということをもって日本の大学の海外展開と認めるという状況になっていますけれども,そういう前提あるいは基盤の下に大学教育の国際化の三次元ということを考えますと,学生自体の国際間留学(輸入・輸出),つまり教育財の国際間移動,それから大学,これは教育財の生産者ということになりますが,その国際間移動,つまり海外分校運営,それから大学を評価する認証機関があるわけですが,これは教育財の質保証ということになりますけれども,質保証機関の国際間協力ということ,あるいは質保証機関自体が海外に展開し始めておりますから,これも国際間移動ということが言えるかもしれませんが,とにかくこの三つの次元で大学教育の国際化ということを考えてみたいということであります。
 まず最初に,学生の国際移動の段階ということで,四つの段階が考えられるのではないかと。一つ目が,教育財を国内で生産するという第一段階,それから第二段階が,先ほど申し上げましたけれども,教育財の輸入,これはすなわち海外へ留学して海外で授業を受けて学位を取り,すなわち加工され本国に戻ってくるという段階。それから第三段階は,教育財の輸出,海外からの留学生を受け入れ,授業を授けて学位を授けて加工して海外に送り出すと。第四段階は,先ほど申し上げましたMOOCsによる世界同時生産ということで,この場合には学生は海外に出る必要はなくて,同時にMOOCsの授業を受けられるわけですから,学生は国内にとどまりMOOCsの世界配信授業を受講するということになるというわけであります。
 それから次に,大学すなわち教育財生産者の国際移動の諸段階ということで,第一段階は教育財生産者すなわち大学の国内生産にとどまるということ。第二段階が教育財生産者の生産従事者,すなわち教員が海外に出ていく,あるいは教員を海外から受け入れるという生産従事者の交換を行うと。私のおります国際教養大学では,年間50%の教員を海外に送って,海外で,短期間ですけれども研究活動,ティーチング,学会発表をするという経験,あるいは海外からも先生を招いてうちの学生に教えてもらうという交換を行っております。第三段階は,教育財生産者の海外進出ということで,海外分校の設置等が増えてきているということであります。第四段階になりますと,再びMOOCsによる授業の世界同時生産ということで,これは教育財生産者,つまり大学自体は海外に出る必要はない,MOOCsによる世界に向けての教育財の同時発信ということで,教育生産者が世界に向かって授業のグローバルネットワークを形成するということになります。
 それから三番目が大学認証評価機関の国際間協力ですけれども,教育財の質保証ということで,第一段階が質保証機関の国内質保証,第二段階が複数国の質保証機関間の相互認証,それから第三段階が質保証機関の世界地域別認証段階の形成と参加,第四段階が,これが一番高位の段階ですが,世界で同一の統一認証機関の設置と参加ということで,世界で標準化された認証機関の質の保証を行うということであります。
 この三つの尺度を三次元の空間に表してみますと,次のページのように大学教育国際化の三次元空間が出てまいります。これは,縦軸で教育財の国際間移動,これが4段階あります。それから横軸で教育財生産者の国際間移動の4段階,それから奥の方に教育財質保証機関の国際協働の4段階ということで,左下の第1段階の原点のところから右上に向かって対角線が引けるわけですが,この対角線に沿って教育財の国際間移動も教育財生産者の国際間移動も教育財の質保証機関の国際協働も進んでいくということが理想として考えられるのではないかということになります。
 次のページを見ていただきますと,大学教育国際化の究極ということで,右上のX空間ということが描かれておりますが,このX空間に到達したときのこの三つの軸というのはどういう状況にあるかというと,教育はMOOCsによって行われ,教育財は国際間を移動しない。2番目,教育財の生産者は,MOOCsによって教育を世界に発信し,教育財生産者も国際間移動しない。3番目,世界で統一化された認証機関による世界の大学の認証評価ということになります。この三つが表すX空間では,世界における教育の標準化ということが行われていますから,ここにおいてはある意味教育が世界中で静態化あるいは標準化,スタンダーダイゼーションされるということ,そういう利点もありますけれども,静態化が持っている,動態的ではないことの問題点が大きく浮かび上がってくるのではないか。
 次のページを見ていただきますと,現段階とありまして,現在のこの三つの軸を表した世界の教育空間というのはa空間あたりにあるのではないかと。これは教育財の国際間移動は第二段階から第三段階に進みつつある。それから教育財生産者の国際間移動は第三段階にある,教育財質保証機関の国際移動は第三段階に進みつつあるという,イメージ的ではありますけれども,解釈ができるのではないか。
 次を見ていただきますと,では,日本の大学教育国際化の現段階はどこにあるのだろうか,これもイメージ的なものですが,b空間あたりに位置付けられるのではないかと。すなわち,教育財の国際間移動では第二段階から第三段階に進みつつある,教育財生産者の国際間移動は第一段階,教育財質保証機関の国際移動は第一段階にあります。
 次のページを見ていただきますと,私は公立大学で学長をやっているものですから,公立大学の現段階というのは,やはり原点に一番近い空間,c空間に留まっているということ,三つの尺度でも全て第一段階にあります。
 次の2040年の大学教育ということになりますと,MOOCsと現地教育といいますか,あるいはデジタルではなくてアナログという,教室あるいはキャンパスで先生と学生が教室で相対して教育を行うという現地教育の混在と統合の状況に2040年あたりには到達するのではないかということです。この場合に必要とされる努力課題というのは,教育内容及びレベルの世界標準化にどう対応していくのか,それから使用言語の統一化をどうしていくのか,それからキャンパス・コミュニティをどう創造するか,すなわち学生が大学に通う必要がなくなってくるが授業は世界レベルで受けられるということになってきた場合に,キャンパス・コミュニティをどう創造するか。それから,国の教育すなわち各国が教育の独立性を保って人材を輩出していくという場合に,この国の教育というのを,2040年になった場合にMOOCsと現地教育を混合させるという状況の中でどう考えていくのかという問題等が努力課題として浮かび上がってくるのではないかと考える次第です。
 イメージ的には,やはり日本の大学もa空間に向かって移動していく必要があるのではないかと思っている次第であります。以上です。
【永田部会長】  ありがとうございました。続いて但野委員、お願いいたします。
【伹野委員】  高等専門学校という立場で2040を見据えた高等教育の将来構想ということでまとめさせてもらいました。私自身,3年前に大学から高等専門学校の方に移りまして,高等専門学校の教育制度等に非常に驚かされたことがたくさんあります。大学の中で隣の研究室の先生と教育についてなかなか語れないことが,高等専門学校の中では全国的にいろいろな議論ができているというようなことで,これこそ工学教育の新しい形が見えるのではないかという感じがしているところでございます。そういう意味でちょっと今の状況を報告させてもらいます。
 まず2ページ目をお開きください。これはここでの論点整理の中で最後に高等専門学校が機能強化を進めていくための振興方策についての検討が必要であるということが指摘されておりますが,まさしくそのとおりでございまして,それについて高等専門学校がどういうふうに今後活動していくかということが非常に大きな課題になっております。
 3ページは,2040年の各都道府県の人口の増減率が出ております。地方の減少率が非常に高いというところで,右側に全国の国立高等専門学校の設置位置がありますが,全国全ての都道府県に網羅しております。そして減少率が高いところにも必ず高等専門学校が設置されているところでございます。特に,これは国立高等専門学校でございますが,これ以外に高等専門学校としては公立に3高等専門学校,私立に3高等専門学校,計57高等専門学校ございます。公立については大阪と兵庫と東京にございます。国立が抜けているところに公立高等専門学校がちゃんとあると。あと,私立が金沢と大阪にあるというところで,非常に位置関係としても国立高等専門学校と補完できるような状況にあるということで,今後,この高等専門学校のネットワークを使った新たな展開というのが求められるところだろうと思っております。
 次に4ページでございます。もう皆さん御存知だと思いますが,高等専門学校教育の特徴というのは,まさしく高等教育機関として15歳からの高等教育を5年一貫で行うと。その分野は商船系と工学系に特化しておりますが,15歳から専門科目をくさび型で実験・実習を重視した専門教育を行うところでございます。また,5年間の本科を卒業した後,専攻科がありまして,卒業後2年間で学士の学位が取れるところでございます。教員としては,博士・技術士が9割,修士以上が9割と一般科目と専門科目が別々でございますが,企業経験者が3割ぐらいになっていると。ただ,今の状況を見ますと,最初設立のときはそういう状況でございましたが,最近,企業経験者が少しずつ少なくなってきているところがあります。これはどういうことかというと,いろいろなカリキュラム等に対する教員の質ということが問われまして,学位が必要であるということが指摘されていて,少しずつ学位を持っている教員の数が増えているところでございます。あと,キャリア教育,職業教育,少人数教育であると。あと,学生の自主性・自律性を重んじた教育を今やっている。あと,全国の国公立を全部含めた高等専門学校独自の競技会として,ロボコン,プロコン,デザコン,プレコンという全国レベルの大会を行って,高等専門学校の質の向上に努めているところでございます。
 それで,5ページ目を見ていただきたいと思います。これは先ほどもあった高等専門学校と各教育機関の関係の図でございますが,高等専門学校の方から見たらこういう図になろうかなと思っております。工学系の高等教育機関ということでございます。今我々はここで一番気にしているのは,人口減少によってそれぞれの学力が低下するということで,この中学校,高校全体の学力から見ると,どんどん低下傾向にあるにもかかわらず,就職後の実践的創造性があり,世界水準の工学系技術者・研究者という,ここのレベルは常にハイレベルを維持していかなければいけないと。ではそこの間をどうやって埋めるかということでございます。特に大学の方は,大学・大学院の議論というのは非常に進んでおりますが,その中で高等専門学校の立ち位置というのはどうあるべきかということでございます。今,高等専門学校の本科を卒業して6割が就職しております。この6割についても非常に評判がよく,あらゆる会社に採用していただいていますが,この学生が20歳であると。それで専攻科を出て22歳であるとするとここの部分の教育の質保証というのを我々は非常に考えているところでございます。特に高等専門学校から40%が専攻科及び大学に編入いたしますが,大学の方には約25%編入いたします。1年間の年間の学生数が約1万人でございますので,年間2,000名以上の学生が大学に編入しております。このうちほとんどが国立大学の工学系の大学でございます。中でも旧帝大といいますか,工学系の8大学については毎年200名以上高等専門学校の編入生を受け入れていただいている。中でも東京大学は数は少ないのですが,それ以外の大学は非常に積極的に受け入れていただいている状況でございます。今後,専攻科と地域等を考えると,この大学との間の共同教育化,ここの部分が一つの目玉になろうかと思って我々は今準備しているところでございます。2014年に中学生の卒業生が117万人で高等専門学校の入学者が約1万人でございますので,高等専門学校に同じ世代の1%弱ということでございますが,これが2040年に88万人まで減少するということでございますので,高等専門学校としてはこれにどう対応するかということでございます。
 次をお願いします。6ページ,それで,高等専門学校教育システムの一つの大きな目玉というのがこのモデルコアカリキュラムというところにあります。常に出口保証といいますか,その質保証をどういうふうにするかということです。これは平成20年度からこのモデルコアカリキュラムを全高等専門学校にということで検討が始まっております。それで,幸いにも51高等専門学校 55キャンパスで今年平成30年度から導入スタートしております。この最初の趣旨は,教師が何を教えたかから,学生が何を学んだかという学生・学習者主体の教育をこの工学系教育の中に盛り込んでいこうという話でございます。カリキュラムの構成ですが,大きく三つに分けまして,基礎的能力,専門的能力,分野横断的能力,それぞれの科目が具体的にありますが,それが全高等専門学校のカリキュラムの60~70%ぐらいを占めるようにしようと。そして30~40%ぐらいの各高等専門学校の強みや特徴を生かしたカリキュラム構成にしようということであります。今,平成30年からスタートしたのはこのモデルコアカリキュラムの基盤となる60~70%の部分でございます。ここはカリキュラム等を全高等専門学校で統一化していくということでございます。
 それで,それぞれの能力に対して技術者が備えるべき能力と到達レベルを7ページに明示しております。特にコアとモデル,一つの例として基礎能力,専門能力,分野横断的能力と書いてありますが,そのうち,例えば高等専門学校の本科レベルでは,Kというレベルの基礎能力については適用レベルまでしっかり教えようと。そして専門レベル,専門能力については4の分析レベルまで教えようという目標を立てて,それでカリキュラムを構成しております。また,Aというのは専攻科レベルですので,ここの部分は大学にしますと大学の学部レベルになります。また,今,モデルコアカリキュラムをこのように整備することによって,大学に編入した場合の大学の編入後のカリキュラムの構成というのを接続できるということを期待しておりまして,各大学にもモデルコアカリキュラムの内容を順次公開していく予定でございます。また,このレベルの話ですが,第5番目,6番目の評価・創造レベルでSと書いたのは,やはりここは高等専門学校ではなかなか対応できるところではありませんので,教育としては大学院の修士課程,博士課程になるだろうと思っているところでございます。
 次に8ページをお願いします。このPDCAサイクルというのは,学習者主体の教育という,学生自身のPDCAサイクルをここで作ろうというところでございます。まず,モデルコアカリキュラムをベースに各高等専門学校のシラバスを作ります。そしてそれについてアクティブラーニング等の教育を行う。そして到達度試験,到達度確認を行います。これはCBT(Computer Based testing)というテストを行う。これは全国共通で,受けたいときに受けられるような体制をとる。これをベースにしてモデルコアカリキュラムを整理するということでございます。。
 9ページ,各国際標準と高等専門学校のモデルコアカリキュラムとの対応関係ですが,各国際標準にほとんど準拠しているところです。
 これによって,10ページですが,モデルコアカリキュラムのいろいろな導入に対して「世界のKOSENへ」ということでいろいろな働きかけができるところでございます。また,海外展開についても,今現在,モンゴル,タイ,ベトナム等に高等専門学校のシステム輸出ということになっておりますし,それに対応しております。
 13ページから2040年に向けてということですが,やはりここに書いてある,全国高等専門学校の強靱なネットワークをここで活用した形でいくというのがいいだろうと。あと,全国に網羅したネットワークが教員・研究者,学生,地域,それと都会に偏っていないということと,都道府県庁所在地に少なく,多くが地方の中核都市にあるということです。あと,一法人管理をしておりますので,各高等専門学校の活動・運営に一定のレベルが保証されている。あと,こういうものについて地域に密着した活動というのをしていく,要は高等専門学校連携協力会,これは各地元の企業が一つの団体を作ってサポートをする協力会でございますが,これが各高等専門学校にあると。これをベースにして地域課題の全国共有,地域成功事例の他地域,全国波及ということで,地方創生と地域人材育成の担い手ということが十分可能なのではないかということでございます。
 14ページ,将来像の提示に対する論点ということで,まず,学際的・融合的な研究については,15歳からの基礎理科教育(数学,物理,化学)によって理系の人材育成に積極的に貢献できる。あと,情報技術社会の教育については,これも15歳の早期年齢ということで,今も実施しています。あと,地域のリカレント教育,あと,グローバル化による多様な国籍の工学系の教員を受け入れるということが十分できると。あと,地方の産業の生産性向上,高付加価値化に向けた人材育成の拠点として高等専門学校というのは利用できるだろうということでございます。あと,高等教育における人材育成については,同じような内容でございますが,スキル,リテラシー,工学系ということでは十分対応可能であると。
 あと,15ページ,最後のページでございますが,今後の考えられる対応というのをちょっとここで整理しております。あと,地域産業課題解決型,地域産業の課題をしっかり解決する出口型の人材育成に高等専門学校の特色化を行って,それで専攻科と大学の共同教育課程を設置して,地域に貢献する形を作られると。あと,教員の一定割合を実務経験者を採用して,ちゃんと研究がやれるような体制が出来ると。研究もできるけれども環境を作りたいというところでございますが,現在,教員の制度が裁量労働制ではないという不備がありますので,この辺の整備が必要になってくると。あと,地域に特化した大学院のサテライト研究室も高等専門学校の中に十分設置できますので,そこの部分で共同で大学院との先進研究を推進することができます。あと,地域大学との教員の相互受け入れ,単位互換制度等が考えられます。海外とは,今もう海外留学生等を受け入れていますので,また,高等専門学校から海外の大学等に多く留学しておりますが,海外で取得した単位を高等専門学校の中で認める制度というのも必要になってくるだろうと思っています。
 18歳人口の減少については,先ほどちょっと申しましたが,2040年の88万人に対して現行約1万人を維持する。その場合の年齢比率としては,0.9%から1.1%に微増するということになりますが,その分,高等専門学校の独自性と特徴というものをもっと生かして理解していただくということになります。あと,高等専門学校志望者の全国展開,今まではそれぞれの高等専門学校で受け入れたということでございますが,それをもう少し全国展開して,各高等専門学校の特徴,強みがあるのを,学生が学年ごとの流動化,単位互換,入試統一,MCC,PBT等,あと大学との編入の連携というのが考えられる。あと,多様な学生の受け入れ。あと,高等専門学校を地域の課題解決ステーション化できそうだというところでございます。あと,地域にそれぞれ工業技術センターや大学,専門学校等ありますので,工学系の技術改革についてステーション化ということをできる。
 あと,質の保証と情報展開でございますが,MCCの深化・発展と独自の内部保証制度,場合によっては卒業認定制度まで議論できそうだということと,今もう既にスタートしていますが,このモデルコアカリキュラムの国際標準化というのを狙っていく。
 その他としては,高等専門学校システムの世界展開を行っていきたいというところでございます。
 以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。この後、委員の皆さまから御質問や御意見をいただくことになりますけれども,最初に私からお一人ずつに簡単にご質問させていただきたいと思います。
 まず,石田委員ですが,人口減少に基づいた非常に確度の高いシミュレーションを御発表いただきました。この中で一つだけ気になる点は,別次元の難しい問題ですがが,入学者を減らした場合に書いてある「教育や研究の質の劣化」という部分です。このように、入学者減に応じた予算減と教職員の減少を認めると,石田委員がおっしゃるとおりになると思います。こうした状況においても,教育や研究の質を落とさないためには,予算や教職員数を減らさないということになると思うのですが,そうすると,現在の入学定員に合わせて教員数を増減させるような考え方を転換しなければいけないと思うのですが,いかがでしょうか。
【石田委員】 まさにそのとおりだと思います。単純に教員を学生数に比例して,予算がそれにほぼ比例したような形で減るということは,実質的には教員数もそれに比例して減らしてしまうということになり,それぞれの分野でよほどどこか削ってしまって特化していかない限り,それぞれの分野で,いわゆる総合大学としての機能を保持していく上で教員数がそれぞれの分野で細ってしまって,質が維持できなくなるのではないかということでございます。そうした意味で,どちらかというと,ある意味ではベーシックな部分と,学生の数に比例した部分と,その辺の二つをきっちり分けていかないと,その二つの部分で見ていかないといけないと思っています。
 以上でございます。
【永田部会長】  後ほど同じような質問が出るかもしれませんが,論文生産性を考えたときに,我が国の論文は、国立大学,公立大学,私立大学,独立行政法人,それから企業のうちの50%は国立大学が生みだしています。教員数が減ればそれだけ論文数は減ると思うので,そうならないためには,今申し上げたように、新たな考え方をとらないといけないということだと思います。
 次に,但野委員に御質問ですけれども,お示しいただいた5ページの目標が本当に達成できるかどうか、ということです。例えば,石田委員からの御発表のとおり,大学が入学者の質の低下を容認することも考えざるを得ない中で,ここに書いてある実践的創造性があり世界水準の工学系技術者・研究者が、本当に現在と同じ数だけ養成できるとお考えでしょうか。
【伹野委員】  そのための教育の質保証というのは我々一番考えているところで,非常に効果的な教育というか,技術者教育,人間教育というのを含めて,15歳からですけれども,その部分というのが高等専門学校の中ではモデルコアカリキュラムの中でいろいろな一つ一つについて非常に議論ができていると思っておりますので,それをベースにすると,この技術者のそういう人材を高等専門学校から輩出することは十分可能ではないかとに思っているところです。
【永田部会長】  ありがとうございます。しかしそれは大変実現が困難であると思います。なぜなら、入学者の質が低下した中で教育をするためには,教員が教育のエフォートを今以上に掛けなければできません。それが現実に可能なのか、というシミュレーションをまずしなければ,この目標は残念ながら希望的要素が強すぎるのではないかと思います。ですので,高等専門学校では大学編入率約25%,年間2000人以上という数値を2040年も実現するためには,おそらくより根本的で実効性の高い施策を考える必要があると思います。
 最後に鈴木(典)委員に御質問ですが,公立大学は全てにおいて第一段階にあるという,非常に冷静な分析でした。もちろん,これは教育財という視点で考えればそうだと思いますが,MOOCsが適さない領域,例えば看護や医療のように,相手の精神性まで含めて教えないといけない領域もあります。したがって、全ての公立大学がa空間を目指すのか、というのはまた別問題ではないかと思います。
 もう一つ御質問ですが,この目標が、鈴木(典)委員が学長を務めておられる国際教養大学を念頭に置くと,その特徴がよく出ている限りにおいてはすばらしいと思います。一方で、それはあくまでも先生の大学の入学定員175名という規模を含めた特徴を前面に押し出しているがために可能なモデルだと思います。そのように考えると、全ての公立大学がこれで対応できるかどうかは難しいと思うのですが,いかがでしょうか。
【鈴木(典)委員】  公立大学でも大きな大学と私どものような小さな大学がありますので,そういう意味では小さな大学というのは,経営や教育の質の保証・維持は容易にやっていけると思いますけれども,大規模なところは,なかなか公立大学といえども教授会が強いとか何やらがあって難しい面があると思います。結局,こういうことは一様にできるかということですけれども,私はやはり,先頭に立つ人たちがある意味,強いリーダーシップを発揮するということがどうしても必要条件でありまして,その意味では,公立大学というのは任命者が自治体の長でありますから,そういうところとの協力関係というのが非常に重要になってきて,私も日々経験しているところですけれども,そういうことも含めた意味の経営の仕方というのを考えていく必要があると思っております。
【永田部会長】  ありがとうございました。おそらく、皆さんお聞きになりたいことの代表的な質問を代わりにいたしました。
 それでは,委員の方から御意見あるいは御質問を承ります。有信委員,どうぞ。
【有信委員】  石田委員の分析は非常によく分かって,危機的な気がするのですけれども,私はさっきの永田委員とはちょっと違う印象を持っていて,例えば偏差値というのを考えると,偏差値というのは全体の集団の中でどれぐらいずれていますかというこれだけの話なんですよね。したがって,偏差値が例えば同じ60でも絶対的にそれが各国とも同じ60のレベルにあるのかというと,必ずしもそうではない。これは多分初等中等教育からの影響をきちんと見た上で,実際に例えば偏差値60の子の割合が,全体として人数が減るからといって,もともとそれだけのポテンシャルを持った子の人数が減っているわけではないという認識をやはりきちんと持たなければいけないような気がします。何となく偏差値の呪縛にみんな囚われていますが,そこは単純に統計的な偏差の問題です。したがって,そのレベルで考える。ただ,そうはいっても全体として人数が減っている中で,子どもたちのレベルが単純に落ちるということではなくて,それをもっと多様な能力を見ながら育成していくということを18歳人口については考えなければいけなくて,そうだとすると,やはりアドミッションのところをどうやっていくか,従来のように単純に試験で振り分けるのではなくて,様々なアドミッションの方式を考えるべきだろうと思います。そうだとすると,大学がどんどん多様化をしてきている中で,各大学の教育目標というのが従来のように学校教育法で決めているように一律のままでいいのかというところを考えながら,もっと多様な人材を生み出すというときに,今度は社会との接続の中でどう多様化を図るかというところで多様な人材を生み出すというところの個性化を考えつつ人材育成を考えるべきだという気がするのです。そういうことを考えると,多分地方の国立大学も,一つは育成目標が多様化するという意味と,石田委員の話の中にも連携という話が出ていましたけれども,連携の中で,個々の大学が全てを品ぞろえするのはほとんどもう不可能な状況になっている中で,それぞれが個性的な育成目標を見ながら共通に必要なものは連携の中で組み上げていくというようなことも考えられるような気がするのですけど,この辺はどうかというのが石田委員への御質問です。
 それから鈴木(典)委員には,国際的なということを考えたときに,これでいくと,みんな育成目標が一緒のレベルで,それで国際的に質保証をやりましょうという話になるのだけれども,国間の特徴の問題と大学間の特徴の問題,先ほど言ったように多様な人材を育てるという意味で言ったときに,そうすると質保証の在り方というのはすごく重要になってくるわけです。それで,今気になったのは,質保証というのは単純に,教育レベルというのはもちろん一つには含まれるのだけれども,教育レベルの問題だけではなくて,教育の質そのものが何かということをやはりきちんと考えないといけないような気がするのですけれども,この辺のお考えがあればということです。
【永田部会長】  石田委員,どうぞ。
【石田委員】 これはあくまで学力の尺度として何を持ったらいいかということで偏差値にしているだけで,偏差値が全てだと思っているわけではございません。ただ一方で,ではその中でどういう力を別の観点で評価していくかということは今後非常に重要だと思っています。そしてもう一つは,大学だけの問題ではなくて,やはり初等中等教育も含めて,どういうような人間を育てるかということです。様々な多様な価値観,能力を持った人間を育てることはとても重要だと思いますけれども,個々一つ大学だけでできることではないと思っています。
 それからもう一つは,当然のことながら,ある圏域内での様々な特徴を持った大学を作っていくことも当然あり得る,そうせざるを得ない時期も来るのではないかと思っております。
【永田部会長】   鈴木(典)委員,どうぞ。
【鈴木(典)委員】 本学の場合には,大学別あるいは国別でいろいろ質が異なるのではないかという御質問だったと思いますけれども,一つには,基本的にうちの授業は全て英語でやっていますので,海外に行っても英語で授業が受けられるということが前提になっております。そういうことから海外との提携校を選ぶというのが一つございますけれども,もう一つは,カリキュラム・アーティキュレーションといっておりますけれども,シラバスの交換をやっております。学生が海外に行ってこの授業をとりたいが,これを授業としてその成績を持ってこられるかというときに,それをうちの委員会が承認するかどうかということ等があります。カリキュラム・アーティキュレーションができない場合には提携を断るということもたまにございまして,最近もありました。このように,質の保証を国際的にやっているということであります。
【永田部会長】   益戸委員、どうぞ。
【益戸委員】  現在、地方に住んでいる者として石田委員に御発表いただいた「地方X大学の2040年」のお話を興味深く聞かせていただきました。
御発表を聞きながら考えたのは,今は大学側が入試を通じて,学生を選んでいますが,2040年はどうだろう,という事です。すでに,高大接続,入試改革,初等中等教育の学習指導要領改訂など,様々な改革がスタートしています。2040年への私の期待は,学生は偏差値で自分の入れる高等教育機関を選ぶのではなくて,しっかりした目的意識を持って高等教育機関を選んでいく。特に地方の人口減少がもたらす様々な問題はどうしても解決していくべき大きな課題です。国全体としても人口が減るわけですから,国力を低下させないためには,国民一人一人のレベルアップを教育を通して図ることが非常に重要です。とすると,この資料2の中の入学者の質を維持する場合と,入学者の質低下を容認する場合という考え方ではなくて,様々なレベルの学生が数ある高等教育機関の中で大学,短期大学,高等専門学校,専門学校を選んだときに,選ばれた学校はどんな学生が入ってきても,その持てる力を更に伸ばすという教育をしなければいけない。偏差値は死語になっているのではないでしょうか。委員の御意見を伺いたいと思います。
【永田部会長】  鈴木(典)委員,どうぞ。
【鈴木(典)委員】  確かに偏差値だけでというのはもう古いというか,やっていけないということになると思います。私の大学では,入学試験というよりは面接やら,あるいはギャップイヤーで海外での経験のあることが必要条件だということも含めた16種類の試験をやっておりまして,確かに多種多様な人材が入ってきて,それだけに,同一の教育あるいは科目を提供していくということにとって学生が対応できないという面も出てくる可能性もあります。4年間で卒業できる学生が50%しかいないという結果が出てきておりますけれども,でも今の御質問にはどうしても答えていかなければいけないと思っております。
【永田部会長】  ありがとうございます。この問題は意外に難しいと思います。もちろん、益戸委員がおっしゃるように,入学した全ての学生の能力を伸ばすよう努めるのは当然なのですけれども,極端な言い方をすれば、次の日から授業についていけないという場合もあるわけです。微分積分を十分理解していなければできない学問もあるわけですから,各大学が入学試験において自ら設定した基準に基づき選別することは、ある程度合理性があります。いくら希望されても,例えば一人の学生のために教員が三人で教育しないと育成できないということになると,当人以外の周辺の劣化を招いてしまうのです。実例はたくさんあります。例えば医学部では,今,地域枠を設けてもともと定員100人でスタートしているものを120人,130人としているところがあり、教育に非常に手が掛かるという事態も見受けれます。大学全体のリソースを考えたときに、こうした事態をどこまで許容できるか、ということも考えなければいけません。
【益戸委員】  全てが世界を目指すのではないということが石田委員のここには書いてあるのですけれども,地方は全て海外を目指さなくてもいいのです。やはり納税をするとか,子供をきっちり育てるとか,犯罪を犯さないとか,よき日本人を作っていくということもやはり地方国立大学の重要な役目ではないかと思うのです。
【永田部会長】  もちろんそのとおりです。役割はひとつではないと石田委員もおっしゃっているとおり,どれか一つを選ぶのではなくて,御提案の三つをうまく組み合わせる、ということだと思います。
 小林委員,どうぞ。
【小林委員】  本当は3人の委員の方にお聞きしたいのですけれども,石田委員だけ,予算減と質の維持という問題を出されましたので,それで石田委員にお伺いしたいのですけれども,やはり2040年を考えるときに非常に重要な問題として,大学の財務をどうするかという問題が当然あり,特に国立大学は避けて通れない問題で,運営費交付金が毎年1%ずつ減るということをどう考えるかというのがあると思うのですけれども,そのあたりのことが,余り触れられていないのです。それで,むしろ定員を減らした場合にどうなるかということで問題を提起されているわけですけれども,一つの可能性としては,授業料を上げるということがあり得るとは思うのですけれども,その場合にはやはり給付型奨学金や別の手当てをしなければいけなくて, 8,000億円も使えるようになるようですから,そういう形で,授業料を上げるという選択肢,あるいはその他の収入を増やすという選択肢があると思うのですけれども,そのあたりどのようにお考えでしょうか。
【石田委員】  それはもう当然のことでございます。そうしないとやっていけないということですけれども,それだけで全てを賄えるかということになってくると非常に難しい。例えば寄附等が言われていますけれども,どこまで本当に2040年になったときにその寄附が根付いてくるのかを含め,そこのところを想定しながら予想図を描くことはなかなか難しいということでございます。
【永田部会長】  両角委員、どうぞ。
【両角委員】  石田委員と伹野委員に一つずつ質問したいと思います。
 まず石田委員の方ですが,この三つのシナリオごとで,特に質を維持した場合ということでどんな戦略が必要かというのの二つ目で,アンブレラ型国立大学法人の圏域での機能強化というのが書いてあったのですけれども,そこがどうつながるのかというところがちょっとよく分からなくて教えていただきたくて,例えば留学生の広報とか海外キャンパスを協働でやるというのは,別にそこの地域で一緒にやるというものでもない気もしました。というと,そのアンブレラ型というような新しい経営体で運営するということが,例えばニーズが低いところでどこか定員を減らしたりというところの,この大学はここに特化して,ここはこういうところを強化してという,それがやりやすいという意味でこれを挙げていらっしゃるのか,あるいは何らかそれ以外の意図があるのかというところについて教えていただきたいというのが石田委員に対する質問です。
 伹野委員に対しては,このモデルコアカリキュラムなどとてもおもしろいなと思って聞いていたのですが,これから18歳人口が減っていくときに,やはり社会人のリカレントというものがどうしても重要になってくると思います。私のふだん行っている対象も結構社会人の学生が多いのですけれども,うちはニッチなのでそれなりに学生が来るのですが,学び直しが必要だといっても何が必要なのかが分からないけれどというパターンが結構多いという話を聞きまして,そういう意味でモジュール化されていて,どういう知識パッケージごとのつながりでプログラムが組まれているということが明確であることが社会人を呼び込むということにどれぐらい有効なのかという感触についてお聞かせいただければと思います。
【永田部会長】  石田委員、どうぞ。
【石田委員】  今言った海外キャンパスはアンブレラになるまいが,独自でできることだろうとは思っています。やはり問題なのは,入学者を減らすというようなことをせざるを得ない場合に,それぞれの分野がみんな細くなっていって全体がようじの集まりのようになってころっと転がるのではなくて,どこかそうなった場合には,ある分野を譲るなりして,圏域として全体の強みを守らざるを得ないのではないかという観点でございます。あるいは,どこの大学でも悩んでいる一般教育,教養部は小さな大学ではなかなか個別では維持しにくくなっている部分もございます。多様なものを教授できない中でそこを共通にできるような部分ということも考えています。そういった意味での圏域での機能強化ということでございます。
【永田部会長】  但野委員、どうぞ。
【但野委員】  高等専門学校の特徴として,やはり教育内容というのが,先進的な工学というよりも基盤的な基礎教育,基礎的な工学教育を重視しているというところがありますので,技術者教育ですので,リカレント等で別の専門分野をもう一度学び直したい,例えば機械工学から電気工学を学び直したいというようなときには,その地域に対してそれぞれ高等専門学校がありますので,同じ質の程度ですぐ対応できるということで我々は準備をしているということはあります。
【永田部会長】  山田委員,どうぞ。
【伹野委員】  高等専門学校の特徴として,やはり教育内容というのが,先進的な工学というよりも基盤的な基礎教育,基礎的な工学教育を重視しているというところがありますので,技術者教育ですので,リカレント等で別の専門分野をもう一度学び直したい,例えば機械工学から電気工学を学び直したいというようなときには,その地域に対してそれぞれ高等専門学校がありますので,同じ質の程度ですぐ対応できるということで我々は準備をしているということはあります。
【永田部会長】  山田委員,どうぞ。
【山田委員】  大変お三方の御意見を興味深く聞かせていただきまして,その中で,私はまだ大学に行ってから1か月しか間がないので,どうしても元の知事という目で物事を考えてしまうのですけれども,そのときに,地方の置かれている現状と大学の置かれている現状というのはやはりパラレルな部分があると思っています。地方の場合には,衝撃的だったのは,やはり地方消滅という言葉でありまして,これは2040年に800を超える地方公共団体がなくなるということであります。その一番大きな点は,実は自然減だけではなくて社会減というものが非常に大きな要素を占めているということでありまして,先ほど石田委員,そして伹野委員のお話を聞いていると,自然減の方の話は出ているのですけれども,いわゆる定性的な社会減の方の話を前提にはされていない。だから25%減るとかそういう話になっているのですけれども,このままでいくと4割の地方公共団体がなくなるということは,4割の地方大学がなくなっても,4割の高等専門学校がなくなってもおかしくないという前提です。それに対してそれぞれの地方大学,高等専門学校はどういう手を打たれるのかという点が非常に不明確だったという気がいたします。それで,私ども地方の場合には,地方創生ということを考えたときには,一つは地方の魅力をアップするという地方創生論をとった。しかし,それでもうまくいかないので,さらに働き方改革という形でありとあらゆる人たちを地域の担い手にするということと,それから交流人口を増やしていくということを非常に大きな眼目に置いた。ここは実は大きく国の施策が分かれていて,一つにはそれでも人口の減少は留まらず社会減は留まらないのであれば,重点化,集約化をしていくのか。それとも,新しい考え方を導入して,例えば都市と地方がデュアルな関係で,多住居とかそうしたものを持ってくるのかという形まで追い詰められています。その点からすると,ちょっと石田委員,伹野委員の2040年の将来像というのは地方の現実の行政を担ってきた者からすると少し楽観的という感じがするのですけれどもその点はいかがでしょう。
【永田部会長】  石田委員、どうぞ。
【石田委員】  これはあくまでバーチャルな,一般的な平均的な部分でやっているということですので,こういう形になっています。地域において今山田委員がおっしゃったような形が進むと非常に厳しい部分があろうかと思っています。その中で,委員がおっしゃったような地方の魅力あるいは交流人口の増加等々いろいろな形を大学も一緒になって打っていかなければいけないんだと思っています。あくまでこれは平均的な形ということですので,凹凸は当然出てくると思っています。
【永田部会長】  日比谷委員,どうぞ。
【日比谷副部会長】 石田委員に質問ですが,「国立大学法人 地方X大学の2040年の未来予想図」の1番,2番は私が今自分のところで考えていることとほとんど100%一致しています。それで,特にその中でも留学生に力を入れようと思っていて,鈴木(典)委員の国際教養大学と同じように小規模ですから,このストラテジーでいくことができ,十分な手応えを私は自分のところについては持っているのですけれども,もっと大きいところも含めると,はっきり言って取り合いになると思います。それから,対応できる教職員の確保については私も結構危機感を持っていますが,みんながそういうふうにシフトすると,特に教員も対応できる人の取り合いになる。このあたりについてどういうふうに確保していこうとお考えか,また,幾つもの大学があって海外の学生も取り合いになるわけですけれども,そこでどういう戦略をお持ちかということを伺いたいと思います。
【石田委員】  確かにいろいろな意味で学生の取り合いになると思っています。ただそれに対する戦略はそれぞれの置かれた条件で異なるでしょうが,ここではパイが減るという中での平均的な形で物を言うしかないと思って発表しました。例えば私どもの大学だけに限って言えば,栃木県は地理的な条件もあって自宅通学も含め東京の私学に出ていく方が非常に多い中で,どう学生を取り戻すかとか,それぞれの大学で個別の戦略はいろいろあろうかと思っています。ただ,そこには触れない方がいいかと思って,こういう形にさせていただいたということでございます。
 それから,教職員の確保は本当にそうなったときには非常に難しいものだと思っています。いろいろな形で研修あるいは教職員を含めて留学等々はやっているところですけれども,大学の体力が弱まる中でどこまでできるのかというのは非常に難しい課題だと思っています。
【永田部会長】  18歳で入学する学生の質が変わる,さらに、留学生や社会人の質が変わったりすると,それに対応するために教員数はやはり増やす必要があります。それについてどこまで対応できるか、という問題は簡単に解決できないと思います。
 鈴木(雅)委員、どうぞ。
【鈴木(雅)委員】 私は今,企業の中で学生の採用にも関わっていまして,先ほどの話とダブるかもしれませんけれども。
 先ほど,人の多様化という言葉が有信委員から出ましたが,本当にこの多様化が今とても求められており,成績がいいから,何かができるから採用するというよりは,社会の中に出たときにきちんと協調性を持って一緒に仕事ができるかどうか,この辺がやはりとても重要です。その中で言いますと,お三方の発表は,今困っていることをどうやって解決したらいいかというところに少し集約されていて,本当に2040年には社会がどうなっているのかという仮説が見えない感じがします。特に今,企業の中では働き方改革ということで,現状の働き方と全く大きく変化しています。そういう意味では,入ってきた学生さんが,こういう会社だろうと思ってリクルーティングで入社しても,1年以内に仕事の中身が大きく変わってきます。例えば金融にしても,ATMがあれだけ浸透してくると,銀行の窓口業務がなくなったり,ほとんどの仕事が変化するということは,皆さん御存知です。大半の人が大学を卒業したら就職ということがありますので,その辺のところをきちんと見据えた上でマッチした形の学びをしていかないと,かなり厳しいだろうという気がします。
 また,国際化となると必ず留学という言葉が出てきますが,留学をさせるだけで国際性が身に付くとは思っていません。 TOEICにしても高い点数を取れない人と,逆に900点をとうに超えている人と,ばらばらです。聞くと,留学期間もばらばらで,大学として留学をしたというお墨付きを付けるためにはある一定のルールなり規定を作って留学という言葉を設定しない限りは,企業の方で採用したときに本当に使えるかというと,結構社会人教育の中で再度語学研修を入れているケースは多いです。そういう意味では,国立大学にしても私立大学にしても高等専門学校にしても大学それぞれの役割があると思っていまして,全部が全部同じことをする必要性もなく,逆に言えば,変に学生の取り合いにならないような,それぞれ学生が自分の目標に向かって進んでいけるような特色を出していただきたいと感じました。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。ご指摘のあった質の転換の具体的内容については、本部会の下のワーキンググループで議論が重ねられています。今ここで議論しているのは、それを絶対条件としたうえで、そこから先をどうするか、ということだと思います。先ほどからの議論では、特に規模が小さい大学は,自らの特色や強みをより強くしていく、という意見が出ていました。一方で、規模が大きい大学ではおそらくこれが難しいと思います。特色や強みの強化のためには,経営と人材の能力,コンピテンシーを踏まえてどう変えていくかということになりますが、鈴木(雅)委員の御意見は、全部の大学が必ずやらないといけないだろう、ということです。
 古沢委員,どうぞ。
【古沢委員】  お三方の御説明を非常に興味深くお聞きしまして,私は伹野委員に御質問したいと思います。最初の文部科学省の資料で,高等教育機関の接続についてという御説明があって,緑の線で編入学可能というラインがあるのですが,実際には実数としては編入学の数は少ないのではないかという線もあるのですけれども,その中で,高等専門学校の先ほどの御説明で,高等専門学校の全体の規模がそれほど多くない中で,非常に大学や大学院に進んでいらっしゃるということで,非常に興味深く感じました。その中で課題や今後の展望があればお聞きしたいということと,もう一つは,一番最後に海外展開の話がありまして,これも大学,専門学校含めてもっと海外展開を考えていかなければならないと思うのですけれども,その中で高等専門学校についてはアジアを中心に世界展開を考えているということですが,このシステムについて,途上国などにこの高等専門学校のシステムを紹介するということはもうされていると思うのですけれども,ヨーロッパの国などでは,例えば教員養成システムを非常に新興国が欲しがっているということで,ビジネスとしてもういろいろ人を呼び込んで展開しているところもあるかと思うのですけれども,今後どのようなことが考えられるのかというのをお聞きしたいと思いました。
【伹野委員】  まず,大学との連携でございますが,現状,40%のうち大学等への編入は25%の状況になっている。我々高等専門学校としては,この状況をもっと増やすとか減らすということではなくて,でもやはり高等専門学校のミッションというのは実践・創造力のある工学系技術者を5年間一貫で育てるというところにありますので,そこを大きな柱として,その中で大学等に編入させるということが一つの基本になっています。また,やはり高等専門学校は技術者養成というのがメインでございますので,その中で,今,大学の方から非常に大きな期待をされているのが,大学の方に高等専門学校から編入した学生が博士課程まで進学する率が非常に高いということと,工学系の学生の中で女子学生が工学系の大学に編入する数が多いということで,我々の高等専門学校としては工学系技術者の養成ということを基本にして,今の比率というのはこのくらいだろうと。あと,産業界に対する期待というのもしっかり応えていくということが必要ですので,そういう形にしたいと。ただ,地域について,地域の新しい人材育成については,専攻科と大学の中で今までの既存の学問レベルではないところで地域特化した人材育成というのが必要になってくるとき,それは高等専門学校単独ではなかなか人の数が少なくてできないというところがありますので,大学と一緒になって共同教育課程というのを作って,新たな人材を地域に対して育成するということは今ちょうど考えているところでございます。
 また,海外展開については,今,モンゴル,タイ,ベトナムがあります。今,各国が期待してくれているのは,15歳から高等教育機関であるということで,5年一貫のしっかりした高等教育機関として技術者を養成するということを非常に高く評価していただいていまして,今この3か国については,高等専門学校のシステムそのままを輸出というのはおかしいのですけれども,向こうで作るという話が出てきています。またそれ以外に,そういう発展途上国が中心になろうかと思いますけれども,そういうような技術者養成に非常に緊急な課題を持っている国については,高等専門学校の制度というのを今非常に大きくPRしているところです。
【永田部会長】  福田委員,どうぞ。
【福田委員】  鈴木(典)委員にお尋ねしたいのですけれども,学生の国際移動の諸段階,第一段階から第四段階までありますが,それ以前に,まず求められる人材がどういうものか,これは日本の中ではどうなのか,都会ではどうなのか,また地方ではどうなのか。そして留学生が非常に増え,,ウエイトとしては中国,ベトナム,これからまだASEANが増えてくるのか分かりませんけれども,現実にこの質保証の質とは何かということがちょっと分かりかねまして,教育の質,特に職業的な人材の質は,これから2040年に向かって変わっていくのではないかと,そこをまず定義していきたいと思っておりますけれども,海外での第二段階での質保証を共通にする,複数国の質保証機関間の相互認証,これはものすごく絵に描いた餅としては,非常にいいと思うのですけど,現実的に第二段階というのは可能性としてあるのかということをお聞きしたいと思っております。といいますのは,職業の資格というものではヨーロッパの中でいろいろと認められる共通のものがあるのですけれども,質保証機関の相互認証ということについて簡潔にお教えいただきたいと思います。
【鈴木(典)委員】  質保証機関は,認証評価を行っている機関ということですが,私の知っている限りは,アメリカあるいはイギリス,それからオーストラリアあたりの認証機関は,海外の大学に対して自分のところの認証を受けないかという非常に強い誘いを行ってきておりまして,それに応じて,とにかく海外の認証機関の認証を受けて,あなたのところは大学としてちゃんとやっていますよというお墨付きがある意味ありがたいという状況が強くなっております。そういう中で,日本の認証機関も,やはり海外との共同の認証活動に入っていくということが要請されているということで,私が知っている大学基準協会などは,例えば台湾の認証機関と共同で日本の大学を認証評価するということを始めようとしておりますけれども,そういう意味で,大学あるいは大学生の海外展開ということもありますけれども,質保証する機関の海外協力展開というのもかなり進んでいるということは言えると思います。そういう観点からすると,教育あるいは質のレベルの世界標準化といいますか,そういうことも非常に基礎的な柱のところで相互に行われつつあるということが言えるのではないかと思いますので,第二段階からもしかすると第三段階の方にそれらの国の認証機関が協力してやっていくというふうに進んでいくだろうと思っております。
【永田部会長】  ありがとうございます。金子委員,どうぞ。
【金子委員】  私は石田委員のお考えにコメントをさせていただきます。私は最後の結論のところはそんなに変わらないのではないかと思うのですが,途中のところのロジックは相当誤解を招くのではないかと思っています。御趣旨は,特に国立大学について,地方の国立大学は地方の若年人口の減少に従って,一つはこのままで放っておけば入学者の偏差値が下がる。あるいはこれを募集すれば,これを変えれば組織を小さくせざるを得なくなる。いずれにしても質が下がることになるのではないかということですが,なぜそれが質の低下につながるのかが分かりません。偏差値が下がったところで,研究活動にそんなに影響があるとは余り思いません。それから,組織を小さくすれば,当然生産量が低くなるでしょう。それはやはり私はやるべきではないだろうと思います。そういう状況に対する対応をいかにするかということが非常に大きな課題なのであって,それでもって直に質が下がる結果になるということはあり得ないのではないかと思います。規模も小さくする必要はないと思いますが,ただ,小さくしたら今度はアンブレラにするということですが,アンブレラ型というのは非常に幻想があって,今先ほど挙げられていた例を聞いても,何でそれがそのまま機能的に働くのかということは理解できません。一定の機能を単位交換などの方法によって交換することは今でもできますし,その方がはるかにリーズナブルだと思います。
 それで,私が一番申し上げたいのは,こういう状況の中で,今までの国立大学の理念だったらば,学生数を少なくしてでもいいとかいう構想になるかもしれませんけれども,地方国立大学の役割自体が変わらなければならないと思います。要するにアイデンティティーを変えるということが一番重要だと思います。特に地域連携については,ここに書いてありますし,いろいろとよくやっている地方大学も多いと思いますが,どこを見ても,やはり地方連携というのは大学が慈恵的だと思います。私たちが進んだ知識を地域に上げましょうという発想がどうしても抜けない。それから,大学に地域連携センターみたいなものを作っている場合も多いですし,それから熱心な先生が一人か二人くらいいて点でやっています。大学全体の面でやっていません。そういった意味で根本的な変化が全くできていないと思います。
 それで,先ほど地域開発が非常に重要だというお話があって,これはもうかなり深刻な問題になっているとおっしゃっていましたが,私もそのとおりだと思いますが,その中で,大学の地域連携に対する役割は,先端技術センターとか先端技術クラスターを作るというところばかりに目が行って,それができるところは非常に限られているわけです。しかもこれは投資が要りますし,その回収には相当時間が掛かります。小さい規模でこれをやれば,先端技術というのは確率的な問題ですから,もうからないところがいっぱい出てくるわけです。それはそれで必要ですけれども,私はもっと大学ができることはあると思います。それは特に地域の拠点みたいなところを形成することです。先ほど,一つの方法は地域拠点みたいなものを作るということでしたけれども,大学というのは地域拠点を作る意味では非常に大きな役割を果たすことはできると思います。そういう意味で,もう少し広い意味で,特に国立大学については自分のアイデンティティーを考え直すということは非常に重要であると思います。
 以上です。
【永田部会長】  石田委員,どうぞ。
【石田委員】  いろいろあったのであれですけれども,最後のところで言うと,やはりミッションの再定義等々あった中で,それぞれの大学が自分のところのアイデンティティーを非常に強く意識し始めたということはもう事実だと思っています。そうした中で,いわゆる従来でしたら金子委員の言葉でいえば,上から目線ではなくて,共同で作り上げるというような様々な観点での動きは,いろいろな国立大学でも出てきているとは思っています。
【永田部会長】 おそらく、国立大学は全て金子委員がおっしゃるような努力を始めていると思います。石田委員は,そういう努力も含めた上で2040年のことを今仰っているのだと思います。ミッション再定義を見ても,例えば琉球大学の医学では島嶼部分の巡回医療を推進するなどと明確に書いて,実際に始めているわけです。もちろん、それぞれの大学でその進捗に違いはあるかもしれませんけれども,かなり地域に根差したいろいろな教育研究を進めているはずです。それでも、2040年を見据えた場合、学生の質的あるいは量的転換を考えざるを得ない、という厳しい認識に基づいた案だと思っています。これは議論する問題ではなくて,現状をこれからまたどなたかから御発表いただければと思います。
 次回以降も、例えば,大規模私立大学であるとか小規模私立大学など、いろいろなお立場からプレゼンをしていただくことになっています。したがって、本日のところは、とある地方国立大学,特色のある公立大学,それから高等専門学校全体のことだった、と御理解いただきたいと思います。
 吉岡委員,どうぞ。
【永田部会長】 多分国立大学は全てもうその努力を始めているし,一定のことをやっていると思います。その上で,そういう努力も含めた上で2040年のことを今言っていらっしゃるんだと思うのです。ミッション再定義を見ても,例えば琉球大学の医学というのは島嶼部分の巡回医療をやるんだとか明確に書いて,しかも明確に始めているわけですね。もちろんそれぞれの大学でその進捗度はあるかもしれませんけれども,かなり地域に根差したいろいろな教育研究をやっていらっしゃるようになっているので,それでも多分苦しい人の質的転換あるいは量的転換を考えなければいけないという案だと思っています。これは議論する問題ではなくて,現状をこれからまたどなたかから御発表いただければと思います。
 小杉委員,吉岡委員と最後にいきますけれども,この先まだ六,七人にプレゼンを頼んでおりまして,大型私立であるとか小型私立とかいろいろなところからプレゼンを次回以降もしていただくことになっているので,ここはとある地方国立大学ということでしたし,特色のある公立大学,それから高等専門学校全体のことだったというふうに御理解いただきたいと。
 それでは,吉岡委員,小杉委員の順番でお願いします。
【吉岡委員】  どなたに対する質問というわけではないのですけれども,先ほどからの議論を伺っていて,一つは,教育の質や入学者の質というときの質というのが何を指しているのかをめぐって何となくぐるぐる回っているような感じがいたしました。ここで質とは何かということについての概念論争をするつもりは全くないのですけれども,ただ,例えば18歳人口が減ってくると入学者の質が下がってくるというような話の場合というのは,先ほどの有信委員のお話がありましたけれども,やはりある種の偏差値的な思考から逃れられていないと思います。余りこういう言い方はしたくないのですが,例えば私が勤めていた大学は,いわゆる受験ランキングで、その上の大学との間で当然ある種の競争関係にありますけれども,勝てない。つまり,受験生は、上の大学とうちの大学と合格したら上の大学の方に行くという行動パターンを基本的にとるわけですね。こういう状況の中で,規模が変わることによって質が低くなるというのであれば,現在でも、うちの大学はいわゆるランキングが上の大学よりも明らかに質の低い学生を教育するということをやってきたということになります。そのためのノウハウをどうやって作ってきたのかということがすごく重要で,4年間で,うちの大学に来たけれども,いわゆるランキングが上の大学よりもうちの大学で勉強したらこんなことができるということを教え込み,自信を持たせ,勉強がおもしろいというふうに思わせて外に出していくというシステムをどうやって作るかということを努力してきたわけです。その部分がやはりすごく重要だろうと思います。ですから,特に入学者の質を考えたときに、質ということで何を考えるのかということが重要だろうということ。それが一つです。
 それからもう一点は,大学に入ってくる学生の質が下がってきているというのは実感としてはあるのですが,これは人口が減っているかどうかということとはちょっと別の問題があるということだと思います。大学にとって入ってくる学生に基礎的な学力がなく手間が掛かるということが大変な問題である以上に,社会にとってものすごく大変な問題なので,これはもう大学の問題というよりも,高校までの教育をどういうふうに組み立てながら大学と接続するかということだろう思うのです。その意味では,今日伺っていてすごくおもしろかったのは,やはり高等専門学校のシステムです。高校,15歳から教育していくことはあるいは実用的な工学に限っているのでやれているのかもしれませんけれども,やはり15歳から教育を組み立てて,基礎的なものをさらに上の段階につなげていくシステムとしては,文系とか理系とかを問わずきちんと考えなければならないことだろうと思いました。
 もう一点,先ほど益戸委員が,やはり大学では真っ当な人間を作るということが大事だということをおっしゃっていて,私はそのとおりだと思いますけれども,今すごく大きなことは,ある程度偏差値で換算できるような知的なスキルの問題と,それからあえて言えば倫理性の問題みたいなものが乖離してしまった。やはり大学を卒業したときには,政治家はきちんとした政治倫理を持ち,企業人は企業人としての職業倫理をきちんと持ち,社会人は社会人としての倫理を持ち,官僚は官僚としての、大学人は大学人としての倫理を持てるような人間を育てるというシステムを,専門的な知識の組み立てと併せて作っていかなければならない。特にどなたに対する質問というわけではないですけれども,議論がその辺をぐるぐる回っているなと思ったので,発言いたしました。
【永田部会長】  ありがとうございます。小杉委員、どうぞ。
【小杉委員】  私もどなたへの質問とは言いにくいので発言しにくかったのですけれども,三つ感じたことがあります。
 一つは社会人に対する教育という話で,石田委員の御指摘のとおり,やはりこれは適切な短期プログラムの開発が必要ですし,あるいは夜間とか休日とか,あるいはMOOCsとかそういう形で届けるという仕組みをどんどん開発しなければいけないと思っているます。その割になかなか進まないのは,何かこういうことをやると経営上かなり課題を抱えてしまうことや,夜間に教員を働かせなければならないなどの経営上の課題があるからなかなか進まないというのもあると思って,それがもしハードルなら,それを下げるような,そういう仕組みを何か作らないと,大学側から動かすというのができないと思ったというのが一つ言いたかったことです。
 それから二つ目は,これは益戸委員が最初にあった多様性という話なのですけれども,私は高校とかをよく回っていますが,そこで今問題なのは,やはり発達障害とか性同一性障害とか,そういう障害に対する対応をしなければならないケースが多くなった。それはもともとそういう人が昔はいなかったが今いるようになったのかというわけではなくて,人の多様性をそのまま認めるという社会に変わってきたということだと思うのです。そういう意味では,これから多様性への対応というのは,偏差値レベルで云々というよりは,もっと深いところで社会全体が多様性をもっと容認する社会になってきた,あるいは企業の中においてもその多様性をうまく生かすことの方を重視するようになった,そういう社会的な大きな変化が生まれているところだと思いますので,そういう意味で大学における多様性への対応というのはもう少し考えなければいけないと思いました。これはほとんど感想です。
 それから三つ目は本当に感想ですが,高等専門学校のモデルカリキュラムを見ていて, 10年ぐらい前にやったときの記憶で,こういうことをモデルとして考えていたんだ,そのときはそう考えていて,こうしてきちんと到達目標を明らかにして,そのレベルに対して教育がどういうところで何をやるかというこの到達レベルを明示する,こういう方向性というのはあのときに明らかに出していたのです。そこで,たしか日本学術会議に参照基準を作ってもらうというプロセスがあったのですが,あの参照基準が出来たという話は聞いたような気がするのですが,それは一体どうなったのかなと思いまして,これはほとんど独り言です。この高等専門学校型というのはやはり普遍的な在り方なので,これをもっと追求していくというところはどこに行ってしまったのかなと。
【永田部会長】  どうもありがとうございます。高等専門学校は日本独特の極めてよい人材養成システムだと認識しております。その質を担保するために、今後どのような努力が必要であるかという大きな問題がありますが,それ自身の存在意義は十分あると思います。
本日は,いろいろ御意見を頂きましたけれども,一つ一つの大学に2040年の自らの大学の将来像をどう考えますかと問えば,それぞれが責任を持って,存続を懸けて御発表されるはずです。しかし、現在それを全体規模の問題として議論しているので,嚙み合わない部分が生じることがあります。しかし,我々としては2040年の我が国の80万人の18歳をどうするか、という観点から考えなければいけないので、やむを得ないのではないかと思います。
 ほかにございますでしょうか。先ほど申し上げたように,このほか,幾つかの私学関係の委員から,固有の私学というよりは私学全体の問題としての御発表も含めて計画,準備をしていただいております。これらは将来像の議論の骨格でありまして,我が国の2040年における高等教育の規模と質はどうあるべきか、という結論に最終的に帰結することを狙いとしています。委員の方と最初に共有した認識の中で,我が国の高等教育機関全体の進学率は変わらないだろう、というものがあります。さらに、新たにできる職業教育に特化した専門職大学を除いては、現状の高等教育機関の各種別の進学率もこのまま大きく変わらないと思います。その上で,それぞれの教学や運営に関して,あるいは教育の質保証についての最大限の努力を加味した上で,我が国における高等教育の規模を考えなければいけません。高等教育機関への進学率が95%になれば、2040年に向けて特段の対策をする必要はありませんが、進学率が今のまま変わらなければどのような問題が起こるのか,皆さんがそういうシミュレーションをされているかどうかが重要です。ある大学では質を担保できても,800近い大学の全てにおいて質を担保できるかどうか、という問題はここで議論しなければならない、ということです。
小松文部科学審議官、どうぞ。
【小松文部科学審議官】  今日はいろいろとありがとうございました。まだヒアリングも続くということですから,それを含めて御議論を深めていただけばありがたいと思いますが,事務方としてちょっと気が付くことを申し上げます。
 一つは,ここでの深めていただいている議論については,ほかの中央教育審議会の初等中等教育分科会や生涯学習分科会にも諮問がございます。こういうところでの教育政策との整合性の中で,さらに解決方法なり連携したりよりよい方法が見つかる面もあるかもしれないと感じました。質の問題についても,初等中等教育で今非常に大きな改革が行われております。これはもともと諮問のときからOECDやUNESCOやインターナショナル・バカロレアなどの動向を見て,どう潮流に合わせるかというようなことになっておりますから,このあたりは初等中等教育全体でも変わってくるところがあるだろうと思います。高等教育がそれをどう活用するかとか,対応するかとかいうことによってさらに深まりがあるだろうと考えられます。
 それから,今日はリソースの調達や確保ということも御議論がありました。大学間連携,アンブレラ,あと海外に広がるというのも質だけではなくてリソースの面もあろうかと思いますし,学費や奨学金の関係もございました。こういった点も政府の政策パッケージが別途動いておりますので,うまく組み合わせて御議論に供することができればと思っております。人口の問題もいろいろ御議論あろうかと思います。あと,途中で出ましたが,よき市民を育てるという使命と,最高学府として最終的な知的な最高峰を目指すという使命はありますけれども,これらは必ずしもばらばらのことではなくて,大学制度という意味では一貫したものがあると思います。学校教育法を教育基本法に合わせて戦後60年ぶりに大改正をいたしましたときでも,世界的に大学というのは進学率が増えているわけですが,それとの整合性をどういうふうに考えられるかということが議論されております。したがって,学校教育法の目的等については,そういった点で諸外国にも信用を得るようなものでなければならないと思います。ただ,その中で私どもの社会も,今日御議論ありましたように非常に動いておりますので,どう対応するかということが必要なのかと考えました。このあたりはまた事務方としても,今日の御議論をさらに深めていただくのに必要な材料の整理,整備に努めたいと思います。
 以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。とりわけて、初等中等教育における改革との関連は大変重要な問題だと思います。
 それでは,次回以降について事務方から御説明をして終わりにします。
【石橋高等教育政策室長】  御議論ありがとうございました。次回の将来構想部会については,1週間後,5月18日の金曜日,同じ時間帯,10時から12時で,ここの第二講堂を予定しておりますので,よろしくお願いいたします。あと,5月25日を予備日としておりましたけれども,先ほど部会長からありましたように,委員の方の御発表を頂く会として開催したいと思っておりますので,予備日ではなく開催ということで御承知おきいただければと思っております。
 資料の御郵送については,いつもどおりお席に残していただければと思います。ありがとうございました。
【永田部会長】  どうもありがとうございました。では,これでお開きということにさせていただきます。


── 了 ──

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