将来構想部会(第9期~)(第15回) 議事録

1.日時

平成30年4月17日(火曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省東館13階 13F1~3会議室

3.議題

  1. 我が国の高等教育に関する将来構想について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)日比谷潤子副部会長
(委員)村田治委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,石田朋靖,金子元久,小杉礼子,小林雅之,佐藤東洋士,鈴木典比古,伹野茂,千葉茂,福田益和,古沢由紀子,益戸正樹,両角亜希子,吉岡知哉の各臨時委員

文部科学省

(事務局)戸谷事務次官,小松文部科学審議官,伊藤文部科学審議官,義本高等教育局長,村田私学部長,藤野サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官,瀧本大臣官房審議官(高等教育局担当),信濃大臣官房審議官(高等教育局担当),下間大臣官房審議官(初等中等教育局担当),松尾大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当),蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,小山国立大学法人支援課長,角田私学行政課長,丸山私学助成課長,森友主任大学改革官,石橋高等教育政策室長,平野大学改革推進室長 他

オブザーバー

東京理科大学山本誠教授

5.議事録


(1) 我が国の高等教育に関する将来構想について,資料1-1,資料1-2に基づき事務局から説明があり,資料1-3に基づき,東京理科大学山本誠教授から説明があった。その後意見交換が行われた。
【永田部会長】  所定の時間になりました。第15回の将来構想部会を始めさせていただきます。
前回の大学分科会との合同会議では,大学の強みや特徴の強化ということで,その先にある緩い連携,強い連携,それから統合といったことについて議論をしました。それから,法人のガバナンス強化について,特に学外理事の役割をどう考えるかという観点から,様々な御意見が出されました。学外理事の性格に合った役割があるのではないか,ということを議論しました。
本日の一つ目の議題は,制度・教育改革ワーキンググループで学修の質保証について議論が進んでいます。その審議の論点を整理していますので,後ほど,事務局の方から御紹介します。それに加えて,本日は東京理科大学の山本先生から,学修成果の可視化について御発表を頂いて,議論の参考にしたいと考えております。
二つ目の議題は,前回の強みの議論で皆様から頂いた御意見を入れて,新たに事務局で修正をいたしました。その内容について,もう一度御議論いただきたいと考えております。
それでは,事務局から,本日の配布資料の説明,それから本日から新しい委員をお迎えしましたので,その御紹介と御挨拶を続けてお願いしたいと思います。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。まず,配布資料の確認をさせていただきます。議事次第を御覧いただきまして,不足がございましたら,事務局までお申し付けいただければと思います。
 委員の交代について御紹介させていただきます。4月17日付で,前野一夫委員の御退任に伴いまして,独立行政法人国立高等専門学校機構理事,函館工業高等専門学校校長伹野茂委員に御就任いただきましたので,御紹介します。
【伹野委員】  伹野でございます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
【永田部会長】  伹野委員,どうぞよろしくお願いします。
 それでは議事を始めさせていただきます。最初は制度・教育改革ワーキンググループで御議論いただいている内容について,事務局から説明いただきます。次に,東京理科大学から,前教育担当副学長でいらっしゃいます山本先生から,学修成果の可視化に関する御発表を頂きます。
 最初に,事務局から資料1-1及び1-2を用いて御説明をお願いいたします。
【平野大学改革推進室長】  失礼いたします。資料の1-1,1-2を使って御説明させていただきます。
 まず,資料1-1でございますが,平成30年3月26日のワーキングで使用した資料をそのまま配布してございます。机上配布資料で,こちらの部会でまとめていただいている論点整理がございます。この論点整理の中にワーキンググループの論点整理というものがございます。個別事項で7点,教育課程の改善からリカレント教育まで挙げられているわけでございます。このうちの一つ目,教育課程の改善あるいは指導方法の改善による学修の質保証,二つ目,学修成果の可視化と情報公開,この二つの部分につきましてある程度包括的な方向性をお示しするということで御議論いただいたということについて御理解賜ればと思います。
 資料1-1を御説明させていただきます。教学マネジメント確立の必要性についてです。2ページ目,これまでの議論の整理という部分を御覧いただきたいと思います。これまでワーキンググループで御議論いただいた内容をこの枠囲みで囲んであるわけでございます。例えば,シラバス・GPAについて,学修成果の可視化について,そして年明けには,情報公開について,このようなことについて御議論いただきました。その中で,シラバス・GPA等もシラバスの記載に向けて一定の指針を示すということ,GPAについても活用の好事例について示すということ,また,学修成果の可視化についても様々なことを国として示すべきではないか,このようなことを提案させていただいたわけでございます。
 1ページに戻っていただきまして,これまでのワーキングではこのような個別具体的な内容について議論いただいたわけでございますが,それを包括する全体的な概念というものがあるわけでございます。それを言いますれば,教学マネジメントの確立ということでございます。学生が大学での学修を通じて様々な知識や能力を修得して,主体的に学び,考える力を身に付けて社会で活躍することについては,これは社会側の視点のみならず,学生側の視点からも重要であるということが述べられてございます。
 二つ目の丸でございますが,このもともとの目的については,学士課程教育において単位制度の趣旨を踏まえた教育の実質化を図ること,学生の主体的な学修を促すような質的転換を図るためには,個々の教育改革に関する手法を効果的に活用しつつ,各大学が学長のリーダーシップの下で三つの方針に基づく体系的かつ組織的な大学教育というものを,学位を与える課程(プログラム)共通の考え方や尺度,いわゆるアセスメント・ポリシーを踏まえて,適切なPDCAサイクル,このようなものを通じた不断の改善に取り組みつつ実施する,これを教学マネジメントと称してございます。こういったものを確立する必要があるというところが問題意識の淵源(えんげん)でございます。
 特に三つ目,教学マネジメントというものを確立するには,学生がどのような学修成果を上げているのかにつきまして的確に把握・測定して,これを活用していくということが不可欠であります。また,把握した情報については,地域や大学の外部の声について意識いたしまして,積極的に説明責任を果たしていくという観点からも必要とされているわけであります。このような中で,先ほど申し上げましたように,このワーキンググループの議論におきましては,様々なものについて示すということを含めまして議論をされてきたわけでございます。
 ただ,一番下の丸でございますけれども,実は平成3年の大学設置基準の大綱化以降,かなり取組が進んでいるということもございます。一方で,過去の答申におきましても,様々な観点からこのような大学教育改革に関する内容,手法というものには言及して国としても政策的に進めてきたという背景はあるわけでございます。一方で,御指摘といたしましては,取り組んでいる大学とそうではない大学が二極化しているのではないかというものもございます。また,過去の答申,内容,手法といったものについては,それを丹念に追っていただくとかなりの内容が盛り込まれているわけでございます。一方で,時々の答申にフォーカスが当てられた上で記述をされているということがございます。必ずしも教学マネジメントという観点から一元的に様々なものが位置付けられて説明されていたわけではないというわけであります。また,過去の答申に比べましても,現在の教育方法の取り組みについては,相当進んできているという現状があるわけでございます。
 このような観点から,2ページ目でございますが,大学が本来持っている組織としての力を十分発揮できるように,教育活動の不断の改善を図るための素材というものを,国として教学マネジメントという観点で,一元的にお示ししていく必要があるのではないかということでございます。
 4ページ目を御覧ください。ここからが論点でございます。教学マネジメントに係る指針の整備ということでございます。これまでの各答申や論点整理を踏まえてまいりますと,今後,各大学の教学面での改善・改革に係る取組というものを促していくためには,必要な制度改正でございます。それに加えて,各大学における取組に際してどのような点に留意してどのような点から自立を図っていくべきか,これを教学マネジメントという観点から網羅的にまとめて,指針を大学分科会の下で作成して,各大学へ一括して示していく必要があるのではないかということでございます。
 教学マネジメントに関する指針にどのようなことを記載するかということの考えられる例の一つを,下の総論,各論というものに挙げさせていただいております。これが年末にまとめていただいた論点整理の1と2の内容というものを一定取り込んでいる形になっているわけでございます。まず総論として,プログラムとしての学士課程教育,三つの方針の重要性,また,全学的な教学マネジメントの確立,このようなことを明確に織り込んでいく必要があるだろう。具体的に,カリキュラムの構造化を含む体系的な教育課程の構築,アセスメント・ポリシーを踏まえた内部質保証体制やPDCAサイクルの確立,そのような点検を踏まえた適切な資源配分の在り方,このような総論について御理解をいただけるような工夫をした上で各論という部分に記載してございます。教育内容・教育方法の改善,また教職員の資質の向上というような事項,4ページ目右の教学IR体制の確立,情報公開,個別の事項についての御説明は省略いたします。このような内容について各論を位置付けていく,総論に照らして大学の教学マネジメントの確立という一元的な目的から活かしていただけるような内容をお示ししていただく必要があるのではないかということでございます。
 5ページ目でございます。これらの内容については,各大学で一律に取り組まれるものが望ましいというものがある一方で,すぐには各大学で一律に取り組むことが難しいものも含まれる,このようなことが考えられるわけであります。ですので,単にあるべき姿を提示するだけではなくて,各大学の取組の実態というものも十分踏まえて提示をしていく必要があると考えております。また,教学マネジメントに関する指針というものに関しましては,教学面での改革・改善という取組を進めていく上での一つのよりどころということで,各大学関係者に御覧いただけるものというものを考えていくわけでございます。けれども,教学マネジメントについては,大学が自らの責任の下,取り組んでいく,大学の事情に合致した形で取り組んでいただくものであります。この指針が各大学に特定の取り組みを強制するという位置付けではないと考えます。また,これを受け止めていただく各大学の側も,他の大学の取組を模倣するとか,単にマネジメント指針というものの取組をそのまま取り入れようとする,といったことは大学にふさわしい主体性を発揮したものとは言えないのではないかと考えます。すなわち,各大学が創意工夫を行って学士課程の質的転換に向けてどのような工夫を踏まえて取り入れていくのか,こういったことを考えていただくことが必要だというコンセプトも併せて周知をする必要があると思ってございます。
 また,実際に各大学にとって使い勝手がよいようにするために,各大学の好事例も併せて周知を図るといったことも必要であると思ってございます。
 教学マネジメントに係る指針については,大学評価に携わる者が評価に当たって一定活用していくこととか,また,大学に係る様々な関係者が取組の充実を図るためのツールの一つとして機能することも将来的には期待されると思ってございます。
 そのような観点から,こういった事項の一部を将来的には認証評価や設置審査の業務に携わる者が参照していくことが期待されるということがあります。そのようなものを,今後は大学分科会の中において別の位置付けを設けてと議論していただくということが必要ではないかと考えているということでございます。
 5ページ,次のテーマでございます。マネジメント指針の次は情報公開,学修成果の可視化でございます。ワーキングで御議論いただいているわけでございますが,三つの方針がアセスメント・ポリシー等に照らして達成されているかどうかを検証するという観点からは,各大学の取組,取組に基づく学修成果を可視化する,学内のみならず学外からも見られるようにすることが必要ではないかということでございます。
 6ページ目,何を法令で義務付けて,どのようなものをいわゆるガイドラインベースで推奨すべきものかという部分につきまして整理をさせていただいたものでございます。
 6ページ目,学修成果を可視化して,またその教育研究活動の適切かつ効果的な運用を図るためには,まず現行の法令に基づいて大学として把握することが求められているもの,全ての大学において十分把握が可能であって,把握・活用することに意義があると認められる情報については,まずは把握をしてくださいということを,これは義務付けるということでございます。法令上,予定されている活動,全ての大学で行われる活動は,これは義務でもよいのではないかということでございます。例えば把握すべき情報は,単位の取得状況,学位の取得状況,成績,進路の決定状況等,卒業後の状況,学修時間,学生の成長実感,満足度,学生の学修に対する意欲,このようなものについては個々の学生について把握をしていただくということが必要ではないか。一方で,満足度,成長実感,意欲という部分については,これはただ把握しなさいといっても何を把握すればいいか分からないということもあると思います。相当具体的な内容については,先ほどの指針という中でも位置付けを検討していく必要があるのではないかと思います。
  6ページ目,二つ目の丸で,情報公開についてでございます。先ほど申し上げた把握,活用ということだけではなく,社会に対する説明責任を確保する観点から,各大学においてこれらの情報をまとめるということ,それを新たに情報公開するということも考えていいのではないか。また,更に学修成果の可視化のほかに,大学教育の質に関する情報として,入学者選抜の状況から修業年限内に卒業する学生の割合,留年率,中途退学率,教員1人当たりの学生数等,このようなことについても新たに情報公開を義務付けることが考えられるのではないかということでございます。
 各大学において,単位をどれぐらい平均的に取っているのかとか,学位をどれぐらいの学生が取得しているのか,というところは全体的な情報公表になじむと思います。例えば,三つ目の成績という部分は,望ましい項目としてGPA活用状況等がありますので,成績は全体的な状況を一口に公表する対象ではないかもしれません。こちらは精査をしていく必要があると思いますけれども,基本的には成績以外の部分はある程度全体的な状況が公表できるのではないかと思っているわけでございます。
 6ページの一番下でございます。ここからはいわゆる義務付けではなくて推奨という項目でございます。各大学の自主的な活動の中で把握・活用することに意義があると思われる情報というものについては,これは一律に把握を義務付けることは困難でありますけれども,各大学の参考になるように把握や活用の在り方について一定の指針というものを示していくということが考えられるのではないかということでございます。
 7ページへ移っていただきまして,例えば項目としては,様々各大学で取り組まれているアセスメント・テストの結果というもの,TOEICやTOEFL等の学外試験のスコアといったもの,資格取得や受賞,表彰歴の状況,卒業論文や卒業研究の水準,留学の状況,卒業生に対する評価,このようなものは個々の学生について把握をしていく,それを教学の改善に生かしていくといったことが考えられるのではないか。このようなことについては望ましいものとして一定の在り方というものを今後検討していくということが必要ではないかということでございます。
 7ページの次の丸,公表することによってより社会への説明責任の確保がより高い水準で実現できることから,その全体的な状況というものの公表の在り方についても併せて考えていくことができるのではないかと考えています。また,その他の情報として,ナンバリングの実施状況,履修系統図(カリキュラム・マップ,カリキュラム・ツリー)の活用状況,GPAの活用状況,IRの整備状況,教員の業績評価の状況についても公表ということが考えられるのではないかということでございます。成績そのものの全体的な状況は公表の義務付けは難しいという話と併せて,一方でGPAついては,一定その姿というものを学外に公表していくということも考えられるのではないかということでございます。
 ただ,御覧いただいて既にお気付きかと思いますが,7ページの下から三つ目の丸,法令での義務付けが考えられる情報の定義とか数字の算出方法についても,かなり慎重に大学の実態というものを踏まえて示していく必要があるのではないかと考えています。特に学生の成長実感,満足度や学修に対する意欲というものについては,様々な在り方が考えられると思います。学生が単なるいわゆる顧客で顧客満足度といったような捉え方をされる向きもあるわけでありますけれども,学生というものは,大学において教育研究活動の利益というものを享受するわけであります。一方で学生自身も参画者という立場も有するというような地位があるわけです。その観点から,各大学で定める三つの方針に照らして調査をする,満足度や成長実感,意欲というものを測っていく,このようなことが必要ではないかということでございます。
 また,先々はこれをどうやって全国的に収集整理して比較できるような機能を確保していくのかも考えていく必要があるのではないかということを3月26日のワーキングで説明をさせていただきました。
 資料1-2でございます。この間のワーキングで,どのような御意見が出たのかということを御紹介させていただきます。教学マネジメントに関する指針の整備については,これまで大学の自主的な努力に任せていたところについて,一定の基準を持って指標を作るという提案でございます。このままでいいのかという観点から必要な議論ではないかということでございます。
 二つ目の丸,大学が自主的,自覚的に取り組めるようにする,大学自体が自覚をして自ら改革を実現していけるようにすることが重要である。
 三つ目,大学の一番の目的である教員の質向上という部分にはマネジメント改革,ガバナンス改革,リーダーシップといった様々な大学の要素が集約されてくるので,そういった全体構造というものを理解させる必要があるのではないかということでございます。
 四つ目,各指標の意味について各教員が理解する必要があるのではないかということでございます。
 五つ目,大学教員間に,教学マネジメント改革に関する取組についての共通認識がないので,どのように前向きな意識を引き出していくのかということが課題ではないかということでございます。
 下から三つ目でございますが,これは学士課程ということが念頭にあるものの,短期大学など学士課程以外の課程の在り方というものも踏まえる必要があるのではないかということでございます。
 下から二つ目,学術会議の参照基準が活用されていないということが現状としてある中で,どのようにこのようなものを活用するのかという視点も必要ではないかといことでございます。
 一番下の部分,これは教学マネジメント指針の例として挙げさせていただいていた柱立ての部分でございます。ここの整理の仕方については,今後まだ工夫する必要があるのではないか,このような御意見でございます。
 2枚目でございます。学修成果の可視化というものについては,大学教育全体の中でのワン・オブ・ゼムの論点であるということであるので,その点の全体構造というものは見るべきである。また,数量化や定量化というものが直ちに難しいという部分がありますので,このような点についても十分考慮すべきではないか。
 二つ目でございますが,義務化してしまうと,大学が適応行動をとってしまって,形骸化した取組だけが残ってしまはないかとの御意見がございました。何を義務化して何を推奨するのかというところについては議論が必要ではないかということでございます。
 三つ目,学修成果の把握を義務付ける項目として成長実感,満足度,意欲,この部分については主観的な要素というものを含むので,どのような形でやるのかということを考えないと,対応策をとられやすいし,混乱というのも起こりかねないということでございます。
 下から二つ目,満足度が高く結果が出るけれども,成長実感というものはかなり低い結果が出るというようなケースがあります。このようなあたりも今後いわゆる教学マネジメントの指針,ガイドラインを考える際には考えて議論するべきだろうということでございます。
 最後の丸ですが,留年率,中途退学率等の情報公開の項目については,大学院の展開ということも考えると,長期在学すると卒業率に影響が出てくるということもあるわけであります。また,社会人学生の比率等も母数に影響してくるということもあると御指摘がございました。恐らく大学院に限らず,全ての事項というものに関してその数字が意味するもののバックグラウンドを意識した上で議論する必要があるという御指摘を頂いたところでございます。
 また,全般として大学教員の意識を変えるようなパッション,情熱を持った形で提示をしてほしいという御指摘を頂いております。報告は以上でございます。
【永田部会長】  今説明があった内容は二つに分かれています。一つは,学修の質保証の視点であり,それは様々な御議論を行って,それを担保するためにはどういう方法があるのかが重要なポイントである,というのが一つです。もう一つは,それを実現するためのシステムです。可視化するときに,義務化するあるいは義務化しないという問題がありました。けれども,それ以上に学修システムそのもの,プログラム化という問題も含めて,またそれを実現させるために各大学が学内でどういうマネジメントをとるか,この2点です。議論が進んでいて,それに関わる論点が出ているということです。
 さらに,意見を言わせていただくと,先ほどの修業年限の話で,もし4年ではなくて5年を推奨している学科があったとすれば,それはそれでよいと私は思います。つまり,例えば1年間留学することを必須にしないけれども,行ってほしいと推奨しているのであれば,留年は当たり前ということが概念としてあるわけです。そういう場合は修業年限を超えることがマイナスではなくて,その大学の考え方,その学科の考え方として,是とするということです。要は,各大学が,あるいは各学部,各学科がどういう人材をどうやって育てるかというものを基調として,いかに教員全員が情熱を持って進められるものを作れるか,ということが重要だと思います。
 そこで,具体的に事例をお示しして議論を活発化させたいという意味で,東京理科大学の前教育担当副学長でいらっしゃいます山本先生に御発表を頂いて,議論の参考にさせていただきたいと思います。本日は山本先生,お忙しい中おいでいただきましてまことにありがとうございます。それでは御発表の方,よろしくお願いいたします。
【山本東京理科大学教授】
ただいま御紹介いただきました東京理科大学の山本でございます。
本日は,このような貴重な機会を与えていただきまして,どうもありがとうございます。改革途上ではございますが,本学の取組が少しでもお役に立てればと思います。
 では,資料1-3に基づきまして,御説明させていただきます。
2ページ目で示しているのは,本学における教育改革に係る取組の概要でございます。本学は,教育の質の保証・向上のためのサイクルの中に,2つの取り組み(「学修ポートフォリオシステムによる学修成果の可視化」,「授業収録配信システムによるアクティブ・ラーニングの促進」)を組み入れており,これらを適切に連携させることで,「学生自身による学修のPDCAサイクル」を確立し,学生の学び全体をより質を伴うものに変革していくことを目指しております。
 なぜ,このようなことを考えたのかと言いますと,本学は明治14年に創立以来,実力主義を標ぼうしており,関門制度という形で,指定科目の単位を取得しないと進級させない,ということを続けております。要するに,「お尻をたたいて学生にやれやれ,やらなければ留年させるぞ」という教育をずっと続けているわけです。一方で,このような教育は,学生自身が,次は何を学ぶのか,どのように取り組むのか等,自分で考えなくなってしまうことが危惧されます。よって,これを補完する意味で本システムを導入し,学生が学んでいることを,自ら認識し,振り返り,次につなげてもらうことができるようになってほしいという思いを持っております。
 3ページ目では,学修のPDCAサイクルについて御説明いたします。まずPlanにおいて,学生が開講科目全体を見通して年度の履修計画を立て,Doにおいて,履修申告した内容に基づき授業科目を受講し,Checkにおいて,「学修ポートフォリオシステム」を使い自ら学修した内容や成果を確認して振り返ってもらい,Actionにおいて,その振り返りや確認を基に次の授業計画,履修計画につなげてもらうことを示しております。
 4ページ目では,なぜ今,「学修ポートフォリオシステム」が必要なのかということについて,御説明いたします。それは,学生に対し,大学生活を通して,勉強しなくてはならない理由を気付かせることが一番大切だと考えているからです。本システムを使い,半期ごと,年度ごとに自身の学修の進捗を確認してもらい,卒業時に,量的なこと(単位数)だけではなく,質的なこと(何を目的に,何を学び,何が身についたか等)を明確にしてもらうことが目標です。
 5ページ目では,「学修ポートフォリオシステム」の具体的な意義等について,御説明いたします。PDCAサイクルの中のCheckとして,「学修ポートフォリオシステム(学修ポートフォリオ及びルーブリック)」を導入しておりますが,まず,学生自身が学びのプロセスや成果物を示す資料等を蓄積した学修ポートフォリオを,継続的かつ定期的に振り返ることを通じて,学修の到達度を確認し,取り組むべき課題を発見することができるようになります。また,学修の評価を行う際に用いる基準表(ルーブリック)により,学生は,「どのような項目を,どこまで学修すれば,どのようなことができるようになるのか」という指標を分かりやすく明示しています。
 6ページ目では,「ルーブリック」について,御説明いたします。学修の到達目標として,ディプロマ・ポリシーがあるわけですが,どうしてもディプロマ・ポリシーは大括(くく)りになってしまい,学生が読んでも分かりづらいため,これを分かりやすく分解し,具体的に,入学から卒業までの期間に学修・習得することが期待される能力(評価項目)と達成度を記した一覧表が,「ルーブリック」となるわけです。
 7ページ目では,本学理工学部土木工学科の「ルーブリック」及び「各評価軸と授業科目の対応表」の例を載せております。「ルーブリック」の縦軸を見ていただきますと,評価項目として(1)基礎学力,(2)専門分野の学力,(3)実務課題の理解,(4)技術者倫理があり,これに対して,横軸を見ていただきますと,0から3までを0.5刻みで達成レベル評価を示しています。また,「各評価軸と授業科目との対応表」を見ていただきますと,評価項目ごとに,これを構成する科目があり,更に一番右端に評価項目への寄与度を定めております。つまり,各科目の単位を習得することで,評価項目に対して1ポイントが寄与する,という積み上げ式にとなっております。この表では,たまたま寄与度は全て1ポイントとなっておりますが,例えば0.5等の設定も可能です。このような形式とすることで,学生は,どの科目がどの評価項目に対応しており,どのような積み上げとなっているのか等の構成を理解できるようになっております。
 8ページ目では,まとめとして,これまで御説明してきたことが,どのような形で表示されるかについて,御説明いたします。記載のとおり,左側に自己評価レーダーチャート,右側に客観評価レーダーチャートが表示されます。学生は,学科固有の「ルーブリック」を用いた自己評価による自己評価レーダーチャートと,取得した単位,成績等の履修状況に応じて自動的にシステム上で計算される客観評価レーダーチャートを比較し,何を学び,何が身につき,何が身についていないか等を確認することができるようになります。次の9ページ目を見ていただきますと,1年から4年生という形で学年が進行することで,最終的に,卒業する頃にはきれいな六角形になる,というわけです。
 10ページ目では,本システムを導入した実績,効果等を示しております。2015年度1年生より導入しておりますが,まだまだ利用率が低い状況です。学年が上がってくると振り返り等しなくなる傾向があります。残念ながら,学生に本システムの有効性,意義等を理解しきれてもらえていない,というのが現状です。本システムを使うことで,何ができるのか,将来何につながるのか等をより明確にし,学生に理解してもらうことで,利用実績をあげるとともに,具体の効果検証等を行うことが喫緊の課題であると考えています。
 以上がポートフォリオシステムについての説明です。
 11ページ目以降では,「授業収録配信システム」についてとなりますが,時間の都合もありますので,駆け足で御報告させていただきます。本システムは,授業内容をデジタルコンテンツ化することで,LETUS(本学独自のLMS)を経由し,学生は,「いつでも」,「どこでも」,「繰り返し」,「理解できるまで」学修することができるシステムであり,これにより,学生に主体的な学びを促すことができるようになります。
 12ページ目では,事前学修に活用する予習用コンテンツの事例,13ページ目では,復習用コンテンツの事例,14ページ目では,授業の補助教材用コンテンツとしての事例を載せております。
15ページ目では,本システムを導入した実績,効果等を示しております。こちらについては,確実に利用実績を残しておりますが,「学修ポートフォリオシステム」同様,具体の効果検証を行うことが喫緊の課題であると考えています。
 最後に,繰り返しとなりますが,本学は,教育の質の保証・向上のためのサイクルの中に,2つの取り組み(「学修ポートフォリオシステムによる学修成果の可視化」,「授業収録配信システムによるアクティブ・ラーニングの促進」)を組み入れており,これらを適切に連携させることで,「学生自身による学修のPDCAサイクル」を確立し,学生の学び全体をより質を伴うものに変革していくことを目指しております。まだまだ利用実績もあげなくてはなりませんが,今後は,本取組により把握した学生の学修成果を,本学の教育課程の見直し・改善・進化にどう具体的に活用できるか等について,検討・検証を行うことを考えております。
 以上で,本学の教育改革に係る取組についての報告とさせていただきます。
【永田部会長】  どうもありがとうございました。先ほどの事務局からの御説明並びに山本先生からのプレゼンテーションを踏まえた上で御質問,御意見等ございましたらお受けいたします。いかがでしょうか。
両角委員,どうぞ。
【両角委員】  大変興味深い御発表ありがとうございました。山本先生に幾つか御確認したいことがございます。まず1点目は,授業収録配信システムの利用実績について,実際には学生はどれぐらいこのビデオを見ているのでしょうか。
 二つ目の質問は,学生にとってポートフォリオは,どこの大学生に聞いても負担が重いからやりたくないと聞くのですが,振り返って,それを次に結び付けていくことは,学生一人だけでやれているものなのか,何らかアドバイザーを絡ませてやっているのか,そのあたりをどのようにやっているのかについて教えていただければと思います。
 三つ目の質問ですが,こういった取り組みで個々の教員がどう変わりつつあるのかということについてお聞きしたいと思っています。学生は,様々な刺激を受けると思うのですけれども,学生の学修成果を可視化するとか,将来役に立つような能力を授業で身に付けてあげたいとか,意識の面でどう影響を与えているというふうにお感じになっているかということでございます。以上三点について教えてください。
【山本東京理科大学教授】  
ありがとうございます。
まず一つ目の御質問についてですが,具体的な視聴データは検証中ですが,例えば,実験科目の予習用コンテンツは,これを見ないと実験に取り掛かれないということもあり,100%に近い履修者が視聴しており,通常の講義形式の科目復習用コンテンツは,テスト前に多くの履修者が視聴していることが分かっております。
 二つ目の御質問についてですが,当初,本システム内に,アドバイザーとしての教員と学生の面談機能の導入を考えておりましたが,本学は学生数が多いこともあり,教員負担が大きくなること等を懸念し,導入に至らなかった経緯があります。
しかし,指導をしていない,というわけではなく,本学は担任制を導入しており,例えば,本システムに学生が入力した「今期の振り返り」等を参考に,指導(面談)が必要と思われる学生の抽出等に利用することができるようになっております。
 三つ目の御質問についてですが,本システムを単独で利用しているわけではなく,両システムを本学のFD活動の一環として利用しており,例えば,教員が「授業収録配信システム」を利用することで,自身の教授法の振り返り,見直し等につなげることができ,その結果としてFDに対する意識が上がっている,ということが言えると思います。
【両角委員】  ありがとうございます。
【永田部会長】  村田委員,どうぞ。
【村田委員】  8ページ目のレーダーチャートについて,基礎学力は客観的に測れると思うのですが,コミュニケーション能力,これは学生の自己判断あるいは客観的な評価としてどういうことが可能なのか,教えていただければと思います。
【山本東京理科大学教授】   7ページ目の記載の「各評価軸と授業科目との対応表」のとおり,例えば,コミュニケーション能力の評価項目に紐(ひも)づく科目と評価項目への寄与度を定めており,これに基づき,各評価がなされています。
しかし,学生はなかなか,自分自身をコミュニケーションがとれる人間だとは思っていません。つまり,資料の例も客観評価レーダーチャートではコミュニケーション能力が高く出ているのですが,自己評価レーダーチャートでは非常に低く評価しているという日本人的なところが見えてしまっています。意識改革の必要性があります。
【永田部会長】  日比谷委員,どうぞ。
【日比谷副部会長】  大変興味深い御発表ありがとうございました。2点伺いたいのですが,最初の質問は,7ページ,土木工学科の例を挙げてお示しくださっているのですが,委員の御発表の前に文部科学省から説明がありました中で,何回もナンバリングという言葉が出てきました。科目名称のところにナンバリングが付いているのではないかなと思うのですが,まずナンバリングとの関係について教えてください。 それから2点目の質問ですが,10ページ目,昨年度前期は,少なくとも1年生については随分入力状況がよくなっているように見えます。何か特別なことをなさったのかということ,それから二つ目は,これをやらないと何か不利益が生じるというようなことをなさっているのかということについて教えてください。
【山本東京理科大学教授】  一つ目の御質問についてですが,本学ではナンバリングを導入しておりません。科目系統図で対応しております。
 二つ目の御質問についてですが,学内でセミナーを開催し,本システムを利用することの教員面でのメリット,学生面でのメリットについて,教員・学生それぞれから発表してもらうことで,啓発を行っています。また,本システムへ入力をしない学生へのペナルティは,現時点では想定しておりませんが,入力率をあげるための仕組み作りについて,現在検討しております。
【日比谷副部会長】  ナンバリングがないというと,例えば,在学中に留学をして取得した単位で,編入するというようなときはどのように科目の振り替えをなさっているのでしょうか。
【山本東京理科大学教授】  本学の学生が留学し,留学先で修得した単位については,科目の内容をシラバスで確認し,学内で対応する科目があれば対応する科目の単位として認定しております。
【永田部会長】  石田委員,どうぞ。
【石田委員】  非常に興味深いお話,ありがとうございました。7ページにルーブリックの達成レベルがございます。成績評価と授業評価との関係について少し教えていただけばと思います。
【山本東京理科大学教授】  本学は,S~Dで成績評価をしております。また,客観評価レーダーチャートの各評価項目のプロット点については,本学独自の評価式に基づき,達成レベルの最大値や,学生の受講科目における成績の素点等をふまえ,算出しております。
【永田部会長】  山本先生,興味深い御発表,ありがとうございました。参考にさせていただきます。
 そのほかの制度・教育改革ワーキンググループの説明について御質問はなかったようにお見受けします。ないようでしたら,このままワーキンググループの方で検討を続行していただくことにします。
 
(2) 大学の「強み」の強化と連携方策について,資料2に基づき事務局から説明があり,その後意見交換が行われた。
【永田部会長】  それでは続きまして,大学の強みあるいは特性の強化と連携方策についてです。これは人材養成の観点から前回も御議論いただきました。多様な御意見を頂きまして,それを包含した資料を新たに作りました。事務局から資料2の説明をさせていただきます。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。資料2を御覧いただければと思います。3回目の審議になりますので,修正した点を中心に御説明させていただきます。
 まず1ページ目は変更点ございません。
 2ページ目,以前は表が出ていましたが,少し文章で整理させていただいています。特に,私立大学に関しては「大学としての公共性があることを前提としつつ,創設者の理念に基づく建学の精神を踏まえた強みや独自性を考えていく必要があるのではないか。」ということで,私学の建学の精神等に配慮した文章を入れさせていただいております。
 その下について,これも委員方々から御意見が出ておりましたが,「大学には多様性があり,一つの枠組みで大学の全てを包括することはできないということを留意すべきではないか。」ということを文章に入れさせていただいております。それから,「学内においては,学部や研究科など,各々の「強み」や「特色」を再確認することも必要ではないか。」ということを文章に入れさせていただいております。
 この表に関しては,大学を中心に整理をさせていただいておりました。そのため,「短期大学,高等専門学校,専門学校においても,中軸となる「強み」や「特色」を意識し,より分かりやすい発信が必要ではないか。」ということを書き加えさせていただいております。
 2ページの最後,「担当等教員の研究テーマに過度に限定された教育課程の編成を見直し,人材養成目的を達成し得る科目配当とそれに必要な担当教員の確保を含めて」ということで文言整理をさせていただいております。
 それから,3ページ,少し表の中も整理をさせていただいております。「世界を牽引(けんいん)する人材を養成」の人材像の部分ですけれども,「卓越した専門分野の研究に基づき」ということで表現を明確にさせていただいています。「教育」の部分では,「学部~博士段階の教育が中心」ということを書き加えています。また,「高度な教養と専門性を備えた先導的な人材を養成」では,教育の部分で「高度専門職業人育成」ということを明確に記載させていただいております。それから,「具体の職業やスキルを意識した教養を行い,高い実務能力を備えた人材を養成」では,「専門職学科・学部,専門職大学も想定」という文章を入れさせていただいております。
 2の連携方策のすぐ下では,「大学として中軸となる「強み」や「特色」を明確にした上で,それらを伸ばしていくために,大学間で連携を進めていくことも,一つの方策ではないか。」と書かせていただいております。
 4ページ目,これも御意見を頂きましたとおり,インセンティブという言葉を使っておりましたが,「制度的な見直しについてどう考えるか。」という表現に変更させていただいております。
 それから,5ページ目,これも委員方から御意見を頂いておりますが,私立大学の学部単位等での事業譲渡に関しては,難しい点も幾つかあることを留意すべきではということでございました。そのため,米印の中の「なお」以下のところでございますが,「校地・校舎の一部譲渡や雇用の継続の取扱いについて課題があることに留意。」ということで文章を入れさせていただいております。
 変更点は以上でございます。
【永田部会長】  今,御説明いただいたとおりですが,議論の集中した人材養成の三つの観点については,機関という言葉が抜けております。機関あるいは機関の中のある領域,あるいは学部・研究科等それぞれの人材養成目的は何か,という観点で整理しなおしたという点が大きな変更点です。そのほか,委員の皆様から頂いた御意見を文言として書き起こしたという説明です。
 各大学は多様性に富んで,それぞれの個性を持っている。その個性あるいは強みを更に強くしていくためにどうしたらいいか,ということです。やっていけないあるいは難しいから連携・統合するのではない,ということを明確にしておきたいと思います。
 それでは,この案件について御意見を頂きたいと思います。それでは,益戸委員からお願いいたします。
【益戸委員】  学修成果の可視化と情報公開,そして特に人材養成の三つの観点はつながってくると思います。個々の学生の集合体を遠くから見た場合にどんな観点の教育だったの可視化につながるだと思います。今,初等中等教育の学習指導要領が変わり,大学入試が変わり,高等教育に進む前で制度が大きく変わっています。社会変化により,自分たちの人生も大きく変わろうとしている中で,どんな高等教育を選べば良いか。学生の疑問に,提案をしながら教育を考え,実現する時代が到来したと受け止めています。企業では,例えば人事評価制度,会社の情報公開,規模の点で中小企業か大企業か,上場企業か非上場企業かということ,更に連携統合を言い換えれば,海外でのM&Aか,自前の自己増殖かなどです。常に民間企業では,このような模索が続きます。教育界側も改革を進めることによって,企業側との連携はより密度が濃くなるのではありませんか。そして,間違いなく発展にもつながるのではないかと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。益戸委員がおっしゃった御意見は大変参考になると思います。三つの人材養成の観点がありましたが,ミクスチャーになっています。そこから何を強めていくのか,あるいは思い切って何を捨てるか,ということも考えなくてはいけないわけです。その契機になるであろう,という応援のお言葉だととればいいかと思います。
 石田委員,どうぞ。
【石田委員】  3ページ,表ですが,「研究」のところで,「各分野を先導する研究」,まさにそうなのだと思います。ただ,この各分野を先導する研究というのが,場合によっては地域の課題をベースにしながらその分野の先導的な研究になるということ,これは実学分野で非常に多いことなのだろうと思っています。地域の課題が一番右側になってしまうと少し違ってくる気がします。
【永田部会長】 今の御質問は全てに共通した御質問で,例えば立地している地域によって世界を牽引(けんいん)できないか,というとそのようなこともないだろうということです。ですから,そこは各大学が選べばいいわけです。 千葉委員,どうぞ。
【千葉委員】  ありがとうございます。3ページの表を見ますと,「世界を牽引(けんいん)する人材を養成」から,地域の個々のニーズに応える大学の役割が広くなっていると感じがしています。特に,この「具体の職業やスキルを意識した教育を行い,高い実務能力を備えた人材を養成」というところの,「研究」の部分について「立地している地域の課題等,個々のニーズに丁寧に応える研究」,あるいは地域産業の活性化,これは大学でやるべきと思いますが,それ以外の「具体の職業やスキルを意識した教育を行い,高い実務能力を備えた人材を養成」については,高等教育全体で見ていただいた方がいいのではないのかなという感じもします。
 それから「高度な教養と専門性を備えた先導的な人材を養成」の「人物像」の部分,「各専門分野において高い価値の創出を先導する人物」というのが,これからのSociety5.0を踏まえて非常に重要な人材になっていくと思います。これから創造力あふれる人材をどう作っていくのかも教学マネジメントの中に何らかの形で盛り込む必要がある,そういう時代背景という気がいたします。以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。後半の方は,そのとおりだと思います。伹野委員,どうぞ。
【伹野委員】  2ページ目,短期大学・高等専門学校等の特色を発信するということがありましたので,高等専門学校の課程を簡単に紹介させてもらいたいと思います。現在,高等専門学校は51ございます。その中で質保証を非常に大きく意識した上で,各高等専門学校の特色をどう出すかを機構の中で議論しているところでございます。特色を出すためには質保証ということで,教育の標準化をして,その上に特色を出すような形ができないかということを議論しているということでございます。それで,カリキュラム等を標準化する場合,全体のカリキュラムの60%を全国統一にして,残りの40%を各高等専門学校でいかに特色を持った教育をするか,いかに社会に対して発信できるようなことをするかとしています。3ページに人材養成の三つのイメージ,これもレベルは違いますけれども,高等専門学校の中でも議論をしていて,特色と標準化というのは非常に意識している問題でございます。ここで議論していただければと思います。以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。短期大学についても同じだと思います。強みと特色である広範な分野の知識・技術・経験を修得させる,というような観点から,何とかより伸ばしていかなければならないということだと思います。皆様からの御意見があって,この短期大学・高等専門学校・専門学校の中軸となる強み,特色を意識するということは,もう少し文章で書かないといけないとは思っております。まだここは論点を整理している段階なので,この記述にとどまっております。そのほかいかがでしょうか。
金子委員,どうぞ。
【金子委員】  細かい点ですが,今の短期大学・大学の問題,専門職大学の問題は,少し注意しておかなければ,現行の教育体系とずれるところが出てきてしまう恐れがあるので,そこは議論が必要だと思います。特に3ページの参考のイメージ図ですが,最初に一つは学部から博士段階ですが,今議論されていますように,大学組織の教育学部を単位として考えるべきなのか,あるいは教育プログラムとして考えるべきなのか。少なくとも学士課程,修士課程と博士課程という,段階というよりは学位の称号について書くべきではないかと思います。
 それで,最大の問題は,この専門職大学と短期大学が左の二つのカテゴリーに入らなくていいのかということが一つあると思うのです。ただ,少なくとも第3のカテゴリーには入るべきだと思います。短期大学の学校教育法の規定を見ますと,実際生活に要する知識,それから職業に要する知識,強いて言えば3番目に入るのかなと思います。もう一つの解釈は,ここで大学といっているのは昔の大学,今は専門職大学も加えて広い意味での大学についてと解釈すれば,ここのところに短期大学を入れる必要はないのですが,その解釈であれば専門職大学も入れる必要はないと思います。一貫しておいた方がよいと思います。以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。その観点は留意をして,一つはこの表も含めてなのですが,短大,高専,専門学校の中軸となるものは何か,という部分をこれから付け加えていこうとは思っています。そのほかいかがでしょうか。
小林委員,どうぞ。
【小林委員】  問題をはっきりさせたいということと,今後のことについてお願いがあります。
 この問題に関しては,なぜ大学単位かということをずっと申し上げてきたのですが,まだ完全に解決したわけではありません。こういった高等教育機関の分類を考えると,すぐ浮かぶのはアメリカの3類型です。ただし,公立大学だけの分類ですので,私立大学は含まれない。もう一つあるのは,カーネギー分類であります。これは金子委員が言われたように,学位を中心とした分類になるわけです。ところが,日本の場合,修士課程まで持っている大学が8割になってしまっていますから,ここでドクター,修士,学士と区別するのは非常に難しくなってきているという問題が背景にあるのだろうと思います。それ以外には,イギリスでは,少し歴史的な分類で設立年によって分けるというやり方もあります。けれども,日本の場合にはかなり難しいということで,こういうものが出てきたのではないかと思います。
ただ,議論の中で,もう一つポイントは,多様性を重視するということが書かれています。けれども,そういう形になると,逆に非常に分かりにくくなるという問題があります。この分かりにくさと多様性をどういうふうに両立させるかということを考えると,こういった3類型なるものを提示して分かりやすくするというのは一つの方法としてあると,そういう理解でいいのかどうかということです。永田部会長が言われているように特色とか強みを発揮して各大学,高等教育機関がそれを目指して努力していくという,そういうことのための参照基準のようなものと考えていいのかというのが質問です。
 それから,お願いというのは,直接関係はないのですが,大学名,学部名あるいは学位付記名称が非常にたくさんあり過ぎるというのはずっと議論しています。これを整理しなければいけないということがずっと言われております。分かりやすくするという観点からすると重要な問題だと思います。是非これからも,ワーキングでの議論をお願いします。
【永田部会長】  先に後半部分についてですが,こちらはワーキングの課題になっていて,基本的な背景はもう既に認識されており,議論することになっているということです。
 前半部分は,私の理解では認証評価の趣旨に近いと思います。つまり,少なくともこの大学は世界基準の人材を育てるだけの用意をしていることを保証する,という意味があると思います。しかし,その大学を出た人材は必ずしも全員世界に出て行く必要はなくて,地域で働いても良いわけです。また,地域で働けるだけのカリキュラムをしっかり用意しています,という指標であるも言えます。地域ニーズにしっかり応えます,という大学の中から世界で活躍する人材が輩出されたとしても,それはそれで良いと思います。人材養成目的は,100人いたら100人同じように育つことを目指しているわけではなくて,それが可能となるように準備することであり,その準備が整っているかを見ていけば良いのだろうと思っています。画一的に,緑に入ったら緑,黄に入ったら黄,青に入ったら青しか出ない,そのようなことを言っているわけではありません。それがおおむね可能になるだけの準備がその大学ではできていますか,ということを言いたいということです。これはあくまでも部会長というよりは委員の一人としての意見です。
 やはり議論が深まっていけば,だんだんお互いに理解をしていく,というプロセスを踏んでいます。先ほどの益戸委員,それから小林委員の御意見あるいは金子委員も同様でしたが,ある一定のところでこういう見方をしていけば良いだろうという点では,ある一定の枠組みを置いていくことは是とする,ということだと思います。実際の大学を見れば,自分たちがどこを本当に自分たちの強み・特色にするか,ということが問われています。それが先ほどの学修成果の論点と結びついていて,ある学科では5年を標準として1年間多く勉強する,それをもって卒業研究に入ることが標準とする,という考え方があって良いわけです。そういう問題点を含めて,ワーキングでは議論されなければいけないということです。
 佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】  三つの観点のイメージ図において,「高度な教養と専門性を備えた先導的な人材を養成」の教育の部分が,「学部では,リベラルアーツ中心の教育も想定」と記載があります。ここで特に「リベラルアーツ中心の教育」という議論がいつあったのかを教えてください。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。委員の方から特に「リベラルアーツ中心の教育」ということを言われたわけではございません。原案のときにリベラルアーツを少し意識して書かせていただいておりました。御議論いただければ有り難いと思っています。
【永田部会長】  リベラルアーツの定義は,いつも日比谷委員と佐藤委員にお願いしているわけですけれども,一般教育,ジェネラルエデュケーションとは違うということでしょう。そういう意味合いでは,ジェネラルエデュケーションはどこもやっているけれど,その上で,リベラルアーツは,専門を幾つか集団として身に付けさせていくということだと思います。そう考えると,リベラルアーツは1年次に置くのではなくて,年次進行で教えていくことになるわけですから,あえてここで言っているのは,ジェネラルエデュケーションと分けるべきという理解です。
 どうぞ,古沢委員。
【古沢委員】  ありがとうございます。この大学間の連携方策というところで御質問ですけれど,大学等連携推進法人は,プラットフォーム的なもので,国公私立の枠を越えた連携ということだと思います。今の段階では,連携設置主体を越えたあるいは国公私立を越えた連携の在り方は踏み込まないという形になるのでしょうか。制度としても課題があると思うのですが,その点が余り書かれていないような気がします。
 もう一つ,学部単位での事業譲渡という図があるのですが,これは私立大学のみをイメージしたものなのか,それとももう少し広げて考えることができるのかを伺いたいと思います。以上です。
【永田部会長】  最初の方ですが,国公私立を越えての連携は既に認めていますので,更に工夫をしてくださいということです。ここで連携推進法人を置いているのは,一つの法人であることとほぼ同じ意味ですから,予算等をこの法人に落とすことができるので,非常に強い連携が組めるという意味です。ここに書いてある連携推進法人は,今までにない仕組みで,財務諸表の一部をシェアすることになるのだと思いますので,非常に強い法的な根拠を持つ新しい法人になると思います。
 こうした連携方策は,国公私立の枠組みにとらわれないものであるべきだと思います。法律をどう作るかの問題で,なるべく様々なことができるように作りたいと考えています。しかし,ほかの法律に抵触するような作り方はできませんので,でき得る限り可能な範囲で作るという精神だと思います。
 連携は,社会に対する様々な効果や責任を生じさせることになると思います。例えば,こういう教育や研究をしていると対外的に言えるということはあるだろうと思いますし,財務体系として責任を持つようなかたちにしたいわけです。統合については,統合のガバナンスという重要な問題をまだ議論していないので,これから議論を深める必要があります。例えば,カリフォルニア大学方式みたいな統合もあるでしょうし,フランスのパリ大学のような統合もあるわけです。我が国にとって,統合のメリットを最大限活かすためにはどうしたらいいのか,その方策を考える必要があります。とはいえ,統合ができることを前提として規定を考えていかなければいけないだろうと考えています。この部分が非常に重要な議論のポイントになるだろうと思っています。次回あるいは次々回以降一番のテーマになるはずです。
 吉岡委員,どうぞ。
【吉岡委員】  三つの観点ですが, 基本的には個々の大学を三つに分けようという話ではないと思うのですけれども,実際問題として動き始めたときに,例えば設置申請のときに,あなたの大学はどういう人材養成を目指しているのですかということを選ばざるを得なくなり,それに合ったカリキュラムを審査するというような制度化に進んでいく可能性はないのでしょうか。逆に言うと,本来それぞれの大学がどういう人材を作りたいかを自発的に考えていくための制度的な保証を考えていかないと,制度が硬化してしまわないかと思いましたので,意見を申し上げました。
【永田部会長】  大切なポイントだと思いますが,設置基準に盛り込むかどうかという議論ではなく,人材養成の目的を書いているものです。ですから,一つではなく二つにまたがる場合も考えられますので,設置基準に基づき審査を受けるときに,どれか一つを選べというのは難しいと思います。ただ,大学側から考えると,自分たちはこうしたいということは明確にすべきだと思います。先ほど認証評価的な考え方と申し上げましたけれども,必要条件としてこれだけの要件は満たしているということです。けれども,これだけで十分ではなくて,さらに,付加的な体制を持たないと十分ではないということになるわけです。そこの部分については,設置基準上は関わると思います。設置基準そのものの体系を考えていかなければいけないのは確かですが,この人材養成の目的がそのまま基準になるということはないと考えています。ただし,設置基準の見直しの過程において,どういうふうにすることで現状の問題を解消できるかということは,検討いただくべきではないだろうかと思っています。我々が課題にしているのは,2040年に大学がどうなっているかということに責任を持とう,ということです。それに関して我々として,一定の考え方を示そうとしているわけです。様々な御意見が出てここまで来ているので,今後はこれをどう理解するか,解釈するかという方向に向かっているのだと思います。
佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】  資料2の1ページ目に,将来像答申についてのときの議論が掲載されていたと思います。1ページの一番下で,将来像答申で提示した機能別分化の考え方は大学の多様性を踏まえたもので,これからも維持していくものであると考えるということです。そのときにも七つの特色というか,それぞれの個性,特色を明確にするための例示があったのですが,このとき「等」と付いていたのですが,実際に動き出してしまうと,七つしかないのではないかというような受け止め方をする。それから今回の三つの観点も,それぞれの学校の個性によって適用ができるということをしたらいいと思います。時を経るにつれて,もう一度それぞれの大学が自分たちの個性や特色ということについて点検をすることをしっかりとした方が良いのではないかと思います。過去の教訓として,強みがぼやけないようにしていただきたいと思っています。
【永田部会長】  ここにあえて平成17年将来像答申の機能別分化の7様態が書いてあるわけです。これに基づき,各大学は10年以上努力をしてきたわけです。当然ながら,この七つが変化してもかまわないわけですけれども,恐らくマトリックスになるわけです。ここに出ている3つと7つで必ず21できるわけではありません。ある分野では3つしかないかもしれません。いずれにしても,そういう観点で見直すのは大切なことだと思います。国立大学では,分野ごとに全ての大学がミッションの再定義をやっていて,同じ大学でも,一部は世界を目指していたり,一部は地域を目指していたりするということを定義しています。そういう意味合いでは,各大学がそれぞれ負うべきミッションについて考えるのは大変有効だと思います。ですから,前の7様態を否定してはいません。次に取り掛かろうとしている限りは,そのまま活かしてという考え方になるのだと思います。
【佐藤委員】 永田部会長がおっしゃったように,国立大学法人は再定義をして,今の状況になっているわけです。私立大学法人は全体の占有率で言うと77%を占めるにもかかわらず,この問題については意識が余り強くないのではないかという自戒の念があります。そういう意味では,私立大学も意識しながらやっていかなければいけないと思います。
【永田部会長】  心強い御意見です。今の御意見は,最後に反すうさせていただこうと思っています。
それでは,資料2を基にした議論はここまでにさせていただきます。頂いた意見を再度盛り込んで,また先へ進んでいきたいと思います。

(3) 第3回「高等教育段階における負担軽減方策に関する専門家会議」資料について,資料3に基づき事務局から報告があった。
【永田部会長】  議事次第の中で,第3回の「高等教育段階における負担軽減方策に関する専門家会議」の資料がございます。事務局から御説明を頂きたいと思います。
【森友主任大学改革官】  失礼いたします。資料3を御覧ください。新しい経済政策パッケージを踏まえました高等教育段階における負担軽減方策の在り方につきまして御検討いただいております。その際の議論を御紹介させていただきます。資料3を4枚おめくりください。
 主な論点という資料に沿いまして,専門家の委員方に御議論いただいたところでございます。まず,パッケージの中で示されている要件の一つとして,支援対象者の要件がございます。1枚おめくりいただきますと,上に四角囲みで経済政策パッケージの抜き書きがございます。パッケージの中では,支援対象者は高校在学時の成績だけで判断せず,本人の学習意欲を確認する。そして,大学等に進学した後は,学習状況について一定の要件を課し,これに満たない場合には支援を打ち切ることとするという記述がございます。具体的にこの要件をどのように考えていくのかということですが,進学後の学習状況の確認ということで,進学後の給付継続要件として,1年間に取得が必要な単位数の6割以下の単位数しか取得していないとき,GPAが下位4分の1に属するとき,その場合には警告を行って,警告を連続で受けたときは支給を打ち切るといった指標がパッケージ上例示をされています。具体的にどういうふうな場合に支給を打ち切るのかといった御議論,あるいは特に2年制以下の短期大学等で,警告を連続で受けた時点をどうするのかという論点でございます。
 また1枚めくっていただきまして,次は支援対象となる大学等に係る要件の一つ目です。実務経験のある教員による科目の配置が一定割合を超えていることでございます。論点の一つ目は,この教員による科目の範囲をどうするか,典型例として考えられるものを下に列記をして御議論いただいております。また,ページをおめくりいただきますと,一つ目の丸で,実務経験の内容や期間,形態あるいはどれぐらい前に実務経験をされたのかといった経過の期間については,一律の基準ではなくて,一定の考え方を示すこととしてはどうかということ,あるいは,同一の学校種での教員経験は実務経験に該当しないものとしてはどうか,大学の委員の場合ほかの大学における先生の経験は実務経験には該当しないのではないかということです。
 他方で,下から三つ目の丸ですけれども,実務経験のある教員が授業を担当しないという場合であっても,中身が実践的な場合,例えば学外でのインターンシップ,実習,研修というものであれば,この場合の科目に位置付けていいのではないか,あるいはオムニバス形式の授業の中でその一部を実務家が担当しているような場合というのもよいのではないかといった論点でございます。
 最後の二つ目でございますが,最終的に科目の配置が一定割合を越えていることというのは,どういう場合を考えるのかということ,そしてこの要件について学部等の単位で確認した上で,全ての学部等が要件を満たす場合に,当該大学が要件を満たしたと考えるかどうか。理学・人文科学は,特性を踏まえてどういうふうに考えるのかといったことです。
 次に1枚おめくりいただきますと,外部理事への任命です。主な論点として,2人以上の外部理事を任命することについて,中央教育審議会でも御議論いただいているところでございます。その中で,私立の例でございますが,理事総数が多い場合に, 2割超とすべきといった御意見も委員から示されています。これについては,国立,私立でどう考えていくのか。国立の場合には,理事総数が3人以下の少数の場合にはどう考えていくのかといったことです。
 それから,おめくりいただきますと,厳格な成績管理ということも求められております。12ページの主な論点のところに書いておりますが,厳格な成績管理の実施・公表について具体的な内容をどう考えていくのか。例示として挙げていますが,授業計画(シラバス)が作成されて,成績評価の方法・基準等が提示・公表されている。GPAなどの客観的な指標を設けて,この基準に従って適切に実施をして公表に努めている。また,試験を行うなど適切な方法により学習の成果を評価して単位を与えているといった例を挙げてございます。
 それから最後,財務・経営情報の開示でございます。パッケージの中では,法令にのっとり財務経営情報を開示していることとございます。これについては基本的には,設置者ごとにそれぞれ定められている法令にのっとって財務・経営情報を開示することを要件とするとしています。特に,学校法人については,以前から国においてホームページ等で,一般公開に向けた積極的な取り組みを促進しております。多くの国民が知り得るような取り組みを行うことを求めることとしてはどうかといった論点でございます。
 その際に出た主な御意見でございますけれども,最初の支援対象者の要件では,単位の取得に関して6割以下とか,あるいはGPAの下位4分の1といったことに関して,その際に警告を連続で受けたときに支給を打ち切るということであればあり得る基準なのではないか。あるいは,大学によってレベルの差はあるけれども,学ぶべき大学に行く人を支援するということであるならば,大学の中でどれぐらいの位置に自分たちがいるのかといったことで基準を作ることはよいのではないか。あるいは,GPAの確認については,算出方法をある程度統一をして,その結果を示すことなども考えられるのではないかといった御意見もございました。また,実務経験のある教員の配置による科目の配置については,本来であれば全ての学部でこのようなことが行われることが望ましいのだけれども,難しい学部もあるのだろうということ。社会のニーズに対応するための手段として実務経験がある教員がいることを求めることは必ず必要なのかどうか。オムニバス形式の授業とか学外のインターンシップを含めることができれば,教員の配置が難しくても教育の中で社会のニーズに対応していくことを証明できるといった御意見もございました。以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。御質問はございますか。金子委員,どうぞ。
【金子委員】  この奨学金の対象となる大学の資格について,GPAの選出の仕方であるとか,実務教員とかについて,議論があると聞いています。GPA競争的資金の条件について文部科学省が定めることは望ましくない,議論するべきところで議論するのが原則であると思います。
 一方で,受給者の選抜の仕方,特に経済的ニードと学力水準との関係というのは非常にセンシティブな問題がありますけれども,それについてどの程度の議論がされているのか。それについて報告されていないと,何とも言いようがないと思います。
【森友主任大学改革官】  ありがとうございます。前段の件については,パッケージの中で,社会に出て活躍できるような人材を育成するという観点から,育成する期間においても一定の要件が書かれているということでございます。
 それから,いわゆる旧型奨学金と減免措置の対象は,セットで基本的に考えていくことになると思いますけれども,その所得基準の考え方は,次回の会議で論点を提示して御議論いただこうと考えているところでございます。
【永田部会長】  金子委員が言われた御意見は,文部科学省に対してというよりは,我々が学生を支援するに当たって何がベストかを考えるべきであって,そのメソッドを考えるのが先ではないか,と言い換えた方が分かりやすいかもしれません。けれども,メソッドは最後の議論なので,そこを理解していただきたいと思います。
 それでは最後に,私から皆さんにお願いをさせていただこうかと思っております。この将来構想部会では6月を目途に中間まとめを作っていこうと思っております。そこで,委員の方からも言われている部分,つまり,冒頭の「はじめに」に相当する部分は,現在検討しております。様々な御議論の中から,多様性というキーワードは既にお示しをしておりますけれども,グローバル社会とか多様性というところを中心に,2040年に向けて考えなければいけないアウトラインを用意しているところです。その先,今度は中身に入っていくわけですが,その中で,今日も御議論いただいた部分は一つの中核です。ワーキングで話していることもその中核になっていくわけです。我々として必ず答申に書かなくてはいけないのは,この国全体の高等教育のあるべき姿,つまり,三つの人材養成目的は,我々が2040年を目指してどのような姿を作っていくか,ということであり,それを議論しないといけません。その中で,地域や各大学の特殊性,それから全体の規模などの議論も避けて通れないと思っています。
 そこで,地域の特殊性,規模など全部をそれぞれの観点から,というのは大変難しいとは思います。例えば,地域あるいは設置者とそれらがリンクしている場合もあります。こうした点を踏まえて,具体的な2040年に対する施策を何人かの委員に述べていただこうと思っております。つまり,例えば2040年に至るまでに18歳人口がここまで減る,それから施策上社会人リカレントはここまで増える,留学生もこれだけリクルートできる,しかし,財政的にはできない。こうしたことを踏まえた上で,可能な限りのロードマップを,何人かの委員に発表をお願いしたいと思っています。例えば,その発表者が地域にある大学として考えた場合はどのようになるか,あるいは人材養成の3つの観点におけるひとつを目指す大学として考えた場合は,ということを想定しています。個別事例に触れられるとかえって事を難しくしてしまう可能性がありますので,その点を御留意ください。施策について述べていただくときに,2040年に今の大学の全体数と学生の規模数が実現可能かどうか,その責任が持てるだけの施策が打てるかどうかについて我々としてはもっと深掘りする必要があると思っています。何人かの委員にお願いして,簡単な事例,こういう考え方をしているというのを述べていただきます。それは益戸委員が言われるように,今こういう状況にあるという想像上の会社がどう生き残っていくか,その戦略を述べろというのと同じです。現状を打開するために必要な方策だと思っていますので,ディテールまでは書けなくて結構です。事務局の方から個別にお願いをさせていただこうと思っておりますが,いかがでしょうか。内容については相談をさせていただいて,一般的に見てこの系統の大学はこういう道筋を歩いていくだろうということを,途中の選択肢も含めて,ざっくばらんに語っていただきたいと思っています。
 それでは,お開きとさせていただきます。


── 了 ──


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