将来構想部会(第9期~)(第11回) 議事録

1.日時

平成29年12月26日(火曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省旧庁舎6階 第二講堂

(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 我が国の高等教育に関する将来構想について

4.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)日比谷潤子副部会長
(委員)有信睦弘,村田治の各委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,石田朋靖,金子元久,小杉礼子,小林雅之,佐藤東洋士,鈴木典比古,千葉茂,福田益和,古沢由紀子,前野一夫,益戸正樹,吉見俊哉の各臨時委員

文部科学省

(事務局)小松文部科学審議官,義本高等教育局長,常盤生涯学習政策局長,村田私学部長,藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官,瀧本大臣官房審議官(高等教育局担当),松尾大臣官房審議官(高等教育局担当),下間大臣官房審議官(初等中等教育局担当),塩見文部科学戦略官,蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,角田私学行政課長,堀野高等教育政策室長 他

5.議事録

(1)今後の高等教育の将来像の提示に向けた論点整理(案)について,資料1-1~資料1-4に基づき事務局から説明があり,その後意見交換が行われた。
【永田部会長】  それでは,第11回の将来構想部会を始めさせていただきます。
 前回,大学分科会との合同会議で,今後の高等教育の将来像の提示の論点整理(案)をお示ししました。その際に出ました様々な御意見を取り入れて,今回の修正案を作っております。皆さんから頂いた御意見を,最大限盛り込んだ形の論点整理(案)となっています。
 それから,来年以降の本部会で議論すべきポイントについて,もう一度,本日洗い出しをしようと思っています。あわせて,これまでの検討の中で十分な議論ができていない観点についても洗い出しをいたします。最後に,「人生100年時代構想会議」の中間報告が出ているということですので,これについても御説明いただきます。
 それでは,資料等について事務局から確認をしてください。
【堀野高等教育政策室長】  配付資料につきましては,資料1-1から資料4まで,議事次第のとおりでございます。不足の資料等ございましたら,事務局までお申し付けください。
【永田部会長】  それでは,早速議事を始めさせていただきたいと思います。最初は,先ほど申し上げました,今後の高等教育の将来像の提示に向けた論点整理の案について議論いたします。
 それでは,事務局から御説明ください。
【堀野高等教育政策室長】  それでは,配付資料につきまして,資料1-1が,修正した後の文案でございます。資料1-2が,前回からの見え消しとなっておりますので,こちらに基づいて前回からの修正点について御説明申し上げます。
 資料1-2をめくっていただきまして,2ページ目の「はじめに」の部分でございます。前回はこの赤字の部分がなかったわけですけれども,平成17年の将来像答申からということではなく,もっと前の時代から全体をさかのぼって,今の流れがあるということを書くべきという御意見を頂きましたので,「将来像答申では,18歳人口急増期の昭和50年度から概(おおむ)ね5年おきに作成されてきた「高等教育計画」について振り返り,「主として18歳人口の増減に依拠して高等教育規模を想定しつつ需給調整を図るといった,右肩上がりの成長期に採られてきた政策はその使命を終えるものと考えられる」とした。その上で,今後の高等教育政策の在り方について」ということで,17年答申での考え方につなげております。
 その次の修正点ですけれども,6ページの部分あたりは答申の引用ですので,正確に引用し直したという修正でございます。
 7ページの部分ですけれども,社会人への教育という部分について,一つは「アカデミックな教員」と書いておりました部分を,片仮名をなるべく減らすという観点で,「学術的な背景を持つ教員」としております。また,「実務家教員」という言葉につきましても,実務家教員という言葉では,法令上のいろいろな用語との関係になってきますので,「実務経験のある教員」という一般的な言い方に変えているものでございます。
 それから,その下の部分につきましても,サプライサイド,デマンドという片仮名を日本語に直したということでございます。
 その部分ですけれども,「カリキュラムの編成に当たっては,供給側として用意できるプログラムだけでなく,需要に対応できるプログラムを用意する」というところで,前回,社会人の部分に書いてあるけれども,18歳で入学する学生にとっても同様ではないかという御意見がございました。そこで,最後の部分ですけれども,「社会人学生の増加によってこうした対応の必要性は顕在化すると考えられるが,これは18歳で入学する伝統的な学生についても同様であり,高等教育機関全体での対応が求められる」という記述を追加しております。
 その下,8ページの真ん中の丸で,「自前主義」,「18歳中心主義」とかぎ括弧で書いておりましたけれども,その内容について,「自前主義(学内出身者を中心とした教育研究体制)」,「18歳中心主義(18歳で入学してくる学生を中心とした教育体制)」という解説を入れております。
 続いて9ページの部分ですけれども,これは後ろ側についている,別添1の中から抜粋した部分ですけれども,別添1の記述ぶりとの平仄(ひょうそく)が合っていない部分がございましたので,それを修正した部分でございます。
 それから10ページ,多様な教員の抜粋部分ですけれども,これも「実務家教員」という記述を「実務経験のある教員」という,より広い言い方に変えております。
 11ページですけれども,リカレント教育の充実の部分につきまして,「雇用保険給付金」というl言葉が別添2には書いてないけれども,本文には書いてあって整合性がとれていないという御指摘がございました。ここについても別添2に合わせて平仄(ひょうそく)をとる形で抜粋しております。
 そして,12ページですけれども,真ん中の具体的方策のところの四角書きの中について,「地方自治体」と書いておりましたけれども,正式な「地方公共団体」という言葉で統一をしております。
 その下の丸を御覧いただきますと,前回の御意見で,多様性を受けとめるガバナンスという観点から,学外理事について少なくとも複数名置く,といったことが今後必要ではないかという御意見がございましたので,新たに一つ丸を立てまして,「多様な人材の活用によって大学の経営力を強化していく観点から学外理事等少なくとも複数名置くなど一定割合以上配置することや,学外理事等に期待する役割を明確化する取組を進める必要がある」と追記しております。
 その後,15ページになります。大学の規模についての文脈ですけれども,15ページで引用しているURLについて,以前の数値精査前の都道府県別の将来推計データを引用していたものを,前回の会議でアップデートした資料を出しましたので,その新しい資料を引用するように書き換えたものでございます。
 また,その下の部分ですけれども,もともと連携と統合の話は,全体の構成の中では前の方の多様な教育研究体制を確保するという文脈の中で連携・統合を引用しておりまして,この18歳人口減少という部分では連携・統合の話を出していなかったところです。それをどちらに変えた方がいいのかという議論がありましたけれども,全体といたしましては,やはり連携・統合については,地方の定員確保が厳しい私学だけの問題というよりは,都市部においても様々な形で連携・統合という手段を使って発展していくという点で,人口減少だけの場面とは限らないという観点からは,前の方に書いてあるということとした上で,この人口減少の場面でも,連携・統合というツールは使うことができるという意味で,ここにも記述を追加するという形で整理をさせていただきました。
 続いて,大学等の地域配置の部分ですけれども,16ページから17ページにかけて,まち・ひと・しごと創生本部で行われていた議論について,大学分科会から意見を申し上げたということを書いてあります。ここからあとの記述については,内閣官房と相談いたしまして,若干東京一極集中の話に寄り過ぎているため,有識者会議の最終報告書全体には様々なことが書かれているということをバランスよく記述した方が良いのではないかという観点から,記述を整理をしております。
 一つ目のところは,部会から意見が出たこととして,上の黒字で従来から書いてある部分はありますけれども,追加で地方創生を進める観点についての具体的な御意見を掲載しております。
 そして,その下の「有識者会議は」という部分ですけれども,ここに有識者会議の最終報告書では全体として大きく三つの観点について取り上げられているということを,最初に記載しております。最終報告書では地方における若者の就学・就業の促進に向けて,1として地方の特色ある創生のための地方大学の振興,2として,東京の大学の定員抑制,地方移転,3として,地方における若者の雇用の創出について,総合的に取り組むべく立法措置によって抜本的な対策を講じるよう提言されております。
 次の丸で,東京23区の定員増の記述の前に,地方大学の振興のことがまずは書いてあるということで,その記述について,「地方大学の振興については,「首長のリーダーシップの下で,地方大学の振興により,地域の中核産業の振興や人材への投資を通じて地域の生産性の向上を目指すことが求められている」とされている。また,東京の大学の定員抑制については」という形で,最初に3行を入れております。その上で後ろの例外事項が設けられているということについても,ただランダムに並べるというよりは,この最終報告書本文の構成に沿った形とするという観点から,「東京の国際化に対応する場合や若者の東京圏への転入増加につながらない場合等のように,真(しん)やむを得ない場合(留学生や社会人の受入れ,スクラップアンドビルドを前提とした新たな学部の設置,収容定員増について,投資・機関決定等を行っている場合,大学院,専門職大学(一定の期間),通信教育,夜間学部等)は例外扱いとすることとされた」と書いております。
 その次のページですが,「具体的な規制や例外の在り方については,今後,政府や国会において詳細な検討が行われると考えられるが」という後に,「この規制は地方を担う多様な人材を育成・確保し,東京一極集中を是正することを目的とする一方で」という文言を追加した上で,その後ろの審議会での主張については,特段変更を加えることなく整理をしております。
 18ページ以降につきましては,文言の整理だけの修正でございます。
 資料1-2については以上でございます。
 資料1-3の1枚紙ですけれども,こちらは見え消しにはしておりませんけれども,前回御意見があった,右上の高等教育における人材育成,18歳で入学する伝統的な学生の部分で,教養教育と書き間違えていた部分について,一般教育・共通教育と修正をしております。
 それから,真ん中の欄の右下の薄い青の囲みの部分ですけれども,「短大,高専,専門学校,大学院について,特有の課題」の後に,「高等教育全体の」という言葉を入れるようにという御意見を頂きましたので,「高等教育全体の相互の接続関係の在り方」と修正をしております。
 資料1-4については,前回の意見でございます。
 説明は以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。ただいま御説明いただいた内容について,若しくは前回から修正のない部分も含めて,お気付きの点がありましたら,是非とも御意見を頂きたいと思います。
 その際,現在検討している新しい将来像は,2040年頃を想定して考えることが前提であり,その上で,喫緊の課題についてもその中で対応できるように,という整理になっています。したがって,単に来年どうするかということを話し合う場ではなく,2040年に向けて来年喫緊に何をするか,という場であるということを改めて御確認ください。平成17年の将来像答申が12年間,高等教育に関して価値を保ち続けたのと同様に,今,これから作るものが,2040年に向けて価値を持つものであるものにするために,もう一度根本的なことを確認していただきたいと思います。
 それでは,御意見等あれば伺いたいと思います。有信委員,どうぞ。
【有信委員】  細かな点での質問なんですが,17ページの赤字で修正をしている「これからの我が国の18歳人口が大幅に減少する中で」というくだりですけれども,東京に若者が流入すると地方は厳しいということから,東京の人口集中を是正するために東京での大学の新増設,あるいは入学定員の抑制を進めるべき,というこれは,どこかから持ってきた文章なのかもしれませんが,随分と乱暴な言い方だと思います。
 東京の人口集中というのは,別に大学に学生が入るからということだけではありません。つまり東京の大学に学生が入っても,その後の就職先として,例えば大企業であれば様々な場所に就職場所があって,その先に就職をするので,学生が東京の大学に入った結果,東京の人口が増えるというのは少し短絡的であると思います。むしろ東京の産業構造,あるいはそこに人口を集めるサービス業が集中し過ぎていて,雇用機会があるために東京近県に人口が集まっているわけです。ただ,地方の大学へ学生が進学することを促進するというのは極めて重要なことだと思いますので,ここの言いぶりをもう少し正確に,エビデンスベースで言っていただいた方が良いと思います。
 以前に本部会でも少し議論したと思いますけれども,もっと構造的な問題にある程度言及しつつ,その上で地方の大学への進学を促進するという観点で,一定期間の東京への一極集中を避けるという文脈であれば理解できると思いますけれど,単純に東京に学生が来ると地方が苦しいから定員を抑制しろ,というこんな乱暴な言い方は,少し現実的でないような気がします。
【永田部会長】  そのほか,いかがでしょうか。金子委員,どうぞ。
【金子委員】  私,前回欠席いたしましたので,少し議論がさかのぼってしまうかもしれませんが,お許しいただきたいと思います。この報告の大きなテーマは,18歳人口の減少に対して,高等教育全体がどう動くかということでありますけれども,それについて,ほかのところから出てきた要因で,地域的な分布の問題が非常に大きなウエートを占めるようになってしまいました。これでバランスがとれているかどうかということで,一つ大きな点は,特に私立大学の規模別の構造がどのように変化していくのか,するべきなのかという点です。
 そこで私は,18歳人口の減少の中で,大学生の数がそのまま,あるいは減るにしても,その中でいかに革新を持ち込むのか,もたらすのかということは,これから長期的な非常に大きな課題だと思いますけれども,そうした意味で,やはり大学の規模的な構造はどのようになるのかということについての視点が非常に重要だろうと思います。
 特に日本では,大規模大学のネームバリューがあるために,非常に大きな学生の集客力を持っているわけでありますけれども,それが自ら革新をするような中からの力を発揮しているかどうかということは,私はかなり疑問だと思います。
【永田部会長】  今の金子委員の御意見についてですが,大学の規模に関する論点はもう一度出てきますので,ここでは,この案に記述された内容に限定した御意見にしていただけると有り難いです。
【金子委員】  はい。それに関して,非常に一つの大きな論点は,大学についての情報公開でした。これは2012年の中央教育審議会答申で,特に大学ポートレートが作られて,各大学を比較できるようにするということが一つのポイントですが,これは今のところ全く実現されていません。ウェブを見ると平成30年には実現されると書いてあったんですが,私立大学に関しては,検討を行うと書いてあって,まだ実現が全く予定されていません。そうすると,結局私立大学に関してイノベーションを起こしていくきっかけになるものが何なのかということが不明確で,このままでは大規模大学のみが有利になってしまうと思います。
 そういった点で,19ページの下段の方の,「具体的な質保証と情報公開の在り方について引き続き検討」というのは,検討してもうかなりの時間がたっていて,一旦やるということを決めたものが実行されていないわけですから,この表現で本当にいいのかどうかということが,私は非常に疑問に思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 そのほかいかがでしょうか。これで案が取れた論点整理になります。我々としては,概(おおむ)ね夏前までには議論をまとめる必要があります。そのための基本的な論点整理ですので,少し慎重に議論をしておきたいと思います。
 鈴木典比古委員,どうぞ。
【鈴木(典)委員】  資料1-3ですが,ここの下の方に,18歳人口の減少を踏まえた大学の規模や地域配置とあります。先ほども説明がありましたけれども,18歳人口が2016年では119万人,2030年に103万人,そして今,永田部会長がおっしゃった2040年には,88万人になります。
 一方で,現在の大学進学率が,五十数%だと思います。この進学率が続いていくとすると,88万人の18歳人口に対する五十何%ですから,大学進学者数は40万から50万ぐらいになるということで,恐らく大学の在学者数というのは200万人を切るというふうに想定されます。
 そのような中で,論点整理の資料1-2の5ページ目にグローバル化ということが書かれています。海外の国々と比較して論文の引用数が少なくなっているとか,海外の大学へ進学する学生が高等学校から出てきているといったことが出てきているんですが,今申し上げたような,国別に世界の大学生数を見ても,日本の大学生数というのは本当に減少していくというような状況を,このグローバル化という項目の中に記述として入れておく必要があるのではないかということが,私の意見です。
【永田部会長】  我々は海外との競争の中で学生を確保していく,あるいは我が国の将来を作る知的基盤を作るという内容が先生の御発表の中にもありました。大変重要な観点だと思います。
 そのほかいかがでしょうか。それでは石田委員,どうぞ。
【石田委員】  ありがとうございます。前回も若干申し上げたんですけれども,国際通用性という問題が少し気になります。それは,本文中には教育レベルの国際通用性等々の確保というのがありますけれども,11ページにありますように,それが名称の通用性にとどまっているということです。その点に関しては,例えば19ページの第三者の評価というところで国際通用性のあるアクレディテーションという観点で議論されるのかと思っているのですが,そのような理解でよろしいでしょうか。
【永田部会長】  石田委員の御意見の趣旨は,教育研究の中身,あるいはその質保証システムとしての国際通用性も書き込むべきではないかということですよね。いかがでしょうか。
【堀野高等教育政策室長】  具体的に今,制度・教育改革ワーキンググループで認証評価の議論をされている中で,直接国際性という意味での質の確保という点まで議論は至っておりませんけれども,本日,今後御議論いただきたい事項として,御意見を頂いたということで,今後の議論に反映していきたいと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 私の方から,意見と質問が一つずつあります。先ほどの国際競争の中の話として,著しく大学の全体規模が小さくなったときに,本当に大学の持っている教育や研究,社会貢献等の機能だけで我が国の国際競争力が保(たも)てるかどうか,という観点はまだ十分に議論されていません。後で大学の規模という大きな議論の課題が出てきますけれども,全体を通しても,先ほどの石田委員,鈴木委員がおっしゃった中で,世界基準の中で考えたときに,やはり高等教育が先進的な研究をベースに成り立っているという部分が少し見えていないのではないかという気がいたします。
 次に質問ですが,9ページの四角囲みの中の4で,「現行の役員会や経営協議会,教育研究評議会の在り方についてどのように考えるか」という論点の趣旨ですが,「国立大学法人が複数の大学を設置する」場合に,教育研究評議会等をどのように位置付けられるか,と読めば良いということでよろしいでしょうか。
【堀野高等教育政策室長】  一法人一大学というものを一法人複数大学とした場合の議論が出たときに,具体的に現在,法人の長(おさ)と学長が一致している下で置かれている経営企画委員会や経営協議会,教育研究評議会というものの位置付けについて,学長の下に置かれるものをどう整理して,理事長の下に置かれるものをどう整理して,その上でお互いの連絡をどうしていくかということが具体的な検討事項の一つになってくる,という意味でございます。
【永田部会長】  分かりました。御説明のような流れの中で,今後の在り方を考えるという文脈だという説明を頂きました。
 もう一点,先ほど有信委員から,17ページ中段あたりの書き方が少し偏り過ぎているのではないかという御指摘がありましたことについて,部会長の責任として申し上げます。最後の段落で,地方大学の振興については,「首長のリーダーシップの下で云々(うんぬん)」の部分にかぎ括弧がついているのは,有識者会議の御意見であるという意味だという理解でよろしいですか。
【堀野高等教育政策室長】  そのとおりでございます。
【永田部会長】  なぜこのように申し上げているかというと,これまで本部会においては関係団体等からヒアリングを繰り返してきました。その中で,公立大学や国立大学からは,大学自らがリーダーシップをとって,という御意見がありました。したがって,かぎ括弧が付いている意味を共有しておかないとヒアリングした意味がなくなってしまうので,確認をさせていただいたということです。この部分も,後の議論の中で,地域も含めた大改革を進めていくときに非常に重要なポイントであろうと考えています。
 小林委員,どうぞ。
【小林委員】  これも後で話が出ることかもしれませんが,論点整理という一つのまとめとして見た場合に,今回は2040年を見据えてということだったのですけれども,やはりもう少し短いスパンの課題に偏り過ぎているという感じがします。そして気になるのは,非常に悲観的なトーンになっていまして,積極的な要素というものが余り取り上げられていないということであります。例えば人口減少することは,少人数教育が行えるチャンスだというようなこともあるわけです。見方によっては大学教育の質の向上を図るチャンスがあるということでもありますので,そのような観点をもう少し入れていただければと思います。
【永田部会長】  これからの議論の中で,規模感を考えるときに出てくるのではないかと思います。
 それでは,佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】  ありがとうございます。やはり後ほど議論する範囲のことなのかもしれませんが,国立大学は将来像答申を受けて,ミッションの再定義ということを行ってきたと思います。ところが,私立大学については,それぞれ建学の理念等は比較的はっきりさせていますが,100年以上の歴史があるところもあれば,最近設置されたところもあります。その上で,それぞれ時代によって使命というものは変わってくる,ミッションが変わっていくのではないかということを感じる場合があるのですね。ですから,是非私立大学でもミッションの見直しを不断に行う必要があるというようなことを,どこかで促すようなことができればと思っています。
【永田部会長】  ありがとうございます。千葉委員,どうぞ。
【千葉委員】  ありがとうございます。いつも申し上げているのですが,高等教育というものをどう捉えるのかということが,この表を見るとなかなかよく分からなくて,大学に偏り過ぎているなという感じがいたします。それはそれで重要なこととして,大学院の拡充,あるいは大学院への進学率の向上,こういったことが十把一絡(から)げの「短大,高専,専門学校,大学院について」という形で非常に軽く取り扱われているような感じがするんですが,6年一貫教育であるといったようなことも含めて,やはり大学院への進学率が非常に低いということは我が国の大きな問題ですから,それについて何か言葉を入れておく必要があるのではないかと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。千葉委員のおっしゃるとおり,これだけ多くの議論を,全てこの論点整理の中に押し込むのはなかなか難しい部分がありますが,御指摘の点も後で各高等教育機関の役割や機能にのっとって議論しなければいけない部分が残っているだろうと思います。
 そのほかいかがでしょうか。益戸委員,どうぞ。
【益戸委員】  2040年を見据えての議論では,グローバル社会が前提ですから,日本から海外へという人の流れだけの議論では足りません。人口減少下での働き手不足の問題を考慮すると,海外から外国の方が日本に入国して,まず日本語を学び,そして日本語で教育を受け,日本企業に入社していくというルートももっと太くなっていくかもしれません。このような変化についても触れておくべきと思いました。
【永田部会長】  ありがとうございます。各大学は,その認識は既にお持ちであり,日本語,日本文化事情等の科目をほぼ全ての大学が持っていて,留学生に対する教育の準備ができています。そうした現状を踏まえた上で,あえてそれを書いておくということは重要なことかもしれません。
 それでは麻生委員,どうぞ。
【麻生委員】  12ページの真ん中に学外理事等のことが赤字で書いてあります。これは,国立大学や公立大学,私立大学の全てに対して適用する文言なのでしょうか。
【堀野高等教育政策室長】  この部分につきましては,特に限定はしておりません。国立大学,公立大学,私立大学問わず該当するということで,一般的に書いております。
【永田部会長】  ここで「理事等」となっていますけれども,各大学の理事は大変お忙しいという状況だと思いますので,そのような職を本当に現職の企業の方にお任せできるのかと考えると,学外理事をどういう観点で置くかというのは大変難しい問題です。しかし,外部の意見を取り入れるということは重要なことですので,理事にこだわらず,例えば経営戦略室というようなところにも学外の人を置くということも当然考えていくべきです。ですから,ここで「等」としているのは,理事だけではなく,それこそ学長とともに経営戦略を考えるような部分に外部の方々が入っていくということも考えられると思います。または,非常勤理事等で御意見を伺うというようなやり方も当然あると思います。
 そのほかいかがでしょうか。古沢委員,どうぞ。
【古沢委員】  規模感ということと関連してくるかと思いますけれども,14ページに地方における教育機会というところがありますが,こちらで定員割れの大学は4割に増加しているとか,地方では小規模な大学で学生確保が厳しくなっているというような書きぶりになっていて,今後とも地方の学生にとって質の高い教育機会を確保していくことが重要であると,わりとさらりと書かれている印象があります。ほかの項目でも言及されることだとは思うんですけれども,地方の大学にとっての課題である,地域や学生のニーズに応えることができるように,教育内容を見直していくといったような,今後何をすべきかというところももう少し指摘しておいた方がいいのではないかと思いました。以上です。
【永田部会長】  具体的にどのような文言,キーワード,単語が考えられますか。
【古沢委員】  まち・ひと・しごと創生本部の方でもいろいろと報告を出しているかとは思いますが,やはり地域や学生のニーズに応えるような教育内容も見直していくということかと思います。
【永田部会長】  そういう意味もあるでしょうし,質の高い教育機会,東京や大都市に高いレベルの教育機会を設けるだけではなく,地域にもオリジナリティのあふれる研究・教育ができる場所が必要な場合もあるでしょう。単に「教育機会を与える」と書いているわけではなくて,「質の高い教育機会を与える」と書いている意味はそこにあります。
 大学の本質論として,高等教育を授けるというのは当然のことですが,地域に根差した産業を起こすためには,オリジナリティやイノベーティブな研究が必要です。「質の高い」という意味はそこにあって,それを確保しようという意味で書いています。教育の受ける側(がわ)の権利としての収容定員といった考え方というのは,これからみんなで考えようということだと思います。反対しているわけではなくて,わざわざ「質の高い教育機会」ということを書いているのは,そのような意味もあります。
【古沢委員】  はい。ただ,後半では規模感と非常に絡んでくる部分かなと思います。
【永田部会長】  そうです。これから規模感とか,役割分担の話を始めることになるわけです。
 そのほかいかがでしょうか。安部委員,どうぞ。
【安部委員】  地方の質の高い高等教育機会の確保について,全体を見てみますと,これまでは18歳を中心とした四年制大学主義でどうするかということだったのですが,今後は,地方の人々の労働生産性の向上のための社会人のキャリアアップ教育ということを,特に地方の大学が積極的に取り組まなければいけません。
 人生100年時代構想で,改めて社会人のリカレント教育ということを取り上げられていますけれども,悲観的な考え方ではなくて,今後人口が減少する中で,高等教育を積極的に活用していくためにはどうしたらいいかということを考えたときに,社会人のリカレント教育を大学全体が取り組むということを強調していかなければ,2040年の新たな高等教育の将来像は,18歳人口の減少に伴う規模の縮小というような話だけに終わってしまうのではないかという気がしております。そのためにも,社会人のリカレント教育について,これは文部科学省のマターだけではなくて,産業界との連携についても含めて,提言をしていくべきではないかという気がしております。以上です。
【永田部会長】  7ページに社会人への教育ということで,全部で4項目書いていますが,安部委員がおっしゃっているのは更に具体的な施策についてということでしょうか。
【安部委員】  特に地方の社会人のキャリアアップ教育ということについても,高等教育で考えていただきたいと思います。
【永田部会長】  分かりました。これは論点整理なので,ここからどうしたら良いかという点について書いている部分はまだ少ないわけですね。中央教育審議会としては,今後それぞれで述べた課題を解決するためにどのような施策が考えられるかをまとめていく必要があります。
【堀野高等教育政策室長】  今の御指摘の点については,まさに15ページの真ん中の丸のところで,各都道府県別の将来推計を見ながら戦略的に検討すべきという考え方について,真ん中のアンダーラインで記載のございますとおり,18歳で入学する伝統的な学生だけでなく,多様な年齢層の学生を受け入れていくことも可能であり,必ずしも推計どおりの定員削減が必要となるとは限らない,いずれにしても各地域地域できちんとデータを見ながら戦略を立てていく,という考え方をお示しをしております。先ほどの古沢委員の御議論も,こういったものを見ながら,その地域でどのようなニーズがあるかということを地域ごとで具体的に検討していく時代が来るということを描いておりますので,これを更に今後の議論でどこまで発展させて,答申にしていくかということだと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。この論点整理(案)は本日もたくさんの御意見を頂きました。これは本年4月以降,半年以上にわたって我々が議論した内容を整理したものであって,恐らく今後過不足がたくさん出てくることと思います。とりあえず一旦この形とさせていただきたいのですが,本日頂きました御意見も含めて,私と事務局の方で修正したいと思います。その点については私にお任せいただきたいと思いますが,いかがでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【永田部会長】  ありがとうございます。それでは,本日頂いた御意見について,なるべく構成的で建設的な書きぶりになるように努力をいたします。

(2)「今後の高等教育の将来像の提示に向けた論点整理」を踏まえた今後の審議事項について,資料2に基づき事務局から説明があり,その後意見交換が行われた。
【永田部会長】  それでは,次の議題に進みます。本日最も大切な議題ですけれども,先ほどの論点整理をまとめるまでに,たくさんの御意見を頂いてきましたが,これまで議論されていなかった論点,あるいは議論を一旦保留してきた論点について,資料にまとめております。
 では,事務局から資料2を説明してください。
【堀野高等教育政策室長】  資料2を御覧ください。基本的には論点整理の中でも引き続き検討と書いたものも抽出して,今後,この将来構想部会で更に検討しなければいけないものとしてまとめたものでございます。
 資料2の1番目の,引き続き検討を進める事項として,高等教育機関の規模(将来の進学率の予想など)とございます。平成17年の将来像答申でも,将来の進学率について推計いたしまして,大学全入時代が来るというようなものでしたけれども,いずれにしましても将来の進学率の規模をどう考えるかということを含めて推計をしながら,一方で,今後高等教育の規模がどうあるべきかというところについて,近年の答申では,基本的には予測を示して,余り具体的に規模はこうすべき,ということまで提言しているわけではありませんけれども,この時代にどこまでこの審議会で検討するかということも御議論いただきたいと思います。
 二つ目に,大学等の連携・統合の方策及びそれを活用した大学等の今後の展開です。これにつきましては,個別の論点として,ここに記載がありますような単位互換制度の運用の見直し,一法人一大学となっている国立大学の在り方,私立大学における学部・学科単位での設置者変更の手続等々,具体的な論点が出ておりますけれども,これについて具体的にどういう制度にしていくのかということを引き続き検討していく。
 三つ目に,地域の高等教育機関が,産業界や地方公共団体とともに将来像の議論や具体的な交流等の方策について議論するプラットフォームを作っていくようなことが必要ではないかということを論点整理でも書いておりますけれども,こういうものについて,具体的にどのような仕組みであれば機能するのか,どのような単位で集まればうまくいくのか,都道府県単位でやるのか,より広域なエリアの方がよいのか,都市圏,都市隣接地域,あるいは地方などの特性によってそれぞれ様々なのか,こういったことについて今後,引き続き検討が必要ではないか,ということです。
 また四つ目として,国公私の設置者別の役割分担の在り方ですが,これは一度議論しておりますけれども,今後引き続き議論をしていく必要があるということでございます。
 続いて,今後検討を始める事項としましては,これまで取り扱ってきていないテーマとして,将来像答申で提示をされた機能別分化の考え方の進捗状況と,機能に着目した多様な政策の展開の在り方について,答申までに検討する必要があるということ。また,先ほども御意見を頂きましたけれども,大学院教育の在り方,それから大学における研究と教育との関係といったものについて,これまで多くが18歳で入学する様々な機関について,横の議論をしておりますけれども,大学院といった縦の議論はしておりませんので,この議論をする必要がある,ということです。
 そして,新たに制度化される専門職大学・短期大学も含めて,高等教育機関の多様性が増しておりますので,全体の相互の接続関係等の在り方について,一度資料を整理した上で,今後の在り方を議論するということ。
 そして最後に,教育研究の高度化を促進するための基盤的経費,競争的資金の充実や配分の在り方。これは諮問事項の4点目となっている財政的支援の部分ですけれども,これについてはこれまで議論しておりませんので,1月以降の議論の中で議論していく必要がある,ということです。
 説明は以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。既に最初の議題の中でも,佐藤委員から,私立大学の将来ビジョンの明確化について,また,石田委員からは,国際的な通用性の観点で議論すべきではないか,という御意見がありました。また,古沢委員等から,地域,地方の在り方を含めて全体を考えるべきではないかという御意見もあり,関連した議論をこれから行いたいと考えております。その議論を,ここに書かれているものだけでいいのかということが最初の問題で,まずはそれについて確認したいと思います。引き続き検討を進める事項と,今後検討を始める事項,この一枚にまとめていますが,これらとは別に,こういう観点を加えるべきではないか,という御意見があればお伺いしたいと思います。
 いかがでしょうか。それでは小林委員,どうぞ。
【小林委員】  前回もお聞きいたしましたけれども,諮問事項の4について,論点整理の最後の20ページにも書かれていますが,教育研究を支える基盤的経費ということと並んで,学生への経済的支援の充実という項目が入っています。これが今回の資料2には入っていないのですが,何か理由があるんでしょうか。
【堀野高等教育政策室長】  いえ,特にございません。
【永田部会長】  御指摘の事項は最後の項目のところに全部含めているつもりではいます。
 そのほかいかがでしょうか。有信委員,どうぞ。
【有信委員】  既にここに項目として挙がっているんですが,この項目の挙げ方だと議論が十分ではないかもしれないという懸念がありますので,発言させていただきます。
 大学院教育の在り方や大学院等における研究の関係について,基本的に大学院の中での研究と教育の関係がどうあるべきかというような議論にいくと思うのですが,大学院教育に関しては,平成17年に出された「新時代の大学院教育」という答申でも問題視されていましたけれども,基本的に学部教育と大学院教育をどうするかという観点での議論が必要だと思います。論点整理の中にも,学部教育の充実ということで,いわば社会から要求される論理的思考だとかコミュニケーション能力だということは学部教育のそれぞれの専門科目を教える中で鍛えられるはずであり,そのように教育はやるべきだという観点の記述があったような気がします。一方では,基本的に学部で教えなければいけないことをきちんと整理して,それを効果的に教えることができる構造を学部で作った上で,大学院教育で何をやるべきかという,いわば学部教育と大学院教育との間の本来の役割の明確化をきちんとしつつ,その上でグローバルな観点での大学院教育の在り方,研究との関連性についての議論をやるべきだと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。大変重要なことだと思います。学部から積み上げて議論する,あるいは,大学院教育の在り方として何がベストかを議論してみると学部の在り方について分かるかもしれません。
 佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】  1番上の,大学等の連携・統合の方策の部分ですけれども,これは最近見られるような,私立大学の公立大学法人化の流れを考えると,公立大学と私立大学が統合するというようなことも,この中で想定をしたら良いのではないかと思います。
【永田部会長】  私自身としては,その議論については全ての制約を取り払って,公立大学と私立大学,さらには,私立大学と国立大学の統合の可能性についても議論して良いと思います。要するに,効率化を図るため,より良い教育研究をするためにできることであれば,あらゆる方策を考えて良いのではないかと思います。
 そのほかいかがでしょうか。村田委員,どうぞ。
【村田委員】  先ほどの小林委員の御発言に関係あるんですけれども,先ほど永田部会長が,「含まれているんだ」とおっしゃった点について,論点整理の21ページのところに「競争的資金の充実や配分の在り方並びに学生への経済的支援の充実など教育費負担の在り方」と書いていることを踏まえると,こちらにもきちんと明記しておくべきだと思います。
【永田部会長】  分かりました。例えば貧困云々(うんぬん)だけではなくて,先ほど益戸委員から御意見があった,海外のインターナショナルスチューデントに対してどう支援するかというようなことも全部出てくる可能性がありますので,ただいまの御意見は明記しておいた方が分かりやすいかもしれません。
 鈴木典比古委員,どうぞ。
【鈴木(典)委員】  先ほどの私の発言と重複する面もあるんですが,ここにグローバル化という言葉が出てきていないのですね。やはり2040年ということを念頭に置きますと,大学の海外展開,あるいは海外から日本に来る大学の受入れという意味の,相互乗り入れに関して考える必要があると思います。これが結局,日本の高等教育におけるカリキュラムの世界標準化というところに結び付いていく,私は結び付いていかなければいけないと思っていますので,そのことを入れていただければと思います。
【永田部会長】  鈴木委員のおっしゃるとおりですので,鈴木委員と石田委員がおっしゃったことをうまく1行,2行程度にまとめて,審議事項として加えさせていただきたいと思います。
 そのほかいかがでしょうか。前野委員,どうぞ。
【前野委員】  済みません,引き続き検討を進める事項の中の三つ目のぽつにある,プラットフォームの具体的なところの議論ですけれども,都道府県が単位としてふさわしいのか,あるいは,より広域で議論した方が良いのかということについて,どうしても単独の高等教育機関が周囲と何かをするというイメージで捉えがちですけれども,ファカルティー・ディベロップメントなどと同じような,オーガニゼーション・ディベロップメントや,インスティテューショナル・ディベロップメントという,高等教育機関がほかの教育機関のロールモデルを勉強したり,あるいはうまくいっている例を学び合うようなことが,必要ではないかと思いましたので,そのような文言が入っていると良いのではかなと思いました。
【永田部会長】  前野委員がおっしゃっていることは根源に関わっていて,プラットフォームをどう定義するかにかかわっていると思います。これを議論するときに,是非とももう一度御発言いただければと思います。
 益戸委員,どうぞ。
【益戸委員】  今後検討する事項の中に入るのかもしれませんが,永田部会長がよくおっしゃっている,研究の高度化という観点からすると,研究者の処遇の議論は,とても重要であると思います。例えば,国立大学は給料や定年などが細かくルールで規定されているので,処遇の自由がありません。優秀な研究者はグローバルで取り合いでしょう。日本の産業界でも海外同様,能力給が一般的になります。とすると,研究・教育界でも同じ方向感でなければおかしいと思うんですね。そうでないと,優秀な研究者がますます海外へ出てしまうなど,様々な問題が起こってくると思います。この点も言及すべき問題だと思います。
【永田部会長】  そうなりますと,先ほどのグローバル化や国際競争力という観点から,マネージメントについても考えなければならないという解釈でよろしいでしょうか。地方創生は大変重要な課題であり,各地域に良い大学が必要であると思っているわけですが,一方で国際的な競争が激しくなっていて,今の制度や支援のままでは,完全に日本は立ち後れると思います。ですから,大きく考え方を転換しなければなりません。全体として,高等教育の国際競争力がないと我が国の国際競争力が低下することになる,という意味では大変重要な御指摘だと思います。そういう観点で考えていくことが大切ではないかと思います。
 そのほか,いかがでしょうか。佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】  今後の課題なのかもしれませんが,今,高等教育を含めて,教育費の無償化というような議論が進んでいます。教育費負担について適切であるかどうかというようなこと,あるいはその在り方について,将来に向けて論点整理をするのであれば,触れても良いのではないかと思います。国立大学と私立大学の間に格差があるということも言い続けていますが,それだけが問題なのかどうかということも含めて,整理した方がいいと思っています。
【永田部会長】  ありがとうございます。古沢委員,どうぞ。
【古沢委員】  確認ですけれども,高等教育機関の規模については,かなり幅広く踏み込んだ議論が行われるという認識でいいのかなと思うのですけれども,例示が将来の進学率の予想などということだけが挙げられていて,個人的には,大学設置の在り方とか,定員とか,非常に難しい問題だとは思うのですが,できれば,かなり大枠のものでもいいので,国としてどういうふうに考えていくべきなのかという方向性を示すとよいのではないかと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。そこまで踏み込んで述べるべきという御意見は,大変重要な御指摘です。
 そのほかいかがでしょうか。金子委員,どうぞ。
【金子委員】  少し特別な論点かもしれませんけれども,先ほど有信委員がおっしゃった大学院改革についてです。大学院の改革は,先ほどもおっしゃっていましたけれども,7年ぐらいずっと議論されてきました。その間,大きな論点は,学術的な教育の幅を広げるということ,もう一つは職業人の再教育をする機能という点でありましたけれども,そのために,リーディング大学院などの予算措置がとられて,ある程度最初の卒業生が今出てくる段階になりつつあります。しかし,どうも私は今までの実験プログラムが成功しているかどうかという点では,かなり問題があると思っています。
 一つは,人文社会系のリーディング大学院です。本来は学部でできるべきことが,日本の大学ではきちんとできていないので,大学院の5年間に延ばしてしまった。それから,理系についても,アカデミックな方のリーディング大学院プロジェクトは評価が高いのですが,それ以外のところは余り高くないというような傾向が見られるように思います。ここでもう1回大学院に関して考え直してみる必要があるのではないかと思うのです。この点,私もアメリカなどはどうなっているのかなと思ったのですが,いろいろと調べてみると,様々な工夫をしていて,それほど日本がやってきたことと違っていません。ただ,あるところで書いてありましたが,そういった報告は,NSFとか学者が書いているので,大学全体の常識として見れば,やっても無駄なところが相当ある。要するに,先生がやりたいからやっているんだということがあるわけです。実際,教員の勤務時間の分布を見てみますと,大学院に対する時間が非常に多いのですね。リサーチングユニバーシティと言われるところでなくても,相当大学院はやっているのです。ここら辺までさかのぼって,もう1回検討し直す必要があるのではないかと私は思います。
【永田部会長】  踏み込んでしまえば,高等教育機関の規模の議論の中で,大学院の規模についてもやはり議論すべきであろう,ということも含まれていると思います。重要な御指摘だと思います。
 小杉委員,どうぞ。
【小杉委員】  リカレント教育の話は別添資料2のような形でまとまっていますけれども,この件については,これから先これ以上はやらないということですか。それともプラットフォームの地域の話の中に含まれているというような理解でよろしいんでしょうか。
【永田部会長】  もちろん,論点整理でまとめて終わりではありません。ですから,論点整理から出てきたものを引き続き検討しながら,今後のまとめに書き込んでいくということになると思います。リカレント教育は大変重要な問題で,今後も議論しなければならないと思いますが,地方だけの論点ではないので,少し書きぶりを考えさせていただきたいと思います。
【堀野高等教育政策室長】  整理でございますけれども,こちらの資料2では,将来構想部会で議論すべきことという観点で整理をしております。一方で,鈴木委員に主査をお務めいただいております制度・教育改革ワーキンググループの方で,リカレント教育や国際展開といった話については,より詳細な議論をしていただいておりますので,引き続きワーキンググループにおいても議論されるということだと思っております。もちろん,将来像全体の大きな議論の中の位置付けでリカレント教育についても議論する場が必要だという観点から,この将来構想部会でも取り扱う場面を作るということについては,永田部会長と相談させていただきたいと思います。
【永田部会長】  そのほかはいかがでしょうか。
 今後の議論の最中に,このような論点について議論してほしい,ということが出てくることも考えられますので,追加は幾らでも引き受けたいと思います。,いよいよこれから議論を始めるに当たって,ここに挙げられたことを頭の中にじっくりと入れておいていただいて,本丸の議論を進めていきたいと思っています。
 続いて,日比谷委員,どうぞ。
【日比谷副部会長】  ありがとうございます。100年時代構想会議の資料としてお配りいただいている資料3の16ページに,何度も何度も見て,自分でグラフが書けるよというぐらいになった,四年制大学への25歳以上の入学者割合というものが出ています。OECD平均と比較して非常に低いということなんですが,規模の問題を考えるときに,減少していく18歳の層の進学率をどのぐらいに考えるかということと並んで,18歳では進学しないけれども,その後10年ぐらいの間で,大学院ではなくて四年制大学に行く人をどのぐらいに引き上げていくかということは大変重要な視点だと思うんですね。この人生100年時代構想会議では,このグラフについての何らかの具体的な議論があるのでしょうか。それから,文部科学省のお考えということも含めてですけれども,この割合が何%になったら,よしとするのかということについて伺いたいと思います。
【義本高等教育局長】  この16ページの資料につきましては,直接これを人生100年時代構想会議の中で議論したということではなく,飽くまで参考資料としてお示しした材料でございます。それから,OECDの平均に比べて日本の25歳以上の入学者割合は低くなっておりますけれども,これをどれぐらいの割合にするのかという議論はまだやっておりません。そこは逆にこの場でも,そういう議論を深めていただければ有り難いなと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 皆さん少し考えていただきたいと思うのですけれども,ある正規分布を描いたときに,横軸に成績や能力,あるいはコンピテンシーを置いて,縦軸に人口を置いたときに,18歳人口が減少すると,正規分布の山が3分の2くらい低くなります。そうなると,現在と定員が同じならば,現在よりも能力の低い人を必ず入学させないといけないわけです。
 当然ながら,より多くの社会人が学ぶようになっていけば,インターナショナルスチューデントを今考えているような分布で獲得できるならば,その山全体を押し上げることになります。このときに,例えばインターナショナルスチューデントや社会人の質を担保せずに集めると,かえって正規分布の山をいびつな形に変えてしまうことになります。現実問題としてこのようなことがある,ということを頭の中にしっかりと入れて議論しないといけないと思います。
 もう一つは,我が国がこれから情報知的基盤社会として伸びていくために,どのぐらいの能力やコンピテンシーを持った人がどのぐらい必要なのかということを考えていかないと,設計を間違える可能性があります。このレベルのこのような人材をこの程度そろえなければいけないという結論があるのであれば,当然のことながら,教育内容も変えなければいけないし,高等教育機関全体の配置も考えないといけません。
 この議論の中で,我々としては財源をこれだけ措置するとは言えませんけれども,当然考えなければいけません。私立大学からも私立大学に対する助成額も増やしてほしいという意見はずっと前から出ています。しかし,佐藤委員がおっしゃるとおり,私立大学もとりあえず学生を集めるというのではなく,ビジョンを持って,先ほどの正規分布の山が下がったときに入学してきた学生に対しては,今と同じ教育では絶対に学生は育たないわけですから,教育システムを変えなければなりません。ですから,やはり18歳人口減少の問題というのは極めて重要です。今日生まれた子が20年後に20歳になるわけですから,今から20年後の人口構成を変えることはできませんので,そのことに強く思いを馳(は)せて考えないければ,高等教育機関の規模という問題に踏み込めないと思います。
 前提として皆さんの中で変え得るものと変え得ないものがあるのだ,ということをしっかりと認識した上で議論をしなければなりません。さらに,高いレベルの研究力,あるいは高いレベルのイノベーション創出能力,一方で,地域や地方を活性化し,それぞれの地域や地方が特性を持った高いレベルの国作りということも当然考えるわけです。例えばこういう大学だけ増やせばいいという提言をしたときに,後々,この地域にこれがないとか,あるいはこの地域にはこんなものが集まり過ぎているということにならないように,やはり真剣に考えていかないといけません。
 財源の配分も重要な課題であり,より適切に配分するためにどのように効率的な高等教育システムを作っていくか,という問題は当然考えられます。けれども,物理的に変えることができない18歳人口の問題,それから,この国の将来像を見てどのように社会全体の在り方を考えるのか,ということは,まずミニマムエッセンシャルであると思います。
 積極的に御意見をいただければと思います。常盤生涯学習政策局長,どうぞ。
【常盤生涯学習政策局長】  済みません,先ほど義本高等教育局長からお答えいたしました点について少し補足をさせていだきます。人生100年時代構想会議でのリカレント教育に関する議論は,まだこれからより議論を深めていこうというフェーズだと思うんですけれども,これまでの教育再生実行会議等の様々な政府の中での議論では,今非常に少ない社会人の学生数を倍にしようということを当面の目標として掲げて進めてきています。ただ,なかなか苦戦しているというのが実態だと思います。
 その中で,社会人の場合,時間がない,あるいはお金がないという部分の問題と,もう一つはプログラム自体が,自分の欲する職業能力向上に必ずしもマッチしていないという,三つのことがよく言われます。そういう課題意識を踏まえて,人生100年時代構想会議でも議論されると思いますし,この中央教育審議会でも議論を深めていただければ有り難いと思っています。
【永田部会長】  ありがとうございます。リカレント教育ということを考えたときに,お金の問題はなかなかここでは議論できませんが,プログラムの内容についてはやはり本部会としては真剣に議論しないといけません。例えば,MBAと情報工学を組み合わせてAIまで含めた最新の知見を学ぶ1週間から10日のプログラムが,今非常に人気です。これは一例ですけれども,もう少し大きな視点で,社会人にどのように勉強してもらって,より革新的に産業を発展させていくかということは,大変重要だと思います。
 それでは村田委員,どうぞ。
【村田委員】  今,永田部会長のおっしゃった件について,少し私の考えを申し上げたいと思います。正規分布が下がってくることによって,当然,今と同じ定員であれば能力の低い,よりコンピテンシーの低い学生が入ってくることになります。そのこと自体は,恐らく経済の生産性を下げる方向になりますが,今度は逆に18歳人口が減ることによって,進学率がもし上がるとすれば,これにより多くの人が高等教育を受けることで,この効果は生産性にプラスになります。そのような意味では,一概に正規分布が下がるからといって生産性も下がるわけではなくて,より高等教育を受ける比率が上がれば生産性が上がる,両方の効果があるのですね。言ってみれば,生産性が下がる効果,これはいわばシグナリング理論的な考え方なんですが,高等教育を受ける比率が増えれば生産性が上がる。これは人的資本理論的な考え方なんです。その両方を考えて,まさに進学率をどうするかということを考えないといけないんだろうと理解しております。
【永田部会長】  もちろんそのとおりです。小林委員,どうぞ。
【小林委員】  今の村田委員の意見とも関連するんですけれども,学力の低い学生たちがこれから入ってくることになるということは,全体としてはそうだと思うんですけれども,一方で,学力が高いけれども,まだ進学できていない層がかなりあるわけです。これがたまたま人生100年時代構想会議の資料の7ページに,私の調査を引用していただいているんですけれども,2016年にも同じ調査をやっておりまして,ほぼ同じ傾向が出ております。まだまだ私立大学に関しては,学費の問題が壁になって進学できていないけれども,かなり学力が高い層がいますので,そのようなことも考え合わせて,まだまだ高等教育でやることがあるのではないかというふうに考えるべきだと思います。
【永田部会長】  そのような部分があるのは確かだと思います。
 佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】  人口減の中で進学率はどんどん高くなっていく。また,大学の在り方も,多様化していくということに対して,大学設置基準は昭和31年に作られて以来,基本的な骨格は変わっていません。新しい高等教育の将来像に合わせて,その点も例外の領域なしで議論が進められる方がいいのではないでしょうか。幾ら学位の分野が多過ぎるのではないかといっても,なかなか変わりません。設置基準についても例外なしに議論の対象にしていただきたいと思っています。
【永田部会長】  ありがとうございます。ただいまの佐藤委員の御意見は,恐らく高等教育機関の規模の議論の最後で,具体的な施策として,設置基準に関わる課題のところに書き込むことになるのかもしれません。
 有信委員,どうぞ。
【有信委員】  今の設置認可の話は,学位プログラムの話とも関連して議論すべきだと思います。私が先ほどの永田部会長の話で非常に危惧を覚えたのは,正規分布についていろいろな話をされたんですけれども,先ほど小林委員がおっしゃったように,人数が減れば,ある意味で手厚い教育ができるということについて,かつてPISAで日本の中学生が惨憺(さんたん)たる結果になった後,文部科学省でてこ入れをした結果として,たしか成果があった例として出ていたものがありました。例えば数学リテラシーや科学リテラシーでレベル5以上の生徒が20万人いたんですよね。20万人ですから,その当時の同じところの人口が120万人ですので,120万人のうちの20万人ということであれば,大学進学者が大体60万人ですから,割合にして3分の1です。それがレベル5以上の成績を取っている。要はきちんと手厚く教育すれば高い効果が出せるということを考えると,同じ定員であれば,より出来(でき)の悪い層も入学できるという感覚で判断をしていて,出来(でき)の悪い学生を出来(でき)の悪いままに積み残してきているという恐れはないでしょうか。
 実際に高等教育の規模を考えるときに,本当に教育をきちんとやっているのか。つまり,高等教育が初等・中等教育をきちんと引き上げるような手厚い教育をやって,全体のレベルが上がるような形になっているかという議論をどこかでやりたいのです。そうしなければ,例えば人口が少なくて進学率の高い国は,先ほどの話で言えば出来(でき)の悪い人をいっぱい生み出しているのかという議論もありますし,それから,このような場で議論すると,トップクラスのリーダーとかイノベーターを養成するにはどうすべきかという議論が主流になるのですが,社会が要求しているのはそのような人ばかりではなくて,中堅としてきちんと社会を支えるような人材も要求しているわけで,こういう人たちを養成するような教育を本当に高等教育の中できちんとできているか,というようなことも含めて議論していかないといけないと思うんです。
 ですから,確かに正規分布は正しいのかもしれませんけれども,それを前提に議論するのは,少し心配がありましたので,一言申し上げます。
【永田部会長】  私も先ほどの説明の際に,正規分布がそのように変化した場合に,現在の教育内容をこれに対応して変える必要がある,ということも申し上げさせていただきました。ですから,今の有信委員の御意見はその通りだと思います。
 義本高等教育局長,どうぞ。
【義本高等教育局長】  有信委員のお話の補足でございますけれども,人生100年時代構想会議の中においても,個人の要件についての話をしておりますが,入り口のところについては意欲をしっかり見るという一方で,在学中しっかり勉強し,出口のところでしっかり付加価値を付けているんだというような質問のもとで考えているという議論がございます。今,有信委員がお話しいただきましたように,既存の大学の中,あるいは高等教育機関の中においてどれだけ付加価値を付けていくかという議論については,これまでも鈴木委員に主査をお務めいただいている制度・教育改革ワーキンググループでやっていただいてまいりましたけれども,その辺も深掘りしたという前提の上で,今の規模と連動してまいりますので,その点も併せて議論を深めていただければ有り難いと思っております。
【永田部会長】  その議論は当然必要です。育成する人材の質を上げるためになるべく良い教育をなるべく高いレベルで提供し,良い市民を,あるいは良い産業人を,良い世界を牽引(けんいん)する人材を,良い地方を牽引(けんいん)する人材を育成しようと,みんなそう思っているわけです。その上で,御存じのとおり人口というのは活力の源ですから,人口が減るという事実の影響の大きさを考えることは,やはり大切ではないかと思います。
 福田委員,どうぞ。
【福田委員】  ありがとうございます。先ほど局長がおっしゃっていたようなリカレント教育に関して,時間がないという方の中には,子育てで時間がない人や在宅介護で時間がない,という人も含まれております。また,何週間,若しくは何か月というような期間で学び直しをしたいという人も多くいて,2年も3年もかけて学ぶというような悠長な人というのは,かなり恵まれた人だけだと思います。また,お金の問題ですけれども,例えば,学び直し支援機構といったようなものを,厚生労働省の方の雇用保険基金等を分けてでも,国の制度として作っていただけるような要望も含めて,今後の検討を深掘りしていけるような内容を書いていただければ大変有り難いなと考えます。
【永田部会長】  まだまだ具体的に書くまで至りませんが,そのような議論をした方がいいと思います。
 金子委員,どうぞ。
【金子委員】  私が申し上げたいのは,やはり18歳人口自体の増減も重要でありますけれども,実は産業構造とか職業構造の変化というのは,我々が思っているよりはるかに大きな影響を与えていると思います。例えば,1995年に日本の四年制大学の進学率は約32%でした。今は52%ぐらいですから,大体二十数年で約20ポイント上がってしまったわけです。これは,よくよく考えてみると非常に不思議なことでありまして,1990年の後のバブル崩壊から,日本の家庭所得というのはほとんど上がっていないのです。上がっていないのに,何で20%ポイントも上がってしまったのか。大卒の賃金もそんなに上がっていません。一方で,高卒者の労働環境は非常に不安定になっています。一つには,高卒者が入ることができる一生を通じてのキャリアというのは非常に少なくなっています。製造業においても,あるいは一般事務職においても同じことが言えます。これはやはり産業の国際化とか,それから,事務作業のAI化によるわけです。要するに,この間の就学率の上昇というのは,何かにプルされているんじゃなくてプッシュされてきたんですね。
 そのために,景気が後退した2000年代の終わり,2010年代の初めでも,大学就学率は上がり続けるという非常に変なことが起こったわけです。ところが,これが今,逆に五,六年は景気が上昇しかけて,大卒の賃金も少し上がっているのですが,逆に就学率は余り変わらないという,またこれも妙な現象が起こっています。基本的には,長期的に見て労働需要が産業構造の変化によって非常に大きく規定されている中で,高等教育は何をすべきか考える必要があります。要するに,具体的な目標が余りないまま大学へ来る人が,当然のように作り出されてきてしまう状況になっているわけですね。
 もう一方で,例えば産業の流動化とか多様化とか皆さん簡単におっしゃいますが,大学入学者にとっては将来なんか全然見込みがつかなくなってきているわけです。それはただの知能の問題ではないと思うのです。要するに,将来の具体的なイメージが立ちにくいから学習意欲がなくなってしまう。加えて,今進められている高大接続改革では,半分ぐらい学力試験なくても入れるわけですから,人口だけの問題ではなくて,現在の状況が,高校生に学習の意欲を持ちにくくさせていると思います。
 そういう状況の中で,学生に将来の社会に対してどういうふうに意欲を持たせるか。しかも学習意欲を付けさせるかということは,大学教育の今の最大の課題です。そういう意味で,大学教育の外からの環境の問題は,大学が授業を通じて解決しなければいけないことがどんどん増えています。それをどのようにやりやすく,あるいはそれを促すことができるようになるのかということが重要だと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。小杉委員,どうぞ。
【小杉委員】  この前のおっしゃっていた正規分布の話から,皆さんの議論を聞いていてすごく違和感を抱いていました。私は,今,高卒就職などの調査をしています。ここ数年は景気が非常によいので,就職率も非常によくて,誰が就職しているか見てみると,職業高等学校の最も成績の良い人たちが就職しています。逆に成績の悪い子たちは進学します。それが現実の一つなんですね。ですから,正規分布の上から高等教育に行くわけではありません。今,高等学校の先生方は,企業がどれだけ人材育成力があるかというところにかなり注目しています。入って伸ばしてくれる企業を探して,そういうところに是非斡旋(あっせん)したいというような話をされています。
 つまり日本の教育において,産業現場,職業現場の教育力は,考えておかなければいけない一つではないかと思うのですね。特に製造業現場というのは,現場での教育力が非常に高く,机上で学ぶよりも実物を手で触りながら学ぶことを好む人たちが,そういう形で伸びる職場になっています。そこで私がリカレント教育の方が大事だと思っているのは,そのような企業の教育力があるところに入ったにしても,今起こっている産業の技術革新というのは,企業現場の中だけの話ではもう済まないところがたくさんあって,これから生産工程の仕事と事務の仕事が大きく減ると言われていますが,このような代替される可能性のある職業の人たちに対して,AIを使う側(がわ),ロボットを使いこなす側(がわ)にどうやって変えていくか,という観点です。大企業は自前で教育力がありますけれども,そうではない企業やそこで働く人たちに対して,そのような能力をどうやって提供していくかということが,社会として求められていることだと思います。
 18歳人口の上から3分の2までをとっていくというよりは,その後,様々な形で社会に出る人や,産業現場の技術の特性等によって,例えば早い時期から入る方がいいというようなタイプの職業現場というものもたくさんあるわけですから,そこで高等学校から18歳というのをこれ以上増やすという話よりも,私はこれからの変化に対して,職業人教育というところにもっとウエートを置くべきだと思っています。
【永田部会長】  千葉委員,どうぞ。
【千葉委員】  ありがとうございます。高等教育機関への25歳以上の入学者の割合が非常に低いということに関して,よく企業の方々がおっしゃいますけれども,やはり日本の雇用がジョブ型でないということが大きな原因になっていて,日本の企業がジョブ型でないために,カリキュラムも実務的ではない。そこで教える教員も,企業から認められた人ではなく,いい論文を書いた人であって,今の全体的な設計が実務者教育ということになっていないので,やはり社会人の方々はなかなか入らないということがあるのではないかと思うんですよね。
 一方で,専門学校では社会人の学び直しというのが比較的多いわけですけれども,それは非常に実務的だからです。実務資格を取ったりというような教育になっているために,学び直される方が多いということがあるのではないのかなと思います。
 また,アメリカの大学などは,やはり実務的な教育をやっているところがたくさんありますので,そういうところへ行ってみると,結構日本の企業の方がアメリカの大学には派遣されていて,日本の大学にはなかなか行っていない,こういう現状もあります。
 それからもう一つ,高校生の学力の問題なんですが,今,高等学校の学生たちで,サポート校や通信制に出る学生が相当増えてきておりまして,今,どこの高等学校でも1年生の人数が一番多くて,2年生,3年生と少なくなっていきます。それは1年時,2年時でサポート校や通信制へ出てしまう学生たちが多いからなんですね。そういう学生を高等教育機関としてどう受け入れていくのかということも考えていかなければいけません。そういうようなことを考えると,短期大学や専門学校といった手厚い教育をするところを経て,大学へ編入するというようなことも将来的には考えたら良いのではないかと思います。以上です。
【永田部会長】  益戸委員,どうぞ。
【益戸委員】  学び直し教育の議論は,あまり細かい議論ではなく,幅広く捉えて議論する方が良いと思います。事務局からの資料の中で,高等学校卒業と大学卒業では,生涯賃金で7,500万の差がある,という現実を出したことは,とても議論の参考になると思います。日本人では,給料など賃金で人生の幸せを測っているわけではないということをおっしゃる方が多いんですが,将来的にはきちんとした学び直しをすることによって,生涯賃金がこれだけ増えたとか,給料をこれだけ取り戻したというような統計が出てくると思います。
 ただ,現段階において,2040年に何が必要な学び直しかを予想することはなかなか難しいので,その責任分担などベースの議論が中心ではないでしょうか。余談ですが,学び直しを実感するためにいろいろな大学のホームページを見ましたが,余り実践的でなく,興味が湧きませんでした。それに対して専門学校は,それに対して専門学校は,具体的な職業につながる資格取得などが分かりやすく,次の仕事の想像が容易で,意欲が湧きます。学び直しは,人生100年時代や仕事が急になくなってしまうなど,予測不可能な時代ではとても重要なことです。幅広い,将来につながる議論ができればと思います。
【永田部会長】  鈴木委員,どうぞ。
【鈴木(典)委員】  今までの議論と少し違うのですが,先ほどのグローバル化に関連して,カリキュラムの世界標準化ということに向かっていかなければいけないのではないかと思っています。2040年ということですから,最近御承知のように,MOOCsというものが世界で広まっております。大体全世界で二千四,五百万人の受講者がいると想定されていますけれども,これは要するに,世界に発信するというために,キャンパスも要らない,それから先生も学校に来る必要はない,学生も学校に来る必要はないという,今までの大学の在り方を180度変えてしまう新しいタイプの教育です。実は私がいる大学でも,先生方がMOOCsを開始しておりまして,全世界に発信しているということ,さらに,学生がアメリカの大学のMOOCsのコースを自分で受信しているということが起こってきておりまして,本学に所属しながら先生はMOOCs,それから学生もMOOCsということで,今までの概念から全く違った傾向が出てきています。これが2040年ぐらいにどうなるかは少し分かりませんが,このようなこともよく考えておく必要があると私は思っております。
【永田部会長】  ありがとうございます。それでは,村田委員,どうぞ。
【村田委員】  ありがとうございます。大学への進学率の問題と,それから,中での教育の質の問題,これはどちらも同時に考えていかないといけないような問題だと思うんですね。先ほど金子委員も少しおっしゃいましたけれども,日本の学生がアメリカの学生に比べて勉強時間が極めて少ないというような大きな問題があるわけで,恐らくこれを解決しないと,様々なことをやっても教育の質の問題が抜本的に変わらないと思います。そこで少し乱暴な議論をさせていただきますと,例えば今,日本と韓国だけが,親が学費を払っています。これをHECSのような後払い制度にすれば,学生本人が自分で支払うわけですから,私立大学でしたら1回の授業が5,000円だなという形で,やはりもっと真剣に学びに向かうだろうと思うのです。同時に自分で学費を払うのであれば,今学んだ方がいいのか,あるいは先ほど益戸委員がおっしゃったように,少し社会に出てから,この学びであれば少し新たな自分の気付きがあって,自分の将来に役に立つなというように,リカレント教育にもつながっていくのではないかと思うのですね。
 これはモチベーションの問題なんですが,次にインセンティブとして,例えば定員は1.5倍までとっていいけれども,1.0まで卒業生は出してはならないとすれば,一つの大学,学部内で自然に競争が生じますから,まさに競争を学内でさせるような仕組みにするというようなこともありなのかなと思います。
 それから,もう一つの進学率についてですけれども,人生100年時代構想会議の資料にもありますように,年収が400万円以下の世帯の進学率と1,050万円以上の世帯の進学率は約倍違うんですね。そうすると,これから奨学金の制度が充実してきた場合に,低所得層の進学率が上がってまいります。このことは恐らく,全体の大学進学率を上げる要因になるでしょうし,一方で,専門職大学が出てきますと,当然これも大学進学率を上げていく要因になりますので,そのあたりを慎重に考えながら,なおかつ大学での学びに対して学生がどう主体的に,積極的に,自主的に取り組めるかといった制度設計も考えていかなければならないということではないかと思います。以上です。
【永田部会長】  前野委員,どうぞ。
【前野委員】  先ほど鈴木委員からMOOCsの話が出ましたが,私もMOOCsはとても重要なことで,我が国でも一層進めなければいけないと思っていますけれども,なかなかアメリカ,イギリス,その他の国に敵(かな)わない面があります。言語の問題もありますけれども,人材を世界から集めるという意味では,私はやはりサテライト的な考え方がとても重要ではないかと思っております。非常にお金と時間と人手がかかることなので難しいのですが,やはりロングレンジで考える場合には,日本に来たい若い方を集める。それも日本的な思考を持っていたり,日本語が分かっていたり,それから日本人の勤勉さが分かっていたり,そういったことをきちんと理解して我が国にやってくる若い方はとても重要だと思っております。そういったサテライトの議論を,単独の大学ではとても難しいので,自治体を含めたプラットフォームといったことを考えるときに,そのようなサテライトをどう考えるかという御議論をしていただければいいと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。鈴木委員の御発表のときには,海外の展開までありましたから,地域だけではなくて世界視野で考えることも含めて重要かと思います。
 そろそろ時間がまいりました。以前,情報工学のヒアリングをしたときの石川先生の御発表を思い出していただきたいのですけれども,分野と水準を考慮せずに議論することは非常に難しいと思います。ヒアリングではAI,テクノロジーについての議論だったわけです。そのときに,少数で良いけれどトップリーダーの層として必要なのは,コンピューターのハードそのものを開発したり,これまでにないアルゴリズムそのものを開発したりする人材。次の層は,アルゴリズムが書ける,それからAIも使いこなせる人材。その次の層は,一般的なボタンを押せば使えるようなことができる人というプレゼンがあって,それぞれ育成するためには6年,4年,2年ぐらいの時間が必要である,というプレゼンでした。そのときに私がお聞きしたのは,必要な年数の逆数が人数と考えられるのではないか,ということを申し上げました。
 ですから,例えばハードのコンピューターそのもの,例えば量子コンピューターを開発する人材がいなくなったら困るわけですから,そのような人材が一体どれぐらい必要なのか。次にそれができたとすれば,アルゴリズムが書ける人は一体どのぐらい必要なのか。これらの人材は,いずれも我が国において圧倒的に足りていません。今のはAIに関わる人材の話ですけれども,では医者はどうなのか,あるいは水産業はどうなのか,やはりそれぞれ分野のことを考えながらやらないと,一律的に何人で良いという問題ではないと思うのです。
 こうした趣旨の内容がこの文章中には入っており,詳しくは書いておりませんけれども,機能分化であるとか,個性とか,役割といった内容が出てきています。そこで,委員の先生方には是非とも次回の会議までの間に,「引き続き検討を進める事項」と「今後検討を始める事項」というところについてお一人ずつ発表してもらうつもりで考えてもらいたいと思います。私はこのような考えであるということを,リカレントであるとか地域であるとか,どの観点でも結構ですし,全部含めてでも結構ですが,個々の先生方にお願いをして,次の会議で御発表いただけるようにお願いしたいと思います。自由に考えていただいて結構です。要するに,どうしても皆さんそれぞれに様々な観点から御発言いただいております。しかし,全ての観点を含めてこうした提案ができるのだ,ということ述べていただきたいので,内容は偏っていても結構です。議論ですので,いろいろな方々の意見を採り入れて,何とかこの国の未来を作っていこうとしているわけです。
 ですから,例えば,私なら規模は半分にするとか,私なら規模は維持したまま特に高いレベルの層だけは絶対キープするためにこうするという意見でも結構です。あるいは,我が国の国民全体のレベルを上げるために,何が何でもこの部分の教育に力を入れる,その結果全体は減らない,というように,いろいろお考えいただきたいのです。是非とも次回の会議までにお考えいただいて,それぞれ皆様の個性ある,引き続きの検討案を是非ともお考えいただいて,次回御意見を賜れればと思います。
 本日は,頭出しでしたので,いよいよ来年1回目の会議から更に議論を深めていきたいと思います。

(3)人生100年時代構想会議の中間報告について,資料3に基づき事務局から説明があった。
【永田部会長】  続いて,人生100年時代構想会議の中間まとめについて御説明いただきたいと思います。
 それでは,資料3の説明を,事務局からお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  それでは,資料3を御覧ください。人生100年時代構想会議において,先日まとめられた中間報告でございます。
 1ページめくっていただきまして,目次とございますけれども,この中では第4章に高等教育の無償化というのがございまして,その後,第9章の来年夏に向けての検討継続事項の部分についても大学改革等の記述がございます。
 該当の箇所をざっと御覧いただきますと,第4章の高等教育の無償化については,6,7,8ページに記述がございますけれども,基本的には前回の会議で御説明した2兆円パッケージの内容とほぼ同一の内容ですので,細かい説明は省略をさせていただきますが,6ページから基本的な考え方があり,7ページから具体的内容として,第一に授業料の減免措置について。その下の段落で,第二に給付型奨学金についてという記述がございます。そして8ページに,支援対象者の要件,支援措置の対象となる大学等の要件とありまして,9ページに実施時期として2020年4月から実施をするというような記述がございます。
 今回,これ以外の事項として記載されている高等教育関係につきまして,12ページをごらんください。来年夏に向けての検討継続事項として,括弧1にリカレント教育ということで,人生100年時代においては,教育を受けて会社に入り,定年で引退して現役を終え,老後の暮らしを送るという単線型の人生を全員が一斉に送るのではなく,個々人が人生を再設計し,一人一人のライフスタイルに応じたキャリア選択を行い,新たなステージで求められる能力・スキルを身に付ける機会が提供されることが重要である。こうした教育と社会の循環システムの中心となるのが「リカレント教育(学び直し)」であるとしております。
 そして次の段落で,様々な方がいる中で,誰にとっても,いつでも学び直し,やり直しができる社会を作るため,幾つになっても誰にでも,学び直しと新しいチャレンジの機会を確保する。
 そして次の段落で,「このため」ということで,リカレント教育を抜本的に拡充するとともに,現役世代のキャリアアップ,中高年の再就職支援,様々な学校で得た単位を積み上げて卒業資格として認める仕組みの活用など,誰もが幾つになっても新たな活躍の機会に挑戦できるような環境整備を行う。
 そして次の段落,「この際」ということで4点ございまして,第一に,全ての人が子供の頃から自分の将来やキャリアを考えるキャリア教育の充実。第二に,大学もリカレント教育の観点から,地域や産業界との連携を強化することにより,多様な教育プログラムを開発・実施し,産業振興と地域創生の核となることが求められる。第三に,リカレント教育の拠点は大学に限られるものではなく,既存の教育産業や新規参入企業が切磋琢磨(せっさたくま)し,EdTechなどのオンラインを活用した学習技術も折り込みながら,様々な学習が選択できる体制にしていく。そして第四に,リカレント教育の効果や,受講者・企業にとってのメリットを「見える化」するとともに,企業における実態を踏まえつつ,中途採用の拡大等人材採用の多元化を図ることが求められる。
 次に,括弧2として,HECS等諸外国の事例を参考とした検討ということで,オーストラリアの授業料の後払いの方式であるHECS等,このような外国の事例も参考としつつ,中間所得層におけるアクセスの機会均等について検討を継続する。
 次に,括弧3,大学改革や大学教育の質の向上ということで,まず第一に,社会の新たなニーズに柔軟に対応できるカリキュラム編成が行われるよう,大学の外部の人材がその編成に関わる方策を検討する必要がある。また,社会の最前線で実務に当たる人材を教員として登用するなど,外部人材の積極的な活用を検討すべき。そして,少子化で18歳人口が減少するという中で,大学の組織再編等を促進するため,大学の連携・統合を可能とする枠組みの整備に向けた検討が必要。
 次の段落で,国立大学において機能分化の取組が進められているように,各大学の役割や特色・強みの明確化を一層進めることが必要である。その後に,東京大学等のデータを引用して,我が国の大学生は学習時間が非常に短い。入学してからどれだけ付加価値が付けられたのか,学習成果を可視化するための客観的な指標を作ることが求められる。これらの課題については,他の検討の場でも議論が行われている。この中央教育審議会の場がそうですけれども,議論が行われており,本構想会議での議論と並行して検討を進めることを求めるといった内容の中間報告が出ております。
 以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。これについては,本日は報告のみで御質問は受けませんけれども,こういうような考え方が政府から出ているというのは,参考になる部分もあるかと思います。
 それでは,この中央教育審議会も第9期になって以降,12月までの8か月間大変お世話になりました。どうぞよいお年をお迎えいただきたいと思います。

―― 了 ――

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室