法科大学院等特別委員会(第84回) 議事録

1.日時

平成30年2月5日(月曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室(中央合同庁舎第7号館東館3階)

3.議題

  1. 法科大学院教育等の改善・充実について
  2. その他

4.議事録

【井上座長】
 所定の時刻になりましたので,第84回中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会を開催させていただきます。
 本日は,これまでの議論に引き続き,法科大学教育の改善・充実方策について御議論いただきたいと思います。本日も活発な御議論をよろしくお願いします。
 まず,事務局の方から配布資料の確認をしてください。

【大月専門職大学院室長】
 お手元に議事次第を御用意願います。4の配布資料にありますとおりに,資料1と資料2と,参考資料1から参考資料4まで御用意しております。不足,落丁等ありましたら,事務局までおっしゃってください。また,過去の資料はタブレット端末に保管しておりますけれども,使い方等が不明な点がありましたら,遠慮なく事務局までおっしゃってください。以上でございます。

【井上座長】
 資料についてはただいまのとおりです。
 前回は,法科大学院と法学部との連携強化に向けた方策や,法学未修者コースでの教育の在り方等について御議論を頂いたところですが,本日は,これまでの議論を踏まえ,法科大学院等の教育の改善・充実に向けた基本的な方向性(案)について御議論いただければと思います。
 事務局の方で資料を準備してくださっていますので,まず,それについての御説明をお伺いしたいと思います。

【大月専門職大学院室長】
 お手元に資料1を御用意願います。本資料は,昨年3月からの本委員会での御議論や,前回11月の本委員会の資料3-2や3-3,3-1を踏まえまして,事務局において,法科大学院等の抜本的な教育の改善・充実に向けた基本的な方向性(案)というものを作成させていただきました。本資料に沿って御説明いたします。
 最初に本文書の性格を記載しております。平成27年6月の政府の推進会議決定を踏まえ,法科大学院等の教育の改善・充実に向けた方策について,以下のような基本的な方向性を前提に,所要の施策を可能なものから直ちに推進することを求めると。さらに,法科大学院の立場からの司法試験・司法修習との有機的な連携の在り方も含め,更に検討を深める事項を引き続き議論していくというものであります。
 「はじめに」の箇所でございますが,こちらは,これまでの法科大学院教育の成果と現在の課題と,それに対する改善の大きな方向性を簡潔に記載しております。まず一つ目の丸で,法科大学院修了資格による司法試験の合格者数は約2万人を超えていること。二つ目の丸で,法科大学院による教育の成果として,法科大学院生のみならず,受入れ側の法律事務所や企業等からも評価されており,法曹として第一線で活躍する者も多数輩出されていること。近年,既修者の修了生の約7割は修了後3年以内に司法試験に合格していることを記載しています。一方で,後半に,法学未修者コースの累積合格率は5割に達せず,法科大学院志願者・入学者は減少を続けていることを記載しております。
 その下の最後の丸でございますが,グローバル化の更なる進展や第4次産業革命によるビジネスモデルの転換等が行われる中で,法科大学院の創設時に教育理念とされた,専門的な法知識を確実に習得,創造的な思考力の育成や先端的な法領域について基本的な理解を得るということが,ますます求められていると。これらの状況を踏まえて,プロセスとして法曹を養成するという理念を堅持しつつ,法曹志望者を増やし,法科大学院教育によって社会に有為な人材として輩出できるよう制度改革が必要であるとしております。
 2ページ目でございますが,「法科大学院等の教育の改善・充実に向けた基本的な考え方」ということで,正にそういうものを簡潔に記したものでございます。一つ目の丸で,法科大学院について,優れた質を有する志願者の回復に向け,多様な法曹の輩出や地方における法曹養成機能に留意しつつ,学生の資質・能力に応じた期間で法曹になることができる道を確保するなど,既修者コースと未修者コースともにその制度改革を進めるべきとしております。
 二つ目の丸で,法科大学院の直近の教育実績や法曹の活躍状況について社会に必ずしも正確に伝わっていないことや,法学部が高校生等にとって以前と比べて魅力的な進学先に映っていないことを踏まえ,法科大学院と法学部はより連携を図り,大学における法学教育全体の在り方を検討し,有為な多くの学生等を積極的に呼び込むことが求められるとしております。
 その下の丸で,時間的・経済的な負担が法曹志望者減少の一因となっているとの指摘もあり,優れた資質と明確な志望を有する者については,法学部を経て法科大学院まで5年間で修了できる仕組みを充実・確立し,法曹への進路選択の魅力を高めることも重要であるとしております。
 その下の丸で,未修者コースについては,様々なバックグラウンドを有する質の高い法曹を生み出してきたものの,純粋未修者等の入学は減少しており,未修者コース入学者に対する教育の更なる改善が求められるとしております。
 その下の丸で,未修者コースについて,専門分野を生かして法曹として実績を積んでいる者の活躍状況を広報するなど有為な人材の確保を図りつつ,その在り方や教育方法について制度全体として質保証を図る方策を更に検討し,純粋未修者や十分は実務経験を有する者が入学者の多数を占めることを目指すべきとしております。
 その下が,具体的な改善・充実方策でございます。一つ目が,「法科大学院と法学部等との連携強化について」でございます。その下の丸でございますが,法科大学院制度の創設に当たっては独立性の確保が求められたことから,多くの法科大学院が独立研究科として設置され,現在に至っております。
 その次,3ページ目の一番上でございますが,独立研究科として設置されたことは,組織としての決定がスムーズになるなどのメリットがあった一方で,法学部生の一定程度を占める法曹志望者が,法曹を目指して法学部と法科大学院で一貫して法律の学修を進めることを妨げるような側面も生じているとしております。
 その下の丸で,そのため,独立研究科以外の柔軟な組織形態を採用することが可能であることを明確化いたします。加えて,専門職大学院の必要専任教員のうち算定の必要とされるおおむね7割,8割程度で学部との兼務を認める制度改正については,昨年12月の大学分科会でも御了解されたところで,現在,事務的に作業を進めておりますが,このことについて法科大学院において活用するべきとしております。
 その下,三つ目の丸で,法学部に法曹コースの設置を奨励し,法学部が自校又は他校の法科大学院と連携して体系的・一貫的な教育課程を編成することにより,法曹志望が明確な学生等に対しては学部段階からより効果的な教育を行うとしております。
 その下の丸で,法学部の法曹コースにおいてより充実した教育を行うことにより,法科大学院への進学に当たっては,法学部の学生は既修コースへの入学を基本とするとしております。
 その下の丸で,法学部においては,4年の法曹コース設置,その他の強化策を行い,学部4年間と法科大学院2年間の学修によって法曹になれるようにすること。さらに,優れた資質・能力を有する者が早期に法科大学院に進学できる仕組みを明確化し,時間的・経済的負担の軽減を図るとしております。
 「2.法学部の『法曹コース』の在り方について」でありますが,繰り返しになりますが,法曹志望が明確な学生等に対しては,早期卒業・飛び入学の利用により一貫的に教育課程を実施するなど,連携の強化を図るべきとしております。
 その下,下から二つ目の丸でございますが,早期卒業・飛び入学を利用して法科大学院の既修者コースに入学する者は着実に増えてはいるものの,数はなお限られていると。ただ,大学の自主的な取組により,法科大学院との連携により法学部に法曹コースの設置が進められているということ。具体的には,加算プログラムで採択された平成30年度の取組も19大学に達しており,今後大幅に増加することが見込まれるとしております。
 しかし,最後の丸でございますが,現在の法曹コースというのは,開始年次や学修内容は大学によって様々であることから,次,4ページ目になりますけれども,大学の取組が学部における教育の質が確保されながら推進されるよう,法科大学院に進学する者が法学部において修得すべき資質・能力を整理することが必要であるとしております。現在,法科大学院に進学する者が法学部で学ぶ内容についての基本的な考え方の研究を,慶応義塾大学等に委託し行っていただいているところでございます。
 二つ目の丸でございますが,法曹コースへの学生の振り分けは2年次進級時点以降が適当と考えられますが,各大学の実情に応じて柔軟に設定するとしております。
 その下,三つ目の丸ですが,外国語科目など一般教養科目についても,学部段階において幅広く履修するとしております。
 その下の丸ですが,教育課程の編成の柔軟性を確保するため,法科大学院に係る既修者認定の仕組みや,法科大学院入学前の既修得単位を法科大学院入学後において修得したとみなす仕組みについて,現行では上限30単位でありますが,それを一定程度緩和することとしております。
 その下の丸ですが,緩和される措置を活用するためにも,法科大学院で開講される科目,例えば,基礎法学や隣接科目や法律基本科目と関連が深い展開・先端科目について,優秀な学部生が受講しやすくなるよう科目等履修生や共同開講という制度を推進できるよう,留意事項の整理が必要であるとしております。
 その下の丸ですが,これらの方策により,平成27年の政府の推進会議決定で求められたことの一つである,法学部の学生は学部3年間に加えて法科大学院2年間で法曹になる仕組みを充実・確立するとしております。さらに,質保証が必要であることから,これまで早期卒業・飛び入学制度を活用して既修者コースに入学した学生の修了後1年目の司法試験合格率は約57%と,既修者平均より10%以上高くなっておりますが,新たな仕組みの下でもこの水準の維持・向上が期待されるとしております。
 最後の丸でございますが,学部段階における幅広い学修を担保するため,優秀な学生が学部3年次終了時点で法科大学院に進学するに当たっては,飛び入学ではなく,主として早期卒業を活用するものとしています。法学部の法曹コースに在籍してしっかりと学修をしている学生が,予見可能性を持って法科大学院に進学できるようにする必要があると考えており,学校教育法に規定されている現行の早期卒業制度が優秀な学生を対象とした例外的な取扱いであることから,前回の本委員会で御意見がありましたが,通知を見直すことで対応する,その他の手段も含めてその在り方について検討するということであります。
 5ページ目の一番上でありますけれども,法学部において法曹コースを設置する際には,自校又は他校の法科大学院と連携,協議することを必要とする。地域にある法科大学院を設置していない大学の法学部が,他大学の法科大学院と連携して法曹コースを設置することも期待されるとしております。
 二つ目の丸でありますが,法科大学院と法曹コースの接続を確保するため,法曹コースを履修し,法科大学院進学時に法曹コースを修了する予定である学部3年生や学部4年生を対象とする入学者選抜枠を,例えば各法科大学院の定員の5割程度を上限として認めるとしています。ただし,定員と実員にかい離がある現状では,この定員は実員として考えることになると考えております。また,本案の定員とは,既修者コースの定員ではなくて,未修者コースと既修者コースを合わせた定員と考えているところでございます。
 この既修者コースの入学者選抜枠については,書類審査や面接等を重視する推薦入試方式を始め,当該選抜枠の出願資格や合格判定の基準等は各法科大学院等において定めるものとしますが,推薦入試に係る方針については引き続き検討するとしております。当該選抜枠による入学試験において入学者の質が確保されているかどうか,また,自校と他校の法曹コース学生を公平に取り扱っているかどうかは,認証評価で確認するとしております。また,各法科大学院の方針に基づき,地方枠を設けることも期待されるとしております。
 その下の丸ですが,法科大学院については,入学者選抜を始め,情報公開を徹底してまいりましたけれども,一貫した教育課程の内容等についても公表するとしております。
 「3.法学未修者教育の質の改善について」ということで,最初の二つは現状を記載しているところでございます。その下の一番下の丸ですが,未修者コース入学者に占める純粋未修者や実務経験者の割合を増やすことが望ましいものの,現在の状況では,一定割合以上入学させることについて努力義務を課すのは入学者の質を確保する観点から適当でなく,3割以上と定めた告示を見直すのが適当であるとしております。本告示の見直しは昨年12月の大学分科会でも了承されており,現在,事務的に作業を進めております。
 6ページ目でございますが,一番上の丸です。共通到達度確認試験など進級に当たっての質保証プロセスを導入し,未修者コースについて質の保証の制度化が必要であるとしております。
 その下の丸で,法学未修者教育に必要とされるきめ細かな指導を効果的に行っている法科大学院について,教育実績を踏まえつつ,重点的に支援する必要があるとしております。
 その下の丸で,新しい加算プログラムにおいて,未修者教育を効果的に行う法科大学院について,より安定的・継続的に支援することが必要であり,手厚い教育体制を確保するため,複数法科大学院で連携して実施することなどを促進する仕組みとするべきとしております。また,法学部の法曹コースに純粋未修者の教育機能を持たせる場合には,併せて評価するとしております。
 その下,四つ目の丸ですが,各大学の優れた未修者教育の事例・手法を体系化するとともに,法科大学院全体において法学未修者に対する効果的な教育方法を共有することが必要であり,効果的な未修者教育の手法を共有することや,複数法科大学院が連携した教育の実施等を促進するための具体的な方策については,引き続き検討するとしております。
 その下の丸でございます。法学未修者に対する教育課程の工夫ができるように,法科大学院の未修者の法律基本科目と学部における相当する科目の共同開講が可能となるよう,他の分野の事例を踏まえつつ,留意事項について整理することが必要であるとしております。
 その下の丸ですが,法科大学院入学前の先行履修など未修者に対する教育の工夫の範囲内として認められ得る内容について,改めて明確化を行うとしております。
 その下の丸でございますが,法科大学院は受け入れた学生が修了できるようにきめ細かな指導を行うこととしております。また,修了生に対しても必要な助言を行うことや,十分な実務経験を有する有為な者が法科大学院に入学することが期待されることから,これらが促進されるよう必要な検討を行うとしております。
 その他検討すべき事項で,「法学部の教育の改善・充実策等について」でございますが,法学部の教育の在り方,役割,育成すべき人材像について,卒業生の進路の多様性を踏まえつつ検討する必要があるとしております。
 7ページ目でございますが,改善方策の検討に当たっては,各大学の事情を考慮する必要があるとしております。
 一つ飛ばしまして,上から三つ目の丸ですが,社会において法律が実際にどのように適用され,法曹がどのような活動をしているかを学生が学ぶことができるように,法律実務家等による講義や講演の機会を設けることなど,一層の工夫をすることが期待されるとしております。
 その下の丸ですが,法曹コース以外にも学生の進路希望等に応じたコースを置くことや履修モデルを示すことなどにより,多様な学生の進路に応じた教育を提供していることを明確化することについて引き続き検討するとしております。
 最後の部分ですが,理論と実務に精通した研究者を養成し,高度な教育を持続可能とするために必要な法科大学院と法学系大学院との連携方策について,引き続き検討するとしております。
 事務局からの資料の説明は以上でございますが,本日御欠席の大沢委員の御意見を机上配布資料としてお配りさせていただいております。事務局で資料に沿って読み上げさせていただきます。お手元に大沢委員のお名前付きの資料を御用意させていただいております。
 三権の一角を担う法曹界に優秀な人材を呼び込むため,法科大学院と法学部の連携を強化し,教育の質向上を目指す今回の方向性については基本的に賛成です。法学部に「法曹コース」を設け,意欲と能力のある学生には,学部3年と法科大学院2年で司法試験の受験資格を得るルートを確保することは必要な方策と思われます。このコースに関しては,法科大学院を持たない地方の大学の法学部も,他大学の法科大学院と連携して設置できるようにすることが大切だと感じます。地方の大学に通いながら法曹の道を目指せる環境を整える必要があり,ICTを積極的に活用することが望まれます。教育の質の確保を前提として財政的な支援を検討することも,今後の課題になると思います。
 一方で,法曹界に多様な人材を招くには,法律以外の学問を専攻したり社会で豊富な実務経験を積んだりした未修者が,法科大学院に入学して真面目に勉強すれば司法試験に合格できるような教育体制を整えることが重要です。これまでに法学部出身者でない人たちが法科大学院を経て法律家になり,企業や行政で期待以上の活躍をしているケースは少なくありません。未修者が法曹になることの意義,実際の社会で受けている評価を,今一度しっかり明記していただければと思います。
 また,最後の「社会において法曹がどのような活動をしているかを学生が学ぶことができるように,法律実務家等による講義や講演の機会を設けることなど一層の工夫をすることが期待される」というのは必要な指摘だと賛同します。更に言えば,大学にとどまらず,
 高校などの法教育の場面でも,法律実務家が積極的に教育現場に足を運び,裁判官,検察官,弁護士のやりがいなどについて,自らの体験を交えて語り掛けてほしいと希望します。以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございました。それでは,これから意見交換に入るわけですが,その前に,まず,ただいまの事務局からの説明について,不明な点等ございましたら,御質問いただきたいと思います。御意見はその後,伺っていくことにさせていただきます。どなたからでも。
 特にお申出がありませんので,意見交換の中でまた御不明なところが生じたりした場合には,それを含めて御発言いただければと思います。それでは,意見交換に入ります。事務局からの説明では,「Ⅱ.法科大学院等の教育の改善・充実方策」に掲げられている三つの方策の中でも,特に法学未修者教育の在り方について,具体的な方策を検討すべき事項が相対的に多いように思いますので,最初に,この未修者教育の在り方から意見交換を行いたいと思います。御意見のおありの方はどなたからでも。いかがでしょうか。
 清原委員。

【清原委員】
 ありがとうございます。三鷹市長の清原です。未修者教育の対応の充実が必要であるということは,私も痛感しています。とりわけ今,インターネット,AI等の技術革新によりまして,例えば経済における仮想通貨の台頭と,それに関わるトラブルの発生,また,消費者行動の多様化,テレワークの普及を含む働き方改革の推進等によりまして,生活様式が変化しています。また,自治体の立場で申し上げますと,2018年というのは,国民健康保険の都道府県単位化,介護保険,後期高齢者医療の保険税の見直しとか,本当に「2018年度問題」として共有しているところですが,正に現代社会の多様化に適応できる司法の在り方を考えるときに,司法における多様な人材の確保が期待されています。
 そこで今,改めて未修者教育の充実を期待する立場で申し上げますと,加算プログラムによる支援で私も委員を務めさせていただいている関係で,法科大学院の皆様の熱心な取組を聞かせていただいているのですが,法科大学院の教育の質を高めることを目指して複数の法科大学院が連携して提案する取組について,高く評価をしてきた経過があります。
 特に優れた取組として採択された大学間連携のプログラムとしては,例えば京都大学と同志社大学で必修科目を中心とした単位互換プログラムがありますし,神戸大学と広島大学では広島大学のカリキュラム改革等による抜本的な教育改革などが注目されています。しかし現在のところ,未修者教育に特化した連携の取組は,まだ顕在化はしていませんし,採択がされていないようです。未修者教育が法科大学院にとって一定の負担があるという生の声も聞かせていただいている立場としては,共同開講であるとか,複数の大学が連携していく道筋というのがあるのではないかなと思っています。
 さらに,この加算プログラムというのは予算が減少していく傾向がございまして,加算プログラムの中で未修者教育のこうした複数の大学院の取組を補助していくといっても,資源が足りないと言えないわけではありません。この基本的な方向性というのを受けて,できればこの加算プログラムとは別枠で未修者教育に特化した補助の枠が確保されるということがなければ,なかなか法科大学院の皆様のお取組としても,未修者教育がどれだけ必要だと考えても,推進は難しいのではないかなと感じております。今回,未修者教育の質の改善について多くの項目が書かれていますが,それが実効性を担保されるためには,更なる文部科学省を始め,国の財源措置などの努力が必要ではないかなと,このように感じています。この点については以上です。ありがとうございます。

【井上座長】
 ありがとうございました。ほかの方,いかがでしょうか。

【笠井委員】
 今回の未修者教育について,多数の論点が掲げられたことに賛成したいと思います。ほかに私なりに付け加えさせていただきますと,これまで私自身もこの委員会で発言してきたところでありますけれども,若手の実務家の教員としての有効活用ということを再度意識的に行っていただけないかと考えます。
 法科大学院公的支援見直し強化加算プログラムの採択事例を見ますと,正課内外での実務家教員による学習支援の取組が多くの大学で行われております。その中には,法科大学院修了後間もない若手の実務家が,学生時代の学修経験を踏まえて,その学修経験があるからこそ有効な学修支援を行うことができ,教育効果が発揮あるいは期待されているという取組が,多く見られるところであります。
 ただ,実務家教員は,おおむね5年以上の実務経験を有し,かつ,高度の実務能力ということが要件とされておりますので,専任教員として若手教員が登用されるということがなかなかしにくいところで,そのために,アカデミックアドバイザーなどの身分によって正課外で学修支援が行われるという実情にあるわけです。しかし,一歩踏み込んで,法科大学院修了後間もない若手の実務家が,法科大学院生を正課内の教育において支援できないかということを検討してみる価値があるのではないかと思います。もとより,法律基本科目等について,若手のかつ実務家という者が教えることが果たして適切かどうかということも含めて問題となる余地はありますので,その点の検討は踏まえつつも前向きに取り組めないだろうかと思う次第です。
 以上です。

【井上座長】
 今,笠井委員が言われた点は,研究者教員についても5年の教育歴という縛りがあり,これについては前から問題になっていたわけですけれども,設置基準等で柔軟化を図ってもらったものの,まだまだ厳しいものですから,5年という縛りが果たして合理的なものかどうか,実務家だけに限らず,実情に合わせて見直しをしていくということも必要になるかもしれません。そのような縛りが設けられたことの基本となる考え方があったわけですが,それと果たして矛盾を来すのかどうか,矛盾を来さない形で柔軟化ということも,あるいは可能なのかもしれません。その辺は検討課題だと思います。
 磯村委員,どうぞ。

【磯村委員】
 今,笠井委員がおっしゃった問題に直接関係する幾つかの問題点があるかと思います。一つは,とりわけ資料6ページの,法学未修者に対する教育課程の工夫ができるようにというところですけれども,これは当初の議論を思い出すと,法学部の授業と法科大学院の授業を共同開講するというのはもともと絶対許されないというところからスタートしていたので,ここのところは,ある意味では非常に大きな方針の変更というところがあると思います。
 現在の状況では,一定の制限を設けつつこういう方向に動くというのは,むしろ適切であると思いますけれども,考えなければいけない点は,今,笠井委員がおっしゃった教える側(がわ)の資格というのももちろんありますけれども,授業の方法や授業のクラス人数を考えたときに,例えば従来,法科大学院における法律基本科目の授業は1クラス50人を標準とするとか,あるいはできるだけ双方向性を重視した授業を行うということが議論されていたかと思います。未修者教育の,とりわけ初年度の授業について,どれぐらい従来の基準を緩和することができるのかという議論をあわせてする必要があるかと思います。また,笠井委員の御指摘の問題は,法律基本科目についても,例えば体系性を必要とする授業科目と,どちらかといえばそれを補助する演習科目的な授業で教員資格を分けて考えるという余地があるかと思います。現在でも,実務家教員についてはおおむね5年の実務経験という要件が厳しく維持されているのですけれども,研究者教員については2年の教育実績があれば,原則として経験年数としては足り,かつ,場合によっては,十分な研究業績があって,教育能力がそれによって担保されるときには,この期間についても一定の割合で例外が認められています。そういう点も含めて,総合的にどこまで緩めていけるかという議論をする必要があるのではないかと感じているところです。以上でございます。

【井上座長】
 清原委員。

【清原委員】
 先ほども触れるべきでした。6ページ,未修者教育の最後の丸について,「法科大学院は引き続き厳格な成績評価等を行う」と始まる文の最後のところで,「十分な実務経験を有する有為な者が法科大学院に入学することが期待されることから,これらが促進されるよう必要な検討」とあります。三鷹市のような自治体では,司法の専門家を必要としているので,ロースクールの卒業生で弁護士資格を持った人や法務博士を採用する傾向が徐々に高まってきています。同時に,自治体職員の経験者で改めて法科大学院を受験するという職員がそれなりにいるのですね。もちろん実務で企業等に働いている人もそうですが,しかしそれを躊躇(ちゅうちょ)させるのは,一定程度経済的な面で困難があるということがあります。そこで,文部科学省が努力するだけではなくて,ほかの省の例えばこういう取組があります。
 厚生労働省の教育訓練給付金制度というもので,知る人ぞ知る制度になっているかもしれませんが,専門実践教育訓練という枠組みでは,法科大学院についても,そこで学ぶことを支援する教育訓練給付でもあります。ただ,条件が厳しくて,法科大学院については最新の司法試験合格率が全国平均以上であること云々(うんぬん)がありまして,東京大学,京都大学,神戸大学,慶応義塾大学,早稲田大学の未修・既修講座と,あと九州大学の既修講座しか対象にならない厳しいものになっております。けれども,未修者教育を本当に国が奨励するのであれば,こうした他省の取組とも連携をしながら,実務にたけた候補が法科大学院を選択できるような,そういうような,文部科学省の内部だけで考えない,法務省だけで考えない,そうした取組も必要かなということを提案したいと思います。

【井上座長】
 片山委員。

【片山委員】
 未修教育の充実という点に関しましては,様々なバックグラウンドを持った社会人の方々に法曹に進んでいただきたいという点があろうかと思います。その点からしますと,5ページから6ページにかけての質の改善の部分におきまして,その実質的な内容に関して踏み込んだ記載が余り見当たらないという点が,若干気になるところでございます。
 この会議でもしばしば指摘されてきた点ですけれども,1ページ目のところに戻りますと,三つ目の丸ですね。これは当初は冒頭の一番初めのところに置かれておりましたが,三つ目に下がっております。この,グローバル化の更なる進展や,第4次産業革命によるビジネスモデルの転換等が行われる中で,創造的な思考力の育成や先端的な法領域について基本的な理解を得ることがますます求められている。この点が,正に法科大学院の未修者コースの中で,特に人材育成の一つの大きな重要な視点になるかと思っております。ですから,この部分の記述を生かせるような形で,未修者教育の充実化のところの記載もお書きいただければ有り難いと思っております。
 例えば6ページの一番上から三つ目のところの加算プログラム,ここでは複数の法科大学院での連携の推進に言及されていますが,そういうところで,むしろ,このグローバル化の推進とか第4次産業革命のビジネスモデルに対応しているような人材養成を,未修社会人の方について実施できるきちんとした仕組みを持っている,そういったプログラムを推進していくというような書きぶりが,ここでもあっていいと思った次第でございます。

【井上座長】
 問題は,それが未修に特化した問題かどうかということで,それで,ここのところに特に頭出しはしておらず,最初のところに置いているのだろうと思います。
 どうぞ。

【杉山委員】
 5ページの一番下のところにあります,法学系課程以外の出身者,実務経験者の割合は3割以上とした告示を見直すのが妥当であると。ここにも書いてあるように,今日現在の現状では,断腸の思いで致し方ないのかなと思いますが,これがこのままずっと続いて,じりじりじり貧になったときに,忘れ去られて切り捨てられないかというのが非常に心配で,何かもう1回,今,いろいろ考えていただいた施策がありますけれども,なかなかうまくいかなかったときに,もう一度考える何かきっかけのようなものを,我々自身,縛っておいた方がいいのかなという気がしております。

【井上座長】
 多分今までは,これを外すとマイナス評価になるという,そういう意味での縛りだったのですけれども,プラスの方向での縛りということも考えられるのかもしれないと思います。
 酒井委員,どうぞ。

【酒井委員】
 主に2点あります。まず,6ページの上から四つ目の白丸に関連するところです。各大学において行われている優れた未修者教育の事例・手法を体系化するとともに,それを共有するというような書かれ方がしていますが,これが果たして,研究する会議体のようなものができて,研究を進めて共有するということにするのか,モデル校のようなものを設置して,実地において研究をするのかという,大きく二つの方向があるかと思います。いずれもできればもちろんベストだとは思いますが,特に実際に入学前の段階,入学後の進級等が問題になる段階,そして司法試験対策の段階という各プロセスを横断して改善策を検討すると,それは実地においてされるべきと。それが最も効果的で,そこで体系化した手法を情報として共有していくということが合理的であろうと考えております。そして,そこには,もう先に委員の皆様方からも出ておりますが,予算付けなしにはできないということは当然あると思いますので,そこは是非考慮していただきたいと考えるところです。
 一方で,今,こちらの資料に主に挙がっておりますのが,そういった研究していく手法についてですとか,あとは複数法科大学院が連携して教育を実施していくことについては言及がありますが,果たして連携校ですとか,モデル校と言われるようなところになっていくのか,そういうところだけが充実していけばよいのかという問題は一方にあると思いまして,特に地方における未修コースの意義というのが,法曹コースができて,法科大学院と法学部の連携がワークしていくことで,よりクローズアップされるところがあるのではないかと考えています。
 特に法曹コースができますと,法学部出身の若手は法曹コースを経て法科大学院に行くということが規定化して,それがうまくワークすることがもちろん目指されるということになると思いますが,そうすると,地方での社会人経験者や他学部の出身者は,ではどういうコースを経て法曹を目指していくことがよいのかという,非常に選択が難しい状況が生まれてくるのではないかということを懸念しています。そのときに,きちんとアクセスのできる場所に未修コースが受皿としてあると。そして,そこがきちんとワークをしているということの意義は非常に大きく重要だと思いますので,各地域において未修コースの果たす役割が違ってくる,いろいろな色彩があるということは,是非押さえて盛り込めるとよいのではないかということを考えるところです。
 今,現時点で未修コースの現状が非常に厳しいというのは,これはもう否定できないところではあると思いますが,法曹コースができてワークした後,その数年後,10年後とかになるのかもしれないですが,そのときに未修コースが持つ意義と,どこにどのようにあるといいのかというところを総合的に見て,限られた予算をどう配分するかという非常に難しい問題ではありますけれども,そういった予算付けも決めていくべきなのではないかと考えます。以上です。

【井上座長】
 この点もずっと最初から課題だったわけですけれども,なかなか決め手がない。制度論としてはそういうことだとは思うのですが,具体的な方策,教育の内容・方法について,各校ともこれまでも知恵を絞ってきたところですけれども,なかなか決め手がない。ですから,体系化してモデル化して共有するというのも,具体的にこういうやり方が有効だというものがなかなか出てこなかったというのが現実だと思うのです。でも,そういうことを言っていられないので,ともかく,もう一歩踏み込んで,それを検討する組織を設けるか,あるいはどこかの法科大学院に委託して,具体的に試みてもらう。そして,それを踏まえて具体的な提言をしていかないと,もうもたなくなっているのではないかということだと思います。
 その上で,ある内容や方法の教育を実践するには,当然,それなりの規模とか,あるいは教員の手当てとかが必要となるわけで,そうなると,御懸念のように,そういうことに耐え得ないような小規模のところだとか,あるいは法科大学院がないところとか,そういうところについては格差が大きくなるのは避け得ないところがあるのですが,しかし,具体的な手を打たないと,大本まで立ちゆかなくなってしまうと懸念されるのです。
 どうぞ,潮見委員。

【潮見委員】
 先ほど清原委員と笠井委員がおっしゃったことについて,私は全面的に賛成します。特に未修者教育に特化した連携の取組をいろいろ推進するような工夫を,財政的な支援も含めて是非考えていただきたいし,笠井委員がおっしゃった,若手実務家の教育面での積極活用というのも,是非積極的に大手を振って行うことができるように,その方向性を更に推進していただきたいと思います。
 ただ,その上での話ですが,1ページ目に書かれていますように,法学未修者コースの累計合格率は5割に達しないとあります。この間,いろいろな法科大学院はいろいろ工夫をしてやってまいりましたが,このレベルを上に上げることはできない。そうなった場合に,特別委員会で,何を世間に示して,また国の施策をそちらに向けて展開していってもらうか,あるいはそれぞれの法科大学院がどのように今後未修者教育に取り組んでいけばいいかを考えたときに,もう待ったなしで,教育方法,教育の在り方というものについて,ある程度積極的に発言をしていった方がいいのではないかという感じがいたしました。
 私が参加させていただく前の法科大学院特別委員会では,未修者教育の内容というところについても立ち入った指摘がされておりました。今回の指摘というものは,もちろんそれを重ねてその上に何かしようということであろうと私は理解しておりますけれども,更にその上に,例えば先ほど少し磯村委員のお話にもございましたが,演習方式をどのように活用したらいいのかとか,あるいは講義型と演習型の組合せとか,余り双方向ということを未修者教育の初年次にやるのはどうかとかいったことまで含めて,二度でも三度でもいいと思うので,繰り返し指摘をしていくことによって,それぞれの法科大学院に頑張っていただく。そしてそれが,結局のところは未修者の合格率を上げるところにつながっていくのではないかと強く感じているところです。今回の取りまとめに入れるというのは難しいかもしれませんが,今後検討を深める際に,もう一度意見交換を行う場を作っていただければと思うところです。以上です。

【井上座長】
 どうぞ,大貫委員。

【大貫委員】
 未修者教育の問題は大変難しいです。酒井委員がおっしゃったこと,あるいは井上座長がおっしゃったことに関わりますけれども,6ページの上から丸の四つ目のところを先ほど酒井委員も指摘されていました。幾つかのアイデアをおっしゃったのですけれども,私もこの点については,未修コースの在り方,入学者選抜をどうするか,カリキュラムをどうするか,司法試験の受験体制,それから教育資源の集中,重点化の話,こういうものを,もっと具体的なものとして検討しなければならないと思います。
 また潮見委員もおっしゃったと思いますが,そうした問題を検討する場をワーキングなり何なりの形で設けていただけないかと思います。そして未修者教育の改革のパッケージをメッセージとして示すことが大切で,そうしませんと,杉山委員が心配されたように,志願者は増えないと思います。こういう未修者教育の方法があり,しっかり勉強すれば受かるよというメッセージを打ち出すのが大変重要だと思います。ですから,ここの丸四つ目のところですね。未修者教育の在り方について引き続き検討するということは当然ですけれども,その検討の場をしっかりと設けていただきたいというのが第1点です。
 それから,先ほど片山委員が言われたことと関わるのですが,今回の全体のテーマは,法科大学院等の抜本的な教育の改善・充実ということで,柱は二つで,連携の強化,それから未修教育の質の改善ということになっています。連携の強化に関しては幾つかの目的があって,一つは「3+2」によって法曹になるための時間的・経済的負担を軽減していくこと,学部段階で法曹志願者をできるだけ取り込むこと,それから既修コースの実力を上げていくということが考えられています。
 こうした目的は大変大事で,実現しなくてはならないのですけれども,他方で,片山委員がおっしゃったように,法科大学院がこれまで有為な人材を育ててきたという実績は明確にあるわけです。そういうところをもっと伸ばしていくというメッセージは,私は必要ではないかと思っております。片山委員が最初おっしゃったように,1ページのところに,これまで教育をしっかりやってきたということが余り出ていなくて,丸三つ目のところにようやく出てくる感じですので,我々の目指している改革というのは,単に司法試験に早く受かって経済的・時間的負担が軽減されるということだけではないのだというメッセージを,もう少し強く出していただきたいと思っております。以上です。

【井上座長】
 土井委員。

【土井委員】
 ありがとうございます。この委員会でも議論してきましたように,現在の未修者教育の問題を大きく分けると,優秀な非法学部,社会人の志願者をどのようにして確保し法曹に育てるかという問題と,法学部出身の未修者の学力をどうするのかという問題があります。ただ,このうち後者の問題は,結局のところ,優秀な非法学部,社会人の志願者を十分に確保できないことから生じた変則的な状況に関わる問題であって,本来は,優秀な非法学部,社会人の志願者を確保していく方法を考える必要があるわけです。
 ただ,この問題については,そういう人たちに是非法科大学院に行きたいと思っていただかなければならないわけで,そのためには,法科大学院修了者の司法試験合格率の改善等,法科大学院教育に対する信頼を全体として回復していかないと,なかなか志願者増につながらないというのが実情だろうと思います。その意味で,非法学部出身者,社会人の比率を定めた告示の見直しは,やむを得ないところがあると思います。
 ただ,逆に言うと,その告示を見直すことを通じて,少々規模は小さくなるかもしれませんが,2ページの下から二つ目の丸に記されていますように,ここは本来の理念に立ち返って,未修者枠については,非法学部出身者,社会人のために充実した教育を行うものとしてしっかり位置付けた上で,先ほど来,例えば清原委員から御提案いただいた連携の強化とか,笠井委員から出していただいた若手研究者や実務家の活用等々,手厚い指導で教育の改善を図っていくメッセージを示すとともに,既修者の司法試験合格率の改善,志願者増を実現することによって,非法学部出身者,社会人の志願者増につなげていくことが大事なのではないでしょうか。
 その意味では,教育課程をどう改善するかということを十分議論しないといけませんけれども,法科大学院に対する全体的な信頼の回復ということとパッケージにしていく必要があると思います。そのような状況の中では,非法学部出身者,社会人の確保ということを,少々規模は小さくなっても正面から打ち出していくべきだと,そのように思います。以上です。

【井上座長】
 日吉委員。

【日吉委員】
 今までいろいろな委員からの意見が出ましたので,それに補足する形で申し上げたいと思います。2点ございます。一つは,モデル校のような形で新しいやり方というものを実際教育現場で実地をしていくということを,予算の裏付けも得た上で早速始めていくということについて,いろいろな意見が出たわけですが,その視点は,今まで実際そういうことが行われていないということだけをとっても,もう今の状態で,まずは一歩踏み出すというところに来ているのではないかと思っておりますし,そのためには清原委員がおっしゃったような予算の裏付けというものも必要だと思っています。
 6ページには,検討する,検討するという文言が並んでおりますので,是非その方向で検討していただきたいと思うのと,そのときには,是非柔軟な制度設計。参考資料2-2というのを見ますと,主に制度面での改善,教育内容の改善と,二つに分けてポンチ絵になっておりますけれども,恐らくこれはどこからどこまでが制度面で,どこから先が教育内容というのは非常に分けにくい部分もあると思いますし,制度面の改善についても教育内容の改善についても,いきなりやってみようというのではなくて,どこかで小さく始めて大きく育てると。効果を見ながら方向修正をしながらやっていくという動きが必要なのではないかと思います。
 恐らくですが,モデル校のような,それが例えば1年なのか2年なのか,あるいは2校でやるのか4校でやるのか,そういう細かいところはこれから慎重に検討しなければならないかもしれませんが,どこかでそういう実験をしつつ,先ほど大貫委員がおっしゃった,ワーキンググループで何か方向性を打ち出すということを,ただで一つ方向性を打ち出すためにも,そういう場というのは並行して必要なのではないのかなと。ただ会議体で協議をするだけでは,もう今はリスクが大き過ぎるし,ふさわしくないのではないかなと思っております。
 もう一つですけれども,既修の方には,たしか4ページにも四つ目の丸で,教育課程編成の柔軟性を確保するためという文言がございます。教育課程の柔軟化というのは,今,既修者,未修者,それぞれが抱えている問題を打開するには,両方ともキーワードになるのではないかなと考えておりまして,是非未修者コースについても検討いただきたい。というのは,既修者よりも,より未修のコースに行きたいと志望する人間の方がバックグラウンドが多様だし,抱えている事情が複雑です。専業主婦もいれば,働いている人間もいる。年齢層もばらつきがございます。そういう人間を,有為な人間をより囲い込むというためには,どういう教育課程の柔軟化ができるのか。
 一例を挙げますと,この6ページの下から三つ目の丸に,一部の先行履修を検討したらどうかということが書いてありますけれども,例えば先行履修を考えるのであれば,社会人が先行履修をできる仕組みというのを導入できるのか,そしてその先行履修したものについて,もしその人間が法科大学院に進学したときには履修した科目として認めてやれるのかどうかとか,非常に制度としては複雑になるし,手を入れるのは手間も掛かるし,大変だとは思います。先ほど酒井委員からも,地方の未修者について十分にアクセスを確保するということが重要ではないかという意見があって,私も賛成ですが,そういうことを考える上でも,教育課程の柔軟化については,ICTの活用も含めて,未修者教育にも視点が必要なのではないかと思いますので,それについても是非検討をしていただきたいと申し上げます。以上です。

【井上座長】
 ありがとうございました。松下委員,どうぞ。

【松下委員】
 今の日吉委員の御指摘になった先行履修に関係して一言,やや細かいかもしれませんが申し上げたいと思います。6ページの下から三つ目の白丸に,先行履修の話が出ていますが,これはもう少し広く考えてみると,入試の発表があってから入学までの期間をどうやって活用するかという問題意識があるような気がします。その期間の活用というのは,法学部にいて法律を勉強している既修者よりも,未修者,特に純粋未修者にとっては非常に大事なのかなと思います。
 一部先行履修という制度的なものだけではなくて,例えば少なからぬ学校で今行われているとは思いますが,カリキュラム外のガイダンスのようなものですとか,あるいはこれも既に実施例があると思いますけれども,授業の見学とかですね。こういうことを通じて,4月に入学したらすぐに法科大学院の学修になじんでもらえるような工夫について,更にいろいろ考えるべきではないかと。
 さらに,先ほど教育方法の共有というのがありましたけれども,教育方法についてはいろいろそれでもこれまで工夫がされていると思いますが,こういう入学前の期間の生かし方については,授業の方法の共有に比べると共有の仕方が少ないのかなという気もして,その辺についても更なる共有を図ることが必要なのではないかと思います。以上です。

【井上座長】
岩村委員。

【岩村委員】
 ありがとうございます。皆さんの御意見を伺っていて,大体おっしゃるとおりだなと思いつつ拝聴していましたが,6ページの一番上のところで,純粋未修者については共通到達度確認試験などのプロセスを導入するということが書かれております。そうしますと,恐らく,余りこう言うと身も蓋もないのですが,なかなか入学者選抜が未修者ではうまく機能していないということになると,1年間掛けて事実上選抜を行うのと同様になるということを少し念頭に置きつつ,その下の幾つかの丸について考える必要があるかなと思います。
 つまり今までとは所与の条件が変わるので,1年目の終わりのところかどこかにある到達度試験との関係で,どういう未修者教育を最初に行うのか。そのための手法としてどういったものがいいのか。単に,確認試験は突破すればいいという教育だとほとんど意味がなくなってしまうので,そこのところをいかに両立させつつ,有効な未修者教育というのを考えていくかということが恐らく重要になってくるだろうと思うので,そういったものを加味しつつ,その下にある幾つかの丸というのを考える必要があるかなと思います。
 あともう1点だけ。私たちの法科大学院でも,若手の実務家の方,それから若手研究者による未修者の指導を行っていますが,頭の痛い問題は,どちらかというと理解度の進んだ人たちがそういったのを受けていて,難問を抱えている人たちが受けに来ないということです。そこは,先ほどもお話がありましたが,講義的なものと演習的なものをどのように組み込むのか,その中に果たしてこういう若手の実務家あるいは研究者による指導といったものがうまく体系的に組み込めるのかということも考えていかないと,せっかくやっている未修者の指導というものの効果というのが,期待されているほどになかなかうまくいかないということが起きてしまうような気がしています。以上でございます。ありがとうございます。

【井上座長】
 大貫委員。

【大貫委員】
 質問です。4ページの下から三つ目の丸に,例えば基礎法学や隣接科目や法律基本科目等,関連が深い展開・先端科目と書いてありますが,これはこんなに限定する必要性があるのかということです。「例えば」になっていますからいいのですが,参考資料2-3でも,共同開講のイメージのときには法律基本科目を念頭に置いた形になっていて,法律基本科目をいかに共同開講という形で,比喩的に言うと下に落としていけるかというのが一つの非常に重要なポイントになると思いますが,ここはどういう趣旨なのかということを説明していただければと思います。

【大月専門職大学院室長】
 4ページ目の御指摘の部分でありますけれども,これは法学部で学修した人が法科大学院で進学するという前提の下で,先取り履修として基礎法学や隣接科目,一部の展開・先端科目が考えられると書いておりますが,法律基本科目については,法科大学院の双方向的な授業に関して,そこは法科大学院独自であるべきなのかなと。学部教育とは違うのかなということで,ここの部分はそのように書いているところでございます。
 一方で,6ページ目のところでございますが,6ページ目のその他の検討すべき事項の上から三つ目でございますが,こちらについては,法科大学院の未修者1年次の法律基本科目と学部生の法律基本科目と相当する科目について,共同開講する可能性はあるのではないかと。未修者1年次については,双方向的な授業というよりは,学部に近い授業のようなことをやっているという理解の下で,こう書いています。ただ,必ずしも共同開講に当たっては,いろいろな制限は当然付くのではないか,留意事項は必要なのではないかということで,このような記載ぶりにしております。以上でございます。

【井上座長】
 これまでの御意見の中でそういうネガティブな御意見も出ていたので,多分そういうことになったのではないかと思います。実際的にも既修コースの基本科目の共同開講ということになると,かなり難しいかもしれませんので。だから,「例えば」という形で頭出しをしているのではないかと思います。否定するまでの趣旨ではないということですので,今後また御意見を出していただければと思います。

【大貫委員】
 分かりました。

【鎌田委員】
 すみません。

【井上座長】
 いえ,どうぞ。

【鎌田委員】
 未修の中で,純粋未修といいますか,ほかの法学系以外から入ってきた人,あるいは社会人としての経験を積んだ人をどう教育していくかというのが,今,大変大きな課題ではあります。しかし,法科大学院が始まった頃に,そういうタイプの人たちが,いろいろな大学を首席で卒業していっているので,その未修者の人たちというのは,大きく分けてトップグループの人は,今までの教育体系でしっかり成果を上げてきたグループだと思います。その下の第2グループといいますか,この人たちは,少し普通の既修者とは違って,もうちょっと手を掛けてやれば伸びていくというグループだと思います。更にその下もあると思いますが,今の一番の課題というのは,そのトップグループに当たる人たちが法科大学院に来なくなったということであり,また,第2グループの人たちもかなり減ってきているのだろうと思います。
 それともう一つ足すと,参考資料1の,多分21ページ,22ページを見ればいいと思いますが,法学系課程以外出身の未修者の入学は,平成29年で165人。出発時点の10分の1ですね。社会人側は,この22ページで見ると,未修の中での社会人経験者は194人で,これも出発点の1,754人の10分の1ぐらい。これぐらいの人をターゲットにして,教育方法の研究会を設置する必要性が本当にあるのかなというのが,まず一つ。
 その上で,かつての経験からいくと,この第2グループの人たちは,法律という敷居の高い学問の敷居をまたぐのに手間暇掛かっているので,そのためには,一番この中でコストを節約しなきゃいけないということから,学部の講義をしっかりとらせて,それにアカデミックアドバイザーなりチューターなりが,その裏付けになる少人数教育でフォローしていくという形で,共同開講にするかどうかは別にして,学部の授業を活用していかないと,独自で法科大学院をやっていくのは難しいだろうという気がします。
 それともう一つは,そういう人は時間が掛かるので,今はどのようになっているか知りませんが,かつては未修1年で留年すると,その瞬間に奨学金ストップ,卒業するまで奨学金なしという厳しい扱いがあったわけですけれども,特に社会人経験者も含めて,時間を掛けながらやっていくことで成果が上がる人をサポートする,そういう奨学金制度の改革をしていくということも必要だと思います。
 それからもう一つは,今,優秀な人たちが来なくなっているからといって,定員を一気に減らさないでほしい。いずれまた戻ってきてくれるということを前提にして,この制度を維持していっていただければということを期待したいと思います。以上です。

【井上座長】
 現場の実感として,かなり学生自体が変わってきているのは事実で,単に数が全般的に減ってきているのか,あるいはバックグラウンドや属性等,内容的にみても変わってきているのか,その辺も踏まえて検討していく必要があると思いますね。数に限っても,法科大学院の学生全体の中で相対的に少数派になってきているわけですけれども,その火を消してはいけないので,盛り返させ,更に増やしていくために何をする必要があるのか。実態を踏まえて実際的に意味のある提言をしていく必要があるわけです。
 そろそろ,他の点についても御意見をお伺いしなければなりませんので,未修者の点は打切りというわけではなく,更に御発言いただいて結構ですけれども,文書の全体,特に法科大学院と法学部の連携や,法曹コースの在り方を含めた全体について,御意見を頂ければと思います。
 どうぞ,有信委員。

【有信委員】
 全体的な話で,個々,個別の法律に関する教育方法の改善とか,学生に対する補助とか,きめ細かに検討されていて,これはこれでいいと思いますが,土井委員,鎌田委員からも指摘ありましたけれども,司法試験の合格者数を見てみると,全体は2,000人程度で推移していたものが,この2年間は1,500人ぐらいになっています。しかも合格率はほとんど変わっていない。ということは,司法試験の受験者数がそれだけ減っているということです。つまり全体で言うと法曹を目指す人たちが減っている。殊にここ二,三年,急速に減ってきている。これが一番重要なポイントだと思っていまして,ここに書いてある様々な改善策はもちろん重要だけれども,改善策だけではとてもここの部分はカバーできない。だから前段のところでもう少しこの点の危機意識をきちんと書き込んで,これに対して,法曹をより魅力的に見せる,あるいは先ほどから指摘があるように,優秀な学生が法曹を目指すというところのドライブを掛けるような前段の文章が必要だと思います。もちろんグローバル化とか様々なことの部分も極めて重要ですけれども,それに加えて,特に最近,合格者数が減っていることが直接響いているとは思いませんが,需要は増えている。清原委員からも御指摘ありましたように,法曹とか法律の専門家に対する需要は明確に増えているという状況にあると思っています。したがって,優秀な人たちに様々な内容で,法曹が社会の必要度というか,ニーズが増えていて,社会状況も変化をしていて,ますます多様なバックグラウンドを持った法曹に対する要求が増えているということを含めて,何らかの形でここの部分を主張していく必要があると思っています。

【井上座長】
 ありがとうございました。どうぞ,瀬領委員。

【瀬領委員】
 私は,法学部に所属する者であり,今回の検討は法学部が法曹教育に新たな形でコミットするという形の提案ですので,非常に重要なものだと受け取っています。その上で,実際法学部で教育に携わっている者として,少し確認したいといいますか,制度を具体的に設計するときにお考えいただきたいなと思うことがございます。一つはダブルカウントについてです。趣旨として,学部と法科大学院の連携が不十分なので,これを有効に機能させる施策として考えるということは,非常によく分かるところで必要だと思うところです。
 ただ,私立大学でありますと,いろいろな事情があって,ダブルカウントを付けるときに,いろいろなやり方がございます。例えばロースクールの教員を減らして学部教員を充てるということも,これはあり得る話です。これがいいかどうかという評価は別ですけれども,ロースクールの教員を減らして学部の教員に頼ることになりますと,学部の教育に負担が掛かることもあるでしょうし,あるいはロースクールの教育も空洞化することもあると思います。それも踏まえてこの比率をお考えだと思います。実際の運用面でどうなるかということについても少し御留意いただいた方がいいのではないかと思います。
 2点目は法曹コースです。この間の議論で,各大学がロースクールと提携して,自由に設計するという御提案だと思いますので,この点は非常に有り難いと思っております。他方,早期卒業との関係で申し上げておくべきことがございます。同志社大学では2014年度から実際にロースクール進学者として早期卒業者を出しております。今年で4年目になりますが,関西の他大学では,早期卒業の導入,かなり苦労しているところがございます。御指摘のように,早期卒業は,学校教育法上,例外的な扱いになっていますので,なぜ法学部だけに,なぜロースクール進学者だけに早期卒業を認めなくてはいけないのかということで,ストップが掛かるところがあります。
 今回の提言は,この壁を破るものだということで望ましいと思います。反面,同志社大学で法学部が早期卒業制度を導入できた理由は,ロースクールの理念からすると少し問題があると指摘されるかもしれませんが,次のようなものです。大学として,同志社大学のロースクールの教育内容・教育方法と法学部の教育内容などは,連動しており,大学としての一貫した法曹養成となっていると考え,早期卒業を奨励するというスタンスで,大学全体として認めたという経緯がございます。
 今回検討される早期卒業の場合に,推薦入学と絡んでいますから,その点で難しいところがあると思います。同志社の場合は,早期卒業しても,普通の入学試験を受けて合格しないと入学ができないということになっているのですが,推薦制度の対象ということになりますと,違う状況が生じると思います。早期卒業制度自身は,学部の制度ですから,学部の方に恐らく運営権限,運営主体があると考えるべきだと思います。そのときに,グローバルといいますか,全部の法科大学院に開放するのか,あるいはそうではなくて,例えば現在の同志社のように,一定の信頼関係の上で構築する,あるいは提携校という形で,法曹コースの教育等も含めて連携したところに限定して早期卒業が認められるという形とするのかといった,どのように早期卒業と推薦入試との連結を考えるのかということも,具体的な制度設計のところに来ると問題になるのではないかと思いますので,その点も少し御検討いただいた方がいいのではないかと思います。以上です。

【井上座長】
 長谷部委員。

【長谷部委員】
 私はまた総論的なことになるのですが,先ほど有信委員の御指摘されたところと関係するのでありますけれども,1ページ目のところで二つ目の丸ですが,法科大学院志望者・入学者は減少を続けていると。その原因分析なのでありますけれども,専ら修了に要する期間と経済的負担が大きいと。2ページ目辺りのところにも三つ目の丸のところに,時間的・経済的負担が一因になっているということもありますが,恐らく法科大学院を志望する人が,10年前に比べると劇的に減少しているのは,ほかにもいろいろ要因がありまして,例えば司法試験の合格実績というのが,当初予想されていたほど高くはないのだということが明らかになってしまったということもありますし,それから,そうこうしているうちに予備試験が始まってしまって,予備試験の方がよほど時間的にも経済的にも負担がなく受けられるのではないかということで,そちらに向かってしまった人たちもかなりたくさんおります。加えて,現在,比較的就職の状況が良いものですから,何も苦労してリスクの大きい司法試験を目指すために法科大学院へ行く必要はないのではないかと,学部の学生の多くは考えていると思います。
 私は法科大学院の所属ではありますけれども,先ほどの同志社の瀬領委員と同じように,学部の学生の授業も持っておりますので,学部生がかつてに比べると,法学の勉強をそんなに熱心にできなくなっているといいますか,時間を掛けてできなくなっていると思います。それは就職戦線がどんどん前倒しになっているということもありまして,一,二年生の間は法律基本科目を勉強できますけれども,三,四年生になって,もうちょっと高度な内容を勉強できる段階になりますと,既に企業のインターンシップに行かなければいけないとか,セミナーがあるとか,そういったようなことで余り法学の授業に熱心に打ち込めないという状況があるように思われます。
 そういった中で,法曹というのは,法学部で学んだことを社会に生かせる,還元できる魅力的な職業だということをどこで教えていくかということは,非常に悩ましい問題だと思います。そういう意味で,この法曹コースでそういった法曹志望の学生を呼び込んでいこうという,そういう発想自体は分かるのですけれども,例えば3ページ目辺りに出ているのは,専ら法曹志望が明確な学生ということになっていますが,そこで言われているところの法曹志望が明確であるということは一体どういう学生なのかということが,また問題でありまして,ともかく司法試験は難しい試験だから最短で合格したいのだという,そういう層はおりますし,それらの人たちは予備試験を受けたりもすると思いますが,そういう人たちではなくて,もうちょっと自分は法律を勉強して法曹になることによって社会にどのように貢献できるのか,あるいは自分の経験でいろいろ困った経験などある,自分の身近なところで法律問題が分からなくて非常に困った人がいる。それに何か自分の力で助力ができないかというような問題意識を持って,法律の勉強を少しやってみようかと。一,二年生の間で比較的興味深い知見も得られたという人たちが来てくれればいいと思いますが,そういった人たちを呼び込むためには,法学部の教育についてもうちょっと検討しなければいけないかなと思います。6ページのところでは,その他検討すべき事項ということになっていますが,法学部の教育の改善・充実というのは,基本的な非常に重要な項目だと思いまして,これをもうちょっと上の方に上げてきていただきたいなと思います。先ほど笠井委員が,例えば割合若くて実務家としての経験が少ないような人でも法科大学院で教員として教えられるようにしてもらえないかということをおっしゃいました。私はそれももちろん大事だと思いますが,学部レベルから,例えば自分は法科大学院を出て現在こういう仕事をやっているけれども,こうなるためには法学部時代にどういうことを勉強しておいた方がいいですよというようなことを後輩にアドバイスしてくれるような,そういった若手法曹に授業に来てもらいたいと思うわけであります。
 そういった意味で,7ページの上から三つ目の丸のところ,法律実務家等による講義や講演というのも,そういった実体験に基づく後輩に対するアドバイスというようなことも是非してもらいたいなと思いまして,そういった生の声,あるいは,文科省では以前に非常に評判の良いリーフレットを作られまして,法科大学院を修了した人たちがどのように活躍しているのかということをPRするのに非常に役に立ったと思うのですけれども,それに当たるような何か広報のためのツールというのを,また更に開拓していただきたいと思うわけです。
 法曹が魅力的な仕事だということを若い人に向けてメッセージを発信していくということがないと,いつまでたっても,法科大学院のみならず,法曹志望者全体が減少していくということは変わらないのではないかと,非常に悲観的ですが,そう思っております。長くなってしまいましたけれども,以上です。

【井上座長】
 今おっしゃったことは,本委員会でも長年議論を積み重ねてきたところでありますし,実際にも弁護士会と法科大学院が協力していろいろな取組をし,今,長谷部委員がおっしゃったような形で,学部でも力を入れてこられたところなので,そういうことは法学部教育についての議論にもっと反映させた方が良いという御趣旨だと思うのですが,これまでまだ余り突っ込んで議論をしていないものですから,今回の文書はこういう形になっているのだと思うのです。もちろん,これをベースに発展させていくということは十分可能だと思います。
 それと,この文書の性質ですけれども,これは白書のような全てをカバーするパーフェクトなものではなく,いま直面している問題に特化して当面緊要な対応策について述べるという性質のものなのですから,原因分析が必ずしも行き届いていないというのはそうかもしれません。しかし,そういったことまで盛り込むとすると,かなり膨大な文書になってしまい,当面の課題との関係ではかえってインパクトが弱いものとなってしまうという面もあることにも御留意いただければと思います。御注意のあった点は,有信委員のおっしゃったことも含めて,どういう修文が可能なのか,また検討をさせていただきたいと思います。ほかにいかがでしょうか。
 笠井委員,どうぞ。

【笠井委員】
 先ほどの未修者教育について,未修者教育の到達地点,1年目等の段階の中身について御発言された岩村委員や鎌田委員の発言に関連しますが,法曹コースで「3+2」という5年一貫コースが提案されております。先ほどの長谷部委員のお言葉ですが,単に試験で高得点を誇示することに目的があるような者を呼び込むのではなくて,社会貢献など有益な志望を抱く方を呼びこむために「3+2」の5年一貫コースが役に立つものでなければならないと思います。
 未修者教育の問題と関連する問題と冒頭に申し上げましたが,法曹養成コースの推薦入試における共通到達度確認試験の活用が考えられないかと申し上げたいのです。「3+2」の改革案が,法曹志望が明確で優秀な学生確保にとって有効な方策となるためには,その取組の結果として,まず第1に,地方法科大学院の充実と地方における法曹養成に向けた取組が,現状よりも弱められてはならないと。第2として,他学部卒社会人経験者が法曹になる道が,現状よりも狭められてはならないということが必須であり,これが確保されなくてはならないと考えております。
 その一つ目としては,地方法科大学院や地方における法曹養成のための取組を充実させる試みについてで,他大学の法科大学院への推薦入試枠の設置は不可欠です。これと共通到達度確認試験の活用ですが,地方の法曹養成ということについて関心を持って,当該地方の国立大学の法科大学院と,法科大学院も法学部も設置してはおりませんが人文系の学部に法律専門のコースを設けている大学で実情を伺ったことがあります。
 長くなるので簡単に申し上げますが,法科大学院がなく,法学部のない大学でも,設置されている法律専門コースの授業科目は通常の法学部の授業科目と全く同じで,取得すべき内容も単位数もほとんど同じものだったのです。ですから,法学部がないにもかかわらず,法曹養成教育をしているように一見したところでは見えるのですが,実はそうではない。実際のところは,法科大学院を設置している大学の法学部における法律専門職志望者に用意された授業科目名及び取得単位数などが同じでありながら,法曹養成のためのカリキュラムではなく,地方公務員養成のための教育カリキュラムになっている。当該地方の中核的国立大学系法科大学院側からすると,推薦入試枠を設けて,法科大学院を持たない他大学からの推薦を自大学と同じように受け入れるのは,なかなか困難だという問題がありそうに思います。
 確かに推薦入試の選抜枠に出願するための条件というのは,各法科大学院の自主性に任せられているわけで,開放性の原則に従って,公平に公正に他大学からの学生を受け入れるということが必要になるわけですけれども,その法曹養成コースの入学者選抜の質をいかにして確保するのかということが重要です。これは「3+2」の5年一貫コースとして存続していくべきだという改革案であるならば,その点について強くこれを意識して,仕組みを考案しなければならないでしょう。
 参考資料1の11ページの,改善の基本的な方向性(案)の記述にもあります,現在運用されている早期卒業や飛び入学を活用した者の修了後1年目の司法試験合格率は,約57%と非常に高い。これを法曹養成コースの学部生に当てはめて,共通到達度確認試験を,法曹養成コースを修了して法科大学院に入る者たちに適用して考えることを検討してみてはどうか,その価値があるように思っています。
 共通到達度確認試験が未修1年次の学生を対象に検討が進められていることは,もちろん異論はありませんが,これまでの司法試験問題の質が維持されるということを前提に,法曹コースを対象とする推薦入試における入学者の質を確保するという観点から,5年一貫コースを設置するのであれば,法曹養成コースの学生に共通到達度確認試験を受験させるということを十分に検討すべきではないかと思います。
 もちろん,共通到達度確認試験は,今は2月ですけれども,来る3月に第4回が施行予定でありまして,その対象を広げるということについては批判があることは知っております。幾つか検討課題はあるものですが,法曹養成コースから法科大学院に進むという既修者に対して,共通到達度確認試験を受けてもらうということはどうかということであります。意見です。

【井上座長】
 今の最後の点は,mustにするかmayにするか,両方あり得ると思うのですが,多分,どちらかに絞った御提案ではないですよね。

【笠井委員】
 ええ,絞っていません。

【井上座長】
 どうぞ。

【片山委員】
 今の笠井委員の御発言と関連しますが,学部と法科大学院の「3+2」なり「4+2」のコースを考えていくということで,その制度設計をどう考えていくか,いろいろな考え方があるのかと思います。当初は,とはいえ,ロースクールの既修者認定では,法律基本科目の学科試験をきちんと課して判定をする既修者試験をしているから,ある程度自由に学部の教育はやっていただいていいのではないかと私も考えていたところがありますが,しかし今回の御提言で,推薦入学ということをかなり明確に,しかも5割というのを一つの目安として出しておられるということになりますと,学部における教育の質の確保という点が不可欠になってくると思います。推薦の判断をする際には,面接等も実施するのでしょうが,基本的には学部での授業の成績,GPAということになるかと思います。そこである程度,できれば少人数教育で,かつ相対的評価できちんと成績を評価し,一定の質の確保が図られていることを前提に,推薦入学が認められることになるのだと思います。
 ただ,それで不十分な部分が仮にあるとしたら,各法学部における教育の質の確保がいかになされているかを各ロースクールで判断していくということかもしれませんが,それと別に,共通到達度確認試験の受験を学部の法曹コースの学生に課すということは一つ有益だと思いますし,それは必ずしも入試で課す必要はなく,入試後,入学前に受けてもらえばいいでしょうし,あるいは入学後でもいいのだと思いますが,いずれにせよ,既修者にも共通到達度確認試験を課すというのは,一つの補充措置として考えていくべきではないかと私も思いましたので,付け加えさせていただきました。

【井上座長】
 岩谷委員。

【岩谷委員】
 慶応義塾大学の岩谷でございます。学部側に立ってこの問題を考えさせられる立場の者として,ただいまの片山委員のお話にも関わるのですが,この資料1の5ページ,二つ目の丸のところに,これは何回にも重ねられてきたこの会議の確認事項だとは思いますが,法曹コースを修了する予定である学生を対象とする入学者選抜枠を5割程度ということで,推薦というのは「3+2」コースを自明のものとしているとも読めますが,これは先ほど長谷部委員からも御意見ありましたけれども,学部というのは,多様な学生が次第に時間を重ねる間に,自分の社会的適性なり,あるいは職域・職種というものを明確化するところがあるとすれば,更に先ほどの同志社の瀬領委員がおっしゃったように,「4+2」が標準であり,「3+2」というのは,何か法科大学院に関わることだけ例外的でありながら,それが既定路線になりつつあるという印象がぬぐえないわけですが,であるとすれば,ここの部分,この「4+2」コースもまた,法科大学院側の推薦枠の標準,基準の中に含めていただくような検討というのは,法科大学院側の皆様方にお願いできないかなというのが私の意見でございます。

【井上座長】
 この文言の趣旨は,法曹コースから来る人の推薦枠を,上限は5割という,そういう趣旨ですよね。これは,「3+2」ということですか。「4+2」も含めてということですか。

【大月専門職大学院室長】
 「3+2」も「4+2」も,法学部の学生,3年生,4年生をという趣旨で書いております。

【井上座長】
 確認ですが,今の枠以外の推薦というのも,それは別にかまわないわけですよね。

【大月専門職大学院室長】
 各大学の入学者選抜を細かく見ると,いろいろな枠というのを設けられていて,推薦枠というのも小規模であるというのは承知しておりますけれども,基本的に片山委員がおっしゃったように,法科大学院に関して,特にこの既修者ということでありますが,法学既修者の認定をしっかり筆記試験で行うということが原則という形で行われてきたということで,法曹コース,法科大学院が一体的になるのであれば,法学部の法曹コースの成績を重視して,そのような入試というのを認めた方がよいのではないかという趣旨でございます。今回,書類審査や面接等を重視するという形で定義をさせていただいているということでございます。

【井上座長】
 ということです。樫見委員,どうぞ。

【樫見委員】
 皆様の言われたことと重なるかと思うのですが,2点ございます。一つは,清原委員の方からもありましたが,法科大学院で学ぶことの意味,これをどこかできちんと記載をしていただきたいなと思います。今後,グローバル社会であるとか,ビジネスモデルの転換ということが言われておりますが,それは学部教育ではなくて,法的な知識で言えば,法科大学院で高度な専門知識を求めることができるし,更に理論と実務を架橋したしっかりとした教育が行われ,それを受講することによって,優れた資質を持った法務博士が生まれるのだと思います。
 恐らくほかの教育課程に比べれば,どのような法科大学院であれ,認証評価基準という,恐らく一番厳しい基準だと思いますが,それを課せられている教育が担保されていると。いつも質の高い法曹を輩出するとか,あるいはそういう志願者の回復ということがあるのですが,どのような資質を持った人間ができるのか,教育が受けられるのかということについて,どこかできちんと書いていただきたい。そのことは,恐らく日本では,早期に司法試験に受かるということが非常にできる法曹のように誤解を受けているかと思いますが,諸外国で言えば,ロースクールというか,大学院の修士であるとか博士であるとか,そういった法曹というのは十分に尊敬に値される職業だという点について,まず理解を求めたい。その点について,どこかで記載をしていただきたいというのが1点でございます。
 それからもう1点は,法科大学院教育の理念を今更言うのは何ですけれども,全体の文章から見ますと,既修者コース,未修者コースという記載がされていて,既修者コースありということですが,いかに人数が非常に少なくなったとはいえ,法科大学院の理念から言えば,まず未修者コースの教育,そして既修者コースで,彼らの能力に応じて未修者の教育の改善が必要です。既修者の教育課程については法学部の連携であるとかといったような形で,全体としてこの方針(案)の方から見ると,どうも既修者ありきで,直ちに法科大学院との連携というような記載ぶりになっていますので,私的な発想からすると,3番目になっています。
 今日の議論は法学未修者の教育の方から始まりましたが,この法学未修者教育の質の改善というのは,もっと前の方に来るべきだと思いますし,それから,2ページの「法科大学院等の教育の改善・充実に向けた基本的な考え方」というところも,お題目になるかもしれませんが,未修者から書くべきではないかなと。これが法科大学院教育としては,余りに既修者,あるいは時間を短縮して経済的にも安く上がりますよという形ではなくて,どのような人材を育てるのかというところから書き起こしていただきたいなというところでございます。

【井上座長】
 その点は十分分かっているつもりですが,先ほども強調しましたように,これは全体としてこういう像を描くのだという文書ではない。その点は司法制度改革審議会の報告書でうたわれていたとおりで,それを繰り返すことはもちろん可能ですが,この文書自体は,冒頭の「はじめに」の前に書いているような趣旨のもので,現在の危機的な状況についてどのような具体的な提言をしていくのかということを示すことに主眼があるのです。そこのところは十分御理解いただきたいと思います。
 それと,蛇足ですが,法科大学院の理念については,当初から幾様かの考え方があって,必ずしもおっしゃったような一つの考え方に絞られていたわけではありません。したがって,どちらから書かなければならないというものではなく,先に,これまで危機的な状況に対してどのような具体的な方策を提示していくべきかということで議論をしてきたものですから,それを踏まえて事務局の方でこのようにまとめられたということです。その辺も御理解いただければと思います。
 中島委員,どうぞ。

【中島委員】
 少し,まず全体の文章に関してということで,若干揚げ足取り的な話になるかもしれませんし,先ほどの瀬領委員の御発言とも関わるかもしれないですが,この一貫という言葉をどういった意味内容の定義で用いるのかという整理を,そろそろしなくてはいけないのではないかと思います。一貫とまず耳にしたり目にしたりいたしますと,同一の大学の学部とロースクールとの間の一貫教育というのを多分一番想定するのだろうと思いますが,先ほどの提携校というようなお話ですとか,あるいはもうちょっと緩やかにするのかというようにも聞こえます。そのような制度設計との関連で,この一貫という言葉を,どういったコンテクスト,意味合いで用いるのかということの整理をお願いしたいというのが1点目です。
 2点目は,いろいろ問題点はありながらも,今回のこの委員会の一つの目玉は,「3+2」というものを打ち出すというところにあるのだと思います。それとの関係で,ある種失敗が許されないというところからいたしますと,「3+2」の適正な規模感というものをある程度共有しないと,結局結果が伴わなければ,駄目だったという話になって終わってしまいますので,そこはシビアに適正な規模,先ほど未修の方で,小さく生んで大きく育てるというお話ありましたけれども,どの辺りが適正な規模なのかと見定めをした上で,ある程度共有しておく必要があるのではないかというのが2点目です。
 それから,3点目ですが,これも「3+2」との関係ですが,ロースクールの入試選抜の時期を考えていただけないかと。つまり,今までの早期卒業・飛び入学の対象は,よほど優れている学生で,GPAも飛び抜けて良くて,放っておけばよかったわけですけれども,これが,この間,同じ内容の発言を繰り返しておりますが,対象とする層が,最優秀層,つまり予備試験ですとか,放っておいてもよいような層に続く層が,多分,直近のターゲットになるのだと思います。そういった学生さんが,学部の3年間で正に学士の学位課程を修めるためにしなければいけない学修と,ロースクールの受験の準備と並行させてやっていくということは,実体論からしても,それから学部における教育をゆがめないという理念論からしても,きちんと見ていただきたいと。それぞれ大学によって事情が異なるのかもしれませんが,例えば2月の終わり頃,つまり年が明けてからといったような時期というものが考えられないものか。その辺り,就職協定的なものかもしれませんが,これもある程度共通了解みたいなものを作ることができないものだろうかと考えております。
 以上3点が大体用意してきたことですが,もう一つ,未修と地方との関係で,文科省の方と打合せした際には少しお話ししましたが,地方出身者と未修の方々を対象にして,もう1回,私どもが持っております通信教育課程の活用というのを真剣に考えてみる必要があるのではないかと思っていることを付言させていただきたいと思います。以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございました。複数の方が手を挙げられていますので,順次御発言いただきますけれども,後の時間もそろそろ意識しながら御発言いただければと思います。それでは,清原委員から。

【清原委員】
 今回の基本的な考え方の特徴は,法科大学院と法学部との連携,そして法科大学院同士の連携,そして未修者教育の充実にあると思います。この視点を入れていただければということで,二つ提案します。
 1点は,法科大学院,法学部に対する視点です。調べましたら,法科大学院における入学者の女性割合ですが,平成24年25.4%でしたものが,平成29年には29.8%と上昇しています。申すまでもなく入学者数は減少しているわけですが,女性の比率は増えています。また,法曹三者における女性割合についてもだんだん増えていて,例えば全体としては,司法試験合格者23.4%,検察官22.9%,弁護士が18.3%,裁判官が20.7%と,2割を超えているわけです。私は男女平等参画ということだけではなくて,いろいろな進路の情報が中高生を含めて女性にもきちんと届いていくということが大事ですし,上昇傾向が確かにあるということも確認できましたので,是非,先ほど大沢委員も提案されていましたけれども,大学のみならず中学・高校においても,こうした入り口として,法治国家として,法学部,法科大学院の入学者が増えるような適切な情報提供が,女性にも必要だと思います。
 2点目の視点は,出口の視点です。就職支援についても必ず明記をしていただきたい。そのことです。就職支援,就職指導という言葉がなかなか見付からなかったので,その明記をすべきだと考えます。以上です。ありがとうございました。

【井上座長】
 次に,丸島委員。

【丸島委員】
 できるだけ簡潔に申し上げます。二つのことです。一つは,私は,現在,法曹養成の問題とともに,法テラスの運営などにも関わっています。法テラスには,各地で司法アクセスが困難な方々に対する法的支援の活動に取り組んでいるスタッフ弁護士と呼ばれる常勤の弁護士がいますが,その応募者は,5年前には約200名を超えていたところ,昨年は50数名と,約4分の1にまで大きく減少してきています。そのため,新人弁護士からのスタッフ弁護士の採用者数は減少し,各地ではスタッフ弁護士の欠員まで生じている状況にあります。
 急激な高齢者社会の進展に伴う高齢者の権利擁護活動や,子供・女性をはじめとする各分野における権利擁護の取組など,地域社会における公益活動の重要性,そして法の支配の担い手としての法曹人材の有用性ということは,この間,大いに強調されてきていますが,まだまだこれからの課題でもあります。その意味で,本日の文書案の「はじめに」のところに,グローバル化,あるいは経済社会の進展,先端的領域への取組の重要性が指摘されている点はそのとおりでありますが,あわせて,他方では,今述べました地域社会における福祉と連携した権利擁護の分野や,その他公益活動の担い手の人材養成という観点からも,法科大学院教育の役割の重要性について言及していただきたいと思います。また,学生に対して実務家からできるだけリアルな法曹のイメージを与えていくという視点が重要であり,そのことは,この文書案中にも書き込まれていますが,併せて強調しておきたいと思います。
 二つ目が,法科大学院と法学部の連携強化,法曹コースの在り方についてであります。先ほど来の意見の中でも出されていましたが,今回の取りまとめが「3+2」を打ち出したいという思いにあふれているのはよく分かるのですが,法曹コースというものは,そもそも法学部の4年の中で学生に法曹を志してもらい,法曹への道を誘導し,学部教育も法科大学院教育と連携して法曹人材を育てていくと,こういう発想から,法曹コース,あるいは法科大学院との連携の問題が生まれてきた。そして,その中でも優れた資質・能力を有し,法曹志望が明確な学生に対しては,「3+2」を積極的に活用しようと,こういう話であったと思います。
 しかし,本日取りまとめの文書案での記載は,全般的に,法曹コースの中身を書きつつ,それを受けて「3+2」を主眼とするような書き方に見えるのです。これは,将来像をどうするのかという話は別として,当面は,現状からすると,司法試験その他の条件が変わらなければ,「3+2」で法科大学院に進み,そして速やかに司法試験に合格するというのはある程度限られた人たちにならざるを得ないのではないかと思います。
 この意味で,どこの法科大学院も,皆が「3+2」は必要だということでそのコースを設置するのは良いが,法科大学院を早く卒業したけれども,卒業した後に受験勉強をする期間が長くなるということでは本末転倒なわけでありますので,ここは「4+2」ということと「3+2」というものの二つの在り方をきちっと整理して,落ち着いて書いていただくというのが大事ではないかと思います。
 その観点から,「学校教育法に規定されている現行の早期卒業制度が優秀な学生を対象とした例外的な措置であるため,その在り方について検討する」という記載についても,「通知の在り方の見直す」ということでは理解できるのですが,「例外的な措置」そのものを見直すというところまでもし踏み込むような中身を含むのであれば,そこは,少なくとも現段階においては疑問であると思います。いろいろな意味で,その辺りは,誤解や懸念を招かないような記載に整理していただきたいと思っております。以上です。

【井上座長】
 ありがとうございました。磯村委員,どうぞ。

【磯村委員】
 法曹コースに関して,幾つか手短に申し上げたいと思います。一つは,学部に法曹コースを作るということになると,早い段階で法曹コースを志望するということを決めないといけないので,これはある程度の早期化というのはやむを得ないのではないかというのが1点。
 それから,従来,法科大学院の一般入試でも,法学既修者のレベルが下がっているのではないかという指摘があった状況の下では,法曹コースで進学する人の質をどう確保するかということが非常に重要であると思います。それに関連して,推薦入試という言い方が気になって,A高校からB大学に行くというときは推薦入試ですけれども,A大学法学部からA大学法科大学院に行くときに推薦と言うのはやや違和感があって,これは要するに,一種の特別選抜枠入試をするということの意味で捉えるべきかと思います。
 最後に,こういう制度を利用するときには,学部成績が重視されることになると思いますが,法科大学院に比べて,法学部の成績判定については,成績分布の在り方も含めて非常に多種多様であり,そこのところをしっかりチェックしないと,どういう成績で学部を終えたからどれだけ評価できるかというのが,必ずしもはっきりしないのではないかと思います。以上です。

【井上座長】
 土井委員。

【土井委員】
 私からは3点ございます。まず,教育課程の改善ということからしますと,教育内容・水準の改善が重要です。しかし,優秀な人材を集めない限り,どうしても空回りが生じてしまいます。現在の法曹志望者減少の傾向,あるいは司法試験予備試験の状況から見ますと,法律学の学修期間を短縮する制度を整備する必要が認められると思いますし,制度として導入する限りは,それ相応の規模が求められるのだろうと思います。
 ただ,選択権は学生側にありますので,いきなり法曹コースについて募集定員を大きく設定しても,当初から十分な志望者を確保できるのかという問題は生じかねません。そういうことから考えますと,方向性を早めに打ち出して,制度の本格的導入前から現在の3年卒業・3年飛び入学者の数を徐々に増やして,こちらの方向に誘導していくことも必要ですし,先ほど中島委員の方からも出ました相場観ということで,例えば目標値的なものを何らか示すということになった場合も,短期間でそれを実現するというのではなくて,一定の時間的余裕を見るなど,学生の志望動向,学力水準などに合わせて調整できる現実的な工夫が必要だろうと思います。
 2点目は,法曹コースを設置する際の審査の仕組みと,入学者選抜枠の募集定員,そして入学者選抜の方法の組合せを,慎重に検討する必要があるだろうと思います。法曹コースの設置の認定を緩やかにして,入学者選抜枠の募集定員を大きくして,入学者選抜の方法を柔軟にしてしまいますと,恐らく質の保証ができなくなるという問題が生じます。
 質の保証を行うためには,法曹コースの設置の認定を厳格に行うか,法科大学院入学者選抜において一定の客観性を確保するか,どちらかを真剣に考えないといけません。確かに,プロセスとしての養成を我々は言ってきていますので,法曹コースの設置に際して厳格に審査するということも考えられますけれども,しかしこれは既存の法学部を対象とするコースであること,あるいは制度をどの時期に導入するかという点を考慮する必要がどうしても出てきますので,難しい問題もあります。そうしますと,少なくとも制度が安定するまでの間は,入学者選抜において一定の質を確保する必要が残るのではないか。そのためにどういうことが求められるのかを,詰めていく必要があるのではないかと思います。
 3点目は,これは先ほど来,瀬領委員や中島委員から出ているのですが,自大学の法学部の法曹コースからそのまま上げるというような枠を限定するかどうかという問題です。法学部生が安心して法科大学院に進めるということを実現するためには,その辺を柔軟に認めていくというのも一つですし,我々としてはプロセスとしての教育を重視してきましたが,それが一定の倫理性を担保できるためには,オープンであることを言ってきたところがございます。そこを余りにクローズドにしてしまうと,それは我々が制度的に対応していかなければならないと思っている予備試験の公平・公正性がまた前面に出てきて,法科大学院教育は非常にクローズドになっているのではないかという批判を招く可能性があると思います。その辺,どういう形でこの枠を設定するのかについて,十分検討していただく必要があるのではないかと思います。以上です。

【井上座長】
 大貫委員。

【大貫委員】
 できるだけ短く申し上げます。さっき丸島委員,あるいは長谷部委員がおっしゃったことにも関わるのですが,目玉は「3+2」ということで私はよろしいと思いますが,長谷部委員がおっしゃったように,学部生が勉強しなくなっているということで,既修にどう対応するかというのは,今回の改革における柱の一つであろうと思います。既修をどうしていくかと考えるとき,「3+2」も大事ですが,「4+2」というのも大事で,その点の書き込みはもう少しちゃんとしてほしいなという気がいたします。それと,ここの法曹コースの書き方について,「3+2」は「3+2」で打ち出していただいていいのですが,そこが曖昧な書き方をされているので,もう少し整理して書いていただけないかというのが1点です。
 それからもう1点は,土井委員もおっしゃったのですが,地方で勉強している人が,上に法科大学院がないところの人が,きちっと法科大学院に行けるような仕組みというのを是非積極的に考えてほしいと思っています。なかなか難しいのは分かっていますが,5ページの上に,一番上の丸のところに書いてある程度でして,「期待される」ということにしかならないのだと思いますが,ここはもう少しお考えいただきたいと思っています。
 もう未修者教育のところで申し上げて,井上座長にお叱りを受けそうだったのですけれども,しかもこの文書には余り書き込むなというお話もありましたが,法科大学院が成し遂げてきた人材養成の実績というのは非常に重要で,そのことはどこかで書いてほしいなと思っています。「はじめに」のところでもう少し書いていただけるとうれしいです。
 もう1点だけ,これはいかがなものかというところがあって,「はじめに」のところの丸の二つ目のところです。さきほど長谷部委員がここはお読みにならなかったのですが,法科大学院の志願者・入学者が減少を続けている原因のところに,「課題を多く抱えた法科大学院の存在等もあり」という文言があります。御承知のように,加算プログラムなり,改善状況ワーキングなりで,法科大学院は身を切る努力をしてきて改善しています。依然としてこうした文言が残るのは,私はかなり抵抗感がありまして,ここだけは何とか表現を変えていただきたいと思っております。以上です。

【井上座長】
 ありがとうございました。大貫委員にはいつも厳しいことを言うようですが,書き込んでほしいと言われた点は,これまで議論していないのです。ですから,次回にでも是非具体的な意見を出していただいて,それを踏まえて補充するようにしないと,事務局の方で勝手に書き込むわけにいきませんから,その辺もよろしくお願いします。学部の教育の在り方,「4+2」も含めてですが,それについて具体的に意見を出していただければ,皆さんの意見もお伺いし,それを踏まえて,より踏み込んで書き込むことも可能となるだろうと思います。
 岩村委員,どうぞ。

【岩村委員】
 ありがとうございます。もう時間がないので,ごく簡単に申し上げたいと思います。先ほど土井委員もおっしゃいましたが,現在の司法試験の状況,更に予備試験の状況といったものを考えたときには,きょうのこのペーパーで示されている「3+2」という方向は,私は妥当なものだと考えております。ただ,もちろん全部を「3+2」にするというわけではありませんので,「4+2」及び「3+2」という,そういうやり方で今後考えていきましょうということでよろしいのではないかと思っています。
 それから,学部段階の法曹コースと法科大学院との一貫というのをどのように捉えるかという問題はあるかもしれませんが,ある程度一体化して考えるというのも,そこも今後必要だろうと思います。推薦制についても,推薦制という言葉を使うかという問題はあり,これも変な言い方で誤解を招くかもしれませんが,優秀な学生を法科大学院に呼び込むという点では一定の機能が見込まれるだろうとは思います。
 一つは私自身の考えですが,他方で,いろいろなことを心配して,余りいろいろなことをがんじがらめにすると,また動きがとれなくなってしまうということもありますので,その辺のさじ加減というのは適切にやっていっていただく必要があるだろうと思います。
 最後になりますが,何人かの方からも御指摘がありました,地方における法曹養成の重要性というのは,私も全くそのとおりだと思っています。ただ,現実にお話を伺うと,地方の法科大学院で勉強したときに,東京とかでの就職が難しい。そのために,結局地方に残らず,東京の法科大学院に行ってしまうという,そういう話を聞いております。ここのところを何か少し考えないと,地方の法科大学院の苦境というのはなかなか変わらないのではないかと思っています。法科大学院をいろいろ改革するというだけでは片付かない問題が存在するかなと思っております。以上でございます。ありがとうございます。

【井上座長】
 御発言を封じるわけではありませんが,そろそろ予定された終了時刻ですので,まだ御発言いただいていない委員で発言を希望される方がいらっしゃれば・・・。
 どうぞ,髙橋委員。

【髙橋委員】
 全体として,学生に対し,非常に前倒しのメッセージになっているということが気になっております。恐らくこの間に,学部生,それから法科大学院の学生にも,こちらでの検討状況が認知され始めてきていると思われますが,学部生は,大変に忙しい学生生活になるという認識で捉えることになるのではないかと思います。
 確かに,法学部出身の未修者の合格率が伸び悩んでいるというのは実情としてあると思いますが,それでもなお,比較的上の学年になってから法曹を目指すという道を断つべきではないとも思います。2年次進級時点で法曹コースを選択するとか,「3+2」コースの設置を強調することで,早い段階での進路選択を迫るというメッセージにならないか。3年次,4年次から法曹を目指すという道が断たれるわけではないということも,どこかで議論をしていただきたいと思います。

【井上座長】
 ありがとうございました。そろそろよろしいでしょうか。本日決めてしまうというわけではなく,次回も引き続き検討していただこうと考えていますので,この辺で本日の会議は終了とさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 次回の会議では,本日の議論を踏まえて,法科大学院等の教育の改善・充実方策に向けた基本的な方向性について,更に議論していただき,その上で,できれば本委員会としての一定の共通認識を得るところぐらいまで詰められればと思っておりますので,御協力いただければと存じます。そのために,本日皆様から頂いた御意見を事務局で整理して,この文書に盛り込んでいただくようお願いしたいと思います。
 これで本日の会議を終了いたします。次回の日程については,改めて事務局の方から御連絡させていただきます。どうもありがとうございました。


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