資料4 専門職大学院WG検討状況に関する各専門職大学院からの意見

1.総論
● 地域社会の関係者との密接な協議と協力関係が専門職大学院には重要であり、この点をより強めるべき。
● 「学生の視点」がやや希薄。ステークホルダーとしての学生の視点は重要である。例えば、卒業時点での学生の満足度調査を必須としたり、満足度調査の結果を評価の重要な項目としたりすることも検討に値する。「専門職業人をいかに養成するか」という「上(社会)からの要望」と「下(学生)からの要望」の両方に応えられるような制度設計・改革が必要である。 
● 需要と供給のバランスに関するエビデンスベースに基づいた調査が必要。
● 専門職大学院の教育研究を米国のように振興するには、専門職大学院だけで採算が取れるような仕組みが不可欠。
● 専門職大学院から撤退する大学が多い中、これに歯止めをかけるような方策をとるべき。当該WGの方向性として掲げる、各専門職大学院における自らの特色や強みや特徴を伸ばすための取組を促進するための制度を早急に実施してもらいたい。
● 高度専門職業人養成のためには、専門職大学院が最もふさわしい形態と考えるが、少数の教員定数で運営されてきた分野であるため、専門職大学院設置基準に定められた教員に増員できない。教員人件費の補助や学生支援等が望まれる。
● 従来の組織構造や経営手法を持つ企業や政府が欲しいと考える人材と、専門職大学院で育成することが望ましいと考える人材にズレが生じることが起こる。専門職大学院が、「出口」である企業や政府と継続的に対話する機会を設けて、専門職大学院における教育に関して理解を求めていくことも重要。
● 専門職大学院は多様な分野で設置されており、同一の設置基準とはせず分野毎に定めるべき。
● 入学の動機付けとなるよう、処遇の改善、資格試験や研修の一部免除といった、修了者に対する優遇措置を検討すべき。
 
2.ダブルカウント関係
● 学部とのダブルカウントによって、一定の範囲で学部との連携が可能であるため、学部とのダブルカウントを認め、学部との連携を促すことを可能にして欲しい。
● 必要単位数や実習科目が多いことから、現状の専任教員が学部授業科目を更に持つことは物理的に難しい状況だが、ダブルカウントが認められれば、学内の人材を更に有効活用できる可能性が開かれる。
● 専門職大学院独自では採算が取れないため、多くの教員が学部等でも教育に従事している。大学院教員は大学院教育に専念すべきだが、ダブルカウント制度は必要枠と考えられる。担当単位数の上限を設けるなど適切な運用方針が必要。
● 志願者減により、専任教員に関する現行制度下での現状維持は厳しい状況であり、ダブルカウントにより経営上の課題の軽減が図られることが期待される。
● 小規模な組織では、大学院の教員が学部の教授会に参画できないのは非効率。エフォート率による管理を検討すべき。
● 種々の分野の専門職大学院について統一的に論じることは難しい。分野や条件等でフレキシビリティを導入し、大学院運営を支援することや学生の利便を図ることには意味がある。
● 教職大学院については、平成30年度まで特例措置が認められているが、教員交流の円滑化、学部と一貫した教員養成の効率的推進、学部への教育成果の還元、学内で重複する分野を整理することによるリソースの他分野への活用といった理由や、財政上の問題から、特例措置の継続や恒常的制度が必要。
● 教職大学院の充実と発展のためにダブルカウントは必要。現行の専門職大学院制度は、院生が、自らの課題を見つけ、解決していく上でプラスに働いていない。
● 教職大学院の専任教員が学部とダブルカウントすることは、大学院の充実の面からは問題だが、学部との一貫教育を行う点からは、柔軟に対応する必要があり、現状で4単位までとなっているものを、8単位程度まで引き上げてもらいたい。
 
3.アドバイザリーボードの設置
● アドバイザリーボードの設置義務付けは賛成だが、経費面での措置も要望したい。
 
4.教育課程
● コアカリ策定の際、「当該分野のすべての専門職大学院から意見を聞くこと」は重要。また、策定されたコアカリが妥当かどうかをどのように点検するかが重要な問題。
● 専門職大学院制度は社会人の能力を向上し,わが国もしくは地域の産業競争力を強化する重要な教育システムだが、所属先機関から支援を受けられず苦労をする社会人学生も多いため、より手厚い社会人学生の支援制度があればありがたい。
● 奨学金や授業料免除のための判断基準となる所得は、前年度の所得であることが多く、休職して入学してくる学生は1年目に奨学金や授業料免除を受けることが難しい。これが、大学院への進学を躊躇する一因となっている。
● 長期履修制度について、学生の派遣側や大学関係者の理解が乏しいため、分かりやすく示す必要がある。
● 社会人に対し、博士レベルの専門職学位を含め多様な履修証明を提供できるよう検討が必要。
● 教職大学院は、現職教員院生と学部卒院生が存在し、力量が大きく違うにもかかわらず、同じ学位であるため、特に、管理職候補者については、博士レベルの学位が検討されてもよい。
● 専門職学位論文は必須とされていないが、論文執筆作業を通じて獲得できる能力が競争力を維持・獲得することに貢献するため、再考の必要がある。
 
5.教員組織
● 優れた実務家がすぐれた教育者ではない。実務家教員の教育能力開発のためのプログラムが不可欠。
● 「実務の最新知識を有する優秀な実務家」は例外なく多忙であるため、みなし専任教員の担当科目数の緩和について積極的に検討していただきたい。
● 保健所や病院などの現場感覚のある実務家・専門家については、専任教員化は非現実的であり、非常勤などのよりフレクシブルな立場で参画していただくのが、幅広い公衆衛生系の取組みについて専門的知識・技能を習得する機会を形成するうえで望ましい。実務家専任教員の配置割合などを義務付けするのは実態にそぐわない。
● 実務家教員は修士号以上の学位を有することが望ましい。実務家教員には、実務経験を裏打ちする研究能力が必要。
 
6.認証評価関係
● 大学院大学の場合は、記述内容の重複が相当部分発生している。機関別認証評価の際に、分野別認証評価の内容も付加して実施しても差し支えない。
● 分野別評価のサイクルに合わせて「5年に一度」にしても、機関別と分野別を一本化した方が、自己点検にも、その後の改善にも着実に取り組むことができる。
● 修士課程、博士課程に比べて、財政面も含め、評価の負担が重い。機関別評価と一体化して実施することを検討すべき。
 
7.情報公開の促進
● 専門職大学院の社会的役割は大きいが、認知度は低い。実務経験とあわせて勉強する意義がもっと社会に浸透し、仕事と勉強が両立できる社会となることが必要
● 専門職学位の付加価値を社会(「出口」)に理解してもらえるよう、国においても、広報についての特別な措置が必要
 
8.職業資格試験等との関係
● 設置基準や認証評価等で、専門職大学院に要求される内容のハードルは高く、それに応じたレベルの高い教育を実施しているにもかかわらず、資格試験や資格と関連する研修等との関係が希薄である。これらの連携をより強化すべきである。
● 専門職大学院において、臨床心理士とともに公認心理師の2つの資格を取得できるようにありたい。法が施行される平成29年度以降の経過措置期間内に、そのようなダブルライセンスが取得可能なカリキュラム編成等について有効なガイドラインを示していただきたい。
 
9.専門職大学院の教員養成
● 専門職大学院においても、一定程度の研究者養成のための研究指導が可能な教員配置を行うことが望ましい。
● 後継者養成のため、専門職学位課程の上にある博士課程が必要。 

10.新たな認定制度
● 「一定の基準を満たしたと認められる専門職大学院を新たに認定する制度を検討する」ことを通じて、専門職大学院の機能強化を促進することには賛成
 
11.その他
● 実験的なビジネスモデルで学生を集めている専門職大学院もあるため、学びの質を損なうことなく、経済性にも優れた学校運営を調査研究し、ベストプラクティスとして例示すべき。
● 博士号を取得したいとの希望を持つようになる学生は少なくなく、また、国際機関等への就職を考えた時、博士号の取得が実質的に必須となっていることも多いため、専門職大学院に博士課程を附置できるようにすることのメリットは大きい。
● 留学生を多く受け入れているが、留学生には学位の国際通用性が大きな問題となる。NQFを意識した教育制度の整理が必要。
● 大学ランキングにおいて成果を上げることができない最大の障害は国際化であるが、今回の報告書では、出口議論がなされ、暗黙の裡に我が国の企業等が求める職能教育に重点が置かれている。二つの課題は、ともに重要だが、国際化を目指せば、MPH プログラムは、グローバルな課題である環境、貧困、格差、国際紛争、国際災害等の専門家養成が急務となり、一方、出口に注目すれば、我が国の現状に特化した教育が求められ、対立する。このため、グローバル化を一義とする専門職大学院と国内事情に特化した専門職大学院を機能分化させてはどうか。

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