大学教育部会短期大学ワーキンググループ(第1回) 議事録

1.日時

平成25年12月25日(水曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省東館3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 短期大学ワーキンググループの運営について
  2. 短期大学の在り方について
  3. その他

4.出席者

委員

小林浩委員、佐藤弘毅委員、安部恵美子委員、大野博之委員、小杉礼子委員、小林信委員、小林雅之委員、清水一彦委員、滝川嘉彦委員、中山欽吾委員

文部科学省

板東文部科学審議官、布村高等教育局長、小松私学部長、中岡高等教育局審議官、浅田高等教育企画課長、里見大学振興課長、氷見谷私学部参事官、田頭大学振興課課長補佐

5.議事録

【佐藤座長】  当短期大学ワーキンググループの座長を務めさせていただきます佐藤弘毅でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。開会に当たりまして私から一言御挨拶申し上げたいと存じます。
 御案内のように,短期大学という学校種は戦後の一連の大学改革,教育改革の一つとして,大学の一形態,暫定的な処置としてスタートいたしました。その後,恒久化の道をたどりましたが,これで60数年を閲(けみ)しているわけでございます。この60数年の間に教育を取り巻く環境の著しい変化,とりわけ高等教育の変化には目覚ましいものがございまして,短期大学の立場も,かつては女子の高等教育の主流を占めており,女性の教育水準の向上,あるいは社会進出に多大な貢献をした時期を経まして,近年はまことに遺憾ながら,学校数,学生数共に減少の道をたどっております。高等教育全体のシェアの大きな変化が起こっていると言い換えることもできると存じます。
 ただ,現在の状況につきましては,全く個人的な見解でございますが,諸外国と比べてもまことに異様な状況のように思っております。アメリカ,あるいはヨーロッパ諸国,いずれの先進諸国をとりましても,今もって学術中心の大学と,職業あるいは実際生活に必要な知識や能力を授ける短期高等教育が共に健在でありまして,それぞれの社会,それぞれの国の中で応分の役割,責任を担っているところでございます。1人我が国だけが,最近の状況としては大学に大きく傾き過ぎているのではないかと考えているところでございます。この状況は短期大学にとりまして単に望ましくないというだけではなく,我が国高等教育全体のバランスという意味におきまして,問題なしとは言えないと存ずるところでございます。
 60年を閲(けみ)いたしまして,この間の時代の変化,何が現在の短期大学の状況を作り出しているのか,そして新しい時代にはどのようにこの国,この社会の高等教育を担って立つべきか,短期大学教育に携わる者が長年悩んできた大きなテーマでございます。
 一方,中央教育審議会など,国の重要な議論の場では,実は平成3年に,「短期大学教育の改善について」というタイトルの下に,それこそタイトルの中に短期大学を冠した答申が出て以来,絶えて久しくこのことが実現されておりません。もちろんその間におきましても,大学,近年では学士課程教育と申しますが,学士課程教育の様々な議論の中で,短期大学士課程はどうあるべきか,ということも若干の議論はなされているものの,専ら短期大学の役割,教育機能に絞った議論は,なかなかその機会を得ないで今日まで至っているところでございます。
 このたび第6期の中央教育審議会が,今後中央教育審議会で審議すべきものを幾つか挙げました。その中の一つに短期大学に関する教育機能,短期大学の在り方について早急に審議すべきという言い残しを今期,第7期の中央教育審議会に委ねたわけでございます。第7期中央教育審議会も今年の1月からスタートして,もうすぐハーフタイムでございます。こちらも様々な議題を抱えておりますので,なかなか短期大学の番が回ってまいりませんで,ようやくにいたしまして去る9月にこのワーキンググループの設置が決定されたところでございます。もう既に年末でございますけれども,これから年度末,場合によりましてはそれを少し越えるぐらいの時間を頂戴いたしまして,このワーキンググループで短期大学の役割と教育機能に関する総合的な議論を進め,上部の部会,あるいは分科会等で審議していただくための論点整理をしようというのがこのワーキンググループの主な任務だと心得ております。
 幸いにして,短期大学教育,あるいは短期高等教育,職業教育,様々な関連分野に造詣の深い委員の御参加を得ることができましたので,このワーキンググループ,必ずや実りある議論ができると信じているところでございます。どうぞ委員の先生方,くれぐれもよろしくお願い申し上げたいと思います。ありがとうございます。
 それでは,今日は予算編成で大変お忙しいところ,文部科学省から幹部の皆様に御列席いただいております。代表して文部科学審議官板東久美子様より御挨拶を頂戴できれば幸いでございます。
【板東文部科学審議官】  本日は年末の大変お忙しいところ,先生方にお集まりいただきましてありがとうございます。10名の委員の先生が全員お集まりになって第1回を迎えることができるという,大変画期的なスタートになっております。それだけ委員の皆様の強い熱意をお持ちいただいた上でこの審議をスタートできること,大変うれしく存じております。
 先ほど佐藤座長からもお話がございましたように,短期大学教育,短期大学の在り方については,ここ数年間,いろいろな検討の中で度々頭を出したのでありましたけれども,本格的に議論されるところに至らないまま今日まで来てしまったことを,我々としても心苦しく,おわび申し上げたいと思います。
 私自身も,数年前に生涯学習政策局長を務めておりましたときに,中央教育審議会でもキャリア教育,職業教育の在り方についてという議論がございまして,その中でも短期大学教育の在り方がほかの学校種との,ある意味では差別化,特色をどう出していくのかということも含めまして議論されたわけです。そのときから,佐藤座長からはもっと本格的に短期大学教育の在り方,短期大学のこれからの機能の再構築についてきちんと議論をすべきではないかという御提言を度々頂いていたわけです。先ほどお話がございましたように,前期の中央教育審議会におきましても,例えば教育の質的転換を求めました昨年8月の答申の中でも,短期大学の機能の再構築については更にしっかり検討しろという御提言を頂いておりまして,今期に引き継がれているところでございます。
 先ほどお話がございましたように,短期大学は,今,量的なところでは急速に減ってきているわけです。平成に入ったときにはちょうど18歳人口がピークの頃であったわけですが,そのときには短期大学自体,今の4倍ぐらいの学生数がいたということでありますし,学校数で言っても今より2倍近いところがピークであったものが,今急速に減ってきている状況がございます。その理由としましては,特に資格系の学科について短期大学から4年制大学に転換されたこともございますけれども,先ほどの座長のお話のように,短期の高等教育機関が持つ強み,特色を考えますと,短期大学という教育形態や学校形態がもっといろいろな機能を持ち得るのではないか,もっと大きな役割を果たしていくことがこれからの教育全体,社会全体にとっても非常に大きな課題なのではないかということを改めて感じるわけです。
 特に,先ほどお話しのように,短期大学は職業教育や実際生活に必要な知識を目標にしているわけですけれども,職業教育に関しても,社会の変化に対応して,新しい分野への転換であったり,高度化であったり,一旦やめている方が再チャレンジをしていくという意味の職業教育,能力を身に付けるといった様々なニーズがあるわけです。また地域の中で核として短期大学が,教育だけにとどまらず,大きな社会貢献的な機能を果たしていく役割もあろうかと思います。まさに,一番地域の中でアクセスしやすい高等教育機関ではないかと思います。
 また,教育の機会均等と申しますか,4年制に行くのはなかなか踏み切れないけれども,まず短期の高等教育機関で学びながら次のステップにつなげていこうという方々もいらっしゃるわけで,そういった機会が縮小してきていることは大変残念だと思うところでございます。
 今までの延長線上だけではなく,これからの新しい時代,生涯にわたる学びが求められ,グローバル化,あるいは地域の変容などの中で新しい機能をどう高等教育が果たしていくのかが求められる中で,短期大学の特色,強みを生かしながら,いかに新しい機能,短期大学の在り方を探っていけるかという,非常に大きなテーマであろうかと思っております。
 細かい制度的な問題についても,様々に今まで宿題になって解決できていなかった部分もございます。短期大学が中身の質的な向上を図っていくこととともに,いろいろな制度とうまくつながったり連携しながら,大きく高等教育の振興につながっていくことを更に期待申し上げたいと思っております。
 いずれにしろ,このワーキンググループで積極的に御議論いただきまして,短期大学という教育機関が非常に大きな役割を,重要な役割を担っていくことができますように,是非積極的な御意見を賜ればと思っております。本日はどうもありがとうございました。
【佐藤座長】  ありがとうございました。 それでは早速議題2でございます。「短期大学の在り方について」を審議したいと存じます。事務局から関係資料を用意していただいておりますので,まずはその説明をお願いいたします。
【田頭大学振興課長補佐】  御説明いたします。資料5-1及び資料5-2で説明させていただきたいと思います。
 資料5-1でございます。短期大学の最近の現状,大学改革を巡る動向から特に短期大学の在り方について検討が求められる視点等ということで,視点についてまとめさせていただいております。読み上げさせていただきます。
 短期大学は,これまで短期に社会へ人材を送り出す身近な高等教育機関として,高等教育の機会均等を確保する役割や社会を支える職業人材の育成,地域の発展にも大きな役割を果たしてきた。
 現在,急速な少子高齢化の進行,地域コミュニティーの衰退,グローバル化によるボーダレス化等に直面する我が国において,持続的に発展し活力ある社会を目指した変革を成し遂げるべく,これを担う人材育成の場である高等教育機関は,社会からの期待に応えることが求められている。
 18歳人口の減少,学生のニーズの変化もあり,多くの短期大学が4年制大学へ移行するなど,大学数も年々減少が続いてきた。
 短期大学全体としては厳しい運営状況が続いてきたが,これまで短期大学が担ってきた高等教育の機会均等を確保する役割,職業人材の育成,地域の中核的人材の育成,地域の生涯学習拠点機能,学生一人一人へのきめの細かい教育を実施してきた特色ある教育は,今後,社会の変化を誠実に捉え,多くの社会層からの修学ニーズに応え,人材育成に大いに寄与していくべきであると考えられる。
 これを踏まえ,大学分科会大学教育部会において短期大学の今後の在り方について議論を行うに当たっては,その具体的な改善の方策等について,下記のような視点等が議論の中心となるのではないかとして列挙する,としております。
 まず確認事項の1でございます。短期大学の現状の確認については,資料5-2で少し説明させていただきます。資料5-2を御参照いただきたいと思います。
 資料5-2,短期大学の現状についてでございます。1枚おめくりいただきまして2ページでございます。短期大学数,4年制大学数,短期大学入学定員,短期大学学生数の推移ということで,棒グラフと折れ線グラフを示しております。現在右の方にございますように,平成25年,短期大学数は360校,短期大学の学生数は13万8,257人でございますけれども,平成8年,上の方でございます。短期大学数のピークは598でございました。これから減少しております。平成10年に短期大学の数と4年制大学数が逆転している状況がございます。
 次に3ページでございます。国公私立別短期大学入学定員充足率の推移でございます。公立大学につきましては,100%をやや上回る一定の状況であるのに対しまして,私立大学におきましては平成10年を境といたしまして,私立大学全体として100%を切っている状況がございます。公私全体といたしましても,現在の入学定員充足率が9割を切っている状況でございます。
 続きまして4ページと5ページでございます。卒業者の卒業後の状況ということで,4ページに短期大学,5ページに4年制大学を比較するような形で載せております。上から全体,その下から各分野になりますけれども,全体を御覧いただきますと,左側から大学等への進学者,次に就職者,正規の職員になる方の場合。次が就職者,正規の職員でない場合。右に移りまして専修学校・外国の学校等の入学者,一時的な仕事に就いた者という形で推移しております。
 続きまして6ページを御参照いただきたいと思います。短期大学・4年制大学の産業別就職者数割合となっております。左が短期大学,右が4年制大学で,両方の比較をしている円グラフになっております。
 短期大学の特色といたしましては,医療,福祉で全体の48%,教育,学習支援で全体の14%でございまして,これは幼稚園,保育園等になるわけでございます。この二つの資格を有するもので60%を超えているのが特徴でございます。それに続きまして就職状況といたしましては,卸売業,小売業の12%になっている状況です。右が4年制大学との比較でございます。
 7ページでございます。短期大学学生数の分野別割合の推移としております。この棒グラフにつきましては,平成8年の短期大学数のピークを挟みまして,昭和55年から平成25年までの分野別の学生数の割合を示しました,例えば人文系,社会学系とか,保健系,家政系といったものの推移を示しているところでございます。御覧いただけますように,人文社会学系の割合が短期大学数のピーク時までは増加しているわけでございますが,ピーク時以降減少している。そのために従前より多かったわけですが,家政系,教育系が更に多くなっているという状況がございます。
 続きまして8ページをお開きいただきたいと思います。国公私立大学を通じた大学教育改革の支援の選定状況ということで,8ページ以降,平成15年から現在まで,特色GPなど,各短期大学のすぐれた取組につきまして,全てを記載しております。
 16ページを御参照いただきたいと思います。(9)と示しておりますけれども,全体の計でございます。短期大学合計では273のすぐれた取組が選ばれている状況でございますが,これをテーマ別採択件数で見た場合,下の表にございますように,特に学生支援,教育課程,教育方法といった,学生一人一人に対するきめの細かい教育が評価されているという状況がございます。
 続きまして17ページでございます。17ページは平成25年度の「地(知)の拠点整備事業」,いわゆるCOCの採択状況について記載しております。これにつきましては,「地(知)の拠点」ということで,全体の採択件数が52件ございましたけれども,その中で下記の3件の取組が短期大学としては採択されている状況でございます。
 最後のページでございます。こちらは大学間連携共同教育推進事業でございます。こちらにつきましては,全体で49の共同連携の取組がございますけれども,そのうち短期大学が参画している事業が37件ございます。4年制大学を含め,地域連携という分野で短期大学が非常に連携の中に参画している状況がございますけれども,その採択大学の一覧ということでその下の方に大学名を記載しております。
 資料5-1に戻ります。次に,この審議におきまして議論の中心となるであろう視点につきまして五つの柱で示しております。まず2でございます。短期大学の教育の在り方についてということでまず柱を示しております。短期性を生かした教育,特定分野での専門職業能力の教育,次に職業一般に必要な教養・実務能力の教育,地域の人材ニーズに対応した教育,企業等社会の人材ニーズに対応した教育。1枚めくりまして個人のライフステージ,ニーズに応じた教育,それから学士課程教育への接続教育の在り方でございます。
 次の柱といたしましては,短期大学の機能の在り方についてでございます。高等教育の機会均等を確保する役割としての機能。地域の生涯学習の拠点としての役割機能。特定分野の専門職業に関する社会人等の学び直し機能としての役割。長期履修制度の活用等多様な社会層への対応。多様な非学位課程の開発。個人のライフステージ,ニーズに応じた幅広い機能の在り方としております。
 次の柱といたしまして,短期大学教育の質保証についてでございます。各省が求める資格要件と卒業要件単位との関係。抽象的基準の明確化や社会人教育への対応など短期大学の現状と大学設置基準の在り方について。学修成果を重視した評価,各短期大学が重点を置いている機能等に着目した評価等,短期大学教育の質的転換等を促進するための認証評価制度の改善充実。それから短期大学問での学科分野ごと,共通教育に関する質の強化への取組。関係団体等が取り組むべき短期大学全体の質保証等への活動。
 4番目の柱といたしまして,5と示しておりますが,コミュニティーカレッジ機能等の在り方の検討。短期大学が担うべき日本版コミュニティーカレッジ,これは仮称としておりますけれども,その在り方。それから地域総合科学科,これは短期大学基準協会認定事業でございますけれども,その現状及び在り方について。多様な専攻科及び認定専攻科の在り方について。
 5番目といたしまして,6の項目になりますけれども,高等学校や企業等に対するPR等,つまり高等学校及び企業等は短期大学についてどのような感想を持っているかなどでございます。以上,かいつまんで視点となるものを御説明いたしました。御審議よろしくお願いしたいと思います。
【佐藤座長】  ただいま二つの資料に基づきまして視点,それから幾つかのデータの説明がございました。これらの視点,あるいはデータの読み方等について何か御質問ございますか。よろしゅうございますか。差し支えなければ,この後の議論の中で適宜またお出しいただければ幸いでございます。
 今日は初回でございますので,今の資料5-1で示された視点は視点といたしまして,これに限らず,様々な角度から短期大学のことを論じていただければ幸いだと思っております。今日はいわゆるフリートーキングで,特定の論点に絞った会議とはせず,自由な意見交換の場にしたいと思っております。そしてこのフリートーキングを基にいたしまして,次回以降の論点を少しく整理させていただければと考える次第でございます。どなたからでも結構でございますが,いかがいたしましょうか。一度は御発言を賜りたいので,一方的に,どちらかから回してよろしゅうございますか。では目が合いました中山委員,そちらから順次,1人3分ないし5分程度を目安としてお話しいただければ幸いでございます。
【中山委員】  大分県にあります大分県立芸術文化短期大学の学長兼理事長をしております中山と申します。私がこの芸術文化短期大学の理事長兼学長に就任してちょうど5年になりますが,私自身のバックグラウンドはエンジニアでございまして,一般の民間企業に30数年勤務した後に身内がやっておりました音楽関係の事業を15年間ほどやって,その後このふるさとの大学から是非ということで仕事を始めさせていただきました。ただいまいろいろな短期大学をめぐる問題点についてのお話がありましたが,その全てを我々も持っているということで,それをどのように経営の中で改善しながら学生をきちんと定員以上受け入れていくのか,若しくは卒業した学生たちが,来てよかったと言ってくれるような大学にするにはどうすればいいのかということに的を絞ってやってきたつもりですが,コミュニティーカレッジとしての役割もあるわけです。私はここで全体を見るやり方として,まず自分たち,それから世の中,それから我々の大学に来るのか,ほかの4年制大学を狙うのかという非常に大きな競合がありますので,競合。それから設置者としての権能。大学に対する対応,そういった一つ一つの大学の運営に具体的な影響を及ぼす要因を取り出しまして,その要因についてかなり詳しく調べました。その結果として大学がどういう弱みと強みを持って,ポジショニングがどのあたりにあるのかを自分なりに計りつつ,足りないところをどうやって補うかを大学の先生方や職員にアピールし,みんなで考えて解決していくという体勢をとってきた結果として,私が在任した5年間に,定員割れが一部起こったところも回復できましたし,コンスタントに定員以上の学生が来ております。また,認定専攻科等もありますので,その卒業生が一般の大学の大学院に進学する実績も出ております。それから短期大学を出た後,4年制大学の3年に編入学する実績も上がっておりまして,ただ単に短期大学というだけではない,広がりのある教育が出来つつあるのではないかと思っております。ただそれはいつどうなるか分からないので,今回のような皆様方の衆知を集めた会議に出させていただくのは私にとっても非常に光栄とするところでございます。以上です。
【佐藤座長】  ありがとうございました。滝川委員,お願いします。
【滝川委員】  私自身は短期大学の教員としてこういう業界でスタートしておりまして,その中で育てられて,それから学長となって,学長を辞めて現在理事長としてということで,大変感謝の気持ちを持っておりますので,そういう気持ちからこのワーキンググループに参加したいと思っております。
 私の学校は栄養を中心にした学校ですけれども,一つの学校法人の中に大学と短大があり,別の学校法人の中に専門学校がありと,大学,短期大学,専門学校と,三つに関わっておりますので,そうした違いを知る者として発言ができればと考えております。
 また私自身のこのワーキンググループでの願いとしましては,これまで短期大学に対して多大な国民の浄財をかけて,施設を建てたり,その中の教員を育てたり,地域に根を張るようにしむけたり,専門性をもって企業や病院などを支えたりしてまいりましたので,短期大学は地域にとって欠くべからざる存在になっている。したがって国民の財産とも言うべき短期大学という公器を是非何とか生かしてもらいたいと思います。
 話したいことはたくさんございまして,5分では話せないわけですけれども,だいたい論点としましては資料5-1にまとまっておりますので,この内容について今後詰めていただければ,その中で細かな内容について発言ができると思いますが,四つほど気になる点だけ発言申し上げたいと思います。
 一つは現在短期大学には,専門学校との比較においてですけれども,既に自己点検や認証評価を受ける仕組みを持っていて,内部的に改善をしていく仕組みを持っているところを今後ますます力を入れていかなければいけないし,外にアピールし,顕在化していかなければいけないと思っております。この質を高める仕組みが内在されているところが論点の一つであり,短期大学の生き残るべき道の一つと考えております。
 既にワンサイクル終わりましたこの認証評価の中で幾つか出てきた方向性もございまして,それが二つ目ですが,その一つが教育システムの顕在化でございます。短期大学というのは御承知のように2年間という短い期間で,専門教育だけではなくて,アカデミックなことも行い,クラブ活動も行ったり,人間形成のための教育を行ったり,海外研修もいたしますし,教員と接するためのオフィスアワーをもったり,ボランティアをやったり,地域で地元の老人たちと一緒に活動したりと,様々なものを内包していますけれども,これが実にスムースに2年間の中にパッケージ化されて入っております。これまで私ども短期大学としてはそれが当たり前のことだと思っておりますので,そのことに対して自慢することもございませんでしたが,これこそ短期大学が持つ一つの教育システムだろうと考えております。このことを今後もっと顕在化し,精鋭化して強めていく必要があるだろうという点が二つ目でございます。
 三つ目は,冒頭触れましたが,地域との密な関係でして,地元の高校生にとりましては本当に高等教育のファーストステージとしての位置付けが明確になっておりますし,生涯学習の拠点にもなりつつあります。また,教員などが地方議会の審議員などもしておりまして,地域との関係はこの三つに限らず,非常に大きなものがございますので,こういったものも今後顕在化していかなければいけないだろうと考えております。
 こういった考えを進めてまいりますと,最終的には,一つの例ですけれども,アメリカのコミュニティーカレッジのように,若者たちの高等教育のファーストステージとして,また地域を担う重要な高等教育の場として位置付けられていくのではないかと思います。
 最後の四つ目といたしましては,今後の方向性として国際通用性を持った短期大学を模索していくのが良いのではないかと感じている次第です。
 四つほど論点として申し上げましたけれども,それ以外にもう一つだけ是非発言をしたいことがございまして,大学教育部会に適した内容であるかどうか分かりませんが,冒頭申し上げましたように私立短大の唯一の理事長として今日は参加しておりますので申し上げたいと思います。私がこういう業界に入りましてから,短期大学は本当に様々な外からの圧力によって動いてきた感じがいたします。大きくは専門学校と短期大学の間においてのあつれきが多かったように思います。例えば短期大学の卒業生と専門学校の卒業生で公務員の給与が同じだと言われたり,その後大学への編入は短期大学だけではなく専門学校もできると言われるようになったり,そしてまた今日,専門学校は短期大学と中身がほとんど変わらないから1条校だという話が出てきたりしているわけですけれども,このベースにあるものが何だろうかということを専門学校と短期大学を両方持つ者として考えます。
 そして一番大きなところは政治に関わることではないかと思っております。御承知のように私どもは,教育基本法の第14条において政治活動をしてはいけないことになっておりますけれども,専門学校の場合には,例えば若者から頂いた浄財を議員に献金したりすることができるので,直接的なフィードバックに当たるか否かはわかりませんが,法改正などを伴った利益誘導がしやすいところに課題があるのではないかと考えております。
 こういったことにつきまして教育の論議をする前段階として踏まえておきませんと,ここでの議論も生きていきませんので,こういった課題も押さえつつ,これからの話ができればと思います。以上でございます。
【佐藤座長】  非常にたくさんの論点を出していただきました。先が楽しみでございます。清水委員,お願いします。
【清水委員】  私は大学職の最初が短期大学で,5年間短期大学を経験しまして,今短期大学基準協会でも理事を務めております。短期大学のこれまでの経緯と同時に,これからの課題について応援団の1人として参加させていただきました。しかも短期大学が制度化されてちょうど50年目に当たりますので,そういう節目に向けてこういうワーキンググループが立ち上がったことは非常に喜ばしいことだと個人的には思っております。
 私は専門が教育制度学でございまして,今日は論点として政策の視点,概念の視点,制度の視点,接続の視点,四つについて私見を述べさせていただきたいと思います。
 政策的には,既に欧米の短期高等教育が政策の重要課題に取り上げられているのは皆さん御承知だと思いますが,我が国も,全ての者に短期高等教育をというスローガンを掲げて,理想的には短期大学,高等専門学校,専門学校,専修学校,予備校まで含めて短期高等教育という領域について裾野を広げる。そしてその上に教育大学,あるいは研究大学というように裾野を広げないととんがった大学も出てこないとよく言われますが,そろそろそういう時期に来ているのではないかと政策的には希望しております。
 二つ目の概念ですが,御承知のように学校教育法第108条の短期大学の目的ですが,キーワードは学芸と職業と生活です。ではこの概念を定義しろといっても,恐らく誰も明確にはできないと思っています。この目的の概念が大学や高等専門学校,専修学校と重なっているわけです。あるときには大学,あるときには高等専門学校,あるときには専門学校と。そういう意味で,短期大学の制度的な位置付けが非常にあやふやになっている。この目的概念を明確にする作業の中で短期大学の目的をもう一度明確にすべきであるというのが概念の視点でございます。
 三つ目の制度的には,短期大学の独自の地位を確保することがこの間ずっと言い続けてきたことでありまして,その一つが学位化,これは実現いたしました。短期大学士という学位の名称がいいかどうかは別として,とにかく学位化は文部科学省はじめ関係者の御努力によって実現されてきました。
 次に,1条校化です。大学の中に埋もれしまって見えてこないという1条校化が制度的に確固たる地位を確保するためには必要なことではないか。
 さらにはファーストステージ,これは平成3年の設置基準の大綱化以降,短期大学でも様々な改革実態調査をしてきましたけれども,その中で我々が常に叫んできたのが高等教育のファーストステージ論でした。今滝川委員も触れられましたけれども,高等教育の最初のステージが短期大学であるというところを現実化するいろいろな方策を考えるべきではないかということが制度的に求められると思います。
 四つ目の接続ですが,御存じのように短期大学は高校ともつながっていますし,大学ともつながっていますし,場合によっては大学院ともつながっている。かたや高等専門学校とか専門学校とは横のつながりもあるという意味で制度的には非常にいい位置にいるわけです。つまり左右上下どこにでも接続できる。この利点を生かす方策も考えた方がいい。
 一例を挙げますと,アメリカのコミュニティーカレッジの中には,テック・プレップという,いわゆるハイスクールと短大を2+2でつないで中堅技術者を養成する法律が施行されたのは御存じかと思います。あるいは,短期大学の2年と4年制大学の上の2年をつなげた教員養成プログラムもアメリカでは現に走っております。そういう接続を視野に入れた上下のプログラムも新しい教育の在り方として検討する意味があるのではないか。いろいろな意味で縦と横のアーティキュレーションという方策を考えるべきであるというのが接続の視点でございます。以上です。
【佐藤座長】  ありがとうございました。教育制度学の学究らしい,様々な論点を御提示いただきましてありがとうございました。小林雅之委員,お願いいたします。
【小林(雅)委員】  私も長くなるかもしれませんが,自己紹介を兼ねて申しますと,私は清水委員と同様に,短期大学基準協会ができる前から短期大学に関わっておりまして,様々な調査をして短期大学の質保証に関わる問題をずっと追及してきた立場であります。現在短期大学基準協会の評議員になっております。
 第1の論点として申し上げたいのは,この場は短期大学のことを考えるワーキンググループなのですが,先ほど佐藤座長がおっしゃったように,短期高等教育という視点から取り上げることが非常に重要だろうと思っております。つまり,もう少し広い視野から考える必要があるのではないか。誤解のないように申し上げておきますが,専門学校とか高等専門学校のこともここで議論するという意味ではなくて,短期高等教育全体の中で短期大学がどういう役割を持っているかを考えていかないとこの問題はなかなか視野が広がらないのではないかと考えております。
 そういう視点から言いますと,高等専門学校,あるいは専門学校との役割分担も必要になってまいりますし,あるいは4年制大学との役割分担をどうするかという議論も出てきます。先ほどから話にありますように,独自性をどう出すか,強みと弱みをどう出していくかということも4年制大学,あるいは専門学校と比較してどうかという論点を考えていく必要があると思っております。
 比較する場合,幾つか方法があるわけですけれども,一つは調査統計,エビデンスと言われるものを出していくことでありまして,これは後から具体的に申し上げますが,ここにいらっしゃる委員の方は十分エビデンスを御存じだと思うのですけれども,中央教育審議会としてはそういったエビデンスをもっと出していく必要があるのではないかと考えております。
 比較の視点として歴史と諸外国との比較があるわけですけれども,歴史は先ほど佐藤座長から説明がございましたけれども,短期大学が当初の新制としてスタートしたときの経緯がかなり重要な意味を持ってきておりますので,これを十分踏まえる必要があるのではないかということです。
 諸外国の比較は,いろいろ出てくると思いますが,例えばアメリカのコミュニティーカレッジとの比較が幾つか既に出ておりますけれども,アメリカのコミュニティーカレッジはほとんどが公立で,男女共学で成人が6割を占めている機関であります。日本の短期大学は私立が9割でありまして,女子が9割近く,未成年の学生が圧倒的だということで,かなり性格を異にしております。そういった点を十分に考える必要があるのではないかと思っております。
 地域の中核的人材とか,地域の高等教育機会に十分寄与してきたということですけれども,これについてもやはりエビデンスを出していかないと国民が納得する議論にはならないわけです。例えば県内の高校からどれぐらい進学しているか,県内にどの程度就職しているのか,先ほど審議会の委員になっているというお話がありましたけれども,どういう形で地域に貢献しているかについてもエビデンスを出していくことが非常に重要であると思います。
 その観点から,先ほど御質問すればよかったのですけれども,今気がついたので申し上げたいのですが,今日の資料の5-2の3ページですけれども,定員充足率の推移がございます。これを見ますと,平成4年が18歳人口のピークですから,これから充足率が低下していくことは分かるわけですけれども,これが今世紀に入りまして,平成13年あたりから一旦,平成16年,17年にかけて改善しているのですね。これがどういう理由なのか分からないので,もしお分かりになる方がいたら教えていただきたいと思います。充足率がこれだけ改善しているということは何か理由があるわけで,それが今後の充足率の改善のヒントになるのではないかと考えますので,是非この件,御検討よろしくお願いいたします。
 あとすみません,長くなりますが,幾つか論点を申しますと,大学としては,やはり戦略的な計画を立てて強みと弱みを明らかにしていくことは当然のことでありまして,そのためには最近の言葉で言いますとInstitutional Researchをやっていくことが非常に重要だと思っております。このあたりの方策をどのように考えていくのかということです。
 質保証が重要な点については先ほどいろいろな委員がおっしゃったとおりですけれども,私が特に重要だと思っているのは教員の質保証なのですね。短期大学と4年制大学の違いは,研究にどの程度比重を置くかも議論の一つだと思いますけれども,短期大学の教員は教育に比重が重いわけですから,そういう観点からどのように質保証をしていくのか。今まで研究業績だけで捉えていた側面が非常に強いと思うのですけれども,それとは違う視点が必要ではないかということです。
 最後になりますが,それに関連しまして大学の情報公開を積極的に推進していく必要があると思います。今日申し上げたこともできるだけ情報を出していただきたいということに尽きるのですけれども,そういう観点からしますと大学ポートレートというのが来年度にかけてできることになっておりますので,そういうところで大学情報公開が進められてまいります。そういうところにも積極的に情報を出していくことも必要になってくるのではないかと思っております。長くなりましたが,以上です。
【佐藤座長】  ありがとうございました。それでは小林信委員お願いいたします。
【小林(信)委員】  小林でございます。私は教育現場には直接携わっていません。私が今勤務しているところは全国中小企業団体中央会と申しまして,中小企業の業種別の事業者が集まった組合組織を支援,指導する機関でございます。私どもの団体では,今大きな問題になっている新卒者の就職支援を行っています。4年制大学,短期大学,専門学校を卒業した学生,生徒諸君の就職がなかなか厳しい状況が続いています。今年は改善したようですけれども,その支援を私どものような団体を通じてお手伝いをさせていただいているということでここに来たのだと思っています。
 今日の資料5-1に提示されています議論の中心となる視点の中でまさに専門的な分野,短期大学のあるべき姿,役割がどうだということについては,現場の方々からの意見も短期大学の学長,理事長はじめ,関係者の方がいらしていますから,そちらの方々に意見を述べていただくとして,逆に卒業された学生さんが卒業された後,多くの方々が企業にお勤めなので,その受入れ側の立場から今後発言していきたいと考えております。
 また,よく大学教育の中でも言われますし,短期大学でも今回の検討の視点の中にも入っていますけれども,社会人になってからの学び直しという場で短期大学がどういう機能を果たせるのかということでも,これから勉強した上で御意見を申し上げたいと思っております。
 短期大学については今まで縁がなかったものですから,幾つかの短期大学を今訪問させていただいていたり,先生方とお話をさせていただいたり,学生諸君と懇談を持たせていただいたりする機会を得ながら勉強しているところです。幾つかの短期大学に窺う中で,短期大学には,2年間という短期間で専門的な資格,免許が得られるような機能があることを知りました。例えば保育とか,幼児教育,栄養学という部分の子供たちと先だって話す機会があったのですが,彼らは非常に目的意識が高くて,2年間でかなり勉強しているというのが,今まで私の認識になかったところだと思っております。
 私の妻も小学校の教員をしていて,小学校の教員の中で短期大学を出られて教員免許を取得された方がいらっしゃったので,その方ともいろいろ話をする機会がありました。4年制の大学教育と違って,短期間で集中的に,かなり時間を割いて勉強されて,現場でも活躍されている方がいらっしゃること,今まで認識がなかったので僕自身にはカルチャーショックだったのですけれども,すばらしい方がいらっしゃるのだなと経験した次第です。
 ただ,短期大学に対してのイメージとして持っているのは,私の世代の頃の短期大学に行った女子学生はとりあえず短期大学に行ったという方も結構いらっしゃったのです。言い方は悪いですけれども花嫁修業という時代も過去にあったと記憶しております。これが社会人になられているということで,今どのように活躍されているのか。それから結婚後,子育て終了後に再就職するに当たって,また学び直しの見地でどうように短期大学を利用されているのかということについてもこれから調べていきたいと思います。
 もう一つは,視点としては短期大学についても今現在1条校としてある以上,国のお金が投じられている機関であるわけです。大学についても一つの地域の資源であるというお話も先ほど先生の中からありましたし,地域の学びの拠点であると思います。パブリックな機関でもあると思います。これをどうやって生かしていくか,そのために国としてどういうお金を投じる方法があるのか,今後どう配分していくのかということについてももうちょっと突っ込む必要があると思っています。これは節約という意味ではなくて,逆に教育機関としての短期大学,4年制大学についてもしっかりやっているところには集中的に配分していく必要があると思いますので,その点についても今後御意見を申し上げることができればと思っております。以上でございます。
【佐藤座長】  ありがとうございます。引き続いて小杉委員,お願いします。
【小杉委員】  労働政策研究・研修機構の小杉と申します。私も短期大学に全く関係のない人間で,一体何を話したらいいのかと思っておりましたが,私の勤務先は厚生労働省の独立行政法人で,労働政策としての若者の能力開発をずっと考えてきております。教育と労働の接続をテーマとしてきておりますので,その関係でお呼びいただいたのかなと思っています。短期大学だけをやっているわけではありませんが,労働政策側といいますか,私たちがいつも扱っているデータ側から見ると短期大学がどう見えてくるかというお話をさせていただきたいと思います。
 文部科学省の作った資料は本当に文部科学省データばかりで,大学の中から作ったデータしかない。外から大学,短期大学はどう見られているのかというデータは何も入っていないのだなとつくづく思いました。多分ほかの省庁もみんなそうだと思うのですけれども,割と近視眼的なところがあるので,少し幅広く見た方がいいのではないかと思います。
 もうちょっと幅広い統計になると,短期大学だけで一つのカテゴリーにはならないで,短期高等教育というくくりで,短期大学,高等専門学校,多くの場合にはそれに専門学校を付け加えた短期高等教育という枠組みでデータを見ることになります。ごく一部突っ込めば短期大学と高等専門学校だけを取り出せるデータも出てきますが,そういう中で短期高等教育の卒業者は労働市場でどんな位置にあるのか。全体としては学歴間格差が今広がっていると思っています。つまり高等教育に進まない,高校卒業レベルで労働市場に入る人,プラス2年の教育を受けて入る人,更に4年とか,更に外,という形で労働市場に入る段階が遅くなるわけですが,高等教育機関が長い人ほど,入ってからの賃金格差なりを比べると経年的に徐々に開いてきていて,短期高等教育を受けることは高校レベルで労働市場に入る場合よりも賃金的には水準が高くなる傾向があります。それだけ短期高等教育によって付与された能力があって,それが成果を出している。それが基本的な価値として言えることだろうと思います。
 失業率を見ましてもやはり学歴間格差ははっきりしていまして,短期高等教育を受けた人は全く高等教育に進まなかった人に比べると失業率が低い。特にリーマンショック前後を比較しますと,一番失業しなかったのは実は短期高等教育卒業者だったのです。4年制大学卒以上より失業しなかったというデータもございます。労働市場的に見るとそういう価値がある。少し幅広く比較してみることが大事じゃないかというのが一つ。
 それから,ごく一部短期大学と専門学校を別にして比較できるものもありますが,その中から言えるのは職種にかなりの違いがあるということです。文部科学省さんが作られたデータで産業別の就職先が出ていて,短期大学の半数が医療・福祉分野の産業に入っているというデータがございましたが,多分保育関係が一番多いのかなと思います。看護がどんどん4年制大学にいっていなくなっていて,福祉といっても短期大学では介護福祉士は余り養成していないのですよね。圧倒的に保育士です。労働市場に出ている人の数を比べてみると,短期大学は福祉の中でも保育にかなり特化した状態になっていて,今保育士も不足していて需要が高いのでそれはそれで大事なことですが,これからもっと不足していくと言われている介護系には余り広がっていないという特徴があります。多分,そのあたりは専門学校との重複ということで,労働市場での対応の仕方が違うのだろうと思います。そのあたりに歴史があって,短期大学はアカデミックに片足突っ込んでいると言ったら変ですけれども,そういうところがあるので,持っている学校の性格からして保育士を養成することに対してはかなり長(た)けているとか,そういう歴史とか伝統とかがあって職業領域が分化しているではないかという感想をもちました。
 そういう特徴を考えるときに,労働市場の側から,今どういうところに需要があって,どういうところに輩出してどう評価されているのか。そのあたりから短期大学が世の中に提供している価値は何なのかということを考えていって,そういう強みをもう一度分析してみる。専門学校との差異化とか,4年制大学との差異化とか,あるいは高校との差異化とか,そういう比較の視点は大事ではないかなと思います。
 もう一つほかのデータで,採用した企業側がどういう学歴の人を採用しているかというデータを都道府県別に見るとすごく違いがあるのですね。高等教育の偏在の仕方が多分大きく違うのだろうと思いますが,地域によっては短期大学卒の採用数が4年制大学と変わらないぐらい多い地域もあります。その地域差は大変大事なポイントで,地域の労働市場の需要とのマッチがあるから,それだけある意味では生き残っているのだと思います。そういう労働市場の側からも地域で見ることが大事だし,そういう地域にとってのかけがえのない大学,短期大学という意味もあるのではないかと思います。
 ちょっと違う視点から見るとこんなデータとか,こんな見方ができますということを提供させていただいて,私のお話とさせていただきます。
【佐藤座長】  ありがとうございました。先が楽しみでございます。是非先生方,多様な資料,データを御提供いただければ,大いに勉強になると思います。ありがとうございます。大野委員,お願いします。
【大野委員】  国際学院埼玉の大野でございます。まずこのたびこのような機会を与えていただき,本当にありがとうございます。短期大学教育の現場と認証評価の活動にも携わらせていただいていますので,その観点から三つほど手短にお話をさせていただきたいと思います。
 まず一つは短期大学の弱み,強み,それから今後ということで日頃思っていることをお話しさせていただきたいと思います。まず短期大学の強みは,先ほど来いろいろとお話が出ているとおり,本当にこぢんまりとしているのですけれども,そこで機能的にいろいろな成果を出しています。何で短期大学を選んだかと学生によく聞きますが,最初に返ってくるのは2年間で集中的に学ぶことができる。早く社会に出て活躍したり,貢献できる。それから学費が安くて経済的である,小規模で友人とネットワークというか,絆を深めることができる。教授との距離が近くて,勉強だけではなくていろいろなことが相談できるという,積極的な意見をたくさん言ってくれます。
 そういったことも踏まえて,特に私立の短期大学では建学の精神に基づいて人材養成がしっかりなされている。教養教育と専門教育がバランスよく2年間で,カリキュラムだけではなくて見えないところで各種実習の事前事後指導,各種研修,大学生活を含めた行事,全てが無駄なく人が育って,必要な知識や技術が身に付く仕掛けができていることが挙げられています。
 さらに,大変きめ細かい学生支援がなされているのも短期大学の特徴でありまして,これは学生と教職員が対話というか,コミュニケーションを取りながら学生が体験的に作り上げていくことをサポートしますので,自らということはもちろん必要ですけれども,相当程度手厚くできている。これは教職員全体が参画してそれぞれ連携協力でやっていることが一つ大きな特徴であります。
 今強みのところですけれども,なぜこういう成果が上がっているのかと考えてみたら,先ほどもお話がありましたとおり,学生の目的意識が非常に高いことが第1に挙げられます。入学前からこういった方向を目指すというかなりしっかりとした目的意識を持っている学生が大半である。それから,それを支える教職員に使命感があって,特に専門職業資格を付与して社会に送り出す際は,未熟なままというわけにはまいりませんので,責任をもってしっかりとしたレベルまで高めるという使命感があることが挙げられると思います。これらの取組につきましては,先ほど田頭補佐からも説明があったGPの事例や,今日は御用意できていなかったようですけれども,基準協会で認証評価のときに,すぐれた取組ということで各短期大学,本当にすばらしい取組がありますので,参考にしていただければ大変有り難いと思います。
 弱みもたくさんあるかもしれませんけれども,まずもって先ほど来お話が出ているところもありまして,4年制大学と専門学校とのはざまで短期大学の特色がなかなか見えにくいのが一つの弱みではないか。加えて,今短期大学の強みを申し上げましたが,これを具体的にきちんと説明する力が不足していて,せっかくいいものがあったにもかかわらず,理解してもらえなかったのが残念なところだと思っています。
 加えて,それぞれの短期大学,もちろん努力はしておりますが,他のところと比較して,業界だとか,社会のニーズをどれだけ的確に捉えて次の教育研究に生かしていくかというところについてはやや不足していたという反省をしなければいけないと思っております。
 そんな強み,弱みを踏まえて,今後につきましては,私も清水委員のお話にもございました,国民の全てに短期高等教育を,ハイヤー・エデュケーション・フォー・オールを合い言葉にしていかないとこれからの日本は大変な時代だろうと,生意気ですけれども思っております。物すごいスピードで知識社会へ移行しておりまして,小杉委員のお話にあったように,もはや高校卒業で闘える領域はどんどん減っているようでございます。
 それからジェンダーの問題も,日本は先進国でありながらとてもギャップがある国で,学生に聞いてみると就職して2,3年したら専業主婦でのんびりやりたいとはっきり主張する学生も少なくないのですけれども,社会参画して,世のため人のために活躍できる教育が必要ではないかと思っています。
 若年者は特に非正規雇用が大変な勢いで増えているということで,なかなか教育訓練投資もままならなくなると,どこでその人の能力発揮をサポートするかというと,短期高等教育のステージを除いてはないのではないかと思っております。
 更に高齢者ですが,高齢者問題はその比率とか数ではなく,生産人口が減るということですので,高齢者比率が増えてもそういった方々が健康で,高い能力で社会に貢献することができたら社会の活力は保たれるというか,発展させることができると思っていますので,そういった意味でも学び直しがキーワードですけれども,短期高等教育のステージは期待されているところだと思っています。
 そんなことから,学位の話も含めて国際通用性は外してはいけない視点だと思いますが,私は常々相反するもう一つの考え方がありまして,グローバル化に従って国際通用性を高めていかなければいけない一方,そこの地域でしかない持ち味をどのように短期大学,なかでも短期高等教育が一緒になって守っていくのか。言葉で言うと共同自治体的な発想というか,大きなシステムの中に巻き込まれるのではなくて,自分たちで自分たちのところのよさをしっかり守っていく,またつなげていくことがこれから必要ではないか。そうすると国際通用性とのバランスというか,立ち位置をどう考えたらいいか常々考えているところですので,いろいろと御示唆を頂ければと思います。以上でございます。
【佐藤座長】  ありがとうございました。これまた豊富な論点でございました。安部委員,お願いします。
【安部委員】  長崎短期大学の安部でございます。私は30年以上,地方の私学の短期大学で教員及び学長を勤めている者でございます。主に教学面から,短期大学教育の改革の方向性を探る活動をずっと行っておりますので,それに関連したお話をさせていただきたいと思います。
 先ほど,平成10年に短期大学と大学の数が逆転したという資料も頂いておりましたが,その頃から,例えば女性が職場で男性と対等な地位に就くために,又は技能や技術を身に付けて資格を得て職業を得ることが大切だと言われるようになって,それまで短期大学に入学してきた層が一方は4年制大学に,一方は専門学校に流れて短期大学を希望する層が減ってまいりました。それに呼応して短期大学の4年制大学への転換が起こってきたのですけれども,その頃,10年ほど前になりますが,短期大学教育を実際にやっている者として,内部から,2年又は3年という短期の高等教育機関の役割,機能とは何であろうかということを洗い直してみたいと思いまして,九州の元気な短期大学のお仲間たちとともに,「短期大学の将来構想を考える研究会」を発足いたしました。それは,地方には質の担保された短期の高等教育機関を充実させる必要がまだあると思ったからです。
今世紀になりましてから,例えばグローバル化に伴う知識基盤社会の進展で,高度な教育を次世代の全ての人に提供すること,また,疲弊する地方の底上げのために,地域を愛して地域の役に立つ,貢献する人材を育てることの,必要性がますます高まっていることを地方から発信したいと思います。
 また国民のいわゆる経済格差が大変拡大しているようで,特に子育て世代のそれは顕著になっていることから,高額な大学の授業料負担が重く感じられる家庭も増えているように思います。そういうことから考えますと,全ての人々にコミュニティーカレッジ以上の高等教育を保証するというアメリカの例を引くまでもなく,誰もが気軽にアクセスできる短期の高等教育機関の充実は国家としての優先課題だと思っております。
 私どもがそういう思いで起こした小さな活動ですけれども,まずこれまで行ってきた短期大学の教育の成果とは何かということで,具体的には,卒業生の活躍の状況はどうか,あるいは就職先が短期大学にどのようなニーズを持っているのか,また,高校関係者が短期大学に対してどういう認識を持っているかに関して,調査研究等を実施いたしました。この短期大学教育の検証作業のプロセスの中で,短期大学関連団体の御指導や御支援,さらには,高等教育研究者の専門家の参画と協力を頂きながら,短期大学教育改革の方向性を見いだす活動を続けております。私は短期大学の現場で教育に携わる教員自らが問題意識を持つことが大事だとずっと考えておりますし,当たり前のことではありますが,自分たちの行っている教育を社会がどのように評価しているか受け止めることが改革改善への道のりの第一歩であると思うからです。
 実はこの研究会の活動を始めまして10年が過ぎて,成果に関する研究,さらには,この研究会を母体とするコンソーシアムで,複数の短期大学の学生が合同で集まって行う研修会や,あるいは一つの高等学校をいろいろな短大に通う卒業生たちが訪問する高校訪問キャラバン隊,あるいは短大フェアなど,短期大学が共同で行うアクティビティも,数多く積み上がってまいりましたが,その間も短期大学の厳しい減少傾向はとどまっておりません。私たちはこの研究会活動の中で,短期大学は絶滅危惧種なのかいう問いを何度も重ね,いやそうではない,再生発展の可能性を自分たちで示さないでどうするのだ,今は新たな地平にたどり着くための努力をみんなでしなければいけないと考えてまいりました。
 また,この活動を続けていく10年の間に,短期大学に入学してくる人々の質や教育に求めるニーズが随分変化しているように思います。4年制大学でも言われていますが,学力入試で入学しない層が多くを占めてきて,学生の多様化が大変進んでおります。少人数教育や教育重視は,短期大学の特徴と言われますけれども,それをもってしても,教育課程や学生支援に関して従来では起こり得なかった問題が生じているのも事実です。その意味で,教員の教育力が今とても問われていると思います。教員たちの中では,こんなことまで短大でするのかという疑問を抱くことも出てまいりますが,2年間の短期大学教育で成長・変化していく学生を見ますと,この人たちに適合する短期高等教育の社会的使命を強く感じております。同時に,彼らの学習動機を高めるために,高等教育改革の中で現在論議されておりますアクティブラーニングの短期大学版の開発をしなければならない,いわゆる職業教育とつながってまいりますが,そういうことも考えております。
 こうした問題意識に立って現在は教育の教育成果検証のための共同での教学IRシステムを文部科学省のGPの補助金事業の助成を受けまして構築することにしました。本年度は短期大学間共同での在学生調査のシステムを立ち上げて,学生の教育に対する満足度,あるいは学生生活の状況を把握するための短大共通の調査を定期的に実施すること,さらに,その結果を自学の点検・評価に生かし,あるいは全体で比べたり,個別の短大間での相互評価を行ったりする際のエビデンス資料にすることを考えております。次年度以降は,各専攻分野の教育課程に応じた学修ポートフォリオのフレーム及びコンテンツに関する共同開発等も実施する予定でおります。
 さらに,先ほど申し上げたように,短期大学の学生は,実践的な学びへのニーズが非常に高いという傾向がございますので,短大ではそういうアクティブラーニングを,今現在どれくらいやっているのか,あるいは,今後,どのようなものを学生に提供すれば教育効果が上がるのかについての具体例を求めまして,実習,あるいはインターンシップ等の職業につながる学習機会の開発とその成果検証活動をテーマとしております。
 以上のような活動をしている者の立場として,今回7期で短期大学の役割と機能について集中的な論議をされることに対して非常に喜びを覚えておりますし,日本の未来の発展を支えるために全ての人に本当に質の高い短期の高等教育を提供すべきだという思いが強うございます。日本の短期大学は大学としての基準を有しております。認証評価制度によって事後の質も担保されております。残念ながら,公立セクターの多くは短期高等教育から現在は撤退して,95%の短期大学は私立学校です。よく私立学校はマンモス私大だとか,大教室での授業とか言われますが,短期大学においてはその大多数は少人数教育を堅持し,教育力に重きを置いております。この特性は評価してしかるべきだと思いますし,このような短期大学の教育を活性化するためには,地方行政を巻き込んだ短期高等教育の制度的振興策がどのようなものかを考える必要があります。同時に,私たち短期大学教育に携わる者の内部からの改革が求められると思っております。その具体的な方法につきましては,先ほど論点をたくさん整理していただいておりますので,一つ一つワーキンググループとして論議し,大学教育部会で深まることに期待したいと思います。以上です。
【佐藤座長】  ありがとうございました。これまた多岐にわたって,安部委員には今後,短期大学関係者が非常に注目しております短期大学コンソーシアム九州の様々な取組についてまた詳しくお話を聞かせていただければ幸いでございます。ありがとうございます。
 最後になりましたが小林浩委員,お願いいたします。
【小林(浩)委員】 私はリクルート進学総研の所長をしておりまして,カレッジマネジメントという大学の経営誌の編集長もしております。ですので,短期大学さんから見ると顧客というのですか,こういう言い方はしないかもしれませんが,高校生の実態調査,あるいは短期大学さん,大学さん,専門学校さんを訪問して取材するところをメインの仕事にしておりまして,短期大学の中からというよりは外からの視点ということでお話ができればと考えております。
 私は短期大学等にもよく取材に行っていまして,よく勉強する真面目な学生さんがたくさんいて,少人数でいいサポート体制を持っているなと感じてはおりますが,残念ながらこれがなかなか伝わっていないのが現状ではないかと思います。一言で言うと位置付けがあやふやで,埋もれてしまっているという印象を受けております。
 例えば,私どもで高校生に大学,短大,専門学校,それぞれに進学するメリットは何かと,こういう聞き方をすると,大学に進学することのメリットは,将来の選択肢が広がるとか,教養が身に付くとか,学生生活が楽しめるとか,大手企業に就職できるとか,幅広いキャンパスライフと教養可能性が挙がってきます。
 では短期大学と専門学校はどうかというと,二つとも専門分野の勉強に集中できることと,早く社会に出られるというのが同じなのですが,差があるところが,短期大学は仕事・職業に直結しているということが出てきます。もう一つが学生生活が楽しめるといったところが出てきまして,これは大学と同様にキャンパスライフを楽しみつつ,仕事に直結したところの短大のサポート体制に期待しているという学生の姿が見えてきます。
 では専門学校は何かというと,実は仕事という言葉が出てこなくて,やりたい特定の業種,業界に就職したいというのが出てきまして,仕事というよりはこの業界に行きたいというニーズが高いことが分かります。それからもう一つ,手に職を付けられるといったところ,それからもう一つが,これは私はびっくりしたのですが,そこでしか学べない内容があるというのですね。つまり,専門学校さんは独特の教育システムを持っていまして,これがきちんと高校生に伝わっているということだと思います。
 こう見てきますと,高校生の立場から見ると,短期大学はどのような教育でどうなれるかというところがいまひとつ見えづらくなっているのではないかと感じております。特に高校生にインタビューしますと,昔はお嫁さんになりたいとか,主婦になりたいという希望が多かったのですが,今は一生働きたいという,女子高校生が増えていまして,女子の社会進出が進んで,一生働こうとする中で,短期大学の価値は何なのかをきちんと定義して伝えていく必要があるのかなと思っております。
 もう一つ,私ども就職の方もやっておりますので就職,出口という観点から見ますと,先ほどの資料でも平成6年をピークに短期大学の進学率が低下に転じております。このあたりで何が起こったかというと,今までいわゆる一般職と言われていた職が大手企業を中心に非正規,派遣に置き替わってきていることで就職,出口が厳しくなったのが一つ大きなところだと思います。
 そうした中で,今非正規とか派遣の働き方,雇用が見直されていますので,こうした中での短期大学の役割が特に地方,ローカルエリアとか地域の中で,長く働ける人材として,知識,技術,意欲を持った学生をどのように育てていくかが一つ大事な視点だと思います。
 ただ,一方,家から通いたいという自宅志向が非常に高まっておりまして,実は今まで一般職に応募してこなかった上位大学の4年制大学の女子学生が,今まで短期大学の牙城だった一般職に応募してくるという,就職での競合環境が出てきておりまして,こういった点にも注意が必要かなと思っております。
 最後の視点ですが,社会人ですね。社会人のマーケットですが,実は大学も取り込めていませんで,短期大学でもなかなか厳しい。じゃあどこが取り込んでいるのかというと専門学校でして,実は今専門学校は在学生の3割,8万人弱が社会人になっております。つまり,短期大学のオールの入学者数よりも専門学校に行く社会人の方が多い状況になっています。この学生にインタビューしますと,二つありまして,一つは仕事に直結する資格,特に国家資格を取りにいくというのが1点。もう一つは好きなことをしたいということ。これはデザインとか服飾とか音楽とかですが,この二つに大きく分かれまして,こういったところが専門学校の,ブランド力はないし学位もないけれども,営業力,募集力が強いところにマーケットが移っているのかなと思っております。実際,専門学校は,リーマンショックが起こった2009年を底に4年連続で進学率を高めている状況でございます。そういったところから,社会の大きな変化に若干短期大学の対応が後れてきてしまったのではないかという危惧をしております。そうした中で短期大学に行って2年間で出ていくことで社会にどのような価値があるのかというところをきちんと見ていく必要があるのかなと今考えているところです。以上でございます。
【佐藤座長】  ありがとうございました。一巡して実に様々な,各論的なものまで出していただいて大変幸いでございました。多くの方々が地域とか,社会人,あるいは学び直し,労働市場,そして他の学校種との差別化といいますか,特色出しについて言及されたわけですけれども,残り時間がわずかでございますが,それぞれの御発言に対しての御質問やらコメントや御意見など,残りの時間,自由に御発言いただければ幸いでございます。
【小林(浩)委員】  ではよろしいですか。
【佐藤座長】  どうぞ。
【小林(浩)委員】  先ほど高等教育のファーストステージという言葉が出てきて,これは非常にいい言葉だと思ったのですが,世の中に全然浸透していないような気がします。ファーストステージというのはどのタイミングで短期大学の中でどのように位置付けられていて,どのように社会に発信しているか教えていただければと思うのですが。
【清水委員】  社会には大きく取り上げられておりませんが,平成3年の設置基準の大綱化以降,大学や短期大学の改革実態がどうなっているかを当時,短期大学基準協会で,高鳥委員長の下で日本の実態調査と欧米の実態調査を踏まえて報告書も作成して,本としても出版しました。そのタイトルが高等教育ファーストステージ論ということで,現在桜美林大学の舘先生が名付け親だと言っておられますけれども,それを共有しようということで,いろいろな会議のときにそれを発表したりしてきました。組織としてキャンペーンを張ることはしなかったですけれども,我々の高等教育の研究者,あるいは関係者の中でそれを共有していたということです。これは言ってみれば,ファーストディグリーとしての位置付けが確立し,上につながる高等教育の最初の学位は短期大学で取りましょうということで,当時の欧米の短期高等教育政策を念頭に置いて,日本でもそこを重視しようという意図で付けた名前です。
【小林(浩)委員】  ありがとうございます。
【佐藤座長】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
【中山委員】  先ほど言い足りないことがあったのですけれども,いろいろなセクターから短期大学を見ていくというお話をしたのですが,その中で一番大切なものは,そこに来ている学生とその保護者がどういう動機で短期大学を選んだのかということだと思います。私どもの場合は公立短期大学なので授業料が非常に安いのですね。そして北は北海道から南は沖縄まで学生が来ています。年によってちょっと違うのですが,30道府県ぐらいから来ております。そして面白いことには,全体の学生の中で大分県人が55%ぐらいで,あとは県外という構成になっているのです。非常に特異です。それは芸術系の学科を短期大学で持っていることが非常に大きいわけですが,人文系はかなり様相を異にしておりまして,県内の学生が8割ぐらいになっております。県外の学生のことを取り上げますと,年度によって違うのですが,卒業した後3割から5割ぐらいが大分県内で就職しており,里に帰らないのですね。それは,一つは大分県内の短期大学卒の就職マーケットが確立しておりまして,銀行でもかなりの人数を採っていただけるという実績もございます。それが人文系だけではなく,芸術系の卒業生も採っていただいている。これは長年の伝統で,卒業生の諸先輩がいい仕事をしてくれたことの上に成り立っているものではないかと。県内で就職できるということで県内にとどまるということ。
 しかしそこに来ている学生たちの家庭環境を見てみますと,授業料減免の資料が5センチを超す厚みがありますけれども,全部私が目を通しますが,よくこれで大学に来たなという家庭が多い。しかし頑張っていますね。それは自分自身が何か得たいということが強いということです。もちろん奨学金をもらうことが前提になって授業料減免になるのですが,奨学金をもらっている金額だけでも,短期大学は2年ありますから2億円という規模です。それから授業料減免だけでも数千万円という額になって,大学の運営に影響を及ぼすぐらいのレベルです。それだけの犠牲を払いながら来ている学生ということを我々は考えざるを得ない。制度的にどうかとか,諸外国の似たような業態の大学との比較もいいのでしょうけれども,現実は来ている学生たち,若しくはそこに来たいと思っている学生たちを見つめることが一番大切ではないかというのが私の気持ちです。
【佐藤座長】  ありがとうございました。先ほど小林雅之委員からもっとエビデンスをという話で,一つの例として地域の就職の状況などを詳細にした方がいいというお話もありましたけれども,今の大分県の例もそうですが,日本私立短期大学協会が数年前に調査したところによりますと,全国平均7割が自県内就職。もっと高い地方もありまして,中部地方はたしか8割,北海道は9割,卒業生が地元に就職していくことからも,地域との密着度,地域の人材養成に非常に近い位置にあることも一つの数字だと思っております。おいおい,そういうものも事務方から出していただければよかろうかと思っている次第でございます。ほかにいかがでしょうか。もう少し時間がございますけれども。
【小林(雅)委員】  よろしいですか。
【佐藤座長】  どうぞ。
【小林(雅)委員】  誤解のないように申し上げておきますが,私が諸外国と比較した方がいいというのはヒントを得るためであって,そのとおりにしろと言っているわけではありません。もちろん日本は日本の独自性があるわけですから,そういう意味で申し上げているということを確認しておきたいと思います。
 その上でですけれども,例えばトランスファーの話にしても,日本では残念ながら進んでいないというのはいろいろなデータが出ているとおりなのですけれども,それはやはり授業料問題が非常に大きいわけです。アメリカでは公立の短期大学,いわゆるコミュニティーカレッジは非常に授業料が安いものですから,そこで2年間教育を受けて4年制大学に編入することが可能なのですけれども,日本の場合は私立が多くて,そういったことが非常にやりにくい。また入学金が非常に高いですから,入学金を2回払うことになりますと,そこで授業料のバリアができてしまうという問題があるわけです。
 先ほど先生が公立の授業料が安いと言われたと思いますけれども,そうしますと,先ほど就職はお聞きしたのですけれども,編入学についてはどうなのでしょうか。公立の方がやりやすいということはないのでしょうか。
【中山委員】  編入学はかなり多うございます。九州,四国,中国地方の国公立の大学の3年次に編入学する人は数十人おります。それから芸術系の学科は認定専攻科を持っておりまして,全員が進学できませんけれども,四,五十名は進学して,その後一般の美術大学,音楽大学の大学院を狙う人間もおります。そういう形でより上位の教育を受けようという人にとってはその道が開かれていると思っております。
【小林(雅)委員】  もう一つよろしいですか。
【佐藤座長】  どうぞ,お願いします。
【小林(雅)委員】  ありがとうございました。そういったことをもう少しPRといいますか,知らせていくことが非常に重要だろうと思います。幾つか情報公開が進んでいないという話も出ていたと思うのですけれども,しているつもりであってもなかなか届いていないのかもしれません。そのあたり,もう少し考える必要があるかなと思います。
 それから,今日のお話の中でかなりエビデンスを持っている方もいらっしゃいますので,小杉委員とか,安部委員の九州コンソーシアムのこととか,それに関連しまして短期大学基準協会の調査委員会でやっている学生の調査があるのですね。これも今数がかなり増えていますので,その結果ですとか,私たちのやっているコンソーシアム保護者調査があるのですが,これを見ますと短期大学は所得階層的には非常に開かれているのです。私立大学は非常に所得階層差が大きいのですけれども,短期大学はそうなっていないという違いがあります。そういったものをもっと出していくことも必要だろうと思っていますので,次回以降,是非よろしくお願いいたします。
【清水委員】  関連して,先ほどからお話が出ております,短大生は非常に学習に熱心であると。学生の費やす学習時間は相当なものだと思います。ただし,中教審でも議論されていた学習時間の確保という,あそこでは日本の学生の学習時間が少ないというキャンペーンが張られています。短期大学の学生は,ましてや専門職の課程においてはほとんど遊ぶ暇はないわけです。短期大学生の学習時間が長いとか,学習に熱心だというデータも発信するのが一つ。
 もう一つ,キーワードは地域ですね。地域貢献度を表すデータというか,エビデンスがあれば今後認証評価等でも,全体の項目を網羅的に評価しなくても,地域貢献度に重きを置いて評価すれば,まさに短期大学の特性を表した認証評価になると思うのです。そういう地域貢献度については,短期大学は日本一だと思います。それは小林先生や安部先生はお持ちではないですか。
【安部委員】  勉強時間のことについてデータを申し上げたいと思います,平成21年度に短大に入学した学生の約1割に対して行った在学生調査の結果なのですが,短期大学の学生は,金子先生が実施された大学生調査と比較していますけれども,大学生に比べますと,授業出席の時間が非常に長いのですね。大学生が週に平均16.02時間に対して,短期大学生は20時間を超えた授業に出席している。勉強時間については,いわゆる自学自習の時間は残念ながら,少ないと言われている大学生よりも更に少ない。この理由は,授業がきつきつに詰まっておりまして,それだけで疲弊する。そして,先ほどから経済的に大変な状況の学生がかなりの率を占めているというお話もございますけれども,学校が終わりますとアルバイト等で,学費,あるいは生活費等の補塡をする学生もかなりおりますので,家庭学習の時間は,大学生よりも少なくなるのかもしれません。個人差も大きいのですが,平均すると週に4時間ぐらいしか自学自習の時間がないことが,私どもの行った調査結果からは出ております。
【清水委員】  それは当然だと思います。毎日8時間授業に出れば,その倍の時間,16時間は勉強ができないわけですから。つまり,教室内とか実験室に拘束されればされるほど,それ以外の時間は取れないですね。これはむしろ別の問題で,日本の単位制度の問題とか,カリキュラムの編成の問題とか,あるいは厚生労働省の指定規則とかの問題になると思います。今の短期大学生は授業以外の学習時間,自主学習が少ないと判断するのは早計だと思います。
【安部委員】  私も,そう言ったら短期大学生がかわいそうだと思います。
【中山委員】  それと,学費稼ぎでアルバイトをしているというのはすさまじいものがありますね。なかなか自主学習の時間が取れないのではないでしょうか。
【安部委員】  はい,アルバイト時間も,大学生と比較しておりますけれども,私どもは1年生のみを抽出した調査で,大学生は1年から4年まででしたけれども,それと比較しましても短期大学生のアルバイト時間の平均は大学生より長かったです。
【佐藤座長】  学生のアルバイトで言えば,最近の学生は一般的には苦学生が少なくなっている。アルバイトは遊興費のためだというのが世間一般に流布しているものだと思うのですけれども,実態はそうでもないということですね。
【小林(雅)委員】  何回も発言してすみませんが,それは財務省が財政等審議会でも古いデータを出して,一生懸命奨学金が遊興費,娯楽に使われていると言っていますけれども,私たちの調査ではそれ以外の結果も十分出ています。ですから,そういったことはきちんとエビデンスを出して反撃していかないといけないと思っていますので,ちょっと余計な話ですけれども,付け加えさせていただきます。
【佐藤座長】  ありがとうございます。小杉委員,何か。
【小杉委員】  いや,安部委員の調査を是非聞きたいなと思ってわくわくしています。
【安部委員】  ありがとうございます。
【佐藤座長】  ありがとうございました。佳境に入っていたのですけれども,もうそろそろ時間でございます。今日は当初お願いしたように,自由なお立場でこれからの論点を整理するためにも発言をお願いしましたところ,大変多岐にわたる御意見が出てきて,なおかつこれから先の審議の中でこういうことを取り上げたらいい,こういうデータを集めた方がいいという大変示唆に富んだお話も頂いて有り難かったと思っております。今日の議論を踏まえまして事務局と私で整理させていただきます。次回以降は,若干申し上げましたけれども,この委員の中での事例発表などをお願いすることになるかもしれません。それからまた委員以外でも,短期大学教育に造詣の深い方をお呼びして御意見をお伺いするという多様な進行に心掛けてまいりたいと思っておりますので,どうぞ御理解のほど,お願い申し上げます。それでは事務局から次回の予定についてお願いします。
【田頭大学振興課長補佐】  本日は活発な御意見を頂きまことにありがとうございました。本ワーキンググループにつきましては月1回程度の開催を予定しておりまして,次回は1月30日木曜日を予定しております。会場と詳細につきましては追って御連絡させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いしたいと思います。
【佐藤座長】  それでは委員の皆様方におかれましては,今日は全員から御発言を頂くために限られた時間で大変失礼いたしました。言い足りないこと,補足しなければならないこと,データを付け加えたいこと,何でも結構でございますので,簡単なペーパーにして,いつでもどうぞ御自由に事務局にお寄せいただければ大変有り難いと思っております。
 それでは第1回のワーキンググループの会合をこれで閉じさせていただきます。どうもありがとうございました。

 

―― 了 ――

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