大学のグローバル化に関するワーキング・グループ(第5回) 議事録

1.日時

平成25年12月17日(火曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省3F講堂

3.議題

  1. 大学のグローバル化の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

(委員)長尾ひろみ委員
(専門委員)市村泰男,井上洋,内田勝一,江川雅子,大野高裕,島田精一,白石隆,二宮皓(主査),堀井秀之

文部科学省

板東文部科学審議官,布村高等教育局長,小松私学部長,
常磐高等教育局審議官,中岡高等教育局審議官,浅田高等教育企画課長,里見大学振興課長,渡辺学生・留学生課長,
有賀国際企画室長,今泉大学設置室長,白井大学振興課課長補佐,大川学生・留学生課課長補佐,佐藤国際企画室専門官,他	

5.議事録

(1)大学分科会大学のグローバル化に関するワーキング・グループの議事進行について,二宮主査から以下のとおり説明があった。

【二宮主査】  おはようございます。所定の時刻になりましたので,第5回大学のグローバル化に関するワーキング・グループを開催いたします。委員の皆様におかれましては,御多忙の中,御出席いただき,ありがとうございます。
 まず,本日の議事進行について説明いたします。本日は,本ワーキング・グループにおける大学の海外サテライトキャンパス等を活用した海外展開の制度的な在り方及び今後の留学生交流の戦略的な推進方策の検討に際しての審議の参考とさせていただくために,本日は名古屋大学から濵口道成総長にお越しいただき,また,同志社大学から西岡徹国際連携推進機構事務部長にお越しいただいております。お忙しいところをお越しいただきまして誠にありがとうございます。濵口総長におかれましては,所用のため御発表と質疑応答の後,退席されるということで伺っておりますので,スケジュールの進行等,御協力いただければと思います。
 それでは早速ですが,濵口総長より御発表を頂き,あと,説明に対しての質疑応答をお願いしたいと思います。

(2)大学の海外における展開や双方向の留学生交流について,名古屋大学の濵口総長から以下のとおり説明があり,意見交換が行われた。

【濵口名古屋大学総長】(以降,「濵口総長」) 今日はこのような機会を頂きましてありがとうございます。この機会に私どもが,何を考えているか少しお話しさせていただきたいと存じます。最初に3点ほど論点整理をさせていただきたいと思います。なぜグローバル化が今必要なのか。当然のようにグローバル化,グローバル化と言われていますが,何のために私どもはやるのかということをきっちり説明していかなければいけないと思いますので。それは,単に日本人の英語能力を上げるとか,留学生の数を増やすとか,日本企業の海外展開のサポートをやるとか,それだけのものではなくて,グローバル化について私どもが考えていますのは,持続的な発展(Sustainable development),持続可能な発展のための教育の10年を総括する国連の世界会議(ESD世界会議)が来年名古屋でありますけれども,ESDの考えをアジアでどのように広げるかが一つ大きな視点としてあることです。
 このサステイナブルディベロップメントというのは,単に環境保全という問題だけではありません。地球憲章(アースチャーター)が2000年に制定されましたが,この中で4点重要な問題が述べられています。1番目は生命共同体への敬意と配慮,2番目は生態系の保全,これは環境保全のことで,サステイナブルという点では一番基本的な問題です。それから,3番目は公正な社会と経済,これが大事で,それから4番目として,民主主義,非暴力,平和,後者の二つの論点をどのようにして我々人類全体で実現していくかということが今問われているのだと思います。特に3番目の公正な社会と経済という意味では,アジアの中に法の支配,あるいは司法の独立,それから人権,生存権,こういう概念をいかにして導入していくか,広げていくかということが我々日本に問われている大きなミッションだと思っております。そのために我々はアジア展開が重要であるということであります。
 それから2番目のキーワード,これは日本の今の弱点を表すキーワードだと思います。多様性(ダイバーシティ)です。先週もインドネシアへ出張したのですが,インドネシアの国是として,「ビンネカ・トゥンガル・イカ」というのがあります。日本語訳は「多様性の中の統一」という言葉です。インドネシアは言語だけで500以上あると言われています。島しょが1万5,000あると言われている。そういう国を一つの共同体として統一していく,すごい作業をやっておられるわけです。
 一方,日本は,簡単に言うと高度文明無菌社会のようになっております。安全・安心ではありますが,極めて同質的である。この同質的な社会の中からはイノベーションは生まれにくいと思います。生物の進化の原則は,多様性にありますが,文化も同じだと思います,幾らイノベーション,イノベーションといっても,我々はそのイノベーションを生み出す活力をひょっとしたら文化的に失いつつある。そう仮定すると,アジアに出ていく,例えばベトナムでも150以上の少数民族がいる。そういう地域に若い人材を送るということは,人類一つをとっても,この地球がいかに多様性に富んでいるか,その中で価値観はいかに多様であるか,文化というのはどう多様になるか,真実というのがいかにお互いに違う基準で考えているか,こういうことを理解させながら国の発展を考えさせる,これは非常に重要であると考えております。
 それから3番目として,私たちは,大学の世界展開力強化事業としてキャンパスアジアやASEAN諸国との交流で求めている課題があります。それは一言で言うとユス・コムーネ,アジア共通法の実現であります。EUを見ていますと,過去に戦争を行っていた国々が一つの共同体として成立している。その背景にはローマ法にあると思います。やはり共通法の認識があるからこそEUが成立したのではないでしょうか。残念ながらアジアにはその体験がない。今日,いろいろな価値観がありますが,共通の価値基準によりお互いが交渉ができるような土台を作らないとアジアの平和的な発展は望めないのではないかと思います。世界人口の約7割がここアジアへ集中して,経済活動の主体もますます移りつつある中で,ユス・コムーネのような概念ができないと争いが絶えないのではないか。そういう意味でも,法的な支援,法整備の支援というのは非常に重要な骨格を成す作業であると考えています。
 それでは,前置きはこのくらいにして,本日の話に入りたいと思います。今まで申し上げたことを踏まえて我々は「アジアのハブ,NAGOYAをつくる」と,こう考えております。論点としては7点ございますが,具体的にお示ししたいと思います。2009年に私が総長になったとき,濵口プランという重点方針をまとめました。これは今年改訂しましたが,基本的な考え方は同じで,まずは世界に通ずる人材の育成,世界で活躍できる人材をどう育成するかということが一番大事な課題だと思っています。それから,世界トップレベルの研究推進,これを挙げております。この他にも,スライドのとおり5点ほど重点事項をまとめましたが,説明は割愛いたします。この方針の下に以前から私どもが展開してきているアジアを対象にした様々な取り組みをまとめてアジア展開戦略会議を立ち上げ,今後議論しようとしております。まだ仮称で,学内で検討しておりますが,包括的に我々は展開していこうと考えております。
大きな課題としては,スライドにもございますように,法の支配の確立,ジェンダー,それから持続可能な開発のための教育,貧困削減,エネルギー問題,環境問題,食糧問題,災害対策,こういうものをしっかりと捉えた教育研究体制をアジアの大学との連携の中で考えていこうということで,スライドの上の方で見ていただくと,関与している組織は全学横断的に入っております。医学や農学,それから環境学とか国際開発,そういうところ,教育も入っておりますし,博物館も実は入っております。このようにいろいろな学内の組織をまとめながら統一的に展開を考える。研究推進,人材育成,産学官連携,そして大学のガバナンスの確立もこのアジア展開の中で進めていこうと,このように考えております。
 さて,実際に本学の国際化の状況はどうなっているかということでありますが,少し概略を説明します。まず一番大きく展開の柱にしておりますのはG30プログラム,名古屋大学の特徴は,医師や弁護士など資格試験が必要なプログラム以外は,ほぼカバーしております。学部コースで6コース,11プログラムありますが,法学,理学,農学,工学,経済学に加えて,2014年の10月から文学にも学生を受け入れます。工学では自動車工学のプログラムを展開しておりまして,名古屋としての特徴を出すことを心がけております。
大学院では7コース,17プログラムあります。ここでは医学や,多元数理のような,ある種の特殊な分野も展開しております。博士課程リーディングプログラムでは,現在6プログラム展開しております。この中で特にアジア中心で展開しているものが3プログラムございます。それから,NUGELPと呼んでいます国際環境人材育成プログラム,それからNUPACE,これは我々独自の交換留学受入れプログラムであります。この他,大学の世界展開力強化事業と名古屋大学の夏期集中講座等,英語で学ぶことのできる様々なプログラムを提供しています。
さらに,短期の海外語学研修として,5年前に中国語を始めました。その後,英語,ドイツ語,今年度からは,ストラスブール大学でフランス語の研修を開始いたします。この結果,外国人留学生の受入れは,少々伸び悩んでおりますが,通年でおよそ2,000名を超える状態になりました。
一方,日本人学生の海外派遣が飛躍的に増えておりまして,私が総長に就任した当時は150名を割り込んでおりましたが,現在は605名になっております。先ほど申し上げたG30プログラムですが,これは英語のみで学位が取れるコースの新設・充実,つまり,全てのカリキュラムを英語で行うということ,秋入学があるということ,また,学生募集も独自に開発したシステムで行っております。戦略的な英語入試,GPAが大体3.0以上,TOEFLを課すとともに,英語でエッセーを2課題出していただきます。その後,テレビ会議システム等の活用,あるいは本学の海外拠点で直接面接を英語でやります。1時間から2時間みっちりと。このような過程を経て,入学を決定するというやり方をしております。このプログラムを核にして2020年には留学生の受入れを3,000名まで増やしたいと思っております。
 さらに,このG30の取り組みを踏まえて,G30 for Everyoneという取り組みを始めました。日本人の学生の語学学習インセンティブや語学力向上を目的として,G30の授業を公開しておりまして,昨年の実績では250名程度受講しております。それをさらにサポートするものとして,大学院講義の英語化に向けた英語力アップ講義とか,それからウイークエンドにTOEFL講座も始めております。それから,春期集中留学準備講座というのも始めておりまして,こうした取り組みがエンジンとなって,学生がどんどん海外へ行くという状況が生じているものと考えております。
 それから3番目,先ほども申し上げましたが,博士課程リーディングプログラムのオールラウンド型,我々は「Ph.Dプロフェッショナル登竜門」というプログラムを展開しておりますが,学生の英語力向上のためにブリティッシュカウンシルと連携してワークショップを開催する他,大学職員の研修も行っております。
 さらに,この海外展開を強化するために年1か所程度のペースで,海外拠点を設置しています。これまでにも中国の上海,アメリカとドイツ,ウズベキスタンに設置しておりました。
後で申し上げますが,日本法教育研究センターという拠点を現在6か所まで増やしております。これを8か所にする構想があります。この他ベトナムでは,少し特殊でありますが,内視鏡トレーニングセンターという拠点をフエ展開しております。日本型医療技術のトレーニングを現地で始めておりまして,今後,ベトナム全土に広げていこうとして,現在ハノイの機関と交渉を始めているところであります。この海外拠点のコアになっているのが法政国際教育協力研究センター,我々はCALEと読んでおりますが,2005年に開始してウズベキスタン,モンゴル,ベトナムのハノイ,それから2008年カンボジア,2012年にベトナムのホーチミンにも開設しました。今年2013年,ミャンマーにも開設しました。5月に安倍首相がミャンマーを訪問した際に経済ミッションとともに同行させていただきましたがこの際に現地で交渉し,その翌月開設することができました。
今後,来年1月,2月でそれぞれインドネシア,ラオスにも開設する予定であります。
 現地でどのようなことをしているかですが,我々が独自に作った教科書で日本の社会あるいは日本の法律を日本語で勉強をしていただきます。20名程度各クラスに学生がおりますが,その中から特に優秀な1,2名を名古屋大学の国費留学生として受け入れるということをやっています。これはミャンマーを例にとりますと,ヤンゴン大学と学術協定を結びまして,2013年の6月に拠点を開設。現在,日本人法律家1名,ミャンマー人法律家1名,トータル2名で動かし始めております。ほかのセンターと比べますとまだ始めたばかりですが,今後,日本語を教える教員の派遣等も考えております。現在,ミャンマー政府から教育制度改革の相談を受けておりまして,教育行政能力向上に向けたサポート,ほかにも,農学分野では分子生物学研究所を作りたいという希望もありまして,先週あたりから,現地でそのための協議をはじめております。ちかく農学研究者も派遣し,これから本格的に展開していこうということになっております。
 このスライドは,法整備支援でどのような人材が育っているかを示しております。
例えば,カンボジアを見ていただきますと,左上の図にありますように,内閣府の次官や国立経営大学学長が育っており,右のベトナムでは,司法省の副大臣も育っています。彼は同窓会のベトナム支部長でもあり,非常によくやっております。あるいは司法省の国際協力局長等,アジア各国政府の中枢で活躍しています。ベトナムとはこのような良好な関係を踏まえて,司法省と協力協定を締結し,名古屋大学がベトナム司法省の人材育成に直接協力しています。
 次にヤング・リーダーズ・プログラム(YLP),医療行政分野ですが,これも10年間展開しており,カザフスタンの副大臣やモンゴルの保健省次官,こういう人たちが育っています。
この他,大学院国際開発研究科を設置して20年以上たちましたが,カンボジアの王立プノンペン大学の学長とかインドネシアの次官,こういう人たちが育っていっている。一応の成功を収めておりますが,まだ課題があります。我々がこういう人たちと話していますと,概ね修士の学位を取得することによって副大臣,秘書官,局長クラスの人材が育ってきたのですが,彼らには博士号を取る機会がありませんでした。現職のまま留学し,学位取得後に帰国してしまったのですが,有能な人材ほど短期間で国へ帰って,有能であるが故に,再度,長期に国から離れることができない。実際はもう少し分析能力なり研究能力を上げて,政策立案能力を向上させたいという希望が非常に強いということに気がつきました。
これを踏まえ,私どもとしてはアジア諸国の国家中枢人材養成プログラムを開始することになりました。簡単に申し上げますと,国際社会人入学のようなプログラムです。ハイブリッド型海外サテライトキャンパスを展開したいと考えております。現地に大きなキャンパスを置いて,スタッフを何十人と常駐させる形態は,我々のような研究重点型大学では,必ずしも合理的ではないと考えております。これだけICTが進んでおりますので,現実には多少の時間差はあっても,普通に会話ができるレベルの技術水準に達していると思います。ですから,ICTを使って日々の指導を行いつつ。名古屋大学にも集中講義に来ていただく,それから,現地に指導教員を派遣するとともに,現地にサポート人材を常駐させて,研究のバックアップをするという形で,しっかりした英語の論文を書ける,国際誌に発表できるようなトレーニングを課して,要件を満たした場合,博士の学位を出そうというプログラムでございます。使用言語は英語で,各分野1,2名の学生を想定しています。
先ほど来説明している海外拠点と有機的にリンケージさせるということ,あるいは先ほど申し上げました短期スクーリング等をやろうということ。
スライドにあるように,今,この7か国で順次スタートしていこうと,来年から始める予定です。例えばこれは典型的な法学分野のプログラムでありますが,現地のスクーリングと名古屋大学でのショートステイを行い,順次年度を追って研究テーマの分析を開始して,最終的には論文発表へこぎつけるということをやります。
 このプログラムがどういう意味があるかということは,一つは,従来修士までしか習得できていない,そういう発展途上国の核になる人材の育成が,母国で働きながら博士の学位を取得する機会が提供できる。そういう人たちが自分の専門分野で指導能力,分析能力が向上する。さらに,例えばHIVにしてもマラリアの問題にしても,アジアの途上国で一体どれぐらい感染が広がっているのか,現時点でどういう問題があるのかということは英語の論文が出てこないために実は国際的に信頼できる情報として把握できていない,ある種のブラックボックス化している部分があると思います。
医療行政の問題一つを捉えてもそれを,その行政を担ってる核になる人材が,確かな分析の下に,英語で論文を書く。政府の承認の下に情報を発信できることにもつながりますので,国際社会としてもこの活動は歓迎されるだろうと我々としては考えています。海外誌にしっかり発表をさせるということを条件として学位授与を考えているわけであります。このような活動を通じて各国の中枢を担う優秀な人材を育成し,本学あるいは日本のプレゼンスを向上させるという考えであります。
その他に現在作業を進めているプログラムでありますが,一つはジョイント・ディグリーや,ダブル・ディグリーといった海外大学との協同教育プログラム,これは欧米としっかりやりたいと思っています。現在,オーストラリアのアデレード大学,ドイツのフライブルク大学,フランスのストラスブール大学とジョイント・エデュケーショナル・プログラムを協議中で,最終段階に入っています。それから米国とは,ミシガン大学,UCLAとの共同大学院を世界展開力強化事業で議論しております。先ほども少し申し上げましたが,途上国における産学連携や高度専門職業人を育成するということを具体化するためのプログラムとして,ベトナムのフエ医科薬科大学を拠点として内視鏡トレーニングプログラムを開始しております。
この他,タイのチェラロンコン大学,ベトナムのハノイ工科大学,それからインドネシアのバンドン工科大学とも今議論しておりますが,グリーンモビリティー若手研究者育成プログラムを開始しております。これはアジアの新しい時代のモビリティー,次世代の車を研究していく拠点を作ろうということでございます。アジア各国へ行きますと,PM2.5等大気汚染が深刻化しております。経済の発展に,インフラ整備,あるいは機械のメンテナンスが追いついていないことが原因と考えます。それをどういうふうにして克服するかということをタイ,ベトナム,インドネシア等と連携して考えてみたい。このように考えております。
 以上でございます。どうも御清聴ありがとうございました。
【二宮主査】  ありがとうございました。総長の時間的なこともありまして,通常の議事進行とはちょっと形を変えて御発表いただきました。その趣旨は海外キャンパスあるいは海外サテライトの在り方を本委員会では検討しなくてはなりませんので,そういう観点から今参考になるということで御発表いただきました。時間が本当にもうわずかしかありませんので,では早速質問,質疑等を行っていただきたいと思います。どうぞ。
 それじゃ,私の方から一つ。最初の基本が分からないので質問したいんですけれども,これはそもそも海外に様々法整備の観点からですけれども,キャンパスあるいは教育機関を名古屋大学のものとして設けられて,学生身分で現地の人をそこで学べるようにしようと。どちらかといえば大学院プログラムで。
【濵口総長】  実はもう実質的には学部プログラムも10年近く走っておるんですけれども,それを私たちが海外キャンパスと名乗っていないだけで,日本語の教育は,日本語の教育と日本語能力は大体各国7か国,20人各学年ずっと育ってきています。そういう中から現地の日系企業へ就職する人たちもたくさん出てきております。それの中からさらに優秀なのを名古屋へ連れてきて,5年間の博士課程で全コースをちゃんと済ませるということで。
【二宮主査】  総長の構想では,現地でも学位が出せるようにしようとか,あるいは名古屋に招請した優秀な学生だけが学位を取るという,学位との関係はどうなんですか。
【濵口総長】  あれは今までの実績のお話でありまして,今考えておりますのは,JICA等の支援でマスターまで2年間かけて。各国へ帰られて,非常に優秀な人材として国でしっかり働いてもらう。だけれども,博士号が欲しいという話が出ているんです。もっと勉強をしたい,だけど私は現場を離れることができない,みんなそう言うんです,あちこち。そういう人たちに博士号の授与をしたい。きちっとした論文を書けるようなぐらいにしようというのが今回の考えでございます。
【内田委員】  私もアジアの法整備支援,関わっているんですが,大変面白いんですけれども,一番問題になるのは教える人材をどうするかということで,この法整備支援などで大学院でやっていく人と,それから法務研究科,つまりロースクールがあるわけです。そのロースクールとこの大学院の教員の問題をどうするかというのが多分一番問題になると思うんですが,そこはどういうふうに考えておられるでしょうか。
【濵口総長】  実務家は,現在までの法整備支援でも,弁護士の方々とか,あるいは法務省の方々にボランティアでお願いして現地で協力をやっていただいているんです。1年ほど滞在していただいてということをやっております。今度もやはりその視点をきちっと入れながら,行政官ですので,実務家としての能力も上げながら研究能力も上げるということに関してはやっております。
【大野委員】  アジアの大学との連携ということはどういうふうにお考えなんでしょうか。先ほどのPGなんかも,構想もそうですけれども,あるいは名古屋大学さんがそれぞれ出ていかれているわけですが,現地の大学とのコラボレーションというんでしょうか,というあたりはどうお考えでしょうか。
【濵口総長】  現地の大学とのコラボレーションはかなり今、議論をしておるところですけれども,基本的には我々は余りずるずるの仲になりたくないというのはございます。それぞれの大学のキャンパスの中に名古屋大学キャンパスを置くような形にはしたくない。モンゴルにしてもウズベキスタンにしても大学の事務所は別個に独立して置いております。独自の判断がきちっとできるように。教育体制に関しては連携をしたい。だから,逆に客員教授化して,現地の先生の優秀な方をよく選んで補講をしていただくと,そういうことをフェース・トゥ・フェースで議論しながらやっていこうと。丸投げはしたくないと私どもは思っています。
【長尾委員】  今全体的にはアジアの学生たちを日本に連れてきて,そして何とか日本がリードする,アジア法的なものを作っていき,アジアのリーダーを養成するリーダーハブ校にするというふうに私はお聞きしたんですが,逆にこちらからはどれだけの学生を送っていっているのですか。
【濵口総長】  バイラテラルにやっておりまして,キャンパスアジアだとかキャンパスASEANで半年程度現地の法整備支援に滞在させて,日本語を教えながら,例えばベトナム法と日本の法の違いとか,こういうことを勉強させるということであります。今本当に大事なのは,二国間で法律の共通性はどこにあるのか,違いはどこにあるのかということをよく理解した人材をどれだけ日本人も養成できるか,それから各国の中枢の人材で日本に対してロイヤルティーを持っている方でそういう日本法と中国法,ベトナム法の違いがわかる人をどれだけ養成できるかということがかなりこのプログラムとしては大きな課題だと思っています。
【二宮主査】  あと2分ぐらいですけれども,いかがでしょう。これが最後の質問になるかもわかりませんが,財政的な面ではどんな,海外サテライト,キャンパスを設置して維持していくということは大学にとってのすごい負担になるものだと思いますが,その辺りはどんな感じなんですか。
【濵口総長】  独自財源をかなり使うということから,それからリーディング大学院等も使ってプログラムで学生を派遣するということをいろんなモザイク的にはやっておりますが,一言申し上げたいのは,意外とコストは掛かりません。建物一つ建てるのに,日本では億かかりますけれども,現地では300万だと。現地の方を雇用すれば,現地の給与プラスアルファでできるんです。多分,その雇用する場合に信頼できる人材を雇用できるかどうかがキーポイントだと思います。
【二宮主査】  ありがとうございました。多くの大学を勇気づける発言をしていただきまして大変感謝を申し上げます。大変お忙しいところ今日はお越しいただきまして大変ありがとうございました。それでは,これで発表を終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
 では,議事の進行を元に返しまして,前半は国際,海外キャンパス等について経験をお聞きする予定でございますが,総長の時間で先に聞かせていただきました。後半では元のテーマでありますジョイント・ディグリーについて御議論を仕上げていただこうという方向で準備しているところでございます。
 では元に返りまして,事務局,有賀さんの方から,配付資料等について,確認から始めさせていただきたいと思います。

(3)事務局より,資料の説明があった。

【有賀国際企画室長】  お手元の議事次第を御覧ください。4ポツにございます配付資料でございます。資料1といたしまして今御説明いただいた名古屋大学の発表資料,資料2といたしまして次の御説明の同志社大学の発表資料,それから資料3といたしまして,大学設置・学校法人審議会大学設置分科会国際化対応小委員会の設置について,タイトルとしては「運営委員会の下に置く小委員会」についてでございますが,こちらを用意してございます。資料4といたしまして「ジョイント・ディグリーの我が国への導入(案)」,資料5といたしまして「大学のグローバル化に関する諸制度について」を用意してございます。それから,机上に,ファイルに挟みました資料集,設置要覧と,中教審の24年の質的転換の答申を置いてございます。
 この場を借りて御報告ですけれども,前回御紹介いたしました「Go Global Japan」,「グローバル人材育成推進事業」のエキスポにつきまして,報道で御覧になっている方もいらっしゃるかと思うんですが,一昨日,日曜日に早稲田大学におきまして多くの参加を得て開催されたということを御報告いたします。以上です。
【二宮主査】  ありがとうございました。では続きまして,同志社大学から西岡さんにお越しいただいておりますので,この発表は外国人留学生の受入れに関する取組が基本になりますけれども,特に現地の海外拠点を活用してどのように積極的にといいますか,どのように留学生を受け入れるかということ,例えば現地入学とか渡日前奨学金制度とかその他の取組について御発表を頂くことになっております。それでは西岡さん,どうぞよろしくお願いいたします。

(4)大学の海外における展開や双方向の留学生交流について,同志社大学の西岡国際連携推進機構部長から以下のとおり説明があり,意見交換が行われた。

【西岡同志社大学国際連携推進機構部長】(以降,「西岡部長」)  おはようございます。同志社大学の西岡でございます。本日はこのような機会を与えていただきまして心より感謝申し上げます。そしてまた,本来であれば学長又は国際担当の副学長が参りまして御説明をさせていただくべきかとは存じておりますけれども,授業等の関係で私がかわって発表をさせていただきたいと思います。
 最初に,先生方御案内のとおり,某テレビ番組で私どもの校祖の奥様のことをずっと取り上げていただきまして,私どもの校祖がアメリカから帰ってきて同志社大学を作ったという物語につきましてはよく知っていただいているかと思います。御存じのように,アメリカから帰ってまいりまして,アメリカ人と一緒に本学の基礎となります同志社英学校を立ち上げたわけでございまして,私どもの教育理念の一つとして国際主義というものを掲げてまいりました。しかし,2006年度のいわゆる大学基準協会の認証評価で,「同志社大学は国際主義ということを教育理念にしている割には余り活発な活動をされていませんね」という御指摘を頂戴いたしまして,それを我々真摯に受け取りまして,それ以降,同志社として何ができるのか,特に,首都ではなく京都で何ができるのか,国公立ではなくて私学として何ができるのかというようなことを考えて取り組んでまいりました。そして,幸いにも2009年度のいわゆるG30に採択を頂きまして,それ以降いろいろ取り組んでまいりましたので,本日この場をお借りいたしまして発表をさせていただきたいと思います。
 本日は大きく分けて五つの題目について発表をさせていただきたいと思います。最初が留学生数の推移でございます。特にG30の申請要件でございました学部におきまして英語の授業のみで学位が取得できるコースの留学生の状況,2番目として海外から,特に学士課程におきましては高校を卒業して,そのまま日本に留学生として受け入れる,そのための入試制度の改革,そして入学後,そういう学生さんに対して学習支援,生活支援等をどういうふうにしていくのか,そして4番,先ほど委員長の方から御紹介がございましたとおり,海外事務所をどういうふうに活用していくのかということについて御紹介をさせていただきました後,最後に今後の課題についてということを五つ挙げさせていただいております。
 さて,早速ではございますけれども,これが2009年度以降の本学の留学生数の推移でございます。2009年度につきましては約1,000名の留学生しかおりませんでした。ディグリー・シーキングの学生さんにつきましては400名ということでございまして,恐らくG30に採択された13大学中一番少なかったのではないかなというふうに考えております。その後,2011年度の東日本大震災の影響で若干落ち込みはしておりますけれども,2013年度につきましては約2,500名弱の学生さんを受け入れる予定になっております。ドクターコースにつきましては95名,マスターが352名,学士課程が557名で,約1,000名のディグリー・シーキングの学生さんを受け入れる予定になっております。例えば学士課程でございますと,収容定員が約2万4,000名でございます。2万4,000名のうちのある意味557名しかいない,留学生の割合が2.5%,マスターで18%,ドクターで17%という割合でございます。この留学生数の割合については,多々御議論を頂くところだと思っております。
 そしてまた,上の薄いブルーの部分でございます。1,435名,この方々が学位を取得目的としない学生さんということで,右側にいわゆる留学生別科,海外との学生交換協定校からの交換留学生の方々,そしてグリーンの部分,スタディー・アブロード・センターでございますけれども,私ども,京都という非常にいい環境におりますので,スタンフォード大学の日本の研究センター,そしてまたアメリカの有名なリベラルアーツカレッジ,アマーストカレッジだとかスミスカレッジなんかがアソシエーションを作っておりますアソシエーティド京都プログラムのスタディー・アブロード・センター,そしてまた,ハーバード,イエール,コロンビア,プリンストンなんかが加盟しております京都コンソーシアム・フォー・ジャパニーズスタディーズ,そういう海外の教育機関のスタディー・アブロード・センターをホストさせていただいております。ちなみにここで提供されている科目につきましては,数が限られてはおりますけれども,本学の学生さんも一緒に授業を受けて,擬似留学体験とは申しませんが,同志社にいながら海外の,特にアメリカを中心とした大学の学生さんと一緒に学ぶことができる環境を整えております。
 そしてまた紫色部分,ここもかなりの数を占めておるわけでございますけれども,2週間から1月強の海外プログラムを多数展開しております。海外の大学で同志社大学でプログラムを展開したいというような方々を積極的に受け入れ,本学の学生さんがバディーとなったり一緒に授業を受けたりランゲージパートナーになったりということでございます。
 そして,その他でございますけれども,ここは日研生や,私どもの日本語教育機関でございます日本語日本文化教育センターが,フィーベースではございますけれども,日本の文化,日本語についてのサマーセッション,スプリングセッションなんかをやっております。合計で約2,500名弱という状況が現在でございます。
 続きまして2番目,学部英語コースの入学者数の推移について御紹介をさせていただきます。先ほど申しましたとおり,G30の申請要件として学士課程におきましても英語の授業のみで学位が取得できるプログラム等を設置しなさいという要件がございました。多くの大学様では,新たな学部をお作りになったり学科をお作りになったり,そしてまたコースをお作りになったりという取組が多いと私は認識をしておるんですけれども,私ども同志社大学では,失礼な言い方かもしれないんですが,一つの学部でそういうコースを作りますと,その学部の学生さんはいろいろ交流できるかもしれない,そしてまた,その学部の先生方は多大な努力をしていただきますが,ほかの学部の先生はどうなんですかというようなことも心配をいたしまして,人文社会科学系の6学部を巻き込みましたいわゆるインスティテュート方式のプログラムを構築いたしました。それが国際教育インスティテュートと呼ばれるものでございまして,2011年度の開設年度におきましては33名,12年度が42名,今年度の春と秋と合わせて32名ということで,入学定員は50名を設定しておるわけでございますが,なかなか海外から直接学生さんを確保するというのに苦慮しているということでございます。
 そしてまた,下のグラフでございますけれども,2011年度の最初でございます。手前みそでございますが,日本におきましては130年以上の歴史の中で多くの受験生を確保できておるわけでございますけれども,海外からはなかなか直接入学者を確保することは非常に難しいと考えておりましたので,ソウル事務所を中心といたしまして韓国に多くの協定校,高校の先生から推薦があれば面接で入学を頂けるという制度を設けましたので,2011年度の最初におきましては韓国の学生さんが70%ぐらい占めていたという現状でございます。しかし,その後,積極的に,G30の留学フェアであったりJASSOの留学フェアであったり,私ども独自のリクルーティングを行いました結果,非常に多くの国から現在迎え入れておりまして,なかなか文字が細かくてお読みいただけないかと思いますけれども,現在では,韓国の学生さんが約40%,このブルーの部分ですけれども,これはインターナショナルスクールで学んでおられました日本人の方々,そしてまた,私ども法人内の学校として同志社国際中学・高等学校,半分ぐらいが帰国子女の皆様でございますので,そういう高校からの推薦入学も含めまして多様な国籍の方々が今現在学んでいただけるという状況でございます。
 次のページでございます。これは先生方はもう全て,いつもお考えのことであると思いますけれども,留学生の受入れそのものが我々の最終的な目標ではございません。もちろん,本学の教育の質の向上,国際的な通用性,そしてまた,私自身は,何よりも日本人の学生さんが留学生がたくさん来ることによってどういう刺激を受けてくれるのか,どういう形で一緒に勉強できるのか,そしてまた正課外においても,もっと言うなれば,寝食を共にしてどういうふうな経験をしてくれるのかというのが一番重要であるというふうに考えております。
 この外側の部分でございますけれども,先ほどのスライドで御紹介をいたしました国際教育インスティテュートのディグリー・シーキングプログラムに所属している学生さんでございます。そして,この歯車のような形のものでございますけれども,例えば政策学部,社会学部,商学部,法学部,経済学部,文学部,ここの学部に属しております日本人の学生さんをこの国際教育インスティテュートで一緒に勉強するというような形にしております。例えば政策学部の場合ですと,現在28名の学生さんが延べ49科目を履修している,社会学部の学生さんが,3人なんですけれども,6科目を履修しているという状況でございます。
 しかし,先生方,「いやに少ないですね」という御指摘,お考え,お気づきになったかと思います。確かにそうでございます。それには二つの理由がございます。まず一つでございますけれども,この国際教育インスティテュートは,専属の教員はネイティブばかりなんですけれども,いわゆる欧米式の少人数教育のリベラルアーツ教育を目的としておりますので,1クラスは大体30名前後に収めたいということでございまして,この6学部の学生さん,加えまして交換留学に行く学生さんの履修も認めておりますけれども,基本的にはつまみ食い的な科目登録は認めておりません。この6学部の中に国際教養コースというものを設けておりまして,副専攻的な感じでございますけれども,そこのコースを履修した人,それなりに各学部でスクリーニングを終えた人のみがこの科目を履修できるということでございまして,各学部ともそのコースの方々は,ILA,国際教育インスティテュートの科目を最低でも20単位以上,10科目は履修しないと卒業要件を満たさないというかなり厳しい条件を課しておりますので,人数的にはこういうことになっております。
 それと,少ない利用の二つ目でございますけれども,同志社大学には,いわゆる学研都市の方に京田辺キャンパスというものがございます。そしてまた,御所の前に今出川キャンパスというものがございますけれども,2013年度に完全に理系のキャンパスと人文社会科学系のキャンパスに分けました。したがいまして,残念ながら0名となっておりますけれども,商学部につきましてはそのキャンパスの統合移転を元に大きなカリキュラム改正をした関係で,国際教養コースの1年生のカリキュラムが今年から始まったところでございますので,今後どんどん増えていくというふうに思っております。
 また,並行してGo Global Japanの採択も頂戴をしておりまして,そこでインテンシブコースフォーTOEFLという特別な対策講座も設けさせていただいております。そしてまた,TOEICの対策講座,TOEFLの対策講座,いろいろな展開をしておりますので,今後,日本人の学生さんのいわゆるプラクティカルな英語能力がどんどん向上していけば副専攻的に国際教養コースを取る学生さんが増え,ここの学生さんの数がもっと増えるのではないかなと考えております。
 さて,世界中から学生さんを受け入れるためには海外での積極的な広報活動等も必要でございます。そういう観点におきましてどういう入試制度を導入してきたかということを御紹介させていただきたいと思います。まず2番目でございますけれども,日本では大体受験料が3万5,000円でございました。海外ではこれは高過ぎるということで,1万5,000円ないし1万円,面接や口頭試問を課す場合は1万5,000円でございますけれども,学科試験だけの場合は1万円でございます。そして,現地入学試験も各地で同時実施ということで,来年も1月10日の,土曜日だったと思いますけれども,ベトナムの出願はございませんでしたが,ソウルと台北で同時に入試を行います。それはインターネット会議システムを用いて実施いたします。
 そして,外部語学能力試験の利用でございますけれども,EJUにつきましては,いわゆる学力審査もこれで兼ねております。したがいまして,学部につきましては,学生さんがEJUの試験を受ければ,その点数だけでアプライをすることができます。それで,学部によっては面接を課したり口頭試問を課したりというふうにしております。また,外国語能力ももちろん必要でございますので,TOEFLやTOEIC,IELTS等の成績表も提出を頂く。ただ,このEJUの利用についてでございますけれども,先生方御案内のとおり,中国ではEJUが実施されておりません。その観点で,今後中国のリクルーティング戦略をどういうふうにしていくのかというのは大きな課題であると思います。
 あとはオンラインによるレジストレーション,そしてまたクレジットカードを用いた受験料のオンライン決済,その他,韓国事務所,台湾事務所による出願書類の受付等,特に国際教育インスティテュートと,もう一つ,英語でMBAが取得できますグローバルMBAコースにつきましては,ローリングアドミッションということで何回も何回も入学試験を実施しております。また,冒頭申し上げましたけれども,海外から直接学生さんを確保するのは厳しいので,現在,韓国,中国,台湾,ベトナム,オーストラリア,フィリピン等で合計41高校と協定を締結しております。
 さて,入学試験で入っていただきました後の在学中の支援でございます。まず第1にハラル食の提供ということを挙げさせていただきたいと思います。私どもはキリスト教主義の大学でございますけれども,9.11以降,今後の世界平和のためには一神教の研究,一神教の理解が非常に重要だということで一神教学際研究センターを設けております関係でムスリムの学生さんも多数お越しいただいております。その関係でハラル食の提供を生協食堂で行っております。これはもちろんムスリムの学生さんのためだけではなく,日本人の学生さんのためにも異文化理解の上で非常に重要であるというふうに考えておりますし,メディテーションルームを設けております。その隣には,トイレの一部を改修したものでございますが,ムスリムの方々がお祈りの前に足を洗われますけれども,それも設置をして,こういう文化があるんだよということを日本人の学生さんに知らしめたいと考えております。
 あと留学生住宅総合補償制度,これにつきましては,留学生の方々が日本で下宿を探されるときに,どうしても保証人の問題が非常に重要な課題となると思いますけれども,私どもで協定をしております不動産屋さんを通じて借りられた場合については大学が保証人になるということで,保証人は必要ございません。英語によるカウンセリングでございますけれども,週に2回ではございますが,英語によるカウンセリングを提供させていただく。あと奨学金については後ほど御紹介をさせていただきます。また,研究支援チューターについても後ほど御紹介をさせていただきます。また,G30の目的といたしまして,ただ単に日本で勉強して母国に帰るということではなく,今後の日本経済を支える意味でも日本企業にお勤めを頂きたいということで,キャリアコーディネーターを雇用するだとか,あと外国人留学生のための就職ガイドを日英で作成,そしてまた,ビジネス日本語講座と称しまして日本の企業社会等についても説明をさせていただいております。
 時間がなくなってまいりましたので,奨学金制度でございます。大きく変えました。例えば学部生の場合,留学生100名入学したといたしますと30人,30%の方は授業料50%減免でございます。残り30%の方は3割減免,あと2割ということで,変な言い方ですが,留学生である限り最低2割の減免は受けられるというふうになっております。大学院生の方は,2割の方は無料でございます。4割の方は50%減免ということになっております。特に学部生につきましては,先ほどEJUの試験で合否判定をすると申しました。EJUの成績を全学部分集めましてランキングを付けます。したがいまして,学部に関係なく上から順番に30%の学生さんは50%減免ですよということを合格通知と一緒に発送をしております。大学院生につきましては,研究科ごとに問題が異なりますので研究科ごとに割当ては行いますけれども,合格通知とともに,あなたは入学されたら100%減免ですよ,50%減免ですよという通知をしております。
 あとは,これは留学生に限ったことではないんですが,同志社大学の研究推進という観点で,ドクターの学生さんは基本的に授業料が無料ということで,日本人も含めまして今現在231名の方がこの奨学金を受給しておられます。あと,留学生コース奨学金,これは,指定校推薦の方につきましては2年間は授業料が半額でございます。2年生から3年生に上がるときに,GPA,取得単位に基づきまして,それが維持できるのか,減免率が下がるのかということを決定しております。あとは,OECDの最貧国の学生さんにつきましては年間2名でございますけれども,4年間の学生納付金全て無料,加えて月額8万5,000円の奨学金支給でございます。
 あと,学習・研究支援チューターでございますけれども,これは,簡単に申しますと,積極的にマスターの学生さんも受け入れたいという希望はございましたけれども,指導教員の先生方からは,「指導をするのはいいけれども,修士論文,日本語の添削から始まるんだよね」というような御指摘も多々ございましたので,その点につきましては日本人の学生さんがサポートをしましょう,先生は研究指導として論文のコンテンツのところだけに注力いただきたいということで設けました制度でございます。そうすることによりまして,教員の負担の軽減,支援する大学院生の指導力の向上,そしてまた,指導を通じまして学生さんと留学生との異文化交流がなされているというふうに思っております。
 海外事務所でございますが,現在この7拠点でございます。特に台湾と韓国につきましてはかなり本格的に活動しておりまして,現地で入試書類の受付,そしてまた合格通知を発送した後のビザ取得のための書類,その他もろもろ全てこの海外事務所で展開をしております。韓国におきましては父母会を形成していただいたりとか父母と常に連絡をとっていただいたり,そしてまた,指定校の校長先生とコンタクトをとるというような形で現地に根差した活動をさせていただいております。あと,最後のイスタンブールでございますけれども,来年も2月1日にやらせていただきますけれども,日本国総領事館の御協力を得ましてトルコで日本留学フェアというものを開催させていただく予定でございます。
 さて最後の課題でございますけれども,最初に申しましたとおり,私どもそれなりの留学生の数は集めることができました。ただし,学部,マスター,ドクターの課程において,どれぐらいを留学生とするのか,全体として学部を主とするのか,そしてまた,ディグリー・シーキングの学生さんは全体のどれぐらいとするのか,短期も含めてどれぐらいノンディグリーの学生さんで受け入れるのか,その割合について今後検討する必要があるだろう。
 そして,海外からのリクルートでございますけれども,この間,G30諸大学が主催されます海外での留学フェア,そしてまた私ども自身でやりました。そしてJASSOの留学フェアにも参加をさせていただいておりますが,やはりオールジャパンによる取組の中で私どもが私どもの教育・研究の特長を生かしながらリクルートをさせていただく。そしてまた,その経費をどうするのか,広報活動をどうするのかということが非常に重要な課題であると考えております。
 三つ目でございます。これは非常に重要な課題でございまして,留学生に来ていただいて,アイソレートした形で受け入れるのではなく,できるだけ日本人の方々と共修関係を結ぶ,そういう機会を提供させていただくということで,先般も早稲田大学様のインターナショナルコミュニティーセンターの方にお越しを頂きまして,学生さん主導でそういう交流活動を活発にしたいというような取組を進めてまいりたいと思います。もちろん留学生寮の整備も必要だと思います。
 これはGo Global Japanとも関連をいたしますが,英語による科目の充実,それも,繰り返しになりますが,留学生のためのみならず,日本人の学生さんもそこで勉強をする,そして留学生と友達になって正課外活動も含めて一緒にやるということでございます。
 最後でございますけれども,本日は,事務職員でありながらここで発表させていただいておるんですけれども,国際化の推進のために事務がどこまでできるのか,英語能力のみならず,国際化にどれだけ理解を示せる職員がいるのかということが重要な課題となっておると思います。現在,G30に採択されまして,留学生課というものを設置いたしました。その留学生課では,本日も課長が参っておりますが,リクルーティング,入試,奨学金,アコモデーション,その他デイリーケア,全てやっております。となりますと,どうしてもほかの部署からしますと,「留学生? はい留学生課へ行ってください」となりがちですが,こういう形はどうなのかなということで,コンピューター化のときに,いわゆる中央処理,今現在はワンストップで中央処理になっておりますけれども,将来的にはやはり分散処理みたいな形で,各々の部署が国籍に関係なく留学生に対応できるような環境を創出する必要があるのではないかなと考えております。 以上,長くなりましたけれども,御清聴ありがとうございました。
【二宮主査】  どうもありがとうございました。それでは,残された時間はわずかですが,御質問を頂きます。
【長尾主査】  二つ質問させていただきます。一つは,パワーポイントの4番というところです。ベトナム,オーストラリア,フィリピンにおける優秀な高等学校からの学生を受け入れるというところですが,フィリピン,マレーシアからも受け入れてらっしゃいますね。17歳で高校を終わる国で,1年,入学要件年数が足りない場合,それは向こうの国で1年学修を義務づけていらっしゃるのか,確認がしたいと思いました。
【西岡部長】  受け入れておりません。
【長尾主査】  もう一つの質問は,6番のところのパワーポイントですけれども,奨学金に関してです。かなりの奨学金を出されており,アジアの学生にとってはとてもいい状況,来やすい状況かと思います。G30から始まって,いろんな文科省の補助金,プログラム事業補助をとっていらっしゃるのですが,それによる奨学金が可能になっているのでしょうか。学費免除の財源というものを今後どのようにお考えになっているのかということをお聞きしたいと思っています。日本人の学納金の帰属収入の中から奨学金が出るのだったらこれは続かないと思います。そのあたりのことをお聞かせいただければと思います。
【西岡部長】  まず,スカラシップの原資でございますけれども,G30及びGo Global Japanからは支出することができませんので,全て自己財源でございます。私どもは私学でございますので,75%ぐらいが日本人の学生さんの学生納付金に頼っております,年間予算の。その中で,正直,多くの,教員も含めてですけれども,日本人のお金がざっくばらんに申しますと留学生に行っているんじゃないんですかという御指摘もございますけれども,そこはもう一つ,先ほど来,共修環境とか何回も繰り返し申し上げさせていただいておりますけれども,ただ単にお客さんで来ていただくのではなくて,適切な表現ではないかもしれませんが,留学生の方に貢献いただきましょう,活用しましょうということを,私はいろんな会議で何回もそれを御説明をすることによって理解を賜りたいなと思っております。
 また,奨学金についてですが,以前からずっと奨学金制度もございましたし,G30を採択していただいてから留学生の奨学金充実をしたわけでございますけれども,正直,財務部門と交渉していてはいろいろなことがなかなか進みませんので,国際化戦略特別経費ということで学長決裁の特別な予算を頂いておりまして,それが,いろんなことも含めてですけれども,年間2億円ぐらい学長決裁で頂いておりますので,その中で海外拠点の経費だとか奨学金,それを加えまして,新たな国際化戦略の事業についてはそこから出しなさいということで,それは財務部門ノータッチということで考えております。
【長尾主査】  でも,トータルの財源は学費収入,帰属収入ですよね。
【西岡部長】  はい,そうでございます。
【二宮主査】  海外事務所の活用ですけれども,ここ教育機能は,オフィスと呼ばれるんですかね。
【西岡部長】  はい。
【二宮主査】  ここは教育機能は持っていないんですか。
【西岡部長】  全く有しておりません。基本的には海外からの学生さんのリクルート及び教育要員が現地で活動する場合の後方支援及び危機管理をメーンとしております。
【二宮主査】  それから,グローバル30の海外オフィスの場合は全国の大学がいろいろ共同利用させていただけるということがたしかあったんじゃないかなと思いますが,そういう点では,他大学の活用とかという点ではどんな感じなんでしょう。
【西岡部長】  ここにちょっと書かせていただいておりますけれども,各大学様,多数事務所をお持ちなんですけれども,韓国事務所がオフィスビルの中に借りておる関係もございまして,大学コンソーシアム京都の各大学の皆様には,もし御希望があれば各大学の皆様にお使いいただいて結構ですし,パンフレット等も喜んで置かせていただきますという周知はしております。ただ,残念ながら今のところ御希望はございません。
【二宮主査】  特になければこれで御発表を終わりにしたいと思いますが。
 それでは,西岡さん,どうもありがとうございました。
 では次に,これまで本ワーキング・グループにおいて議論してまいりましたジョイント・ディグリーを我が国の制度の中にどのように組み込むかということの案がほぼでき上がりました。そのテーマについてこれから議論をしていただきたいと思うんですけれども,まず,配付資料がございますので事務局から御説明をお願いします。

(5)ジョイント・ディグリー等について,事務局から以下のとおり説明があり,意見交換が行われた。

【今泉大学設置室長】  失礼いたします。大学設置室長でございます。資料3について御説明申し上げます。資料3,3枚物で構成されています。まず1枚目でございますが,これは,これまで本グローバル部会で議論されてまいりましたジョイント・ディグリーについて,いずれ設置認可審査に大学からの申請があった場合には諮っていくことになるかと思っております。その際,これまでの通常の設置認可審査とは違って,幾つか特例的な取扱いをする必要が出てまいります。その観点で,これは既に大学設置分科会において御同意いただいたことでございますが,大学設置分科会の下に運営委員会というものがございます。その下に小委員会を設置することについて10月23日の大学設置分科会において御承認いただいております。
 内容でございますが,この国際化対応小委員会というものを設けまして,その中で,現在皆様方に御審議いただいておりますジョイント・ディグリーなどの国際化に関連した設置認可申請に備えて,その設置認可審査の在り方を検討するものでございます。具体的には,審査のスケジュール,審査の観点,必要な手続,運営方針等について,あらかじめこの御議論を踏まえて,申請が出てくる前の段階で事前に準備するためのものでございます。
 3枚目を御覧ください。このメンバーについても,既に各メンバーになる候補の方々には個人的には御同意いただいているところでございまして,また,大学設置分科会においても,12月9日の会議においてこのメンバーであることについて御承認いただいているところでございます。本グローバル部会からは,勝先生,大野先生,堀井先生,吉川先生にご参加いただいて,これらの方々がこれまで本部会において議論されてきた内容を踏まえて,それではどういうふうにこの設置認可審査においてそれを反映させていくのか,これを御審議いただくことを考えております。
 スケジュール的には,これから,もちろん中教審での議論が固まり次第ではございますけれども,それが固まって,ある程度設置審の方で御議論いただきたいという形になってから,来年の3月末若しくは,通常学部等新設案件については5月末までの申請でございますので,遅くとも4月中ぐらいにはある程度の方向性を固めてまいりたいと考えているところでございます。以上です。
【白井大学振興課課長補佐】  続きまして,資料の4に基づきまして御説明させていただきたいと存じます。初めに資料4の最後のページになります10ページを先に御覧いただきたいと存じます。このジョイント・ディグリーについては,夏以降,当部会におきましても精力的に御議論を頂いてまいりました。もし今日の部会の審議で御了解が頂けましたら,今後のスケジュールでございますけれども,12月24日大学分科会がございまして,そちらの方に御報告,また御審議をお願いしたいと思っております。そこをクリアできました場合には,1月にパブリックコメントを実施して広くまた御意見を募り,そして2月に大学分科会に正式に諮問をして,答申という形で御了解を頂ければと考えております。最速のスケジュールでは,できましたら来年度からの大学設置基準改正後の施行ということにしたいと思いますけれども,先ほど設置室長の方からも御説明がございましたけれども,その後,準備が整った大学から順次設置認可申請をしていただき,実際にジョイント・ディグリーを実施していただきたいと思っております。
 また,併せまして,現在スーパーグローバル大学事業を検討中でございますけれども,このジョイント・ディグリーについても大変御関心が高く,この事業について考えられている大学の中で,多くの大学がジョイント・ディグリーを是非導入したいというお声があるということも漏れ聞こえているところでございます。この事業採択と併せまして,ジョイント・ディグリーが更に活発化したものとしていきたいと思います。ただ,各大学の状況を聞いておりますと,現実的なところで一番多いのは恐らく平成27年度からの開始というところが多いかと思いますけれども,大学によってはより早いスケジュール等をお考えのところもあろうかと存じます。
 それから,1点御報告でございますけれども,このジョイント・ディグリーの導入案につきましては,これまで当ワーキングの方で御審議をいただいていた資料につきまして,関連の深い大学教育部会,また大学院部会にも別途御報告を申し上げてございます。そこでもかなりいろいろな御意見を頂戴しておりますけれども,基本的な構想については概ね御了解を頂いているかと存じます。ただ,その中で,例えば相手国,諸外国における大学のニーズについては十分に捉えられるのかとか,あるいは,例えば国家資格に関係するような分野についてはどのように扱っていくのかとか,ほかにも,例えば設置基準についても,もし,各大学が外国大学と交渉する際には設置基準の英訳といったものも用意すべきではないか等,様々な建設的な御意見をいただいているところでございます。これからパブリックコメント等を含めましてより詳細な法令を起こしていくことになりますけれども,その際にこういった御意見も含めまして検討してまいりたいと考えてございます。
 それでは資料4の方に戻らせていただきたいと存じますけれども,基本的に前回から大きく変更している点はございませんので,もう一度確認を簡単にさせていただきたいと存じます。資料の4の1ページでございますけれども,ジョイント・ディグリー,現在まだ国際的に確立した制度とは言えない部分があり,手探りで各国が進めている状況でございます。その中で,日本としても積極的なルールメーキングをしていきたいということが基本的な考えでございます。
 その際に,外国の大学について,日本の法制度をどのように取り入れていくのかということが課題になりますけれども,現在,国家間で学位に関する制度が異なり,また,属地主義による制約がある中で,我が国の大学が各国の大学に直接的に質保証を求めるようなことはできないという状況がございます。そういった中では,基本的には(イ)の考え方,外国大学による学位授与についても,あくまでも我が国大学の学位として取り扱ってはどうかという考え方に基づきまして制度設計をさせていただければと考えております。
 2ページの方が大学院修士課程のイメージでございます。基本的には,例えば専攻の中にジョイント・ディグリーの専攻といったものを設置していただくようなイメージが一番わかりやすいのかなと考えております。例えば機械工学専攻の中に,50名の定員の中に5名程度のジョイント・ディグリー課程を行う国際連携機械工学専攻といったものを置いて,ここが外国の大学と大学間協定を結んでいただき,そして連名の学位を出していただくというような形が一つ理想的なモデルとして考えられようかと存じます。
 3ページにお進みを頂きたいと存じます。3ページは今回新しく追加をさせていただいた資料でございます。これは,どちらか言えば学生の方から見た図ということで御理解を頂ければと思います。同じ機械工学科の学生を例にとっておりますけれども,大学の工学部機械工学科を卒業した学生,多くの学生が恐らく大学院の修士課程に進学をすることになると思いますけれども,その際に,多分マジョリティーはいわゆるシングルの国内の機械工学専攻に進まれると思いますけれども,その中にはより国際的なプログラムを学びたいという方もいらっしゃると思いますので,そうした方については国際連携機械工学専攻の方に進学をしていただく形になろうと思います。そのプログラムの内容については,多様な方法があろうと思いますけれども,典型的な例としましては,ここに掲げておりますような,例えば半年間日本の大学で授業を履修していただく,それから1年間外国の大学に行って単位を取得していただく,それからまた日本の大学に帰ってきて研究指導,論文指導を受けていただくということになりますけれども,その際にも両大学で一定の単位を取っていただくということがございますし,また,論文指導,研究指導については例えば日本の大学の学生でしたら日本の大学の教員が主担当であっても,副担当には外国の相手先大学の先生がついていただくというようなイメージかと思います。また,学位の審査におきましても共同での学位審査ということになろうかと思いますので,主査は日本の大学の先生で,副査が外国の大学の先生といったような形での共同での学位審査になろうかと思います。
 また下の方の括弧に書いてございますけれども,今回,共同実施科目という概念を新たに設置しております。これまでの共同プログラムですと,どうしても各大学の授業の持ち寄り型が中心でございましたけれども,より一層共同性を高めるということで,例えば授業の設計から成績の評価といったようなところまで共同性が認められるような科目を,共同実施科目として,新しい概念として導入しております。共同実施科目の事例としては,例えば,夏期の集中講義などで日本の大学に相手国の大学の先生が来ていただいて,一緒にチームティーチングのような形で授業をやって共同で成績評価をするといったような形の展開も考えられようかと存じます。
 4ページ,制度設計の基本理念でございます。このあたりは資料としては大きく変更はございませんけれども,大きく4つの理念を設定しておりまして,それぞれに基づいた制度設計ということで考えさせていただいております。また各基本理念について次のページから御説明をさせていただきたいと存じますけれども,5ページのところが基本理念の1番目,プログラムの共同性に関する考え方でございます。ジョイント・ディグリー・プログラムですので,外国大学としっかりと協議・連携をしていただいて作る体系的なプログラムということが大前提になろうかと思います。また,一定の学位授与権を満たすということも当然の前提になろうかと思います。各大学において一定の単位修得であるとか研究指導といったように十分な関わり合いがあるということ,また,卒業判定や学位審査において,その大学が一人の学生に対してきちんと学位を授与する,あるいは卒業判定ができるというだけの関連性を持っていただくということを求めたいと考えてございます。
 そのために,日本の学位でございますので,基本的には日本の大学で一定以上の単位,学部段階であれば62単位,大学院であれば10単位以上の修得をお願いしたいと思っています。また,外国大学についても,一定の関連性ということで,学部31単位,大学院10単位といったようなことを考えてございます。研究所についても,先ほど申し上げましたとおり,各大学に指導教員を設定して,各構成大学が学位の授与の審査に加わっていただくということを想定してございます。
 次の6ページがプログラムの共同性の二つ目でございますけれども,共同実施科目について主に説明をしている資料でございます。特に共同での授業の実施,成績評価等,融合性の高い共同実施科目につきましては,最初に5ページで述べました単位の修得の要件から,より柔軟な取扱い,すなわち,日本の大学の授業としても,あるいは外国の大学の施策としても取り扱うことができるという柔軟な制度設計にしたいと考えてございます。これによって,各大学でもし一定の要件が十分満たされないという場合であっても,学生に対してより柔軟な学位授与が可能になるということが考えられると思っております。
 次に7ページにお進みを頂きたいと存じます。
 7ページが学位の国際的通用性という部分でございます。このあたりは,特に学位の専門家でいらっしゃいます吉川委員からも御指摘をいただいたところでございますけれども,外国大学がそもそも当該国において適切な学位授与権を有しているというのは当然の前提でございます。また同時に,このプログラムを修了したことによって,日本国内だけでなくて相手国においても学位授与権を満たすことが必要です。すなわち,外国人の留学生がこのプログラムを終えた場合に,本国に帰って,その国で学位が通用しないということがあっては信頼性に関わりますので,そこもきちんと担保するということでございます。
 具体的には,外国大学については,当該国できちんとした設置認可,認証評価といった質保証を受けていること,また,修士とか博士とか,同レベルの学位について有効な学位授与権を有していて,その実績があるということを求めたいと思っております。また,学位授与要件について,例えば日本の大学の学士課程では124単位が卒業要件でございますけれども,仮に,例えば韓国等であるようでございますけれども,140単位というようにより高い要件を課している場合には,韓国に持ち帰ってもそこで通用するということが必要になりますので,140単位まで上げるということが求められると存じます。
 次の8ページにお進みを頂きたいと存じます。8ページが具体的な質保証のスキームでございます。今回,大学間協定というものをきちんと結んでいただき,その内容について審査をしていきたいと考えてございます。一方で,特にハードの部分でございますけれども,例えば専任教員でありますとか,校地・校舎基準といったものは,大学の質保証上は必要なものではございますけれども,一方で,柔軟な運用をするに当たってはなかなか各大学にとってのハードルになる部分もございます。今回は収容定員の一部を活用したプログラムの展開ということでございますので,ここについては一定の専任教員の追加的な配置のみを求めたいと考えてございます。それから,この設置認可の審査に関しましては,先ほどの設置室長からの御説明にもございましたけれども,国際化対応小委員会というものを設置審の方に置いていただくことになりましたので,こちらの方で専門的かつ迅速な御審議をお願いしたいと考えてございます。
 次の9ページにお進みをいただきたいと存じます。9ページは今回少し新たに変えさせていただいた資料でございますけれども,設置認可審査において具体的にどういった点を見るのかという資料でございます。主な点はここに掲げております4つでございますけれども,教育課程の編成,各プログラム・授業科目がどういうふうに構成されているのかという点,それから,教育組織の編成に関する部分,といいましても,基本的には既存のプログラムを各大学が持っており,また,外国大学についてはその国で質保証を適切に受けているという前提がございますので,ここで一から教員個々人の業績をチェックするということは想定してございません。基本的には各既存の制度を信頼しながら必要な部分について審査を行い,各授業科目が十分持てる人員がそろっているかどうかといったことを中心に審査をお願いしたいと考えてございます。専任教員数については,先ほど申し上げましたように,これはあくまでも確認ということにとどめたいと考えてございます。
 大学間協定につきましては,告示を新たに規定いたしまして,具体的にここにございますような必要記載事項といったものを定めたいと考えてございます。これらの事項についてきちんと大学間協定で書かれているのかということを御確認いただきたいと考えてございます。一見多いようには見えますけれども,基本的には各大学において学生を預かる以上は必要なことかとも考えてございます。
 こちらからの説明は以上でございます。御審議方よろしくお願いいたします。
【二宮主査】  ありがとうございました。それでは,ただいまの大学設置室長と白井振興課課長補佐の説明を頂きましたので,それについて質問等をお願いしたいと思います。どうぞ。
【大野委員】  すみません1点確認したいと思うんですが,5ページのところなんですが,単位の修得要件のところにあるんですが,これはまだ例ですけれども,考え方としてどうなのかということを確認したいと思います。日本の大学で一定以上の単位ということで,学部の場合は62単位以上ということで,要は,半分は日本の大学で取りましょうと,こういう考え方ですよね。それに対して大学院は10単位以上ということは,同じ考え方であれば15というふうな考え方になるかと思うんですが,大学院と学部とはちょっと違う扱いにしようという意味合いと考えてよろしいですか。
【白井大学振興課課長補佐】  そうでございます。ここは,学部の場合には,現在の単位互換等におきましても,基本的にはその半数は各大学がそれぞれ提供する授業科目という考え方になってございますけれども,実は現行でも大学院の場合につきましては,そこは10単位となってございまして,残る20単位につきましては既修得単位の認定でございますとか大学院同士の単位互換といったことで埋め合わせる設計になってございますので,それを生かした制度設計というところで考えてございます。
【長尾委員】  二つほど質問させてください。3ページのところで,これは大学院をモデルにしていますよね。それで,下からいって,12単位,半年は日本で,それから1年目は外国で,帰ってきてまた日本の大学でとありますが,学校あるいはプログラムによってはこのとおりではなく,動く場合もありますよね。例えば最後が修士であれば修士論文を指導しなければいけない。今の御説明だと,主査は日本の指導教員であり,副査を相手方のジョイント研究者であればそれでもいい。その場合に,学生が海外に行っていて,日本の教員が主査であって副査が海外でというのはいかがですか。ICTを使った指導でもこれはオーケーですね。
【白井大学振興課課長補佐】  研究指導においても,ここにも少し書かせていただいておりますけれども,実際にスカイプでありますとかEメールを使った指導というのは,それは現在国内でも行われていることかと存じますので,それはあり得ることだと考えております。
【長尾委員】  フレキシブルでいくということですね。それから,次は7ページのところで,先ほど韓国と日本の例を出されて,単位数に関して,これは学部の卒業単位とおっしゃったかと思います。124単位が日本であって,140単位が韓国である場合には,あちらの学生がジョイント・ディグリーで日本に来て,140単位取得せずに帰国した場合には,向こうの学士が取れないので,不利益を講じないようにとおっしゃいましたが,それに合わせて日本人の学生も140単位取る必要はないですね。国によって違いますから,日本人には124単位保証して,あちらの学生にはそれに見合うような単位数をきちんと取らすという責任を果たせばよろしいんですね。
【白井大学振興課課長補佐】  ジョイント・ディグリー・プログラムでございますので,恐らくいろんな国籍の学生が入ってくることが想定されると思います。基本的には学生ごとにカスタマイズするというのも実際には困難な部分があろうかと思いますので,そこはそのプログラムを設計する際に,各大学,ジョイント・ディグリー・プログラムを結んでいただく大学同士の間で,どの国において有効な学位になるのかということを御確認いただく必要があるかと思います。その上での制度設計ですので,そこについては基本的に各大学の御判断にお任せをしたいと考えています。
【長尾委員】  確認ですけれども,日本の学生に不利益とならないように,自国の卒業要件を満たすということを保証する協定が事前になされていればいいということと考えてよろしいですか。
【白井大学振興課課長補佐】  そうでございます。
【長尾委員】  もう一つだけ,三つ目の質問です。ジョイント・ディグリーというものを日本の制度の中で作るのですが,例えば,協定校が既にあり,交流の実績があるとしますね。その場合に,協定校はジョイント・ディグリーではなく,今までどおりの単位互換でよいとします。でも,こちらは,今までやっていた単位互換の単位数を鑑みればジョイント・ディグリーができる。やっていることは一緒なんですけれども,ディグリーとしては日本だけになるという場合はどうなんでしょうか。
【白井大学振興課課長補佐】  そこについては,いろいろな議論があるかもしれませんけれども,基本的には相互性が必要かと思いますので,こちらだけの大学で,日本だけで学位が認められるということはちょっとどうかと。やはり相手国,ジョイント・ディグリーを結ぶ外国大学が所在している国に行った場合に,日本人の学生についても認められるというのがこのジョイント・ディグリーのあるべき姿ではないかと,今のところは考えてございます。
【長尾委員】  日本人学生はきちんとそちらの単位を取ってくるんです。もう一度言い替えれば,例えば協定校が研究科だったら,専攻だったら,さっき5名とか10名の一部であっても両方がそのプログラムをきちっと持っていないといけないということですね。片一方,日本だけでジョイント・ディグリー・プログラムであちらは単位互換にするよという,あちらの学位あるいは修士のディプロマは単体であるというんじゃなくて,両方が双方の学長のサインが要るということですね。
【二宮主査】  この制度設計は,まず基本的に日本の学位でありますね。
【長尾委員】  そうですね。
【二宮主査】  日本の学位をジョイント・ディグリーとして出そうという意図ですよね。
【長尾委員】  そうですね。
【二宮主査】  出すに当たっては,パートナーになる大学は学位授与権が当然なくてはいけないと。向こうの単位を使いますから,共同性というのが要求されますので,向こうと一緒にカリキュラムを編成するということは,向こうも学位授与権を持っていないといけないということまではいいですよね。
【長尾委員】  もちろんそうです。
【二宮主査】  それで,これは単なる単位互換ではなくて共同で教育課程を編成しますので,それぞれが共同実施科目を活用して単位をやりますね。単位互換だと10単位までしか互換できないけれども,これは10単位以上自分の大学が取れば,あとは共同実施科目などを活用しながらという大学院の単位互換の規則とはちょっとずれるというか,一歩進めてやりやすくしていただいていますよね。
【長尾委員】  はい。
【二宮主査】  それで,今度は相手大学がこれをジョイント・ディグリーとして出すかどうかはまた別の問題じゃないかというのが質問なんですか。
【長尾委員】  そうです。
【佐藤国際企画室専門官】  ちょっと整理させていただきますと,最初の質問の140単位について,日本人の学生が取らなくても,ジョイント・ディグリーなればという話は基本的にならない。140単位,韓国側,韓国と日本の間で合意しているジョイント・ディグリーですので,韓国側が140単位を求めているというふうな状況であれば,日本の学生も140単位を取らないとジョイントの学位権をもらえないということがまず一つです。
 それからもう一つ,2点目の御質問ですけれども,韓国側がそもそもジョイントじゃなくてもいいじゃないかと言っている段階でもう既にジョイント学位という話にはなりませんので,要は韓国の大学の学長がジョイントの連名の学位記にサインするという話にはならないわけです。ですから,そういう話は恐らくなくて,ジョイントの学位記でやりましょうと言っている時点で,そこはもう共同のプログラムとして,さっき二宮主査に御説明いただいたように,単位互換ではなくて,共同のプログラムとして構築していくということになるかと思います。
【長尾委員】  ありがとうございます。
【二宮主査】  ただ,単位の互換という問題は,世界的なレベルで考えると,単位制度はそれぞれの国によって違いますので。だから,ある種の単位の換算というものをよく設計するときにはもう一つ各大学におかれては組み入れておかないと,見かけの単位数で124と126と140とか160とか,この見かけの単位数だけで各大学がデザインされるとちょっと。ですから,そこは非常に難しいところなので,各大学が質が保証できればという形であると設置審にかけると。それを設置審がどう審査するかということで,少し大学と設置審の対話に任せていかないと,その部分は前もって,できないと思うんです。ただ,単位互換のスキームをどれか一つに統一はできませんので,韓国と日本は1・1の関係だとすれば146で構いませんと,こういう言い方になるかもしれませんね。
 でも,そこは本当に慎重に考えていかないと,日本の学位ですので,韓国の学位じゃないということをよく考えて。でも,韓国のリソースを使いながら共同で学位を出させてもらうけれども,学位を申告する,取得する人たちは,例えば日本の大学に在籍する人が取得するわけですね。
【長尾委員】  いや,違います。
【佐藤国際企画室専門官】  日本の学位で,外国の,韓国の学位ではないというふうなお話なんですけれども,ジョイント・ディグリーと言った時点で,その国際通用性というところにも書かせていただいているとおり,韓国でも学位として認めていただくということが絶対的に必要になってまいりますので,認可のプロセスにおいては日本側の学位として見るというふうなことなんですけれども,その国際通用性というところにおいては,やっぱり韓国側の要件というのも,大学がそのプログラムを作る際に要件を満たしていくことになると理解しております。
【二宮主査】  それは議論ですが,だからといって前提に,韓国においても日本と,これから出来上がるだろう同じような質保証のプロセスといいますか,設置認可のプロセスを求めるということではないわけですよね。協定でそれをエビデンスで書くことはできないと思うんですよね。間に合わない。
【白井大学振興課課長補佐】  そこはまさに各大学,各国においてそれぞれの質保証制度がございますので,同じようなものを各国に求めるということはないと思います。
【内田委員】  趣旨はよくわかりました。そうしますとこれからは,このジョイント・ディグリーというのは,言い方を替えると,単位互換を前提とした共同教育プログラムの中で,相手方国で取る単位は,その国の学位授与の要件を満たしているという場合の特殊解と,こういうことですか。つまり,要するに大学からすると,それぞれの大学がA国とB国とでそれぞれの単位を出して学位を取得する,ダブル・ディグリーの場合。学部生のとき,4年ということもあります。4年半とか5年というのはいっぱいあって,これは二つとれますよ。それから,単位互換で,例えば一つの大学が複数の大学に学生を行かせて,それでそこから単位を取ってくる。それは単位互換で,そこには共同教育プログラムという名前を付けて,学位は本大学だけれども,そこに共同教育プログラムで単位を出した大学の名前を別途の証書で出せる,こういうことになりますよね。それから,このジョイント・ディグリーの場合には,今の形態のより進んだ形で,相手方大学の単位数を満たして学位をもらえるという場合には連名で取れる,こういうふうにこの三つを考えればいいということですよね。
【白井大学振興課課長補佐】  まず単位互換とジョイント・ディグリーの違いを整理する必要があろうかと思います。ダブル・ディグリーの場合ですと,単位互換を活用して,要は相手大学で取った単位について,相手大学の単位として読替えをするという作業をします。それによって両大学において各学位取得要件を満たしていくということになります。ジョイント・ディグリーが単位互換と違いますのは,ジョイント・ディグリーにおいては,単位互換という概念は基本的にございません。ジョイント・ディグリーが単位互換と異なりますのは,それぞれが授業科目を持ち寄って一つの単一のプログラムを構成し得るということになりますので,今回,単位互換のスキームを活用して同じような制度設計にしてございますので,その点,非常に単位互換に近い部分はございますけれども,一応概念としては,ジョイント・ディグリーにおいては,それぞれの各大学間で単位を読み替えると,互換するという考え方でなくて,各大学がそれぞれ持ち寄った一つの体系,教育体系ということになろうかと思っておりますので,その点御理解を賜ればと存じます。
【二宮主査】  そのとおりでいいかと思うんですが,ただ,設置審の方が多分御覧になるのは学習量だと思うんです。そのプログラムが求めている資格,学位を出すだけのふさわしいその国の基準に基づく学習量と専門性が担保されているかどうかだと思うので,そこに単位互換という概念を,ある程度計算尺を入れておかないと,それぞれの大学が話し合っていても混乱するばかりだということも他方である。でも,それは大学でもう十分経験されていることなので,大学でしっかりやっていただくと。出来上がったものは,そこは単位互換という感覚はもうなくて,設置審としては。ただ,この審査の項目の中には,検討の項目の中には共同性をどう認可とか審査するかというところをもう少し明確に表に出るようにしておかないと,国際的,これは普通の専攻などの審査と同様に設置審でなってもいけません。やはりこの特色は共同性だと思うんです。共同性がどこまで正当性を持っているかといったことで検討していただくということです。
 ありがとうございます。まだまだ,それを多分やり出すと切りがないとは思うんですけれども,ここまでデザインして準備していただいて,我々も準備してきたと思うので,先ほど御案内ありましたように12月24日に中教審大学分科会が開催されることになっておりまして,大変僣越ですけれども,私の方から,これまでの議論を踏まえて,中間報告なのか,ワーキングの報告として持ち出させていただいて,分科会の方で御議論を頂いて,この次,どういう手続を取るかということを審議,決めていただくということにしたいと思います。あらかじめ委員の皆様には,そのような段取りで私の方で進めさせていただきたいと思いますので,御了解を願います。
【島田主査代理】  ジョイント・ディグリーも長いこといろいろ議論されていたようですが,大学側からの希望も出ているわけですし,一歩ここまで具体化してきたのは大変関係者の皆様の御努力だと思います。いずれにしても,この小委員会ですか,これはいつから発足するんですか。
【今泉大学設置室長】  中央教育審議会である程度方向性が固まってからと考えておりまして,イメージではございますが,12月24日の審議状況を見て,恐らくその後も詳細なところについては引き続きこのグローバル部会で詰めの作業というのは行われることになるかと思いますが,そこについては同時並行で進めさせていただければと思っています。
【島田主査代理】  わかりました。それで,実際に設置認可審査というのは,実際の認可をする作業はこの小委員会が中心になるんですか。
【今泉大学設置室長】  そこのどういうふうな審査の観点でどういう体制でいくのかということも含めて検討してまいりたいと思います。
【島田主査代理】  そういう意味では,小委員会ができたとしても,認可申請が年に1回とかいうことではちょっと機動性が,最初の時点ではもっとスピーディーにやらなければいけない,例えば,来年まで待ってくれというんじゃまずいんじゃないかと思うんですよね。だから,年に3回とか4回とか,委員の皆様大変かもしれないけれども,しばらくの間,年に最低限数回開くという必要があるんじゃないかという気がしますけれども。
 以上です。
【今泉大学設置室長】  おっしゃっていただいたとおり,設置審の作業のフィージビリティーの問題もありますが,本件について,政策的なプライオリティーが高いことは重々承知しておりますので,おっしゃったように,これまでのスケジュールとは違って,少し弾力的な扱いにしてまいりたいと思っています。
【二宮主査】  今,島田主査代理からもありましたけれども,秋入学も,国際的なことがありますので,そういう意味では,4月と秋ということがありますから,その点からもまた検討していただけることになりますので。貴重な指摘ありがとうございました。
【大野委員】  小委員会の役割ということで確認したいんですが,この文言を見ると設置認可審査の在り方等について検討するということですよね。一応ここでは大枠的なことについては承認されたんですが,ある程度ちょっと細かいところの話が出てくるような気がするんです。例えば,前も少しお話が出ましたが,ここに入る入学者の選考をどうするかと。つまり入試ですよね。基本的には,出てきたこの例でいうとA大学が行うんだということになるんだと思うんですが,例えばそれはA,Bという大学が共同でやってもいいのかみたいな話であるとか,あるいは,この例でいきますと,この3枚目のところでは,学位についての主査は日本だとすれば日本の大学だと言っているんですが,でも,それを相手方のBという大学が主査になってもいいかとか,それから,これも問題ですけれども,授業料をどう取り扱うかとか,これについては両大学の間でいいのかとか,そういう話も出てくるんじゃないかという気がしますので,そういうところまで議論をしていいのか,あるいはここに書いてある設置認可の審査の在り方という狭いところなのか,ちょっとそのあたりを確認したいんですけれども。
【白井大学振興課課長補佐】  設置審の方で御議論いただいておりますのは,資料4の最後の9ページに書いてございます部分となっております。告示においては基本的に必要記載事項ということで考えてございますので,例えば授業料の徴収の仕方であるとか入試のやり方であるとか,そういった細かいことについて法令で規定するということは現時点ではイメージはございません。ただ,こういったことについて学生側に不利益が生じないように,あらかじめ学生にわかるような形で明示していただきたいということで考えてございます。
【大野委員】  つまり,制度上の自由度というところについてこの小委員会の方である程度幅を決められるのかどうかということなんですが,それはある程度あるということでよろしいわけですか。
【白井大学振興課課長補佐】  そこについては,基本的にはここは必要な記載事項がきちっと書いてあるかどうかということを大学間協定等については審査をしていただこうと考えてございますので,その自由度というのは大学の方に委ねられると考えてございます。
【二宮主査】  多分,中教審が制度設計をして,これでいきましょうということになるとすれば,小委員会の枠の中で適切な審査をどうするかという形で,余りそれを超えて,こういうのもあるんじゃないかとか,国際の方からいくとどうしても飛び越えやすいので,話が大きくなりやすいので,そこはちょっと自制していただきながら,制度設計の中で適正な審査をやっていかないと大学が混乱しますので,その辺は委員になられるんでしたらお願いしたいと思いますけど。
【大野委員】  そうすると,今度小委員会のところと今ここで議論しているところのギャップの部分,そこは誰がどういうふうに埋めるのかということになりますけれども。
【白井大学振興課課長補佐】  そこについては,最終的には法令でどこまでを規定するのかということに尽きようかと思います。そこにつきましては,まさにこれから詳細な制度設計をしていく中で,大学分科会あるいはこのグローバルワーキングで先生方とキャッチボールしながら決めていきたい。どこまで法令で縛るのかというところについては,各大学の自由度に係る部分もございますので慎重に議論していきたいと思います。
【大野委員】  了解しました。
【今泉大学設置室長】  すみません,今の補足でございます。まさにもう二宮主査におまとめいただいたとおりでございますが,設置認可審査においては準則主義をとっておりまして,基本的に法令に書いてある範囲で適否を判断するものでございます。ですので,大野委員から御発言になった話については,設置認可,まさに白井補佐が申したとおりでございますが,どこまで法令に書くのか次第でございます。ただ,さっきおっしゃった中身については少々法令にするには細かい事項でございますので,そういう件についてはこのグローバルワーキングの中で,議論の中で決めていくことになるかと思います。
【長尾委員】  中教審でやるとこれは大変なことになるので,ちょっとまとめて伺います。二つあるんですけれども,一つは,さっきおっしゃった韓国の140単位と,合わせてこっちも140単位にしないといけないというのはやっぱり違うんじゃないかと思うんです。それぞれの本務校というか、それぞれの大学が学生を主体的に抱えているわけですよね。そして,ジョイント・ディグリーというか,共通も含めて,それぞれが合わす必要なく,学生を抱えている学校が単位数も含めて主体的になればいいんじゃないかなと私は思うんですけれども,そういうふうなことも小コミッティーで議論なさるんですね。
 それが一つと,もう一つは,先ほど,同じものを相手も認可されなければいけないとなると,相手の国も設置認可の小委員会なり国の制度を変えていかなければならない,議論をしなければいけなくなりますよね。ただその大学がいいと言ったからいいわけじゃなく,日本も、これだけの議論をして設置認可の小委員会を作っていくわけですから。相手の国も日本の制度を受け入れてあちらの制度にしなければいけないとなると,相当時間がかかるのではないでしょうか。
【佐藤国際企画室専門官】  最初のポイントにつきましては,共同学位ですので,全く共同,一つのプログラムを作っていただいて,それを収容した学生に対して国籍を関係なく連名の学位記を提供するというものになりますから,結局その国籍が違った途端に要件が変わるという話には基本ならないと理解しています。
 それから2番目のポイントに関しては,今,これは日本国内で法制度上できないということをどういうふうにして可能にするかというところを議論しているのであって,外国の大学と,仮に例えばジョイント・ディグリーを認めていない国の大学とジョイント・ディグリーというのはやっぱりできないわけですよね。我々がこれをやるから同じプロセスを相手の国の政府でやってくださいという話は当然できませんので,基本的に現行,各国の制度の中で許容されている範囲の中で大学が連携相手を見つけてきてジョイント・ディグリーということをこのプロセスの中に申請してくるというふうになると理解しております。
【白石委員】  大学としては,こういう制度ができたとき,これをどう使うかを当然考えるわけですが,まだ何もできていない段階でいろいろ心配してぎりぎり制度を作るより,むしろ歩きながら考えた方がうまくいくもので,私としてはできる限り大学の自由度は高める方向で制度を考えていただきたいと思います。そのとき重要なのは,それぞれの大学では,当然,大学のレピュテーションがどうなるかを考えてやりますので,質保証は当然ですが,質保証だ,質保証だといって,がちがちの制度を作って,その結果,大学が国際的に戦略的にレピュテーションを上げることができないような制度を作ってしまうと,趣旨に反する,したがって,そこのところの自由度は何とか確保していただきたいと思います。
【二宮主査】  多分貴重な意見として伺うことになるかと思います。しかし,他方で,よくここまで制度的な準備が整いつつあるなというのも事実でございます。
【白石委員】  そうです。だから今あたりでいいんです。だけれども,これまでの議論を聞いていると,ここから先,また踏み込もうという感じもある。こういう心配もある,こういう心配もあるといった議論は,私としては余り望ましくないと思います。
【二宮主査】  ですから,設置審と中教審の関係などをきちんと先ほどのように整理して,制度設計は制度設計として。あと,それを更に縛るようなことで余り深く入ってしまうと,せっかく大学が準備しているものがほとんど実施できなくなってしまってもいけませんのでということでまずは受けとめさせていただいて,それから,今後も引き続き多分議論できるかと思いますので,更に大学が挑戦しやすいような環境を整備していった方がいいんじゃないかなと。先生がおっしゃるとおりだと思いますので。ただ,勝手には,やっぱり学位ですのでできないという,国際的な動静もありますので,その辺は我々も,と思っています。大変長い時間議論していただいて恐縮でございました。24日の大学分科会の方には私が出席させていただくということで,あらかじめ御了承いただきたいと思います。
 あと残された時間が本当にわずかになりましたが,もう一つのテーマ,海外サテライト,キャンパスということについて,これは白井補佐の方から,資料5だそうですが,ちょっと説明いただいて,若干の意見交換をして本日の会議は終わりにしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
【白井大学振興課課長補佐】  それでは,資料の5に基づきまして御説明させていただきたいと存じます。資料の5は,以前の当ワーキングでも出させていただいた資料でございますけれども,大学のグローバル化に関する諸制度ということでございます。改めて確認させていただきたいと存じますが,現行では,伝統的な方法でございます留学でありますとか,あるいは大学間の単位互換協定,さらにそういったものを活用するようなダブル・ディグリーであるとか共同教育プログラムといったようなものがございます。また,テンプル大学等で活用されておりますけれども,外国大学日本校を指定して本国に準じて扱うというような制度もございます。さらに,海外キャンパスという制度を平成20年に作ったところでもございます。
 今ジョイント・ディグリーについて御検討いただいておりますけれども,更に新しいものとして,もう一つの海外サテライトというものが必要でないかというような御意見も賜っているところでございます。
 これについて,これまで,工学院大学,九州工業大学,また,本日の名古屋大学,同志社大学の各大学からも現在どういった海外展開の取組をされているのかということについて御説明いただいてきたところでございますけれども,現在の海外キャンパス制度,赤字で書かれている部分でございますけれども,こちらについては我が国の大学が外国で学部等を展開する場合に設けた制度でございますけれども,この資料の2枚目にもございますけれども,基本的には国内と同様に収容定員を配置して,そこに必要な専任教員でありますとか校地,校舎を置いていくということが求められておりまして,かなり本格的な進出,海外展開というものが想定された制度設計になってございます。
 この海外キャンパス,海外校制度というものでございますけれども,こういった本格的過ぎる部分もあるのか,現在,活用されている事例がないという状況でございまして,各大学の海外に積極的に展開していきたいというニーズもあることから,より柔軟な形での海外展開が可能になるような制度設計について考えていく必要があるのではないかということで,現在,仮称でございますけれども,海外サテライトということで御検討を頂ければと考えてございます。
 基本的には,各大学からの御説明でございましたけれども,各大学におかれては海外オフィスでありますとか一定の交流拠点,あるいは在外教育施設といったものについては既に設けられているところもございますけれども,より特に現地の学生をいかに日本の大学に集めるとか,あるいは日本人の学生を現地,海外においてどういうふうに教育をしていくのかといった観点から,本日は現行制度ということで資料を御用意しておりますけれども,本日御議論いただきまして,そういった御議論も踏まえまして,私どもの方でもどういった制度が望ましいのかということについて少し次回以降資料を用意して委員の先生方に御議論をお願いできればと考えてございます。
 こちらからの説明は以上でございます。
【内田委員】  そうしますと,例えば海外の学生が1年間海外のキャンパスにいて2年目から日本の大学に戻ってくるとか,あるいは日本の大学に1年生,2年生いるけれども,3年生のときに向こうへ行くと,それで4年生は戻ってくる。これはこのサテライトの概念で考えるんでしょうか,それとも,海外キャンパスというこれまでの制度との関係でどういうふうに考えていこうというのが基本的な筋なのか,教えていただけますか。
【白井大学振興課課長補佐】  そこは大きく分けまして二つの考え方があろうかと思います。そもそも日本人を対象にするのか,それとも現地の外国人学生を対象にして考えるのかというところがまず一つ大きな認識としてあろうかと思います。今の先生のお話ですと日本人を念頭に置かれた御発言かと存じますけれども,そこは一つのポイントになるかと思います。
 それからもう一つは,かなり本格的なものを想定するのか,それともある程度の簡便なものを想定していくのかということがございます。特に学部段階,18歳等で卒業した学生ですと,やはり一定のキャンパスの整備といったようなものも基本的には求められてくると考えられますし,また,現在の海外キャンパス制度もかなり恒久的で本格的なキャンパスを海外で作っていただくというような制度設計になってございます。ただ,一方で,例えば本日の名古屋大学でありますとか,前回の九州工業大学のプレゼンでもございましたけれども,例えば博士課程の学生を対象にするような場合にもそういった本格的かつ恒久的なキャンパスが必要なのかといったところについてもまた御議論も当然起こるかと思いまして,そういった場合にはどちらかといいますと簡便な施設等の方がなじむのかなと思ってございます。そこら辺は仕分をしながら御議論を頂ければいいのかなと考えます。
【内田委員】  例えば,先ほどの例で言ったようにマレーシアとか,それからフィリピンのようなところは11年間ですよね。そうすると,例えば1年間フィリピンとかそういうところで教育をして,あるいは2年間教育をして日本の大学の2年生に入れてくる,こういうものを考えたとしたら,これは海外キャンパスの制度の中で考えていくのか,それとも,今簡便なという,そのサテライトという形になり得るんでしょうか。
【白井大学振興課課長補佐】  御指摘のとおりマレーシアなどでは11年の教育課程ということで,現在,そのままでは日本の大学に直接入ることはできないということになってございます。そのため,一般的には準備教育課程に入学をしていただいて1年学習していただくという必要がございます。現行制度で海外において準備教育課程ということはなかなか想定し難い部分もあろうかと思いますけれども,今,委員がおっしゃいましたようなことも一つのアイデアとして,日本と海外との接続を考えていく上での一つのアイデアとしては十分考えられるかとは存じます。
【二宮主査】  ほかに御意見はありますか。しっかり賜っておきたいと思いますが,例えば大学のグローバル化,国際化戦略としての海外オフィスとか,これは今までも経験してまいりましたね。それが海外キャンパスとなると,ちょっとまだよくわからない点もありますし,更に今度簡便化するんだけれども,それは設置論としては簡便化するだけであって,ねらいはどうかということになってくると,海外サテライトも多分国際戦略としては有効性を持つでしょうと。他方で,もう一つ,今非常に大きなテーマは,グローバル人材の育成というか,日本の学生をどのようにしたらグローバル人材として輩出できるかという観点から,この海外キャンパスは余りそういう観点では考えなかったんじゃないかと思うんです。拠点は事務所オフィスですので,むしろ優秀な学生をと,留学生をと思っていると。だけれども,今グローバル人材の育成という観点から考えると,かなり同じ国際戦略の中でも,内田先生が今おっしゃったようなちょっとした意図がそこに入ってきて。だから,もっと積極的に日本の大学が学生を連れていって,そこでクロスカルチュラルな交流をもっと体験させて,日本の国内では難しいので海外でやらせて,やってもらって,それで人材論としては育成していこうと。同じ英語でも現地でしっかり使いながらやった方が学びやすいとか,そういう海外サテライトキャンパス論というのもあるかもしれませんね。少しずつ整理しながらやっていかないと,これは,ただ制度論で,簡単にできればいいんじゃないかとかそういうことになってしまうので,大学の人にとっても魅力あるかどうかわからなくなってくると思いますので,その辺,次回以降,許される時間の範囲内で議論させていただければと思いますが,よろしいですか。
【江川委員】  今回,新しく出された海外サテライトというコンセプトは,海外で教育をもうちょっと簡便にできるようにということだと思うんですけれども,そのときに大学の立場から大きく違うのは,要するにディグリーにつながるような教育活動をやるのか,あるいはもう少し軽いものなのかということです。例えばグローバル人材育成のために日本人学生を送り出す場合でも,インターンシップとかボランティアみたいなものや,あるいはサマープログラムなんかは短かったりするから単位を出さなくてよろしいと。サーティフィケートぐらいは出すかもしれませんけれども,卒業の単位に換算されないプログラムも含めて考えるのかというのが結構大きなポイントではないかと思います。私が以前勤めていたハーバード大学は,学位を出すものは海外でやらないと決めて,そのかわりに例えばエグゼクティブ向けの幹部研修みたいなものは逆に海外で一生懸命やって,それでサーティフィケートを出すという戦略をとっています。いろいろな組合せが考えられると思うので,そこを整理して議論していただければと思います。
【二宮主査】  それでは,大体12時が見えてまいりましたので,今頂いた意見などは,注文つけてしまいましたけれども,次回以降のワーキングで引き続き議論をするということで引き受けさせていただきたいと思います。
 では,最後に今後の日程について有賀さんの方からよろしくお願いいたします。
【有賀国際企画室長】  次回の日程につきましては,来年の1月中旬以降を想定してございますけれども,現在日程調整中ですので,追って委員の皆様にお知らせいたします。
【二宮主査】  それでは,本日の議事は以上で終了いたしました。どうもありがとうございました。

── 了 ──

 

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