組織運営部会(第7回) 議事録

1.日時

平成25年12月5日(木曜日)13時~15時

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学のガバナンスの在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)河田悌一部会長
(副部会長)北山禎介副部会長
(委員)帯野久美子,北城恪太郎の各委員
(臨時委員)奥野武俊,樫谷隆夫,金子元久,清家篤の各臨時委員
(専門委員)赤松洋子,有川節夫,石原多賀子,上山隆大,黒田壽二,小林雅之,田中愛治,森脇道子の各専門委員

文部科学省

上野文部科学大臣政務官,板東文部科学審議官,布村高等教育局長,小松私学部長,関文教施設企画部長,常盤高等教育局審議官,中岡高等教育局審議官,浅田高等教育企画課長,里見大学振興課長,豊岡国立大学法人支援課長,田中高等教育政策室長,吉田国立大学法人支援課企画官,白井大学振興課課長補佐 他

5.議事録

(1)国立大学改革プランについて,文部科学省から,資料1に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【河田部会長】  時間になりましたので,第7回の組織運営部会を開催いたしたいと思います。
 本日は審議まとめの素案ができておりますし,前回も検討していただきましたけれど,本日が恐らくこの部会の最後の会議になります故,それぞれ御出席の委員の方は,必ず一度は御発言頂くということでよろしくお願いしたいと思います。
 まず初めに,前回の会議で国立大学の改革の状況について事務局からの説明がありましたけれども,先週の11月26日に,文部科学省で今後の改革の方針や実施行程を示す「国立大学改革プラン」というものがまとめられました。それについて事務局から,御説明を頂きたいと思います。

【豊岡国立大学法人支援課長】  国立大学法人支援課長でございます。
 前回,国立大学の改革状況を御説明申し上げましたけれども,このたび11月26日に下村文部科学大臣からお手元資料1の国立大学改革プランが公表されております。これは今後の国立大学改革の方針,方策,それから実施の工程をまとめたものという性格でございます。
 資料が少し厚くなっておりますので,16ページ,17ページに概要をまとめてございますので,この16ページを御覧いただけましたらと存じます。この概要で御説明申し上げたいと思います。
 16ページ冒頭にございますように,国立大学は現在,第2期の中期目標期間でございます。一つのサイクルが6年ということで,法人化10年,今は第2期の後半にございますが,平成28年度から始まる第3期の目標期間におきましては,各大学が持つ強み・特色,これを最大限に生かして大学自らが改善・発展する仕組みを作っていくということで,持続的な競争力を持って,高い付加価値を生み出す国立大学へと変わっていただく必要があるというのが基本認識でございます。
 このために,その下の段に書いておりますけれども,今年から3年間,これを改革加速期間と位置付けておりますが,この改革加速期間には,左側に四つ書いてございますような強み・特色の重点化,グローバル化,イノベーションの創出,人材養成機能の強化,この四つの視点から一層の機能強化を進めてまいりたいと思っております。そして,その進捗を踏まえまして,第3期の期間におきます運営費交付金あるいは評価の在り方を抜本的に見直していきたいということでございます。
 今申し上げましたように,現在の第2期には機能強化に向けた組織の再編,資源の再配分を進めていただきながら,第3期には,そちらにオレンジ色で囲ってございますけれども,世界最高の教育研究拠点,全国的な教育研究拠点,地域活性化の中核的拠点という各大学の強み・特色,これが最大限に生かせるような機能強化をさらに進めることで,その下に赤のダイヤモンドの付いた部分がございますけれども,その六つの当面の目標を達成してまいりたいという考え方でございます。
 この改革加速期間の3年間に取り組む内容というのが,17ページでございます。出発点としてミッションの再定義というのを置かせていただいております。各国立大学に個性があるわけでございますけれども,社会の変化あるいは国民の皆様のニーズに照らして,各大学の強み・特色,社会的な役割が何であるかというのを改めて今明らかにしていただく作業を行っております。そして,これが今後の各大学の改革構想の基礎となっていくものでございます。現在,全大学を対象といたしまして専門分野ごとに実施してございますけれども,本年中には取りまとめを終えて,公表したいと考えております。
 その下,青の囲みの部分でございますが,これを踏まえて,社会の変化に対応できる教育研究組織作り,具体的に申し上げますと,各大学の機能強化の方向性に沿った組織再編を進めていくという考え方でございます。予算面でそのための重点的な支援を行い,また取組をしっかりと評価をしていきたいと考えております。
 その下に,ブルーで五つ,その視点が書かれてございます。機能強化の方向性の第1のキーワードとしてグローバル化でございます。海外大学のユニット招致ですとか,あるいは教育研究拠点の海外展開という国際化を進める大学の重点支援を行っていくということでございます。
 また,留学生交流に関しまして,日本人学生の留学を支援する官民が協力した新しい制度の創設ですとか,優秀な外国人留学生の戦略的受け入れなど,派遣・受け入れを共に倍増するということを2020年に目指しまして,質と量の双方の充実を進めていきたいということでございます。
 それから,イノベーション創出でございます。これが第2でございます。国立大学から大学発ベンチャー支援企業等への出資を可能にする仕組み,これを創設いたします。この内容を盛り込んだ産業競争力強化法案は昨日,国会において可決・成立いたしております。また,今年度中に理工系人材育成戦略を策定する予定でございます。
 それから,その右側でございますが,併せて人事・給与システムの弾力化ということでございます。国立大学の場合は,法人化後も従来の公務員型の人事・給与システムが維持されているというのが実情でございまして,研究者の流動性の向上ですとか人材の新陳代謝を進める上でも年俸制などの導入が重要と考えております。したがいまして,年俸制・混合給与の導入を積極的に進めてまいりたいと思っております。
 また,その際には同時に,研究者の方々,教員の方々の適切な業績評価を行う体制というものも整備してまいりたいと思ってございます。
 それから,その下にございますガバナンス機能の強化,これはこの部会で御審議いただいているものでございますけれども,この審議結果を踏まえまして,所要の制度改正や支援を行ってまいりたいという考えでございます。
 最後に,一番下の一番右でございますが,評価の体制強化。国立大学法人評価委員会に産業界など大学関係者以外からの委員を増やすなど,その体制の強化にも努めていきたいということでございます。
 以上がプランの概要でございますけれども,今後,このプランに基づきまして,各国立大学とともに積極的な改革に文部科学省としても取り組んでまいりたいと考えております。以上でございます。

【河田部会長】  16,17ページによりますと,「三つの方向性」というのがあって,その中で「六つの目標」があり,さらに17ページによりますと,「五つの視点」というのがあるということで,大変見やすく,分かりやすい案かと思います。そして,その後,きちんと工程表というのが18ページに付いていますから,3年間でどこまでやるかを示されていると,こういうことでございます。
 この件につきまして,委員の先生方の方で何か御意見がございますでしょうか。

【有川委員】  国立大学は10年目になるわけですけれども,この間,様々なことに取り組んでまいりました。そうしたことに対する,これは後押しだと思っておりまして,このプランを一つの根拠にしながら,更に改革を,あるいは改革を自律的に進めることを推進していこうと思っております。そういう意味では,非常にタイムリーに後押し支援を考えていただいていると捉えております。

【河田部会長】  また審議の中で御意見があれば,これからお話を頂けたらと思います。

(2)大学のガバナンスの在り方について,文部科学省から資料2-1及び2-2について説明があり,その後,意見交換が行われた。

【河田部会長】  それでは,次のテーマに入りたいと思います。前回,審議のまとめ(素案)を先生方に御議論頂きました。そして前回,御欠席であった委員からも部会の後に御意見を様々に出していただきました。それを参考にしながら案をより熟したものにしていただいております。
 今回御議論頂くこのまとめの案につきましては,委員に事前にお送りして,ほぼ先生方から頂いた御意見を踏まえた資料とはなっていると思いますけど,まだまだ御意見があると思いますので,御意見を頂ければと思います。
 さらに,パブリック・コメントも実施しまして,その中での御意見も,建設的な意見が多かったように受け止めておりますけれども,それらにつきまして事務局から御説明頂きたいと思います。

【白井大学振興課課長補佐】  それでは,資料2-1はこの審議まとめの案を概要として1枚にまとめたものでございます。基本的に内容は対応したものでございますので,本日詳細な説明は本文の方でさせていただきたいと思いますが,またこの概要につきましては今後各大学等に周知をする際に活用してまいりたいと存じますので,お気付きの点がございましたら御指摘をちょうだいできればと考えております。
 資料2-2が今回審議まとめ(案)でございます。前回の審議まとめの素案から骨組み自体は大きくは変わってございません。ただし,分かりやすくするための構造化,例えば小見出しを付けるとか,場所を変更するというようなことはこちらの方でさせていただいております。
 特に内容的に変動があった部分でございますけれども,大きく3点ございます。一つが,社会からの期待に応えるような大学改革ということで,あくまで大学人が外部から外圧によってやられる改革ということではなくて,大学人が新たな社会の変化に自主的・自律的に対応していくというトーンを強く打ち出してございます。
 それからもう一つが評価の視点でございます。認証評価,自己点検評価,あるいは国立大学の場合には国立大学法人評価というものがございますけれども,こうしたものを活用しながら,うまくガバナンスに関してもPDCAサイクルを回していくという点を盛り込んでございます。
 それから3点目でございますけれども,権限関係に関しまして,例えば表現の中で,本来審議機関であるはずの教授会にあたかも決定権があるような記述があった部分もございましたので,そのあたりの表現については全体に適正化を図らせていただいております。
 その他,各委員からの御指摘でありますとか,あるいはパブリック・コメントの意見を踏まえまして,文言の適正化等を図ってございますと同時に,また脚注に関しましては前回からかなり増やしてございまして,本文の中でやや細かいと思われる情報につきましては脚注の方に場所を移動したり,あるいは脚注を増やして,例えばインスティテューショナル・リサーチ(IR)という表現については,脚注の方で補足をさせていただいているということでございます。
 それでは本文の方でございますけれども,まずお開きいただきまして,最初のページでございますけれども,大学へのメッセージ,国へのメッセージ,社会へのメッセージということで,少し分かりやすく体裁を整えさせていただいております。
 それから目次を御覧頂きまして,8の(1)というところでございます。ローマ数字の第3章でございますけれども,大学評価を活用したPDCAサイクルの確立というものを各大学のガバナンス改革の推進についてという中で一つ小見出しを立てさせていただいております。
 その他,全体の立て方,立て付けに関しましては,1章,2章,3章から始まりまして,全体6章構成ということについては,変更はございません。
 1ページ,はじめにのところでございます。こちらは特に上山委員からも御指摘頂いたところでございますけれども,大学が大学を取り巻く社会環境の変化に柔軟に対応するということを見出しに盛り込んでございます。今,大学には様々な役割が期待されているところでございますし,また実際,各大学はその精力的な取組をされているという状況がございます。そういう中では,例えば社会との連携を深めるとか,あるいは資源配分を最適化するという観点から,大学自身が新しいガバナンスの仕組みを主体的に作り出していくということが不可欠であるということを最初の三つ目の○のところで明言をさせていただいております。
 また,1ページの下から二つ目の○のところでございますけれども,今,大学が国立大学,そもそも法人化という大改革をしたり,あるいは大学の教育情報の公表義務であるとか認証評価制度の導入という様々な改革がある中で,大学も多くの大学が必死に改革に取り組んでおられるところでございますけれども,ただ,そういう姿は必ずしも社会に十分に伝わっていない部分があるのではないか。
 また,同時に社会の変化が非常に激しく,大学に対する期待も大学の変化以上に早い部分,大きい部分もございます。より一層の大学改革を求める声も大きいため,大学がこうした社会の期待に主体的に応えていく必要があるということを盛り込ませていただいております。
 それから1ページの一番下でございますが,ガバナンスに関する定義ということで少し御意見を頂きました。このガバナンスという用語は非常に多義的でございまして,なかなか定義は難しい部分はございますけれども,この部会では特に教学と経営の観点から,法令上設けられている各機関,例えば学長であるとか教授会とか,そういう機関がございますけれども,そういう機関の役割であるとか,あるいは機関相互の関係性,これらを中心に議論を行ってきたということについて明記をさせていただいております。
 次の3ページでございますけれども,3ページの頭の見出し,この網かけの部分が,大きな主要な変更の部分を網かけさせていただいておりますけれども,この部会からのメッセージということで,改めて各大学のガバナンス改革はあくまで各大学の自主的・自律的な取組,そういうものを国や社会で支援していこうということをお伝えさせていただいておるところでございます。内容的に大きな変更はございません。
 5ページにお進みいただきたいと存じます。表の1番で「進みゆく大学のガバナンス改革」という資料を入れさせていただいております。これにつきましては,これまでのプレゼンを頂きました,例えば大阪大学や広島修道大学,長崎大学の事例をはじめとしまして,学長が積極的にリーダーシップを発揮されて改革に取り組んでいるという事例について集めさせていただいたものでございます。
 例えば大阪大学の場合には,人事の評価で年間最高600万円の手当を優れた教授に支給されているというような御発表がございましたし,あるいは長崎大学の場合には,学長が自ら学部長を場合によっては指名を受けているというような改革をされているということでございます。あるいはお茶の水女子大学の場合には,学長の任期4年目の中間時点で学長選考会議が学長の業務実績を評価されているというような取組がございます。こういう事例について,改めてこの資料を通じまして,各大学にも周知していければと考えてございます。
 それから次の第Ⅱ章でございますけれども,6ページから大きな変更点は基本的にございません。各大学のガバナンスに関する法令体系について整理をさせていただいております。この中で繰り返しこの図の1や図の2で御説明してまいりましたけれども,各大学のガバナンスについては,学校教育法に関する体系と,あるいは設置主体に関する,例えば国立大学法人法や私立学校法に基づく体系という二つの体系がある。そういう中で教育公務員特例法については,既に法人化された大学については適用を外れているという状況があるということについて改めて整理をさせていただいている状況でございます。内容的に大きな変更はございません。
 9ページからがコーポレート・ガバナンスと大学ガバナンスの違いについて説明をさせていただいている部分でございます。こちらについても内容的に大きな変更はございませんけれども,ただ,大学という組織は株式会社と違う面がある。また同時に,一方では,例えば権限と責任の明確化とかコーポレート・ガバナンスの考え方等が参考になる部分もあるということでございます。
 特に11ページの下から二つ目の○でございますけれども,権限と責任が一致ということは,あらゆる組織におけるガバナンスにおいて非常に重要なポイントであるということから,この後の展開においても非常に大きな部分になってこようかと存じます。
 12ページの3番というところでございますが,諸外国と我が国の大学ガバナンスについてでございます。こちらについても前回から大きな変更はございません。脚注を少し充実させていただいてございます。
 各国の大学のガバナンスを見ましても,アカデミックな事項については教授らに広範な権限が認められているという状況が確認できようかと思います。また,我が国の特徴としては,人材の流動性の低さでありますとか,あるいは特に学部段階での規模が非常に大きく,なかなか学長が全学的なリーダーシップを発揮するのが難しい状況にあるということを指摘させていただいております。
 15ページから第3章でございます。15ページの3の1,大学のガバナンス改革の目的という部分でございます。教育基本法あるいは学校教育法におきましても,大学は学術の中心にあって,教育研究を行って,その成果を広く社会に提供していくということが大学の目的として明記をされてございます。
 そういうことからしますと,15ページの真ん中の三つ目の○にありますけれども,大学のガバナンス改革の目的ということが,そもそも教育,研究また社会貢献という大学の機能を最大化するということに目的があるということを改めて整理をさせていただいております。
 また,大学は多様でございますので,こういう多様性を戦略的に確保していくという観点から,学内においても柔軟な資源配分というのが常に求められてくるということになります。
 次の16ページでございます。このあたり内容的には大きな変更はございませんけれども,16ページの一つ目の○でございますけれども,各委員からも多数御指摘を頂きましたけれども,ガバナンスというのはその各大学の歴史や伝統等にも根ざすものであり,非常に多様であるということについて改めて注意をさせていただいております。とりわけ,独自の建学の理念に基づく私立大学に関しては,極めて多様であって,それに対する十分な配慮が必要であるということを明記させていただいております。このあたりはパブリック・コメント等でも御意見を頂いているところでございます。
 ただ一方では,こういう大学に配慮しながらも,大学が社会から求められている責任を果たすための一定のガバナンスということについては,きちんと確保すべき責務を負っているということもまたその下の方で指摘をさせていただいております。
 16ページの2番でございます。ここからが学長のリーダーシップの確立という部分でございます。学長がリーダーシップを発揮していく上では,例えば長年の慣行によって,内部規則によって権限が自動的に学部に下りてしまっているような場合もある。そういうことについては,国の制度の状況などを見ながら各大学においてきちんと点検,見直しをしていただくということが必要になってございます。
 また,大学改革に当たっては,学長が教職員と丁寧に対話,コミュニケーションをしていただく。あるいは17ページの上の方にありますけれども,経営協議会であるとかあるいは理事会のような経営組織としっかり意思疎通を図っていただいて,経営面からもバックアップを得るということが重要であるということを書かせていただいています。
 その下でございますけれども,必要に応じて学生の意見を聴取していくということも有効であるということで,これはパブリック・コメント等で出た意見でございますけれども,入れ込んでおります。
 17ページの2の(1)学長補佐体制の強化でございます。初めに,今,大学は,例えば入試改革でございますとかグローバル化への対応とか,いろいろなことが求められているという中で,大学の学長に求められる責任,職務ということも非常に大きくなっております。
 そういう中で学長一人が,18ページの一番上でございますけれども,一人で改革を進めていくということは当然できないことでございまして,適切なサポートスタッフというのが必要になってくるということでございます。
 そのため,例えばの御提案でございますけれども,米国のプロボストのように,大学全体の予算,人事等の調整権を持って,学長を総括的に補佐できる副学長ということの設置も有効であると考えられるというところでございます。あるいは国立大学の場合には総括理事というような形も考えられるかと存じます。
 18ページの中段以下でございますが,高度専門職について触れている部分でございます。リサーチ・アドミニストレーター,あるいはインスティテューショナル・リサーチャーという様々な職種がございますが,こういう人材がきちんと学長を補佐していく,またこういう人材をきちんと採用して育成をしていくということが,これからの大学経営にとって,特に学長の補佐体制を強化するという観点から重要なところであろうと存じます。
 この点については,前回,なぜこういう人材が要るのかということをもう少し丁寧に書くべきというような御意見も頂きましたので,この網かけの部分で,学長がリーダーシップを発揮していくためには,大学執行部が各学部・学科の教育研究状況を的確に把握した上で必要な支援を行ったりとか,あるいは大学執行部自らが全学的な具体的な方針を打ち出していくためにこういう人材が必要になってくるということを記述させていただいてございます。
 例えば,組織の再編等を行うに際しても,どこが強く,あるいはどこが弱いのかということを学長が把握できないことには,なかなかそれもうまくいかないというようなこともございます。
 次の19ページでございますが,事務職員の高度化による教職協働の実現という小見出しを付けさせていただいております。こちらについて内容的に大きな変更はございませんが,委員の御指摘を踏まえまして,例えば事務職員に関しては,特に国立大学を中心に割合ジェネラリスト的な人事のローテーションが多いということがございます。短期間で様々な部署を異動するというだけではなくて,少し専門性の高いスタッフを養成していくという観点も必要なのではないかということから,網かけの部分を追記させていただいております。
 それから19ページの下の方ですが,IRの充実,また全学的な会議体の活用というようなことについては,前回からの記述のとおりでございます。
 20ページでございますが,(2)人事に関する学長のリーダーシップについての記述でございます。こちらも基本的な構図は前回から変わってございませんけれども,特に学長の人事権ということについては,配置の部分と選考の部分について分けて考えるべきであると。その上で配置については,基本的に学長がその大学全体の中での強み,あるいは弱み等を考えて,学長が判断すべき事項であるということを明確に打ち出しております。
 一方で選考につきましては,基本的には高い専門性を有する教員組織が合議制の機関において客観的な判断を行い,そういう教員組織の意見を十分考慮した上で学長が最終決定を行うということを20ページの一番下の○のところに記述させていただいております。
 ただ,この際に,前回,田中委員からもアメリカあるいはイギリスの事例について御紹介を頂きましたけれども,学長が例えば教授会での教員の資格審査が適切に行われているのか,例えば利害関係者がいないかとか,あるいは教育研究業績の確認が十分であるか,そういうことについて,そういう選考の手続であるとか内容についてきちんと関与するということは当然あってしかるべきであろうということも同時に書かせていただいてございます。
 また,21ページの最初の○でございますけれども,教職員の人事評価を行って,それに応じたきちんとした処遇をしていくということの重要性,あるいは若手の常勤ポストの拡充,年俸制の導入というような先ほど国立大学改革プランでも御紹介がありましたけれども,そういうことも記述をさせていただいてございます。
 21ページの(3)予算に関する部分でございます。予算に関してもう少し記述を充実したらどうかという御意見を前回頂いてございました。予算自体が人件費あるいは維持管理費等の固定的な支出が多いという性格はございますけれども,ただ,そこをいかに増やしていくのかというところがポイントになろうかと思います。
 21ページの下から二つ目の○でございますけれども,学長がリーダーシップを発揮して,どういう大学を目指しているのかということを,例えば卒業生や関係企業,地域社会等に御理解を頂いて,寄付金等を拡充していくとか,そういう形で大学執行部に自由度の高い予算を獲得していくことが重要であるということを書いてございます。
 また一番下の○では,その上で,各学部・学科の個性化に応じて,学内での競争的な資金とするなど,学長の下での最適な資源配分を行うための原資としていくということを書いてございます。
 22ページの一番上でございます。(4)組織再編等に関する学長のリーダーシップでございます。先ほど申し上げましたように,こちらも特に,例えば組織再編であるとか,あるいは定員の削減でありますとか,痛みを伴うような改革に対しては当然慎重な意見が出てくるということも考えられますが,そういう場合にはぶれない改革方針を学長が持っている,同時にIR等を通じて客観的なデータをきちんと示していくということが必要ではないかということを書かせていただいております。
 22ページの3番からが学長の選考・業績評価に関する部分でございます。この学長選考に関しましては,特に学長選考組織,国立大学・公立大学については法定されている組織がございますけれども,こういう組織を主体的に本当に選考が行われているのかどうかということをもう一度吟味していただきたいということを書いてございます。
 23ページの一番上の○にもございますけれども,学長選考組織が選考を行う際には,大学を委ねられる人材を獲得するために求められるべき学長像をきちんと明確にする,その上で候補者のビジョンを確認して決定するということが重要ではないか。現在の学長選考方法が本当にそういう方法になっているのかということを確認していただきたいということを書いてございます。
 また,アメリカなどにおいては,学長選考に際してはジョブ・ディスクリプションをあらかじめ示すということが一般的なようでもございますので,こういうことも参考になろうということを書いてございます。
 また,その後に国立大学法人等に関する学長選考について書いてございますが,私立大学についての規定がないという御指摘もございましたので,私立大学については,学校法人の役員である理事長や理事と,また学校法人が設置する各私立大学の学長というのは区別されているということを念のため明記させていただいてございます。
 23ページの(2)からは国立大学法人等における学長選考でございますけれども,こちらについては24ページの一番上の○にもございますけれども,現在,意向投票の結果が実質的にそのまま学長選考に反映されているような場合も見られるようでございますが,本来の国立大学法人法の趣旨からしますと,学内委員と学外委員をきちんと集めて,学内外の幅広い声を学長選考において取り入れていこうというのが法制度の趣旨でございます。もし現在の選考方法が過度に学内の意見に偏るようなものになっているのであれば,それは必ずしも適切とは言えないのではないかということを明記させていただいております。
 ただ,意向投票自体を否定するものではなく,あくまで選考会議,24ページの一つ目の○の一番下に書いてございますけれども,重要なことは,意向投票の結果はあくまで参考の一つであり,学長選考組織はその権限と責任において学長を最終的に決定するということを改めて各大学において御確認を頂きたいと考えてございます。
 24ページの下の方ですが,(3)学長の任期でございます。学長の任期について現在,法律におきまして国立大学・公立大学については2年以上6年を超えない範囲となってございますけれども,一部には再任ができないというような理解をされている場合もあるようでございますが,これは法律上も再任されることができると明定されていますので,改めて明記をしてございます。
 私立大学に関しては,学長選考に関する法律上の規定というのはなく,各大学の判断に委ねられているところでございます。
 この任期については,過度に短い場合には大胆な改革は困難であるので,中長期的なビジョンをしっかり描きながら改革に取り組めるような任期が必要だろうということを書いてございます。
 特に25ページの一番上ですが,アメリカのいわゆるリサーチ・ユニバーシティなどでは非常に長い任期,10年以上になるような学長が増えているということでございますので,こうしたことも考慮しながら適切な任期を設定していくということが求められると考えます。
 また,25ページの二つ目の○でございますけれども,学長選考組織において,任期終了時にそれまでの業績が非常に優れていると考えられる場合には,仮に1期目に学長選考組織が意向投票を行うことが適当であるというような判断をして,意向投票が行われていた場合であっても,例えば再任時には意向投票を行わないというような柔軟な手続というのを各大学の方でもお考えいただくということを御提言させていただいております。
 それから25ページの(4)学長の業績評価でございます。現在,学長選考組織については選任時のみの活動となっている場合もあり,それ以外は事実上休止状態になっているような例もあるようでございますけれども,本来一過性の職務ではございませんので,きちんと学長の業務執行状況,先ほどお茶の水女子大学の事例,4年の任期の2年目に業績評価をされているという事例も御紹介いたしましたけれども,きちんと学長の業績を評価していくということをお願いしたいところでございます。
 また,監事による監査についても,これも学長の評価の重要な柱の一つになろうということを改めて明記しております。
 26ページの一番上でございますけれども,ただ,この学長選考組織や監事,ただ評価するだけでなくて,基本的にはできる限り支援や助言をしていただきたいと思っております。ただ,それを行ってもなお十分な業務執行ができないような場合には,やむない場合には学長の解任を申し出るということが責務として求められてこようということを書いてございます。
 26ページの4番,学部長等の選考・業績評価の部分でございます。こちらも前回から大きな変更はございませんけれども,学部長というのは学部教員の代表であると同時に,全学の方針と学部の間の調整役としての役割も求められてくる。この学部長については,学長のビジョンであるとか大学の経営方針を共有してできるような方をそもそも任命することが必要だろうということを明記してございます。
 場合によっては,教授会での選挙の結果であるとか,あるいは持ち回りで学部長が行われているというようなこともあるようでございますけれども,その職責にふさわしい選考方法になっているのかどうかということは,また各大学においてきちんとお考えを頂きたいと考えてございます。
 それから27ページでございますが,5番の教授会の役割の明確化でございます。教授会についても少し場所の整理等はさせていただいておりますが,内容についての変更は基本的にございません。学校教育法第93条で重要な事項を審議するために教授会を置かなければならないと規定してございますが,この重要な事項ということが各大学の裁量に委ねられているということから,場合によっては教授会が経営的な事項にまで関与しているのではないかというような御指摘もあるわけでございます。
 ただ,これについてはそもそも一番最初の図の1でもありましたけれども,学校教育法自体が教育研究,教育面に関する法律であるという趣旨に立ち返って考えれば,この教授会の審議事項というのは当然,教育研究に関することに限られてくるということを改めてここで明記をしてございます。
 次の28ページでございますけれども,一番上の○でございますけれども,むしろ問題となるのは,最終決定権がある事項について責任を負わないような組織が決定することによって,権限と責任の不一致が生じるような場合ということになろうかと思います。具体的には,教授会が例えば事実上決定しているけれども,責任は学長や理事会が負うというようなことがありますと,やはりガバナンス上,最初にございました権限と責任の一致という観点からも問題があろうということになろうかと思います。
 そのため,28ページの真ん中の○でございますけれども,教授会については専門的な知見を持った教員から構成される合議制の審議機関であるということを踏まえると,学校教育法におけるこの重要な事項の具体的な内容としては,例えば教育課程の編成,学生の身分に関する審査,学位の授与,教員の教育研究業績等の審査というようなこと,こういうことについては教授会の審議を十分に考慮した上で,学長が最終的に決定を行うということが必要なのではないかという考え方を明示させていただいてございます。
 それから28ページの(2)でございますが,教授会の設置単位の再点検と書いてございます。教授会については一般に学部教授会とニアリーイコールで捉えられがちでございますけれども,そうはいいましても,この教授会の設置単位に関することについては必ずしも法律上の規定というのはございませんで,例えば大学によっては教育課程の編成委員会でありますとか教員の人事委員会とか,そういう機能別の教授会ということを組織している場合もございます。
 必ずしもそういう学部教授会という形でなくても,機能的に教授会を置くということも可能でございますので,こういうことについても十分視野に入れて各大学において御検討頂きたいと考えてございます。
 29ページの下の(3)からが教授会の審議事項の透明化でございます。この教授会構成員は一般的には正教授に限られている。場合によっては准教授や助教さん等に開かれている場合もございますけれども,非常に限られているということから,そもそも何をやっているのかということが外部に伝わりにくいということがございます。もちろん教授会が行う事項については,先ほどの事項にもございましたけれども,例えば学位の審査でありますとか,あるいは学生の入退学の審査でありますとか,そういうことについては秘密性が求められる事項もございますので,全部を公開すべきとは言えないとは存じますけれども,ただ,どういうことを審議しているのか,そういうことについては積極的に情報公開していってもいいのではないかと。
 実際に,30ページの下の注釈38番にもございますが,東京工業大学などでは教授会がどういう議事概要,議事を行っているのかということをホームページにも公表されているというような事例もございますので,各大学におけるこういう取組にも期待されようということを書いてございます。
 30ページの6番からが経営組織と教学組織との関係について整理をさせていただいたものでございます。大学の場合,そもそも教育研究を行う組織ということでございますので,なかなか経営事項と教学事項を明確に分けるということは難しい部分もございますが,ただ重要なことは,最終的に誰が責任を負うのか,その機関がきちんとその権限において判断をしているのかという部分であろうかと存じます。
 国立大学の経営協議会と教育研究評議会の場合でございますけれども,こちらもそれぞれの守備範囲というものが法律上は明記をされているところでございますけれども,実際には同じ案件が教育研究評議会にも,あるいは経営協議会にも掛けられているというような状況もあるようでございますので,法令上の趣旨にのっとって,きちんとそれぞれの部会において適切な審議がなされるような議事運営を行うということが改めて求められるかと存じます。
 また,特に経営協議会については学外委員が多く,なかなか出席できないとか十分なタイミングでの意見聴取はできにくいという部分もございますので,この経営協議会の審議事項である重要な事項というのがきちんと審議されるような形の運営を行うということを各大学にお願いしたいと考えてございます。
 また,国立大学の場合には,経営協議会の学外委員については2分の1以上と規定してございますけれども,ただ,この学外委員については,会議への欠席等によって実質的に学内委員中心の運営になっているという御指摘もございますので,この法律の趣旨を十分に踏まえて,経営協議会に学外委員の意見がきちんと反映されるような運営にするように配慮したいということも各大学ではお願いしたいと思います。
 31ページの中段,公立大学についてです。公立大学の場合には自治体との関係というのが一つ大きなところがございます。きちんと自治体と大学の間でお互いに理解と調和を取っていただいて,学長がリーダーシップを取りやすいように自治体の方からも支えていただくことが必要であるということを書いてございます。
 32ページですが,学校法人の理事会と私立大学についての関係でございます。学校法人の場合には,理事会が経営に関する最終的な責任を負うということが法律上も明記されてございますので,教学組織の意向を十分に酌んでいただきながら,その権限と責任において,例えば予算編成・配分でありますとか,教員や職員や学生の定員管理,組織の再編ということについては御判断をお願いしたいと思っております。
 一部には,教授会等が理事会の最終決定事項についても決定しているような場合もあるようでございますけれども,理事会から権限が委任されているということがない限りには適切とは言えないのではないかということを書いてございます。
 ただ一方で,理事会が教育研究に関する事項についてきちんと尊重していただくということもまた同時に必要でございます。例えば学生の入学判定とか卒業審査ということについては,きちんと教学組織の意向を尊重するということが求められてくると考えます。
 33ページでございます。7番,監事の役割についてでございます。こちらについても前回の御審議において,もう少し充実させたらどうかという御意見を頂きました。
 二つ目の○でございますけれども,監事がそれぞれのキャリア,いろいろな経験をされている方が監事になられていると思いますけれども,キャリアを生かして広範な業務に取り組むことができるように,そういう監事を広く学外を含めて求めるということが重要であると記述をさせていただいております。
 また,監事がその役割を果たしていくためには,きちんとした情報提供体制であるとかサポート体制をそろえると同時に,大学の規模等に応じて,可能であればできる限り常勤監事を配置するということをお願いしたいということを書いてございます。
 また四つ目の○でございますが,限られた体制の中で効率的な監査を行うために,例えばガバナンス改革でありますとか入学者選抜というようなテーマを設定したり,あるいは特定の学部・学科を対象にするというメリハリを付けた監査の工夫ということも考えられようかと存じます。
 また,この監事の監査,監査をして終わりということではなくて,この監査の結果をきちんと理事会であるとか学長が受け止めて,適切な改善を図っていくという責務を負うことに改めて留意をすべきであるということを書かせていただいております。
 33ページの8番,その他のガバナンス改革でございます。新たに追加した小見出しの部分でございますが,大学評価を活用したPDCAサイクルということについて書いてございます。既に大学については自己点検・評価,あるいは7年に一度の認証評価,国立大学法人評価という様々な仕組みがございます。この評価というのは大学のガバナンスの在り方を見直すための好機でもあると考えられます。こういうものをきっかけとして,改めていろいろな方の目が入ることで,より質の高い教育研究成果を発揮できるようなガバナンスにしていくということをお願いしたいと思います。
 また,こういう新しいガバナンスをスタートして,その成果について再度大学評価を受けるという形で評価を受けて,またガバナンスの改善を図るというサイクルを回すように大学にお願いしたいというところでございます。
 34ページの(2)FD,SDの推進,それ以下,人材の流動性の確保,経営能力のある教職員の育成,積極的な情報公開の推進と書いてございますが,内容的には大きな修正はなく,注釈の方を充実させていただいてございます。
 次の36ページからは第4章,国による大学ガバナンス改革の支援についてという部分でございます。こちらも基本的に大きな修正はございませんけれども,36ページの(1)の制度改正を通じた支援という部分でございます。国の法令というのは各大学の内部規則に優先するものでございますので,もし法令に適合しないような内部規則があれば,それは当然見直していただく必要がございます。
 37ページの一つ目の○でございますけれども,教授会につきましては,先ほどの方で申し上げましたように,専門的知見を持った教員から構成される合議制の審議機関としての教授会の趣旨に照らして,例えば教育課程の編成,学生の身分に関する審査,学位授与,教員の教育研究業績等の審査ということが,学校教育法93条に定める重要な事項の内容であるということを明確化するとともに,これらの事項については教授会の審議を十分に考慮した上で学長が最終的に決定を行うということについて,こういうことが明確化できるような所要の法令改正を行ってはどうかという御提言をまとめております。
 また,その次の○でございますけれども,IRであるとかアドミッション・オフィサーのような高度専門職の設置であるとか,あるいは恒常的な,こういう高度専門職を含めて,大学事務職員のスキル向上のためのSD(スタッフ・ディベロプメント)の義務化というようなことについても,法令改正を含めて検討したらどうかという御提言でございます。
 また任期についても,各大学の改革状況などを踏まえて必要な見直しを検討したらどうか。さらに,将来的には学長と学部長の関係,ここは学校教育法上も必ずしも明確でない部分もあるかもしれませんけれども,必要に応じて見直しを含めた検討を行っていってはどうかということ。
 それから37ページの一番下ですが,監事について現在,独立行政法人の方でも監事の制度について少し充実した改革にするというような動きがあるようでございますが,独立行政法人における改革の動向も踏まえて,国立大学の監事についても必要な制度改正を行ってはどうかというような御提言でございます。
 私立大学の場合には既に,平成16年の改正の際にかなり内容的には充実した法制度になっているという状況もございます。
 それから,常勤監事が少ないということから,例えば一定の規模を有する法人には1名以上の常勤の監事を置くというようなことも考えられようかと思いますが,こうしたことについては必要に応じて制度改正を含めて検討していけばどうかという内容になってございます。
 次の38番の(2),ここからは予算を通じた支援でございます。予算を通じたガバナンス改革の支援については,大きく三つの方向性を挙げてございますけれども,一つ目が学長裁量経費の拡充というところでございます。この学長裁量経費については,特に間接経費のものについて御指摘を頂いたところでございますけれども,この間接経費があたかも,ややもすれば競争的資金を獲得した研究者個人のお金であると捉えられがちな傾向もあるようでございますけれども,過去の第2期科学技術基本計画におきましても,この間接経費については,競争的資金をより効果的・効率的に活用するために,研究の実施に伴う研究機関の管理等に必要な経費を手当てするものであるというように,その趣旨は明確化されてございます。
 特に,間接経費についてはそういう性格のものであるということを改めて御認識を頂いた上で,学長がこの間接経費について特に競争性の高い分野に配分するというような工夫をお願いしたいというところでございます。ほかにもプロジェクト型予算の充実とか,そういうことも考えられております。
 39ページの第2点が,大学ガバナンス改革を含む教育研究活動等への支援ということでございますけれども,こちらについて内容は大きく変わってございませんが,私立大学の部分について少し内容を充実した書きぶりにさせていただいております。
 また,補助事業に当たっても,一定のガバナンス改革を要件とすることで,間接的にガバナンス改革の取組を支援していきたいと考えています。
 40ページの一番下(3)ですが,中期目標,評価や監査等による担保というところでございますけれども,ガバナンス改革は各大学が主体的に取り組むべきものではございますけれども,こういう自己評価,認証評価,中期目標等を活用して,環境の充実を進めていただきたいということを頭の方に改めて整理をしてございます。
 その他,大きな修正はございません。
 次の44ページが第5章でございます。社会による大学ガバナンス改革の支援についてというところでございます。大学に求められる役割の多様化,社会の理解・協力を得るための大学の努力,そして社会からの関わりの重要性と改めて小見出しを整理させていただいて,少し分かりやすい形にさせていただいてございます。
 また,「おわりに」のところも大きな修正はないところでございます。
 長くなりましたけれども,こちらからの説明は以上でございます。

【帯野委員】  今頃このようなことを伺ってよいのかどうか分からないのですが,国立大学と私立大学に対する書きぶりについて,「特に国立大学では」とか「ところが,国立大学法人では」とか「なお国立大学法人では」という,書きぶりがされておりますが,これは国立大学の場合,モデルケースが作りやすいという趣旨で書かれているのか,あるいは私立大学に比して国立大学は改革が遅れているという趣旨で書かれているのでしょうか。
 3ページ目の本部会からのメッセージの四つ目の○でありますが,2行目「特に国立大学法人については」,その次の行で「関係する内部規則等の見直しなどに着手し,早期に機動的な運営が行えるようにすべきである」とありますが,これは私立大学は既に内規が見直されているということで書かれているのでしょうか。
 例えば,その次も10ページ目の一番下の○ですが,「なお,国立大学法人の場合は」,真ん中ほど「国の関与は最小限にとどめられ」,その次の行「学長自らが,ステークホルダーを意識してガバナンス改革に取り組む社会的な責任がある」とありますが,これも,国の関与が最小限という意味では,私立大学は国の関与が少ないと思いますし,学長自らがステークホルダーを意識して改革に取り組む社会的な責任,これは国立大学も私立大学も同じであると思うのですが,まず,国立大学をモデルケースとして捉えているのか,あるいは改革が遅れているという前提で捉えているのか,その点を確認させていただけたらと思います。

【里見大学振興課長】  今回,全体といたしまして,やはり国公私,それぞれのガバナンスの在り方があるだろうという前提で全体をまとめていただいたと理解しております。
 その中で,国立大学・公立大学につきましてはそれぞれ平成16年に法人化をしております。その法人化によって法体系が変わったというところが私立大学とは少し違う事情があるという理解をしておりまして,この点において国立大学において,法律改正があったことを踏まえた全体の改革が必要ということで,どちらかといえばモデルケースとして書いてあることが多いと思っております。
 かつ,先ほど御指摘頂きました例えば3ページの下の○の二つ目でございますが,「特に国立大学法人については」という書き出しをしております趣旨は,国立大学ということだからではなく,第2期中期目標期間中に行うという,期間もどちらかというと書こうという趣旨でここは記述に原案を出させていただいている趣旨でございますので,そのように見ていただければと思います。

【帯野委員】  ありがとうございます。その趣旨はよく分かりますし,恐らくここにいる関係者は十分それは分かった上での審議だと思います。ただ,社会全体にそこのところが理解されていないというか,誤解を生むおそれがあるのではないでしょうか。以前もこの委員会で国立大学を先行させるべきであるという御意見があったと思うのですが,そのところは私も民間人でよく分かります。経済界で大学改革委員会を立ち上げたときに,一つは大学に対する理解が経営者には薄いということ。それからその次に,期待があるが反面,批判的であるということ。そして三つ目が,「特に」国立大学はということで,これは私もそうでありましたが,パブリックセクターだから遅れているという潜在的な意識でそういう見方がされることがありました。
 ただ,実際に,自分が国立大学に行ってみて,改革も進んでいますし,情報開示についても,決して満足とは言えないにしても,恐らく多くの私立大学よりは進んでいると思います。例えば,大学へのメッセージのところでも,国立大学は法令の正しい理解と教職員の意識改革をと,その次に同様に私立大学もであるとか,もしモデルケースで捉えるのであれば,国立大学に準じて私立大学もという書きぶりをした方が,ここでは全員が理解しても,社会に対して新たな誤解を生む原因になると思いますので,工夫した方が良いのではないかと感じました。

【清家委員】  大変目配りが利いた良い報告書になっていて,有り難く思っております。私ども私立大学はこれまでもいろいろな改革を進めてきておりまして,それをよく後押ししてくださる内容になっていて有り難いと思っております。
 また,特に,例えばローマ数字の3の1あたりで「独自の建学の理念に基づいて設立された私立大学においては,その歴史や伝統,規模や特色など多様であり,それに対する十分な配慮が必要である」ということを書いていただいていること。あるいはローマ数字の3の3あたりで,23ページ,「私立大学においては,制度上,学校法人の役員である理事長や理事と,学校法人が設置する大学の学長は区別されており,学長と理事長が兼務される場合もあるが,それぞれに適した資質・能力を有する者を選考する仕組みとなっている」ということを書いていただいておりまして,私立大学の独自の改革というのをきちんと書いていただいていること,有り難く思っております。まず河田部会長,北山副部会長の御尽力を大変敬意を表し,また多とするところでございます。
 その点で,今一つ,帯野委員の御意見でございますが,私は申し訳ないのですが,それとは異なる見方をしておりまして,これは釈迦に説法ですけれども,私立大学は以前から経営ということをやっていたわけです。理事会があって,その理事会と緊張関係の中で教学関係が活動していた。
 失礼な言い方になったら申し訳ございません。しかし国立大学には以前は経営というものはなかったわけですから,そういう面で申しますと,遅れているとか進んでいるという言い方はどうかと思いますけれども,私ども私立大学は以前からここに書かれているようなことを意識しながら改革も進め,苦労もしてまいりました。国立大学では法人化されて初めて経営という概念が出てきて,いろいろなことを進めておられるので,先に言われたような,国立大学も頑張っているのだから私立大学も合わせてというような言い方をされると,それは少し違うのではないでしょうかと申上げたいわけです。
 今まで私立大学が苦労してきたことをようやく国立大学も始められました。頑張ってくださいというのが我々の立場でありまして,仰せのような修文をされますと我々としては,特に私立大学団体の代表としては納得するわけにいきませんので,この点は反論させていただきます。

【帯野委員】  清家委員のおっしゃることもよく分かります。私は私立大学にも以前関与しておりましたので。ただ,やはり私立大学もいろいろ,そのように改革に取り組んでいるところもあるけれども,稚拙な運営をされているところもたくさんありますので,そもそも「国立大学が」「私立大学が」という,何かそういう特出しをするような書き方,「ところが」とか「しかしながら」というような書き方ではなくて,これが私立大学・国立大学共通の問題であるというような書きぶりはできないものでしょうか。
 ここで「私立大学が」「国立大学が」ということを議論しても,なかなか結果の出ないことでありますので,あまりどちらにも否定的でない,共通の問題としての捉え方の何か文章を事務局の方で工夫していただくということはいかがでしょうか。

【清家委員】  先ほど16ページのところの書きぶりを大変有り難いと申し上げましたけれども,「特に,独自の建学の理念に基づいて設立された私立大学については,その歴史や伝統,規模や特色など極めて多様であり,それに対する十分な配慮が必要である」,これに尽きると思うのです。
 つまり,もちろん国立大学は多様でなくてはいいとは申しませんけれども,私立大学はもともと志を持った者の寄附行為によって,その建学の理念を実現するために創られたものですから,そのガバナンスの在り方も含めて多様です。ですから,今,帯野委員が言われたように,いろいろな私立大学があるというのはまさにそれが正しいので,私立大学の在りようが一様であっては困るわけです。
 ですから,その点でやはり私立大学と国公立は違う。国公立は国が経営にも関与しているわけですが,私立大学はそうではないわけで,その意味で私はこの報告書について,この書きぶりがよろしいと思っています。

【樫谷委員】  非常に目配りがよく行き届いたという,清家委員がおっしゃるそのとおりだと思いますが,目配りが行き届き過ぎて,あまりにも配慮をし過ぎて,突っ込みが足らないのではないかと私は思っております。
 確かに私立大学というのは特別の建学の精神があって,清家委員がおっしゃるとおりだと思いますが,ただ,本当にそうやっているのか,ガバナンス,経営をやっているのかというと,やっているところももちろんあるのです。熱心にやっているところもあります。国立大学以上にやっているところもたくさんあると思いますが,世間の期待に応えていないところもたくさんあります。
 つまり,これは私立大学であろうと,国立大学であろうと,日本の高等教育の責任を負うという公共性の非常に高い存在なのです。それには義務があります。大学の自治と言われても,本当に大学自身でやっているのかということです。もちろん,やっているところもあります。そういう中,本当にこの報告書で応えられるのでしょうか。もっと一歩も二歩も突っ込み方が足らないのではないかと私は思います。
 いろいろ問題点も書いてあって,目配りも非常にいいのですが,もっと突っ込みが欲しいです。私立大学も国立大学も問題はあって,そこをしっかりえぐって,ここだと強調しないと,このようなきれいなことを書いても,役に立たないとまでは言いませんが,気になるところがあります。

【河田部会長】  どこがどう問題かについて,具体的に御指摘を願えませんでしょうか。

【樫谷委員】  例えば38ページのところの一番上に,監事のところでもありますけど,一番上に「私立大学については,法令上既に整備されている」とありますが,整備とはどういう意味でしょうか。本当に整備されているのでしょうか。整備などはされていません。規定はありますが,中身がないのです。このような書き方でいいのでしょうか。私は違うと思います。
 つまり,独立行政法人にしても,国立大学法人にしても,監事はきちんとと書こうとしている,整備されようとしているわけです。今の私立学校法の第37条の3項で,これで「整備されている」と言えるのでしょうか。これはミスリードです。
 パブリック・コメントでもそういうことを書いてあります。参考資料6のパブリック・コメントの3ページに書いてあります。「大学の不祥事を鑑みれば,理事長・理事会に対するチェック体制こそまず必要ではないか」と書いてある。整備されていれば,こういうことは起こらないのです。一番上でも「学長のやっていることを恒常的にチェックする体制についての検討をもっと行う必要があるのではないか」と書いてあるわけです,パブリック・コメントで。それをもう「整備されている」というのは,表現がおかしいと私は思います。
 私立大学の位置付けを私は否定するわけではなくて,非常に重要だから言っているのです。私立大学というのは建学の精神に基づいて自由にやる,国立大学よりもっと自由にできる。それは大きな特徴だと思います。ただ,残念ながらまだ弱いです。私は私立大学にもっと国の経費もどんどん投入しなければいけないと思うのです。私立大学の中にも,経費をもっと投入していい大学もあるのです。ただ,投入して本当にできるのか,何か消えてしまうのではないか,無駄に使われているのではないか,使われてしまっているのではないかという懸念があります。そこをしっかり解決してもらいたいと思うのです。

【河田部会長】  私ども日本私立学校振興・共済事業団の方で,いわゆる私学助成金を配分するときに,問題のある私立大学については,きちんと精査しております。定員を取り過ぎているとか,管理運営がおかしいというところにはきちんと減額をしたり,それから問題を起こした大学,学園に対してはそれをきちんと助成金を止めたり,そういうことはきちんとやっていますから,一,二の不祥事があることによって,私立大学全体を否定するような御発言はどうでしょうか。

【樫谷委員】  いや,違います。それを私が言っているのではなくて,不祥事があったのは当たり前です。国立大学であっても同じです。そうではなくて,きちんとやっていない,もっともっと改革しなければいけない。そういう努力を本当にしているところと,していないところとがあって,していないところはもっと努力してもらわなければいけない。そこのことを言っているわけです。もっと改革しなければいけないと,教育再生実行会議などでも言っているわけですが,これで本当にいいのかと,目的は合っているのですかということです。

【里見大学振興課長】  すみません,少し説明させていただきます。37から38ページのところは監事について規定をされているところでございます。監事の,これは法令的に整備がどうされているかということを比較した部分でございまして,国立大学の監事については,例えば監査報告書を作成するであるとか,あるいは法令違反があった場合に学長に報告をするであるとか,こういう内容が現在国立大学法人法に記載されていないということを前提とした上で,このような書き方になっているということでございます。
 全体の今のお話の流れからしますと,この報告書自体が法令的に整備をされていることと,実体的に行われていないことで改革しなければいけないことということを整理させていただいているつもりでございまして,ここは法令的にある意味整備をしなければいけない部分を書いた部分でございます。ほかの,では,それに合わせた形で実体運営ができるかどうかというのは,今後大学の自律的・自主的な改革に期待するという全体のトーンで整理をしていただいたものと理解しております。

【樫谷委員】  もう一度よく私立学校法第37条第3項と,国立大学法人法と独立行政法人法の監事と,よく研究してください。研究された上で言うならいいですが,全くの誤解だと思います。

【帯野委員】  これはもうこれぐらいで終わりにしないといけないと思いますが,一つだけ,他の中教審の会議でもそうですが,やはりここで成功している私立大学,国公私を問わずですが,うまくいっているところだけがうまくいっているという前提で話をしても仕方がないと思うのです。やはり,社会にそれだけの批判というか,問題意識があるので,私たちが諮問を受けているという前提で審議を進めていかないと,今既にうまくいっているというところで,成功している人の間で結論を出すというのは違うのではないかと思いますので,そこの意識ははっきりしておいた方がいいと思います。

【田中委員】  日本の大学全般に改革が必要だということはこちらの委員全員が一致しているところだと思います。私立大学と国立大学も改革が必要だというところも同じだと思います。私は条文のことは分かりませんので,私立学校法37条のところは触れませんけれども,その書きぶりや理解の仕方がどうかというのは御指摘のとおりかもしれませんけれども,私立大学で改革が遅れているのではないかという御意見がございました。

【樫谷委員】  全部遅れているというわけではありません。大変進んでいるところもあります。

【田中委員】  ええ,もちろんあります。ただ,私立大学連盟の会議がありまして,それに出ていますと,様々なところが研究事例を発表しますが,驚くほど,私が認識していた以上に細かい,随分先進的な改革をしているところが幾つもあります。例えば学生数が3,000名であるとか2,800名であるとか,若しくはもっと少ないところ,6,000名ぐらいの中堅のところもありますけれども,いわゆる六大学と言われるような大学や,関関同立と言われるような有名私立大学ではなくて,大変小規模の地方都市にある大学でもびっくりするようなことを随分工夫されているところがありました。
 それは帯野委員がおっしゃるように成功している事例なので,それを取り上げてもしようがないというのはおっしゃるとおりですが,一般的に遅れているからもっと突っ込んだ方がいいということではなくて,やはり成功しているところでも,それから日本の国立大学のトップレベルであっても,それからボトムのレベルであっても,日本の大学として全般的に改革が遅れているという,だからこそこういう議論をさせていただいていると思いますので,あまりそれを私立大学,国立大学と差別することは改革全般についてはないと思います。
 ただ,清家委員もおっしゃっているとおり,私立大学には私立大学の在り方がありますし,独立行政法人化ということはなく,もともと私立の学校法人として来たわけですから,そこの扱いが異なるのは当然だろうと思っておりますので,私立大学も問題の多いところがあるというのは,私も今の大学で四つ目の私立大学でして,大学の規模も違えば,知名度も違うところを随分見てまいりましたから,非常に問題のあるところもあることは分かっておりますので,ただ,それを何か差別的にするとかいうのはいかがなものかと思いますので,やはり全般として日本の大学の,大学分科会の会長の安西分科会長も,今の日本の大学はやはりボリュームレベルのところでこのままではまずいと,国際的に立ち遅れる可能性があるということで盛んに危機感を持っておられたというのは全く同感です。
 ですけれども,あまり私立大学だからとか国立大学だからということでこだわるのはいかがなものかという気はしております。

【上山委員】  今の議論とは少し違う形で,まとめ案に戻って,少し私の感じたところを申し上げさせていただきたいと思います。
 前回の議論を踏まえて随分手を入れていただいて,より充実したものになったと感じているというのが,まず全体の印象です。その上で私が申し上げることは,この委員の先生方がそれをどう受け止めているか,あるいはまた事務局がそれを入れるかどうかは別にして,感じていること,考えたことを三つばかり申し上げます。
 まず1は,コーポレート・ガバナンスとの関係を論じているところです。ガバナンスの問題を議論するときにどうしても,当然ながらコーポレート・ガバナンス,つまり企業の自己統治との関係を念頭に置かなければならないのは当然であり,かつ大学はそれとは違うという表記も極めて正しいと思います。
 同時に,実は何回か前のこの部会で申し上げたのですが,ガバナンスの問題を考えるときには単に大学のマネジメントとか,あるいは大学の内部の問題だけではなくて,やがてこの問題はより大きな社会的な責務の問題とぶつかっていくだろうという認識を持っております。
 以前にお話をしたのは,80年代のアメリカが大学の財務を改善するときに,大学の基金をどのようなところに投資するのかということに関して,アパルトヘイトをやっているような南アフリカの企業には投資すべきでないという議論が盛んに行われました。そのときに議論されたのは,公共的な使命を持つアカデミアがどのような自己統治を行うかという意識であったと思います。
 そういう意味では,私は最近使い始めているのですが,コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティ,つまりCSRに準じるような形でアカデミック・ソーシャル・レスポンシビリティ(ASR)と呼んでいいでしょうか,という概念を使ってもいいのではないかと思います。当時議論されたのは,ソーシャル・レスポンシビリティ・オブ・インベストメント,投資の社会的責務という問題でありました。恐らく大学発ベンチャーとか,あるいは国立大学あるいは私立大学も含めて大学の基金の商業的な活動が活発になってきたときには,やがて間違いなくその問題にやがてぶつかるだろうという予測を持っています。
 そのときに,アカデミック・ソーシャル・レスポンシビリティという概念をコーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティと対峙する形でどこかの形に入れておくということは,将来的な目配りになるだろうというような印象を私は持っております。ですから,例えばコーポレート・ガバナンスのところにそのような概念をひょっとしたら入れておくこともいいのではないかというのが私の一つの提案です。これはもちろん採用していただくかどうかはあくまで委任をいたします。
 もう一つの点は,全体を通して私がもしできれば入れてほしいと思っているのは,大学間の競争という概念です。特に15ページ以下にあるガバナンス改革の目的というところのあたりに入れることはできませんか。大学のガバナンスを明確化していき,それに基づく大学の責務を大学各自が議論していくということの射程の向こうには,研究大学が特にそうなのですが,大学間の競争を活性化させていくという将来の目的を見据えなければいけないのではないかという気が私は強くしております。
 残念ながらこの報告書の案の中には,大学間の競争という文言が一度も出てきていない。国立大学をはじめとして,もちろん私立大学もそうかもしれませんが,ガバナンスが非常に遅れているということは,それはやはり国内における大学の競争があまり活性化されていないためにグローバルな意味での競争力を失っている,そこにつながっていくと思うのです。
 そういう意味では,どこに入れるかはもちろん御判断にお任せしますけれども,この目的のところあるいは別のところでも構いませんが,大学間の競争を活性化させていく一つの手段としてガバナンスの問題を捉えるのだというような意識がどこかで盛り込まれていけば,よりいいだろうと思いました。
 もう一つ,最後の点は大学の資金の問題ですが,これは私の言葉ではなくて,最近,JSTのCRDSの人たちがインスティテューショナル・ファンディングという概念を考えておられます。それは,競争的資金の中で,ある一定の割合をその大学本部なり改革を行っているところに優先的に配分するという考え方です。科研費も含めてですが。間接経費の問題はここの中でも随分議論させていただきましたけれども,それだけではなくて,例えば非常に強いビジョンを持っているような大学,あるいは改革に邁進しているような大学に関しては,インスティテューショナル・ファンディングというような概念でもって資金的にサポートをしてやるということもあるのではないかと,これは非常にいい概念だと私は思いました。
 この言葉を採用するか,概念を採用するかどうかももちろんお任せしますけれども,やがてそういう議論が出てくるだろうという予想を持っています。そういう意味で,こういう審議の案の中に将来的な方向性としてその文言を入れておくというのも,とても説得的になるのではないかなというような感想を持ちました。
 以上三つの点を申し上げて,私の意見とさせていただきたいと思います。

【河田部会長】  ありがとうございます。上山委員からは具体的かつ建設的な御意見を頂きましたので,是非まとめの文面にうまく入れたいと存じます。

【森脇委員】  このまとめを読ませていただいて,冒頭から国立大学,公立大学,私立大学,それからまた規模,その実態が随分違うところをどのように議論を進めていくのか,まとめていくのかということで,私どもも大変苦慮いたし,議論が拡散していたり,あるいはどこかだけがとがったような議論になっていたような気もいたしますけれども,大変目配りを行き届かせて,まとめていただいていると私は感じました。法令の面からも実態の面からも両方とも,この中にこれだけのものを入れるのは大変なことだと私は率直な感想を持ちました。
 それで2点ばかり,前回も議論になったのかもしれませんが,大学のガバナンス,これは相当きちんと押さえられているように思うのですが,学長のマネジメントや教学のマネジメントという文言はリーダーシップという言葉に変えられたと理解してよろしいのでしょうか。前もリーダーシップはリーダーシップであったと思いますが,マネジメントという言葉は全部消えているように思うのですが,ガバナンスとの関係で少し分かりにくいということでなくされたのかと思うのですが,それはどのように受け止めればよろしいのでしょうか。

【白井大学振興課課長補佐】  前回,ガバナンスとマネジメントの関係についての御指摘も,更にリーダーシップについての御指摘もございました。ただ,ガバナンスについては最初の脚注のところで,基本的には各機関の役割,あるいは各機関相互の関係性ということで整理をさせていただいておりまして,マネジメントについては各学長,機関等が具体的にどういう執行をしていくのかという観点から,一部にはマネジメントという用語も残させていただいております。
 例えば14ページの一番上とか,「大学のマネジメントに携わるような学長,副学長」という表現で,特にマネジメントという表現を全部整理したということではございません。

【森脇委員】  ありがとうございます。前回の御議論とその対応について理解できました。一言付け加えさせて頂きますと,パブリック・コメントのところにも出ておりますように,まだまだガバナンスというものの捉え方が明確になっていない,学長や学部長のガバナンスについてもしかりです。もっと学長や学部長による業務それぞれの執行のところでのマネジメントを重視することが私は大変大事な点だと思っております。あまりにも今まで大学の中にマネジメントという概念がなかったということでもありますので,これは今後の課題として私ども大学人が構築していく,あるいは大学におけるマネジメントを生み出していく,これは大変重要なことであります。それをコーポレート・ガバナンスとか,そういう形で簡単に持ってこようとか,あるいはここは使えるから簡単に取り入れようというような発想ではなく,日本の大学の実態に合った形でのマネジメントを創り出していくということがとても大事なことではないかと思っております。
 あと一つは,細かいところですが,今の内容ともつながるところですが,18ページの学長補佐体制の強化という記述のところです。ここは大事で,充実させていく必要はあるものの,これは規模とか様々な大学の実態によりまして,それに合った形での整備が大事なことではないかと思いますので,文脈からそのように読み取れるのですが,しかし,ここだけを読む人もいますので,「学長を補佐する相当規模の充実した体制を」とあるので,ここは「補佐する充実した体制を整備することが極めて重要である」くらいでよろしいのではないかと思いました。
 つまり,今,マネジメントとどこかつながると申し上げましたのは,何かこれだけが大事だということになりますと,今までなかった企画室などを作り,様々な有能な人材を採用したり投入し,それが充実したら大体どこもうまくいかなくなるとか,硬直化するおそれがなきにしもあらずです。
 やはり一言でこれは大学のガバナンスです,往々にして光と影ではないですが,これは企業であっても起きやすいことだと思われます。これは大事だといってそこに投入しますと,そこばかりが整備されて,調査のための調査だったり,分析のための分析だったりというようなことに陥らないとも限りませんので,あまりにここだけを強調し過ぎてしまうのは,私はいかがなものかと思いました。
 いくら分析だけしていても何かブレークスルーが起きたりとか,新しい物が発想されるということは考えにくいように思います。全体の中でそれがどう生きるかということではないかと思っております。以上です。

【北城委員】  ありがとうございます。前回の議論を踏まえて書き直していただいたので,基本的な方向として, 私はこれでいいと思います。その上で幾つかコメントしたいと思います。
 まず,24ページの下から二つ目の○で「学長選考組織の構成員には,地域関係者,卒業生,保護者にも人材を求め,大学のステークホルダーが幅広く参画」とあります。これはそのとおりで,アメリカでの学長選考会議などを見ますと,理事会とか教員組織,卒業生や職員等,幅広く人材を求めています。一方で日本の国立大学は,23ページの一番下の○に書いてあるように,学長選考会議は学内委員と経営協議会に属する委員が同数から構成されるという仕組みです。この結果,学内の教員と,それからアメリカの理事会に相当する経営協議委員会だけで構成され,なおかつその数も半々ということになっています。学内の,多分学部長が入っていると思いますが,ここを直そうとすると,法律改正か省令改正等の対応が必要になると思います。もちろん,学長選考会議に現職教員と経営協議会の方がいていいのですが,その大学の将来の発展を重要視する卒業生もかなり入れていくべきだと思います。ここを今後どのように扱うか,文部科学省で考えていただけたらというのが1点目です。
 次は28ページの最初の○ですが,この文章の書き方でも分かるということかも知れませんが,最初の○の下の方,「各大学において,教授会の役割に関する内部規則等について,総点検・見直しを行うことが必要である」とあります。多分「見直し」というのは,教授会には決定権がないという趣旨で見直すと書いていると思うのですが,そうであれば,教授会には決定権があるという内部規則については見直しが必要であるとかはっきり書いた方がよいと思います。何を見直すのかがよく分からないので,ここははっきり教授会は決議機関ではないということを表明できるように書いた方がいいと思います。
 3点目は31ページです。31ページの上から二つ目と三つ目の○に関係するのですが,「経営協議会で審議することとされている経営に関する重要事項が,適切に審議される運営を行うことが適当である」と書かれています。しかし,経営協議会で審議をしてもなかなかそれが大学の運営に反映されない理由の一つが,次の○で書かれているとおり,「経営協議会の学外委員を2分の1以上と法定している」ということです。この2分の1以上に関して,実態はほとんどの大学で同数なのです。法律の趣旨を十分に踏まえて運営するという意味が,外部の意見を尊重しながら運営をすべきであるということであれば,これも法律改正に係るのかもしれませんけれども,学外委員を過半数にするということを検討していただきたいと思います。
 外部の意見が重要だということであれば,恐らく,半数以上と書いたときは外部の人の方が多いというつもりで書いたのではないかと思います。しかし現実には同数の大学が非常に多いので,ここの記述も今後の検討をお願いしたいと思います。
 それから4点目ですが,37ページの最初と次の段落に「制度改正を受け」とか「法令改正を行うべき」と書いてあります。表現としてはこれでいいと思うのですが,学校教育法の93条に「大学は重要な事項を審議するために」とある規定で,審議というのは決議でないというのが学校教育法の趣旨だと文部科学省から伺っていますし,そういう理解で運営すべきだと思います。一方で,9ページとか12ページ等を見ると,国立大学の法人化はもう10年も前に行われたけれども,なかなか意識が変わらないという状況があり,省令を変えるだけで本当に大きく意識が変わるのだろうかという心配があります。スピード感をもって意識を変えるためには,学校教育法の93条も,審議ではなくて,「教授会は学長の諮問機関とする」と変えていただいた方が大きな変化が出ると思います。
 今回の提言には法令改正を行うと書いてあるのですが,どう法令改正を行うかということがはっきり書いていない。最終的には文部科学大臣とか国会等で法令改正を審議することになるので,我々の方で変えられるわけではないのですが,私は学校教育法の93条も変えていただくことによって,迅速に今回の提言の趣旨が実現できるのではないかと思います。
 あと文言の問題ですが,12ページの二つ目の段落の最後の方に「教授会が意見調整の機能を持つべきことまで否定されるべきものとは言えない」とありますが,この点は誰も否定していないので,この文は必要ないのではないでしょうか。意見調整のために教授会があること自体に誰も反対はしていないと思います。
 あと,学部長の選任について,26ページ下から二つ目の○の一番下に「候補者が適切でないと考える場合には,選考のやり直しを求めるなどの方法も検討すべきである」とあります。これは例示なのでしょうし,「例えば」で入れられているので,こういうこともできるということを示されていると思うのですが,この文章のように,学長の選考に関して学部にやり直しを求めると,結局いつまでも学部にやり直しを求めているような格好になってしまうのではないでしょうか。本来は学長に権限があると思うので,「学長や理事会が学部教授会に複数の候補を示すように求める」くらいの例がいいのではないかと思います。それ以外の方法もあると思いますし,現在の教員が推す学部長以外の学部長を学長が選任することもあり得ると思うのです。そのような選任ができなくなるような例は示さない方がいいのではないかということです。これは例えばなので,別にこれだけを決めてはいないのでしょうが,私はそのように思います。以上です。

【小林委員】  今の北城委員の意見ですけれど,教授会を諮問機関にするということについて,これは先ほども説明にあったように,各国の大学でそこまでやっているというところはほとんどないわけでありまして,ここでの議論も権限と責任を明確化するという議論だったと思います。そうしますと,教学と経営というのはきちんと権限と責任を明確化するというのが議論の趣旨でありますから,諮問機関にするというのは,権限と責任というのを逆に教授会にはないとするということになりますので,そういう今までの議論の流れからいってどうなのかというのが第1点目です。
 それから第2点目として,そもそも論ですけれど,やはり最初に出てきましたように大学の公共性とか社会的責任ということを言うためには,やはり大学は国公私立大学も税金を使っているということをもう少し明確に書いていただきたいということです。その上で社会的責任がある,あるいは逆に言うと大学は社会的に貢献する責務があるということをはっきりさせていただきたいということです。
 これは,どこまでガバナンスのことで議論するかというのはよく分からないところがあるのですけれど,たしか前期中教審の積み残しのテーマとしては,大学の財務基盤の強化とガバナンスと短大という三つだったと思いますけれども,短大はワーキンググループを作られるということですけれど,財務基盤の強化というのがまだ議論としては不十分ではないかと思います。
 上山委員からかなりいろいろ言われましたけれど,全体として財務のことは議論しているかというと,それほど議論が尽くされているとは思っていないのですが,そういう前提の上で,先ほど河田部会長は上山委員の御発言を反映させるとおっしゃったので,少し加えますが,私も大学間競争は絶対必要だと思っております。
 ただ,それをやるためにはやはりフェアな競争でなければいけないわけでありまして,今のような形で本当にフェアな競争が大学間でできるかということについては,前提条件を十分考えなければいけないと思っております。特に財務基盤が弱い大学と財務基盤が強い大学が一緒に競争してうまくいくかということは非常に疑問がありますので,そのあたりをもう少し今後議論する必要があるのかと思っております。それが2点目です。
 それから3点目ですけど,これも今さらの話で恐縮ですけれど,戦略的計画ということがアメリカの大学を中心に非常に言われているわけですけど,そのことがなかなか文言として結果として入っていないということでありまして,これは大学の方向性を示すということで非常に重要なことだろうと思います。そのあたりのことをどこかの形で入れていただけたらという,これはお願いです。
 国立大学は中期計画を持っているではないかと言われるかもしれませんけど,中期計画と戦略的計画は似て非なるものでありまして,中期計画というのは全てのことについて網羅的に出すわけですけれども,戦略計画というのは大学の方向性を示すものですから5点ぐらいのもので,そのかわりこれは必ず実行しましょうというものを出すわけですので,そういうものをどこかでガバナンスの中に入れていただければと思います。もちろん中期計画と戦略的計画は整合性を取るということが大前提ですけれど,議論の中でそれが消えてしまったような気がしますので,できたら入れていただきたいです。以上です。

【北城委員】  1点だけ宜しいでしょうか。今,小林委員の言われたことですけれども,責任と権限というのは一体で負うべきというのが全体の趣旨であり,その点で教授会に責任を取れるのかということが論点となり,最終的に責任を取るのは学長であり学部長であるということだったと思うのです。
 それから,今の93条にある重要な事項を審議するという意味は,あくまで議論することであって,最終的に結論を出して責任を取るのは学長とか学部長であるということです。教授会が決定権を持つという今の小林委員のような表現を多くの人がすること自体が誤解を生じる基ではないかと思うので,そういう意味ではっきり諮問機関と書いた方がいいと申し上げたわけです。小林委員が「いや,教学と経営と分けて,教学については教授会が決定権を持つ」と言われたので,それは本来の趣旨と違うのではないかと思います。

【小林委員】  これはなかなか難しい問題でありまして,先ほどの言い方は少し簡略過ぎたかもしれませんけれど,確かに最高責任はアメリカの大学の場合でも理事会にあります。それは間違いのないことです。ただ多くの場合には,その権限,特に教学に関することについては教授会あるいは教員組織に委ねられている,そういう意味で申し上げたのです。

【北城委員】  委ねるのは構わないのです。権限を持っている人が教授会にそういうものを委ねることは構わないと思うのですが,要は,最初からそこに権限があるという規定がおかしいということです。

【小林委員】  ただ,逆に北城委員の御説明ですと,それは諮問機関にすると明確におっしゃられたので,そういう形にすると権限は全くないということになってしまうのではないかということを申し上げたのです。

【北城委員】  それは学長がどう運用されるかであって,諮問機関の決定を重視して決めれば,それでいいと思います。

【金子委員】  私は諮問というのは,明らかに学長ないし学部長が一定の問題を設定したときにどのように判断するかというのを答えることだと思います。しかも,そのときにその議論の結果に従うということは必ずしもあり得ない,参考にするだけだということです。
 しかし,特に教育,学術に関しては,教授会はやはり専門家としての独自の観点があって,それに基づいて判断をするわけです。しかもその際に,何らかのことを諮問されているだけではなくて,自ら現在行われている教育について問題がある。これについて自ら問題を発見したので,これを改善したいという場合も当然あるわけでありまして,必ずしもそのように消極的な役割だけを持っているわけではない。そういう意味で,専門家が非常に積極的な役割を果たし得る組織であることが大学の特質だと私は思います。
 おっしゃるように,完全な決定権を教授会が持つというわけではおのずからありませんし,学校教育法にもそう書いていないわけでありまして,そういう意味を私は審議という言葉で表していると思います。そういう意味で,この際に諮問にまで進めてしまうのは私は行き過ぎではないかと思います。

【河田部会長】  この問題はまた後で御意見をいただきたいと思います。

【黒田委員】  今朝頂きましたこの審議まとめ,大変よく我々としてはまとまっていると思っております。ここまでよく皆さんの意見を取り入れてまとめてくれたと思っているところであります。
 特に,先ほどから国立大学と私立大学の違いを明確にし過ぎているような書きぶりだということでありますが,これは国立大学も法人化された段階で,教職員は非公務員になり,教育公務員特例法の適用外とされたにもかかわらず,旧の国立大学の学則をはじめ学内の運営規則等が改正されていないことが混乱を招いています。ですから,教授会の権限も旧規則のままで現在来ています。学長のリーダーシップの在り方と,決定権を持たない審議機関としての教授会(学校教育法93条)の在り方との関係をどのように構築していくのかという,学内規則整備にあると思うのです。
 特に私立大学の場合は戦後学校法人の体系ができて,私立学校法の改正というのは平成16年で17年から施行されています。その中には,理事長の権限や理事会の機能,評議会の機能,監事の機能が全部強化されて整備されているわけです。樫谷委員はまだ完全でないと言っておられますけれども,一応法的には整備されて,それをどう今後運用するかということで各学校のレベル差があるというだけのことなのですが,国立大学の場合は根本的に違っている,それをどう整えていくかという,それをやらないと,大学間の競争もあまりうまくいかないし,国際的にも信用度が上がってこない,そういうことがあると思います。
 学長補佐体制のことですが,17ページに書いていただきました。これは我々私立大学としては望んでいた方向に修正をしていただいたので有り難いと思っています。
 私が属しています私立大学協会で,教学に関するガバナンスの在り方,調査をして,24年度のデータでありますけれども,私立大学協会加盟の私立大学393大学の調査をしたときに,学長を補佐するための副学長を置いている大学がどれぐらいあるか,また補佐体制ができている大学はどれぐらいあるかというのを調査しました。その結果,教員が副学長になっている大学が209大学,それから事務職員が副学長になっているのが10大学あります。それから,学長を補佐する体制,学長補佐制度を作ってマネジメントをやっている大学では,教員が補佐をしているのが89大学,それから事務職員が補佐をしているのが16大学であり,学長一人でやっておられるところが93大学ということであります。
 私立大学協会の加盟大学は沖縄から北海道までいろいろな規模の大学があります。それも入学定員が100名満たないところがたくさんあるわけです。それらも1大学として地方で活動しているわけです。学長の補佐体制や副学長を必置義務化しますと,それはできない大学もでてきます。本審議まとめでは,学長がマネジメントするうえで,どのような補佐体制を取れますかという程度で書かれていますので,各私立大学が今後改革する上では非常にいい指針になっていると私は感じています。この報告書の書きぶりというのは非常に私立大学にとっては有り難いと思いますし,本当に前向きに各大学でこれを熟読し,吟味して進んでいけば改革は進むだろうと思っているところです。以上です。

【有川委員】  私も同じような印象を持っております。これを見て,自分の大学に当てはめていろいろと考えてみました。非常に難しい問題を扱ったわけですけど,よくこのようにうまい具合にまとめていただいたというのが正直なところでございます。これが出ますと,これだけで大学のガバナンス改革はかなり進むと思います。
 細かなことは幾つかございますが,例えば北城委員がおっしゃった経営協議会2分の1以上となっていますけど,何回も言っていますけど,本学では過半数になっておりますけれども,それはなぜかというと,経営協議会の委員の方々は社会的に立派な方をお願いしているということもありまして,なかなかお忙しくて出席がかなわないということもあります。そういうことで多めにしていただいていますけれども,ただ,会が成立するための要件となっている,それを満たしてくれているのは学内委員です。
 ところが,実際の会議では学内委員は一言も物を言いません。学外委員の人に非常に敬意を表して,そして,そこで言われていることは大学としては最大限に実現しようとして努力をしています。それをずっとこの間,10年近くやってまいっております。そういう点ではしっかり機能していると思います。
 それから,もう一つ大事なことは,私も教授会というのを諮問に応じてということでいいのかと一時期考えたこともありましたが,もしそうしたとしても,定期的にある種のことは諮問するということになりますと,審議をお願いするのと変わらないということになるわけでございまして,ガバナンスの一番の問題というのは,あらゆるステークホルダーと言ってもいいかと思いますが,特に大学の場合には教授陣の力を最大限にいかに引き出していくかということが大事だと思っておりまして,そういうことからしますと,審議という言葉がちょうどいいのではないかと思います。
 それから,あと一つだけ気になるのは,24ページの下から二つ目の○ですけれども,学長選考組織に現職の役員を入れることを少しネガティブに捉えてあるのですけど,もしゼロであったとしますと,大学の本当の執行部といいますか,今,法人が何をやっているかということを全く知らない人たちで次の学長を選ぶ,そういう無責任なことでいいのでしょうか。誰か一人ぐらいは,今こういうことが問題になっているということを言えるような人がいないといけないと思うのです。
 そして非常に不思議なことは,現在の学長,特に国立大学の場合ですけれども,規則上はそこまで書いてあるわけではありませんけれども,現在の学長は悪なのです。この悪い人の影響を受けてはいけないということになっているわけですけど,身を削って改革に日夜取り組んでいるわけですけれども,それが全否定されるような仕掛けがここに入っているのです。そのことの方がむしろ大きいのではないかというような気がしております。
 全般的には非常に画期的なものが出たと思っていまして,法令との関係,それから外国とのこととか様々な観点から,極めて国公私も含めまして整理がされていまして,大学でこういう立場にある者としましては非常に意を強くしているところでございます。

【河田部会長】  九州大学の総長として日夜,努力しておられる有川委員から,この部会の「審議まとめ」が公表されることによって,各大学のガバナンス改革が大いに進むという心強い御発言を頂きました。

【石原委員】  大変多岐にわたる意見をバランスよくまとめていただいてありがとうございます。特に17ページに学生の意見聴取について,学生がどう思っているかということが反映されたことはとてもいいことではないかと思っております。
 学長のリーダーシップ,マネジメント,ガバナンス,いろいろな形で議論されてきましたが,何といっても,大学改革をしていくときはその構成員がやはり明るくて元気で希望がなければ改革は成功しませんし,学長に権威と信頼感がなければ,実際にやる人たちのところまでなかなか届かない。そういう中で,この大学のガバナンスのいろいろな課題がきちんと整理された形で提示されたということは,大学にとっても取り組みやすく,また今後必要な法整備もされていくということですので,よかったのではないかと思います。
 また,監事のところでございますが,監事はいろいろなキャリアを持った方が外部の目として入っておられます。それらを生かしということが入り,多様な目が入る中で,なかなか監事が例えば長期研究を監査するということも難しゅうございますが,その新しい領域の中で皆さんたちがお互いにいろいろと監事協議会でも今議論を重ねておりますので,それぞれの当事者がまた国や関係機関と協力しながら,大学が元気でいい改革ができるようないろいろな助言や提言,そしてあまり細かいことよりも大きいところで学長を支え,そしていい方向に行くようにしていく,そういう一つのきっかけが大きくできたのではないかと思っております。
 ただ,私立学校法の改正で監事の役割が強化されたのですが,現実には90%が非常勤でございます。そうしますと,非常勤でも逆にいろいろなキャリアを持っている方ができるということの体制と常勤との組み合わせとか,私立大学の方からまたいろいろなアイデアをお聞かせいただけたら,いろいろと充実した監査体制が組めるのではないかなと思っております。以上でございます。

【赤松委員】  きれいな形にまとめていただきまして,ありがとうございます。私の専門からいくと,大学へのメッセージということで,法令の正しい理解と教職員の意識改革を,更に内部規則の総点検・見直しをという点がやはり重要だと思うのですが,先ほど北城委員からも出ましたが,もう少し具体的に書いていただくと,その総点検がやりやすいのではないかと思いました。
 もう1点,29ページから30ページにかけて,教授会の審議事項の透明化という情報公開に関する部分があるのですが,ここで教授会の議事概要や審議事項等をホームページにということがありますけれども,これは結論だけではなくて,審議過程とか審議の基礎,どういう資料に基づいてかということも公開するということが予定されますと,その点も他者の目にさらされるということで,よりよい議論がされると思います。
 これは教授会だけでなくて,理事会や経営協議会を含め,そういう情報公開を徹底すべきというようなことが言われると,各機関の責任ある議論が行われるというように思いますので,その点も少し気になりました。以上です。

【有川委員】  先ほどもありましたけど,内部規則の総点検についてもう少し具体的にという御指摘ですけど,これはたくさんあるから総点検でありまして,これを全部書いていけばものすごい数になっていくと思います。こう書いてあることで,それを本当に上位の法律等ときちんと整合しているのかということのチェックが入ると思います。これで大学としては十分です。

【金子委員】  私は今回の議論は,基本的にはガバナンスといいますか,大学の運営の仕方の基本的なルールを確認したといいますか,本来の姿は何であるかとこう議論してきたということで,また,そのための組織が何であるかということを議論してきたと思います。その限りでは,この報告書は非常によくできているのではないかと思います。
 ただ,幾つか問題というか,この限りでは議論できないことが随分残っていることは事実でありまして,例えば実質的なマネジメントの問題があると思いますし,それから情報公開,透明性,それから監事の役割ということを含めて,そういう意味での法令遵守の問題についてはまだ不十分なところが残っているのかもしれません。さらに評価の問題もかなり大きな問題として残っていると思います。
 ただ,再度申し上げたいのは,この文章の中で書いてありますが,私はかなりここ3年,4年くらいで日本の大学は変わってきていると思うのです。変わってきていない,変わってきていないという御意見が多いのですが,私自身はかなりネガティブキャンペーンをやってきまして,日本の学生は勉強しないということをあちこちで言っておりましたが,私が実感しますのは,この頃かなり学生の行動が変わってきていると思います。それはかなり確実に言えるのではないかと思います。それはしかも,やはり個々の先生の行動が相当変わってきて,価値観が変わってきている。
 単に学長のイニシアチブで,例えば東大の秋入学みたいなので本当に変わったかといえば,私は必ずしも変わっていないと思うのです。むしろ個々の大学の先生は,国際化で何かをしなければいけないという意識が非常に強くなっている。そういう意味で変わりつつあると思います。
 ですから,そういうことを更に進めていくというような,今後この次の段階の作業が必要なのではないかと思います。以上です。

【奥野委員】  ほとんど皆さんがおっしゃっていただいたことですけれども,金子委員の御発言にありましたとおり,この部会のミッションは,文部科学省が長いスパンの中で高等教育の政策をやってきたところで,この部会にPDCAのCをやりなさいと言われたとしたら,非常に難しい,一面評価ではないので,これは重点化ぐらいの評価でやっているので,私はこういう文章でこういう,悪く言うと総花的で,ものすごくうまくまとめたと言いたいです。
 ここで議論してきたことが,組織として意思決定ができる大学かどうか,これは結構うまく書けていると思います。責任と権限はある意味で一致させましょうと。その中で,北城委員が先ほど言っていた件について,私も現場にいるもので,有川委員と似ているのですけど,現場にいる者として,ここで学長の諮問とやられると正直言って非常に困ります。本学ではたくさん諮問委員会を作っていて,この課題について検討してくださいというのをやっておりまして,教授会は別にあるのですがうまくやっています。これを全部諮問だというと,ものすごくディスカレッジされてしまいます。それは現場にいる者として,諮問だけと言われたら,困るという気持ちがあります。
 それから,執行部が強くなったら,それはチェックしなければいけないから,それも結構監事とかについてうまく書いていると思います。ステークホルダーという言葉はあちこち出てくるのですけど,何でしょう,私は評価とかいろいろなところでステークホルダーに対する責任というのは情報公開だと思います。それらが一緒には書かれていないので,情報公開については,東工大は教授会も情報公開しているということしか書いていないので,少し不満です。
 どちらかというと,ステークホルダーというところはやはり情報公開ではないでしょうか。それは教授会に対してもそうですし,執行部がやることに対して情報公開というのは,やはりいろいろなステークホルダーに対して基本ではないかと思います。
 続いて,公立大学のことで,31ページですが,二つ目の公立大学の最後の○のところに「若者を地元に引きつける役割のために」と書いてある。これは違うだろうと思います。それだけが目的ではなく,多くのうちの一つですので,私は,後でこのあたりの記述をどのように変えて欲しいか申し上げます。

【北山副部会長】  この審議まとめは,全般的によくまとめていただいたと思います。2ページの下の脚注に記載がありますけれども,我々経済同友会は一昨年,私立大学のガバナンス改革にフォーカスを当てて提言を出しました。国公私立で法律も組織も違うし,国公私立を一塊で書くと非常に膨大な内容になってしまうということと,あと大学が800校近くある中で私立大学の割合が非常に大きいということが私立大学にフォーカスした理由ですが,その私立大学の中でも改革の進捗状況が全然違うので,全般的なガバナンスに対する考え方を示すかたちで提言をまとめた経緯があります。
 そうしたことから,その提言の中でも,私立大学だけでなく国立大学・公立大学においてもこのガバナンスに対する考え方を一つの参考としてほしいという趣旨のことを書いてあります。ガバナンス構造は多様であるという前提で書いたのが一昨年の我々経済同友会の提言でした。
 去年の8月に大学分科会で「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」という答申がまとめられましたが,いろいろ改革は進んできているものの,社会の急激な変化もあり,大学改革を急ぐ必要があるという趣旨のことが書かれています。文部科学省から去年の6月に出された大学改革実行プランにも,同様の項目が盛り込まれています。
また,政権が変わってからも,5月に教育再生実行会議第三次提言が,それから6月に第2次教育振興基本計画と日本再興戦略(ジャパン・イズ・バック)が出されており,これらの中でもガバナンスの問題が採り上げられています。そういう流れを受けて,組織運営部会では審議を重ねてまいりました。
 審議まとめは,学長のリーダーシップで改革を進めていかなければいけないという課題に対して,このように全般的にまとめて書かれたものですが,重要なことは,それぞれの大学が,それぞれのガバナンスに関する目標に対しての現在位置をはっきりさせ,どこが進んでおり,どこが遅れているのかを把握し,どのようなプロセスで改革していくかというPDCAを回すことです。
PDCAのPは比較的容易だと思いますが,重要なのはDとCです。Cにも,自己評価に加え情報公開や内部監査,認証評価等さまざま方法があるわけですが,このCはチェックだけではなくて,同じCで始まるコンサルテーションも必要だと思います。
 内部的なコンサルテーションもあるでしょうが,認証評価等の外部評価においてもコンサルティング的な形で,ステークホルダーが大学と一緒になって,あるべき目標に近付いていくように取り組むことが大切です。それぞれの大学で目標は違うと思うのですが,自分の現在位置を明確にして,どうやって実行していくかということが大切だと思います。

【北城委員】  今回の提言は学長のリーダーシップによって迅速な改革をすべきということでまとめられていると思います。最終的にはこの提言に対してパブリック・コメントも求めるのだと思いますが,やはり改革を実行するのは学長なので,何人かの学長にこれでいいのかということを聞いた方がいいのではないでしょうか。有川委員とか奥野委員のように,きちんとうまく運営されている大学はこれでいいとおっしゃいますが,実際,教授会が反対して改革ができないという学長も何人もいらっしゃいます。前回ヒアリングした学長の方も来られればいいのですが,その方を含めて10人か15人ぐらいの学長の方にこれを読んでいただいて,これで本当にいいのかということを聞いていただいた方が,実効性があるものになるのではないかと思います。

【河田部会長】  御熱心に御討論頂きまして本当にありがとうございます。頑張っている学長の足を引っ張ることはしない,現場をあまり混乱させないという観点から,教授会を諮問機関と定義するべき,という北城委員の御提言につきましては,北城委員がこういう意見を出されたということはきちんと明記していただいて,それがはっきり分かるようにしていただくということで御納得を頂けたらと思います。
 これから,一応必要な修正をした上で年内の総会に報告して,それから更に親会議の大学分科会に報告して,了解をもらうということにさせていただいて,年内にきちんと取りまとめたということを明確にさせていただきたいと思います。事務局から御説明いただけますか。

【白井大学振興課課長補佐】  1点だけ御連絡を申し上げたいと思います。
 本日取りまとめを頂きました審議まとめの中で,大学設置基準の改正に関する事項がございます。大学設置基準の改正に関しましては,学校教育法の規定に基づきまして,中央教育審議会への諮問が必要とされております。これまで大学設置基準の改正に関しては各部会の御了解を得た上で,中央教育審議会総会を経ずに大学分科会において諮問,答申ということを頂いておりました。本日審議まとめで御提言頂いた事項のうち,当面,設置基準の改正に関する事項としましては,高度専門職の設置や高度専門職,あるいは事務職員に関するスタッフ・ディベロプメント(SD)に関する2点が挙げられます。これらにつきましては当部会として,この審議まとめである程度方向性はお示し頂いているかと思いますので,部会長とも御相談の上,今後,大学分科会の方に御審議をお願いしたいと考えてございます。

【河田部会長】  それでは一応,それぞれの文章の修正,それから日付の問題がございます。できましたら部会長の私にそれを御一任いただくということでよろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

【河田部会長】  本日は上野大臣政務官が御出席でございます。一言御挨拶を頂ければと存じます。

【上野文部科学大臣政務官】  皆さん,本日まで7回にわたりましていろいろと御審議いただきまして,誠にありがとうございます。本日こういう形で審議の取りまとめを案として出させていただくことができましたのも,皆様方が大変出席率も良い皆さん方だったということをお聞きしております。本日も途中からでしたが,活発な御意見を交わしていただいているところを拝聴いたしまして,すごいということを実感しております。
 私ども,大学のガバナンスという重要で,かつ非常に幅広い視点が求められているこの難しい課題につきまして,今の日本における大学の在り方の問題点を皆様と共有しているところでございます。特に日本におけるグローバル化,少子化が進む中で,今,日本の大学が自ら変わらなければ,グローバル化,世界にも置いていかれるということを大変実感しております。
 本日おまとめいただきましたこの提言では,学長補佐体制の強化,そして学長等の選考方法の見直し,また教授会の役割の明確化など,各大学の自主的・自律的なガバナンス改革を行い,また国が効果的な制度改正とメリハリある予算支援で後押しすべきことが提言されております。多くの大学においては,これまでも意欲的な改革を進めてこられたことと思いますが,大学が社会の大きな期待に応えていくためには,なお一層の改革の推進が必要であり,そのためにはこの提言を踏まえ,各大学において主体的にガバナンス改革を行っていくことが重要と考えております。
 文部科学省といたしましても,この皆さんで作っていただきました提言を踏まえて,早急に所要の制度改正を行う予定であり,これを踏まえ,内部規則等の総点検・見直しが行われますよう大学に働きかけてまいるとともに,一番大切な学長のリーダーシップが発揮できるような予算支援につき検討してまいりたいと思っております。
 大変御熱心な御審議,最後までお付き合い頂きまして本当にありがとうございました。

(3)今後の日程等について,事務局から発言があった。

―― 了 ――

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