組織運営部会(第3回) 議事録

1.日時

平成25年9月9日(月曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学のガバナンスの在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)河田悌一部会長
(副部会長)北山禎介副部会長
(委員)北城恪太郎委員
(臨時委員)樫谷隆夫,金子元久の各臨時委員
(専門委員)赤松洋子,石原多賀子,上山隆大,黒田壽二,小林雅之,森脇道子の各専門委員   

文部科学省

山中文部科学事務次官,板東文部科学審議官,布村高等教育局長,小松私学部長,関文教施設企画部長,大槻総括審議官,川上政策評価審議官,中岡高等教育局審議官,戸谷官房長,浅田高等教育企画課長,里見大学振興課長,豊岡国立大学法人支援課長,森私学行政課長,田中高等教育政策室長,白井大学振興課課長補佐 他

5.議事録

(1)大学のガバナンスの在り方について,文部科学省から資料1~3に基づき説明があり,その後,意見交換がなされた。

【河田部会長】  前回,8月6日には,検討に際しての論点(例)ということで,それに基づいて具体的な問題を討論していただきました。五つのテーマということで,学長の「リーダーシップを発揮できる体制の整備」,「予算に関する学長の権限」,「教員人事に関する学長の権限」,「学長選考方法・評価」,「学部長の役割・選考方法」ということでございました。
 きょうは,それについて,資料1の2.「学内組織の運営・連携体制の整備」という,○2のところから,一番ここで問題になっている教授会の在り方や,理事会や役員会の権限の見直しとか,監事によるそういう監査機能,大学の事実的な改革のサイクルの確立云々(うんぬん)ということで,三つのテーマに絞って論じたいと思います。
 なお,前回の最後に私から,私が属しています日本私立学校振興・共済事業団において,私立大学の平成25年度の学校法人の経営改善方策についてのアンケートというのを実施したことについて発言いたしました。本年の6月28日から7月12日まで行いまして,557法人,608校の4年制大学と短期大学が114法人,341校,合わせまして949校のアンケートを送りました。そして,80.7%の回収が得られました。それを分析して,きょうか次回に報告するということでございましたけれども,今回それを資料に入れまして,文部科学省から併せて報告していただくことにいたしますので,よろしくお願いいたします。まず文部科学省から説明いただきます。

【白井大学振興課課長補佐】  今,部会長から御紹介いただきました日本私立学校振興・共済事業団の調査でございますけれども,資料2のパワーポイントの35ページ以降に,日本私立学校振興・共済事業団のアンケート結果について全体をまとめたものを載せさせていただいております。
 今回の資料が論点ごとに,それぞれの項目に対応する資料を前の方に入れ込んでおりますので,後ろの方は総括として,後ほど御覧いただきたいと思います。
 また,個別の論点ごとに日本私立学校振興・共済事業団の調査についても使わせていただいておりますので,御説明をさせていただきたいと思います。
 前回まで,学長のリーダーシップを発揮するための体制であるとか,あるいは学長の選考方法等について御議論いただいておりました。その中で,この日本私立学校振興・共済事業団のデータ,また文部科学省の方でも行っております調査についても,速報値ということでまとまった部分がございますので,本日の論点に入ります前に,少しだけ補足的に説明をさせていただきたいと存じます。
 資料2の5ページ,お開きいただければと思います。左肩にございますけれども,予算に関する学長の権限,あるいは人事に関する学長の権限に関連しまして,日本私立学校振興・共済事業団の行っていただいた調査の結果がまとまってございます。
 大学運営に係る主たる意思決定機関を調べたものでございますけれども,予算・決算の編成に関しては,理事会が40%と,非常に大きな権限を持っているという状況でございます。一方で,教員の人事でありますとか教育関係の整備に関しましては,それぞれ学長でありますとか教授会といったところの意思決定の影響力が大きくなっているという状況が分かるところでございます。
 続きまして7ページでございますが,学長の選考方法に関する論点でございます。こちら,文部科学省の調べでございますけれども,国公私ごとに学長の選考方法について調べたものでございます。
 国立大学の大学の場合には現在,法律におきまして学長選考会議が学長を選考することが決められておりますけれども,実際には学内の,いわゆる意向投票を踏まえた選考が行われているというデータが,ここからも読み取れると思います。また一方で,公立大学や私立大学においては非常に多様な学長の選考方法が行われているという状況でございます。
 次の8ページでございます。日本私立学校振興・共済事業団の調査で,学長の選考方法について調べたものでございます。これは私立大学の事例でございますけれども,選挙以外の選考,具体的には選考委員会や理事会等による選考が全体の約7割でございます。選挙を行っているのは約3割でございますけれども,そのうち選挙のみで決めているのが全体の13%,選挙も組み合わせているものが全体の18%という状況でございます。
 資料,10ページにお進みいただきたいと思います。学部長の選考方法に関する論点の資料でございます。資料10ページは文部科学省の調査,国公私ごとに調べたものでございますけれども,いずれにつきましても,学部長クラスについては学内の選挙の結果に基づいて決定している傾向が見られるといったところでございます。
 次の11ページが,日本私立学校振興・共済事業団において調査いただいた学部長の選考方法に関するデータでございます。私立大学の場合には選挙と,また学長による指名。学長や学部長を指名する場合は,両方ともおおむね3割という状況でございます。
 以上,前回の論点に関して先に御説明させていただきました。
 なお,この資料につきましては日本私立学校振興・共済事業団の御協力を頂きまして,本来であれば,もう少し精査してから公表すべきところを大変御協力いただきまして,速報値ということで御紹介させていただいております。また文部科学省の調査につきましても,これも速報値ということで,今回の部会の審議に合わせて早めに出したものでございますので,今後修正があり得ることについては御理解を頂ければと存じます。

【河田部会長】  では続いて,一番最初のテーマであります教授会の役割につきまして説明いただきたいと思います。

【白井大学振興課課長補佐】  それでは,資料1のローマ数字の2.「学内組織の運営・連携体制の整備」の○2の論点,教授会の役割について御説明申し上げます。
 教授会については,当然でございますが,各分野の専門性の高い研究者の方から構成される組織でございますけれども,この教授会が,そもそもどのような役割を果たしていくべきなのか。また,仮に学長の意向と学部教授会の意向とが異なる場合に,学長が適切にリーダーシップを発揮していくためには,どういった調整のメカニズムが必要なのかというようなことが論点として挙げられると思います。
 特に各大学が教育研究について最大限の成果を発揮していくために教授会の機能はどうあったらいいのかということが,一つ論点として御議論いただければと思っております。
 また,第1回の部会でも御議論いただきましたけれども,教授会からのボトムアップの意見を取り入れていくこと自体は大変重要である。また,主体的な教育研究を行っていくために,教授会の一定の権限と責任を持たせることも必要であろう。ただ,その権限はどの程度のものなのかということについては,御議論を頂ければと思っております。
 これに関連します資料でございますけれども,資料2の12ページ以降に,少し多めになりますけれども,資料をお入れしております。
 資料2の12ページでございますけれども,大学ガバナンスに関する現行制度の全体像という資料をお入れしております。大学のガバナンスについて,現在,国公私とそれぞれの大学形態がございますけれども,主に教学面のガバナンスと経営面のガバナンスに分けて見ていきたいと存じます。
 教学面のガバナンスにつきましては,左側の方でございますけれども,学校教育法に基づいて,例えば学部,あるいは学長,教授等,教授会,そういった組織を置くということが,国公私を問わず共通に適用されているところでございます。また,この学校教育法の施行規則では,この教授会の議を経て,学生の入退学であるとか卒業等については学長が決定しなければいけないと書かれているところでございます。
 一方で,経営面のガバナンスになりますと,各組織法,設置主体法で規律をしているところでございまして,例えば国立大学ですと国立大学法人法,公立大学ですと地方独立行政法人法,また私立大学ですと私立学校法といった法律が,それぞれ適用されてくるということになります。それぞれの経営面のガバナンスについては,また後ほど別の論点で御説明したいと思います。
 この中で,国立大学法人法の中で,設置主体法でございますけれども,例えば教育研究評議会という組織を置いて,学長や学部長等から,特に教学面に関する重要事項について,ここで審議を行うようなことも,この組織法の中で組み込まれている状況でございます。
 次の13ページでございます。教授会に関する法令上の規定を記述してございます。現在,教授会に関する規定としましては,学校教育法の93条第1項,「大学には重要な事項を審議するため教授会を置かなければならない」という非常にシンプルな規定が置かれている状況でございます。また2項では,教授会の組織には准教授その他の職員を加えることができるとしております。
 ここで1項の重要な事項ということがしばしば問題になるわけでございますけれども,基本的にはこちらは,各大学の判断に委ねられている状況でございます。
 また,「審議するため」と法律に明記してございますので,教授会が決定権を当然に認められている議決機関ではない,あくまで審議機関であるということは,法律上は明らかにされているところでございます。
 また,学校教育法の施行規則でございますけれども,143条では,いわゆる代議員会──教授会から一部の者が代表で構成されるような組織を作って,そこにおける代議員会における議決を教授会の議決に代えることができるという規定を置いてございます。
 また144条では,学生の入退学,卒業等に関することについては,教授会の議を経て学長が定めると書かれております。
 下の方の囲みでございます。旧国立学校設置法,現在は廃止された法律でございますけれども,教授会については,教授会の審議事項について,教育課程の編成に関する事項,あるいは学生の入退学,在籍に関する事項,学位の授与に関する事項,そしてその他の教育又は研究に関する重要事項について審議事項にするということは,過去に法律に明記されていたことはございます。
 次の14ページにお進みいただきたいと思います。教授会における議論の現状をまとめたものでございます。
 先ほど御説明申し上げましたように,現在,法令上認められております権限としましては,学校教育法93条で重要な事項と書かれております。この重要な事項の内容としましては,例えば旧国立学校設置法で書かれておりますような教育課程の編成,学生の在籍,学位の授与等に関する事項,あるいは学校教育法施行規則で定められている入退学等に関する事項といったことが考えられるところでございます。
 ただ,現実的には各大学の運用において,右側にございますような教員の人事に関する審議であるとか,予算に関する事項,中期計画,施設整備の整備計画等々といったような事項についても扱われているケースは多数あるというところかと存じます。
 なお,左下でございますけれども,教育公務員特例法という法律がございます。この教育公務員特例法におきましては,学部長の採用でありますとか,教員の採用・昇任等について,教授会の議に基づき学長が行うという法令上の規定が定められております。これを学校教育法施行規則の「議を経て」という規定と比べていただきますと,一般に法律の解釈としましては,「議を経て」というのが弱い拘束性を持っているのに対して,「議に基づき」というのは非常に強い拘束力を持っていると考えられてございます。
 この教育公務員特例法が決められました背景には,これはもともと国公立大学の先生方は公務員でございました。公務員の世界では,基本的には上意下達の指揮命令関係を前提としておりますが,憲法に定めます大学の自治の観点から,国が一方的に決めるのではなくて各大学の自主的な決定に,特に人事権については委ねるということから,この法律が採用されたところでございます。
 しかしながら,この教育公務員特例法につきましては,国立大学の法人化,また公立大学も多くが法人化されたことによりまして,現在適用されるのは非常に限られた大学のみということになってございます。
 15ページが教授会に関する規定の経緯をまとめたものでございます。昭和22年に現在の学校教育法が制定されましたが,実は戦前では教授会の規定は非常に限られた,帝国大学等のみに設けられた規定ということでございました。しかしながら戦前の,いわゆる滝川事件でありますとか,天皇機関説問題など,国による大学への介入の歴史の反省に立って,この教授会の規定を公立大学,私立大学にも適用される一般的な仕組みとするということで,学校教育法の中に,この教授会に関する規定が組み込まれたという歴史的な経緯がございます。
 一方で,先ほど申し上げましたように,国立・公立大学につきましては,教育公務員特例法が定められまして,憲法の観点,憲法の保障する大学の自治の観点から,あくまで公務員法制の特例として,教員人事については教授会自体に決定権を認めるということが法令上決められたところでございます。
 例えば最高裁の有名な東大ポポロ事件判決におきましても,大学の自治の主要な内容としては,学長,教授,その他の研究者の人事の自治がまず第一に来るということが挙げられているところでございます。
 平成11年になりまして,国立学校設置法において,この教授会の役割について具体的に明確化するという観点から,先ほど御説明しましたような教育課程の編成等,具体的な事項が明確化をされた経緯がございます。
 しかしながら,平成16年に国立大学が法人化されましたことによって,その際に各法人の自主性・自律性・尊重の観点から,内部組織についてはできる限り法令等で規定しないという原則が設けられましたことから,教授会については,この国立学校設置法の規定は継承されなかった経緯がございます。
 なお,私立学校につきましては,もともと,この教授会に関する規定については,学校教育法以上の規定はなかったという現状でございます。
 続く16ページでございます。理事会と教授会の関係について簡単にまとめたものでございます。主に私立大学が念頭にございますけれども,教員人事について,学校法人の理事会の決定が,例えば教授会の審議を経ていなかったり,あるいは教授会の意見と異なるような場合について,どのように判断するのかという事案でございます。
 例えば,教授会では解雇の手続をとっていないのに理事会が教員を解雇するというような事例について,裁判で争われたことがございます。これにつきまして,もともと最高裁の判決におきましては,憲法の自由権的な保障規定については,あくまで私人間の関係を直接規律するものでない。また,昭和女子大学事件におきましては,学生に対する退学処分の事案については,この法理についても私立大学に適用されるということを明言しております。
 少し飛ばしまして三つ目の○のところでございますけれども,理事会と教授会の関係について,学校法人の意思決定過程において教授会の意見を十分尊重されなければならないが,学校法人に置かれる評議員会の意見のように,あらかじめ経なければならない手続として法定されているものではない。学校法人の意思決定過程における教授会の審議をどのように位置付けるかは,教学に関する教授会審議の重要性に十分配慮しながら,意思決定機関である理事会において定めるべきであると解されると,コンメンタールでは述べてございます。
 また,下の方に参考として甲南大学事件の判決を挙げてございますけれども,ここでも人事に関する大学の自治というのは,あくまで業務決定機関である理事会に委ねられているのであって教授会にはその権限はない。また学問の自由が各教員に保障されているといっても,当然に,教員の解雇についての教授会の決定が必要というものでなくて,教授会の決定が理事長の権限を羈束(きそく)することは到底できないというような考え方を示しているところでございます。
 17ページ以降,少し教授会に関するデータの部分を御紹介させていただきたいと存じます。
 17ページは教授会の構成員についてのデータでございます。教授会については他の職員,教授以外の職員も加えることができるという法律上の規定がございましたけれども,当然,正教授が中心に構成されているものの准教授,講師,助教等,若手への参加も現在,幅広く国公私問わず見られるという状況でございます。
 18ページでございます。学部教授会の構成人数をまとめたものでございます。構成員については,おおむね10人から40人程度のケースが多いようでございますが,一部には,かなり少なかったり,多かったりというところも出てございます。
 それから,19ページでございます。教授会の運営状況でございます。これを見ていただきますと,年間11から15回のところが突出して多くなっている状況でございまして,教授会の年間の開催日数は,おおむね毎月1回程度ということが,データ上,推測されます。また,毎月2回程度,21から25回までの部分で,大体85.9%の大学が,学部がフォローされるということでございまして,おおむね月1回,あるいは2回程度という状況かと存じます。
 20ページにお進みいただきたいと存じます。教授会の運営に関する工夫として行っている取組を聞いてございます。これを見ますと,一番多いcの部分,学内の他の会議との連携協力等によって教授会で審議すべき事項を精選しているという大学は過半数に上っておる状況でございます。また,その他多くの大学が,教授会への報告事項を事前に構成員に周知をして審議時間の確保に努めているといったように,審議事項をなるべく精選しようと取り組んでいる傾向が見られます。
 21ページにお進みいただきたいと存じます。教授会の審議状況についてまとめたものでございます。これは下の方にございます各項目ごとに,教授会に決定権があるのか,あるいは審議は行うけれども決定権はないのか,あるいは審議も決定も行わないのか,特に定めないのかといったことについて聞いておるものでございます。
 これを見ていただきますと,右側の赤い枠囲みの方にございますけれども,例えば大学の組織改廃であるとか規程の改正,あるいは人事に関することについて,教授会,確かに審議は行っておりますけれども,決定権限ということまでになりますと,なかなか理事会や学長からおろされていることは少ないという状況が見られます。
 一方で,例えば学生の単位認定でありますとか,入退学に関することといったような学部の教育や,あるいは学生の賞罰とか厚生・補導に関するようなことについては,比較的,理事会や学長から教授会に権限が委譲されている傾向が見受けられるかと存じます。
 次の22ページが,日本私立学校振興・共済事業団から御提供いただいたデータです。今の話を裏付けるような資料かと存じますが,教学計画,施設計画,財務計画のそれぞれについて,意思決定への影響が最も強い機関を挙げていただいたものでございます。これを見ますと,教学計画については,学長と,最も影響力が大きいのは教授会というデータでございますが,一方で施設計画,財務計画になりますと,学長,教授会の影響が,それぞれ2%,1%,あるいは1%,0%ということで,大きく影響力が違っている状況が見られようかと存じます。
 次の23ページでございます。外国の大学における教授会に相当する組織の状況はどうなっているのかを,英米仏独といった主要国についてまとめたものでございます。
 アメリカでは,一般にAcademic Senate,大学評議会と言われるような組織があるのが,大学全体の87%にあるというデータがございます。この大学評議会については,教育研究に関する事項や教員人事の方針などアカデミックな事項について決定する権限が,一般的には理事会から委譲されているという状況のようでございます。
 例えば,このUCバークレーの例を下に挙げてございますけれども,バークレーのAcademic Senateにおいても,学生の入学やカリキュラム,学位授与等について,学長執行部に助言・推薦する権限を理事会から認められておって,通常,学長や理事会が,この大学評議会の見解を無視することはないというようなことでございます。
 また,イギリスでございますけれども,同様にアカデミックな事項に関する意思決定については,カウンシルから,教員が主たる構成員でありますセネトに権限が委譲されているということでございます。このように,セネトに決定権を分散させることによって,学長が独断に陥らないようなブレーキを作っているということでございます。
 オックスフォード大学の例を下に記述してございますけれども,オックスフォード大学は非常に大学本部,学部,学科,どのレベルにおいてもコンセンサスを重視した大学運営が行われているということでございます。最終的な意思決定,最高の意思決定機関でありますコングリゲーションは,全教職員約4,500人から構成されて,大学の諸規定の承認とか,学長の承認・任命等を行っているということでございます。
 それから,フランスでございます。フランスの大学運営も教員中心に,フランスでは三評議会と言われまして,管理評議会,学術評議会,大学研究生活評議会と三つの評議会が,それぞれ大学の管理的な事項,教育に関する事項,研究に関する事項などを中心としまして,分担をして審議を行っておりますけれども,いずれも主に教員から構成されている組織でございまして,これらを中心にした大学運営が行われているということでございます。
 また一番右側,ドイツの大学運営でございますけれども,ドイツにおきましても教員を中心とする評議会というものがございまして,この評議会で学則に関する議決であるとか,学長,学長部,学長執行部の選挙を行ったりとか,あるいは予算案の作成,学部等の組織廃止,あるいは人事に関する推薦等についての議決を行っているという状況でございます。また各学部ごとに学部評議会という組織が置かれており,研究や教育に関するあらゆる事項について所管している状況のようでございます。

【河田部会長】  これまで教授会が非常に問題だと言われておりますが,歴史的な過程でこうなったということを論じていただきますとともに,国公私それぞれが基づく法律が,どのようになっているのか。共通の場合と国立大学法人あるいは私立学校法との関係,そういう区別もきちんととして,教授会といっても様々なパターンがあるということ。そして参考資料1に,きちんと,それぞれの基づく法律も,重要なところは抜き書きをしていただきましたので,かなり明確な論点ができてきたと考えます。
 この問題について御意見を頂いて,どこに問題点があるのかということを明確にしていきたいと思います。
 私立大学の方もまとめさせていただいておりますが,この質問については,法人には約20問,学長,いわゆる教学には10問,どういうことを質問すればいいかという項目選定については小林委員の助言を得ながらまとめましたので,小林委員から,まず口火を切っていただければと思います。

【小林委員】  前も申し上げましたように,こういったことについては事実に基づいて判断するのが非常に重要だと思いましたので,こういったアンケート調査を日本私立学校振興・共済事業団で行うということをお聞きしましたので,調査の専門家という形になっています私からも,少し御意見をさせていただきました。
 きょうの結果は,まだ速報値でありますので,確定値ではないということで,それは御了解いただきたい。調査に携わったことがある方はお分かりだと思いますけれども,調査を行うと,様々な,実は細かな修正というのがございます。ですから,それはお含みおきいただきたいのですけれども,これだけ見ましても,今,河田部会長がおっしゃったように,非常に多様性があるということです。既に選挙だけではなくて,様々な形でなされているということが分かったかと思います。
 この調査,まだ全体の傾向だけですので,それほど大きなことしか分からないわけですけれども,もう少し細かく,どういった事柄について,どこが,どういう意思決定をしているのかということについても調べております。
 ですから教授会が,ここで,形の上では22ページにありますように非常に大きく,教学については教授会あるいは学長,施設計画,財務計画については理事会が中心になっているとなっておりますが,この辺ももう少し細かく調べておりますので,その辺を見てから,また御議論いただきたいと思います。
 例えば教授会と一言で申しましても,私立の場合,全学教授会というのを持っているところと,各学部教授会しかないところとあります。ですから,それによって全然,教授会の意味も違ってきますし,こういった点も,もう少し細かく見ないといけないのですけれども,きょうの段階では,そこまで細かな分析はできておりません。
 ですから,申し訳ないのですが,今回についてはそういった程度の参考数値として見ていただければと思います。

【北城委員】  今回,教授会の在り方について,よくまとめていただき,また,いろいろな大学の運営の実情に関する数値も示していただいて,ありがとうございます。
 ただ,教授会の役割の中で,例えば学部の再編について教授会がどう関与するのか,あるいは教育カリキュラムを変えるときに教授会で決められるべきなのかについて,議論が必要だと思います。学長や学部長の方針に基づいてこれらを変える際に,教授会が審議機関というより意思決定機関になっている等の非常に難しい問題があると思います。
 今回の議論の進め方として,教授会の在り方や学長の選任の在り方,学部長の選任等,検討の切り口がいろいろあるのですが,なぜ,大学の組織運営について議論しなければいけないかという理由の一つは,日本の大学が世界の大学に伍して,すぐれた人材を輩出し,すぐれた研究をすることが大事だということです。
 教育再生実行会議からも,世界のトップ100の大学の中に10校ぐらいは日本の大学は入るべきではないか,あるいはグローバル人材の育成が必要ではないか,また教育研究や論文の評価の面でも十分ではないのではないか,更には国際化でも後れているのではないか,イノベーションの担い手になるような活動が不十分ではないか等,いろいろな課題が与えられています。私は今後の議論の中で,まずは,その教育研究等で世界の大学やリサーチ・ユニバーシティーと競争していくような,我が国の主要な国立大学のガバナンスをどうすればいいのか,そしてその大学における学長の選任とか教授会の在り方をどうするのか,を取り上げていただきたいと思います。
 その後で,公立大学や私立大学を議論すべきと考えます。私立大学は規模の対象をはじめ非常に多様であり,多様な私立大学と有力な国立大学と一緒にして議論すると,なかなか論点が定まりません。有力な国立大学と,できればそれ以外の国立大学の幾つかの学長の方に,自分の大学を改革するために,どういう体制を求めているのかを伺いたいと思います。要するに学長は何を求めているのか,ということです。学長が自分のやりたいことができない限り,リーダーシップを発揮して欲しいということ自体に無理があります。本部会で集中的に先生方の意見を聞くような場を設けていただければ,現実に学長が何に困っているかがよく分かるのではないかと考えます。そういうことの検討も進めていただきたいことが一つです。あと,資料1に教員人事に関する学長の権限が書かれているのですが,人事といったときには,任命だけではなく,解任もありますし,評価をどうするのか,それが昇進等の処遇にどう影響するのか,給与とか,ボーナスとか,研究費とか,そういういろいろな処遇の在り方に,どう影響するのかという議論もあります。任命だけではなくて,その先生方が学長とか学部長の方針の下に適切に大学の改革を実現するように活動していただいているのかということも考えなくてはならないと思います。
 研究の評価はピアレビューによるのでしょうが,組織運営や教育への貢献ということに関しても,ある程度の評価が入らないといけません。全員が一律の処遇のままで,学長あるいは学部長のリーダーシップを発揮するということ自体が難しいので,人事の中には,評価とか処遇ということも一緒に考えなければならないと思います。

【河田部会長】  北山副部会長は国立大学法人評価委員会の委員長で,私もその一員をさせていただいて,この間から国立大学の法人評価の面接として,旧帝大と中規模の医学部のある大学のお話を聞かせていただきましたが,多くのところは学長が非常に苦労しておられる。学部長は各学部教授会によって選挙,選考されてくるのを認めるというのが実情で,学長には,学部長を選ぶ実質的な権限はもちろんないし,非常に苦労なさっているのは確かかと思います。したがって,もし可能であるならば,そういう形で,いわゆる大手のリサーチ・ユニバーシティー,そういう主要な国立大学の学長の方に来ていただいて,こういうところを変えればもっと良くなるとか,そういうことも論じていただければと思っておりますが,北山副部会長,いかがでございましょうか。

【北山副部会長】  国立大学法人評価委員会の委員長をしていますが,個別の大学へのヒアリングには直接携わっていなくて,いつも結果の方の審議が中心です。
私は経済同友会で教育改革委員会の委員長をしていますが,この問題を考えるときには,一昨年に出した私立大学のガバナンス改革に関する提言を,机上資料として置かせていただいております。提言1から提言10まで項目ごとにまとめているのですが,ある大学関係の人と何人かと話したら,提言1から3,この三つでも直してくれたら,もう十分だというような共通のコメントを頂きました。
 その三つというのは,一つ目は理事会の権限及び経営・監督機能の強化,二つ目が学長・学部長の権限の強化,三つ目が今話題になっております教授会の機能・役割の明確化ということであります。結局この三つの重要性というのは,理事会の任命に基づいた学長によるリーダーシップの発揮というところに尽きるのだろうと思います。
 組織規定や権限が,通常の会社ですと整備されているのが普通なのですが,どうも,お聞きしていると,大学では非常に曖昧に作ってあって,実際の運営が,法律が狙っている趣旨と合っていないのではないかということが感じられます。様々な公式の会議で議論していても,実態が本当に趣旨に沿って運営されているのかどうかは,なかなか分からないということがあります。
 例えば,私は銀行員なので,銀行の例で言いますと,金融庁の検査が銀行に入ったときに,経営会議であるとか,取締役会であるとか,実際にどういうやりとりをしているかというようなところまで全部チェックするわけです。しかしながら,議事録のペーパーになってしまうと,大分省略して書かれてあるのが実態です。
 改革を進めて人材を育てていこうという目的は大学もシェアしているわけですから,実際の運営が本当にどうやって行われているかというようなことについて,今,北城委員が言われたように,例えば主要な国立大学とうまく本音ベースで意見交換ができるといいと思っております。
 もう4か月ぐらい前ですが,早稲田大学の鎌田学長が座長をされている教育再生実行会議に上山委員と東工大に呼ばれて行ったときに,上山委員と私が最初説明して,その後に意見交換がありました。委員の中に大学側の方もおられたので,教授会を変えるにはどうしたらいいかということ等について,結構本音でお話が出来ました。経済同友会の提言では,先ほど御説明あった学校教育法93条を少し書き換えて,もう少し教授会の規程を明確化したらどうかということを提言していますが,教育再生実行会議の提言にも,このことが法令改正の検討という形で盛り込まれています。実際に法令改正を受けて意識改革につながり,うまく組織が回るような形になればと思います。
 大学も目的意識は同じなので,実態がきちんと変わるような,また,後でチェックできるような体制づくりを進められればと思っております。

【上山委員】  教授会の問題については,北城委員も含めて,いろいろな方々からずっと御意見を伺っていて,大学のフレキシビリティーということを,阻害をしている面があるとは思います。
 ただ,いま北城委員がおっしゃった中で,例えば教員の評価をする,それを給与等に反映するということは,実は現行の制度の中でも相当可能であると思います。実際に,前回のこの会議でも申し上げましたけれども,そういうことをやり始めているところもあります。また,大学の学長の本部が,各学部の教授会に向けて,例えば教育と研究に関する評価をしっかりやって欲しい,またその結果を人事に反映させると指令すれば,相当程度,今の制度でもきちんと動いていく。その意味では,オフィス・オブ・プレジデントの責任がいまだに大きいだろうと思います。
 それから,カリキュラムに関して言えば,研究者であり教育者である現場の教員は,刻々と変化をしている学問的な成果に基づく教育のカリキュラムを考えますので,これも,今の現行の制度の中で,大学の体制さえしっかりしていれば,ある程度対応できると思います。
 むしろ問題は,組織の改変を促進して行くためには,教員の人的な移動が重要だと以前から考えております。
大学の組織改編には,当然ながら組織を守ろうとする意識が教員の中には働きますから難しいのです。アメリカでも,例えばテニュアという制度があって,これ,一旦テニュアを取ってしまえば人の首は切れないのですけれども,そこのシステムのおもしろいところは,テニュアのある人を辞めさせられないけれども,学科そのものを潰してしまう形で切ってしまうということができるわけです。それは極めてドラスティックな形ですけれども,日本の大学では,幾ら大学のオフィス・オブ・プレジデントが力を持っても,そういうことはできない。
 多分この問題に関して一番大きな問題点は何かというと,日本の大学の中の大学間の人的な移動が極めて少ないということに関係していると前から思っています。
 企業の方々は,なぜ大学の教授会が動かないのかというときに,恐らく念頭に置いておられる組織は相当違っているとお考えになるべきです。企業でしたら,同期で入った人が取締役のボードに入るまで残っている何人いますか。相当程度,人は組織を離れていくわけです。つまり,人的な移動が組織の中で,内外も含めて,かなり激しいのです。
 ところが,日本の大学というのは,ずっと同じ人間が,そこの組織の中にいます。したがって,生首を切らない限り,学界というコミュニティーの中で人を移動させるということがとても難しい。
 アメリカでしたら,人がどんどん動いていきますから。ハーバードの医学部にいた人がUCの,例えばサンディエゴのソーク研究所に行く。あの人は医学研究だけではなくて,サーフィンが好きだから,そこに行ったのだろうといった印象を受け取られるでしょうし,例えばデューク大学に行けば,大学のランクは少し落ちるかもしれないけれども,ワシントンとの関係があるから,そこを目指して行ったのだろうとか,そういう意識で,人が動いていくことを何の問題もなく受けとめています。
 ところが,例えば東京大学の先生の中で,一体何人の人が別のリサーチ・ユニバーシティーに動いていくでしょうか。組織の改編のためには,人的な移動があり,その人間のリプレースするときが一番のチャンスな訳です。この人的移動がもっと生じていれば,それに合わせて,学部あるいは大学の本部なりが,違う組織の形態を提言し,変えていくことができるということです。
 この人的移動の問題を,教授会の硬直化した問題と絡めながら,日本の大学の問題点だとして考えた方がいいのではないかと,私はかねてから思っております。

【河田部会長】  社会の在り方,あるいは大学の在り方,企業といってもA企業からB企業に異動する,転職も,それほど日本では多くないという,そういう風土もあると思いますが。いかがでしょうか。

【北城委員】  上山委員や北山副部会長の御意見を考えながら聞いていたのですが,実態としては,教授会は審議機関であるから決議機関でなく運用できるはずだという御意見そのとおりですし,大学によっては教員評価を処遇に反映しています。これは国立大学でも幾つか例があり,本来できるわけです。ただ,実態として非常に難しいことがたくさんあることが問題なのだと思います。
 北山副部会長が1対1など,少人数で本音を聞くと,いろいろなお話が聞けるということをおっしゃっていました。やはり,多くの人が一緒に話を聞いてしまうと,組織の構成員が非常に大きく反発をし,結果としてその大学の運営が難しくなるということもあると思います。
 本来,こういう審議会はオープンでやるべきだとは思うのですが,特にリサーチ・ユニバーシティーと言われるような有力な大学の学長の本音を聞くためには,この部会の委員を中心にしたクローズなところで本音を聞いて,その中で教授会の在り方,あるいは学長の選考の在り方など,どのようにされたいのかという本音を聞いた方がいいと思うのです。
 私は,セミナーなどで国立大学の学長の方にいろいろとお話をさせていただきますけれども,学長が自分は改革をやろうと,ある方向でこの大学を変えて,すぐれた大学として教育研究,人材育成をやっていきたいと意見を出しても,自分の意向と違う人が学部長に何人か選任されてしまって,その人を説得するために非常に時間がかかってしまい,大学の運営が思ったようにいかないという話を聞いています。何かを決めようとしたときに,伝統的に教授会が意思決定機関になっているので,教授会の承認がとれずに進まないとおっしゃっています。
 文部科学省では,教授会の議論は審議であり決議ではないと公式な意見を出しているのですが,実態は伝統的に決議として扱ったために,その教授会の説得のために時間がかかるということです。
 私は,日本の大学改革の大きな問題の一つは,時間がかかり過ぎるということだと思います。もちろん,急に変えてしまって,大きな問題が出て,後で修正することは非常に大変ではありますが,他方で変えないことのリスクもあると思います。これだけ社会が日本の大学教育について問題提起をしており,私が個人的にお話しすると,日本の学長の先生方はほとんど改革の必要性を理解してくださいます。ただ,それをどう実現するか,学内で大変な御努力をされているのが実態であり,もっと改革をしやすい体制に作り上げていく必要があるのではないかと思います。
 これを国公私学全部を入れて議論すると,どうしても焦点が不明瞭になってしまうので,まずは有力なリサーチ・ユニバーシティーを目指す国立大学と,国立大学でも地域の発展のために努力する国立大学について議論し,それから公立大学,あるいは次にリサーチ・ユニバーシティーを目指すような大きな私立大学や,独自の建学の精神で運営される私立大学,少し層別をして,議論したいと思います。テーマは教授会の在り方とか学長の選考の在り方で良いのですが,議論する場は層別して,できればクローズなところで本音を聞いた上で,提言そのものはオープンに議論したらいいのではないかと思います。

【上山委員】  関連してよろしいですか。
 恐らく,ほとんどの国立大学,リサーチ・ユニバーシティーの意識の高い学長は,東京など来て,このような審議会の場の雰囲気もよく分かっておられるし,北城委員が考えておられるようなことを共有されていると思うのです。ところが,大学に帰った途端に,その思いが理解されないという悩みを抱えておられる。
 これは,大学人が,大学のマネジメントの役割の需要性を明確に理解していないからだ,とずっと思っています。大学のマネジメントというものの価値が,余りに大学の中で低く見られていると。もちろん研究者としての仕事も重要だし,教育者としての仕事も重要ですけれども,このマネジメントを行う人間の役割の重要さということが,大学人全体の中で,もっと共有されなければいけないのではないですか。
 例えば学部長になる,それはもはや大学のアドミニストレーションの中に入っていくことであり,教育とか研究から一歩退いて,もっと大局観を持って,アカデミア全体のことを考えて,マネジメントの中で力を発揮していく人材に自分はなっていくのだという意識を持つ必要があるでしょう。そして,それは非常に重要なプロフェッショナルな仕事という意識を持つべきだと思います。それが大学人の中に余りに欠けていて,たまたま選挙で選ばれて学部長をやらされているという意識なのです。何年か学部長をすると,教授会の普通の一員に戻っていくわけです。その人たちは,一教員に戻った時の対応を考えてしまいますから,学部長の時代に,強い意思決定などできないわけです。やろうと思えば,大学そのものを出ていくぐらいの決意がいるというわけです。
 一方,アメリカでは,学長も含めた大学経営に関わる人材の社会的な認知度は高く,その重要性が大学内部で十分に理解されている。その意識が日本の大学人の中にはとても弱いので,それを,まず作り上げていかない限り,幾ら意識の高い学長がおられても,それに対する反発によって,すぐに足をすくわれてしまう,ということであろうと思います。

【小林委員】  関係することで,少しよろしいですか。
 簡単なことですが,私もいろいろな大学に,アンケートだけではなくて,実際のケーススタディーとか実地調査というのを行っていますので,その重要性はよく分かります。なかなか本音が出てこず,公式な場を離れた席になると出てくるというのもよく経験していますので,先ほど北城委員が言われたように,それをクローズドにやるということは賛成です。
 前回の中央教育審議会でも,大学院の検討のときに,やはりワーキング・グループを作って,それぞれヒアリングをやりました。ただ,一つ気になっているのは,学長だけでいいのかという点です。やはり教員の側の意見も聞いておかないと公平ではないということです。中央教育審議会として,やはり公平ではないと思われるのはまずいのではないかということで,そちらも検討していただければと思います。

【樫谷委員】  教授会の現状のところで,資料2の14ページがありますが。ここにたくさん書いてある中で,私がやっていた2年間の中で,この14ページの右下の各種連絡事項とか情報提供とか,ほとんどがこういった内容で,この上の予算に関する事項,中期計画,学部の問題だとか,あるいは教学に関することでとった時間というのは極めて少なかったような記憶があります。
 問題は,なぜそうなっているのかということだと思います。この同じ資料の23ページに,外国の大学における教授会に相当する組織の状況というのがアメリカ,イギリス,フランス,ドイツと書いてあります。これは例に挙げるぐらいだから,日本よりはずっと前向きにやっているということだと思うのですが,これを見る限り,日本とどこがどう違うのかというと,そんなに違わないような気がします。つまり,構成員はほとんどが,先生方を含めた人材が評議会などを構成しているということです。
 どこがどう違うのか,よく分からないのですが,例えば,一つお聞きしたいのは,まず,この23ページは,外国にも国立大学,私立大学があると思うのですが,国立大学,私立大学が同じガバナンスなり,やり方でやっているのかどうかということと,それから,これを見てみると,日本には教授会という組織があり,学部に備えられているのに対し,アメリカの例を見ていますと,全学的な組織です。日本の国立大学にもありますが,私大には教学に関する全学的なところという組織はないように思っているのですが。
 アメリカ,イギリス,フランス,ドイツ,それぞれ見てみると,フランスは分からないのですけれども,そういう全学的な組織があるのではないかということです。
 それから,その評議会の構成員は,先生方とか,フランスなどは学生代表も入っているのですが,その利害関係者の,大体どのように構成されているのか,これはガバナンスの話だと思いますが,大半が先生方なのか,それ以外の人がどういう人が入っているのかということも,少し調べる必要があるのではないかと思っています。
 それから,もう一つは,それほど変わらないとしたら,なぜ日本はリーダーシップが足りなくて,アメリカ,イギリス,ドイツはリーダーシップがとれているのか。マネジメントの話は今されましたけれども,そういうことで発揮されていないのか,どうなのか。そういうことを,ベンチマークがこの四つの国だとしたら,なぜ日本が,組織がそんなに変わらないのに,どうも前向きでないのかともう少し突っ込んで調べていただきたい。
 私が思いますのは,改革するということは,単なる改善と違って,相当思想を変えなければいけないというところが恐らくあると思うのです。思想を変えるときに,なかなか今の組織,学部しか見ていないという教授会では,その学部の思想は変えられるかも分かりませんが,全学的な思想は恐らく変えられないと思いますので,やはり少なくとも,これを見ている限りは,全学的な教学の組織を作る必要があって,そこにどういう人材を入れていくのかということが極めて大事ではないかと思いましたので,そういう発言をさせていただきました。

【石原委員】  教授会が教育研究の審議機関であるということですが,私自身が関わっているところから見ますと,非常に教授会は,ある意味で,もっと頑張ってほしいというような意識も持つことがあります。それは,教育研究が今の時代,かつてと違って教育は,もっと組織的に,そして新しい時代にふさわしいカリキュラムやそういうものを組み立てていくには,実際に教育を担当している先生たちの創意工夫や力量が大きな影響を持ちます。
 また研究については,やはり大学の場合は,個々の研究者の非常に強い個性や問題意識や能力に負い,それをまた大学として今,組織化していくということも必要かと思いますが,そういう意味では教授会が,今の時代の新しい時代にふさわしい教育研究を強力にきちんと担える役割を得た上で,学長が全体的な大学の明確な方向,そしてリーダーシップをきちんと発揮できるには,やはり人を掌握したり,組織運営に巧みである。もう一つは,構成員から尊敬されていなければ,恐らく学長は能力を発揮できないのではないかと思います。
 そして,どういう場合でも,大学改革で一番大事なのは,大学は学生がいなければ恐らく存立しませんので,学生にとって良い大学である。これからの日本の国を支えていく,あるいは世界を支えていく学生にとって,いい大学の改革の明確なビジョン,方法を学長が本当に真剣に打ち出すか。そして,それに対して,日々の学生をきちんと教育している教授たちが,新しいこの今の厳しい時代の中で,ある意味ではコスト意識や評価ということも意識しながら,教育,そして自分の研究をきちんと,もっと専門的にしていくための条件整備を学長がどれだけ明確にできるか。こういったことが,もう少しはっきりとなると,やりやすいのではないかと思います。
 もう一つは,非常に,ある意味で大学はフラットな組織で,やはりピラミッド型にすればするほど,手続民主主義で,会議会議で,報告報告になってくるだろうと思います。そういう意味では,ある程度ピラミッド型の一つの組織経営を踏襲しながらも,教員や事務職員や学生が参画意識をきちんと持っていけるようなマネジメントをどうしていくかということが,とても大事ではないかと思っております。

【金子委員】  先ほどの外国がどうなっているかというお話にも関わるのですが,まずは教授会というのが一つのものだと考えると,これは間違いなので,例えば,いろいろなレベルで教授会というのはあり得るわけです。教授会というのは,要するに,教授が何らかの形で管理運営に参加するということですから,いろいろなレベルで,それはあり得るわけです。
 日本の教授会は学部単位で教授会が作られていて,これは非常に強固であるというのが日本の特質だろうと私は思います。
 これはなぜかというと,日本の大学は非常に巨大になったからです。日本の巨大私立大学と巨大国立大学,いわゆるリサーチ・ユニバーシティーというのは,諸外国と比べると,規模からいうと物すごく大きい,例外的に大きいところで,したがって個々の学部も非常に大きくなります。
 したがって,それ自体が一つの大学といった形になっているので,要するに,大学の中に大学がもう一つあるみたいなものですから,その中での学部長は余りリーダーシップを発揮できないかもしれない。どうしても,そこの中で教授会がいろいろなことを決めるという原則が認められてしまうと,大学全体として見ると変動の余地がなくなってしまうという点が確かにあると思います。
 アメリカの場合は,全学セネトというのもありますけれども,デパートメントごとには学部より下のレベルでは,かなり細かいことまでやっております。どこの部屋はどこに移すかとか,そういうところまでも一応やってはいます。ですから,どのレベルの組織に,どういう権限を与えるかというところは,やはり一つの非常に大きな観点だということは考えておいた方がと思います。
 ですから,そういう意味で,教授会一般というのを考えることは非常に難しい。これは,やはり法規上どうにかするかという問題ができるかどうかというところに関わるのですが,私は法規上どうにかするというのは非常に,そういう意味でも難しいように思います。
 もう一つ,これに関わって,なぜ教授会がなければいけないのかというと,結局,大学というのはローカルな現実が非常に,同じ組織の中で多様であって,ローカルにしか判断できないことがたくさんあるのだと思うのです。それは,やはり教員がある程度権限を持たなければいけないとなっている理由だと思いますけれども,それをどのように組織していく,どこのレベルでもって組織するのかということは非常に重要なわけです。
 この国際比較で見ていますと,むしろ教員参加は,例えば,ごく普通は当たり前というのでしょうか,一番トップに教員が,経営協議会みたいなところに入っているわけですし,イギリスもオックスフォード,ケンブリッジは,いまだに教授会が最終的な決定機関のような形態をとっています。
 ですから,教員参加そのものの原則は,やはり,これはおかしいと言うことはできないわけで,どのように有効に参加していくかという方法を考えるのが,前向きに非常に重要なことだと思います。
 先ほど,いろいろな大学の実情を聞いたらどうかということで,大変賛成で,聞くと大変楽しいこともあると思うのですが,ただ,はっきり申し上げて,これは非常に多様な意見がたくさん出てくるだろうと思います。
 アメリカでも全く同じような議論はどこでもありまして,どうして動かないのかというのは,いつでも,常に社会からの批判にさらされているわけで,結局,理論的に整理しようとしていて,合理的に整理しようというのは,なかなか難しいと思います。
 私は,やはり教授会そのもの,権限そのものをどう整理するかというより,どの段階で,どの範囲で見るところに権限を与えて教員が参加すべきか。私は,やはり,もう少し全学的な見方をするということは非常に重要だろうと思います。

【河田部会長】  今,様々な御意見を頂きましたけれども,焦点を決めて,討論したらいかがでしょうか。教授会であるならば,教授会にどういう権限を与えるかについて。秋田大学などは,3学部から4学部にするのに非常に苦労して,新しい学部については,学部長も学長が指名するとか,かなり思い切った改革が,現在のところでもなされている。学長の,そういう持てる力というものも大切であります。誰かが,尊敬に値する人格でもって大学人を掌握する学長と言われましたが,やはり人間的なソフトの問題もあるでしょう。ですが,ハードも変えねばならないという問題もあります。
 ということで今,金子委員からも,あるいは北城委員からも,そういう本音を聞く会をクローズな形でやったらどうかという御意見も出ました。これは有効かと思いますので,少し考えさせていただきます。この問題はまだまだ戻ることもあると思いますが,きょうの二つ目のテーマであります理事会あるいは役員会の機能の見直し,監事による監査機能の見直しという,これら論点に移りたいと思います。

【白井大学振興課課長補佐】  それでは,資料1のローマ数字2.の○3と○4になります。3ページでございます。○3の方,理事会や役員会の機能見直しと監事による監査機能の見直しについて御議論を頂ければと思います。
 資料1の3ページですけれども,理事会や役員会につきましては,学長のリーダーシップの下で,各大学が教育研究について最大限の成果を発揮できるように,理事会や役員会の機能を改めて見直していくべきではないかというような御提言を教育再生実行会議等からも頂いております。
 この点につきましては,特に学校法人においては,最終的な意思決定機関である理事会が,教育研究に関する学長,大学の意見を尊重しながら学校運営を行っていくことが重要ではないか。国立大学法人においても,学長の判断をサポートするために,役員会がより機動的な役割を担っていくべきではないか。また,全学的な意見の集約であるとか,あるいは学外との連携をうまくやっていくという観点からも,教育研究評議会や経営協議会の有効な活用が重要ではないかということが,おおむね言えようかと思います。
 また,○4の監事の方でございますけれども,監事が教育研究に関する状況など業務の監査──財務・会計監査だけではなくて業務監査を含めて,その役割を効果的に発揮していくためには,その機能についてどのように見直していったらいいのかということは論点としてあろうかと思います。
 監事による業務監査は,大学の教育研究活動の状況を評価するために重要な方法の一つであるということが言えようと思いますけれども,現在どうしても財務・会計が中心の監査になっているような状況もございまして,教育研究活動についても適切に評価できる方を選んでいくことが必要でないかということがございます。
 それと,監事自身が一定の学長や理事会から独立性は求められる機関でございますけれども,一方で,一人だけではなかなか仕事もできないこともございますので,どういった組織的な支援・補助の体制が求められるかということについても御議論を頂ければと存じます。
 ポンチ絵の方でございますけれども,資料の2番の24ページからでございます。先ほども少し前の資料で触れましたように,各大学あるいは設置主体のガバナンスの仕組みについては,国公私ごとに大きく異なっておりますので,まずは国立大学法人からガバナンス全体像について簡単に御説明をさせていただきたいと思います。
 24ページが国立大学法人のガバナンスの仕組みの全体像でございますけれども,特徴的なところとしましては,国立大学法人においては,学長が法人を代表して,その業務を総理するという法人の長としての性格を持っていると同時に,大学の学長でもある,校務をつかさどり,所属職員を統督するという二つ目の面を有していることがございます。
 また,そういった学長については,学長選考会議──これは経営協議会,また教育研究評議会の代表者から構成される学長選考会議におきまして選考されまして,これを文部科学大臣が任命するという仕組みが法定されてございます。
 また,この意思決定プロセスの透明性の確保であるとか,学長が一人で独断的に判断に陥らないという適正な意思決定の担保という観点から,一定の分野につきまして合議制の審議機関というものが組み込まれております。具体的には役員会──予算の作成であるとか重要な組織の改廃については,この役員会の審議を経るということになってございます。また,経営に関する重要事項,あるいは教育研究に関する重要事項については,それぞれ経営協議会,教育研究評議会における審議を経るということになってございます。また,監事というのは別途置かれている状況でございます。
 続きまして,25ページでございます。公立大学法人のガバナンスの仕組みでございます。
 公立大学法人に関しましても,国立大学にかなり似た部分がございますけれども,公立大学法人でも,原則としまして,法人の長である理事長が大学の学長を兼ねるということになってございます。
 ただ,一方では両者を分離することも可能でございますので,例えば学長とは別に理事長──おおむね設立団体の出身の方が多い場合があると思いますけれども,理事長がおられるということがございます。
 また,この学長の選考に関しましては,これも国立大学と同様でございますけれども,教育研究審議機関と経営審議機関のそれぞれの代表者から構成される学長選考機関というものがございまして,そこで選考され,設立団体の長,具体的には知事であるとか市長が任命をするという制度がとられてございます。
 また,意思決定プロセスにおける透明性の確保等の観点から,同様に合議制の審議機関として,この経営審議機関,教育研究審議機関が置かれているという状況でございます。
 続きまして,26ページが学校法人のガバナンスの仕組みをまとめたものでございます。この最高意思決定機関につきましては,合議制の機関であります理事会というものが最終的な意思決定機関となってございます。
 理事長がおりますけれども,この理事長は,学校法人を代表して,その業務を総理するということでございまして,理事長自体が最終的な意思決定機関であるわけではないという状況でございます。
 また,学校法人には評議員会が置かれまして,理事の定数の2倍以上の定数で組織をされまして,法人の職員であるとか卒業生などが評議員として選任をされてございます。学校法人の運営に関する重要な事項──例えば予算,事業計画,寄附行為の変更等については,あらかじめ,この評議員会の意見を聞くことは法律上,求められてございます。
 また,この大学の学長,学校法人は,大学をはじめとしまして,私立学校を設置するということになりますけれども,この設置された私立学校──私立大学の場合ですと,その学長が学校法人の理事に加わって,この学校法人の経営に参画をするということで,教学面と経営面の調和が保てるような制度設計になってございます。
 次の27ページからが監事に関する資料でございます。27ページは,国公私の監事に関する全体像をまとめたものでございます。
 初めに監事の任命についてですが,国立大学法人については文部科学大臣が任命をするということになってございます。この際に外部の監事,内部者だけでなく外部の者も含まなければならないとされております。
 公立大学法人の場合には,設立団体の長が任命をする。
 学校法人の場合には,評議員会の同意を得て,理事長が任命をするということになってございます。また,外部の者を含まなければならないとされております。
 監事の職務でございますけれども,具体的には,この27ページの下の方に,各設置主体法における監事の規定を載せてございますけれども,いずれにつきましても,財務・会計だけでなく,法人の業務全体が監事の監査の対象となってございます。
 ただし,今,国立大学や公立大学については,法人の業務を監査するという非常にシンプルな規定になっているのが現状でございます。
 この監事でございますけれども,現在,非常勤の監事が大変多くなっている状況でございまして,国立大学の場合には72.7%,私立大学では93.8%が非常勤になっているという状況でございます。
 この監事を非常勤としている理由でございますけれども,組織規模・予算規模を考慮すると,フルタイムでなくても,非常勤でも対応可能であるとか,あるいは常勤で就任可能な適任者がいない等の理由が挙げられてございます。
 それから,監事の監査業務を支援する体制でございますけれども,例えば,既に法人の中にある内部監査室の方が監事の業務を補助・支援するような事例であるとか,あるいは監事の下に,専任の組織であるとか人員を配置する取組をされている大学もあるということでございます。
 28ページでございますが,国立大学法人に対するアンケート調査の結果でございます。一部,先ほどと重複する部分がございますので省略させていただきます。
 2番の役員会等への監事の出席の可否でございますけれども,多くの国立大学において,監事の役員会であるとか,経営協議会,教育研究評議会への出席が可能な状態になっているという状況でございます。また,その他の学内会議にも多くの大学が監事の出席は可としており,また学長との定期的な意見交換の機会などを設けている大学も多いということでございます。
 また,3番のところですが,具体的な監事のサポート体制ということで,例えば,監事の下に専任の組織や人員を配置する例としまして,東北大学の監事監査担当を置いたり,山口大学では監事支援室を置いたりといったような事例もあるようでございます。
 4番のところですが,その他に寄せられた意見等というところで,先ほど見ていただきましたように,国立大学法人法における監事の規定が非常にシンプルな法人の業務を監査するという規定でございまして,私立学校法においてはかなり,この監事に関する規定,書き込んでございますことを比べますと,監事の権限が必ずしも明確に規定されていないために,各大学の運用に委ねられている部分があるのではないかという御指摘もあるようでございます。
 29ページですが,日本私立学校振興・共済事業団から御提供いただいたデータを基に作成したものでございまして,私立大学における業務監査──これは最初から財務・会計の監査は切り離しておりますけれども──の内容でございます。業務監査の内容の,特に下の方を見ていただきますと,教育研究活動の実績等に関する監査であるとか,あるいは教育研究活動の企画立案・実施過程に関する監査といった,特に教育研究に関する部分の監査が必ずしも十分に行われていないのではないかというような傾向が見られるかと存じます。
 また,30ページでございます。先ほど国立大学のサポート体制を見ていただきましたが,私立大学における監事のサポート体制をまとめていただいた資料でございます。法人内における監事のサポート体制としましては,内部監査室の設置であるとか,あるいは特定の職員を監事の補佐に従事させるなど,何らかの支援を行っている学校法人が65%あるということでございます。一方では,残る大学については必ずしも特段の支援は行っていないのが現状ということでございます。
 こちらからの説明は以上でございます。

【河田部会長】  では,理事会,役員会の機能の見直しということ,あるいは監事の役割ということで,実際に監事をなさっている方も,あるいは理事長もおられますので,忌憚(きたん)のない御意見を出していただければと存じます。

【上山委員】  恐らく監事の方々から,もっと重要な御意見が出ると思いますけれども,少し,この問題について私の考えているところを申し上げておきます。国立大学に関しては,この理事会と副学長の関係がうまく分類できていないために,その体制の構築が弱いと常々思っております。
 そのことは少し置きまして,理事会や監事の仕事と重なるかもしれない他の論点を申し上げたいと思います。かねてから大学のガバナンスはとても重要だという意識は持っていましたけれども,それは,大学のマネジメントをうまく動かすためのガバナンスが重要だという意味が中心でした。しかし,本来のガバナンスという用語は,コーポレートガバナンスという言葉がありますように,企業の自己統治,つまり企業が社会的な責務を果たすために,自らの社会的な行動を自らが統治するという意味であります。したがって,外部の取締役を入れたり,あるいはコンプライアンス室を設けたりすることによってガバナンスの体制を作ってきたということです。
 これ,実は同じようなことが,大学という組織にも必要になってくると思うのです。つまり,大学組織をマネジメントするためのガバナンスではなくて,より高次な意味でのガバナンスの必要性です。
 このことで私が思い出すのは,1980年代にアメリカで,特に州立大学で極めて盛んに議論されたことと関係があります。80年代は大学が企業的なものをどんどん取り入れ始めた時期です。そうすると,本来の公共性のある大学にはどういう活動が許されるのかを,自ら改めて定義し考えなければならなくなりました。
 象徴的な出来事は,大学はその基金をグローバル投資し始めたのですが,そのような活動の社会的責務は何かという議論が盛んになされたことです。そして,それはソーシャル・レスポンシビリティー・オブ・インベストメントという議論へとつながって行きました。企業の社会的責務(コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティ)と同種の意識です。
とりわけ話題の対象になったのは,公共的な使命を持っている大学の基金は,どういうところに投資をすることが許されるのかということでした。例えば,当時アパルトヘイトで問題になっていた南アメリカに関係する企業に投資して大きな利益を得ることができるとしても,果たしてそれは大学の公共性と合致するのかという議論が盛んになされたのです。それは,まさに本来の意味でのガバナンスの問題です。商業化していく大学を前に,社会的な責務を大学がそれぞれ考える,より高次な形のガバナンスということだと思います。
 そういう意味では,このガバナンスは,監事の役割なのかどうか分かりませんが,大変重要な責務だと思います。単に企業はこういうことをやっている,大学は違うと,そういう意識だけではなくて,大学の研究,教育,財務,そして社会的な責務,そのことも含めた大学の今後の在り方についてアドバイスをする,部局や人間に高い意識が求められるでしょう。ですから,それを担うのは,監事だけではなくて,理事会という部局になるのでしょうが,そのような組織は,より高次のガバナンスの役割を果たさなければならなくなってくるでしょう。
 国立大学は,今まで基本的に国の予算で守られていましたから,そういうことは余り考える必要がなかったかもしれないですけれども,それが社会に開かれていって,資金的な意味での社会との関係をより強く持ってくると,この意味での,より高次なガバナンスというのはとても重要になってくるだろうと予想はしております。
 そのような議論は,ほとんど今までなされていませんので,是非こういう機会に,ガバナンスの別の意味も考えていただきたいと思っております。

【河田部会長】  とてもいい御意見が出ましたですけれども,実際に監事の役をなさっております石原委員はいかがでしょう。

【石原委員】  国立大学法人の監事というのは確かに,それぞれの大学によって,非常に職務の内容は違っております。それから,いわゆる学長がいて,どこの組織もそうですが,監事という名前で,いわゆる事務局とかそういうのについても,点線があったり,なかったりという形になっています。
 ただ,これは大学の規模も違いますし,それぞれのミッションもかなり違うので,今のところ,法人化になってから,監事という職務は作るけれども,あとは運用において,しばらく様子見といいますか,それぞれの工夫でということだろうと思います。
 ただ,民間からおいでになった方は,特に財務・会計に非常に関心もあり,そういう意味では執行体制が弱いというような言い方を再三なさっているのと,権限がどうなっているのかということをおっしゃいます。
 私は,個人的な意見ですけれども,国立大学法人の監事というのは,やはり学長の,今議論になっていますガバナンスやリーダーシップを,いい意味で,いい方向に行くように,いろいろとアドバイスしたりするということが,ある意味で一番実効的であると思います。年に何回か報告書を出して,その報告書どのぐらいというよりも,その時々において,そういうことが必要であると思っております。
 そういう意味では,財務・会計は,それぞれ会計法人が入って,1年間組織的にしていますので,教育,研究,社会貢献等が今どうなっているのか。特に,例えば地方国立大学の場合は,地方の行政や地方のいろいろな住民たちの目から見て,どのように見えているのか,そういった情報を届ける。ですから,そういう意味では,情報をきちんと届ける。これは上になればなるほど情報はセレクトされ,2次情報や加工情報で,なかなか届きにくくなるということもありますので,それを届けることが重要です。
 また,実際にいる学生たちや教職員の中にどれほど,例えば学長の考えや意見が浸透しているのか。これも形式にはそうなるのですが,いや,そんなことは知らなかったとか,事務職員でも,そんな方針は知らなかったということは往々にしてあります。それは今,メール等でどんどんと情報を流すがゆえに,逆に非常に軽い情報として次々,次々,情報が来るということで,何が大事かという優先順位や,また大学にとっての今の課題というものを改めてきちんと認識させるにはどうしたらいいか,あるいは認識されていない部分はどうか,そういうことをできるだけ早くに日々の懇談の中でお知らせするという役割が重要です。これは執行部の理事ですと,学長のいわば部下になりますから,逆に言いにくい部分もあると思います。そういう部分を監事が担っていければいいのではないかと思っています。
 ただ,問題は,非常勤の方が大変多くございます。さりとて,では常勤でというと,人材が難しいのではないかと思います。監事は1期2年で,今,任期の問題もあります。私も,前の方が全部したことを引き継いで,6月にその報告をする,自分は関わっていないがということもありました。これはどこの組織も会計年度で業務を行いますので,そういったことはあると思いますが,やはり2年ないし,大体,2期4年ぐらいなさる方が多いのですが,余りにもタイトに考え過ぎて,それまでの経歴を,ある意味で踏まえるからこそ任用しているのに,一切のいろいろな前のつながりとか,そういうことについて認めることが大変タイトにやらなければいけないということで,私はそのことについては兼務させてほしいとか,いろいろ言っております。そうしますと,今までの経歴は全く踏まえずに,その2年か4年のために尽力せねばならないとなると,そういった人材はなかなかいないと思います。また,それがずっと続く職務という形にもならないと思いますし,同じ人より多様な人材が入った方がいいと思います。
 そういう意味で,もう少し任用について,いろいろとやりやすい,それは運用の問題でもあるかもしれませんが,そういったことがもう少し共有されたらいいのではないかと思っております。

【北城委員】  私も国立大学法人の運営に,そう詳しいわけではないのですが,経営協議会の一員として5年ほど務めた経験があります。私の理解では,国立大学の監事は,文部科学大臣から任命される非常に重要な職務であるし,大学法人の運営について問題があれば,文部科学大臣に意見を言うことができる役職ではないかと思います。しかし,実際にそういう意見を言って,個々の大学の改革を監事が実行した例を,私は聞いておりません。
 任命された職務は非常に重要だと言いつつ,実効的に文部科学大臣に意見を言って,大学法人の運営を変えたということは余り聞いていないので,仕組みとそれに対する期待が適切なのかということが一つあります。それから経営協議会は,その構成員について外部の者を半数以上とするということで,既に幾つかの大学では半数以上,外部の方を過半数入れている大学があります。けれども,私が関係したところではほとんどが半数であり,結局,外部の方は半分なのです。通常の経営協議会の日には外部の方は,何人か欠席されるので,通常は学内委員中心の経営協議会になっているのが実情です。私は,国立大学の運営に関しては,もっと学長と理事,理事会,役員会に執行機関としての権限を与えるとともに,経営協議会は,それが適切に運営されているかどうかを監督するような立場にした方がいいのではないかと思います。それであれば,監事と経営協議会との役割というのは逆に,もっと近いし,同じでもいいのかもしれない,あるいは二つ置く必要はないかもしれません。
 逆に学長の任命などに関しては,この経営協議会において,過半数が外部の方が関与して学長を選ぶ形にしていかないといけません。学内の方が半数以上入っていると,どうしても学内の勢力争いみたいなことが学長選考に影響してしまいます。
 私は,経営協議会が,学長選考に関して大きな力を発揮するとともに,大きな方針を役員会に示した上で,学長をはじめとする役員会が適切に運営されているかどうかを監督することをその役割にした方がいいのではないかと思います。私も年に何回か経営協議会に出ましたけれども日々の運営について経営協議会に諮っても,ほとんどは学校が決めていることをただ紹介されるだけでした。民間側が意見を言って,貴重な意見をありがとうございました,今後の運営に参考にさせていただきたいというだけで,大きくは変わらないのです。
 民間議員が何回言っても,少ししか変えていただけないという実態であれば,執行はもっと学長にお任せして,経営協議会は学長をどう選ぶかということと,学長を評価するとか,場合によっては学長の交代を文部科学大臣に推薦するというか,そういう提案をするぐらいの機能に変えていった方がいいのではないかと思います。
 外部委員はほとんど非常勤で,大半は,その大学に利害関係というか,その大学の繁栄に非常に大きな関心を持っています。私は主として,卒業生を中心としたいろいろな有識者で,この経営協議会を作った方がいいのではないかとも思っています。

【河田部会長】  北城委員には,経営協議会の在り方についても論じていただきました。

【黒田委員】  学校法人のガバナンスについては,日本私立学校振興・共済事業団が調査していただいた資料が非常によくまとまっていると思います。これをこれから分析に入るのだろうと思いますが,規模が相当違いますので,私立大学はそれぞれの規模に応じたガバナンスをやられていくと思います。
 学校法人のガバナンスを考えるときに,やはり教授会の機能,それとの関係をどうするかというものが一番,私立大学にとっては難しいです。私立学校法と学校教育法のはざまがありますから,その辺をどうするかということです。
 平成16年に私立学校法の改正があって,理事長の権限,それから理事会の設置義務,そういうところがきちんと明確化されましたし,また監事の機能についても,先ほど書いてありますように,相当詳しく書かれています。それまでは,監事というのは名誉職みたいなもので,評議員の人が監事になってもいいという格好になっていましたが,今それは全て禁止されています。
 そういう意味で,予算,決算の財政のことだけを監事が監査していたのが16年以前の監事の役割だったのですが,16年以降は業務監査をすることになりました。その業務の中に教育も含まれるということになったわけで,今始まったばかりなのです。
 ですから,なかなか学内的にそこまできちんとやれているところは少ないと思いますが,大学の規模によって,この監事を支えるための組織というのが徐々にできてきています。ここにもありますように,相当数が支援体制ができているということでありますので,それは期待をしていきたいと思います。
 今,先ほどの教授会のこととか,このガバナンスの問題について法律改正をする必要があるかといったら,私はないと思います。今の体制の中で,全てのことがやれるようになっているのです。その気になれば学長のリーダーシップも発揮できるようになっていますし,教授会の権限の問題もそんなに,今言われているようなことにはなっていないのです。
 ただ,何が問題かといいますと,戦前から続いている教授会の既得権益の問題なのです。個人の持っている権限,教授会の持っている権限,それがどこでどう崩せるかということだろうと思うのです。それさえうまくいけば,教育改革というのは可能だろうと思います。
 先ほどから出ていますように,この大学の規模,それから目的に応じて,そのガバナンスの在り方,マネジメントの在り方は変わりますから,そういう細かいヒアリングをやるなり,本音を聞くということ,それは非常に重要だと思うのです。その中で,どの辺を修正すべきか検討することが必要かと思います。
 強いて言うなら,学校教育法の93条の重要な事項という,この重要な事項に全てが含まれてしまっているということが問題です。ですから,学校法人なら学校法人の運営そのものについても,教育に関する重要事項だというので,教授会の許可を得ないと理事会も動けないということになっているところがありますので,その辺のことをどこで切り分けていくか,その切り分けを考えていただければいいのではないかと思っています。

【森脇委員】  私が発言したいと思っておりました内容について,黒田委員が,ほぼ発言されましたので,簡潔に申し上げたいと思います。
 まず先の御発言に,今の大学の実態をどう変えていくのかという御意見がありましたが,私もここが大事な点だと思っています。大学の理事会や監事などにつきましても,大学のガバナンスそのものが,これまで大変弱かった。これを,今,私ども私立大学では,各大学が何とか変えていこうと,そういう努力をしていることは事実だと思います。
 まず一つは,理事会,教授会,それから学長,それぞれの権限について,法的には定められているのですが,余りにもシンプルであるため,いろいろな解釈を長い歴史の中でしてきてしまっています。そのことで,これだけ大きな改革をしようとしたときに,誰が決めるのか,どういう意思決定の流れになっているのかが見えないなどという問題にぶち当たっているのだと思います。
 そこで,はじめの整理として,本当は大学が主体的にやるのが一番重要な点だと思いますが,12ページで既に説明がありましたように,いま一度私たちが,各大学がやる教学面のガバナンス,それから経営面のガバナンスについて取り上げて確認する。そして教授会については,21ページの調査でも運用上,実際に扱われている事項が浮き彫りになってきておりますので,このことと理事会で取り上げられる事項とのつながりについて,もう少し踏み込んだ形で整理し,明確にしていく必要があるのではないかと思われます。いずれにしましても,教学のマネジメントや経営面のマネジメントについて,ガバナンスが非常に曖昧なまま,現在まで来ており,それを改革しようとするので,一体それは誰が決めるのかといった,そういう方にエネルギーが取られているのが実態のように思われてなりません。ですので,93条が,もう1回問題になってくると思いますが,ただ私は,それを先に考えるよりは,まず,この意思決定の主体をもう1回明確にすることが必要だと思います。
 それから,もう一つ大事なのは,教学と経営との連携についてです。今,いろいろな工夫もされております。実際の審議や意思決定がどこでされているのかです。私立大学の場合などは常任理事会とか,教学協議会など,呼称はいろいろ学校によって違うと思いますが,常勤の理事の集まりです。つまりは,そこには学長も,理事長も,皆入ってくるわけです。そこで実際は調整や審議されている実態があるのではないかと思えるのですが,調査では,ここにはなかったように思います。このあたりも,もう少し浮き彫りになるといいのではないでしょうか。ヒアリングという形でも結構だと思います。

【樫谷委員】  監事についてですが,監事は会計監査も大事でしょうけれども,それ以外の業務も大事です。つまり,バランスがとれていないといけないと思います。会計監査をやっているところは逆に会計士とかそういうのではなくて,むしろマネジメントをやっている人とか,あるいは教学の方々,これが三人いればいいのでしょうけれども,二人の場合は,そういう全体のバランスがとれているというのが大事で,例えば会計士が二人いても意味がないと言えば会計士協会が怒るかも分かりませんが,二人でやる必要は全くないと,このように思っております。
 それから,監事という以上,独立性が大事です。独立性の問題としては,資料2の27ページに書いてあるのですが,国立大学法人の方はそうなっていますが,学校法人,私立大学の方は,評議会の同意を得て理事長が任命となっているわけです。監事は恐らく理事長のチェックもしないといけないという立場から見たら,任命をしていただいた人のチェックは極めて難しいのではないかと思いますので,むしろ会社がそうでありますように,最初はスタートはどうするかは別として,監事の同意を得て評議会が決定するとか,独立性をどう保つかという観点から,その選任母体をどうするかという議論をしないといけないのではないかと思っております。
 それから,任期です。理事と監事の任期は恐らく同じかと思いますが,やはり,これは理事よりも監事の方が,株式会社の場合は任期を長くしております。そういう観点も必要であるといったところです。
 それから,権限と責任ですが,例えば監事の下に事務局が置かれていればいいですけれども,なかなか難しいといったときに,事務局を使わないといけない場合があるわけです。そうすると,監事の方で,事務局に対して資料提出命令権があるのかどうなのかということも当然問題になると思います。といいますのは,事務局は理事長の支配下にあって,どちらを向いて仕事しているかというと,理事長の言うことを聞かなければいけない。理事長の意に沿わないようなことを監事が言ってきたときに資料を出さないということも,理屈上は考えられます。そういうことがあったかどうかは別として,理屈上は考えられますので,やはり権限,そういう資料提出も含めた調査権限を,やはり明確にしておかないといけないのではないかと思っております。

【河田部会長】  樫谷委員には,御体験に根差した指摘を頂きました。ありがとうございます。

【金子委員】  監事の問題は大変難しくて,会計的な側面に限るのであれば,いろいろな考え方があると思いますが,これは大学の業務の一般に拡大すると様々な問題が出てくるわけで,どの程度それを真面目にやるといいますか,考えるかということは問題だと思うのですが,今おっしゃったように,例えば権限とか責任とか,それは誰に所在するのかといった側面があります。
 しかも,緻密に考えてみますと,例えば国立大学の監査は,必ずしも学長にも,理事会にも向けられているのでなくて,政府に対して向けられている側面も,やはり私は,かなりあるのではないかと思うので,そういった意味で,監事をこれ以上,非常に精密化していくことができるかどうかということは,少し考えた方がよろしいと思います。監査の問題として非常に話を拡大させてしまうと,むしろ話は焦点がはずれてしまう可能性があると私は思います。
 むしろ問題なのは,監査,機能は非常に必要であって,特に教育研究に関して,実際にバリュー・フォー・マネーというのでしょうか,きちんとお金が目的どおりに使われて,初期の結果をもたらしているかどうかについては,きちんと精査する必要があるわけですが,これに関しては,大きく言えば監査の機能ですが,しかし同時に,やはり,これは大学経営の責任でもあるわけです。
 今までガバナンスは力の調整の部分ばかり意識されてきましたが,実は大学内での資源配分が効率的に行われているかどうかということも非常に重要な問題だと思いますし,教育研究の質が今問題になっているわけですけれども,その質をもたらすのに重要な,必要な,あるいは十分な資源分布が行われているかどうかということをチェックしていくのは非常に重要だと思います。
 例えば先生をどれぐらい配分しているか,あるいは先生の時間がどの程度,実際に教育研究に配分されているのかとか,それも非常に重要な問題としてあると私は思うのですけれども,普通の大きな大学で,それを,きちんとそういったことを把握しているところは,実は余りない。しかも学部を超えて相関調べてみるなんていうところは,ほとんどありません。
 私は,以前所属した大学で1回調査しようとして,結局失敗しました。それは,やはり,ほとんどやったことがないので,どうやっていいかも分からないし,データも肝心なところがほとんどないということが,よく分かりました。
 むしろ問題なのは,その評議員会を含めて,評議員会の監査機能自体がきちんと発揮できるように,そういったことも含めて経営機能がきちんとあるということが重要だと私は思います。
 そういう意味で,後で議論されるのかもしれませんけれども,情報公開ということです。大学内での情報をきちんと作って分析をすることができるようにすることが,実質的には監査機能を強力にするのではないかと思います。

【河田部会長】  様々な意見が出ました。これは割とまとめやすいかと思っております。
 それでは,最後の項目です。大学の自律的な改革サイクルの確立,各大学のガバナンス改革に対する支援ということで,文部科学省からの御説明で,意見交換はもはや時間的に無理かと思いますので,きょうは,この項目についての説明だけをしていただければと思います。

【白井大学振興課課長補佐】  それでは,残された論点,五つございます。資料1の3ページ,ローマ数字の3.「大学の自律的改革サイクルの確立,各大学のガバナンス改革に対する支援」というところでございます。
 これ,論点が五つございますけれども,1番の情報公開の推進といった論点。大学が,先ほど金子委員からもお話がございましたけれども,透明性の高い大学運営がガバナンス改革の前提にあるのではないか。そのために,更なる情報公開の推進が必要ではないかといった論点でございます。
 それから,2番の教職員の意識改革。これも部会でも御意見を頂きましたけれども,学長や執行部が描いている改革のビジョンを,大学改革を進めていくためには,教職員が十分に理解・共有することが必要となるのではないか。そのために,どういった取組が必要となるかといった論点。
 それから3番目ですが,各大学や大学団体等による幹部人材の育成・研修。将来的に学長や副学長,学部長などの職員となるような方をどのように育成・研修していったら良いのかどうか。また,効果的な取組はどういったものが考えられるのかといった論点がございます。
 それから4番,大学による自律的な改革の推進ということで,例えばアメリカでは大学教員協会,大学理事会協会などの団体が,大学のガバナンスに関する権限や責任の在り方について,自ら基本的な考え方をお示しされているという状況がございます。我が国における大学団体,教員団体にどういった役割・機能が期待できるかといったことが論点として挙げられるかと思います。
 それから最後,4ページの5番でございますけれども,国等による支援ということでございます。国の予算事業等においても,例えば補助事業の要件として,一部の部局だけの取組でなくて,全学的な取組であることを求めているなど,ガバナンス改革を間接的に支援するような予算事業を文部科学省においても組んだりしておりますけれども,こういったことのほかに,どういった支援が考えられるのかといったことも論点としてあろうかと思います。
 関係する資料でございますけれども,資料2の31ページ以降にまとめてございます。ポンチ絵,資料2の31ページですが,大学の情報公開に関する資料でございます。
 既に各大学や,あるいはその大学の設置者である法人に対しましては,各種の法令に基づいて様々な情報公開が現状求められているという状況でございます。例えば国立大学,公立大学でありますと,中期目標や中期計画というものを立てて,これらも公表することになっておりますし,また学校教育法におきましても自己点検・評価結果の公表,認証評価結果の公表,教育研究活動状況の公表といったような各種の規定が設けられております。
 また,学校教育法の施行規則172条の2におきましても,この中段の方に列挙していますような事項について,これらの状況も公表することが求められてございます。
 さらに大学設置基準におきましても,例えば授業の方法,内容,成績の評価の基準といった教学的な事項についても,これを明示するということが規定をされてございます。
 一番右の欄が財務・経営に関することでございますけれども,例えば理事の任免でありますとか,あるいは財務諸表等についても,これらも一般に公告をしたり閲覧をさせるということは法律上の義務として掛かっているところでございます。
 私立大学におきましても,財務情報を一般公開している学校法人は98.7%,ほとんどというような状況になっているのが現状でございます。
 次の32ページにお進みいただきたいと存じます。先ほど御紹介いたしました,アメリカにおける3団体によるガバナンスに関するステイトメントというものを御紹介しております。若干古いものでございまして,1966年にアメリカの3団体,米国大学教授協会,米国学長会議,米国大学理事会協会といったものが,このステイトメントを採択しまして,ガバナンスに関する基本的な合意の形成を図ってございます。
 この内容を見ますと,例えば理事会は,基本的には大学の最終的な意思決定機関である。ただし,全体の概観をしながらも,執行機能は執行部である学長や学部長に,あるいは教育及び研究に関することは教授団に権限を委任するということが書かれてございます。理事会は,適切な自己抑制を働かせるべきである。
 ただ,一方で,その主要な役割としては,将来発生することが予見されるニーズと,それに必要なリソースを関連付けて考えることが期待されているということが書かれております。
 また学長については,大学の最高執行責任者,CEOである。組織におけるリーダーシップを評価される。大学の目標設定と目標の実現,執行に責任を負うとともに,社会一般に対して大学を代表する責務があるということが書かれています。
 それから教授団,ファカルティーですけれども,教授団は教育課程,授業科目,指導方法,研究,教員の待遇などについて主要な責任を負う。これらについて理事会が異なる判断を行うのは,ごく例外的な場合のみであって,かつ,その場合には教員組織に理由が伝えられるべきであるということが書かれています。
 また,教員の待遇に関すること,任用,昇進,テニュア承認等については,教育方針の中心的な事項であって,研究者の適性を判断できるのは,同僚研究者が最もその適性があることが,基本的に教員組織の責任によって決定すべきであるということについて,これを3者の関係団体が合意をしたステイトメントで作られているということでございます。
 続きまして,33ページでございます。ローマ数字3.の最後の5番の国等による支援という論点に関する資料でございます。予算を通じた大学のガバナンス改革支援についてということでございます。二つ論点を挙げておりますが,一つには,従来の国から大学に対する支援といったものが,どうしても各学部の教員数であるとか学生数等に基づいた予算配分が中心であったために,なかなか大学本部が裁量的な経費を確保することが難しくて,各組織ごとに決められたような硬直的な予算になりがちだったといったことがあったと思います。
 また,競争的資金に関して,間接経費の措置は認められてきたものの,これも以前,上山委員からもいろいろ御指摘を頂きましたけれども,競争的資金を獲得した研究者自身の成果として捉えられるような傾向があって,必ずしも本部の方で自由に使えるような予算にはなっていなかったのではないかということが挙げられようかと思います。
 こういった状況につきまして,これまでやってきた取組でございますけれども,平成15年度以降,GP事業などをはじめとしました国公私を通じた大学改革を支援するための予算を措置するようになりまして,その中で,大学全体での応募を求めるとともに,大学に従来からの運営費交付金等とは別枠の補助金を交付するということで,大学本部にかなり高い予算や,あるいはそれに伴うポスト,特任教授のポストの自由度が付されるようになったという状況でございます。
 また,次のページに御紹介いたしますけれども,現在では国立大学法人運営費交付金等のスキームの中でも,より大学のガバナンス改革の取組を支援するようなメニューの設定というのも行われるようになってきております。
 このGP事業については様々な評価があると存じますけれども,この8月に取りまとめられました調査検討会議の評価におきましても,改革プランを実施するために,学内資源の活用や関係者との調整,予算案への落とし込みなど,学内の幅広い作業が必要であって,教職員の意識改革をもたらしたのではないか。あるいは,学長が学部教授会の枠組みとは別に,自らのリーダーシップを発揮したパイロット・プログラムとしての役割を果たしたのではないかといったような評価もなされているところでございます。
 それから,2点目の論点であります間接経費についてですが,平成13年度から開始された第二期の科学技術基本計画におきまして,間接経費の予算拡充といった目標が示されてございます。
 このときの記述が参考になるかと思いますけれども,この間接経費については,競争的資金をより効果的・効率的に活用するために,研究の実施に伴う研究機関の管理等に必要な経費を手当てする必要がある。このため,競争的資金を獲得した研究者の属する研究機関に対して,研究費に対する一定比率の間接経費を配分する。目安としては当面30%程度である。この間接経費は,競争的資金を獲得した研究者の研究開発環境の改善や研究機関全体の機能の向上に活用するということが書いてありまして,改めて,この間接経費の意義は,ここに集約されていると思われるところでございます。
 34ページでございますけれども,予算を通じた大学のガバナンス改革支援についての○2という資料でございます。これは今回,この8月の概算要求を中心に記載した資料でございます。
 上から,国立大学改革の推進ということでございまして,国立大学において教育研究組織の再編成であるとか,あるいは年俸制など人事・給与システムの弾力化などを通じて,各分野における抜本的機能強化等を行っているような大学に対して重点的な支援を行うということで,現在,概算要求では330億円を要求しているところでございます。
 それから,私立大学等改革総合支援事業という中で,大学は,例えば教育の質的転換として,全学的教学マネジメントの下でのPDCAサイクルを回すことであるとか,あるいはナンバリング・CAP制・学長裁量経費など,全学的な取組を行っているような大学に対して支援をしていくということを要求してございます。
 それから,次のスーパーグローバル大学事業でございます。このスーパーグローバル大学事業では,RU11の方でも間接経費の充実といったことが提言されたところでございますけれども,直接経費120億円の30%に相当する間接経費が必要であるという判断に基づきまして,この36億円分を加えたトータルの156億円を要求している状況でございます。
 四つ目ですが,大学改革加速プログラムについては,国として進めるべき改革の方向性,例えば今議論しているようなガバナンス改革であるとか,あるいはIRの推進等の条件に合致した申請プロジェクトを行っている大学に対しての支援を行うというものでございます。
 最後の地(知)の拠点整備事業,大学COC事業でございますけれども,支援条件として,全学的な取組として位置付けることへの明確化を求めております。学長を中心とした事業の実施体制の整備であるとか,学則等に位置付けること等を求めてございまして,こういったものを通して間接的に各大学のガバナンス改革を支援しているというような状況でございます。

【河田部会長】  きょうは二つのテーマしか論じられませんでしたけれども,独断と偏見で総括するならば,教授会の役割の明確化ということ,教授会は,とかく組織を守る原理が働いて保守的になる可能性が非常にあるため,そういう中で教授更に教職員全ての大学人に,大学のマネジメントの重要性をどういう形で認識させ,大学人として共有させねばならないのかという問題がありました。
 それから,特に学校教育法第93条の教授会というものの役割についてです。それを,特に戦前からあるような古い大学における教授会の権限をどういう形でコントロールすればいいか。特に93条の「重要な事項を審議する」という,それをどう切り分けるのかということでした。それに対しては,国立大学の,あるいは有力なそういうリサーチ・ユニバーシティーの学長をお呼びして,本音を伺う機会を作り,そのときに,できうれば教員の方にも来ていただいて,本音を語っていただくといったことをしていけばどうかということでした。
 さらにまた,監事ということで言うならば,監事というものが私立学校法では,平成16年に新しくなって重要性が評価されましたけれども,私がいた大学でも大体監事は卒業生の公認会計士か弁護士の方にお願いする形が多く,まだ必ずしも教育,研究という教学面についてのチェックは十分できていない。そういう状況の中で,きちんとした教育研究,大学の在り方,社会的な責務という高次な,そういう大学本来の問題に責任を持つ監事が必要ではないか。あるいは学長のガバナンス,あるいはリーダーシップを良い方向に支援するのも監事の役割だ。しかし,いや,そこまで監事にやってもらうのは大変だからという意見もございましたし,あるいは国立大学法人における経営協議会の在り方,これは,もう監督する役目にしたらどうかということでした。
 様々な意見が出ましたので,また副部会長と事務局と相談しながら次回,残っている問題を論じた後,多分10月には,ヒアリングを実施すると最低二度の開催になるかもしれません。この組織運営部会では,ガバナンスについて年内に取りまとめを出さねばなりませんので,討論,審議の取りまとめ,いわゆる答申の基になるたたき台を用意して最終案を,という方向でやらせていただければと思っております。
 それでは,本日はこれで終えたいと存じます。
ありがとうございました。

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