ここからサイトの主なメニューです

組織運営部会(第2回) 議事録

1.日時

平成25年8月6日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学のガバナンスの在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)河田悌一部会長
(副部会長)北山禎介副部会長
(委員)帯野久美子委員
(臨時委員)樫谷隆夫,金子元久の各臨時委員
(専門委員)赤松洋子,石原多賀子,上山隆大,黒田壽二,小林雅之,田中愛治,森脇道子の各専門委員

文部科学省

藤木文部科学審議官,板東文部科学審議官,小松私学部長,関文教施設企画部長,常盤高等教育局審議官,中岡高等教育局審議官,里見大学振興課長,豊岡国立大学法人支援課長,森私学行政課長,田中高等教育政策室長,白井大学振興課課長補佐 他

5.議事録

(1)大学のガバナンスの在り方について,文部科学省から資料1に基づき説明があり,その後,意見交換がなされた。

【河田部会長】  きょうの部会では,今後のガバナンスの在り方についての考え方,あるいは方向性を示さねばならないと思っております。本日の朝の日経新聞に,追手門学院大学では教授会を学長の諮問機関にするという,画期的な記事が出ておりました。追手門学院大学長の坂井先生は,京都産業大学の学長をしておられたのですが,京都産業大学を大きく変えられ,またその後,今,この新しい大学で,こういう形で改革をなさっているということで,その紹介がございました。
 今回,用意いたしました,資料1「検討に際しての論点(例)」については,前回の資料にも出ておりましたけれども,前回の御議論,あるいは御意見を追加した資料を用意しておりますので,各項目ごとに具体的に,問題を五つのテーマに焦点を絞って進めていきたいと思います。
 その五つといいますのは,一番最初が,「リーダーシップを発揮できる体制の整備」,2番目が「予算に関する学長の権限」,3番目が「教員人事に関する学長の権限」,この中で,教授会の在り方などが問題にされます。4番目が「学長の選考方法・評価」について,5番目が「学部長の役割・選考方法」,今回の追手門学院大学では,学部長を学長が決定するという形にお変えになっているわけでございます。
 こういう五つの問題にテーマを絞って,それぞれ国立,公立,私立という大学の様々な形態もありましょうし,その問題についてお話を頂きたいということで,まず第1番目は,学長のリーダーシップの確立,「リーダーシップを発揮できる体制の整備」について,事務局から御説明を頂きたいと思います。

【白井大学振興課課長補佐】  それでは,資料1,「検討に際しての論点(例)」の最初の丸になりますが,「リーダーシップを発揮できる体制の整備」というところから始めさせていただきたいと思います。
 なお,資料1,「検討に際しての論点(例)」につきましては,前回の御意見を踏まえまして,主に四角書きの部分に,当初挙げさせていただいた問題提起から一歩踏み込みまして,ある程度方向性が見えるものについては白抜きの四角で,また,当部会でもう少し御議論が要ると考えましたものにつきましては黒塗りの四角で,論点として提示をさせていただいております。また,新たに委員の御指摘を踏まえまして,論点として追加したもの,例えば「情報公開の推進」の項目を追加しているところでございます。
 それでは,最初の問題提起でございますけれども,学長がリーダーシップを発揮できる体制を整備していくためには,例えば専門的な支援スタッフであるとか,副学長,学長補佐といったスタッフの活用ということが考えられますが,具体的にどういった方策が考えられるのかといったことでございます。
 現在でも,各大学におきましては,例えば執行部から構成される一定の意思決定機関,例えば大学運営会議や大学経営会議といったものを設置していたり,あるいは,新たに副学長や学長補佐といった職を設置されたりといった様々な工夫が行われている事例も見られると考えております。
 また,研究者からの御指摘でございますけれども,日本の大学の学長,これからまた資料で御説明いたしますけれども,既に,諸外国と比べても,法令上,制度上は大きな権限が与えられているのですが,なかなか学長がうまくリーダーシップを発揮できないとすれば,それは全学的な意向をうまく集約させる体制ができていないからではないかといった御指摘も頂いております。
 資料2を並行的に御覧いただければと思います。
 資料2の1枚目,現在の法令上の学長・学部長に関する職務と権限について整理したものでございます。学校教育法の92条で,学長と学部長について規定を設けてございます。併せて学部長についても,今,御説明をさせていただきたいと思いますが,「学長は,校務をつかさどり,所属職員を統督する」という書き方,また,学部長については,同様に,「学部に関する校務をつかさどる」と規定されてございます。
 これらについて,コンメンタール等によりますと,「校務をつかさどる」という表現については,学長が大学の包括的な最終責任者としての職務と権限を有することを明らかにしたものであると解釈をしてございます。また,学長は所属職員を「統督する」とございますけれども,この表現については,行政機関における長と部下の職員の関係については,一般的には「指揮監督」とか「指導監督」といった用語で表されるのですが,より包括的に高い大きな立場でなされる,特に大学のように教員の一定の職務の特殊性があるような場合については,より包括的,大局的な立場が重視されるということからも,「統督」という言葉を使われると解釈をされてございます。
 学部長に関しましても,同様に,学部運営上必要な事柄については,「学部に関する校務をつかさどる」とございますので,学部長の責任と権限に基づいて処理をすると解釈されているところでございます。
 また,学長と学部長の関係でございますけれども,学部は当然,大学の内部組織でございますので,大学の責任者である学長の下で,学部,学部長もその統督を受けるという関係にあるというのが制度設計上の解釈でございます。
 資料2の2ページにお進みいただきたいと存じます。現行の制度下で,具体的に学長のリーダーシップを発揮するための体制整備ということでございますけれども,いろいろな大学で様々な工夫があろうかと思っております。
 先ほども一部,御説明をいたしましたけれども,学長,副学長,学部長,事務局長等から構成される大学運営会議のようなものを設置して,そこに最高の意思決定機関としての役割を集約させるというような取組をされている大学もございます。
 また,分野ごとに担当の副学長を設置される例,あるいは将来の幹部候補の養成といった意味合いもある場合もあるようでございますけれども,例えば学長特別補佐といった役職に若手の教員を就けて,早い段階から大学運営について経験をさせるという形もあるようです。
 ほかにも,例えば学長企画室,学長の意を介することができるような大学の将来戦略を策定するような部署を作ったり,学長直属のIR室,IRを通じて全学的な状況を学長が把握できるような組織を作ったり,学長の下に危機管理室を設置して,大学全体としてのリスク管理に備えるような例といったものもございます。
 また,違う形としまして,アメリカに近い形かもしれませんが,全学教授会を開催して,学内の様々な意見を集約して,そこで教育方針を策定するような取組もございます。ほかにも,経営戦略に対応した事務局体制の刷新であるとか,専門性の高い職員の育成・採用といった取組をされている大学もございます。
 なお,下の方に海外の事例についても御紹介しております。
 アメリカでは,学長やプロボストなどが執行部を自ら選任して,自分たちをサポートするような体制を作り上げている状況がございます。また,専門的な職員組織についても相当に発達しておりまして,人事・財務,学籍管理,あるいはIRといったようなそれぞれの分野に対応する専門的なスタッフについても,大変流動性の高い状況になっているようでございます。
 また,イギリスの大学でも,学長や執行部を中心にした意思決定の機関というものが設けられているようでございまして,例えばヨーク大学においてのシニアマネジメントグループ,マンチェスター大学におけるシニアリーダーシップチームといったように,学長,副学長,事務局長などの幹部職員が集まって意思決定をする機関というものが設置されている事例もあるようでございます。
 なお,参考までに,別の資料になりますけれども,資料3「諸外国における大学ガバナンスの状況」を御用意いたしております。
 1ページ目,2ページ目は項目ごとに細かい資料になってございますけれども,3ページ目以降,アメリカ,イギリス,フランスの各大学について,それぞれの国のそれぞれの大学の在り方,非常にガバナンスも多様でございますけれども,一番一般的と考えられる事例を例にとりまして,主なガバナンスの像について御説明をしているところでございます。
 こちらの説明は以上でございます。

【河田部会長】  各大学において,国公私を問わず複数の副学長制というのは,近年かなり普遍的になっておりますし,小さな大学でも副学長がいたりという状況であります。様々な形での御努力があると思いますけれども,この問題につきまして,それぞれの先生方から,学校種も違いますので,ここはうまくいっているとか,ここは問題だとか,こういうところは法令的な改正についても,あるいは詳しく知る必要があるのではないかという御意見を忌憚(きたん)なく言っていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【赤松委員】  きょうは学長のリーダーシップの確立ということですが,私は大学の外の人間という立ち位置ですので,改めて事務局に質問という形でお願いしたいのですが,今,対策がたくさん並べられましたけれども,学長がリーダーシップをとることがうまくいかない要因というのを幾つかのパターンでお示しいただけると有り難いと思います。いかがでしょうか。
 そもそも学長のリーダーシップの発揮が期待されるのは大学改革に取り組むためということですので,これまで教職員の意識改革こそ重要と言われてきましたように,学長が理想のビジョンを示して,学内全体の理解を得られればいいのですが,それがうまくいかないという要因がいろいろあると思います。
 これまでいろいろ具体的な対策が挙げられてきましたけれども,まず要因をきちんとお示しいただけると有り難いと思います。特に法律の上で,先ほど,相応の権限があるはずなのにそうなっていないという事実上の問題,そういうことも含めてお示しいただければ有り難いと思います。よろしくお願いします。

【田中委員】  事務局がお答えになるべきかもしれませんけれども,大学の人間がお話しした方が話が早いと思いますので,簡単に申し上げますが,大学が一般の企業と異なるのは,目的が三つあると思います。
 大学教員の役割というのは,一つ目は教育です。つまり学生にとっては,教育に時間を割いてくれる教員がよい教員です。しかし,二つ目に大学の教員には研究を推進するという役割がありますから,研究をしなければならない。研究時間をとれば教育時間が減るということがあります。三つ目には,大学の運営とか改革をするには,業務,行政,大学運営をしなければならない。
 ですから職員にしてみれば,業務をしてくれる教員がいい教員,学生にしてみれば,教育に時間を割いてくれる教員がいい教員ですけれども,学会での評価は研究で決まりますから,この三つは全部,時間をお互いに取り合うので,三つが完全に相反するのです。
 ですから,学長が大学を改革しようとすると,何か委員会を作って改革を進めようとすれば,教育と研究の時間が取られるので,そうすると,教員はそれに逆らうということになります。
 もう一つは,学問の独立というものは認められていますから,学問の独立を重視するためには研究を進めたいと言えば,どうしても教育改革とか行政改革に関して反対する。そこが多分,学長の権限があるにもかかわらずそれを押し付けることができない。
 つまり,目的は三つあって,その三つの方向に向いて常にバランスをとらないと大学は運営できないというのが多分,ジレンマではないかと思います。簡単に,内部の者としてはそのように見ております。

【樫谷委員】  少し不明なところがあるので,御説明いただいた中で,確認したいのですが,資料2の1ページ目で,統督するという用語があります。これは,包括的に高い大きな立場でされるということで,非常に強い権限だということですが,「例えば」のところで,「大臣又はこれに準ずる機関の長と部下の職員との関係に係る」うんぬんと書いてあるのですが,例えば今の大臣と部下の関係で言うと,必ずしも本当にガバナンスが働いているのかどうか分からない場合も,状況によってはあると思います。
 「統督」という用語をもし使うとしたら明確にしておかないと,何か象徴的な立場みたいな,祭り上げられるみたいなイメージになると問題ではないかと私は思います。
 それから,大学ということで言っているのですが,法人というのと大学というのがあるわけです。法人は学校法人,大学は教育ということだと思うのですが,要するにガバナンスだと,マネジメントということになりますと,大学の学長というものと法人の長である理事長というものの役割,それが何となく,この文章を見ても非常に不明です。包括的な最終責任者といったら,大学の学長が,大学の中だったら何でもできるということなのか,やはり経営というものがあって,理事長があり,理事会がある。そこの整理の仕方が,この文章を見ても,あるいはほかのものを読んでも,よく分からないので,そこの整理整頓をしっかりしておかないと,学長がオールマイティーなのかどうなのかが不明で,実際はなかなかオールマイティーではなく,理事長の権限が強いところもあるし,いろいろあると思いますので,そこの整理は必要だと思います。
 法人と大学,つまり,会社の場合は,法人の代表者は代表取締役社長ですけれども,大学というのは一つの事業部長です。ですが,そういう関係なのか,少し違うのか,そこは,我々第三者というか,学校に余り関係ない者にとって不明なところがあり,分かりにくいところがあるので,もう一度整理して御説明いただけたら,大変有り難いと思います。

【黒田委員】  私もこの議論をするに当たって,一番最初に論点を決めなければならないのは,国立大学に対する学長の話をしていくのか,私学も含めてやるのかということです。私学を含めてやりますと,今,話があったように,学校法人制度というのがあって,大学というのは人格を持たない法人なのです。そうすると,そこにおける学長の責任というのは社会的には何もなく,全て,理事長に責任があるわけです。私立学校法と学校教育法の関係ですが,私学の場合は学校法人の長は理事長であり,学長を兼ねていても法的に区分されています。
 だから,学長といっても,そういう学長と国立大学法人の長としての学長とは全く違う制度になっていますので,どちらを対象にして学長を議論するのかということによって,ガバナンスの在り方,リーダーシップのとり方が全く違ってくる。その辺をどのように,きょう,ここで切り分けて議論するのか,お教えいただきたいと思います。

【白井大学振興課課長補佐】  1点,資料で補足をさせていただきたいと思います。
 学長と申しましても,学校教育法における学長と,また,国立大学や公立大学における法人の長としての学長という,両方の局面がございます。
 資料2の10ページになりますけれども,少し補足説明をさせていただきたいと思います。大学ガバナンスにつきまして,主に教学面のガバナンスと経営面のガバナンスという二つに分かれてくると存じます。このうち教学面のガバナンスにつきましては,学校教育法の体系で記述されているところでございまして,先ほど御紹介いたしました学校教育法の92条,ここで学長の権限というのが規定されているという状況でございます。これは国立大学,公立大学,私立大学,それぞれについて共通して適用されてくる規定ということになります。
 その一方で,各国立大学,公立大学,私立大学,それぞれの組織に関する法律というものがございまして,国立大学であれば国立大学法人法,公立大学であれば地方独立行政法人法というものがございます。また,一部公立大学については,法人化をされていない公務員としての形をとっている大学というのも残っておりまして,これについては教育公務員特例法といった法律も適用されるところでございます。また,私立大学に関しましては私立学校法がございまして,こちらが適用されてくるところでございます。
 特に特徴的なところとしましては,法人の長につきましては,私立大学は理事会が大学の最高意思決定機関としてございまして,また一方で,大学を預かる最高責任者としての学長というものが,基本的には,制度としては切り分けて置かれているという状況でございます。
 一方で,国立大学の場合には,法人の長としての学長と大学の長としての学長というものが,これは同一の人物を充てられているという状況でございます。また,公立大学法人に関しましても,これはいろいろ選べることはございますけれども,基本的には理事長,法人の長としての学長と大学の長としての学長が同一であるということが基本的な在り方としてなっているということでございまして,学長といいましても,法人の長としての学長という側面と大学の長としての学長という側面が,それぞれ設置主体別に異なってくるというのが現状でございます。

【河田部会長】  具体的なお話の中で,それぞれのパターンがありますし,私学の中でも,理事長と学長を兼ねておられる,あるいは慶應,早稲田のような形で,総長なり塾長なりが,二つの権限を持っておられる場合と,私が勤めておりました大学などは,いわゆる法人の長である理事長と教学の長である学長は別の人間がやっています。大手でもそういう大学は非常にたくさんございまして,様々なパターンがあるのですが,ここでは一応,国公私を兼ねて問題点はどこにあるのか,きょうはその辺の議論で,国立大学ならこういうことが必要だろうということを言っていただければいいのではないか。そのように議論を進めていこうと考えます。そうでないと,最初から対象を絞りますと難しいので,いろいろな大学から,短期大学からも委員が出ておられますので,それぞれのお考えを,そして,共通項はどこなのか,国公私の三つに分けて,個別にする方がいい場合はここが問題だと,そのように切り分ければよいと思いますので,どうぞ御意見をよろしくお願いします。

【北山副部会長】  これは質問になるのかもしれませんが,今,事務局から御説明があったように,いろいろな法律があって,法律の趣旨にのっとって権限が定められています。ということは,国立大学にしろ,私立大学にしろ,それぞれの大学において,その法律の趣旨にのっとった組織規程や権限規程というものが整備されているはずです。
 当然,学長なり理事長の権限が明記されており,特に学長については大きな権限があるような規定になっているはずです。通常の会社ですと,そのような規定がきちんとなされています。例えば担当役員や部長であれば,金額がいくらまでとか,期間がどのくらいまでであるとか,いろいろな内容で権限が決められています。あと,組織体についても,通常の企業ですと経営会議などが事実上の意思決定機関になるのですが,その最終決定の方法も決められています。
 例えば私どもの銀行ですと,経営会議メンバーの意見を考慮して,最終的にCEO,社長とか頭取が決定するというかたちになっており,決定権者は一人にしています。会社によっては多数決のようなやり方もしていますけれども,分からないのは,恐らく大学でもそういう権限規程がきちんとあるはずなのですが,どうしてそれがワークしないのかということです。昔からの慣習があって,規定に違反しないように装って,何となく校務が進んでしまっているといった,権限規程と実態面とのずれがあるのか,その辺の事情がよく分かりません。

【帯野委員】  先ほど,赤松委員の質問に対する御説明で,大学の教員には教育と研究,行政があるということでした。まさにそのとおりで,先生によっては20以上委員会を持っていて,恐らく本人も何をしているか分からないような状態で日々過ごされていると思うのですが,三つの役割をどう整理するかということは脇に置きましても,この三つの役割の中で,特に行政については教える必要があると思います。
 これに関しては,サポートする事務,職員の体制を考えなければいけないというところで今のお答えにつながるのですが,私の知る限りの幾つかの大学では,ほとんど管理システムができていません。コンピューターは導入されていても,コンピューターに入れる以前のシステムができていなくて,例えば指揮命令系統がどのようになっているのか,それから,各管理職の役割と責任,権限がどのように明確にワークしているのか,意思決定においても,いつの間にかどこかで決まっているという,30年ぐらい前の方法が連綿と続けられていて,コンピューターが入っていても,そこは全く合理化されていない。ということは,恐らく今まで大学に経営という観念がなかったのではないかと思います。
 そこで,解決の方法として,資料2の裏面,2ページに,専門性の高い職員の育成ですが,これを一歩踏み込んで,どのようにして職員を育成するのかということを,この際,少し突っ込んで考えた方がよいのではないかと思います。学長の改革意識が共有されないというのは,共有されていても,職員にしてみれば,昔ながらの方法で,予算は減らされ,人は減らされるけれども,仕事は,新しいミッションによって増えていき,しかし業務そのものは,30年ぐらい前のやり方で足元の仕事をあっぷあっぷしながらこなしているという状態で,これではどんなに学長が高いミッションを掲げても,あるいは制度を整理しても結局はリーダーシップを発揮できないわけですので,やはり日々のところで,もう少しアドミニストレーション,専門家を育成するということをこの際,一歩進んで考えないと,具体的な解決にはつながらないと思います。

【上山委員】  特に国立大学に関して発言させていただきますと,学長の選定の仕方がとても大きな要因の一つでもあると思います。短いところで言うと,2年に1回ぐらいの選挙が行われる。それを全職員,あるいは全教員で選定が行われるわけです。そうすると,全教員の利害をきちんと反映してくれるような学長を,当然ながら選ぼうとして,それが2年なり3年なりの間に,その人がそういうことをやってくれたかどうかという目が常に働いているわけです。
 そうすると,仮に大きな改革をやろうとしても,それが教員の利害と反する場合には,その学長を落としてしまえばいいというベクトルが働きますから,当然ながら,執行部もそのことを見越して意思決定をしてしまう。その意味で,強い改革の力というのはなかなか出てこないというのが現状だと思います。やはり10年ぐらいの単位でやらなければいけないのではないかと前から申し上げているのですけれども,長期的なビジョンを持って大学運営をしていく必要があると思います。
 それから,先ほど田中委員がおっしゃったように,各教員は,様々な利害といいますか,関心を持って研究と教育を行っていますから,特に研究ということに関して言いますと,個別の大学の外に,それぞれの分野の独特の共通的な世界があって,そこの論理が個別の大学の中に入ってくるわけです。物理学なら物理学の分野で,こういうところが伸びてきている,こういう議論がなされているといったことです。当然ながらそれは,個々の大学の経営と少し違うような論理がそこの中に入ってこざるを得ない。
 それも踏まえて,大学の学長は判断をしていかなければいけないですから,非常にマルチな目的の中で経営判断していかなければいけないという,とても難しい仕事を担わされていると思います。そういう意味で,大学の総長,学長なりの選定の仕方ということにも踏み込むべきだと思っています。

【金子委員】  組織運営の話をしますと,いろいろな問題がたくさん出てくるわけでありまして,それをどのような形で全て議論するのかという,確かに職員の問題も問題でありますし,それから,学長の選定の仕方も問題ですが,一番基本的な点について申し上げたいと思います。それは,大学の責任は誰が最終的にとっているのかということと,責任者がどのような権限を構成員に対して持っているのかということです。
 私は,最終的な責任者は,私学にあっては,法人に関しては法人で,国立大学に関しては学長だと思います。それで,学長は,国立大学は法人の長を兼ねるということになっていますから,最終的な責任はそうですが,そのときに,先ほどのお話で,統督という言葉は何を意味するのかということが問題になりましたが,大学の特徴は,最終的な構成員に対して,全ての人に対して責任者が,言ってみれば,細かい業務命令の権限を実質的には持っていないということだと思います。
 それはなぜかというと,個別の,特に教員に関しては,教育研究に関してやっている活動が,上からは判断が直接,非常にしにくい,個別の作業だからです。大学のそもそもの原型,ユニバーシティーと今,言っていますけれども,これはユニバルシタスというのが語源でありまして,ユニバルシタスというのは,よくいろいろなことをカバーしているからユニバーシティーだと誤解されていますが,これは実はギルドという意味でありまして,その頃のギルドですから,要するに個々の専門家が集まった団体がもともとの原型なわけであります。
 それはなぜかというと,個々の専門については,ほかの人たちは判断できないので,それはやはり業界というか,仲間うちである程度判断してもらって,それをまとめて,しかし,組織として大学を作るというのが考え方だったわけです。
 ただ,それはもちろん中世の話でありまして,現代の大学は社会の要求に密接に関わり,反映もしていかなければいけないわけでありますから,全く学者の協同組合という議論は,それだけでは成り立たないことは事実ですけれども,やはり一定の権限は各組織に委譲しなければならない,これは大学の一番大きな基本的な特徴だと思います。
 例えば,私は大学で学位をもらい,それから,アメリカの大学でも学位をもらいましたが,この学位に何と書いてあるかというと,何々学部長の推薦により学位を与えると,学長名で書かれているのです。学長が直接与えるというのではなくて,判断の権限はどこかに委ねていて,それを踏まえた上で学長が判断をするという形式をとっているわけですが,これはほとんどの国でそういう考え方をとっていると思います。
 それで,曖昧といえば曖昧ですけれども,一定の専門性に基づく委譲という考え方があって,それをどのように再構成していくかというところは,確かに今,問題になっていると思いますけれども,そういった意味で,原則自体を何か明確な言葉とか概念で表すということは非常に難しい。そのために法律上も相当曖昧な表現になってしまっているということは,基本的な認識としておくべきだと思います。

【石原委員】  学長のリーダーシップでございますけれども,これは国公立問わず,規模によっても随分,その実態は違っていると思います。六,七十人の教職員を統括していく場合と数千人がいる場合では,非常に形態も,また,求められることも違っていると思うのですが,規模によって,むしろ国立大学でも,いわゆる大きな総合大学,それから,単科の小さい大学,それぞれの学長のリーダーシップの対応も,また,統括の仕方も違ってくると思っております。
 特に国立大学の場合ですけれども,先ほども御意見がございましたが,経営戦略に対応した事務局体制の刷新でございますが,事務局が,いわゆる行政組織なのですが,教育,研究,特に法人化になった後の事務局体制をもう一度,それにふさわしいものに再構築していくということで,学長のリーダーシップを支えていく体制を充実していくことが大事ではないかと思っております。
 私学と比較すると,私の経験からいいますと,事務局体制が,私学はどちらかというと少数精鋭主義で,非常に機動的な事務局体制を持っているので,学長はリーダーシップが発揮しやすいのではないかと思います。
 国立大学の場合は,大勢の事務職員がそれぞれ非常に細かい分野に分かれておりますが,そういう中で,今後,大学が研究力の強化や,あるいは教育を組織的に行っていく場合,いろいろな会議でも事務局は陪席しておりますし,また,いろいろな提案をしていく,学長のもう一つ,支えていくシンクタンクとしての役割も出ているので,今までの国立大学ですと,文部科学省の指示に従って動く事務局体制と,法人になって強く求められている研究,教育,そして社会貢献などに対応できる事務局体制をどのようにしていくかというのは,個々の大学もそれぞれ工夫はしているのですが,実質的にはなかなか重い部分があります。
 それからもう一つ,企業ですと,新しいことをする,新しい経営をするときにはリストラ等の手法を使いますが,大学の場合は専門職ですし,そういうことは実質的にはできないと思います。それぞれの人を抱えながら,新しい分野をということもありますので,そういう意味では,大変厳しい条件が付いている中での経営戦略をどうしていくかということで,学長自身が非常にリーダーシップを発揮していると思うのは,特別なプロジェクトを作ったときに,学長の裁量権の中で,特任教授を雇うとか,特別に事務局を作るということはできますが,学部や研究科のレベルになりますと,4年ないし6年サイクルで回っているので,その中で突然ということも難しいので,それは外部から見ると,4年あるいは6年サイクルで学生が卒業,修了していくサイクルと改革とのそごというものは,やはり出てくるのではないかと思っております。
 いずれにしろ,大学のこれからの新しい時代の法人化にふさわしい事務局体制の充実ということは,今後,非常に大事な点ではないかと思っております。
 以上でございます。

【河田部会長】  きょうは,五つテーマがございまして,一応,今出たところで打ち止めにして,次のテーマに移りたいと思います。第2番目のテーマは「予算に関する学長の権限」ということで,これも国立大学と,私立の中でも学長を兼ねておられる理事長と,兼ねておられない,理事長と学長を分離しているところとは違うと思いますが,これについて,まず事務局から御説明ください。

【白井大学振興課課長補佐】  資料1の2番目の論点でございます。「予算に関する学長の権限」ということでございます。
 当初,問題提起させていただいたものにつきましては,従来の予算配分にとらわれずに,学長がめり張りある予算配分を進めていく上での課題と,あるいは,それを進めていくための対応策はどのようなものがあるかということでございます。
 学長がめり張りある予算配分を行っていくためには,学内で合理的で説得力ある判断として示すことができることが必要かと思っています。その基礎となる十分な情報というのが学長にないとなかなか難しいというのが,1点目でございます。
 それから,大学の本部予算を確保していくためにどういった方策が考えられるのかというところを,もう一つ問題提起をさせていただいております。例えば大学によっては,寄附金等の外部資金であるとか,あるいは間接経費の獲得に向けて,相当に御尽力をされているところもあると思いますけれども,こういったものに加えまして,ほかにどういった方策が考えられるのか,こういった予算があれば,学長にも相当の裁量的な部分が生じてくると思われます。
 補足的な資料としまして,資料2の3ページをお開きいただきたいと存じます。「学長の予算配分権について」というタイトルの資料でございます。
 ここでは国公私をまとめた,ごく簡単な大学の収入構造を左側に図示させていただいております。大学の収入構造としましては,国からの交付金等,国立であれば運営費交付金,私学であれば私学助成等がございます。それから,授業料収入,それから,寄附金,資産運用収入等,その他大学の独自の収入,それから,研究者の先生方が主に取ってこられる競争的資金の部分がございます。
 この中で,競争的資金の直接経費の部分は除きまして,間接経費の部分を加えた赤字の部分については,基本的には大学予算について,大学が私学であれば理事会,国立大学とか公立大学であれば基本的には学長が制度上は自由に配分することができるということになってございます。
 ただ,現実には,ここに掲げてあるような状況から,学長が自由な配分といっても,難しい面があると思います。
 具体的には,人件費などそもそも固定的経費の比率が高くて,なかなか全体の財源も十分にはないというのが大学の実態かと思います。また,学長が重点分野への投資など,従来からの予算配分を変えようとしても,それぞれの学部がそれぞれの御事情の下に,当然,その予算を維持してくれという要望があるかと思いますので,そういった事情に配慮していくと,なかなか大胆な変更というのは難しいということもあろうと思います。
 それから,大学本部がある程度,制度上自由に使える予算もございますけれども,収入に占める比率は必ずしも高くないということがございます。寄附金収入であるとか資産運用収入といったものについては,大学本部が予算として確保しやすい部分でございますけれども,諸外国に比べると十分な獲得というのは行われていないのではないか。あるいは,競争的資金の間接経費について,これは国側の制度の問題でございますけれども,十分な間接経費として措置をしていくということが求められるかと存じます。
 それから,同じ資料2の4ページをお開きいただきたいと存じます。日本私立学校振興・共済事業団で,平成20年,5年前になりますけれども,行っていただいたアンケートの結果を載せております。
 日本私立学校振興・共済事業団ですので,当然,私学に限ったものでございますけれども,学校法人の意思決定に当たって,最も意向が尊重される機関を尋ねたアンケート結果でございます。複数回答可でございますので,トータルで100%を超えておりますけれども,最も意思決定を行っていると考えられる機関として,理事会,理事長,法人本部といった順番になっているということでございます。これは私学に限った例でございますけれども,御参考までに御紹介をさせていただいております。
 こちらの説明は以上です。

【小林委員】  最初に,田中委員の話ですが,私学の場合を含めて,全部の大学が,教育と研究と学内行政ということをおっしゃられましたが,もう一つ,大きな役割として社会貢献ということがあるかと思います。
 長い間,大学というのは,結合生産といいまして,特に教育と研究,社会貢献というのは同時に一体で活動し,その結果それぞれの成果ができたわけです。ところが,それがもうできなくなってきている。研究している内容を学生に教育すればいいというような関係が成り立たなくなってきたことが大きな問題で,そのために,中教審でずっと議論されたことは,機能別分化が必要だということです。教育に重点を置く大学もあれば社会貢献に重点を置く大学があってもいい,そのようなことだろうと思います。
 ところが,ガバナンスがそれに対応していないということが,一つ大きな問題だろうと思います。それが第1点です。
 それから,今の実態調査のことですが,これを見ますと,もう既に私立大学が多様な形態をとっているということがよく分かります。予算決定権に関しても,理事会,理事長が最終的には実質的に決定権を持っているとなっておりますし,ただ,先に議論されましたように,なぜこれでガバナンスが本当にできていないのか,そこが一番問題なわけです。
 そのためには,合意形成が実際にどのようにできているのかとか,意思決定がどうなっているのか,役割,権限がどのように分担されているかということを,もう少しきちんと分析しなければいけない。この調査,あるいはほかの調査でも,こういった点をもう少し掘り下げて分析するようなことができると思いますので,そういった点を,前回も申し上げましたけれども,実態調査で明らかにするということがこれから必要だろうと思います。
 資料2の6ページのところにも,教員人事については,やはり教授会,学長が権限を持っているとなっていますけれども,それでは,教授会や学長が権限を持っていない大学というのはどういう大学で,どういう特徴を持っているかとか,それは先ほどの意見にもありましたように,規模とかとも関係あるかもしれませんし,そういった点をこれから分析していくことが重要ではないかと思います。
 長くなって恐縮ですが,3点目は間接経費の問題です。これは非常に重要な問題で,今,事務局から簡単に御説明がありましたけれども,RU11というところが,間接経費の比率が,アメリカの大学は37から70%ぐらい,スタンフォード大学は70%ですけれども,それに対して日本のRU11の平均は14%しかないということを出しております。
 間接経費は,大学が基盤的経費,あるいは自由に使える,先ほど,大学の学長が行う特別なプロジェクト等がリーダーシップの発揮には有効だという御意見がありましたけれども,こういったことに使える経費です。ですから,これを増やすということは非常に重要な問題だろうと思っております。
 ただ,国立大学の例などを見ますと,学長裁量経費,あるいは学部長裁量経費というようなものが既にあるわけですけれども,規模が小さいという問題と,もう一つは,これが固定化しているという問題があります。実際は機動的に使えるはずなのに,既にプロジェクトが恒久化してしまうと,そこに投入せざるを得ないということになってしまって,実際にはそれ以上使えないという問題が起きていると思います。
 最後になりますけれども,これは後の話ですが,大学の情報公開について,これは今までのところ,義務化されているのは教育だけです。これからは教育だけではなくて研究,社会貢献,あるいは財政といった点についても,情報公開していくことが非常に重要だと思っています。
 以上です。

【上山委員】  今,間接経費について,非常に重要な御指摘を頂きましたので,改めて補足して申し上げたいと思います。間接経費というものの考え方が,日本においてはきちんと理解をされていないという気がいたします。間接経費について,特に大きいのは,自然科学系が集中している国立大学の問題ですけれども,スタンフォード大学は例えば70%,大体アメリカのエリート大学は60%の後半から70%ぐらいの間接経費を頂いているわけです。これはほとんどゼネラルファンドに入ってしまう。つまり大学の本部の自由な裁量権になっている。
 この間接経費とは,個々の研究者が大学のファシリティーを用いて研究をしている,したがって,そのファシリティーを充実させるための資金として大学の本部に入る。いわば個々の研究者は,自分の研究のために大学に大学の施設や名声を間借りしているのであるから,その費用を間接経費の形で大学本部に支払うべきだ,という考え方です。日本の場合は,個々の研究者が,自分たちが取ってきた間接経費のかなりの部分も自分たちのものだという意見があるのですが,これは本来の間接経費とは違う発想だという気がいたします。
 だから,この点をきちんと広報して,間接経費の考え方が正しく行き渡るようなことをやらなければいけないだろうし,これによって,大学本部の自由になる資金というのは大きく増えるだろうという気がいたします。
 予算については,まずそれぐらいを申し上げたいと思います。

【田中委員】  予算についての資料2の4ページのグラフを見て思うのは,形の上では,理事会や理事長に権限があるようになっておりますけれども,現実にうまく機能していないのは,恐らく,現在ある組織というものを閉じるということが,大学は非常に難しくなっていると思います。
 それは,学問と教育の独立というものが認められていて,自分たちが教えているものは守るという,教授たちがそう言ったときに,それを閉じることは非常に難しい。ですから,理事会や理事長が何ができるかというと,新しいものを作る。新しい学部や新しい研究科を作ることはできていても閉じることができないので,いわゆる統廃合がない。スクラップせずにビルドし続けるようなところがあると思います。それが,予算の権限がありながら,現実に民間企業のように動かない一つの理由だろうと思います。
 そこのところの仕組みをどうするかは非常に難しいと思います。これも先ほどと同じですが,学問の独立というものを守らなければならない部分はあります。経営だけで学問は成り立つわけではない。非常に価値のあるものを潰してはならないということもありますけれども,ただ,それを新しい形で昇華するというようなメカニズムはまだできていないのではないかという気がしています。

【樫谷委員】  予算配分権についてというところですが,予算の配分権もそうですけれども,予算を使ってマネジメントしていかないといけないと思います。そこがどの程度,学長にできているというのがまず疑問に思います。大学というのはもともと教育と研究をするところですから,特に今は教育の質を高めるというところにあるわけです。その予算の配分なり予算のマネジメントという権限を使いながら,大学の教育の質を高めていく,あるいは研究を高めていくということになるわけです。
 そうすると,大学の学長に研究の中身とか教育の中身をこうしなさいという権限があるのか,ないのか。確かに研究については,ひょっとしたら,こうしなさいという権限がないのかも分かりませんが,教育についてはある程度,中身について,こういう教育をしてもらいたい,こういう授業をしてもらいたいということを,学長が先生方に明確にしないと,最終的には教育の質を高めることにはならないのではないかと思っておりまして,予算の配分権,人事権,あるいは,その予算を使ったマネジメントを使いながら大学教育の質を高めるためには,やはり教育の中身について,ある程度,学長なのか,組織でやるのか,学長の権限の中で,そこをある程度,口を出せるというのでしょうか。今は自立,自主といった形で,私も2年間ほど教授をやらせていただきましたけれども,そこで口を出されたことは実はないのです。有り難い話ではあるけれども,逆に言えば,どういう教育をしてもらいたいということを余り言っていただいたことがないので,それがいいのか,悪いのか,私にもよく分かりませんが,質を高めるとなると,予算とかマネジメント力を使いながら,教育の中身にも,あるいは,状況によっては研究の中身にも口を出せないと,改革ができないのではないかと思います。
 私も企業再生をやっておりまして,通常の状況でなかなか改革ができない。つまり,崖っ縁に立って初めて改革ができるのです。崖っ縁に立っている大学もあるかも分かりませんが,そうでないところで改革をしていくには相当予算,あるいは人事権を使いながら,中身に口を出さないと改革はできないという感じがしております。

【河田部会長】  教育の質を高めるために,どういう形で学長が関与できるかということですが,平成15(2003)年からGPというのがあります。特色GP,現代GP,教育推進GP,大学教育・学生支援GPの4種類のものが平成22(2010)年まで実施されたのです。が,それは非常に大学の教育の質を高めるのに,そして,こういう教育を必要だということを,学長のリーダーシップの下で決められる,そういうものであったと私は学長の経験者として考えるのです。それが前政権の時代に「仕分け」でなくなってしまった。
 今週の金曜日に,それを再検証しようということで,明治大学でシンポジウムをさせていただいて,一体どういう教育の分類があって,どういう形で社会貢献してきたのか,あるいは初年次教育してきたのか,あるいはキャリア形成やグローバル教育に有用だったのか,様々なパターンをもって検証して,大きな流れを示すことによって,是非これは来年度,こういうことを復活することによってやれば,ここのところは学長のリーダーシップの下で教育の質を変え,教育のやり方を変えていくことは可能であろうと私は思っておりますが,それで予算が付けばということでございます。

【樫谷委員】  河田部会長がおっしゃるとおりだと思います。予算配分権について,ここに書いてあるようなこと,しかし,なかなか難しいと書いてあるのですが,実際,難しいと思います。つまり,そんなに量が増えるわけじゃないので,結局,配分の話になる。ただ,配分も硬直的でなかなか変えられないとなったら,結局,予算の使い方です。予算のマネジメントだと私は思うのです。そこに教育の質との関係,研究の質との関係で切り込んでいかないと,改革がなかなか進まないと思ったので,そういうことを申し上げたということです。

【河田部会長】  ありがとうございます。
 それでは,この問題はここまでにさせていただいて,続きまして,三つ目の「教員人事に関する学長の権限」ということで,学問分野の専門分化も非常に進んできている中で,学長がどれほど他の分野の領域について発言ができるのかということもありますし,先ほど田中委員から言われたように,そうした権限は下の方に譲与していくという話もございましたので,この辺の問題について,事務局から御説明ください。

【白井大学振興課課長補佐】  資料1の三つ目の論点でございます。「教員人事に関する学長の権限」という論点です。
 最初に問題提起させていただいておりましたのは,学長が,すぐれた教員を積極的に採用・登用したりするなど,めり張りのある人事を行うためにはどういった課題があるのか,また,どういった対応が考えられるのかといった問題でございます。
 諸外国におきましても,教員人事につきましては,各分野における専門的な知見を有する教員組織が関わっているというような状況もございまして,特に教員人事について教員組織の意見をどのように考えていくのかといったことが論点となろうかと思います。
 その上で,学長が教員人事について適切な役割を担っていくためには,どういった課題や条件があるのか。例えば,学長が自ら適任者を推薦したり,あるいは教授会が推薦をしてきた人材とは別の方を採用したいという場合には,学長自身に必ずしも専門的知見とか情報がない場合もあるわけでございまして,そういったものをどのように補っていくのかといったことが考えられようかと存じます。
 資料2でございますけれども,人事に関する資料を少し入れてございます。資料2の5ページですが,「教員の人事について」という資料でございます。
 一番上に,一般的な教員人事の流れを挙げさせていただいております。これは大学によっても違いがあるかと思いますけれども,ごく一般的な例としましては,まず,例えば退職,あるいはポストの新設等で,理事会等において一定のポストを作るということを決めた上で,各学部等におきまして,また,どういった授業を担当するのか,どういった研究をやっていただくのかということを決定する。その上で,公募であるとか,あるいは,専門分野が非常に限られている場合などでは関係者への推薦といったことを行う。その上で,選考委員会において審査を行い,さらに,教授会であるとか,あるいは大学の人事委員会等において,投票であるとか協議等によって採用者を決定します。その上で,学長の承認を得て,採用者を最終的に大学として決定して,私学であれば理事会,国立大学等であれば学長によって任命するというのが一般的なパターンであろうかと思います。
 選考委員会等では,主に研究業績(論文,著書,学会発表等),あるいは教育実績,研究指導の実績,将来の教育研究に対するビジョンであるとか,あるいは意欲といったことを,一般的に見る場合が多いのではないかと思います。
 多くの場合で,学長や理事会が,必ずしも教授会の決定を覆すといった必要性がなければ,教授会や人事委員会等における決定が,事実上大学としての最終的な決定となっていくケースが多いのではないかと思います。また,実態としても,大学によっては,教員選考について,実質的に教授会であるとか人事委員会等に権限を委譲している場合もあろうかと存じます。
 下の方に,海外の事例を御紹介しております。
 アメリカの場合ですけれども,比較的,ボトムアップの学科レベル,学部レベル,あるいは全学の評議会,大学評議会のレベルによる推薦を経て,学長が決定して,最終的に理事会で任命するという形態をとられていることが多いようでございます。こういった重層的な教員組織を中心としたチェックの構造を設けることで,適格者を慎重に審査するとともに,情実的な人事の防止を図っているという状況と聞いてございます。
 イギリスの場合ですが,同様に,日本の教授会に相当しますセネトと言われる教員組織からの推薦に基づきまして,理事会に近いカウンシルによって任命されるという形式でございます。ただ,実態としては,例えばここにヨーク大学の例といって御紹介しておりますけれども,公募の上で,かなり下位のレベル,学科レベルで実質的には検討を行って,採用を決定しているということが実態のようでございます。
 フランスやドイツでございますけれども,それぞれの公募を経まして,大学の中における選考委員会で選考をするという形式がとられております。フランス,ドイツも,いずれも公務員,基本的には国立大学のみということで公務員型ですので,最後は大統領であるとか大臣といった方が任命をするという形になってございます。
 次の6ページでございますけれども,先ほどの日本私立学校振興・共済事業団のアンケートのものでございますけれども,教員人事と職員の人事に関するアンケート結果を御参考に載せてございます。
 教員人事につきましては,教授会あるいは学長が,最も実質的な意思決定機関ということで,最も挙げられているという状況でございます。一方で,職員人事につきましては,理事長,あるいは法人本部の事務局といったところが,非常に影響力が多いということで挙げられております。
 こちらからの説明は以上でございます。

【上山委員】  大学の役割ということを考えてつくづく思うのは,基本的に大学というのは,先ほどいろいろな議論が出てきましたけれども,マルチな目的を持っていることは間違いないのですが,同時に,大学執行部として考えるのは,恐らくその大学のレピュテーションを最大限にするという,この意味では,統一した目的が恐らくあるのだろうと思います。
 人事というのは,当然そこに関わってくるのですが,先ほど金子委員のお話がありましたとおり,人事の面に関して,学長が直に任命するとか介入するというのはなかなかあり得ないことで,やはりそれはボトムアップ型で,どの分野のどういう人がいいかを教授会に判断を委任して,そこから上がってきた人事を最終的に学長が任命するということになると思うのですが,ただ,そこでしばしばあり得ることは,特にアメリカの大学であり得ることは,その人がいいかどうかというよりは,その人が属している分野が,あるいはその領域が,その大学の将来的な方向性にとっていいのかどうかという判断は,大学の本部が行っていくということです。
 例えば,これは我々にとって残念なことですけれども,1990年代に私が目撃したのは,ジャパン・スタディーズが80年代に急速に伸びていたのが,チャイナ・スタディーズに取って代わられていった。90年代にある大学でこんなことがありました。極めて優秀な日本研究のアメリカ人の研究者,その分野でトップだと思われた人の任命を大学の本部が拒絶したことがあったのです。そのときの理由は,この人はこの分野の間違いなく極めて優秀な学者だけれども,この分野はもはや優秀な(first-rate)分野ではなくなっているという判断ですね。
 そのような形でのスクラップ・アンド・ビルドがなかなか日本では難しいのですけれども,先ほど田中委員からありましたけれども,アメリカでは人事というものを通してその大学全体の経営の方向,レピュテーションを最大限にしていくという方向の中で,どの分野を切り捨て,あるいは縮小し,どの分野の人員,人間を増やしていくかという判断においては,教授会なり,下のところから上がってきたものを,大学本部が極めて厳密に経営判断をしていくという方向はあり得るであろうという気がいたします。
 だから,人事に介入するとすれば,個別のその人が優秀かどうかというよりは,そこを通した組織全体の方向性ということを本部は考えるという形で人事に介入すると思います。

【小林委員】  今の上山委員と少し違う観点から申し上げたいのですが,先ほど出ました,学長がリーダーとなるようなプロジェクトとかそういうものを作る場合には,それは学長が教員を推薦するようなことがあってもいいかと思います。
 ただ,その場合に問題になるのは,非常に恣意的な人事とか,あるいは情実的な人事が行われるということが一番問題なわけでありまして,これに対するチェック体制というのは,選考委員会を学内できちんと作るなり,そういう体制を作ることが非常に重要だと思います。
 もう一つは,人事の場合,非常に難しいのは,先ほど申し上げました情報公開との関係で,どこまで透明性を維持できるかということだろうと思います。これは非常に難しい問題だろうと思いますけれども,できる限り透明性を確保することによって,申し上げた情実人事でありますとか恣意的な人事を防ぐことができますので,その辺をどのように制度設計していくかということが一番重要だろうと思っております。

【田中委員】  上山委員,小林委員のおっしゃったことと関係がすごく深いのですが,アメリカの大学の人事に,本部とともにプロボストオフィス,教学担当の副学長のオフィス,つまり教務担当のオフィスがどのぐらい介入するかというのを聞いてみたことがあります。ハーバードとMIT,コロンビア,イェール大学で伺ったのですが,大学によって少しずつ異なるわけですが,ただ,基本的には2通り考え方があって,一つは,小林委員がおっしゃったように,手続が公正かどうか。例えば選考委員会の委員の弟子が候補者の中にいるのではないか。だから,この委員会はメンバーを替えるべきだったと言って,それを認めないというのは,手続上,情実が入るような場合には,やり直しを命じることもある。
 それから,推薦状を本来,8本とるはずなのに3本しかとっていないではないかというのは,それももちろん差し替えることがあるようですが,ですけれども,もう少し踏み込むところもある。ある大学では,プロボストが,分野は異なるといっても,8本の推薦状では足りないので,あと7本をプロボスト室からまた要求して,レファレンスをとる。そのとった結果,評価がどうも不十分なように見えるということを言っている場合もあるようでした。
 ひっくり返るケースの方がすごく少ないと思いますが,90%以上は,学部といいますか,そのデパートメントで決めたものが尊重されていると思いますけれども,それをひっくり返し得るということが決まっている。一つは手続であり,一つは,それが先ほど上山委員がおっしゃったと思うのですけれども,外の世界とつながっているという,学会です。学会の評価がどうか,そこは重要なことでありまして,大学が大学の中だけで自己完結的にはできない。物理なら物理,経済学なら経済学で,外の分野で,学会でどれだけ評価をされているかということを常に見ているということだと思いますので,たとえ分野が異なるプロボストであっても,そこについては,外の意見を聞いて介入するということだと思います。
 それをどこで決めるかは難しいのですが,現在の日本では比較的,学部なり学科で決めたものはそのまま認めるという慣習が強くなっているので,そこのところを,よい教員を採って大学をよくしていくというのが最大の目的だと思いますが,そのためにはどういう手続が必要かというのを丁寧に考える必要があると思います。必ずしも一方的に,学長が指名すればいい教員が採れるということではないと思います。

【樫谷委員】  資料2の5ページに書いてあるのは,採用のことを書いてあるので,いい先生を公平に採用しなければいけないというのは分かるのですが,採用した後の話です。採用した後の人事権というのでしょうか,そこも,教育の質を高めるための方向性を議論するには,その後の人事マネジメントをどうしていくかということも当然,織り込んで考えないと,採用のときは確かに方向性がきちんと合っていた。しかし,そう簡単にころころ変わると思いませんが,方向性が変わることによって,今のお話ではないですけれども,少し重点が違ってきたというときに,採用した人をどうするのかということです。果たしてその方向に変えていただけるのか,それとも,そうでないのか,そこも当然議論になると思いますので,人事は採用だけではなくて,その後の人事のマネジメントをどうしていくかについても,学長の権限の中で考えないといけないかなと思いました。

【帯野委員】  今の御意見に続きます。ここに書いてある人事権というのは,採用・登用だけでありますけれども,すぐれた教員を積極的に採用・登用する場合に,すぐれていない教員をどうするかということは考えておかなければならない。すぐれていないというのは適切な言い方ではないかもしれませんが,残念ですけれども,一旦大学に就職したら,研究論文も出さないし,教育力もいまいちで,行政にも,社会的貢献にも積極的でないという先生もおりますので,こういう人をどうするかということをどこかで考えないと,めり張りのある人事にはならない。
 そういう点で,教員評価が重要です。今,どれぐらいの大学で行われているのか,私には分からないのですが,やはり教員も評価するシステムが必要で,これは具体的に,下部組織にそれを委譲する,そして学長がオーソライズする,そのシステムはいろいろあると思うのですが,給与に反映した,つまり生きた教員評価をするという考え方も必要であると思います。
 そこで,先ほどからの御意見ですが,学長のミッションというのは,外に対してはやや抽象的でも構わないと思うのですが,学内においては,どのぐらいのレベルの学生を集めて,どのぐらいのレベルの教育をするかという目標は,学長がしっかり設定すべきであると思いますし,それに対して,ミッションに基づいた教育を行っているか,その教育力については評価は可能であると思います。教員評価というものが,本当の意味でのめり張りのある人事システムに結び付くと思いますので,これは検討すべきではないかと考えます。

【黒田委員】  資料2の5ページのところの採用人事の流れというのはこのとおりです。これでいいと思うのですが,下の枠囲みの中の三つ目の丸,「学長や理事会が,教授会の決定を覆す必要性がなければ」うんぬんと書いてあります。それで,「事実上大学としての最終決定となる」,これが問題なのです。覆さなくても,最終決定は学長なり理事会がやるわけです。これを飛ばして,覆さないから勝手にやってくださいというような表現になってしまう,ここが問題なのです。
 教授会で決めたこと,あるいは人事委員会で決めたことが,それでいいということであれば,それを学長なり理事会が採用すればいいわけです。それで決定にすればいいわけです。それをせずに,最終的に理事長,人事委員会にお任せしたような表現をここで書かれますと,学長や理事会の権限というのがなくなってしまうというおそれがあります。学校教育法で書かれていることでそういうことが非常に多いです。ですから,教授会に権限が全部あって,学長には権限がないような表現をとられている,そういうことも起きてくるのです。
 ですから,曖昧さをなくしていくということが非常に重要だと思います。最終意思決定はあくまでも学長なり理事会,理事長がやるということを押さえておかないと,それから全ての面でそうなのですが,私は予算配分という言葉は嫌いでして,収入を考えずに与えられた支出予算をただ配分するような印象があります。予算編成というべきなのです。収入があって初めて支出が起きてくるわけですから,収入を考えずに配分だけするという,こんなやり方というのは,まだ国丸抱えの国立の考え方なので,予算配分というのは私学にはあり得ません。
 ですから,きちんと予算編成委員会というのがあって,そこで年度予算,長期予算を決めて収支計画を立てていくわけです。その中でどのように,どの分野にどれぐらいの予算を付けていくかという,それを最終的に配分するわけですけれども,あくまでも全体としては,編成をするということです。予算編成がしっかりすれば,大学全体としてうまくいくわけですから,配分だけを取り上げていくというのは,私は少し問題があるという感じを受けて,先ほど発言しませんでしたけれども,そういうことです。
 ですから,権限をあたかも放棄するような表現はできるだけ避けていただきたいと思います。

【河田部会長】  それでは,ここ資料2の5ページ中段,三つ目の丸のところ,「学長や理事会が,教授会の決定を覆す必要性がなければ,教授会や人事委員会等の決定を基に,学長,理事長,そして理事会が最終的決定を行う」とすればいいのでしょうか。

【黒田委員】  そういうことです。

【河田部会長】  そういう形で,例えば文章は書き換え,「予算配分」という表現も,「予算編成」に改める。

【小松私学部長】  私はこの資料作りに関与していないのですが,この場所は現状が書いてあるのかと思いますので,きょうの御指摘は,ここというよりも,つまり今,黒田委員がおっしゃっておられる問題が,現状においてこのようであるという書きぶりかと思われますので,かえって,もうそのようになっているという書き方になっても問題かと思いますので,資料を後ほど事務局で,整理して改めた方が正確かと思います。

【河田部会長】  了解です。では,まとめを出すときにそのように表記するということにします。
 それでは,きょうのメインのテーマかと思いますが,学長の選考・評価についてということで,このことについて,事務局から御説明いただきます。

【白井大学振興課課長補佐】  資料1の2ページになります。本日四つ目の論点になりますが,学長の選考方法・評価についてです。
 当初,問題提起させていただいておりましたのは,学長としての適格性を十分に考慮するために,どういった選考方法が適当かということでございます。また,選考に際しては,教員組織であるとか,あるいは,私学であれば評議員会といったような組織の意向をどのように捉えるべきなのかといったことがあろうかと思います。
 また,選考された後の学長の評価ですけれども,学長の業務執行状況について,どのように評価していくべきかといったことがございます。
 その上で,今,選挙で選ばれた学長では,教員の意に反するような改革はなかなか難しいのではないかといった指摘もございますけれども,ただ一方で,また後ほど御説明いたしますけれども,現在,多種多様な方法で学長選考を行われておりまして,そういった中で,特定の方法を示すということが適当なのかどうかといったことについて御議論いただければと思っております。
 また,学長の業務執行状況を評価していくための手法でございますけれども,例えば認証評価であるとか,あるいは監事による監査,特に業務監査の部分,そういったことが必要なのではないかといったようなことを挙げさせていただいております。
 資料2の7ページでございます。「学長の選考・任命について」という資料を御用意いたしております。
 学長の選考・任命につきましても,国立大学,公立大学,私立大学で違うシステムがとられております。国立大学法人と公立大学法人につきましては,学長選考に関する基本的な方法というものが法定されておりますが,ただ,実態として見てみますと,様々な選考が行われているという状況でございます。また,私立大学につきましては,特に学長の選考に関する規定は設けられていないという状況でございます。
 具体的な内容でございますけれども,国立大学については,学長は法人の申出に基づいて国が任命をするということになっております。学長の選考については,学外の有識者も含めた学長選考会議が設けられておりまして,それが,自らの責任,権限に基づいて学長の適任者を学内外から選考するということを国立大学法人法で規定しております。
 具体的なやり方も各大学によって多様でございまして,例えば,教員選挙を行った結果を学長選考会議が尊重して,学長を選考するという場合もあれば,教員選挙の結果を学長選考会議における参考資料の一つとして扱うというような場合もございます。あるいは,教員選挙をそもそも行わないで,学長選考会議が決めるという場合もございます。
 また,公立大学につきましてもおおむね同様でございまして,公立大学の場合には,法人化した大学については,公立大学法人の申出に基づいて,設立団体,地方自治体の長が任命するというのが基本的なスキームでございます。公立大学法人の場合にも,同様に学長選考機関というものが法定されておりますけれども,そこにおける学長の選考方法についても,先ほどの国立大学と同様に,多様な実態があるという現状でございます。
 また,法人化されていない公立大学につきましても,教育公務員特例法におきまして,評議会の議に基づき学長の定める基準により,評議会が学長の選考を行うとありますけれども,この実態も同様に多様といったことでございます。
 私立大学の場合には,学長の任命は理事会が行うということになりますけれども,ここも法令上の規定は特に設けられておらず,同様に,例えば選挙によって最多得票の者を選ぶ例もあれば,理事や教員から構成される学長選考委員会が選考する場合,あるいは,理事会が選考する場合,様々な実態があるという現状でございます。
 下の方に海外の大学の事例を紹介しておりますけれども,アメリカの大学やイギリスの新大学,これは92年以降になって大学に昇格した大学のことでございますけれども,では理事会が,アメリカ,イギリスでは学長候補者のサーチ会社のようなものが発達しておりまして,理事会がサーチ会社のコンサルティングを受けながら学長候補を選考するといったケースが多いようでございます。
 一方で,フランスやドイツなどにおきましては,基本的に教員組織,教員団による選挙によって学長を選考するということが,これは法令,制度で決められているということがございますし,また,イギリスでも旧大学,例えばオックスフォードとかブリストルといった大学では,教員組織,教員団による選挙によって学長を選考するといったケースが多いようでございます。
 次の8ページでございますけれども,これは学部長も併せた選考方法のデータでございますが,今,具体的にどういった選考が行われているのかということを調査したものでございます。
 図を御覧いただきたいと思いますけれども,学内選挙の結果に基づいて決定をされている事例というのが,学部長の場合には48%ということで,比較的,学内の選挙で選ばれているケースが,学部長については多いという状況でございます。一方で,学長になりますと,トータルで24%となってございます。
 また,中段真ん中ですけれども,学内選挙と選考会議,両方組み合わせているような事例ですけれども,これは学長で22%,学部長で8%,まさに選考会議のみによる決定ということになりますと,学長33%,学部長18%となっておりまして,学長の選考,これは全体を通じてみますと,選考会議の決定のみによって選んでいるというのがトータルでは一番多くなっているという状況でございます。
 こちらからの説明は以上でございます。

【小林委員】  最後の資料について御質問ですが,(文部科学省調べ)になっていますけれども,これは国公私立大学全部を対象にした調査でしょうか。

【白井大学振興課課長補佐】  そのとおりでございます。国公私立大学全部を対象にした調査でございます。

【小林委員】  先ほどから出ていますように,大学の設置形態とか規模によって,大きく違うと思いますので,もう少し細かな分析した資料を出していただくと非常にここの議論に有用かと思いますので,よろしくお願いします。

【黒田委員】  学長とか部長の選考というのは,それぞれの大学で自由にやったらいいと思います。そんなに細かく規定する,規則で押さえ付ける必要はないと思います。先ほどから議論になっている,学長を学内で選挙で選ぶ,自分らの仲間を学長にするということで,それでうまくいっているところならそれでいいと思います。
 ただ,それがうまくいかないから問題が起きているので,それは個別に解決をせざるを得ない話であって,選考方法がどんな形態であっても,機能すればいいわけですから,これで選ばれた学長がどうガバナンスをしていくかということだと思います。どうマネジメントするかということです。
 ただ,学長と学部長が全く別個に選ばれてくるということになると,私は,学内の統治はできないだろうと思います。学長の反対派が,学部長になると,その学部は全然動かないということになりますから,そういうことが起きないような方法だけは考えておく必要があると思います。
 学長になるだけの見識のある方でしたら,選挙で選ばれても,よそから入ってこられても,きちんと統治能力はあるだろうと思うのです。それぐらいの識見のある人を皆さんは選ぶと思いますので,そういう点で言えば,ここに書いてあるようないろいろな方法があるということでいいと思います。

【北山副部会長】  今,黒田委員がおっしゃったことに賛成でございます。
 いろいろな方法で選ばれた学長が,リーダーシップを発揮して様々なことを実施するわけですが,問題はそのチェック機能です。いろいろと方法があると思いますが,先ほどの資料1にもありますように,認証評価の在り方も見直していかなければいけないと思います。それから,日常的なチェック機能として監事というものがあります。これも実態がよく分からないのですが,二,三か月前に,民間から九州のある大学の監事に登用された方が書いた本を頂きまして,その中に,大学の監事は刺身のツマだ,という表現がありました。監事は,チェック機能として,ほとんど機能していないということを,その方は,自分が監事になって気付いたということのようです。全ての大学が,そういうことではないと思いますが,チェック機能の在り方という点についても,合わせ技できちんと見直していくべきだろうと思います。
 以上です。

【森脇委員】  学長や学部長の選考やその仕方ということにつきましては,結論はそれぞれの大学が検討されて,いい方法を生み出していくということになると思いますが,問題になっているのは,学長というものの役割や,担う業務内容などが大きくここで変わってきているということであると思います。また,学長の選考の方法も,その一つの非常に象徴的な変化ではあります。先ほどからいろいろ出ております大学組織全体の意思決定システム,あるいはメカニズムといったものが,ここにきて機能しない,あるいは問題点が浮き彫りになってきていると思います。
 私学では,選考について法的には規定がないということですから,それぞれの大学が選考方法を考えていると思いますものの,実態としてはこれまでは国立大学法人,かつての国立大学をモデルにしたということが随分多いのではないかと思います。
 しかし,それが今,学長の役割が随分大きく変わってきておりますので,意思決定という点を重視してそのシステムを見直す必要があると思います。特に自分のところの規程に踏み込んだ形で見直すということがとても重要なことではないかと思っています。それからもう一つの面として,幾ら規程がきちんとしていても,あるいは制度が整っていたとしても,それを運用していく力学がいろいろな形で働いてしまうのです。例えばどの学部から推薦された学長かで,その後のリーダーシップが影響されてしまうという実態もありますので,それを包含した形で,もう一回システムを見直していく必要があるのではないか。
 つまり,選挙だからうまくいっているとおっしゃっていても,本当ですかと言いたい。もう一度自ら自己点検する機能を持つ必要があるのではないかと思っております。

【上山委員】  学長の選考をこういう形で論じなければならなくなってきているということ自体が,高等教育全体が大きく変わりつつあるということだと思います。1980年代以降,私が知っている限りで言うと,アメリカの大学は大きく変わった。特に明確になってきたのは,グローバル競争の中で,大学,あるいは高等教育全体に関わるコストが極めて高くなってきている。高度知識基盤社会の時代に突入して,大学の中の業務,あるいは研究,教育の質が非常に重層化していき,そのたびごとに大学の中でのコストが高くなっていき,それがもはや公的な部分だけでは補えないようなレベルにまで達してきている。
 したがって,80年代以降のアメリカの総長や学長には,対外的なファンドレージングに対する期待が極めて大きくなってきている。今,ヘネシーがスタンフォードの学長ですが,彼は2年間で4,000億近いお金を集めるわけです。集めてきている寄附金の総額は,学長の代が替わるごとに大きくなってきている。つまり学長というものの役割は,学内におけるリーダーシップを相当程度プロボストに任せて,対外的な活動の中で資金を集め,大学のレピュテーションを高めるという,その方向へと向かっていると思います。
 そういうことを考えてみると,かつてであれば大学の中で,非常に優秀な学者であり,学内の尊敬を集める,大学の顔であるという人を選挙で選ぶというのがごく自然な流れだったのが,もっと社会との関係を深めていき,大学の中に資金を呼び込み,そして利害関係者を多く取り込むような学長の在り方にだんだん変わっていっていると思います。
 そうすると,選考の形もおのずと変わらざるを得ない。学外の意見が相当入った形で,大学と社会との関係をきちんと紡ぐことができるような人物を,いわばプロフェッショナルの能力を持つ学長を,学外の人の意見も入れながら選んでいくという形に,少しずつ変わっていかざるを得ないだろうと思います。
 日本はアメリカのようには,すぐにはならないですが,今の80年代以降に置かれているグローバルな高等教育のシステムの変化ということに対応するような,何かの大学の学長の選考システム等をそろそろ考えないといけないという気がいたします。

【樫谷委員】  私も,今,教育の質を高めないといけない,つまり改革をしないといけないという観点から見ると,教員組織による選挙によって選任された学長が,通常のベースだったらいいけれども,本当に改革がどんどんできていくのかというと,どうしても,どうだろうかという感じがするのです。
 そういう意味では,時代背景によって選考過程をころころ変えていいのかという問題はもちろんありますけれども,大きな流れとしては,今,御意見があったような形になると思いますので,やはりトップダウン型でないと改革はできない。そうすると,教員組織によって選ばれた方が,本当に改革がどんどんできるのかどうかとなると,それは難しいのではないかということがまず一つです。
 それから,大学内とか,あるいは学校法人内だけの論理ではなくて,特に大学というのはいろいろな利害関係者の方がいらっしゃるわけですから,多様な意見をいかに集めて学長を決めるかということが,私は極めて大事だと思いますので,学内だけの論理というのは,特に今の時代にはよくないのではないかと思います。

【田中委員】  学長選考方式を法令上定めても,例えば黒田委員がおっしゃったように,私立大学は必ずしもそれに縛られないということになりますので,河田部会長も初回のときにおっしゃっていた,学長の暴走を止めるガバナンスも,学長のリーダーシップを発揮させるガバナンスと同じように必要であるということです。慶應義塾長の清家委員も同じ趣旨のことを前回おっしゃっています。
 私立の場合に,そこのところが難しい問題があって,大学の形が,私立大学の場合,非常に様々で,非常に大きな大学,また,研究志向の大学,地域に貢献する大学,非常に企業的な大学とあると思います。それで,例えば企業でも,社長の選び方が,現社長なり会長が禅譲で自分の好みの人を次々と指名していく形ですと問題が起こる場合がある。ある企業で,ちょうど1年ほど前,粉飾決算を守るために自分の人脈を次々社長に指名したというところがあったと思いますけれども,そのようなことが発覚したことがあります。
 そういう人事というのは,小さな組織では起こりやすいわけです。必ずしも,片や,今,御指摘もありましたように,学長が構成員に選ばれるので,構成員におもねってしまうから,選挙で選ばれると改革ができないというのも,もちろんあると思います。ですから,非常に難しいと思いますけれども,非常にうまくいっているケースというものがモデルケースとして世の中に周知されてくれば,それはおのずと影響力を持つと思います。
 例えば選考会議が候補者を選考して,非常に実力のある方を選考して,それも外部の方を入れて,外の目を入れて選考会議があって,候補者が3人とか出てきて,それを教職員が投票するというようなこともあり得ると思います。単に選挙すれば,いわゆるモボクラシー,デモクラシーではなくて衆愚政治になるということと同じようなことが起こると思うのですけれども,ポピュリズムに陥る可能性もあるだろう。
 しかし,単に少数の人が,オリガーキーのように寡頭政治を続けていけば,本当にどこかに偏る可能性もあるので,その両方が必要だと思います。やはりチェックをする。多くの目にさらされることも必要でありますし,それから,多くの人が既得権益を守るためにポピュリズム的なリーダーを選ぶというのも問題だろうと思いますので,そのあたりで,どれがいいかということを決めても,大学がどれを選ぶかというのは難しいと思いますが,ただ,この形でうまくいっている大学があるということが見えてくれば,それは影響力を持つのではないかと思います。
 例えば,比較的小さなサイズの私立大学でも,非常に成功している大学も,金沢工業大学もそうですし,関西国際大学もそうだと思いますけれども,非常に英明なリーダーがいるところはすごく伸びているということは言われているわけです。それがどのように選ばれるかということとはまた別にあるのですけれども,個人の質もありますが,ただ,あるところが非常に新しいやり方でうまくいった。それがうまく進めば影響力を持つと思うので,余り演繹(えんえき)的に,制度的にこうすればうまくいくというのは決められないのではないか,かなり多角的に見る必要があると思っています。
 そうしないと本当に暴走が止まらなくなるような大学も出ると思っております。

【金子委員】  この問題は,今おっしゃったような論点が幾つもあって,一番基本というか,そういう問題があることは事実でありますし,それから,特に構成員が参加する選挙で選ばれた学長が,構成員の利害を全く無視できないのではないかという議論は,確かに説得力はあると思います。
 それから,もう一つは,そういう状況であると,どうしても学内からの登用が多くなってしまって,大学間の流動性という観点でございますが,そういった意味で,日本の大学がある程度競争性を持つためにも,問題が出ているということも事実だと思います。
 ただ,今のお話にあったように,法制上は各大学が自由に選べるわけでありまして,中央教育審議会で議論をして,何らかの法規上の変化をもたらし,作るということは非常に難しいし,やるべきではないという議論もあると思うのです。結論として,どういうところに何をしていったらいい結果が生まれるかということは,もう少し具体的に考えざるを得ないと思います。すぐ法規上の変化に持っていくことはとても難しいだろうと思います。
 それから,選挙をやらない場合に,どういう選び方があるかということを,具体的に考えてみますとなかなか難しくて,私は前にいた大学で総長選考委員会にいましたが,もちろん経営諮問委員会の先生方,それは民間の方ですけれども,選挙というのはおかしいのではないかということを言われて,随分いろいろと議論したことがありましたが,実質的な制約として幾つかあるのです。
 一つは,候補者をどこからどう見つけてくるのかというのはよく分からない。特に大きな大学ですと,大学の中は非常に複雑でありますし,どういう人がどういう能力を持っているかがよく分からないわけです。しかも,外から見つけてくるのも非常に難しいということになると,どこからどうやって見つけてくるのかという問題は,実際上の問題としてはかなり大きいです。
 それから,民間からの登用ということですけれども,はっきり言って,経営能力が非常にあって,壮年の経営者の方に大学の学長になっていただくのは,多分,収入上は相当な減額になってしまう。アメリカの大学の学長は,先ほどお話があったように,すごくいい給料をもらえるようになっていますけれども,そういうのが正しいかどうか分かりませんけれども,そういう問題もあるということで,実際に選挙でなくした場合にはどういう形の選考があり得るのかというのも,実は具体的に考えてみるととても難しいところがあるということがよく分かりました。
 それで実際この頃,幾つかの,私が知っている限りでは,大学では総長を選ぶときに,それで議論が行われているようでしたけれども,結局,そういった制約があるので,なかなか改革できないというのが現状ではないかと思います。
 ただ,現実的に何ができるかということですけれども,私は,こういう機会がありましたので,中教審でやはり議論をすべきだと思います。特に重要なのは,国立大学もそうですし,国立大学には経営諮問会議という,外部有識者が入っている会議があって,それが総長選考委員会,学長選考委員会の過半数を少なくとも取るわけです。それから,私学でも理事会には学外者の理事が入って議論しているわけですから,理事に,どういうことを考えるべきなのかということが伝わるような議論整理みたいなものを,最終的には,今の段階で作るというのは意味があるのではないかなと思います。
 イギリスなどは,大学改革をするときには,理事に対する問題提起のペーパーみたいなものを送って,それから具体的な改革につなげていくという手続をやることが時々あるのですけれども,今の段階で,私はそういうのは大変重要な,可能性があるというか,少なくともそういうことはできるのではないかと思います。
 以上です。

【石原委員】  今,教員の選び方や学長の選び方が出ていましたが,いずれの組織でも,いわゆる任命責任ということがよく問われると思います。そうすると,国立大学法人においては,学長と監事のみは大臣任命になっておりますが,その場合の任命責任ということは,具体的にあるのでしょうか。例えばどのような概念になるのでしょうか。もしあれば,そこのコントロールということが当然,出てくると思います。
 それからもう一つ,学長の業務の監事のチェック機能ということですが,先週も全国の監事の協議会で,いろいろとそういう話題が出ました。ただ,現状においては監事は,どちらかといえば個人といいますか,いわゆる組織があってということではなくて,あくまでもそれは支援体制ということで,個人でするという形になっております。
 逆に,個人で割と,それぞれの大学によっていろいろなやり方,立場,状況があるので,そこはよく言えば柔軟,あるいは,非常に難しいという面がありますが,そういう中での具体的にどうするかというような,監事の立場や組織上の中で,どの組織を見ても,国立大学法人の場合は学長の下にいろいろな組織がありますが,監事は学長の横に一人だけぽつんと置かれています。それはある意味で,非常に自由度の高い,あるいは大学の規模や,大学のいろいろな対応に応じて自由にできるという部分もありますが,組織としてはいろいろな課題があるのではないかと思っております。
 ただ,そのときに一つ,大学が学長も含めてリーダーシップや対外的な信用というものを獲得するときに,情報公開というのは当然大事だと思いますが,民間から来ている方の多くが,現在行われている国立大学法人に課せられている会計です。病院は企業会計なのですけれども,国立大学会計基準が非常に公認会計士の方も,民間のそういう方たちも理解が非常に難しい。例えば授業料は,普通ですと収入になるのではないかというのですが,それが負債になるとかです。これは,いわゆる利益を生まないという組織の特有の会計でもある。また,国と連動しているということでもありますが,情報公開をするときに,公になったときにさっぱり分からないとか,意味が分からないという,ごく普通の一般の市民が見て分かりやすいということは,とてもこれから国立大学でも重要になると思いますので,そういう部分,つまり会計が非常に複雑で分かりにくいと,学長は,先ほど予算配分とかいろいろ言っていましたが,最終的に,トップが必要な人事,財務,組織の中で,財務についてはリーダーシップどころか,よく分からない,お任せということになりがちではないかと思います。
 また,現状では,大変タイトな実際の枠組みですので,学長裁量権とかそういうことには非常に関心を持って,また,そこでのいろいろな取組はしておりますが,固定経費,人件費も非常に多くございますので,余り,ある意味では差し支えがないのかもしれませんが,情報公開をにらんだら,やはり遠い将来には誰もが分かりやすい会計基準ということも,大学が地域に信頼を獲得するときには大事ではないかと思っております。
 以上です。

【河田部会長】  それでは,最後,五つ目のテーマでございますが,学部長の役割・選考方法などにつきまして,あるいは学内組織の運営・連携体制の整備という観点から,御説明を頂きたいと思います。

【白井大学振興課課長補佐】  それでは,資料1の2ページになりますけれども,ローマ数字の2番,学内組織の運営・連携体制の整備ということで,本日,時間も限られておりますことから,学部長の役割・選考方法について御議論を頂ければと思っております。
 学部長の役割・選考方法について,これまで問題提起させていただいておりましたのは,全学的な方針の下で,学部長はそれぞれの学部の校務をつかさどるという職務があるわけでございますけれども,学部長に求められているのはどのような役割なのかということがございます。
 また,学部長を選ぶ際に,学部長としての適格性を考慮できるような選考方法はどういったものか,学長と同様に,学部の教員組織や評議員会といった選考での意向をどのように考えていくべきなのかといったことがあろうかと思います。
 また,更にそれを踏まえまして,論点としまして,大学としての方針と学部の意見が異なる場合に,学部長にどういった役割が求められるのか。あるいは,学部長の選考も,学長と同様に,多種多様な方法で行われておりますけれども,特定の選考方法をここで示すべきなのかといったことが論点としてはあろうかと存じます。
 資料2の9ページに,学部長の選考・任命についてまとめてございます。
 学長の選考については,国立大学,公立大学については一定の法令上の規定がございましたけれども,学部長については,基本的に特に法令上の規定はなく,各大学ごとに多様な実態が見られるという状況でございます。
 例えば国立大学の事例としましては,教授会の選挙によって学部長候補者を決定して,学長が任命するような事例,あるいは,学長,理事から構成される選考会議で選考して,学長が任命するような事例,教授会から複数の候補者を内申して,学長が任命するような事例といったものがございます。
 公立大学についてもおおむね同様でございます。なお,法人化されていない公務員型の非法人化の大学については,法令の規定が一定程度残っているという状況でございます。
 私立大学におきましても,その実態は多様でございまして,同様に教授会の選挙によって選出された者が,理事長によって任命されるケースとか,あるいは,教授会によって複数の候補者を挙げた上で,最終的に選考委員会が理事会に答申をして決めるような事例,あるいは,教授会構成員による選挙で最多投票の者を理事長が任命するといったような様々な事例が見られる状況でございます。
 なお,下の方に,海外の状況を参考に御紹介しております。
 アメリカでは学部長レベルまで,学長やプロボストが選考するケースが多いようでございますし,また,学部長の選任に関しても,かなり流動性があるようでございまして,外部のサーチ会社等が利用されるケースが多いようで,教員選挙で決まることは少ないようです。ただ,学科長のレベルになりますと,やはり学内者が選挙によって選ばれることも多いようです。
 また,イギリスの旧大学,伝統ある大学ですけれども,こちらでは学長が独断で学部長を選考せずに,学部教職員のコンセンサスを得て決定することが一般的であるという状況のようです。例えばヨーク大学の例でも,学部の全教職員の意見を踏まえて,学長,執行部から構成される選考委員会において検討・決定し,教員組織から成るセネトの承認を得ているというような事例があるようです。
 一方,イギリスの新大学においては,比較的学長の意向を重視した学部長選考が行われているケースなどもあるということでございまして,例えば,デ・モントフォード大学などでは学部長が副学長にも就任して,学長の意向を踏まえた学部運営が行われているというケースもあるようです。
 なお,先ほど御紹介いたしました資料2の8ページには,学長・学部長の選考方法を並べてございますので,こちらも御参照いただければと思います。
 説明は以上です。

【上山委員】  学部長に関しては,実は前の大学で学部長をやっていたのですが,日本に学部長が存在するのだろうかと思っておりました。学部長,英語ではディーンですが,私は名刺にディーンと刷るのが恥ずかしかったのです。ディーンというのは,日本の場合は,むしろ英語で言えばチェアマンに近いです。小さな各学問分野の30人から40人ぐらいの人が集まっている学部の学部長ですね。これはディーンと呼ぶべきポジションではありません。アメリカとか海外のディーンというのは,例えばスクール・オブ・アーツ・アンド・サイエンスとか,大きな領域(学科)の様々なデパートメントを統合する全ての領域の長ということですから,予算の権限と人事権も大きく与えられていて,先ほど申し上げたように,その中のデパートメントの何かが,もはや学問的な力が衰えているということも判断して,これは人員を削減していかなければいけないなみたいな提言さえできる力を持っているわけです。ですから,人事にかなり介入できる。
 そのディーンというものと日本の学部長というのを同じように考えると,少し誤解が生じてしまうだろうと思います。ディーンは当然ながら,選ばれれば各デパートメントから完全に離れて,アドミニストレーションに集中しなければいけません。そうでないと自分の分野を守ろうとか学科を守ろうというえこひいきが生まれますから。そういうところを離れた全学的な,あるいは全体的な学問の動向ということに関する見識が問われるという立場だと思います。
 そうすると,これはセレクティブにやっていくという選択はあると思います。私も,実はアメリカの恩師に,選ばれて学部長になったと報告したことがあるのですが,それはセレクティブか,エレクティブかと聞かれて,一応選挙で選ばれたのだからエレクティブだと言うと,それでは余り政治的な力はないといった感じで言われましたけれども,そういうことだろうと思います。
 ですから,学部長というものの権限をもっと強化して,アドミニストレーションの力を与えるとともに,学内の長期的な動向を踏まえたようなポジションに変わっていくべきだろうという気はします。

【森脇委員】  意見というよりも,資料2の8ページの,学長と学部長の選考方法ということで,先ほど御説明があったのですが,この調査結果を見ますと,学部長の方が学内選挙で選ばれているという割合が高い。このように学長よりも学部長の方が割合が高いというのは,とても興味深い。法令上は規定されていないわけですから,日本のそれぞれの大学の意向が,あるいは,その特性というのでしょうか,それがここに表れているのではないかと読み取れます。これはもちろん規模やいろいろな大学の特徴によって違ってくるだろうと思います。
 しかし,このことが学長のリーダーシップと大変大きくつながってくると捉えているのですが,いかがでしょうか。また,学部長の選び方,そして,これは次のテーマだろうと思いますが,教授会の権限などとも大きく結び付いていると思えてなりません。ですから,学部長の選考のことだけ,ここで余り突っ込んでもと私は思っています。
 教授会が非常に重要なことになってこようかと思います。

【帯野委員】  学部長の責任というのはどこかで明確にされているのでしょうか。私は,私学も国立も少し携わりましたが,学部長というのが具体的に組織の中でどういう,役割を果たしているのかについては,一口で言うと,学部と執行部との連絡調整役みたいな役割と見て取っていたのですが,その学部長の責任というのはどこかで定められているのでしょうか。あるいは,定める必要があるのでしょうか。

【白井大学振興課課長補佐】  学部長については,先ほど,最初に御説明いたしました学校教育法92条の5項というところで,学部に関する校務をつかさどるという規定があるのみでございまして,それ以上のことについてはなく,まさに学部長が学長と学部をどのようにつないでいくのかということについて,この部会でも御議論いただければと思っております。

【帯野委員】  そうしますと,先ほどの御発言の教授会との絡みになると思うのですが,ある程度,学部長の権限と責任というのも考えた方が,組織力が付くのではないかと思います。

【上山委員】  少しだけ補足させていただきます。現状でも学部長はとても権限を与えられてはいます。例えば経済学部なら経済学の分野における学部長の権限として,国立大学も最近かなり力を入れていて,例えば毎年毎年の各教員の業績を全部審査して,給料にボーナスの形で反映させるということをやっている。東京大学の経済学部はその制度をかなり前から入れていますし,大阪大学などでも確か行っていると思います。
 そういう意味では,学部内の権限としては力を発揮することができます。あるいは人事に関しても,人事委員会は大体,学部長の下に作られますから,そこの中での議論に相当程度影響を与えることができるという意味では,決して権限と責任がないわけではないのです。
 ただ,私が申し上げたかったのは,それは経済学部という学部,あるいは法学部という学部の中の論理で通っているわけで,もう少し全学的な視野を学部長が果たして持つことができるのかということです。そういう意味ではもう少し大きなところのスクール的なもの,スクール・オブ・何とかという形のところまで含めた組織の中での学部長,ディーンの在り方ということに踏み込んだ方がいいと私は思います。

【河田部会長】  まだ議論が煮詰まるところまで行っていないところもありますけれども,本日は具体的な項目五つについての御意見をいろいろ出していただいたと思います。
 副部会長とも御相談し,事務局とも相談して,この中からどの議論をもう少し深めていくのか,黒田委員の意見にもありましたように,私学と国立は違うという話もありましたし,今の学部長の話でも,学部の選挙をして,おとなしい,あまりうるさくない無難な人を決めておいて,それでうまくやっているという大学まで,様々な形のパターンがありますが,一応,議論はここまでにさせていただきたいと思います。
 きょう,参考資料2で使っていただいた私学についてのアンケートは,委員の先生方にはそれぞれお配りさせていただきました。私学については平成5年,10年,15年,20年という形で,それぞれ経営についてのアンケートを出させていただいております。
 今回,もう少し詳しくした方がいいという小林委員からの御意見もありましたので,6月28日からほぼ全部の私学にアンケートを出させていただきました。そして,7月12日の段階で集めました。今のところ,大体80%の回収率を頂いておりますので,それの中で,私学ではどういう形での学長選挙がなされているか,教学計画については,あるいは施設について,財務について,どういう形で決定がなされているかという,法人については41項目,大学の教学については10項目の質問をして,それを今,集計しております。その中で,できれば大規模大学,あるいは地方の大学とか,小規模大学,あるいは単科大学,短期大学という形で,現在の段階では,まだそこまでできるかどうか分かりませんが,一応まとめさせていただいて,次々回,できれば10月のこの組織運営部会のときに,私学の実態については詳しい御報告をさせていただけるのではないかと思っておりますので,5年前の時点よりは,私学は厳しい状況が続くだけに,経営について,あるいは学長の選考について,改革が進んでいるように,今のところ,私は考えております。

―― 了 ――

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

-- 登録:平成25年10月 --