大学教育部会(第43回) 議事録

1.日時

平成28年3月9日(水曜日)16時~18時

2.場所

TKP赤坂駅カンファレンスセンター ホール13B

3.議題

  1. 三つのポリシーに基づく大学教育の実現について
  2. 認証評価制度の改善について
  3. 実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会の審議状況について
  4. その他

4.出席者

委員

(部会長)鈴木典比古部会長
(副部会長)黒田壽二副部会長
(委員)羽入佐和子,坂東眞理子,日比谷潤子,牧野正幸の各委員
(臨時委員)安部恵美子,金子元久,小畑秀文,小林雅之,篠田道夫,二宮皓長谷山彰,濱名篤,前田早苗,美馬のゆりの各臨時委員

文部科学省

(事務局)関政策評価審議官,德田生涯学習政策局審議官,森田高等教育企画課長,塩見大学振興課長,小谷生涯学習政策局参事官,伊藤高等教育政策室長,塩原高等教育企画課主任大学改革官北岡大学振興課課長補佐 他

5.議事録

(1)三つのポリシーに基づく大学教育の実現について,事務局から資料1-1,資料1-2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【鈴木部会長】    それでは,所定の時刻になりましたので,第43回の大学教育部会を開催いたします。皆さん,御多用の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。
  本日は,これまで御議論を進めてまいりました三つのポリシーに基づく大学教育の実現それから認証評価制度の改善について,それぞれの議題について,今回,本部会としての一定の結論を得たいと考えておりますので,最終的な御議論をよろしくお願いいたします。
  また,中央教育審議会総会直下に設けられております,実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会での現在での審議状況を御報告いただく予定となっております。どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは,事務局から本日の配布資料について確認をお願いいたします。
【伊藤高等教育政策室長】    失礼いたします。本日の配布資料は,お配りしております議事次第のとおり,資料1-1から資料3-2までの資料5点と,そして参考資料1から参考資料3-2までの4点の,計9点お配りしております。欠落等ございましたら事務局にお申し付けください。よろしくお願いします。
【鈴木部会長】    それでは,まず,三つのポリシーの関連につきまして,前回,本部会でガイドラインの素案の修正案と省令改正案のポイントについて御審議いただきまして,現在,省令改正案のポイントについては,事務局にてパブリックコメントに付していると聞いております。本日は前回の大学教育部会での御意見等も踏まえまして,ガイドラインの最終案について御審議いただきたいと思います。
  それでは,事務局から説明をお願いいたします。
【北岡大学振興課課長補佐】    失礼いたします。資料1-1に基づきまして御説明申し上げます。
  前回の大学教育部会での御議論を踏まえまして,事務局において適宜修正を加えた資料が,この1-1の資料になります。大きな修正点につきまして,簡単に御説明させていただきます。
  まず,表紙のページを御覧いただきましたら,このガイドラインのタイトル,ここで黄色のマーカーを1か所引かせていただいております。ディプロマ・ポリシーの日本語表現といたしまして,従前,「学位授与の方針」としておりましたが,今回,「卒業認定・学位授与の方針」と改めさせていただいております。これは,省令の改正の規定と合わせた表現であるということで,御理解いただければと思っております。
  続きまして,7ページを御覧ください。この7ページのところ,3,三つのポリシーの運用に当たり留意すべき事項の括弧の1,この二つ目の丸でございますが,こちら,従前の表現の中で,先生方からの御指摘におきまして,個々の教員の教育活動のPDCA,全てについて,詳細の把握であるとか,あるいは場合によっては評価が求められるというような懸念がある,誤解を招く可能性があるというお話がございました。一方で,このポリシーの策定意義といたしましては,各教員の授業改善,その意識をしっかりと醸成していくということもあるという御指摘も踏まえまして,事務局において表現の修正を考えさせていただいているところであります。こちらの記載にありますとおり,大学教育の充実のためには,こうしたポリシーの策定単位レベル,つまりはプログラムとしてのPDCAのみならず,例えば,各授業科目のレベルにおいても,各教員がディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシーを踏まえながら,授業改善に向けたPDCAサイクルを機能させることが重要であるということで,この三つのポリシーが,各教員の個々の授業において,意識されるべきというふうな要素は残しながらも,過度にその点に縛られないような形でということで,表現を改めさせていただいております。
  また,前回の御議論の中で,修文の方向性について具体的にお示しいただきました点といたしまして,まず3ページを御覧ください。3ページの上,四角囲みの中に,カリキュラム・ポリシーの説明を書かせていただいております。この中で2行目,学修成果をどのように評価するのかというところがございますが,従前は,学生の学修成果とさせていただいておりました。こちらにつきましては,個々の学生の学修成果の評価という形で捉えられると,余りにミクロな視点になってしまうという御指摘がございましたので,ここをはじめといたしまして,全体的に,「学生の学修成果」という表現を,「学修成果」という表現に改めさせていただいております。
  続きまして,9ページ5行目のところ,自己点検・評価に当たっては,というところにつきましては,前回の御意見の中で,評価は定量的であればよいというわけではなくて,重要であるのは可視化されていることではないかという御意見を頂きました。その本部会の御議論の中で,具体的な修文の案につきましてお示しいただいたところでございますので,今回修正した形にしております。
  大きな修正点につきましては以上でございますが,最後に,2ページを御覧ください。冒頭のところ,法令の改正について記載をしているところでございますが,こちらは,まだペンディングとさせていただいております。冒頭,部会長から御説明いただきましたように,今般の三つのポリシーの改正に関わります学校教育法施行規則の改正につきましては,現在,パブリックコメントに付して,事務手続を進めているところでございます。したがいまして,まだ省令自体の改正はされておりませんので,こちらの記述につきましては,実際の省令改正がなされた段階で,このペンディングを外すというような処理をしたいというふうに考えております。
  事務局からの説明は以上でございます。
【鈴木部会長】    ありがとうございました。
  それでは,意見の交換に入りたいと思います。篠田委員,どうぞ。
【篠田委員】    中身についての意見ではなくて,運用に関わるところなのですけれども,このガイドラインという呼称というのは,一般的には指針とか指標とか,方向を指し示すということで使われるわけですけれども,新しい事柄を始めるときに,具体的な手法というのはやはり例示をしていかないと,実際の運用のところではいろいろ差し障りが出てくるので,このような形でガイドラインを提示するということは,非常に大切なことだと思います。
  一方で,ガイドラインに基づかないものは要件を満たしていないというような取扱いになってくるとすると,ガイドラインの運用いかんによっては,かなり強制力を伴うというような形になってまいります。
  これはもう既に,本文の2ページのところで,明確に「当然ながら,本ガイドラインに例示されている事項の全てを各大学に求める趣旨のものではない」ということが明記をされておりますし,それから,具体的な事例,紹介をするところでも,全て「例えば」というふうに,くどいぐらい強調していただいておりますので,運用としては,そこのあたりのところを,よく,我々も含めて理解をして,運用をしていくことが大切だと思います。
  これが,例えば評価基準とかに連動していくというようなことになってくると,この具体的なことをやらなければいけないというような扱いになってくると,各大学の自主的な取組という点では,非常に差し障りが出てくるのではないかなというふうに思いますので,運用のところでは,その辺を留意していきたいし,お願いをしたいと思っております。
  以上です。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。いかがでしょうか。何かお答え,ありましたらどうぞ。
【北岡大学振興課課長補佐】    今,篠田委員から御指摘いただいた点は,我々もそのとおりだと思っておりますので,我々といたしましても,この三つのポリシーの運用に当たりまして,過度な強制力というものは,当然,発揮しないようにということで,肝に銘じて政策に当たりたいというように思っております。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。どうぞ。濱名委員。
【濱名委員】    その箇所なのですけれども,「当然ながら」ということまで書かなければいけないのかなという,違和感があるのですけれども。ガイドラインとして作っているのに,「当然ながら」というのは書き過ぎなのではないかという気がするのです。全ての項目を一律に求めるものではない,というぐらいだったら分かるのですけれども,このガイドライン自体のレゾンデートルが問われるような書きぶりになってしまうので,これは表現をもう少し考えた方が良いと思います。
  要するに,これまでの議論を聞いていた人が,一律に強制するものではないというニュアンスを,表現したかったのだと思うのですけれども,こういうものが出ていくと,この審議を傍聴されている方はまだしも,一般の大学関係者なり,社会の人は,これを読むわけですね。そのような方がこれを読むときに,違和感のある表現は取るべきではないのではないかと思います。
  文章を読んで,淡々と入ってくるような書き方にしていただくのには,「当然ながら」は書き過ぎだと思いますので,しかるべく,その行間が伝わるように,改めていただいた方がいいのではないかと思います。
【鈴木部会長】    今の濱名委員の御意見について,皆さん,いかがでしょうか。ある意味,文言の問題だという面もありますし,しかしそれが意味するところは非常に重いという面もあります。
  篠田委員,どうぞ。
【篠田委員】    私は,やはりこの三つのポリシーの策定や運用というのは,この文章の中でも繰り返し言われていますように,各大学の建学の理念だとかの基本設定に基づいて,各大学が自主的に設定をして,質向上を強化をしていくところが,一番基本のところですので,私はこの文章で差し支えないのではないかという意見です。
【鈴木部会長】    長谷山委員,どうぞ。
【長谷山委員】    私も全く同感で,ガイドラインという一般的なイメージから見ると,随分細かいところまで,この文章が出ています。中には,「期待する」だとか「こうあるべき」だとか,いろいろな表現があって,中にはこれは強制力を持つと誤解されるようなものも混じっているのではないかというような指摘もあって,これまで文章を整えてきました。なので,いろいろ定めてはいるけれども,ガイドラインは飽くまで理念と大綱を示すものであって,その例示等で示しているもの全てが強制力を持つものではないと,このガイドラインに沿って,今度は認証評価等をする機関にも,そのことを理解してもらいたいというような,幾つかの議論の積み重ねがあって,この文章になっていますので,そうした流れを,一つの出来上がった文章で示すには,この「当然ながら」というものはあった方がいいように思うのです。ですので,私も全く同感です。
【鈴木部会長】    いかがでしょうか。では,羽入委員,どうぞ。
【羽入委員】    意図は,先生方,同じではないかというふうに,今伺っていて思いました。ガイドラインである以上は,やはりガイドラインなのであって,個人的にはガイドラインとは何かをここに示すということは,余り適切ではないように思いました。それで修正案ですが,「整理したものであり,ガイドラインに例示されている事項の全てを各大学に求める趣旨のものではない」とすると,篠田委員が最初に提案したことも伝わるでしょうし,ガイドラインに対する本質的な議論をここでしないで済むのではないかという気がいたしました。
【鈴木部会長】    一つには,この「当然ながら」という次の続く文章が,何々すべきであるということならば,非常に強制力のある文言ではあるのですが,今回はそのような趣旨のものではないのだという,いわば否定という,ではないというものですから,これは強制力を持つものではないということの強調であるというふうにも,受け取れないことはないと思います。
  そうしますと,先ほど申し上げましたように,文言の修正ではあるのですが,内容は深いものがあるということなのですけれども,部会長といたしましては,今申し上げたように,その後に続く文言が,趣旨のものではないというようになっておりますので,これは強制力ではないということで,このとおりにするということでよろしいでしょうか。
  それでは,そのようにさせていただきます。ありがとうございます。
  美馬委員,どうぞ。
【美馬委員】    資料1-2や参考資料1でポンチ絵がこの中に入っているのですが,これは,外に出ていくときに,この図の書き方なのですね。情報表現から言いますと,例えば,色であれば,同じ色のものは色の意味というものを持ちますし,フォントはフォントの意味を持ちます。特にこのポンチ絵のAP,DP,CPと,アルファベットのPDCAが全て重なるのですね。我々,議論してきている人たちはまだいいのです,PDCAの書き方と,AP,DP,CPのアルファベットが全部,たまたま重なってしまうので,とても混乱を招きやすい絵になっていると思います。ですので,色を多用することがいいわけではない。フォントの大きさ,あるいはアンダーラインの付け方,これは一貫性をもって,もう少し色の数を少なくする。それからユニバーサルデザインから言えば,これをモノトーンに落としたときに,同じトーンになって,グレーとかが合うように,そのようなことに御配慮いただきたいと思います。以上です。
【鈴木部会長】    どうでしょうか。
【北岡大学振興課課長補佐】    配慮が足りず申し訳ありませんでした。御指摘を踏まえて,少し事務局の方で考えさせていただきまして,先生,また部会長とも御相談させていただければと思います。
【鈴木部会長】    はい。ありがとうございます。
  それでは,このガイドラインにつきましては,これまで議論を続けてまいりました本部会のクレジットにて,三つのポリシーの策定・公表を義務化する改正省令の公布を待って,同じタイミングで策定することが望ましいと思います。つきましては,本日頂いた御意見等も含めて,省令改正に関する部分や策定の日付など,最終調整については私に一任いただきたいと思いますけれども,よろしいでしょうか。
(「異議なし」との声あり)
【鈴木部会長】    はい。ありがとうございます。そのようにさせていただきます。熱心な御議論,ありがとうございました。
  三つのポリシーに関しましては,以上の議事となります。


(2)認証評価制度の改善について,事務局から資料2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【鈴木部会長】    続きまして,認証評価制度の改善について審議を進めてまいります。本件につきましても,現在事務局にて,関係省令の改正のポイントについて,パブリックコメントに付しているとのことです。本日は,前回の本部会での御意見等も踏まえまして,審議まとめの最終案について御審議いただきたいと思います。
  では,事務局から説明をお願いいたします。
【伊藤高等教育政策室長】    失礼いたします。お手元にお配りしております資料2に基づきまして,認証評価制度の充実に向けて,審議まとめ案について御説明申し上げます。前回からの変更点に関しましては,赤字見え消しで記載をさせていただいております。
  まず,1ページおめくりいただきまして,この全体の構造について,目次を新設させていただいております。ただ,構造に関しましては,前回からの御審議の集約ということで,変更はございません。1点目としまして,検討の背景・経緯,そして2点目としまして,具体的な方策について,それぞれ,内容について記載させていただいているところでございます。
  引き続き,修正点につきまして御説明申し上げたいと思います。
  まず1点目は,1.検討の背景の経緯,2ページ目から3ページ目にかけてでございますが,最終的なお取りまとめの主体について明記させていただいております。この認証評価制度の改善につきましては,大学分科会下のこの大学教育部会を中心に,御審議いただいてまいりましたが,今回,認証評価制度の全体の改善,総合的な改善ということでもございますので,最終的には親組織の大学分科会において審議の取りまとめをしていただくという方向で,この全体の内容をお取りまとめいただくということを明記させていただいております。
  次に,表記の修正でございます。3ページ目の基本的な考え方のところの記載でございますけれども,三つのポリシーに関しましての,一番初め,初出のところの記述に関しまして,今回,定義を明記させていただいているところ,また同じように,記述・記載の表記ぶりという点に関しましては,前回,インスティトゥーショナル・リサーチについての記述の整理ということも御指摘いただきました。9ページに,そのような観点から,今般,この三つのポリシーのガイドラインにおける記載も含めまして,同じような形での修正を加えさせていただいております。
  戻らせていただきまして,5ページ目,次の3点目の修正点で,評価の方法の改善の部分でございます。「多様な指標の」と「活用」という部分でございますけれども,「多様な評価指標でもって評価活動が行われるべき」と,これは「活用」という形が正しいという御指摘を頂戴しましたので,御指摘のとおり修正をさせていただいているところでございます。
  最後に7ページ目でございます。評価における社会との関係のくだりでございますが,三つ目の丸でございます。この評価におけます社会との関係の強化ということで,発信について特に記載をさせていただいているところでございますが,前回,その発信の前提としての評価の在り方におきまして,各大学の独自の取組をしっかり評価するということとともに,大学に共通する課題に関しましては,その共通の評価の視点ということでもって,特に優れた取組を明らかにしていく評価が大切である,その旨,しっかり記載するべきであるという御指摘も頂戴いたしましたので,このような記載をさせていただいているところでございます。
  主な修正点に関しましては以上でございます。御審議のほど,どうぞよろしくお願いいたします。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。それでは,意見交換に入りたいと思います。御意見,御質問のある方は,机上札をお立てください。
  どうぞ。金子委員。
【金子委員】    4ページの,大学評価基準の項目に係る改善のところの丸の3行目から4行目にかけて,「認証評価機関において共通して評価すべきものとして,法令上位置付けることが求められる」と書いてありますが,この法令上に位置付けるというのは,具体的にはどのような形を意味しているのでしょうか。
  それから,大学評価基準の項目に係る改善で,その下に,と書いてありますが,この設置基準と,この評価基準に係る法令上の位置付けというのは,どういう関係になるのでしょうか。
【伊藤高等教育政策室長】    失礼いたします。最初にお尋ねの,「認証評価機関において共通して評価すべきものとして,法令上位置付けることが求められる」という,この法令上というのは,どういう法令についてかというお尋ねについてでございますが,前回の部会の折に,改正の方向性についても併せて御審議頂戴いたしました,認証評価機関を,最初に認証する際の省令がございます。細目を定めるための省令というのがございまして,その中に,認証評価機関として,大臣認証をするのに当たって,各々の評価機関に,確実に,この点はそれぞれの大学評価基準に,評価項目を設けて評価をしていただきたいという規定がございます。その省令におきまして,今般2点,内部質保証に関することと,そしてもう1点としましては三つのポリシーに関すること,こちらを大学評価基準に共通して定めるべき項目として位置付けて,大臣認証の際に,その観点が盛り込まれた大学評価基準になっているかどうかということを確認させていただくということを意図して,法令上位置付けることが求められるということを記載させていただいているところでございます。
  また,前回の資料に関しましては,この黄色のファイルの中にございまして,1ページおめくりいただきますと,前回の資料もございますが,このうち,資料2-2が,今申し上げました省令改正の方向性のポイントに関するものでございます。
  2点目の,大学設置基準との関係という点に関してでございますけれども,法令上位置付けるということに関しましては,三つのポリシーの策定の義務付けという点に関しましては,こちらも前回,御審議いただきましたとおり,三つのポリシーの策定,そして公表に関することは大学の基本的な組織,義務に関わるものということで,学校教育法の施行規則の方に,策定及び公表に関しての義務規定を設けさせていただくという方向で,こちらも前回の会議資料の資料1-3にございますけれども,御審議いただいたところでございます。
  簡単でございますが,以上です。
【金子委員】    経緯は,そうなのだろうと思うのですが,そうすると,法令上位置付けるということは,具体的な形態は一つではないのですよね。三つのポリシーについては,施行規則,PDCA云々(うんぬん)については,何か別なところに入る,ということになるのですか。
【伊藤高等教育政策室長】    引き続き事務局の方から御説明申し上げます。
  この4ページに書いてあります丸1の二つの丸,前段の内部質保証,後段の三つのポリシー,各々,大学評価基準において,共通して定めるべきということを,法令上位置付けるという,ここで言うところの法令というのは一つでございます。これが先ほど御紹介申し上げました,学校教育法110条第2項に規定する基準を適用するに際して必要な細目を定める省令という,前回の資料2-2に該当します,認証評価機関を認証する際の基準としての省令に位置付けるということでございます。
  つまり,評価機関が共通して評価をすることを,今後,法令上明確にしていくということで,今般,認証評価制度の改善ということで御審議いただきましたので,その認証評価機関の認証に当たっての評価基準に係る改正ということを念頭に置いて,この「法令」という文言を使わせていただいているところでございます。
【金子委員】    この法令の,具体的にどの部分であるのかというのを,もう既に審議がされているものであれば例示すべきだと思いますし,さらに,認証評価機関の評価基準としてリストのようなものが想定されるのであれば,そのようなものが考えられるというような書き方が必要ではないかと思うのですけれども,このままでは,法令上位置付けるということが,具体的にどのような内容を指しているのかというのが,分かりにくいと思います。
【伊藤高等教育政策室長】    分かりました。記載ぶりに関しましては,この法令上というところが何の法令なのかということが分かりにくいという御指摘でございましたので,表記は修正をさせていただき,最終的な御確認は,またしていただくということでよろしいでしょうか。
【鈴木部会長】    はい。では,そのようにさせていただきます。
  前田委員,どうぞ。
【前田委員】    今のこととも関連するのですけれども,これまでの審議で,三つのポリシーのことと,認証評価制度のことというのは,非常に緊密になっていますが,三つのポリシーの方では,最終的には法令としては,三つのポリシーの策定の義務化と公表の義務化。それで認証評価制度の方では,三つのポリシーがきちんとできているかどうかということを確認して,それに基づいて内部質保証ができているかということまで見ていくと。その内部質保証のところが,実は,一番の眼目で,三つのポリシーの方のガイドラインを読んでいくと,いろいろ出てくるというような形になっているので,認証評価機関が,この三つのポリシーのガイドラインをどのように使って,大学が内部質保証をきちんとしているかというところをチェックしていく責任は結構大きいだろうと思っています。
  特に,この三つのポリシーのPDCAのサイクル図でも,これはこれでいいと思っているのですけれども,PとDのところの丁寧さに対して,Cのところは比較的簡単になっています。ここを余り書き込むと,大学を縛ってしまうけれども,ここのあたりは,恐らく認証評価機関が内部質保証として,ガイドラインを参考にしつつ,何を大学に要請し,どうやって大学と内部質保証システムを作っていくのか。まだ,いきなり評価だけするというよりは,このガイドラインを参考にして作っていくと,そういう関係になっているのかなというふうに捉えて,ずっとお話を伺ってきました。
  つまり,法令だけを見ると,かなりシンプルになっているので,この議論というのは,非常に認証評価機関としても,参考にして評価をしていかなければいけないのだろうなと思って,ずっと審議に参加してきておりました。
  以上でございます。
【鈴木部会長】    前田委員,それは御感想ということですか。
【前田委員】    感想といいますか,要するに,気を付けなければいけないのは,法令になるのは,かなりシンプルなところだということでして,それは今後,認証評価のところで,きちんとそれが実質化されていくということ,きちんと使われていくことが重要だというように感じたという,感想と言えば感想になってしまうのですけれども。一応,確認をしておきたいと思ったことでございます。
【鈴木部会長】    はい。そのほか,いかがでしょうか。
  濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】    前田委員の御指摘のように,Cのところの記述が非常に弱いというのはおっしゃるとおりで,途中の議論の中では,それぞれの基本はディプロマ・ポリシーだったわけですね。ディプロマ・ポリシーを定める責任は,各大学に委ねようと。しかし,そのディプロマ・ポリシーがきちんと実現されているかどうかの内部質保証が機能しているかどうかを確認しようという議論をしてきたわけですが,では,文章上,どこが一番,そのことをクリアに表現できているのだろうかということについて,少し教えていただきたいのです。そのことのメッセージがきちんと伝わるかと気になります。
  危惧するのは,ポンチ絵が独り歩きすることです。恐らく,答申自体を読む人は,過去の経験から考えて,大学関係者の1割とか2割いればいいところです。ポンチ絵だけが独り歩きするときに,この表現では非常に弱いということが一つです。
  認証評価の中でも,三つのポリシーが今度まとまって出てくるのですけれども,各大学が責任を持って定めたディプロマ・ポリシーが,実現できるカリキュラム・ポリシーや,アドミッション・ポリシーになっていて,そのことが内部質保証で確認されているかどうかということが,一番重要だというところは,どこを見れば的確に伝わるのかということを,少し確認させていただければと思うのです。
【伊藤高等教育政策室長】    では,まず,認証評価の審議まとめの方から,事務局としての見解を申し上げたいと思います。今の御指摘に関しまして,資料2の3ページに,基本的な考え方ということで,今般,先生方に御審議してきていただきましたことを,大きく2点,1番目の丸と2番目の丸でまとめさせていただいたつもりです。
  1点目,1番目の丸の2行目の大学の質保証の基本というところについてでございますが,「多様な大学が自ら掲げる目標に向かって,教育研究活動を行う中で」,少し飛ばして,その「自主的・自律的な質保証への取組(内部質保証)が基本であることを踏まえ,各大学の自律的な改革サイクルとしての内部質保証機能を重視した評価制度に転換する」と。
  そして,その三つのポリシーの部分でございます。次の丸におきましても,この「三つのポリシーに基づく大学教育の質的転換など,各大学の取組を促進するような評価制度への改善・発展をしていくことが必要」という基本的な考え方で,この2点記載させていただいていることとともに,先ほどの大学評価基準の項目に関する改善の部分でも,繰り返し記載させていただいております。
  具体的には4ページでございますけれども,内部質保証につきましては,先ほどのとおりでございます。そして,三つのポリシーのところでございますが,この4ページ目の丸1の2番目の丸。この「また,三つのポリシーは,内部質保証の起点としても重要なものであり,認証評価機関において共通して評価すべきものとして」ということで,位置付けについての考え方を記載させていただくとともに,各々,どのような形で策定され,取組,また検証されるのかということについての例示として,「その際」以降,記載させていただいております。具体的には「三つのポリシーが一貫性・整合性あるものとして作成され,入学者選抜,教育の実施,卒業,各段階で目標が具体化されているか,また,組織的な議論を重ねた上で策定されているか,実施状況の検証も踏まえて改善されているかなどの観点から評価を行うことが考えられる」というような形で,内部質保証と,そしてその起点として重要な三つのポリシーとの関係ということも併せて記載をさせていただいているつもりでございます。
【濱名委員】    弱いところがあるとすると,やはり3ページ目の,多様な大学が自ら掲げる目標というのが,非常に抽象的に捉えられてしまうかもしれない。つまり,これは,今までの建学の理念とか,そういうものを想定されるが,議論の中では,各大学が定める教育の理念というのは,非常に抽象度が高くて,それでは,可視化できない,あるいは検証ができないと議論をしてきたと思うのです。しかし,三つのポリシーの整合性の方に力点が行ってしまって,各大学が最終的に,私立大学としての独自性等も包含するとするならば,やはり卒業認定,学位授与の方針というのが,本来一番上位にくる話だと思うのです。けれども,そのニュアンスが伝わらないのではないかというところが少し危惧されるのです。
  恐らくそれは順番として,基本的な考え方の最初にこの目標が出てきて,ディプロマ・ポリシーの話がその後出てくるので,この目標というものとディプロマ・ポリシーの関係が,きちんと伝わるのかなという気がします。だから,極端な話,これまでの議論も,カリキュラム・ポリシーやアドミッション・ポリシーを変えればいい,問題がある方法論は変えればいいし,あるいは,アドミッション・ポリシーの中で,入試の方法を変えることもやぶさかではない。ところが,そのディプロマ・ポリシーというのは,どのような達成をするのかということを社会的に公約することですから,それがころころ変わっていくということは想定できないという議論をしてきたと思うのです。しかし,整合性の方に力点を置いて読み取られてしまうと,一律に決めないで,各大学に責任を持ってというのはどうかと思います。ディプロマ・ポリシーはそう簡単には変えられないという議論が,ここでもあったと思うのですね。大学によって,これまでの成り立ちもあれば。そのことを尊重するのであるならば,やはりこのメッセージ,やや,現在の表現では弱いのではないかと私は思いますし,これまでの議論の中でも,そこの点についてはかなりこだわって言ってきたところだと思うのですけれども。その辺,弱くないでしょうか。
【伊藤高等教育政策室長】    ありがとうございます。その点に関しましては,前回,濱名委員に同じような観点,また,少し違った観点からも含めまして御指摘いただいたところでございます。三つのポリシーの中でも,特にそれぞれの関係性についてもしっかり明記すべきではないかという御意見があったところではございますが,一方で,このディプロマ・ポリシーと,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシーの関係性についても,この認証評価の制度の改善の方向性の中で,改めて記載をすべきかということについては御意見があるのではないかということで,お諮りをしたところ,このままの記載でよろしいのではないかという御意見もありましたので,今回,原案では修正をせずに御提示しております。
  改めまして,確認をしていただければと思います。よろしくお願いします。
【鈴木部会長】    いかがですか。一つには,三つのポリシーの間の関係,あるいは大学がやはり多様であるという観点からすると,なかなかそれを具体的に規定するというのは非常に難しいという面と,ここの大学が,三つのポリシーを一体性をもってやるということで,その意味で多様性を持っているならば,評価が可能であるという受取り方もできるのではないかという考え方もあるかと思います。
  どうぞ。美馬委員。
【美馬委員】    そうすると,先ほどのガイドラインと,今回の認証評価制度の絵の書き方が,きちんと統一した同じような文言で,簡潔に,その関係を示す必要があると思います。そうすると,先ほどの資料1-1の中の参考資料1として出ているポンチ絵と,別刷りの資料1-2,これと,質問と答えの中で出てきている文言がいろいろなところにちりばめられていて,例えば資料1-2の黄色の真ん中あたりには,「各大学の教育理念を踏まえ,一貫性のあるものとして策定」であるとか,省令改正とか認証評価とかというのも,いろいろなところに現れていて,なかなか分かりにくいのです。これはやはり統一して,それがちょうどこの文章の方ときちんと対応するような形で,簡潔にまとめていただく必要があるのではないかと思うのですが。
【濱名委員】    関連して,よろしいでしょうか。
【鈴木部会長】    どうぞ。
【濱名委員】    どこをさわれば一番いいのかというのを考えたときに,少し話が戻ってしまって申し訳ないのですが,資料1-1のところの,今回直したところが,実は混乱を招く一つの原因になっているかもしれない。というのは,ディプロマ・ポリシーからPDCAサイクルは回して,というポンチ絵になっていながら,3ページには,大学教育の質的転換,「各大学には,それぞれの教育理念を踏まえて三つのポリシーを策定し」と書いてしまっているところが問題だと思うのです。つまり,教育理念を踏まえて策定するのは,ディプロマ・ポリシーなのではないのかということです。ディプロマ・ポリシーを策定して,それに基づき,自らの理念に向けて,どのような学生を受け入れて,どのような能力をもってプログラムを通じて育成するかという観点からということであれば,ポンチ絵のPDCAとも合うのですけれども。三つのポリシーが最初からできてしまうはずがないのですね。ポンチ絵はディプロマ・ポリシーからスタートしているのですね。ところが,この文章で言えば,三つのポリシーからスタートすると書いてあるわけです。
  これが,伝わりにくい大きな原因になるのではないかと思うのですね。ですから,これは三つのポリシーではなくて,学位授与の方針からスタートするということが明確にここで書かれてあれば,先ほどの三つのポリシーの一体的なところを認証評価で受けることはできるようになると思うのです。
  よく考えたら,これは文章おかしいですよ。三つのポリシーを策定して,それらに基づき,という観点からでどんどん続いていくわけですよね。だから,文脈から考えれば,卒業認定・学位授与の方針を定めるとここをすれば,すっとPDCAとつながるのではないかと思うのですが。
【鈴木部会長】    いかがでしょうか。
  金子委員。ございますか。
【金子委員】    少し今,言われたことが,よく分からなかったのです。
【濱名委員】    もう1回言いましょうか。要するに,参考資料1のポンチ絵を見ると,PDCAで,どこから見ているかというと,ディプロマ・ポリシーからスタートしているのですね。PDCAの起点はディプロマ・ポリシーになっているのです。ところが,本文の方で3ページ目に書いてあるのは,教育理念を踏まえて,三つのポリシーを策定し,となっているのです。だからポンチ絵と本文で,整合性がないのです。だから,最初にディプロマ・ポリシーで,どういうアウトカム,どういう教育を実現するのかというものを策定して,それに合わせて,方法論や内容,評価の仕方,あるいは入学前,あるいは入学者選抜のときにどのようなことを測定するのかということが,その後考えられるべきものです。ですから,ディプロマ・ポリシーが大事だと言ったのは,ディプロマ・ポリシーがぐらぐらしていると,PDCAを逆にやりにくくなるのですね。ディプロマ・ポリシーがころころ動くような話になっている。だから,3ページ目は,「それぞれの教育理念を踏まえて,学位授与の方針を策定し」だと思うのですけれどもね。
【美馬委員】    補って言えば,大学というのは,どういう人材を輩出するのか,どういう人を育てるのか,つまりそれがディプロマ・ポリシーですね。そこから始まって,ではそのためにどういうカリキュラムがあって,どういう人を受け入れて,そのカリキュラムで育てていくのかということなので,ディプロマ・ポリシーが先なのではないか,ということだと思いました。
【濱名委員】    組織を作っていくときには,必ずそうだと思うのです。理念を具体的に目標に設定して,そのために,企業であれば事業内容であるとか,戦略を考えていくということで,やはり究極の目標からスタートしていくのであって,思考の順番として考えても,ディプロマ・ポリシーとカリキュラム・ポリシーとアドミッション・ポリシーが,同時にできるはずがないですね。ですから,何から手を付けていくのですかというときに,我々の審議の中では,DPを作って,CPを作って,APを作るのだという審議の順番を想定して,これまでも議論してきたと思うのです。いつからこの三つが同時に策定できるというような順番になったのかが,少し私は,記憶が定かでないのですけれども。
【鈴木部会長】    塩見課長,どうぞ。
【塩見大学振興課長】    失礼します。御意見ありがとうございます。今,御指摘いただいた点につきましては,ディプロマ・ポリシーが起点となって,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシーを作って,それらを一貫性あるものとして運用していこうという流れで,この場でも御議論いただいてきたと思いますし,ガイドラインもその考え方に立って,我々としても原案を作成したところでございます。
  ここで,「三つのポリシーを策定し」と書いてございますのは,ここはあえて,ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシーという,この三つのポリシーの中の順序までは書いてございませんけれども,当然,ほかのところにございますように,ディプロマ・ポリシーが起点となって,最終的には三つのポリシーを策定いただいて,それに基づく教育を進めていくのだという趣旨で作って,書かせていただいているところでございます。
  ただ,そういう点につきまして,ここが必ずしも分かりやすくないと言いますか,分かりにくいということでございましたら,ここに「まずディプロマ・ポリシーを策定し,それからそれに基づくカリキュラム・ポリシー,あるいはアドミッション・ポリシーという三つのポリシーを策定し」と言葉を補うということで,皆様に御同意いただければ,修正をさせていただきたいと思います。
【鈴木部会長】    例えば,「それぞれの教育理念を踏まえ,ディプロマ・ポリシーをはじめ,三つのポリシーを策定し」とかですね。
【濱名委員】    いや,鈴木部会長,それだと,やはりその順序性の問題が残ります。ですから,逆に,このどこを見れば,その順序性が明確に書かれていますかということなのですね。ポンチ絵の中には,ディプロマ・ポリシーから矢印が出て書いてある。ところが,本文の中には,そういう順番で策定するということが,明確に書かれてあればいいのですけれども,書いていなければ,少なくともガイドラインを作るわけですから,やはりそのことは明確に出さないといけないのではないでしょうか。それこそ,事例についてはリファレンスしなくても,共通した手続論については,きちんと明確にガイドラインを作っていかないと,これまで言ってきたこと等が,後になって伝わらなくなるというのが,危惧するところです。
【鈴木部会長】    どうぞ。
【森田高等教育企画課長】    この,今御覧いただいている案の6ページでございますけれども,三つのポリシーの策定に当たっての個別留意事項という項目の6ページに総論がございまして,まずディプロマ・ポリシーがあって,PDCAサイクルの起点として機能するよう,学生が身に付けるべき資質・能力の目標を明確化する。次のカリキュラム・ポリシーのところに,ディプロマ・ポリシーを踏まえた教育課程編成等を具体的に示すこと。それから,その次のアドミッション・ポリシーのところに,ディプロマ・ポリシー及びカリキュラム・ポリシーを踏まえ,ということの順序性を,三つのポリシー策定に当たっての個別留意事項として,ここで示させていただいていると理解をしております。
【濱名委員】    だとすると,やはり先に,そういう順序性が定められているということを示すべきです。3ページ,「三つのポリシーを策定し」というところとの,やはり読み方の整合性というのは,きちんと作った方がいいのではないでしょうか。後ろに書いてあるのだったら,前にも。ポンチ絵の中で具体的に書かれているのが,最後の手続論の中で初めて出てくるというのは,違うのではないでしょうか。そもそも論で,各大学の建学の理念とか,独自性を考えて,一番大切にしているディプロマ・ポリシーがスタートなのだということが,前の方で出てこなくて,具体的な手続の順番のところで初めて出てくるというのは,ガイドラインの作り方としては違うのではないかという気がするのです。間違っているというのではなくて,伝わりにくいので,やはり前の方も,きちんと後ろとの整合性を強化した方がいいのではないかと思います。
【鈴木部会長】    金子委員,どうぞ。
【金子委員】    私,どうもやはり議論が見えてこないのです。一つは,この絵に,私は少し問題あると思っています。それはなぜかと言うと,前に言っていましたけれども,三つのポリシーとPDCAを対応させるのに相当無理があったのですね。そこの問題は,細かく言うと,今言ったような問題が出てこないこともない。私はそれを非常に重要とも思わないのですけれども。ですから,ここは少し,事務局と部会長で調整いただけたらどうでしょうか。
  この三つのポリシーを議論している限りは,あえてこのPDCAに引っかける必要は私は実はないのかもしれないと思うのですね。これ,苦心して作られたのでしょうけれども,やはりそういうところで,突っかかるところが出てくるのはしようがないと思います。
【鈴木部会長】    前田委員,どうぞ。
【前田委員】    最初,すごく細かいことで,7ページの留意事項の最初のところに,括弧の1の丸の最初に,三つのポリシーを起点とするPDCAサイクルと出てくるので,これは絵と違うということで,申し上げたかっただけなのです。
  今の金子委員の御発言から,これを結び付けないというのも一つだとは思うのですが,そうすると,認証評価制度の充実の中で,内部質保証の重要性というのが弱くなるかなという気が少ししているのです。結局,この二つは,後ろの方だけ見ると,大学に求めているより,認証評価機関に求めることが書かれていまして,内部質保証というのはどうやってやるのだろうということは,実は三つのポリシーを見ることが重要なのかなと思っていまして,切り離すとどうなるのかなと,不安な気もいたしました。
【鈴木部会長】    美馬委員。
【美馬委員】    すみません。そうすると,今,改めて,そのPDCAとの対応を考えてみますと,PDCAで回すということは,このPを,Aに従ってまた変えるということになるのですか。つまり,策定したディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシーは,Doをやって,PDCAを回して,Aを評価して改革・改善すると,またポリシーというのは,次の段階のポリシーになる。ポリシーというのは,そんなに頻繁に変えるものなのですか。
【金子委員】    PDCAというのは,大学改革に関して使っているのは日本だけなのですね。もともと,どのような方針があって,それがうまくいっているかということをチェックしながら行うというのが,大学改革の基本で,それは先ほどの認証評価にも重要だということだと思うのです。PDCAというのは,もう少し特殊なコンテクストの中で,既にそのようなサイクルがあるところに,更に新しい試みを入れたときに,どういう結果が出てくるのかということをチェックするというシステムなので,今のような論理的な問題が必ず出てくるのだと思います。
  この図式については確かに混乱しやすいので,私はもう少しすっきりさせた方がいいと思います。ただ,先ほどのPDCAというのがなくなると,自己改善の部分が弱くなるのではないかというお話は,私は必ずしもそうではないのではないかと思います。やはり,改善する試みをして,それを自らチェックしていくということを言えばいいのではないかと思います。
【鈴木部会長】    では,長谷山委員。
【長谷山委員】    私も大体,同感です。先ほどの資料1-1の3ページの黄色で,「それぞれの教育理念を踏まえて三つのポリシーを策定し」とありますが,ここは,非常に大きなことを言っているので,具体的なポリシーを策定するに当たって,PDCAのサイクルというやり方でやるという話とは,次元が違うと思うのですね。要するに,三つのポリシーは全て,教育理念を根本的には踏まえていないとおかしいので,ディプロマ・ポリシーだけがその教育理念を踏まえて,ほかのものは踏まえていなくてもいいということにはならないと思うのです。ここはそのことを言っているので,三つのポリシーは全てどれもその根本に教育理念を踏まえていないといけない。
  一方,ポンチ絵の方は,そこにあるとおり,まさに,その三つのポリシーを策定していく,策定単位ごとに,どういうふうにやっていくか,PDCAサイクルに落とし込んで作っていくときには,これは必然的に,ディプロマ・ポリシーがまず起点にならざるを得ない。ディプロマ・ポリシーを起点にPDCAを作り込んでいくという,別の次元のことを表しています。先ほど,御説明いただいたのも,そういう趣旨で,その次元のことについては,既に起点として書かれていますという御説明だったと私は理解いたしました。
  ですので,3ページの表現は,このままでよいというのが,私の意見です。
【鈴木部会長】    金子委員,どうぞ。
【金子委員】    先ほど私,少し言いたいことが少しきちんと言えなかったのではないかと思うので。
  4ページの,大学設置基準の項目に係る改善のところなのですが,要するに,私が申し上げたかったのは,これは認証評価の第3期になるわけです。そこで認証評価の基礎はどこにあるかというところは確認しておかなくてもいいのか,ということなのですね。要するに,今まで認証評価の基準を見ると,大学設置基準の項目が大体使われています。それは,外形的な基準とともに,目標の達成というのが非常に重要だということが,かなり規定されているわけですね。そこは非常に重要で,しかも,認証評価制度で十分にチェックできているかと言えば,私はかなり疑問だと思います。後の方に,評価方法の改善として,いろいろなデータを使うということが述べられているのですが,評価の項目自体としては,やはり様々な外形基準ないし,その達成すべき教育内容というものが確実に実施されているのかということを確認すべきところが必要で,それに加えて,今度の新しい提言では,その三つのポリシーないし,PDCAといったものが入るということが言われている。
  4ページの最初のところに,従来の基本的な認証評価の機能を十分に発揮するということが必要だということが,1文ででもいいから入っていることが必要なのではないでしょうか。
  それからもう一つ。これに加えて,先ほど,この「法令上」というのが出てきたという,少し問題にしたのが,基本的な部分は,むしろ設置基準がかなり法令上の基礎になっているわけですね。ですので,ここにいきなり「法令上」とくると,どっちの方なのかと少し迷ってしまう。繰り返しますが,基本的な部分はどこにあって,今回,そこに足して何が出るのかということが,分かりやすくなるように,1文でも2文でもいいですから,少し入れてほしい,ということです。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。それでは,今,金子委員の方から1文を加えるという御提案もございましたが,まず,3ページの「それぞれの教育理念を踏まえて三つのポリシーを策定し」という,これをどう処理するかということで,このままで良いという御意見,それから,ここを修正するという御意見等がございました。非常に難しい問題ではありますけれども,ここに言葉を付け加えて,実質的に,美馬委員,あるいは濱名委員がおっしゃっていたような修正をするということも意見として出てきておりますので,部会長といたしましては,一度預からせていただきまして,皆さんの御意見を総合的に勘案して,このままでいくか,あるいは文言を修正するかを決定させていただきたいと思いますが,いかがでしょうか。
  よろしいでしょうか。では,そのようにさせていただきます。
  それから,金子委員のおっしゃった,1文を付け加えるということに関しましては,いかがでしょうか。事務局,どうぞ。
【伊藤高等教育政策室長】    具体的な書きぶりに関しましては,部会長,また御指摘ありました金子委員とも御相談して,最終的には案の取りまとめをお願いしたいと思っております。
  ただ,現時点,2ページ目だけ御紹介申し上げたいと思いますが,そもそもの検討の背景・経緯というところで,金子委員御指摘の,これまでの認証評価の取組,そして課題というところで,この外形基準の部分については,御指摘を今までも頂いておりますので,記載をさせていただいております。具体的には,この2ページ目の五つ目の丸のところ,「一方で」で始まるところです。「法令適合性等の外形的な評価項目等が多く,必ずしも教育研究活動の質的改善を中心したものになっていないこと」という,今回の認証評価制度の改善に向けての,そもそものスタート地点の課題というものを,ここに記載させていただいております。
  このようなものを参考にしながら,4ページ目で,基本的な考え方の課題というところを,しっかり書くべきということが御指摘だと思いますので,修正し,記載ぶりについては,また御相談を申し上げたいと思います。
  以上です。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  それでは,多々御意見を頂いて,まだ結論に至っていない面もあるのですけれども,本日頂いた審議まとめ案の修正に関する御意見の取扱いにつきましては,私に御一任いただきまして,御意見について整理した上で,次回の中央教育審議会大学分科会に報告いたしまして,審議のまとめに向け御審議いただくことにしたいと思いますが,よろしいですか。
(「異議なし」との声あり)
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  それでは,認証評価制度の改善については以上となります。ありがとうございました。


(3)実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会の審議状況について,事務局から資料3-1,資料3-2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【鈴木部会長】    続きまして,中央教育審議会直下に設けられております,実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会(以下,「特別部会」という。)では,平成27年の3月の有識者会議の取りまとめを受けまして,同年4月に中央教育審議会総会の諮問が行われ,現在,審議が進められております。同特別部会は,部会長が永田大学分科会長,副部会長が本部会の副部会長でもあります黒田副部会長がお務めになっておりまして,審議にも大学分科会の委員7名,大学教育部会の委員5名が参加されております。また,2月の特別部会においては,審議状況を整理した審議経過報告(案)の段階まで審議が進んできております。本件の状況について御報告いただきたいと思っております。
  では,事務局から説明をお願いいたします。
【塩原主任大学改革官】    よろしくお願いいたします。特別部会における審議状況でございますが,関連資料は資料3-1を御覧ください。
  特別部会は,昨年5月に第1回会議を開催して以来,これまで11回が開催されております。特別部会の委員につきましては,本日,参考資料3-2としても配布させていただいております。また,昨年9月に閣議設定されております日本再興戦略では,この新たな高等教育機関の制度化について,中央教育審議会で具体的な制度の設計を進め,2016年の年央までに,その結論を目指すものとされているところでございます。特別部会では,最終答申の前に,広く関係者からの意見を求めるため,この3月中にも審議経過報告を公表することを目指しております。資料3-1は,この審議経過報告につきまして,直近の2月26日の特別部会にかけられました,当該時点の報告書の案でございます。特別部会では,来週にももう一度開催し,また,本日の大学教育部会,並びに3月18日の大学分科会での報告も経た上で,審議経過報告を取りまとめて公表する予定でございます。
  それでは,資料3-1に基づきまして,特別部会で検討されている審議経過報告案につきまして御説明させていただきます。この審議経過報告でございますが,報告書は全体で4章立てとなっておりまして,その第1章が2ページからでございます。
  第1章では,職業人を取り巻く状況と今後の職業人養成についての現状認識をまとめているものでございます。ここでは最初に1の括弧の1,産業・職業の状況といたしまして,これは産業の高度化,複雑化とともに,産業構造転換のスピードが非常に早くなっていること,さらに,我が国の状況といたしましては,生産年齢人口の減少,日本型雇用慣行の変容,企業内訓練の縮小等が進んでいることを指摘しておりまして,そのような中,職業人をめぐる状況といたしましては,求められる能力が高度化・多様化していること,雇用も流動化し,生涯にわたる職業生活の中で,キャリアアップ,キャリア変更を求められる場面も多くなっていることを指摘をしております。
  こうした状況の中,今後の職業人養成の在り方につきましては,3ページの下から二つ目の丸にありますとおり,成長分野等で求められる人材の養成に迅速に対応していくこととともに,とりわけ,変化への対応を求められる中,事業の現場の中核を担い,現場レベルの改善・革新を牽引(けんいん)していくことができる人材の養成強化を図ることが課題であるとしております。
  そのためには,3ページの下から3行目でございますが,専門分野における高度で実践的な専門性を身に付けると同時に,専門の中で閉じることなく,変化に対応する能力等を備えた人材の層を厚くしていくことが求められるとしております。
  続きまして,第2章でございます。高等教育における職業人養成の現状と課題を述べているものでございますが,そのまず1の括弧の1,制度の現状につきましては,これは5ページの二つ目の丸にございますとおり,大学・短期大学をはじめ,各高等教育機関がそれぞれの特性を生かしつつ,社会で必要とされる様々な領域の職業人養成を推進してきている状況について述べておりまして,これら各機関の職業教育校の充実化,今後も重要な課題であることについては論を俟(ま)たないといたしております。
  また,括弧2の人材養成ニーズ等の動向につきましては,技能の修得を伴う専門資格職養成等へのニーズが大きくなっていること,また括弧3の学生受入れの状況といたしましては,その丸1では,高等教育進学率の上昇,大学生の多様化が進む中,十分な目的意識や意欲を持って学習に取り組めないなどのミスマッチを抱える学生も少なくない状況。また,丸2の社会人学生の状況といたしましては,我が国の大学におけます25歳以上の学生が入学する割合が,OECD諸国でも最低水準である状況について述べております。
  これらの状況を踏まえまして,7ページの2.高等教育機関における職業教育の課題と求められる対応についてでございますが,ここでは大きな三つの観点から取りまとめております。
  その丸1,職業教育に対する社会全体の認識に関する課題といたしましては,これは学問の教育よりも,職業技能の教育が一段低く見られ,大学に進学すること自体を評価する風潮があるといった課題を指摘した上で,これに対しては,スペシャリスト志向の若者等にとって魅力ある進学先となるような,実践的な職業教育に最適化した仕組みの創設が望まれるとしております。
  また,丸2,社会人の学び直し環境に関する課題と対応といたしましては,変化の激しい社会を生きる職業人が,知識・技能等の修得・更新を図ることができる学び直し環境の整備が課題となっており,そのための高等教育機関が求められるとしております。
  さらに,丸3,これからの経済社会を担う職業人養成のための課題についてでございますが,こちらにつきましては,8ページの27行目,下から二つ目の丸の部分でございますが,現行の高等教育制度におきまして,大学・短期大学は,幅広い教養教育と,学術の成果に基づく専門教育の中で,職業教育を行うものとされ,職業実践知に基づく技能の教育については,制度上,明確な位置付けがないままとなっている。一方,技能の教育に強みを持つ専門学校は,制度的自由度の高さの裏面として,質保証の面での課題があるとの指摘をうたっております。
  その上で,8ページの一番下になりますが,今後求められるのは,自己の職業分野における専門技能等を備えると同時に,変化への対応等に必要な基礎・教養や,理論にも裏付けられた実践力等を兼ね備えた質の高い専門職業人の層を確保していくことであり,このような人材を養成するためには,技能と学問の双方の教育を融合し,強化していく仕組みが必要といたしております。
  そして,この章の結論でございます。9ページの一番下の丸でございますが,既存の高等教育機関が,今後もそれぞれの強みと特性を生かした職業教育の推進を図るとともに,新たな高等教育機関を加えることにより,それらが相まって,我が国の職業人材養成の格段の強化が図られることを期待したいとしているところでございます。
  続いて第3章でございます。新たな高等教育機関の制度化の方向性といたしまして,まず,養成すべき人材像について述べております。1.の丸1,企業の中で果たす役割から見た人材像といたしましては,10ページの最後の丸のところにございますが,スペシャリストとして優れた技能等を強みに,事業・実務の主力を担うとともに,事業活動における新たな価値の創造を先導するような人材。
  続いて11ページの真ん中,丸2でございますが,個々の職業人としての観点から見た人材像といたしましては,生涯にわたり自らのキャリアを主体的に切り開いていけるような人材といったような人材像を示しております。
  さらに,12ページを御覧ください。3.大学体系への位置付けとしておりますが,新たな機関につきましては,教養や理論にも裏付けられた実践力を育成するものであること等を踏まえれば,これを大学体系の一部をなす機関として,その制度の設計を図り,従来の大学と同等の評価を得られるようにすることが適切といたしております。
  さらに第4章,15ページからでございます。ここでは,新たな機関の制度設計等について,まずその基本的な視点といたしまして,身に付けさせるべき資質・能力の明確化を図っております。15ページの四角囲みの中にございますとおり,丸1,専門高度化,黒丸の丸2,実践力強化,丸3,分野全般の精通等,丸4,総合力強化,そして丸5,自立した職業人のための「学士力」育成といった観点から,その教育の特徴付けを図ることといたしております。
  次に16ページでございます。制度設計に当たり重視すべき視点といたしまして,黒丸の丸1は,理論と実践の架橋という観点。黒丸の丸2,産業界・地域等のニーズの適切な反映,丸3,社会人の学び直し等,丸4,高等教育機関としての質保証の四つの視点を挙げて,さらに16ページの下段からは,これらの視点を踏まえた制度設計の在り方をまとめております。
  制度設計の,まず基本設計といたしましては,17ページの上段にありますとおり,こちらでは修業年限等の枠組みを定めておりますが,まず学士課程の基礎課程相当の課程を提供する修業年限4年の機関,更に短期大学相当の課程を提供する修業年限2年又は3年の機関の両方を,制度化をすることといたしまして,特に学士課程相当の4年課程につきましては,これを前期・後期の区分性とすることも可能とすることを検討することとしております。
  続きまして,括弧の2の具体的な設計でございます。白丸の丸1,理論と実践の架橋のための設計といたしましては,まず教育内容・方法でございますが,こちらは17ページの下段から18ページの上段のところにございますとおり,企業内実習(インターンシップ)や実習科目等を,一定時間,一定割合以上,義務付けること。また,知識・技能等を統合し,課題解決力に結び付けるための総合的な演習科目を設定することを記載しています。
  また,教員組織でございますが,18ページの中段,四角囲みでございますが,実務家教員を一定割合以上配置するほか,更にそのような実務家教員のうち,研究能力を併せ持つ実務家教員を一定数以上配置すること等といたしております。
  続きまして丸2,産業界・地域等のニーズの適切な反映のための制度設計といたしましては,19ページに上段の四角囲みのところでございますが,産業界・地域等との連携により,教育課程を編成・実施する体制の整備を義務付ける等といたしております。
  その19ページ下段丸3,社会人の学び直し等のための制度設計につきましては,こちら教育内容・方法につきましては,パートタイム学生や科目等履修生等として学ぶことができる機会を積極的に提供すること。さらに20ページにまいりまして,短期の学修成果を積み上げ,学位取得につなげる仕組みを整備することなどを掲げております。
  さらに20ページの下からでございますが,高等教育としての質保証につきましては,まず教員に関してということであります。21ページの上段にまいりますが,こちらの四角囲みにありますとおり,その職制・資格等につきましては,大学や短期大学と同様とすることを基本としつつ,新たな機関では,実務卓越性に基づく教員を教員組織の中に積極的に位置付けること。その次,教育条件に関しましては,21ページの下段の四角囲みにありますとおり,専任教員数,備えるべき施設設備,校地・校舎面積につきましては,大学・短期大学設置基準の水準を踏まえつつ,質の高い職業人養成にふさわしい適切な水準を設定すること。さらに,質保証の仕組みにつきましては,22ページ,中断の四角囲みでございますが,20行目あたりでございます。小さいぽつの下から三つ目,上から三つ目辺りでございますが,現行の大学・短期大学が実施しているのと同等,又はそれ以上に充実した情報公表の義務付けを行うこと。さらには,下から二つ目のぽつでございますが,認証評価に関しては,分野別質保証の観点を採り入れた評価の導入も検討すると盛り込んでいるものでございます。
  制度設計の最後は,22ページの下段に書いてございますが,制度全般にわたる事項の整理でございます。研究機能の位置付け等につきましては,新機関は教育機能に重点を置くが,理論と実践を架橋する教育を行うための機関の目的には,研究を含むものとすること。その上で,23ページ,制度上の位置付け・目的でございますが,新機関の目的には研究も含まれること,教員の資格等についても一定水準を確保する機関であることから,その制度は大学制度の中に創設し,国際通用性のある学位授与機関としての位置付けを図るとしております。学位の種類・表記につきましては,世界の高等教育機関における学位授与の標準的な在り方等を踏まえ,今後,引き続き検討するとされております。また,名称につきましても,例えば,「専門職業大学」等の名称が考えられるといたしておりますが,これにつきましては,引き続きふさわしい名称を検討するものとしております。さらに,機関が対象とする職業分野につきましては,制度としての限定は行わないが,具体的なニーズが認められる分野での設置が想定されること。既存の大学・短期大学を設置したまま,一部の学部・学科を転換させ,新たな機関を併設することも可能とすること。なお,新たな機関に対する財政措置については,ふさわしい財政措置の在り方について検討することといたしております。
  最後,3.でございます。新たな高等教育機関による人材養成推進のための基盤整備では,こちらでは,産業界・職能団体等との多面的な連携に向けた協力の養成等についての記載がなされております。
  以上,審議経過報告に記載されている内容でございますが,特別部会では,本審議経過報告を公表後,関係団体ヒアリング等を行った上で,本年年央の答申に向け,更に議論を進めることといたしております。大学教育部会の委員の先生方にも,御意見賜りますよう,よろしくお願いいたします。
  以上でございます。
【鈴木部会長】    ありがとうございました。これから意見交換に入りますけれども,特別部会の委員も務められております牧野委員から,御説明の申出がございましたので,まず牧野委員から御説明いただいて,その後に意見交換に入りたいと思います。では,牧野委員,お願いします。
【牧野委員】    今,説明があったような,実践的な職業教育を行う新たな高等機関の制度化のところで,お話はさせていただいたので,改めて,こちらの方でも御説明をさせていただきたいと思います。今,お手元の方の資料を詳しく説明すると時間がかかってしまうので,かいつまんで,我々がこの制度の話をなぜするのかということを,簡単にお話ししたいと思います。
  先生方は御存じないかもしれませんが,大学生の中では,当社のインターンは日本で一番有名なインターンでございまして,毎年,大体数万名応募があって,うち2,000名程度を当社の方で選抜して受入れをさせていただいております。この,実は2,000名を受け入れて,当社が,ではそれでどんどん内定を出しているかというと,実はそういうことではなくて,実際その中から当社に入社してくる社員,人というのは,せいぜい200人ぐらいで,そして2,000名のインターンを1か月やるのにかかるコストは十数億円かかります。当たり前ですが,十数億円を100名,200名で割ったら,1人当たりの採用コストというのは一千万円超えてしまいますので,全く割に,実は合わないことを,十何年やっています。
  これをそもそも始めた理由というのが,面接や,いろいろなところで判断しようと思っても,なかなかその人の能力というのは判断できないばかりか,日本の大学生が,やはり物すごく正直で,卒業時点で子供過ぎて,教えることが,ゼロから教えなくてはならないので,もう才能を見て採るしかないのですね。
  実際,当社は,実は外国人の雇用比率が非常に高い会社でして,インドやシンガポール,それからASEANの各国,それからあと中国の,各国のトップ大学から,毎年数百名,採用していまして,今現在も,大体社員数で言うと半分近くが外国人という状態になっています。もちろん,外国人といっても,工場で働く人を採っているわけではなく,営業や,いわゆる日本で言う総合職を採用してきています。
  その中で,実は,日本の学生を海外の学生と混ぜてインターンシップ等を行ってみると,日本の学生はほとんど勝てないのですね。ちなみにこれは,日本でも当社に入社する意思があって来ているわけではないですから,日本のトップ大学の学生が集まっています。どこの大学という,名前を言う必要はないとは思いますけれども,いわゆる,就職,企業が採りたいランキングの上から5番目ぐらいまでの大学生がほとんどなのですね。それだけの日本の誇る学生が,一緒にインターンを受けても,ほとんど上位陣は全部海外勢が占めてしまうという状況の中で,それでもインターンが終わった後,多くの学生から,もっと若年のうちに,いわゆる大学の1年,2年のうちにこれをやっていれば,卒業までの間にもっともっと勉強する方法論を変えられたという学生が非常に多いのですね。そういったこともあって,できるだけ門戸を広げて,結果的にはもう,10年前からずっと2,000名以上インターンを受け入れることになってしまったのですけれども。
  これだけでは,もう我々も実は,負担もし切れないし,また,皆さんのやりたい,やりたいという要望にお応えできないということもあって,実は二,三年前から,実践だとさすがに1か月時間がかかってしまうと,夏休みと冬休みしかできないということもあって,実は,理論だけを教えると。その,インターンの中の,ということで,理論というのは,ものを考える考え方を教えてあげるということで,職業観だとか考え方を教えてあげるというものを,実は4大学と一緒にやらせていただきまして,ここ数年間,それをやっているのですけれども。これは非常に評価が高いので,いろいろな大学さんの方からお声かけいただいて,うちでもそういう。今やっているのは,実は3時間掛ける7回ですから,通常で言うと90分掛ける14回なので,1単位分ですね。1単位分の時間をそれに充ててやるということで,一部お手伝いはしているのですが。これもうちは,別にこれ,お金をもらって商売しているわけではないので,正直言って,これの負担額も,うちの最優秀営業マンだの,最優秀エンジニアを出さなければいけないのは,正直,厳しい状態ですと。
  ですから,できれば,こういったところを,産業界として求めるという意味で言うと,これは当社だけではなくて。実は当社,人事系のシステムをやっている関係上で,ほとんどの日本の上場企業の人事部門の方と,絶えずお話をしている中でも,やはり求めている人材と,大学から送られてくる人材というのは,物すごくギャップがあるということを,いつもおっしゃっています。我々が求めている,これは産業界として,私の意見というよりは,いろいろな方の意見をまとめて言うと,やはり知識のキャッチアップ能力というのは,実は日本の学生は非常に高いのですね。これは,頭が十分いいし,高校までで十分教育を受けているということで,論理的な思考力も高い人が多いです。しかし,これはもう,大学のレベルによりません。やはりある程度,高校のときに。アメリカみたいに,中にはこう,数学を全く覚えていない人とかもいるのですけれども,日本はそういう人はほとんどいないので。非常に一定のレベル以上では高いのですけれども,ただ,どれほどすばらしい大学を出ていても,日本の学生はやはり知識のキャッチアップ能力がたけている人が多くて,自分で考えるという癖付けがないのですね。ですから,正しい答えを覚えて,それを使おうとする人が多くて,自分で何かを考えて,正しい答えとか,あるかないかというのが分かる教育をしているのは,実はゼミの中ぐらいです。そういった状況の中で,我々が,産業界が求めているというのは,実は専門的なエリアをがんがん教育してほしいということよりは,基本的には自分で考えるという癖付けを持った学生が欲しいというのが,間違いなく,ほとんど全ての企業における事実だと思います。そうでないのだったら,十分,高校を出ただけでも,専門学校を出ただけでも,十分な技能は,最低限の技能は付いていますので。そこよりはむしろ,考える力というのが,非常に,我々にとってみたら重要だなというふうに思っています。
  最後になるのですけれども,我々自身がやはりそうですし,今,多くの企業が,海外で展開していく中で,海外でも人を採用していっているわけですけれども,同じ海外のトップ大学の大学生で比べてみると,日本で言えば例えば東京大学と,我々が採用数一番多い,中国で言えば北京大学,清華大学,あとインドで言えばIITということになるのですけれども,ここの学生でディスカッションさせると,学生時代の勉強時間って,日本だけ非常に少ないのです。特別に少ない,そんな駄目な学生だけピックアップしているわけじゃなくて,みんなでディスカッションをさせても,まずインドやアジア圏のトップ大学の学生,あとスタンフォードの学生も入れてですけれども,彼ら,アルバイトなんかしたら,卒業,絶対にできないですね。もう夜もなかなか寝る時間も削らないと,なかなか単位が取れない。卒業の資格が取れないということで,みんな必死で勉強しているのに対して,日本のトップ学生というのは,もちろん理工学部なんかだったら卒業研究がありますから,その時間があるので,一生懸命やってはいますけれども,では全部の,いわゆる授業や講義の中で,全部のところで物すごい課題が出て,それをこなすのに,もう本当に時間がないという状況まで追い込まれている学生というのは,見たこと,正直言ってないです。
  ですから,そこを,先ほどのディプロマ・ポリシーという中で言うと,やはり一番,これは大事にしたいのは,大学の中でも,日本の特にトップ大学,中間大学も,いろいろな大学があると思うのですけれども,受け入れたときの,せめて受験勉強と同じぐらいの勉強をひたすらしなかったら卒業できないようなディプロマ・ポリシーを,是非持っていただきたいと思います。これは本当に,産業界からの切なるお願いでございます。
  高等教育,この職業を,専門的な職業訓練を行える高等教育機関の制度化ということなのですけれども,これは私どもとしては,考え方は二つありまして。現行の,いわゆる高等教育機関で,同じような教育がきちんとできて,1年生,2年生の頃から,単位が結構,厳しくなってしまうかもしれませんが,1年生,2年生の頃から,それなりにきちんとこういった職業訓練というよりは,働くというのはどういうことなのかとか,ものを考えるというのはどういうことなのかという,基礎的なことを教育に組み込んでいけるのであれば,多くの企業は,専門大学というのは要らないと思います。しかし,一方で,それがもし現行の大学ではカリキュラム的に難しいと,時間的にも無理があるということなのであれば,我々としては,この新たな職業教育を伴う高等教育機関の制度化というものに対して,賛成をしたいと思っています。
  あと,逆にもう一つの事例としては,いろいろな事例が出ていましたが,例えば,料理人の方の専門性のある方を,フランスなんかだったら,大学を卒業できるのだとか,いろいろな大学がおありだと思うのですけれども。そういったものを,実は,確か大もとでは,そういった方々に学位を与えたいという話もあったのですね。もう,実は,ここに落ちてくるときにはほぼなくなっていたのですけれども。当時の有識者会議のときには,最初,それが出ていた部分があったと思うのですけれども。そういったものであれば,これは少し,我々は職業人と言っても一つにはくくれませんので,そういう専門的な職業人の方々のために,大学の教育を含めた教育があってもいいかなとは思います。いわゆる一般的な多くの企業が求めている職業訓練というのは,決して専門的な職業訓練ではなく,ものの考え方,知識ではなく自分で考えるというものの考え方,あとは,働くということがどういうことなのかということを考えるということを,是非行っていただけるような,そういったカリキュラムを大学の中で組んでいただけると,我々も非常に採用しやすいなと。
  最後に一つだけ。少しこれは本日,大学の関係者の方が多いので言いづらいのですけれども,言っておかないといけないなと思っていました。これは,実は私の友人で,グーグルの結構上の方の人間がいたのですけれども,彼はもう今,辞めて,自分で通信教育の大学を作ってしまったのですけれども。彼が言っていた中で言うと,日本のグーグル,という実名を挙げる必要はないのですが,日本の外資系企業の,いわゆるIT系のトップの企業としては,一番不思議なのは,日本では大学の成績を見ないで採用することだと。もう,見ているのは,この大学の偏差値は幾つですと言われて,だからこの大学優秀なのですと。あとは面接で決めてくださいと言われて。ええ,大学の卒業成績,どうなっているのと。いや,そんなの見ても意味ありませんというのが,今の日本の人材供給会社が言っている言葉なのですね。それは我々も実際,事実,そう認識してしまっているのが,せっかく4年間も勉強しているのにもったいないなと,心から思っています。
  少し長くなってしまいましたが,恐縮でございますが,以上でございます。
【鈴木部会長】    ありがとうございました。貴重な御意見を頂きました。
  では,意見交換に入ります。御意見,御質問のある方は,机上の札をお立てください。
  坂東委員、どうぞ。
【坂東委員】    今の牧野委員のお話,そして特別部会の報告を見ながら,現在の大学で,しかも研究大学ではなく,一般的な職業人を養成する大学の当事者として,この新しい大学が目指すものと,我々,今の大学がやろうとしていることの差はどこなのだろうかというのを,大いに考えさせられました。
  前にもお話ししましたが,本学は,三つのポリシーだけでは物足りないと考え,キャリアデザイン・ポリシー,つまり,将来,自分はどういう職業に就き,職業人になるのだ,どういう人生を設計していくのだという将来性を見据えて,それぞれの学科ごとにポリシーを立てています。そうしたことは,今,牧野委員がおっしゃったことと,非常に共通いたします。ですから,この新しい大学が目指すものは,我々,教育系の大学も,一生懸命やれば,それでもうオーバーラップしてしまって,差はなくなってしまうのではないかなと感じます。
  逆に,我々大学は,認可を受けるために,いろいろと必要な条件を満たさなければならないわけですけれども,職業系の専修学校,専門学校の方たちは,かなり時代の要請に柔軟に対応されております。その柔軟性を持つ職業人養成の部分と,冒頭にも書いてありましたが,現在,存在しない職業に就くための能力等の分野を養成するための教育とのところは,どなたに聞けば説明していただけるのでしょうか。質問です。
【鈴木部会長】  美馬委員,どうぞ。
【美馬委員】    私も同じように考え,感じました。
  本日,初めてこの結果報告を聞いて,このロジックが通らない気がしますので,そこをよく理解したいと思うのです。ここに出てくるのは,新しい職業というか,今後必要が出てくるから,それに合わせて養成が必要だということですが,そこでどうして職業教育なのかということが分からないのですね。つまり,新しいものがどんどん入れ替わっていくのであれば,土台となる,その自律的学習者,自分で新しいことをどんどん学んでいくような人を育てるべきであって,どうしてここで高度の専門職業人を育てるということになるのでしょうか。そこでいう職業というのは,またすぐに古くならないのか。だから,職業教育の,このような養成をするのであれば,その内容は制度として,例えば何年かに一度見直して,その職業が変わっていくべきではないかと思うのですが,そこのロジックやストーリーがよく分からない。
  あと1点,これは事務局に質問なのですけれども,2ページの脚注にある1と2です。新しい職業というのが出てくると,キャシー・デビッドソンとマイケル・オズボーンが,いつもこうやって出てくるのですね。本当にキャシー・デビッドソンはこれを言っているのか,孫引きになっていませんか。大丈夫ですか。私,前,これ見たときに,キャシー・デビッドソンは誰々がこう言っていると言って,2007年のオーストラリアか何かの話を出してきていたのですね。もし,中央教育審議会の文書でこれを出すのであれば,きちんと裏を取っていただければと思います。
  以上です。
【坂東委員】    「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」か何かに書いてあっただけですよね。
【美馬委員】    そうです。彼女がこの本で書いているという本を,私,見たのですけれども,それは別の方の孫引きみたいだったのです。
【鈴木部会長】    それでは,事務局の方で確認してください。
  日比谷委員,羽入委員,小林委員,それから濱名委員ということで,お願いしたいと思いますが,短めにお願いします。
【日比谷委員】    ありがとうございます。大分,重なっておりますが,まず第一に,初めて御報告を本日伺いまして,これについて特別部会でいろいろ審議が進んでいるということを,私も理解しておりましたが,こういうものが出てくるということは,はっきり言うと全く想定していませんでした。
  学位の種類のところを見ますと,バチェラーの学位を出すということなのでしょうかというのが質問ですそうだとすると,今のいわゆる大学の学士号とどこがどう違うのかと。牧野委員のお話を伺っていますと,ちらっとフランスに触れられたような気がするのですけれど,たまたま,私どもの大学を2年ぐらいで中退しまして,もともとヨーロッパの高校から帰国で入ってきたというような人が,フランスの大学に行くと言われたのです。よくよく聞いてみたら,それはチーズを専門として勉強する大学ということで,多分ここに書いてあるような,履修すると学士が取れるというものなのだと思うのですね。チーズの勉強でフランスへ行くって,すごく私,納得したのです。非常に高い職業的な,特殊な技術もあるし,歴史もあるし,それで学士を取れたら,それはそれでいいと思うのです。ですが,今伺ったお話は,そういうこととも少し違って,既存の大学,我々の大学でやっているようなことと,改めてこのような別のカテゴリーを立てる意味が,私も少しよく分からなかったなと思いました。
【鈴木部会長】    羽入委員,どうぞ。
【羽入委員】    今までのお二方の委員の方々と,ほぼ同じですが。私,二つ,これまでの本部会での議論がどうだったかということを教えていただきたいと思うのですけれども。
  二つありまして,一つは,既に800ぐらいの大学があると思うのですが,それに加えて,別のカテゴリーをまた新しく作り上げるという流れなのか,それとも,このようなカテゴリーを作ることによって,それらをまた区別していく,特化していくという方向で議論が進んでいるのか,ということです。
  それからもう一つは,ここで考えられている職業というのは何なのかということです。私も,美馬委員や日比谷委員と同じように,牧野委員のおっしゃることを伺っていて,少し分からなくなってしまったので,そこが疑問に思いました。
【鈴木部会長】    小林委員,どうぞ。
【小林委員】    私も全く同じような意見であります。繰り返しになりますけれども,なぜ,既存の大学や短期大学ではいけないのかというのが,話を聞いていて,どうも見えてこないのですね。この,新しいものが必要だという理屈はかなり書いてあるのですけれども,なぜそれが既存のものではできないのかということがここに書かれていないということが,非常に問題だろうと思います。
  例えば,産業界との連携とか,一定以上の実習とかインターンシップを位置付ける,義務付ける,あるいはその実務家教員を一定割合配置する,確かにこれは今までのものにはないわけですから,こういったものを入れるということは分かるのですけれども,それがなぜ新しい大学でなければいけないのかということが,この報告だけでは理解できないということです。
  特に,これは大学として大学制度の中に位置付けると言っているわけですから,この点は非常に明確にしておかないと,既存の大学との関係というのは,非常にややこしくなるわけですね。
  それに関連して言いますと,既存の大学制度の中で位置付けるということは,整合性を取らなければいけないわけで,質保証が,これからということになっていますけれども,新しく設置指針を作るとか,認証評価を活用するということを言われているのですけれども,これがかなり大きな課題になるということは,是非強調しておきたいと思います。大学というのは,今,我々が議論しているように,質保証があるからこそ大学だということは,言っておかなければいけないと思います。
  それからもう一つは,財政的措置ということなのですけれども,既存の制度の中に位置付けるということになると,私学助成とか,あるいは国立大学で作った場合にどうするか分かりませんけれども,補助金を出すとか,運営費交付金を出すとか,そのような話になると思うのですけれども,その辺の道筋がまだ見えていない。
  それから,最後に,今後の創設に向けて,かなり急いで作られているというふうにお聞きしていますけれども,果たしてこれだけ大きなものを作るのが間に合うのかというのが,非常に危惧されるという意見を申し上げたいと思います。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】    皆さんのおっしゃっていることについてはもう言い尽くされているので,そこ以外のところで言いますと,これを一条校の制度に乗せていったときに,この教員資格とか,一条校に準じる形になると,制度化の非常に厳しいトラックに持ってくるということですね。新しい分野のものというと,専門学校の方が実はフレキシビリティーが高くて,動きが早いのです。申し訳ないですけれども,専門職大学院はうまくいっていない。その制度のカバーでやれるかということなのですね。
  大きな問題は,大学院全体の問題とも関わっていると思うのですけれども,誰が教えるのかということです。養成とか育成とか,準備をしないでやろうとすると,結局,牧野さんがやってらっしゃるようなところにお願いをしないといけなくなってしまう。今まで,過去の大学政策の非常に問題だったところというのは,新しい領域に対する準備不十分な状態で火が付いてしまって,教員がいなくて取り合いになるとかという形になる。そのようなことを考えていったときに,産業界の協力というところで,もっと本格的な制度化ができないと,あるいは,どのような人材を具体的に養成してほしいのかというようなことに対して,協働体制が取れないと難しいと思います。
  基本的にコンピテンシー・ベースの教育は,既存の大学でもできると思うのですけれども,専門学校にはハードルが高くて,大学の方にはこっちに切り替えるメリットが見えなくて,制度的には非常に難しい条件が重なっていくと,制度を作ったけれども手が挙がらないのではないかということが,一番の危惧なのです。狙うとするならば,新しい領域に広げていく,日本の大学教育がカバーしていないけれども,他国の高等教育で学位を与えている領域に対して,具体的に考えていくのだったら,そうしていかなければいけない。
  大学というのは,新しい分野を作っていく場合に,研究業績を作っていこうとなると,やはりその最先端の領域から,何年か必ず遅れます。そうすると,産業界で,60歳前後で,役員にならないような方々を,制度的に取り組む形で派遣していかないといけないのではないか。専門職大学院でも言えますが,何年か前までは実務家だった教員も,5年たつと,もう状況が変わってしまう。そういう問題に対する対応を考えていかないと,制度としては発展性のあるものが見えないのではないかというのが一つです。
  それから,国際展開の話が全然見えてこない。通常の一条校からすると,SGUも,ほとんど海外にブランチが作れていないという状態を考えていくと,ドメスティックにこの制度を考えるのか,海外展開まで視野に入れて考えるのか。その場合には,専門学校の持っているフレキシビリティーを残しつつ,学位をもたらすならもたらす。ですから,そういう点で,少し焦点の当て方を少し変えていかないと難しいですし,既存の国家資格等の連動分野等々については,これは今後の話だと思うのですけれども,設置基準等々と,既存の国家資格制度との関係等々を見直さないと,設置基準よりももっと厳しいのは,そういう国家資格でがんじがらめにされています。これら二重の拘束のある分野等については,イノベーションが起こらない状態がもう出来上がっているので,そこも少しその検討の材料に入れていただきたかったというのが感想です。
【鈴木部会長】    二宮委員,どうぞ。
【二宮委員】    ありがとうございます。新しいニーズに応える新しい制度というのは,それは必要なことなのでしょう。その点は問題はないのです。
  この6ページのニュアンスを受け止めると,どうも大学は,やってはいけないことをやっていますよと。大学は,本来の大学の仕事をしなさいと。それから,大学は,本来,大学に進むべき人ではない人を受け入れて苦労していますよと。それから,大学は大学らしく,受け入れるべき人を,当然,ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシーをこれから頑張らなければいけないのですが。ここから,私たちや高等学校の進路指導の先生方に与えるメッセージというのは,とても重大だと思いますね。大学が大学らしいというのは,一体何なのかと。これは三つのポリシーに直結します。私自身は,たくさんの人が高等教育をしっかり受けていくということは,とても社会にとってはいいことだ,オバマ大統領が言っているような,ああいう方向はいいことだと思っているものですので。技能に特化した学校も必要かもしれませんけれども,ここの書きぶりは,大学に何をしろと言っているのか,大学をなぜこんなにまで否定しなくてはいけないのかというところで,少し違和感を抱いたところがあります。
【鈴木部会長】    金子委員,どうぞ。
【金子委員】    私はこの委員会にも参加しておりまして,ある程度,責任もあると思うのですが,皆さんおっしゃっていることは,大体既に,かなり議論した上で,こういう報告にはなっています。
  ただ,この部会としても御理解いただきたいのは,今の二宮委員のお話にも関わりますが,いかに既存の大学に対する不満が強いかということです。特に,先ほど牧野委員のおっしゃっていたように,日本の大学で,十分に密度の濃い教育を,きちんとやっていない。だから,いろいろな分野で十分に戦える人材を作っていないではないかという不満が,非常に強いということです。さっき牧野委員もおっしゃっていましたけれども,それが,必ずしも,この職業教育というものに特化すべきかどうかというところも,必要性はないかもしれないのですが,しかし,そういったことから,新しい形の大学を作りたいという要求につながっているというのが,現状です。
  そのような意味で,先ほどの三つのポリシーやPDCAの話も,それはそれで重要なのかもしれないのですけれども,この認証評価も,先ほどから申し上げているのは,授業の在り方とか,学生がどれぐらい勉強しているかとか,内容をどれくらい確実に自分のものにしているかとか,そういうことを,認証評価で何で評価するということを,前の方から言わないのか。何でその後,PDCAとか,非常に抽象的なことを強調するのか,私は分かりません。
  しかし,やはり具体的に,どれぐらい密度の濃い教育を大学でこれからやっていくのか。そのために,大学の側(がわ)が何をするのかということを,きちんと議論をしていかなければ,このような動きが出てきたら,十分に対応するということはできないのではないかと私は思います。
  以上です。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。まだ,この特別部会の委員の方がいらっしゃいますが,何か御意見ございましたら,どうぞ。
  前田委員,どうぞ。
【前田委員】    私もこの特別部会に参加していまして,いろいろな議論が出た中で,悩んではきたのですけれども,この方向に来たからには,私は今から注目したいのは,やはり設置基準と,認証評価システムです。職業教育ということ,人材養成ということを,かなり強くうたうのであれば,そこのところの成果は,恐らく認証評価できちんと見ていかないといけないだろうと思っています。
  あと,設置基準も,何かが緩和されるとしても,やはり絶対に譲れないところというのはあると思いますし,例えば,教員の質と量とか,そのあたりが,これからキーポイントになるのかなと考えております。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。では,黒田委員,どうぞ。
【黒田副部会長】    私は有識者会議の時代から,もう2年以上,この関係をやってきているのですが,日本の戦後の高等教育というのは,単線になっているのですね。これを複線化しなければいけないというのが,最大の眼目になっているわけです。単線になっているために,高等教育機関の大学というのが,いろいろな大学ができて,国家試験だけを目当てにする大学までできてしまっているわけですね。これで,世界的に本当に対抗していけるのかということになると難しい。東京大学をはじめとする研究大学も大学ですし,そのような特殊な大学も大学。全部一つになってやっている。だから,複線化をすることによって,それがきちんと機能を発揮できるようになるのではないかということです。
  腸内細菌でも,善玉と悪玉と,日和見というのがあって,この善玉だけでは,腸はうまく機能しないらしいですね。悪玉もいなければいけない。いろいろな格好の競争の相手があって,初めてその機能が発揮されるということなのですね。
  そういう意味で,これは,私としては,今,既存の大学で,そのような専門的な職業人を養成しているところは,もしこの新しい高等教育機関ができれば,移行していただくような格好を取れればいいなというふうに思いますし,既存の大学の中で,こういう分野を特化してやるのだという,そういう学部ができてもいいというふうに思っているわけです。それで,学術的なものと,職業的なものをきちんと切り分けていくと。
  そうしないと,これからの社会に出て,恐らく9割以上が社会で職業に就くわけですね。研究者になるのは1割程度ですから。5割を超える子供たちが大学へ進む,そういう時代に,それに合った大学作りが必要なのではないか。
  その中で,一番の眼目は,この,新しい高等教育機関というものが,国際的通用性を失ったら駄目なのです。国際的通用性が保(たも)てるようなシステムを作ると。いろいろな学位の在り方,世界中の大学を調べてあるのですね。そうしますと,ほとんどの国が,今の大学,学部はバチェラーに,1本に統一をしてきています。ドイツでも,ああいう専門の職業をやっているのですが,それもバチェラーの方へ移行してきているのです。そういう意味で,学位としては1本にしようということになっています。
  一条校という,大学の中に加えて,文部科学省として,国としての質を保証していこうということなのですね。専修学校というのは都道府県所管ですから,自由に振る舞うことができます。前期にやった学科が,後期になったらなくなって,ほかのものに変わっているということも,専修学校ではあるのですね。そこを出てくる学生たちの質保証というのはされていないわけです。そういうことでは,今後,職業人として,日本として困るのではないか,ということで,こういう制度を作ろうということになっています。
  皆さんから意見の出ているその内容というのは,この2年間で,ほとんど全部,出尽くしているわけです。ですから,その2年の間で変わってきているのは,産業界なのです。産業界が,最初は,是非これを作ってくれという話だったのですが,経団連は,今度ヒアリングすると分かると思うのですけれども,半数ぐらいは,こんなのいらないのではないか,普通の大学でやれるのではないかという話なのです。経済同友会の方は,是非作ってくれと。ところが,商工会議所では,専門職と言っても,専修学校のレベルでいいのだという話が出てくるのです。つまり,それぞれの職業の内容によって,質が違ってくるのですね。だからそれを一律にここに取り込むということはできませんので,これは,専修学校を一条化する話でもなく,そういう安易な格好での大学を作るということではないのです。そのために,しっかりした設置基準を今後作っていくということになるのですね。
  だから今ある大学設置・学校法人審議会の中に,こういう分野の新しい委員を加えて,新しいものをやらなければならないし,評価についても,今の大学の評価よりももっと厳しい評価になってくると思うのです。これは企業の方にも入ってもらって,企業としてふさわしい職業人がどうあるべきかということを議論していただくと,そういうことで進めていきたいというふうに思っているところなのです。
  これは,私も特別部会の副部会長もやっていますので,そういう話をさせていただきました。よろしくお願いしたいと思います。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。最後,安部委員,お願いいたします。
【安部委員】    私も,この特別部会に参加させていただいているのですけれども,本当に牧野委員や皆さんがおっしゃるように,現行の大学でキャリア教育ができれば,こういう新しい学校は作る必要がないのですけれども,ただ,高等教育のユニバーサル化の中で,学生を見てみますと,職業等の実践的な学びから理論知につながっていく学びに適した学生がいるというのは,これは事実だと思います。短期大学等では,そういうことを考えて,高等教育機関の中で,職業教育を充実してきたという経緯があるのです。
  では,職業教育をやる高等教育機関を構想したときに,今回,どういう学校の形にするかというようなことで,4年課程を2年足す2年に区切るとか,あるいは2年又は3年の,短期大学相当の教育課程も作るとか,職場と学校との往還的なシステムを作るとか,これは職業にフィッテイングさせるためにいい方法だなと思います。これが,私は大学で取り組めることができれば,もうそれでいいと思うのです。そして大学設置基準並びに短期大学設置基準で,そういう教育ができるシステムができるようにすればいいと思うのです。しかし,今の状況では,まだなかなか踏み切れない。という中で,この新たな高等教育機関というものの構想ができていると思うので,これについては,当然,その質保証,国際的通用性等々を考える中で,質保証は必須であると思います。今のような認証評価だとか,あるいは私どもがここで論議をしている三つのポリシーを明確にするとかというのは,これはもう必須アイテムですので,この教育機関に対しては,それを要求していくというのが,この審議経過の次のステップだと理解をしております。
  以上です。
【鈴木部会長】    ありがとうございました。多々,御意見を頂きました。本件は,引き続き,特別部会で御審議いただきたいと思います。
  本日は,皆さんに,残りの時間はフリーディスカッションということで差し上げようと思っていたところですが,その時間がなくなりましたので,また,今後そのような機会を得ることができればと思います。
  それでは,本日の審議はこれで終了させていただきます。
  御苦労さまでございました。

――  了  ――

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