大学教育部会(第37回) 議事録

1.日時

平成27年9月4日(金曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 高大接続システム改革会議中間まとめについて
  2. 認証評価制度の改善について
  3. その他

4.出席者

委員

(部会長)鈴木典比古部会長
(副部会長)黒田壽二副部会長
(委員)亀山郁夫,羽入佐和子,坂東眞理子,日比谷潤子の各委員
(臨時委員)安部恵美子,勝悦子,金子元久,川嶋太津夫,小畑秀文,小林雅之,篠田道夫,二宮皓,長谷山彰,前田早苗の各臨時委員

文部科学省

(事務局)杉野私学部長,関大臣官房政策評価審議官,佐野高等教育局審議官,杉本高等教育局審議官,浅田内閣官房教育再生実行会議担当室長,瀧本大臣官房付,森田高等教育企画課長,塩見大学振興課長,蛯名私学部私学助成課長,新田主任大学改革官,伊藤高等教育政策室長,橋田大学入試室長,山口大学改革官,北岡大学振興課課長補佐,片柳高等教育政策室室長補佐 他

オブザーバー

(オブザーバー)岡本大学評価・学位授与機構理事,林大学評価・学位授与機構研究開発部准教授

5.議事録

(1)議事に先立ち,事務局から人事異動の紹介があった。


(2)高大接続システム改革会議の中間まとめ(案)について,事務局から資料1-1,資料1-2及び資料1-3に基づき説明があり,その後意見交換が行われた。

【鈴木部会長】    それでは,所定の時刻になりましたので,第37回の大学教育部会を開催いたします。
  御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。
  8月末に取りまとめられた高大接続システム改革会議の中間まとめ(案)の中で,大学教育関係について触れられております。本日は,その内容について御報告いただきますとともに,今後,本部会において審議が必要な事項を整理していただきたいと考えております。
  その後は,認証評価制度の見直しの関係で,諸外国の最新の状況について御説明いただきまして,その上でこれまでのヒアリング等を踏まえて,御議論いただきたいと考えております。
    それでは,事務局から本日の配付資料について確認をお願いします。
【伊藤高等教育政策室長】    本日の配布資料は,資料8点,参考資料1点,及び前回までの資料を机上にお配りしております。欠落等ございましたら,事務局にお申し付けください。よろしくお願いします。
【鈴木部会長】    資料はございますでしょうか。
  それでは,高大接続改革につきまして,昨年末に中央教育審議会としての答申をまとめた後,文部科学省において高大接続改革実行プランが策定されておりますが,このプランに基づきまして,高大接続改革の実現に向けた具体的な方策について,高大接続システム改革会議で検討が進められてきております。
  本日はその中間まとめ(案)の内容につきまして御報告いただきます。また,この中間まとめ(案)を踏まえまして当部会で今後審議を進めていくべき事項を整理いただいておりますので,その点についても御説明いただきます。
  では,事務局より説明をお願いいたします。
【北岡大学振興課課長補佐】    大学振興課の北岡でございます。
  ただいま部会長から御紹介いただきましたように,先月8月27日に高大接続システム改革会議が開催されまして,そこで中間まとめ(案)について御審議いただいたところです。まだ案の状態ではありますが,前回会議で頂きました御意見を踏まえ,今,事務局で必要な修正作業等を行い,委員の先生方に御確認をお願いしようという段に入っております。そのため,本日の御説明につきましては,8月27日の中間まとめ(案)の内容について,概要を説明させていただきます。
  資料は1-1,1-2と,この二つが高大接続システム改革会議の中間まとめ(案)についての資料でございます。本体資料は資料1-2でございますが,こちらは大部になりますので,その概要版として資料1-1を用意しております。
  今回の高大接続システム改革会議中間まとめ(案)につきましては,部会長から御説明がございましたように,昨年,教育再生実行会議の提言あるいは中央教育審議会の高大接続改革に関する答申を受けまして,高大接続システム改革会議を設置したところです。この改革を具体的に進めるための方策等について御審議いただくということで,この会議を運営しているところでございます。
  高大接続システム改革会議では,年末に最終的な報告を頂くということで御審議いただいておりますが,今回の中間まとめ(案)はこの議論を年末中に向けて具体化していくために,これまでの議論を整理して御報告する趣旨のものでございます。
  具体的な内容につきましては,まず資料1-1,概要の1ページを御覧ください。「Ⅱ  高大接続システム改革の基本的な内容・実施方法」の(1)でございます。まず,高大接続システム改革は,これは御案内のとおり,高等学校教育の改革,それと大学教育の改革,また,それらをつなぐ大学入学者選抜の改革,これらを一貫した理念の下に一体的に行うという趣旨のものでございます。
  個別の論点になりますと,高等学校教育の改革につきましては,学習指導要領の見直し,又は主体的・協働的に学ぶ態度(アクティブ・ラーニング)の視点からの学習・指導方法の改善,これに対応した教員の養成・採用・研修の改善,これらが要素として入れられております。また,多面的な評価を推進するための学習評価あるいは指導要録の改善を図るとともに,多様な学習成果を測定するツールの一つとして「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の導入について提言を頂いているところです。
  また,大学教育につきましては,アドミッション・ポリシー(以下,「AP」という。),カリキュラム・ポリシー(以下,「CP」という。),ディプロマ・ポリシー(以下,「DP」という。)といった三つのポリシーの一体的な策定を行い,これに基づいて大学がしっかりと学生に対して教育を施すという形になるような改革を考えております。また,その改革の状況につきましてはきちんと認証評価制度において位置付けるということで,平成30年度に始まる次期認証評価期間に向けて,今まさに御議論いただいているところであり,そこに高大接続の視点も加味しながら御議論いただきたいと考えております。
  大学入学者選抜につきましては,学力の3要素を多面的・総合的に評価する方法にしっかり転換していくという方向性を前提といたしまして,各大学がAPの中に,大学入学希望者が大学入学以前に培ってきた力をどのように,どのレベルで評価するのかということをしっかりと明示いただいて,それに対応した大学入学者選抜を実現するという方向性,また,現在の大学入試センター試験に代えまして,知識・技能を基盤として思考力・判断力・表現力を評価する「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の創設を提言いただいているところです。
  ただ,これらの改革につきましては,非常に多岐にわたる改革であること,また,内容的に非常に調整を要する事項も多いことから,(2)にございますように,段階を踏まえた着実な実施が必要である旨も提言いただいているところです。今回の改革の実現のためには,適切な手順あるいは十分な情報公開を踏まえて着実に実施することが肝要であるということ,そして,目指すべき姿を関係者が共有するということで,それぞれが見通しを持って取り組むことができるようにすることの必要性がうたわれております。
  特に,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」あるいは「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の具体的な制度設計につきましては,高等学校の学習指導要領の改訂の議論が同時並行で進んでおりますので,その検討状況も踏まえた内容となるよう,調整を図っていくことが必要だという提言を頂いております。
  高大接続システム改革会議では,高等学校教育,大学教育,大学入学者選抜の改革という三つの大きな柱を議論いただいているわけですが,この中で特に高等学校の教育については,現在,中央教育審議会初等中等教育分科会で具体的に御議論いただいているところです。例えば,教育課程企画特別部会では学習指導要領の改訂について,また,教員養成部会では教員の養成・採用・研修について御議論いただいているところです。また,大学教育につきましては,本部会において具体的な内容について御審議いただくということをお願いしたいと思っております。
  資料1-1に戻りますが,まず2ページの1ぽつの(2)を御覧ください。「改革全体の方向性」ということで,教育課程の見直しが上げられます。これは先ほど申し上げましたように,初等中等教育部会の教育課程企画特別部会で具体的に御議論いただいているところですが,教育の目標・内容と学習・指導方法あるいは学習評価の在り方を一体として捉えた観点で指導要領の基本的な考え方を見直していくということが議論されているところです。その中で,次期学習指導要領において高等学校の各教科,科目の在り方あるいは必履修科目の在り方も議論いただいているところです。
  また,学習・指導方法の改善あるいは教員の指導力の向上ということで,これは2ページのイの部分になりますが,アクティブ・ラーニングの視点から学習・指導方法の改善が必要とされるという,この中で教員の養成・採用・研修の各段階を通じた在り方がどのようであるべきかということを御議論いただいているところであります。
  3ページの中で,大学にも関わる部分ですのであえて取り上げさせていただきますが,特に養成段階につきましては,アクティブ・ラーニングの視点からの学習・指導方法の改善など新課題に対応した科目の設定や,学校現場体験による実践力の育成及び適性確認等,大学教職課程に係る質保証の仕組みを構築するということが述べられております。
  続きまして,「ウ  多面的な評価の充実」というところですが,こちらは指導要録の改善等ということで,高等学校段階での生徒の学習評価の改善をしっかりしていくということとともに,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の導入を図ることによりまして,多様な学習成果を測定するためのツールをしっかりと充実させていくという方向性を示しております。
  「高等学校基礎学力テスト(仮称)」につきましては,この資料の中で別紙4というところがございます。「高等学校基礎学力テスト(仮称)の導入」ということで,具体的な制度の設計について,現状御議論いただいているものをまとめさせていただいたものであります。
  続きまして,資料1-1,3ページの2ぽつ,大学教育の改革についてでございます。この中で(2)三つのポリシーに基づく大学教育の実現,この方策について御議論いただいているところです。特にイにあります三つのポリシーの策定に関する位置付けの強化ということで,これも昨年度の中央教育審議会でも一部御議論いただいているところでありますが,AP,CP,DPといった三つのポリシーを各大学が一体的に策定し公表することを法令上義務付けることにつきまして,中央教育審議会において具体的な検討を進めるべきと御提言いただいております。
  また,三つのポリシーに関しましては,ガイドラインの策定も上げられております。三つのポリシーのガイドラインについては,国においてその策定と運用のガイドラインとして作るということが提言されております。これについても,本部会におきまして具体的に御検討いただきたい事項の一つでございます。
  そして,「エ  三つのポリシーに基づく教学マネジメントの確立」でございますが,三つのポリシーは単に作るだけでは当然意味がございませんので,三つのポリシーに基づいた教学のマネジメントを各大学において確立いただくことが重要であるということでございます。具体的には,学長のリーダーシップの下,全教職員が共通に三つのポリシーを理解した上で,それぞれが連携して大学教育の充実に取り組んでいただくということです。そのために,二つ目の丸でございますが,国は先導的な取組の推進の支援あるいは情報の収集・発信を強化することの必要性も述べられております。
  また,認証評価制度につきましても,三つのポリシーに基づく各大学の教育への取組がきちんと連動したものになっているかというところについて,新しい評価が必要だという御提言を頂いております。これについても中央教育審議会において,引き続き認証評価制度の改革に関する検討の中で御議論いただきたいと考えております。
  続きまして,「3.大学入学者選抜改革」でございますが,まず「ア  個別大学における多面的・総合的評価による入学者選抜方法」でございます。各大学はAPの策定に当たりまして,4ページの最後の行に記載されている学力の3要素を盛り込んでいく必要性が言及されております。
  一つは,学力の3要素について,具体的にどのような能力をどのレベルで求めるのか。それをきちんと明示いただくべきではないかということでございます。あるいは3要素を適切に評価するために,様々な評価方法の中からどのような評価方法をとるのかということを選択し,どのような水準を要求するのか,あるいはそれぞれの評価方法につきまして,どのような比重で評価するのかということをきちんと明示するべきではないかということでございます。
  また,この個別大学の入学者選抜に関しましては,例えばウにありますような多様な背景を持つ受検者の選抜ということで,例えば専門高等学校からの進学を希望する者,特別な支援を必要とする者,あるいは科学や芸術などの特定分野で卓越した能力を磨いていた者など,多様な背景を持つ入学希望者が適切に評価される選抜の仕組みの構築に取り組むことの重要性が指摘されております。
  加えまして,エの部分でありますが,「多面的・総合的評価による入学者選抜を支える体制等の整備等」ということで,各大学におきましてもこれらの選抜の推進に当たりまして,その体制の充実・強化が必要である旨が述べられております。具体的には,アドミッション・オフィスの整備・強化など,まさに入試に関する専門人材の職務確立・育成等につきまして,各大学の取組をしっかりと応援できるような国の財政支援等が必要である旨が述べられております。
  オの部分でございますが,大学入学者選抜の実施に係る新たなルールの構築ということで,昨年の中央教育審議会の答申におきましても,一般入試,AO入試,推薦入試等の区分の廃止が提言されているところです。この区分の廃止に関しましては,学力の3要素に関する多面的・総合的評価を充実させるという観点から,新たな入試に関するルールを構築することが必要であろうということ,そのためには関係者の間で具体的な検討が今後必要であるということが述べられておりますので,今後,この点につきましてもしっかりと議論していきたいと考えております。
  続きまして,別紙6の「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」でございますが,これは先ほどの「高等学校基礎学力テスト(仮称)」と比較し簡単に御説明させていただきます。
  まず,これら二つのテストにつきましては,従来一緒に議論されることが非常に多くございましたが,それぞれ性格,位置付けが違うということが今回の中間まとめ(案)の中では言及されております。「高等学校基礎学力テスト(仮称)」に関しましては,生徒の学習意欲の喚起あるいは学習の改善を図るということ,それとともに,その結果を高等学校における指導改善等にしっかり生かしていただくということ,これによりまして高等学校の教育の質の確保・向上を図ることを目的機能とするものであります。したがいまして,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の位置付けは,二つの新テストと並べられてはおりますが,まさに高等学校教育改革あるいは高等学校のマネジメントの改革の位置付けの中で議論されるべきものであります。
  一方で,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」につきましては,あくまでも入試の一貫でありますので,大学入学希望者がこれからの大学教育を受けるために必要な能力を把握することを主たる目的機能としておりまして,まさに今の大学入試センター試験を新たな形にしていくという位置付けでございます。
  それぞれにつきまして,現行学習指導要領下で取り組むべき改革事項と,次期学習指導要領の下で目指すべき姿,それぞれを段階に分けてお示ししているところでございます。特に「高等学校基礎学力テスト(仮称)」につきましては平成31年度から導入するということとしておりますが,平成31年度からの導入につきましては試行実施期間として位置付けております。この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」は,先ほど申し上げましたように,そもそもは高等学校教育の質の確保・向上を図るという高等学校教育改革そのものの部分を目的とするものであります。したがいまして,それを大学入学者選抜や就職等に活用するという部分は,副次的な活用方策としてあり得るものとして検討されるものではありますが,この試行実施期間におきましては,その副次的な活用の部分について扱うことはせず,まさに高等学校教育の改革に資するツールとしてしっかりと位置付けていくという方向性で議論が進められているところであります。
  また,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」につきましても,次期学習指導要領下で教育課程の見直しが行われた後,当然,高等学校における教科・科目の設定等も変わってまいりますので,新たな教科・科目の設定に応じた形で行うもの,そして現行の学習指導要領下におきまして,今の大学入試センター試験の内容,機能をより改善,強化していくものという段階に分けているところであります。
  この中間まとめ(案)につきましては,近日,案が取れることになるという前提で我々は作業を進めているところであります。今後,年末に向けて,より具体的なテストの制度設計などについて引き続き議論いただくところでございます。その審議の状況や,あるいは中央教育審議会での審議の状況を高大接続システム改革会議に報告するということも含めまして,しっかりと中央教育審議会の大学教育部会と高大接続システム改革会議との間の連携をとって,議論をしていきたいと思っております。
  続きまして,資料1-3を御覧ください。ただいま御説明申し上げました高大接続システム改革会議の中間まとめ(案)を踏まえまして,今後,大学教育部会において御審議いただきたい事項を簡単にまとめさせていただきました。大きな柱は二つございまして,1ページ,1ぽつにありますように,三つのポリシーの関係が一つと,もう一つは,認証評価の関係でございます。
  まず,三つのポリシーの関係につきましては,こちらは中で二つに分かれておりまして,まず一つは三つのポリシーの策定及び公表に係る法令上の義務付けについてでございます。高大接続システム改革会議の中間まとめ(案)の中でも,先ほど御説明申し上げましたように,三つのポリシーの一体的な策定について,法令上の位置付けを明確化するというところが提言されているところでございますが,現行規定ではどのような点で対応できていないのか,また,どのような点を改善するべきかということ,あるいは,ディプロマ,カリキュラム,アドミッションという三つのポリシー,それぞれをどのように定義をするべきかということについて御議論いただきたいと思っております。
  加えまして,三つのポリシーの関連性や一貫性の確保ということで,それぞれの関連性,一貫性を確保することを法令上義務付けるに当たって,どのような点に留意をするべきかということも,御議論いただければと思っております。
  また,2ページの頭に参考で付けておりますが,この中央教育審議会で以前おまとめいただきました「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて(答申)」の中で,アセスメント・ポリシーについても言及されているところです。今回,三つのポリシーの義務付けに当たりましては,アドミッション,カリキュラム,ディプロマといった三つのポリシーとアセスメント・ポリシーとの関係をどのように整理をするべきかということについても御議論いただければと思っております。
  続きまして2ページでございますが,三つのポリシーのガイドラインについてです。三つのポリシーについて法令上策定を義務付けるということと併せまして,各大学においてそれをしっかり実効性を持ったものとしていただくために,国においてガイドラインを策定することとされております。中間まとめ(案)の文言につきましては,2ページから4ページにかけて,少し長いですが抜粋を入れております。これらを踏まえまして,今回,中央教育審議会の中で御審議いただきたい事項といたしましては,現在,各大学が策定しているAPにはどのような観点の記述が不十分であるのか,つまり,どのようなところをこのガイドラインの中で強調することによって各大学のポリシーをより充実させていくという観点に立つのかということでございます。
  加えまして,ガイドラインの内容といたしまして,中間まとめ(案)に盛り込んでいくことが様々書かれておりますが,中央教育審議会の中でもガイドラインに盛り込む事項としてどのようなものが考えられるかということを御議論いただきたいと思っております。
  また,各大学が三つのポリシーを策定し運用するに当たって参考となるものとすることを目的としておりますので,ガイドラインはある程度の具体性を持ったものとすることが必要ではないかと考えているところでございます。一方で,極端に具体的な内容としてしまった場合,各大学が策定されるポリシーがある意味画一化されたものになるといった懸念も想定されます。
  今回の三つのポリシーの一体的策定は,先ほども申し上げましたが,単に外形上作ることを我々は求めているものではありません。各大学の中でしっかりと御議論を尽くしていただいた上で,関係する者,教員,職員がそれぞれしっかりと共通認識を持って三つのポリシーを大学教育あるいは大学運営に結び付けていただくという,まさに大学の内部のマネジメント改革あるいは大学教育の質保証というところに生かしていただくことを主眼としております。単に外形上,ガイドラインにのっとったきれいなものが出来上がるということを求めているわけではありません。
  そのような観点から,このガイドラインではどの程度の具体性を持った内容とすべきなのかということも御議論いただきたいと思っております。
  また,これに関連いたしまして,各大学が策定する三つのポリシーに基づいて実施される各取組,その実効性を確保することもやはり必要ですので,それに当たりましてはこのガイドラインの中でどのような点に留意をするべきかということにつきましても御議論いただきたいと思っております。
  先ほど申し上げた具体化し過ぎると画一化されたものになるという懸念もされる一方で,余りに抽象的な内容になってしまえば,要は表面的なことしか書かれていない,中身のないポリシーが策定されるという懸念もありますので,そのような意味ではこのガイドラインの中で,ポリシーをしっかりと実効性あるものにするためには,各大学の中でこのような内容はしっかりとデータとして取っていただいて,あるいはそれを評価していただくことも必要ではないかということを求めることも考えられると思っております。
  本日は一番初めの議論でありますので,先生方から様々な御意見を賜って,今後,具体化の方向に持っていきたいと思っておりますので,引き続きよろしくお願いいたします。
  続きまして,認証評価関係でございますが,これは議題2で認証評価の改善,まさに今,中央教育審議会で御議論いただいているところでございますので,こちらの中で扱われるべきものかと思っております。しかし,高大接続システム改革会議の中間まとめ(案)の中でも,認証評価における三つのポリシーの位置付けということで,5ページに各大学における三つのポリシーの策定あるいは三つのポリシーに基づく取組の状況を評価することが重要であるということが述べられております。
  したがいまして,中央教育審議会大学教育部会におきましては,認証評価においてこれらをどのように評価するべきなのか,特に,各大学における三つのポリシーの策定につきましては,その有無を確認することのみならず,取組の状況について評価するとした場合,どのような点に留意をするべきかということ,あるいは認証評価に係る法令上の位置付けをどうするかということについて,しっかり御議論いただければと思っているところです。
  また,認証評価の改善の視点といたしまして,中間まとめ(案)の中では,学修成果や内部質保証を重視した評価への発展・移行,これを実現するに当たって,どんな課題があって,どう改善していくべきか,地域社会,国際社会,産業界,高等学校等,多様な関係者の視点を取り入れた評価を具体化するに当たっての課題,あるいはどういう改善を図るべきか,さらには,評価結果の効果的な発信,活用のための施策の在り方について言及されておりますので,御議論いただければと思っております。
  私からの説明は以上でございます。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  今説明がございましたように,資料1-1で高大接続システム改革会議中間まとめ(案)の概要を説明していただきまして,資料1-3で本部会において御審議いただきたい事項ということで説明いただきました。何にせよ,最初の説明であるということで,盛りだくさんの内容を説明していただきましたが,今後,本部会で審議していく内容の大枠をここで御理解,御了解いただきたいと思います。
  それでは,皆様から御意見,御質問を頂きたいと思います。
前田委員,どうぞ。
【前田委員】    極めて現実的なところからなのですけれども,今,大学は三つのポリシーを作らなければいけないということで,かなり一生懸命作ってはいるのです。ただ,どの単位で作るのか,例えば,学位名が一緒なのにコースが違うとコースごとに作る場合もありますし,同じ入試を受けて入学してからプログラムが分かれる場合,入試別ではなくもっと細かい単位でAPが作られることもあります。そこで,三つのポリシーの一体的策定ということを考えていくときに,APの単位とDPの単位が違うとか,学部単位でポリシーを作っているとか,学部の中でも学位名称が違うけれども学部でポリシーを作るのか,それは学位プログラム単位で学位授与方針を作るのかなど,そのような点をどう整理するのかという課題が実際に評価をしていく方からは見えてまいります。そのことを一言申し上げたいと思いました。
  以上でございます。
【鈴木部会長】    事務局から説明がありますか。
【北岡大学振興課課長補佐】    今,前田委員がおっしゃったとおり,まさにそのようなところについて御議論いただきたいと思っております。今,ポリシーを各大学に様々策定いただいておりますが,その単位,あるいは具体性の内容など,本当にばらばらの状態であります。現行法令上は,資料1-4ということで参考資料に付けておりますが,この1ページ目で,入学者に関する受入方針を各大学は公表しなければならないとされておりますので,当然公表の前提として策定することについても義務付けされているところであります。具体的にどういうものを作るのか,どういう内容にすべきなのか,あるいは今,前田委員がおっしゃったような,どういう単位で作るべきなのかということについては,我々の方で今まで一切提案したことはありません。
  ですので,今回,三つのポリシーの一体的な策定という観点に立った場合,それぞれのポリシーがどのような単位で作られるべきなのかというところは,我々としましても,御議論いただいて,御意見を賜れればと思っているところです。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  黒田副部会長,どうぞ。
【黒田副部会長】    ありがとうございます。
  既に各大学がインターネットでも公開しているアAPを見ますと,定義の在り方は本当にばらばらなのですね。大変細かい,入試制度のことまで織り込んだAPもありますし,入試の単位ごとにAPを掲げているところもあります。一方で,学部単位で大ざっぱに書かれているものもある。だから,この辺をどのように整理していくのかというのが,今後,問題だろうと思います。
  これは実際にいつの時点でこのようなAPの統一を図るのかということです。資料1-1の5ページのオのところに,一般入試,AO入試,推薦入試等の区分廃止と書いてあります。現実に,これが廃止できるのかどうか。国立は恐らく廃止してもいいのですが,今年は東大をはじめ,いろいろなところがAO入試をやることを決めているわけです。推薦入試もやることになっています。このときに,このような制度を廃止してしまうことができるのか。私学では廃止するというのはとても無理だろうと思います。それぞれの大学によって入試制度が作られていますので,1本の入試制度で行うことは不可能です。
  一番問題になるのは,APの中で,どういう入試制度のときには学力の3要素のどこを中心に見ますよと。これはどれくらいのレベルを要求していますということをきちんと支援をすると。それはAO入試,推薦入試,専門高等学校用の試験それぞれで,このようなところを見るというところまで,本来ならば書くべきだと思うのです。これが大学に入った後,カリキュラム・ポリシーではこのようなところで補いを付けて,きちんとレベル合わせをしていくのだということを,各大学のホームページ上で見ると相当細かく書かれていますし,実施しているところもあるわけです。DPでは,どのような人材が育つのか,その学修成果はどうなっているのか,これはアセスメント・ポリシーにつながってくるはずですけれども,そのようなところまできちんと書いている大学もあるわけです。
  ですから,この辺の一連の流れの中でAPを定めるときに,いつの段階,平成32年にこれを実施するなら平成32年までにどうするのか,今年中に各大学はAPをしっかり書きなさいという指示も出ているようでありますので,そのこととの兼ね合いをどうしたらいいのかということもお示し,出していただければ有り難いと思います。
【鈴木部会長】    これはまた事務局に言ってもよろしいでしょうか。
【山口大学改革官】    APのガイドラインの位置付けと併せて,新しい入試区分,新しいルールの在り方というところもございますので,そこの適用の時期の在り方含めて検討いただく必要があると思っております。
【鈴木部会長】    濱名委員,お願いします。
【濱名委員】    以前のものと比べると,大変御苦労されて,より現実的な方向へ見直しをされたというのは大変歓迎するべきところですが,まだまだ難しいところがあると思います。中間まとめ(案)のことでお伺いしたいのですけれども,気になったのは,高等学校教育ではPDCAサイクルがものの見事に強調されているのですが,大学教育のときにはPDCAという言葉すら出てこないのです。これは,大学教育はPDCAが完成して問題なく機能しているという意識があったのか,たまたま落ちているのか。そこについてお伺いしたいのが1点です。
  もう一つはアセスメント・ポリシーの問題です。黒田委員がおっしゃったように,やはり大学は一律に同じ尺度ではポリシーが機能していかない。では,どうするのかといったときに,PDCのCが大学はできていないから今の状況になっているのではないかと思います。チェックということは,立てた目標を実際に運用してみて,その評価尺度自体は目標設定する者が責任を持って定めることだと思いますし,権利もあると思います。チェックをすることをサイクルとして入れていけば次の改善につながる。やはりそれがないと非常に弱いと思うのです。しかし,今回の高大接続システム改革会議の内容を拝見していると,三つのポリシーの中でいうと,CPのところだけ,定めればいいという留意事項に読めるのです。ところが,後ろの別紙5を見ると,一番上の緑のAPからDPまでつながっているところに教育内容及び学修成果の可視化が出てきたり,紫色の学修成果の把握・評価のところがCP,DPのところにまたがっていたりしています。これではっきりしているのは,結局,アセスメント・ポリシーを先延ばしにしてきたことが,Plan,Do,Checkの方法論あるいはその責任と権利を大学にきちんと求めないというところに帰結しているのではないかと思うのです。状況認識のところで,PDCAという用語をそもそも使っていないのはなぜか,ということです。この別紙資料などを見ると,そう読めるのですけれども,いかがでしょうか。
【鈴木部会長】    事務局,今のPDCAが大学改革の方に出てこないという御意見について,いかがでしょうか。
【北岡大学振興課課長補佐】    おっしゃるとおり,確かにPDCAという文言は出てきておりませんが,大学においてPDCAも重要だというのは当然のことでありまして,チェック機能の一つの部分が認証評価と我々は考えているところであります。
  大学が行う取組として,まずしっかりポリシーを打ち立てていただいて,それに基づいて大学教育をしっかり実行いただく。その取組の状況がいかがかというところにつきましては,今回の提言の中で認証評価でしっかりと評価できる仕組みを設けるべきということも言われております。そのようなチェックも経まして,各大学においてフィードバックしていくという仕組みを考えているところであります。
【濱名委員】    ということは,内部質保証が前の答申の中でも明確にうたわれていて,第三者,外部が担保している内部質保証という認証評価は,7年に1回のサイクルですから,高大接続システム改革会議と文部科学省は,7年に1度検証すればいいという解釈になるのですね。PDCAが常識だとおっしゃるのだけれども,常識であれば書かなくていいのかというと,書かれていることはほとんど常識的にこれまでの答申を継承しているものですから,そこのところは今の御説明ではクリアではないですし,定着したのであれば外せばいいのです。しかし,定着しているという状況にないものについて,常識だからといって報告書の中に記入されていないということ自体,高大接続システム改革会議で是非検討された方がいいのではないかという意見を申し上げたいぐらいです。新しい改革をやるには何年もかかるわけですけれども,各大学が毎年入試をやっているのに,入試は7年に1度の検証でいいわけはないわけです。毎年,入学者選抜の方法などの問題の内容について検証していくわけですから,今の御説明では納得できないところがあるのですが,いかがでしょうか。
【北岡大学振興課課長補佐】    7年に1度の認証評価というのは当然そうですが,認証評価に至るまで,各大学では当然内部質保証ということで自己点検・評価をしっかり実施いただいているはずだと我々は認識しております。したがいまして,認証評価でしっかり評価するというのは,これは法令制度上,7年に1度の評価にしっかり,かからしめるということでありまして,その7年に至るまでの間,各大学において内部質保証の仕組みがしっかり回されるということ,それも含んだ形での考え方になっております。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。7年に1度という認証評価以外にも,大学自体の改革に対する実行も行われているということですね。PDCA自体がまだ書いていないということもありますけれども,その辺のところ,これから会議の中でやっていくということにしたいと思います。
【義本高等教育局審議官】    少し補足させていただきます。資料1-1の別紙5に「三つのポリシーに基づく大学教育への質的転換(イメージ)」がありますけれども,まさしくこれは濱名委員から頂きましたように,AP,三つのポリシーを立てたと同時に,この丸1から丸4にございますようなことをしっかりやることによって,教学マネジメントという形で進めていこうということでございます。その中にはチェックに当たります部分としては,学修成果の把握などの評価,これは濱名委員からもいろいろな会議で御指摘いただいているところでございますし,また,それを支える体制作りということがありますので,認証評価だけではなく各大学で行っていくこと自身もその中でどうしっかりやっていくのか。それをポリシーとして位置付けるかどうか,あるいは三つのポリシーの中でその要素をしっかり書き込んでいくかという問題もございます。また,各大学の取組だけではなくて,資料1-2の32ページの白丸の二つ目でございますが,例えば,大学における能動的な学修の状況や学生の学修時間の実態等についての全国的な状況を,特に学生に対して調査し,得られた実証的なデータを国の施策や大学の教学マネジメントの改革に生かしていくという視点も,この提言の中で頂いているところでございます。
  この辺も関連するところでございますので,教育部会で是非御議論を深めていただければと思っているところでございます。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  それでは金子委員,お願いします。
【金子委員】    私は,AP,CP,DPに余りに注意が行き過ぎているのではないかと思うのです。大体英語で三つ書いてあるのは,私,非常に違和感があって,前から文句を言っているのですけれども,例えばアメリカの大学でこのような三つのものを全部掲げているところなんて私は見たことがありませんし,概念自体が先走りし過ぎていると私は思います。
  そして,このようなものを細かく規定しようと思えば幾らでもできるわけですが,しかし,一般的にどの大学でもこれをやれと言えるのかどうか,私は大変疑問だと思います。先ほど黒田委員がみっちり書いてあるところがあるとおっしゃっていましたけれども,私はそれを見ていないのでよく分からないのですが,しかし,少し考えても,入試の形態を幾つもやると言っていて,それぞれに応じたカリキュラムがどういうものであって,そして最後にどこまでもっていくのかというところ,どう結び付くのか,全部叙述することが本当にできるのでしょうか。私は全く疑問に思います。
  確かにこのような視点は重要で,要するに高大接続改革をした際に多面的な評価をするということですから,多面的な評価をして入れた学生にどのような教育をすればどのような効果があるかということをきちんと把握することは当然で,むしろ今度の接続改革の前提であったわけです。そうでなければ,やっぱり新しい意味での公正性は保持できないですし,どういう選抜をした学生にどういう教育をすれば意味がある,だからこのような選抜をするのだという論理を作る,それは重要だということはまずは確認していることだと思います。ただ,それを一般的なルールとして全部ずらずら書けということが本当にできるのか,私は非常に疑問に思います。
  私が前に勤めていました国立大学でも,よく分かりましたのは,国立大学の後期日程で入れた学生というのはやはり特性があって,一定の授業にはよく反応するけれども,そうでない授業には余り反応しません。そして,AO入試も調べてみますと,これは全国大学生調査を調べてみたのですけれども,やはり大学の選抜によっては非常に意味が違うということがよく分かりました。そして,選抜性の低い大学は,はっきり言って,要するにAO入試で入ってくる学生の方が一般的な学力は低いのです。教科入試で入ってきている学生の方が一定の点は取りやすいという傾向があるようです。
  だからこそ,それぞれに応じた特性のある授業をやっていくことが多分非常に重要なので,そのような意味で,様々な組合せがあるものを一括的にどれくらい充実できるのか,これは私は非常に大きな問題だと思います。議論するのは結構ですけれども,どこまでこれが本当に体系的なものとして,ここで結論が出るのか,私は少し疑問に思います。
  以上です。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  長谷山委員,お願いいたします。
【長谷山委員】    私も黒田副部会長や金子委員と少し重なりますが,これまでの流れで大きく言いますと,やはり大学教育というのは多様な能力を持った高校生を受け入れる,大学としても多様な学びを提供,展開して,そして多様な人材を育成していくという,キーワードは多様性ということで進んできたと思うのです。
  ところが,本日御説明いただいたものを見ますと,そのように教育等では多様性と言いながら,評価のところでは割と共通ルールによる画一的な評価という方向にどうも進む可能性がありそうに見えるのです。やはり多様な学びで多様な人材育成と言っているのですから,大学の教育の評価あるいは出来上がった人材の評価も,多様な指標で行うべきだと思います。
  その意味で,例えば高等学校基礎学力テスト(仮称)である程度高等学校卒業段階であればこのような知識,技能や能力を持っていてほしいという,一つの指標で最低限必要なものを測っていくという発想はあるとは思いますが,大学入学者選抜のAO入試,推薦入試,一般入試の区別をなくす,更に新しい共通ルールで指標を作るというのは,これは全く方向が違っているのではないかと思います。
  やはり個別大学の個別入試のところでは,各大学が多様な機能を持って多様な教育を展開しようとしているわけですから,どのような個別テストを実施するかということについても,各大学がその大学の教育理念に沿った形で個別の指標に沿った個別のテストを行っていくべきであり,そのような方向を是非とっていただきたいということがあります。
  やはり評価も,教育というのは工業製品を作るわけではないので,このような指標で測って,このような良い学生を作りましたと,なかなか卒業の段階で言い難(にく)いのです。卒業して20年,30年たったときに,うちの卒業生は社会でどのようになっているかということが分かっているので,卒業生の評価あるいは卒業生による出身大学の評価という観点も必要ですし,とにかく長期的な展望に立った指標で大学や大学の教育を評価していくということです。したがって,その多様性,画一性をできるだけ廃するという指標でこのような評価も進んでいただきたいという感想を持っております。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  坂東委員,お願いします。
【坂東委員】    私も重なるところが多いかと思いますが,AP,CP,DP,全ての大学がいろいろなレベルのものを作っているということは,やっぱり一つのスタンダードがないということなのです。文部科学省の方で強制はなさらないでしょうけれども,APにはこれを入れてほしい,CPには例えば他学科履修はできるかどうかなど,ある程度のガイドラインをお示しになるとしても,恐らく合意を得るのはとても難しいだろうと思います。すると,ガイドラインがない,そうすると,それぞれの大学がそれぞれの置かれた状況に応じた三つのポリシーをお作りになる。結果的には,中での合意を得るために非常に漠然としたバラバラのものが多くなる傾向があるのではないかと考えられます。
  ですから,本当に合意を得るのはとても難しいだろうと思いますけれども,少なくとも必要最低限,このようなことを取り上げてほしいのだということを示すことができるかどうか,恐らくそれは話合いではなく,研究されている方たち,例えば海外の大学においてはどのようなことが必要最低限要求されているかというようなことをお調べになって,例,案を提示して,それに対して議論をする。あるいは,ガイドラインに対しても強制力がないので,それを踏まえた上でそれぞれの大学がプラスしていくというようなことが一番現実的なのかなと思います。お尋ねしたいのは,今のような形の非常に多様な,抽象的なポリシーを各大学の裁量で行っていっていいとお考えなのか,やはりこれでは作った意味がないから,もう少し中身のあるもの,少なくとも最低この程度のものは作ってほしいということをお示しになるおつもりがあるのかを教えていただければと思います。
【鈴木部会長】    事務局,いかがでしょうか。
【塩見大学振興課長】    大学振興課の塩見です。これまで委員の皆様から御意見いただいたことについて,まとめてになりますが,重なる部分もあるので回答させていただきたいと思っております。
  先ほど御指摘のありました,やはり多様性が大事だという点についてでございますけれども,今回の高大接続システム改革会議の中間まとめ(案)における議論においても,多様性ということは大前提だと思っております。そのことを前提としながら,大学教育の改革を進めていく上ではやはりDP,CP,APも一貫したものとして考えて取り組んでいただく必要があるだろうという視点に立って,それぞれの大学でそのことをしっかりと遂行いただくためにどのようなことが必要だろうかという観点からの御議論ではなかったかと思っております。
  ですので,例えば入試のルールにつきましても,今回提言いただいておりますが,学力の3要素と言われるものをいずれの入試の区分においてもしっかり問うていくようなことにすべきではないかということでございますので,これまでのAO入試でございますとか,推薦入試あるいは一般の学力検査を伴う入試についても,恐らくその区分の差が相対化していくのではないでしょうか。例えば推薦入試においても学力の面をしっかり問うていくということも必要になってまいりますし,あるいは一般入試においても多様性といったところについても配慮して選考いただく必要があるのではないかということで,その区分についてはなくなっていくのではないかという考え方だと思っております。ただ,一方で各大学で実施される入試を画一化しよう,全く同じルールでやってくれ,あるいは今やっている推薦入試やAO入試を全部やめてもらうということではありません。ルールの在り方として推薦入試やAO入試ということではなく,例えば校長からの推薦書を必要とする入試,あるいは個別の面接を伴うような入試,そのような選抜方法に着目して,例えば日程設定の面含めて新しいルールを考えていったらどうだろうかという議論だと考えております。
  ですので,特に国で何か共通のルールを作って,それを全ての大学に適用して,これでやってくださいということを求める議論ではないだろうと思っております。
  そして,三つのポリシーのガイドラインにつきましても,これは具体的な議論はまたこの大学教育部会で行っていただければということでございますが,要はそれぞれの大学における教育を充実するために一貫したポリシーを持って,それを実現していくということが必要になるわけでございます。そのことについて,今のポリシーの書き方ではなかなか十分なものになっていないのではないか,あるいは対外的にもそれが十分伝わっていないのではないかという反省がございまして,そのような観点から見直す必要があるのではないかということだと思います。
  それに資するような何かしら,各大学でそのようなポリシーを個々に作っていただく際の,あるいは評価の基準を作っていただく際の参考となるようなガイドラインがお示しできるようであれば,是非作っていこうということで,そのような提言が頂けているということだと思っておりまして,そのガイドラインに盛り込む内容についても併せてこの大学教育部会で是非御議論を深めていただきたいという流れではないかと考えております。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  篠田委員,お願いします。
【篠田委員】    三つのポリシーですけれども,これは先ほどの事務局の御説明でも,やはり作っただけでは駄目だということで,つまり外形的に作るということから,共通認識をしてマネジメント改革をしていかなければ実効性あるものにならないということで,何人かの委員の御発言も全くそのとおりです。そのように考えてみますと,中間まとめ(案)の4ページにありますエのところ,つまり三つのポリシーに基づく教学マネジメントの確立,ここのところがもっと強調されるべきだと私は思うのです。ここに書かれているように,学長のリーダーシップの下に全教職員が共通理解をして連携をして取り組み,体系的なカリキュラムの編成,そして能動的な学修への転換,高等学校の方はアクティブ・ラーニングという言葉がすごく使われており,大学の方は能動的な学修になっていてよく分からないところがあるのですけれども,学修成果の把握と評価,それを支える体制の整備など,これはまさに濱名委員がおっしゃったPDCAなのです。だから,中身的にはそのような展開になっているので,ここのところを作るということも重要なのですけれども,それをどういうふうに動かして実体化させていくか,メッセージとして出していくかということが大学にとっては実体化をしていく上で非常に重要なところで,内部質保証システム,点検をする,評価をするということも,この具体化をされているところがどうかということを評価しない限り,内部質保証が機能しているかというのは分からないわけです。三つのポリシーがあるかないかということだけでなく,それを実体化していくためには,三つのポリシーを作っただけでは駄目だと思うのです。三つのポリシーというのは一旦作れば多分そんなにころころ変えるものではないので,固定化をしていくものだと思うのですけれども,それを毎年,この質改善につなげていくためには,例えば国立大学では中長期計画があり,年度のいろいろな事業計画なりがあると思いますし,私立大学も中長期計画,今,私どもの調査でも75%ぐらいの大学が私立大学で持っているわけですし,それを実現するための事業計画などの事業報告書は法的に作ることが義務付けられているわけですけれども,そのようなところに具体的な教育改善の中身がいかに具体化をされて,年々の改善につながっていくようなことがされているのかどうなのかという,つまり,方針というのは三つのポリシーだけではなくて,いろいろなところでそのようなふうに教育改革のことが具体化されて,私立大学の場合には特に理事会,経営者と一致することが重要なので,事業計画の中にいかに教育改善,質向上を盛り込まれるかというのも非常に大切なところで,それがなければ,質向上というのは実体化されないわけです。つまり,人,もの,金,組織や制度というのに具体化をして,しかもそれが年々改善の中に具体的な方針として位置付いて,それが報告書で評価をされて,総括をされて前進をしていく。そこを認証評価機関がきちんとチェックをしていくという関係ができていかないといけないのではないかなと思うわけです。
  三つのポリシー,入り口,教育,中身,出口というのはそれぞれきちんと作るとしても,その間には,入り口に入試部局なり広報部局があり,教務部局があり,そして出口の学位授与あるいは就職の部局というのは,それぞれが頑張っているだけでは駄目で,連携して一貫して一人の学生が育っていくわけですので,それを推進するための,学長の下にどんな推進組織があるのかということがなければ,一人の学生が育っていくという保証はないわけです。それがきちんと機能しているかどうかということも含めて,トータルを見ないと内部質保証システムはできないと思っているのです。
  私は日本高等教育評価機構でその内部質保証システムを含めた評価の在り方に関わっているわけですけれども,そのような具体的なところで各大学が目標をはっきりさせて,方針をはっきりさせて,いかに推進組織を作って成果まで結び付けていくかをきちんと見ていくような仕掛けを作っていかないと,これもやはり前進するところにつながっていかない。だから,メッセージとしては全体を発信していくようにすべきだと私は思います。
  以上です。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
二宮委員,御願いいたします。
【二宮委員】    三つのポリシーのガイドラインを設けて各大学ともしっかり見直していこうというのは,大変いいタイミングではないかと思います。今,小さな私立大学で3年目を迎えておりますけれども,やはり何のために私たちの大学があるかというミッションはある程度見直してきましたけれども,学位の効用,ユースといいますか,学位を取ることが一体どういう意味を持つのかということについては,必ずしも明確な議論もコンセンサスもまだできていないのではないかと。
  その際に,医療人養成のようなプロフェッショナルなところであれば明確にできますし,リベラル教育であれば,それなりに,国際基督教大学のようにできるだろうと思うのです。問題は,歴史学をやりたい,哲学をやりたいなど,文学系を例に取れば,あるいは総合科学系を例に取ると,学位を取ることが,124単位が社会に出ることとどう結び付くのかということにおいて,まだ明確さはないのです。
  そうしますと,学位授与の方針というところの中に,地域が求める人材といったものを,やはり地域から意見を聞くようなプロセスをきちんと入れて,それぞれの大学が自分の124単位は哲学を勉強しますけれども,社会で,未来を支える子供たちでございますので,10年,20年先の汎用的な能力だけでさっと流してしまっていいのかというと,反省するちょうどいいタイミングだと思っています。そうでないと,急激に変化する社会に対応する大学,アフォーダビリティの高い大学教育にならないかと思っておりますので,是非そのようなチャンスは多くの大学が改めて与える方がいいと思います。
  その際に,グローバル化時代,国際化時代で,私たちは世界の市場を考える時代が来たのではないかと思っています。英語で学位が取れる大学もあります。こうなったときに,留学生をAPやDPからどう捉えていくのかというのは,今までの留学生のODA的な発想でもありませんし,企業が求める人材としての留学生,あるいはすぐれた留学生といったような概念でもないし,日本人とほぼ同等に受け入れるとすれば,DPの中に多様な学び手というものをどう意識するかということでは,それが当然,出口から入り口を考えるというのはとても大切なので,出口がはっきりしないものはアドミッションを幾ら操作しても,技術的にいじっても,うまくいかないかもしれないということです。
  最後でございますが,以前から国の方針,中央教育審議会の考え方で気になっているところは,厳格な評価ということです。間違いなく認証評価も厳格な評価です。DPが明確になって,CPも明確になって,APが明確になった結果,各大学が自らの方針によって厳格な評価をするということは,卒業ができないということにつながります。我が国の場合,留年をどう捉えるのかということと,そして,卒業できないという厳格な評価の結果,ドロップアウトをする人たちが単なる生涯学習的な学び直しの中で,それでいいのかという問題になってきますので,私は世界を少しは知っていますけれども,そのように詳しくは知らないのですが,例えば仮に,東京大学で必ずしもうまくいかない,なじまなかった結果,東京大学のDPに合わないのでドロップアウトした,あるいはさせられた,ステップアウトした。では,その方はもう一つ,別の大学のDPを見て,私はこのような大学だったら受けられて,学ばせていただいて,更に社会につないでいける。つまり,各大学ですので,大学というのは個性はそのような形でドロップアウトするということを積極的に捉えていくような,トランスファーももちろんありますけれども,そのような日本の文化に全くないものを入れていかないと,あるいはシステム化して日本の理解を得ていかないと,私は学長でございますので,厳格な成績評価ということについて,非常におじけづいてしまうと思います。もう卒業させてください,単位を渡してくださいといって頭を下げる日常だとすれば,その辺,高いところから議論するのも結構ですが,やはりそのような日常の大学の姿も見ていただいて,国民感情もありますので,そこを調整していただきながら,世界的な通用性は何なのかということをもう少し高大接続のところでも考えていただければと思います。
  大変口幅ったい言い方ですが,失礼いたしました。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  それでは勝委員,お願いします。
【勝委員】    既にいろいろ議論は尽くされていると思うのですけれども,やはり私も三つのポリシー,体系化というのは非常に重要だと思います。ただ,これはそれぞれの大学の建学の精神あるいは機能の在り方を考えた上で,それぞれの大学が主体的に考えていくべきであろうと思います。もちろんガイドラインは必要だと思うのですが,例えば国立大学においてもこれから三つの類型に機能分化しますが,例えば地域に資するもの,あるいは世界最高水準の研究大学,特定分野に特化するもの等あります。私立大学においても建学の精神はそれぞれ違うわけで,それは先ほどの質問にもありましたけれども,また,大学全体としての三つのポリシーと,そして学部,研究会によっても違ってくるだろうと思います。それはやはり多様性,これは大学の機能分化というのが何年か前にかなり声高に叫ばれたと思うのですけれども,それに沿う形でそれぞれの大学がどのような機能を持つのかということをそれぞれが考えていくべきだろうということです。
  そうすると,入試の問題,高大接続に関しても,学力の3要素というのがあるわけですが,今般の改革においては,入試改革において,むしろ思考力や,あるいは主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度というものが強調されているかとは思うのですけれども,例えば歴史的に見て,『Times  Higher  Education』が2000年以降のノーベル賞受賞者の数のランキングを出していましたが,日本は第3位でありました。この話をこの前ロンドンに行ったときに話しましたら,何で日本は教育を変える必要があるのだというようなことを言われたのですが,つまり,知識,技能であるとか,あるいは思考力,判断力,表現力といったものというのは基本的に非常に重要なので,この三つの学力についてもやはりそれぞれの大学がどういう学生を必要としているのかということに基づいて入試の在り方を考えるべきであるのではないか。そうすると,先ほども質問に出ていましたけれども,一般入試,AO入試,推薦入試の区分を廃止するということについても,新たなルールを考える際には,必ずしもこのような形であるべきだというものではなくて,それぞれの大学が主体的に考えられるようなものにしていただければと思います。
  以上でございます。
【鈴木部会長】    ありがとうございました。
  御意見,御質問を多々頂きまして,次回以降に本日の整理に基づいて三つのポリシーや,あるいは認証評価について審議を進めていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。


(3)認証評価制度の改善について,大学評価・学位授与機構から資料2-1,事務局から資料2-2及び資料2-3に基づき説明があり,その後意見交換が行われた。

【鈴木部会長】    それでは続きまして,認証評価制度の改善について,審議を進めてまいります。前々回あるいは前回と,認証評価団体からヒアリングをさせていただいたところです。本日はヒアリングでも触れられておりました諸外国の状況について,独立行政法人大学評価学位授与機構の岡本理事より御説明いただきまして,その後,事務局よりこれまでのヒアリングを踏まえて,今後検討すべき点についてまとめていただいておりますので,それを説明いただきたいと思います。
  岡本理事には前回のヒアリングでも認証評価機関として御出席,御説明いただいたところでありまして,誠にありがとうございます。
  それでは岡本理事,お願いいたします。
【岡本大学評価・学位授与機構理事】    大学評価・学位授与機構の岡本でございます。私ども,諸外国の状況につきましては,特に協定を結んでいる質保証機関との関係でよく調べておりますので,本日は資料2-1に,イギリスとアメリカとドイツとフランスとオランダとオーストラリアを持ってきております。資料2-1を御覧いただきながらと思うのですが,この資料は資料2-2にございます検討課題に沿ってまとめたものなので,これの要点だけ説明をさせていただきたいと思います。
  この調査は,私どもの事業部と研究開発部で協働してやっているものなので,本日は研究開発部の教員の林が同席いたしております。必要に応じて御発言をお認めいただければと思います。
  では,資料2-1を御覧ください。最初はイギリスでございます。書いてあるとおりなのですが,イギリスは今,QAA(Quality Assurance Agency for Higher Education(高等教育質保証機構))というところが高等教育のレビューを行っておりまして,このレビューに沿ってHEFCE(Higher Education Funding Council for England(高等教育財政カウンシル))というところが財政的に配るというようなシステムをとっていたのですが,このたび合併するというようなことで,今,パブリックコメントをやっており,この制度が非常に動いているところでございます。
  イギリスのシステムで一番肝腎なのは評価サイクルのところで,通常は6年なのだけれども,実績が足らないところは4年であるというところでございます。
  評価結果は段階表示をしているということでございます。3段階と4段階と書いてございますが,御覧になっていただくとお分かりのとおり,ここにあるUK expectationsというQAAが策定したクオリティーコードに記載された期待的な事項について満たしているかどうかということでございます。これは我が国の認証評価に適合している又は満たしているというところと同じです。
  要素2と3につきましては4段階になっているのは,満たしているものの中からグッドプラクティスに当たるものを抽出しているということでございます。
  裏を見ていただきますと,フォローアップについても書いてございます。フォローアップについては,全ての受審機関は評価結果を問わず,行動計画の作成が求められるということと,不適格の判定を受けた場合にはこのとおりになるということで,HEFCEが直接改善指導を行うことになっております。このHEFCEとQAAの合併が話題になっているというところでございます。
  イギリスの場合は,御覧のとおり,大学が,王立大学といえばそれまでなのですけれども,日本でいうと国立大学と言い切れないけれども,システム的には評価はそのようなものに近いということでございます。
  次に,3ページにアメリカ合衆国でございます。これはよく御存じのとおり,連邦教育省やいわゆるCHEA(Council for Higher Education Accreditation(全米アクレディテーション協議会))が認定した評価機関による評価ということで,こちらは地域ごと,六つの地域に分かれて,それごとに決めておりますし,全体の教育が州単位ということもございますので,統一的な基準が連邦全体であるというところではないわけです。ただ,しかるべき認定をきちんと受けたところ,認定機関のCHEAが認定した,あるいは連邦が認定したところで受けていると,例えば連邦奨学金,一番大きいのはPell Grantだろうと思います。これは給付ですけれども,そのようなものを学生が受けられる資格があるという仕組みになっているということでございます。
  フォローアップの方もこれは機関ごとにいろいろなので,7年から10年,幅があるということでございます。
  次はドイツなのですけれども,ドイツも連邦なので大学は国立というか,州立です。ただ,州はアメリカの州とはまた違うのでしょうけれども,かなり独自性を持っているので,いろいろなアクレディテーション機関があります。各機関はドイツ学修課程アクレディテーション財団というところが認定しているということでございます。
  評価サイクルは6年,2回目以降は8年ということです。
  評価結果は,適格か条件付認定か不認定かのいわゆる日本型の三つであるということでございます。
  適格認定の期間が半分経過した段階で中間評価を実施するということで,評価結果の過程については,ドイツというのは,意外と評価結果を公表していなかったり,割と不思議なところではあります。
  次はフランスなのですが,ここもまた非常に揺れ動いているところで,AERES(l'Agence d'évaluation de la recherche et de l'enseignement supérieur(研究・高等教育評価庁))という機関がずっと評価をしていたのですが,大学側から特に研究評価についていろいろ文句が出て,結局,HCERES(Haut Conseil de l’évaluation de la recherche et de l'enseignement supérieur(研究・高等教育評価高等審議会))というのに組織が改編されました。2014年,去年できております。したがいまして,我々が今分かるのは,AERESがどのような評価をしてきたかということなのでございます。
  フランスこそ基本的に国立大学なので,この評価システムを日本で説明するのに一番分かりいいのは,日本の国立大学法人評価,教育研究評価が1番イメージしやすいのではないかなと思っております。
  ここにも書いてございますとおり,大学は5年間の予算,5年間の契約ですごいレポートを書いて,お金を国からもらってきて,5年間は運用するのですが,それで次の契約をするということなのですが,最近は渡された契約が実際にきちんと履行されたかどうかというのを,認証評価を通じて業務評価を行うというようなことがまた強く言われているところでございます。
  そして,もちろんこれは国立大学法人評価ですから,この評価結果に基づき,国,すなわち高等教育研究省が資源配分に使うというところは同じでございます。
  次はオランダでございます。オランダでは,オランダ・フランダースアクレディテーション機構という,オランダだけではなくてベルギーの北側のところも一緒にやっている機関で,我々の機関と非常に縁が深いところでございます。ここも,もともとプログラム評価を行っていたわけですが,教育機関側の負担軽減と書いてあるとおり評価する方もピアレビューなどでやったら大変なことになるということなので,機関別オーディットが導入されております。プログラムの受審は義務であるけれども,オーディットは任意ということになっております。サイクルは6年で,評価結果は適格,不適格になっているということでございます。
  最後に,オーストラリアです。ここも揺れ動いておりまして,ここは御存じのとおり,TEQSA(Tertiary Education Quality and Standards Agency(オーストラリア高等教育質・基準機構))が4年ぐらい前にできたわけです。ここは機関登録で,1回されれば7年間で,その次にまた再登録するという,少し変わったというか,認証と同じなのですけれども,もう少し強いシステムが動いています。登録期間の上限が7年ということなので,TEQSAができてからまだ4年しかたっていないことから,実際の成果はまだ私どもにはよく見えていないところであります。ただ,オーストラリアはいわゆるリスクベースの評価というのではっきりしていて,非常に我々としては参考になるところではないかと思っております。
  今,非常に雑駁(ざっぱく)に説明したのですけれども,私どもホームページでも掲載しておりますが,各国の高等教育分野における質保証システムの概要というものを御参照いただければと思います。特にドイツは去年出したところで割と新しいので,それからオーストラリアとイギリスは今年改定しましたので割と新しいシステムが出ているということでございます。これはもちろん英語バージョンもあるので,御活用いただければと思います。
  説明はこのぐらいで切り上げて,質疑応答に回していただければと思います。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  続きまして,事務局から説明をお願いいたします。
【伊藤高等教育政策室長】    失礼いたします。お手元の資料2-2を御覧いただければと思います。まずこの資料の構成について御説明申し上げます。青字の部分,こちらは第7期の大学分科会でまとめられました論点及び検討課題でございます。それに関連したこれまでのヒアリングでの御意見をその下の赤の点線の枠の中に整理しております。また,ヒアリングでの御意見を踏まえて更に検討すべきと考えられる事項をその下の太枠の中に整理しております。本日は,太枠の更に検討すべき事項につきまして,更に加えるべきこと,また,各々の観点について更に御審議を深めていただければと思います。よろしくお願いします。
  では順次,御説明申し上げます。まず論点・検討課題の1でございますが,高大接続改革を推進するための評価の在り方について,これまでも青枠の中にございますとおり,検討課題の中の1番目の丸,大学教育の質的転換等を適切に評価し,さらなる取組の充実につなげるための評価の在り方や,また,次の丸にございますような学修成果,内部質保証を重視した評価への発展・移行,また,下から3番目の丸にございますような,各大学が掲げる目的・水準等に対する評価(達成度評価)など,各大学の改革を支援するための評価の推進が検討課題に位置付けられてきたところでございます。
  これに関連しましたヒアリングでの御意見といたしましては,赤枠1番目の丸でございますが,三つのポリシーの策定とそれに基づく取組状況の評価は重点的に評価すべきではないかという御意見や,次の丸,大学の機能強化を促進するための評価を行うべきではないかという御意見,また,3番目の丸でございますが,法令等の評価は簡略化し,大学の取組の達成状況の評価に重点を置いた評価を行うべきではないかというような御意見,また,一つ丸を飛ばしまして,内部質保証を実質化するためには,内部質保証が定着しているかを重点的に評価すべきという御意見,また,その観点といたしまして,その下の丸でございますが,内部質保証が機能しているか,達成すべき目標やレベルが明確に示されていることも必要であり,それらが適切であるかどうかを評価する必要があるというような御意見もございました。
  また,赤枠の下から三つ目の丸でございますが,一方,日本の高等教育の質保証の観点からは,各大学のミッションの達成度を確認するという,内部質保証を確認するだけでは十分とは言えないではないかというような御意見や,また,分野別評価に関しましては,導入に当たって慎重な検討が必要なのではないかという御意見もあったところでございます。
  これらを踏まえまして,この項目についての更に検討すべき事項といたしまして用意いたしましたのが下の枠でございます。三つのポリシーの一体的策定の有無及び実施状況を評価項目に加えることについて,また,次のぽつでございますが,各大学の改革を推進するための評価の在り方について,また,評価において重視すべき事項を新たに設定することについて,また,評価方法の簡略化や適合等の判断をより厳格に評価することについて,また,分野別評価の推進の在り方について,これらにつきまして更に御審議を深めていただければと存じます。
  引き続き,次のページの評価結果の活用についてでございます。こちらにつきましては,評価基準等への適合・不適合の判定の仕組みの整備など,フォローアップへの仕組みの整備,検討課題に位置付けられてきたところでございます。これに関連しましてヒアリングでは,1番目の丸にございますとおり,大学評価基準を満たさなかった大学に対しての指摘内容を実現化するための法的枠組みの整理が必要ではないかという御意見や,インセンティブとして資源配分に評価結果を活用すべきではないかという御意見もあったところでございます。
  これらを踏まえまして更に検討すべき事項といたしまして,評価制度において指摘事項の改善を義務付けること,評価結果を資源配分に活用することの位置付けについてどのように考えるべきかについて,フォローアップの実施の根拠となる規定の創設について,審議すべき項目として御用意しております。また審議を深めていただければと存じます。
  続きまして,検討課題3,評価機関の質の向上についてでございます。こちらにつきましては,検討課題といたしまして,評価機関の評価について,メタ評価や定期的なレビュー等の実施や,評価機関の評価の質の向上の取組について検討課題とされてきたところでございます。
  これに関連しまして,ヒアリングでは,1番目の丸にございますとおり,評価機関に対する評価の在り方については慎重な検討が必要ではないかという御意見や,また一方,評価機関も自ら自己点検をしなければならないのではないかという御意見や,評価機関同士での競争原理が担保されるような制度とすべきではないかといった御意見を頂いているところでございます。
  これらを踏まえまして更に検討すべき事項として,下の太枠のような論点を御用意しております。またこれにつきましても御審議を深めていただければと存じます。
  次の検討課題4の評価と社会との関係を御覧いただければと存じます。こちらにつきましても,検討課題として,ステークホルダーの視点を取り入れること,また,評価の社会への発信が課題とされております。ヒアリングにおきましては,ピアレビューの原則を確保した上で,評価に社会の声を反映できる仕組みを整備する必要があるのではないかという御意見や,また,より分かりやすく伝えるために評価結果の様式の見直しが必要ではないかという御意見,評価制度,結果につきましての一層の周知が必要といった御意見を頂いているところでございます。
  これらを踏まえまして更に検討すべき事項として,太枠のような以下3点を御用意しているところでございます。またこれも御審議を深めていただければと存じます。
  次に,評価人材の育成についてでございますが,こちらにつきまして,ヒアリングでの御意見では,全評価機関の評価員を対象としたセミナーなどの実施が必要ではないかということや,評価員のインセンティブ,また,評価員を拠出する機関の負担軽減が必要ではないかという御意見や,大学側の評価人材の育成が必要,評価員の育成に対する助成支援等も必要というような御意見を頂いているところでございます。
  これらを踏まえまして更に検討すべき事項として,下の黒枠3点を御用意しております。ほかの観点も含めまして,御審議を深めていただければと存じます。
  続きまして,検討課題6,評価の効率化についてでございます。こちらにつきましても,検討課題といたしまして,これまでも大学ポートレート等既存の公表資料の活用や,他の評価制度と連携した評価業務の効率化が課題になっております。
  ヒアリングにおきましては,大学ポートレートについて情報量の一層の充実が必要ではないか,また,三つ目の丸でございますが,大学の負担軽減のために提出資料の電子データ化の徹底や実施期間の短縮を検討してはどうか,また,年度間の評価校数の平準化ということも御意見として頂いているところでございます。また,他の評価制度との連携という点に関しましても,相互活用なども含めまして進めるべきという御意見も頂いているところでございます。
  これらを踏まえまして更に検討すべき事項として,太枠の以下3点を御用意しております。またこれも御審議いただければと思います。
  最後に,その他,7点目ということで,こちらにつきましてはヒアリングにおいて新たに示された御意見,御議論をまとめているところでございます。1点目といたしまして,質保証の観点から,AC,設置認可後の履行状況調査,アフターケアのことでございますが,そのACでの指摘事項と認証評価制度を連携させることが必要という御意見も頂いております。
  これに関しましては,資料2-3ですが大学設置認可の審査の方でも同じような御意見を頂いております。先日の8月末に発表されました平成28年度開設予定の公私立大学の学部の設置認可に関しての8月の答申に当たりまして,設置の審議会の大学設置分科会会長のコメント,報告でございます。
  こちらにおきましても認証評価と設置履行状況調査との連携につきまして要請がされているところでございます。併せて御紹介申し上げます。
  資料2-2に戻っていただきまして,その他ヒアリングでの2点目の御意見としまして,学生の学修時間などの客観的なデータを集めて,それに基づいた評価を実施することが必要であること,また,本日,大学評価・学位授与機構の岡本理事からも御発表いただきましたけれども,ヒアリングにおきましても諸外国の最新の状況も参考にしながら我が国の今後の評価制度の改善を検討すべきではないかという御意見も頂いたところでございます。
  これらを踏まえまして更に検討すべき事項として,太枠のような項目を御用意しております。
  以上,大変駆け足で恐縮ですが,事務局にて御用意した資料でございます。更に検討すべき観点,また,個々につきまして御審議を深めていただければと存じます。よろしくお願いします。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  先ほどの岡本理事の御説明あるいはただいまの事務局から御説明につきまして,御意見,御質問のある方は御発言をお願いいたします。
  金子委員,どうぞ。
【金子委員】    今,御説明あったので大変いろいろな点がつづられているとは思いますが,先ほどの岡本委員の御発表は,お聞きしていて,これは大変よくまとまっていると思うのですが,二つ,必ずしも十分に伝わっていないところがあるのではないかと思うのです。一つは政府と認証評価あるいは適格認定団体との関係です。これはもともとやはり大学の自治と政府との関係ということで非常に難しいところがあるわけでありまして,例えばアメリカの認証評価制度は20世紀の初めにできたわけでありますけれども,大学の自主的な参加が基本であると言われていました。ただ,1980年以降,やはり大学教育が大衆化するにしたがって,政府が何らかの関与をしなければいけないのではないかという意見は非常に強くなっていると思います。
  アメリカなどでも極めてそのような意見が強く,日本では余り知られていませんけれども,連邦政府が大学評価機関を独自に作るべきではないかという法案が何回か出まして,通っていませんが,そのような動きもあるわけです。そして一部の州ではSPREと言いますが,州政府による評価機関ができているという状況です。
  ただ,このとき重要なのは,このような政府による介入が法的な権力を強化するという形で必ずしもできていない。アメリカの場合には,先ほど御紹介ありましたように,評価委員会で通っていることが連邦奨学金の受給資格につながるので,そのような意味では強制力を持っていると言えるわけでありますけれども,連邦政府が介入するときに何をやっているかというと,要するに情報開示を徹底的にもっとやれと言っているわけです。
  私は,このような意味では情報開示は非常に重要であると思います。先ほどのお話でイギリスの例が出ましたが,イギリスもHEFCEという大学に対する資金供給機関が評価をやっていると。それともう一つ,大学が自主的にやっているのがあったのですが,こっちの方は消えてしまいまして,基本的にはやはり政府の大学に対する資金配分と結び付いている。
  アメリカの場合は,大学を含めて,中等教育機関に対してかなり詳細なデータベースが1991年くらいからできていまして,これは全くパブリックに見ることができます。非常に詳細なデータが公開されています。それはデータベースがそのまま見られますので,各大学を一定の観点から比較しようと思えばできるというシステムが公開されているわけであります。そして,先ほど御紹介ありましたフランスの新しい評価機関は,これはマニアックなほど評価指数をいっぱい作っていまして,要するに情報公開は非常に大きな基準になっているわけであります。
  ところが,我が国の大学に関する情報公開は,これは二,三年前から問題になっているわけでありますけれども,今,大学ポートレートができていますが,大学間を比較するなどという観点からはほとんど使えないシステムになっています。
  私はそのような意味で,大学評価が社会一般からの評価につながると同時に,評価機関が力のある,パワーのある,権力のある評価機関になるためには,やはりそのような情報基盤が整備されていることが極めてクリティカルであると思います。大学評価機関にこれ以上権力を与えるとすれば,認証評価機関ではなくてむしろ直接の評価機関にして,今,認証という言葉を使われているのは,認証評価機関に対して大学が認証を与えるという意味で認証評価機関になるのですが,もっと強力に評価機関にしてしまうことも考えられないことはないのかもしれませんが,私はそれは余り実効性はなくて,むしろ問題は評価機関に権威のある評価をする,厳しい評価をする,厳正な評価をする基礎を与えることが非常に重要であると思います。そのために,多少メンションがありましたけれども,その基礎となるような指標についてはやはり全国的にある程度の調査をする,一部についての公開も考えるといった基礎が必要なのではないでしょうか。
  例えば,私は大学生の調査をやったのですが,在学時に102以上の授業を4割ぐらい取って卒業している人が結構いるのです。これで本当に大学教育をやっているのか,また,経済学部は大学によっては今,ST比が専任教員1人に学生数70というところがあります。これはこのまま放っておいていいのか。これも公開して比べられないのです。高校生はどうやってそのようなことを比べられるのか分かりませんし,少なくとも評価機関はそのようなものを相互に比べることによって,この大学については非常に大きな問題があるのだということを公的に権威を持って言う機会,基礎を作ることが非常に重要なのではないかと思います。
  以上です。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  川嶋委員,日比谷委員,お願いします。
【川嶋委員】   
論点4のステークホルダーというところで,一番重要なのは学生というステークホルダーだと思うのですが,イギリスは特に授業料自由化ということで学生の声を聞くということが評価の中に入ってきているわけですけれども,先ほどQAAも揺れているという話で,今度,Teaching Excellence Frameworkというのを保守党政権が提言していまして,これは完全に学生の教育評価を元にして,その評価に基づいて各大学の授業料の幅を決めるという形になっており,非常に学生の意見を重視するという評価に変わってきています。あと,オランダも私の理解では多分同様だと思いますが,各国の学生の評価への参画について,もし情報があればお聞きしたいということです。
【鈴木部会長】    いかがでしょうか。
【林大学評価・学位授与機構研究開発部准教授】    すみません,今,手持ちにそれほど情報もないのですけれども,まさに今言われたように,イギリスはQAAが行う外部評価委員にも必ず学生代表,学生評価者が入ることになっていますし,自己評価のところでも学生が入っていることは通常であるように思っています。
  ほかの国の状況について,今,情報を持ち合わせていませんが,ヨーロッパでENQA(欧州質保証ネットワーク)というヨーロッパの各国の評価機関のネットワークがありまして,そのようなところでもやはり学生を入れていくことを各国の評価機関で求めるような状況になっておりますので,基本的にはそのような傾向があるということであろうと思います。
【川嶋委員】    ありがとうございます。
【鈴木部会長】    日比谷委員,どうぞ。
【日比谷委員】    ありがとうございます。今の川嶋委員の御発言と少し関連するのですけれども,1点は,学生の評価,在学中や卒業直後のようなところで評価してもらうことは非常に重要だと思うのですが,さらに先ほど長谷山委員がおっしゃいましたことと関係して卒業直後にこの大学はこうだったと思っていることと,10年後,20年後,30年後に振り返ったときにどう思うかということはおのずと違ってくると思います。やはり長い目で見たその大学の評価を卒業生からとることは非常に重要だと思うのですが,そのような試みがあるのかということが1点目の質問です。2点目は,最後のページの検討課題丸7のところで,本日,六つの組だったと思いますが,非常に詳しい御説明でよく分かりましたけれども,いろいろな,ベストということはありませんし,国によって考え方も違いますけれども,諸外国との比較において日本の評価制度のすぐれているところと,ここが非常に足りない,このようなところはもっとみんなで工夫して伸ばしていくべきだというようなことについてのお考えを伺えればと思います。
【鈴木部会長】    いかがでしょうか。
【岡本大学評価・学位授与機構理事】    先ほどの,イギリスやオーストラリアではまず学生評価のことで一言だけコメントで,フランスは制度ではないのですが教育省が各地方の大学にお金を配るときは,学生数が基本になっているはずです。登録自由なので,見た目では学生が評価委員に入っているわけではないにしても,かなりそのようなものが活かされているということはあろうかと思います。
  そして,例えば10年後や20年後の卒業生の調査は,これはほとんどいろいろな認証評価機関の中では既にいろいろ見ているところ,つまり,学修成果をどのように測るかということと関連してやっているのではないかなと思っています。
  もう一つ日本の評価はなかなか難しくて,先ほど申し上げたとおり,各国揺れ動いているわけです。制度ごとに違うので,どこかの国がいいからといってそれを持ってきても,なかなか適用できないわけです。例えば日本独自のやり方だとすると,例えば大学から見ると機関別認証評価機関は複数あるので,選べるわけです。現実にかなり住み分けてしまっているけれども,選べるということなわけです。これはなかなか難しいところもあるのですけれども,外国から見ると,例えば前回のヒアリングのときも質問が出ていましたけれども,評価機関同士が一方では競争する,あるいは評価を固定化しない,金子委員がおっしゃったことと逆向きになるかもしれないけれども,1か所に権威が集中したりしないというようなことでアプリシエイトする国もある。つまり,私の感覚ではどこの国がベストで,日本は非常に遅れているというように総論的に言う必要はないのではないかなと思います。
  一言だけコメントを付けておけば,金子委員がおっしゃった情報公開のところについては私は全く同じ意見です。
  以上です。
【鈴木部会長】    羽入委員,お願いします。
【羽入委員】    ありがとうございます。まず,評価というのが大学の質向上に重要だということは大前提としての話ですけれども,少ない体験の中から考えますと,評価が目的化しないようにするということはとても重要なことだと思います。評価疲れという言葉はここの場では余り出てこなかったような気がしますけれども,大学の教員が大学で評価を受ける,そのための資料を膨大な時間を掛けて作成する。また同じ人が場合によっては他の大学に行って,膨大な資料を読んで評価するということも,もちろん重要な業務ですけれども,本来なすべき教育研究という業務が最大の目標であって,その環境を整えるなり効果を高めるための評価であるということをやはり確認しておく必要があると思います。
  先ほど金子委員がおっしゃっていたことと関係するかと思うのですけれども,日常の教育研究業務がそのまま評価の対象になるような構造を作ること,大学ポートレートも一つなのかもしれませんけれども,そのような負担の軽減と言ってしまえばそれまでですが,そのような評価そのものの大学教育についての意味を常に忘れないようにしておくことがとても重要ではないかと思いました。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  篠田委員,お願いします。
【篠田委員】    認証評価に関わって論点,検討課題を示されておりますけれども,1のところで大学,質的転換についての評価で,内部質保証という方向で重視していくという点で,ヒアリングでも随分強調されておりまして,この方向は間違いないのではないかなと思います。
  その中で,例えば「ヒアリングでの議論」の丸の六つ目のところで,内部質保証システムが機能しているかどうかには,達成すべき目標やレベルが明確に示されていることも必要だということについて,私はこの自ら目標や方針を示すというのは,内部質保証システムにとっては一番根幹のところですので,事を追うのではなく,事が絶対に必要だと思っています。
  その上で,内部質保証,つまり自らが立てた目標にどのように到達をしているのかというのを評価するということについて,上から三つ目の丸のところでは,法令等の評価と達成度評価を区分して,法令の方は簡略化し,達成度評価に重点を置いた評価をすべきだということで,これももちろんそのとおりだと思います。この場合もやはり自らが定めた目標ということで,達成度評価,達成するべきレベルや目標を認証評価機関が設定していくわけではないので,そのような意味で,どのようなミッション,目標を立てるのかというのが重要で,下から三つ目の丸の,質保証の観点からは各大学のミッションとの目標準拠型の内部質保証を確認することで十分とは言えないのではないかということで,これも日本の高等教育全体のレベルアップからすると,そのようなインセンティブを働かせることは重要だと思うのですけれども,目標を認証評価機関なり,上から示していくというのは余り適切ではないのではないか。やはり自ら目標を設定するというところをきちんと位置付けさせて,先ほどの三つのポリシーの議論でもそうですけれども,自ら作っていくということが非常に重要なところではないかなと思いました。
  そして,検討課題の二つ目のところで,アフターケア,フォローアップの点についてこれから検討していくということで,これも非常に重要で,評価をしただけではなくて,それがどのように改善をさせていくかということについても評価機関が関与をしていく,支援をしていくというのはあり得る流れではないかなと思います。ただ,これは評価機関にとっては多分非常に負担や業務量も大きくなるという話ですので,どのように設計ができるのか。その場合に,支援体制がどんなふうになるのか。これは後の方でも,評価員の育成をもっと強化したり,認証評価機関自身が自己点検評価をするなど,新たな認証評価機関としては業務の拡大につながる話が随分出てきておりますので,その場合にそのようなものを全て各大学の評価の費用の中に含んで,各大学の費用負担を求めるだけでやろうとすると,やはりなかなか難しい側面があるのではないかなと思います。
  その辺の支援の在り方というのも,今後,慎重に検討していくべきだと思いますし,同じく検討の2のところで,評価結果を資源配分に活用するということも出されておりますけれども,これも,その下の検討課題3のところにありますように,評価機関の自主性,独立性ということがここで強調されていますので,それぞれの評価機関が個性を持ってやっているものをどのように資源配分に公平につなげられるかということについては,慎重な検討が要るのではないかなということです。よろしくお願いします。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  続きまして,前田委員,お願いいたします。
【前田委員】    まず,機構の御発表のことに関しまして,すごく細かいことなのですが,アメリカで,質保証機関の機関別アクレディテーション機関が地域別,宗教別,専門分野別となっているのですけれども,これは多分,最後の専門分野別は表現としては正確ではないだろうなという気がしています。Career relatedで通信教育を半分以上やっているところも入ってくるので,多分専門分野別というのは正確な表現ではないだろうということと,4のWASC Srの認定保留というのは,これは多分プロベーションのことだろうと思いますので,認定保留が認定になるというのはおかしいので,ここも表現が違い誤解を与えるかなという気がしております。
  質問としては,金子委員はもう御退席になったのですけれども,先ほどデータが公開されていることの必要性をおっしゃったのですが,アメリカの場合,多分IPEDS(Integrated Postsecondary Education Data System)のことをおっしゃっていると思うのですけれども,あそこにみんな大学がデータを出すのは,奨学金をもらうことと関連しているからなのです。だから出さないわけにはいかないのです。そのことをもし日本でも実施する場合,日本は今,アメリカと比べて認証評価は罰則しかなく,メリットがないのです。ですので,簡単にデータ公開をアメリカのようにと比べられるかどうかというのは,考えなければいけないのではないかなと私は個人的には思っています。
  そして,質問としては,ここに御発表いただいたほかの国々は,市民が誰でもデータ公表したものを見られるシステムができているのかどうかということです。
【鈴木部会長】    どうでしょうか。
【林大学評価・学位授与機構研究開発部准教授】    まず,イギリスなのですけれども,HESA(Higher Education Statistics Agency(高等教育統計局))というところが誰でも見られる形で公表しています。先ほど日比谷委員から卒業生調査のお話がありましたけれども,そのHESAが卒業生調査もやっていて,例えば1年半後や3年後など,卒業後の追跡調査をしているのですけれども,今給与をどのくらい稼いでいるか,教育の満足度など,そのようなことも収集していて,各大学はそのようなデータを自分たちの大学のホームページに示さなければいけないという状態になっていますので,比較をするような形でのウェブサイトも見られますし,各大学のところで卒業生がどのくらい満足しているかという情報が示されている形になっています。オーストラリアでもそのような誰でも見られるようなデータベースが作られております。ほかの国はそこまでの形のものはないかなと思います。
【岡本大学評価・学位授与機構理事】    ないですね。特に,大陸ヨーロッパ,オランダは別なのですけれども,オランダもきちんと適格認定を受けた大学にいると奨学金をもらう資格があるので,それはかなりいろいろやっているわけです。一般的に言って大陸ヨーロッパの大学は州立ないし国立なので,設置者が国ということもあり,例えば評価結果をどのように公表しているかというようなことも余り明らかではないところもあります。フランスのAERESの場合はかなり研究評価に偏っていて,反発みたいなものもあったのですけれども,そちらもいわゆるデータとして公表というよりも,どういう点がいい点かなどというような,日本とはまた違った観点になっているかなという気はします。
  これも各国様々で,変な言い方だけれども,アングロサクソン系はすごく進んでいるというような印象です。
【前田委員】    もう一つだけ,よろしいですか。
【鈴木部会長】    どうぞ。
【前田委員】    確認したいのですけれども,イギリスの場合,一つ私立大学がありますよね。そこも結果公表が義務付けられているのでしょうか。要するに,国立,私立の関係が公表の問題として大きいかなという気がしておりまして,お伺いしたいのですけれども。
【林大学評価・学位授与機構研究開発部准教授】    すいません,そこは未確認です。
【鈴木部会長】    よろしいですか。
【前田委員】    はい。
【鈴木部会長】    小林委員,どうぞ。
【小林委員】    卒業生調査で,それもアメリカに限って少しお話ししたいのですけれども,このような卒業生調査というのは各大学がやっている卒業生調査,大学の機関のコンソーシアムがやっている調査,そして政府がやっている調査と3通りあるわけです。レベルが全然違うということで,私はそれぞれが重要だろうと思っております。
  日本の場合には,各大学がもちろんそれなりに卒業生調査をやっていると思いますし,私もやったことがありますけれども,コンソーシアム系の調査はなかなか進んでいない。これはこれから各大学のベンチマークをやっていくときにはどうしても必要になってきますから,これからこのような調査は進めていく必要があるのではないかなと思っております。
  そして,政府が進めている調査ということで,先ほどから話に出てきたアメリカの教育統計局がやっているIPEDSという大きな学校基本調査に当たる調査があるのですが,それ以外にも卒業生の調査もやっております。これはハイスクールアンドビヨンド,そしてバカロレアビヨンドという名前でやられているのですけれども,私が強調したいことは,これは政府がやっているということです。つまり,日本の場合はこのような調査が全くないので,全国の卒業生の状況というのは実は学校基本調査の卒業の状況調査しかないという状況になっております。金子委員がやられたフォローアップ調査,そして現在,慶應大学が同じようなパネル調査をやっておりますけれども,この程度しかないのです。ですから,全国の大学生が卒業してからどういうふうになっているかは実はよく分かっていないということになりますので,これは是非御検討いただきたいと思っております。
  以上です。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  そのほか,ございますか。時間も迫ってまいりましたので,もしこれ以上,御意見,御質問がなければ,本日頂きました御意見を踏まえた形で,今後も引き続き御審議いただきたいと思います。
  それでは本日の議事を終了いたします。
  どうもありがとうございました。


──  了  ──

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室