大学教育部会(第36回) 議事録

1.日時

平成27年7月14日(金曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 認証評価制度の改善について(ヒアリング)
  2. 大学運営の一層の改善・充実のための方策について
  3. その他

4.出席者

委員

(部会長)鈴木典比古部会長
(副部会長)黒田壽二副部会長
(委員)亀山郁夫委員
(臨時委員)安部恵美子,勝悦子,川嶋太津夫,小畑秀文,小林雅之,篠田道夫,長谷山彰,濱名篤,前田早苗の各臨時委員

文部科学省

(事務局)吉田高等教育局長,藤原私学部長,関大臣官房文教施設企画部長,瀧本大臣官房付,森田高等教育企画課長,塩見大学振興課長,北山専門教育課長,氷見谷私学部参事官,新田主任大学改革官,伊藤高等教育政策室長,新木大学設置室長,北岡大学振興課課長補佐,遠藤大学振興課課長補佐,牧野専門教育課課長補佐,片柳高等教育政策室室長補佐 他

オブザーバー

(オブザーバー)相良日本高等教育評価機構副理事長,石井日本高等教育評価機構常務理事事務局長,野上大学評価・学位授与機構長,岡本大学評価・学位授与機構理事

5.議事録

(1)認証評価制度の改善について,日本高等教育評価機構から資料1-1,大学評価・学位授与機構から資料1-2に基づき説明があり,その後意見交換が行われた。

【鈴木部会長】    それでは,所定の時刻になりましたので,第36回の大学教育部会を開催いたします。
  御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
  本日は,まず大学教育の質保証の充実という観点から,前回に引き続きまして,第3期の評価サイクルに向けた認証評価制度の改善及び設置基準の改正に関して御審議いただく予定でございます。前回の大学教育部会では,大学基準協会と短期大学基準協会から御意見を伺いましたが,本日は日本高等教育評価機構と大学評価・学位授与機構の二つの認証評価機関の方にお越しいただいておりますので,ヒアリングという形で御意見を伺いまして,それを基に意見交換を行いたいと思います。その後は,設置基準の関係につきまして,大学運営組織等の関係について御審議いただきたいと考えております。また,報告事項として,「職業実践力育成プログラム」認定制度,それから大都市圏への学生集中是正方策についての2点がございますので,本日の最後に御報告いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは,事務局から本日の配付資料について確認をお願いします。
【伊藤高等教育政策室長】    失礼いたします。本日お配りしております議事次第にございますとおり,本日の配付資料は,資料7点,そして参考資料1点及び本日のヒアリング関係のパンフレットを机上配付として5点お配りしております。欠落等ございましたら,事務局にお申し付けください。よろしくお願いします。
【鈴木部会長】    資料等はございますか。
  それでは,第3サイクルに向けた認証評価制度の改善に向けた検討について,第7期でも審議を重ねてきたところでありまして,改善に向けた論点と改善の方向性をまとめております。前回は大学基準協会と短期大学基準協会から御意見を伺いました。今回は日本高等教育評価機構と大学評価・学位授与機構の二つの認証評価機関から御意見を伺いたいと考えております。
  それでは,早速ヒアリングに入らせていただきます。本日は,日本高等教育評価機構から相良副理事長と石井常務理事兼事務局長に,それから大学評価・学位授与機構から野上機構長と岡本理事にお越しいただいております。改めて,本日は御足労くださいましてありがとうございます。
  二つの評価機関から御意見をそれぞれ頂戴いたしまして,その後に質疑応答も含めた意見交換の時間を設けたいと思います。
  では,日本高等教育評価機構からお願いいたします。
【相良日本高等教育評価機構副理事長】    ありがとうございます。座ったまま失礼させていただきます。
  公益財団法人日本高等教育評価機構副理事長の相良でございます。本日は,私どもの機構についてお話をさせていただく機会を頂戴し,誠にありがとうございます。本来ならば,私どもの機構の黒田理事長がお話し申し上げるところでございますが,本日,黒田理事長は大学教育部会の委員としてあちら側に座っておりますので,今,鈴木部会長から言っていただいたように,私と石井常務理事兼事務局長でお話をさせていただきます。また,質疑応答に際しましては,事柄によっては後ろに控えております評価事業部長兼評価研究部長の伊藤及び橋本総務部長が対応させていただくこともあろうかと存じます。よろしくお願い申し上げます。
  御案内のとおり,4年制の大学を対象とする機関別認証評価機関は,私どもの機構のほか,大学基準協会と大学評価・学位授与機構とがございます。大学基準協会と私どもの機構は,設置形態上は同じ公益財団法人でございますが,大学基準協会の受審大学の多くが戦前に設置された大学や首都圏ほか大都市に位置する大規模が多いのに対し,私どもの機構は,比較的歴史が浅い大学あるいは小中規模の大学,さらには地方都市に所在する大学が多いというように,漠然とはしておりますが,ある程度のすみ分けが見られます。私ども三つの認証評価機関は,定期的に共通の課題を話し合う会合を持ったり,また職員の研修を共同で行うなどして互いに協力し,意思の疎通を十分に図っております。このことをまず申し述べたく存じます。
  私どもの機構は,10年前の平成17年7月に文部科学省から大学機関別認証評価としての認証を受けました。先生方は御高承のとおり,全ての大学が認証評価を7年以内ごとに受審することが義務付けられております。その7年を1サイクルとして,現在,第2サイクルのほぼ中間点に差し掛かっております。第1サイクルにおいては,11項目から成る評価基準を設け,各受審大学が学校教育法や大学設置基準等の関係法令を遵守しているかどうかを評価の主たる眼目としておりましたが,現行の第2サイクルにおいては,それまでの評価基準の重複部分を整理し,かつ明確化して,その数を四つにまとめると同時に,新たに大学独自の基準を設定し,自己評価の枠を広げました。さらにまた,内部質保証のための自己点検・評価を実質化させ,4評価基準,22の基準項目ごとに,エビデンスに基づく自己判定を求めることにしております。
  私ども日本高等教育評価機構による認証評価を受ける大学は,ほぼ100%が私立大学で,18歳人口の減少に伴い,学生の定員充足がままならず,財政上の困難に直面している大学が少なくございませんが,これらの大学のいずれも特色ある建学の精神に基づいた教育を行っております。私どもは認証評価を行うに当たって,大学の問題点や弱点を鵜(う)の目鷹(たか)の目でえぐり出すというようなことではなく,建学の精神や使命,目的がいかに教育の中に息づき,学生たちが意義ある日々を過ごしているかに着目いたします。第2サイクルで大学独自の基準を設定したのもそのためにほかなりません。
  繰り返しますが,認証評価は,大学の諸問題を剔抉(てっけつ)してペナルティーを科そうとするための制度ではありません。むしろ,大学の教職員や学生に自信や誇りを与え,同時に改善・改革を促すきっかけとして評価されるべきものだと信じております。その意味で,私は,現行の認証評価制度は,大筋において適切に機能していると思っております。
  しかし,制度の運用に関しては,問題なしとはしません。認証評価の多くが民間の財団法人によって実施されていることは,それなりに意義あることではございますが,法律によって実施が義務付けられている大学評価は,本来,国の高等教育行政の中で位置付けられてしかるべき制度であると存じます。認証評価に関わる基本的な事柄,例えば評価員の養成や研修,認証評価に関する調査研究,評価機関の事務局体制の整備等は,公費による負担の対象となってしかるべきではないかと思っております。
  私のお話はここまでにさせていただきまして,この先は石井常務理事兼事務局長から,機構の運営や財政の在り方を含め,お手元にお配りいたしました資料のポイントを説明させていただきます。どうも御清聴,ありがとうございました。
【石井日本高等教育評価機構常務理事事務局長】    日本高等教育評価機構の石井でございます。資料を説明させていただきます。資料1-1,「日本高等教育評価機構の現状と課題―第3期の認証評価へ向けて―」という資料でございます。
  1ページの下の方,評価の実績でございます。今,会員校は331大学でございますけれども,評価の受審は,第1周期が272大学でございました。それから,第2周期は平成26年までで119大学でございます。現在,平成27年度の評価をしております。
  年度別の評価の内訳は,その表のとおりでございます。上の方が第1サイクル,下が第2サイクルでございます。
  右の方にグラフがございます。これに少し注目していただきまして,青い方が第1サイクルでございます。最初は0でございまして,それからずっと85大学まで,ものすごい勢いで増えております。これは,評価の経験がないということで,後送りになって,最後は駆け込みになったということでございます。第2サイクルが赤でございます。これは,第1サイクルの影響というか,それと同じ傾向を示しており,若干,直線的な線は崩れております。
  次に2ページの上の方でございます。これは短期大学の認証評価でございます。認証は平成21年9月に頂きましたけれども,評価は,平成25年から申請がございまして,今実績としては4大学ということになっております。会員は9大学でございます。
  それから,ファッション・ビジネス系専門職大学院の評価をいたしております。第2回の評価を今年実施してございます。
  次に,2ページの下の方でございます。第2周期の現行の評価システムのポイントについて少し説明させていただきます。まず,下の方でございますが,評価基準の見直しということでございます。下の方に旧基準11基準,右側に新基準4基準とございます。そして,下に独自の基準ということでございます。これは,基準が四つしかないと間違える方がいるわけですが,実は旧基準を整理統合し明確化したということでございます。全ての旧基準を網羅したという内容になっております。
  それから,現行システムのポイントの2番目として,内部質保証のための自己点検・評価の実質化ということで,四つの基準の下に,22の基準項目ごとに,エビデンスに基づく自己判定を大学でまとめております。
  それから,現行システムのポイントの3番目としては,認証評価のフォローアップでございます。改善報告書等の公表・提出でございます。「適合」の評価を受けた大学で,「改善を要する点」の指摘があった場合は,原則3年以内に改善報告書を当該大学のホームページ上で公表する,そして報告書を当機構に提出するということになっております。
  それから,評価員に対する対応について,平成27年度の例で説明したいと思います。今年度は68大学の評価申請がございまして,68チームができております。そして,評価員は320名でございます。1チームが,規模によって多少違いますが,4名から5名です。320名については,会員大学から推薦された評価員候補者約700名の中から専門分野等を考慮して,判定委員会で選定しております。今年の評価セミナーは,研修でございますけれども,6回に分けて実施しました。プログラムはここに書いてあるとおりでございます。
  それから,第3期の認証評価へ向けてということで,4ページから5ページに記述しております。第3期の評価システムにつきましては,企画運営会議で検討することにいたしております。
  まず,柱が7本ございます。1番目が学修成果,それから2番目が内部質保証,3番目が法令等の評価と達成状況の評価,4番目が情報発信,5番目が評価人材の確保と育成,6番目が評価作業の効率化,それから7番目が評価に関する調査研究ということになっております。この7本の柱で検討いたしております。
  最後に,第3期に向けてということで,法人運営上の課題ということで資料を付けております。本機構の場合は,財政基盤は評価料,それから会費収入で運営いたしております。実は,平成7年の認証を受けた際に,中央教育審議会の大学分科会から,適確かつ円滑に評価活動が実施できるように,収入の確保に努め,財政基盤の確立に努める必要があるとの御意見を頂いております。そこで,発足して間もない平成19年に,会費と評価料をそれぞれ30%引き上げました。その結果,本年に至るような財政基盤の確立ができたと考えております。しかし,年度ごとに,先ほども説明いたしましたように,評価受審大学は大きく変動しております。評価収入が年度ごとに激増したり激減するということの繰り返しでございます。これは,法人運営上の深刻な問題となっております。
  このような状況でございますので,認証評価制度について,今後,弾力化等のような改正が行われるということになれば,評価内容,評価期間,評価回数等の変動があれば,財源の縮小につながるということもありまして,懸念いたしております。勝手な言い分で恐縮でございますけれども,御配慮いただきたいと考えております。
  以上で資料の説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。
【鈴木部会長】    ありがとうございました。
  続きまして,大学評価・学位授与機構さんからお願いいたします。
【野上大学評価・学位授与機構機構長】    大学評価・学位授与機構長の野上でございます。このような機会を頂きまして本当にありがとうございます。
  私どもが現在実施しております認証評価の概要,そしてその認証評価事業を行っている現状を踏まえての課題といったことについて,まず理事の岡本からお話をさせていただきます。よろしくお願いします。
【岡本大学評価・学位授与機構理事】    岡本でございます。私どもの方から用意しました資料は,資料1-2の冊子で丸1と丸2の横表,それから丸3とございます。
  私の方から説明させていただきますが,丸1につきましては,私ども大学評価・学位授与機構がこれまで実施してきた認証評価についてまとめたものでございます。1期目に何件受審したかなど,これは後ほどお読みいただければと思います。ここには評価基準も書いてございます。
  資料の丸2というのは,この中央教育審議会の部会において,認証評価制度の改善に関する論点・検討課題というものが出されていると思いますが,それが一番左に書いてあって,横表の真ん中に認証評価の現状と課題ということで,私どもがどのような取組を現状やっているかというものをまとめた表でございます。もちろん,認証評価結果の各種取組への活用,例えば補助金の応募状況云々(うんぬん)ということは,私どもでどうにかできるということではないので,そこは空白になっておりますが,そのほかいろいろな仕事をしているということでございます。
  本日はお時間を頂きましたので,資料1-2の丸3,「これまでの認証評価事業等を踏まえての課題」というペーパーについて,必要ならば前を引用しながらということになりますが,説明をさせていただきたいと存じます。
  最初にお話ししておきたいことは,いわゆる国際通用性のある評価というのがどのように担保されるかということでございます。御存じのとおり,高等教育はもちろんそうですが,今でいうと,認証評価の質保証というのは,既に一国で閉じない状況になっております。それは学生のモビリティーとか,そのようなことをお考えいただければと思います。国際通用性の観点ということで,多分そのキーワードを三つ挙げるとすれば,そこに書いてございます,内部質保証,学修成果の可視化,教育情報の公表という,この三つが大きな柱になっていると考えております。ただいまの日本高等教育評価機構の御報告でも同じことが述べられていたと思います。
  実際にこの三つの観点は,2サイクル目の認証評価を行うときに基準を大きく変えた点でもございます。教育の内部質保証及び学修成果の評価については,一応明確化しているわけですが,一方,特に内部質保証等ですけれども,大学における体制整備や機能の状況等を確認していくことは今後とも引き続きやっていくことが重要であろうと思っております。
  学修成果では,これは次の3ポリシーとも関係しますが,学位授与方針や基準等を踏まえて,学位の質をどのように保証するか,これがまさに質保証の根幹ですので,それを確認していくということが引き続き重要であろうと思っております。
  次の丸で述べている3ポリシー,いわゆるアドミッション・ポリシー,カリキュラム・ポリシー及びディプロマ・ポリシーでございます。これにつきましては,先日出された中央教育審議会の高大接続改革の答申等でも,大学で3ポリシーを明確化してそれを発信していくということの重要性が述べられているところでございますが,私どもの評価では,2サイクル目からいわゆる3ポリシーについて取組状況を確認しているところでございます。しかしながら,まだ中途ということで完全な分析はしておりませんが,まだまだこの辺は,実際の大学の動きを見ていると,課題も残っているのかなと思っております。御存じのとおり,3サイクル目の認証評価というのは,平成31年から我々は始まります。大学基準協会だと,1年早く30年ということになるのですが,ちょうどその時期が今,中央教育審議会の答申で述べられている一体改革で言うと,高大接続とか,いろいろな改革とまさに時期が一致しているときになります。したがいまして,3ポリシーについては,恐らく今度は,実際にその将来的な大きな教育の改変に向けてどのようなことを見ていくかと,どのようなことを確認していくかということが大きなポイントになろうと思っております。
  3番目には,質保証のためには多元的な尺度による評価が必要ということでございます。昔は単にアクレディテーションとか,そういう一言で語られていたわけですが,最近は質保証ということが言われているわけです。質保証というのは,私の理解するところでは,恐らく以前でしたら,教育をする機関がそれに値するような教育をきちんと行っているかといったことで基準で出てきたわけですが,質保証というのは,そこで学ぶ学生たちがどのような成果を得て世の中に出ていくかということを保証するということで,単に機関が何をしたかではなくて,学生がそこで何を得たかということの変化というのを一言で表しているのが質保証という言葉ではないかと思っております。そのためには,一つの物差しではなくて,多重の物差しが必要であろうと思っております。この点については,後ほど少し付け加えさせていただきたいと思います。
  次に,「内部質保証が有効に機能していく仕組み作りが認証評価の重要な役割の一つ」と書いてございます。内部質保証というのは,先般のお話にもございましたとおり,これは認証評価に限らず,大学の質保証の向上について非常に重要な点でございます。これは恐らく,例えば細目省令におきましては,教育研究上の基本となる組織に関することから,八つぐらい書いてございますが,それに比べても,内部質保証の充実というのはメタな位置を占めていると思っております。それは全体を通じて必要なことだろうと考えております。その内部質保証が大学で実質的に有効に機能していくような仕組みを作るというのは,我々がやっている認証評価の重要な役割の一つであろうと思います。
  一方,今,機関別評価ということが行われているわけですが,分野別評価についてはどうなるのかということでございます。分野別評価というと,例えばプログラム評価で学位の種類ごとに一つずつ評価の基準を決めて見ていくというのも一つのやり方ではございますが,我が国の学位の種類というのは700ぐらいあるとかということですが,それを考えると,全てのプログラムでそれを実施するということは現実的ではないと考えております。それではどうするかということなんですが,一方では,「職業資格等との関連性も含めた検討も必要」と書いてございますが,これは具体的には,例えば医学教育の国際的な認証とは言わないですね。認定という言葉を使うべきかもしれませんが,国際認定で,そこで卒業した医学生が十分な医者になる資格があるかどうかということを認定する国際的な取決め,基準のようなものですが,そのようなものがもう動き出しております。あわせて,特に6年制の大学,医学のほかに歯学,それから薬学,獣医学といったところで,そのような職業資格との関連を含めた,そのような認定制度が動き出しております。その関連も含めて,分野別評価というのを考えていく必要があろうかと思います。
  私どもは,法科大学院以外の分野別評価は今特別には行っておりませんが,これまでも教育の内部質保証等の基準の中で,個々の教育プログラムの成果や改善等の取組は確認してきたところでございます。
  次のところは,本部会へのお願いということになりますが,「認証評価の社会への認知度が低い」と書いてございます。これは,私どもも毎年毎年,認証評価が終わるたびに,評価を受けられた大学及び評価を担当された先生方にアンケートをとっております。実際,それが内部質保証の拡充や教育の改善には一定程度役に立っているなとみんな考えているところなんですけれども,一方,認証評価が社会でどのぐらい認められたか,どのぐらいそのことが強く社会に大学の地位を訴えることができたかというところは,これはまだ課題が残っています。これは全ての認証評価機関共通の問題であろうと認識しております。認証評価機関連絡協議会でも常に大きな話題になるところではございます。
  一方で,これは制度全体の問題もあろうかと思います。例えば,基準を満たしていない場合にその大学はどうなってしまうのかということは,依然として制度としての問題は残っていると思います。実際に基準を満たしていないと判定されて,要するに認証評価を受けたのだけれども,俗っぽく言えば丸が付かなかったという大学が別の財政的な理由で破綻して,文部科学大臣の解散命令で廃止になった。そのときに,認証評価は何をやっているのだという声が出ていたと思うんですが,このようなところは法令上の位置付け等が必要であろうと思っております。
  最後の点で,これは少し強調しておきたいのですが,先ほどの質保証のためには多元的な尺度が必要であるということを少し膨らますことになりますが,ほかの評価制度と連携した評価の効率化ということは必要ではないかと思います。私どもの機関では国立大学の受審校が非常に多いわけです。一方,国立大学では,国立大学法人評価というのが文部科学省の方で行われております。そのうち教育研究評価というのは私どもが依頼されて行っているところでございますが,その教育研究評価のところというのは,認証評価とかなり重複している部分がございます。大学から見ると同じ仕事をしているわけですが,それを二重に見るということで,片方は自分が年度で選べるわけですが,片方は強制的に6年に一回という状況になっているわけです。どのように法人評価と認証評価の位置付けをするかということなんですが,現在は,法人評価や認証評価を,特に認証評価の結果を来年度行われる法人評価にはどうやって十分活用するかということで,それを例えば実際の各国立大学が持っている中期目標の達成状況の報告などのときに,認証評価機関によって得られた結果をエビデンスとして使うとか,活用するといったことは行っていただきたいなと,来年度なので分からないのですが,そのようなことは国立大学の方にも訴えているところです。この辺につきましては,認証評価は,確かに機関別認証評価は国立大学のほとんどが当機構で受けておりますが,そのほか専門職,先ほど申し上げた分野別評価になりますと,いろいろな機関で受けているわけで,そのようなところの認証評価が十分に使えるように,活用できるようにということとともに,各大学の負担が過重にならないようにということは考えていかなければならないと思っております。
  もう1点,ここに「大学ポートレート等の活用」と書いてございます。これは,今年の3月10日にようやく国公私立共通で動き出したところで,まだまだ生まれたばかりのところなので,これから拡充していかなければいけないのですが,評価制度を考えるときに,大学ポートレート等の活用というのは,第3サイクルの重要な意味を持っていると思っております。
  一方,これは認証評価とは直接の関係はないのですが,私どもは大学機関別選択評価というのを研究と地域貢献と教育の国際性という三つの観点で行っております。これは認証評価制度とは別に,大学がふさわしいと思うときに受けられるような評価を独自に設定しているものでございます。このようなものも大学のいわゆる内部質保証や自己点検・評価あるいは改善に役立つということでやっているわけなので,この点につきましては,ある意味では大学の機能に応じた選択評価という形でもよろしいと思いますが,引き続き充実していきたいと思っております。
  以上を踏まえての課題ということを中心にお話をさせていただきました。どうもありがとうございました。
【鈴木部会長】    ありがとうございました。
  それでは,皆様から御意見,御質問を承りたいと思います。御発言をお願いいたします。それでは,前田委員,どうぞ。
【前田委員】    それぞれの機関に御質問させていただきたいと思います。
  まずは日本高等教育評価機構ですけれども,一つは簡単な質問ですが,会員校以外で日本高等教育評価機構の評価をお受けになったところはどのぐらいあるのかということをお伺いしたいと思います。もう一つは,比較的歴史の新しい大学が多い,ということは,恐らく今までにない,古典的でないような学部であり,新しい名称の学位を出すような大学も結構あるのではないかと思うんです。そして,かなり基準を大綱的になさっていて,その学位にふさわしいカリキュラムであり,ふさわしい教員組織であるかということも,多分大学側が証明していくといった方式だと思うんですけれども,そのあたりに困難性というのをお感じになったことがないかどうかです。非常に自由に大学が設計できるということは,評価機関の方も相当高度なことが要求されると思うんです。ある程度古典的な,例えば文学部,法学部,経済学部であれば,大体想像が付くと思うんですけれども,非常に新しいようなところが出てきた場合に,評価の困難性をお感じになっていないかというのが,日本高等教育評価機構への御質問です。
  大学評価・学位授与機構への御質問としては,幾つか私立大学がお受けになっていると思うんですけれども,私立大学が受けるときに,今度はやはり困難な,非常に受けにくいということがないかどうかという御質問と,もう一つは大学評価・学位授与機構にお尋ねすることではないかもしれませんけれども,国立大学法人評価との連携ということを考えるときに,ほかの認証評価機関を国立大学が受けて,それと国立大学法人評価を連動させるという可能性に関して,先ほど聞き取れなかったものですから,そこについてお伺いしたいということです。
  以上でございます。
【鈴木部会長】    それでは,日本高等教育評価機構の方から,お願いいたします。
【相良日本高等教育評価機構副理事長】    ただいまの御質問の評価を受けた会員校以外の大学の数につきましては,後ほど事務局長の方からお話し申し上げます。確かに,新しい大学というのはたくさんございます。でもこれはもしかしたら私の全く個人的な印象かもしれませんが,新しい大学でも,教育あるいは研究は比較的伝統的なやり方でやっていらっしゃる大学の方が多いんだろうと思うんです。ただ,私どもは認証評価を始める前に,受審を申請してきた大学とはいろいろな形で話合いをして,例えばどのようなエビデンスを示していただけるかといったことについても十分に意思の疎通を図っております。また,評価員の先生方というのは,大体,大学の先生,あるいは事務局の職員です。そのような方々は比較的オーソドックスで,トラディショナルな価値観を持っていらっしゃいます。そのような方々に対しては,評価員セミナーという集まりをいたしまして,日本高等教育評価機構が行おうとしている評価についてをまず御理解いただきます。ですから,まず先生におっしゃっていただきましたけれども,私はこの機構にそう長くいるわけではございませんが,少なくとも私の経験からいきますと,やり方あるいは考え方というのは比較的オーソドックスかつトラディショナルなやり方でやっていると思います。余りきちんとしたお返事になっていないことをお許しいただきたく存じますが,これが私の偽らざる印象でございます。
  数については,事務局長よりお答え申し上げます。
【石井日本高等教育評価機構常務理事事務局長】    本機構は,他の機関より少し遅れて,平成16年11月に法人を設立しました。この法人は,日本私立大学協会が設立母体で設立したわけでございます。これは0から出発しました。しかもこれを設立するときに,協会の総意で設立されたわけです。評価を受ける,受けないには関係なく,できるだけたくさんの大学が会員になってほしいという協会側の意思でございましたので,役員校を中心に,評価を受ける,受けないには関係なく入った大学があります。それが最初は約35大学ありましたが,現在のところ20大学ぐらいに減っております。それ以外はみんな評価を受けます。日本私立大学協会の役員校で評価は大学基準協会で受けて,会員だけになる。ですから,私どもは今,財政的にも完全ではございませんので,ある意味,財政援助のような形になっておりますけれども,評価員とか,いろいろ協力を頂きながらやっていくということです。まだ20大学ぐらいあります。正確には,今,資料の持ち合わせがありませんけれども,毎年少しずつ減っております。そのような状況でございます。
【前田委員】    御質問は,会員校ではなくて,日本高等教育評価機構の評価が良いと思って日本高等教育評価機構の評価を受けられる大学がどのぐらいあるかという御質問なんです。
【石井日本高等教育評価機構常務理事事務局長】    会員校でない大学も受けています。
【前田委員】    日本高等教育評価機構の評価がいいということでお受けになる。
【石井日本高等教育評価機構常務理事事務局長】    そうですね。当機構では,それもだんだんと逆の方向です。会員校でない大学は10大学はないぐらいだと思います。最終的には,7年分の会費を評価のときに払うということになっております。大学基準協会は5年分ですけれども,当機構では1周期分頂くということになっていますので,最終的には会員のほとんどとなっていまして,10大学はないぐらいです。
【前田委員】    ありがとうございました。
【鈴木部会長】    では,大学評価・学位授与機構,お願いいたします。
【岡本大学評価・学位授与機構理事】    最初の御質問の私立大学の問題ですけれども,私どもにとっては別に何の困難さもないわけで,受けられる私立大学にとってどのような困難さがあるかは少し分からないんですけれども,普通に行っております。ただ,例えば法科大学院の評価とか高等専門学校の評価には,もちろん私立大学なども入っているので,特に我々としては別に何もないということでございます。
  2点目は,これは非常に重要な点ですが,国立大学法人評価の教育研究評価が来年度行われますが,一応そのときに認証評価の活用などが書いてございますが,それはどこの評価機関ということではなく設計されております。実際に国立大学法人評価の方も,認証評価機関の代表の方が委員として法人評価にも加わるということになっていって,そのような体制で行っております。
  それでお答えになっているでしょうか。
【前田委員】    少し勘ぐり過ぎたかなと思うんですけれども,国立大学というのはかなりきちんとしているので評価がしやすくて,私立大学だと思わぬことがあるということがないかなという趣旨で質問をいたしました。それはないという御回答で,どうも失礼いたしました。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  小畑委員,お願いします。
【小畑委員】    突飛な質問かもしれないんですが,大学評価を行う機関が三つあって,それぞれが非常にうまくすみ分けができているというお話があったかと思うんですが,これはある意味では良いとも言えるし,良くないとも言えるんだろうと思うんです。三つあるのだったら,それぞれがお互いに競争の原理が働くような仕組みの方が一般的にはいいのではないかなと思います。これは大学評価という非常に特殊なケースを度外視して言っていることなので,うまくいくかどうかは私自身もよく分かりませんが,お互いに競争し合うということについての御意見やお考えは何かございますでしょうか。
【相良日本高等教育評価機構副理事長】    今,小畑委員のおっしゃったことは,私もよく理解できますけれども,意思の疎通が十分に図られているとさっき申し上げたのは,なれ合いでやっているというわけではございません。ただ,同じ認証評価をやっているということであって,できた歴史も違えば,設置形態も違います。でも,結局,私どもはできて10年ですけれども,やり方も考え方もだんだん似てきました。結果的にそうなったのではないかと思います。でも,先ほど私は例を挙げましたが,認証評価機関で合同の職員研修をしているというのは,私はこれは決して批判されるべき事柄でもないと思いますし,繰り返しますが,なれ親しんだというのか,ただ仲良くやっているということではございません。
  それから,すみ分けというのは,例えば先ほどの大学評価・学位授与機構は独立行政法人であるということ,それから実質的に国立大学・公立大学の認証評価を圧倒的に多くやっていらっしゃいます。それから,私どもの評価機構は,先ほど申しましたように,日本私立大学協会との縁もあり,比較的小規模で新しい大学が多いということ。これも別に,大学基準協会ができたのが昭和22年で,歴史的には,できた年は全然違いますけれども,認証評価制度ができてからだんだんやることが収れんされてきているような気がしております。
【鈴木部会長】    それでは,川嶋委員,お願いします。
【川嶋委員】    ありがとうございます。認証評価というのは,ある意味,日本の学位のセーフガードといいますか,国際的な信頼性をきちんと保証する組織であるということで,非常に重要であると同時に,その責任も重いと思っているんです。それで,先ほど岡本理事の資料にもあったんですが,学位の質をどのように保証できているかということに関連して,二つの組織の方にそれぞれ同じことをお聞きしたいんです。先ほどの岡本理事の資料ですと,多元的な尺度とか,分野別評価とか,国際通用性ということが幾つかキーワードとしてちりばめられているのですが,高等教育の質保証といったときに,例えばイギリスですと,質保証といっても,質というのは大学が提供する教育プログラムとか学修機会のことを指します。学生にとって充実した学修機会が,どれだけ体系的にそれぞれの大学で提供されるか,これはプロバイダーの方のクオリティーに関することです。もう一方は,学生の視点からいくと,授与された学位の水準,スタンダードです。クオリティーとスタンダードというのは,学位の国際的な信頼を考える際,非常に重要だと思うんですけれども,先ほどの御紹介で,法科大学院は分野別評価がすでに行われていますが,医・歯・薬・獣医系は,まだ分野別認証評価があるわけではないんですけれども,それぞれ国家試験があるので,最低限のスタンダードというんですか,到達水準というのが満たされているということが一応可視化されているわけです。その点で日本の高等教育の質保証を考えていく場合,学位の水準をどのように考えるのか。これまでどおり,各大学のミッションは多様だから,目標準拠型で,ミッションが明確に立てられて,それが達成できていれば認証評価として良しとするのか,ある一定の到達水準も同時に満たされていなければならないのかといったことについてどのように二つの機関の方がお考えになるか,少しお伺いします。
【鈴木部会長】    では,大学評価・学位授与機構の方からお願いします。
【岡本大学評価・学位授与機構理事】    実際にイギリスのように,いわゆる試験をやって卒業のレベルを確保しているということは日本ではないんですけれども,おっしゃっていることは非常によく分かります。ただ,難しいことではあるんですけれども,先ほど申し上げたかったのは,3サイクル目がちょうど終わるときに,そのとおりいけばということですが,例の一体改革などで大学の入試の在り方とか高大接続ということが今語られていますけれども,教育の質というのをどのように担保していくかという,ある意味ではスタートラインに立つようなことが何年か後にはやってくるということだろうと思います。現状では,おっしゃるとおり,学修成果を見ながら,どのような学修成果があったかということで測っていきますけれども,目指すところはもう少し遠いところ,理想が高いところにあるのかなと思いますが,クオリティーとスタンダードというのは非常に難しい問題ではあろうと思っています。すぐには答えが出てこないなというのが正直なところです。
【相良日本高等教育評価機構副理事長】    川嶋委員から非常に難しい御質問を頂いたのでありますが,私は川嶋委員の疑問,御質問に十分に答えられるかどうかは分かりませんけれども,先ほど多様化ということを岡本理事はおっしゃいましたが,非常に日本の高等教育が多様化しています。行われている教育あるいは研究の質も非常に多岐にわたっている,あるいは多様であるという中で認証評価を実施するということは,結果的に一種のミニマム・リクワイアメントといいますか,ここまではやっていてほしいなと,それ以上のことはまた別の場所,別の機会,別の考え方でと,そこまで言い切っていいのかどうか。少なくとも私どもが今行っております認証評価は,先ほど私の最初の話の中でも申し上げましたが,第1サイクルは,とにかく設置基準あるいは学校教育法に照らして,その大学の教育研究あるいは学生に対する対応などが問題なく行われているかということから始まりました。そして今,第2サイクルでは,個々の大学が自分たちで自分たちがやっていることを評価してもらおうというやり方が今の第2サイクルのちょうど中間点でございまして,第3サイクルになったらどうなるか分かりませんけれども,少なくとも今は私どもは,各大学がここまではやってほしいと思えるようなところまでやっているかどうかということを見るといいますか,各大学がその自己判定をやっているかどうかということが現状のように私は思っております。
  ちゃんとしたお返事になっているかどうか分かりませんが,御勘弁ください。
【鈴木部会長】    小林委員,お願いします。
【小林委員】    それぞれの機構の方に一つずつと,それから日本高等教育評価機構の方に一つ質問したいと思います。
  共通の質問としては,これは前回の大学基準協会と短期大学基準協会にもお伺いしたのですが,ペナルティーとインセンティブということをどのように考えておられるかということです。本日は最初に日本高等教育評価機構の方から,ペナルティーということよりもというお話があったと思うんですが,逆に,大学評価・学位授与機構の方からは,基準に満たさないような場合には法的な措置も考えていただきたいといった要望があるわけで,これはかなりきついペナルティーを考えておられるということになるわけでありますので,そこの部分はどのようにお考えなのかということを両機構にお伺いしたいということです。逆に,ペナルティーではなくて,インセンティブをどのように働かせるような仕組みを作っておられるのか。大学評価・学位授与機構の資料1-2では余り説明されなかった部分ですけれども,優れた点については,それを明記するということで,インセンティブを高めるような工夫はされていると思うんですけれども,それ以上に大学がインセンティブを高めるような工夫というのがされているのでしたら,お伺いしたいと思います。これが両機構に共通の御質問です。
  もう1点は,日本高等教育評価機構の方で,これも御説明はなかったのですけれども,9枚目のスライドで,大学ポートレートを評価に活用しやすいものとすることが必要であるということがあったのですが,具体的に,活用しやすいようにするというのはどのようなことでしょうか。これは,前回短期大学基準協会でも同じような要望が出てまいりましたので,もう少し詳しく説明していただければと思います。
  以上です。お願いいたします。
【相良日本高等教育評価機構副理事長】    ペナルティーの問題は,恐らく,第3サイクルにまで持ち越されるというか,第3サイクルでどうするかということになろうかと思いますが,確かに,適合とされた大学については万歳で終わってしまうんですけれども,不適合だった場合,私どもは,不適合だからこうしなさい,このように改善なさったらいいですよというところまで当該大学には申し上げていません。そのことがいいのかどうかといいますか,少し悪い言い方をすれば,評価しっ放しで,後でどうするかはその大学がお決めになることだろうと。でも,認証評価を受審なさった大学は,適合だと言われれば,もちろん喜んでくださいます。でも,少し問題があると言われたら,それは非常に大きな問題として捉えてくださるわけで,ペナルティーという言葉を使ってしまうと非常に強くなってしまうんですが,この先3年のうちに改善してくださいというくらいの問題点だったならば,それはそれで私は意味があると思うんですが,本当に不適合だと,今までそのように判断した例がないわけではもちろんございませんが,今後,第3サイクルでどうするかということは,私どもは少し真剣に考えていきたいと思っているところでございます。
【鈴木部会長】    大学評価・学位授与機構もお願いします。
【岡本大学評価・学位授与機構理事】    ペナルティーとインセンティブといういい言葉を教わったなと思って,ありがとうございます。実際に申し上げたかったのは,ペナルティーの部分というのは評価機関ができることではありません。制度全体の仕組みの問題だろうと思います。私は,今のお答えと共通しているんですけれども,我々がやらなければいけないのはむしろインセンティブを与えるかどうかということだと思います。英語で言うとエンハンスメントということになると思いますが,実際,今のところ,認証評価を受けて大学はどれぐらい改善になったのかといったことは検証しておりますし,先ほど御指摘いただいたようなグッドプラクティスについても,主なものは,例えば英訳ということもやっております。
  先ほど少し話が出てきた認証評価機関連絡協議会のホームページがありまして,このホームページが恐らく日本で唯一,大学名を打ち込めば,認証評価について,何で受けたか,どこで受けたかも含めて,出てくるホームページがようやく立ち上がったのですが,実はそこに各評価機関が選んだグッドプラクティスの一覧表というものが出てきます。基準は違うんですけれども,学生支援や教育の成果について見ることができます。グッドプラクティスも,一つの大学だと,良かったということなのかもしれないですけれども,全体として見ると,日本の高等教育がどれぐらい努力しているか,どれぐらい頑張っているかというのがよく分かります。そのようなインセンティブもあるかなと思っています。それが私の答えです。
【相良日本高等教育評価機構副理事長】    もう一つの御質問の大学ポートレートに関してでございますけれども,大学ポートレートが果たす役割と認証評価が果たす役割というのは,同じものではありません。実際に各大学でも,大学ポートレートを担当している部署と,認証評価を受けるための準備を担当している部署は,必ずしも同じではないということから考えましても,認証評価がそのまま大学ポートレートの在り方につながるわけではないと私は思っております。具体的には,例えば認証評価のために私どもが受審大学に求めているデータは,必ずしも大学ポートレートで表に出てくるデータとは違います。しかし,大学ポートレートもやらなければならない,認証評価の準備もやらなければならないということは,多くの大学にとってかなりの負担であるということもまたそうだろうと思うんです。ですから,できるだけ活用できることは活用するということで,先ほど岡本理事も言われたように,大学ポートレートは今年の3月10日にできて,まだ半年もたっていないわけですから,だんだん大学ポートレートの在り方も,なれてくると,認証評価とポートレートとのすみ分けみたいなものがスムーズに,色分けというのかな,うまくいくようになるのではないかなと思っております。いずれにしても,まだできたばかりであるという,そのような感じでございます。
【鈴木部会長】    ありがとうございました。
  篠田委員,お願いします。
【篠田委員】    両機関にお伺いしたいと思うんですけれども,内部質保証システムをいかに確立して強化するのかというのは,現在も御努力されているところだし,第3サイクルのところでも重要なテーマだということで,これは中央教育審議会の方でも強調されている話なんですけれども,日本高等教育評価機構の資料の3ページのところで,評価システムのポイントということの重要な一つに,内部質保証のための自己点検・評価の実質化ということで,評価基準項目ごとにエビデンスに基づく大学の自己判定を求めたということで,自己判定と,その判定した理由と,それからそれに基づいて改善・向上方策を書かせるという,このサイクルがうまく回っていけば,内部質保証システムとして機能していくということになろうかと思います。
  けれども,4ページの下の方を見ますと,「第3期の認証評価へ向けて」ということの七つの柱ということで御説明いただいた中の最初の(1),(2),(3),このあたりは内部質保証システムに連関する課題だと理解しているのですが,課題のところを読んでみますと,(1)の学修成果のところでは,何が学修成果なのか具体的に教育目的等に明示していない大学が見受けられるという現状であります。それから,一つ飛んで(3)の法令等の課題のところでも,大学等の達成目的が明確でないため,達成状況の評価が余り機能していないということで,内部質保証のところでも,必ずしも改善に結び付いてはいない大学が見受けられるといった現状が報告されています。内部質保証が確立しているかどうかの要の一つは,達成すべき目標やレベルというのがきちんと明確に示されているかどうかというところが非常に肝腎で,これが逆に評価基準になっていくと思うんです。自ら掲げた目標に対してどう評価していくのか,そのサイクルが回っていくかということだと思うんです。三つのポリシーなども,ポリシーとしては作られているんですけれども,それが仮に型どおりのものになっていたりして,具体的な目標が明示されていないということになるとすると,内部質保証システムといっても,なかなか実質的には機能しません。自己判定も曖昧になってしまうし,結果がきちんと評価されて,到達度を明確にしていくといったことができないのです。ということになってくると,これが特色化とか個性化とか機能別文化というところも曖昧になっていくというような状況だと理解できます。
  お伺いしたいのは,第2サイクルの3年間のところではこのような問題点が多分指摘されていくということだと思うので,この辺の現状と,それから内部質保証システムを本当の意味で強化していく上でのポイントといいますか,重点は何かというお話をお伺いしたいと思います。そのことは全く同じテーマで大学評価・学位授与機構の方にもお伺いしたいんですけれども,先ほど御説明いただいた資料1-2の丸3のところでは,真ん中の四つ目の丸のところに,内部質保証が有効に機能していく仕組み作りが認証評価の重要な役割の一つだということで,非常に強調されています。少し前に戻って,資料1-2の丸2を見てみますと,これは学修成果とか内部質保証の現状などが書いてあるのですが,二つ目の丸と,それから五つ目の丸のところです。五つ目の丸のところにも,各大学が掲げる目的・水準等に対する評価ということで,それを評価されているということで,学修成果を評価する前提となる達成目標が明示されることを大学に求めているということなんですけれども,このようなことの現状というのはどのような現状になっていて,上から二つ目の丸のところに,教育の質の改善・向上の事実確認は可能であるが,全学の体制整備の有無やきちんと機能しているか等については自己分析が不十分な場合もあるといった御指摘がされておりますので,この評価の現段階と同じように,今後内部質保証システムを強化していく上で,第3サイクルで何がポイントというか,重点になっていくのかをそれぞれお伺いできれば有り難いです。
  以上です。
【相良日本高等教育評価機構副理事長】    この点につきましては,私どもの評価事業部長の伊藤から篠田委員に御返事させていただきます。
【伊藤日本高等教育評価機構評価事業部長】    御質問いただきました資料の4ページの下のところの三つの点について御説明をさせていただきたいと思います。
  篠田委員の方から御質問いただいた内容の学修成果,内部質保証,そして法令等の評価,基準評価と達成度の評価,これは三つとも現在第2サイクルで行っている内容でございますが,なかなか3点ともうまく機能していないということで,現状,課題,検討という形で入れさせていただいております。特に2-6で,学修成果とは何かというのが,大学での捉え方もそれぞれでございますし,一定の資格試験等については,それが学修成果だと決めている大学もございますが,様々な分野,学科等のディプロマがある中で,なかなか明確に示されていない大学が多く見受けられるということで,第3サイクルは学修成果を更に一層重視する点から,学部・学科ごとの学修成果の可視化というのを大学に求めてはどうかということで,検討課題として挙げております。これはどういったレベルの位置で求めるかというのが,今後の検討課題だと思っております。
  また,内部質保証につきましても,自己点検・評価を実施するというのは第1サイクルのところで大分定着したと考えておりますが,自己点検・評価をするにも認証評価があるからという受け身の体勢はまだ崩れておりません。先ほど頂きました大学へのインセンティブというのがまだ少ないような感じがしますので,それをなるべく大学自身が率先してやっていき,改善を図って,内部質保証をしっかりとできるような体制に更に促進させる方策が必要ではないかというのが内容でございます。
  3点目の法令等の評価と達成状況の評価ということですが,どうしても設置基準,学校教育法,学校教育法施行規則,三つのところ,そして,私立大学が中心ですので,私立学校法等の内容が中心となって,ピア・レビューという観点からすると,なかなかそれ以上の達成度について意見が述べづらいということで,大学の方からある一定の達成目標が明確に示されていれば,評価員からもいろいろなアドバイスをしやすいという状況ですが,まだ大学の方から明確に示されていないというのが,この第2サイクルの大きな課題だと思っております。
  以上です。
【篠田委員】    ありがとうございました。
【岡本大学評価・学位授与機構理事】    簡単にお答えさせていただきます。内部質保証システムが完全に動いている状態というのは理想型で言えばどのような状態かというと,恐らく私たちがやっている認証評価のいろいろな基準適合性とか,教育成果とか,そのようなものはもうほとんどエビデンスの世界で,内部質保証で全部これがスムーズに出てくるというのが理想型であろうとは思います。今の伊藤部長の話にありましたとおり,問題になっているのは,内部質保証があって認証評価をやるのではなくて,認証評価があるからそのために自己点検・評価をやらなければいけないという,これを逆転させるどうかということが大きな課題だというのは,取りまとめと同じ内容ですけれども,それだけにさせていただきます。
【篠田委員】    ありがとうございました。
【鈴木部会長】    それでは,濱名委員,お願いします。
【濱名委員】    篠田委員と若干重複するところがあるかも分かりませんけれども,お許しいただきたいと思います。
  両団体とも,学修成果を非常に注目して取り上げていただいているのは大変結構なことだと思うのですが,多分,大学評価・学位授与機構さんの方が,これまで基準6の中で学修成果という項目を挙げておられて,その中での問題を踏まえて恐らく今回指摘されているのだろうと思うのですが,具体的な学修成果と,進路状況等から判断した学修成果と書いておられて,それが不十分だということだと思うのですが,現状としてはどうなのか。つまり,平均的には,就職率とか,その程度の進路状況しか書かれていないというところを踏まえてお書きになっていらっしゃるのか。それともう一つは,今回の改善の中で,多元的な尺度による評価が必要だとお書きになっていらっしゃるのは,そうした実態を踏まえておられるのか。あと,今後の方向として,個別大学に設定させるという方向なのか,あるいは,認証評価の中では,具体的な基準の例示などをある程度示していかれるおつもりなのかということを教えていただきたいということです。
  日本高等教育評価機構の方は,申し訳ないのですが,今後の中では非常に大きくクローズアップされているんですが,これまでの基準の1から4の中のどれを発展させられるのか。つまり,第1サイクルと第2サイクルは,図で結んでいらっしゃるんですね。そのつなぎが少しはっきりしない。もしかすると,基準2の学修と教授のところを発展させて問題として捉えるのかということです。つまり,ここでは学修評価というのがあるのです。では,その学修評価と学修成果を高等教育評価機構はどのように切り替えてお考えなのか。ここに書かれている学修評価が,単純に成績の付け方程度で留(とど)まっていたとお考えなのか。あるいは,先ほど伊藤部長が言われたような資格の取得とか,そのようなことにすぎなかったというところを踏まえて,とにかくトップ項目に挙がっているということは,非常に大きな変化だと思います。そのような点からみれば,大学評価・学位授与機構以上にドラスティックに方針を変えられようとしているので,そこを教えていただきたいと思います。
  もう一つ,非常に気になっていますのは,その書きぶりで,検討の中で,「評価方法と評価指標の明示を大学に求める」とありますが,明示すれば達成できるのでしょうか。あるいは,評価基準に基づく評価を求めるということでなくて,この書きぶりになると,明示して不十分であったとしても,先ほどの伊藤部長の御説明だと,会話ができるということでいいのでしょうか。それがこの筆頭項目の扱いを進めていかれるのでしょうか。あるいは,この段階でどこまで実現可能性や効果をお考えなのか,お教えいただければと思います。
【鈴木部会長】    岡本理事,どうぞ。
【岡本大学評価・学位授与機構理事】    私の方からまずお答えさせていただきます。
  今の濱名委員の御質問の中に既に答えが入っている,つまりダブルなんですね。明確に学修成果というのはどういうものを期待するのかということがきっちり設定できているのか。そのために何をしなければいけないか。それから,それが例えば学生の就職状況とか就職先のあれできちんと測られているのか。これは連動しているので,そこに問題があるということなんです。ただし,今私どもは,ちょうど評価の中間点で,今年たくさんしているところなので,ちょうど半分ぐらい終わったところでいつも検証するので,もう少しまとまった成果は検証後にまた公表してお知らせできると思います。
  もう1点,これは私どもの独自の事情で,来年度,国立大学法人評価をやって,現況分析のときに部局ごとに見ます。今度は大学の部局ごとに,学修成果がどういうものであって,どのように設定して,それをどのように見ているかというのが出てくるはずです。そこも見て,そのようなものの積み重ねが大学としての評価になろうと思うので,分野ごとにどのようなものが出てくるかというのは見ていきたいと思っています。
  あわせて,私どもの調査研究で,これも既に公表しているんですけれども,大ざっぱな分野ごと,それは工学系や教育系で,実際にどのようなことがグッドプラクティスあるいは学修成果として期待されているのか,例えばどのようなことを参考にして,内部質保証ですけれども,各部局がどのような点を見ていけばいいのかといったものを現在取りまとめていて,それは確定版ではないんですけれども,来年の国立大学法人評価のときに活用してみるということをやっておりますので,もう少しまとまった答えはもう少し待っていただくとできるのではないかなと思っております。
【鈴木部会長】    では,伊藤部長,お願いします。
【伊藤日本高等教育評価機構評価事業部長】    御質問,ありがとうございました。
  学修成果については,当機構は多分一番,他団体と比べてソフトな感じで第2サイクルをスタートしておりますので,今後第3サイクルの中で非常に重視していきたいという内容でトップに挙げさせていただきました。これまで成績評価とか,そのようなものを中心に見ておりましたが,124単位取って卒業したときに,学修成果というのをどのような学生が身につけられているのか。専門的知識とか,いろいろな能力といったものを学部・学科ごとに大学自身でしっかりと挙げていただきたいというのが,検討の方向でございます。
  内部質保証の観点から,大学自身が学修成果として掲げたものをどのように評価して,どういう指標でそれが達成できているのかということを自己点検・評価していただくということを求めることによって,その状況を評価員が検証できるような形が想定できないかということで,この検討として挙げております。これにつきましては,また当機構の様々な委員会等で御意見を頂きながら具体的に進めたいと思っております。
  以上です。
【鈴木部会長】    安部委員,お願いします。
【安部委員】    ありがとうございます。私は分野別評価のことについてお尋ねしたいんですけれども,資料1-2の丸3に,大学評価・学位授与機構の方からは,分野別評価については,学位が数百あって,全てのプログラムで実施することは現実的ではないといった課題を踏まえて書いてあるんですけれども,分野別評価につきましては,今般,高等教育機関に職業教育に重点を置いた新しい機関の設立構想を含めて,今後の大学にこのような役割を負わせてくると,今以上に分野別評価というのは,機関評価と並んで重要になるのではないかと思います。
  そこで,日本高等教育評価機構に質問なんですけれども,私立大学の中でも,歴史が比較的浅くて,地方の小規模大学を評価なさっているとのことですが,そのような大学においては,職業資格取得につながるような専門教育を行う学部,つまり,職業専門教育そのようなところを目的とするような大学は非常に多いと思うんですけれども,今後,分野別評価というものをどう考えていくか。特に,この御提出いただいた資料の中で,これは専門職大学院のことですけれども,本当に実践的なファッション・ビジネスといったところの認証評価なども行っておられることを考えると,このような職業分野の分野別評価についてどのようにお考えかということを御質問させていただきます。
【鈴木部会長】    いかがでしょうか。
【相良日本高等教育評価機構副理事長】    私どもは今のところこのファッション・ビジネス大学院1校だけについて分野別の認証評価をお引受けしているわけでございますが,もし今後,全く別の分野の高等教育機関あるいは専門職大学院から要請があれば,認証評価をさせていただくことはやぶさかではございません。
  ただ,先ほど少し申し上げましたように,私どもの会員校と申しますか,受審大学は,圧倒的に4年制の大学が多くございますし,その4年制の大学の認証評価ということになりますと,今何人かの先生方から御指摘があったような評価基準の中でほぼその役割を果たし得るだろうと思っております。ですから,ほぼ役割を果たし得るというのは,具体的に言えば,機関別認証評価の中で私どもは期待されている評価を実施してまいりましたし,また今後もできるのではないかと。ただ,繰り返しますが,将来,分野別の評価が主流になるといいますか,それも非常に重要なことだということになりましたら,私どもはそれに対応することに全くやぶさかではございません。
【鈴木部会長】    勝委員,どうぞ。
【勝委員】    私も分野別評価について少しお伺いしたいのですが,先ほど頂いた資料で,大学評価・学位授与機構様の資料1-2の丸2の中で,その裏面に「関係団体の取組の発展も含めた,分野別評価の推進」というものが検討課題とされています。ただ,先ほど頂いた1-2の丸3では,分野別評価についてはすべてのプログラムで行うことは現実的ではない,と書かれているわけですけれども,分野別,例えば工学分野のJABEE等,あるいはビジネススクールのAMBAといった国際認証評価というのも多々ある中で,それらとこの認証評価機構の関わりの在り方について個人的な見解を申し上げますと,国際認証も含めて多元的に認証評価を行い,それぞれの分野の国際認証を受審することは,その大学の国際的評価にとって非常に重要なのではないかと思うことが1点です。
  それから,それとも関連するのですけれども,選択評価事項で研究活動とか,地域貢献とか,あるいは教育の国際化というのがあるわけですけれども,たまたまなのですが,我々も昨年度,UNESCO傘下のIAU(国際大学協会)のISASという大学の国際戦略についての認証といいますか,評価をしていただいたのですが,その経験から申し上げれば,かなり専門的な国際化の国際スタンダードを基盤に国際的な視野から,改善の勧告などをいただいたことは,我々にとっては非常に有益でした。先ほどの言葉を借りれば,内部質保証のためのインセンティブになったのではないかなと思うのですけれども,それらの分野別あるいはこのような多元的な戦略評価について,これから日本の評価機構においても広くやっていくということを意図されているのか,この辺を少しお伺いできればと思います。
【岡本大学評価・学位授与機構理事】    分野別プログラムで,資料1-2のところにも,全てのプログラムでプログラムごとに評価をするのは,何しろ700あるので,効率的ではないと書いていたところです。ただ,先ほどの質問にも関係するんですけれども,職業に非常に関係している,大学院が一番分かりやすいのですけれども,学部でもそのようなところがあるので,そのような部分は見ていかなければいけないということだと思います。
  それで,選択評価につきましては,今すぐどのようなところを増やすかということを考えているわけではないのですが,おっしゃるとおり,評価では,ものによっては外国とのやりとりとかというのがあって,もう一つは,我々から,教育の国際性というのはまさにそれなんですけれども,外国の大学との共同教育プログラムなどが立ち上がったときに,認証評価などをどのような基準で見ていくのかということが問題としては残っていると思います。我々が経験しているところでは,いわゆるキャンパスアジアのモニタリングで日中韓3か国で共通の基準を置いて見るといったことをやっているわけで,だんだんそのようなことが必要になってくるだろうと思っています。
  ついでにもう一言申し上げると,そうなると,今度は評価される側も,する側も,1か国ではないわけです。共同教育プログラムで,こっちの国とこっちの国。行くのもこっちの国とこっちの国。そういうものに対応できるようなシステムというのは,始めていますけれども,すぐに形になるかどうか分からないので,そのようなところはやっていきたいということで,御指摘,ありがとうございます。
【鈴木部会長】    そのほか,ございますでしょうか。多々御質問,それからお答えを頂いたかなと思っております。大学の質保証の充実に関して,これから第3期の評価サイクルに向けた認証評価機関の改善ということが控えているわけですが,これに関して御質問,それから御回答を頂いたということであります。
  相良副理事長,どうぞ。
【相良日本高等教育評価機構副理事長】    本日いろいろ御意見を承り,また我々の今後の活動に生かしていきたいと思いますが,一つお伝えしておきたいのは,私ども大学を評価する機関として,我々自身が自己点検をしなければならないなと。各大学に自己点検・評価をお願いする限り,私たちも自己点検をしなければならないということを肝に銘じているということをお伝えしたいと思います。それが一つと,余り話題にはならなかったんですが,私どもが第2サイクルで独自の基準を設けたということです。これは,率直に申し上げて,受審大学にどのような資料を出していいのか,よく分からないというような部分もまだあるようでございますが,私どもの機構の認証評価の今後にとって,大学独自の基準は非常に重要かつ有意義なものではないかと思っております。ここにこそ非常に多様な大学が自分の独自のものを堂々と示せる,そのような場ではないかなと思っております。すみません,少し付け加えさせていただきました。
【鈴木部会長】    野上機構長,どうぞ。
【野上大学評価・学位授与機構長】    ありがとうございます。私どもの機関は,来年4月,国立大学財務・経営センターとの統合ということで,日本名が大学改革支援・学位授与機構という形になるわけですけれども,私どもとしては,大学改革支援という具体的な業務内容を国際的にも十分認知していただくために,英文名をQuality Enhancement of Higher Educationという,要するに高等教育の質をどうやってエンハンスしていくかといったことに対して力を注(そそ)いでいきたいと思っております。欧州では高等教育の統合の動きがあり,日中韓では今キャンパスアジアで努力いたしておりますが,まさにボーダーレスの高等教育の質というのは,どの国にとっても死活問題ということでありますので,我々も認証評価機関として,全力を挙げてやっていきたいと思います。本日はありがとうございました。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  本日の意見交換も踏まえまして,制度の改善に向けた議論をしてまいりたいと思います。認証評価に関しましての議事は,本日は以上となります。
  本日お越しいただきました日本高等教育評価機構の相良副理事長,石井常務理事兼事務局長,それから大学評価・学位授与機構の野上機構長,岡本理事,本日はお忙しい中,ありがとうございました。御礼申し上げます。


(2)大学運営の一層の改善・充実のための方策について,事務局から資料2-1,資料2-2,資料2-3に基づき説明があり,その後意見交換が行われた。

【鈴木部会長】    それでは続きまして,大学運営の一層の改善・充実のための方策につきまして審議を進めてまいります。本件につきましては,前回の部会の後,大学分科会でも御意見を頂いております。つきましては,前回の当部会での御意見や大学分科会での御意見を踏まえまして,資料を御準備いただいております。
  それでは,事務局から説明をお願いいたします。
【遠藤大学振興課課長補佐】    大学振興課でございます。よろしくお願いいたします。
  7月8日に大学分科会が開催されまして,そこでの御指摘を様々頂きましたので,この点について触れさせていただいた上で,御審議いただきたいと考えてございます。
  まずは資料2-1を御覧ください。6ページの真ん中に緑色の字で記載させていただいてございます。特にこれまで御審議いただいておりました専門的職員の設置につきまして,大学分科会でも御指摘を頂いたところでございます。大学教育部会においては,専門的職員については,それぞれ大学に必置とはしないことが適当ではないかという御指摘や,各大学において独自にこの職務,資格・能力,処遇等について決定できるようにすべき,より大学の自律性・自主性を尊重したような制度とすべきという御意見があったのですけれども,一方,大学分科会では,専門的職員については,不安定な雇用状況にあるのではないか,これを改善し,その流動性を高めるために,職務,資格・能力,処遇等について,国が一定の基準を示すべきではないかという御指摘を頂いたところでございます。また,専門的職員を必置としないことは不適当ではないかといった御指摘も頂いたところでございます。このように,専門的職員については,非常に多様な意見を委員の皆様から頂いているところでございますので,今後しっかりと,私どもとして専門的職員に関する現状を把握するために,調査をしっかりと行っていきたいと考えてございます。是非,本日は,この後また詳細に説明させていただきますけれども,委員の皆様におかれましては,どのようなやり方が専門的職員についてより実態を把握できるとか,今後方向性を示す上でこのような点についても留意すべきだといった御指摘を頂ければと考えてございます。
  続きまして,9ページは,大学職員の資質向上について,ファカルティ・ディベロップメント(以下,「FD」という。)やスタッフ・ディベロップメント(以下,「SD」という。)についての御意見でございます。こちらも,大学分科会で御指摘を頂いた点については緑色の字で記載させていただいてございます。FDやSDについてということで,取組のPDCAがしっかりと機能するように,その評価を行うことも重要であるという御指摘を頂いたところでございます。
  12ページをお開けください。事務組織の見直しという点でございます。これまで事務組織については,その機能・役割について,非常に積極的な役割を実際に担っていただいているという御意見を頂いてございました。一方で,事務組織や事務職員については,学内で十分な活躍の場が与えられていないのではないか,また教員を一方的にサポートするような役割を強いられていることも多いのではないかという御意見を頂きました。今後の大学の機能の高度化のためには,教員と専門的職員,事務職員も含めて,互いに尊重しながら,責任を分かち合い,個性と能力を十分発揮することが必要であって,教職協働をしっかりと推進していくことが不可欠であるという点についても御指摘を頂いたところでございます。私どもといたしましては,大学分科会のこのような御意見をしっかりと受け止めさせていただきながら,今後の審議を深めていきたいと考えている次第でございます。
  以上が資料2-1についてでございます。
  続きまして,資料2-2で前回の大学教育部会でお答えできなかった点について補足をさせていただきます。7ページをお開きください。SDに参加した者の割合についてでございます。先日,このSDに参加した者の割合について,赤い四角の枠で囲まれている数字を足し合わせても合計が100%にいかないという御指摘を頂いたところでございます。こちらについて,資料の方で注記という形で,下にその理由について記載させていただきました。本グラフでは,回答した全ての大学(761校)に占める,SDを実施したと回答した大学の割合を明示してございまして,SDを実施していないと回答した大学の割合については掲載してございませんので,実施したと回答した大学のみの数字の割合をこちらの方に記載させていただいてございます。また,SDを実施しているがSDに参加した者の割合を把握していない大学についても掲載していないということがございましたので,このような数字の構成となっているというところでございます。
  また,この数字につきましては,国立大学,私立大学によって,非常に取組の状況に差があるのではないかという御指摘を頂いていたところでございますけれども,これについては,今回の調査ではその具体的な理由までは十分調査しきれていないものでございますので,まずは各大学からこのような御回答があったということで,現状を客観的にお示しさせていただいたという資料でございます。
  以上が先日の大学教育部会で御指摘いただいた点の補足ということになります。
  次の資料2-3は,本日特に御指摘を頂きたいと考えているものでございます。冒頭申し上げましたとおり,専門的職員に関しては,大学分科会・大学教育部会で非常に様々な御意見を頂いているところでございます。そのため,今後の検討に資するため,専門性が必要と考えられるような職務等に従事する大学職員の現状について,特に以下のような項目で調査を行ってはどうかということで提起させていただいているものでございます。大きく分けて3点ございます。一つ目が職務等,二つ目が資格,三つ目が処遇等ということで記載させていただいてございます。
  まず丸1の職務等ですけれども,専門的職員を議論する上で,専門性が必要で一定の業務経験,特定の資格・スキル等を有する者を配置することとしている職務等の有無,その具体的な内容について調査してはどうか。また,今後の大学運営において,特に必要性が高い,若しくは今後高まっていくと考えられるような職務はどういったものがあるのか。より必要性が高いような職務を専門的職員として位置付けて,しっかり処遇をしていくという方向性があるのではないかと考えてございます。
  その下に職務等の例ということで,大きく3点書かせていただいてございます。管理運営系,教育研究活動支援系,学生支援系ということで,このような職務等を考えてございます。それぞれ,例えば経営企画,IRerのようなものもあれば,教育研究で言えばリサーチ・アドミニストレーター(以下,「URA」という。)のようなものもございます。学生支援の観点ではスクール・カウンセラーなど,非常に様々な職種及び職務の中身がこの中に盛り込まれてございます。是非,委員の皆様におかれましては,このような職種の中で,よりこのような点は聞くべきであるとか,あとはこのような職務も考えられるのではないか,若しくはこのような留意点があるのではないかといった点を御指摘いただければと考えてございます。
  二つ目に資格というところでございます。このような職務等に従事する大学職員の採用・登用の要件としているような資格にはどのようなものがあるのかということを調査してはどうかと考えてございます。例といたしまして下に書かせていただいておりますけれども,一つ考え方としてあるのは,学位で学士プラス実務経験5年以上で,このような能力に語学力を満たすことが必要であって,同時に職務に応じて求められる,黒い丸四つで書かせていただいておりますけれども,例えば国家資格,弁護士,会計士などがあると思いますけれども,このような資格を必須とすべきではないかといった御意見を頂けると非常に有り難いと思ってございます。特に学位について,この専門的職員については,URAに代表されるように,もう学士のレベルではなくて,当然修士・博士,あと専門職の修士など,より高いレベルの学位を有している方がいいのではないかという御意見もあろうかと思いますので,あくまでもここに明示させていただいているのは例示でございますので,その点も御指摘を頂けると有り難いなと考えてございます。
  また,大学職員が現に有する資格とか,今後この職務等に対応して重要となると考えられる資格,例えば,当然法務や会計であれば,先ほど申し上げたような弁護士資格や会計士資格のようなものが重要ではないかと想定されますし,また経営企画においても,より大学経営にしっかりと着目して,その教育研究を受けてこられたような方の学位や能力のようなものが重要となってくるのではないかといった点が考えられるので,是非この点についても御指摘を頂きたいと考えてございます。
  丸3の処遇等でございますけれども,まずこの処遇等を考える上で,当然,その職務等に従事している大学職員の数を把握させていただいた上で,具体的な処遇の状況についても調査していってはどうかということで考えてございます。採用時,教員若しくは事務職員として採用された方で専門的職員となった方のキャリアパスをどのように明示されているのか,その状況はどうかということ,更に専門的職員に対する計画的な育成の方針がきちんと策定されているのかどうかということ,そのような観点から調査してはどうか。
  また,専門性の評価ということでございますけれども,まずその評価するための仕組みがきちんと整っているのかどうか。さらに,お給料が代表的なものですけれども,手当や俸給表の整備の状況,年俸制の状況等の処遇について整備がなされているかどうかという観点で調べてみてはどうか。
  また,このような専門的な職員について,職務に応じて裁量的な勤務を可能とするための具体的な取組として何か行っているようなものはあるかということをお調べしたらどうかということで,例示ということで示させていただきました。
  最後に,個別事例の収集ということで,特に国内中心になろうかと思いますけれども,特徴的な取組を行っているような大学については,しっかりとその事例を収集してはどうかということで御提案をさせていただいてございます。
  以上が簡単な説明でございます。是非,積極的に御意見,御指導いただければと考えてございます。以上でございます。
【鈴木部会長】    ただいまの事務局からの説明につきまして,御意見,御質問のある方は御発言をお願いいたします。
  どうぞ小林委員,お願いします。
【小林委員】    このアンケートのことなんですけれども,「採用時の所属(教員・事務職員)に応じたキャリアパス」と書かれておりますけれども,これをまず聞くということですよね。
【遠藤大学振興課課長補佐】    はい,こういった点で聞きたいと考えております。
【小林委員】    これがかなり重要でして,ここにある職種で言いますと,IRerとか情報系,あるいはFD,それから学生相談員とか,そのような職は教員で入っているという場合が多いんです。裁量労働にするかどうかということで議論があるということがその前に書かれておりましたけれども,教員の場合は裁量労働ですので,そのようなことはかなり重要な問題です。というのは,これはアメリカでも,IRerというのは教員なのか職員なのかというのは非常に重要な問題で,まだ決着がついていません。教えない教員というのがたくさん増えているという問題がありますので,そこの部分は丁寧に聞く必要があるのではないかと思います。私の方で一昨年,委託事業を受けまして,全国大学のIR調査をやっていまして,そこでかなりこのようなことを聞いていますので,参考にしていただければと思います。
【鈴木部会長】    前田委員,どうぞ。
【前田委員】    技術的な御質問なんですけれども,丸1の職務等のところにある職務は,かなり専門性が高い,割と限られてくるものと,教育のキャリアなどの,その大学での年数が物を言うものとが混じっているような気がするんです。それと丸2で聞くことの関連性ですね。一緒になって聞いてしまったら,どれとどれが関連するのかというのは大事なような気がしますので,そこのところが,どの職種だとどのような資格でどのような職でというのがある程度すみ分けができないと,調査しても少し分析がしにくいと思います。その辺をお考えいただきたいということです。
【遠藤大学振興課課長補佐】    前田委員御指摘のとおりかと考えてございます。ここに書かれている職種については,必要となると考えられる資格とか実務経験というのは非常に異なることになろうかと思いますので,実際に調査させていただくときは,おおむね,例えばURAならURAで,どのような学位で,どのような実務経験があってといったことをできるだけ整理させていただきながら,各大学に対してアンケートのような形で調査をさせていただきたいなと考えてございます。まだ詳細なところまで詰め切れてございませんので,いろいろ御指導を頂きながら詰めていきたいなと考えております。
【鈴木部会長】    濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】    私のバックグラウンドは教育社会学で,専門職の話は割と関心を持っていたテーマなんですけれども,まず今回の「専門的職員」という名称が,「高度専門職」からここまで,一応妥当な線まで戻していただいたなというところはあるんですけれども,社会における専門職の在り方と乖離(かいり)してしまうと,なかなか定着しないと思うんです。大学教育部会と大学分科会で大分認識のずれがあるようですけれども,資料2-1の6ページ目の大学分科会の御意見は,恐らくそこの部分のことを示しているのだろうと思うんです。
  考え方はいろいろあると思うんです。つまり,必置の職種として置くということであるならば,このような明確な基準が必要になってきます。そうでなくて,飽くまでオプションで各大学の意思に任すのならば,我々がこれまで議論してきたような形で,各大学はせいぜい手当を加算するといったやり方だと思うんです。もし大学分科会のような立場で考えるとするならば,私は,基本的に,社会の中で通用している用語で言うと,総合職と専門職と一般職のように,明確なトラック分けが整理されなければならないだろうと思います。そうすると,例えば経営企画などは,恐らく専門職ではないですよね。明らかに管理職志向で,総合職を経て管理職になっていくトラックの者が,便宜的に処遇改善と混同して専門職のトラックの中に入れると問題が煩雑になると考えますので,厳密にこの制度を考えていくのであるならば,専門職に極めて近い要件を満たしている者から始めていくべきだろうと思います。つまり,一挙にここにあるものを同じ土俵に乗せて議論するのは,極めて時期尚早ではないかと思うんです。
  そうしますと,育成システムと要件が明確であるものから始めるべきです。そうすると,例えば管理運営系で言えば,法務とか財務会計は,これは弁護士とか公認会計士とか,資格制度があります。更に言えば,文部科学省の所管で言えば,なかなか定着しないで困っている専門職大学院の制度と連動させることができるということです。そのような条件,育成の仕組みと資格が連動しているものから始めるのであるならば,国が一定の基準というものを示すことができますし,専門職大学院を出た者を逆に教育機関である大学がある程度付加価値の高い者に育て上げて,大学自身が付加価値があるものとして処遇ができる者を世に問うていくというのは,一つの方向性としてあり得るのではないでしょうか。そうすると,いろいろ挙がっていますけれども,かなり限定的なものと捉えていかなければいけません。せいぜい国家資格若しくは専門職大学院で育成が可能な者とするというのは一つの考え方ではないかと思います。
  そうしますと,資格などの要件がこんなに錯綜(さくそう)したことにはならないだろう。つまり,少なくとも修士レベル以上で,専門職の条件の中で,資格制度とか,体系的な育成制度ができていることとか,高度な専門知識という形になると,OJT型というよりは,大学院教育とリンクしなければスタンダード化はできないと考えますので,そのようなことを見た方がいいでしょう。調査の中では,このような資格型と申しますか,要するに育成制度や資格が明確なものと,むしろ,準専門職ではないんですけれども,形成途上の専門性の高いものについては,逆に今度は専門職大学院の中で育成する方向を考えていくべきでしょう。育成の方法を各大学に委ねながら資格制度を統一するとか,あるいは名称は同じでありながら中身が違うというのは,学位と同じ話でございまして,混乱の始まりだと思いますので,高等教育というシステムの中で,率先して模範を示していく。日本の社会は残念ながら資格よりも経験を重視します。資格が社会的通用性を持とうと思えば,そのような育成と処遇のシステムがリンクするような制度設計にしていく必要があるのではないかと思います。
【鈴木部会長】    いろいろ示唆を頂きまして,ありがとうございます。
  黒田副部会長,どうぞ。
【黒田副部会長】    この専門職というのは,非常に重要な役割を今後果たすと思うんです。日本の大学の中で,私立大学では専門職員を置いている多くの大学があるわけですが,専門職としての地位を確立していかないと,大学の中では機能しないと思います。これは,勤務形態も非常に難しい形態になってくると思うんです。先ほど裁量労働制という話がありましたが,裁量労働制をとるときには,本人が自主的に研究していなかったら,裁量労働制にならないんです。だから,この辺が文部科学省と厚生労働省の今後の交渉の場になってくると思うんですが,一番重要なのはURAの地位なんです。これは,アメリカの場合は完全裁量労働制で,同じなんですが,本人が自ら研究をやっていなくてもいいわけなんです。日本では,指導教授の下でお手伝いをしているような研究は駄目で,本人が自らの意思で研究をやるというのが今の厚生労働省の条件になっていますから,そのことをしっかりとわきまえた上で,このURAというのは早くやっていく必要があると思うんです。このURAをやらないから,日本の場合は研究のいろいろな不正が出てきているわけです。研究者独りにみんな任せて,資料を探すのから,論文を書くのからやっています。アメリカの場合は,URAが横にいてお手伝いをして,書こうとする論文のこのような文章はほかの論文にもう既にあるかないかということを全部チェックしてくれるわけです。そのような制度になっていますので,私は,今いろいろありますけれども,この中で一番重要なのがURAのことだろうと思うんです。
  管理運営に関することは,ここに書かれていることは,もう既に私立大学の経営者の中で全部やっていることなんです。この中でただ一つ今後必要なのは,IRerなんです。このIRerがしっかりしないと,大学経営というのはうまく機能してこない。ですから,IRerをどのような制度で持っていくのか。恐らくこれは事務職員としてしか採用できないと思うんですけれども,今はこのIRerの資格をどうするか。今から育てるところばかりなんです。ですから,先ほど専門職の話がありましたが,日本にあるアドミニストレーターを養成しているような大学,大学院,そのようなところでしっかりと教育してもらった者は,今後どのように採用して育てていくか。これは,今いる人たちをやっても余り意味がないと思うんです。
  それからもう一つ大事なのが,アドミッション・オフィサー。入試制度が今後大幅に変わっていきます。そのような中で,アドミッション・オフィサーというのが大学にとっては非常に重要な地位を占める。これは,若い人よりも,ある程度年期を積んで社会の経験を積んだ人を持ってきた方がいいと思うんですが,そのときにどのような資格を付与していくかということになってくると思うんです。
  もう一つ,学生支援の中で今一番重要なのが,カウンセラーの問題です。これは,学生のカウンセラーだけでなしに,教員のカウンセラーも今非常に重要なんです。それくらい先生方が悲鳴を上げています。そのような中でカウンセリングの仕事というのは非常に重要になってきますので,このようなことについては早急に手を打つ必要があると思います。ですから,一つ一つの職務と資格というのは,これはこうだと連動させていくのは難しいんですけれども,この職務をやるにはこのような資格が要るんだということを位置付けしていかないと,ばらばらに問うても難しいだろうと思います。
  処遇のことについては,今私立大学でやっているのは,教員で採用するか,事務職で採用するか,どっちかになっているわけです。教員で採用した場合には,自分の研究プラスの仕事ということになるわけです。だから,全く研究をやめてURAの仕事だけに就くとか,IRerになるとかということはあり得ません。これでは教員としての資格が今の段階ではなくなってしまうということですから,その取り合いをどうするか。どのような位置付けで採用して処遇するかということが問題になってくるのだろうと思いますので,その点を少し加味した上で,このアンケート調査をやるときには,うまく組み立てていただきたいと思います。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。いろいろアドバイスを頂きました。
  では,篠田委員,お願いいたします。
【篠田委員】    私の専門的な職員が必要だという理解は,例えば7ページのところで「専門的職員」の設置の冒頭に書いてある,つまり学長が適切なリーダーシップを発揮できるような運営体制を構築するということと,大学の教育研究機能の一層の高度化を図る,この両方の側面があると思うんです。だから,非常に狭い高度な専門職というのも非常に重要な役割を果たすと思いますけれども,その全体をコーディネートして,学長や理事長を支えて,きちんとそのようなことを実行していく,あるいは企画を取り上げて全体をまとめていくといった,先ほどの濱名委員の言葉で言えば,人としてはそれぞれ違うと思うんですけれども,総合職と専門職の両方の側面が要ると思うんです。それがなければ,学長が本当に正しい判断をして,それを執行していくということは,非常に難しいのではないかと思っております。そうしますと,かなり狭い専門職の場合には,各大学間の流動性ということも非常に必要だと思いますし,職務の明確化ということも必要だと思うんですけれども,一方で,理事長や学長を長期にわたって支えるような高度なアドミニストレーター,この場合にはスペシャリストというよりはゼネラリスト的な様相があって,高い経験を積んで,大学を動かす専門的な力を持っているといった人の場合には,流動性というよりもむしろ継続性とか固定性とか安定性の方を重視されるという形になりますので,全てがそのような形で流動性というふうにもいかない側面があるのではないかなと思うんです。
  したがって,今回のアンケート調査も,固有名詞を挙げた職務ということで具体的に聞いていらっしゃるんですけれども,これはもちろん大切な調査だと思うんですが,このようにまだ職務が確立していないところが多いと思うんです。実際にどうやってそのような職員が力を発揮しているかといったら,それは学長補佐をやったり,場合によっては学生部長とか就職部長などを職員に任せてやったりしているということで果たしていると思います。これは,まだそのような専門職がない段階で便宜上そのようなことで学内の役割とか権限をはっきりさせてやっていると思いますので,そのような意味では,このような職務で聞くという項目と同時に,例えば経営上のところで言うと,財務部長とか人事部長とか,そのようなポストを職員が担って,全体の経営についてサポートしているような役割を果たしている。あるいは,教学部門については,副学長とか学長補佐とか,最近は学部長補佐というのも職員がやっているというところが増えてきているようですけれども,そのようなポスト,あるいは学生部長とか就職部長とか,いろいろなポストで教学を運営して改革をする職務を担って職員が活躍しているといった実態も是非お聞きいただきたいと思います。それから,職員の場合には,チームとして役割を果たしていますので,企画部とかIR推進室とか教育開発室とか,多分そのような組織を作って,そこの責任者として職員が実際には学長を補佐し,それから教育研究を高度化する役割を果たしていますので,この辺の実態も併せてつかんでいただいた上で,どのような職務の在り方か,つまり大学を動かしていくための専門職,あるいはアドミニストレーターと言われる,あるいはアカデミック・アドミニストレーターと言われるような職務の範囲というのを是非御検討いただければ有り難いなと思います。
  以上です。
【鈴木部会長】    それでは,川嶋委員,お願いします。
【川嶋委員】    調査に関しては,濱名委員の指摘とも関連しますけれども,ここに書いてある丸1の職務というのは,基本的に大学としてどの大学もほとんど必要な,いわゆるファンクションですよね。ファンクションとポジションといいますか,職位というのは,それぞれ分けて考えないと,答えるのは難しいのではないかと思います。特に今,篠田委員からもお話がありましたけれども,このように狙い撃ちすると,それ以外のところが出てこない可能性があります。まさに大学を運営するために必要なファンクションと,そこにどのような人材を張り付けていくのか,どのような資格を持った人を張り付けていくのかというのは少し分けて考えないと,答える方はなかなか難しいのではないかという気がします。
  あと,名称ですけれども,「IRer」というのは,前にも言いましたけれども,これは和製英語で,「ナイター」みたいなものですので,やめた方がよろしいかと思います。
【小林委員】    それは違います。
【川嶋委員】    アメリカで通じますか。
【小林委員】    通じます。「IRer」は立派な英語です。
【川嶋委員】    それからあと「キャリア・コンサルタント」というのは,むしろ外の人なのではないですか。「キャリア・カウンセラー」ではないですか。その点は,調査されるときに,正確な用語を使っていただきたいということです。
  それで,最後に外国と書いてありますけれども,幾つかの分野ごととか,ジェネラルな専門職団体が既にそれぞれの職務のコアコンピテンスとかスペシャルなコンピテンスについて,自分たちの地位向上のために幾つか資格基準のようなものを作っていますので,そのようなものも御参考にされればいいのではないかなと思います。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  長谷山委員,どうぞ。
【長谷山委員】    調査をする場合に,雇用形態について,常勤・非常勤とか,専任・非専任,それから特に有期・無期のどれが望ましいと考えているかということを具体的な職種別に尋ねるということをしていただきたいんです。それは,例えばここにもありますが,多くの大学で,ICT関係,情報関係の専門員あるいは知的財産権に関する専門員,これは非常に特殊な能力を必要としますけれども,また技術なども非常に日進月歩ですので,例えばある方を専門で終身雇用のようにしますと,少しその技術も陳腐化していって,非常に困ってしまいます。また,専門性が高いだけに,ほかの職場に異動するということが難しいんです。しかし逆に有期ですと,そのような分野については,なかなかリクルートが難しいところもありますので,一つの考え方としては,中間法人を作って,そこに雇用して,幾つかの大学で雇用するということもあり得ると思うんです。ですので,調査をするときに,各大学がそのような非常に特殊な技能を必要とする専門職員について雇用形態をどのように考えていらっしゃるか,それを具体的に聞いていただければと思いますので,よろしくお願いいたします。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。非常にたくさんのアドバイス,御意見を頂きました。これは非常に重要ですので,まだ時間が足りないかもしれませんが,以上にさせていただきます。本日頂きました御意見を踏まえた形で,今後も引き続き御審議いただきたいと思っております。ありがとうございます。

(3)職業実践力育成プログラム認定制度の創設について,事務局から資料3に基づき説明があった。

【鈴木部会長】    続きまして,社会人等の学び直しの促進策につきまして,前回御報告させていただいておりますけれども,「職業実践力育成プログラム」認定制度の案につきまして,現在パブリックコメントを実施しております。当該状況につきまして事務局から説明をお願いいたします。
【北山専門教育課長】    専門教育課長の北山でございます。「職業実践力育成プログラム」認定制度について御紹介申し上げます。資料3を御覧ください。本件については,前回のこの会議において御報告させていただいておりますが,その後の検討の現状につき御報告申し上げます。
  本制度でございますけれども,大学等における社会人の学び直しの促進を目的として,学校教育法に基づく既存の制度である履修証明プログラムや大学等の正規課程のうち,特に社会人が職業に必要な能力を習得できる実践的・専門的なプログラムだということを文部科学大臣が認める場合に,その個別プログラムを認定して奨励するというものでございます。前回のこの会議で私より御報告した際に,履修証明あるいは正規課程と並立する第三の制度類型を作るような,やや誤解を招いてしまったかなという,そのような説明を差し上げたような気がしておりまして,申し訳ございませんでした。既存のものに冠を付けるというものになってまいります。
  次のページをごらんいただけますでしょうか。今後のスケジュールの見込みでございますが,現在,部会長から御紹介いただきましたように,パブリックコメントを実施しているところでございます。このパブリックコメントで頂いた御意見等を踏まえまして,7月下旬以降,告示の公布・施行を考えておりまして,8月から9月頃に大学に公募し,その後,有識者等による審査を経て,12月頃に「職業実践力育成プログラム」の認定を行いたいと思っております。各大学においては,来年度から認定されたプログラムを開始していただけるよう準備を進めていきたいと考えております。
  下の欄にございますけれども,この制度の創設につきましては,6月30日に閣議決定されました「日本再興戦略改定2015」の中でも明記されておりまして,また今後,厚生労働省において,専門実践教育訓練給付をはじめとした教育訓練給付による支援の拡充などを検討いただけることとなっております。
  説明については以上でございます。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。

(4)地方創生のための大都市圏への学生集中是正方策について,事務局から資料4に基づき説明があった。

【鈴木部会長】    それでは,本日最後でございますが,昨年の末に取りまとめられました「まち・ひと・しごと創生総合戦略」におきまして文部科学省の検討課題とされておりました定員超過是正への対応策として取りまとめられております。
  それでは,事務局から説明をお願いいたします。
【伊藤高等教育政策室長】    失礼いたします。簡単に資料4に基づきまして御報告申し上げます。
  ただいま部会長から御紹介いただきましたとおり,6月30日に発表いたしました「地方創生のための大都市圏への学生集中是正策方策について」でございます。基本的な考え方は,本来,学生定員に対する在籍学生数につきましては,過不足なく1.0にすることが原則でございますけれども,現状といたしましては,全国で4万5,000人の入学定員超過が生じているところでありまして,そのうち約8割が三大都市圏に集中しております。また,収容定員4,000人以上の大・中規模大学で見ますと,その9割が三大都市圏へ集中しておりまして,定員を超過しているというのが現状でございます。
  このため,昨年末の閣議決定の指摘を踏まえまして,文部科学省でこれまで対応策を検討してまいりました内容を対応策3点にまとめております。一つ目が,私学助成によるものでございます。そして,二つ目に大学等設置基準に係る対応措置,そして三つ目に国立大学に対する措置とございます。
  基本的に,これまでも入学定員充足率が一定の基準を超えた場合に,例えば私学助成,また国立大学等の運営費交付金と学生等教育費等経費に関しましては,それぞれ全額不交付又は国庫返納という形の基準を設定しておりますが,それを厳格化するとともに,大学設置基準に関しましても,現状より更に厳格化を段階的にしていくという対策に加えまして,この私学助成と国立大学に対する措置に関しましては,段階的な厳格化に加えまして,4年目の平成31年度からは,学生超過分につきまして,私学助成につきましても,例えば1.1,1.2という範囲内におきましても,超過した部分に関しましては,その超過分を減額したり,また国立大学の教育費相当額に関しましても,国庫返納をするといった措置を講ずるということを考えているところでございます。
  今後,これらの方針に基づきまして,詳細につきましては,今年度中に関係の要綱,また告示を改正しまして,来年度以降適用ということで進めてまいりたいと存じます。
  非常に簡単ではございますが,以上でございます。よろしくお願いします。
【鈴木部会長】    ありがとうございました。
  それでは,全ての案件がこれで終了いたしました。
  それでは,本日の議事はこれにて終了いたします。どうもありがとうございました。

――  了  ――


お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室