大学教育部会(第34回) 議事録

1.日時

平成27年4月21日(火曜日)16時~18時

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 部会長の選任等について
  2. 大学教育部会の運営について
  3. その他

4.出席者

委員

(部会長)鈴木典比古会長
(副部会長)黒田壽二副部会長
(委員)坂東眞理子,日比谷潤子の各委員
(臨時委員)安部恵美子,勝悦子,金子元久,川嶋太津夫,小畑秀文,小林雅之,篠田道夫,長谷山彰,濱名篤,前田早苗,美馬のゆりの各臨時委員

文部科学省

(事務局)吉田高等教育局長,藤原私学部長,徳久総括審議官,伊藤政策評価審議官,佐野高等教育審議官,義本高等教育局審議官,藤原大臣官房人事課長,森田高等教育企画課長,瀧本大臣官房付,塩見大学振興課長,北山専門教育課長,氷見谷私学部参事官,新田高等教育局主任大学改革官,山口高等教育局大学改革官,伊藤高等挙育政策室長,片柳高等教育政策室室長補佐,北岡大学振興課課長補佐,遠藤大学振興課課長補佐

5.議事録

(1)部会長の選任等について

 委員の互選により鈴木委員が部会長に選任された。

 副部会長については,鈴木部会長から黒田委員が指名された。

(2)大学教育部会の会議の公開について

 事務局から,大学教育部会の会議の公開について資料3の説明があり,原案のとおり決定された。

 また、公開に関する規則に基づき,この時点から会議が公開された。

(3)大学教育部会の開催にあたり,鈴木部会長から以下のとおり挨拶があった。

【鈴木部会長】  第8期の最初の大学教育部会の開催でございますので,開催に当たりまして,私から一言挨拶させていただきます。

 高等教育につきましては,これまでも大きな改革が進められておりますけれども,グローバル化や情報化の進展,少子高齢化等,社会の急激な変化の中で,知の創造と蓄積を担う大学には,次の時代を切り開く人材の育成あるいは学術研究の推進を図るなど,未来を形作り,社会をリードする役割を果たすことが求められております。

 私の大学を話すことで少し面はゆいのですけれども,例えば,今,私が学長として在籍しております国際教養大学では,グローバル社会の中で英語をはじめとする外国語の卓越したコミュニケーション能力と豊かな教養,グローバルな視野を伴った専門知識を身に着けた実践力のある人材の養成に努めておりますが,教育の質保証の充実の観点から,教育成果を中心とする評価に関して,海外大学機関からの協力を得て,ベンチマークを行うなど,国際的な基準に基づく教育の質保証ができるような取組を進めているところであります。

 前期から継続的に審議を進めてきた諸課題も含めまして,大学教育の質の向上に向けて,前期の経験やこれまでの大学運営への知識及び経験を生かして,本大学教育部会の運営に努めてまいりたいと思っております。つきましては,委員の皆様の積極的な審議への参画をお願いして,私の挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

(4)引き続き,吉田高等教育局長から以下のとおり挨拶があった。

【鈴木部会長】  続いて,文部科学省より御挨拶を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

【吉田高等教育局長】  文部科学省高等教育局長の吉田でございます。委員の皆様には,第8期中央教育審議会大学分科会大学教育部会の委員をお引き受けいただき,また,本日も大変お忙しい中お集まりいただきまして,ありがとうございます。

 大学教育部会では,大学教育の質保証の観点を中心にこれまで幅広く御議論いただいてまいりました。第7期の大学教育部会では,国際化に対応した大学・大学院入学資格の見直し,あるいは高等学校専攻科等からの大学への編入学について御議論いただきました。これは,昨年12月に中央教育審議会の答申という形で取りまとめられまして,現在,文部科学省では,本国会に学校教育法の一部改正案を提出するとともに,所要の準備を順次進めているところでございます。

 また,高大接続改革,あるいはガバナンス改革の議論において御指摘のありました論点につきまして,制度を具体化するため,熱心に御議論いただいているところでございます。

 後ほど担当の方から御説明申し上げますけれども,今期の大学教育部会では,アドミッション・ポリシーを含む三つのポリシーの一体的な策定,また認証評価制度の改善,スタッフ・ディベロップメント(以下,「SD」という。)の義務化や専門的職員の設置等,前期から継続して御議論いただいております様々な検討課題について引き続き御審議をお願いするとともに,折々の課題について御審議をお願いすることも出てこようかと思います。

 委員の皆様には,是非,忌憚(きたん)のない御意見を頂戴いたしまして,精力的な実りのある審議となるよう御協力をお願いいたしまして,私の挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【鈴木部会長】  ありがとうございました。

(5)第7期の大学教育部会の審議の経過報告と第8期の審議事項について,事務局から資料4-1から4-3に基づき説明があり,その後意見交換が行われた。

【鈴木部会長】  今期の本部会の検討を行うに際しまして,第7期の大学教育部会の審議状況も踏まえまして,第8期の審議事項の関係資料を用意していただいておりますので,まず,事務局から説明をお願いいたします。

【伊藤高等教育政策室長】  資料4-1から4-3までの3点に基づきまして,第7期の審議の経過報告と,そして第8期に審議をお願いしたい事項につきまして,御説明を申し上げます。

 まず,資料4-1の1ページにございますとおり,第7期に関しましては,第6期から引き続きまして,質保証の充実など,継続的な課題に当たって検討していただくとともに,2ぽつ目にございますように,平成24年の中央教育審議会「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて(答申)」や,また平成25年5月の教育再生実行会議の第三次提言などで示されました課題,特に大学のガバナンスの在り方やグローバル化への推進,また短期大学の機能別分化,このようなものにつきまして熱心に御審議いただいたところでございます。

 具体的にどのような観点の課題が挙げられていたかについて,資料4-3の教育再生実行会議では,特に大学教育に関しての提言としては第三次提言,そして高大接続等の第四次提言,また学制に関するものとして第五次提言というところが関連いたします。

 第三次提言に関しましては,2ページ目にございますとおり,グローバル化への対応ということで,スーパーグローバル大学などの提言とともに,5の項目にございますような大学のガバナンス改革,学長・大学本部の独自予算の確保,リーダーシップが取れる体制,教授会の役割の明確化などのガバナンスの改革というところが指摘されたところでございます。

 また,3ページの第四次提言でございますが,高大接続の在り方については,1番目,高等学校教育の質の向上と,大学の人材育成機能の強化とともに,それをつなぐものとしての大学入学者選抜の転換ということで,大学教育に必要な能力判定のための新たな試験の導入など,指摘がされたところでございます。

 また,第五次提言では,今後の学制等の在り方についてということで,子供の発達に応じた様々な挑戦を可能にする制度の柔軟化など,新しい時代にふさわしい学制を構築するという観点で,特に高等教育に関連しましては,(3)にございますように,実践的な職業教育を行う高等教育機関の制度化,また高等教育機関における編入学等の柔軟化を図るということが提言されたところでございます。

 そのような提言等を受けまして,御審議いただいてきたわけですが,大学教育の関係では総会直属の高大接続特別部会での審議とともに,第7期の大学分科会におきましては,大学・大学院入学資格の見直し,編入学の柔軟化ということで集中的に御審議いただいたところでございます。

 具体的な内容といたしましては,高大接続に関してはイメージ図で整理しておりますので,15ページを御覧いただければと思います。

 それぞれ幼・小・中・高といった教育の積み重ねの上に,まず高等学校の教育の質の確保,生徒の学習の改善という観点で,高等学校基礎学力テスト(仮称)の導入という観点とともに,大学の入学希望者に関しての学力の評価ということで,大学入学希望者学力評価テスト(仮称)の導入ということがうたわれたわけです。

 また,あわせて,大学に入学した後も,アドミッション・ポリシーに基づいた多元的な評価を重視した個別の選抜に基づいて入学した学生を,初年次教育を通じてしっかり育成していくということで,この大学教育の質的転換も併せて断行していくことが必要という内容の答申でございます。

 このような答申を踏まえまして,17ページになりますが,文部科学省としましても高大接続改革実行プランということで,この改革を実行していく工程表を整理しているわけですが,この中でも特にということで,この本部会に関連するものとして御紹介申し上げますと,一番下の4,大学教育の改革というところでございます。ここにございますとおり,大学教育の質的転換ということで,各大学におきまして全学的な教学マネジメントの下で,双方向の授業や主体的な学習の転換が促進されるための法令改正等を実施ということ,また学生の学修成果の把握,評価の推進,こちらについても27年度中をめどに制度改正,また大学への編入学等の推進ということで,中央教育審議会における審議結果を踏まえて,必要な制度改正ということが工程表には整理されているところでございます。

 こうした審議とは別に,第7期の大学分科会におきまして審議を取りまとめていただいたものといたしまして,必要な設置基準の改正などもさせていただきました。資料4-1の2ページに戻っていただければと思います。

 大学設置基準等の改正に関し,具体的な結論を得たものにつきましては,大学を取り巻く状況を速やかに対応するため,以下のとおり随時答申を行っていただきました。内容といたしましては,国際化への対応ということで,国際連携教育課程制度(ジョイント・ディグリー)の創設であるとか,学際領域の扱いの見直しや保健衛生学関係分野の見直し等,質保証のための届出設置制度の改善といったところも併せてしていただいたところでございます。また,ガバナンスの改革ということで,必要な所要の制度改正を実施してきました。

 引き続きの検討事項といたしまして,高大接続の在り方等に関する答申を踏まえた必要な大学教育の改革というところが課題になっているところでございます。

 次に,個別の審議事項の経過につきまして御説明申し上げたいと思います。資料4-1の2ページ目の2の柱を御覧いただければと思います。大学教育部会に関連の深いものを特に御説明申し上げたいと思います。

 (1)にございますとおり,まず1点目,個別の審議事項としまして,大学教育の質保証の充実ということで,精力的に御審議いただきました。質保証の在り方に関して,特に1番目の丸にございますとおり,認証評価制度,大学設置基準,届出設置制度の改善について御審議いただいたところでございます。

 特に認証評価制度に関しましては,次の認証評価のサイクルが平成30年から始まるということで,それに向けて評価制度全体の在り方について論点の抽出をしていただきました。具体的には,6ページの次の参考資料1を御覧いただければと思います。

 検討の背景ということで,この参考資料1の1ぽつの3番目のパラグラフにございますように,現在の認証評価制度に関しましては,法令適合性等,外形的な評価に基づく最低限の質の確認にとどまっており,評価を通じた質の向上の促進という観点で課題があるという指摘もあるということや,また次のパラグラフの後段にございますとおり,新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた教育の改革という観点から,本答申を踏まえた大学教育改革や大学入学者選抜改革を促進するための認証評価制度の在り方の検討が必要である。

 また,その次のパラグラフにございますとおり,現在,各認証評価機関の努力ということもあり,学習成果や内部質保証を重視した評価の取組や大学が特に重視する教育研究活動を評価する取組も育ってきており,こうしたことも踏まえて,今後,認証評価の第3サイクル,平成30年度から始まるサイクルに向けての在り方の見直しというところが,全体の検討の背景でございます。

 次に,抽出していただきました論点は6つでございます。まず1点目の課題といたしましては,高大接続改革,これを踏まえた認証評価の在り方についてということです。その項目の検討課題の一番上の丸にございますとおり,各大学の教育の質的転換や入学者選抜の取組を適切に評価して,更にそれを充実につなげるための評価の在り方ということは,どのような形であるべきか。また,学習成果や内部質保証を重視した評価への発展・移行という観点でございます。

 次に,特定の教育研究課題に重点を置いた評価や,共通の評価項目の扱いなど,評価にめり張りを付けていくことで,評価の簡素化とともに大学の個性化,多様化にも対応していく評価の在り方という観点,このような点が御指摘いただいた課題でございます。

 2点目といたしましては,評価結果を活用した取組の推進でございます。検討課題としては,法令上の位置付けも含めての評価基準等への適合・不適合の判定の仕組みの整備ということや,また,評価結果のフォローアップの仕組み,またそれをどう活用していくか,また,次期評価にどう活用していくかというところも課題でございます。

 次に,3点目の指摘といたしまして,認証評価機関それ自体の評価の質の向上というところでございます。検討課題にございますように,評価機関そのものに対する評価の在り方であるとか,また複数の機関が連携した評価の在り方ということ,このようなものも御指摘いただいているところでございます。

 4点目といたしまして,社会との関係の強化という点でございます。検討課題の中にもございますステークホルダーの視点を取り入れた評価の在り方というところも御指摘いただいているところでございます。

 また5点目,評価人材の育成ということで,今後の評価人材の育成,専門的な知見の継承ということも検討課題でいただいておりますし,6点目で評価の効率化について,既存の公表資料など,ポートレートのデータの活用,他の評価制度との連動した評価業務の効率化なども課題として頂戴しているところでございます。

 以上,前期におまとめいただいた認証評価の課題は,資料4-1の3ページにございますが,更に第8期に検討すべき課題になっているところでございます。

 また,この認証評価以外で申し上げますと,2ページ目の一番下の丸にございます届出設置制度という観点で,これは大学設置基準に基づいた認可と届出という観点でございますが,第7期におきましては,届出設置制度の本来の趣旨を逸脱した組織改編の事例等,もともとの届出制度の趣旨の維持と,また質保証のための届出設置制度の改善ということで,必要な制度改正の答申を頂いたところでございます。

 こういった観点も踏まえまして,更に検討すべき課題でございますが,3ページ目の3番目の丸にございますけれども,事前規制であります設置基準の明確化と,その基準に基づいて行われる設置認可制度の在り方,事後チェックである認証評価制度の在り方について,相互の連携,また関係の整理も含めまして,全体的な質保証システムの改善充実を図るための検討も,この第8期の課題として頂いております。

 以上が,大学教育の質保証関係の部分でございます。

 次に,大学のガバナンスの在り方というところで,前期の審議状況を御報告申し上げたいと思います。3ページ目の(2)にございますとおり,第7期の審議におきましては,御審議の結果,特に教授会の役割,副学長の職務の見直しなどの法律改正をさせていただいたところでございます。

 引き続きの課題ということでは,4ページ目の,第7期の審議で提言されました職員の資質向上(SD)の観点,また高度専門職の設置など,そして高大接続の在り方に関する答申で提言されました大学全体としての方針,アドミッション・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,ディプロマ・ポリシーという,三つのポリシーの一体的な策定についての大学設置基準の改正に向けた検討というのが,課題でございます。

 以上が,本部会に関連します第7期の審議状況と,そして今期につながる更に検討すべき課題についてでございます。

 そのほか,大学分科会に関しましては,(3)にございますような大学のグローバル化の推進や,(4)にございます短期大学教育の在り方,5ページ目にございます(5)の大学院教育の在り方ということで,平成28年度から始まります第3次大学院教育振興施策に向けてということで,御審議いただいております。

 また,(6)の項目にございます法科大学院教育の改善なども,他の部会において御審議いただいてきたところでございます。

 簡単でございますが,第7期の審議状況については以上でございます。

 そして,第8期に向けてということで,今,申し上げました更に検討すべき事項を取りまとめましたのが,資料の4-2になります。資料4-2の,特に1番目の柱にございます大学教育の在り方について,3つの具体的な審議項目例として,大学教育の質的転換,認証評価制度の改善なども踏まえた大学教育の質保証の充実,そして3点目,SDや,高度専門職の設置など,このようなことも含めた大学の学長補佐体制の強化について,この三つの項目について特に御審議いただければと思います。

 簡単ではございますが,第7期の審議状況,そして第8期の審議項目について御説明申し上げました。御審議のほど,どうぞよろしくお願いします。

【鈴木部会長】  ただいま事務局から説明がありましたとおり,当面は大学教育の質保証を中心に審議を行ってまいりたいと思います。

 それで,本日は今期の第1回でありますので,この後の時間を用いまして,委員の先生方から課題や必要な取組などについて御意見を頂きたいと思います。どうぞ御意見のある方は御発言をお願いいたします。それでは,坂東委員からお願いいたします。

【坂東委員】  認証評価による大学の質保証というのは,今,第2サイクルが始まったところで,まだまだ検証の途上である,十分に確立していないということを考慮した上で,余りにも外形的な設備ですとか教員の数だとか,そのような根拠資料をチェックすることに大変注力されていて,ここで言われているような質保証ということについて,まだ本当に十分な機能を発揮していないなと思います。

 日本のいろいろな評価というのは,この大学認証評価のみならず,インプットがどこであるかということばかりチェックして,その結果どういう学生を育てているのか,何ができるようになったのかという一番大事な部分についての評価が確立していないということに対して,もどかしいなと思っております。

 例えば,本当に学力を付けるためには,リーディング・アサインメントをやって,レポートを何度も提出させてというような,非常に労力の掛かることを積み上げていかなければいけないんですけれども,そのようなことをチェックするということもなかなか難しいですが,それよりも結果がどうであったかというのが一番なのではないかと思います。

 そうとなると,大学卒業資格試験ではないですけれども,そこをきちんとやっていく。あるいは進級させるときにも,2年から3年のときは私どもでもやっておりますけれども,例えば,留年は私立大学の場合ですとむしろマイナスにカウントされるような状況もあって,十分な学力を身に着けていない学生を進学させる,卒業させるというようなことが十分にチェックできていないのではないか,というようなおそれも感じております。

 文章の作業量は外形的なインプットを正確に記述することに大変な労力を費やしているわけですけれども,どんどんそちらの方ばかりが細微になっていくことについて,問題意識を持っております。

【鈴木部会長】  インプットとアウトプットで,インプットの方に注意が注(そそ)がれ過ぎているのではないかという御意見を頂いたかと思います。

金子委員,どうぞ。

【金子委員】   今のこの大学分科会第8期のアジェンダについて,文部科学省に伺いたいと思うのですけれども,非常に大きな問題は,実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する審議が今,始まっています。私はこれに関する有識者会議に前期に出ておりました。そこでは大学の代表も出ておりましたけれども,むしろ職業教育の専門家の方が基本的には数が多かったかと思います。

 そこで様々な意味で職業教育の必要性,特にそれがいわゆる高等教育システムに入ることが重要であるということが強調されました。報告書も,ある程度そのような方向での報告書が出され,今期の中央教育審議会では,これは大学だけに関わることではないので,大学分科会とは別に検討の機会が作られると聞いています。

 それはそれで,そのような体制をされることは結構だと思います。ただ,私はその議論に参加して非常に強く感じたのですが,これは同時に,大学教育の中身の問題でもありまして,例えば今まで,大学教育では職業教育を行っていなかったのかといえば,私はそのようなことは全くないだろうと思います。

 では,大学教育で行っている職業教育が足りないのか,どこが足りないのかという議論は,先ほどの有識者会議ではほとんどなされませんでした。それがなく,今度,新しい会議で,新しい職業教育機関を対象としてのみの議論を行うところで,新しい職業機関の可否を決めていく,あるいは内容を決めていくということになるのがよろしいのかどうか。これは内容のいかんに関わるというより,検討体制としてこれがよろしいのかどうかということに私は疑問を感じるところがあります。

 これは,大学分科会の中でもその報告がなされ,また議論がされることだとは当然思いますけれども,特に大学教育部会に関しては,この問題に関して独自の議論がなされていいのではないかと思います。

 特に,この有識者会議で出されていましたのは,現在の大学卒業者に必要とされているものをよく考えると,既存の大学の教育というのは2割くらいか1割くらいでいいのだという議論もかなり公然と出ておりまして,そのことの正否は別としまして,これは大学の在り方そのものに対する非常に大きな疑問だろうと思うのですね。それはやはり大学分科会でかなり議論しておく必要があるのではないかと思います。

 また,特に,大学の議論の中では,大学設置基準の中では十分に職業教育ができないというような意見も出されていまして,私はそれはかなり誤解ではないかと思うのですけれども,そこのところはそのままで過ごしていくわけにいかない。私はむしろ大学教育部会で議論すべきことではないかと思います。

 その他,幾つかの点で感じましたが,新しい特別の部会ができるにしても,私は,大学教育部会でこれに関する議論がきちんと,1回あるいは何回か行われることが重要ではないかと思います。特に,職業教育,高等教育機関については比較的早く議論を進めるようなことを聞いておりますけれども,そういった点から言えば,大学教育部会でも一応の議論をするべきではないかと思います。

【鈴木部会長】  大学教育部会でも独自の議論をすべきという御意見でございますが,文部科学省の方で何かお考えを頂けますか。

【伊藤高等教育政策室長】  現状におきます審議の立て方ということで,事務局の考え方を御説明申し上げたいと思います。

 まず,金子委員から御指摘ございましたとおり,実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に向けての検討に関しましては,中央教育審議会総会に直属で設置される部会におきまして審議がされるという審議体制を取っております。現在,委員の人選中でございますが,大学関係者や産業界の方,その他の高等教育機関の方々など,様々な方々に御参画いただきながら御審議いただくということで予定をしております。

 有識者会議での審議まとめでは,大学体系の中に位置付ける方向を基本として検討を行うべきという提言を頂いておりますので,その観点で,大学体系に位置付けるためには何が必要なのかということを特別部会の中でも御審議いただくということを考えているところでございます。

 もう1点,金子委員から御指摘がございました,大学体系に位置付けるといったときに,既存の大学などの制度と大学の現状も照らしながら検討すべきであり,その観点から大学教育部会でも審議すべきということの御指摘でございますが,一義的には,特別部会で制度設計の議論を重点的に行っていただきますけれども,その審議の状況は,この大学分科会にも御報告また御意見を頂戴するということで,接続をもって審議を進めていきたいと思っております。

 具体的にどのような形で,例えば大学分科会下のこの部会で御報告申し上げ,御意見を賜る形にするかは,部会長とも御相談しながら審議の進め方を事務局としても考えていきたいと思っております。

【鈴木部会長】  金子委員,どうぞ。

【金子委員】  私はそれで結構だと思うのですけれども,あえてここで強調したいと思いますのは,新しい職業高等教育機関の議論の中で様々な論点がありましたが,既存の大学教育はきちんと職業教育をやっていないではないかということがかなり言われました。

 これは,新しい機関を作る前に,大学自体の問題だと私は思います。したがって,私は,たまに大学教育部会に連絡が来るというよりは,むしろこの大学教育部会できちんと検討するべき問題であろうと思います。

【鈴木部会長】  それでは,金子委員からそのような御意見がおありだということ,この新しくできる特別部会の中でももちろん議論はされるわけですけれども,今,事務局から説明がありましたように,また金子委員からも,なるべくこの大学教育部会で早い機会にということがありましたが,そのような機会が設けられて,大学教育部会としても議論を進めていくということでよろしゅうございますか。はい。そのようにさせていただきます。

濱名委員,どうぞ。

【濱名委員】  金子委員の御発言との関わりで更にお伺いをしたいのですけれども,実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の在り方についての審議まとめを見ると,多様化という言葉が出てくるんですが,質保証という言葉は,見たところ目に付かないのですね。多様化と質保証というのは,高等教育も大学教育もほぼ共通して,第7期の審議というのはこの2つのバランスをどのように取るのかという議論だったと思うのです。なおかつ先ほどの資料を拝見していると,学位についてはこれから審議するとあるのですが,学士,短期大学士相当の学位を授与と書いてあります。

【鈴木部会長】  濱名委員,今の資料はどこですか。

【濱名委員】  資料4-3に実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の在り方について(審議のまとめ)の概要がございますが,その中で1枚目を見ると,新たな高等教育機関を創設し,高等教育を多様化という言葉が出てきます。私もざっと見ていたところ,学校教育体系云々(うんぬん)の話は出てくるのですが,質の保証システムとして出てくるのは,どのように認可するかから突然スタートするのですけれども,多様化と質保証の1つ手前の段階で,「学士,短期大学士相当の学位を授与」という学位の話が出てくるのです。では,学士あるいは短期大学士相当であるかどうかというのは,どこでどのように判断するのかということがよく分からないのです。

 先ほどの資料4-1などで拝見をしても,我々はこれから大学教育の質保証の充実を議論していく。ということは,現状よりも更に質保証を強化するという審議をしていく最中で,それと同等の学位を与えるという議論が別の部会でなされるということであるとすれば,大学教育部会では前へ進んでいかなければいけないのに,後ろから追っ掛けてこられるところについてはどこがどのように判断するのでしょうか。

 高等教育と大学教育をうまく使い分けておられるように思うのですけれども,大学教育は現状で更に問題があって改善するということであるならば,この議論が学士相当の学位という話が,別の部会で進んでいくとすると,当然のことながら,学士・短期大学士相当であるかどうかについて報告をしていただくだけでは不十分なのではないかと私は思います。

 高大接続のときもそうでしたけれども,合同部会を開くなりして,意見交換,要するにチューニングをしていかなければいけない。さらに,そのチューニングを大学教育の質保証の改善をしている部会等できちんと向上していかなければ後追いの課題を増やすことになっていく。そのような意味では,報告ではなくて,きちんとチューニングをする場を作っていかなければならないのではないでしょうか。我々は学位の質向上をする部会であるわけですから,そことのチューニングが直接的になされなければ,新しい教育機関の質保証も保証されないのではないかと思います。

 これから審議されるのでしょうが,残念ながら,現段階でここに書かれているのはほとんど手続論なのですね。私が一番危惧しておりますのは,「相当の学位」というような取扱いについて,大学教育の質を上げる議論をしているにもかかわらず,「相当」と称して違う尺度の観点のものが作られていくという形になりますと,国際的通用性という観点から見たときに,妥当なのかどうかということです。

 総論レベルでは大学体系に位置付けるのが世界の主流であると書かれているのですが,そのあたりについては十分な議論がなされるようにしてほしいと思います。我々としても「相当」と言われるとすると,大学教育の質保証することで,社会から信頼される仕組みを作っていくということを考えたときには,そうした手順が必要になるのではないかと思うのですね。

 ちなみに,裏表紙から開いていただいたページの,3ぽつの制度化に当たっての個別的主要論点で出てくる新しい教育機関についての教育内容,方法のところを拝見すると,大学教育にすっかり置き替えたとしても何ら違和感のない内容だと思うのです。短期大学に置き替えたとしても。やろうとしているものがインターンシップであろうが,PBLであろうが,実習であるとか,産業界の参画であるとか。

 ですから混乱しないように,包括的な議論として,高等教育と大学教育というので使い分けられているところのチューニングをきちんとしていただく必要があるのではないかと思います。「相当」というものの判断基準,あるいはレベル設定をどのような手続で進めていかれるのかということは,多様化と質保証の両立ということを第7期以来行ってきた我々とすれば非常に気になるところでございます。是非,全体の審議の進め方の中で,チューニングを何度か重ねていただく必要があるのではないかということを申し上げたいと思います。

【吉田高等教育局長】  今の濱名委員の御発言,しっかりと受け止めたいと思います。中央教育審議会への諮問が4月14日に行われました。今,それを審議するための特別部会の構成等について進めている最中でございます。

 濱名委員がおっしゃいますように,この大学教育部会で議論されます事柄と,それから新たな高等教育機関の議論と,確かにクロスする部分というのは多々あろうかと思います。したがって,チューニングというふうにおっしゃいましたけれども,その機会については適切に設けたいと思いますので,そのあたりは部会長とも御相談しながら進めたいと思います。

【鈴木部会長】  小林委員,どうぞ。

【小林委員】  今の点につきまして,少し意見が重なってしまうのですけれど,私も是非強調したいと思っていましたので,その点についてまず意見を述べたいと思います。それから別の観点で,相互に関連する3つの点について,事務局への質問も含めて,意見を述べたいと思います。

 初めに,実践的な職業高等教育機関の話なのですが,これは今,金子委員,濱名委員のおっしゃったとおりだと思います。短期大学については中央教育審議会の短期大学ワーキンググループで議論したわけですが,そのときにも私は,短期高等教育全体をどのように構想するかということを考えないで,短期大学のことだけ考えても仕方がないということを申し上げました。今回も,いわば非常に閉じた中で短期高等教育の1つを考えているということは非常に大きな問題だろうと思います。

 短期大学,高等専門学校,専門学校,それから新たな高等教育機関ということで,4類型になるわけですから,そこをどうするかということはもう少しきちんと議論しなければいけない。それを1つの部会の中だけで作るということは審議のやり方として非常に疑問を感じますので,それは是非考えていただきたいと思います。

 それとは別に,これは事務局への質問になるかもしれませんが,私の理解では,平成24年の中央教育審議会の質的転換の答申以降,着々と積み残し課題が審議されていったと思うのですが,一つ十分に審議されていないのは,大学の財務基盤の強化という問題です。これはガバナンスのところでも議論するということがありましたが,実際には余り議論されていないのです。

 資料4-3の3枚目にありますが,教育再生実行会議第三次提言についても,大学のガバナンス改革,財政基盤の確立による経営基盤を強化するということがうたわれているわけですが,財政基盤の確立については,ほとんど今まで,私の知る限り中央教育審議会では十分議論されていないのではないかと思っております。

 教育再生実行会議の第3分科会で,現在,教育財源の議論はしていますが,これは大学だけではなくて,教育財源全体をどうするかということを検討しておりますので,もう少しきめの細かな議論をする必要があるのではないかと思っております。

 逆に,第3期国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会では国立大学のことしか議論しておらず,公立大学や私立大学あるいはその他の高等教育機関については,財務問題をどうするかということは十分議論されておりません。また,授業料や寄付など,その他の財源についてもいろいろ議論はされているのですけれども,運営費交付金が中心ですので,どうしても主要な議論としてはなされていないために,財務基盤の問題は議論する必要があるのではないかということが私の意見です。

 これは評価の問題とも関わるわけでありまして,国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会では,評価に基づく配分ということが言われております。そうしますと,評価の問題と資源配分の問題が関わってまいりますので,その点からも重要だろうと考えております。

 それから3点目ですけれども,学長補佐体制についてはいわゆるSDだけではなくて,インスティテューショナル・リサーチ(以下,「IR」という。)という観点が非常に重要だと思っております。これも国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会の中では度々出てきますが,中央教育審議会ではたしか2008年の学士課程答申で出てきたと思うのですけれども,それ以降は余りこの議論はされていないかと思いますので,IRについても議論する必要があるのではないかと思っております。

【鈴木部会長】  本日は第1回で,なるべく多くの委員の先生方に御発言いただきたいので,今の小林委員の御意見を承ったということにさせていただいて,他の委員からも御意見をお聞きしたいと思います。小畑委員,お願いします。

【小畑委員】  先ほどの専門大学に関わる御意見,それに関して私の立場から一言申し上げたいのですが,私は国立高等専門学校機構にいるものですから,今回の職業大学は,専門学校と大学とのある意味では中間に位置する教育機関ということで,今回の専門学校の高度化には非常に強い関心を持っていました。

 産業界から,大学は職業教育をやっていないという,この職業教育の定義そのものが,それぞれの立場でみんな捉え方が違うということで,仮に専門学校でやっているような教育を職業教育だ,としたときに,それと同じことを大学がやったら,日本は潰れるだろうと私は思います。これは職業教育の捉え方の問題であって,産業界からの強い不満というのは,やはり大学生が勉強せずに遊んで卒業できる,という今の体制が一番よくないのだろうと私は思うのですよね。

 その意味で,資料4-2にある具体的な審議項目例に書いてある例が着実に実行されれば,産業界からの不満はゼロになるかどうかは分かりませんが,多分,大幅に減ずるだろうと思います。ただ,これ一つ一つ取っても,実のある形で実行される体制を作るのは相当大変なことだろうなと思います。

 例えばアドミッション・ポリシーをそれぞれの大学が現時点で持っていますけれども,大学入試に関連付けて見直すということがあっても,三つの要素を評価する入学試験,「あんなのできっこないよ」と言う大学教職員を私はたくさん知っております。その声が大きくなって外に出ていない。そちらの方が多分,人数からすると相当数多いだろうと思います。これをあの答申のとおりにやれるかどうかということが1つ。

 それから,ファカルティ・ディベロップメント(以下,「FD」という。)に関しましても,大学では,教育方法を何も教わることもなしに,トレーニングを受けずに教員になれるわけです。通常,古いタイプの大学教授の平均的な像というのは,自分の話したいことだけ一方的にしゃべって,試験を行って終わりです。これが通用しない時代になってきましたけれども,まだまだ,例えばアクティブ・ラーニングが重要で,教育効果が高いといっても,アクティブ・ラーニングというものは相当訓練を積まないと,実際には実効のあるアクティブ・ラーニングを誰でもできるというものではないのですね。このようなものをどのようにやるのか,実行できるような体制を作るのか。

 非常にこれは重い課題ばかりで,余り専門学校の高度化には影響されずに,本当に大学はどうあるべきかという観点から,ここにあるような質的転換ができるだけ図られる方策という議論をこの場でするのが一番いいと思っています。

【鈴木部会長】  先ほど坂東委員の方からもアウトカムということが出てきましたけれども,それと共通するところがあるかなというふうに拝聴いたしました。

 川嶋委員,お願います。

【川嶋委員】  言いたいことはたくさんあるのですけれども,これまでの御発言に関連したところに限定してお話しします。

 一つは,先ほどの実践的教育に特化した新しい高等教育機関の議論にも関連するのですけれども,2008年の学士課程答申では,多様性と共通性,標準性というような議論の中で,多様性ばかり進めるのではなくて,国全体としては一定の学士課程教育の共通性を示すべきだということで,学士力が提案されたわけです。

 学士力とネーミングされた方も,本日,御出席の中におられるようですけれども,学士力というのはどのようなアウトカムを共通に育成するべきかということを議論し,まとめただけであって,それぞれのアウトカムをどこまで学士課程の4年間で育成すれば本当に国際的通用性のある学士と言えるのかどうかという,いわゆる達成水準については全く議論してこなかったと思います。

 800近くある大学,あるいは短期大学も含めれば1,000近くある大学・短期大学の中で,一定の達成水準を決めていくというのはなかなか困難でありますけれども,我が国の高等教育の国際的通用性という観点からいけば,やはりある程度一定の水準を我が国の大学が育成しているということを対外的に示さないと,学生の流動性をグローバル化の中で進めていくときに,海外の高等教育機関や我が国の産業界も含めて,なかなか納得してもらえないということがあろうと思います。例えば,既に御承知のように,ヨーロッパでは高等教育資格枠組み等があって,学士というのはここまで,マスターはここまで,ドクターはここまでできるということを示しているわけです。実際には,個々の大学がそこまで本当に達しているかどうかは検証の課題ですけれども。

 それから,アメリカでもDQPという,アソシエートとバチュラーとマスターについて共通の達成水準を大学のサークルの中で決めていくということを既にやっています。ですから,日本も今後そのような達成レベルをある程度指針として示す作業が大学教育部会で必要だろうと思います。

 先ほど濱名委員がおっしゃっていた「相当」というのは,私の推測するところ,今は,2年だったら短期大学士相当,4年の教育課程であれば学士相当という教育年数だけでの議論になりがちですけれども,もし高等教育を複線化するのであれば,共通の翻訳可能な枠組みとして達成水準を示さないと,「相当」とは言えないと思います。

 それから,2点目は,認証評価について,これは既に議論されて,リスクベースで非常に優れた大学に対しては今の7年からもう少し延ばすとか,設置したばかりであったり,あるいは課題があるところはもう少し期間を短くして,常にモニタリングしていくということが必要だろうと思いますが,一方で,設置されたばかりの大学のアフターケアという取組もあるわけで,ここのまとめのペーパーにもありますけれども,リスクベースにしたときに,ほかの質保証の取組と認証評価の仕組みをどう調整していくかというのが一つの課題だろうと思います。

 それから最後に,これは黒田委員や金子委員も含めて,ずっと私も意見を言っているのですが,やはり,大学設置基準そもそもの見直しということをやるべき時期に来ているのだろうと思います。

 金子委員も前期のときに,いわゆる教育の質を高めるためには,今教員学生比はこれでいいのかということを疑問として提案されていました。それから黒田委員は,学位プログラムということを重視するのであれば,そもそもそのような作りの大学設置基準になっていないのではないかということを,ずっとおっしゃっています。

 最後に,もう一つそれに加えたいのは,大学設置基準の第32条で124単位以上修得した場合に卒業を認定するとあるのですが,上限が決められていません。アメリカは大体120単位がほぼ標準化して,多少のでこぼこは大学によって,あるいは分野によってあるのですけれども,日本はミニマムは決めているのですが,天井が大学設置基準で決められていません。

 ですから,認証評価でいきますと,180単位履修しているというのは特別な例ではないのです。そこで,今本当に求められている主体的な学生,深い学びができるかというと,どう考えても,よほどの天才・秀才でなければ不可能だと思うのです。ですから,質の保証という観点から大学設置基準の根本的な見直しということも,これから検討していく必要があるのではないでしょうか。

【鈴木部会長】  篠田委員,どうぞ。

【篠田委員】  審議事項として示された三つの案件のうちの2番目と3番目について,少し御意見を申し上げたいと思います。2番目の大学の教育の質保証,認証評価について,参考資料1で現在の認証評価の現状について,最初から10行目ぐらいのところで御紹介されたように,「法令適合性の外形的な評価に基づく最低限の質の確認にとどまっており」というような表現があるのですけれども,評価機関の評価基準の策定に関わっている立場からも申し上げますと,第1サイクルのときはそのようなことが言えたのではないかなと思うのですけれども,第2サイクルではかなりその点は努力をされています。そのことはその下に,各評価機関においては学習成果だとか内部質保証を重視した評価に取り組んでいるというようなことが言われていますので,これで正確な表現になっているのではないかなと思います。坂東委員もおっしゃったのですが,そういう目的が達成されているかどうかということも,もちろんきちんと評価をしていかなければいけないのですけれども,例えば第2サイクルで私の関わっている評価機関でも,第1サイクルでは評価の大項目が11項目あったのを4項目に大きく減らして,上から点検をするというやり方から変えようとしています。それから,自ら目標を立てて,それについてのエビデンスをきちんと示して,自分でちゃんと評価をするということをまずベースに置いて評価をすることによって質向上を図っています。その4つの評価項目の中の1つに自己評価,自己改善というところを大項目に挙げて,そのようなことが根付くような形で努力はしているわけです。

 大学の教育の質向上だとか,アウトカム評価だとか,大学の特色化だとか機能別分化だとかいうのは,上から点検して評価をするのにはなじまないのではないかと思います。自ら目標を掲げて,自ら点検をして,その質がどうかということ。これがうまく機能しているのか,きちんと行われているのかということを点検して,確認して,評価して,励ましていくというのが認証評価機関の重要な役割なのではないかなと思います。認識評価機関の今までの努力だとか改善の方向について,うまくいっているところもあれば,当然限界の部分もあると思いますので,そういう現状をきちんと踏まえて,その下で改善の検討方策を考えていくということが非常に重要な点じゃないかと思いました。

 その点で申し上げますと,例えば,資料4-1の3ページ目に「事後チェックである認証評価制度の在り方」という書き方がしてあるんですけれども,「事後チェック」という言い方も,認証評価機関の性格を今の段階で正確に表しているのかなというところもあります。要するに事前規制で設置基準でやって,事後チェックを認証評価機関がやるという位置付けというのも,改めてその位置付けの仕方ということも考えてみる必要があるのではないかと思いました。

 それから,審議事項の三つ目の学長補佐体制の強化についてなんですけれども,これはその前の二つの大学教育の質転換とか大学教育の質保証の充実という審議事項に比べますと,ガバナンスやマネジメントを行っていく上での一つのやり方についてが大きな議題になっているという印象を持ちました。

 昨年,学校教育法が改定されて,ガバナンスの大きな体制の整備がされたわけですけれども,それを本当にうまく生かして運営をして,意思決定と執行がきちんとやれるというマネジメント全体をどのように円滑に目標を達成するために前進させていくのか,という大きなテーマの中に位置付けていく必要があるのではないでしょうか。

 だから,ガバナンス改革の審議まとめでも,そのあたりの全体構造を示しているのですけれども,法改正というのはその一部だけ取り上げているわけですので,マネジメント全体がうまくいくようなことで,どのようにやっていくかということの中に位置付けた方がいいのではないかという印象を持ちました。

 その点では,先ほどの資料4-1の4ページのところで,職員の資質向上と併せて高大接続の在り方に関する三つのポリシーについて,一体的な策定をするというテーマも挙がっておりまして,これも非常に重要なテーマだと思います。

 入り口から出口まで一貫した体制で管理し,マネジメントができるという,これは平成24年の質的転換答申で教学マネジメントとして,改革として非常に強調した点でありますので,いま一度,教学マネジメント全体を見直していかなければ,教育改革というのは前進していかないと思いますので,その全体の中にこのようなテーマをきちんと位置付けていく必要があるのではないかという印象を持ちました。

【鈴木部会長】  美馬委員,どうぞ。

【美馬委員】  私からは2点ございます。

 一つは,検討課題の1番目の大学教育の質的転換の中,アクティブ・ラーニングの推進ということについて,皆様の努力もあって,よく聞くようになりました。それからスペース,教室等もいろいろ新しいものができてきているとは思うのですが,それが具体的に,アクティブ・ラーニングという手法を使ってどのような力を付けるのか,またそれが付いたのかをどう測るのかというところについては,まだまだ議論が必要だと思います。

 そこでは,先ほどお話も出ました学士力のようなものであったり,21世紀型スキルと言われるような中にも入っています学習方略であったり,グローバル人材としてのグローバル・シチズンシップのようなもの,あるいは批判的思考が入っていますけれども,これがどのような方法の転換があって付けられているのか,あるいは付けていくのかというところが,まだまだ不十分のような気がしています。

 それから2点目は,職員の質向上についてです。まだSDというのは,大学で働く人材というのが専門職として流動化をするようにはなっていない,人事交流もさほどなされていないような気がします。

 その中で,例えば私立大学の場合は,その校風もあってでしょうけれども,その卒業生が職員になって,そこで学生の支援を行っていくということなのですけれども,一方で,アドミニストレーションというだけではなく,高度専門職ということでは,ファイナンス,あるいはIRを行っていけるようなスタッフやリサーチ・アドミニストレーター(以下,「URA」という。)も出ていますし,この頃は私のところでも始めましたラーニング・センターにおいて,課外の学習支援を行う専門職もいます。

 これは課外で授業と連携しながらやっていくというところでは,ファカルティーを補助する,あるいはFDにつながっていくということも考えられますので,今回の議論で,この高度専門職と併せてSDにもう一歩踏み込んで議論していければと思います。

【鈴木部会長】  安部委員,お願いします。

【安部委員】  三つ意見を申し上げたいと思います。

 最初は,たくさんの委員の先生方がおっしゃいましたけれども,いわゆる実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の設立に対して,私も非常に疑問に思っております。今,職業人を養成する大学の学部というのは,例えば,最近は,看護師を養成する看護学部などの新設が多いわけですけれども,大学で行っている職業教育が,教育再生実行会議での第五次提言によると問題点があるということですので,大学で行う職業教育の問題点とは何かということについては,やはりこの大学教育部会の大きなテーマとなるのではないかと思います。

 それは,ここで最初に課題として挙がっております大学教育の質的転換の中で,例えばインターンシップとか実習など,アクティブ・ラーニング的な内容をどのように充実させていくべきかということも論議されることもあり,そのことと関連のある大学、短期大学で行う職業教育の在り方ということについては御議論いただきたいと希望します。

 二つ目には,認証評価について,2クール目の中間期を迎えていますけれども,認証評価を実施するに当たっては,これをやったことによって大学が機関全体の,あるいは各大学の教育改善や改革にどのようにつながっていったのかという検証をやらなければいけないと思います。

 共通の基準を当てることによって,自学の強みや弱みを認識して改善につなげていったり,あるいは公開された認証評価の結果を基に,各々の大学が同類の大学と比較してベンチマーキングをしたりするなど,具体的な改革の方針を示すということが課題だと思いますが,これが形成することができたかということを検証しながら,次の認証評価制度の改善につなげていく必要があるのではないかと考えます。

 それから3番目に,SDのことなのですけれども,具体的なことを申し上げますと,特に地方の私立の短期大学にとりましては,職員の資質の向上というのは,学長のガバナンス体制を強化するに当たっても非常に重要な要素だと思っております。

 なぜならば,大学教員のキャリアというのは,例えば地方の短期大学の教員から始めて,研究環境のより整った都市部の四年制大学に行く人が多いわけです。それに対して職員は,私立大学においては定着率が教員に比べて高く,学園の学風等も理解をして,特色ある教育課程の編成や,学校の学生に合った学生支援の充実を担う専門性の高い職員の必要性というのが非常に求められていると思います。

 特に,丁寧な教育を行うことを旨とする短期大学におきましては,そのような専門性を持った職員が学長のガバナンスを助けると思っておりますし,今の地方創生の中で,職員というのは大体地元に住んでいて,地元の行政だとか企業だとか民間団体との連携を持つような人が多いので,そのような地域との連携等の能力を持つ職員をどう養成したらいいかということが,今後の地方に根ざした大学改革につながっていく,そのような可能性を持っておりますので,職員の資質向上につきましては,URA等の研究重点大学の先生方の研究を充実させるような能力を持った職員とは別に,地方の学校の職員の資質向上について論議いただければと考えます。

【鈴木部会長】  勝委員,お願いします。

【勝委員】  本日は資料をいろいろ見せていただいきまして,特に第7期の大学分科会の審議の状況で非常に多くのことが決まったということを改めて感じたわけですが,特に平成24年の学士課程の質的転換,それから高大接続という非常に大きな改革が今,進んでいる。日本の教育制度,特に高等教育,それから高等学校の教育もそうですが,考える力であるとか主体的学びというものが前面に出てきたということは非常に評価されるのだろうと思います。

 ただ,その中でもベースとしては知識であるとか,あるいは学び方であるとか,そのようなものを忘れてはならないということは言わずもがなであるわけです。本日の資料で,第8期の審議事項ということでいろいろ資料4-2に書かれていますが,それを実現させる,その場合に,法制化,法令化ということがあるかと思いますが,大学教育の質的転換として三つのポリシーの確立,アドミッション・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,ディプロマ・ポリシーということで一体的に策定するということを行って,学士力というものを確立する。そこで必要なのは,その確立したものが社会的に評価を得るということです。

 特に,大学院改革は大学教育部会とは別のところですが,例えばマスターにしてもドクターにしても,日本のそのような学位というものが国際的に評価される,国際的に通用するということが,大学にとっては非常に重要だと考えます。

 それからもう一つ,先ほどから様々な委員から御指摘がありますように,単位化の話で,インプットではなくてアウトカムであると。学習成果をどう測るかということがあるかと思いますが,特に日本の法令では1単位というのは45時間の学修を必要となる内容となっているわけです。事前学修,事後学修というのがあるわけですが,往々にして講義の時間数にかなりの注目が行ってしまって,15週きっちりやるということで,休日でも行うというようなことに何かと注目を浴びてしまいますが,そうではなくて,学生たちが自分で学ぶという,あるいはセミナーをする,あるいは実習をする,そのようなものも評価するような,ECTSがまさにそうですけれども,そのような形での単位の評価というものが必要になります。

 そもそも論を言えば,大学教育が変わるというのは,もちろん今までの体系的な構造改革ということが必要なわけですけれども,究極的には一人一人の教員の意識の変革というものが必要で,これは教員の人事を外部からチェックをするということも重要だと思います。本学も実はつい最近,認証評価を受けて適合になったわけですけれども,各学部の人事といったようなものには踏み込んだものはなかったので,そのようなものにも踏み込んだ形での事後チェックも必要なのかなと思います。

 最後に,ガバナンスについてですが,ガバナンス体制の強化も非常に大きく進んでいるとは思うのですけれども,学位を学部・研究科が出すということであるとすると,学長サイドと,学部・研究科の意識の共有というものが非常に重要になってきて,学長の権限だけを強めればこのような改革が進むかというと,必ずしもそうではないということがあるので,そのようなことも踏まえながら学長体制の強化については考えていくべきではないかと思います。

【鈴木部会長】  前田委員,お願いします。

【前田委員】  途中から参りましたので,ほかの委員の先生方と意見が重なったりするかもしれませんが,2点申し上げたいと思います。

 1点目は,実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議に私も末席を汚させていただいていたのですけれども,あの会議では非常にいろいろな立場の方々がいろいろな思いを持っていらしていて,統一的になかなか議論ができなかったのかなという気がしています。一番感じたことは,学士なり短期大学士に匹敵する職業教育とはどういうものなのかという議論はあまりなかったということです。気を付けなければいけないと感じたことは,今の専門学校の職業教育に教養教育を付け足して,教員を充実して,設備を整えれば大学になるということは決してあってはいけないということです。学位にふさわしい高等教育ということがきちんと考えられていけば,うまくいけば,大学に対しても刺激になるかもしれません。そういうものであってほしいと思っています。

 2点目に関しましては,認証評価制度の問題ですけれども,認証評価が始まる前から評価に関わっていた経験からしますと,基準が厳しくなるとそちらの方に画一的になるし,基準が甘くなると今度は評価機関が何を判断基準にしていいのか難しい。この綱引きになってしまうのですが,肝腎な点は,評価する側(がわ)がある尺度を当てはめようとしていることについて,大学側が積極的に,これだけやっているから十分なのですということを具体的に形で示すようなことをしていかないと,また追っ掛けっこになっていくのかなと感じました。

 学生の学習成果を重視するというのは非常に重要なことですけれども,学習成果を重視するに足るシステムをまず作り上げることです。そこが抜けると,また外から道具を借りてきて学習成果を形式的に測りましたというふうになりかねないので,この辺の仕掛けも認証評価の役割としては重要なのではないかと感じました。

【鈴木部会長】  日比谷委員,どうぞ。

【日比谷委員】  3点ほど申し上げたいのですが,一つ目は,皆様もおっしゃいました職業教育の話で,資料4-3の高大接続のところにも,アメリカの研究者が小学生の大半は大学卒業後,今は存在していない職業に就くという話で,「将来は職業の在り方も様変わりしている可能性が高い」と堂々と書かれているわけですが,そのような背景の中で実践的な職業教育をする機関の持っている意味というのが私はよく分かりません。その点については別の特別部会でお話しになるということがございましたけれども,本部会でも十分に議論した方がよろしいのではないかと思います。

 それと,大学を出て仕事にみんな就いているわけですから,全く職業教育が行われていなかったわけでも当然ないと思いますので,大学で,将来,職業の在り方も様変わりし,現在存在していない仕事に就く可能性のある人を育てていくことは非常に重要だと思いますし,そのために大学教育は何を与えるべきか,提供するべきかということはよく考えた方がよろしいと思います。

 それから二つ目に,学習成果の評価の改善とか学習成果を重視した評価ということが,本部会の審議事項,具体的項目の二つに共に出てきているのですけれども,今,前田委員のおっしゃったことと全く同じことを言おうと思っていたのですが,このように言うと,この試験をすると評価が上がりますよとなれば,みんながそれをするというふうになると思うのですが,先ほどの大学の独自性とか建学の理念ということとも大変に絡むのであって,それぞれの大学にとって,私たちにとって学習成果はこれですというものが明確にあって,それがきちんと達成されているかというようなことを測るような仕組みが必要ではないかと思います。

 そのためにやはりIRは非常に重要で,IRも,少し悪くすると大変外形的になってしまう危険もはらんでいるかと思うのです。学習成果を測るためにデータに基づいてどうしたらいいのかということ,そのためにはどんなデータが必要なのか。三つのポリシーを一体的に策定するというお話も度々出ていますけれども,それぞれ定めたアドミッション・ポリシーで学生を入学させて,カリキュラム・ポリシーで勉強して,最後にディプロマ・ポリシーはこれと一本筋が通るときに,それが本当にその大学が目指しているものができているのか,ということを測り,それを支えるデータを与えることがIRの役割だと私は思いますので,その在り方についてもよくここで議論したいと思います。

 それから3点目は,資料4-1の参考の最後のところに出てきているのですけれども,評価人材の育成は大変重要だと思います。我々が評価する側(がわ)に回ることもありますし,認証評価を受けると評価してくださる方々がいらっしゃるわけです。みんなが画一的な評価をする必要はないと思いますが,どこが評価のポイントかということは,ある程度の目指すべき方向をしっかり共有した方がいいと思いますので,この点についても認証評価制度の一つの重要な柱として議論ができればと思います。

【鈴木部会長】  濱名委員,どうぞ。

【濱名委員】  先ほどマクロの話をしたのですけども,2点あります。

 一つは,資料4-1で,更に検討するべき課題に,評価における社会との関係の強化で,ステークホルダーの位置付けの問題が出てくるのですね。

 他方,設置基準の明確化というのが出てくるのですが,そのステークホルダーと設置基準をどのようにつないでいくのかというルール作りについて,ステークホルダーのおっしゃることは尊重しましょうということが今回のこの諮問の趣旨の中に入っていて,これは産業界をイメージして書いていらっしゃると思うのです。それでは,専門職の育成という点では,これがどのような問題になるのかということなのですね。

 第7期の審議でも申し上げたと思うのですけれども,質保証を行っていくときに,国家試験がある厚生労働省系の資格の分野ではキャップ制もない大学が山ほどあります。教室外学習時間ということについてもほとんど大学教育の基本的なシステムが尊重されていません。

 教員養成も同じです。かなり教員養成の政策が以前と変わってきています。かつては,目的養成課程以外で中学校・高等学校の教員免許を取らせていたのが,最近はどちらかというと,卒業要件単位の中で教員養成をしなさいという話になってきており,結果的には卒業要件が肥大化している,あるいはそういう措置を取らないで,自由科目という扱いでやっている状況があります。実は専門職育成と設置基準といった質保証の仕組みというのはかなりデリケートな問題で,私は第7期のときも発言をさせていただいたのですけれども,今回も議題から完全に外されています。

 質保証ということを考えていき,ステークホルダーとの関係を考えれば,厚生労働省資格とか教員養成とか,専門職養成と大学教育としての質保証の仕組みをどのようにチューニングしていくのかというのは大きな課題になってくる。個別のことをこの部会で全部やることはできないかもしれませんが,中央教育審議会の中では,基本的なルール作り,手続論も出てこないわけです。そこで,ステークホルダーの評価という観点だけが出てくると,やはりバランスを欠いているのではないかということが1点です。

 もう1点は,第7期で申し上げて,取り上げていただけなかったことですけれども,今までいろいろ御発言があって,個別大学が目標をきちんと立てて,評価に当たってアウトカムを証明していくべきだという御議論がありましたが,質的転換答申の中にはアセスメント・ポリシーという言葉が明確に組み込まれているのに対して,第7期の最終段階での議論では,機が熟していない,認知度が低いという話で終わってしまっています。しかしながら,考えてみれば,プラン・ドゥー・チェックのチェックの仕組みのないプランはあり得ないわけです。産業界であろうが,どこであろうが,到達目標に対してどのような状態であるならば,それができているかというのは,基本的なプラン・ドゥー・チェック・アクションのシステムの中で不可欠な要素なのですが,ここの部分を今後どのように強化していくのかということと,アセスメント・ポリシーをどう普及させていくのか,どう組み込んでいくのかというのは,認証評価の話が出てくるのですけれども,重要なファクターとして三つのポリシーだけではなくて,私はアセスメントを加えた四つのポリシーだと考えておりますけれども,そこを充実させない限りにおいては,評価というものの実体化が進んでいかないのではないかと考えます。

【鈴木部会長】  黒田副部会長,お願いします。

【黒田副部会長】  皆さんから本当に貴重な意見がたくさん出てきたわけですけれども,大学の質保証の問題,これからの大学そのものの考え方,それをきちんと議論する必要があると思うのですね。

 第7期のときには,アカデミックな大学とプロフェッショナル大学という2つの分け方をしましたが,「複線化」という言葉で表現をすると差別用語になるのですね。これは使えないということで,「多様化」という表現を取っているわけですけれども,「複線化」という言葉の定義をきちんとこの場でやっておく必要があると思うのです。

 これは有識者会議の中でもその話が出て,「複線化」は使うべきではないという話になりましたので,「多様化」という言葉を使うことになったのですが,本文の中では「多様化」とはこのようなことを指しますということを書いていただいているのですけれども,それでもまだその解釈が甘いということで,避けて通ったということなのです。

 今,各委員の先生方が言っている質保証の問題で一番重要なのは,学士課程答申で学位に基づくプログラムを作りなさいということになっているんですが,それが一向に出来上がってこないということです。これは何も学士課程だけでなく,修士,ドクターの課程も全部プログラムに基づいて構築されなければ,大学教育として世界的通用性はないと思うのです。

 その中で,結局,達成度をどのように評価するかということになるわけですが,これも日本は非常に遅れていまして,自分のところはこのような教育をやっているのだからそれでいいのだと,最終目標を決めてしまっています。それがほかの大学と比較したときにどうなるのかということが分からないわけですね。ですから,それを分からせるためには,こういう大学教育における資格枠組みとかレベルを,第1年度ではどこまでできるようにさせる,第2年レベルではどこまでという,そのような一つのモデルを作っていく必要があるのではないかと思います。学位をもらえる学士の4年の段階では,どこまで達成していなければ駄目だということを決めておく必要があると思います。

 これはヨーロッパなどでははっきりしているわけですから,日本でもできないことはないと思うのですけれども,まずはそのようなことを行った上で出口の管理をしっかりしていくということでなければ,いつまでたっても大学教育というのは良くなっていかないと思います。質の保証と言われても,どこで保証されているのか分からない,そういう状態が続くのではないかと思います。ですから,是非とも,認証評価制度のことも非常に重要ですが,大学の質を上げるのにどうするか,質を維持し向上させるために認証評価制度もあるのだというくらいの気持ちでやっていただいた方がいいと思っています。

【鈴木部会長】  金子委員,どうぞ。

【金子委員】  黒田委員がおっしゃったのですが,私,前から大学教育部会に出ていますので,幾つか,前から出ていたもので完全にまだ終わっていない,少し忘れてしまったみたいなことが幾つかあるのではないかと思います。

 一つは,今おっしゃっていた大学教育の教育プログラムの件ですけれども,要するに日本の大学は大体学部で教育をやっているわけです。しかし,法学部の教育というのをそのまま受けて,そのまま法学を使って就職している学生はそんなにいるわけではありません。むしろ,学術の論理でできている学部と,それから学生の教育をする教育プログラムの間に,今,大きな乖離(かいり)があるわけでありまして,二重になっているわけです。

 これは言ってみればガバナンスの問題でもありまして,日本の大学は特に学部のガバナンスで,教授会が非常に大きな権限を持っているために縦割りになってしまっていて,教育プログラムが柔軟にできないという問題があります。それからもう一つは,設置基準自体がそういう形になっているという二つの問題があって,この基本的な問題があるために,この問題はほとんど進展していないという状況です。

 しかも,前期の本部会では,ガバナンスを問題にしていましたが,途中から教授会のガバナンスがあるのはけしからんという問題にすり替えられてしまいまして,その議論に全部取られてしまったために,いつの間にか,大学教育部会はほとんど開店休業になってしまったということがありましたが,まだこの問題は非常に重要な問題として残っていると思います。

 それから2番目は,私が特に申し上げていたことですけれども,情報公開をきちんとやるという話です。実際に大学教育の成果といいますのは,私は簡単にその成果をすぐに測れるわけのものではないと思います。しかし,成果までいかなくても,大学の学生が何人くらいの授業を取っていて,ゼミを幾つぐらい取っていて,勉強時間はどれくらいするかくらいは調べれば分かります。これは別にテストしなくたって調べれば分かるわけです。

 そのような非常に客観的なデータを作って,それを少なくとも一定の部分は情報公開する,あるいは,先ほどから問題になっています認証評価の際のベースにするということは非常に強力なツールになるのですが,これもかなり私は前回申し上げましたし,議論になったと思いますが,それで大学ポートレートができましたけれども,今の大学ポートレートは,そのような需要にはほとんど応えることができるものではありません。

 この間もどこかで申し上げましたけれども,インターネットを見ていますと,「大学ポートレートって何ですか」と質問されていて,その回答に「何かできていますけど,ほとんどに役に立ちません」と書いてありました。このままでどうするのでしょうか。

 これはただ単に作っただけではなくて,大学教育の改善のために非常にクリティカルな役割を果たせるべきものが中途半端な姿で終わっているという現状なわけで,こうした既に前から手を付けていることを更にきちんとやるべきだと思います。様々な困難があることは分かったわけですけれども,むしろ,そうであるからこそ,更に問題にすべきだと思います。

【鈴木部会長】  大体予定をした時間が参りまして,お一人お一人から御意見も頂いたところであります。

 事務局の方から,例えば資料4-2に基づきまして,大学教育部会では大学教育の在り方について具体的な審議項目の例として挙がってきたものが三つございまして,これについて説明いただきましたが,それを基に皆さんの御意見を頂いたところ,非常に基本的な御意見,多様な御意見,重要な御意見を頂きました。

 それで,これらをどのようにまとめて,あるいは議論を続けていくかということは,部会長としては大きな課題を頂いたなというふうに今思っているところですが,事務局とも相談をしながら,皆さんの頂いた御意見を今後の審議の中に取り入れて生かしていきたいと思います。

 それで,本日頂きました以外にも御意見等ございましたら,別途,事務局まで御提出いただければ,委員の皆様に回覧という形で御連絡させていただきますので,よろしくお願いいたします。

 最後に,今後の開催日程につきまして,事務局から説明をお願いいたします。

【伊藤高等教育政策室長】  本日は活発な御議論どうもありがとうございました。

 次回につきましては,資料5に記載がございますとおり,5月下旬から6月下旬で調整をさせていただければと思います。今後,月1回ペースはお集まりいただきまして,御審議をお願いしたいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いします。

【鈴木部会長】  それでは,本日の議事は終了いたしました。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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