大学教育部会(第33回) 議事録

1.日時

平成27年1月15日(木曜日)16時~18時

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 今後の大学設置基準等の見直しの方向性について
  2. 認証評価制度の見直しについて
  3. その他

4.出席者

委員

(部会長)佐々木雄太部会長
(副部会長)黒田壽二副部会長,谷口功副部会長
(委員) 浦野光人,高橋香代,長尾ひろみの各委員
(臨時委員)奥野 武俊,金子元久,川嶋太津夫,小畑秀文,佐藤弘毅,島田尚信,谷口功,濱名篤,美馬のゆり,吉田文の各臨時委員
(専門委員)安部恵美子,長束倫夫,山田礼子の各専門委員

文部科学省

(事務局) 吉田高等教育局長,藤原私学部長,徳久総括審議官,義本高等教育局審議官,德田生涯学習政策局審議官,藤原大臣官房人事課長,浅田大臣官房総務課長,森高等教育企画課長,里見大学振興課長,永山私学行政課長,田中高等教育政策室長,片柳高等教育政策室室長補佐,白井大学振興課課長補佐

5.議事録

(1)今後の大学設置基準改正の方向性について,事務局から資料1に基づき説明があり,その後意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  それでは,所定の時刻になりましたので,第33回大学教育部会を開催いたします。 本日は,前回に引き続いて,1つは大学教育の質保証充実の観点から大学設置基準の見直しの関係,もう一つは認証評価の関係について,年末に開かれました大学分科会の御議論も御報告いただきながら,重ねて御審議いただきたいと思っております。
 まず,大学設置基準の関係につきましては,いわゆるスタッフ・ディベロップメント(以下,「SD」という。),あるいは「高度専門職」の位置付けという議論が一つであります。また,前々回も御議論いただいたアドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針),あるいは,そこに含まれるアセスメント・ポリシー(学生の学修成果の評価について,その目的,達成すべき質的水準及び具体的実施方法などについて定めた学内の方針)等についても御議論いただくことになっております。
 なお,本日は第7期最後の大学教育部会となりますので,今期の審議状況については,1月27日に行われる大学分科会に報告をした上で,更に検討が必要なものについては,次期の大学教育部会,あるいは大学分科会に申し送ってまいりたいと考えております。
 それでは,最初は,大学設置基準の関係で,SD及び「高度専門職」の位置付けについて継続審議を行います。本件については,本部会での審議状況を12月16日の大学分科会に御報告し,かつ,そこで審議を重ねていただいたところであります。そこで示された御意見等を含めて,まず事務局から資料の説明をお願いします。
【白井大学振興課課長補佐】  それでは,資料1に基づきまして御説明をさせていただきたいと存じます。
 資料1の1枚は,前回も提示させていただいた資料でございますけれども,現在,大学は全学的な様々な方針の企画立案,実施,あるいは全学的に限られた資源を適切に把握して,それを配分していくという様々なニーズがございます。そのような大学運営を行っていく上で,教育研究を特に支えていくため,管理運営や教学支援,あるいは学生支援という観点から,様々な専門的知見を有する職員を配置して,育成していくということが求められているところかと存じます。そのため,資料1ページの下の方に黄色の囲いがございますけれども,特に今後,検討が必要な論点として,職員の資質向上,「事務組織」の見直し,それから「高度専門職」の設置ということで御議論いただいてきたところでございます。
 2ページにお進みいただきたいと存じます。これまで大学教育部会においても,複数回にわたりまして御議論いただきました。特に,「高度専門職」を中心に御指摘があったかと存じます。
 「高度専門職」につきましては,かぎ括弧付きで出させていただいておりますけれども,定義をどう考えるのか。専門性については,大学運営に関する専門性なのか,それとも一般的なものなのか。あるいは,多様な職種,例えばインスティテュート・リサーチャーであるとか,アドミッション・オフィサー,あるいはリサーチ・アドミニストレーター(以下,「URA」という。)というような多様な職種について,「高度専門職」ということでまとめることができるのか。大学間での流動性を確保するためには,統一的な基準が必要ではないのかというような御指摘がありました。
 また,「高度専門職」を制度化することによって,職能団体の形成などがアメリカのように後押しされるのではないか。現在ではなかなか職能団体の形成なども進まない中で,政策的に位置付けをして,一定の誘導が必要ではないのかというような御意見もございました。ただ,一方では,今,人材育成の受皿がなかなか育っていない中では,このような制度を作ることは時期尚早ではないのか,あるいは,大学での配置については義務化をするべきではないのではないかというような御意見もございました。また,ヒアリングの中では,例えばURAなどについては,一定の人材が既にある程度育っている分野もあるのではないかというような御指摘もございました。
 SDについては,具体的にどのような事項を扱うか示すなど,より積極的に進めていくべきではないかというような御指摘があったところでございます。
 3ページにお進みいただきたいと思いますが,先ほどの2ページの資料につきましては,12月26日の前回の大学分科会におきまして,大学教育部会における本件の検討状況ということで御報告をさせていただいた資料でございます。それを踏まえまして,12月26日の大学分科会で頂いた御意見でございますけれども,基本的には非常に前向きな御意見を頂いたと思っております。
 専門職の配置は,これからの大学にとって必須なものである,重要なものであるという御意見。また,URAのような独立性の高い「高度専門職」の場合には,例えば事務職員というような身分の扱いであると時間外労働や超過勤務の問題が生じるので,裁量労働の対象にしていくことも必要なのではないかというような御意見も頂きました。これについては,後ほど補足をさせていただきたいと思います。
 その他,大学の設置認可においても,教員と事務職員にしか注目されていないのではないか,もっとアドミニストレーターの役割を位置付けるようにしてほしい。私学事業団のアンケート調査でも,事務職員の大学経営における役割というのが重視されている。教授法を学んだ職員が,教員に授業方法を指導しているような大学の取組も実際にあるということ。また,教員は本来,教育研究を行う者だけれども,現に大学の運営業務を行うなど様々な業務の実態が生じているため,新しい職種として位置付けて整理すべきではないかというような御指摘がございました。
 安西分科会長から,最後の2点について御指摘がございましたけれども,全体的な方向性については大学分科会において反対の意見は全くございませんでした。裁量労働を含め,人事,労務等の課題はあると思うけれども,是非,迅速に検討を進めていただきたいというのが分科会長からのお話でございました。
 次のページにお進みいただきたいと存じます。4ページ目ですが,大学分科会の中で御指摘のございました裁量労働制について簡単な資料を御用意してございます。現在,労働基準法に基づいて,いわゆる裁量労働制というものが制度化されてございます。これについては,労使協定で定められた時間,特に勤務時間がなかなかつかみにくいものについては,あらかじめ決めた時間について労働したものとみなすという制度でございます。それについては,ここに書いてございますけれども,1から7の事項について,組合と書面による労使協定においてあらかじめ定めておくことが必要になってきます。
 その中で,まず第1の要件ですが,対象業務について法令で決められてございます。法令で定められた19の業務がございまして,その中で特に大学に関するものとしては,丸1のところで人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務が挙げられておりまして,ここでは具体的に助教や助手が対象になるということ。
 それから,丸12でございますけれども,学校教育法に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事する者に限る)とございます。こちらについては,学校教育法に規定する大学の教授,准教授又は講師の業務をいうというようなことが厚生労働省の方から示されているところでございます。
 ただ,これらについて,対象業務になるかということがまず大前提になるわけでございますけれども,厚生労働省に確認したところでは,例えばURAのような職務であれば,丸1の人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務に該当し得る余地があるのではないかというお話でございました。
 一方で,丸3のところにございますけれども,対象業務を遂行する手段及び時間配分の決定等に関し,対象業務に従事する労働者に具体的な指示をしないこと,という要件がございます。要は,個別にあれこれと指示を受けるのではなくて,極めて独立性が高い状態で仕事をしていただくということが,この裁量労働制の大前提になっているということがございます。あとは,理論的にはURAのような方も対象になり得るということでございますけれども,その方がどこまでの独立性の高い業務をされているのか,ケース・バイ・ケースで判断をすることになっていくと考えているところでございます。
 以上が裁量労働に関する説明でございます。
 次の5ページにお進みいただきたいと存じます。5ページは先ほどの復習でございますけれども,各論点,こちらから提示させていただいております3つの論点に関して,現行の制度がどうなっているのか,もう一回確認をしていただきたいというものでございます。
 初めに,職員の資質向上に関するところでございますけれども,現行の大学設置基準においては,第25条の3というところで,授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究を実施するものとするという規定がございます。一般にファカルティ・ディベロップメント(以下,「FD」という。)規定というように理解されていると存じますけれども,この内容が授業の内容,方法の改善に限られているということ。また,そのために対象になるのはどうしても教員中心であるということから,もう少し幅広い資質向上の規定が必要ではないのかということが問題意識として挙げられるところでございます。
 2点目,「事務組織」の見直しという点でございます。「事務組織」については,現在,事務を処理するため,専任の職員を置く適当な組織ということで規定をされてございますけれども,「事務組織」の目的,名称,この組織は一体何をするものなのか。名称についても,単に「事務組織」というものが適当なのかどうか。また,構成員についても,基本的には事務職員の方が想定されるとしても,実情に応じて,副学長であるとか,教員であるとか,様々な人が想定されるのではないかというようなことが問題意識として挙げられます。
 最後の「高度専門職」でございますけれども,先ほどの全学的な教学,学生支援業務,あるいは学長を補佐する管理運営というような観点から,専門的知見を有する職員の配置を後押しすべきではないかということでございます。現行,大学設置基準の中では,「専門的職員」ということで図書館の司書が想定された規定が第38条3項にあるところでございますけれども,そのほかについては特段の規定はなく,事務職員,あるいは教員というような規定しかないところでございます。
 次の6ページにお進みいただきたいと存じます。今後の方向性,イメージ例ということで,今回,新たに挙げさせていただいてございます。今後,法令改正を行っていく上で,どのような事項を盛り込んでいくのかということについて,このようなことが考えられるのではないかということをたたき台としてお示しするものでございます。
 初めに,職員の資質向上,SDの部分でございます。例えば,大学は,その職員の資質の向上を図るための研修についての計画を企画し,実施するというような規定が考えられるのではないかということでございます。もちろん,細かく具体的にどのようなことを行うのかということについては,たくさんの御意見あろうかと思いますが,全ての大学に共通する最低の基準という大学設置基準の性質も考えますと,ここではある程度包括的な規定の方がなじむのかなということで,一つの案としてお示しするものでございます。
 もう一つ,「大学運営組織」,また「専門的職員」に関して,丸1から丸3まで三つの要素を挙げてございます。
 一つ目の要素ですが,大学は学長,学部長その他の組織の長(ちょう)を補佐し,当該大学の管理運営,教育研究活動の支援,学生の厚生補導その他の業務を行う組織を設けるものとするとしてございます。ここで具体的に三つの業務,管理運営,教育研究活動の支援,それから学生の厚生補導,もちろんその他の業務もございますので,その他の業務を行う組織として,「大学運営組織」ということを新たに,従来の「事務組織」に代えて置いてはどうかということでございます。
 二つ目の要素ですが,この「大学運営組織」には選任の事務職員を置くものとするということで,「大学運営組織」の主たる構成員は事務職員が想定されているということを明らかにしてはどうかという点でございます。
 三つ目の要素ですが,「大学運営組織」には,業務上の必要に応じて,副学長,教員,技術職員又は「大学運営組織」の機能を十分に発揮させるために必要な「専門的職員」を置くものとするというように規定を考えてございます。ここでは,事務職員を中心としながらも,副学長や教員,技術職員をはじめとして,様々な専門的知見を持った方が適材適所に「大学運営組織」に加わって,大学運営に携わっていただくというようなことをイメージしているところでございます。
 この最後の部分にございます「専門的職員」が,従来「高度専門職」ということで議論してきたものを想定しているところでございますけれども,この「専門的職員」につきましては,大学設置基準等で法令上規定することも考えたのでございますけれども,現段階では,大学教育部会における様々な御指摘等も踏まえまして,例えば下の点線部分の囲みにございますけれども,文部科学省において,「専門的職員」がどのようなものなのか大学現場においてイメージができるような形のガイドライン等を策定して,例えば分野ごと,管理運営であればこのような職種,また,どのような資格要件が必要なのかということを,分野ごとに具体的な事例として示していくことにしてはどうかと考えているところでございます。
 本日は,たたき台といいますか,イメージ例ということでございますけれども,御審議いただければと存じます。
【佐々木部会長】  御説明ありがとうございました。
 以上のように,これまでの議論を整理していただいて,「高度専門職」は「専門的職員」,あるいは,「事務組織」についても「大学運営組織」と概念を置き換えることなどを含めて原案が提示されておりますが,30分ほど意見交換をしたいと思います。どなたからでも結構です。いかがでしょうか。
【浦野委員】  今,御提示いただいたものの中で,最後の6ページの明確化というところがございますが,分野ごとに考えたときに,大学の外部との関係がほとんど触れられていないというのは,少し問題があるかなと思っております。企業でいうと,むしろそこのところが非常に大事ですよね。企業の社会的責任みたいな形の中で,例えば今,多くはCSRという観点の中に環境問題とか,地域の貢献ということが含められるわけです。これからまさに地方創生とか,いろいろなことを考えたときに,地域における大学の役割は物すごく大きいと思いますし,やはりこの分野という中の一つに,地域との関係といいますか,地域貢献というものがあって,そのことを本当に行っていこうとすると,企業がCSRを一つの分野として独立して専門職を置いているように,大学においても地域貢献という目で見たときには,従来の事務職員の在り方では違うと思いますので,その辺りを少し検討していただければと思います。
【吉田委員】  少しお聞きしたいことがあるのですが,ここで考えていらっしゃるのは,職員の一部を「高度専門職」とするというようなお話ですが,そもそもこの専門職というのは,今まで,要は大学という組織に入職する段階に当たって,教員と職員という二つの入り口があったわけですけれども,その入り口はそのままにして,職員の一部を「高度専門職」にしていくという考え方なのか。入職段階で,教員と職員と「高度専門職」という三つの入り口があると考えるのとは,その後の考え方が全く違ってくると思うのですね。
 もし,入職後に一部が専門職になると,職員の一部が専門職になる,場合によっては教員の一部が専門職になるのかもしれません。そうなった場合には,組織内でのOJT(On the Job Training)の体制をどう作るかという話が一番大事になってきます。その一環として,例えば数年間,大学に行くというようなコースもあるのかもしれないと思っています。しかし,そうではなくて,入職の段階で三つの入り口があるのだということであれば,専門職の入り口とは一体どういうことなのかということが,かなり明確に規定されていないと機能しないわけです。だから,専門職として入るために必要な教育訓練なり,その領域なり,あるいは学位のレベルみたいなものかきちんと決まっていないと,入職してからすぐに使えないという話になると思うのですね。その問題が一つです。
 もう一つの問題は,組織の中に入った後のポジションと処遇をどうするのかということについて,どのぐらい明確なビジョンがあるのかというのがよく見えなかったのです。それは,例えば今までの職員であれば,徐々に職位が上がっていく,それによって処遇も上がっていく,昇給していく,最後に到達するポジションが何だというのが明確に見えているわけです。それに対して,この専門職というのは一体どういう位置付けになるのか。
 他方,大学教員というのは,もちろん学長にまでなられる方もいますけれども,大半は教授になったら,それが職位の最高レベルとして終わってしまう。ある意味,非常にフラットな組織構造になっている。そういうものと比べて,この専門職がどのような位置付けなのかがよく見えないということが2点目です。
 もう一つは,現状と比較して考えたときに,既に部分的にこうした役割を果たしているような職員なり,そうした人々が大学の中にいるのですけれども,その人たちを明確化するために「高度専門職」という新たな名称を与えて,その役割をはっきりさせようという方向なのか。そうではなくて,今まで大学の中になかった新しい職業領域を作り出すために「高度専門職」を規定しておくのか。どちらを考えるのかによっても,やはり今後の議論の仕方というのは随分違ってくると思うのです。なので,入り口の段階の問題,組織構造,それから職種というものが新しいものなのか,あるいは名称を与えるものなのか。その3点のビジョンがどのぐらい描けているのかということについて,教えていただきたいと思いました。
【佐々木部会長】  ただいまの三つの御質問についてお答えいただきたいのですが,同時に,事務局案では,大学設置基準等に規定して全体として大学に義務付けるという方向をお考えなのか。それとも,具体的には各大学が職種として設ける余地を作るということなのか,その辺りを含めてお答えいただけませんか。
【白井大学振興課課長補佐】  ありがとうございます。大学設置基準,いずれにしても法令改正ということですので,対象になる大学は全ての大学ということになりますけれども,6ページの丸3というところで少し工夫をしておりますのが,「大学運営組織」には業務上の必要に応じて必要な「専門的職員」を置くものとすると原案を作ってございます。その意味するところとしては,当然,各大学の置かれた状況はそれぞれ様々だと思いますので,もし,その大学において,例えばインスティテュート・リサーチ(以下,「IR」という。)というものが喫緊の課題ということであれば,是非ともそれに必要な職員を置いていただきたいし,必ずしもそうでないということであれば,そうでないだろうということで,各大学における実情を尊重した上での規定にしていきたいと考えてございます。
 それから,吉田委員からお尋ねいただいた件でございますけれども,これはあくまでも大学,法令の改正ということでございますので,当然,各大学は,教職員の方々のキャリア形成等を含めて,それぞれのビジョンをお考えだと思いますので,国から全てについて考えを示すということは,そもそもなじまない部分があると思っております。ただ,前回,資料としてお示ししましたように,様々なキャリア形成,また処遇のパターンがあり得るとは考えてございます。例えば,入職段階で既に専門的職種としての区分があるような場合もあれば,事務職員として採用されたけれども,途中から「専門的職員」として変わっていくという場合も,いずれも想定されるし,それも含めて大学の方で制度を活用していただいて,必要な人材を育てていただければと考えているところでございます。
 吉田委員からお尋ねいただいた役割については,現在でも部分的に役割を果たしている人を明確化,表に出していくのか,それとも新しい職業領域を作るのかということでございますけれども,これも両方の側面があると思ってございます。例えば,今は実際,事務職員という中で,非常に高度な教育研究に関する専門性を持った方であっても,事務職員という身分にとらわれてしまって,教員と対等な立場で議論することは難しいという状態も現にあろうかと思います。そのような方にとっては,新しい職種として位置付けられることによって,教員ともある種対等に議論することができるということもございますでしょうし,あるいは大学の中において新しい職種ができたことによって,例えば,従来,IRであるとか,FDについて,必ずしも十分な意識がなかったところについて,当大学においてもそのような職種が必要だろうという議論のきっかけになるという意味もあると思っています。
 そのような意味では,吉田委員のお尋ねについては,いずれについても各大学の実情に応じて様々な行いり方があるのかなと考えてございます。
【濱名委員】  3点ほどお尋ねしたいのですけれども,1点目は元の資料でいうと「高度専門職」という言葉が使われて,6ページ目では「専門的職員」と書いていますので,最終的には「専門的職員」を使って「高度専門職」は使わない。これは前回の部会の議論でかなり問題となったところですので,その確認をしていただきたい。
 2点目は,吉田委員の御質問と少し近いところなのですけれども,具体的にこれからトラックを作ったときに,書いていらっしゃるのは学位,技能団体による認定,国家資格と三つ,ほかとは書いていませんから,この三つを条件にして行っていくということであるならば,教育訓練や育成方法について具体的にどのようなビジョンを持っておられるのでしょうか。現在いる人の中でそういう役割を与えるということと,どのような教育訓練,育成方法を取っていくのか。
 それと関わってくるのは,具体的な事例の中で,各大学でいろいろ考えればいいという御説明だったのですが,恐らく具体的に何を行うのかということを書かないと,例えば私立大学助成との関係はどのようにお考えなのかということなのですね。私立大学助成は,教育職員と事務職員の数とか,それは定量的な尺度として行っていくわけですけれども,では「専門的職員」はどのように具体的に扱っていくのか。必要だから定めるのであるならば,どのように普及,定着させていくのかというビジョンは当然お考えだと思うので,育成の方法をどういうように考えていらっしゃるのかお聞かせください。
 3点目が,どのような政策手段とか,既存の制度とリンクする形で定着をさせていくのか。例えば,職位,職階とかを設けておられる大手大学はかなり多いです。つまり,役職名だけではなくて,職位と職階を分離する形で行っていらっしゃる。そこにこれが入ってくる場合に,どのような考え方で行うのかということについても各大学それぞれでいいのか。あるいは,職種として明確にして,例えば私立大学助成の対象も今の教育職員と事務職員と別に枠取りをしていくとか,そのようなことをセットで考えていかないと,制度的には定着しない。あるいは,同音異義語で,大学によって扱い方がばらばらであったとしたら,専門的な職員というのは,労働市場の中で異動する可能性を担保されなければ「専門的職員」にはならないので,その辺りの考え方をお聞かせいただければと思います。
【山田委員】  今の濱名委員の最後の方の御意見にも関連してくるのですけれども,「高度専門職」というのは確かに必要であるとは思います。ただ,その考え方として,今,言った職能のこともそうなのですけれども,やはり外部労働市場との関係というものがあって,それを支えていくようなことがないと,逆に閉ざされた専門職として大学の中に位置付いていくのではないかという危惧を持ってしまうということがあります。
 専門職となりますと,やはり外部の労働市場でいろいろな意味で流動性が高くて,例えば教員,研究者というのは流動性が高いわけですから,そのような中である意味,専門的に知識,研究力なども磨いていくということもあるわけですね。そうしますと,やはり外部労働市場がきちんと存在しているアメリカなどの「高度専門職」の扱いというのは,いろいろ異動する中で磨かれていくために,一つの大学の中で閉ざされた専門職として存在しないということがあります。
 そういうことで考えると,例えば本日の御説明でもありましたように,図書館の職員は専門職的な扱いをされているのですけれども,実際,私立大学などでは必ずしもそういう専門職として位置付けていない場合もあるのです。けれども,国立大学法人などの図書館司書の方々というと,そこだけでずっと完結するような形で,余り異動がない,外に異動はさほどないはずなのですね。そうしてくると,職能というものが本当に一つの中だけで完結してしまうと,逆に職能が上がらないケースだってたくさんあるはずで,そのようなところをどう見ていくのかという問題もあるのではないかと思います。
 あるいは,ここにも書かれている技術職ですね。技術職の方々も,そういうことを問題意識として持っておられて,一旦,技術職という形で認定されると,その中だけで閉ざされてしまうということがあるために,必ずしも外への異動ということがないとおっしゃっているので,その関係はどうなのかなというところもあります。
【高橋委員】  私も,6ページの「専門的職員」の具体的な内容とで,文部科学省においてガイドライン等を策定し,分野ごと,丸1の管理運営,丸2の教育研究活動支援,丸3の学生の厚生補導に具体的な事例を示すと書いておられますけれども,こういうように分野ごとに示す方がいいのでしょうか。このIRを専門とする人をどう養成するのだろうかと考えると,本当は大学運営の全体にわたって理解ができて,なおかつ管理運営が得意になっていくというものではないのかと思います。この分野ごとに具体的な事例を示すということが,本当に流動性であるとか,職能成長を考えたときに適切なのかと思います。
【白井大学振興課課長補佐】  失礼します。共通してあった中に,流動性に関するお尋ねがあったかと存じます。もちろん流動性は非常に重要なことであって,例えば特定の大学だけで通用するようなスキルということでは,限界があると考えてございます。それゆえ,ここで「専門的職員」に関するガイドラインという形で,国の方で一定の関与をした上で,各大学間共通の認識が醸成されるような仕組みを作ってはどうかということで御提案をしている次第でございます。
 もちろん,それを受け入れる際には,各大学において具体的なジョブ・ディスクリプション(職務記述書),どれだけの能力が必要なのかということをお示しいただくとともに,将来,その方がどのようなキャリア形成になっていくのか。例えば,将来,到達点として,アドミッション・オフィサーであればシニアアドミッション・オフィサーのような形なのか,それとも,更に次のステップとして役職員のことまで想定されるのかということも含めて,各大学の方で御説明が求められていると考えてございます。
 それから,育成の方法,手段について,濱名委員の方からお尋ねがございました。これについては,先ほどの議論の中でも時期尚早なのではないかということで,これまでも御意見を頂いてきたところでございます。確かに,現在の段階では,必ずしも各大学における履修証明制度などを含めたいろいろなカリキュラムであるとか,あるいは職能団体におけるワークショップとか,そのようなものが必ずしも十分に整っていない部分も多々あろうと思います。ただ,一方で,それを言ってしまいますとなかなか議論が進まない部分もございますし,この教育部会の議論の中でも,国の方から一定の政策的な誘導,一定のルールを示して,それに伴って各大学や団体における自主的な育成の発展が期待されるのではないかというような御意見もございました。ですので,今回,基本的には後者の方の考え方に立って御提案をしているところでございます。
 また,各大学におけるカリキュラムの充実であるとか,団体の育成等についても,様々な助成制度,これから議論する必要がございますけれども,文部科学省の方としても考えられるところについては考えていきたいと思います。また,私立大学助成においては,現在でもインスティテュート・リサーチャー,アドミッション・オフィサーという方々に手当てしていることについては,これまで議論の中でも御説明させていただいたところでございます。また,その具体的なカウント,助成の行い方については,私立大学助成の担当部局ともよく相談をしていきたいと思ってございます。
【金子委員】  今の御質問を通じて,内容がはっきり具体的でないのではないかというお話だったのですが,私は大学設置基準で細かいことを言うのは本来の趣旨に外れているのではないかと思います。それから,基本的に,大学設置基準は,大学の要件として何が最低限必要かということを示すものであって,細かい大学の在り方についていろいろ言うというのは,もともとの趣旨ではないと思います。それは,大学の実情に合わせて大学が決めるべきことであると思います。
 もう一つ,今まで余り議論になっていませんけれども,今の大学設置基準そのままを読んでみますと,実は相当でこぼこがあるといいますか,かなりごちゃごちゃになっているところがありまして,本来,体系化するのであれば,むしろ大学設置基準そのものをもう少し体系化しなければいけない段階にあると思います。用語にしても,6ページに「学生の厚生補導」という言葉が出てきますが,設置基準用語で厚生補導なのですが,今どき厚生補導と言うべきかどうかとか,そのような問題も非常にあるわけで,これは長期的に考えていくべき問題であると思います。
 基本的に大学の「事務組織」というのは,私たちで調査しましたけれども,非常に多様で,それからキャリアも,異動も結構あるのですね。例えば,大学間にもありますし,それから金融機関等からの入職が結構あったり,実はいろいろとあるので,現実は非常に多様だと思います。それをあらかじめ何かの形で提起するということは非常に難しいと思います。
 今回の改正で重要なのは,「高度専門職」という言葉がありましたけれども,二つベクトルがあると思うのです。高度化と専門化のワンセットではなくて,高度化だけのところもあるし,専門化するところもあり,多様だと思います。これも,やはりあらかじめ設置基準で用語を決めてしまうということはかなり難しいのではないか。そういうメッセージを発したということだと思います。
 もう一つ,進歩したとすれば,三つの分野に事務機能を分けたということは初めてですから,これが糸口になって,将来,もう少し体系的な規定に進めていく可能性はあると思います。
 今の段階では,全部,余りにも細かく前もって規定することは非常に難しいと思います。
【島田委員】  金子委員とほぼ同じなのですが,いろいろな意見を聞いて,このことをしなければいけない,要するに教育として何かしなければいけない部分は分かるのです。ただ,法律上,本当にこれが必要なのかということがあって,先ほど言われたように,僕は教育の法体系は分かりませんが,逆に言えば労働の方はこのような法体系になっているわけです。裁量労働であればこのような書き方をして,大まかに決めながら,細かいことは厚生労働省通達なりで出していくわけですよね。要するに,最低基準を守らなければいけない,教育として本当に守らなければいけない部分は何かというのが,本来,大学設置基準であって,中を読んでいくとものすごく細かい部分まで,運営基準まで書いてありますよね。本当にこれが法律なのかという部分があります。それを踏襲していったら,結局,全てを書かなければいけないという話になる。
 もう一つあるのは,僕ら民間と違って,大学の場合は国立大学と民間大学,私立大学とあるわけですが,これを本当にコントロールすることがいいのか。国だけをコントロールする法律であれば,このような書き方があるのかもしれない。しかし,民間も入っている,私立大学も自由奔放にして,ある教育一定水準を担保できれば行いなさいよと言っている大学がある中に,こういう文書を入れてきたことが本当にいいのかどうかというのは,僕は分かりません。大学の関係者が締め付けられる,このように細かく書いてもらった方ができるのだから書いてほしいというのだったら,それもあるかもしれないけれども,浦野委員もそうだと思うのですけれども,普通は余り書くなと。基本的に自由があるのだから,原則と最低だけ書いて,あとは自由にさせろ,いろいろな委員会,人材育成も自由にさせろというのが本来の民間の動き方です。そうしたときに,国が本当にコントロールするというなら,国立大学だったら国立大学用の別のものを作ればいい。全ての大学をコントロールするために作るという意味での大学設置基準の中に入れるのだったら,少し違うなという感じがしています。
 だから,文部科学省通達なりでそういうものを本当に押さえ切れないのかどうかということが僕は分かっていません。もし,できるのなら,僕はそちらの方がいいと思いますし,何度も言いますけれども,皆さん大学の関係者ですから,逆に書いてもらった方が私立大学も国立大学も運営しやすいから,少し細かく書いて,「高度専門職」を入れて,人材のカウントも含めて,今後,置いたときに定数を入れられる,あるいは補助金の関係が変わるから書いてほしいというのだったら,それもありだと思いますけれども,僕個人の民間の感覚から言えば,この世界は変な世界ですよね。このようなところで法律改正するのですか,今の法律のままで文部科学省通達を出せば済む話ではないのですかという感じを持っています。そのときに,「高度専門職」をきちんと定義して,通達として出せばいいだろう。それでも定着しないのですよねというのが今の話だと聞いています。僕の感想ですけれども,そういう意見を持っているということです。
【濱名委員】  先ほどの質問で答えていただいていないのは,一つ目は,「高度専門職」という言葉を使うのですかということです。二つ目は,裁量労働制の資料が出てきているのですけれども,これを裁量労働制の対象にするという方向性があるのか,ないのかが説明の中にはほとんどなかった。意見として出て,資料が付いているというのが2点。
 もう一つは,具体的に大学設置基準にどう書くのかということなのです。先ほど金子委員が言われたとおりで,大学設置基準は大学の在り方の基本を定めるものとするならば,今,事務職員は,お手元にある大学設置審査要覧でいうと85ページに「事務組織」の話が書いてあるのです。それには何々を置くものとするという書き方なのですね。では,この「専門的職員」という形になってくると,そういう職種もあるのだというのは具体的にどのような書き方をすれば,大学の在り方の基本をこれに書くということは,置かねばならないということが基本になるわけですね。大学設置基準というのはそういう性格のもので,今,島田委員がおっしゃったように,先にそういうものを定着させるのだったら,まず大学設置基準から始まるのではなくて,様々な省令措置が講じられた上で大学設置基準に書くのだと思うのですね。その後の三つのポリシーとか,アセスメント・ポリシーなどというのは,過去,答申にずっと出てきているものをやっと法令処理しようかと言っています。ところが,ジョブ・ディスクリプションの内容についてもこれだけ意見が割れているわけですよね。詳しく書くべきだ,書くべきではないと。なぜここで出てきて,この次元のものを,すぐに大学設置基準に入れられるのかというのは,非常に分かりにくいところです。
【白井大学振興課課長補佐】  濱名委員から4点御質問があったと思います。
 初めに,言葉の問題がございますけれども,これまでも「高度専門職」と使ってまいりましたけれども,現時点では,「高度」という言葉は若干誤解を招く部分があるのかなということで,「専門的職員」という形で考えてはどうかと考えております。
 それから,裁量労働制についてでございますけれども,これについては先ほど御説明の中で理論的には対象になり得ると。文部科学省が対象にするとか,しないとかいうことではなくて,既に理論上対象になり得る分野,職種があるということでございます。ただ,まさに「専門的職員」の業務の仕方も非常に多様でございますので,URAの中にも教員に近いような,非常に高い独立性を持った仕事をされる方もいれば,一方では,ある意味アシスタント的な仕事をされる方もいらっしゃると思います。もし,アシスタント的な仕事をして,例えば教授から個別に指示を受けているというようなことであれば,そもそも裁量労働制の対象にはなり得ないだろうということでございますので,内容によりけり,ケース・バイ・ケースということになろうかと思います。
 3点目,具体的にどう書くのかということでございますけれども,具体的な書きぶりについては我々も法制的に省内でも検討をする必要がございますので,今回はまだその段階には至っていないと思っておりますけれども,今回,お示ししておりますのは,そこに盛り込む要素ということで,例えばこのようなことを盛り込んでいったらどうかということでの御提案と御理解を頂ければと思います。
 最後に,省令措置,様々な普及活動があって初めて制度化するべきものではないかというお尋ねがございました。そこについては,前回も私立大学助成の中でも対象にしているということも御説明申し上げましたし,またヒアリングの中でも,例えばURAについては過去数年にわたる大きな蓄積があるということで,もちろん「高度専門職」「専門的職員」,全ての分野ということは当然ないと思うのですけれども,分野によってはそのような長い蓄積,また国による助成が行われている分野もあるということかと存じます。
【佐々木部会長】  ありがとうございました。
 多少,私の私見も入れてまとめさせていただくと,この場でSDの必要性,職員のスキルアップが必要だということについては大体みんな共有しています。それから,現に「高度専門職」と呼ばれるような人たちを輩出しているということ。しかし,これは大学によって様々な多様性もあり差異もあって,今,ひとくくりに「高度専門職」あるいは「専門的職員」として分類できるかというと,まだ難しい段階ではないかということ。
 この部会での意見で,今,それを細かく概念規定するべきだという意見はなかったと思います。むしろ,金子委員,島田委員がおっしゃったように,これは基本的に必要なものとして位置付ける,あるいは位置付けることが必要だという御意見では,おおむね共有できていると思うのですけれども,具体のイメージについてはまだ多様性がありますし,それを果たしてどういう形で大学設置基準にうたい込めるかどうかというのは,検討の課題だと思うのです。
 そのように思うのですが,いかがでしょうか。これは,本日の議論も含めて1月末の大学分科会に報告をして,その上で,そこでまとまればよし,そうでなければ第8期の大学教育部会に持ち込んで継続審議をしていただく。だから,今,事務局も,大学設置基準に書き込む文案を持っているわけでは決してありませんので,そこへつなぐ議論はこの後まだ,なお必要なのではないか。このように思いますが,いかがでしょうか。本日のまとめは,そのようなところでよろしいでしょうか。
【長尾委員】  私は,地方の小規模の,本当に小さな大学の学長をしておりましたので,そこから見ると,これがどうしてもしっくりいかないのです。大学には,おっしゃったように大きな大学,国立大学,私立大学,いろいろな大学がある中で,それぞれの大学はそれぞれの行い方で,このようなところが必要な大学もあるでしょう。だけど,本当に小さな大学や生き残ろうとしている大学は,人件費比率の問題も出てくるし,このような人が必要でも入れられない状況の大学の方が,今,多く出てくるわけです。そのような中で,「大学運営組織」というのは,現実は小さな大学では教員も職員も一緒になって運営組織を作っていって,そこでSD,専門的な知識をその都度,必要によって研修し,高めていっているので,全く別の職種がぼんと入ってきて,それで解決できるかといったら,そのようなものではないと思うので,私は,今,委員長がおっしゃったように,小規模大学の方から見たら,これは少し時期尚早であると思いますので,その意見も入れておいていただきたいと思います。
【谷口副部会長】  少し確認をさせてください。先ほどの裁量労働制はこのような職種にとっては,現実にいろいろなことを考えると非常に大事なのです。先ほどおっしゃったように,裁量労働制の要件に,研究の業務とありますが,研究というと,URAの仕事はどうしてもそういう感じから少し違うのかなという印象を持つのですが,URAとか,ある種の業種は研究業務に入れられると考えて本当にいいのですか。
【白井大学振興課課長補佐】  そこは厚生労働省に確認しておりますけれども,内容によりけりだと思うのです。URA一般がこれに全部該当するかどうかというのは言えないと思いますけれども,URAの中にはこれに該当する方もあり得るのではないかというところでございます。
【谷口副部会長】  その辺りが非常に難しくて,研究というとそれなりに論文を発表をするとか,学会のようなところである種の研究を発表するというような印象をどうしても持ってしまいます。でも,実際に,いわゆる教員でもない,職員と言われる人たちとも違うところの,「高度専門職」と称して今まで議論してきた内容の業務で非常に大事なものがある。これは大学の機能強化に直結する話なのですよね。そのような業務に対して,運営そのものという話もありまして,先ほど浦野委員が言われた,対外的な業務をも入れて考える必要があります。実際にそのようなことを行っておられる方もおられるわけです。その方を,研究の業務というと少し違うのではないかという思いがあります。だけども,そういう職種・業務は,今後の大学のいろいろな意味での機能強化という観点では非常に大事だという印象を私は思っているのです。やはりこの種の業務担当者のために,きちんとした職種としてその地位を作ってあげるということは,それなりに意味があるのではないかとずっと思ってきたのですけれども,本当にこれでこの業務担当者が裁量労働制になるのかなというのが少し疑問なのです。
【佐々木部会長】  「専門的職員」を置く,これは「置くものとする」ではなくて,恐らく定めるとすれば「置くことができる」でしょう。それから,裁量労働制についても,先ほど説明がありましたように,適用することができることを厚生労働省との間で確認したということにすぎないので,この議論の発端は,やはりそのような専門職が増えてきている現状を踏まえて,制度的に位置付けをきちんと与えた方が大学の機能強化にプラスになるのではないか,そのようなところから議論を重ねてきたわけですから,あくまでもそのような視点でこれからの議論も重ねながら,大学設置基準の中に規定すべきとすれば適切に規定していく,ということではないかと思うのですが,いかがですか。
 時間の関係もありますので,本日の議論はここまでにさせていただいて,これは月末の大学分科会に報告をさせていただきますので,御議論はそこで重ねて進めていただくことにさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございました。

 

(2)アドミッション・ポリシー等に関する論点について,文部科学省から資料2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  それでは,次ですが,アドミッション・ポリシー等の法令の位置付けについてという審議課題になっておりますが,白井補佐から説明をお願いします。
【白井大学振興課課長補佐】  それでは,資料2でございます。アドミッション・ポリシーに関する御議論をお願いしたいと思います。これも従前からの継続の課題でございます。今回,アドミッション・ポリシーをはじめとした三つのポリシー,またアセスメント・ポリシーについて御議論いただきたいと思います。
 初めに,資料の1ページでは,現行の関係する基準について整理したものでございます。第2条2項では,入学者選抜に関する規定,入学者の選抜は公正かつ妥当な方法によって行うという規定がございます。
 第19条では,教育課程の編成方針,体系的に教育課程を編成するものとするという規定がございます。
 また,第25条2項では,成績評価基準の明示という規定がございまして,学修の成果に係る評価及び卒業の認定に当たっては,その基準をあらかじめ明示して適切に行うという規定がございます。
 また,学位規則におきましては,学位に関する事項については必要な事項を定めて文部科学大臣に報告する規定が設けられているということでございます。
 これから御説明する御議論を踏まえて,今後,現行の規定についてどのような改変を行っていくのかということについてお考えを頂ければと存じます。
 資料の2ページでございます。字が細かくて恐縮でございますけれども,初めに,今回,アドミッション・ポリシーについて,先般,高大接続の答申が出されまして,かなりたくさんの記述がございますので,少し確認をお願いしたいと存じます。
 アドミッション・ポリシーでございますけれども,様々なことについてアドミッション・ポリシーの中で明確化をするということが求められているところでございます。例えば,入学者に求める能力はどのようなものなのか,また,それをどのような基準,方法によって評価するのかを,アドミッション・ポリシーにおいて明確化することが求められるということ。あるいは,様々な能力,異なる背景を持った多様な生徒が培ってきた力をどのように評価するのかを明示する必要がある。あるいは,学力の三要素全てを評価の対象としつつ,特にどのような要素に比重を置くのかを,大学入学希望者に対して明確に示していくことが求められるという記述がございます。
 ほかにも,確かな学力として求められる力を的確に把握するためには,多元的な評価尺度が必要である。また,大学はどのような評価方法を組み合わせて選抜を行うかを,応募条件として求める大学入学希望者学力評価テストの成績の具体的提示等を含め,アドミッション・ポリシーにおいて明確に示すことが求められる。
 さらに,英語の四技能についても,アドミッション・ポリシーにおいて総合的に評価することを示すというような規定もございます。
 下段の方でございますけれども,各大学の基本方針に応じて,例えば科学オリンピックや各種大会等での活動や顕彰の記録をはじめとした様々な高等学校段階までの活動履歴,このようなものをどう評価するかもアドミッション・ポリシーにおいて明確化すべきということが書かれてございます。
 さらに,最後のところでございますけれども,各大学のアドミッション・ポリシーに基づいて,自分の考えに基づき論を立てて記述する形式の学力評価を個別の大学で課すことがあってもよいというように書かれているところでございます。
 次の3ページも,引き続きアドミッション・ポリシーに関する記述が書かれてございます。ここは多元的な評価に関する部分でございますけれども,アドミッション・ポリシーに示した基準・方法に基づく多元的な評価の妥当性・信頼性を高めて,大学が説明責任を果たしていく必要があるというような記載がなされているところでございます。
 アドミッション・ポリシーについてこのような様々な記述がある中で,今後,国において大学設置基準にどのような規定を考えていくのかということが,大きな論点として挙げられているところかと存じます。
 4ページでございますが,二つ目の論点としまして,三つのポリシーの相互の関係についてというところがあろうかと思います。こちらも,高大接続に関する答申の中から抜粋したものでございます。4ページの中段部分でございますけれども,大学において育成すべき力を学生が確実に身に着けるためには,大学教育において教員が何を教えるかよりも,学生が何を身に着けたかを重視して,学生の学修成果の把握・評価を推進することが必要である。その上で,大学教育で身に着ける力等を明確にした上で,ナンバリングの導入等も含めて,教育課程の体系化,構造化を行うことが求められる。アドミッション・ポリシーと併せて,学位授与の方針,教育課程編成・実施の方針の一体的な策定を法令上位置付けることが必要であるというような記述がなされてございます。
 この三つのポリシー相互をどういうように関連付けて,一体的な策定というように結び付けていくのかというところが二つ目の大きな論点になろうかと存じます。
 次の5ページにお進みいただきたいと存じます。3点目の論点としまして,アセスメント・ポリシーについてでございます。このアセスメント・ポリシーについては,濱名委員から度々御意見を頂きましたけれども,平成24年8月に出されました質的転換答申において明確な記述がなされているところでございます。プログラム共通の考え方や尺度(アセスメント・ポリシー)にのっとった成果の評価,その結果を踏まえたプログラムの改善・進化という一連の改革サイクルが機能する全学的な教学マネジメントの確立を図るべきだというような記述がございます。また,その際には,学修行動調査,アセスメント・テスト(学修到達度調査),ルーブリック(学修評価の基準の作成方法)等の活用を明確にすべきということが書かれてございます。
 また,アセスメント・ポリシーについては,先ほどの高大接続の答申においても記述がございまして,大学全体としての共通の評価方針(アセスメント・ポリシー)を確立した上で,学生の学修履歴の記録や自己評価のためのシステムの開発,アセスメント・テストや学修行動調査等の具体的な学修成果の把握・評価方法の開発・実践等が重要である,というような記述がなされているところでございます。
 アセスメント・ポリシーについては,この答申等も踏まえまして,どのように考えていくのかということが求められるところでございますけれども,先般11月にアドミッション・ポリシー等につきまして1回御議論いただきました。その際の御意見についてまとめたものが6ページでございます。
 アドミッション・ポリシーに関する現行規定との関係性をどのように考えていくのか。特に,現行規定をそれぞれの部分において修正していくのか,それとも三つのポリシー全体の関連性も含めた新たな規定として記述をするのかというような御意見。
 質的転換答申にアセスメント・ポリシーが記述されたけれども,それだけでは各大学への浸透が十分でないので,大学設置基準に明記することが必要ではないかという御意見。
 また,高大接続部会の答申案というのは,質的転換答申を踏まえて,各大学でアセスメント・ポリシーが整備されつつあることを前提にして,更に一歩踏み込んだものを書いているというような御意見。
 一方で,アセスメント・ポリシーについては,三つのポリシーと並列の位置付けとして考えるべきものなのかどうかという御疑問の御意見。
 アセスメントの実施主体についても,各大学に任せるということでよいのか,それともアメリカのように外部組織も活用してアセスメントを行っていくような仕組みを考えるべきなのかという御意見がございました。
 学修成果の評価が必要ということについてはおおむね合意があるけれども,具体的な方法については必ずしも十分な合意が得られていないのではないかという御意見。例えば,OECDのAHELO(Assessment of Higher Education Learning Outcomes(高等教育における学習成果の評価))も難航しているように,特に一般的な大学教育の成果を評価するのは非常に難しいのではないかというような御意見もございました。
 一方,分野によっては,工学,医療,プロフェッショナルスクールなどは国際的にもアセスメントしやすい分野があるけれども,一方で,そうでない分野もあるのではないかというような様々な御意見を頂いているところでございます。
 次に,資料の7ページ,8ページは東北地方にありますある私立大学から頂戴した資料でございます。アドミッション,カリキュラム,ディプロマという三つのポリシーと,アセスメント・ポリシーの関係付けというのも現段階では各大学において様々な取組があるようでございます。
 7ページの資料におきましては,この大学においてはアドミッション,カリキュラム(教育課程),ディプロマ(卒業認定・学位授与)それぞれの段階についてアセスメントを様々な方法で行っているということでございます。例えば,入学時考査であれば入学試験,学生アンケート,学修ポートフォリオというような仕組みがあって,それがそれぞれの段階で整備をされているということでございます。
 次の8ページでございますけれども,機関レベル,大学全体のレベル,学部・学科のレベル,個別の授業科目のレベルで,資料7ページにありますような様々なアンケート等の調査を行うというような方法をされているということでございます。
 資料9ページからは参考2としておりますけれども,愛媛大学の事例でございます。愛媛大学の教育学部の事例を参考に頂戴しておりますけれども,各課程のディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与に関する基本的な方針),アドミッション・ポリシー,それからカリキュラム・ポリシー(教育の実施に関する基本的な方針)に相当するものをお作りいただいているということでございます。こちらも非常に多様な行い方をしているようでございまして,11ページの方ではカリキュラム・マップというものを作りまして,どのような授業科目を履修した人に対して,どのように学位を授与するのかという全体像をお示しされているということでございます。
 最後の13ページの所では,ディプロマ・ポリシーに基づきまして,具体的にカリキュラムについてのアセスメント・チェックリストというものをお作りになって,例えば卒業時のアンケートであるとか,授業の評価,FDの報告書などを集めるというような全体的な整理をされているというように,今,それぞれの大学において,それぞれ非常に多様な方法があるということでございます。
 このような状況も踏まえながら,先ほどの三つ挙げさせていただきました論点,三つのポリシーとアセスメント・ポリシーについて御審議をお願いできればと考えております。
【佐々木部会長】  ありがとうございました。
 12月に,大学入試改革に伴う高大接続に関する答申が出まして,それ以来,各大学のアドミッション・ポリシーの重要性ということが,また注目されてきたところです。そのような趣旨で,本日,この議題が載っております。
 それから,三つのポリシーに加えて,アセスメント・ポリシーをきちんと確立すべきであるという濱名委員の御意見がずっとございまして,これを併せて,本日は余り時間がないのですが,少し御意見をこの場で頂きたいと思います。
【濱名委員】  まず,文部科学省に伺いたいのですが,この質的転換答申が出た後,アセスメント・ポリシーの普及,定着のために具体的にどのような政策を打たれたのか,教えていただけませんでしょうか。前回,白井補佐からは,定着していないということで時期尚早だという御説明があったと思うのですが,文部科学省は具体的にどういうようにアセスメント・ポリシーの定着に対する施策を打たれたのでしょうか。
【里見大学振興課長】  これは,今年度実施しておりますAP事業(大学教育再生加速プログラム)の中で成績評価基準の厳格化というメニューがございまして,これを取り組んでいただいている大学に,基本的にアセスメント・ポリシーに関わるようなものを行っていただいていると理解しております。
【濱名委員】  私は,それはアセスメント・ポリシーではないと思います。成績評価基準の厳格化ということと,その辺りの誤解が非常に多いようですけれども,アセスメント・ポリシーで想定されているのは,学位プログラムで想定されている到達目標が達成できているか否かを評価するということが目的であって,個々の学績の成績の付け方を厳しくするということとは全く関係ない話だと思うのです。
 特に,新聞の報道を見ていると,高大接続答申の中でも成績の厳格化というだけではおかしいと声がある。今,社会から大学の成績は信頼されていないのだから。今の成績の付け方というのは,実際に実地調査とか行きますと,出席していれば点数を上げるようなシラバスがいくらでもある大学もあるわけです。だから,社会から信頼されていない。だからこそ,それぞれの大学が掲げている到達目標が達成できているかどうかの答は1種類ではない。だから,AHELOと何が違うかというと,AHELOは,学修成果の評価の仕方を標準化することが目的だと思うのですけれども,それぞれの大学が掲げている目標をどのような方法,どのような尺度で証明するかという問題と,今,課長が言われたお話とは,関係ないだろうと思うのです。
 そういう点からいうと,アセスメント・ポリシーが普及していないとするならば,アセスメント・ポリシーの普及に対する努力をもっとしていただかなければ,インセンティブは何もないわけです。これだけ答申に明確に書かれて,存在が前提とされているにもかかわらず,先ほど雑談で佐々木部会長とお話をさせていただいた中で,どうするのかというと,アメリカでAHELOのようなものを全大学に導入するといった話は全然ないですね。
 私は,いろいろな大学を回って,アセスメント・プランを見ています。具体的にどうしているかというと,卒業生全体を対象にしてテストを行うような大学もありますけれども,多くの大学は到達目標に対しての成果であるなら,例えばルーブリック評価を行おうとすると,サンプリングして抽出した最終レポート等を,教員が時間を掛けて,自分たちが立てた目標に対して到達できているか評価をする。あるいは,クレムソン大学という州立大学がありますけれども,ここの場合は到達目標が幾つかあって,そのスコアは4点満点で,平均2点に到達していなければ卒業させないというポリシーを取っています。このような大学もあって,大学によってそれぞれ異なるのです。しかし,確実に学修成果の評価が進んでいるということは,アメリカの場合でもアクレジテーション(教育機関の品質認証)に対するプレッシャーがどんどん強くなっていく中で,学修成果の可視化を社会に対してしていかなければいけない。方法はいろいろあっていい。
 ここに挙げられているものも,2番目は少しいただけません。実際的にアセスメントというか,PDCAサイクルを記述しているだけです。愛媛大学と,もう一大学のものは比較的しっかりしたものだと思いますけれども,二つ目は少しいただけないと思いました。
 ですから,まずは先ほどの審議の中で金子委員が言われたとおりで,大学設置基準というのは大学の基本的な在り方を定めるものとするならば,到達目標をディプロマ・ポリシーで定めて,カリキュラム・ポリシーで内容や方法についてのポリシーを作ったとするならば,やはりそれができているかどうかを,立てた目標をどのような形で実行していくのかということに対して,大学は社会に対して約束をする必要がある。学生全員に対して個別評価をやれと言っているのではないです。そうしていかなければ大学の成績は社会から信頼されないという,現在の最大の悲劇から脱却することができないのではないかということなのです。
 今のところは,個々の教員が成績を付けることがいわばアセスメントだということで,それぞれの教員がばらばらに行っているという状態で,そこから脱却することを答申でこれほど明確にうたうのであれば,それは三つのポリシーとどういう関係であるかというと,やはりディプロマ,カリキュラム,アセスメントがつながっていて,それを実現するために,このような教育を受けるために,どのような準備をした学生が来てほしいというのがアドミッション・ポリシーだと思います。
 私は,いずれにしても,設置審査を行っているときに努力義務とかいう書き方で定めているものと,明らかに法令違反でペナルティーを課すものと両方あるわけですけれども,少なくとも大学設置基準に位置付けがないものに対して,先ほどのお話であれば,いつまでたっても前には進まないという実感があります。やはり答申に書いたものが実現していかなければ,我々がこうして審議をしている張り合いがないというのが正直なところです。
【金子委員】  つまらないことなのですけれども,片仮名が異様に多くなって,これをどうしたらいいのかと思うのです。アドミッション・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,ディプロマ・ポリシーと,書いているとやたらに文章が長くなりますし。ただ,これ,冗談ではなくて,教育改革に係るのがどうもアメリカ基準,起源の概念がそのまま入っている傾向があるのを反映しているところもあると思うので,私は,もう少し落ち着いて考えるためにも日本語化を考えてもよろしいのではないかと思います。選抜方針,学事方針,教育方針ということで,やはり独自に,我々は我々の考え方を作るというようにしていった。それは,単なる言葉の問題ではなくて態度の問題ではないかと思うのですけれども,一応申し上げておきたいと思います。
 もう一つの点は,今,濱名委員がおっしゃったように,いろいろな具体的な方法はあるのでしょうけれども,今まで余り議論されていないところは,大学設置基準はどの程度まで具体的なことを言うのか,どの程度抽象的に,例えば方針を立てなければいけないというように規定するのか,あるいは方針の内容まで立ち入って大学設置基準で書くのか。もう少し別の考え方としては,大学設置基準に応じて具体化する方法については認証評価機関がある程度の基準を作っているわけで,そのときには抽象的に規定化しなくても,こういう例がありますということを認証評価機関が持っていて,そのうち,この大学はどこに使っているのかという確認の仕方を,認証評価機関が持っているという形の規定の仕方もあるのではないかと思うのです。このように大学が教育に関する一定の方針とか,あるいは,そのための手段とかを規定する際に,どこまで,どのレベルでもって規定するのかというのは,やはり整理して考えた方が私はいいと思います。
 いろいろな方法があって,余り使われていないところもいっぱいある。だからといって,法令でどの程度まで全部総括的に規定するかというと,私はかなり難しいと思いますし,そのために認証評価という方法になったところもあるわけです。要するに,細かいところは,むしろ認証評価機関がきめ細かく大学に応じて判断するような仕組みが本来の趣旨だと思いますので,そのようなところは,チェックリスクみたいなものを持っていて,認証評価するときにそれを用いて,そこの大学がどのようなことを行っているかを評価する,そのような形もあり得ると思います。そこの整理の仕方が少しあるのではないかと思います。
【谷口副部会長】  濱名委員が言われた,例えば成績の厳格化というのは,教員が厳しく付けるだけが成績の厳格化とかではないですよね。実際には,どこのレベルまでしっかりと理解をしたかという評価・検証を行っている大学があるでしょう。
【濱名委員】  残念ながら,大学設置・学校法人審議会で実地調査に行っている状況からしますと,谷口副部会長がおっしゃるようなしっかりと行っていらっしゃる大学はもちろんあるのですけれども,同じ大学の中でのばらつきがすごくひどいのです。シラバスの記述も全く不統一です。だから先ほど里見課長が言われたような話で受け取ってしまうのです。今の状況からすると,新聞報道でなされているのを見ても,文部科学省は成績の厳格化をして,留年するのだったらサポートすると。そのような話が本当にあるのかどうか知りませんけれども,そのようなことをしたところで,社会が大学の卒業生の質が上がったと評価するか。これはもう浦野委員に伺いたいぐらいですけれども,私は,もうこれまでの議論でもそのようなことではないと思うのです。
 ディプロマ・ポリシーも定めてきているのだけれども,今の段階でなぜ大学設置基準に書かなければいけないかというと,認証評価でも今までも扱ってきているわけです。ところが,現在,認証評価団体は学修成果に対する基準もばらばらですし,ポリシーを作らなければいけないとはこの答申にしか書いていないわけですから,それは認証評価に下りていく段階で定着していない。考えてみれば,到達目標があって,活動があって,それを検証する方法がない。要するに,仮説,検証の方法のない論文を書いているようなことではやはりいけないのではないか。
 やはりきちんと自分たちの組織の中で検証,それが内部質保証だと思うのですけれども,内部質保証を実体化しようと思ったら,それぞれの大学の責任においてそうしたものを作っていく。それが積み重なっていく中で,いわば認証評価団体が更にレベルの高いガイドラインを作っていくのだろうと思います。今の状態だったら,答申にしか書いていないし,作らなくてもいい。私が懸念しますのは,答申の空文化ということだと思うのです。答申に書いただけでは,やはり変わりません。
【谷口副部会長】  認証評価のときに,そのような議論があるのではないのですか,きちんと評価するのではないのですか。例えば,学長がそれらに関する質問に答えるなどは結構ありますよ。本学の場合,残念ながら全部のコースが全て検証体制を持っているとは言えないところはあります。そういう意味では,学内で随分レベルが違うというのはあるけれども,きちんとした検証・評価体制を持っているところもあるのです。それで,十分な体制ができていない教育コースは今,一生懸命評価体制の構築を行っているところがありますよね。
【濱名委員】  ええ,恐らく多くの大学はそうだと思うのです。では,不ぞろいなところをどうするのかというときに,何に基づいてそれを行っていかなければいけないのかというときに,答申は,この前申し上げましたように,大学関係者で1割も読んでいないどころか,5%読んでいればいいところだと思うので,答申に書いただけではなかなか実効性が上がらない。
 前に申し上げたかも分かりませんけれども,採用する際,大学の成績は企業からほとんど顧みられることがない。これは誠に残念なことで,やはり大学の成績が社会的な信頼を得ようとするときに,それぞれの大学がどういう基準に基づいて自分たちの教育活動を検証し,なおかつ,今度はそれに基づいて個々の科目評価をしていくということがそろわなければ企業から顧みられることはないと思います。ですから谷口委員のおっしゃるように,努力してないとか,全然うまくいってないと,私も申し上げるつもりはないのです。最終的に,組織的に,今,行おうとしている教学マネジメントでありますとか,内部質保証ということを考えていけば,そのような次の手を打たないと,2年たっても,アセスメント・ポリシーは今のところ全然定着していない。
【谷口副部会長】  名前はアセスメント・ポリシーなんて言わないかもしれないけれども,大学の中では教育関連の委員会等でかなりきちんと評価を行っていますよ。
【濱名委員】  いや,行っている大学と行っていない大学があることは事実です。
【谷口副部会長】  他大学は分からないけどね。
【濱名委員】  ですから,熊本大学は行われているかも分かりませんけれども,私が見ている範囲で,実地調査に文部科学省の仕事で行っている大学で,問題がない,立派だと思う大学は残念ながらほぼないです。
【谷口副部会長】  たくさん大学があるから,現状は十分には分かりませんけれども,教育の質保証評価,そういうことをきちんと行っているところもあるということだけは言いたいと思います。
【濱名委員】  もちろんそうです。それは否定しません。
【佐々木部会長】  質保証の答申をまとめたときに,確かに質保証に関わる大学の様々な工夫が必要であるということ。最後に,それをやはり評価する必要性ということをかなり議論して,アセスメント・ポリシーという用語が最後のページかどこかに書き込まれたという経緯があるのですね。ですから,質保証のための改革,やりっ放し,提言しっ放しではいけない。
【谷口副部会長】  それはそうですよね。
【佐々木部会長】  その成果をきちんと検証することが,各大学に課せられているということは共有していたのですね。ただ,それをアセスメント・ポリシーという形でうたうかどうかということについては,多少理解の差があって本日に至っているのだろうと思うのです。ですから,教育改革の成果の評価が必要だということは,恐らくもう皆さん共有できる。それを進めるために,大学設置基準の中にアセスメント・ポリシーをうたうべしと規定することが必要かどうかということも含めて,これは次期の部会に先送りをさせていただきたいと思うのです。本日,改めて濱名委員の御意見を伺って,なるほどと思うところもありますので,それも踏まえて,直近には27日の大学分科会の議論がありますけれども,恐らくその場でなかなか決着は付かないだろうと思うのです。少なくとも各大学が進めていった改革について,その評価,成果をアセスメントするということの必要性は誰も否定していないと思いますので,これは大学設置基準に書き込む,書き込まないは別にして,文部科学省としても進めていただきたいと思うのです。少なくとも教育改革については,答申をまとめる形では,地域で20か所ぐらいフォーラムを行いながら,いろいろな経験交流を重ねて定着させてきた。ただ,教育改革の評価の部分については必ずしも定着していないと言われれば,そのとおりかもしれないので,やはり評価まで普及していってこそだという改革だと思いますので,それは文部科学省の事務局としても心掛けていただきたいと思います。
【川嶋委員】  今のアセスメント・ポリシーにかかわらず,制度化することについての懸念は,形式的なコンプライアンスに終わって,実質的に機能しない,例えばアドミッション・ポリシーにしろ,ディプロマ・ポリシーにしろ,ほとんどの大学は抱えているわけですけれども,それに基づいて実際に教育が行われているかというと,認証評価に行ってもなかなか見て分からないところがある。だから,認証評価にしても,大学から見るとやはり最低基準なのですね。受審すればいいと。だから,大学に対しての認証評価の効果というのも,今の制度上だと極めて限定的で,谷口副部会長がおっしゃったように,確かに認証評価で訪問調査に行って,こういうところはこうしてくださいねということは助言しますけれども,その後,実際その助言に基づいて大学が本当に真摯に改革を進めているかというと,非常に心もとないところがあります。
【谷口副部会長】  それは,大学の責任だから,真摯に取り組まなければ信用されなくなってしまう。
【川嶋委員】  ですから,制度化することのいい面とマイナス面というのがあって,やはり今のところ,残念ながら大学はどうしても表面的に遵守していればいいという考え方に流れているのではないか。制度化する,しないにかかわらず,いかに実質化していくかというところの仕組みは,もう少しいろいろなポリシーや制度を作る際に考えないと,もう20年以上,日本の大学改革をこれだけ議論してきていて,いまだに社会からも,国際的にも評価されないとおっしゃる人が何人かいるとしたら,それはこれまでの行いや,どこかに間違いがあったということを真摯に受け止めて,形式よりも実質化をどう促すかというところにもう少し知恵を絞った方がいいのではないかというように,私は思いました。
【濱名委員】  二点なのですが,一つは,先ほどの里見課長のお話もあったのですけれども,答申に書いたことは実現できるように,是非きちんと奨励策を取っていただきたいということ。
 もう一つは,質的転換答申の21ページに,大学支援組織に対してアセスメント・テスト,学修行動調査,ルーブリック等,学修成果の把握の具体方策について,学協会も含めて多元的研究開発を推進すると書いていらっしゃるのですけれども,先ほどの説明でもそのことは一切出てこないですし,今の我々の議論も大学と我々の話で,大学支援組織に対していかなる政策を取っていただいているのか,そこは非常に懸念するところが大きいのですね。ですから,お答えいただけなければいただかなくても結構ですが,やはり具体的に答申に書いたものが結実するような形で推進策を取っていただくようにお願いしておきたいと思います。
【金子委員】  私,先ほどの部会長のまとめで結構だと思うのですが,一つだけ気になりましたのは,アセスメント・ポリシーという言葉で少しごまかされているところがあって,成績評価とか,個々の学生のパフォーマンスの評価と,改革の評価と,多分,両方でお使いになっていて,少し混乱しているかなと。これはかなり重要なところなので,区別しておいた方がよろしいと私は思います。
【佐々木部会長】  私が申し上げたのは,改革の評価,成果をきちんと可視化することが必要だろうということですので,これについては是非引き続き各大学の取組を促していただきたいと思います。
 時間の関係で,この件の議論は,本日はこれまでにいたしたいと思います。

 

(3)認証評価制度の見直しについて,文部科学省から資料3-1,資料3-2,資料3-3,参考資料2,参考資料3に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  それでは,最後に認証評価制度について,これは前回決着が付いたのだろうと思っていたのですが,また戻ってきましたので,その経緯を含めて事務局から説明をしてください。
【田中高等教育政策室長】  失礼いたします。それでは,認証評価について説明をさせていただきたいと思いますが,その前に,先ほど来の議論につきまして,本日の資料の参考資料3を見ていただけますでしょうか。
 参考資料3で,質的転換答申に対する取組の進捗状況について,まとめた資料を配付させていただいております。これは数回前の会議で説明をさせていただいておりますので,重複は省かせていただきますが,先ほど来の指摘につきましては参考資料3の内部質保証の確立というところ,質的転換答申で言われているところでございます。この部分につきまして,アセスメント・ポリシーに限らず,内部質保証の確立という提言に関する取組状況を右の欄の方にまとめてございます。
 まず一つは,先ほど里見課長からも話がございましたAP(大学教育再生加速プログラム)のほか,私立大学等改革総合支援事業などによりまして,いわゆる評価手法の開発というミクロの部分に特化したわけではございませんが,教学マネジメントに基づく内部質保証などの改革サイクルに対する支援というものは取り組んでいるところでございます。
 一つ丸を飛ばしまして,三つ目の丸でございますが,評価手法の取組,あるいは学協会の取組などに関しましては,先導的大学改革推進委託事業に基づきまして,諸外国の分野別保証の取組の把握や先導的な評価手法の収集なども含めた調査研究を行っています。さらに,学協会ということで申しますれば,学術会議の方で分野別の教育課程の参照基準というものを作っているわけでございまして,そのようなものを実際に内部質保証,教学マネジメントにどう活用していくか,そのようなものの調査研究も実施しているところでございます。
 また,大学生の学修時間等につきましては,欧米と比較して少ないという調査結果があるわけでございますが,経年的な調査がないということで,国立政策研究所におきまして,これは本部会でも一度説明をさせていただきましたが,モデル的な調査を実施した上で,2年に一度の学生支援機構が実施しております調査の中で,定型的な調査を定例化していこうという取組をしているところでございます。
 その上で,真ん中の欄でございますが,法制的には一言で申しますと,全学的な取組というものをどう充実させていくかが求められる中で,本日の最初の議題でございます学長を補佐するという観点からは,「事務組織」につきまして「大学運営組織」という形で位置付けることが適当ではないかということでございます。そして,2番目の議題でございました全学的な方針,どこまでポリシーというものを示していくかということはございますが,全学的な組織ということだけではなくて,全学的な方針というものをどう位置付けるか,そして,全学的な内部質保証というものについて,認証評価などでどう取り組んでいくか,そういうことを,今,検討いただいているということではないかと思っているところでございます。
 その上で,話を元に戻しまして,認証評価の関係について説明をさせていただきます。
 まず,資料3-1を御覧ください。前回の大学教育部会におきまして御了解いただきました認証評価に関する制度の改正の方向につきまして,前回の大学分科会におきまして御審議いただいたところでございます。大学分科会での主な意見をまとめたのが資料3-1でございます。
 最初の丸でございますが,学位は認証評価によって質の保証がなされているということが前提となっていることから,認証評価そのものの国際的な同等性の議論も必要不可欠ではないかという御意見です。
 2番目の丸でございますが,学修成果の評価ということも必要ではあるが,一方で客観的,あるいは外形的な基準に従った評価というものも依然として重要ではないかという御意見です。
 3番目の丸でございますが,大学設置基準で設定されている基準は低い段階に設定されているものであり,高いレベルで実質的な評価ができるよう認証評価も考えるべきではないかという御意見です。
 4番目の丸でございますが,認証評価が具体的な日本の大学の質保証に効果的な手段となるように検討することが基本的な視点なのではないかという御意見です。
 下から3番目の丸でございますが,評価の効率化については評価によって十分に質を確保できるかという観点から議論すべきであって,大学の負担軽減という議論から検討するのは適当ではないのではないかという御意見です。
 下から2番目の丸でございますが,既に各認証評価機関が行っていることを後追い的に法制化するのではなく,平成30年度からの第3サイクルが目前に来ていることを踏まえ,それに向けて評価の在り方をどう見直すかという観点から,検討していくことが必要ではないかという御意見です。
 そして,最後の丸でございますが,高大接続答申に基づいて大学入試,更に大学教育の在り方をこれから改革しようということを前提とすると,今回,省令を改正しても,その評価の仕組みがまた変わることになり,評価される側(がわ)に混乱が生じる可能性があるのではないかという御意見を頂いたところでございます。
 特に下の方の二つの御意見でございますが,前回まで御議論いただいた認証評価の改善の在り方といたしまして,取り急ぎできるものについてはまず省令改正をするという方向で改正案をまとめ,それを大学分科会で御審議いただいたところでございますが,そのような中,特に下の二つにございますように,現在,認証評価,評価をする側(がわ)からいたしますと,第2サイクルの途中とう中で,評価の途中の段階で評価基準を変えるのはいかがかという観点から,今,できるものというよりも,第3サイクルに向けて認証評価制度全体をどう改善していくことが必要か,そういう検討が必要ではないかという御意見を頂いたところでございます。
 また,もう一方の高大接続答申を踏まえますと,入試改革,大学教育改革をこれから進めていこうという中で,評価制度だけを先行して変えるのはいかがかという御意見を頂いたところでございます。
 そのようなことを踏まえまして,今できるものを切り抜いて議論としてまとめるということではなく,特に第3サイクルというものが目前に迫っていることを踏まえまして,第3サイクルに向けて認証評価制度全体をどう改善していくかという形で今期の議論をまとめて,さらに,その議論を次期の大学分科会,大学教育部会に引き継いでいきたいと考えているところでございます。
 そうした観点から,資料3-2でございますが,前回会議までのような現時点でできることを切り出した省令案ということではなくて,次期の大学分科会,更に大学教育部会におきまして認証評価制度全体について改善策を検討するための,今期の論点・検討課題を整理するという形での資料でございます。この論点・検討課題を1月下旬の大学分科会にも掛けた上で,この論点・検討課題に基づいて,次期の大学分科会,大学教育部会に認証評価制度全体の改善方策の検討を引き継いでいきたいと考えているところでございます。
 その上で,資料の説明をさせていただきます。
 まず,1のところでございます。1は,意見等の背景・経緯を整理したものでございます。最初の段落でございますが,社会の急速な変化の中で,大学教育の質に対する社会的要請はますます強くなっているということを記述しております。
 その上で,第2段落でございますが,大学の質保証につきましては,質保証システムの強化に関する国際的動向,あるいは規制改革の流れの下での事前規制から事後チェックへの考え方などを踏まえて,第三者評価制度である認証評価制度が導入されたという経緯を記述しております。
 そして,第3段落でございますが,現状といたしまして,現在,認証評価は第2サイクルに入っているということを記述し,そのような中,第4段落でございますが,認証評価につきましては最低限の質の確認にとどまっており,評価を通じた質の向上の促進につながっていないという指摘もあるということを記述しています。
 その次の第5段落でございますが,質的転換答申においては,各大学における全学的な教学マネジメントの下での改革サイクルの確立などが提言されている中で,各大学における大学教育の質的展開を促進するための質保証システムとして,認証評価制度の在り方を検討することが必要になっていることを記述しております。
 その上で,下から二つ目の段落でございますが,認証評価機関においても学修成果を重視した評価などの取組も行っているが,大学教育の質的転換の促進とともに,大学の質保証の一層の充実を図るため,平成30年度から始まる認証評価の第3サイクルに向けて,認証評価全体の在り方について検討し,必要な改善を行うことが求められることを記述しています。
 最後の段落でございますが,このため,大学教育部会での議論を踏まえ,認証評価制度の改善に関する論点・検討課題を整理し,次期の大学教育部会においては,これに基づき,更に具体的な改善方策の審議を行うということを記述しております。
 その上で,これまでの本部会での審議を踏まえまして,具体的な論点・検討課題を2以降で整理しております。
 まず,評価の在り方でございますが,論点といたしましては,1ページの下から2ページにございますように,現在の認証評価制度におきましては,いわゆる法令適合性という観点から,教育研究環境の確認・評価が中心であること,さらに,認証評価機関が定める基準に沿って,一律同様の評価を受けることとなっているという中で,冒頭にもございましたように,最低限の質の確認ということのみならず,評価を通じて実際の改善につなげていく,各大学の大学教育の質的転換,あるいは各大学の強み,特色を踏まえた機能別分化の促進など,質の最低限の確認のみならず実際の改善につなげていく,そのようなことが求められるということを論点として挙げているところでございます。
 その上で,論点に対する必要な検討課題といたしまして,これまでの審議を踏まえまして5点ほど記述をしております。
 最初の丸でございますが,学修成果や内部質保証を重視した評価への発展・移行。
 2番目の丸でございますが,特定の教育研究活動に重点を置いた評価と,このような評価を実施した場合の共通の評価項目の扱いなど,大学の多様性に対応した評価の推進。
 3番目の丸でございますが,各大学が掲げる目的・水準等に対する評価,いわゆる達成度評価など,各大学の改革を支援するための評価の推進。
 そして,4番目の丸でございますが,各大学の評価結果に応じた次回評価の弾力化。括弧書きにございますように,例えば優れた評価を受けた場合には,受審の期間,あるいは受審内容の特例などを設けることによって,各大学の改善のインセンティブにつなげてはどうかという観点でございます。
 それから,一番下の丸でございますが,大学教育の質的転換,いわゆる学位プログラムということも踏まえますと,分野別評価の推進ということが必要でございますし,そのような御意見はこれまでの審議でも頂いたところでございます。ただ,そのような際には,例えば機関別評価の中に分野別質保証を導入するということも考えられるわけでございますが,現実的には,人材でございますとか,体制ということを考えると,なかなかすぐには難しいというところがございます。そのために,今,関係団体で認証評価以外の取組として取り組まれておりますJABEE(Japan Accreditation Board for Engineering Education(日本技術者教育認定機構))などの発展も含めて,分野別評価を考えていくことが必要ではないかということが最後の丸でございます。
 次は,2点目の検討課題,評価結果を活用した改善の促進でございます。
 まず,論点でございますが,現在の認証評価制度は,制度的には評価を受けることのみが課せられておりまして,評価結果を踏まえた改善について法令上の規定はございません。そのような中で,大学教育の質的転換を始め実際の改善につなげるためには,評価結果を各大学の具体的な改善につなげるための仕組みの整備が必要ではないか,というのが論点でございます。
 その論点を踏まえた検討課題を幾つか例示してございます。
 最初の丸でございますが,現在,法科大学院に対する認証評価につきましては,適合・不適合判定ということが法令上位置付けられてございます。また,現在,法令上の位置付けはございませんが,実際に認証評価機関の評価に当たりましては,適合・不適合という判定を行ってございます。そのようなものを法令上にしっかり位置付けるということも含めて,評価基準への適合・不適合の判定の仕組みを整備することが必要ではないか,ということでございます。
 2点目の丸でございますが,括弧書きにございますような不適合判定に対して再度の評価を行うということも含めまして,評価結果のフォローアップの仕組みの整備ということでございます。
 3点目でございますが,括弧書きにございますような各種補助金の応募条件における適合判定の要件化などをはじめといたしまして,評価結果を様々な取組にどう活用していくかということでございます。
 4点目は,先ほどのところの再掲でございますが,評価結果に応じた次回評価の弾力化を図るということも,評価結果を活用した改善の促進という観点からも考えられるのではないかということでございます。
 その下,3点目の課題,認証評価機関の評価の質の向上ということでございます。
 まず,論点にございますように,現在,文部科学大臣の認証後も,特別の事情がある場合には認証評価機関に対して国が一定の関与,例えば報告聴取などを行うことは可能でございます。また,評価の質の維持向上の観点からの認証評価機関の取組に関しましては,省令におきまして研修の実施などを認証評価の要件として定めているところでございます。ただ,今後,学修成果や内部質保証を重視した評価をはじめ,より質の高い評価の実施が求められ,そのための新たな評価手法の開発・改善が求められる中で,認証評価機関の評価の質を向上するための取組の促進というものが,先ほどのような現行制度,文部科学大臣の関与,あるいは認証の要件に加えて充実が必要ではないかということでございます。
 そうした観点からの検討課題といたしまして,3ページの一番上の丸でございます。本部会の中でも御意見を頂いたところでございますが,いわゆるメタ評価,あるいは認証評価機関の定期的なレビューというものも含めた認証評価機関に対する評価の在り方を掲げています。
 2番目の丸でございますが,法令上の位置付けも含めまして,認証評価機関における評価の質の向上の取組を掲げています。
 3番目の丸でございますが,先進的な評価手法の開発をはじめといたしました大学評価に関する調査研究の促進が検討課題として必要ではないかということでございます。
 そして,4点目,評価における社会との関係の評価でございます。
 まず,論点でございますが,現在の認証評価制度では大学教員を中心としたピアレビューによる評価形式が取られておりまして,これによりまして,仕組みとして教育研究活動に対する評価に必要な専門性は担保されているわけでございますが,大学進学率の上昇,あるいは新規卒業者の多くを大学卒業者が占める状況におきましては,大学に対する評価におきましても,専門性の担保ということのみならず,幅広い関係者の意見を踏まえるということが求められ,併せて認証評価の取組を社会に十分に周知することが必要ではないかということでございます。
 そうした論点の下での検討課題といたしまして,1点目の丸といたしまして,高等学校や自治体,あるいは産業界など,幅広い関係者の声を評価に反映するための仕組みの整備などをはじめとしたステークホルダーの視点を取り入れた評価の実施を掲げています。
 2番目の丸でございますが,現在,認証評価団体は,評価を通じまして各大学の特色ある取組も把握しているところでございます。そのような特色ある取組というものを発信することも含めまして,認証評価機関の取組の社会への情報発信の促進ということでございます。
 その下でございますが,評価人材の育成でございます。
 論点にございますように,認証評価制度の導入も相まって,大学に対する評価というものは根付きつつあるものの,評価制度の安定的な運用,更には先ほどの学修成果,あるいは内部質保証の評価をはじめといたしました更なる評価制度の発展のためには,評価人材の育成が必要であり,そのためには,検討課題にございますように複数の機関が連携した取組を含めて,評価人材の育成,あるいは専門的知見の継承のための取組の促進をすることが必要である,ということを検討課題として掲げているところでございます。
 そして,最後の課題でございますが,評価の効率化でございます。
 現状にございますように,大学は複数の評価への対応が求められている中で,評価制度を更に発展させていくためにも,評価を受ける大学等の作業を効率化するための取組が必要ということでございます。
 具体的な検討課題でございますが,大学ポートレートのデータの活用も含めまして,評価における公表資料,あるいは既存資料の活用の促進を掲げています。
 2番目でございますが,他の評価制度,国立大学については国立大学法人評価,公立大学については公立大学法人評価制度など,他の評価制度と連携した評価業務の効率化でございます。
 そして,4ページですが,例えば情報公表に積極的に取り組む大学につきましては,共通の評価について一部簡素化をする。そのようなことも検討課題として考えられるのではないかということでございます。
 資料3-3につきましては,ただいま申し上げました論点・検討課題を整理するとともに,備考というところで留意点,あるいは現行制度がどうなっているかということも含めて一覧にしてございます。この整理表につきましては,併せて御参照いただければと思います。
 認証評価制度に関する説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【佐々木部会長】  ありがとうございました。
 お聞きのように,これは本日,改めてここで審議をするということではございません。ただいまの御報告,論点及び検討課題の整理について御意見,あるいは御質問があれば,この場で伺いたいと思います。いかがでしょう。
【浦野委員】  多分,この集中審議のとき,私,出席できていないと思ったものですから,意見と,それから質問になるのですけれども,先ほど濱名委員から産業界の方が大学の成績評価を全く信頼していないというような話がありましたけれども,やはりここ数年,このような問題を産業界から見ていると,本当に心底,今後は大学で学んだことに企業が最大限敬意を払って採用に結び付けていきたいと思うのです。そう思ったときに,今の認証評価が機関別評価で,しかも外形基準だけというのは,外部の目から見たときにはほとんど役立たなくて,例えば大学ポートレートから始まって,分野別評価,達成度評価,あるいは内部質保証の在り方も全部公開してくださいということがないと,やはり社会からは大学で学んだことに敬意が払えないではないですか。私は,やはりそこが一番大事だと思っています。そのようなことが本日の中にも全部整理してあって,論点としてやっていきたいという姿勢があるわけですから。
 その上で,そのようなことを是非行っていただきたいという中での質問なのですけれども,これを行おうとすると,今の認証評価機関の評価をする人たちの技術というか,質,量ともにどういうように変化しなければいけないのか。そこを少し,感覚的でいいのですけれども,教えていただければと思います。もし,量,質ともに広げることが必要であれば,それを先に行わないと,このようなことは空文になってしまいますよね。そこにお金を突っ込んででも評価人材を育てていかなければいけない。それは,必ずしもピアレビュー的に大学の先生だけではなくて,もしかしたら民間企業の監査部門にいた人とか,民間企業でも業績評価している人はたくさんいるわけですから,そういうところから人を引っ張ってこられるのではないかなど,いろいろな考え方がありますので,まず質,量の,どのぐらい増える必要があるか教えていただければと思います。
【田中高等教育政策室長】  それは,ここに掲げてございます事項について,具体的にどこまで行うかによっても異なると思いますが,例えば学修成果や内部質保証の評価については,今も認証評価団体は一定の取組はしておりまして,それを国の制度としても位置付けようということでございます。ただ,国の制度として法律に位置付けたからといって,そのようなものが充実するわけでもございませんので,各団体の取組の充実が求められます。現状からいきますと,例えば学修成果の評価につきましては,認証評価団体の評価には,一つは認証評価団体が各大学の学修成果を直接評価するというような評価をしているところもございます。
 ただ,その評価の手法がどのようなものかといいますと,客観的な成果と言えるものとしては,例えば卒業率でございますとか就職率等の客観的な数値のほか,卒業生の評価,あるいは就職した企業の評価などの主観的な評価を組み合わせて学修成果の評価にしているという例がございます。さらには,そのようなものを全ての大学,一個一個の大学について認証評価機関が直接評価するのは難しいのも現状ですので,それを認証評価機関が評価するのではなくて,各大学がそのようなことを行っているかどうかを認証評価機関が評価する,各大学がそのようなチェックをしているかどうかを認証評価機関がチェックするというような取組もございます。
 そこら辺は,今,認証評価制度に学修成果の評価が位置付いていないこともございまして,国としても一律に在り方を規定しておりませんので,学修成果の評価が今,言ったように二つに分かれているということもございます。最初に申し上げました一つ一つの大学の学修成果を認証評価機関が直接評価していくということであれば,これはかなりの手間が掛かると思います。それから,そもそも先ほどの就職率でございますとか,卒業生の就職先のアンケートだけで学修成果と言えるのかという論点もあると思いますので,学修成果や内部質保証の評価の指標として十分かということで,更に評価手法を開発していくことになれば,更に評価に関する専門的人材,あるいは調査研究も含めて行っていかなければならないということになろうかと思います。
 そのような意味では,制度的な位置付けのみならず,具体的にどのような評価手法を開発していくか,ということが課題となっているわけでして,先ほどの例で,一部,先導的大学改革推進委託事業などで調査研究などはしておりますが,まだまだ十分ではないところもございますので,認証評価制度の制度改正のみならず,評価手法の開発,評価の専門人材の育成も含めて取り組んでいく必要があると思います。
 それから,論点の中で,例えば機能別分化を推進するためには,各大学の特色,強みを踏まえた評価を導入するということにつきましても,今も認証評価団体の方で選択評価として実施をしてございます。例えば,地域貢献に力を入れたい大学であれば,地域貢献についてオプションとして更に評価を受けることができます。ただ,これは今の共通の評価に加えて,更にオプションの評価を受けるということで,評価を行う側(がわ)も,評価を受ける側(がわ)も負担が増えることになります。さらに,評価手数料も追加で払わなければいけないという仕組みになっております。そうした中では,機能別分化を推進するような評価を導入する際には,この論点の中にもございますが,共通の評価の扱いなども弾力化していかないと,そもそも評価が増えるだけ,評価を受ける側(がわ)も評価を行う側(がわ)も負担が増えるだけということで,新しいものを導入する際には,共通の評価など簡素化も検討していかなければいけないのではないかということも論点には入れているところでございます。
 さらに,委員御指摘の中には,機関別評価にとどまらない学位プログラムのような評価も必要ではないかということが先ほどの指摘の中にあったと思います。これは先ほどの説明にもございますが,学位プログラムの評価ということになりますと,今は専門職大学院評価の中で一部行っておりますが,機関別評価を全て学位プログラムに基づく分野別評価にしようといたしますと,ノウハウも含めまして,実現するにはかなりの調査研究と体制が必要と考えられます。そのため,この論点の中ではJABEE,あるいは医学ですとか薬学などの分野では国際的な質保証のための先行した取組がございますので,そこは認証評価の仕組み以外のものも含めて,分野別の質保証の充実は考えていくことが必要ではないか,ということを検討課題には記してございます。
 ですので,定量的にどれだけの人や,どれだけの年数が必要かということを現時点で答えられる準備,状況にはございませんが,今,言ったようなことだけを取り上げましても,どこまで求めるかにもよりますが,評価を行う側(がわ),あるいは評価を受ける側(がわ)におきましても,真剣に行おうとすればかなりの負担増になると考えられるところでございます。
【黒田副部会長】  この認証評価制度の改正でありますけれども,今,第2期の途中でありますが,第1期から第2期に移るときに高等教育評価機構と大学基準協会は,分野別といいますか,各大学がその学問分野で何を目指しているかという具体のところまで評価するように変更はされているのです。今までの機関別評価で,本当に大学設置基準に適合しているかどうかだけを見ていたのが第1期です。第2期に入って,そのような具体の教育内容まで入ってきている。
 ここで,第2期の途中で,それに加えて改正するということは,受ける側(がわ)も混乱しますし,行っている方も,評価を行う側(がわ)の評価委員の研修を行い直さなければならないということになります。今,私が担当している評価機構では,大体350人から400人の評価委員をチャーターしているのです。これはみんなボランティアで来ていただいているわけですけれども,その人たちの研修をしっかりし直さないといけないということがありますので,今すぐということはできないと思います。ですから,第3期に入るまでの間にもう少し具体的なものを作り上げて,本当にどうしたらいいかということを考えていただきたいと思います。
 今,私のところで行っているのは,大学設置基準上の適合性というのは当然クリアしていることが前提でありますが,それに加えて,それぞれの大学が建学の精神に基づいて,どういう目的を持ってカリキュラムを作られているか,そこまで検証しているのです。それによって,どういう学生が育っているか。これは,自己点検評価の中で行っていただいて,そのような仕組みが出来上がって,きちんとその大学でPDCAサイクルが動いているかどうか。
 先ほどから,部分的に行われていて,ほかの学科,学部ではできていないという話がありますが,今,日本の大学で遅れているのは組織的に動くということなのですね。だから,担当している人が意識のあるところは改革されているのですが,組織的に動いていないものですから,大学全体が変わってこない。それが最大の問題だろうと思うのです。そこをしっかりと評価でも押さえていく。評価の中で,ここは足りないから改善してくださいというようなこともしっかりと付け加えているのですけれども,今の制度の中では言うだけで,それを検証して実行させるという力がないし,また法的にそのような制度になっていませんので,その改革が進む,そのような制度が一体となって動けるような制度が今後必要だろうと思うのです。そのためには,大学設置基準というのは余り細かくせずに,認証評価でどのようなところまで進んでいるかということを見ていく。
 これは,私立大学の場合は大学にものすごく多様性がありますので,一つの基準ではいかないのですね。それぞれの大学の持っている特性をどう生かして,その大学が社会に貢献しているかということが大事なので,その辺が見られるようなシステムを第3サイクルではきちんと押さえて,作っていく必要がある。だから,画一化というのは余りしない方がいいというように私は思っております。
【金子委員】  今のと関係するのですが,次の期に検討を持ち越すというか,宿題を整理するという立場でこれは書かれたわけですが,今のお話にありましたけれども,簡単に言えば今の認証評価というのはかなり中途半端なところがあるわけで,学校教育法では認証評価を行うことになっていて,認証評価機関の評価が不十分である場合には認証評価機関に対する認証を取り消すことはあります。しかし,個々の大学の質に関する審査に,学位の授与権を破棄するという罰則規定は一切ないわけです。もう一つの歯止めは,今度は私立学校法でもって,これは大学設置基準を含めてだと思いますけれども,一定の基準に達していない場合には解散命令があるという法律上の体系に,今,なっているわけですが,直接には評価結果が大学の学位授与権には及ばないという体系になっているわけです。
 これを実際にどういうように考えるべきか,まず十分に議論をすべきところだと思いますが,これも次期には議論の対象になってくるのかどうかというのは,かなり大きな問題だと思います。それを一つ,どのように考えるのかという点をお聞きしたい。
 もう一つは,評価にポートレートのデータの結果を使うかという言葉がありますが,私,認証評価と大学ポートレート,情報公開は両脚みたいなもので,情報公開は非常に重要だと思うのですが,現在,仮に発表されているものを見ますと,かなり不備と私は思うので,これは今年度中に結果が出るのかもしれませんけれども,ポートレートそのものの在り方についてもきちんと議論をするという視点は必要ではないかと思います。
 以上です。
【佐々木部会長】  それでは,まだまだ課題山積で,議論も尽きないところではありますが,本日の審議はこれで打ち切りたいと思います。
 本日,第7期の最後の大学教育部会ということですので,吉田高等教育局長から御挨拶があると伺っております。
【吉田高等教育局長】  本日も,皆様大変お忙しい中,熱心な御議論いただきまして,ありがとうございます。第7期の中央教育審議会,そろそろ任期が迫っておりまして,この大学教育部会も今回が第7期の中での最後の会合ということでございますので,改めて委員の皆様にお礼申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 この期におきましては,大学教育部会,大学の質保証という観点から様々なテーマに取り組んでいただきました。振り返ってみますと,学部等の設置に関しまして,届出設置制度の関係で学際領域の取扱いについて,どのように対処すべきかという御議論も頂きまして,それは設置認可の取扱いの方に反映いたしました。
 また,昨年の後半におきましては,教育再生実行会議の第五次提言の関係で,大変短期間ではございましたけれども,国際化に対応した大学・大学院の入学資格の見直しの問題,それから高等教育機関における編入学の問題等につきまして御議論いただきまして,それぞれにつきまして所要の結論を得ることができました。いずれも,委員の皆様の絶大なる御協力のたまものだと思っております。重ねてお礼申し上げたいと思います。
 来期におきましては,本日御議論いただきまして,引き続きということで引き継ぐべき事項も多々ございますし,今後,更に新しい課題も出てくるかもしれません。今,大学改革の関係は,大変スピード感を持って対処しなければいけないというような情勢になっております。そのような中で,事務局の方として,少し言葉は分かりにくいかもしれませんが,勇み足風に少し急いで検討を,あるいは結論をというような形でお諮りしているものもあるかもしれません。浦野委員もおっしゃいましたように,やはり大学が社会の期待に応える姿を早く出していかなくてはいけないということもございまして,お忙しいところ,そのような形でたくさんの課題をお願いしているということでございます。
 委員の皆様方には,本当に短期間のうちに様々な課題に取り組んでいただきまして,誠にありがとうございました。事務局を代表いたしまして改めてお礼申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
【佐々木部会長】  それでは,これで第7期の大学教育部会を閉じたいと思います。最後に,部会長として皆様の御協力に心から感謝を申し上げて,これで散会といたします。どうもありがとうございました。

 

―― 了 ――

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