大学教育部会(第29回) 議事録

1.日時

平成26年10月7日(火曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省 3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学の質保証の充実等について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)佐々木雄太部会長
(副部会長)黒田壽二副部会長,谷口功副部会長
(委員)浦野光人,長尾ひろみの各委員
(臨時委員)金子元久,川嶋太津夫,佐藤弘毅,島田尚信,濱名篤,吉田文の各臨時委員
(専門委員)安部恵美子,長束倫夫,長谷山彰,山田礼子の各専門委員

文部科学省

(事務局)藤原私学部長,水田主任視学官,森高等教育企画課長,里見大学振興課長,永山私学行政課長,永見谷私学部参事官,田中高等教育政策室長,新木大学設置室長,片柳高等教育政策室室長補佐,白井大学振興課課長補佐 他

オブザーバー

(オブザーバー)小島埼玉県立常磐高等学校校長,髙田埼玉県教育局県立学校部高校教育指導課参事兼課長,田中福岡県立農業高等学校校長,古賀福岡県教育庁教育振興部高校教育課指導主事

5.議事録

(1)大学の質保障の充実について,文部科学省から資料1に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  それでは,所定の時刻になりましたので,第29回の大学教育部会を開会いたしたいと思います。本日も御多忙の中,御出席いただきまして,ありがとうございます。
 さて本日は,議事次第を見ていただきますと,大学の質保証の充実等についてとありますが,本日は三つの案件について御議論いただこうと考えております。一つは文字どおり大学の質保証の充実について,これは本来,本部会の主要なアジェンダでありました。そこへ立ち返って次回以降少し詰めの議論をしていくために,これまでの振り返りを含めて意見交換をしたいということです。二つ目は,国際化に対応した大学・大学院入学資格の見直しについてです。これは既に一度ここで説明いただいたところでありますが,近々,文部科学大臣への答申という形でまとめるために意見交換をしたい,こういうことであります。三つ目は,高等学校の編入学の柔軟化に関わって高等学校専攻科からの編入,これも既に説明いただいているところですが,本日は二つの高等学校及び教育委員会からわざわざおいでいただきまして,その教育の実際をここで皆さんに知っていただくためのヒアリングを行う,そういう趣旨でございます。以上三件を本日の審議事項といたします。
 それでは早速ですが,議事に入ります。まず大学教育の質保証の在り方に関する論点について,資料1-1に基づいて事務局から説明をお願いいたします。
【田中高等教育政策室長】  それでは,失礼いたします。まず資料1-1を御覧ください。前回の本部会の会議におきましては,本日も参考資料5としてお配りしておりますが,質保証に関する全体的な審議事項とともに,特に認証評価制度の在り方,省令改正等の具体策を含めまして,御審議いただいたところでございます。その際,24年8月の質的転換答申の実現という観点から質保証,あるいは認証評価制度の在り方ということも議論することが必要ではないかという意見を頂いたところでございまして,今後認証評価制度の省令改正,あるいは更なる制度改正,または大学設置基準の改正という個別事項について御審議いただきたいと考えているところでございますが,その前に,あるいはそれと並行いたしまして,個別の制度改正にとどまらない大学教育の質保証の在り方につきまして,平成24年8月の答申を踏まえながら,広くこの機会にまず御議論いただきたいというのが資料1-1の趣旨でございます。
 そのような趣旨から論点という形で整理をしておりまして,主に内部質保証,設置基準,そして認証評価,中長期的な検討課題の四つに整理しておりまして,三つの事項,内部質保証,設置基準,認証評価につきましては平成24年8月の質的転換答申で示された方向性とそれを踏まえた検討事項という形で,論点として整理しているところでございます。
 まず内部質保証でございますが,平成24年8月の答申におきましては,教育課程の体系化,学修成果の把握と改革サイクルの確立,そして,専門人材の育成ということが提言されているところでございます。それを踏まえた検討課題といたしましては,各大学におきまして教育課程の全体構造の明示などにつきまして,学部単位ではなく,大学全体としての取組を推進すること,あるいは学修ポートフォリオ,あるいはアセスメント・テストなどの活用により学修成果の具体的な把握評価を推進すること,更にファカルティ・ディベロップメント(以下,「FD」という。)の充実,評価やインスティテューショナル・リサーチ(以下,「IR」という。)のための専門的なスタッフの確保養成のための方策について検討することが必要と考えられるところでございます。
 また,こうした取組を各大学において検討推進していくためにもこうした内部質保証ということにつきまして前回会議でも御議論いただきましたとおり,認証評価において内部質保証の取組というものを適切に評価していくことが求められるのではないかと考えられるところでございます。
 その下,設置基準でございますが,設置基準の関係では平成24年8月の答申では全学的な教学マネジメントのもとでの改革サイクル促進のための教学制度の見直しということが提言されているところでございまして,具体的な事項としてはその下にございますように,FDの充実などのほか,大学分科会で取りまとめていただきました大学のガバナンスの在り方の審議まとめにもございますように,スタッフ・ディベロップメント(以下,「SD」という。)の義務化,あるいは高度専門職の設置というものを設置基準に明記していくということが考えられるのではないかということでございます。
 また,2点目の単位制度,単位認定の在り方の見直しにつきましては,単位制度につきましてはいわゆるワークロード,学習量に応じて設定するということが基本でございますし,学習量を確保するということが,大学教育の質保証の観点からは必要になるわけでございます。そうした観点からいたしますと,例えば現在,大学設置基準第21条におきましては具体の1単位当たりの時間数の在り方,さらには卒業論文などにつきましては各大学が単位数を定めるということが規定されているわけでございますが,特に卒業論文などにつきましては各大学におきまして単位数の設定の仕方が大きく異なるという状況も見られます。学習量を確保することによって大学教育の質を確保するという観点から,そうした大学設置基準第21条を含めた,単位制度,単位認定の在り方というものについても見直しを検討するということも必要ではないかということで掲げているところでございます。
 更に3点目でございますが,これは抽象的基準の明確化という質保証の観点の要素が強いものでございますが,サテライトキャンパス,別置キャンパスにおける基準の見直しなど設置基準の明確化ということも教学制度の見直しの中で検討することが必要ではないかということでございます。
 2枚目でございます。認証評価につきましては平成24年8月の答申におきまして全学的なマネジメントのもとでの改革サイクルが確立しているかなどの学修成果を重視した認証評価が行われることが重要とされているところでございます。そうしたことを踏まえまして,具体には資料1-2という形で前回会議の資料を再度お配りしておりますが,その内容を再度確認させていただきますと,学修成果や内部質保証を重視した評価の在り方,あるいは幅広い関係者の意見を聞く仕組みの構築など社会との関係の強化,あるいは認証評価の結果や指摘事項を具体の大学の教育の改善に結び付けるための評価結果のフォローアップ,あるいは評価の効率化,こういうものについて検討することが必要ではないかということでございます。特にこの点につきましてはこれまでの議論も踏まえまして,制度化,省令改正等を行っていく方向で次回以降,更に具体的に検討いただきたいと考えているところでございます。
 更にその下でございます。中長期的な検討課題といたしまして,これまで御意見を頂いている事項を中心に整理しているところでございます。
 まず,設置基準関連といたしましては,最初の丸でございますが,学位プログラムへの移行です。現在の組織ごとの収容定員に基づく教員組織,校地校舎等の基準,いわゆる教育環境等のインプット中心の基準から学位プログラムに基づく基準への転換ということが課題として考えられます。
 そして2番目でございます。設置基準の役割の見直しというところでございますが,最初の丸につきましては,前回会議でも委員の方から教員一人当り学生数(以下,「ST比率」という)ということの指摘があったわけでございますが,現在の最低基準である設置基準という位置付けだけではなくて,そのようなST比率のような目指すべき基準というものを設定することが必要ではないかという論点でございます。
 またその下の2点目のぽつでございますが,現在は設置基準が設置認可,更には認証評価,両方の基準となっているわけでございますが,認証評価につきましては,これまでの議論におきましても最低限の基準を満たしているかどうかというだけではなくて,各大学の目指すべき方向,いわゆる到達度という要素も含めて評価することが必要ではないかという御意見も頂いているところでございます。そうした観点も含めまして,現在,同一である設置基準と認証評価の基準というものをどうするのか,区別するのかどうか,そういうことが論点として考えられるところでございます。
 そして,3点目でございますが,募集停止段階における設置基準の考え方ということでございます。これは現在の設置基準は募集停止段階におきましても一律に適用されるわけでございますが,募集停止の状況等を踏まえますと,そこを段階的縮小といいますか,段階的に設置基準の適用というものを縮小していくというようなことが適当なのではないかという議論もございまして,そうしたことも論点として考えられるのではないかということで入れているところでございます。
 そして,認証評価制度につきましてでございます。具体には前回会議で説明しておりますので,具体の内容は資料1-2を参照いただくといたしまして,項目としましては,中長期的な事項といたしましては機能別分化の進展に対応した評価の在り方,現在でも認証評価団体の独自の取組によりまして,設置基準等に基づく一律共通の評価に加えまして,国際化に関する評価,あるいは地域に関する評価など,各大学の特色を評価するような選択的な評価が行われているところでございます。そういうことも踏まえまして,機能別の分化に進展した評価というものをどう考えていくかということが1点目でございます。
 そして2点目は不適格判定を受けた場合の措置など評価結果の活用の在り方です。
 そして3点目といたしましては,現在,機関別評価については7年,専門職大学院評価については5年とされております認証評価のサイクルというものをどう考えていくか。あるいは認証評価の判定の状況によっては現在一律の評価サイクルというものを弾力化することも必要ではないかという御意見も頂いているところでございまして,そういうことも含めて,認証評価のサイクルというものをどう考えるかということでございます。
 4番目の評価はいわゆるメタ評価ということでございまして,認証評価機関は現在認証を受けると特に期限,再評価等はないわけでございますが,そうした認証評価を実施する認証評価機関自身に対する評価というものをどうするかというものが4点目でございます。
 その下,その他でございますが,一番下の質保証に関するシステム間(設置基準・設置認可・認証評価)の相互の連携の在り方のほか,その上,客観的なデータに基づいた分析,こちらの方は前回会議でもかなり御意見を頂いたところでございまして,特にぽつにございますような学修時間等の経年的なデータの把握,分析というものが必要ではないかという御意見を頂いたところでございます。こうしたことにつきましても質的転換等,質保証というものを議論していくに当たっては必要と考えられるところであると思いますし,できる限り,資料等の提供をさせていただきたいと思っているところでございます。
 そうした観点から,本日,資料1-4といたしまして,若干大学生の学習状況に関するデータ,調査結果について資料をお付けしておりますので,そちらについて簡単に説明をさせていただきます。資料1-4を御覧ください。大学生の学習状況に関する調査につきましては,2007年に金子委員を中心といたしまして,当時東京大学が実施した調査があるわけでございますが,昨年度,国立教育政策研究所が調査を実施いたしまして,その結果を公表してございます。それが資料1-4でございます。ちなみに2007年の東京大学の調査の回答数は約4万でございますので,この調査は1,600人という小規模のものでございます。ただ,これは試行調査という位置付けで実施いたしまして,今後,日本学生支援機構の学生生活調査との合同調査を実施する予定でございます。その日本学生支援機構の調査が,対象が約3万でございますので,そうした調査結果が出れば2007年度の東京大学の調査との比較なども今後できるのではないかと考えているところでございます。
 そうした試行調査という位置付けでございますが,若干中身を紹介させていただきますと,5ページの上の問1で,1週間の平均的な生活時間というものを調査しております。その中で,上から二つ目でございますが,授業の予習・復習,課題の時間というものを聞いておりまして,6時間以上と回答したものは,そこを足し合わせますと28.4%となってございます。ほぼ同様の調査項目について尋ねた2007年の東京大学による調査は32%となっておりまして,2007年の調査よりは4%低いという状況でございます。
 一方で,その表の上から四つ目の欄でございますが,大学の授業とは関係ない自主的な学習について6時間以上していると回答した方の割合は,足し合わせますと21.6%となっておりまして,これは2007年調査の17.6%より4%高いという状況でございます。すなわち母数の違いがございますので,どこまで正確な比較ができるかということはございますが,2007年と比べますと,授業の予習・復習などについては4%ほど下がっている。一方で自主的な学習については4%ほど上がっているという状況がございます。
 それから,5ページの問4の真ん中のところでございますが,大学での授業はしたいことと密接に関わっているという設問につきましては,「ある程度あてはまる」「よくあてはまる」という回答を足し合わせますと,65.4%となってございまして,これは2007年の東大の調査の53.7%より約12%上がっている,高いという状況でございます。
 更に7ページの問8でございます。大学の授業の有効性ということについて尋ねた質問でございますが,一番上の欄,一番下から二つ目の欄でございますが,将来の職業に関連する知識や技能,あるいは問題を見つけ,解決方策を考える力を伸ばす上で大学の授業が役立っているという回答はそれぞれ71.1%,66.5%となっておりまして,いずれも2007年調査よりも10%以上多いという状況でございます。これらから各大学で教育改善への取組が進む一方,それがまだ予習・復習などの増加につながっていないという傾向なども伺えるのではないかと考えているところでございます。ただ,いずれにいたしましても,こちらの調査につきましては,先ほど申しましたように,予備調査としてサンプル数が少ないという状況がございます。今後,大規模な調査が実施される予定でございますので,そういう調査なども踏まえながら,更に大学教育の質的転換ということについて議論ができるようにさせていただければと思っているところでございます。
 お戻りいただきまして,資料1-1でございますが,本日は先ほど申し上げましたとおり,今後認証評価,あるいは設置基準の具体的な改正,個別事項について審議いただく前に,あるいはそれと並行いたしまして,改めて大学教育の質的転換という観点から大学教育の質保証に関する論点,あるいは在り方について御意見を頂ければ有り難いと考えているところでございます。
 資料1-1から1-4の説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【佐々木部会長】  ありがとうございました。
 一昨年8月に答申を出しました。答申の出しっ放しにならないようにフォローアップをしていくこと,また質保証の諸施策について,これをきちんと評価していく。こういうことが恐らく今後本部会の課題であろうと思います。そういう観点で本日は今後本部会で何をどのように議論していくべきかというあたりの観点で意見交換したいと思います。
【濱名委員】  答申と見比べながら内容を拝聴していたのですけれども,内部質保証の点では前回も申し上げたように,全学ディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与に関する基本的な方針)や,アセスメント・ポリシー(学生の学修成果の評価について,その目的,達成すべき質的水準及び具体的実施方法などについて定めた学内の方針)というようなものを明確に位置付けていないということが非常に行いにくい状態であると思います。私は大学設置・学校法人審議会の関係の仕事もさせていただいているので,大変気になっているのはキャップ制の話なのですね。キャップ制の話は,現在,設置基準上キャップ制を置くことが努力義務になっています。キャップ制については専門職養成の目的養成分野においては非常に悩ましい関係で,つまり,資格要件とキャップ制の両立の問題というのは保健医療の分野を筆頭に,あるいは教員養成の分野も含めて調整していかなければいけない状態です。ところが,現状はガイドラインを示してないので,認証評価機関ごとに扱い方はばらばらです。また,設置審査なり,アフターケアの中でも共通見解を出し切れていない。ところが,現在のキャップ制の相場というのは2学期制を前提に考えていますけれども,東京大学など,4学期制になってくると,それを単純に半分に割ればいいのかとか,そのあたりについても明確にしていかなければいけない。
 設置基準で定めるべきことと,ガイドラインを省令等々で通知することを仕分けていかなければいけないのですけれども,判断基準があいまいであること,あるいは答申に書きっ放しであるものについてはやはりいずれかの形できちんと明確化していかないと,運用が実際にはできないのではないかというところがあります。先ほどの調査について,一つだけ付言させていただきますと,最近,金子委員の調査も実は山田委員方が行っていらっしゃるIRコンソーシアムのデータも見て気が付いたのですが,実はこれは産業界で恐らく同じような調査をされても,自己効力感というのは日本人の弱点なのです。だから,選択肢の真ん中に回答が偏る傾向があるので,大学の授業が役に立つということと自分の実力の間の乖離(かいり)というのは,実力が身に付いてないと見るべきなのか。我々が,学修成果の可視化を十分に学生たちにもう少し自己認識させることによって改善していく部分が出てくるでしょう。つまり,5段階評価でいうと3に固まりやすい日本人,5や1に丸を付けない日本人にとってみれば,実力十分というところにはなかなか丸がつかないというところがあるので,根拠を初等中等教育からきちんと積み上げて実力の状況を学習者と教員がシェアしていくことによって改善していくのではないか。そのためにも,先ほど申し上げたような審議結果は省令に盛り込むもの,あるいは通知なりガイドラインを示すものというのが重要になってくるのではないかと思います。
【山田委員】  今,濱名委員の方から学修調査というお話がございましたので,少しそれについてお伺いしたいこともありまして,発言させていただきたいと思います。
 まず,私どもがずっと行ってきているIRコンソーシアムというのを内部質保証のための学生調査という位置付けで,それからJCIRP(Japanese Cooperative Intstitutional Research Program(日本版大学生調査研究プログラム))というものもそういう形で行ってきております。つまり,学修調査に参加された大学にデータをお返しして,内部質保証のために使っていただくというような形で行っているものなのですね。そうしますと,今ここにある国立教育政策研究所がされる学習状況調査というものが国の政策立案という形で大規模調査をしていくのであれば,個々の大学というものはこのデータというものをもらえない,そしてまた,それを自分のところと比べるというために使われるものではないのかということも実はお伺いしたいと思います。
 一昨年,実は私はNSF(National Science Foundation(米国国立科学財団))や,NCS(National Center For Education Statistics(連邦教育省統計センター))など,国が行っている調査をアメリカではIRの専門家が使うわけなのですけれども,そういう宿泊型の研修に多分日本人で初めてだろうと思いますが,参加したときに,国が行う調査というのは,いろいろな大学のIRに関連している人たちが使うわけなのですが,そのときには非常に厳密に使い方も設定されていて,セキュリティーの問題とかも非常にあって,その場でしかパスワードが与えられない。あるいは,各大学のそういう分析する人がもし国のそういう集まっているデータを使おうとすれば,申請書を出して,更にそこの場所が出入りがきちんと鍵がかかるかとか,コンピューター自体をしっかりと管理しているか,つまり外に漏れないようにということをして初めて使えるようになるものだろうと思います。
 そういう意味で言うと,非常に大きな調査であれば,財産というのは非常に大きな意味を持ちますし,恐らく各大学などもそれと併せて使いたいという希望も出てくるだろうと思うのですが,そのあたりの見通しについても教えていただきたいのと,こういうものは毎年するものなのか教えていただければと思います。
【田中高等教育政策室長】  まず後者につきましては,資料1-4の国立教育政策研究所の調査は昨年度予備調査,試行調査といいますか,単体として行ったわけでございますが,それを定期的に行っております日本学生支援機構の調査とタイアップすることによって継続的にできるようにしていこうというのが趣旨でございます。予備調査を基に日本学生支援機構の調査とタイアップして定期的にできるようにしていこうという趣旨がございます。
 最初の質問でございますが,今,国立教育政策研究所における調査,それから日本学生支援機構の調査における各大学の情報,各大学からの調査票の取扱いということについては,今,情報がございません。これは確認いたしまして,個別,あるいは次回会議等でも御回答を差し上げたいと思います。ただ,例えば国の指定統計,学校基本調査などにつきましては基本的に各大学の同意がなければほかの目的には使用しないということがございまして,そういう指定統計と同じような扱いをしている可能性はあるということはあるかもしれません。ただ,委員の御指摘のとおり,こうした情報というものを総体的な統計のみならず各大学においても活用していくということは重要だと思いますし,実際,例えば大学の情報発信の仕組みでございます大学ポートレートを本年度稼働する予定でございますが,それも情報の収集に当たりましては指定統計である学校基本調査の情報を活用し,各大学の同意を得た上で,同意を得た範囲では各大学で共有していこうというようなことも進めようとしているところでございます。
 一言で言うと,恐らく各大学の同意さえ取ることができれば共有できるのではないかとは思いますが,そうしたことは可能な範囲で行っていくことが必要だと考えているところでございます。
【山田委員】  私どものIRコンソーシアムにしてもJCIRP(Japanese Cooperative Institutional Research Program)にしても,これは飽くまでも参加校の意思でされていてお金をもらっているものですから,そういう意味では非常に限られたものでしか使わないという前提ができております。しかし,国がされるデータというのは公共財としての意味がございますので,そのあたりが多分私どもが行ってきたようなデータの取扱いとはかなり異なってくる。なかなか日本ではそういうデータについての考え方というのが余り議論されておりませんので,この機会にしていくべきではないかなと思っているところです。
【濱名委員】  関連してですけれども,私立大学については日本私立学校振興・共済事業団が行っている学校法人基礎調査のデータは助成金をもらっている私立大学が全部提供して,規模であるとか,地域別の集計したものと自分の大学については比較できる状態になっています。それが昨年度の調査の段階では教育内容とか,教育方法についてのデータを集積しているので,ポートレートを公表ツールとお考えの向きの方もおられるようですけれども, IRとしての基礎データ,つまり,各大学の教育や内容を改善していくために個別大学に支援するデータ源としては,これはかなり有効なものであって,アメリカではアイペットのような共通のミニマムの情報と別にHEDSというハイヤー・エデュケーション・データ・シェアリング・コンソーシアムというのですけれども,リベラルアーツの小規模校だけがお互いの中での協定に基づいて改善のために作っているIRのような団体もあります。要するに,アイペットプラスアルファの情報をシェアしている団体があるのですね。そういう点では日本私立学校振興・共済事業団が収集している学校法人基礎調査のデータはある意味でそのプラットフォームとしては十分な機能を持っていると思いますので,その潜在的可能性については黒田副部会長がこれまでも主導してきていただいていますけれども,教育を改善していくとか,私立大学の在り方を改善していくためにうまく活用していただければ,プラットフォーム自体は既にある程度そろっている部分もあるということを申し上げたいと思います。
【川嶋委員】  相互に関連したことを2点,学修時間と単位制度のことですけれども,先ほど大学設置基準第21条という言葉が出てきておりますけれども,2008年の学士課程答申への単位の実質化ということが言われていて,法律上は1単位の授業科目は45時間の学習とされています。それから,授業時間については講義及び演習については15時間から30時間までを大学の範囲で決めるということになっているのですが,1単位の講義ですと,いわゆるシートタイムは最低1時間ですね。ところが,実際の授業の開講時間というのは90分であったり100分であったり,60分であったり,あるいは先ほど出た東大の4学期制ですと105分にするとか,あるいは70分にするとか,学修時間,あるいはワークロードの核となる実質的な授業時間というのは大学によって多様なのですね。これをどう考えるかということで,その以前に学生の修時間の調査を国立教育政策研究所が行ったということですが,文部科学省としては全国的な1コマの学修授業時間の分布というのを把握されているのかということを聞きたいといことが1点あります。
 2点目は関連して,さりながら,教育の質保証ということと量的な問題というのは必ずしもイコールではないわけですね。学修時間とここで今質保証で求めている学修成果というのは必ずしもイコールではないわけです。アメリカではカーネギー財団が,カーネギーユニットというシートタイムを中心とした量的なものをベースとした単位制度を作ってきたわけですけれども,最近のコンピテンスベースのプログラムが拡大するにつれて,もう一度単位というのを見直そうとしている。つまり,量的な学修時間に基づく単位制度から,むしろ学修成果とか,コンピテンス,どういう能力を見付けたかということについて見直そうとしている。
 ヨーロッパの方でも単位制度というのは国によってまちまちです。ボローニャ・プロセスで一応共通理解,25時間から30時間のワークロードが1単位ということになっていますけれども,しかし,そのときのプラスアルファとして学修成果を併せて単位の基本にするとかですね。今単位制度というものは従来の時間に基づいた単位制度から国際的に見ると変わりつつあるということで,先ほどの授業時間シートタイムの分布ということと併せて質的な保証という観点から単位制度を単に時間,現行の設置基準にあるような時間で規定していってはどうか。これもむしろすぐにというわけではなくて,中長期的な課題として改めて単位制度について日本でも検討していく必要があるのではないかということ。
 以上です。
【佐藤委員】  資料1-1に示されております論定整理について気になる点がありますので,発言させていただきます。質的転換を促すために今後詰めるべき項目として内部質保証,設置基準,そして認証評価,この3点プラス中長期ということになっています。3点そのものについて異論がないところですけど,今回のこの整理の中で設置認可という大切なフェーズが欠落しているのが大変気になるところでございます。従来我が国の公的な質保証の仕組みとして三つをずっと私たちは大事にしてきたつもりです。設置基準,そして2番目のフェーズが設置認可,つまり,審査ということだと思います。3番目が認証評価。今回資料1-1の論点整理を見ますと,設置認可のことに言及されているのは中長期的なところでわずかに小さなドット一つのみです。実は大学設置・学校法人審議会に長く携わってきた者といたしまして,平成15年度の大幅な規制緩和以来,様々な審査の現場,そして,大学の質保証の観点から問題が広がっているということは大方が共通認識だというように思っているところでございます。それは設置基準そのものの緩和ということにも問題があると同時に,設置基準に準拠した設置認可審査の在り方につきましても,審査ルールの大幅な大綱化等々,大変細かいことになりますけれども,問題が考えられます。
 設置基準の具体的な審査に当たりましては,例えば専任教員の在り方や,施設設備の在り方などをかなり細かく審査していくのが設置認可制度の要諦だと思っております。しかもこれは設置認可の制度の中で行うのは,狭義の意味での事前審査だけではなく,アフターケアということで認可後の状況についても履行状況をきちんとチェックしながら,その後に到来する認証評価につなげていくというような公的な役割は非常に大事なことだと思っております。
 その点で,今後詰めるべき事項として,第2のフェーズである設置認可の仕組み,そして,審査ルールの見直しということを是非御考慮いただければというように思うところでございます。大学設置・学校法人審議会では盛んに議論しておりますけれども,大切なことは大学設置・学校法人審議会だけで決めるわけにまいりませんので,是非中央教育審議会の場で大事な柱の一つとして取り上げるべきだというようにお願いいたしたいと思います。
 以上です。
【田中高等教育政策室長】  失礼します。設置認可の仕組みについては大学設置・学校法人審議会ということはございますが,ただ,両者,密接に関わる事項がございますので,それは連携して審議していくことが必要だと思っております。実際,大学の設置認可の在り方の検討会の報告を踏まえた設置認可制度の見直しにつきましても,大学設置・学校法人審議会での御議論,設置認可の審査期間の長期化や,認可の早期化などの取組につきましては,この大学分科会でも御議論いただいたところでございますし,設置認可の仕組みでございます届出設置制度の改善のためには学位規則の改善が必要だということで,学位規則の改善につきましては大学教育部会でも御議論いただきまして,制度改正をしたところでございますし,委員の御指摘の今回の資料1-1は平成24年8月答申の指摘事項に合わせて整理しておりますが,1枚目の一番下のサテライトキャンパスなどを始めといたしまして,設置基準の明確化,先ほど指摘がございました平成15年の規制改革も踏まえまして,抽象的基準になっているものについては必要なものは明確化するということも設置基準の論点になると考えているところでございまして,そういう点につきましては,設置認可の在り方の見直しの検討会に基づく改善のときと同様に,今後も大学設置・学校法人審議会,大学分科会,連携して設置認可の改善に必要な事項については取り組んでいくことが必要と考えているところでございます。
【佐藤委員】  それでよろしいと思いますけれども,もう一つのことだけ申せば,新しい教育研究組織の設置につきまして,設置者の最も緊張する場面というのが実は審査を受けるというところでございます。ここでしっかりとした事前チェックをしておくことが質保証の一歩として大切だというように思う一心から申し上げました。
【濱名委員】  何度も申し訳ないのですけれども,文部科学省に教えていただきたいのですけれども,設置審査の在り方もいいのですが,そもそも準則主義でこのままいくのでしょうか。既に募集停止をする大学等々出てくる中で,大規模の国立大学は全体としての量的拡大,学士課程について行ってはいらっしゃらないですけれども,私立大学の状況を考えていくと,中央教育審議会マターとして,競争原理にゆだねていくという状態のまま,このまま高等教育について考えていかれるおつもりなのか。そういうことはまたどこかの段階でお考えになる御予定なのか。教えていただければと思います。
【田中高等教育政策室長】  正に大学教育の質保証の在り方としてこの審議会で議論していただく事項だと考えたのは,検討課題ということになるかもしれませんが,そうした設置基準の在り方というものも今回の事項に入れてございますし,そのような点も含めまして,御意見を頂きたいと考えているところでございます。
【佐々木部会長】  恐らく基準の問題と同時に設置審査に際してのポリシーといいますか,その面が問われるという御意見だろうと思いますので,これはやはり検討課題の中にきちんと入れていただいて議論したいと思います。
【金子委員】  今の件ですけれども,これから日本の大学はかなり大きな転換をしていかなければいけないというのは,大学生の数自体が減り始めるところで,その中で新しい秩序をどのように作るかというのは非常に大きな問題です。そのときに,ただ大学設置・学校法人審議会の姿勢のみを問題にするのか。あるいは既存の大学がどのようにこれから行動していくことを求めるのかということがこれから大きな問題になってくると思います。特に大規模私立大学はこれからまだ規模を拡大していくような方向をとるのか,そうではないのか。そういうこともこれから非常に大きな具体的な問題になってくると思うのですが,その際には大学設置・学校法人審議会の問題だけではなくて,むしろ私は既存の大学についての教育条件,何回も強調しますが,例えば教員1人当たりの学生数がものすごく大きい大学が更に拡大するというようなことが,実はそういう計画があるところも聞いていますが,そういうことは端的に言って,これから質を上げるという観点から言えば望ましくない。そのためには情報開示といいますか,例えば学部別にST比率というのはどの程度あるものなのかということを比較するなど,私立大学の中でも実は非常に大きな差があるわけです。そういう意味で一種の競争原理を通じて質を上げていく。量的な縮小を合理的に行っていくということは大きな課題になってくるのではないかと思います。その際に,設置基準,設置認可だけではなくて,情報開示,既にある機関に対する評価というものを総合的に使って考えていく必要があるのではないかと思います。
 以上です。
【佐々木部会長】  既存の大学の教育条件という点ではたしか前回金子委員が教育財政の問題,資金の問題を指摘された,こういうことも含めて,検討していく余地があるのではないかと思いますね。
【黒田副部会長】  大学の質保証の根本的な問題というのは,一昨年8月に出された答申をいかに拡大,実行していくかということなのですね。今までどちらかというと設置基準,学校教育法もそうなのですが,大学の組織としての基準であったわけです。それを8月の答申では教育の内容について具体的に学位のプログラムを作りなさいということになったときに,今の基準でいいのかということになってくるわけですね。その辺のことをしっかりと見極めていかないとなかなか進まない。
 それともう一つは,来年4月1日から施行される学校教育法の改正で教授会の在り方の明確化,学長のリーダーシップ,そういうところがしっかりと規定されましたので,今までのように,教授会万能で全てのことが決まって,変革を求めないということが来年4月1日以降は法律違反になってくるわけです。そうなりますと,おのずと学問分野あるいは学問体系というのをそれぞれの大学が見直して,学位プログラムに基づくカリキュラムを作っていくという,そういう方向に動き出すのだろうと思うのです。それを期待しているのですが,それを後押しできるような設置基準の在り方や学校教育法の在り方,学位プログラムの規則等を見直していくということが必要ではないかというふうに思っています。
【浦野委員】  今の黒田副部会長の発言に関連してなのですけれども,中長期の課題で機能別分化の進展に対応した評価の在り方と,さらりと出ているわけですけれども,今,機能別分化が進展しているかどうかというのは,私は甚だ疑問に思うのですけれどもね。たまたま今,高大接続特別部会の方でいろいろ議論している中では,機能別分化ということは不可避だろうということで,改めてアドミッション・ポリシーなり,ディプロマ・ポリシーなり,そういうものをきちんとした上で高大接続も考えていくべきだという議論が出ているわけですね。そのことを捉えると,私は中長期の課題でそこは必須だと思っていまして,今,黒田副部会長がおっしゃったように,その辺のポリシーをしっかり定めた上で内部質保証,そしてそれに関する評価をしていくということを是非考えていただきたいと思います。
 それに関連していくと,その二つ下に認証評価のサイクルというのがあります。問題なかったところはむしろサイクルを延ばしてというような話もどこかに書いてあったような気がするのですけれども,私はこのことは何か認証評価というと全部フルバージョンで行うようなことが前提になっていると思うのです。一般企業などのいろいろなそういう評価のことで考えると,もちろんフルバージョンで1年に1回は行うわけですけれども,フルバージョンでない方法というのは検討するべきだろうなと思うのですね。
 例えば何も問題がなかったけれども,アドミッション・ポリシーにきちんと沿った学生が入学しているかどうか,その部分だけでも毎年見ていくなど,何らか外部の目というものを毎年持っておかないと,大学というのは社会から離れていくような気がしてなりませんので,是非評価のサイクルということについて言えば,フルバージョンを前提にするのではなくて,どこか限られている部分だけでも評価対象にしてサイクルを縮めていくという方向性を持っていただければなと思っております。
【佐々木部会長】  ありがとうございました。恐らくまだいろいろ御意見があると思いますが,この件については次回以降も論点を絞って議論を先に進めてまいりたいと思いますので,本日のところはこのあたりで締めさせていただきたいと思います。

 

(2)国際化に対応した大学・大学院入学資格の見直しについて,文部科学省から資料2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  それでは二つ目の審議案件ですが,教育再生実行会議の第五次提言に出てきた事項であり,また,文部科学大臣からの諮問事項との関係で,国際化に対応した大学・大学院入学資格の見直しについて御議論いただきたいと思います。先に申し上げておきますが,次回以降,いずれかの部会で,これは文部科学大臣への答申の形にまとめて再度御審議いただく用意をいたしておりますが,本日は提出した資料に基づいて,その前段階の意見交換をいたしたいと思います。事務局から説明をお願いします。
【白井大学振興課課長補佐】  それでは資料2に基づきまして御説明させていただきます。国際化に対応した大学・大学院入学資格の見直しに向けてという資料でございます。
 先に資料の1ぽつから3ぽつまでは前回お出しした資料と同じでございますので,復習ということでごく簡単に御説明させていただきます。
 1ぽつですけれども,教育再生実行会議の第五次提言におきまして「学制の異なる国からの留学生受入れなど,国際化に対応できるよう,大学及び大学院入学資格において課している12年又は16年の課程の修了要件を緩和する」という御提言を頂いております。このことをいかにして実現していくのかということが課題でございます。
 2ぽつの現行制度でございますけれども,特に大学入学資格については外国において学校教育における12年の課程を修了していることが基本的な要件ということになってございます。これについては,基本的に我が国においても課程年数主義というのが基本的な考え方でございまして,外国においても我が国と同様に12年の課程を終えていただく必要があるという考え方に立っているというところでございます。
 2ページの,3ぽつの見直しの必要性というところでございます。我が国は12年の教育課程があるわけでございますけれども,一方で外国におきましては例えば高等学校卒業までの教育課程が10年や11年だったり,あるいは大学卒業までの教育課程が14年,15年だったり,我が国の12年,16年と比べると短いという場合もございます。こういう場合には,現行ですと基本的にはその国において大学や大学院に進んでいただいて,12年,16年の教育課程の修了というものを満足していただく,あるいは我が国の準備教育課程に進学していただいて,そこの課程を修了していただく,あるいは年齢が18歳,22歳となるのを待ってから個別入学資格審査を利用するというように,いずれの仕組みにつきましても,1年,2年の期間を待っていただくということはどうしても必要になってくるということがございます。そのため,すぐに日本の大学・大学院入学できずに日本離れが生じるというケースも実際に生じているというところでございます。もちろん飛び入学等の例外的な制度もあるのですが,非常に限られた制度でございますので,一般の外国人の方に広く使っていただくにはハードルが高いものであるということがございます。
 こうした状況を踏まえて,いかに外国の方々,留学生の方々の交流推進をしていくのかということから,今回の教育再生実行会議の第五次提言も頂いたものというように認識しているところでございます。
 2ページの4ぽつですけれども,今後の方向性の案というところからが今回お出しする資料でございます。大学入学資格と大学院入学資格,両方ございます。大学院入学資格につきましては主に大学院部会で別途並行的に御議論いただいているところでございまして,特に本部会では大学入学資格の方を御議論いただきたいと思っております。
 方向性でございますけれども,中等教育修了までの課程が12年に満たない国,要は高等学校までが11年だったり,10年だったりという国でございますけれども,そういう国につきましては,当該国における教育課程について,文部科学省において個別に確認の上告示で対象国を指定するという形にしてはどうかというように考えてございます。
 今ここで御議論いただいておりますのは,大学入学資格というものでございます。すなわち法令で定める最低限の基準ということになりますので,逆に言いますと,それを満たさない場合,例えば高等学校卒業までが11年であるという場合にはそれだけで一切日本の大学には認められませんという考え方でございます。当然各大学の御判断において,これよりも厳しい基準,例えば当大学では12年の教育課程の修了が必要であるという御判断があるのであれは,それを設定することは当然可能であるということについて御留意いただきたいと存じます。
 参考にトロント大学の事例を載せておりますけれども,トロント大学の場合も国ごとにある意味差別的な取扱いをしておりまして,例えばロシアですけれども,ロシアは高等学校卒業まで11年の国でございますが,ロシアの場合には11年の課程を修了していれば入学資格を認めるという取扱いをしております。一方で,同じ11年の国であっても,ペルーの場合にはこれだけでは足りずに,ペルー等において大学の1年を終えていただく必要がある。そうしないと,トロント大学への学部課程の入学は認めないという取扱いをしているようです。また,フィリピンは最近制度が変わりましたので,古い情報になりますけれども,フィリピンの場合は高等学校卒業までが10年だったという国でございますけれども,この場合には大学2年生までいかないと,カナダのトロント大学への入学は認めないというような,それぞれの個別的な設定をしているというような状況でございます。
 こういう状況も踏まえまして,特に対象国の指定につきましては我が国の教育課程とその国における高等学校卒業までの教育課程との相当性を比較する。また,当該国における教育課程修了後,当該国内の大学,あるいは外国の大学にそのままどれぐらい進学しているのかというような状況等について,必要に応じて当該国の大使館の確認ということも行いながら,個別に審査して追加していきたいと考えております。
 ただ,この点,具体的に想定される対象国は実はそれほど多くないのが現状でございまして,3ページの囲いのところに書いてございますけれども,現在,初等中等教育が12年に満たない国というのは,ここに書いてあるのが主な国でございます。主に旧ソ連CIS諸国,ロシア,ウクライナ,ウズベキスタンというような国々。あるいはアジアにおけるマレーシア,ブルネイ,ミャンマー,あるいはペルーというような国が挙げられるところでございますが,ただ,全般的には初等中等教育については期間を12年としていくのが世界的な潮流であるようでございまして,近年でもブラジルや先ほどのフィリピン等が12年に移行するというような動向があるようでございます。現在でも,ロシア等におきましても初等中等教育を12年に延長するということを検討中であるという情報も得ておりまして,将来的には12年の課程に入った国においては外れていくのだろうということは想定されるところでございます。
 大学入学資格については以上でございまして,その下に参考に大学院の入学資格についても掲載してございます。詳細な説明は避けますけれども,大学院の入学資格につきましても大学入学資格と同様に16年の教育課程が必要であるとされています。我が国においても12年プラス学部の4年,トータル16年ということが基本的に求められておりますけれども,この点についても諸外国においては例えば3年の学士課程の大学があったりというような国もあるということから,基本的には学士の学位を取得しているということを条件として,我が国の大学院への入学資格を認めてはどうかということを大学院部会の方で御提言いただいて,御審議いただいているところでございます。ただし,その場合も様々な学士課程がございますので,認証評価機関によるしっかりとした評価の仕組みが設けられている課程で習得された学位であるということ。また,3年以上の修業年限,中には2年生のバチェラー・ディグリーの課程というのもあるようでございますけれども,3年以上の修業年限というようなことを基本的に求めていきたいというふうに考えているところでございます。
 説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【佐々木部会長】  それでは,この件について御意見を頂きます。先ほど申しましたが,これは時期を見て大臣への答申という形で再度ここにお諮りする予定でおりますが,それに先立ってただ今の説明に関して質問あるいは御意見のある方,いかがでしょうか。
【谷口副部会長】  基本的にはそれぞれの大学が,入ってくるときにはその学生をきちんと評価をするということを行いますから,そこを信用していただいて,ある程度の基準はあると思いますけれども,各大学がきちんと自分のところで教育できるという自信がないと受け入れられませんから,その評価のところを理解していただいて,余り形式的なことをあれこれ言うのではなくて,きちんとその方の力を大学が判断できる仕組みにしていただくのが一般的に申し上げると一番いいと思います。
【吉田委員】  現在,ドクターに入ることに関しては修士の学位を持っているということのみが規定されているようですが,修士の学位の就業年限等については何ら考慮しないということなのでしょうか。
【佐々木部会長】  これは大学院の方ですか。
【吉田委員】  大学院です。
【白井大学振興課課長補佐】  現在,設置基準上は,学校教育法の施行規則上は特に修士の年限についての制約はないところでございます。
【吉田委員】  それに関しまして,一つの情報提供なのですけれども,現在アメリカやイギリス,特にイギリスでは修士課程,1年制のものが非常にふえていまして,1年で修士を取ることができてしまう。実質的には1年間かからないわけですので,そういう短期間で修士を取ってきて,それが日本で言えば2年課程が原則ですので,2年で行った学位と同等という形で認められることについて何ら問題がないかどうかということが一つです。
 これに関しましてはこの夏に中国に調査に行った折に,中国では学術修士は3年,専門職の修士が2年という形になっていますが,留学熱は日本よりずっと高いので,イギリスに行って1年で修士を取ってくる。数か月で修士を取ってくる。それで,中国に戻ってきてドクターに行こうとする学生に対してはかなりその辺りは制限をかけないといけないという話になっているということも聞いてきました。余り日本ではそういう状況というのは起きないのかもしれませんけれども,そういう問題があるということについてはどこかで考える必要があるのかもしれないということだけ申し上げておきたいと思います。
【佐々木部会長】  ありがとうございました。大学院の方は大学院部会で別途検討いたしますので,そこへお伝えいただければいい情報だと思います。
 29日に開催された大学分科会でもこの件について議論されたと聞いております。参考資料4にありますように,おおむねただ今御説明いただいた今後の方向性という方向で意見が集約したように聞いております。この件については,本日はこういう形で締めさせていただきます。ありがとうございました。

 

(3)高等学校の専攻科について,埼玉県立常磐高等学校から資料3-1,福岡県立農業高等学校から資料3-2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】 本日,残りの時間は高等学校の専攻科について,二つの高等学校からその実態についてのヒアリングをさせていただきたいと思います。これも御記憶と思いますが,高等教育機関における編入学の柔軟化に向けて,一つは省庁系の大学校についてここで御議論いただいたことなどございます。併せて今回課題になっておりますのが高等学校の専攻科でございまして,これについてはもう少し実態を知りたいという御意見が本部会でもございましたので,本日はそれをお示しいただくために4人の方にわざわざおいでいただきましたので,御紹介いたします。お一方は埼玉県立常磐高等学校の小島校長先生です。
【小島校長】  小島でございます。よろしくお願いします。
【佐々木部会長】  次いで埼玉県教育委員会の髙田高等学校教育指導課長です。
【髙田教育指導課参事兼課長】  よろしくお願いします。
【佐々木部会長】  また,遠路福岡からは福岡県立農業高等学校の田中校長先生です。
【田中校長】  よろしくお願いいたします。
【佐々木部会長】  福岡県教育委員会の古賀指導主事です。
【古賀指導主事】  よろしくお願いいたします。
【佐々木部会長】  以上4名の方にお越しいただきました。お忙しいところ誠にありがとうございます。順次,高等学校専攻科の現状についてお話いただきたいと思います。
 まず,小島先生からよろしくお願いいたします。
【小島校長】  埼玉県立常磐高等学校の小島でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,看護専攻科の概況について,私の勤務校の常磐高等学校の事例を中心に御説明いたします。
 まずメイン資料の1ページ目,1看護専攻科カリキュラムについてでございます。(1)教育課程ですが,その下の参考資料1と書いてある本校の専攻科の教育課程表を御覧ください。この表は今年の専攻科1年生の今年度と来年度の2年間分の教育課程です。一番上の段の横の欄がございますが,左側から教育内容,標準単位,科目,履修単位と履修時間,そして,それぞれの科目をどちらの学年でするかという順になっております。左側にまた戻っていただいて,教育内容と標準単位ですが,既に御案内のことと思いますが,参考資料2として保健師助産師看護師学校養成所指定規則,これを根拠にしています。左下に数字がずっと打ってありまして,17分の15まで進んでいただきますと下段に別表三の三,これは次のページにまたがっておりますが,これは5年一貫高等学校のものでして,先ほど見ていただいた本校の教育課程の編成根拠はこの表でございます。
 御参考までに17分の12のページの下の方に別表三がございます。この表は大学や3年課程の短期大学・専門学校に課された教育内容ですが,これは先ほど別表三の三で見ていただいた5年一貫校の教育内容と全く同じ教育内容となっておりまして,カリキュラム上の差はないと言っても差し支えないのかなというふうに思います。
 メイン資料に戻っていただきまして,(2)各科目の授業内容についてです。御参考までに本校の今年度の専攻科のシラバスをお配りいたしました。最初のページの方は一般教養科目が続きますので,ここでは専門分野の科目として,例えば18ページをお開きいただきますと,これは右上に解剖生理学と書いてあります。解剖生理学の科目のシラバスですが,御覧いただいておりますとおり,1の学修目標でこの科目のねらいを明確にし,2授業の内容と進め方で授業の進行をイメージさせて,3学習の留意点では,授業だけでなく,自己学習を促したり,日常の目配りの大切さにも言及したりしています。そして一番下の4評価の方法・観点ではどのようなものを評価の対象にするのかということに加えまして,関心・意欲・態度や技能・表現など,四つの評価の観点ではこのようなことを基準に評価しますというようなことを明示しています。
 次のページにあります授業計画に沿って年間の授業は展開することになります。こういうフォーマットで,全ての科目のシラバスが定められております。
 続いてまたメイン資料に戻っていただきまして,2看護専攻科の授業者についての(1)授業者の担当時間と構成ですが,今年度の専攻科1年生と2年生の年間履修時数の合計2,250時間,このうち専任教員が合計1,407時間,そして特別非常勤講師と非常勤講師という外部講師の分がそれぞれ783時間と60時間となっています。その下の授業者の構成人数ですが,専任教員が17名,特別非常勤講師は68名で,内訳は御覧のとおりです。そして,非常勤講師が1名となっています。
 次に,3看護専攻科の教育水準についてですが,先ほど説明しましたとおり,本校のカリキュラムは国の指定規則にのっとって,大学,短期大学,専門学校のカリキュラムと同じレベル,つまり,教育内容とその量的な部分では高い水準で看護教育を行っていると考えております。そして,質の部分では,現在,大学への編入学が可能な短期大学や専門学校と客観的に比較することはとても難しいと思いますけれども,一つの指標としては看護師国家試験の合格率が挙げられるのではないかと思っています。
 続いて,本校の学校案内の冊子を御用意ください。6ページの棒グラフを御覧ください。ピンクが本校の合格率で,青が全国の平均を示しています。一番右のピンクの棒が今年の本校の結果ですが,今年の100%合格を始めとして左にずっと目を移していただくと,100%若しくは100%近くの合格率を達成しています。これは資料に記載していませんが,今年のほかの機関の合格率を申し上げますと,大学と専門学校が97%,短期大学が約90%ですので,比較しても本校の結果には大変満足しております。
 続いてメイン資料に戻っていただき,2ページ目を御覧ください。教育の質について,次は参考までに本校生徒を受け入れていただいている病院側の認識を御紹介しますと,最初の丸に書きましたとおり,本校では5年一貫教育の利点を生かして個々の生徒を5年間にわたって継続的に丁寧に指導するということを日常的に行っております。そこが成果であるとは思っていますが,就職した病院では,常磐の生徒はとても知識,技術がしっかりしていると,それを常磐ブランドと称していただいて,お褒めの言葉をいつも大変たくさん頂いています。
 また,本校で培われた看護師としての使命感が現場で発揮されて,常磐の生徒はとても我慢強くよく働く,すぐにやめたりしないので助かるというような評価も頂いているところでございます。
 御覧の写真は専攻科の授業の様子です。
 続きまして,4教育内容に関する学校評価についてですが,学校評価は校内における学校自己評価と県教育委員会による第三者評価,この二つがございます。まず(1)の学校自己評価システムについてですが,これについては参考資料5の1枚目と2枚目は学校自己評価システムシートと言っているもので,埼玉県の県立高等学校全てで作成している統一用紙です。このシートは学校全体の活動について記述したもので,特に重点とされる内容に精選しておりますので,さらに学年ごとに詳細に自己評価をするために,3枚目の紙をめくっていただきますと,右上に書いてあるとおり,専攻科1学年,最後にもう一枚ついているのが専攻科2学年ということで,各学年ではこのような独自のシートを作って,学年個別の自己評価も行っているところです。
 時間の関係で,これらのシートの中身を詳しく説明できませんが,1枚目の全体シートの学校自己評価システムシートの欄の一番右側に,学校関係者評価という欄が縦長でございます。この欄に示されているとおり,この学校自己評価は,学校関係者から外部評価を受けることになっています。学校関係者とは本校の場合は実習病院の病院長や,近隣中学校長,また,生徒の保護者という方々に委嘱しています。この学校関係者による学校評価懇話会という会が校内にあるのですが,これを年度途中と年度末の年2回開催します。そこで御助言や御提言などという外部評価を頂いて,それを直接学校の運営に役立てるということをしております。
 続いて,メイン資料に戻っていただくと,(2)として県教育委員会による第三者評価とございます。先ほど説明した学校関係者による外部評価とは別に県教育委員会が設置した県立学校評価委員会という委員会がございまして,この委員会による外部評価がございます。埼玉県ではこれを第三者評価と呼んでいます。第三者評価の目的は,学校の教育活動がPDCAサイクルに乗ってうまく回っているのか,毎年適切に見直し更新されているのかということを点検し,学校を指導するということでございます。
 続きまして,5高等学校看護専攻科修了生の大学編入のニーズについてですが,過去に2度全国調査を行っています。一つ目の丸にありますとおり,大学編入を希望する生徒は1回目の平成13年の調査では23%,平成20年の調査では27.7%いました。二つ目の丸ですが,大学編入を希望する主な理由は,一つには高等学校で学んだ看護の知識理論を更に大学で深めたいという純粋な学問への意欲があります。二つ目としては,学位とともに助産師,保健師の資格や,あるいは養護教諭,看護教員の免許を取得したいと考える生徒もおります。
 続いて,メイン資料の3ページ目,6大学編入のメリットについてですが,まず,大学で学問を深めることで,より専門性の高いすぐれた看護師を育成できるということがございます。また,学位があることで,将来の昇進や給与面で有利であるということを病院関係者からも聞いております。そして,大学編入は,大卒の看護師の拡充を求める病院の看護現場の考えにも合致しております。更に全国の全てと言っていいぐらい,看護高等学校では教員の確保が非常に難しい状況にございます。そういう状況がありますので,大学で看護教員の免許を取れば一旦は就職するかもしれません。一旦は就職したとしても,将来母校に教員として戻ってくる可能性がとても期待できるということで,学校としてもとても喜ばしいことだと思っております。
 以上,駆け足の説明で御無礼いたしましたが,私の説明を終了いたします。ありがとうございました。
【佐々木部会長】  短い時間で大変恐縮です。引き続いて,福岡県立農業高等学校の田中校長先生,どうぞよろしくお願いいたします。
【田中校長】  それでは失礼いたします。お手元の資料に基づきまして,限られた時間ですけれども,簡潔に説明をさせていただきます。お手元の資料は印刷したものと学校案内を載せていますので,それも兼ねて説明いたします。
 まず,本校ですけれども,非常に歴史が古く,本年度で創立63年目を迎えます専攻科でございます。そして更に特色として,全国で唯一本校だけが2か年の実践的な短期大学・専門学校等々,今から説明いたしますが,教育内容を備えた学校だと思っています。卒業生は現在で2,600名近くおります。
 それから,教育目標等については,時間の関係で,そこに書いてあるとおりでございます。簡単に言いますと,実践力と豊かな人間性を備えた人間の育成というふうになるかと思います。
 3番目,設置学科についてですが,1学年2学科,各学科20名の40名でございます。内容等については,カラー刷りの学校案内を見ていただくのが,私の説明よりも理解が早まるのではないかと思います。それぞれの学科の学生の授業風景など教育内容を載せております。
 次に,本日の説明の主題であります専攻科の教育の水準について,概略を御説明申し上げます。まず,教育課程を見ていただきたいと思います。お手元にA3で教育課程表を準備しております。本校の教育課程表とA短期大学の園芸科の教育課程表でございます。農業に関する学科を有する私立の短期大学でございますが,それと見比べていただければと思います。説明を申し上げますと,まず短期大学と同様に各学科の教育目的を達成するために必要な授業科目を開設し,体系的に教育課程を編成し,専任教員及び大学の教員等による高い水準での講義を実施しています。本日,お手元の別紙,法学と微生物工学のシラバスも用意していますが,授業の到達目標,年間講義計画,成績評価について,詳細に提示し,単位認定を行っています。
 お手元には資料がないと思いますが,これが学校のシラバス集でございます。このようにきちんとした形でシラバスを作って指導しております。
 次に,教育課程表にあるように,一般教育科目,専門教育科目を年次ごとに配置しております。一般教育科目でいきますと,例えば文学から英語という形で18単位から20単位ということになると思います。
 それから,特色ある科目としまして,教育課程表の下の方に載っていると思いますが,専攻実習と卒業研究という科目がございます。単位数も非常に多いのですが。そこでより実践的な農業学習を実施しております。特に卒業研究では学生一人一人が自分の研究成果を卒業研究発表会で発表し,卒業論文集にまとめております。本日,一部ですけれども,ここに持ってまいりました。このように卒業論文集として毎年きちんとした形でまとめております。
 それから次に施設設備について,説明を申し上げます。施設は専攻科専用の施設となっております。私,校長として専攻科と本科,両方見ておりますが,基本的には高等学校とは完全に独立した建物で指導しております。一部体育館,それから保健室,運動場等は共用ですけれども,施設については完全独立のところでやっております。それから,設備につきましては,電子顕微鏡,高速液体クロマトグラフ,分光光度計,原子空孔など,高度な分析機器を備えて指導しております。
 それから,このような勉強を通しながら卒業後は,特に大学等の学士や,短期大学等の準学士等の資格はございませんが,人事院給与局により短期大学卒,高等専門学校卒として給与上は取り扱っていいようになっております。これは学校案内の一番後,裏面に一応載せております。
 次に,大きな2番目,単位数,授業時間数等について説明いたします。まず,各授業科目の単位数は,先ほど説明があったように,本校も1コマ90分授業で,30週の学修を2単位として認定としています。短期大学設置基準第7条においても同様な条件を満たしているのではないかと思います。
 それから次の丸ですが,2か年での総単位数は64単位としています。これも教育課程表に載せております。短期大学卒業の要件は短期大学設置基準18条1項のとおり,2年以上在学し,62単位以上習得することと定めてあるため,そういう要件と比較してもほとんど短期大学設置基準と本校の場合,同等と考えています。また,専修学校基準についても同じように専修学校設置基準19条と見ても同様な位置づけになっていると思っております。
 それから,授業時間数でございますが,平成25年度,昨年度の総授業時間数は,特別講義全てを含めまして,1,958時間でございました。これは編入が認められています専修学校の1,700時間にも十分に達していると思っております。
 続きまして(3)指導体制でございます。これも学校案内の最初のページを見ていただきますと,指導陣の学歴,専門分野をカラー刷りで載せていますが,専攻科の教員数は,全部で常勤,非常勤を合わせて32名でございます。そのうち管理職が私と専攻科専属の教頭が1人おります。それから,専攻科専属の教員が実習助手を含めて10名,その他の教員約20名でございます。20名の内訳と資格ですけれども,博士の学位を持つ者が,大学の教員がほとんどなのですが,17名。それから,本校の職員を含めまして,修士の学位を持つ者が4名,それから学士の学位を持つ者が9名ということで,あと2名は実習助手でこれは専攻科を卒業した者が実習助手として指導しております。そういう形で十分に短期大学・専門学校等の水準は,指導者の面では満たしているのではないかと思います。
 次の丸ですが,専修学校の設置基準の第41条の第2号,第3号,第4号を時間の関係で読み合わせませんが,それを見ても本校の教員の資格については十分に適しているのではないかと思っています。
 それから4番目,評価についてです。第三者評価,外部評価については現在検討中で今後取り組む予定であると書いておりますが,実際は福岡県が示しています学校自己評価というのがございまして,私,校長ですので,高等学校と専攻科は一緒に作っております。すなわち校内評価等も含めて一部評価はきちんと行っていますけれども,ここに書いていますように,第三者を入れた評価までは専攻科においては行っておりません。高等学校の場合は全て他県に準じて行っております。
 それから5番目,これまでの主な研究成果について,そこに商品開発と書いていますけれども,たくさんの研究を行っていますので,その成果としては,平成元年,メロン栽培についてはパッシブ水耕メロンというシステムを作って栽培しましたし,最近ですと,食品工学科がございますので,企業と共同研究した焼酎の開発や,新品種の育成等も行っています。それから,学生が2年間にわたって研究しますので,そのことについても学会等で発表をしているのが,最近の4年間ぐらいの内容でございます。
 このような充実した教育環境のもとに学生はそれぞれの進路実現のために,農業自営を始め,公務員,それから農業高等学校の実習助手,法人,企業等食品関係等に多数就職しております。
 そこで,本日の最後の説明の主題ですけれども,大学編入へのニーズとメリットについて御説明申し上げます。お手元の資料に書いておりますように,高等学校卒業後,農業高等学校が中心になると思いますけれども,大学への進学を希望しながらも様々な事情により専攻科へ進学した学生の中には大学でより高度な専門教育,農業教育を学び続けたいと考え,意欲あふれる学生も多数います。これも今年の1年生のアンケート調査も行っておりますが,ここには載せておりません。
 また,二つ目ですが,今までに本校専攻科を卒業した後に大学に再度入り直し,教職の単位を取得して農業の教員になった方もおられます。また,現在,専攻科卒業後,農業高等学校の実習助手に就いている者,また,今後も教育関係の仕事に就きたいと考えている学生もおります。これら学生にとって,大学農学部等への編入が可能になれば,農業科の教諭や栄養教諭の道が大きく開けることになると思います。
 それから,農業以外の分野でも専攻科での2年間の農業学習の成果をもとに大学等での学習により,農業以外の他の分野でも社会貢献できる,希望する学生もおりまして,その進路選択の幅は拡大するのではないかと思います。例えば農業で学んだ知識や技術を病院や介護福祉施設等で活躍する場合もあります。その結果,学校で園芸療法や,園芸セラピーというようなものも大学で学べるのではないかということを期待している生徒もおります。
 8番目ですが,大学編入学のメリットでございますが,看護と同じですけれども,大学に編入することにより,より専門的な高度な知識,技術の習得を専攻科と継続した形で継続性,体系的にできるのではないかと思います。
 それから,学生が自ら学び,発展させるために様々な分野への挑戦が,編入が可能であればより一層広がるのではないかと思います。大卒を要件とする国家公務員,地方公務員などの上級試験が可能となります。農業の分野等においても大卒の資格で受験ができると思います。
 なお,特異的なものにつきまして,農業普及指導員という資格がございまして,現在,法改正に伴って,高等学校卒業でいきますと10年以上の実務経験が要りますが,大学を出ておりますと4年以上ということで,6年間の短縮が可能ではないかと思います。
 それから,農業高等学校及び専攻科で,農業について学んだ5年間の学習を生かしまして,大学に入りますと,実技的な面で他の大学生のリードというものも可能になるのではないかと期待されます。
 最後に,本年度文部科学省から全国で10校のうち,お隣の学校もそうなのですけれども,指定を受けましたSPH,スーパー・プロフェッショナル・ハイスクールについて説明いたします。本年度より文部科学省より指定を受けまして,都市園芸に関する専門的な技能と経営感覚を身に付けたアグリスペシャリストの育成をテーマに,九州大学,企業,研究機関,行政との連携を通じ,専攻科を含めた5年間の継続教育を行っております。取組の具体例としては内閣府の国家戦略プロフェッショナル検定,食の6次産業化プロデューサーなどの資格を5年間の継続教育の中で積極的に今年から展開していく予定でございます。
 少し長くなりましたけれども,本校専攻科の概要について御説明を終わります。
【佐々木部会長】  田中先生,どうもありがとうございました。
 それでは質疑応答に充てたいと思います。いかがでしょうか。
【長束委員】  高等学校の進路指導を担当してきた立場としてお話をさせていただければと思います。まず自分の意見を述べさせていただいて,最後に質問をさせていただきたいと思います。
 今回,御提案の中で二つポイントがあると思います。一つは,高等学校専攻科が専門学校,短期大学等と同様な教育内容を持って単位認定や大学編入に値するかという観点かと思います。その点については先ほど2校の校長先生からお話いただいて,十分値するというように私は感じておりますし,また,学校に応じながら,各大学で御判断いただければと思います。
 もう一点は,今回の制度のメリットという面です。私自身,生徒の進路選択の可能性の広がりという観点で是非進めていただきたいと思っております。千葉県でも看護科に専攻科が設置されている学校がございます。私自身が勤務したことはないですけれども,いろいろと話は聞いてきておりますので,そういう点も含めながらお話をさせていただければと思います。
 中学校を卒業して専門学科に進むというのは恐らく非常に職業意識,又はキャリア意識が高くて,どうしてもこういう職業に就きたいということで進む子が多い,特に看護の場合は看護師という専門職に憧れて志望する生徒がとても多いと聞いております。ただ,高等学校に進学する段階においては,看護師という職業に憧れていてもどのように働きたいかというところまでは,まだそこまで強い意識があったり,実際その中身を本当に深く知っていたりするかというと,そうではない場合もあるのではないかと感じております。これは看護師だけではなくて,今まで例えば弁護士など,様々な職業を希望している生徒を見てきましたけれども,ほぼ同じかと思っております。
 それが高等学校の看護科又は専攻科の中で学んでいく中で,実際に自分自身がどのような看護師になりたいか,どういうような立場で働きたいかというのが徐々に生まれてくるのだろうと感じております。中には,ただ看護師として働くのではなくて,より専門的な知識を得て,そして,指導的な立場に立ちたいというように感じる子もいるかもしれませんし,様々な可能性を感じながら,より深い勉強をしたいと感じる子も出てくるのではないかと思っております。ただ,やはり5年間で,看護師の資格が取れる過程を進んでいく中で,中には高等学校を卒業した段階で専攻科に進まずに大学に進学するような子もいると思うのですけれども,現実にはなかなかそういう選択をするのは難しい部分もあると思います。また,5年間の後に大学に進学すると4年間かかると9年かかります。今の経済状況というところを考えたときに,なかなか9年間合わせて大学まで進学するというのを望んでいてもできない生徒も現実にはいるのではないかと感じております。
 そういうことを考えますと,この専攻科から大学の進学,編入というような形を制度ができれば希望がかなう生徒というのが数多く出てくるのではないかと感じております。もちろん大学の質保証を考えるのが本部会ですから,質の保証という面できちんとした審査をしていただくのはもちろんですけれども,生徒の可能性を広げるという道を作っていただければ,そういうような視点で考えていただければと思っております。
 最後に質問になります。先ほど福岡農業高等学校から話がありましたけれども,常磐高等学校で,大学に進学したいけれども現実に専攻科を卒業した後,経済的な理由で難しいという子がいるのか。又は実際に大学に進学する生徒がどれぐらいいるのかというのを教えていただければと思います。
【小島校長】  本校の場合は,大学に進学するためには5年間勉強してまた1年に戻らなければならなない。中学に入ってくる段階で,早道で看護師になれるという気持ちで行ってきているので,更にまた1年からという,今のところそういうニーズはないですね。大学に進学する生徒はおりません。
【田中校長】  専攻科から大学に行く生徒ですか。過去は何人かおりましたけど,今はこういう制度がないからできませんね。一旦もう一回入り直して学校の教員になった者もおりますけれども。
【佐々木部会長】  長束委員の御質問は,この専攻科を終了した後,大学に入り直そうという生徒がいるかという話ですか。
【長束委員】  そうですね。もし3年生に編入できる可能性,例えば3年なのか,2年なのかは議論があるかもしれませんけれども,そういう制度があったときにそれを使う可能性がある生徒がいるかどうかというところをお聞きしたいと思います。
【小島校長】  そういう需要はあります。実際生徒にも非常に情報通の生徒はこういう議論が行われていること自体知っている生徒も,保護者もおりまして,これは可能なのですかと聞いてくる生徒はおります。
【田中校長】  本校も同じでございます。その制度が可能になれば行く生徒はおります。
【谷口副部会長】  少し教えていただきたい。編入など,そういう道が閉ざされることのない方向というのは,私個人としてはいいと思っていますけど,今二つの高等学校のことをお聞きしましたところではいずれも,非常によく行っておられると思います。それが一般的なのか,本日御紹介いただいたのは特殊な例の場合なのか,その辺の感覚を知りたいというのが一つです。幾つかあるのですが,順番にお尋ねします。
【小島校長】  まず,カリキュラム上は規則で決められているので,これは全ての5年制一貫高等学校では同じカリキュラムで行われております。教員のレベルなどという話になると少しよく分からないのですけれども。ただ,先ほど本校の場合国家試験の合格率が100%ほぼ毎年だということはありましたが,全国的な5年一貫の合格率でいくと95%で推移しているところでございますので,大学や短期大学・専門学校と全国的に見ても同等の成果を上げているというふうに思っています。
【谷口副部会長】  一般的に専攻科を持っておられる高等学校であれば,本日御紹介いただいたような学校と同じレベルだと思ってよろしいですか。
【小島校長】  はい。全国でいろいろな協議会を一貫高等学校で行っていますが,いろいろな報告を聞く限り本校と同じようなことを行っています。
【田中校長】  看護はそうでしょうけれども,農業は少し事情が違いまして,農業の専攻科は全国で5校しかない。そのうち4校は特別専攻科といいまして,家で農業を実際に行いながら,週3回や2回学校に来て,勉強する。農業ですと,全国で唯一,本校だけがそういう学校組織になっています。
 ちなみにほかは福岡県では,私立高等学校に自動車科の専攻科が2校ございます。そこは2級整備市の資格が取れます。また,本県は水産高等学校の専攻科がございます。これは海技士免許が取れます。
【谷口副部会長】  業種というか専攻分野の種類によっては全てというわけではないところもあるということで理解させていただいていいですか。
【田中校長】  農業に関してはこういう形は全国で本校だけです。
【谷口副部会長】  分かりました。
 次の質問ですが,5年間その高校に行かないと大学には行けないのですか。5年一貫で行っておられるにしても,3年生が終わって,すなわち高等学校が終わった段階で大学に行けるのですか。
【小島校長】  高等学校の3年生が終わった段階で高卒の資格が取れます。1回卒業証書を出します。
【谷口副部会長】  だから,そこで大学に行く人がいてもいいですよね。
【小島校長】  理論的には行けます。
【谷口副部会長】  だけれども,さっき諸事情,いろいろな事情があるということを言われたけれども,大学に行かないで専攻科に行くというのはなぜですか。どういうふうに理解したらいいのですか。
【髙田教育指導課参事兼課長】  看護の場合には5年一貫で看護師を養成するという目的を持って専攻科を設置している教育委員会が多いかと思いますが,全国で専攻科が138ございまして,そのうちの看護専攻科を設けているのは76ですので,半分以上が看護の専攻科ということになります。ですから,常磐高等学校も同様でありますが,5年一貫で県内の病院に看護師として就職するということを原則として生徒を募集しておりますので,生徒は途中で,3年間の高等学校が終わった段階で大学へ行くということを選択肢を持っていないということです。そういう前提のもとでここに入学しておりますので,常磐高等学校に関して言えば,ここを卒業して大学に入試を受けて行きますという生徒はいないということでございます。
【谷口副部会長】  ところが,5年したら大学に行きたくなるという生徒さんがいると言われたでしょう。その兼ね合いが少しよく分からない。今,5年一貫で行っていますから,しっかりとした看護士さんなどの資格があって看護師さんになれるわけですね。ところが,5年行っている間に大学に編入で行きたくなるというのはどうなっているのですか。
【髙田教育指導課参事兼課長】  現制度上,大学編入の道が開かれていないということを前提に中学生の段階から進路選択をしているということでございますので,今後仮に5年一貫で専攻科を卒業した後,大学編入の道が開かれるということになれば,より高い知識,技能を身につけた看護師として更にスキルアップを図りたいということで,大学に編入したいという生徒は当然出てくるだろうと思います。現状ではそういう道がないのですから,そういうことを考える余地がないということだろうと思います。
【谷口副部会長】  そうではなくて,私が聞きたいのは,5年一貫教育ということで入ってきた生徒さんが,そこで心変わりをするというのがなぜですかということが知りたい。3年で大学に行ったらいいではないですかと思うわけです。ところが看護師になろうと思って一生懸命学んできた生徒さんが,4年目,5年目になったらやっぱり大学に行こうということがなぜ出てくるのかなというのが,どのように理解したらいいのか分からないのです。
【小島校長】  5年一貫になってからの間に,本校で3年終わった段階で本校を辞めて大学に行ったという生徒が過去にいました。その生徒は看護の道をあきらめて,別の普通の大学に行くために予備校に一生懸命行って,受験します。でも,看護の大学にそのまま1年に入り直すことの意味は,要するに看護師の資格を取れるということで同じですので,3年の段階で大学を受け直すということはマインドとしてありません。専攻科で専門の勉強をずっと学んでいくうちに大学で更に深めたいという気持ちがわいてくるということです。
【谷口副部会長】  専攻科では満足できないことが4年目,5年目に出てくるということですか。
【小島校長】  そうですね。
【佐藤委員】  大変すぐれた取組の2校を御紹介いただきました。その上で制度面のことと,それから実態について,それぞれ一つずつお尋ねしたいと思います。初めに制度面です。これはむしろ文部科学省に対する質問だと思いますけれども,専攻科というのは,私の理解するところによると,大学にも専攻科,短期大学にも専攻科,高等学校にも専攻科を置ける。それぞれ例えば短期大学の例をとりますと,教員組織や施設,設備等にゆとりがある場合に,清新な程度でその分野の研究をするために設けることができる。これは届出でできることになっていると思います。すなわち事前の審査はないというふうに思っております。その上で,短期大学に置かれた専攻科は,やはり短期大学教育なのですね。だからこそ大学の学位を取るために単に短期大学の専攻科の単位だけというだけでは駄目であって,大学評価・学位授与機構の認定を受けた専攻科でなければ駄目であるというふうに質保証でフックが掛けられております。長くなりましたが,高等学校の専攻科の場合も設置の形態といいますか,要件というのは同じなのでしょうか。すなわちゆとりがある。それから届出でできるということなのでしょうか。これが一つです。
 それから実態の方ですけれども,特に農業高等学校の話を伺いまして,教員の学歴の高さに感銘を受けました。そして,施設設備は専攻科の専有と伺いましたけれども,教員組織はそれぞれいかがなのでしょうか。本科と専攻科の教員組織は全く別で運営されていらっしゃるのですか。看護の専攻科についても同様のことをお尋ねしたいと思います。
【水田主任視学官】  まず高等学校専攻科について,設置ですけれども,ゆとりがあるかどうかというのは主観的な部分だと思うのですけれども,学校教育法上は高等学校には専攻科及び別科を置くことができるということでございますので,届出という話がありましたけれども,公立であれば高等学校としての判断で専攻科を設置することができるということになってございます。
 教員組織等については,現在のところ,そういう具体的な基準というのはございませんので,具体的には各校にお聞きいただければと思うのですが,今後の議論の中でそういう基準的なものを設けるべきかどうかなど,そういうことをお願いできればと思っております。
【佐々木部会長】  二つ目の質問について,それぞれお願いします。
【小島校長】  教員の組織ですが,高等学校本科3年と専攻科2年がありますが,任用は専攻科や本科で分けているのではないのです。常磐高等学校として採用されるわけです。看護科の教員は5学年で31名おります。これが常磐高等学校として採用,任用されるわけです。どちらに振り分けるかは校長の権限なのです。この教員は専攻科へ,この教員は看護科へというように振り分けて,毎年少しずつ血を入れ替えるという形になっております。この31名のうち正確な数字を間違えないよう,大まかに言いますと3分の2が大学を出て教員免許を持っているものです。残りの3分の1が教員免許を持たずに,看護師の実務経験のみで採用する社会人特別枠という看護師の特別枠があるのです。その試験を受けて入ってきている教員は,大学で教職課程を受けてないので,普通免許を持っていませんから,特別免許という免許を受けて教壇に立っているという教員が3分の1おります。
 以上が体制でございます。
【田中校長】  本校の場合は基本的には福岡農業高等学校一本になっています。校長が1人ですので,全部の面倒を見ますが,専攻科はきちんとその中で,福岡農業高等学校に入るとなった職員を専攻科,ほかの学科と分けております。ただ,専攻科の先生が本科に来て授業をするということは基本的にはないです。
【佐藤委員】  基本的にはないのですか。
【田中校長】  ないです。専攻科所属の先生は専攻科の学生のみを徹底して指導いたします。
【安部委員】  今二つのすぐれた専攻科の事例報告があったのですけれども,実は,うちの学校法人も高等学校に看護専攻科を持っておりまして,これは高等学校を3年間で1度卒業して,再度入学してプラス2年という専攻科でございます。15歳の高校入試時に看護師になりたいという希望を持ち,3年終了時に准看護師の国家試験を受けて,そして准看護師の試験を通った者が専攻科に進学するという形で2年間です。正看護師になるために,最速5年間の教育課程で正看護師の資格を取ることができるので,地域としてそういうニーズが高いために,進学校と言われる普通科高等学校へ進学しないで,私どもの専門高等学校に入学を希望する状況がございます。
 その中で,専門学校の看護師養成校は1,700時間,62単位という基準を満たしておりますので,当然大学編入が可能なわけですけれども,特に看護のことしか私は知らないのですけれども,それと同等の教育課程を持っている高等学校の専攻科がなぜ大学編入できないのかと非常に疑問に思っておりました。先ほど看護教員が欲しいというお話がありましたが,高等学校の看護専攻科は教員の資格を持ち,なおかつ看護師の資格がないといけないので,大学を卒業しないと看護教諭になれないのですね。そうすると,大学1年から進学しなければいけないということで,専攻科出身の子には実質上道が閉ざされているというところがございます。できれば大学に編入して短期間で,今の話は卒業直後の進学の話だったのですけれども,一旦看護師として活躍して,そしてもう一度学び直して,看護の教員になりたい,あるいはもっと専門看護師など,そういうところの勉強をしたいという生徒に対しての道を閉ざすということはできないと思いますので,編入の道を開いてほしいと思うのです。ただし,高等教育機関としての質の保証について,短期大学士等の学位を取得していなくても大学に編入できるという状況,専門学校の1,700時間,62単位以上というのが一方であります中で,高等学校の専攻科をどう考えるのかという議論が非常に難しいところだと思っております。
 以上です。
【佐々木部会長】  今のは御質問ではなくて御意見でよろしいですか。
【安部委員】  どちらでも結構です。私どもの学校法人も高等学校に看護専攻科を持っておりますので,報告させていただきました。
【谷口副部会長】  農業の方だったと思いますけど,博士を持った人が教員でいらっしゃって,大学の教員とおっしゃった意味がよく分からなかったのですけど,それは非常勤で大学から来てもらっているという意味なのですか。
【田中校長】  そうです。
【谷口副部会長】  専任の方でそういう資格を持った方がいらっしゃるという意味ではないのですか。
【田中校長】  専任ではありません。
【谷口副部会長】  分かりました。
【田中校長】  講師20名の中に九州大学を始めとする大学の先生に来ていただいているという話です。
【金子委員】  二つの高等学校とも大変よく努力なさっていると思うのですが,編入ということを高等教育の側(がわ)から考えてみますと,大学の教育課程というのは専門の分野を勉強すると同時に,幅広くある程度教養を身に付ける。これが二つ組み合わさるところに大学教育の価値があると思われているわけでありますが,この編入の件について,一つ心配があるのは,教養の部分がこれによってどのように保証されるのかという点です。例えば,常磐高等学校のシラバスを拝見いたしますと,基礎分野というのはあるのですが,中を見てみますと,かなり看護に特化している内容になっていて,こういうことを学習された人が3年から大学に入りますと,大学の方も3学年からだとかなり専門の方に移ってしまうということがあるわけで,大学を卒業されるときに終始一貫して専門分野の勉強をされるということになるわけで,必ずしも一概に悪いと思うのではないのですが,こういう点については,特に一般教養,専門の基礎のようなものがどのように専攻科の課程で学ぶのか。例えば大学に行った際にどのような形で補完することができるのか。その辺についてはどのようにお考えでしょうか。
【小島校長】  今お話にありました一般教養,例えば英語ですけれども,題材は病院で実際英語を使ったときにというような,看護に軸を置いた一般教養にはなっておりますが,看護の特別な専門のところを勉強するのではなくて,看護を題材にしながら,人間とは何か,どういうふうにコミュニケーションをとっていくのかというようなコミュニケーション論というものに発展させて教えていただいているので,一般教養の科目について人間としても十分成長できるような授業を行っていただいていると,思っています。
【古賀指導主事】  福岡農業高等学校の一般教育科目は,今講師の先生方がされておりますので,全てその単位はしていただいておりますけれども,そもそも福岡農業高等学校の専攻科というのはこの2年間で終わって社会に出て,実践的な農業を担う人材になっていくという大きな目的がありますので,それに応じた一般教養科目という形の内容を精選していただいております。ですから,編入学を全て目的としたものではございません。ただ論議していただいておりますように,そういう希望もいるという生徒がおりますので,その内容についてはこれから学校と協議をして,授業内容については検討していきたいなと思っております。
 以上です。
【吉田委員】  今,金子委員からは教養教育の話が出ましたけれども,私は逆に専門教育のレベルの話を少しお伺いしたいのですが,どちらの高等学校も専攻科でかなり高度な専門の内容を深めていらっしゃると思うのですが,例えば看護の場合に5年一貫で正看護師の資格を取られて,その後大学に編入学したときに,恐らく領域としては看護の領域を継続して学ばれることが多いと思うのですが,そこで行っている専門というのは高等学校で行っている専門が更に深くなっているような内容になるのかどうなのかということに関して教えていただきたいのが1点です。
 それは看護師として必要な,大学4年に行っても,そこで取れるのは正看護師の資格なのですけれども,既に正看護師の資格を持っている人が更にプラス2年学んだときに大学で行っている内容が内容として上乗せするような内容になっているのかどうなのか。そこまで学びたいと思っているのかどうなのかということが1点です。
 そして,農業高等学校の場合にもそういう点を教えていただきたいのが一つです。
 それと,両校ともおっしゃられたのは,大学を出ることによって高等学校教諭になって戻ってきてほしいということをおっしゃられましたけれども,2年の間に高等学校教諭になれるだけの単位数が取得できるのかどうなのか。これは高等学校にお聞きする問題ではないのかもしれませんけれども,そのあたりまで見越して編入学をお進めになっているのかどうなのかということも,分かる範囲で結構ですので教えていただけませんでしょうか。
【小島校長】  高等学校の使命と大学の使命はおのずと違うと思います。高等学校では看護の知識,技術の基礎基本を徹底的にたたき込む。そしてそれを基盤に将来学び続けることができる力の素養を身に付けさせるというところが高等学校に課せられた使命だと思って,そこに全力を注(そそ)いでいます。恐らく大学では更に研究とは何か,そういうようなところに深く切り込んでいくのだろうというふうに思います。ですから,全ての教育の質が大学のレベルと全く同じであるわけではないのですけれども,少なくとも大学で学ぶ看護の基礎的な知識,技術,大学でも当然基礎を学んで更に発展させていくことを4年間で行うわけですが,基礎基本の部分については高等学校でしっかりと行っていると思いますので,この基礎力をベースにすれば,そのような資質の高い生徒においては大学編入後も自らの力を十分成長させることができる,というような教育を大学で育んでいただけると思っております。
【田中校長】  農業も同じだと思います。専門高等学校にとって一番大事なことは,基礎基本の徹底ということを重視しております。しっかりとした基礎基本が身について,例えば大学農学部等に入れば,逆にもう少し伸びるのではないか,基礎基本をしっかりと訓練された生徒の方が3年になって伸びるのではないかと私は思うことがあります。
 それから,教員の免許の取得の関係ですと,良き専門教育を今後進めるためには,良き指導者を併せて作っていかないといけないと思いますので,そういう農業教員の道も確保してあげたいというふうに思っています。
【小島校長】  私も今お話のあったとおり,残り3年,4年で教員の免許が取れるのかどうかというところの詳しいことは分かりませんが,この編入学も3年になるのか,2年になるのかも流動的な部分もあるので,お答えしかねます。
【佐々木部会長】  ほかにいかがですか。
【濱名委員】  大学の看護系のカリキュラムというと,3年生は実習に皆出ているのですね。4年生のカリキュラムというと,通常は国家試験対策と残った科目をとるか,保健師や助産師対応科目の履修で,こちらは全員に取らせる大学はほとんどない。実習の関係で全員は取れないのですね。ほんのわずかな者がそれらを取るというのが標準的ですから,先ほど小島校長が言われたような実態はないのです,受皿は。要するに,4年制大学の看護師は,4年修了段階で国家試験を目指しているわけですから,先ほど吉田委員が言われたアーティキュレーションを考えると,別のトラックを作らない限りにおいては看護教育の受皿はないのですね。そこのところは十分御理解いただいた方がいいというのが基本ですね。期待されるようなことは現行の4年制の看護教育とは両立しないというのが1点ですね。
 あと,質保証の話で,一つだけお伺いしようと思っていたのは,学校評価の話を伺ったのですけれども,今までの文脈から言うと,恐らく専攻科と本科は分けて行っていらっしゃらないのかと思ったのですけど,それでよろしいのかということですね。つまり,構成を伺っていると高等教育の評価ができる方が全然入っていない。県教育委員会も別に,高等教育の所管は少なくとも文部科学省が直接行っているわけですから,県教育委員会が高等教育のレベルについての評価はされていないのではないかと思ったのですが,その辺のところは間違いないのか。
 一番の問題は,これは中等教育なのか,高等教育なのかですね。高等教育のレベルだというのだったら,例えば高等専門学校は同じ5年で行っていますが,高等教育局の専門教育課が所管している。この専攻科の編入学資格というのは,文部科学省の中でどう整理されるのかというのはよく分からなかったのですね。レベル設定として,もし高等教育のレベルだと言われるのだったら,外部評価で質保証の仕組みがなかったならば,本日御報告いただいた2高等学校は大変すぐれた取組をされているかも分かりませんが,それでも教員のバックグラウンドを伺っていると,到底大学レベルの,あるいは短期大学レベルの教員の資格審査では通らないというのが平均的なレベルだと思うので,修士4人では教員組織としては短期大学も作れないという状態だと思うのですね。外部の非常勤講師がドクターを持っていようが。その辺を考えていくとどうなのかということと,次回,御審議いただくときには海外にこういう仕組みがあるのですかということです。国際的通用性を考えたときに,私や吉田委員の記憶で言えば,中等教育の上に乗っけたものを高等教育の一定年限と重複したカウントをするというのが海外にあるのかどうか。これは事務方に調査していただかないと,世界に全くないような仕組みを提案されるということでは困ると思うので,高等専門学校とどこが違うのということと,これは中等教育の範疇(はんちゅう)なのか,高等教育なのか。それがダブルカウントされるというのは,特に国家試験の合格率というのは暗記型学力で,現在中央教育審議会として,暗記型学力だけとは申し上げませんけれども,それだけでは駄目だ,知識の総合的な活用能力が必要であるという話になってくる,それだけで質保証というわけにいかないと思うので,その辺については本日御回答いただけることがあればしていただければと思いますし,次回の議論の中ではその辺りを取り上げていただければと思います。
【佐々木部会長】  両校長先生に最後に一言ずつ何かおっしゃっていただけることがありましたら,伺いたいと思います。
【田中校長】  大変ありがとうございます。最後に一言ということで,本当に農業教育の活性化の意味でも,子供たちに夢と希望を抱かせるために,そういう上級学校への進学の道を是非とも開いていただきたいというのが私の切なる願いでございます。
【小島校長】  同じようなことになりますけれども,本校の生徒にも,私から見てもかなり高い学力を持ち,思考力も,また学ぶ意欲も非常に高い生徒もおりまして,こういう生徒が大学にそのまま編入したときに,恐らく元からいる大学生にもいい刺激を与えることができるのではないかなと。学校,大学そのものを活性化させることができる人材ではないかという生徒もおりまして,そういう生徒を全て受け入れてくれと言っているのではなくて,せめて入学の機会を与えてほしいというところでございます。
【佐々木部会長】  本部会としての考え方は次回以降取りまとめ,集約を図っていきたいと思います。本日は4人の先生方,わざわざおいでいただきまして,貴重な情報を提供していただいてありがとうございます。お礼を申し上げます。
 それでは,本日はこれで終了いたします。ありがとうございました。

 

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