大学教育部会(第17回) 議事録

1.日時

平成24年6月7日(木曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学教育の質の保証・向上について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)佐々木雄太部会長
(副部会長)黒田壽二副部会長
(委員)金子元久,長尾ひろみ,宮崎緑の各委員,
(臨時委員)川嶋太津夫,林勇二郎,吉田文の各臨時委員
(専門委員)荻上紘一,篠田道夫,鈴木典比古,長束倫夫,納谷廣美,濱名篤の各専門委員

文部科学省

藤木文部科学審議官,山中文部科学審議官,田中総括審議官,板東高等教育局長,合田生涯学習政策局長,小松私学部長,清木文教施設企画部長,常盤高等教育局審議官,奈良高等教育局審議官,義本高等教育企画課長,池田大学振興課長,松尾学生・留学生課長,勝野私学行政課長,合田高等教育政策室長,森友教育改革推進室長,白井大学振興課課長補佐,太田和高等教育局国際戦略分析官,杉江高等教育政策室室長補佐,小山田高等教育政策室専門官 他

5.議事録

(1)国家戦略会議における議論の状況等について,文部科学省から資料1,2の説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  まず初めに6月4日に開催された国家戦略会議の議論の状況,並びに5日に公表された「大学改革実行プラン」について,文部科学省の義本課長に御報告をいただきます。

【義本高等教育企画課長】  資料1と資料2を用いまして御説明したいと思います。
 本部会,それから大学分科会においても,4月に行われました国家戦略会議の状況を御報告させていただきました。文部科学大臣から報告するとともに,民間委員からのいわゆる問題提起という形で,例えば六三三制の柔軟化,抜本的見直しの問題とか,あるいは大学の統廃合も含めて少子化時代に対応した形での大学改革の在り方の問題とか,あるいは私学助成とか,あるいは運営費交付金の評価に基づくメリハリづけなどの話がありまして,議論の上で総理のほうから5月以降の国家戦略会議において,文部科学省としての教育改革の取組の方針を明らかにし報告してほしいという話がありまして,それを受けて,先ほどのお話にありましたように,今週の6月4日の月曜日に「社会の期待に応える教育改革の推進」という形で御報告させていただいたものです。
 1枚おめくりいただきまして,社会の期待に応える教育改革ということで,日本が抱える課題,これから目指すべき我が国の社会ということを通観した上で,人材に対する投資,あるいは幼児教育から高等教育まで一貫した高付加価値を創造できる,あるいは社会で生き抜く力を育成していくということの視点の上で進めていくという話をさせていただいて,社会に開かれた教育への転換の問題とか,幼稚園,小学校から大学の円滑な接続,あるいは教育と産業とのマッチングの問題という総論の話をした上で,2ページにありますような教育改革の七つのポイント,これは3ページ以降においてはその詳しい内容がありますが,わかりやすくポイントという形でこの7項目を出させていただいております。1項目が,いわゆる初等・中等教育,それから高校と大学の接続に関わる問題ですが,小中一貫教育の制度化とか,新聞報道でも出されておりますが,現在,飛び入学については高校中退扱いになりますが,それを卒業として認めるような,早期卒業制度を新しく創設するということも含めた六三三制の柔軟化の問題,それから,少人数学級の推進ということを挙げておりますが,○2以下がいわゆる大学に関わる問題です。ポイントとしてはここにあるような大学入試の改革,大学の教育機能の再構築とミスマッチの解消,英語力・グローバル力の向上,国立大学のミッションの再定義と重点化,私学の質的充実支援とメリハリある配分,リサーチ・ユニバーシティの倍増,地域再生の拠点となるような大学の機能という形で,どちらかというと,わかりやすくと申しますか,国家戦略会議へのプレゼンということを意識してつくっておりますので,表現については若干適切さを欠くところがあるかもしれませんが,こういう形で整理したものです。
 中身につきましては,3ページが初等中等教育の問題,5ページが大学全体の改革の在り方につきまして鳥瞰したものですが,基本的にはここと大学改革実行プランとは大変重複するところがありますので,大学改革実行プランを中心にここからは御説明したいと思います。
 資料2を御覧いただきたいと思います。1枚おめくりいただきまして,大学改革実行プランということで,これはタスクフォースでこれまで議論をやってまいりましたし,国家戦略会議の動きも踏まえまして,大学改革の在り方について整理をしたものですが,1ページにありますように,特に赤字で示しておりますように,「社会を変革するエンジンとしての大学の役割が国民に実感できることを目指して」取り組んでいくということと,それから,改革の方向性をお示しさせていただきますように,教育,研究,あるいは地域貢献も含めた大学の機能の再構築を図っていくということ,その再構築を実現するための大学のガバナンスの充実・強化という,二つの軸を中心に整理しております。
 めくっていただきまして3ページがその全体像を示したものです。この二つの軸を合わせて,それぞれの軸ごとに四つの項目を整理しまして,取り組んでいこうという内容です。その前提として,国としての大学政策の基本方針,大学ビジョンの作成ということで,これは本部会あるいは大学分科会でも御議論いただきましたし,昨年の政策仕分けにおいても国として大学の在り方に対するビジョンをしっかり明確に持つべきではないかという御指摘もいただいたところですので,そういうことも含めまして,今後,大学政策の基本的な方針をビジョンとして策定いただきたいと思っているところです。
 中身については詳細な説明は省略させていただきますが,6ページ,7ページにその位置づけ,あるいは構成のイメージを書かせていただいているところです。できれば中教審でも御審議をいただきまして,専門的な審議を経た上で,できれば年内ぐらいを目途にその策定に向けた専門的な御検討をお願いしたいと思っているところです。
 それから,3ページに戻っていただきまして,そのビジョンをベースにしながら二つの軸で整理しております。一つは,大学教育の質的な転換と大学入試の改革の問題です。特に,質的な転換の問題につきましては,本部会を中心に今,まさしく御議論いただいているところを踏襲し,そのための主体的な学びの時間の増加の問題とか,学修環境の整備ということを挙げているところです。
 それから,これは次の分科会,あるいは本部会の合同での御審議とも関連いたしますが,高校教育との連動,あるいはその質保証と一体的に取組をしていくとともに,入試の在り方につきましても,知識,理解を問うということもベースにしながらも意欲,能力,適性など,大学で学ぶエッセンスを多面的・総合的に評価するような入試に転換していくということで,入試の改革についても着手いただきたいと思っているところです。
 詳細な説明は少し省かせていただきますが,8ページ,9ページにその全体像のアウトライン,あるいは入試についての記述をしているところです。特に入試改革につきましては,本年夏ぐらいを目途に中教審等で検討を開始いただきたいと思っていますし,その前提としまして高等学校教育部会の御議論,あるいは本部会の御議論を一体的に全体として整合性ある形で整えていただいた上で入試の問題にも着手していきたいという考え方でおります。
 3ページに戻っていただきまして,2点目はグローバル化に対応した人材育成の問題です。これは今年度の予算においても拠点大学の形成とか,学生の双方向交流の推進,促進ということで,その方向でさらに進めていくこととか,入試においてのTOFLE・TOEICの活用とか,あるいは産業界と協働して円卓会議でアクションプランを発表いただきましたが,その連携,コラボレーションによります人材の育成の問題,それから,本部会でも御紹介し,御議論いただきましたが,秋入学への対応を契機としまして教育システムのグローバル化の問題ということについても取り組んでまいりたいというところでの整理をしているところです。
 それから,3点目が地域再生の核となる大学づくりの構想,Center of Community,COCとうたっておりますが,資料としましては12ページにその理念ないし考え方を整理したところです。いわゆる地域貢献という形での大学の機能ということが言われておりますが,実態としては地域と大学の組織的な連携についてはまだまだ十分ではないという御指摘あるいは背景があります。組織的な連携をしっかりやるような取組を進めていくということを来年度からモデルケースでやっていくということを,現状での取組等も勘案しながら進めていこうという内容です。
 4点目は,これは研究力の強化という問題ですが,大学の持っている研究力を強化していく。特に,世界でしっかり伍していけるような研究大学をしっかり形成するためのイノベーションの創出とか,そのてこ入れ等についての取組を進めていこうという内容です。
 以上が大学の機能の再構築としての4点で,それを実現するための大学のガバナンスの充実・強化ということで5から8に挙げているところです。5が国立大学の改革の問題です。特にそれぞれの大学についての機能分化,あるいはミッションの明確化ということを言われますが,なかなか現状においては十分でないという点を踏まえまして,この資料で申し上げますと,14ページですが,今後の改革のロードマップを策定し,まずは各国立大学についてのミッションにつきまして,大学,それから学部の設置目的をそれぞれの経緯とか現状での取組をエビデンスに基づいて明確にするということを国と大学との共同作業で進めていく中において取り組んでいこうというものです。そのための基本的な改革の方針を国として24年中にお示しさせていただいて,その取組を進めていこうという内容です。
 本部会でも御報告させていただきましたが,今年度の予算で138億円をつけまして,国立大学改革の強化・推進事業という形での先行的な取組を進めております。大学群の形成とか,あるいは拠点の在り方等につきましての取組を今,現状においては大学とその内容について詰めているところですが,そういう取組を先行実施という形で位置づけまして,このミッションの再定義ということを今年度からスタートさせていただきまして,来年の中ごろぐらいを目途にしまして各大学ごとの学部のミッションの再定義ということを行いまして,改革の工程,あるいはその内容を明らかにしていこうという内容です。
 それとあわせまして,新聞でも一部報道をいただいておりますが,大学自身の連携とか大学群の形成をしやすいような制度的な連携の多様な制度的な仕組みということを並行して整備していく。あるいは,重点的な取組に対する支援をしていこうということもあわせて考えている内容です。それによりまして,大学あるいは学部の枠を超えた再編成ということも今後の話として出てくるということです。
 15ページにその連携のイメージという形でお示しさせていただいておりますが,例えば,真ん中にありますような一法人複数大学によります取組とか,国内と海外の大学の連携,あるいは設置形態を超えたような教育研究組織の設置など,多様な形での連携を組むような仕掛けを用意しまして,各大学の取組を後押ししていこうという内容です。一部新聞報道で,この一法人複数大学を巡りまして,例えば県域を越えて学部の集約化,ある県においてはもうある特定の学部がなくなってしまうのではないかという報道がありましたが,そういうことを前提としているわけではありません。まずは大学自身のそれぞれの成り立ちとか状況を考えていただいた上で大学全体あるいは学部の,ここでは教員養成と医学部という国立大学の使命,目的ということも中心にして先行していくということを入れておりますが,大学自身の火をそこから消すというわけではなくて,それぞれの現代に合ったような形でのミッション,あるいは成り立ちを考えていただこうというような内容での取組を目指していきたいと思っているところです。
 これはあくまでも青写真ですので,その内容をもう少しさらに詰めましてしかるべき形で大学にお示しするということもこれから課題として考えていくところです。
 戻っていただきまして,3ページの6が大学改革を促すシステムとか基盤整備の問題です。本部会あるいは大学分科会でも御議論いただきましたが,大学の情報の公表,なかんずく大学ポートレート構想を推進していくとか,あるいは評価制度の抜本的な改革,あるいはそれを支えるような客観的な指標の開発ということにつきましての取組を進めていきたいと思っており,その専門的な検討を中教審の場を通じまして進めていかせていただきたいと思っているところです。16ページ,17ページ,18ページ,19ページにその内容を書かせていただいておりますが,機能別の評価をしていくということとか,それを裏づける形での強みを伸ばすような客観的な指標の開発,あるいは,本部会でも御議論いただいたような,学修成果を重視した評価,それから評価の効率化,あるいはパワーアップということでポートレートの活用ということとあわせてその評価の簡素化を図っていくとか,あるいは認証評価と法人評価の一体的な実施など,まだまだ詰めなくてはいけない課題もありますし,その点は是非中教審でも専門的な検討をお進めいただきまして,その取組を図っていきたいと思っているところです。
 長くなって恐縮ですが,3ページにもう一度戻っていただきまして,7番目,8番目の課題として,財政基盤の確立とメリハリある配分の実施,それから大学の質保証の徹底ということをうたっております。7番のメリハリある配分のところですが,特に大学の積極的な私学の経営を進めていくという観点から,現状においても私学助成においてはメリハリある配分を行っているところです。
 22ページですが,私学については平成23年度から一般補助と特別補助の環境を整備しまして,一般補助を9割程度厚くする。それと並行して定員充足とか,あるいは教育情報とか財務情報の公表状況とか,ガバナンスの在り方ということを勘案してメリハリをしているところです。その取組を24年度においてもさらに充実,強化していくとともに,来年度,これは今後の予算にも関わる話ですが,例えば先ほど申し上げましたCOCの構想とか,学修環境を含めた整備を図っていくとか,産業界との連携ということも視野に置きながら,一層の重点投資を図る形での充実を図るということを目指していきたいと思っていますし,これも実は国家戦略会議でも御報告させていただいたところです。
 それから,もう1点は,質保証の徹底推進ということです。特に,数は限定されますが,教学上,経営上課題がある大学に対してです。23ページの表にもありますように,これまでの取組としましては設置基準,設置審査,アフターケア,認証評価,法的措置等々についてはそれぞれの取組がありますが,概してその相互のつながりが十分ではなかったという点はあります。トータルシステムの確立という形で,この真ん中にありますような形で,全体として整合性ある形でトータルとしての質保証を,そのつながりをよくして取り組んでいこうということです。
 それとともに,法令違反等,教学上問題があるところについては,学校教育法上の措置も講じることを辞さない視野に入れながら取り組んでいこうということです。
 それから,もう一つは,これは私学部,それから事業団と連携して既に取り組んでいただいておりますが,経営上の課題を抱える法人に対しましては実地調査あるいは経営改善の指導,相談ということを行いまして,早期の経営判断を促していくということで,結果としては,多くの大学においては重点的な取組をしていただきますが,それでも社会的な変化に対応できない場合については,厳しいこともあわせて考えていくという内容を盛り込んでいるところです。
 ざっと駆け足になりましたが,以上の内容を整理させていただいたところです。これはあくまでも,文部科学省でまとめました改革の青写真です。それを具体的に肉づけし,進めていくということについては,これからの課題です。スケジュール観としましては,この資料で言うと4ページのほうに実行プラン改革期間中の主な取組という形で示しております。まずは平成24年度改革始動期としまして,今,やっておりますような大学教育改革地域フォーラムとかビジョンの策定,あるいは予算を含めました先行的なモデル着手ということをするというものです。それから,来年度,再来年度については,改革集中実行期ということで,仕組み・制度の整備,あるいは予算を含めた支援措置を実施するというような,この3年間で改革の積み込みをしていき,それにあわせて中教審においても専門的な検討をしていただいて,その結論を受けて改革を制度化,あるいは必要なものに取り組んでいこうというものです。
 それから,平成27年から29年は改革の検証・深化発展期という形で,改革のレビューを行いまして,その深化・発展を図っていこうということで,これによってPDCAを回していこうということです。都合,今年度から6年間ということで,左に書いておりますように,ちょうど来年度,25年度から29年度が教育振興基本計画の期間と重なるわけです。今年度も含めまして,その6年を改革の実行期間と位置づけまして,三つのフェーズで取り組んでいくという内容をまとめているところです。
 以上が,雑駁ではありますが,概要の青写真です。私どもとしては本日いただきます御意見をさらに踏まえまして,改革のより実効的な取組をスピード感持ってやっていきたいと思っているところです。御審議をよろしくお願いしたいと思います。以上です。

【佐々木部会長】  多岐にわたる包括的なプラン,方針,方向性でありまして,これらについては今後,この会議でも順次審議を進めてまいりたいと思います。まず,以上の説明についての御質問,あるいは今後,審議を進めていく際にどこを重点にすべきである,あるいはどういう問題を取り上げるべきである等々,御意見がありましたら伺いたいと思います。

【宮崎委員】  今の実際の工程表等々,非常によく考えて練り込んでつくっていると思ってはいるのですが,今日に至る前に,こういう会議でほとんど具体的な議論は何も出ないうちにマスコミ等で詳しい内容が報告されているのです。それも完了形で「決まりました」「やります」「いつからです」というようなことが出ますと,大分慌てるわけですが,これから審議してくださいということですが,まだ議論の余地があるものなのかどうかというのをまず伺いたいと思います。

【義本高等教育企画課長】  宮崎委員御指摘のとおりでして,報道においては断定的に報道されまして,それによって大学の関係者の方々自身の無用な不安あるいは懸念を招くところについては,我々としては非常に遺憾のところがあります。これについては,先ほど申し上げましたとおり,この会議でも御紹介をいただきましたが,タスクフォースにおいては大学改革の全体的な方向性を出し,スピード感を持ってやっていくということですから,まだまだこれは余白がある内容だと思っているところです。全体的な軸というか,方向性は明らかにしていますが,それをどう肉づけしていくのか,あるいは現場においてそれを実行するためにはどういう形の細かい配慮が必要なのかとか,あるいは財政支援につきましても,今後,予算要求が必要だと思いますが,それをもう少し現場にもしっかり届いていくような施策についてはどういう形でいくのかということについては,専門的な御議論がないことには進みませんので,そういう点も含めてできれば御議論をいただければありがたいと思っているところです。

【黒田副部会長】  今回のプラン,大変よくまとめられていると思うのですが,この中でグローバル化の問題,これはどういう人材をどれぐらいつくるのかという問題があると思うのですが,ただ単に英語力が増すということ,それから海外留学するだけでいいという,そういう意味にもこれ,とれないわけではないわけです。グローバル化をするためには,まず,他文化を理解するということが大前提であると思いますし,まずその前提としては,日本人は日本人としての心をしっかり持つということが大事です。このまま進めますと,おそらく無国籍の人材養成になるという可能性があるのです。無国籍の人材が社会,国際的に出て活躍ができるかといったら,それは私はできないと思うのです。国際化は国境があり,グローバル化は国境がないという経済界の定義のようでありますが,それにしても日本人としてどういうことを基本的にやるのかという,ここで教養教育ということも書いてありますが,まずその基本をしっかり身につけた上でグローバル化を進めていくという,そういうところが,ここでは少し表現上抜けているのではないかという感じを受けるので,その辺は注意をしていただきたいと思うのですが,いかがでしょうか。

【義本高等教育企画課長】  御指摘のとおりです。紙の制約の問題がありまして,十分,これ,その辺を意を尽くさずにできておりますが,ただ,黒田副部会長がおっしゃるとおり,これは実は政府全体の中でグローバル人材育成推進会議というのが内閣のもとにありまして,そこで実はグローバル化人材というのはどう資質・能力を求めるかということを定義しております。
 御指摘のとおり,三つの種類がありまして,語学,コミュニケーション力,それからいわゆるジェネリックスキルという汎用的な能力の問題,それに加えまして3番目の要素としましては日本人としてのアイデンティティーとか,他文化への理解ということも含めて,総合的な形での資質・能力を養っていくということです。ですから,語学の能力だけが飛び出ていたらいいというものではなくて,それをどう育成していくのかです。そのための,御指摘いただいたような,教養教育の在り方とか,あるいは学部あるいは大学院を通じたような教育の中身の問題とか,あるいはフィールドワークなども含めました体験的な活動でどうモチベーションをつけていくのかということも含めて視野に置きながら取組をしなければいけないということにつきましては,この中教審でもいろいろな機会に御指摘をいただいておりまして,それを十分念頭において進めていきたいと思っているところです。
 ですから,グローバル化あるいはグローバル人材ということについてはいろいろな形で出ておりますが,その中身を十分私どもとしては,本日御指摘いただいたことも視野に置きながら進めていきたいと思っているところです。

【黒田副部会長】  ですから,それはよくわかるのですが,こういう資料に出ますと,その辺りがみんな落ちてしまうのです。落ちるということは,この資料を読んだ人は,全くそういうこと関係なしに英語だけできればいいという感じを受けるものですから,どこかに少し書いておいていただくとありがたいと思うのです。

【義本高等教育企画課長】  このプランにつきまして,いろいろな機会でこれから御説明する機会があろうかと思いますし,また,その辺は丁寧に御説明するなり,あるいは補足するなりということについて意を用いていきたいと思っております。

【濱名委員】  もう大体出ているので同じようなことになるのですが,例えば高校の2年卒業というのは本気で考えていらっしゃるのかどうか疑わしいというか,学制改革そのもののような内容であるというか,要するに高校を2年で出られるトラックをつくるということは学制改革だと思うのですが,そうした議論がされていないにも関わらず出てしまうというのは極めて影響が大きくて,それが新聞1面のトップ記事になっているというのを見ても,中央教育審議会というのは一体何だろうかというような,基本的な疑念が生じるというようなことになるので少し考えていただく必要があるのではないかと思うのです。たくさんの重要な指摘とか,我々が議論していたことをタスクフォースが並行して具体的なことを考えていただいたのはいいのですが,やはり審議会で出てきたものが議事録とともに公開されれば,先ほど黒田委員がおっしゃったような解釈なり説明がつけ加わるのですが,やはりそういう点では,これは一体何だったのかという点はきちんと決めておいていただきたい。そうでないと,そんなレポートが突然出てしまうと,我々は一体何をやっているのだろうかという,徒労感というか,そうした思いを抱かざるを得ないところがあります。

【佐々木部会長】  今後の検討課題であろうという事項と,実施の方向で検討に入っているという事項を,もう少しきめ細かに腑分けをしてリリースすることが必要なのではないでしょうか。

【板東高等教育局長】  今の高校の問題につきましては,別途高校についての改革について検討しております部会がありますので,そこともまた議論をいろいろすり合わせといいますか,合同でさせていただく機会があるかと思いますが,基本的には,先ほどの高校早期卒業の部分は,少し我々の議論のところと違う場で御議論が進む話が第一義的です。それも踏まえまして高校と大学との接続の問題というのは,これから入試も含めましてまさに真正面から議論していかなければいけないところだと思いますが,そういうことで,まだそちらのほうでも決まった話であるわけではないのですが,こういう六三三制の柔軟化の問題も含めて,やはりグローバル化の中で問題提起をされているという,その問題提起については真正面から受けとめて,これからこういった中教審など,いろいろな部会もありますが,それを含めて議論していかなければいけないのではないかと思っております。

【川嶋委員】  個別の課題はそれぞれいろいろあると思うのですが,少し全体的な枠組みについて意見を述べます。一つは,こういう目標を設定してそれに向けて行動計画をつくっていくというときに,よく企業などでやる戦略分析でSWOT分析というのがあります。要するに自身の強いところ,弱いところ,環境で好機であるということと,驚異となることとかを考えていくわけです。例えば,この審議会もそうですが,全体的に我が国の高等教育の弱いところ,課題ばかりが提起されて,それをどう直していくのかというところに議論が集中しがちなのですが,物事には両面があるので,やはり強みというところ,いいところ,これもきちんと客観的に整理していただいて計画をつくっていただくということが必要だろうと思います。
 例えば,国立大学の改革が具体的に書かれていますが,国立大学のこれまでの役割として,割とリーズナブルな授業料でいろいろな分野の教育が受けられるというメリット,いいところがあったと思うのです。ところが,他方で,どの国立大学も同じような学部編成ということで,個々の大学から見ると個性がなくなっているというマイナスの面もあるということにもなります。このように物事を両面的に考えて,どこが一番問題なのかということをやはり詰めていく必要があるということです。そういうことを是非お願いしたい。やはり子供と同じでしかってばかりですと萎縮しますので,いいところはきちんと評価していただいて,そこを伸ばしていくということも是非お願いしたいと思います。
 2点目は,来年度から集中的に実行と書いてあるのですが,これを実行するための財源的な裏づけというのは,文部科学省あるいは財務省との間できちんと相談されているのでしょうか。同じことを前回も別のところでお話ししましたが,やれやれと言われても,空手形ではやはり実行するにもしようがない。精神論だけで終わってしまうということがあるので,財源についてどういうことを考えられているのかということをお伺いしたい。大きな点ではこの二つです。
 個別な事項につきましては,国立大学法人については,法人化するときに,今回提案されたような一法人複数大学も可能な選択肢の一つとして議論されました。結局は一大学一法人という形で出発したわけですが,先ほどお話ししたように,では,現行の一大学一法人のどこが問題で,どうしてこういう提案をされるのかということをきちんとやはり説明していただく必要があるだろうと思います。
 それから,中期目標計画との整合性です。文章の中には修正もするというようなことが書かれていますが,第3期中期目標計画との関係をやはり明示していかないと,大学も動けないだろうと思います。
 最後にもう一つ具体的な事項である入試についてですが,クリティカルシンキングを中心としようかと書かれていますが,これも多分,先ほどのたくさんの御意見があったように,このプランには書かれていない部分,表に出てこないところがあるのではないでしょうか。基礎・基本である知識,技能と思考力,判断力,表現力,そして態度,意欲,この三つをバランスをとって育てるというのが,初等・中等教育の基本的な考え方であり,それを学習指導要領の中に示されているわけで,確かに一時期,入試については知識偏重ということもあったかと思うのですが,基礎・基本である知識がないと,クリティカルに考えたり,物事を創造的に考えていくこともできないわけです。今,問題になっているのは,まさに基礎・基本のところの修得が,高校教育でおろそかになっているのではないかということです。ですから,高校教育の質の保証の問題として,まずは基礎・基本のところをきちんと育てて,それをどう評価していくか。その上で入試ではどこの部分を評価していくのかと考えていく必要があるのではないか。
 クリティカルシンキングといきなり出てしまうと,実際それが果たして大規模な,今の制度でいけば入試センター試験のように50万人の受験者でそういう試験が果たしてできるのかどうかとか,その辺もやはり勘案していただきたいと思います。

【義本高等教育企画課長】  一つ一つ,御指摘のとおりだと思っております。
 1点目の,いい面,悪い面があるということでありますが,その際においてはエビデンスをベースにして,いいところをやはりはっきりさせていくということです。ある大学においては全てがいいというわけではなくて,いい面,悪い面,それぞれありますので,どこがいいのか,悪いのかということについてもあわせて明らかにしていく。そのための指標づくりとかいうことについては,これは国立大学だけではなくて私立大学も含めてだと思いますが,そういうことを環境をどう整備していくのかについて暫時やっていこうという視点ですので,先生お話しいただいたような点については,是非積極的に,北風ばかりではないということを肝に銘じて取り組んでいきたいと思っているところです。
 それから,財源の問題です。これは当然のことながら,こういう改革をするにおいてはお金もかかります。とはいっても,やはりこういう形で表に世に何をしていくのかということを出していかないことには,お隣の役所からお金もなかなか取ってこられないということもあります。ですから,そこはやはりこれから並行して具体的にはどれぐらいの予算に仕上げていく必要があるのかについて,もう少し,この中教審の御議論も是非参考にさせていただきながら,例えば学修環境の問題とか,それに関連します経済的支援の話とか,あるいはここにありますようなCOCの構想も含めてですが,これから,本日あるいはそれ以降の御議論も是非参考にさせていただきながら,しかるべく形で予算獲得できるような形で要求の方向に持っていく努力を是非してまいりたいと思いますし,しかも,先ほど局長から申し上げましたように,教育振興基本計画の策定を来年度からスタートすることもあります。そういう点も頭に置きながら,もう少し骨太的な,来年だけではなくて,やはりもう少し先を見据えたような形での姿,その理論的な整理をこれから進めていきたいと思っているところです。
 それから,アンブレラ方式の問題です。これは先ほどお話がありましたように,やはりこれからの大学を考えました場合,一つの県で考えるだけではなくて,やはり機能とか,あるいは地域を視野に置きながら連携とか,あるいは大学群の形成ということもこれからあろうかと思います。ただ,今の仕組みとしてはそういうこと自身がなかなか成り立ちにくいという点もあります。効率的な経営とか,あるいは資源を有効に活用していくということも含めて,全てがこのアンブレラで解決するというわけではありませんので,そういう制度的な整備を用意した上で取り組みたい大学に対しての,そういう制度的な整理をしていこうということです。
 それから,入試については,後ほど池田課長から話があろうかと思いますが,総論で言いますと,入試の問題だけではなくて,先ほど申しましたように高校教育改革の問題,大学教育改革,その接続としては一体的に議論していくということを進めていくということを是非とも進めさせていただきたいと思っております。9ページにもありますように,現状においては大学教育と高校教育の間に挟まれる入試にいろいろな機能が託されています。それ自身がなかなか難しくなっている現状においては,適切な機能分散を図りながらその取組をしていく。ですから,今後,これまで以上に初等中等教育分科会,なかんずく高等学校教育部会とコラボレーション,連携をしながら,その取組をしっかりやっていくという点があろうかと思います。その中においての,先ほど川嶋委員がおっしゃったような,高校段階でのいわゆる成果をどう把握するかということも含めて考えていく話になろうかと思っているところです。

【池田大学振興課長】  基本的に,今,企画課長からお答え申し上げたとおりだと思いますが,9ページにも少し出ておりますが,夏を目途に中教審で高校関係者と大学関係者を交えたところで具体的な検討をしていただきたいと思います。特定のキーワードが今大きく報道されておりますが,基本的には高校の質保証と,それから大学の質保証と,それをつなぐ接続点である入試の在り方,そこを一体的に考えて議論していただきたいと思っております。

【林委員】  大学改革実行プランの検討案について盛りつけを行っていくという話ですが,どのようなビジョンを策定しようとしているかが分からない。機能の再構築が4点あって,充実・強化も4点ありますが,個々の問題ではなくて,全体像を見た場合に,何をどこまで,いつまでにやるのか,その中で何が重点なのかということです。例えば,制度に関わる入試の問題などは高等教育全体の問題であって,本当に実施するのかしないのかの影響はものすごく大きい。場合によっては,そういう制度や仕組みはつくるが,やるやらないの選択は法人にチャンスを与えるのか。手を挙げるところについては,それが望ましい方向であれば,お金もつけて支援していくというスタンスなのかといったことです。
 それから,国立大学改革強化推進事業が138億円の予算で動いていますが,大学は法人化で大変疲弊したという言い方をよくします。例えば医学系の研究論文などはものすごく激減している。中国がぐっと出てきたということもありますが,日本は一体どうなったというような声が聞こえるのです。改革には痛みが伴いますので,少々のことは目をつぶらざるを得ませんし,そういう時期は必ずある訳ですが,改革,改革と続くと,それはどうなのかと思います。
 問題は,法人化が悪いわけではなく,法人化に伴う運営費交付金云々はあまり賛成できません。改革の時期に落ち込んだとしても,次のステップがあればいいわけですが,それが全然見えてこない。ですから,改革は将来に向けてどういう方向にあるのか,すなわちビジョンがないと賛同できない。例えば,法人化に移行の段階では99あるいは101あった大学が86になり,医科大学を医学部に組み込んだ大学が九つあります。そういったものをまたどのように組み直すのか。一遍組んだところはいいという話もあるかもしれないが,それぞれの学部や学科を持ったいわゆる大学の機能があり,設置理念みたいなものがもともとあるわけですが,そういうものを,ここにある機能のために組みかえるというのは逆ではないかと思います。要するに,機能別分化というものが出てきて,それぞれの大学があまりはっきりしないので,一体どこにどういう機能を持たすのかを決め,そのために組み直すというのは逆だという感じがしないでもないです。
 ともかく個別の委員会をつくって,これはどうだという議論を始めるのも大事かもしれませんが,全体像をどうするかという議論を是非やっていただきたいと思います。

【納谷委員】  今,林委員が言ったことと同じことを考えていたのですが,中教審が親で,全体を統括するわけです。ここは大学分科会で,しかもその中の大学教育部会ということになっている。本部会で審議するテリトリーというか,範囲がどこまでなのかということもある。このペーパーは非常によくできていると私は思うのですが,問題は,国の全体像として,どう持っていくかということが見えて,この部分はこういう形で,例えば「大学分科会ではこういうことをやる。大学分科会はこうだが,大学教育部会ではこの部分を重点的に。ここはこう関連していますので,審議していただきたい」というように絞りをきちんとやっていかなければならない。これ全部の課題をターゲットにして個別の議論をやっていったら,これはとてもどうにもならない。もう少しそこが見えるようにしていただければということが一つです。
 議論が個別に入ってしまうと,マスコミの方では,議論の中で出てきた意見のうち,興味を持った部分だけ切り取って,ばんばんやりますから。やはり,それは危険なので。この方針でやろうとしているということがまず見えるように出しておいて,それで,ここはこれで,ここはこういう形でという段階とかレベルを明示しないと。やはり世間に与える影響は大変大きいのではないか。宮崎委員が最初に言ったときからずっと始まっている議論だと思いますので,その辺をどのように考えておられるのかということを,教えていただきたいと思います。全体像については意見がありますが,そのことをお聞きしてからまた発言します。

【板東高等教育局長】  話の持っていき方が少しミスリードだったのかという感じがいたしますが,本日は少なくとも,新聞等でもいろいろ取り上げられておりますし,大学改革実行プランや,それから平野大臣が国家戦略会議で御説明をさせていただきました教育改革の方向性について御説明をさせていただき,ここで今,進行していただいている御議論との関わりも非常に深い部分というのはたくさんありますので,それをまず御説明させていただき,質疑の中でご疑問の点も明らかにしていくというのは,本日最低限必要なことだったのではないかと思います。
 その中で特に,今,教育の質的転換の在り方の問題とか,先ほどから出ておりました学修環境の整備とか,あるいは入試の問題などもこれから関わってくるかと思いますが,いろいろな意味で,今御審議いただいてくることに非常に関連している部分があるということで,本日は御説明をさせていただいたということですので,これについて丸ごと御審議いただくということではないわけですので,これからいろいろ,この点については特に御議論いただきたいということを仕分けながら,また国家的な御議論の進め方というのをお願いを申し上げたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

【納谷委員】  それで,もう一つお願いなのですが,国家戦略会議っていうところは国の在り方を決めていく場ですから,そういうときに,今の,大学教育の質の転換というのをここでテーマで出されていて,それをベースに本部会で議論しているわけですが,今の日本の国がどういう状態にあるかということの認識が大切で,私は「成熟国家(社会)になった」という認識に切りかえないと,これからの高等教育の在り方の議論はできないと思います。
 どうもこういうペーパーを見てくると,産業という言葉があって,大学がある。しかし,このペーパーでは,産業を支える制度,文化も含めてですが,そういうところが欠落と言っては言い過ぎですが,少し薄過ぎる。ですから,そういうことが国家戦略会議できちんと議論されて,そして,それに対して文部科学省がこういう具合にしてもらいたいということを言い合う,そういう場にしてもらいたいと願っています。その行き先の根本のところが決まっていない。歴史認識というのでしょうか,今の日本の国が置かれている状況をどう認識するかということが決まらないと,人材養成の在り方を決めることは非常に難しい。少なくともそこは議論してもらって,こういう方向に行くということにつき,ある程度の合意を線引きしないと,個別論でいくとなかなかまとまっていかないのではないかと思います。私としては,企業(産業)との問題だけで大学教育を論じられても,それは少し今の時代には合わないと思います。
 要するに,産業革命以来,メーカー企業がいろいろなものをつくって豊かになった。経済が日本を支えてきたことはよくわかります。ですが,問題は,経済だけで大学教育を議論していったら,やはりどこかに落ち度が出てくるか,少し重大なところが欠けてしまう危険性があるので,そこら辺は十分注意して,これから組み立てていく必要があるのかと思います。そういう点も配慮しながら,今後,いろいろな形でペーパーのつくり方をお願いしたいと思います。こういうペーパーになってしまうと,文字がひとり歩きしていろいろな受け取り方をされてしまうと,我々が一生懸命考えていることが果たして,社会にうまく伝わるのかという心配がありますので,そういう点をご配慮いただければと思います。

【佐々木部会長】  問題が多岐にわたっていますから,議論しているときりがないと思います。私も,この大臣のプレゼンテーションに関して,国家戦略会議ではどういう御議論があったのかということを伺いたいのですが,それを含めて少し簡潔に説明をお願いします。

【義本高等教育企画課長】  次の大事な議題も控えていますので,簡潔にさせていただきます。
 先ほど,納谷委員,林委員がおっしゃったことをしっかり肝に銘じて取り組んでいきたいと思っていますし,やはり国家戦略会議に宿題を返していくというのは,その制約の中でやっていますので,多少,表現ぶりについてはバランスの欠いたところがあったかもしれませんが,そこは気持ちは同じ形ですので,今後しっかり議論する中において,多様性とか,あるいは成熟社会ということを意識した上で議論していきたいと思っています。
 それから,国家戦略会議での御議論ですが,基本的には最後に総理のほうから平野大臣が進めた方向でおおむね進めてほしいということ,それから,それにおいては特に今後どう工程でやるのかとか,できるものであれば数字的な目標も含めて目標を明確にしてやっていただきたいということでありましたので,おおむねこういう方向についてのご理解をいただいたと理解しているところです。

【宮崎委員】  確認をさせてください。ということは,ここに出てきた個別のいろいろな施策があります。アンブレラ方式であるとか,入試改革であるとか,様々な具体的なことが書いてあるのですが,これは大学分科会でも本部会でも一度も具体的な議論はしたことがないと思うのですが,このままこの方向で決まるということなのですか。それとも,今後ここで議論をして,それはよろしくないということになれば訂正されるものなのか,あるいは新聞によると,システムが決まっても学長の判断で参加しなくてよいと書いてありますが,そうすると,制度が決まってもどこの大学も参加しないというようなこともあり得ることなのか,その辺についてはいかがなのでしょうか。

【合田高等教育政策室長】  本部会の運営の件ですので,私のほうからお答えをさせていただきますが,入試の在り方については,大学審議会や本分科会においても長年御議論いただいてきたところです。今後,高校の質保証,入試,大学教育改革,この三者を一体とした改革を本分科会において次回以降御議論いただくということになろうかと思っております。
 それから,国立大学の在り方につきましては,これはまさに本部会の先生方,いろいろ御意見があろうかと思いますが,少なくとも法人化の際は国公私にわたる大学制度について御議論いただく中教審で御議論いただくというよりは,別途,協力者会議を設けて御議論いただいたという経緯もあります。私ども,先ほど局長が申し上げましたように,そこは仕分けさせていただきたいと思っておりますが,本日後半で御議論いただく学士課程の質的転換というのが当面,本部会においてはしっかりと御議論賜りたいという事柄と思っておりますので,どうぞ引き続きよろしくお願いを申し上げます。

【宮崎委員】  そうすると,このアンブレラ方式は決まりということですか。

【板東高等教育局長】  先ほどから御説明をさせていただいておりますように,まだ制度的なことに関わるような話とか,入試のような非常に大きな視野に立ってやらなければいけない話はこれからの議論ということです。そういうことを検討したい,すべきだということについては盛り込ませていただいておりますが,具体的にしかるべき場を活用しながら議論を詰めていくべき事柄,これがもうやり方も含めて決まりという問題ではなく,事柄に応じてはもう予算がついてすぐにでも走り出しているべき事柄というものもありますし,これから検討しなければいけないのです。特に入試の問題などは,今回,初めてこういう検討をしていかなくてはいけないということが検討課題として挙がってきた事柄ですので,また,しかるべき形で中教審として御議論いただくということは考えさせていただきたいと思います。いずれにしろ,本日はこういう課題をこれから検討課題も含めてたくさんありますということを少し御紹介させていただきましたので,今度どういう形で話を進めていくかにつきましても逐次御説明をさせていただきたいと思います。

(2)大学教育改革地域フォーラムの状況及び「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」について,文部科学省から資料3及び資料4の説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  それでは,先に進ませていただきます。文部科学省内に高等教育段階における「障がいのある学生の修学支援の在り方について検討会」が設置され、議論が進められていると伺っております。本日は松尾学生・留学生課長から御説明いただくことになっていますので,よろしくお願いいたします。

【松尾学生・留学生課長】  資料4を御覧いただければと思います。資料4に2枚付しておりますが,今,部会長からありましたように,「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」の開催ということです。昨日から第1回目を開かせていただいておりますので,経緯,それからそのときの概要について簡単に御紹介をさせていただきたいと思います。
 趣旨にありますように,平成20年に「障害者の権利に関する条約」が発効されました。そして,昨年8月に「障害者基本法」が改正をされております。一方で,大学に在籍する障害学生の数ですが,平成18年には約5,000人でしたが,昨年,平成23年には1万人を超えているということです。ただし,この数ですが,全体の在籍の0.3%ということで,海外と比べて少ないものになっております。各大学等々の支援の在り方につきましても,団体含めていろいろ伺っていただいているところです。また,例えばJASSOが事務局をやっております,ネットワーク事業等々もあるわけですが,なかなかまだ脆弱という状況にあります。特に大学の現場においては,条約でいうところの合理的配慮の具体の内容をどこまで実施するのか等々についていろいろ懸念するところ,躊躇するところがあるということで,そういった中で高等教育段階における障害のある学生の修学支援の在り方について,局長のもとに検討会を設けていろいろな論点,それから課題の整理をしたいと思っております。
 やはりなかなか一足飛びには行きませんので,現状に即した形で短期的な課題,長期的な課題,そして現場で実際使えるような形での合理的な配慮の視点,観点,そういったものをみんなで議論していただきたいということで,この夏ないしは秋までに中間の取りまとめをして,また,最終まとめは随時と思っておりますが,何らかのまとめをしていきたいと思っております。そういうことで今回,昨日から開始をさせていただきましたので,中教審の場でも少しご報告させていただいて,随時やり取りをさせていただきながら議論を進めたいと思っております。
 簡単ではありますが,昨日出た御意見だけ少し報告させていただきますと,この検討会では,やはり大学だけ,文部科学省だけということではなく内閣府,厚生労働省等々,関係省庁が相当広く関わっておりますので,そういった方々にも参加をいただいて,全体で議論したいと思っております。その場で出た議論としては,大学における障害のある学生,ないしはそこに入りたいという学生が相談できる窓口の設置,あるいは合理的配慮の具体的な事項について大学間で共有できるような枠組み,あるいは入試,高校,社会との接続の問題,それから,大学だけでは無理なので,自治体であるとかNPO等と連携できる仕組みをつくっていくといったところの点が第1回目の会で出た意見でして,なかなか全てを網羅するというわけにいきませんので,短期的な課題と中長期的な課題と分けながら,随時実行に移していくというようなことで整理をしたいと思っております。
 そういったことで,昨日から開始をさせていただいたという件,それから中教審のほうにも御報告しながらいろいろと進めていきたいという点について御報告させていただきます。

【長尾委員】  広島女学院大学は,2011年に文部科学省の私立大学戦略的研究基盤形成支援事業で,障害高等教育支援研究所を設置するということで,3年間で3億円のプロジェクトで支援をいただいています。今まさに教職員,それから地域を含めて研究を始め,各所からの協力の中で,障害学生の受け入れを今年から行っています。ここで議論されているようなことを単体でやっております。今,お聞きしましたらもったいないことだなと思いました。本学も様々な問題に直面し,それは大変です。なぜ単体で同じようなことを議論しなくてはいけないのか。教職員頑張っているわけですが,こういう国の委員会に私ども障害学生の支援経験者も陪席させていただけないか,是非よろしくお願いしたいと思っております。

【松尾学生・留学生課長】  昨日,第1回目でしたが,これから2回目,3回目と,外部の方々のヒアリング等々考えております。私どもも実際そういう現場に行かせていただいて,いろいろと参考にさせていただきたいと思います。これは基本的にオープンですので,入っていただくことも可能ですし,あるいは,必要があればヒアリングで伺うというようなこともさせていただきたいと思っております。
 そういう個々の活動,一つ一つの活動を,より広く展開をしていって,より多くの大学が多くを享受できるといいますか,そういったこともしたいと思っておりますので,よろしくご指導賜れればありがたいと思います。

【鈴木委員】  この障害のある学生の修学支援なのですが,これも,どの範囲,あるいはどの国籍の障害のある学生に対する支援ということを想定するか,これもグローバル化ということですので,そういうことも考える必要があるだろうと私は思います。
 それで,私のおりました大学,ICUでの経験から言いますと,例えばアメリカ人の学生で全盲の学生とか,それから,アフリカだったかと思いますが,難聴の学生が来たいということで,非常に内部の整備等もありますが,では受け入れようということで,もちろん盲導犬を連れてくるとか,それからノートテイカーをどうするかとか,あるいは寮の生活はどうするかといろいろ考えなければいけないのですが,とにかくやってみなければということでやった経験がありました。
 今もそういう意味では,障害のある海外からの学生を受け入れておりますが,そのようなことも議論の片隅とは言いませんが,中に入れておいていただくと,将来的なグローバル化という観点からすると必要なことになってくるだろうと思います。

【佐々木部会長】  本日の意見を取り入れながら,今後の検討を進めていただきたいと思います。
 それでは,次の案件に進ませていただきます。5月28日に早稲田大学で大学教育改革地域フォーラムが開催されましたので,その概要をまず事務局から御紹介いただき,その後,御尽力をいただいた吉田委員から御発言をお願いします。

【合田高等教育政策室長】  資料3です。このフォーラムに当たっては田中委員,白井委員,吉田委員に大変お世話になりました。ありがとうございました。
 会場の学生からの主な発表というところが1ページ目の中央あたりにあります。先ほどの議論とも重なりますが,一つ目の丸にありますように,専門分野を選択する時期,それから二つ目にありますように,企業の大学教育に対する専門性に対する期待の高低,それから,三つ目にありますように,どの学部でも共通で社会に生かせることは,論理的思考能力や文章能力,プレゼンテーション能力ではないかといった意見がありました。また,レポートの提出やテストを受けた際には採点をしてもらいたい。やる気にも影響するといったような,大変本質的なところから具体的な話までいろいろ御意見が出たというところです。
 2ページ目ですが,これまでのフォーラムと同様に,大変高い満足度を示しておりまして,次回は6月16日の土曜日,金子元久委員に大変御尽力をいただきまして,筑波大学で行うことになっております。それ以降,お目通しのとおり,宮崎委員,納谷委員,長尾委員,それから部会長ご自身にも様々御尽力をいただきまして開催の検討を行っていただいているところです。引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。

【吉田委員】  私ども,このフォーラムを開催させていただくに当たって,なかなか,白井委員や橋本教授,また田中委員はお忙しくて,実はパネルの打ち合わせがほとんどできない状況で実施せざるを得ないということで,大変心配をしたのですが,おかげさまで会場のほうからは学生が積極的に発言をしてくれて,ここに主立ったものを取り入れていただいておりますが,そういう意味で学生の問題意識はそれなりにというか,大変高い部分があるのかということを聞いて,きちんと学修させる大学にしないといけないということを改めて感じた次第です。

【佐々木部会長】  次回は金子委員のところですが,何か御意見などありませんか。

【金子委員】  遺漏のないようにさせていただきます。

【佐々木部会長】  では,次回以降も次々に開催できますように期待いたしますとともに,委員の先生方にはモデレーターや進行役や司会などの役割もおありでしょうから,御尽力を賜りたいと思います。この間,非常に特徴的なのは,学生がこの問題に積極的に発言をしているということだろうと思います。こうした学生の声も集約をしながら,大学教育の質保証,質の転換を図ってまいりたいと考えます。

(3)ヒアリング等を踏まえた学士課程教育の質的転換に向けた検討課題について,文部科学省から資料5,6について説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  さて,この間,二度にわたって大学の教育の質の保証に関わる様々な問題についてヒアリングを行ってまいりました。例えば,体系的な教育課程の必要について,ワークショップ中心のFDについて,教学IRの必要性についてなど,貴重なお話を伺いました。他方で,大学マネジメントの特質とその難しさという御指摘もいただきました。今後,答申をまとめる方向でこれら2回のヒアリングを是非生かしてまいりたいと思いますが,これまで2回は十分な議論ができませんでしたので,本日,少し時間を取って意見交換をいたしたいと思います。

【合田高等教育政策室長】  資料5,A3判の資料にお目通しをいただければと存じます。先ほど,大学改革実行プランの御議論もありましたが,実行プラン自体はフィージビリティーとか構想の大きさ,重要性について,様々なものがないまぜになっておりますので,本部会におきましてはそれをこういう体系の中で構造化し,政策としていくかという点も含めて,当面,夏の答申に向けてまず御議論を賜れればと思っている次第です。
 この資料5ですが,2回行いましたヒアリングと,これまでの本分科会の議論をごく簡単に整理をさせていただいたものとなります。一番左側ですが,教員が学生に対して,学生の主体的な学びを促す取組・工夫ということです。NEWVERYの山本理事長は「負荷」という言葉を使っておられましたが,負荷と動機づけというものをセットでどのように与えられるのか。それを学修支援環境が学生を支えるという構造の中で,その次,右側ですが,これは審議まとめの中で部会長が直接整理をいただきました重要なポイントとして教育課程の体系化,その次には組織的な教育の実施,それから授業計画(シラバス)の充実が必要である。そして,先ほどの大学改革実行プランとも関わりますが,次回,6月19日の大学分科会・大学教育部会合同会議では,高校と高等教育の円滑な接続ということにつきまして,高校の質保証,入試,それから大学教育と,この三つの関わり合いにつきまして初等中等教育分科会の高等学校教育部会の四方の委員の方にもお越しをいただいて議論をするということになろうかと存じます。先ほど,早期卒業の話もありましたが,事柄としては高校教育の質保証がその前提であるということで,高等学校教育部会でも議論をいただいているところです。
 それから,その下ですが,先ほど,教育投資の議論がありましたが,先生方に大変な御尽力をいただきまして,学長・学部長に対するアンケート,700の学長,2,200の学部長の先生方のアンケート調査を実施し,現在,集計中です。ここで学生の学びを深めていくために何が必要かということを随分出していただいておりますので,これも次回以降,御報告をさせていただいて,さらにどういう投資が必要なのか,環境整備が必要なのかという御議論も深めていただきたいと思っております。こういう形で大学改革実行プランを具体的に政策として形にしていただきたいと思っております。
 その右側ですが,具体例として,これも既に本部会で御議論いただいた様々な学生の主体的な学びを確立するための具体的方策があります。そして,2回のヒアリングでは,これを回していくためのマネジメントをどうしたらいいのかという御議論をいただいたところです。ごくごく要素を抽出いたしておりますが,Multi-purposeの大学マネジメントの特性・難しさ,執行部のマネジメント能力,大学経営の戦略性の強化といったことについては特に上智大学の上山教授から御指摘がありました。全学的なマネジメント,教学マネジメントの強化という観点からは,学長・教学担当副学長の構想力とイニシアチブ,それから前回,金子委員からも御指摘がありました,全学的な教学に関する審議機関の機能の強化の必要性,あるいは教育課程編成あるいはカリキュラムデザインをする際の単位のくくり,それからそれらを支えるスタッフと専門性,教学IRといったようなことが御議論をいただいたところです。
 その下にはヒアリングにおける諸提言ということで,これはフィージビリティーを一つ一つ考えているというわけではありませんが,御提案のあったものを並べております。ワークショップ中心の体系的なFDを促進するために大学教員の教育能力証明の必修化,プログラムの共有・標準化,ファカルティ・ディベロッパーの育成,大学マネジメント層の養成・確保,それから機能に応じた採用要件や評価の改善・多様化,教育情報の公開促進,転コース,転学科等の自由化といったような具体的な御提言がヒアリングでもあったところです。
 その下は,審議まとめにおいて既に国や大学支援法人等に検討,研究,投資等を求めている事柄でして,一つ一つ御紹介は申し上げませんが,こういう御議論を既に本部会でも賜っているという状況です。
 前回,前々回のヒアリング等を踏まえますと,それからこれまでの本部会の御議論を踏まえますと,こういう構造になるのではないかということで,御参考までに資料5を作成させていただいた次第です。
 資料6につきましては,特に全学的な教学マネジメント,それからヒアリングの諸提言につきまして,ヒアリングでいただいた内容を整理をさせていただいたものです。個別の御紹介は省かせていただきますが,御参考にしていただければと存じます。

【佐々木部会長】  この資料5は検討のたたき台ときちんと書いてありますように,特にページの右半分は,これからの検討のための素材です。これを進める,教員の能力証明をやるとか,こういうことを決めたわけではありませんので,そこを間違いなくご承知おきをいただきたいと思います。
 さて,前々回のヒアリングを踏まえて,長束委員から事務局のほうに御意見をいただいていると聞いておりますので,皮切りに長束委員から御意見提示をいただきます。

【長束委員】  大きく分けて,大学の教育改革についてと高校の質保証及び入試についてということで2点お話をさせていただきます。まず1点目の大学の教育改革についてですが,前々回の大学教育部会のときに様々な御発表をお聞きして,例えば転部,転科の自由化のお話とか,IRの必要性,また,新潟大学のNBASシステム,さらには愛媛大学の授業コンサルティングの様子を見させていただきました。様々な御意見や取組は高校においても実現すれば非常に有効だと思うようなものばかりであったのですが,ただ,そこで感じたことというのは,それが大学全体にどのようにして広がっていくのかというところが課題なのかと思いました。
 例えば,愛媛大学の授業コンサルティングも,おそらく全ての先生の授業をやっているわけではなくて,希望された先生ということのように思いました。そういった面で,大学全体としてどのように進めていくのか,さらにはその実行度,実質度をどう上げるかというところの仕組みというものの必要性を感じたということです。
 さらに,その中で一つ気になったのが,大学のいわゆる教員のキャリアアップというのですか,授業アップに関わっている先生の地位の問題というか,なかなか大学の中で認められづらい面があるというようなお話を,新潟大学の先生がお話しされていたような気がするのですが,教育という面に対する評価というのを,以前も本部会で議論があったかと思うのですが,そういったものの必要性も感じたというところです。
 もう1点,高校の質保証及び入試についてということですが,こちらは,実は最後に山田委員が御発言された部分で,日本とアメリカの学生の資質の違いのようなお話をされて,小中高の教育で生徒が自らいろいろな活動的に動いていくような資質を磨いていく必要性があるのではないかというようなことの御意見をいただいたと思うのですが,高校段階においては新しい学習指導要領でも,先ほどから話が出ていますが,思考力・判断力・表現力の育成というのを基礎・基本と並んで中心に据えております。高等学校のほうで,例えば,授業研修などをやると必ず,どのようにして生徒の主体的な力をつけていくのかというのが主題となるような研究がされております。さらには,高校現場には教育実習生がよく来るのですが,教育実習生も大学でも教員養成課程においては生徒が主体的に動くような授業をつくり上げるようなことを学んでくるということで,ある意味では高校現場では非常にそういった力をつけていくというのを主題として動いているというか,やらせていただいているということです。
 ただ,そうは言いながら,まだまだ足りない面もあるという面は,おそらくいろいろな要因が考えられるのかと思います。日本人の国民性というような面もあるのかもしれないですし,高校の教員の中にはやはりまだまだ自分たちが受けてきたというのですか,教え込んでいくっていう部分が強くある面も,そこから抜けきらない面ももちろん高校の教員もあります。ただ,入試という面が大きな要素としてあるというのも事実で,大学入試に縛られてそういうような主体性や表現力,思考力を育てる授業がなかなかやりづらい面もあるということで,やはりそういう力を育成するということであれば,大学側としては入試も含めてどういう力を高校で,初等・中等教育でつけてほしいのかという提言をしていただきたいと思うわけですが,実は,その中で,先ほど川嶋委員のほうからもありましたが,別の立場からの意見も結構出てくると思うのです。
 先ほどあった川嶋委員の意見もそうですし,金子委員から,中堅高校の高校生の学習時間が減っていると,そういったものも問題だというのが以前,本部会でも議論されたと思いますが,高校生の学習時間が減っているという要因の中には,おそらくAO入試の増加というのもあると思います。AO,推薦で入試をして,高校現場では早く決まってしまって,入試の中でも学力を問うような部分がないという点で,なかなか学習時間が増えないという要素はあると思います。それだけが要因ではないと思いますが,その部分が非常に強いというところで,二つの面が,今もお話しさせていただいたように,思考力や表現力を育てるための入試ということであればAO入試というのは非常に有効だと思っているのですが,一方で,基礎学力が必要だということになれば,やはり知識を問うような入試が必要になってくると思います。そこのところが両方の意見というのですか,両方別々な観点からそういう力をつけて欲しいと高校現場でと言われるのですが,どちらの観点というのを,それを分けて考えていっていただかないとなかなか難しいと思います。入試においても含めて少し考えていただけるとありがたいと思いました。
 もう少し具体的に言わせていただくと,国際化社会において優秀な外国の学生やビジネスマン,研究者と伍していくための人材の育成という面と,日本社会で一般的に多くの学生の質の保証を図っていくという面と,多分,2点が一緒になってしまうと,なかなか入試制度を考えたりする面でも難しいような気がしました。

【佐々木部会長】  高校教育と高等教育との接続については,また次回に,ここの資料5にも書き込んでありますように,高等学校教育部会の委員をお招きして十分に議論をいたしたいと思いますが,本日もこれに関わって,委員の方々から御意見をいただきたいと思っております。

【納谷委員】  次回,全体会議のときにまたお話しする機会もあると思いますので,今の問題提起された3点,すなわち「国際化と思考云々というところと知識」,これ,全部を教育してもらわなければしようがないので,それを入試に絡めてどうこうという議論がそもそももう高校教育のレベルで議論してはいけないと私は思います。ですから,そこは,そのために入試が必要なのか,必要でないのか。もし,高校で大学入試を廃止したら,どういう教育を展開するかということをお考えいただければ問題ははっきりするだろうと私は思います。もし大学が全部入試をやめてしまったら,どういう事態に高校がなるかということをよくお考えいただいて今の問題提起をしないと,やはりうまくいかないのではないかというのが私の実感です。

【長尾委員】  以前,言葉の議論というか,それを明確化したと思うのです。「がくしゅう」という言葉を初等・中等は習うほうの「学習」,そして高等教育は修めるという「学修」であると明確化しました。これが本当に何をしなければいけないかということを物語っていると思います。やはり基本的に初等・中等では「学習」させ,高等教育では「学修」できるひとを送り出していただきたいと思います。

【鈴木委員】  私は,長束委員はすごく現実の悩みを,それから現実の問題点をまとめてお話しいただいたのではないと思うのですが,一つ,例えば先ほど義本課長のほうから御説明いただいた大学改革実行プランの3ページのところに,激しく変化する社会における大学の機能と再構築というところの1で,大学教育の質転換と大学入試改革とありまして,質を転換しなければいけない。これは金子委員が学生は勉強しないと,それから先生たちは質の高い教育をしていないと,それからシステムとしての教学改革というのがないという,三つの「ない」ということをおっしゃって,それを質転換しなければいけないということをおっしゃっていたわけですが,それと大学入試改革というのがここに挙げられているわけですが,私は,先ほど長束委員から日本とアメリカの教育の小中高において違うのではないかとおっしゃっていて,私も違うと思います。私もアメリカに長くいて,子供もアメリカで育てたという面もありますので,小学校,中学校の教育がどのように行われているか,高校がどう行われているかとありますが,これは全体的に違うと思います。
 それで,やはり考えさせる授業,それから自分が発言する授業,それから相手を聞かなければいけない授業というものが授業の中心になっていまして,先生たちは一方的に知識を授与するというよりも,ディスカッションを促すという,クラスのコーディネーター役に徹している。それは小学校でもそうなのです。ただ,逆に,勉強も非常にさせるということです。遊びではないというのも小学校の時代から徹底していて,これは今,納谷委員がおっしゃっていた小中高のところまでで全部やらなければいけなというのを大分やっていると私は思います。
 それで,ここで1の大学教育の質的転換と大学入試の改革ということなのですが,どこかで受け身の教育というものを,ここに書いてありますように主体的に学び,考え,行動する人材を育成する方向に変えなければいけない。これを受け身か能動的か,どっちをどこでやるということだと思うのですが,とにかく大学教育の質の転換と言っておいて,大学において学び,考え,行動する人材を育成すると言ってももう遅いと私は思います。
 それで,一つやり方があるとすれば,入試のやり方を変えるということと,それから,入試で入った後も学科,学部の選択を変えることができる。全面的に変えるというわけではないかもしれません,学びの遍歴を経た後,自分はやはりこうだというところで変えることができる,そのメカニズムを導入する必要があるのではないかと思います。というのは,先ほど,早稲田大学のフォーラムのところで学生の一番最初の発表のところで,自分が大学でどんなことを勉強したかわかっていない段階で,入試の段階で自分の専攻を決めて,入試をやらなければいけないわけですから,入った後はみんな,言葉は少し悪いのですが,ところてん式に124単位を取得すれば卒業できるというファクターになっているわけで,これが本当に高校までのところで自分はこういうことをやりたい,自分はこういう人間だということがわかるかというとわからない。ほとんどの人がわからないまま入ってくるのです。これは受験のための指導というものも,あなたは理科系で,あなたは文科系だということもあると思いますが,これによって入ってくる学生がそのまま4年間,自分の方向というものを変えられないままに主体的に考え,行動するという人材をどうやってつくれるのかと思います。それまでの選択の余地を与えなければ,しかし選択の余地を与えれば学生というのは非常に真剣に悩みますし,非常に真剣に自分の方向ということを考えます。
 これもまたICUでやった改革とつながってくるのですが,ICUの場合には,入ってくるときには専攻分野を決めないで入ってきてくれということになっております。それで2年の終わりまで決めてくださいということで,この2年間というのはものすごく学生は苦しい時間であると報告を受けております。ですから,これと同時にカウンセリングとクリニックとかというサポーティングのシステムを充実させなければいけないのですが,やはり自分が何をやってもいい,しかしそのかわり自分に責任を持ちなさいという,自由と責任をセットにして勉強させるということが,やはり自分の方向を自分で決めていくということにつながっているわけで,それなしに自分の主張ということ,これはグローバル化においても自分の主張ということはできないと思いますので,私は大学入試の改革というときに,まあ,これは入試ではないかもしれませんが,何らかの形で入った後でも,乗りかえが可能であるというシステムを大学のカリキュラム,プログラムの中に入れておく必要がある。そうすることによって学生たちは真剣さが非常に増します。それから,勉強に対する取組も,友人関係も全く違ってきます。
 親の意見を聞いてみると,卒業式のときに私,言われたのですが,ものすごく子供が変わったということを何人からも言われました。ですから,やはりアウトカムという観点からすると,私はここのシステムを変えるだけでも学生たちは主体的に学んでいく。それで悩みながらも自分の方向を決めていく。そのことによってキャリアも決まってくるということが多々ありますから,キャリア教育というのは今,義務化されていますが,これは科目を1科目置いたぐらいでとてもとてもやれるわけないわけですので,そういう非常に広い深い意味があるということをここで考える必要があるというように思っています。

【金子委員】  今のお話はそのとおりだと思うのですが,高校と大学の接続に関しては,非常に大きいのは高校のカリキュラム自体も相当細分化されていて,三十幾つかの科目があって,これは多様化政策の一つの帰結だと思いますが,高校のほうも非常に多様化していると思います。大学のほうもすごく細分化されている。両方で非常に大きな障害が起こっていて,大学のほうに関しては鈴木委員がおっしゃったようなことが起こっていますし,このまとめにも書いてありますが,やはり全学的でカリキュラム設計できないために,個々の科目についてはきちんとした密度のある教育ができないということ起こっているということは散々本部会でも議論されているわけです。
 実際に入試でもこんなに科目が細分化されているのが,本当に入試の精度を上げているのかというと,それはそういったことはまずあり得ないと思います。むしろほとんど機能していないではないかという議論があるわけで,そういった意味では接続の大綱化というのは非常に大きな課題だろうと思います。入試改革というと,技術的に今よりいい入試があるみたいな幻想があるのですが,私はそれはもうあり得ないと思います。ただ,これまでの非常に細分化されたイメージの接続が非常にワークしていなくて,高校にとっても大学にとってもよくないというのはやはり大変重要な側面として出てきているので,そこのところはやはり議論する必要があるだろうと思います。
 一応ここでの議論の延長としてはそういう議論が出ているのですが,ただ,これは入試の問題が出てきたので,大分先のめりの議論になってしまいましたが,今度の答申で,夏ぐらいまでに出すとすれば,そこをどの程度そこまで突っ込めるかというと,これはやはり問題があるので,大学の側ではそういう問題意識を持っていても,高校の側で必ずしもそういう問題意識が十分に熟しているとは,私は高等学校教育部会に出ているのですが,まだまだそういう議論にはなっていないので,これはもう少し先のそういった方向があるというところを認識すべきだろうと思います。
 少し違った点を少し申し上げたいのですが,このまとめは非常によくできていて,準備していたところがよく出ているのですが,少し考えてみますと,少しまだ議論が足りていなかったと思うのが,中間まとめで「予測の不能な時代に」ってついているのですが,「予測不能な時代に必要な」とは,何なのかということです。確かに教育の密度というか,自分で考えるような教育が必要だというのは何となく直感的にわかるのですが,予測不能の時代だとなぜそれが必要だというところがあまり議論されていないといいますか,そこのところ少し,確かにそうだろうと思うのです。そこのところを議論を少し補強していく必要が少しやはりあるのかと思います。
 もう一つ,先ほどから議論になっています国家戦略会議とグローバル化の問題ですが,あのグローバル化の議論も,何か気持ちはわかるが,グローバル化,グローバル化と言って何をするのかという話ですが,英語だけをやっていればいいのかということです。1割留学させるというのですが,それでいいのかという問題もあるのだろうと思います。グローバル化というのは,結局,グローバルに直接タッチする人が,英語を使って頻繁に外国と仕事をするということです。私たちがやっている調査では,これは大体大卒者の1割ぐらいで,1割留学させるというのは大体合っているのですが,ただ,それだけでグローバル化かというとそうではなくて,もう一方でやはりグローバル化でもって産業構造がものすごく変わっていますから,むしろ産業構造側の問題,グローバル化といったら大きく言えばもっと産業構造側問題もあるわけで,今までの製造業中心のこういう産業体制に合っていた,あるいは組織に合っていた人材では合わないというところもやはり非常にあるわけです。ある意味では就職できない人たちも,要するに産業が逃避しているわけですから,外に行っているわけですから,就業機会がなくなってしまった人たちがいる。この人たちをどうするかというのも,言ってみればグローバル化の課題です。その真ん中にも,時々外国にも関係ある仕事をしなければいけないのだが,必ずしも頻繁にやっているわけではない,そういう人たちもいるということです。
 そういう中で,グローバル化の中でどういう教育の質が,何が必要なのかという議論は,これは国家戦略会議では多分やっていないのだろうと思うのです。多分それはこちらのほうができる議論,しなければいけない議論なのではないかと思います。そういう意味で,学びの確立とその方策というところでは,非常にこれは重要なので,実際にはこれは非常に政策的には重要だろうと思いますが,その背後にある人材の需要というか,どういう教育が必要なのかというところの議論は,何かもう少し,これを見ていますと,もう少しとやるべきなのかという感じを受けました。

【荻上委員】  私もいつも同じようなことを言って評判が悪いのですが,全ての根源は我が国の教育が履修主義をとっていることだと思います。修得主義ではなくて履修主義が基本になっている,つまり修得しなくても履修すればそれでいいということです。あるいは先生が教えれば,学生が身につかなくても別に気にしないという,一言で言えば,我が国の教育はずっと履修主義であったということです。ここを大きく変えないと何も変わらないだろうと思っています。これは,我が国は年齢主義,あるいは学年主義をずっととってきたということとも深く関連すると思います。
 何年か前に,大学の入試に関しては学力不問の入試はやめようという議論をしましたが,これがあまり具体的な形で実現してはいないだろうと思います。学力不問で大学に入れるのであれば,勉強しないのは当然だろうと思います。ですから,大学の入試はきちんと学力を問うという,私は個人的には全員にセンター試験を課したらいいだろうと思いますが,これは各大学に任せたのでは絶対できません。これは義務化しなければできないと思います。
 それから,出口のほうに関して言えば,厳格な成績評価ということが盛んに言われていますが,これも各大学に任せたのではなかなか実現が難しいと思います。それは,ある大学が非常に厳格な出口管理をやれば,そんなところには学生が来なくなるだけの話ですから,文部科学省が強力なリーダーシップを発揮して,入り口管理と出口管理はきちんとさせるということが必要だと思います。
 私も現在,大学をあずかっていて,厳格な入り口管理と出口管理をしたいのですが,すれば学生が来なくなってしまう。これでは経営が成り立ちませんから,ここは国を挙げて取り組まなければいけないと思っております。
 それから,もう一つ,多様化をし過ぎたと思います。いろいろな意味がありますが,一つだけ言いますと,何でもかんでも選択科目にしてしまった。私は今,自分の大学で必修科目を増やせと,この間,全学に言いました。基本的な,是非ともこれは学ばなければいけないというものは必ずあるはずですから,それは必修にする。大綱化以降,みんな選択になったきらいがありますが,やはり基本は必修科目ということを徹底する必要があるのではないかと思います。
 今,私が申し上げたことは,どれも非常に評判の悪いことばかりだと思いますが,あえて申し上げました。

【宮崎委員】  私も全員にセンター入試ですか,要するに大学入学資格というものをある程度のところで見極めるというような作業は大変必要ではないかと思っているところでありますが,それとプラスして,今,入り口のお話ばかり出ていますが,出口のほうで,どんなに学士課程をいろいろ設計しても,4年間で設計すると就職活動が今の学生は現実問題として3年生で始めないと間に合わないのです。3年の秋解禁になるわけですが,そうすると,もうほとんど2年間ぐらいの教育しかできないということです。学生達はもう3年になるとクラブも引退するのです。学生生活というのはもうそこで終わりまして,もう卒論もそわそわしておりまして,集大成である卒論も,何か,どうにかなるような様子で,提出が遅れても「就活でした」って言うと怒れなかったりするのです。企業との関係もあると思うのですが,きちんと教育を終えた子を,その目で見て判断していただきたい。3年生の頭で,プロセスで見られても,やはりなかなか責任が持てないので,その辺のつながりのところも是非考えていただきたいと思います。

【納谷委員】  もう1点だけ言わせていただきたいのですが,先ほど,少しきつめに言ってしまって申し訳なかったのですが,私が言いたいことは,そういうことで,先ほど鈴木委員もおっしゃられたようなことをどこでやるかということなのです。今,入試でつないでいるということ自体が非常に残念なことです。やはり,それを集中的にどこかできちんとやらなければならない。それを昔だったら一高だとか何とかというところでやっていました。決してそこへ戻れと言っているわけではないのですが,そういうことを学部教育で全部やるというのなら,それはそれも一つの方法かもしれません。
 ICUはそれをできるような全体構造になっている大学です。しかし,高校サイドで大学を見ながら導入教育など何かしてくれるのではないかと当てにしていたら,やはり学部教育が成り立たなくなってしまう。本格的な専門教育も含めてやる場が大学だとすれば,それは大学院なのか学部なのか,これからまた議論しなければなりません。
 私も高校入試のことに関連した懇談会で出たことがあるのですが,先ほど言った難しい試験問題をやるとかやらないとかという議論,例えば数学ではそんなレベルのことを教えられないとかいうことも含めて,高校教育の現状(在り方)と入試問題とがセットになって,いわばエンドレスの議論が展開します。今はそういう議論をしている場合か,時代か。やはり高校の先生方もきちんと考えて,もしそれが自分たちでやるべきことではないとすればどうするのか。とか,そういう議論をここの高等学校教育部会と大学教育部会のほうできちんとやるべきです。その結論を受けながら大学は大学としてどっちのほうへ振っていくか考えるべきです。
 金子委員もおっしゃられましたし,鈴木先生もおっしゃられましたが,それをどこでやるかということだけは一つの固まりで,大きな問題提起です。高校と大学で分けて補完し合うなんていうことは入試一つではとてもできません。私は,こう思っております。

【長束委員】  今,いろいろ御意見をいただいたのですが,基礎・基本をつけ,さらには表現力,思考力,判断力をつけていくというのは,高校としては高校としてやっていくわけです。それはもちろん大学の入試が変わることで高校の教育をよくしたいと言っているわけでは全くないので,高校は高校でしっかり新学習指導要領にもあるように,いろいろな力をつけさせて生きる力をつけさせていきたいと思っています。そういう努力をしていくということです。
 ただ,現実問題として,入試というものによっていろいろな影響を受けているのも現実あるので,大学側としてこういうような力を高校でつけてほしいと,先ほど三つ全部必要だというお話をいただいたのですが,そうであれば,それをしっかりと高校側に提示していただいて,こういう力をつけさせてほしいと,そのために入試もこのようにしていくという提言を,こちらは大学の教育を考える部会なのですが,高等学校教育部会へ提案していただくなり,高校側にどんどん要求していただいていいのではないかと思います。

【林委員】  いろいろな意見が出ているようです。初等・中等教育の問題があり,接続入試があり,そんな中で高等教育,大学は何をしなければいけないか。そして,これらのことは今の大学改革実行プランに全て入っている。ということは,大学改革実行プランの中心に質的な改革であるわけで,そういう視点に立って,入試はどうあるべきか,大学改革はどうすべきか等々を議論しなければならない。
 鈴木委員からのお話もありましたが,以前,私は金沢大学で学部・学科等の教育組織を大きく改革をしました。金沢大学では理学部と工学部の区別はもうありませんし,そこでの考え方は工学部の学科をどうまとめるかではありません。日本の大学はほかの国と違って工学部をたくさん持っており,しかも基礎から応用まで幅広い領域を守備しているわけです。そういう工学の役割は今どうなのか。科学技術の進歩は急激で,理学と工学の境目がなくなってきています。真理の探求のつもりで進めた研究の成果が技術化していく。こういう時代に入ってきますので,いわゆる認識の科学と設計の科学が接近し境界がなくなりつつある状況にあって,理学と工学を一緒にしようという考え方もでてくるわけです。
 それから,台風や雨,地震や津波は当然ですが,災害は大型化し地球規模になっている。工学の土木での防災等の議論は地球規模で考えざるを得ませんし,そこでは理学の地球科学と工学の土木は一緒だという考え方です。
 高校生から見たら,化学にしたってわかりません。基礎的な化学があり,工業化学があり,プロセスを扱う化学工学がある。そういう化学を志す学生に対して,理学部の化学や工学部の化学など別々の入試をするのではなく,一緒に受け入れ,学年進行の過程で自分のやりたい専門を選んでいくということです。
 それから,文系は極端なことを言いますと,鈴木委員のところと同じです。文学部の中でいろいろな学科,哲学,言語,歴史,行動心理,いろいろありますが,人文・文学系へは,学生は細かい専門は選ばずにまとめて入ってきます。方向だけ決めて入ってきます。その後はどこを選ぶかということは学生自分で決める。心理系は少し実験がありますが,ほかのところはあまり定員との関係がありませんから,学生は大きな方向だけを決めて入ってくる。学生の主体性,やる気がどうなのかということは入試の中に出てくることですから,入試改革もいわゆる学生の教育の質的な転換の中で捉える必要があります。それからCOCの話があり,地域に対して大学は社会貢献の拠点であるCenter of Communityということですが,これは同時に学生の役割でもありサービスラーニングだと思います。大学が地域の問題を解決するためにも,学生が社会の中にあるいろいろな組織の中に入り込んでいく,これがほんとうの社会貢献でありCenter of Communityであり,学生の主体性が大きく関わる問題です。
 これから大学改革実行プランを仕上げるにあたり,あれもこれもと総花的に羅列するのではなくて,そのフィロソフィーは何なのか,軸をどこに置くのかが重要で,これがビジョンだと思います。そして,その軸に大学教育部会が議論し,今の日本で一番の問題でもある,学生の主体的な学びをもってきていただきたいと存じます。

【濱名委員】  大きな問題から言うと,荻上委員が言われたことはすごく大事なポイントだと思うのです。考えてみると,高大の話がこうなったのは,多様化が進んで,その多様化に対する対応が細分化していく方向で我々が施策をとってきた結果だと思うのです。多様化したからそれぞれに対応した策をたくさんつくり,多様化に対応して授業を増やしたとするならば,例えば初年次教育がこれだけポピュラーになってアメリカをしのぐまでになっているのは,多様化が進み,高大接続がうまくいっていないからです。その現状認識から言えば,次に戻さなければいないのはやはり総合化と統合化の方向へ持っていかざるを得ないということです。つまり,細分化したものを統合してもとに戻していくことと,全体のまとめをどうつくっていくのかということだろうと思うのですが,その観点で考えれば,入試の問題で言うと,アメリカに調査に行かせていただいて一番感じたことは,学習指導要領というようなものに縛られているのが大きな問題なのかもしれない。何かそのあたりについてきわどいことをプランに書いておられるのですが,文部科学省が書いてはいけないと思います。それはこういうガイドラインをつくってこられた役所がお書きになるのは問題だと思うのですが,我々の立場から言うと,大学が求める能力をきちんと提示するというのは,学習指導要領に縛られない入試というのもありえる。そこから議論をスタートせざるを得ないだろうというのが一つです。
 それから,もう一つ,細かくなっている点で言うと,高等学校教育部会と話をするのはいいのですが,私は教員養成部会も入れていただかないと困ると思います。教員養成部会では非常に細分化したディテールを決めておられる。常盤審議官はよく御存じだと思うのですが,そういう形になっていると指定規則や教員養成の在り方など,細分化をどんどん進めていっている分野との対話も必要であるのではないでしょうか。その分野で我々が考えているアクティブラーニング等々の教育方法を持ち込んでいくことをやらなければ,現場に出ておられる先生方に一生懸命言っても,次の養成を同時並行で変えていかないと変わらないのではないかと思います。ベクトルを変えようと思うとそこまでやらなければいけないということではないかと思います。
 あともう一つは,我々がやっている中で,例えばアクティブラーニングの話は言葉として出ているのですが,実は就業力に関する会議に出ていると,インターンシップに対する多大なる期待があるわけです。サービスラーニングもあるのですが,それらをやろうと思うと,川嶋委員が以前からずっと言われていますが,やはり科目数を減らすという意味での統合化をしていかなければいけないということが大きな問題になっています。アクティブラーニングは語呂がいいので頭に残っているのですが,教室外プログラムというか,別の概念でアクティブラーニングプラス教室外プログラムをアクションラーニングという呼び方もあるようですが,それらも導入できるようにするということを考えれば,やはり根本的な問題との関わりを考えないとできないので,そのあたりを是非もう一度きちんと位置づけていく必要があるのではないかと思います。

【吉田委員】  どこで言おうかと思っていたのですが,この大学改革実行プランの中で一つだけ気になる点がありまして,入試の話ですが,具体的に言えば9ページの資料になるかと思うのですが,要は,現状認識として,現状の日本の大学全体の入試というのが教科の知識を中心としたペーパーテスト偏重による一発試験的入試なのかというところなのです。これは文部科学省の見解として日本の大学入試がこうなっているという見解かと拝見したのですが,少なくとも教育を研究対象としている人間から見れば,全然これは当たっていないと思うのですが,むしろ多様な入試ということでAOなり推薦なりを多様に取り入れてきた結果,それがなかなかうまく機能していないということで,それを取りやめる大学が増えている,あるいは,その枠を減らしているという現状がある中で,なぜさらにこうした話が出てくるのかというのはいささか疑問なのですが,その辺はいかがなものでしょうか。

【池田大学振興課長】  そこの認識はおっしゃるとおりだと思います。この部分はどちらかというと,一部の選抜制の強い大学をイメージして書いておりまして,実際には現在の収容率を考えますと,入試で選抜をするという面が非常に弱くなっている大学のほうが数としては多いと思いますので,ここはそういうご理解をしていただければと思います。

【吉田委員】  一つだけ。選抜制の強い大学もこうした方向,たとえ選抜制の強い大学がこういう現状だったとしても,それをこういった方向に変えたほうがいいというお考えなのでしょうか。

【池田大学振興課長】  基本的には,上に書いてありますように,高校と大学のそれぞれの質の保証と,その接続点である入試と一体的に考えていくということが必要だと思いますし,先ほどから御意見をいただいておりますが,大学が本来であればアドミッションポリシーをきちんと示して,それに応じた区分をした入試をしていただきたいというのがここでの趣旨です。

【佐々木部会長】  おそらくこの問題はお1人に1時間ずつ時間を差し上げないと満足なさらないのではないかと思いますが,引き続き御議論いただくことといたしまして,私も『IDE 現代の高等教育』という雑誌に優等生の答案を書きました。要は,知識やスキル偏重ということと学ぶ姿勢・学ぶ力は,納谷委員がおっしゃったように,あれかこれかではない。両方必要なのです。ただ,今の入試制度,あるいは現実の高校教育がやみくもに知識,スキルの注入型の教育に陥っているところに問題があるのだと思います。知識やスキルも主体的に学びとるという姿勢を生徒・学生に持たせるにはどうしたらいいか,そこが一番問題だろうとは思うのです。どちらかではないという模範答案,優等生の答案を書きましたので,御覧いただけたらと思います。
 日本の入試が,知識・スキル偏重から,今度は途端に知識・学力軽視のAO入試や推薦入試に傾斜していったというところに混乱の一つの原因があるように思います。これは,次回に高等学校教育部会の先生方4人をお招きして,さらに議論を進めたいと思います。
 それから,宮崎委員がおっしゃった就活の問題は,これはもう就活の問題として,独立した特別の問題として,産業界との間で解決をしていかなければいけないと思います。現状の就活の長期化・早期化を放置したままで教育の質の向上なんていうことはとてもできないのは,我々,現場にいて痛感しているところです。
 また,NPOの山本理事長がおっしゃいましたように,高校生に果たして「したいこと」の選択ができるのか,「したいこと」と「してみたいこと」の違いというのがあるということです。大学は,そこをわきまえて入り口を用意するということが必要なのではないでしょうか,等々,私も1時間ぐらい発言をさせていただきたい思いが募ってまいりましたが,本日は時間ですので,このぐらいにさせていただきます。

(4)今後の日程について,事務局から資料7の説明があった。

── 了 ──

 

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