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大学教育部会(第15回) 議事録

1.日時

平成24年5月21日(月曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学教育の質の保証・向上について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)佐々木雄太部会長
(副部会長)黒田壽二副部会長,谷口功副部会長
(委員)安西祐一郎,浦野光人の各委員
(臨時委員)林勇二郎臨時委員
(専門委員)荻上紘一,高祖敏明,篠田道夫,鈴木典比古,田中愛治,長束倫夫,納谷廣美,濱名篤,山田礼子の各専門委員

文部科学省

藤木文部科学審議官,板東高等教育局長,小松私学部長,清木文教施設企画部長,奈良高等教育局審議官,奈良初等中等教育局参事官,義本高等教育企画課長,池田大学振興課長,勝野私学行政課長,合田高等教育政策室長,森友教育改革推進室長,齋藤高等教育局視学官,白井大学振興課課長補佐,太田和高等教育局国際戦略分析官,杉江高等教育政策室室長補佐,小山田高等教育政策室専門官 他

オブザーバー

山本繁(NPO法人NEWVERY理事長),濱口哲(新潟大学副学長),齋藤真左樹(日本福祉大学事務局長),大崎博史(日本福祉大学IR推進室長),佐藤浩章(愛媛大学教育・学生支援機構教育企画室准教授)

5.議事録

(1)大学教育改革地域フォーラムの結果等について,文部科学省から資料1の説明があった。

【合田高等教育政策室長】  資料1を御覧いただきたく存じます。谷口委員が学長をお務めの熊本大学で行われました大学教育改革地域フォーラムですが,学生140名――その中には,関西国際大学からも学生が参加されたと伺っておりますが――を含む250名の参加者です。特に学生パネリストの意見につきましては,今から実際に,3名の学生パネリストの意見発表の様子を映像で御覧いただきたく存じますが,2番目に登壇なさった医学部の学生については,資料1の7ページを御覧いただきたく存じますが,6ページ,7ページ,8ページ,9ページとありますが,学生自身による学生アンケートを実施した上で,大学教育の問題点を大学側の問題点,学生側の資質・意識の問題点と整理をしてプレゼンしていただいております。後ほど映像を御覧いただく際も,このレジュメをあわせて御覧いただければと思っております。
 資料1の2ページにありますように,今回も大変高い満足度でございまして,今後,田中委員,吉田委員の早稲田大学で5月28日,金子委員の筑波大学で6月16日,納谷委員の明治大学,山田委員の同志社大学,佐々木部会長のおられた愛知県立大学等でも具体的な検討が進んでおります。
 それではまず,映像を御覧いただければと思います。

(映像上映)

【佐々木部会長】  文部科学省とともに,このフォーラムを主催してくださった熊本大学の谷口委員から一言感想をお願いします。

【谷口副部会長】  フォーラムの第2回目ということで,私どものほうでやらせていただきました。学生の意見をできるだけ聞きたいということで,学生には何を言ってもいいので,日頃先生に言えないことを言いなさい,もし何かがあったら,私が全部責任をとりますからということだけ申し上げました。具体的に何を言うという話は,その当日まで全然知りませんでしたが,特に医学部の学生は,アンケートをとってきちんとした内容としてお話をしてくれました。本日の資料に少しあるようですので,後でまたお話が出るかもしれませんが,我ながらというか,私どもの学生,しっかりしているなと安心させていただいたところがあります。これを一つの機会にして,随分これからいろいろな学生とのディスカッションができるのではないかと思っております。先生方と学生を入れて,これを機会にいろいろと話をしていって,教育の中身というのを学生とともにつくっていく,それができる気がした,今回の集まりでした。
 私どもとしても大変ありがたかったですし,参加した方,教育論ですから,どうしてもそれぞれみんな意見が違うのです。それぞれ自分の思いを言われますので,なかなか難しいところもあるのですが,それを大事にしながら,より充実したというか,レベルの高い教育をやっていければと思っております。

【佐々木部会長】  本来なら,ここで少し意見交換をしたいところですが,まだこのフォーラムは,先ほど御紹介がありましたように,早稲田大学,筑波大学等々と続いてまいります。そこで出されたもろもろの意見を集約しながら,やがてこれを答申の中に生かしていければ幸いだと思います。

(2)学士課程教育の質的転換のための具体的な取組について,山本繁NPO法人NEWVERY理事長,濱口哲新潟大学副学長,齋藤真左樹日本福祉大学事務局長,大崎博史日本福祉大学IR推進室長及び佐藤浩章愛媛大学教育・学生支援機構教育企画室准教授から,資料2~5に基づいて説明があった。

【佐々木部会長】  次いで,本日は,教学のマネジメントの課題を煮詰めていくために,少し材料を提供していただく,こういう趣旨で5人の方々においでいただきました。大学間連携による組織的なFDやSDの御経験,体系的な教育課程の構築,あるいは教学のIRなど,いずれも学士課程教育の質的転換のための具体的な取組,あるいはそれに伴う教学マネジメントの課題について貴重な御意見をいただけるものと思います。5人の方々にプレゼンテーションをお願いいたします。
 まず初めは,山本理事長から,大学生の中退予防に取り組んでこられた,こういうお立場から,大学に対する御提案,あるいは教学IRの実際についてお話をいただきたいと思います。

【山本理事長】  お手元に今,スライドに映している資料があるかと思います。こちらを使って10分ほど提案をまずさせていただきまして,その中で教学IRについて触れております。後半10分は,この教学IRについて,大変詳細な内容を御覧いただきまして,イメージを持っていただけたらと思って資料を作成してまいりました。
 こういった形でいくのですが,NEW VERYの紹介は,後で資料を御覧になっていただければと思いますので,まず,私たちのNPOは,なぜ高等教育機関からの中退にフォーカスするようになったのかという理由をお話しさせていただいて,その後,御提案に移りたいと思います。
 まず,高校中退と大学・専門学校中退の比較というものなのですが,そもそも私たちはニート,フリーター支援をやっていた団体なのですが,なってからの支援ではもう遅過ぎる,これを未然に防ぐことが必要だと考えるようになりました。その中で,中退,離職,進路未決定,この三つがニート,フリーターへのルートでして,三つしかございません。その中で,中退というものを調べたところ,高校中退が7万2,000人強,対して大学・専門学校中退が11万6,000人ぐらいということで,高校中退の1.6倍やめているという現状です。
 次は大学・専門学校中退のリスクです。男性の54.1%,女性の63.4%が中退後,ずっとフリーターかニートです。これは,高校中退者がその後一貫してフリーターか無職である確率は,男性46.3%,女性85.5%ですので,ならすと大体同じぐらいのリスクになります。
 こちらはニートの若者たちの実態調査で,ニートの若者たちのうち31.7%が中退経験者になります。うち19.7%が高等教育からの中退,高校中退は12%,合わせて31.7%ということで,大体離職3分の1,中退3分の1,進路未決定3分の1ぐらいというのが現場での実感です。
 変容可能性というのが非常に重要なキーワードと考えているのですが,大学・専門学校というのは自治があります。ですので,ガバナンスを変えやすい。一方で,ここで言う話かどうかというのはあるのですが,初等・中等教育は文部科学省による中央集権で大変変わりにくいと私は感じております。
 また,中退者の課題に関しては,大学・専門学校の中退者は,比較的どこにでもいる若者です。特にそんなに大きな問題はありません。経済的理由による中退者が10%程度,発達障害や心理的な疾患によるものが5%ぐらいあるかと思いますが,80%以上は,どこにでもいる普通の若者に対して,高校中退は,文部科学省の各種調査でも明らかなように,非常に課題が重いということです。ですので,大学・専門学校中退の方が変容可能性は高く,高校中退の方が変容可能性は低いということで,今のをまとめますと,大学・専門学校中退は,高校中退に比べ規模は大きく,リスクはほぼ同等であり,変容可能性は高いということで,大学・専門学校中退にフォーカスして取組をするほうが社会的なインパクトが大きいだろうということで,私たちは高校中退ではなく,大学中退問題に取り組むようになりました。
 と同時に,やはりこの高校中退というのは大変顕在化していて,取組が行われていたのですが,これまで大学・専門学校中退問題というものに,政府中心にしてあまり取り組まれていなかったという背景を考えまして,早期にこの問題に取り組むことが重要だという認識をしております。
 これは私たちが中退者のインタビュー調査,並びに各大学の中退者抑制の支援をしている中で類型化した中退の主な原因です。学生と大学が提供している教育内容・教育方法とのミスマッチ。これは先ほど映像で学生たちが言っていたような内容になります。二つ目が,個々の学生が抱えている課題や事情。経済的困窮,発達障害,ソーシャルスキルの低下など。それから,キャリア不安・将来不安と大学卒業価値の低下というのが最近年々増えてきていまして,この大学にいて一体何になるのだろう,先輩たちを見ていて,半分ぐらいしか就職しないと。この就職先もハローワークで探すのと何が違うのだろうとか,そういうことを考えるようになって,4年間学び続ける,しかも学費は400万円,一人暮らしをしていれば800万円程度の投資がかかります。これ以上,借金を増やさずに,退学して働き始めたほうがいいのではないか,そういう中退が増えているように感じます。
 ということを前提にした上で,本日,中教審への提案を14にまとめてまいりました。
 組織というのは,人とシステムで成り立っていますので,システムと人をどのように変えるべきなのかという点について。それから,それでもやめていってしまう学生や進路未決定の学生たちをどういうふうにセーフティーネットでサポートしていくかということについてまとめたものになります。あまり話すのが得意ではないので,正確に伝えるために,全て文面にしてまいりました。そんなに長いものではないので,5分ぐらいお時間とって,今,こちらを御覧になっていただいてよろしいでしょうか。

(資料確認)

【山本理事長】  そろそろよろしいでしょうか。まだ読まれている方もいらっしゃるかと思いますが,後ほど御覧になっていただければと思います。
 学生たちの就学時間を増やそうというお話が今ありますが,学生たちに対する負荷を強めようとするのであれば,同時に,強い動機づけをしてあげる必要があるかと思います。強い負荷と強い動機づけによって,強い学生が生まれてくると思いますので,教員も含めた大学ステークホルダーの動機づけをどうしていくかということが今後大変重要なテーマなのではないかと思っております。
 今度は,この中で教学IRについて触れているものがありまして,それについては,かなり詳細にお話をしたいと思いまして,もう一つ別のスライドを持ってまいりました。こちらは,机上資料とさせていただいておりますので,委員以外の皆様のお手元には配付しておりません。スライド資料を見ていただきたいのですが,教学IR,教学IRと最近よく聞かれるようになったのですが,これは何なのかといいますと,分かりやすく言うと基本的にはマーケティングです。マーケティングに基づいて,初年次教育,FD活動,それから学生支援というものを展開していきましょうというものです。
 もう少し具体的に言いますと,第1に,IRを根拠に,初年次教育,FD,学生支援でそれぞれ何にフォーカスするのか。これは大学ごとに優先順位が違います。第2に,どのようにしてそれを高度化していくのか。この2点になるのですが,私がふだん大学でやっている仕事,基本的にはほぼこれで説明ができてしまいます。
 マーケティングというところが教学IRになりますので,この部分について詳細にお話ししたいと思います。
 この資料を見ていただく前に,次のものを見てください。IRというものは目的別で違います。中退率を下げるためのIR,就職率を考えるためのIR,海外留学をするための学生を増やすためのIR,学生募集のためのIR,全て目的ごとに違います。私は中退のことについて説明資料を持ってきましたが,いつ,だれが,どのようなプロセスを経て,なぜ中退しているのか,これを特定することが中退対策において非常に重要です。
 それが分かることによって,いつ,だれに,どのような方法で,だれが,何を行えば中退を減らすことができるのかが明確になるからです。これは具体的にどのようにデータをとっていったら見えるかということまで見ていただくと,教学IRの必要性を御理解いただけると思いますので,次のスライドを御覧ください。
 こちらの委員の方のお手元の机上資料に,A大学中退レポートというのがあります。こちらは少し見ていただきたいのですが,これは見るときのポイントというのがありまして,それは,このA大学という架空の大学の経営者になったつもりで見ていただきたいのです。一体,この大学では何が起きているのか,そして自分がこの大学のトップであればどのような施策を打つのか。シンプルな資料ですが,ぜひこれを見ながら,またお時間5分ぐらい大丈夫でしょうか。見ていただけないでしょうか。
 委員の皆様にお手元の机上資料を見ていただきながら,この大学の現状を見ていただきたいのですが,本日いらっしゃっている委員以外の皆様には,スライドのほうで御覧になったほうがいいと思いますので,少しお話ししながら説明していきたいと思います。
 このAという架空の大学は,架空では,退学率17.3%というのは,入学から卒業までの退学率が17.3%,1年目の退学率が6.1%の大学と仮定しています。
 これは,退学率の推移ですが,2000年の退学率が12.8%だったものが2004年までに下がっています。それが2005年に14.8%に上がりまして,その後,年々退学率が上がっているという想定です。
 これは,各学科・コース別の退学率になりまして,非常にコースで差があります。一番低いところでは,卒業までに3.3%しか退学しないのですが,一番多いところでは30%以上退学しているコースもあります。
 これは入試形態別で,やはりAOが中退率,若干高くなっておりますが,全ての大学はこうだというわけではなくて,この大学はこのように想定しましたということなのですが,大学入試センターの試験を受けた学生は非常に多くなっています。
 これは高校のAからH+Iというのは,高校の偏差値です。偏差値が高い高校が一番やめていて,次は偏差値が低いところがたくさんやめていると。右側は,偏差値のつかない高校からの入学者の中退率になります。下が高校タイプ別シェアというのがあるのですが,どのタイプの高校の入学者が一番多いのかとか,何%かというのを全部分類したものになります。
 これは高校の調査書に欠席日数が書いてありまして,欠席率ごとの退学率というのを出していくと,4%を超えると劇的に退学率が上がるということを出しています。
 これは高校の評定平均と退学率の関係で,2.7以下の評定平均ですと30%近くなってくるということが出てきています。
 次は入試形態別とか,退学者の単位取得状況です。各時期の単位取得状況というのを出したものになります。卒業している学生と中退した学生の違いというのを出していまして,これは入学した学生たちの退学理由の分類をしたものです。
 学年ごとの退学の理由の分類になりまして,生活面での不適応というのは1,2年生でなくなっていきます。入学前のミスマッチというのも減っていきますが,全体として学習面での不適応が非常に多いとか,これは各学科の学生にインタビューしたもの,なかなかお手元で見にくいと思うのですが,それぞれ入学動機とか,受けたら受かったとかたくさん書いてあります。
 退学者の傾向,これは友達がやめたでしょう,どんな理由でやめたのか,どんな子だったのかというのを聞いています。大学1年での過ごし方とか,退学率抑制のために特に力を入れている授業,基礎ゼミなんかの評価,全体的なギャップとか要望についてインタビューしたもので,これは学生相談室の利用状況とか,利用している学生の中退状況とか,これは学生相談室のカウンセラーがどんな学生が相談に来ますかとか,相談内容は何ですかとか,教員との関係はどうですかとか。そうすると,先生に相談しに行っても,「頑張れ」という先生が多くて,でも頑張れないから相談に行っているのに頑張れと言われてしまって,これ以上,相談に行きたくないというような,そういう話がたくさん出ているというのがこちらのものです。
 次,これは学生満足度と中退率との相関関係となっていまして,上に行くほど中退との相関関係が高いというものです。
 学生のタイプ別の退学率の状況とか出していったものなのですが,こちらの資料,ここでとめておいていただけたらと思うのですが,大体皆さん見ていただけたでしょうか。わずか10枚少しのスライドなのですが,この大学,特にインタビュー調査のところを見ていただくと,この大学が抱えている問題というのが結構見えてきます。また,欠席率とか評定平均とか高校のランクとか,クロス分析していくと,このタイプの学生というのは退学率が7割以上あるとか,そういう数字が出てくるので,大体退学する学生は入学前段階で半分ぐらいは分かることもあります。
 その上で対策を立てていくこともできますし,私も教授会なんかも参加させていただく機会が結構あるのですが,皆さん,経験とか勘で物事をおっしゃることが多くて,議論がまとまらずに何も決まらないということが結構あるのです。物を決めるための素材がないから決まらないのだと思うのです。ですので,必要なエビデンスをしっかりそろえて,共通の素材に基づいてロジカルシンキングをしていくと,皆さんの合意形成が図れるということで,現状把握においても非常に重要ですし,それだけではなくて,組織の意識統一,議論をして物事を決めるということにおいて,この教学IRというのは極めて重要なツールではないかと思っていまして,それを言葉で話すよりも,具体的な数字を見ていただいてイメージを持っていただけたらと思って,こちらの資料を持ってまいりました。
 こういったことができる人材,これはふだん私が調査するものの5分の1ぐらいなのですが,こういうことができる人材を育てていくということがこれからの大学教育において非常に重要ではないかと思っております。
 一旦,私からの報告,以上とさせていただきます。

【佐々木部会長】  次は新潟大学の濱口副学長より,教育課程の体系性の確立に向けた新潟大学の取組と課題を中心にお話をいただきます。

【濱口副学長】  私は,自分の大学で粛々と改革をやっているという立場でお話しさせていただこうと思っております。
 新潟大学は,法人化前後からいろいろと改革を進めてきました。基本的な考え方としては,これは言い古されたことなのですが,専門教育というもの,教養教育というもの自身が賞味期限切れだということもあって,今後の学士課程教育というのをどうするかということを考えたときに,我々としては,従来の専門教育ということを中心とした学部段階の教育というのではなくて,いわゆる普通の人をきちんと育てるということを中心に置く。そのために,専門性というのが一種の駆動力となる,そういう学士課程に変えていかなければいけないという認識でやってきております。
 その意味で,我々がどういうことをやってきたかというと,主として三つのことをやってきたと考えております。やりつつあるということも含めてですが,一つは,教育資源の共有化と書いてありますが,大学が持っている教育資源としては,中心となるのは教員というものと授業科目というものであり,教員と授業科目というものをできるだけ大学全体で使える形にしましょうということが一つです。
 それから二つ目に,共通で使える資源のもとで,人材育成目標に即した教育プログラムというものをきちんと構築しようということで,主専攻プログラムということをつくってきたということです。
 それから,そういう形をつくっておいて,それを実質化するというために,今我々が取り組んでおりますのが,新潟大学学士力アセスメントシステムで,NBASと普通読んでおりますが,本当の実質化はこれからですが,そのシステムを構築する取組をしているということです。
 教員所属組織については,いろいろな大学で行われているわけですが,新潟大学としても,いわゆる教員の人事組織と教育組織を分離しました。それと同時に,特定職務に特化した教員,大学の教学マネジメントを専門とする教員というのも,そういう中で少しずつつくってきている。従来型の研究と教育というものを主務とする教員ばかりではないというイメージをつくってきたということです。
 それを実施するために,従来型のそれぞれ各部局,学部学科にある定員概念というのは一部撤廃するという建前でやってまいりました。
 新潟大学の人事組織は,学系というものが三つあって,そこから学部に出て行って担当するという形式です。
 授業科目の全学共通の教育資源化ということで,従来は教養科目(共通科目),専門科目という区分があったわけですが,原則としては新潟大学の場合は,全ての授業科目は,全ての学生が履修可能である,もちろん,物理的に,あるいは,技術的に難しいという授業科目については制限がかかるということもあるのですが,基本的にはそういう形に位置づけたということです。
 スライドにもありますが,従来型の共通教育に資するのか,それとも専門なのかということは,科目そのものの属性というよりは,プログラムの中での位置づけとしました。
 もう一つは,授業科目は非常にたくさんあります。新潟大学の場合,5,000科目ぐらい授業科目が学部で開かれておりますけれども,それについて,授業科目に分野を示すコードと水準を示すコードをつけたということです。
 その分野というのは,あくまで教育分野というよりは,学問分野という観点でそれぞれの授業科目の正当性の担保をつけたい。そして,学問分野のコードと水準のコードをつけることで,それぞれの教員が担当している授業科目の内容についての基準を教員にも認識していただくということもその一つの目的ということになります。
 そうなると,授業科目を開設する体制が必要ということで,教育学生支援機構というものをつくって,それを中心に教育改革というか,教学マネジメントというほどのことはできていませんが,そういうことをやっているということです。
 分野・水準表示法の分野というのは,基本的には科学研究費補助金の分野,分科等々に準拠しました。これは科学研究費補助金が理想的だというよりは,大学の中で運用するのに,外部的な権威が必要だったということもあります。それに準拠して,大学の事情に合わせて多少調整したものです。
 水準コードは,大学としての水準コードは3,4,5という水準にしました。3が基礎的な科目,4が中核的な科目で,5が発展的な科目という程度の体系化です。この分野水準コードの維持管理というのはなかなか難しゅうございます。学問分野,分野コードに即した教員組織みたいなものを何らかの形でつくって,ある分野の中の授業科目の体系性というものを明示することを第2期の中期計画期間でやりたいとは考えておりますが,現状は発展途上ということです。
 新潟大学では,教員は基本的には学系というものに属して全学に対する教育責任を持つ。少なくとも,授業科目を通じては全学に責任を持ち,かつプログラムに対しては学部学科担当ということで責任を持つということなのですが,そういう体制に即して主専攻プログラムと副専攻プログラムをつくりました。
 実は,副専攻のほうを先につくって,主専攻プログラム化というのは少し遅れたのですが,その辺の事情はお分かりいただけるかと思います。
 主専攻プログラム化がなぜ必要かというのは,最初のお話にも関わるのですが,従来は,例えば物理学科という学科のプログラムというのは,物理学の分野の授業を並べる,その中で学生の自立的な意思のもとで学んでいく,学問を修めていくという形だったのですが,そうはいかないという現実があるわけです。
 そういう意味で,全てのプログラムは人材育成目標を掲げて,それに即したプログラムだとすると,やはり何らかの学習成果,目標とすべき学習成果の明確化ということが必要になるのと,それに即した授業科目の構造的な配置というのは当然必要になります。それをやりましょうということです。
 その目的は,ここにもありますが,目標に対して教育プログラムとして整然としたものをつくりたいということもあるのですが,もう一つは,そのプログラムを担当する教員がいるわけです。それをプログラム担当教員集団とここでは呼んでおりますけれども,その機能というものを明確化する。つまり,プログラムの目標を共有化し,プログラムがきちんと機能しているかという成果を検証して,それを改善するというのがこの担当教員集団としての責任だということを明確にしました。
 そして,当然,教員の理解がなければできないのですが,理解を待ってやるというのもまた難しいということがありますので,我々は勝手に「プログラムシラバス」という名前をつけていますが,そういうものをつくる作業そのものが一種のプログラム担当教員集団のFDになるのだろうと考えて,プログラムシラバスの規格をつくって,それをとにかく書いてくださいということをお願いしたということです。
 プログラムシラバスの内容は,プログラムの名称,取得学位,プログラムの概要とねらい,獲得が期待される学習成果及び効果,学習成果としては,知識・理解,当該分野固有の能力,汎用的能力,態度・姿勢という形にしました。プログラムの履修要件というのは,どういう能力を持った人がそのプログラムに参加するかということを書くということですが,現実には,今の段階で新潟大学のプログラムはほとんど入学時に決まっていますので,それほど厳密に機能はしておりませんが,こういうものを置くことが将来的には意味があるだろうと考えています。
 それから,到達目標に達するための学習方策と方法ということで,カリキュラムマップをつくる。つまり,どの授業科目が,ここで書いたどの目標にかかわる授業なのかということを明示しましょうということをしました。それで,修了認定基準,その他があります。
 さらに教育プログラムの評価と改善の方策ということについて,プログラムごとに何をするかということも,プログラムシラバスの内容としたということです。
 これは一例です。いわゆる農芸化学系のプログラムですが,知識理解では,「化学及び生物の基本的事項を理解し,説明することができる」という感じで,知識・理解の項目は少し多いのですが,AからH,当該分野固有の能力ではAからFという格好で,具体的に何ができるようになるかという到達目標をそれぞれのプログラムで書いてもらったということです。
 まだまだ発展途上としか言いようがない状況でありますが,少なくとも一旦書いたということには意味があると考えています。
 これはカリキュラムマップの例で,おそらくほとんど見えないと思いますが,ここに先ほどの到達目標のAから幾つというものが書いてあります。ここに授業科目名があって,それぞれの授業科目がどういう目標を得るのに必要という観点で置かれているかということが示されています。授業科目全てどこかには丸がつくということになりますが,そういう形で,授業科目と到達目標との関係を明示したということです。
 ここまではやったわけで,このプログラムシラバスを作成する作業を通じて新潟大学の先生方がプログラム担当教員として習熟したかというと,大学の先生というのは意外に能力が高くて,こういうことをさらっと書きあげてしまうのも上手で,期待したほどプログラム内部で十分な議論がされたかというと,なかなか難しい点もありますが,現状はそういう状況です。
 これらのことに加えて,今新潟大学で取り組んでおりますのは,NBASと呼ぶ新潟大学学士力アセスメントシステムの構築です。個々の学生の学習成果を何らかの形で可視化して,それを学生自らが振り返って,それを教員に提示してアドバイスを受けながらそれから先の学習計画をつくっていくというシステムをつくろうというものです。
 目的は,学生が自分の学習目標を具体的に知る。具体的にというのがおそらくミソだと思うのですが,学生が自分の到達状況を把握して,自分の学習目標を再調整し,新たに次の履修計画を立てるということを支援しようという取組です。できれば,学生が自分でつくった卒業時のアセスメントの結果などを踏まえて,それを自分が社会に出ていくときに,社会に対して主張する,そんな学生ができればいいということを考えて今つくっています。
 全体としてはこのような感じですが,一つは,スケールフェーズですが,先ほどのカリキュラムマップで丸がついていたところについて重みづけをしていきます。各授業科目は幾つかの到達目標に関わっているのですが,それをどういう重みで関わっているかということをプログラムとして定める,そして成績データを使って,それぞれの到達目標の達成度というものを数値化するという仕組みです。
 そうすると,幾つ棒(項目)が立つかはそれぞれプログラムごとに違いますが,こういうグラフを描いていって,最初,小さいものがだんだん大きくなっていって,最終的に,この図では,妙にきれいな丸になっておりますが,多少でこぼこができるだろうと思うのですが,そういうものができてくる。そうすると,学生は自分の現状を見ながら,自分なりの評価をして,次の学習計画を立てるということを期待しているということです。
 当然,教員が関与するわけで,アドバイザーとアドバイジー(アドバイスをする側と受ける側)の関係の中で,その学生がつくったものを評価し,アドバイス,メンタリングして,それを各セメスターで続けていくと,このようにだんだんと重なっていって,最終的に卒業時のアセスメントというシートができる。そうすると,ここには「私の学士力」という表現になっていますが,こういうものを学生が自律的につくっていくことを促すことによって,今日の多様化した学生個人個人の勉学を支えていこうというのがこのシステムの目的です。
 これは現在,実は完成しているわけではなくて,2010年から始めて,今,システム開発をしております。そして,この12月から1月にシステムを導入して,平成25年に一部プログラムで導入,2014年に新潟大学としては全面的に導入して動き出そうということを考えております。
 この導入はなかなか面倒なお話ですが,先ほど申し上げましたように,各プログラムの到達目標が実質化されているかということは重要な問題なので,こういう作業を通じて各プログラムの書き上げた到達目標を少しずつ実質化できればと思っています。また,学生自身が,プログラムの目標とは別に,自分なりの学習目標を自分で確認して主体的に勉学していくということにつなげていければいいと思います。そして,効果として一番下に書いてありますが,自己肯定できる学生というものを新潟大学として育成したいという思いでこういうものをつくっています。
 うまくいっている話だけするなという御要望があって,決してうまくいっていると思っておりません。新潟大学の現状というものが他大学の現状と大きく違うかというと,ほとんど違わないだろうと私自身は認識しております。
 まず,教員の意識改革が必要です。先ほどから御議論あるように,FD,Faculty Developerであるとか教員資格という議論もあるのですが,私は教員の意識改革を待って改革するほど状況は甘くはないのではないかと思っています。ですから,我々としては,意識改革とシステム改革というのは並行してやらざるを得ないであろう。言い換えると,システムを改革して,その中で教員に動いていただくということがある意味では一番のFaculty Developmentなのかもしれないということを考えています。
 それから,学生の主体的学習態度の育成というのも初年次教育云々ということでいろいろ問われています。キャリア意識形成ということも必要ということですが,これも例えばNBASみたいなシステムを使って,自分でシステムを使うことによって意識を少しずつつくっていくということなのかと思います。つまり,いろいろなことと切り離して,学生の変容を促すというのも時間のかかる話で,4年間,大学にいる間にそういうふうになればいいということなのかもしれない,NBASはそういう目的にはかなうと思っております。
 ただ,いろいろな問題があります。例えば高大接続で,高校と大学,先ほどからいろいろな議論があるのですが,高校の状況と大学の状況があまりに違い過ぎるということもあります。それから,高校側の履修科目というものが選択制で入っていて,大学がどういう学習成果のもとに教育プログラムを組み立てるかというのもなかなか難しいということもあります。だから,そういう問題をどう克服するかということは難しい問題だと思っております。
 さらに,教学マネージメントに携わる教員,いわゆる研究教育を主務とする教員以外の教員が必要であるということがあります。新潟大学では流動化定員をある程度確保しているのですが,それでは不十分で,例えばNBASを開発する資金で任用した特任教員などでしのいでいるというのが現状です。
 ただ,そこでの一つ問題は,そういう先生方のキャリアパスが見えない。つまり,そういう先生方が将来どのように大学でやっていくのかというところがなかなか用意できないというのが問題ですし,またもう一つは,そういう先生方が本当に教学マネージメント担当として専門職化してしまったときに,それでいいのかということです。大学の学部学科での教育の現場から乖離して,ある意味では極めてきれいなお話だけをする人になってしまってもまずいのではないかということを考えています。
 それから,先ほどからも話題があったように,大学経営の現状は,ガバナンスとかマネジメントがうまくいっているとはとても思えない状況だと思います。つまり,経営を素人がやるようなシステムになっていますし,執行部の交代に伴って経営の継続性を確保することもなかなか難しい。システム改革を通して教員の理解を得ながら進める教育改革は当然或る程度の時間がかかるものであることを考えると,ガバナンスの一貫性は重要な課題であると考えています。

【佐々木部会長】  引き続き,今度は日本福祉大学の組織的なIR活動について,齋藤事務局長と大崎IR推進室長からお話をいただきます。

【齋藤事務局長】  本日の報告の内容は,まず初めに私のほうで,本学のIR機能の位置づけとか,IRが意思決定とどう関わっているのかという話をさせていただきます。その後で,大崎から具体的にGPでの取組を説明します。これは,2年前の2010年に本学のGPとして,教育の質保証ということと,日本福祉大学型IRの構築ということで採択されたものですが,残念ながら残り1年を残して,昨年打ち切られてしまったということで,その状況をお話しさせていただくということと,後半では,具体的なIR推進室で取り組んでいる分析の内容の事例とか,あとは,本日おそらくここの部分が一番課題になるかと思いますが,IRを推進していく上で,本学も決してきれいにサイクルが回っているわけではありませんので,苦労している点とかについて,現場で一番そこを身にしみて感じている大崎が,そのあたりのお話をさせていただきます。
 まず,日本福祉大学のIR機能ということで,これは位置づけに相当する部分ですが,本学のIR機能は,総合企画室というところとIR推進室というこの二つの組織で構成されているということになります。この総合企画室というのは,そこに書かれているように,教育,研究,経営の諸領域において,企画立案と意思決定に必要な諸データの多元的な収集とか多面的な加工,総合分析とデータの一元管理ということを行っているということで,これが全学園における政策形成・統合を推進します。総合企画室は,教職合同の委員会組織です。構成員は7名です。
 一方,IR推進室というのは事務組織の一課室になります。課室は2009年度に設置されました。2009年の4月から稼働しています。その前年度の2008年に,事務局の中でIRの組織に関わって検討する事務プロジェクトがありまして,その検討結果をもとに,2009年度から事務組織化しています。
 大学の意思決定の流れということで,このIRの機能と大学の意思決定がどう関わっているかということを表した図なのですが,左上のところに,IR推進室と総合企画室というのがありますが,まず,IR推進室のところでさまざまなデータ収集,分析を行って,それを総合企画室というところに持ち込みます。この総合企画室が本学園の総合プランニング組織ということになりまして,この総合企画室で全てのプランをつくり上げて,経営,教学の日常的な合議機関である理事長・学長懇談会というところに持ち込んで,そこから最終的な機関決定までの経営,教学に流れていきます。図の赤字で書いてある経営側の意思決定は理事会だけですし,教学の意思決定としては,最高意思決定機関が大学評議会というもので,あとは学部の意思決定機関として教授会,ここまで流れていきます。この大学評議会というところは,本学の場合は,先ほどの総合企画室の室長と,私,大学事務局長が事務職員として正式に大学評議会の構成員になっているというところが特徴的なところかと思います。
 総合企画室とIR推進室の役割ということですが,IR推進室は先ほどからお話ししているように,これは事務組織で,データ収集や分析を行って,総合企画室が政策提案を行う組織ということで,分析の客観性ということも保つために,機能としてはこのような事務組織という形であえて分けているということになります。
 このIR推進室という事務組織の位置づけですが,本学の事務機構上は,本学は総務局,大学事務局,企画局という3局で構成されていまして,この企画局のもとに総合政策部という部があり,その下にIR推進室があります。この総合政策部の中のIRの要素としては,IR推進室で,総合政策課が経営企画機能と教育企画機能を持っていますので,その両方にまたがるということと,情報政策課があります。ここで言っている右端の情報政策課と左端のIR推進室は独立した二つの課室ですが,実は,事務の課長としては,隣の大崎が二つの課長を兼務しているということで,IRを推進していく上で一番キーになるデータウエアハウスの構築とか,そのあたりの関係を事務局の中で一元的に統括するという意味があって,課長も兼務をしているということになります。
 本学のIR推進室の業務分類としては,一般的に定例報告,定例調査,定例分析,非定例分析と,いわゆるアメリカ型のIRでもよく言われているこのような内容を行っています。
 分析の事例としては,これまで2009年に立ち上がって行ってきた分析の事例がそこに書かれていますが,詳細はこの中の幾つかを大崎のほうで後ほど説明させていただきます。
 そのうちの一つとして,本学は社会福祉士の合格者を出すことが大きな課題になっておりますが,社会福祉士国家試験の合格,不合格の学生の特性をIRで分析をして,報告書を出しており,これはそのときの目次になりますが,このような内容を行っているということで,ここに書かれていますように,IR推進室ができる前までは,合格者の状況を,合格率がどうだとか,他大学と比較してどうだという一連の現状の状況を報告するにとどまっていたわけですが,IR推進室ができてからは,これが入学時の学力別の合格率であるとか,GPAとの関係であるとか,支援プログラム,対策講座等の成果がどのように出ているかとか,あとは入試形態別,AO推薦や推薦入学で入ってきた学生の状況と学力系で入ってきた学生の合格率がどうであるとか,そのようなことも含めて分析するようになったということです。
 これは簡単に言ってしまうと,今までは,IR推進室ができるまでは傾向分析しかしていなかったということです。例えば熱があるというときに,とりあえず解熱剤を出しましょうというのが今までのやり方だったわけですが,IR推進室ができてからは,それが要因分析という形に変わってきて,熱が出たということであれば,まずはなぜ熱が出ているのかを検査しましょうということです。簡単に言ってしまうと,やみくもに解熱剤を出すのではなくて,まず検査をして,インフルエンザだったらタミフルを処方しましょうということです。そういった形ができるようになってきたということです。

【大崎IR推進室長】  御覧いただいているのが,先ほどの目次にありました社会福祉士の合格率を入試形態別に見たものです。全体の平均が5割弱ですが,学力系,推薦系,AO系で差が出ている。今後,本学の入学者としても,推薦系,AO系のところが増えてくる可能性が高いということもあって,分析の必要性があるだろうということから,目次のような分析を行っているということです。
 次が,これは合格率と模試の受験回数を見たものなのですが,学内では感覚的には,おそらく模試の受験回数は多いほうが合格率は高いだろうということは言われていたのですが,それを改めてデータとして可視化したということです。このことによりまして,学生にもこのことをフィードバックしまして,頑張ってもらったということもあります。
 次が入試形態別の学生状況を見たものですが,入学学生が4年間でどう変化していくかというところを継続的に見ていこうとしているものです。現状としましては,本学の場合,学力系の入学者が4割,あと残りがAO,推薦という形になっています。偏差値でいきますと,本学の場合,学部ごとに異なりますが,上が50,下はボーダーフリーまでという状況がありますので,学力的に言えば,中位,下位の学生だということになろうかと思います。
 その下が入学学生の4年間の状況を見た退学,留年,卒業の割合になっています。約8割の学生が4年間で卒業している。2割は退学,もしくは留年しているという状況です。
 この次が,入試形態別に退学・留年の状況を見たものになります。先生方はよくAO,推薦の学生はドロップアウトする者が多いだろうという,いわゆる固定観念のようにおっしゃることがあるのですが,現状を見てみますと,実はそうではないというところが本学の現状から分かったということです。むしろ,学力系で入った学生のほうが退学ないしは留年している割合が高いという状況だということです。
 同じく,卒業の状況と就職の状況を入試形態別に見たものです。卒業のところは,先ほどの留年と退学を反映しています。就職のところでは合計の就職率が68.9%ですが,入学した学生10のうち3人は4年間では就職できていないという状況だということです。卒業生を分母にした場合は,86.7%,就職希望者を分母にした場合は93.1%で,さらに,就職希望者に進学も加えますと100%近い数字となり,大変頑張っているということになるわけなのですが,実は入学者ベースで見ると,こういう状況だということになりますので,内部質保証としては,入学者をベースに見ていく必要があるだろうということから示しているデータです。
 次が,本学のGPでの取組になりますが,生活,学習,個別の支援プログラム,これを開発することを通じて,同時に本学のIR機能も確立していく,そういう想定でありました。ただ,先ほど齋藤からもありましたように,事業が最終の1年を残して途中で打ち切られてしまい,しり切れトンボになってしまっているのですが,一部を紹介したいと思います。
 学業不振学生への対応ということで,ここでは現状把握の一つを御紹介したいと思います。
 本学では,学生に成績を自己評価してもらうために,GPAの段階表示とコメントを学生に開示しています。自分がどういうポジションにいるのか,学部学科の平均とあわせて提示しています。この段階表示のローマ数字の5から1まで,これを高中低と三つの段階に分け,入学してから最初についた成績から最後の段階の成績がどう変化していくか見たものが次のものになります。
 横軸が1年次の前期についた成績のGPA,縦軸は3年次です。4年次の成績と3年次の成績を比較したところ,ほとんど変わりがないことから3年次の成績にしております。ここで見ていただくように,赤が1年次から成績が上昇したというところで,ごくわずか。むしろ,青の下降しているところのほうが多いという状況です。これを提示した際に,学内の教職員は大変ショックを受けました。
 次が,違う学部の成績変化です。各区分の割合に違いはあるのですが,ただ,緑色の成績維持群が圧倒的に多いということは,両学部に共通していることです。
 その次のデータになりますが,これは3年次の終了時点での累積GPAをゼミ所属との関係で見たものです。赤がゼミ未所属の学生,青がゼミ所属の学生ということで,圧倒的にゼミ未所属の学生が低いGPAの割合が高いということです。本学の場合,多くはゼミに所属しているのですが,必修にしてない学部等もありますので,そこで漏れている学生への対応が必要だろうということです。
 今見ていた二つから分かることとしましては,一つは,成績の変化のところから,約7割の学生は1年次の成績を卒業まで維持しているということです。これは改めて初年次教育の重要性があるだろうということなのですが,逆に申し上げますと,初年次の動機づけがやっているつもりでも十分できてなかったのではないかということだろうと思います。
 あと,ゼミの未所属のところで言えば,やはりゼミ所属を前提とした対応が今後必要だろうということで,既にゼミの必修化に向けた議論,もしくはゼミにアドバイザーを配置する等々の検討をしているところです。
 IR機能の組織化と特徴というところですが,大きくは四つあると思っております。一つ目は,先ほど申し上げました総合企画室とIR推進室,双方の役割分担によって進めていくということです。IR推進室が提案まで担うということも,話としてはあるかもしれませんが,基本的には調査分析の客観性を担保するというところがありますので,ここは分離しようというところでやっております。
 あと,それぞれ2番から4番のところを御覧いただければと思います。
 組織化とねらいがどんなところにあったかというところなのですが,一つ目は,担当課室の分析業務支援ということで,分析の時間を今まで1週間,1カ月かかっていたものを短縮してやろうということです。分析内容の高度化につきましては,先ほど齋藤が申し上げましたように,傾向把握だったものを要因の分析に移行していくということです。
 二つ目の合意形成型IRの構築というところなのですが,いろいろな施策を考えても実際に実行するのは現場の教職員というところがありますので,そこの教職員が認識をしていない中で,こういうデータがあるから,こういうふうにするべきだと言ってもなかなか進みません。ですので,その教職員,学生との共通理解を得るということが重要になりますので,おのずと分析手法も統計手法を駆使した難しいものでなくて,分かりやすい図表というところを心がけているということです。
 三つ目のところにある現場の経験や思いを「見える化」というところですが,これには二つの大きな側面があると思いまして,一つは,現場でこうだろうと思っているところをデータで裏づけることです。先ほどの社会福祉士の模試と合格率の関係などはそうかなと思います。もう一つは,そう思っていたけど実は違ったということをデータで示すことです。入試形態別退学や留年の状況などが当てはまると思います。
 事務組織におけるIR推進ということでは,研究主体ではないIR推進ということで,知見が得られたということで終わらせないようにしたいと考えています。
 先生方は,研究業績にならないと少し冷たいと感じるところもありますので,事務組織にあるメリットもあるのではないかということです。
 とはいっても,幾つか課題があります。IRの浸透と教育改善の推進と書かせていただいてありますが,IRの組織があるだけでは意味がないので,いかにそれを教育改善に結びつけていくかというところが重要かと思っています。本学も十分できているとは思ってません。ただ,少しずつは改善に結びつく動きができてきているかと思います。信頼関係の構築には時間がかかると思います。米国を訪問したときも10年はかかるという話がありました。それを踏まえて,職員のIRスキルも向上していかなくてはいけないということです。
 過度な期待の是正というところなのですが,IRの組織があることで,IRだったら何でもやってくれるだろうと,現場が丸投げしてしまうという状況も当初少し見られましたので,そうではないと,基本的に一緒にやっていくのだというところを意識づけしていけたらと思っています。
 業務範囲の限定ということでは,経営から教学に至るまで幅広い分析課題がありますので,それを全部やっているとオーバーフローしてしまいますので,GPの期間中は,少し教育改善にシフトできたのですが,今後どのような範囲にしていくのかというところが課題になっています。限られた人的資源ということもありますので,それをどう配分していくかというところで,今も悩みながら試行錯誤している状況です。

【佐々木部会長】  最後に愛媛大学の佐藤浩章先生からお話をいただきます。

【佐藤准教授】  私からは,日本のFDに関する三つの提言と題しまして報告をさせていただきたいと思います。
 まず,私の簡単な自己紹介ですが,FDの専任の担当教員,ファカルティ・ディベロッパーとして,現在,11年目です。学内でFDを担当する人に対して,諸外国ではファカルティ・ディベロッパーという名称がつけられています。
 日常的にどのような業務をしているのかということですが,学生向けの授業も年間2コマから3コマ程度担当しておりますが,それ以外の時間というのは,教材の開発,研修講師,教室の設計,コンサルティング,調査研究等に時間をとっておりまして,通常の教員とは異なる業務になっているということです。
 本日は,背景となるお話を最初に二つほどさせていただきまして,提言を三つ用意させていただいております。
 まず,誰が大学教員の質保証に責任を負っているのかという問いを共有させていただきたいと思います。
 左側の図は,よく御覧になっているかと思います。大学の進学率が上がってきているという話ですが,右側は,本務教員数の推移ということで,現在,大学の教員数で申しますと17万7,000人という数字です。これに短大も足しますと18万6,000人という数の大学教員がいるわけです。この数字としましては,幼稚園教員よりも多い,そして高等学校の先生,中学校の先生にも非常に近い数字になっています。
 このうち採用前にどのような状況にあったのかというのが文部科学省の調査でも明らかになっております。学部とか大学院の修了者数は減っておりまして,それ以外の民間企業とか,臨床医の方,こういった社会人経験をされている方たちが非常に多く参入されてきています。
 こうした大学教員の能力に関しましては,以前から様々な指摘があります。「大学教員は教育職であるにも関わらず,教員の養成機関である大学院で教育の専門職としての訓練も受けず,大学教授職にかかわる専門知識も技術もなしに,いきなり大学教員の現場に立たされた」と。これは『資格を持たない最後の専門職』という言い方で,これまでよく言われてきていることでありますが,特にこういった社会人経験の方たちは,その時点では教育についてはアマチュアと見るべきだろうと言われている方もおられます。社会人型の教員を多く採用する大学,大学院の場合は,より積極的に教育について学ぶ機会を用意したり,教育者としての訓練ができる機会を用意すべきだろうという指摘もあります。
 ここで申し上げたいことは,「学生の大衆化」ということがよく言われますが,一方で「教員の大衆化」ということがダブルで進んでいるということなのです。一体,この「教員の大衆化」に対しては,国レベルあるいは各大学レベルでどのような対策をとってきて,誰がこの問題に責任を負っているのかということを我々は考えなければいけないのではないかと思います。
 もう一つ,「鎖国状態の日本のFD」と書きましたが,諸外国との比較でFDを見たときに,幾つか見えることがあるかと思います。いかがでしょうか。今,こちらスクリーンで提示させている状況なのですが,どこの国のFDの実態を示していると思われるでしょうか。実は,これは1960年代のイギリスの,―イギリスではFDとは言わずスタッフ・ディベロップメントとかつて言っていましたが―,その実態を表した文章と言われております。この文章から分かるとおり,日本のFDの実態というのは,大変遅れをとっていると私は認識しております。
 なぜこういうことになってしまったのかということなのですが,世界的に見ますと,FDの出発点は,1960年代後半の大学紛争であります。この大学紛争を経て,各大学が高等教育センター等を作って,教授法の改善に取り組むという流れが出ました。そして,それに続く70年代,80年代の国際的な不況がまさに大学での授業あるいはカリキュラムを改善する推進力となったわけです。日本は,学生運動への対応は御存じのとおりです。そしてその後,幸か不幸か経済成長が続きました。この結果として,2回のチャンスを日本は逃した。その結果として,国際的な潮流に乗り切れてないというのが現状だろうと思います。
 こちらはFDに関する国際的な学会,ICED(国際教育開発連盟)の加盟メンバーを示したものです。ヨーロッパ諸国を中心に現在23カ国,登録,加盟があります。日本は,私もこの立ち上げ人になりましたが,日本高等教育開発協会が2010年に,やっと最近,加わったということです。そのほか,例えばアメリカにはPODというFD担当者の専門団体がありますが,設立は1976年。英国等についても,80年代にこういった団体がつくられて,成熟度の高い取組を進めている。感覚としては,おそらく40年から50年ぐらいの開きがあるのではないだろうかというのが私の実感です。
 そこで,提言の1番目といたしましては,教員の教育能力証明の必須化ということを提言させていただきたいと思います。この10年間,FDを担当しまして,いろいろなプログラムを提供してきましたが,やはりインセンティブが決定的に不足していることを痛感しています。実は,大学設置基準の中に,大学教授の資格としまして,「大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有すると認められる者」と書かれておりますが,その能力が何であって,それをどのように証明しているのかということは全く不明確です。
 採用,昇進に当たっては,可視化しやすい研究上の能力に比較して,教育上の能力は適正に評価されないためにインセンティブがない,機能していないというのが実態かと思います。
 この大学教育を担当するにふさわしい教育上の能力をどのように証明しているのかについて,各大学が情報を公表することを必須化されてはどうかということです。
 ただし,これは初等中等教育と異なって,ライセンスがなければ教えられないというものにするかどうかは議論の余地が必要だろうと思います。こういった資格がなくても証明できれば,それはそれで認めるという柔軟性も必要かと思います。例えば教育関連の授賞歴ですとか授業参観記録ですとか授業評価アンケート,こういったものを総合的にまとめたティーチング・ポートフォリオ,あるいは教育能力開発のためのプログラムの修了証明,こういったものが必要だろうと思います。
 ただ,こういったことを独自に用意できない大学のためには,専門家団体による認証も可能にするといいかと思います。
 こちらに示しているのは,各国の大学教員の職能開発の時期別分類です。入職前の大学院生の時期に,主に力を置いているのが米国型であります。それから,入職してから終身雇用権であるテニュアをとるまでの数年間,大抵3年から5年程度ですけれども,この時期に力を入れているのが欧州型。日本の場合は,特にこういった時期を決めておりませんので,ここでは生涯継続型と示しております。
 投資効果が一番高いのは,おそらく雇用が決まった初期段階です。テニュアをとるというモチベーションが高い欧州型だと思います。日本型の場合は,雇用されていますので,あまり投資効果はないと思います。参加者の動機も最も低い状況になっておりますので,私としては,どこを対象にするかといったときに,若い方たちを対象にすべきだと考えております。現在,日本の大学の教員の平均年齢は非常に上昇しておりまして,過去最高ということです。ですから,限られた資源をどこに投資するかということを考えた場合には,こちらの若手の層です。残念ながらあと5年で定年されるという方に,無理にFDに参加していただくよりは,先の長い方に投資したほうがいいのではないかというのが私の意見です。
 愛媛大学は,数年後を目指して,今,テニュアトラック導入という取組を進めようとしております。採用までの終身雇用権を与えるまでの5年程度の中で,財政的なバックアップと能力開発プログラムを提供することで,将来を通して働いていただける先生たちを育てるという取組を始めたいと思っております。
 最初の5年間の中のプログラムとしましては,左側にあります教育能力開発,ここではエデュケーショナル・ディベロップメント,EDと書いておりますが,これを60時間。そして,リサーチ・ディベロップメントと呼ばれる研究能力開発のためのプログラムを20時間,そして,今後,マネジメント能力も全ての教員に身につけてほしいということで,MDプログラム20時間,計100時間程度のプログラムを受講することを必須化したい。そして,そのプログラムが修了した教員に対して修了証明書を出して,そういった方たちに終身雇用権を与えたいという取組を考えております。
 2番目の提言は,「FDの内容の拡張,深化」というものです。
 現在,FDの定義というのは,過去の中教審でも使われております教員の授業内容・方法の改善ということで一般的に解釈されております。実際は,講演会,相互の授業参観,授業アンケートという「日本のFD3点セット」が一般的なのですが,これですと,全くもって教員の多様なニーズには応えられません。そして,今マンネリ化,形式化ということが叫ばれております。新たに手法についても広げていくということが必要かと思います。こちらは,文部科学省が毎年やっている調査なのですが,項目が非常に限定されている。実は,この項目自体が非常に狭いFD活動を誘導しているという可能性もあることをここでは強調しておきたいと思います。
 そして,ここで提言したいのは,実は諸外国を見ますと,最も一般的なFDの手法というのは個別のコンサルティングなのです。大学の先生の教えられている科目もさまざま,専門もさまざまです。そういう中で,1対1での授業コンサルティングというものを今後は進めていく必要があるだろうと思いますし,講演型にかわって参加型のワークショップというものも取り入れていく必要があろうかと思います。
 また,定義も,今,授業改善と考えられているのですが,今回の御報告を皆さん聞いて分かるとおり,もう一授業のレベルではとどまらないのです。カリキュラムとか,組織改革もまたこのFDの一環として定義に含める必要があろうかと思います。
 映像を流していただきたいのですが,私どもが今力を入れております授業コンサルティングに関して,私が日々どのようなことをやっているのかを御覧いただきたいと思います。

(資料映像上映)

【佐藤准教授】  御覧いただいて分かるとおり,非常に時間がかかります。FDというのは手間がかかるのです。このようにお一人お一人の先生に個別で対応していくというのが基本だろうと思います。
 ということで,現在,授業コンサルティングは,毎学期20名ぐらいの先生に御利用いただいておりますが,まだまだ全学的には認知度が低いと思います。そのほか,さまざまなプログラム等も提供しておりまして,本日,お手元に『研修プログラムガイド2012』という冊子をお配りしているかと思います。これは私どもの愛媛大学単独ではなく,四国地区でネットワークを組んでおりますので,33の大学が連携して,高専も含めてプログラムを共有化しております。こういった冊子で先生たちが改善したいと思ったときに,四国の中でさまざまなプログラムを受けていただく環境を用意しています。
 それから,提言の3番目ですが,「専任のFD担当者を配置する」ということが大事かと思います。このFDに関する業務は,委員会業務として一般教員が兼務していることも多いのですが,任期も短く,専門性も向上しません。ですから,先ほどのようなコンサルティング活動はできないのです。こういった部署をしっかりとつくるということです。
 全学レベルで本気で質保証を考えている人が全学に何人いるかを考えてみて下さい。私どもは24時間365日,愛媛大学の教育の質保証のことを考えているのです。こういうスタッフをどれだけ配置できるかということです。ただし,現状としては,なり手も非常に少ない仕事であります。反発も多く,ストレスも非常にかかる仕事であります。こういう中で,専任の担当者を配置していくというのは非常に難しいのが現状です。
 現在,私ども8名のディベロッパーを置いております。潤沢だと思うかもしれませんが,これは先ほどの現状を考えた場合に仕方ないことだと思います。米国では教員200人にディベロッパーが1人ぐらいは必要だという話がありますが,私は今100人に1名ぐらい,質保証のためには必要ではないかと思っております。
 私どもは先ほど言ったようにネットワークを組んでおります。四国地区の国立大学がコア校となり,33の高等教育機関をつないでおりますが,大学間が連携しますと,ネットワークが使える研修講師数は増えます。こうやって少ない資源を共有することで,小規模な大学にも講師派遣をすることができるようになります。特に国立大学は地域の大学のFDに貢献する使命があると私自身は思っております。
 また,こういったディベロッパーの養成講座とか,FDのファシリテーター養成研修というものも私どもは用意して取り組んでおります。こういった取組もぜひ全国で展開するとよいのではないかと思っております。

【佐々木部会長】  本日の御報告について,本来なら多くの時間をかけて御議論をいただきたいところですが,事務局から少しこれに関わる全国的な状況について説明をいただいて,本格的な議論は次回以降にさせていただこうと思います。

【合田高等教育政策室長】  資料6を事務局で御用意いたしましたが,審議の時間の確保のため,資料6の御紹介は省かせていただきます。限られた時間ですが,本日の御報告について,どうぞ御審議をよろしくお願いいたします。なお,本日は審議時間が短いため,御意見ある場合には,ぜひ私ども事務局にメール等でお送りいただければと存じます。

【佐々木部会長】  では,せっかく5人の方においでいただいておりますので,ここで質問等がありましたら,ぜひ残りの時間を充てたいと思います。

【田中委員】  佐藤准教授に伺いたいのですが,FD,ディベロッパーと呼ばれる教員は,全国でどのくらいの大学に配置されているか。大学の数,そういう職務についている先生方の数はどのくらいだかお分かりになりますか。

【佐藤准教授】  正確な数は分かりませんが,国立大学等には,高等教育のセンター,大学教育センターというものがありますので,役割としてはその方たちが本来こういう業務を担うのでしょうが,中には高等教育の研究をされるために,そういったセンターに入られてお仕事をされていて,研究業務の割合が多い方もおられます。日本高等教育開発協会,ファカルティー・ディベロッパーの専門家団体ですが,現在二十数名です。おそらく実質的に活動されている方は,その何倍もおられると思いますので,四,五十人ぐらいはおられると思います。

【山田委員】  ちょうど私,今リーブをとっておりまして,4月から3カ月,アメリカのUCLAに行っておりまして,実際に客員で授業を担当しておりますので,その経験もあってお話しさせていただきたいと思います。
 今回,アジアの教育という授業と,これは大学院生担当なのですが,もう一つはグローバルエデュケーションという,この二つを3回ずつ担当しております。
 その中で大変分かったことなのですが,やはりFDは非常に大切ですし,本日のそれぞれの御発表,そのものなのですが,もう一つは,この審議のまとめの中でも出ておりましたように,高大接続という問題があります。これはやはり日本において大きな問題ではないかと考えております。と申しますのは,日本とアメリカで,同じような大学院生を対象として授業をしたわけですが,自分に関しての負荷というものが日本のほうがすごくかかるのです。
 それはどうしてかと申しますと,まず,学生でも院生でも,アーギュメントということを基本に授業を展開するわけですが,彼らはそれを小学校,中学校,高校とずっと重ねてきてから大学,大学院の中でアーギュメントを展開できるようになっているわけです。しかし,日本の場合はなかなか,ほとんどの先生方はお分かりのように,大学院の中でアーギュメントをしよう,大学でアーギュメントをしようと思っても,なかなかそれがうまくいかない。例えば私も自分の専門の授業で学生に,それこそアクティブラーニングで発表させようと思うと,自分でマイクを持って教室の前から後ろまで行って学生に当てて,そしてしゃべってもらわないと,やはりおとなしいわけです。その分アメリカで授業を持ったときには,ほとんどの学生たちは事前に予習してきて,読んだ上でアーギュメントしてくれますから,教員としてもそれをうまく使いやすいという構造があります。
 ですから,やはり高大接続を学力という点だけではなくて,小中高で目標を持って,いわゆるアクティブラーニングなどを考えていかなければいけないのではないかということを考えます。
 もう一つは,これは大きな問題になっているのですが,学部生です。アメリカの学部生で,留学生をとにかく増やそうとなったときに,中国,韓国,日本という3カ国が対象となっているのですが,まず,プレジャリズムの問題が出てきている。プレジャリズムというのは,日本で言う剽窃なのですが,全然感覚が違うのです。その感覚の違いというのは何かということが今回分かったわけなのですが,私ども教員として試験などをしたときに,学生に何々ついて述べなさいといったときに,引用して述べてくれたとします。そのときに,学生は一生懸命,試験のための勉強をしてきて,ある程度覚えて書くわけです。そしたら,これがアメリカでは剽窃として捉えられてしまう。つまり,ここにアーギュメントがないということで,それでほとんどの留学生はこれに当たるからということで,UCLAでは,来年度から留学生全員にアカデミックインテグリティーというオリエンテーションを1日かけてとらなければならないということが課せられたわけです。この感覚というのは,日本の中では全く問題になっていなくて,剽窃というものは,やはり私どもは自分が学生だったことも考えてみますと,覚えてきて書いて,そしてだれだれの論文によるととか,そういうことだったらだめということなのです。
 このあたりというのは,やはりFDだけの問題ではなくて,そういう一つの構造的な問題というのが小中高とずっと続いてきていますから,やはり東アジア特有の問題として,それこそ実際,UCLAでは来年度から1日かけてのオリエンテーションプログラムを入れられるようになってきているということですし,少しそういうことも視野に入れていかなければならないのではないかということを体験から得たばかりです。

【鈴木委員】  5人の先生方,すごくインパクトのあるプレゼンテーションをしていただいて,私は非常に学びました。お一人お一人にいろいろ聞きたいことがありますが,次の機会をつくっていただけるということですので,あまり時間をとりたくはないのですが,最初に,山本理事長が立派な資料をつくっていただいて,ここで27ページのところに,編入・転部・転科・転コースの自由化というところをお書きで,ここの文章を読むと,誠にそのとおりだと私は思いました。それで,やはり編入,転部,転科,転コースができないということで中退をせざるを得ないという相関関係も高いのではないかと思います。
 それともう一つは,濱口副学長が新潟大学の例としていろいろ,これも非常に大切な資料をつくっていただきましたが,ここで5ページ目のパワーポイントで,NBASの開発と,期待される効果というのがありました。そこの一番最後に,自己肯定できる学生の育成というのがございまして,私は大学の教育というのはこれに尽きると思うのです。それで,先ほどの山本理事長の編入・転部・転科・転コースの自由化ができなければ,自己肯定ができないという,私はそのくらいの相関があると思います。
 私は3月までICUの学長をしていたものですから,この関係が非常に切実に分かっておりますし,皆さんももちろん分かっていると思うのですが,2008年に教育学の改革をやって,学科制というのを廃止して,その結果,入試のときに専攻を決めずに大学に入って,入ってから決めるという原則の180度の転換をいたしました。そうすると,入ってくるときに全く自分は何をやったらいいのかということと,あるいは何をやりたい,やってみたいというのは白紙の状態で入ってくる。ただし,何をやってもいいという自由と,やったら自分が責任を持つんだという,自由と責任をセットとして1年生の1学期の最初の日に,そういうふうに提示するということをやっているわけです。
 それで,私はこの3月に学長をやめて,卒業式の後のお茶の会に,4年生で卒業する学生たち,このシステムで一番最初に卒業する学生なのですが,その学生たちが私のところに集まってきて,すごくいい4年間を過ごした。すごく悩んだが,自分で自分の方向を選んだという意味の充実感と臨場感をずっと持ち続けたということなのです。そこに父兄がまた来て,うちの子供たちは非常に変わったと。責任を持つということの意味と,カリキュラムを自分でつくることで自分の方向,将来の方向を大まかなところを決められたというのは非常に親として感謝しているという言葉をいただいて,私は非常な不安を持ちながら改革を始めたのですが,これでよかったのだという確信を持ったのです。
 もちろん,両先生おっしゃるように,いろいろな失敗した学生たちもいるわけで,それはやはりケアしていかなくてはいけないのですが,私は中退ということを防ぐ,これはいろいろなやり方があると思いますが,一番最初に自由だと,それから責任を持ちなさい。そのプロセスの中でいろいろ変わっていっていいということをきちんと保証するシステムが必要なのではないかと思って,私自身も両先生のお話を聞きながら非常に感銘を受けて,自分がやったことは悪くなかったのだという考えを持ちました。

【高祖委員】  今の鈴木先生の話とも少しつながるのですが,中退の問題等は,日本の大学,学校も社会も,再チャレンジするという仕組みが非常に弱いというところに大変大きな問題があると私は考えています。本日,山本理事長は,この場が大学教育部会ですから,大学へ向けての提案を出されたと思いますが,実際,再チャレンジを可能にする社会の仕組みのあり方とか,あるいは企業に向けての再チャレンジをもっと評価するようなメッセージとか提案とか,そういうものも同時に出して,一緒に動いていくという方向でいかないとなかなか難しいのではないかという気がしているのですが,そのあたりいかがでしょうか。

【山本理事長】  おっしゃるとおりだと思います。幾らやっても,退学者はある程度は出ます。退学の問題というのは,退学自体が問題なのではなくて,退学後のリスクが極めて高いことが問題だと思います。ですので,社会の側,特に企業側の認識をどう変えていくか。また,退学した後,学びを中断するわけですから,この中断した学びをどう継続していくかといった社会環境の整備が大変重要だと思います。

【安西分科会長】  大学改革の地域フォーラムのこと,それから5人の先生方に大変貴重なお話を聞かせていただきました。本当にありがとうございました。私からも心から感謝を申し上げますし,また大学教育部会が佐々木部会長のもとで,やはり具体的に進む形でもって努力をしてくださっているということに心から感謝を申し上げたいと思います。何とかして日本の大学を世界の中で,これからの大学生,卒業生たちが本当の意味で幸福に生きていけるようにしていかなければいけませんので,そのことをぜひ共有し続けさせていただきまして,今後ともぜひ,もっともっと前向きに頑張っていければと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【佐々木部会長】  本日は,質疑応答あるいは意見交換が十分にできませんでしたので,もし御意見あるいは5人の方々への御質問も含めて,必要がありましたら,事務局へメールでも文書でも結構ですので,ぜひ送っていただいて,それをまた次回以降の審議の材料にしてまいりたいと思っております。

(3)今後の日程について,事務局から資料7の説明があった。

 

―― 了 ――

 

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-- 登録:平成24年07月 --