資料1 第24回大学教育部会における主な意見

○:前回会議での委員の意見
■:前回会議後の意見照会における委員の意見

(大学教育の質的転換・質保証)

○各教員の,授業における質の保証について具体的に考えることが必要。
○授業の質保証のためには,シラバスとルーブリックをセットとしたクラス運営や,教員の準備段階としてのTAの位置づけを明確にした上での活用の促進が必要。
○質保証で一番重要なのは,個々の授業でそれぞれの学修教育目標が実現されているかしっかり評価が行われることであり,そのための厳格な成績評価やGPAの導入が実効化されることが必要。
■教養教育の場合,学ぶべき内容は考え方や物の見方等,質的な側面が多いため,ルーブリックによる学修到達度の評価が有効。(別紙1参照)
○国際化を進めるためには,英語で授業をすることが必要であり,英語の授業を教育の現場でどう取り扱うのか考えていかなければいけない。
○単位認定を厳格に行うには,成績評価を厳しくするだけでなく,セーフティネットや再履修の機会など,多様な仕組みが求められる。
○学校外の様々な活動を積極的に取り入れて,グローバル化に対応した多様な授業形態を考えていくことが必要。
○入学してからの学修にモチベーションが沸くような大学入学者選抜の仕組みにすることが必要。
○GP制度のように,頑張っていろいろな取組をしているところをきちんと見出して評価をするような仕組みを設けてはどうか。
○小規模の短期大学がコンソーシアムを作って教学,IRシステムを構築する取組を進めており,このような取組も含め多様な評価制度を促進することが必要。
○認証評価制度までに至る一連の質保証のトータルシステム作りが緊急な課題。

(認証評価制度の改善・充実)

○明確な人材像を設定し,個性的な教育を行うそれぞれの大学の教育努力を的確に評価するためには,外形的,画一的な評価ではなく,それぞれの大学の個性に応じた教育の成果を的確に評価することが必要。
○認証評価に関する制度改正に当たっては,個々の大学の教育目標がきちんと実現できているかを確認することが最重要課題。
○設置基準の精緻化より,むしろ,各大学が,柔軟に様々なイノベーションを行い,そのような取組が正しく評価できる認証評価にすることが大きな方向であるべき。
■今後は,各大学が設定した目的・水準を評価する「達成度評価」を重視し,その促進を通じて各大学が機能別に分化し,多様化していくことを支援することが必要。(別紙1参照)
○学修成果を大学だけで測る場合,大学によって随分ばらつきがある。例えば,一大学が非常に成果を挙げたといっても,学力のあまり高くない学生が入学している大学の場合は,成果を挙げるのは簡単だが,一定の学力層の学生が入学している大学だと,学修成果というのは測りにくい。
○評価における社会との関係の強化がおざなりにならないように,利害関係者に対してどういう意見を求め,評価を受けていくのかまで踏み込んで,認証評価を考える必要がある。
■高等学校,大学を選ぶ側からの視点で考えると,大学選択等における評価の活用を考えることも必要。大学の質保証をはかるための認証評価が,ある程度,大学を選択する際の評価にもつながるとよいのではないか。
■認証評価で,不適格判定を受けた場合,直接の罰則規定がなく,不適格判定を受けた場合には,各種補助金の打ち切り,申請資格剥奪などの罰則強化を図るべき。(別紙2参照)
■認証評価は7年に一度という隔年性があり,認証評価を受けていない期間でも,文部科学省による指導・勧告・警告・閉鎖などの一連の措置の適用も考慮される必要がある。(別紙1参照)
■大学評価・学位授与機関の評価のメタ機関としての位置づけ等,認証評価機関の評価の質の維持・向上のための取組が必要。(別紙2参照)

(情報公表の在り方)

○前向きの競争を作り出すための基盤として,情報公表の充実が必要。
○情報公開は,データについての基準や定義を定め,他のデータと比較できるようにすることが大事。
■情報公開が教育の質の転換(変化)を支える重要な手段。その際,数字等の公表に当たり,大学によって,解釈(定義)が異なるようでは,公表した数値の意味がないので,公表する数字等については定義を明確にして,大学間で解釈が異なることのないようにする必要がある。情報公開を実りあるものにするために,比較可能なしっかりした情報を提供することで,広く社会からの評価や批判を受けることを可能にし,大学改革を真に進めていく原動力にしたい。

(設置基準等の改善)

○現在の設置基準は,教育組織と教員組織が一致していることを前提に定められているが,基準の整合性を整理する必要がある。
○設置基準の一覧性を高め,自由に解釈を運用できる表現を改め,解釈に振れが出ないような精緻な設置基準にし,認可審査のルールを改めていく必要がある。
○設置基準は,オンライン教育をはじめ,今後の様々な教育におけるイノベーションを勘案し,充実した教育が行われているということを重視する方向の改正を考えるべきではないか。
■現行の設置基準は機関としての大学の設置基準なのか,教育課程としての大学(学士課程)の基準なのか,極めて分かりにくく,「学位授与機関」としての大学としての要件を定めた新「大学設置基準」と,学位課程ごとの基準(「学士課程基準」「修士課程基準」等)を別に設定するなど,設置基準の全面改訂が課題。(別紙2参照)
○学位の分野の名称が700以上あるということについては,質保証の観点から整理が必要。
○新設大学が増えてこない状況の中では,届出設置の在り方や,学位の種類や名称が非常に多様化している状況への対応が,質保証のためには重要。

(設置審査の在り方)

■現在の設置認可は,実績がないところで学位授与権を個別学位ごとに審査しているが,今後は実績ベースでの審査,認可にすべき。(別紙2参照)
○現在の設置認可制度や基準は,性善説が前提。確信犯的に悪用しているケースは,行政指導や公表だけでは問題があり,新たな制度補強が必要。
○既存の大学の中身が変わってくれば新設するところもそれに従うはずなので,既存の大学の中身をどうするかということが重要。

 

資料1(別紙1(鈴木委員))

「大学の質保証システムに関する検討課題」コメント

1.大学教育の質的転換を促進するための質保証について

○1 認証評価

設置認可、AC調査等の期間を過ぎると、それ以降における大学教育の質保証は、現状では唯一、認証機関によって行われるだけである。その意味では、設置認可、AC, 認証評価の三者間の有機的な連携によって大学教育の質保証が行われる必要がある。ただ、三者間に有機的な連携と言っても、それは三者の制度的な統合ではなく、制度的には独立であるが、機能的には有機的な連携がなされるという意味である。特に、認証評価機関はその独立性・自律性を保つことが国の高等教育質保証制度の基本的在り方からして重要である。認証評価制度のおいては評価の基準が2段階ある。第一は大学として求められる最低基準を満たす(法令遵守等)ことであり、例えば認証評価機関の一つである大学基準協会の場合、このことは「基盤評価」においてなされる。第二には、最低基準を越えて、大学が独自に設定した目的・水準に向かって教育の質向上がなされる場合にそれを評価するために採用される基準がある、これを「達成度評価」と呼んでいる。教育の質保証・向上に努力する大部分の大学においては「基盤評価」の基準を満たすことは勿論のこと、さらに自ら設定した諸目的・水準を達成するための「達成度評価」の基準を達成することに自助努力を行っている。今後の認証評価においてはこれらの大学に関しては自助努力による「達成度評価」を重視し、それらの促進を通じて各大学が機能別に分化し、多様化してゆくことを支援していかなければならない。この点からすると、認証評価機関側にも、さらに効果的な「達成度評価」を実施してゆく責任がある。現在のところ、各認証評価機関は「大学教育の内部質保証」の有無を評価することに力点を置いているが、この事と「達成度評価」の強化の関係が明確になっていない。

○2 問題のある大学への対応

大多数の大学はその教育の質保証と向上の為に真摯に全学的な努力を行っている。しかし、例外的に、残念ながら、ごく少数の大学が、法人経営や教学において問題を抱えており、大学閉鎖などの事態に陥っている。この、○1質保証・向上に取り組んでいる大学群と○2少数ではあるが深刻な問題を抱えている大学群、に関しては、その取り扱いが異なる。○2のように、少数ではあるが深刻な問題を抱える大学に関しては、認証評価機関の認証評価において「不適合」の結論を付す場合もある。この場合、当該大学は3年以内に不適合と指摘された問題点を改善し、改善報告を提出しなければならない(「不適合」の結論を付されないまでも、「期限付き適合」等の結論を付される場合があり、この場合も評価において改善を勧告された問題点を3年以内に改善してその結果を大学基準協会に報告することが求められる)。しかし、改善報告書を提出した後でも、その改善策が十分ではなく、さらに再度「不適合」の結果を付す場合も散見される。これらの場合には認証評価機関はそれ以上のアクションを起こす手続き的・制度的手立てはないのが現状である。「不適合」を付した大学に関しては認証評価機関はその旨を文部科学大臣に報告している。したがってこのような深刻な状況の報告を受けた文部科学大臣が当該大学に対して指導・勧告・警告・閉鎖等のアクションを執る必要があるのではないか。
認証評価は7年に一度行われるという隔年性があるため、一度認証評価をクリアすれば、その後(6年間は)の継年的な評価からは逃れられることになる。この期間に問題がますます深刻化するケースも考えられる。したがって、このような場合には、この期間中であっても文部科学省による指導・勧告・警告・閉鎖などの一連の措置の適用も考慮される必要があるであろう。今後の問題として、学生定員割れや財政的困難を抱える大学が増加することが予想されるが、これらの大学に対して具体的にどのような措置を講じるべきか、現実的対応を考える段階に来ている。
他方、極端な場合としての大学の閉鎖などの深刻な事態が将来どのような規模と広がりで起こりそうかに関しては、その規模を慎重に予測する必要がある。もし、大学の閉鎖などのケースが増加するようであれば、よく言われるように、それは日本の大学総数や大学生総数の多寡に関する議論に関連する可能性もあることに留意する必要がある。私見としては、大学数、大学生数とも、現在の状況は多すぎるということはない。多すぎるとは何を基準としているのか判然としない。基本的には大学教育の質低下問題は、大学教育の仕方や大学に学生を送り出す高等学校までの教育の仕方に問題があるのであって、第一義的に大学数云々の問題ではない。21世紀における初等・中等・高等教育の在り方は「より多くの学生に、より良い教育を施し、よりよく自分の能力と適性を発揮し、より広く世界で活躍できる人間を創る」ことにあり、このことは20世紀までの大学イメージ(エリート教育の為の大学)に基づいて大学数や大学生数を削減しようとする「大学教育縮小均衡」志向では達成されない。上記のような21世紀型人間教育が「大学教育拡大均衡志向」の中で達成される事が21世紀の教育の課題である。

○3 具体的な「教育改善のための道具立て」について-シラバス(授業工程表)vs ルーブリック(学習評価表)-

最近の中教審答申(「学士課程教育の構築に向けて」(2008)、「新たな未来を築くための大学教育の質転換に向けて」(2012))等においては、より具体的な教育活動の改善に向けての提言がなされる傾向が顕著になっている。たとえば、学士力(の四つの能力的側面)、シラバス、科目番号制(コースナンバリング)、等々である。ただ、ここで大切なことは、これらの教育(あるいはもっと具体的には教室における授業)のための幾つかの道具立ての間には構造的・内的連関があるのであって、その事を十分に理解する必要がある(鈴木典比古「グローバリゼーション下の大学教育改革五つのキーワード」『大学評価研究』(大学基準協会、2012年、第11号)参照)。
第7期中央教育審議会大学教育部会においても、教育の質保証と向上のために具体的な道具立てが論議され、提案されるであろう。私見によればそのうちの一つはルーブリック(rublic)である。ルーブリックは教員と学生双方が使用できる学習進捗評価表であるが、実際の授業においてはこのルーブリックと、授業の進行行程表であるシラバスはセットになって使用される必要がある。このことは他の道具立て間の連携的使用と共に、教育の質保証と向上を図るために重要である。ルーブリックは学生の主体的な学習への取り組みと自己による達成度評価を可能にする道具として有効である。現在の大学教育が専門教育中心から教養教育重視へとその力点が変わってきている。専門教育の場合、教科科目の目的、内容、水準などが知識の量や数値化されたり、明確化されたりするので、その学習達成度も客観的な試験などによって測ることができる。しかし、教養教育の場合、学ぶべき内容は考え方や物の見方等、質的な側面が多く、試験などの客観的な尺度によってその学習達成度を測ることは難しい。そのような場合に、ルーブリックによる学習達成度の評価は有効になる。

(2.質保証の充実の為の大学設置基準等の改善について-「校地の別地キャンパス」、「サテライトキャンパス」、「教員の専任制」-等に関するコメントはいたしておりません)

 

資料1(別紙2(川嶋委員))

質保証についての意見

◯設置基準の全面改訂について

・現行の「大学設置基準」は、機関としての「大学」の設置基準なのか、教育課程としての「大学=学部教育=学士課程」の基準なのか、極めて分かりにくい。そもそも、大学と言えば学部(における教育)しかなかった時代を反映しているものと思われる。
・機関としての「大学」には、学部、大学院(研究科)という組織を設置しているにもかかわらず「大学」設置基準とされ、他に「大学院」設置基準、「専門職大学院」設置基準も別に設けられている。
・そこで、「学位授与機関」としての「大学」としての要件を定めた新「大学設置基準」と、学位課程ごとの基準である「学士課程基準」、「修士課程基準」、「博士課程基準、「専門職学位基準」、「短期大学士」基準を別に設定すべき。
・それによって、現在問題になっている「大学院大学」とくに専門職大学院大学のインフラに関する諸問題も解決できるのではないか。
・各学位課程の設置基準には、教員資格や教育課程の他に、「資格枠組み(学習成果や到達水準等)」の基準も含むものとし、日本の学位の質と水準を担保すべきである。

◯設置審査

・「学位授与機関としての大学(学位課程にかかわらず)」の認可は政府の重要な権限であるので(チャータリング)、厳格に規定し、審査も慎重にすべきである。
・また、現在の設置認可はあくまでも「構想」にすぎないので、実績がないところで学位授与権を個別学位(分野)ごとに審査しているが、今後は英国のように実績ベースでの審査、認可にすべきである。たとえば、学士課程のプログラム開設には、短期大学士課程での実績があるとか、他大学との共同学位での実績があることを前提に審査する。

◯認証評価

・新設は今後減少すると見込まれるので、認証評価が質保証に果たす役割は、ますます重要である。
・そこで、各認証評価機関の信頼性を内外に保証するためにも、現在は、新規の認証と問題が起きたときのみ、文部科学省が認証評価機関の審査を行うが、たとえば、10年ごとに、各認証評価機関の再審査を行うべきではないか。
・また、現在の法制では、認証評価は7年以内に受審することが法律で義務化されているが、不適格判定を受けた場合には、直接の罰則規定がない。不適格判定を受けた場合には、各種の補助金の打ち切り、補助金申請資格剥奪などの罰則強化を図るべきである。(現行では、認証評価の判定を受けての行政処分のみ)
・さらに、認証評価を受審する機関は、大学が自由に決められることになっているが、継続的な改善を促進するには、同一の認証評価機関と恒常的な関係を確保する必要がある。認証評価機関の財政的基盤を確立するためには、会員制の導入を検討してみてはどうであろうか。ただし、現状では、設置形態と密接な関係があり、認証評価の質を保証するためにも、先に指摘した認証評価機関の定期的なレビューが不可欠である。
・大学評価・学位授与機関は、現在、国立大学のほとんどと公立大学の約半数が、認証評価を受審する組織となっているが、むしろ、評価の実施機関としてよりは、評価のメタ機関、あるいは評価やアセスメントの研究開発に関する国の中核的機関に位置づけを変えてみてはどうか。(そのためには、国立大学法人評価の仕組みの変更が必要となる)

 

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