資料3 学士課程教育の進展に関する現状と課題について-公立大学協会の調査から-

 学士課程教育の充実のために国公私立大学を通じた大学教育改革支援事業(GP)の果たしてきた役割について,公立大学協会が調査を実施。結果は以下のとおり。

1.公立大学においGPに採択された事業(約200件)のうち,半数は,国からの助成終了後も,財源確保に困難をきたすところもあるが,学内に組織体制を構築するなどにより,活動を継続している。

    【事例】

    • 高崎経済大学(地域連携戦略室):地元企業と連携したインターンシップや活性化事業,地域活性化を検討するフィールドワーク型学習.
    • 横浜市立大学(医学部):医療安全,医療倫理,コミュニケーションを重視したカリキュラムを開発・実施.
    • 福岡県立大学(不登校・ひきこもりサポートセンター):学内に小中高生を対象としたフリースクールを設け,福祉や心理、看護を専攻する学生がボランティアで支援
    • 沖縄県立看護大学:島しょでの臨地実習に必要となる教育モデルを開発・実施.


 残りの約半数も,GP事業の成果を,様々な形で学内の教育改革に繋げている。

    【学長の指摘の例】

    • 大学院の専攻の再編や科目の新設に取り組むなど,GP事業を推進したことによる教育改革の効果は非常に大きい.
    • プロジェクトによって醸成された学部間の相互教育連携体制を基盤とした演習科目を教育課程に位置付けた.


また,こうした取組が様々な契機につながっているとの指摘も多い。

    【学長の指摘の例】

    • 学部課程教育のみならず全学的な教育課程の見直しや改善に繋がり,さらには就業力育成など全学的な学生支援の見直しと強化にも結びついてきている.
    • 単位互換協定の調印や,共通の副専攻プログラムの開設に繋がった.

 2.上記のような状況について,詳細な分析や,大学間で情報共有する体制が極めて重要。

 

「学士課程答申」の主な提言に関連した取組

<学士力>

○学習到達度の把握・測定

・大阪市立大学「4年一貫の演習と論文指導が育む学士力」(平成21~23年度)
 学部の人材養成目標である「プラクティカル・エコノミスト(PE)」養成のため,学生が修得すべき内容を指標化した「PE指標」を導入し,学修状況を評価。また,論文指導において,教員が公正に論文を評価するための論文採点基準表を作成し,公開。

<教育課程の編成と実施>

○学習時間の実態把握と,教育方法の点検・見直し

・大阪府立大学「大学初年次数学教育の再構築」(平成19~21年度),「学士課程教育における数学力養成」(平成22~24年度)
 学士課程の全員に対する数学力養成のため,講義内容の明確化,共通教科書の使用,質問受付室の開設、Webを使った自習プログラムの提供による授業時間外の学習時間の増加などに取り組み、数学関係の教員組織を一つにすることとした。

○多様な教育方法の取り入れ

・奈良県立医科大学「地域に教育の場を拡大した包括的教育の取組」(平成20~22年度)
 緊急医師確保枠や医師確保修学研修資金奨学生の学生を対象に,「地域基盤型医療教育コース」を継続して実施。地域やへき地診療所医師などの開業医をメンターとして定め,学生が訪問し,指導を受けるなど,地域医療に貢献する人材を育成。
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○ICTの積極的な取り入れ

・島根県立大学「北東アジアにおける英語使用環境の構築」(平成19~21年度)
 英語科目において,米国,カナダ,中国,韓国,ロシアの海外交流協定校と,インターネットを利用したビデオチャットで,異文化理解や英語科目などの国際合同授業を行い,会話や議論,ビデオ制作などを実施。

○大学間連携の強化

・広島市立大学「医療・情報・工学連携による学部・大学院連結型情報医工学プログラム構築と人材育成」(平成21~23年度)
 取組の実績や経験に基づき,新学科として「医用情報科学科」を平成24年度に設置。また,「学部・大学院連結型プログラム」として,今後,大学院課程の授業科目も開講予定。

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