資料2-2 学士課程教育に関する新たな検討について(案)(1/2)

○ 平成20年の「学士課程答申」以後,各大学で様々な改革が進んでいる状況の成果と課題について検討し,一定の論点整理を行うことについて。

1.中心とするテーマ(イメージ)

(1) 「学士力」 → 各大学の重点を置く機能や使命に照らしながら,修得すべき知識・能力を明確化すること,また,その取組状況の把握と,その充実。
(2) 教育内容・方法 → 学生の学習量と,その密度。
(3) 学内の実施体制 → 学長によるリーダーシップによる運営と,FD・SDを通じた教職員の職能開発と認識の共有を通じた運営。

2.留意すべき観点(例)

(1) 機能別分化の進展を踏まえること

  • 各大学で重点を置く機能や分野等が多様である現状

(2) グローバル化,産業・就業構造の動向を踏まえる(震災後の人材育成の在り方)

  • 大学教育の内容・方法の検討
  • その支援・奨励方策の検討

(3) 国際的な動向を踏まえた学生の流動性を高める。

  • 国内外を問わず幅広い年齢層の学生が,優れた教育・学生支援を受けられるための環境の整備
  • 国際的な質保証の動向を踏まえた制度的検討(単位互換に関する枠組みなど)

3.スケジュールと審議の進め方(案)

○ 当面の方針として,年度内を目途に,一定の論点整理を行うこととしてはどうか。(その結果を踏まえて,部会としての考え方の取りまとめを検討する)。

○ その際の部会としての手順,進め方をどのようにするか。(学士課程に共通の事項と,分野による多様性があることをどのように踏まえるか)

○ なお,検討に当たっては,「教育振興基本計画」の作業動向にも留意する。

4.これまでの検討課題例

(1) 学位授与の方針

例:

  • 人材養成目的の作成と公表
  • 修了時に修得することを想定する知識・能力
    • 本年4月の省令改正により,「修得すべき知識・能力に関する情報」を各大学で公表に努めることとされており,それを受けた各大学の取組事例は多様であるが現時点では,総じて,抽象的な記述にとどまっていないか。
    • 「学士力」に関連して,各大学で,学士課程を通じた学習成果を具体的に示す試みがどのようになされているか(それぞれの教育理念,学生の実態,分野の特性等を踏まえた検討の状況)。
    • 諸外国で,学修成果への関心が高まっている中で,我が国における推進方策について。その際,学修成果の設定と,その実現のための具体的な取組の課題について(分野横断的な学士力と,学部・学科ごとに修得すべき知識・能力の明確化の関係)。

(2) 教育課程の内容・方法の方針

  1. 教育課程の体系化・単位制度の実質化

例:

  • 順次性のある体系的な教育課程の編成
  • 幅広い学修の機会を提供するための意図的・組織的な取組
  • 大学間や地域の諸団体との連携強化による教育内容の豊富化
  • 学生の学修時間の実態を把握し,教育方法の点検・見直し
  • シラバスの整備,授業時数の確保
    • 学生の学習プロセスに関する実態の把握(例:各授業科目における授業時数の確保の取組方策を含む)と,その分析を通じた改善について。
    • シラバスが,学生の履修に役立つものとして整備されることが求められることについて。
    • 各大学の実質的な努力を把握する仕組み。欧米では,様々なセンターやコンソーシアムによる取組。
    • あわせて,ナンバリングの整備が課題であることについて(ナンバリングの検討を通じて,学位課程の共通性の形成と,各大学の個性・特色のあり方が示される)
    • 単位制度が実質化し,履修を通じて何を修得するのかを確認することについて。また,学生の学習時間を増やすような工夫について。
    • あわせて,就職活動の早期化の現状に関する認識について。
  1. 教育方法の改善

例:

  • 能動的な学習手法やボランティアをはじめとする多様な教育方法の導入
    • 震災後の人材育成の在り方として,ボランティアをはじめとする活動の充実
    • そうした活動が,教育課程の編成に当たって,どのように位置づけられ,それについて,学内の共通理解が得られているかどうか。
  • 教育研究上の目的に応じた情報通信技術の活用
  • ツールとしての基盤教育(英語,日本語,数学的な思考)の体系的な実施
  • 入学した学生の意欲を持たせて成長させるための方策。
  1. 成績評価

例:

  • GPA等の客観的な基準の認識の共有と厳格な適用
    • GPAが各教科の成績の加重平均の実施にとどまらず,教育の質を高めるための活用が求められることについて。
    • GPAの導入・実施に当たり,国際的に通用する仕組みとしての観点(評価の設定を標準的な在り方に揃える,不可となった科目も平均点に算入する,留年や退学の勧告等の基準とするなど)。また,GPAでの成績評価の設定に関する諸外国との比較について。
    • アドバイザー制を導入するなど,きめ細かな履修指導や学習支援の実施。
  • 国際化を特色とする大学における外国語コミュニケーション能力の厳格な評価

(3) 入学者受入れの方針

例:

  • 学位課程のあり方に照らした入学者受入方針の明確化

(4) 就業力の向上をはじめとする大学教育の課題について

○ 大学教育を通じて,専門的知識を培うとともに,知的・道徳的・応用的能力の育成の観点から,幅広く社会の形成と発展を担う人材育成の充実について,例えば,

  • 教育課程の内容・方法,
  • 学習成果の評価,
  • 実施のための学内のガバナンス

 などの観点から,どう考えるか。
 (震災後の我が国を担う観点からの人材育成の在り方を含む)

  例えば,

  1. 自然や社会の事象等に関し,正しい知識・理解を備え,発信できる知的人材,
  2. 幅広い教養,高い公共性・倫理性を持ち,社会の安定・発展・創造に貢献する意欲・能力を持つ人材,
  3. 経済・社会のグローバル化が急速に進展する中で,グローバルな社会で活躍できるコミュニケーション能力や調整能力の高い人材。
  4. ○グローバル化は,一部の企業と大学にとっての課題ではなく,基本的に,すべての大学にとっての課題であること(例えば,世界の動向への理解と,想定外のことがあっても自ら判断して,リーダーシップをとれる人材の養成)。

○ 関連して,日本人・外国人学生を問わず,卒業後に国内外の多様な場で活躍できるような教育・学生支援の充実をどう図るか(国内外での雇用を念頭に置いた就職支援の推進を含む)。

○ これらに関し,大学関係者と産業界等社会との対話の促進について。

    ○ 平成22年には,学生の社会的・職業的自立に関する指導等の実施の明確化のため,大学設置基準を改正(平成23年4月に施行)。
    ○ 文部科学省では,こうした設置基準改正を含む「就業力育成5カ年プラン」を公表。

(5) 各大学の取組を把握・評価する仕組みについて

例:

  • 認証評価を通じた,各大学の活動状況に関する把握
    • 第5期の大学分科会の議論を踏まえて,認証評価機関(機関別評価と専門職学位課程評価とも)により,認証評価機関連絡協議会が発足しており,今後そうしたところでの議論の進展を期待。
  • 教育情報の公表の促進(本年4月に施行)
    • 省令改正を契機として,多くの大学が,ウェブサイトに「教育情報の公表」といったコーナーを開設し,情報を公表している。そうした各大学の取組状況の把握と,更なる検討(本年6月から,文科省の協力者会議で検討開始)。
    • 情報発信は各大学による取組が基本。加えて,大学団体の協力により,大学コミュニティによるオープンな検討を通じて,大学の取組を分析・発信するデータベースを整備することが課題。

(6) そのほかの課題

例:

  • グローバル化への対応に関する制度的対応について
    • 大学の国際化に当たり,学位課程(プログラム)の確立(ダブル・ディグリーやジョイント・ディグリーへの対応を含む)。
  • FD・SDの推進
    • 個々の教職員の努力とともに,教職員の組織的な活動を通じて,質保証・向上を果たす観点からどのように機能しているか。
    • FD・SD形式化していないか(日常的な教育活動の中で,教員間の相談を通じて,体系的な学位課程を構築していくことが求められること)。
    • 学士課程の「三つの方針」の要素は互いに関連しており,FDを通じてそれらを結びつけて具体的な改革につなげていくこと。
    • FDを通じて,専門分野における教員間の意思疎通を図りながら,体系的なカリキュラムを構築すること。その場合の学内・学部内のガバナンスのあり方。
  • 初中教育との情報の共有の必要性。また,産業界を含む社会との関わり。

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