資料2-1 大学教育の主要課題について(2/2)

(参考)学士課程教育に関するこれまでの答申や取組の経緯

1.「学士課程答申」の前まで

○ 平成3年の大学設置基準の大綱化に当たり,各大学における教学ガバナンスの確立に関わることとして,4年間で一貫し,調和のとれた効果的な教育を実施について提起した。
○ さらに,平成10年の「21世紀答申」で,「学部(学士課程)における教育機能の組織的・体系的強化」を掲げた。また,平成17年の「将来像答申」で,学部教育を「学士課程」と明確に位置づけ,その充実した教育の展開と,「学位授与」「教育課程」「入学者受入れ」の3つの方針の明確化を支援するように提言した。

2.「学士課程答申」の提言

○ 「将来像答申」を受けて,平成20年の「学士課程答申」では,学士課程の充実のため,各大学において,

  • 学位授与の方針
  • 教育課程の編成と実施の方針
  • 入学者受入れの方針

 の3つの方針の明確化に関し,各大学と国が取り組むべき課題例を掲げた。

○ 学位授与の方針に関連して,学士課程教育が共通して目指す学習成果に着目した参考指針として,「学士力」を提示している。

    【学士力(学士課程共通の学習成果に関する参考指針)】

    <知識・理解>

    • 専門分野の基本知識の体系的理解
    • 多文化・異文化に関する知識の理解
    • 人類の文化,社会と自然に関する知識の理解

    <汎用的技能>

    • コミュニケーション・スキル
    • 数量的スキル
    • 情報リテラシー
    • 論理的思考力
    • 問題解決力

    <態度・志向性>

    • 自己管理力
    • チームワーク
    • リーダーシップ
    • 倫理観
    • 市民としての社会的責任
    • 生涯学習力

    <統合的な学習経験と創造的思考力>

    • これまでに獲得した知識・技能・態度等を総合的に活用し,自らが立てた新たな課題にそれらを適用し,その課題を解決する能力

3.「学士課程答申」後の進展

(1) 3つの方針の明確化をはじめとする改革の進展について

○ 「学士課程答申」を受けて,各大学の自主的な取組が進むとともに,それを支援する制度的・財政的枠組みも整備されてきた。その際,各大学の個性・特色は様々であり,画一的な取組とならないよう,機能別分化を踏まえた対応がなされている。

    1. 体系性・一貫性ある教育のための設置基準改正(H19に大学院,H20に学士課程で施行)
      • 人材養成目的の公表
      • シラバス・成績評価基準の明示
      • 教育内容等の改善のための組織的な研修・研究の義務化
    1. 国公私立大学を通じた大学教育改革の支援(GPやCOEといった各種事業)

○ それらを踏まえて,各大学の主体的な取組の進展が見られ,一定の進展があったと評価できる。

    改革の進展の例

    【教育内容・方法の改善】

    • 教養教育のための学内体制の整備 H17:529大学(76%)→H20:583大学(81%)
    • セメスター制の導入 H 6:200大学(39%)→H20:493大学(68%)
    • シラバスの作成 H 5:80大学(15%)→H20:696大学(96%)
    • GPAの導入 H12:68大学(13%)→H20:330大学(46%)
    • インターンシップの実施 H10:143大学(24%)→H21:521大学(69%)

    【グローバル化】

    • 海外との単位互換の実施 H16:151大学(22%)→H20:246大学(33%)
    • 海外とのダブル・ディグリー実施 H18: 37大学(5%)→H20: 85大学(11%)
    • 留学生の受入数
      (学部)H3:17,166人(1%)→H22:70,021人(3%)
      (大学院)H 3:13,816人(14%)→H22:39,097人(14%)

    【教員の教育活動】

    • FDの実施 H 5:151大学(29%)→H20:727大学(97%)
    • 学生による授業評価の実施 H 5:38大学(7%)→H20:597大学(83%)
    • 教員の教育業績の評価の実施 H12:103大学(16%)→H20:341大学(46%)
    • 教員が教育に費やす年間の平均時間(総職務時間に占める割合)
      (人文・社会科学分野)H14:675時間(26%)→H20:851時間(33%)
      (自然科学分野)H14:627時間(21%)→H20:755時間(25%)

    【情報の公表】

    • 自己点検・評価の公表 H 5:59大学(11%)→H20:669大学(90%)
    • 認証評価を受けた大学 0→H22:721大学(100%)
    • 教育情報の公表(制度的位置づけ) H11:「情報の積極的な提供」を規定→H23:全大学で公表されるべき情報の内容を明確化

(2) 「学士課程答申」後の大学分科会の検討と提言について

○こうした改革の進展と並行して,大学分科会では,公的な質保証システムとしての設置基準,設置認可審査,認証評価に関し,制度面に着目した検討を進め,それを受けた制度・運用の改善がなされている。

    • 設置基準:教育情報の公表,社会的・職業的自立のための指導等を法令に位置づけ。
    • 設置認可審査:早期不認可の導入,設置認可情報の公開,認可後のフォローの充実。
    • 認証評価:設置基準や設置認可との関わりを重視した運用改善。評価機関による連携。

○ さらに,大学教育と社会の関わりを重視する観点から,二つの答申を行っており,それを受けて制度改正がなされ,今年4月から施行されている。

    【教育情報の公表】
     大学の教育情報の公表を促進し,社会への説明責任を果たすため,すべての大学で公表されるべき項目を具体化。

    【就業力の向上】
     学生の就業力向上の観点を踏まえ,大学が,社会的・職業的自立に関する指導に取り組むことを大学設置基準に明記。

    (この制度改正と連動しながら,「就業力育成支援事業」を通じて,大学の活動を実施。)

(3) 学士課程に係る検討の展開

○ 「学士課程答申」では,分野を横断する「学士力」の提起とともに,分野別の到達目標の設定,コア・カリキュラムやモデル教材の開発の促進など分野別の質保証も検討課題とされた。
 そうした検討に当たっては,分野によって手法や進め方に違いがあるため,日本学術会議において,分野別の質保証の検討が行われている。高度専門職業人養成のいくつかの分野については,文部科学省も支援している。

    • 日本学術会議では,大学教育の分野別質保証の在り方について検討し,平成22年には「分野別の教育課程編成上の参照基準」の作成に向けて,基本的な考え方を取りまとめている。
      それに基づいて,現在,複数の分野における「参照基準」の検討が行われている。
    • そのほか,高度専門職業人養成で資格制度と関連する分野において,卒業までに最低限履修すべき学修内容の指針等の作成が見られている(医療系では,医学,歯学,薬学,看護,また,獣医学,技術者教育,社会福祉など)。文部科学省としても,こうした取組を支援している。

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