空地・運動場特区について(経緯)

1.特区(空地(829),運動場(828))の内容

○ 大学は,校舎と同一の敷地内又はその隣接地に空地※及び運動場を設けなければならない旨が,大学設置基準において定められている。これについて,代替措置を講じる等の一定の条件を満たせば,空地・運動場がなくとも大学を設置できるようにしたもの。

(参考)大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)
第34条 校地は,教育にふさわしい環境をもち,校舎の敷地には,学生が休息その他に利用するのに適当な空地を有するものとする。
第35条 運動場は,教育に支障のないよう,原則として校舎と同一の敷地内又はその隣接地に設けるものとし,やむを得ない場合には適当な位置にこれを設けるものとする。

※「空地(くうち)」:(広辞苑第5版)
1「家や田畑などのない地。あき地」、2「都市計画における、公園・緑地・広場」、3「建築基準法における、敷地の内外の建物の建てられない部分」
「空地」という用語は、法令上、建築基準関係法令や都市計画関係法令等で用いられている。

    ○建築基準法施行規則
    (敷地と道路との関係の特例の基準)
    第10条の2の2 法第43条第1項ただし書の国土交通省令で定める基準は、次の各号のいずれかに掲げるものとする。
    一 その敷地の周囲に公園、緑地、広場等広い空地を有すること。

2.特区制度化の経緯

○ 規制改革・民間開放推進3か年計画(平成14年3月29日閣議決定)で,以下のような指摘。

 「…それぞれの基準の必要性等を十分に吟味し,例えば,施設設備や教員組織の基準において不必要なものは廃止するなど,全体として最低限必要な基準となるよう厳選する」

○ 構造改革特区提案主体から,株式会社立大学を認めるとともに,中心市街地や駅前など,用地の確保が難しい場所にも大学を設置するため,空地・運動場要件を撤廃してほしいとい特区要望を受け,特区を制度化(平成16年4月1日施行。短大についても制度化)。

(参考)文部科学省関係構造改革特別区域法第2条第3項に規定する省令の特例に関する措置及びその適用を受ける特定事業を定める省令(平成15年文部科学省令第18号)

第6条 地方公共団体が,その設定する構造改革特別区域内の大学において,法令の規定による制限その他のやむを得ない事由により所要の土地の取得を行うことが困難であるため大学設置基準第34条又は短期大学設置基準第27条第1項に規定する空地を校舎の敷地に有することができないと認められる場合において,(中略)学生が休息その他に利用するため,適当な空地を有することにより得られる効用と同等以上の効用が得られる措置を当該大学が講じている場合に限り,大学設置基準第34条又は短期大学設置基準第27条第1項に規定する空地を校舎の敷地に有することなく,大学の設置等を行うことができるものとする。

第7条 地方公共団体が,その設定する構造改革特別区域内の大学において,法令の規定による制限その他のやむを得ない事由により所要の土地の取得を行うことが困難であるため大学設置基準第35条又は短期大学設置基準第27条第2項に規定する運動場を設けることができないと認められる場合において,(中略)運動場を設けることにより得られる効用と同等以上の効用が得られる措置を当該大学が講じており,かつ,教育に支障がないと認められる場合に限り,大学設置基準第35条又は短期大学設置基準第27条の規定にかかわらず,大学の設置等を行うことができるものとする。

 

3.平成23年4月時点の特区利用状況

<特区利用大学>

  • LEC大学(全国8箇所)
  • デジタルハリウッド大学(千代田区)
  • 森ノ宮医療大学(大阪市)
  • 宝塚大学(新宿区)※平成22年4月以前は,旧宝塚造形芸術大学
  • ビジネス・ブレークスルー大学(千代田区)

<特区利用状況>

 

829(空地)

 828(運動場)

LEC ※1

○(平成16~)

○(平成16~) ※2

デジハリ

○(平成17~) ※3

○(平成17~) ※3

森ノ宮

-

○(平成19~)

宝塚

○(平成19~)

○(平成19~)

BBT ※4(学部※5,研究科)

○(平成22~) ※6

○(平成22~)

※1 平成22年度から学生募集停止。現在は千代田キャンパスに3,4 年生が在学するのみ。
※2 千代田キャンパスには現在運動場はないが,以前は保有していたことがある。
※3 実際には,運動場・空地ともに所有している。
※4 学部,大学院とも通信教育課程しか置いていないため,そもそも運動場は必置ではない。
※5 学部段階については,平成22 年度から学生を募集しているため,まだ2 学年しかいない。
※6 大学院の校地は,大学と共用。

4.平成21年度の特区評価における調査結果

○ 特区を適用している4大学及び3自治体(平成21年度当時)に対して,アンケート及び実地調査を実施。定員充足率が低い,実際には特区を活用していない等の理由で評価が難しい大学を除き,確認した学生の不満の声としては,次のようなものが存在した。

<829 空地>

  • 休息のための場所の確保が不十分であることに対する不満「休息するスペースが少なく息苦しい」「狭い」「空地の代わりに空き教室というのは釣り合いがとれない」
  • 抱いていた「大学生活」のイメージと相違があることに不満「大学生活を送っているというより専門学校に通っているような気がして,あまり良い印象が持てなかった」

<828 運動場>

  • 「気軽に運動ができない」,「部活動やサークル活動等の課外活動が阻害される」といった意見が目立ち,ある大学では,運動系の部活動もサークルも存在しなかった。
  • 災害時に避難する場所がないから不安だといった意見や,作品を作るための撮影に使う野外のスペースがなく不便といった教育内容に関わる意見があった。

○ 一方,特区評価委員会においては,

  • 都市部において,コスト軽減や地の利を生かした教育機会の提供等といった面で効果が大きい。
  • 学外の運動施設活用を通じ幅広い年齢層の地域住民と接する機会を得ることにより,社会人としてのマナー向上など学生の人格形成上も有益である。といった,経済的社会的効果の発現が認められるとした。

5.平成21年度の特区評価の結果を踏まえた対応

○ 平成22年3月25日の構造改革特区推進本部決定(「構造改革特別区域において講じられた規制の特例措置の評価に係る評価・調査委員会の意見に関する今後の政府の対応方針」)において,平成23年度中を目処に,できるだけ速やかに,全国化(特区措置の内容を,特区指定地域に限らず全国で利用可能とすること)を行うことが決定。

・特区における規制の特例措置の内容のとおり,全国展開を行うこと。その際,学生の教育環境等に適切に配慮できるよう,特区の活用事例における状況を踏まえ,弊害の予防措置については,その要件を一層明確化し,必要最小限のものとすること。なお,全国展開の具体的内容については,あらかじめ評価委員会に報告すること。

 

○ 具体的な予防措置の内容については,文部科学省及び中央教育審議会において検討して策定し,特区評価委員会に報告することとなっている。

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