認証評価機関の認証に関する審査委員会(第17回) 議事録

1.日時

平成30年12月25日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省15階15F特別会議室

3.議題

  1. 平成30年度認証評価機関が行う自己点検・評価に係るヒアリングについて
  2. その他

4.出席者

委員

(座長)川嶋太津夫座長
(座長代理)前田早苗座長代理
(臨時委員)市川太一,小林雅之,佐野慶子の各臨時委員

文部科学省

玉上大臣官房審議官,蝦名高等教育局高等教育企画課長,石橋高等教育政策室長  他

5.議事録

(1)  資料に基づき,平成30年度認証評価機関が行う自己点検・評価に関するヒアリングが行われた。
【川嶋座長】  中央教育審議会大学分科会認証評価機関の認証に関する審査委員会を開催します。
    議題として,認証評価機関が行う自己点検・評価について,評価機関に対するヒアリングを行うこととしております。
  それでは,事務局の方から,本日の配付資料の確認をお願いしたいと思います。
【竹中高等教育政策室室長補佐】  配付資料は4種類です。
  資料1-1,資料1-2が大学基準協会からの機関別認証評価事業に関する自己点検・評価報告書,専門職大学院認証評価事業に関する自己点検・評価報告書です。
  資料2が大学改革支援・学位授与機構の認証評価事業に関する自己点検・評価報告書です。
  資料3が日本高等教育評価機構の自己点検・報告書となっております。その他,机上資料として,それぞれの各機関の自己点検・報告書の概要をまとめたもの,並びに,本日のヒアリング,及び,随行者のリストを配付しております。
  不足等ありましたら,お申し付けください。
【川嶋座長】  それでは,議題(1)の平成30年度認証評価機関が行う自己点検・評価に係るヒアリングに入りたいと思います。
  ヒアリングの進め方について,事務局の方から説明をお願いしたいと思います。
【竹中高等教育政策室室長補佐】    大学基準協会,大学改革支援・学位授与機構,日本高等教育評価機構の3機関にお越しいただいており,それぞれ,35分程度のヒアリング時間を予定しております。
  それぞれの機関に対するコメントについては,各機関に通知するとともに,本日は公開の委員会となっておりますので,議事録としても公表させていただきます。
  また,本日の審査委員会につきましては,法令に定められております各認証評価機関の認証に関する専門審査を行っていただくということではなく,各認証評価機関の自己点検報告が平成30年4月より制度化されましたが,各認証評価機関において,自らの視点とは別の視点も取り込みながら評価機能を働かせることも重要であり,中央教育審議会大学分科会の下で認証を受けるに当たっての審査を受けていることも踏まえ,当該機関の自己点検・評価の状況や評価に係る各種規定,体制等について,専門的な御知見を持つ委員から,今後の認証評価の充実に向けて,コメント,アドバイスなりを頂く場としたいと思っております。
【川嶋座長】  事務局の説明について,何か御質問はございますでしょうか。
  それでは,大学基準協会からヒアリングを行いたいと思います。
  あらかじめ委員の皆様には自己点検・評価報告書を確認していただいていると思いますので,その内容等について御質問があれば御発言ください。
  まず  一つは確認として,この評価書の4ページを御覧ください。
  9行目に,「大学評価の結果,『保留』又は『不適合』の判定」とあり,短期大学認証評価の場合は「『期限付適合』又は『不適合』」とあります。
  それから,8ページの表1ですと,大学評価のまとめ,上段のところに「適合」,「期限付適合」,「不適合」,短期大学認証評価の方には,「適合」,「保留」,「期限付適合」と記載されています。
  「保留」及び「期限付適合」については,どのように整理されているのでしょうか。
【大学基準協会】  まず,大学認証評価においては,  2011年から2017年度の第2サイクルのところでは,「適合」,「不適合」,それから,「期限付適合」という形で判定をしておりました。
  2018年4月,第3サイクルからは,「適合」,「不適合」及び「保留」という3段階になっております。
  短期大学認証評価の方は,現在,「適合」,「不適合」,「期限付適合」というこの3段階になっております。
  短期大学は再来年が第3サイクルになりますので,そのときに大学評価の方に合わせて「保留」という3段階の判定になることを考えています。
【川嶋座長】  加えて,御質問させていただくと,各機関共通の課題もあれば,独自の課題もあるかと思います。
  例えば,一つは認証評価の社会的な認知について結構厳しい意見もあるところですが,この意見についてはどのようにお考えでしょうか。
【大学基準協会】  認証評価機関として,また,大学基準協会として,認証評価をより社会的に認知してもらうべく,いろいろな取組をしております。
  例えば,高等学校の関係者,特に全国高等学校進路指導協議会とは定期的に交流しております。今年度も全国の高等学校の進路指導に関わる方々が大学基準協会に集まり意見交換をいたしました。
  また,専門職大学院認証評価において,特にビジネススクールの認証評価では,企業関係者を集めてワークショップを開催しています。
  こうしたワークショップで,認証評価制度の説明をすると,そういうものがあるのかというような意見を頂くことも多々あります。
  このような意見に対して,認証評価制度の社会的認知を高めていくためには,認証評価機関だけで解決できる問題ではなく,大学,文部科学省も一緒になって,この制度の普及に取り組んでいくべきものと考えております。
【川嶋座長】  もう一点,共通の課題ですが,認証評価の効率化について,IT活用を検討することが指摘されていますが,このことについてはいかがでしょうか。
【大学基準協会】  まず,IT化を進めていく目的は,認証評価に係る業務の効率化で,大学側の負担軽減及び大学基準協会側の負担軽減を考えております。
  IT化の一つ目方向としては,まだはっきりした形はできておりませんが,業者とも検討を進めているところでは,例えば資料の提出については全部クラウド上に提出してもらうことなど考えております。
  その際,例えば自己点検・評価報告書についても,ある程度決まった様式に基づいて,そこに書き込んでいくというような形にして提出してもらい,その根拠資料も全部クラウド上に提出してもらいます。
  大学基準協会側も,一定のフォーマットに基づいて,それを評価者が共有して評価所見をクラウド上で作成していきます。
  こうすることで,これまでのような多くの資料を印刷して提出するということがなくなり,ある程度負担軽減になると考えています。
  IT化の二つ目の方向は,その中で,根拠資料をクラウド上に提出してもらうと,日常的にデータを収集し,それを分析していくということが求められていくと思っています。
  データを収集し,それを分析していくということについては,内部質保証システムとも大きく関わってくることですので,大学基準協会としても,根拠資料の作成方法を大学に提示できるようにしていきたいと考えています。
  例えば,学修成果を測定するということであれば,大学側の学修成果に関わるような把握・評価を側面から支援していくような仕組みも考えていかなければいけないと思っております。
【小林委員】  10ページに追評価のことが課題として述べられていますが,これは確かにどこもまだこのような形でやられていないので課題だと思うのですが,一種の認証評価結果に対するペナルティーという意味合いもあるわけです。
  一方で,評価疲れと言われるように,認証評価をやり過ぎているのではないかという意見もあって,その辺,インセンティブとペナルティーをどのように付けるかというのは中央教育審議会将来構想部会でも議論したところですが,認証評価結果が良い大学に対しては,何かインセンティブを付けないと,認証評価の負担が大きいだけなってしまうだけだという意見もあるわけです。
  その辺り,どのようにお考えですか。
【大学基準協会】  認証評価のそもそもの目的を考えたとき,それは規制改革の流れの中で出てきたもので,市場原理という考えが背景にあったと思います。
  このことから,国の関与は謙抑的にするということがその条件にあったところです。
  先般の「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」にもありましたが,評価結果と資源配分との連動性が示唆されました。
  それが認証評価の本来の目的に合致するものなのかどうかというのは疑問です。
  認証評価は質保証をするということと,もう一つは,認証評価結果を通じて大学の改善改革を支援していくということを認証評価の本来の目的として考えたときに,そうした評価を受けることによってそれぞれの大学の質を向上させていくということが重要であって,資源配分と直接的に結び付けることは本来の目的ではないと思います。
  ただ,例えば,認証評価結果で「適合」を受けていることが,競争的資金の事業の申請要件になるということであれば,それは認証評価の一つの活用の仕方と思いますが,認証評価結果と資源配分の直接的な連動は本来の趣旨とは違うと思います。
【小林委員】  一つは,資源配分とのリンクという問題で,それは今御説明があったとおり,もともと想定されてないわけです。
  一方で,例えばアメリカのアクレディテーションは連邦政府の奨学金受給資格を実質的に取れるということがあって,各高等教育機関は非常に熱心に取り組んでいるというようなことがあるわけです。
  今度の給付型奨学金制度については全くそういうことはリンクがなく,認証評価とは全く関係がなく行われているわけですが,そういうことも考えられるのではないかということ考えています。その辺りはどうですか。
【大学基準協会】  アメリカと日本の場合は,機関補助と個人補助の違いはるものの,そういう奨学金と連動させるというアメリカの方式はある程度参考になると思います。
  今回の答申は,いわゆる法令違反の場合は,資源配分と連動させて,恐らくそこにペナルティーという考え方があると思いますが,そこは違うのではないかと思っています。
  奨学金によってインセンティブを付けていくというのは一つ方法かなとは思います。
【小林委員】  もう一点,インセンティブという意味からすると,評価期間の長さです。
  例えば,いい認証評価結果を受けた場合にはある程度認証評価の受審項目を免除するなど考えられるのではないでしょうか。
  例えば,5年なり7年なり6年なりやっていても,変わらないような項目があるわけです。
  そういうところは免除するとか,あるいは,財務については別のデータを出すことで代替することができるようにするというようなことも2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)で考えられていますが,その辺りはいかがですか。
【大学基準協会】  その認証評価結果について,例えば認定の期間を長くしたり,短くしたりとか,次の認証評価までの機関を短くする,あるいは,長くするという方法はあり得ると思います。
  一方で,その場合は,認証評価機関間で評価の在り方に一定程度の共通化を図る必要があると考えています。
  例えば,ある認証評価機関を受けた場合,ある程度「適合」を受けやすい。
  あるいは,別の認証評価機関を受審した場合,「適合」をなかなか受けられない,厳しい評価になっていく。
  そういった場合,その次の認証評価を受けるときに影響してくるということが想定されますので,認証評価結果に基づく次の認証評価の申請時期を考える場合,公正性,公平性の観点に留意が必要です。
【川嶋座長】  社会の認知とも関連しますが多くの認証評価機関においては,第2サイクルまでの認証評価においては,かなりコンプライアンス的なところが,関心あるところだったと考えています。
  このことについてはコンプライアンス的な要素は最低基準として,教育の質向上やそれぞれの大学が長所を伸ばして,本当に実質的に認証評価の役割,機能を向上させていかなければならないと思いますが,どの辺りに原因があるというふうにお考えですか。
【大学基準協会】  認証評価に関わる評価者の方について,大学基準協会においては,大学から推薦された識見を有する者を評価者として,実際に評価を行っていただいています。
  そのため,コンプライアンスに関わる部分というのは,大学を共通的に評価できる一つの指標にもなってくるため,評価しやすいだろうと思います。
  それぞれの大学のミッションなり,理念,目的に即した評価を実施していくということになると,それは評価者にしてみればかなり勇気の要ることで,実際に,大学のミッションに即して評価するということになると,その大学の実際の事情なり,そういうところも斟酌(しんしゃく)して評価をしていかなければなりません。
  そこはなかなか難しいことでもありますし,思い切り踏み込まなければならないこともあるため,なかなか難しい問題と思います。
  しかしながら,大学評価の基本的な原理としては,それぞれ大学のミッションに基づく評価ということになるわけですので,そこは思い切って評価をしていくべきだろうと考えています。
  第3サイクルの大学基準協会の評価の特徴としては,内部質保証をより重視していくということ,これは学習成果を重視することを含めてですけれども,もう一つは,大学の理念,目的というものを一層重視した評価を徹底していくということにしているところです。
  大学基準協会の場合,第1サイクル,第2サイクルともに,大学のいわゆる長所やすぐれた点というところの評価は厳格に実施していました。
  恐らく,他の認証評価機関と比較しても,1大学に付される長所の数はそれほど多くなかったと思います。
  しかしながら,今期は,それぞれの大学の個性・特徴をより尊重した評価をしていこうと考えており,恐らく例年よりも長所が付されている大学が多いと思います。
  それは今期から,大学のいわゆる理念・目的というのをより重視していこうということを方針として掲げたものですから,その成果は今期の1年目から出ていると思っております。
【川嶋座長】  内部質保証について,かつての第1サイクル目は,学部ごとに評価されていました。
  第3サイクルは内部質保証の重視ということで,大学がそれぞれの学位プログラムごとの質保証をきちんとやっているかどうかということですが,そういう観点からすると,もう今後,第1サイクルのように,学部ごとに見ていくというようなことは考えていないということで,そこはもう大学に委ねるということですか。
【大学基準協会】  今後のことはよく分かりませんが,まず,第1サイクルから第2サイクルに入るときに,川嶋座長の御指摘のとおり,学部,研究科単位で分科会を設置して,ある意味,分野別認証評価的なことをやっていました。
  この学部,研究科単位の分科会には多大な労力を要していたわけです。評価者だけでも600人から700人を擁し,7月下旬から8月下旬の1か月間はほぼ毎日,分科会を開催していました。
  また,実地調査もそれぞれの大学に設置される全てのキャンパスを訪問していました。このように第1サイクルの評価システムは,大学基準協会にとってかなり負担のかかるものでありました。
  大学側もそのための資料作りも大変だったと思います。
  こうした負担軽減が必要であることと,そもそも大学というのは,自主,自立に支えられた高等教育機関である以上,自らの教育の質というものは自ら保証していくということがこれは大前提になります。
  したがって,それぞれの学部,研究科のプログラムというのは,第一義的に自ら検証するというのが大学の責任ということで,第2サイクルから,その内部質保証というものを軸に評価を進めてきました。
  まず,学部,研究科の評価というのはそれぞれの大学の中で実施し,そして,その学部,研究科の評価において,何らかの問題があった場合は,まず大学でどのように解決をしていくのかということを示していくというのが内部質保証の本質だと理解しています。
  第2サイクルで,内部質保証を重視するとしたわけですが,内部質保証の理解が大学側にも,評価者側にも少なかったように思います。
  それで,第2サイクルの途上で,大学基準協会は『内部質保証ハンドブック』というものを作って,各大学にそれを提示して進めてきたわけです。第3サイクルに入りまして,法令において,内部質保証というのは重点項目に位置付けましたが,大学基準協会としても,より内部質保証を重視していこうと考えました。
  第2サイクルは,どちらかというと,内部質保証システムを構築するということを目指してきましたが,第3サイクルは,そのことを前提に,システムがいかに有効に機能しているか,ここを評価していこうということで,今現在,進めているところでございます。
【川嶋座長】  続けて,分野別認証評価についてもかなり課題が多いと考えています。新しい分野の専門職大学院が設置されることに伴って認証評価機関を作らなければならないという現状で,そういうことも書かれていますが,これについてはいかがでしょうか。
【大学基準協会】  大学基準協会おいては,現在7分野で専門職大学院の評価を実施しています。
  あと2分野の認証評価機関が立ち上がってないということで,現在,大学基準協会は,その2分野を有する大学の依頼を受けて,その認証評価機関になるべく検討を進めているところです。
  したがって,全部で9分野の認証評価をやることになるわけですが,そのうちの半分くらいは,1分野で1大学院のみの設置という状況です。大学基準協会以外でも,1分野1大学院の評価を行っている認証評価機関も立ち上がっていますが,人的,物的,財的な面で運営に大変苦慮されているのではないかと思います。
  その辺のことが十分議論されないまま,この専門職大学院の認証評価というものが進んできたように思います。
  大学基準協会も,過日,この専門職大学院の在り方について,文部科学省の方にも意見書を提出いたしました。
  1分野1専門職大学院の認証評価を立ち上げていくということは,大きな負担が伴うことになりますので,もう少し分野を大括り(おおくくり)にして認証評価はできないだろうか。
  例えば,大学基準協会は公共政策,ビジネススクール,知的財産などのいろいろな分野の認証評価を実施していますが,それらの分野を一つの分野として大括り(おおくくり)に捉えていくとか,また,機関別認証評価の中で,専門職大学院のところをより重点的に評価するとか,制度的に工夫・見直しが必要であると思います。
  先ほど,分野別認証評価は実施可能かということですが,例えば専門職大学院の部分だけでも,機関別評価のところで少し重点的に評価をしていくというやり方であれば,ある程度の大学側,評価機関側の負担は軽減されていくのではないかと考えています。
  一方で,評価の質を落としてしまうということになってはいけませんので,そこは評価の質をしっかりと確保しながら,そうした仕組みを考えていく必要があろうかと思います。
【市川委員】  もともと,認証評価制度が始まる頃から,評価委員を担当したこと,実際に評価を受けるために,評価の準備を2度ほどしており,評価も一度受けている者として,思うのは,よく今日ここまで多岐多様な取組をされているということです。
  また,先ほどインセンティブということもありましたが,第2サイクルのときに,すぐれた取組をしたということで新聞紙上に取り上げていただいたこともあります。
  こういう経験をした者としては,大学側が認証評価制度をどのように活用していくのかという点が大切であると思います。
  また,認証評価のために各大学が費やしている労力は,言うまでもなく,大変大きいものです。
  要は,この認証評価制度をどのように各大学で使っていくのかということだろうと思います。
  この受審を受けるために,少なくとも前年度ぐらいからずっと準備をして,それを機会に自己点検もしていくということに鑑みれば,一定の意味があるのではないかと思いました。
  一方,法科大学院のように,いくら評価が良くても閉じるということがあって,評価制度の意義について考えさせられることもありました。
  それから,もう一つは,やはり改めて各認証評価機関の取組を自己点検という形で出されているのを読んで,非常に評価機関の評価の仕組み,内容が多様であると感じました。
  それで,7年間という期間なので,最初に受ける年と最後に受けるところというのは随分評価される内容について変わるのではないかと考えております。
  それから,15ページの「おわりに」の辺りに,第3サイクルの大学評価は今現在進んでいるところで,いろいろ改善に着手しているものもあれば,依然として検討課題にあるものとか,直ちに対応が難しいものもあるというふうに書かれています。
  そうすると,受ける年,あるいは,受ける順番とかによって,認証評価の結果について差異が出てくるのではないかと,というようなことも思います。
  最後に追評価のことですが,結局,「不適合」,あるいは,「期限付適合」の受審結果が出た場合においても,追評価をするということは受審する大学側に任されているという理解でいいのでしょうか。
【大学基準協会】  御意見のとおりです。
【市川委員】  そういう意味でいうと,この認証評価制度そのものが,自己点検という色彩をすごく持っている印象を持ちました。
  質問ですが,この8ページに表においては,「期限付適合」は2011年度に3件あるわけですが,その後は2017年度まで「期限付適合」の判定が出ていません。
  受審する時期での公平性の観点において,同じ認証評価を受けるといっても,第3サイクルの最初の年に受けるのと最後の年に受けるのとは評価の基準がやや異なるような感じもします。
  その辺はどのように考えればいいのでしょうか。
【大学基準協会】  御指摘の「期限付適合」,あるいは,「不適合」になる最低ラインというのは,一つのサイクルの中では大きく変わりません。
  同じ水準で評価をしております。
  ただし,一つのサイクルの中で,例えば法令が変わったといった場合においては,瞬時に対応していくということが必要だということと,それから,大学基準協会で一番留意しているところは,常に情報を公開していくということです。
  特に,評価に関わる取扱いというものについてはなるべく公表しています。例えば同一サイクルの1年目,2年目に用いていた評価の取扱いが,3年目からは新たな法令改正に対応しなければならないということであれば,そのことは事前に,前年度の説明会などで説明をしております。
  すなわち,情報を常に公表していくことで,ある程度の不公正感はなくしていこうというように努めているところでございます。
【川嶋座長】  第2サイクル終わりまして,いろいろ課題等も指摘していただいていますが,大学基準協会においては,先ほどからの議論のように,大学,短期大学,専門職大学院,それから,審査する大学についても,少ないですが国立大学,公立大学,私立大学,それから,会員制も取られていて,非常に守備範囲が広いものと理解しています。
  そういう点から,一つ,運営上の問題と,それから,先ほど御指摘,文部科学省にも提言したという説明がありましたが,認証評価制度自体の今後の在り方みたいなことについて,もし御所見があれば,伺いたいと思いますがいかがでしょうか。
【大学基準協会】  認証評価制度というのは我が国の質保証制度の一つとして,これから充実をしていく必要があるだろうと思っています。
  そういう点からいえば,評価機関の質をある程度高めていかなければなりません。評価機関もやっぱり切磋琢磨(せっさたくま)していく必要があります。
  また,評価機関についても,今日は,ヒアリング,意見交換という場ではありますが,今後は定期的に評価機関に対する第三者評価というのを実施していく必要があるのではないでしょうか。
  その第三者評価の結果についても社会に公表していくということが評価機関の質の維持向上にもつながっていくだろうと思っています。
  もう一つは,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」において,「適合」,「不適合」の認定を法令上義務化していくということですが,基本的にそれは賛成です。
  一方で,先ほど述べたとおり,「適合」を受けることが目的化してしまっては問題だと思います。
  そのためには,認証評価機関が出す「不適合」の基準をどのようにしていくのかということを,認証評価機関間,あるいは,文部科学省も入っていろいろと協議しながら,ある程度の共通化をしていくということも必要ではないでしょうか。
  そうしなければ,「適合」を受けることが目的化されて,「適合」を受けやすい評価期間に安易に流れていくというようなことがあっては決していけません。
  その場合は,質保証の制度も形骸化していくのではないかと思います。そういう点も今後の課題ではないか思っています。
【小林委員】  最後のところに,研究所を設立されるということについて,これまで,いろいろな委員会で非常にすぐれた研究をされてきたと思いますが,やはり委員会形式というのは限界があると常々思っています。
  例えば,シンクタンクみたいなものも必要だということを,ほかの機関を含めて,思っているのですが,その辺り,どういう構想なのか,もう少し具体的に伺えませんでしょうか。
【大学基準協会】  大学基準協会は,これまで必要な調査研究については,理事会の承認を取って,委員会を立ち上げ,調査研究を行い,その結果を理事会に報告するということをしていました。
  しかしながら,評価機関の評価の質を高めていくためには,常に研究ということが必要になってくると考えています。
  研究所を設立し,研究所に一定の権限を与えることによって,意思決定も早まること,具体的に言えば,研究所には特に大学基準協会の正会員大学の研究者の方に研究員として入っていただき,そこでいろいろ協議をして,どういう研究が必要なのかということも研究所の中で議論し,そこに一定の権限を与えて,また,予算も付けて実施していくということなれば,例えば評価システムの改革も迅速に進められると思っています。
  また,理論的に裏打ちされた評価システムを構築する上でも,評価のための基礎的な研究は極めて重要であります。
  そのような趣旨で,今回,研究所を設立しました。
  これまで大学の評価を含む高等教育の諸問題については,「高等教育のあり方研究会」というところで議論していましたが,いずれはこの研究会を研究所にしていこうという構想はありました。
  また,今回,大学基準協会の永田会長も強く希望しており,今回,研究所を設立したという経緯でございます。
【市川委員】  会員制について,認証評価機関によって,会員大学だけで成り立っているところもあれば,会員制と認証評価を受けるということが別になっているところもあると思います。
  財政的な面で見ると,認証評価を受けるのと会員制は別ということもいいと思いますが,大学基準協会としては,この二つをどのように考えておられるのでしょうか。
【大学基準協会】  認証評価制度に入る前から,大学基準協会は会員制を取って評価を実施してきた,つまり,会員制と評価というのをリンクさせてきましたが,認証評価制度以降,それを切り離して進めております。
  その結果,会員から脱退する大学も多く見られたわけですが,重要なこととして,組織を運営していく上で,会員制を取らないと組織を運営できないというのが現実です。
  会員制を取ることによって,会員に対するこれからのメリットをどのようにもたらすのかということを,これまでもずっと検討はしてきていますが,その会員制をより充実させていくことが会員大学の質の向上にもつながっていくだろうと考えており,様々な取組を進めているところでございます。
  例えば,会員大学の教職員を集めていろんな勉強会を開くとか,あるいは,会員限定のシンポジウムを開くとか,いろいろ取り組みながら,会員大学の質の向上に貢献していくことが会員制の維持につながっていくと考えています。
  会員制度は大学基準協会にとって,組織運営上の重要な制度となっております。
【市川委員】  公的な支援を受けることについてはどのように考えておられるのでしょうか。
  このことの考え方は認証評価機関によって多様なように思われますが。
【大学基準協会】  大学基準協会は,戦後設立されて以降,例えば運営費に関わる支援というのは一度も受けてないです。
  例えば,科学研究費補助金や文部科学省の委託研究費はこれまでも受けてきました。また,文部科学省の委託事業として特色GPの審査等を行いましたが,そのための事務経費としての補助金は受けましたが,大学基準協会の事業運営や組織運営のための補助金は一切受けておらず,それは今後も堅持していくべきだろうと思っています。
  自立した機関として,国とある程度一線を画して活動していくことが大学基準協会の本来の姿だと思っております。
  一方で,実際に認証評価をしていく上で,先ほど述べたとおり,1分野1大学院で評価をするとなると,これはもう完全に赤字です。
  ですから,そういうことがないように,繰り返しになりますが,例えば分野を大括り(おおくくり)にしていくとか,あるいは,機関別認証評価のところで専門職大学院を少し充実させて評価をしていくとか,そのように考えていく必要があるだろうと思います。
  公的なお金を受けるというのは今のところ考えておらず,理事会でどのような判断がなされるのか分かりませんが,受けない方がいいのではないかと考えています。
【川嶋座長】  これで大学基準協会のヒアリングを終わりたいと思います。

(大学基準協会退室)

【川嶋座長】  続きまして,大学改革支援・学位授与機構のヒアリングを行いたいと思います。

(大学改革支援・学位授与機構入室)

【川嶋座長】  それでは,ただいまより,大学改革支援・学位授与機構の自己点検・評価報告書に関するヒアリングを始めたいと思います。
【市川委員】  まず,アンケート調査というものがこの事業の評価といろいろ結び付いているように思います。
  それぞれの大学,高等専門学校,短期大学と分けて見ると,高等専門学校のアンケートの数字は90%以上ですが,例えば法科大学院は75%ぐらいという数字が出ています。
  そうすると,アンケート結果が,90%台,70%台と差あるので,アンケート調査「だけで」この認証評価機関のしている事業が妥当なものであるというのは,「だけで」というのは言い過ぎかもしれませんが,実施している事業が,アンケート調査をもって妥当であるとはならないのではないかと思いましたが,その辺はいかがでしょうか。
【大学改革支援・学位授与機構】    御指摘のとおりです。
  法科大学院の場合には,今は第3サイクルの途中という時期ですが,第1サイクルの終期から第3サイクルにかけて,法科大学院制度自体が大きく変わっていくというところがありました。
  それに併せて,毎年のようにというのは言い過ぎですが,かなり頻繁に認証評価基準そのものを変えているということがありました。
  ただ,それが追い付いていない場合や,そのタイミングに適した評価ができたかということについては,判断が難しいところがあったということがあります。
  アンケート調査自体は,経年変化を見るという観点から,大学は異なりますが,同じ質問を繰り返しているということがありますので,まさに御指摘のとおり,単純に法科大学院に関しては,アンケート結果というのを数量的にただ高い,低いだけで判断することは適切ではないと強く認識してきました。
  その結果,まず,一つは,その制度との間の相対性というものを評価するということと,それから,もう一つは,大学,対象となっている法科大学院のいろいろな種類が,中には募集停止したような大学院もあり,まさに定量的には評価できないので,専らアンケートのときに取っている自由記述の中で挙げられている意見というものについて詳細に検討して対応するということが,そのアンケート絡みでは実施してきたところです。
  それ以外にも,評価委員の方々は基本的に法科大学院関係者が多いため,その評価委員の方から様々な形で意見聴取をして,いろんな意味での微調整を加えてきましたので,特に第2サイクルの間には,第1サイクルから第2サイクルにかけて,微調整の連続であったという形になっています。
  それがそのアンケートの数字に反映する段階に至ってないというのは,先ほど申し上げたように,アンケートは定型的な質問を毎年繰り返したことによるものだというふうに考えています。
【市川委員】  もう一つ,最後の辺りに,法科大学院については,手数料収入を充てることを原則としているが,中央教育審議会の議論において,より丁寧な認証評価結果が求められていることから,手数料収入に加え,機構の運営費交付金を充当しているという記載がありますが,この辺については,どの認証評価機関においても財政的に苦しい状況があるわけですが,機構としてはやむを得ないと考えておられるのでしょうか。
【大学改革支援・学位授与機構】  基本的には,法科大学院の認証評価においては,記載しているとおり丁寧な評価というのを求められています。
  丁寧にやるというのは基本的に人手が掛かるということで,そこから発生する費用に対しては,責任を持って評価するという立場らかすると,負担してもらいたいと考えていますので,現在はこういう対応をしているということです。
【佐野委員】  3点ほどお伺いしたいと思います。
  まず,機関別認証評価の方の評価方法の記載の中で,訪問調査を行うという中に,卒業生に対しても必ず実施しているという文言がありますが,この辺の視点,どういった視点で訪問調査,ヒアリングをされているのかということ,また,どうやってその卒業生を選択されているのか,その点について伺います。
  それから,もう一点,実施状況に関して,こちらは評価担当者の研修に関してですが,機構については,国公私立,全てもちろん対象ですが,私立大学については,5ページの記載を見ますと,平成23年,27年,29年ということで,非常に飛び飛びで,少ない数の受審となっています。
  こういった中で,機構におきましては6時間の研修を行っているという記載がありますが,私立大学,当然のことながら,国立大学,また,公立大学もそうですが,組織体制は違いますし,運営の方法も違うわけですが,この辺,どういった形で研修を行っていらっしゃるのでしょうか。
  加えまして,先ほど,市川委員の御質問にもありましたが,機関別認証評価の中でも,6ページの記載において,「民間認証評価機関の手数料も考慮し」という記載があります。
  これも「考慮し」ということで,評価手数料を引き上げて,評価手数料で全て賄っているという記載があり,これはそれまでの評価手数料で認証評価ができていた一方,民間が高いのでそれに合わせたというようにも読めてしまいます。
  その辺の財政的な判断について,3点目,質問させていただきたいと思います。
【大学改革支援・学位授与機構】  まず,第1点目について,卒業生の面談の観点については,在学生にも聞き取りを行っていますが,第2サイクルの認証評価,我々の行う機関別認証評価においては,基本的に学修成果というものを重視するという考え方を取っています。
  学修成果に関しては,当然のことながら,指標的に捉えられるものもある一方で,それ以外に,実際の学生の意見も確認することが必要と考えられています。
  実際,実地調査の実施そのものは細目省令でも求められていることですが,基本的にはそれとは独立に,学修成果に関して実際の学生の意見を聞くというのがまず第1の目的です。
  つまり,卒業生の場合には,特に大学で学んだことが社会においてどれだけ役立っているのかということについて,実感や印象に過ぎないといえばそれまでですが,エピソード的なことであっても,十分に実態をある程度反映することができるだろうということで伺っています。
  どういう人選をするかということは,基本的に大学に委ねていますので,こちらの方からは,人選される人たちのバランスを考慮するようにお願いしているだけです。
  バランスというのは,性別であるとか,それから,複数学部ある場合には学部のバランスといったようなのをお願いしております。
  しかし,当然のことながら,夕方実施することにしていますが,卒業生の方である特定の時間に来られる方というのは非常に少なくなってしまいますので,卒業生の方の人選に関しては,来ていただけるという条件が最大になってしまっていることも事実ではあります。
  しかしながら,実際に訪問調査の際に,卒業生を含めて在学生に面談すると,大学が自己評価書で記載していなかったことを,しばしば学生,卒業生から意見として頂くことが多々あり,それを基本的にはもう一回大学の方に確認し直して,最終的な評価に結び付けるという形にしています。
  大学もやはり比較的きれいな文章を作ってしまうというところがありますが,卒業生,在学生,特に卒業生の場合にはある意味でしがらみが切れているので,率直な意見を伺えて,最終的な報告書にかなりそれらの意見も反映されていると思います。
  もう一点は,学修成果という観点だけではなく,大学に対する不平不満というのを率直に述べてもらうという機会とも考えております。
  そういう意味で,在学生に対しては,現在どういう不満があったか,卒業生に対してはかつてどんなことをしてほしかったかということについて話を聞くことで,実際の自己評価書の中に大学が記載していなかった事項のうち,重要と思われる事項が抽出できることがございますので,なかなか意義のある方法,取組であると考えています。
  観点と人選に関しては,以上です。
  また,研修の際の私立大学への対応ですが,基本的な考え方は,日本の大学のあるべき教育研究,主として教育の状況について評価を行うということが機関別認証評価の目的です。
  要するに,国立大学,公立大学,私学大学の設置形態の違いで判断するのではなく,なすべき教育をしかるべき形で行っているかどうかというのを点検するということになりますので,設置形態の違いが認証評価に影響を与えるような話は一切しないということが,むしろ研修では強調するところです。
  例えば,財政面で苦しいことを理由に良しとするのではなく,教育の状態を見て判断をするべきところと考えています。
【佐野委員】  教育面についてはもちろんおっしゃるとおりだと思います。
  一方で大学改革支援・学位授与機構が決めていらっしゃる基準の中には財務もありますし,情報公開その他,事務組織などについても基準に入っていますので,評価者研修におけるその辺の違いはいかがでしょう。
【大学改革支援・学位授与機構】  御指摘の内容については,評価者研修の中でもちろん基準を全て扱いますが,実は財務に関しては,財務の専門家である公認会計士の方に専門部会という形でお願いすることを通例としてきました。
  なお,本年度は校数が少ないため,専門部会という形で開催をしておりませんが,設置形態に関わらず,国立大学法人私立大学の学校法人を見たことがある先生ばかりにお集まりいただいています。
  それぞれに応じてどういう評価をするべきかということについて,特に財務については,内部資料ではありますが,分類した対応方法を作成し,評価をしていただくということにしております。
  これは専門家の合議によって決定するという形になっています。
  管理運営に関しましては,これも同じように,国立大学法人,公立大学法人,学校法人ごとに,基本的にどういう基本的な組織になっているかということまではお話しして,大学ごとの個別具体については,それぞれの大学ごとにお答えを頂くということで,基本的な枠組みについての研修を行うにとどめております。
【川嶋座長】  財務について,3番目の手数料引上げについてはいかがでしょう。
【大学改革支援・学位授与機構】  手数料引上げについては,様々な経緯がありますが,最終的には,同じ水準にすることを基本的な考え方としています。
  一方,実際問題としては,手数料の計算の仕方が難しく,例えば会員制を取っているような認証評価機関の場合には,毎年の会費というのがあるところです。
  大学改革支援・学位授与機構においては会費制を取っていないので,その1回の評価のためだけに1回の手数料を頂くという形になっています。
  基本的には,大学の方から各認証評価機関を見たときに,どの評価機関を選んだとしても,総額として大差はないという形で修正したというのが基本的な考え方となっております。
【小林委員】  大学改革支援・学位授与機構の大きな特徴として,独立行政法人という形態をとっていること,また,学位授与を別の業務として行っていることがあると思います。
  まず,運営費交付金で運営されていることについては,先ほどの大学基準協会においても質問が続いたと思いますが,独立行政法人の枠組みということについてはどのようにお考えですか。
  認証評価を行う上で,この独立行政法人の枠組みというのはメリットとデメリットの双方があるかと思いますが,その辺り,どのようにお考えですか。
【大学改革支援・学位授与機構】  当然,大学改革支援・学位授与機構は独立行政法人でありますので,文部科学大臣から指示された中期目標に沿った中期計画によって運営をしております。
  そういう意味では,政府の意図というものがある程度反映しやすい仕組みであろうと思います。
  このことを踏まえると,どうしても認証評価全体を改善していくための先導的役割を果たさなければいけないということがありますので,文部科学省と連携をして,先導的役割を果たすという意味では,独立行政法人という機能は一つ有意には働いていると思います。
  一方,認証評価という観点においては,これは当然,ピアレビューを中心とした仕組みであるというところは前提として守らなければいけないと思っています。
  先述のとおり,政府に近い独立行政法人ではありますが,独立した認証評価機関として,他の認証評価機関と同じように,運営していくというところを徹底することによって,今申し上げたデメリットになりかねない部分のところもしっかりケアしていく必要があると思っています。
  評価委員の体制,また,執行していく上での管理運営組織のところにも,大学に近いような体制を組み,大学関係者や各省の有識者の方々にお入りいただいて,運営をしているという状況もありますので,そういったことからも大学の自主性をしっかり尊重しながら,認証評価を運営していけるように,体制というのは維持していくつもりでございます。
【小林委員】  運営費交付金の措置を受けているということで,認証評価以外の業務として,学位授与といった部分もあります,そのほかの業務もあるわけですから,その辺りの説明責任というのがあるのではないかと思っています。
  先ほど手数料の話がありましたけれども,事業の全てを運営費交付金で賄っているわけでもないですし,大学改革支援・学位授与機構の財務をはっきりさせる必要があると思いますが,その辺り,いかがでしょうか。
【大学改革支援・学位授与機構】  独立行政法人制度との関係もまたそこは出てきますが,先ほど御説明させていただいたように,一時期,特に民業圧迫の観点から,他の認証評価機関との関係において,大学改革支援・学位授与機構運営費交付金の措置を受けていることによって,優位に働くようなことがあってはならないという指摘を受けておりました。
  それを踏まえて,特に業務に関して言えば,先ほどの法科大学院については若干まだ未達成の部分はありますが,機関別認証評価は独立して運営していることをお示しできる状況にしています。
【小林委員】  認証評価とは少し異なる観点かもしれませんが,以前ありました国立大学財務・経営センターについてお伺いしたいと思います。
  これは統合したということですが,先ほど,大学の財務についてどの程度その評価に入れるかという話もありましたけど,この辺りは,国立大学財務・経営センターの業務といいましょうか,その辺りはどのようになっているのでしょう。
【大学改革支援・学位授与機構】  現時点において,国立大学財務・経営センターは大学改革支援・学位授与機構として一体の組織となっているわけですが,貸付け業務や交付事業等といった,従前,国立大学財務・経営センターがやっていた業務を行うとともに,御指摘をいただいたとおり,両者が一つの組織になったわけですので,両者の強みを活用して,何か新しい事業展開ができないかというところを調査研究等も含めて,進めているところではあります。
  一方で,委員も御承知のとおり,財務情報と教学面の認証評価を直接的にどう結び付けるかというところに関しては,これは大学関係者の理解ということも含めて,慎重に扱わなければいけない部分もあるだろうと思っておりますし,文部科学省の方針というものもよくお聞きをしながら進めなければいけないところだろうと思っております。
  一体化をすることによって,様々なことができる体制が構築されたと思っておりますが,当然,大学改革支援・学位授与機構というその名前にあるように,まず,大学自身がどう変わっていくかということをいかにサポートできるかという業務をしっかりやっていくことが我々の使命だと思っています。
  そのことを考えますと,今申し上げたように,大学がどうしたいのか,大学がどのように考えていくかということをしっかりと受け止めて,業務は進めていきたいと考えており,そこは誤らないようにしたいと思っています。
【小林委員】  御説明いただいた事情については,大学改革支援・学位授与機構と国立大学財務・経営センターの双方で,客員教授をしておりましたので,よく分かります。例えば『国立大学の財務』という大きな冊子があります。
  これはほとんど唯一の資料で,現在でも続いていると思いますが学位授与に関して言いえば,やはりそういう機関というのは日本には全国のことを見渡せる機関というのは大学改革支援・学位授与機構しかないわけです。
  ナショナル・インフォメーション・センターを作るという構想もあるわけですから,やはり全国の大学を国立大学,公立大学,私立大学を含めて見渡せる機関ということでは非常に重要だと思います。その辺り,よくお分かりだと思いますが,そういう形で進めていただければと思っています。
  御説明いただいた内容において,例えば教学マネジメントについては,今度,中央教育審議会の下に委員会を作って,大学情報の公表をどのように進めるかといった議論をしておりますので,個人的な意見ですが,その辺りを見て,積極的に動いていただければと思います。
  気になる点として,その自己点検・評価報告書で,実施状況は非常によく書かれているのですが,課題が余り書かれていません。
  一般論として,こういった報告書の最後は課題で終わるのではないかと思います。課題の記載がないということは,全く問題がないと認識しているのか,やはりこういうことが問題であるということを記載していただきたいと思っていたのですが,その辺り,課題はどのようにお考えですか。
【大学改革支援・学位授与機構】 様々なレベルで課題というのは考えられるわけですが,まず,なぜ課題が記載されていないのかということについては,大学機関別認証評価及び高等専門学校機関別認証評価がちょうど第2サイクルから第3サイクルに掛かるところですので,第2サイクルの実施を通じて認識された課題が解決しており,課題の記載がないという書き方になっていると思います。
  第2サイクルの実施を通じて認識された課題がどのように改善したかということが記載の中心になっているので,第3サイクルを実施することによって次の課題が明らかになってくるという状況と考えています。
  また,法科大学院に関しては,第3サイクルの半ばとなっておりますが,質的な実施というのは昨年度,今年度から開始されたということになっているので,課題の洗い出しを行う中間検証を来年度,計画しているところです。
  しかしながら,目の前にある問題を解決するという意味では,ほとんど現段階では解決済みということが多いわけですが,認証制度そのものを問題にすべき課題というのが出てきていると考えております。
  一方,そこの分析は,様々な御意見がありますので,今ここで申し上げるのは比較的個人的意見であることを御承知おきいただければと思います。
  まず,一つは,比較的似たようなやり方で第1サイクル,第2サイクルをやって,第3サイクルに掛けても,内部調書を評価対象とするという点については大きな変化をしましたが,学校教育法第百十条第二項に規定する基準を適用するに際して必要な細目を定める省令の作り自体は余り大きく変わっていないということがあります。
  第1サイクル,第2サイクル,第3サイクルと似たようなことを行い,日本の大学の教育の質の保証をしてきた一方で,本当に同じことを更に続けてやらなければいけないのかということが考えられると思います。
  つまり,認証評価だから,当然,教育の諸要素についてピアレビューをするということで,日本の教育,高等教育の改善というのは本当に可能になるのかどうかというようなことをやはり本格的に考える時期であると考えています。
  10年間同じことをやってきて,その結果,いわば基準に満たない大学や「不適合」と言われたような大学が非常にわずかな数であるということで,つまり安心していいのかということです。
  もし視点を変えれば,もしかしたら問題が出てくるのかもしれませんし,あるいは,より,もう少し上のレベルを狙うといったような形の評価をしなければならないのかもしれませんし,その辺りについて,しっかり,関係者を一堂に会して考えていかなければならないということが大きな課題として残っていると思っています。
  その中には,例えば,いつまでピアレビューというやり方をしていていいのかということもございます。
  結果的にピアレビューを一生懸命やろうとすると,大学の教員に依頼せざるを得ないため,ただでさえ仕事が多いと言われている大学教員の負担増というものに対して,ピアレビューを更に強化するというのでは何か違和感を感じているところということが一つあります。
  それから,その基準というのも,各機関においてほぼ似たような基準を立てて評価してきているわけですが,本当に現状において見落としたものはないのだろうかというようなことがあります。
  あえて申し上げさせていただくと,大学改革支援・学位授与機構の第3サイクルにおいては,これまで学生支援の一部として捉えられていた学修支援を,教育課程の実施の枠の中でちゃんと評価するということを試みてみました。
  実際に大学の話を伺うと,ただ授業をすればいいということではなく,学生の面倒を丁寧に見なければ,その学修成果の達成というのはなかなか難しい状況になっています。
  やはり教育課程の一部として学修支援などを考えなければならないといったようなささやかな改善はしてみたところ,大学設置基準の考え方に戻ってしまうのかもしれませんが,基本的な考え方というのについて,もう一度考えなければいけないということが,第2サイクルまでの評価を通じて出てきたことと思われます。
  今述べたとおり,大きな課題があることは承知している一方で,さすがに大きな課題はこの報告書に書くことではないと考えています。
  最初の課題がないのかという御質問に対して,現状の課題はなく,ちょうど第3サイクルで解決したという認識をしております。
【市川委員】  言いたいことは,一つはピアレビューでいいのかということと,それから,今,学修支援の問題が一つ新しい課題としてあるというお答えの認識でよろしいでしょうか。
【大学改革支援・学位授与機構】  回答の意図としては異なります。
  まず,後者については,解決するための試みをしたところです。前者について,ピアレビューでいいのか問題とするのは,認証評価制度の根幹でもあるため,さすがに簡単には変えにくいということがあり,関係機関も含めて議論していただきたいということです。
  一つは負担増ですが,もう一つは,やはりピアレビューの持つ性質である大学同士の評価というものに対する社会的な応答ができるかどうかということに関して,実際に大学改革支援・学位授与機構の認証評価委員会の中でも,委員の発言には,そこのところは十分に注意するようにということがあります。
  検討しなければならない課題である一方,認証評価制度全体に係る大きな課題でもありますので,今回の報告書に書けるような課題ではないということです。
【川嶋座長】  これで大学改革支援・学位授与機構の自己点検・評価報告書のヒアリングを終わりたいと思います。

(大学改革支援・学位授与機構退室)

(日本高等教育評価機構入室)

【川嶋座長】  これから日本高等教育評価機構のヒアリングを行いたいと思います。
  それでは,2点ほど各機関に共通して聞いていることで,一つ目は,認証評価に対する社会からの捉え方ということについてはかなり厳しい御意見もあるところですが,これについてどうお考えでしょうか。
  また,二つ目は,評価疲れについて,受審する大学側においても,認証評価機関側においても大変だということは,毎年御意見としてお伺いするところですが,このことについては何か工夫をされているのでしょうか。
【日本高等教育評価機構】  認証評価制度は平成16年から始まり今年で15年目を迎えますが,認証評価がどのようなことを行い,どういった効果があるのかということは,高等学校とか企業の方々においても認知度はまだ低いのではないかと感じています。
  今までのところは,まだ,受審する大学としては第2サイクルを経たところですが,大学内部の整備という点においては,ある程度効果があったと思います。
  一方で,もう少し日本高等教育評価機構においても,第3サイクルに向けて,評価結果の出し方に関して,いろいろな民間企業の方から御意見をいただいたところ,資料が多いことや,評価結果報告書が分かりにくいなどという御指摘がありました。
  第3サイクルについては,総評部分,二,三ページで全体が分かるように少し工夫はしていく必要があると思いますが,日本高等教育評価機構だけで認証評価の認知度を上げるというのもなかなか難しいところもありますので,認証評価機関連絡協議会などを通じて,認証評価機関全体としての取組というのをもう少しアピールしていく必要があるのかなと思っております。
  第3サイクルに向けて,もう少し日本高等教育評価機構としても,社会的認知度の向上に努めていく必要があるのかなと思います。
  それと,評価疲れについても,第2サイクルの審議のまとめ等で御指摘のあるところですが,基本的に,負担に見合った効果が出てないというところが,問題であると思います。
  アメリカの大学も通じてお伺いしたところ,評価疲れというのはほとんど感じていなくて,評価は大学の一つの大きなやるべき仕事であると認識されています。
  アメリカの大学においては,特に奨学金とかにつながっているということが,評価疲れを感じていない要因にあるかもしれませんが,そういった意味では,もう少し認証評価を受審した効果を出すように,日本高等教育評価機構としては努めるとともに,なるべく効率化を図っていくしかないと思っています。
  また,評価を受審する大学においても,認証評価は大学にとっての一つの大きな仕事であるという認識を持っていただくよう努めていくということが必要かと思っています。
【前田座長代理】  第3サイクルは内部質保証重視と言われていますが,第2サイクルまでと比較して,第3サイクルでは,内部質保証重視で何が一番変わるのかという辺りを御説明いただければと思います。
【日本高等教育評価機構】  日本高等教育評価機構においては,第2サイクルで内部質保証という用語を用いず,自己点検・評価を機能させるということを中心に評価しました。
  第3サイクルにおいては内部質保証ということで,個々の大学において,自らの責任で自主的な自己点検・評価を行って,それを基とした自己改善によって,三つの方針を起点とする教育研究活動と併せて,中長期的な計画も踏まえた大学全体の運営の質を定めて,その質を満たしているかどうかを念頭に置いた自己点検・評価を行っていただき,日本高等教育評価機構では,その自己点検・評価がしっかりと行われているのかどうかを検証するという形になるかと思います。
  すなわち,自己点検・評価を行って,教育をどのレベルまで引き上げるのかということを大学で考えていただくというのが第3サイクルの大きな特徴と思っております。
【佐野委員】  4点,御質問させていただきます。
  まず,1点目として,自己点検・評価書の中の8ページの記載にございましたが,他の質保証制度との連携を図るため,もろもろのエビデンスを求めるということにしたということですが,これは他の評価制度との連携を図るというのは大変結構なことだと思う一方で,それぞれ公になっている指摘事項とそうでないもの等があると思いますが,その辺,受審する側である大学の反応,第3サイクルに向けて反応はいかがだったのでしょうか。
  2点目として,9ページのこれは(4)の実地調査に関連する部分ですが,「評価チームから依頼があった場合には,同窓会・保護者会の長,卒業生,関連企業」など「関係者などとの面談も行っている」という記載がございます。
  この面談における実績について,その評価者からの要望がどの程度あり,どのようなことが効果としてあったのか,どのように評価についての効果に結び付いたのか御教示ください。
  3点目が,同じ9ページの記載で,第3サイクルからは「優れた点」についてより多く積極的に公表していくように変更したという記載がございますので,この辺の経緯を詳しく御説明いただけませんでしょうか。
  あと,4点目ですが,14ページ辺り,これは全般に言えることですが,日本高等教育評価機構の財政状況に関連して,会員校の会費でかなりの安定的な収入があるということがございます。
  この会員校と,会員校でないところの大学で評価のみ受審しているところについて日本高等教育評価機構としての差別化をどのように図っているのでしょうか。
  それから,このことに伴って,次のページもありますが,正味財産の増減が書いた表がございます。
  公益法人会計によりますと,有形資産がかなり増える形になりますが,これをどのよう解消しようとしているのか,この解決方法についてどのようお考えか御説明いただきたいと思います。
【日本高等教育評価機構】  最初の評価報告書の8ページの他の質保証制度との連携について,お答えします。
  今,委員の御指摘のとおり,8ページの記載内容について,日本高等教育評価機構においては,設置計画履行状況等調査や過去の認証評価で指摘された事項への対応に関する説明資料やエビデンスなどの提出を求めています。
  評価チームには必ずそれらを確認した上で,日本高等教育評価機構の評価基準に照らし合わせて,関連する部分については必要に応じて指摘をさせていただくということになっております。
  お尋ねのとおり,公になっている指摘からそうではないものといった指摘のレベルがあると思いますが,日本高等教育評価機構においては,基本的に設置計画履行状況等調査の結果や,他の認証評価機関で受けた結果,あるいは日本高等教育評価機構で評価を受けた結果として公表された評価報告書の提出を求めています。
  加えて,公表された報告書については,他の評価機関を含め,例えば改善報告書の提出や再評価等々を受けた場合は,その内容も含めて提出を求めています。
  したがって,基本的に公表された内容で確認をしております。
  2点目の御質問の報告書の9ページにございます内容については,主に第1サイクルのときに多く実施をしたものです。
  日本高等教育評価機構においては,第1サイクルの11基準に「社会連携」という基準がございました。
  その中で多くの大学が同窓会や,卒業生,関連企業,あるいは,自治体の第3セクターの方との連携に関する記述がございましたので,面談を実施したという経緯です。
  なお,二つ目の質問の補足ですが,自己点検・評価書に記載している事項については,同窓会組織とのつながりや保護者会とのつながり,卒業生との連携を図っているというところがあれば,その効果を確認するために,評価チームからの依頼を受けて面接を実施するという形で行っております。
  実態として,外部の方を呼ぶということですので,なかなか日中に時間を設けることが難しく,ホテル等において夜に面接を実施しているものです。
  面接については,実態を確認するのには非常に役立っている一方で,最近は自己点検・評価書に社会連携の取組を強調して記載する大学が少なく,最近の実績があまりないということです。
  3点目の質問について,同じく9ページの「優れた点」の基本的な考え方としては,第1サイクル,第2サイクルともに,大学として機能していて,他大学の模範となる取組を中心に,「優れた点」として上げていただきたいと,評価チームにお願いしておりました。
  ここでは「他の大学の模範となる」という言葉にとらわれて,いろいろな大学で実施している取組が,ほかの大学でも実施しているということで,なかなかこの「優れた点」が挙がってこないという実態がございました。
  そのため,第3サイクルにおいては,もう少しこの「優れた点」の基本的方針を拡大し,模範的なものもありますが,大学内部で非常に機能している取組や,あるいは,非常に優れていて実績が出ている取組というように,なるべく「優れた点」を挙げていただけるような形で基本的な方針を変えさせていただきました。
  また,先ほど御説明したとおり,その「優れた点」を,各基準の中だけではなく,それを総評の中にも記述するような形にして,公表したときに一目で見て分かるような形に工夫させていただきました。
  そういう意味で,大学にも「優れた点」を自己点検評価書に記述していただくようお願いすることとしています。
  会員制につきましては,当機構は,日本私立大学協会が設立母体になりまして,法人組織を平成16年に設立しました。
  全くのゼロから出発するということでございましたので,日本私立大学協会の加盟校を中心として,新しい法人を応援していくという立場から,会員制で運営を開始したところでございます。
  その充実強化を図るためということで,先ほど御指摘がありましたように,現在でも,日本高等教育評価機構で認証評価を受けない会員大学が20大学ほどございます。
  それは法人設立のときに,機関決定してこの法人を立ち上げたといういきさつがございます。
  そして,日本私立大学協会の加盟校の役員校等が日本高等教育評価機構を支援するという趣旨で会員になっていただきました。
  その後,この中央教育審議会大学分科会認証評価機関の認証に関する審査委員会における審査の際に,日本高等教育評価機構の財政基盤の確立について御指摘がありました。
  そこで,会員の会費は平成19年度から,評価料は平成20年度からそれぞれ3割程度上げましたところ,財政状況は落ち着いたところです。
  会員制につきましては,ピアレビューという観点から,会員大学を中心に評価委員の候補者を推薦していただく,職員のSDということで,会員大学の職員を研修員として受け入れる,あるいは,評価セミナーといった情報公開や啓発のための協力をしています。
  一方で,一番重要な問題としては,日本高等教育評価機構において,極端な受審校の年度による偏りがあることでございます。
  第1サイクルでは,平成17年度から4大学,16大学,38大学等と増えていき,最終の平成22年度は85大学が受審することとなり,年度間で大きな偏りが生じました。
  日本高等教育評価機構の収入においては会費と評価料の二種類ございますが,会費は大体1億円ぐらいの安定した財源になっている一方で,評価料は例えば今年(平成30年度)は15大学,来年度は17大学となっており,非常に受審する大学が極端に少なく,大幅に減少する状況です。
  第2サイクルの最後に86大学という多くの大学が受審したということもあり,受審のスケジュールが後ろ倒しになっていますので,収入が安定しない状況となっています。
  会費については,毎年度1億円ぐらいの収入となっており,非常に安定した財源として,運営していく大きな力になっています。
  むしろ,会費収入がなければ,非常に財政的におぼつかないといっても過言ではありません。
  今のところ327大学ぐらい日本高等教育評価機構の認証評価を受審している大学がある一方で,20ぐらいの大学は会費を払っているものの,認証評価を受審していません。
  このような会費を払っているものの認証評価を受審していない大学が最初は40大学ぐらいありましたが,徐々に縮小していき,現状として,20大学ぐらいとなっています。
  先述のとおり,評価料収入が年度によって非常に偏りがありますので,会費収入は,なくてはならない財源となっているところです。
【佐野委員】  御説明の中で,会員校でありながら認証評価を受審していない大学の数がだんだん縮小してきたことは正常な状態であるという説明かと思われますが,そういうことでしょうか。
【日本高等教育評価機構】  日本高等教育評価機構がだんだん成長してきて,いろいろな活動が盛んになってまいりましたので,認証評価を受審する大学が増えてきたところです。先述の受審していない20会員大学は,ほとんどが日本私立大学協会の役員クラスの大学となっています。
【佐野委員】  いろいろな意見があろうかと思いますが,御説明いただいた内容については,実態を承知しました。
  一方で,正味財産がかなり残っていて,いわゆる公益法人においては,収支相償で行って,有形資産化されているかと思います。
  この解消方法についての短期若しくは中期の見通しについてはいかがかでしょうか。
【日本高等教育評価機構】  15ページの表5に記載してありますように,日本高等教育評価機構は,年度によってかなり受審校数による評価料収入の増減があります。
  そういう中で,評価校数が少ない年度は赤字になる状況にあります。
  一方,例えば,平成28年及び平成29年においては,評価校数が多いため,黒字が生じるという状況になります。
  その状況を踏まえ,この表の中では,正味財産増減額の合計は,2億5,000万円ぐらいあります。
  これは現状の数字ではございますが,この後,また平成30年度,平成31年度は評価校数が激減し,大幅な赤字が生じる状況になります。
  今の公益法人会計制度上,特定費用準備資金というものが認められております。
  この制度は,財政上,余裕のあるときには積み立て,不足するときに積み立てを取り崩すという制度であり,認証評価の受審校が激減する年度においては,その制度を活用して,乗り切っているような状況でございます。
  それから,もう一点,先ほど会員校と会員校以外という話がありましたが,現在,会員校以外で日本高等教育評価機構の認証評価を受審しているのは8大学と1短期大学です。
  認証評価自体については会員校と同様に評価をしておりますが,その評価料の取扱いについては,非会員大学においては7年分の会費相当額を加算するということで整理しております。
【川嶋座長】  一つ,今回,この5ページに,第3サイクルの評価システムで,特記事項というものが設けられていますが,非常に受審大学が多様だということで,第2サイクルでも独自基準を設けられていたかと思います。
  特記事項については,結局,評価するのかしないのかといった辺りはいかがでしょうか。
【日本高等教育評価機構】  特記事項については,まず受審大学に,社会に一番アピールしたいことを三つまで出していただき,その三つの特記事項を1ページで自己点検評価書にまとめていただきます。
  一方,委員御指摘のとおり,これは社会に対してアピールをする内容ですので,評価の対象とはしておりません。
  ただし,この特記事項について,評価チームは事実関係等を確認しております。
  そうした確認のプロセスを経た上で,受審大学が記載した特記事項を,日本高等教育評価機構が出す評価報告書にも転記し,なるべく社会の目に触れるような形でお示しをしています。
  この内容については,認証評価の観点として,大学の教育研究を中心に確認をしている一方で,日本高等教育評価機構においては,法人運営も評価の観点に含めています。
  したがって,その法人運営関係も含めて,アピールしていただける取組があれば記載していただくという形になっております。
  ただし,内容としては,独自基準とは重複しない形でお願いしております。
【前田座長代理】  大変多くの大学の評価をされていますが,例えば「不適合」や「保留」の結果が出た大学というのは一つのサイクルにおいてどの程度あるのでしょうか。また,「不適合」や「保留」の判定が出た大学はどのように対応しているのか伺いたいと思います。
【日本高等教育評価機構】  まず,第1サイクルにおいては,「保留」となった大学はおおよそ20校ございました。
  「保留」となった大学全てが再評価を受審し,19校が「適合」,1校については入学定員の問題で改善が認められず,「不適合」との判定が出ております。
  「保留」ではなく,第1サイクルの認証評価において,「不適合」という判定が出た大学も1校ありましたが,その大学については既に廃校となっております。
  以上が第1サイクルの結果でございます。
  第2サイクルについては「保留」が13校,「不適合」が1,2校ございます。
  「保留」となった13校については,第1サイクルにおいて,「適合」の判定を得ていた大学が,例えば平成27年度の学校教育法の改正等に準じていないケースが散見され,13校が「保留」の判定となったという現状がございます。
  これらの「保留」の判定となった大学についても随時改善を行っていただき,再評価を受審したところ,ほとんどの大学においては,「適合」と判定されております。
  判定について補足すると,評価の時点においては,「不適合」であるものの,1年以内に改善が可能であると考えられる大学に対しては,「保留」という結果で判定しており,一方で,1年以内での改善が困難である大学に対しては「不適合」という結果で判定しています。
  また,「不適合」という判定が出た大学においても,改善して,また新たに認証評価を受審するような形で,大学の改善につながっていると思っております。
【前田座長代理】  ほとんどの大学は再評価を受審していらっしゃるということでよろしいでしょうか。
【日本高等教育評価機構】  改善に努めていただいていると思います。
【市川委員】  組織について,日本高等教育評価機構は,もともと私立大学協会が中心になって設立されたと存じています。
  公益財団法人化をされておりますので,私立大学協会との関係を御教示いただければと思います。
【日本高等教育評価機構】  御承知のとおり,私立大学協会から立ち上げていただきましたが,それぞれの役割はまったく別の団体でございます。
  日本高等教育評価機構においては,平成24年4月に公益財団法人に移行しており,公益財団法人の役員等は,法律により,他の同一団体からの参加は3分の1以内に制限されています。日本高等教育評価機構には,理事,評議員として,私立大学協会から3分の1ずつ参加をいただいております。
  そういった事情も踏まえて,理事会,評議員会の運営等については,私立大学協会の協力を得て運営しているところです。
  そのほか,認証評価を初めとした評価関係事業については,日本高等教育評価機構が担っており,私立大学協会は私立大学協会として独自の事業を行っているところです。
  また,評価委員の募集や大学との交流については,私立大学協会加盟校からの協力を得ておりますが,認証評価事業において,私立大学協会が関係することはありません。
  日本高等教育評価機構の財務面においては,発足したとき私立大学協会から種々の御支援をいただきました。
【市川委員】  法人の形態について,例えば一般社団法人や一般財団法人といった形態がございますが,公益財団法人という形態を選択された理由は,何か特別にあったのでしょうか。
【日本高等教育評価機構】  公益財団法人という形態をとった理由については,どのような形態にするのかいろいろ議論があった中で,大学を評価するところは公益法人でなければならないという意見に集約され,最初から公益財団法人を目指すということになりました。
【佐野委員】  一点,確認させていただきたいと存じますが,特記事項と「優れた点」との差について御教示いただけませんでしょうか。
  特記事項も事実確認を実施している一方,「優れた点」についても類似性があると思いますが,御説明をいただければと思います。
【日本高等教育評価機構】  「優れた点」は基本的に評価基準1から6の中に限定して,すぐれた内容があれば評価をさせていただいています。
  一方,特記事項については,評価基準に限定するのではなく,大学が実施している事業等々も含めて,優れた取組があれば,三つまで1ページで公表していただくという形にしております。
【小林委員】  3点ほど御教示をいただければと思います。
  まず,1点目として,評価疲れということが言われる中で,大学に対してインセンティブを付けるべきであるという意見があり,例えば,評価期間が一つのサイクルにおいて7年であるところ,ある項目については延ばすとか,あるいは,評価そのものを免除する意見が出ていますが,その辺り,どのようにお考えでしょうか。
【日本高等教育評価機構】  現在のところ,大学がいいと思って選んでいただけるような形,特に日本高等教育評価機構においては,私立大学等が多く受審していますので,なるべく大学ごとに特色が出せるような形で行っています。
  例えば,先ほどの特記事項とか独自基準を設けており,そういった形で社会にアピールすることによってインセンティブを付けたいと思っているところです。
  実際では,今のところは大きなインセンティブを与えられておらず,負担軽減や良い評価結果を得た大学については認証評価の受審期間を延ばすといったことについては,今後,継続的に検討する課題と思っております。
【小林委員】  2点目の質問として,大学基準協会では研究所をこれから設立するという構想があり,大学改革支援・学位授与機構においては,すでに研究開発部があるところですが,日本高等教育評価機構としては,そういったシンクタンク的な機能を持つ組織を設けることはどのようにお考えでしょうか。
【日本高等教育評価機構】  日本高等教育評価機構においては研究機能が一番弱いところだと承知しています。
  研究部を設けて,実務的な研究や評価基準の改正,実施大綱の改正,それに伴う海外調査などは行っているところです。
  今後は,設立母体の私立大学協会の中に私学高等教育研究所がございますので,なるべく連携を図れるような形を取っていきたいと思っています。
  日本高等教育評価機構の関係委員会の委員に,先述の研究所の研究員の方が多く御協力をいただいており,実質化を図っている現状はございますが,今後,内部質保証が大学に求められる中で,その研究の範囲をどこまで広げるかという議論を行い,その研究部の在り方等についても検討していきたいと思っています。
【小林委員】  3点目の質問について,自己点検・報告書の16ページに係る自己点検・評価及び外部評価について,まず,自己点検を行って,将来計画を明らかにした旨の記載が段落の最後にあります。
  それから,それに基づいて外部評価を行ったという記載について,「基準ごとの評価において一部指摘された課題はあるが」という指摘があったとのことですが,この指摘については,具体的にはどのような課題が指摘されて,それについてどのような改善策を考えておられるかということをお伺いします。
【日本高等教育評価機構】  まだ,詳細な部分については検討をしているところですが,先ほど申し上げた研究部門や国際交流関係部門について日本高等教育評価機構が単体で行うのか,いろいろな機関と協力してやったらどうかといった御意見も頂いております。
  また,広報関係についても,なるべく透明性を確保するために,評価結果を初めとした様々な情報をホームページに掲載しています。その広報の在り方についても今後戦略的なものを検討してはどうかなどの意見は頂いております。
  これらの指摘について,即座に対応できるものについては既に対応を始めているところではございますが,例えば研究機能や国際交流といった中長期的に取り組むべきものについては引き続き検討していく予定をしております。
【小林委員】  評価そのものに関しては何か改善の御指摘はなかったのでしょうか。
【日本高等教育評価機構】  特に改善の指摘はありませんでした。
【小林委員】  自己評価としても外部評価としても,現在の評価のやり方でそのまま続けていくということよろしいでしょうか。
【日本高等教育評価機構】  基本的に大学と同じような形で,日本高等教育評価機構においては評価基準を組み替えて行っていますが,もう一度,やり方とか,外部評価の結果も踏まえ,次回については7年以内には当然実施するとは思いますが,少し効率化を図れるように工夫していきたいと思います。
【川嶋座長】  最後に,認証評価制度自体について,何か課題というのがありましたらお聞かせください。
【日本高等教育評価機構】  評価結果の「適合」を取るというのがどうしても目的となってしまっています。その改善やPDCAのサイクルの中の一環として,認証評価があると理解していただいている大学も多くはなってきていますが,全体的に半分ぐらいの大学は義務化されているから受けるという姿勢をこの第3,第4サイクルのところで変えていくということが内部質保証のところで必要なのではないかと思っております。
  日本高等教育評価機構による認証評価を受ける大学は,ほぼ100%が私立大学です。
  私立大学というのは,言うまでもなく建学の精神を有しています。
  大学の大小にかかわらず,あるいは,共学であれ,女子校であれ,日本高等教育評価機構は私立の大学が持っている特性を最大限に尊重しながら認証評価を実施していきたいと思っております。
  そして,日本高等教育評価機構が今まで行ってきた,あるいはこれからも行おうとしている自己点検・評価に関して言えば,日本高等教育評価機構は常々評価するものは評価されなければならないと考えています。
  つまり,日本高等教育評価機構自身が自己評価しなければ,あるいは,外部の第三者から評価を受けなければ,本当の意味での認証評価はできないのではないかということを常々考えながら,活動しているということも御理解いただければと思っております。
【川嶋座長】  それでは,高等教育評価機構のヒアリングはこれで終わりたいと思います。

(日本高等教育評価機構退室)

【川嶋座長】  以上で3評価機関に関するヒアリングを終了したいと思います。
  最後に,今後の日程等について,事務局から御説明をお願いします。
【竹中高等教育政策室室長補佐】  本日のヒアリングにつきましては,冒頭申し上げましたとおり,今回の御確認は法令上の行為ではなく,各認証評価機関や認証評価に対して専門的な御知見を持つ委員からコメントを頂く場として設けたものでございます。
  そのため,委員によりましては,今回お呼びした認証評価機関に少なからず,関係していることがあったかと思います。
  文部科学省としては,今回のヒアリングについては,より有益なコメントを頂くために,より事情を知る関係者として意見交換に携わっていただくこともあるかとも思っております。
  一方,評議委員や理事,あるいは,親委員会に携わっていらっしゃる場合など,意思決定や執行責任を負っていらっしゃる場合は,審査委員会の意見を受けて改善を推進するお立場でもございますことから,御発言を控えていただくことがあったかと思いますので,補足させていただきます。
  なお,本日頂いたコメントについては,先生方に御確認の上,各機関に対してもお知らせしたいと思っております。
  残り,本年度につきましては,あと2機関のヒアリングをさせていただきたいと思います。
【川嶋座長】  それでは,本日の審査委員会はこれにて終了したいと思います。

――  了  ――

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