資料4 法科大学院教育の抜本的かつ総合的な改善・充実方策について(骨子案)

経緯

 昨年7月の法曹養成制度関係閣僚会議決定を受けて、法科大学院特別委員会においては、法科大学院教育の改善・充実に向けて議論を重ね、

  • 「法科大学院における組織見直しの更なる促進方策の強化について」(平成25年9月)
  • 「組織見直し促進に関する調査検討経過報告及び共通到達度確認試験等に関する調査検討経過報告」(平成25年11月)
  • 「各法科大学院の改善状況に係る調査結果」(平成26年2月)
  • 「今後検討すべき法科大学院教育の改善・充実に向けた基本的な方向性」(平成26年3月)

 など個別論点ごとに提言・報告を行ってきたところであるが、現在の法科大学院が置かれている極めて厳しい現状に鑑み、これまでの議論の成果を踏まえつつ、今後の法科大学院改革をより一層強力に推進する必要がある。

 このため、法科大学院が「プロセスとしての法曹養成」の中核的機関であることを前提に、制度創設後の改善の声に応える法科大学院教育の抜本的かつ総合的な改善・充実方策を目指し、以下の点について整理することとしてはどうか。

あるべき将来の姿

 法科大学院については、一定の成果をあげている法科大学院がある一方で、司法試験の合格状況や入学者選抜状況などに深刻な課題を抱えた法科大学院も少なからず存在し、弁護士の就職難等とあいまって、法科大学院離れ、法曹離れとも言える状況に陥っている。

 このような状況を打開し、質・量ともに豊かな法曹を安定的に社会に送り出していくためには、我が国におけるあるべき法曹像やその規模についての共通理解を確立するとともに、法科大学院の理想的な姿を早急に実現すべく全力を挙げるべきときである。

 すなわち、当初の理想とされた修了者の7、8割が司法試験に合格できるような高い教育力を持つ法科大学院が全国的に一定のバランスをもって配置され、それぞれの強みを活かした多彩な教育が展開されることで、学生が単なる司法試験合格のみならず、将来の実務も視野に入れた特色ある教育を安心して受けられる環境を整備する必要がある。

 併せて、プロセス養成の趣旨を損なわない範囲の中で、優秀な学生がより短期間で法曹になることのできる途の確保や、多様なバックグラウンドを持った人材が法律を着実に学ぶことのできる体制も維持すべきである。さらに、関係者の協力の下、資力のない学生や居住地近辺に法科大学院がない学生も法科大学院で学ぶことができるような経済的支援の充実も図られることが望まれる。

 以上のような状況を早期に実現することこそ、有為な人材を法曹界に迎え入れる唯一の方途であり、そのためには下記に提案する方策を着実に実行・実現する必要がある。

組織見直しについて

 これからの組織見直しについては、その目的を、課題が深刻な法科大学院の組織見直しの促進から、法科大学院全体の体質強化に改めた上で、更に推進していくべきではないか。具体的には、以下の事項について検討を進めるべきではないか。

  • 本年3月の「基本的な方向性」において、「法科大学院全体の入学定員について当面3,000 人程度を目途に見直しを促進する」旨提示したところであるが、現在、各法科大学院で進行している定員見直しの動向(本年6月末時点での平成27年度の入学定員総数の見込みは3,175人)や入学定員と実入学者数の乖離の抜本的な解消ができていない状況を踏まえ、当面の目標値について更に削減する方向を示すことについて
  • 更にその上で、現在政府で調査が進められている今後の法曹人口を踏まえた最終的に目指すべき適正な定員規模についても明らかにすることで、志願者減と定員・入学者減が繰り返す負のスパイラルからの脱却を目指すことについて
  • 上記目標に基づき、法科大学院に対し、これまでの司法試験結果や教育成果等に基づき、抜本的な組織見直しをより強力に推進するとともに、その際、地方在住者や社会人で法曹を目指す者に配慮し、法曹を目指すことができる環境を実質的に確保することについて

など

教育の質向上について

 我が国の将来を支える法曹として不可欠な基礎・基本の徹底を図るとともに、幅広い教養と豊かな人間性を涵養するために必要な教育の質向上につながる方策を示すことで、法科大学院教育における「プロセス教育の確立」を目指していくべきではないか。

(1)プロセス教育の基本となる「教育方法の強化」に向けて

  • 法学未修者に対して、法曹として共通に必要となる法律基本科目を確実に修得させるため、配当年次や単位数の見直しなど法学未修者教育の充実について
  • 法学未修者はもとより法学既修者も対象に、法科大学院が共通して客観的かつ厳格に進級判定を行う仕組みとして、学生に対する学修・進路指導を充実させるとともに、学生が全国規模の比較の中で自らの学修到達度を把握し、その後の学修の進め方等の判断材料に活用できる共通到達度確認試験(仮称)の導入を推進することについて

など

(2)プロセス教育の「拡大・充実」に向けて

  • 各法科大学院の実情に応じたエクスターンシップやリーガルクリニック等の積極的な実施、法律実務に関する基礎教育を担う教員を対象としたFD活動の充実など、法曹実務家を目指す者に必要な法律実務に関する基礎教育の充実について
  • 各法科大学院において、社会の様々な分野におけるニーズに対応できる特色ある教育活動を展開するため、留学促進・受入れなど国際化への対応、教育力の高い教員の派遣・学生受入れなど法科大学院間の連携、課題解決に向けた実質的な連合など、優れた先導的な取組を行う法科大学院に対する支援について
  • 法科大学院の教育資源を活用した継続教育の充実や職域拡大への貢献、法科大学院修了生の就職支援の促進について

など

(3)プロセス教育の「魅力の向上」に向けて

  • 時間的・経済的コスト軽減に向けて、飛び入学等を活用して学部3年修了時から2年の法学既修者コースへの進学を認めるなど法曹養成のための教育期間短縮の促進や、関係機関との連携による法曹養成に特化した経済的な支援の充実方策の検討について

など

(4)プロセス教育の「環境整備」に向けて

  • 法科大学院教育の課題の現状や認証評価結果を精査し、必要に応じて教育環境の充実につながる設置基準等の内容の見直しの検討、客観的指標も勘案した一層厳格な認証評価の実施と評価結果の活用方策の検討とともに、法科大学院教育を担う教員の質・量の充実方策(更に我が国全体の法学教育・研究を担う教員の養成・確保も併せて検討)やICTを活用した教育連携・教材開発の検討について

など

予備試験について

 上記法科大学院改革に実効性を持たせるため、教育課程と試験の関係を踏まえた上で、予備試験の抜本的な改革も同時に進めることにより、法科大学院が法曹養成の中核的機関としての機能を十分に果たせる状況を目指していくべきではないか。

  • 予備試験の受験資格者の範囲に関する制度的な対応について
  • 法科大学院修了生と同等性を判定するための試験科目や方法の見直しについて

など

お問合せ先

高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

(高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係)