資料4 法科大学院教育と司法試験予備試験との関係について(委員意見の整理案)

1.検討の必要性

  • 司法試験予備試験(以下「予備試験」という)は、昨年6月、政府の法曹養成制度検討会議取りまとめでも確認されたように、司法制度改革審議会意見書において、「経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも法曹資格取得のための適切な途を確保すべきとされたことから導入された制度であり、予備試験は、法科大学院修了者と同等の能力を有するかどうかを判定することを目的として行われ、その合格者には、司法試験の受験資格が与えられる」仕組みとして設けられたものである。
  • この予備試験は、平成23年から実際に試験が実施されており、現在までに、3回の予備試験合格者を出すとともに、その合格者が平成24年の司法試験から受験し、現在までのところ2回の司法試験合格者を出しているところである。
  • このように実際に運用がはじまった予備試験に関しては、本特別委員会においても、本年3月にとりまとめられた基本的方向性の中で、
    • 「法科大学院修了生と同等の学識・能力を有するかどうかを判定するものとして適切に機能しているかを注視」するとともに、
    • 「試験という「点」のみによる選抜ではなく「プロセス」により質量ともに豊かな法曹を養成するという司法制度改革の基本的な理念を踏まえつつ、司法試験予備試験が法曹養成プロセスの中核的な教育機関である法科大学院における教育に与える影響や、更にはそのプロセス全体に及ぼす影響を、例えば、法科大学院在学生が予備試験を目指すことによる法科大学院における授業欠席や、休学・退学の動向、学生の学修・履修の仕方等への影響のみならず、学部在学生をはじめ法科大学院志願者への影響なども含め速やかに把握・分析し、政府全体の取組に資する」
    こととされていることを踏まえ、次に掲げるとおり、法科大学院教育の観点から、予備試験の在り方について検討を深めることが必要である。

2.基本的な考え方

  • 司法制度改革の理念に基づき、法科大学院が、プロセスとしての法曹養成の中核的な教育機関として機能するためには、まずは何よりも、法科大学院において自らが提供する日々の教育の更なる向上に努めるとともに、組織の見直しを含めた抜本的な取組を進めることが急務である。
  • また、個々の法科大学院の取組のみならず、現在検討が進められている共通到達度確認試験(仮称)の導入など、法科大学院全体として大胆な改革にもいとわずに取り組むことも不可欠である。
  • 以上のことを前提とした上で、点による選抜からプロセスとしての法曹養成へという司法制度改革の当初の理念に立ち返り、法科大学院と予備試験との関係について、制度創設時の経緯とともに実際に運用されはじめてからの現状の分析を踏まえつつ、検討が必要ではないかと考えられる。
  • 検討に当たっては、経済的事情や実務経験を有するなどの理由により法科大学院を経由しない者への法曹資格取得のための方策としては、例えば、奨学金制度や授業料減免の充実など、予備試験以外の方策で対応することもありうるのではないかとの指摘もあったが、まずは、予備試験の在り方について、検討を行うことが適当ではないかと考えられる。
  • 具体的には、制度的な対応による抜本的な対応とともに、当面の予備試験の運用による対応が考えられる。

(1)プロセスとしての法曹養成における予備試験の位置付けについて

  • 法科大学院は、プロセスとしての法曹養成における中核的な教育機関である一方、予備試験は、経済的事情や実務経験を有するなどの理由により法科大学院を経由しない者に限定した法曹資格取得のための途として構想されたものである。
  • 予備試験制度の本来の趣旨や、法科大学院が大学院レベルの正規の教育課程として位置付けられていることを踏まえ、予備試験の受験対象者の範囲について制度的な対応を検討していくことが望ましいと考えられる。
  • 予備試験の合格者数の増加は、これまで実績を挙げている法科大学院を中心に影響を与えており、早急な対応が求められる状況である。現在、法科大学院教育の質の向上に向けた改革が進捗しつつあり、今後、更にこれを加速させるためにも、制度的な見直しの検討と併せて、合格者の質という観点から、当面の試験の運用による対応についても検討していくことが望ましいと考えられる。

(2)法科大学院教育と予備試験の内容等について

  • 法科大学院における教育は、高度の専門的な法的知識、幅広い教養、国際的な素養、豊かな人間性及び職業倫理等を備えた法曹を養成するため、そもそも司法試験で課されている科目以外に、模擬裁判、リーガルクリニックなどの法律実務基礎科目や、政治や経済といった隣接科目、外国法、先端的な法律科目まで含めた幅広い学修を求めている。また、法科大学院では、学部教育を前提に、適性試験を受けて入学した法曹を目指す者に対し、原則3年間の教育課程の中でGPA等に基づく厳格な進級判定や修了認定が行われている。一方、予備試験では、基本的な法律科目を中心とした科目に関する1回だけの試験によって判定が行われており、両者が「同等」とされていることについて検討していくことが望ましいと考えられる。
  • 具体的には、予備試験の試験科目については法科大学院教育と密接に関連付けるとともに、試験になじまない科目は別途法科大学院等で学修させる仕組みの可能性も含めて検討していくことが望ましいと考えられる。
  • また、制度的な対応に関する検討とともに、法科大学院教育との同等性を確保する観点から、予備試験の出題内容を工夫したり、時間をかけて試験を実施したりするなどの運用上の改善策も検討していくことが望ましいと考えられる。

(3)法科大学院教育に与える影響について

  • 予備試験の受験者及び合格者の中に、学部在学生や法科大学院在学生といった本来プロセス養成を経て法曹を目指すことが期待されている層が大きな割合を占めていることについて、学部教育や法科大学院教育に与える影響や、予備試験の受験資格も含めて、その在り方を検討していくことが望ましいと考えられる。

(了)

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