資料7 ジョイントディグリー(JD)制度の導入について

1.これまでの検討状況

  • ジョイントディグリー(以下「JD」)制度の導入については、中央教育審議会大学分科会「大学のグローバル化に関するワーキンググループ」において、昨年7月以降、過去6回審議した。直近では、本年4月9日(水曜日)に開催された第7回会議において、当該制度の趣旨や基本的方向性について一定の合意がされ、今後の調整は座長一任の状態。
  • その際、法科大学院や医・歯・薬・獣医学部など、当該学位課程の修了が国家試験の受験資格に直結し、我が国の特定産業を支える高度専門職業人材を養成することを目的としている分野の取扱については、JDの導入にあたり資格所管官庁及び関係団体等との調整を行うこととされている。

2.JD制度の導入にあたり検討すべき論点(案)

(総論的論点)

◇ 外国の大学と連携した人材養成を目的とするJD制度は、日本国内の法曹養成を主たる目的とする法科大学院の制度趣旨に合致するかどうか。
(○メリット:×デメリット)

○ JD制度は、外国大学との連携により、1つの大学では提供できない高度で質の高い教育機会を学生に与えるものであり、ダブル・ライセンス等の潜在力を含め、質・量ともに豊かな法曹養成に資する可能性がある。

× 裁判官等の法曹は我が国の司法権を行使する人材であり、専ら我が国の域内での活躍が期待されている人材の養成が求められるものであること、また、法科大学院はその法曹を養成する制度的中核を担っていること等を踏まえれば、他の目的養成分野とも同列で議論するべきではなく、より慎重な判断が必要。(⇔既に単位互換は認められている。また、外国人であっても、要件を満たせば司法試験受験資格は認められている。)

◇ 仮に法科大学院もJD制度の対象とする場合、司法試験等他の法曹養成制度との関係において、不都合は生じないか。
(○メリット:×デメリット)

○ 今回制度化を予定しているJD制度は、大学教育のグローバル化に対応して外国の大学との連携促進を図るものであり、法曹養成制度に制度的な不都合を生じさせるものではない。

○ また、連携外国大学との協力によりカリキュラムの国際化を図り、国際的素養のある法曹を養成することは、質・量ともに豊かな法曹養成を目的とするプロセス養成の趣旨にも資するものである。

× 現時点では、課題を抱える法科大学院をはじめとした法科大学院教育の改善・充実を着実に推進することが重要であり、プロセス養成の好循環への転換にも支障をきたす恐れがある。

× 法科大学院の質の課題の改善こそ先決であり、その前に外国大学との連携による新たなJD課程を行うとすれば、本来やるべきことを見失うこととなる可能性があり、時期尚早。

(個別論点)

◇ 法科大学院の卒業に必要な93単位のうち、24単位(最大で46単位)を連携外国大学の開設科目により取得することについて、司法試験や質保証の観点で、問題はないか。
(○メリット:×デメリット)

○(法学研究科ではなく)法科大学院に係るJDの設置認可申請があった場合、その主たる人材育成目標は法曹養成であり、それには司法試験に合格することを見据えたカリキュラム編成が不可欠であるため、設置審査においては、当該人材目的やカリキュラム等との整合性及び大学間協定を審査することにより、連携外国大学分も含め、一定の質保証に係る適正を審査する予定。また、現行では、各大学の自主判断の下で30単位以下まで単位互換等が認められているが、JD制度では、大学間協定を通じ連携外国大学のリソースを予め審査した上で実施されるものであるから、従来型の単位互換に比べれば、質の保証はより一層担保される予定。

◇ 実際にJD課程が設立された場合、原則として外国の大学での一定期間の学修を要するものであるが、我が国の法曹になることを希望する学生にとって、学修負担・時間的負担・金銭的負担の面で問題はないか。
(○メリット:×デメリット)

× 法科大学院の場合、教育課程について法令上の定め(※「専門職大学院に関し必要な事項について定める件」(平成15年文部科学省告示第53号)があるため、柔軟なカリキュラム編成はできないが、連携外国大学が提供する科目を、「展開・先端科目」の構成科目として整理し、我が国側の卒業必要単位にある程度組み込むことは可能。しかしながら、連携外国大学側の卒業要件を満たすため、93単位を超える卒業必要単位数が課されるケースも生じることが予想され、時間的負担・金銭的負担も含め、学生の負担増は十分に想定される。

× 法科大学院の教育課程に係る法令上の定めと司法試験等との関係を勘案すれば、現実的に学生への負担増になるため、わざわざ法科大学院においてJDを設ける利点は少ない。(*国際的素養は、既存の単位互換制度の活用やダブル・ディグリー等の手段でも達成可能。)

3.考えられる対応(案)

案1:法科大学院についても、JD制度の対象とする
案2:JD制度の法科大学院への導入については、他分野での活用状況、効果、支障等を見極めるとともに、法科大学院の課題解決を優先することとし、「当分の間」、認めないこととする(※制度創設の際、附則で措置)
案3:法科大学院については、そもそもJD制度の対象外とする

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高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

(高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係)