資料5‐1 飛び入学等を活用した法曹養成のための教育期間短縮の考え方(案)

1.検討の必要性

  • 昨年6月に公表された政府の法曹養成制度検討会議(以下「検討会議」という。)取りまとめでは、現在生じている法曹志願者の減少に関して、法科大学院において一定の時間的負担等を要することが、法曹を志願して法科大学院に入学することのリスクととらえられていることを原因の一つに挙げており、その対策として、「法学部教育も含めた養成期間の短縮、例えば飛び入学等の積極的な運用」が考えられるとされたところである。
  • この点について、制度的に見れば、大学の学部段階において優れた成績を収めた者に対して、大学院への学部3年次からの飛び入学や学部4年未満での卒業など早期に大学院に入学できるような仕組みは既に開かれているところである。
  • 一方、平成14年の中教審答申では、飛び入学や早期卒業の仕組みを経た者のいわゆる法学既修者としての入学について「法科大学院での3年未満での短期修了を一般的に認めると、学部段階において法曹に必要な幅広い教養を身に付けることがおろそかになるおそれがあり、適当ではない」とされており、各法科大学院において、これまで抑制的な運用が行われてきたものと考えられる。
  • 以上のような状況を踏まえ、中教審法科大学院特別委員会として、現在行われている飛び入学等を活用した法科大学院への進学状況等を分析した上で、検討会議での提案に応えるため、飛び入学等を活用した法科大学院の教育期間短縮の考え方を整理し、法曹養成における時間的コストの短縮に向けて積極的に対応することとしてはどうか。

2.現状分析 (※詳細は別添資料参照)

  • 平成16年に法科大学院が学生の受入れをはじめて以降、飛び入学や早期卒業を活用して法科大学院に進学する者は存在するが、その規模感については、いずれも入学者数全体のうちに占める割合は極めて小さかったのが実態である。

    【参考】平成16年度~平成25年度までの入学者数
    • 飛び入学による入学者数: 計 298人(既修者:36人/未修者:262人)
    • 早期卒業による入学者数: 計 223人(既修者:29人/未修者:194人)
    • 全体の入学者数: 計 46,639人

  • ただ、この飛び入学や早期卒業を活用して法科大学院に進学した者に関し、入学後の学修状況を表す指標の一つである標準修業年限修了率を見ると、飛び入学及び早期卒業による入学者のいずれも、既修者/未修者問わず9割前後となっており、全修了者と比較しても極めて高い水準にあることから、法科大学院での学修を円滑に進めていることが伺われる。

    【参考】標準修業年限修了率の比較
    • 飛び入学による入学者の標準修業年限修了率: 88.4% (既修者:93.3%/未修者:87.8%)
    • 早期卒業による入学者の標準修業年限修了率: 87.5% (既修者:91.3%/未修者:86.9%)
    • 平成24年度修了者の標準修業年限修了率  : 68.2% (既修者:85.8%/未修者53.0%)

  • また、これまで一定数の飛び入学や早期卒業による入学者を受け入れてきた大学からも、それぞれ、法科大学院入学後は比較的優秀な成績を修めていることや司法試験でも高い合格率を維持していることなどが報告されている。

3.飛び入学や早期卒業を活用した教育期間短縮の考え方

  • 上記2.で分析したとおり、飛び入学や早期卒業の仕組みを活用して法科大学院に入学した者については、実際に法科大学院での学修状況等から見ても、制度創設当初に懸念されたような事態とはなっていないことから、法科大学院における飛び入学や学部段階における早期卒業の仕組みの活用、さらに、これらを経た者の法学既修者としての法科大学院への進学については、検討会議で提案された法曹養成の時間的コストの短縮に応える観点からも、その円滑な運用を積極的に促すこととしてはどうか。その際、通常の学部生より在学期間が短いことに鑑み、既修者認定の時期や対象とする科目等について見直しを行うことも考えられるが、下記に掲げる事項等に留意し、質の確保を図ることが重要である。

    【留意事項】
    • GPAの活用等により、学部時代に優秀な成績を修めていることを出願要件とするなど、各法科大学院において入学者の質を担保すること
    • 各法科大学院において適切に運用されているかどうかに関し、認証評価を通じて的確に判定できるよう、認証評価機関の評価基準の見直しなどを進めること

  • なお、学部2年修了時点をもって法科大学院への進学を認めるといった教育期間の更なる短縮については、そもそも学部2年間の学修だけで大学院レベルの教育を受けられる能力を身に付けるような教育課程が可能か、また、学部段階で期待される教養教育がおろそかになるのではないかといった課題があり、大学制度全体や司法制度改革の理念との整合性という観点から、なお慎重に検討する必要があるのではないか。

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