資料4‐6 司法試験予備試験に関する答申・報告等(抜粋)

「司法制度改革審議会意見書」(平成13年6月12日 司法制度改革審議会)

3.司法制度を支える法曹の在り方

第2 法曹養成制度の改革

3.司法試験

(3)受験資格
 法科大学院制度の導入に伴い、適切な第三者評価の制度が整備されることを踏まえ、それによる適格認定を受けた法科大学院の修了者には、司法試験管理委員会により新司法試験の受験資格が認められることとすべきである。
 また、経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも、法曹資格取得のための適切な途を確保すべきである。このため、後述の移行措置の終了後において、法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の趣旨を損ねることのないよう配慮しつつ、例えば、幅広い法分野について基礎的な知識・理解を問うような予備的な試験に合格すれば新司法試験の受験資格を認めるなどの方策を講じることが考えられる(この場合には、実社会での経験等により、法科大学院における教育に対置しうる資質・能力が備わっているかを適切に審査するような機会を設けることについても検討する必要がある。)。
 いずれにしても、21 世紀の司法を支えるにふさわしい資質・能力を備えた人材を「プロセス」により養成することが今般の法曹養成制度改革の基本的視点であり、およそ法曹を志す多様な人材が個々人の事情に応じて支障なく法科大学院で学ぶことのできる環境の整備にこそ力が注がれるべきであることは、改めて言うまでもない。

「法曹養成検討会 新司法試験の在り方について(意見の整理)」

(平成14年7月19日 法曹養成検討会)

6 予備試験

  • 予備試験については、「経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも、法曹資格取得のための適切な途を確保すべきである」との観点から、具体的な制度設計を行うこととする。
  • 予備試験については、例えば、「納税証明書」や「経歴書」を提出させて受験資格を認定すべきであるなどの意見が出されたものの、具体的な受験資格の範囲の確定や実際の認定業務が困難であることなどから、予備試験の受験資格を制限する方法ではなく、予備試験の内容、方法等を工夫し、「法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の趣旨を損ねることのないよう配慮しつつ」制度設計を行うものとする。その際、「実社会での経験等により、法科大学院における教育と対置しうる資質・能力が備わっているかを適切に審査するような機会を設けること」などの方策についても検討する。

(注)

  • 予備試験については、例えば、
    • 予備試験は、法科大学院修了者と同等の学識、能力及び法律実務に必要な基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的とするものとする。
    • 予備試験の試験科目は、基本六法、行政法、一般教養科目、法律実務基礎関連科目とする。
    • 予備試験の試験方法は、短答式試験のみならず、論文式試験又は口述試験も実施する。
    • 予備試験に合格して司法試験(本試験)を受験する者についても、法科大学院修了者と同じ受験回数制限(例えば、予備試験合格から5年以内に3回) を課す。
    などの方策を講じる方向で検討する(予備試験の趣旨を更に明確にするような方策についても検討する。)。

「与党三党合意事項」(平成14年7月26日 与党政策責任者会議法科大学院等に関するプロジェクトチーム)

6.司法試験(本試験)及び予備試験については、試験制度としての公平性を堅持しつつ、法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度の理念にのっとった制度設計を行うこと。
 具体的には、以下の諸点に留意すること。

  • 予備試験には受験資格を設けないこと。
  • 予備試験は、プロセスとしての法曹養成制度を損なうものであってはならず、高度の口頭表現能力や一般教養を含め、法科大学院修了者と同等の能力等を有することを確認できる内容とすること。
  • 本試験においては、法科大学院修了者であるか予備試験合格者であるかを問わず、同一の基準により合否を判定すること。
  • 本試験は、プロセスとしての法曹養成制度の一環にふさわしいものとすべく、法科大学院の教育内容を十分に踏まえた内容とし、法科大学院における学修の成果が十全に発揮されるようにすること。
  • 法科大学院をプロセスとしての法曹養成制度の中核とするとの趣旨及び法科大学院創設後の実施状況をふまえ、予備試験のあり方(上記の点を含む。)について更に検討すること。

「法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律案並びに司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(平成14年11月12日 衆議院法務委員会)

 政府は、両法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
 一 法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の構築及びその運用に当たっては、司法制度改革の理念及び司法制度改革審議会の意見を踏まえつつ、国際的にも通用し得る専門的な能力及び優れた多様な資質を有する多数の法曹の養成に努めること。
 二 法科大学院の設置基準の策定及び評価制度の運用に当たっては、各大学の創意工夫を引き出し、多様な人材を幅広く受け入れ、自由かつ柔軟で特色ある充実した教育が行われるようなものとするとともに、制度の定着状況に応じて柔軟に見直していくこと。設置認可についても、柔軟な運用に努め、硬直的なものとならないようにすること。
 三 関係者の創意工夫に基づく切磋琢磨によって、法科大学院における教育水準の維持向上が図られるようにするため、法科大学院相互間及び認証評価機関相互間において、対等な条件の下で公正な競争が確保されるよう努めること。
 四 新しい司法試験制度の実施に当たっては、法科大学院を中核とする法曹養成制度の理念を損ねることのないよう、司法試験予備試験の運用に努めるとともに、法科大学院における幅広く多様な教育との有機的な連携の確保に配慮すること。
 五 法科大学院の学生に対し、新たな公的財政支援を含め奨学金制度の拡充等に努め、資力の乏しい者にも就学の機会を確保すること。法科大学院に対する財政支援については、法科大学院の間における適切な競争関係の維持などの観点に配意しつつその具体的あり方につき検討すること。
 六 現職の裁判官及び検察官を含む法曹が法科大学院の教員として安定的かつ継続的に参画することを可能にするため、法制面での措置を含めた所要の措置を講ずるよう努めること。併せて、教員の能力開発及びその養成について十分に配慮すること。
 七 専門職大学院制度の導入に伴い、法学部教育のあり方を含め、高等教育全般のあり方について適切な見直しを行うこと。

「法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律案並びに司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(平成14年11月28日 参議院法務委員会)

 政府は、両法の施行に当たり、次の事項について格段の努力をすべきである。
 一 法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の構築及びその運用に当たっては、プロセスを重視した司法制度改革審議会の意見を踏まえ、充実した教育を確保し、国際的にも通用し得る専門的な能力及び優れた多様な資質を有する多数の法曹の養成に努めること。
 二 法科大学院の設置基準の策定、設置認可及び評価制度の運用に当たっては、各大学の創意工夫を尊重し、多様な人材を幅広く受け入れ、自由かつ柔軟で特色ある教育が行われるよう配慮するとともに、実質的に対等な条件の下で認証評価機関相互の公正な競争が確保されるよう民間の認証評価機関についての財政支援等に努めること。
 三 新しい司法試験制度の実施に当たっては、法科大学院における幅広く多様な教育が適正に評価されるものとなるよう努めるとともに、司法試験予備試験の運用については、予備試験が経済的事情等の理由により法科大学院を経由しない者にも法曹資格取得の道を確保しようとするものであり、法科大学院が法曹養成制度の中核であるとの理念を損ねることのないよう十分配慮すること。
 四 資力の乏しい者にも公平に就学の機会を確保するとともに、法科大学院在学中充実した教育が受けられるよう、法科大学院の学生に対し、既存の奨学金制度等の拡充や民間資金を活用する等新たな公的財政支援策の創設にも努めること。
 五 法曹実務家が法科大学院の教員として安定的かつ継続的に参画することを可能にするため、所要の措置を講ずるよう努めること。併せて、教員の能力開発及びその養成について十分配慮すること。
 六 法科大学院の設置については、地方における就学の機会を確保するとともに、弁護士の地域的偏在を解消し国民の司法へのアクセスを容易にするとの観点から、関係者の自発的創意を基本としつつ、全国的に適正配置となるよう財政措置を含め配慮すること。

「法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律」(平成14年12月6日法律第139号)

(法曹養成の基本理念)

 第二条 法曹の養成は、国の規制の撤廃又は緩和の一層の進展その他の内外の社会経済情勢の変化に伴い、より自由かつ公正な社会の形成を図る上で法及び司法の果たすべき役割がより重要なものとなり、多様かつ広範な国民の要請にこたえることができる高度の専門的な法律知識、幅広い教養、国際的な素養、豊かな人間性及び職業倫理を備えた多数の法曹が求められていることにかんがみ、国の機関、大学その他の法曹の養成に関係する機関の密接な連携の下に、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。
 一 法科大学院(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十九条第二項に規定する専門職大学院であって、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とするものをいう。以下同じ。)において、法曹の養成のための中核的な教育機関として、各法科大学院の創意をもって、入学者の適性の適確な評価及び多様性の確保に配慮した公平な入学者選抜を行い、少人数による密度の高い授業により、将来の法曹としての実務に必要な学識及びその応用能力(弁論の能力を含む。次条第三項において同じ。)並びに法律に関する実務の基礎的素養を涵養するための理論的かつ実践的な教育を体系的に実施し、その上で厳格な成績評価及び修了の認定を行うこと。

「規制改革推進のための3か年計画(再改定)」(平成21年3月31日閣議決定)

2.重点計画事項

18 法務・資格

(4)法曹人口の拡大等

7.法曹を目指す者の選択肢を狭めないよう、司法試験の本試験は、法科大学院修了者であるか予備試験合格者であるかを問わず、同一の基準により合否を判定する。また、本試験において公平な競争となるようにするため、予備試験合格者数について、事後的には、資格試験としての予備試験のあるべき運用にも配意しながら、予備試験合格者に占める本試験合格者の割合と法科大学院修了者に占める本試験合格者の割合とを均衡させるとともに、予備試験合格者数が絞られることで実質的に予備試験受験者が法科大学院を修了する者と比べて、本試験受験の機会において不利に扱われることのないようにする等の総合的考慮を行う。
 これは、法科大学院修了者と予備試験合格者とが公平な競争となることが根源的に重要であることを示すものであり、法科大学院修了者と同等の能力・資質を有するかどうかを判定することが予備試験制度を設ける趣旨である。両者における同等の能力・資質とは、予備試験で課せられる法律基本科目、一般教養科目及び法律実務基礎科目について、予備試験に合格できる能力・資質と法科大学院を修了できる能力・資質とが同等であるべきであるという理念を意味する。
 法務省はこれらを踏まえ、予備試験の制度設計を行う。
 したがって、たとえば、予備試験の法律基本科目及び法律実務基礎科目に関する出題について、一般的に、法科大学院で指導・学習の対象となっていないものを出題範囲に含めたり、法律基本科目及び法律実務基礎科目並びに一般教養科目の出題内容の難易度を、法科大学院を修了できる水準に照らして高く設定したりすることによって、予備試験を通じて法曹を目指す者が、法曹資格を得るにあたり、法科大学院修了者と比べて高い水準の能力が求められることのないようにする。
 また、法科大学院教育への協力の観点から法務省が作成し、法科大学院の希望により提供される刑事科目系の法科大学院向け教材は、実際の事案に即した内容とされており、題材とした個々の事件関係者のプライバシー保護等の観点から、法科大学院で使用される以外は非公開とされているが、これらの内容について必要な個人情報保護等の適切な措置を講じたうえで、可能な限り公表する方向で検討し、その結果を踏まえ措置すべきである。以上により、予備試験を通じて法曹を目指す者が法科大学院修了者と比べて不利益に扱われないようにする。

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高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

(高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係)