資料5 法科大学院の組織見直しを促進するための公的支援の見直しについて

平成22年9月16日
文部科学省

1.概要

中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会の提言を受け,深刻な課題を抱える法科大学院の自主的・自律的な組織見直しを促進するため,公的支援の在り方を見直す。

※「法曹養成制度に関する検討ワーキングチーム」(文部科学副大臣及び法務副大臣主宰)が平成22年7月6日に取りまとめた検討結果においても,公的支援の見直しを検討すべきとの意見が述べられている。

2.対象

公的支援の見直しを行う対象は,下記の2つの指標の両方に該当する法科大学院とする。

(指標1)

公的支援の見直し実施年度の前年度の入学者選抜における競争倍率(受験者数/合格者数)が2倍未満

(指標2)

公的支援の見直し実施年度の前年度までに(1),(2)のいずれかに該当する状況が3年以上継続(例えば,1年目は(1)のみ該当,2年目は(2)のみ該当,3年目は(1)(2)両方に該当,という場合も含まれる。)。

(1)新司法試験の合格率(合格者数/修了年度を問わない全受験者数)が全国平均合格率の半分未満

(2)直近修了者(新司法試験の直前の3月に修了した者)のうち新司法試験を受験した者の数が半数未満,かつ直近修了者の合格率(直近修了者の合格者数/直近修了者の受験者数)が全国平均合格率の半分未満

3.具体的措置

国立大学法人運営費交付金及び私立大学等経常費補助金を減額。
(ただし,最終的な決定は,予算編成の状況に応じて行う。)

【国立大学法人運営費交付金】
法科大学院の設置時に措置した額(但し,学生経費相当分を除く。)を考慮して減額調整。      

【私立大学等経常費補助金】
国立大学法人運営費交付金と同程度の額を目安に減額調整

4.実施時期

平成24年度予算から対応

【国立大学法人運営費交付金】
平成24年度予算編成での減額査定で対応

【私立大学等経常費補助金】
平成24年度配分で対応

例えば,平成24年度予算に反映させる場合,(指標1)(指標2)は以下のとおりとなる。

・ (指標1)には,平成23年度入学者選抜の結果を使用。
・ (指標2)には,平成21~23年の各年の新司法試験の結果を使用。

<参考1>法科大学院における組織見直しの促進方策について

平成22年3月12日
中央教育審議会大学分科会
法科大学院特別委員会

 1.現状

(1)法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度は,司法制度改革審議会(平成11年7月に内閣の下に設置)が平成13年6月にとりまとめた意見書を踏まえ,法曹人口の拡大や裁判員制度と並ぶ内閣全体として取り組む司法制度改革の大きな柱として,その導入について平成14年3月に司法制度改革推進計画で閣議決定された(司法制度改革に内閣全体で取り組むために平成13年12月に司法制度改革推進本部を設置)。

(2)法科大学院の設置については,上記の審議会意見書で,「基準を満たしたものを認可することとし,広く参入を認める仕組みとすべき」と明記されたことを踏まえ,関係者の自発的創意に基づき,基準を満たしたものを設置認可した。

(3)また,設置認可後も,開設年度に入学した学生が修了する年度までの設置計画の履行状況や,設置認可時の留意事項への対応状況について,大学設置・学校法人審議会が調査を実施している(設置計画履行状況等調査)。

(4)さらに,法科大学院に対しては,機関別評価とは別に,文部科学大臣から認証された評価機関(認証評価機関)により,法科大学院の教育研究活動の状況について評価が行われ,認証評価機関が定める評価基準に適合しているか否かの認定(適格認定)が行われている(認証評価)。

 ※ 平成21年3月までに認証評価を受けた法科大学院:68校
   (内訳)国立:21校(5校),公立2校(0校),私立:45校(17校)→( )は不適格

(5)本委員会は,これまでの調査などで指摘された問題点を含めて,平成21年4月17日に「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(報告)」をとりまとめ,法科大学院教育の改善方策を提言した。

(6)本報告の提言に基づき,各法科大学院において,平成22年度の入学定員の見直しなど,改善が進められた。

 ※ 国立大学:1,760人→1,361人(マイナス399人,マイナス22.7%)
     私立大学:3,865人→3,423人(マイナス442人,マイナス11.4%)
 ※ 平成22年度以前に削減を実施していない法科大学院19校は,平成23年度の削減を検討中。

(7)また,本報告で,各法科大学院の取組状況を把握し,改善を継続的に促していく組織を本委員会の下に設置することもあわせて提言した。

(8)これに従い,本委員会の下に,法科大学院関係者,法務省参事官,司法研修所教官,弁護士により構成される,ワーキング・グループを設置(平成21年2月24日)し,改善状況調査(平成21年4月~平成22年1月)を行い,第1回目の調査結果を,平成22年1月22日開催の本委員会で報告した。

 1.改善の努力の継続が必要…12校(国立3校,私立9校)
 2.大幅な改善が必要…14校(国立3校,私立11校)

 2.法科大学院特別委員会における意見の概要

【公的支援の見直し】

(1)改善状況調査の結果を踏まえた,本委員会の審議においては,

1.各法科大学院では,本委員会が平成21年4月に提言した改善方策を踏まえて,教育の改善が進められていること
2.その一方で,入学者選抜における競争性や授業内容,成績評価,教育体制に深刻な課題を抱える法科大学院が存在し,それらの法科大学院はほぼ共通して司法試験の合格状況が低迷していること
3.その中には,組織の見直し(統廃合も含む。)の検討に着手していないなど,現状に対して深刻な認識を持っていない法科大学院が見られること

などが指摘された。

※平成21年4月17日中教審法科大学院特別委員会「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(報告)」(抜粋)
 これまでの司法試験において,合格者が全く又はごく少数しか出ない状況が見られる法科大学院については,その在り方について,抜本的な見直しが必要である。 

(2)(1)の状況を踏まえれば,これらの課題を解決されないままに放置することは,法科大学院制度全体の信頼にかかわるため,深刻な課題を抱える法科大学院において,すみやかに抜本的な見直しが実施されることが急務である。
 よって,文部科学省は,これらの法科大学院に対する組織の自主的・自律的な見直しを促すために,法科大学院に対する公的支援の在り方について見直しを検討すべきである。 

【見直しの観点】

 (3)(2)において提言した法科大学院に対する公的支援の在り方の見直しにあたっては,以下の観点から検討を行うべきである。

1.法科大学院に対する国立大学法人運営費交付金及び私学助成における支援の在り方について見直すこと
2.見直しの対象となる法科大学院は,(1)で指摘したような,深刻な課題を抱える一部の法科大学院に限定すること
3.見直しの対象の選定は,客観的かつ明確な基準に基づいて行うことが望ましく,本委員会の議論を踏まえつつ,文部科学省において基準を策定すべきであること 

(4)(3)3.の見直しの対象の選定については,

1.授業内容,成績評価,教育体制に深刻な課題が見られること,
2.司法試験の合格状況に大きな問題があること,
3.入学者選抜の機能が働いておらず,入学者の質の確保が困難となっていること,

などを考慮して判断することが考えられる。
 そのうち,司法試験の合格状況を指標として用いるにあたっては,平成22年司法試験の結果を反映して見直しを実施できるよう,すみやかに検討に着手する必要があるが,一方で,過度に高い指標により,すべての法科大学院を司法試験の合格率競争に巻き込み,法科大学院制度を歪めることのないよう配慮する観点から,合格状況に極めて大きな問題が続いている法科大学院に限定するべきである。

【関係機関における見直し等】

(5)関係機関においても,派遣教員などの公的支援の在り方について,早急に見直しを検討することが期待される。

(6)今回の措置の導入にあたっては,法科大学院を中核とする法曹養成制度の理念を踏まえた法科大学院教育と司法試験との連携をより確実なものにすることが求められる。
 現在,文部科学省及び法務省において実施されている「法曹養成制度に関する検討ワーキングチーム」における,法曹養成全体の在り方の検証に係る議論なども踏まえ,本委員会及び文部科学省において引き続き取り組んでいくことが必要である。

<参考2>法曹養成制度に関する検討ワーキングチームにおける検討結果(取りまとめ)
(平成22年7月6日)(財政支援見直し関係部分の抜粋)

第3 法科大学院教育の問題点等と改善方策の選択肢について

2 問題点・論点及び改善方策の選択肢

(3) 法科大学院の入学定員の削減

ウ 教育内容や教育体制に多くの課題を抱えているにもかかわらず,改善が進んでいない法科大学院に対して,統廃合を含む組織見直しを促す必要があることについては異論はなかった・・・(中略)・・・
 また,法科大学院の統廃合を含む組織見直しを実効的に促進するために,認証評価を活用すべきであるとの指摘や,平成22年3月に法科大学院特別委員会が提言したとおり,新司法試験の合格実績を十分に挙げていない法科大学院について財政的支援の見直し(国立大学法人運営費交付金・私学助成金を削減すること)や人的支援の中止(法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律(以下「派遣法」という。)に基づく裁判官及び検察官の教員としての派遣要請に応じないこと)といった措置を検討すべきであるとの意見があった

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