資料5 法科大学院における組織見直しの促進方策について(案)

平成22年 月 日
中央教育審議会大学分科会
法科大学院特別委員会

1 現状

(1)法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度は,司法制度改革審議会(平成11年7月に内閣の下に設置)が平成13年6月にとりまとめた意見書を踏まえ,法曹人口の拡大や裁判員制度と並ぶ内閣全体として取り組む司法制度改革の大きな柱として,その導入について平成14年3月に司法制度改革推進計画で閣議決定された(司法制度改革に内閣全体で取り組むために平成13年12月に司法制度改革推進本部を設置)。

(2)法科大学院の設置については,上記の審議会意見書で,「基準を満たしたものを認可することとし,広く参入を認める仕組みとすべき」と明記されたことを踏まえ,関係者の自発的創意に基づき,基準を満たしたものを設置認可した。

(3)また,設置認可後も,開設年度に入学した学生が修了する年度までの設置計画の履行状況や,設置認可時の留意事項への対応状況について,大学設置・学校法人審議会が調査を実施している(設置計画履行状況等調査)。

(4)さらに,法科大学院に対しては,機関別評価とは別に,文部科学大臣から認証された評価機関(認証評価機関)により,法科大学院の教育研究活動の状況について評価が行われ,認証評価機関が定める評価基準に適合しているか否かの認定(適格認定)が行われている(認証評価)。
  ※ 平成21年3月までに認証評価を受けた法科大学院:68校
   (内訳)国立:21校(5校),公立2校(0校),私立:45校(17校)→( )は不適格

(5)本委員会は,これまでの調査などで指摘された問題点を含めて,平成21年4月17日に「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(報告)」をとりまとめ,法科大学院教育の改善方策を提言した。

(6)本報告の提言に基づき,各法科大学院において,平成22年度の入学定員の見直しなど,改善が進められた。
  ※ 国立大学:1,760人→1,361人(399人減,22.7%減)
   私立大学:3,865人→3,423人(442人減,11.4%減)
  ※ 平成22年度以前に削減を実施していない法科大学院19校は,平成23年度の削減を検討中。

(7)また,本報告で,各法科大学院の取組状況を把握し,改善を継続的に促していく組織を本委員会の下に設置することもあわせて提言した。

(8)これに従い,本委員会の下に,法科大学院関係者,法務省参事官,司法研修所教官,弁護士により構成される,ワーキング・グループを設置(平成21年2月24日)し,改善状況調査(平成21年4月~平成22年1月)を行い,第1回目の調査結果を,平成22年1月22日開催の本委員会で報告した。
    1  改善の努力の継続が必要…12校(国立3校,私立9校)
    2  大幅な改善が必要…14校(国立3校,私立11校)

2 法科大学院特別委員会における意見の概要

公的支援の見直し 

(1)改善状況調査の結果を踏まえた,本委員会の審議においては,

  1. 各法科大学院では,本委員会が平成21年4月に提言した改善方策を踏まえて,教育の改善が進められていること
  2. その一方で,入学者選抜における競争性や授業内容,成績評価,教育体制に深刻な課題を抱える法科大学院が存在し,それらの法科大学院はほぼ共通して新司法試験の合格状況が低迷していること
  3. その中には,組織の見直し(統廃合も含む。)の検討に着手していないなど,現状に対して深刻な認識を持っていない法科大学院が見られること

などが指摘された。

※ 平成21年4月17日中教審法科大学院特別委員会「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(報告)」(抜粋)
 これまでの司法試験において,合格者が全く又はごく少数しか出ない状況が見られる法科大学院については,その在り方について,抜本的な見直しが必要である。   

 (2)(1)の状況を踏まえれば,これらの課題を解決されないままに放置することは,法科大学院制度全体の信頼にかかわるため,深刻な課題を抱える法科大学院において,すみやかに抜本的な見直しが実施されることが急務である。
 よって,文部科学省は,これらの法科大学院に対する組織の自主的・自律的な見直しを促すために,法科大学院に対する公的支援の在り方について見直しを検討すべきである。   

見直しの観点 

(3)(2)において提言した法科大学院に対する公的支援の在り方の見直しにあたっては,以下の観点から検討を行うべきである。

  1. 法科大学院に対する国立大学法人運営費交付金及び私学助成における支援の在り方について見直すこと
  2. 見直しの対象となる法科大学院は,(1)で指摘したような,深刻な課題を抱える一部の法科大学院に限定すること
  3. 見直しの対象の選定は,客観的かつ明確な基準に基づいて行うことが望ましく,本委員会の議論を踏まえつつ,文部科学省において基準を策定すべきであること

(4)  (3)3の見直しの対象の選定基準としては,(1)2において「入学者選抜における競争性や授業内容,成績評価,教育体制に深刻な課題を抱える法科大学院が存在し,それらの法科大学院はほぼ共通して新司法試験の合格状況が低迷している」と指摘したことを踏まえ,例えば,新司法試験の合格率を指標として用いることが考えられる。この場合,平成22年新司法試験の結果を反映して見直しを実施できるよう,すみやかに検討に着手する必要がある。
  ただし,過度に高い指標により,すべての法科大学院を司法試験の合格率競争に巻き込み,法科大学院制度を歪めることのないよう配慮する観点から,合格率が著しく低迷している法科大学院に限定するべきであるため,2年連続して平均合格率の半分に満たない法科大学院を対象とすることなどが考えられる。
  ※ 改善の努力の継続が必要または大幅な改善が必要と指摘された法科大学院26校には,平成21年新司法試験の結果を含めて,合格率が2年連続して平均合格率の半分に満たない法科大学院18校(国立5校,私立13校)がすべて含まれている。       

その他の見直し   

 (5)さらに,見直しの基準の策定にあたっては,入学者選抜における競争倍率が2倍を下回るなど,入学者の質の確保が困難となっている法科大学院もあることなども考慮することが考えられる。

(6)また,関係機関においても,派遣教員などの公的支援の在り方について,早急に見直しを検討することが期待される。

(7)今回の措置の導入にあたっては,法科大学院を中核とする法曹養成制度の理念を踏まえた法科大学院教育と新司法試験との連携をより確実なものにすることが求められる。
 現在,文部科学省及び法務省において実施されている「法曹養成制度に関する検討ワーキングチーム」における,法曹養成全体の在り方の検証に係る議論なども踏まえ,本委員会及び文部科学省において引き続き取り組んでいくことが必要である。                      

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