資料2-2  法科大学院に係る認証評価の見直しに関する留意事項について

 細目省令改正案に規定される評価項目については、平成21年4月17日中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(報告)」(以下、「特別委員会報告」という。)を踏まえ、それぞれの項目について以下のような留意すべき事項が考えられる。

1 法科大学院に係る認証評価項目について

イ 教育活動等の状況に係る情報の提供に関すること 

【特に留意すべき事項】
○ 各法科大学院が、特別委員会報告において積極的に情報提供を行うべき事項として例示された事項等の基本的な情報について、法科大学院案内、入学者募集要項やホームページ等を通じて、自ら主体的に入学希望者をはじめとする社会一般に対して提供しているか評価する基準を設定することが求められる。

【特別委員会報告関連部分】
○ 今後,各法科大学院においては,例えば,入学者選抜,教育内容,教員及び司法試験をはじめとする修了者の進路等の情報を一層,積極的に提供していく必要がある。
(特別委員会報告P29「第4 2積極的な情報公開の促進」)

(特別委員会報告で提言された各法科大学院において提供すべき情報の例)
・入学者選抜に関するもの(志願者数,志願倍率,受験者数,合格者数,入学者数,配点基準,適性試験の平均点・最低点など)
・教育内容等に関するもの(カリキュラム,到達目標,進級・修了基準,進級率など)
・教員に関するもの(担当教員の教育研究業績など)
・司法試験をはじめとする修了者の進路等に関するもの(修了者数,修了率,司法試験受験者数・合格者数・合格率及び進路など)
・学生への生活支援に関するもの(奨学金制度など)

ロ 入学者の選抜における入学者の適性の適確な評価及び多様性の確保に関すること

【特に留意すべき事項】
○ 入学者選抜における競争的な環境を整え、入学者の質を確保するために、平成23年度以降、適性試験実施機関が総受験者数や得点分布状況等を考慮して毎年設定する統一的な入学最低基準点が、各法科大学院において活用されているか評価する項目を設定することが求められる。
○ 特に、各法科大学院における入学者選抜において、社会人を含めたすべての受験者に対し、統一的な入学最低基準点が厳格に運用されているか確認する必要がある。

【特別委員会報告関連部分】
○ 現時点で,競争倍率(受験者数/合格者数)が2倍を下回っているなど,競争性の確保が困難になっている法科大学院については,質の高い入学者を確保するため,早急に入学定員の見直しなど,競争的な環境を整えることが不可欠である。
(特別委員会報告P3「第1 1競争性の確保」)
○ 認証評価において,各法科大学院における入学者の適性試験の得点状況を調査し,当該年度の入学最低基準点に照らして適切に運用されているか否かを評価することが必要である。
(特別委員会報告P4「第1 2適性試験の改善」)
○ 認証評価の基準においては,法科大学院教育の質の保証の観点から,例えば,適性試験の統一的最低基準の運用状況,厳格な成績評価・修了認定の状況(共通的な到達目標の達成状況を含む),教員の教育研究上の業績・能力,修了者の進路(司法試験の合格状況を含む)などを重点評価項目とする必要がある。
(特別委員会報告P26「第4 1教育水準と教員の質に重点を置いた認証評価」)

ハ 専任教員の適正な配置をはじめとする教員組織に関すること

【特に留意すべき事項】
○ 専任教員の能力、科目適合性及び実績等を踏まえ、年齢構成にも配慮しながら授業科目に応じて適切に配置されているか評価する項目を設定し、より厳格な評価を実施することが求められる。

【特別委員会報告関連部分】
○ 各法科大学院においては,法律基本科目をはじめとする法科大学院の教育上主要な科目について,年齢構成にも配慮しながら,適切に専任教員を配置し,十分な教育体制を確保すべきである。
○ 認証評価機関による評価においては,当該分野の状況などを踏まえながら,教員の資質・能力・実績について,適切に評価が行われることが期待される。
(特別委員会報告P21「第3 1質の高い専任教員の確保」)

※ 「ニ 在学する学生の数の収容定員に基づく適正な管理に関すること」に関しては、特別委員会報告における特段の提言なし

ホ 教育上の目的を達成するための体系的な教育課程の編成に関すること

【特に留意すべき事項】
○ 平成21年度中に策定予定の共通的な到達目標を踏まえ、特定の科目群に偏りのない体系的な教育課程の編成を実施しているか評価するための基準の設定が求められる。
○ また、その際、当該教育課程における教育内容が、新司法試験の受験指導となっていないか確認する必要がある。

【特別委員会報告関連部分】
○ 各法科大学院は,修了者の共通的な到達目標の達成度を評価するため,厳格な成績評価による単位認定・進級判定及び修了認定に取り組むとともに,各認証評価機関においては,法科大学院修了者の共通的な到達目標の達成に向けた各法科大学院の取組を適切に評価することが期待される。
(特別委員会報告P10「第2 1共通的な到達目標の設定と達成度評価方法」)
○ 今後,法学未修者の教育をより一層充実させるため,司法制度改革の理念・趣旨に反して法律基本科目以外の授業科目群を軽視することにならないよう十分に留意しながら,授業科目やその内容について,各科目群(法律基本科目,法律実務基礎科目,基礎法学・隣接科目,展開・先端科目)に即して適切な科目区分整理を行い,偏りのない履修・学修の確保に配慮しつつ,法律基本科目の質的充実はもとより量的充実を図る必要がある。
○ 認証評価機関における評価に当たっても,上記の単位数や教育方法の考え方に従い,法律基本科目に関わる評価基準や解釈指針及びその適用の在り方について,今後の検討が必要である。
(特別委員会報告P13「第2 2教育内容の充実と厳格な成績評価・修了認定の徹底」)
○ 認証評価の基準においては,法科大学院教育の質の保証の観点から,例えば,適性試験の統一的最低基準の運用状況,厳格な成績評価・修了認定の状況(共通的な到達目標の達成状況を含む),教員の教育研究上の業績・能力,修了者の進(司法試験の合格状況を含む)などを重点評価項目とする必要がある。
(特別委員会報告P26「第4 1教育水準と教員の質に重点を置いた認証評価」)

※ 「へ 一の授業科目において同時に授業を行う学生の数の設定に関すること」に関しては、特別委員会報告における特段の提言なし

ト 授業の方法に関すること

【特に留意すべき事項】
○ 特別委員会報告の提言を踏まえ、双方向・多方向的な授業方法を基本とした適切な授業方法であるか評価する項目を設定することが求められる。

【特別委員会報告関連部分】
○ 法学未修者1年次においては,法学の基礎知識の定着とともに,法的思考力の修得が求められていることから,授業の実施については,同一の授業科目の中でも,学修のテーマや学生の習熟度に応じて,双方向・多方向的な授業方法を基本としつつ,講義形式による授業方法との適切な組み合わせを行うなど,授業方法の一層の工夫が必要である。
○ 認証評価機関における評価に当たっても,上記の単位数や教育方法の考え方に従い,法律基本科目に関わる評価基準や解釈指針及びその適用の在り方について,今後の検討が必要である。
(特別委員会報告P13「第2 2教育内容の充実と厳格な成績評価・修了認定の徹底」)

チ 学修の成果に係る評価及び修了の認定の客観性及び厳格性の確保に関すること

【特に留意すべき事項】
○ 平成21年度中に策定予定の共通的な到達目標を踏まえ、GPA制度の活用等による厳格な成績評価・修了認定が実施されているか評価する項目を設けることが求められる。
○ その際、GPA制度や進級制度の導入状況について形式的に評価するのではなく、当該制度が、実質的に機能し、厳格な成績評価・修了認定が実施されているか評価することが重要である。

【特別委員会報告関連部分】
○ 法学未修者1年次における基本分野の法律に関する基礎的な学修は,1年次以降の学修の前提となるものであるから,1年次における成績評価・単位認定及び2年次への進級判定は厳格に行われる必要がある。
○ 認証評価機関における評価に当たっても,上記の単位数や教育方法の考え方に従い,法律基本科目に関わる評価基準や解釈指針及びその適用の在り方について,今後の検討が必要である。
(特別委員会報告P13「第2 2教育内容の充実と厳格な成績評価・修了認定の徹底」)
○ 厳格な成績評価を徹底するため,一部の成績区分への偏りが生じることのないよう,適切な成績分布の確保が必要であり,また,これを前提として,GPA制度を進級判定や修了認定において積極的に活用することも望まれる。
 (特別委員会報告p19「第2 2教育内容の充実と厳格な成績評価・修了認定の徹底」)

リ 授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究の実施に関すること

【特に留意すべき事項】
○ 特別委員会報告の提言を踏まえ、各法科大学院において、適切なファカルティ・ディベロップメント(教員の職能開発)が実施され、その充実が図られているか評価する項目を設定することが求められる。

【特別委員会報告関連部分】
○ 教員の教育能力の向上を図るため,各法科大学院におけるFD(ファカルティ・ディベロップメント)を充実させるとともに,その成果を授業内容・方法の不断の改善につなげていく体制を整備する必要がある。
○ 教員の教育能力についても,適切な評価の在り方や,評価の結果が改善に反映されるような仕組みを検討する必要がある。
(特別委員会報告P25「第2 4教員の教育能力の向上」)

ヌ 学生が1年間又は1学期に履修科目として登録することができる単位数の上限の設定に関すること

【特に留意すべき事項】
○ 履修登録単位の上限の設定については、引き続き36単位を標準とする考え方を維持しつつも、法学未修者教育の充実の観点から、各法科大学院の判断により法学未修者1年次については、配当する法律基本科目を6単位増加させ、最大42単位とすることを認めるという特別委員会報告の提言を踏まえた評価を実施することが求められる。なお、3年次の履修登録上限については、引き続き、44単位とする。
○ 法学未修者1年次における当該増加単位は、あくまで法律基本科目に係る学修を補完することを目的としており、新司法試験の受験対策の実施や過剰な学修範囲の拡大等により法科大学院生の自学自修を妨げる結果とならないよう留意する必要がある。

【特別委員会報告関連部分】
○ とりわけ,法学未修者1年次における法律基本科目の基礎的な学修を確保するため,各法科大学院が法律基本科目の単位数を6単位程度増加させ,これを1年次に配当することを可能にする必要がある。その場合,自学自習時間の確保などに配慮するため,履修登録単位数の上限を36単位とするこれまでの考え方を原則として維持しながら,法学未修者1年次については,これを最大42単位とすることを認める弾力的な取扱いが必要である。この取扱いが,法学未修者1年次における法律基本科目の充実を図る趣旨であることに鑑み,法学未修者の修了要件単位数についても,各法科大学院がこれを増加させることができるような弾力的な取り扱いを行う必要がある。
○ 認証評価機関における評価に当たっても,上記の単位数や教育方法の考え方に従い,法律基本科目に関わる評価基準や解釈指針及びその適用の在り方について,今後の検討が必要である。
(特別委員会報告P13「第2 2教育内容の充実と厳格な成績評価・修了認定の徹底」)

ル 法学既修者の認定に関すること

【特に留意すべき事項】
○ 特別委員会報告の提言を踏まえ、履修したものとみなす科目に対応した法学既修者認定試験の実施等がなされているか評価する必要がある。

【特別委員会報告関連部分】
○ 法学既修者の質を確保し,修業年限の1年短縮という制度が適切に運用されるために,各法科大学院で実施される法学既修者認定試験の試験科目と履修したものとみなす科目の関係につき統一的な運用を図ることが必要である。
 (特別委員会報告P6「第2 3法学既修者認定の厳格化」>

※ 「ヲ 教育上必要な施設及び設備に関すること」「ワ 図書その他教育上必要な資料の整備に関すること」に関しては、特別委員会報告における特段の提言なし

カ 法曹養成目的の達成状況など法科大学院の課程を修了した者の進路(司法試験の受験・合格状況を含む)に関すること

【特に留意すべき事項】
○ 法科大学院の設置目的にかんがみ、新司法試験の合格状況等を含む、法科大学院修了者の進路について評価する基準を設定することが求められる。
○ 法科大学院修了者の進路については、新司法試験の合格状況や法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)への進路のみではなく、各法科大学院の掲げる人材育成の目標を踏まえた、企業や官公庁等の多様な職域への進路を含むものであることに留意する必要がある。
○ 特に、新司法試験の合格状況については、単に新司法試験合格率等の数値的指標のみで判断するのではなく、合格状況の分析やその改善に向けた教育内容・教育体制の見直しが適切に実施されているかなど、法科大学院の取組について総合的に評価される必要がある。
○ 法科大学院修了者の進路については、本人との連絡が取れない場合がある等、全員の把握が難しい現状にあるが、各法科大学院においては可能な限りその把握に努めることが求められる。    
○ また、当該状況を踏まえ、法科大学院修了者の進路の評価にあたっては、単に把握状況についての数値的指標のみで判断するのではなく、法科大学院において把握のための適切な取組が行われているか評価する必要がある。

【特別委員会報告関連部分】
○ 司法試験の合否のみにより法科大学院の教育成果のすべてを評価することは適切とはいえないが,法曹を養成するという法科大学院の設置の目的に鑑みれば,3回の司法試験の受験の結果,修了者のうち,司法試験に合格し,法曹として活躍できる者の割合が相当に低い状況が継続的に見られる法科大学院については,入学定員数の見直しを含めた適切な入学者選抜,教育水準の確保・向上並びに,厳格な成績評価及び修了認定の徹底などを担保するための方策を早急に講じ,現状の改善を図る必要がある。
○ なお,これまでの司法試験において,合格者が全く又はごく少数しか出ない状況が見られる法科大学院については,その在り方について,抜本的な見直しが必要である。
(特別委員会報告P20「第2 3司法試験との関係」)
○ 認証評価の基準においては,法科大学院教育の質の保証の観点から,例えば,適性試験の統一的最低基準の運用状況,厳格な成績評価・修了認定の状況(共通的な到達目標の達成状況を含む),教員の教育研究上の業績・能力,修了者の進路(司法試験の合格状況を含む)などを重点評価項目とする必要がある。
(特別委員会報告P26「第4 1教育水準と教員の質に重点を置いた認証評価」)

2 重点評価項目の設定について

【特に留意すべき事項】
○ 各認証評価機関において、特別委員会の報告で例示された項目を踏まえて、複数の項目を重点評価項目として設定し、当該項目の評価状況を総合的に勘案して適格認定を行うことを求める。
○ 重点評価項目の設定に当たっては、特別委員会の報告で例示された項目以外にも、各認証評価機関の判断で、必要と思われる項目を付加することも考えられる。
○ 重点評価項目として設定されていない項目についても、適格認定にあたっての総合的な判定の要素として考慮することは可能である。
○ 総合的に「適格」と認定された場合であっても、改善が必要な事項が認められた法科大学院に対しては、評価結果において当該項目に係る改善を求めることが必要である。
○ 明白かつ重大な法令違反については、適格認定にあたっての重要な判断要素であり、これについては、重点評価項目か否かにかかわらず、評価結果の中で適切に取り扱われる必要がある。            

【特別委員会報告関連部分】
○ 認証評価の基準においては,法科大学院教育の質の保証の観点から,例えば,適性試験の統一的最低基準の運用状況,厳格な成績評価・修了認定の状況(共通的な到達目標の達成状況を含む),教員の教育研究上の業績・能力,修了者の進路(司法試験の合格状況を含む)などを重点評価項目とする必要がある。
(特別委員会報告P26「第4 1教育水準と教員の質に重点を置いた認証評価」)

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高等教育局専門教育課専門職大学院室

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