質を重視した評価システムの構築について(案)

1.教育水準と教員の質に重点を置いた認証評価

  • 認証評価においては、次の2巡目のサイクルに向けて、質の評価に軸足を置いた評価基準・方法などへの改善が求められる。
  • 認証評価の基準においては、法科大学院教育の質の保証の観点から、例えば、適性試験の統一的最低基準の運用状況、共通的な到達目標の達成状況、厳格な成績評価・修了認定の状況、教員の教育研究上の業績・能力、修了生の進路(司法試験の合格状況を含む)などの観点を、重点的に行う必要がある。
  • 「不適格」の認定については、社会(特に入学を希望する者)に混乱を与えないような運用を図るよう、上記の重点評価項目を踏まえながら、基準・方法について見直しを図る必要がある。
  • 認証評価機関間で不適格認定の基準・方法については、3つの認証評価機関の間で調整を図り、共通認識を持つ必要があり、3つの認証評価機関が主体的に協議機関を設置することが望まれる。

<認証評価基準について>

 認証評価機関による法科大学院に対する評価は、平成18年度から開始され、平成20年度までにすでに68校の評価が終了し、ほぼ一巡目が終わりつつある。平成20年度には、44校が認証評価を受けることになっている。現行の認証評価については、3つの認証評価機関の間で評価の方法・内容にバラツキがある、個々の評価項目の形式的な評価にとどまっている、評価項目が広範にわたり、過度に微細にこだわった評価となっている、といった指摘がある。このため、次の2巡目のサイクルに向けて、質の評価に軸足を置いた評価基準・方法などへの改善が求められる。その際、評価基準は、数値で杓子定規で測るものとならないよう十分に精選されるべきであり、特に法科大学院教育の質の保証の観点から、以下の事項を重点的な事項として定められるべきである。

  • 入学者の質(適性試験の状況(入学最低基準の運用状況など)、競争倍率等の入学者選抜状況など)
  • 修了者の質(教育課程の編成の状況(授業科目間のバランス、共通的な到達目標の達成状況など)、厳格な成績評価の実施状況、司法試験の合格状況など)
  • 教育体制の確保(教員の教育研究上の業績・能力、適正な入学定員の規模など

<不適格認定について>

  認証評価機関による評価が実施された68校のうち適格と認定されなかった法科大学院は22校となっている。これまでに適格と認定されなかった理由は、入学者選抜から教員の組織体制まで広範かつ多岐にわたっており、そのレベルも、法令違反に抵触するおそれがあるものから、評価機関独自の求める高い基準に達していないものまでかなりの幅が見られる。また、いわゆる「不適格認定」を出す際も、評価項目が一つでも「不適格認定」が出る場合には全体として「不適格認定」を行う機関、複数の項目の「不適格認定」をもって、又は法令違反などの重大な評価項目において「不適格認定」が出た場合に全体として「不適格認定」を出す機関と、その出し方に大きなバラツキが見られる。また、「不適格認定」は、法科大学院としての適格性を有さないとのイメージが社会的に先行し、認証評価機関が法科大学院に改善を勧告するといった実体とイメージのギャップが生じている。
  このため、「不適格」の認定については、社会(特に入学を希望する者)に混乱を与えないような運用を図るよう、上記の重点評価項目を踏まえながら、法科大学院の教育の質に重大な欠陥が認められるときに限定し、一層厳格に行うよう、客観性・透明性・予測可能性を確保した基準・方法となるよう見直しを図る必要がある。
  その際、認証評価機関間で不適格認定の基準・方法については、各認証評価機関それぞれの特色・独自性を損なわないようにも配慮しながら、3つの認証評価機関の間で調整を図り、共通認識を持つ必要があり、3つの認証評価機関が主体的に協議機関を設置することが望まれる。
  なお、法科大学院に対する評価以外にも、例えば、機関別認証評価や国立大学法人評価など他の評価も実施されており、各法科大学院に対して負担が重くなっている。このため、評価機関間の効率的な連携が望まれ、他の評価と同様の基準で重複を避けることや、共同して評価の視点の調整や提出資料の共有化などを図ることが期待される。

<参考:認証評価機関ごとの適格認定の方法>

【日弁連法務研究財団】
○ 47の評価基準を以下の3種に分類して行う。
(1)設置基準等の法令に由来する基準:一つでも不適合又はD評価であれば当該大学院は「不適格」
(2)法令由来基準以外で、充足が必須の基準:一つでも不適合又はD評価であれば、当該大学院は原則として「不適格」(ただし、他の基準の結果も考慮して総合的に判断)
(3)法令由来基準以外で、充足が望ましい評価基準:不適合又はD評価であっても、それだけで当該大学院を「不適格」とはしない

【大学評価・学位授与機構】

  • 54の評価基準のうち一つでも満たされていない場合は不適格となる。

【大学基準協会】

  • 評価の視点は【レベル1】(法科大学院に必要とされる最も基本的な事項)と【レベル2】(法科大学院が行う教育研究の質を今後も継続的に維持・向上させていくために点検・評価することが高度に望まれる事項)の2段階に分かれる。
  • 【レベル1】のうち、法令等の遵守に関する事項(◎を付した評価の視点)については法令遵守状況に重大な問題がある場合は、認定しない。法令に準じて法科大学院に求める基本的事項(○を付した評価の視点)に問題がある場合は、「勧告」を付す。また、重大な問題がある場合や、多くの点で問題がある場合は、認定しない。

 

2.積極的な情報公開の促進

  • 今後、各法科大学院においては、例えば、入学者選抜、教育内容、司法試験、教員、修了者の進路等の情報を一層、積極的に提供していく必要がある。

  法科大学院の修了生は、司法試験の受験資格が付与されることから、法科大学院の教育の活動状況について社会的な関心が高い。また、優れた法曹家になることを志望する法科大学院入学希望者にとっても、どの法科大学院に入学するべきか選択する際に、各法科大学院の教育の活動状況に関する情報は、必要不可欠である。現在、各法科大学院においては、入学者選抜の状況、教育内容・方法や修了者の進路などについて、社会に対して一定の情報提供がなされているが、なお十分ではないとの指摘もなされている。このため、今後、各法科大学院においては、例えば、以下のような情報を一層、積極的に提供していく必要がある。

  • 入学者選抜に関するもの(志願者数、志願倍率、受験者数、合格者数、入学者数、配点基準、適性試験の平均点・最低点など)
  • 教育内容等に関するもの(カリキュラム、到達目標、進級・修了基準、進級率など)
  • 司法試験に関するもの(受験者数、合格者数、合格率など)
  • 教員に関するもの(担当教員の教育研究業績など)
  • 修了者に関するもの(修了者数、修了率、進路先など)
      このような各法科大学院における情報(特に修了者の進路など)については、総合的に、法科大学院の自主的な組織が集積・管理しておくことが期待される。

 

3.フォローアップ体制の構築

  • 各法科大学院において、教育活動が法令に従って適切に行われているか、又改善のための真摯な取り組みが推進されているかについて、フォローアップを行うための組織を本委員会に設置し、実態を把握しながら、必要な改善を各法科大学院に対して継続的に促していく仕組みを構築する。
  • 各法科大学院における改善の進捗状況を踏まえながら、必要に応じて、法令違反の場合は、学校教育法に基づく措置等の適切な対応が取られることが望まれる。

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高等教育局専門教育課専門職大学院室

(高等教育局専門教育課専門職大学院室)