教育体制の充実について(案)

1.質の高い専任教員の確保

  • 各法科大学院においては、法律基本科目をはじめとする法科大学院の教育上主要な科目について、年齢構成にも配慮しながら、適切に専任教員を配置し、十分な教育体制を確保すべきである。
  • 平成25年度まで認められている学部等との教員数のダブルカウントの暫定措置については、延長しないこととする。各法科大学院においては、可能な限り早いうちに自主的にこれを解消することが望まれる。
  • 認証評価機関による評価においては、当該分野の状況などを踏まえながら、教員の資質・能力・実績について、適切に評価が行われることが期待される。

 多くの法科大学院において、法律基本科目(特に民事訴訟法、刑事訴訟法、民法、行政法など)や展開・先端科目(特に司法試験の選択科目である知的財産法、環境法、経済法など)の専任教員の確保が困難となりつつある。すでに、認証評価機関による評価では、複数の法科大学院において、法律基本科目の専任教員の一部が適切に配置されていないことや、教員の年齢構成の偏りについて指摘されている。各法科大学院においては、法律基本科目をはじめとする法科大学院の教育上主要な科目について、年齢構成にも配慮しながら、適切に専任教員を配置し、十分な教育体制を確保すべきである。
 また、現状では、多くの法科大学院において専任教員数のダブルカウントが行われているが、そのほとんどが、教育体制の充実を図る観点から、将来的な解消のために計画的に教員の配置を行ってきている。このため、平成25年度まで認められている学部等との教員数のダブルカウントの暫定措置については、延長しないこととするとともに、各法科大学院においては、可能な限り早いうちに自主的にこれを解消することが望まれる。
 なお、これらの教員の組織体制や個別の教員の資質・能力・実績については、認証評価機関による評価において適切に評価が行われることが期待される。

2.入学定員の見直しと法科大学院の教育課程の共同実施・統合等の促進

  • 法科大学院教育の質の一層の向上のため、例えば、以下のような状況が見られる法科大学院については、自ら主体的に平成22年度の入学者からの入学定員の見直しを個別に検討する必要がある。
      ・入学定員の規模に比して質の高い教員の数を確保することが困難
      ・志願者が減少し競争倍率が低いため質の高い入学者を確保することが困難
      ・修了者の多く(例えば半数以上)が司法試験に合格していない状況が継続
  • また、上記のような状況にない法科大学院においても、教育体制の充実、入学者の質の確保や大量の司法試験不合格者の削減、などの観点から、平成22年度の入学定員の見直しに主体的に取組むことが望まれる。
  • 特に小規模の法科大学院や地方の法科大学院において、今後、単独では、質の高い教員が十分確保できず、充実した法律基本科目や幅広い先端・展開科目の提供が困難となるなど、教育水準の継続的・安定的な保証について懸念が生じている場合には、他の法科大学院との間で教育課程の共同実施・統合等を図ることを積極的に検討する必要がある。

 <入学定員の見直し>

 法科大学院の設置については、司法制度改革審議会意見書を踏まえ、関係者の自発的創意を基本としつつ、基準を満たしたものを認可することとし、広く参入を認める仕組みとなっており、現在74校の法科大学院が設置されるに至っている。しかしながら、現状においては、競争倍率が2倍を割っている法科大学院が約3分の1に達しており、一部の法科大学院においては、適性試験の成績が平均の半分にも達しない学生を入学させているケースが見られることや、法科大学院の約8割近くが、法律基本科目の専任教員の完全な確保は困難であると考えている。このような状況の中、今後、法科大学院教育の質の一層の向上を図るため、例えば、

  • 入学定員の規模に比して質の高い教員の数を確保することが困難、
  • 志願者が減少し競争率が低いため質の高い入学者を確保することが困難、
  • 修了者の多く(例えば半数以上)が3回の試験を経て司法試験に合格していない状況が継続、

といった状況が見られる法科大学院については、自ら主体的に平成22年度の入学定員の見直しを個別に検討する必要がある。
  また、そのような状況にない法科大学院においても、教育体制の充実、入学者の質の確保や大量の司法試験不合格者の削減、などの観点から、平成22年度の入学定員の見直しに取組み、法科大学院全体としての入学定員の適正化に寄与することが求められていると考える。
  なお、これらの定員の見直しが教育体制の強化を目的としていることに鑑みれば、その見直しに当たっては、教員数の削減により教育体制が脆弱になることのないよう配慮されるべきである。
  法科大学院の入学定員の見直しに当たっては、地域における法曹養成機関としての機能・実績を分析・評価し、適切な規模に留意しながら、全国的な適正配置にも配慮する必要がある。
  これらの取り組みによって、全体的な法科大学院全体の入学定員が一定程度削減され、法科大学院修了者が相当の割合で法曹資格を取得できるようになれば、優秀な法曹志望者の法科大学院への入学を促進することにつながることが期待される。

<法科大学院の教育課程の共同実施・統合等の促進>

  現在、入学定員50人以下の比較的小規模な法科大学院は36校で、全体の約半数近くとなっている。これらの小規模の法科大学院、特に地方の法科大学院の中には、入学志願者の確保や単独で質の高い教員が十分確保できず、充実した法律基本科目や幅広い先端・展開科目の提供が困難となるなど、教育水準の継続的・安定的な保証について懸念が生じている場合も見られる。すでに、平成22年度より、国公私立の大学間における教育課程の共同実施が可能となるよう制度改正がなされているところであり、このような法科大学院については、他の法科大学院との間で教育課程の共同実施・統合等を図るなど、教育体制の抜本的な見直しを積極的に検討する必要がある。なお、このような各法科大学院における組織体制の見直しが促進されるよう、必要な措置が講じられる必要がある。
 

3.教員養成体制の構築

  • ダブルカウントの暫定措置終了後も、法科大学院の教員が博士後期課程における研究指導に携わることにより、優れた研究・教育能力を備えた教員を育成していくことができるような制度的な配慮が必要である。
  • 法科大学院のカリキュラムにおいても、法科大学院の教員を志す学生のために、外国法や研究論文の作成などの選択的な学修ができるような科目配置を行うことが望まれる。
  • 法科大学院生が、法科大学院修了後に後期博士課程に進学することは、経済的な負担が大きいため、授業料免除や奨学金の充実、TA制度の活用など経済的支援の充実も図るべきである。

  法科大学院修了者のほとんどは法曹の道に進むことを希望するため、特に博士後期課程への進学を希望する者が減少してきており、将来的な法科大学院教員の養成に懸念が生じている。今後、ダブルカウントの暫定措置終了後、法科大学院の教員が博士後期課程における研究指導に携わることが難しくなれば、教員養成体制の確保に支障が生じることになる。このため、平成25年以降も、法科大学院の教員が後期博士課程において、優れた研究・教育能力を備えた教員を育成していくことができるような制度的な配慮が必要である。あわせて、1法科大学院で教員養成体制が構築できない場合は、他の研究科(博士課程・修士課程)との連携を図りながら、複数の法科大学院が、その一つを基幹校とした連携型の教員養成システムを構築することも考えられる。
  また、博士課程に進学するなどして教員を目指そうとする法科大学院修了者等については、経済的な負担が大きいが、奨学金など経済的な支援が十分でないとの指摘があり、法科大学院生が、法科大学院修了後に後期博士課程に進学することは、経済的な負担が大きいため、授業料免除や奨学金の充実、TA制度の活用など経済的支援の充実も図られる必要がある。
  一方、法科大学院のカリキュラムにおいては、研究論文の作成や外国法といった研究者養成に必要な基礎的な教育が十分なされる体制になっていないとの指摘がある。法科大学院のカリキュラムにおいても、法科大学院の教員を志す学生のために、外国法や研究論文の作成などの選択的な学修ができるような科目配置を行うよう配慮することも考えられ、その際、他の研究科・他専攻の履修単位数の法科大学院修了要件単位数への算入の仕方についても整理が必要である。

 

4.教員の教育能力の向上

  • 教員の教育能力の向上を図るため、各法科大学院におけるFD(ファカルティ・ディベロップメント)を充実させるとともに、その成果を授業内容・方法の不断の改善につなげていく体制を整備する必要がある。
  • 教員の教育能力についても、適切な評価のあり方や、評価の結果が改善に反映されるような仕組みを検討する必要がある。

  ほぼすべての法科大学院においてFDのための組織が設置され、FD活動の一環とし  て、主に学生による授業評価や教員相互の授業参観などが実施され、活発に行われている。しかしながら、これらの取組みの成果についての検証や教育内容・方法の改善への結びつけが十分に行われているとはいえない。特に、学生による授業評価や教員間の授業参観については、すべての法科大学院で実施され、その結果は授業を担当する教員にフィードバックされているものの、授業評価の結果が授業内容・方法の改善のために十分活用されているとは言えない状況も多く認められる。このため、教員の教育能力の向上を図るため、各法科大学院におけるFD(ファカルティ・ディベロップメント)を充実させるとともに、その成果を授業内容・方法の不断の改善につなげていく体制を整備する必要がある。
  このような各法科大学院におけるFDの活性化のためには、全国の法科大学院の教務担当者などの横の連携を構築することや、各法科大学院に優れた教育内容・方法をフィードバックしていくことを目的とした、全国的なFDの取り組みも期待される。これらのFDの取り組みに当たっては、教員の教育業績・能力についても、適切な評価のあり方や、評価の結果が改善に反映されるような仕組みを検討する必要がある。

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高等教育局専門教育課専門職大学院室

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