法科大学院特別委員会(第77回) 議事録

1.日時

平成28年11月30日(水曜日) 16時00分~18時30分

2.場所

文部科学省東館3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 平成28年司法試験予備試験の結果等について
  2. 法科大学院法学未修者選抜ガイドライン等に関する検討ワーキング・グループの審議状況について
  3. 法科大学院公的支援見直し強化・加算プログラムの見直しについて
  4. 法学部教育等の在り方について
  5. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)井上正仁委員
(専門委員)磯村保,上田信太郎,大貫裕之,笠井治,樫見由美子,片山直也,鎌田薫,木村光江,佐伯恒治,杉山忠昭,染谷武宣,土屋美明,長谷部由起子,日吉由美子,松下淳一,山本弘の各委員

文部科学省

義本大臣官房審議官(高等教育局担当),浅野専門教育課長,塩田専門職大学院室長,川﨑専門職大学院室室長補佐,真保専門教育課専門官

オブザーバー

(有識者)岩村正彦,加賀譲治,君嶋祐子,潮見佳男,瀬領真悟,三井正信

5.議事録

【井上座長】
 所定の時刻でございますので,第77回中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会を開催させていただきます。
 本日は,御案内のとおり,平成28年司法試験予備試験の結果について御報告を頂くとともに,法学教育等の在り方について,六つの大学の法学部長その他の先生方からヒアリングを行う予定にしております。本日も活発な御議論を,よろしくお願いいたします。
 まず,本日御出席いただいている法学部長その他の先生方について,事務局の方より御紹介いただきます。

【塩田専門職大学院室長】 
 それでは,本日,プレゼンをお願いしている順に御紹介させていただきます。
 京都大学法学部長・法学研究科長の潮見先生でいらっしゃいます。

【潮見教授】 
 潮見でございます。よろしくお願いします。

【塩田専門職大学院室長】 
 広島大学法学部長の三井先生でいらっしゃいます。

【三井教授】 
 三井でございます。よろしくお願いします。

【塩田専門職大学院室長】 
 慶應義塾大学法学部・法学研究科教授の君嶋先生でいらっしゃいます。

【君嶋教授】 
 君嶋でございます。よろしくお願いいたします。

【塩田専門職大学院室長】 
 同志社大学法学部・法学研究科教授の瀬領先生でいらっしゃいます。

【瀬領教授】 
 瀬領でございます。よろしくお願いいたします。

【塩田専門職大学院室長】 
 創価大学法務研究科長の加賀先生でいらっしゃいます。

【加賀教授】 
 加賀でございます。よろしくお願いします。

【塩田専門職大学院室長】
 なお,東京大学法学部長・法学政治学研究科長の岩村先生は遅れて到着の御予定でございます。
 以上でございます。

【井上座長】 
 では,先生方,後ほどよろしくお願いいたします。
 続きまして,事務局の方から,配付資料の確認をしてください。

【塩田専門職大学院室長】
 配付資料でございますが,大部にわたりますので,逐一の点検は省略させていただきますが,もし不足等ございましたら,事務局の方までよろしくお願いいたします。

【井上座長】
 それでは,議事に入りたいと思います。
 まず,11月4日に平成28年司法試験予備試験の結果が法務省より公表されました。これにつきまして,佐伯委員の方から資料のご説明をお願いします。また,前回の法科大学院特別委員会におきまして,司法試験結果に関するデータについても宿題となっていた点があるわけですが,その点についても併せて御説明を頂きたいと思います。よろしくお願いします。

【佐伯委員】
 法務省司法法制部の佐伯でございます。それでは,私から,平成28年司法試験予備試験の結果につきまして,説明申し上げます。資料はお手元の1-1から1-7まででございます。
 まず,資料1-1を御覧ください。予備試験の最終結果でございますが,合格者数が405人でありまして,昨年の合格者数394人から11人の増でございます。
 下段の表を御覧いただきたいと思います。「3 過去の推移」とあるところでございますが,こちらが平成23年からの推移をまとめたもので,本年の合格率が3.88%,昨年の合格率から比べまして,0.07ポイント増でございます。
 同じ資料,資料1-1の3ページを御覧いただけますでしょうか。3ページの一番下の表でございます。こちらは職種別の表でありまして,合格者のうち,御覧いただきますと,出願時,大学生が最も多くて178人,次いで,法科大学院生が153人となっております。
 続きまして,資料1-2でございます。出願時の申告から推測される予備試験受験時の属性などをまとめたものでございます。細かい数字等書いてございますが,また後ほど御覧いただければと思います。
 資料1-3,横組みの表でございますけれども,こちらは平成23年からの予備試験受験者,合格者につきまして,職業別人員数の推移をまとめたものでございます。法科大学院生,大学生とそれ以外とを分けて表にしてございます。
 続きまして,資料1-4を御覧いただきたいと思いますけれども,こちらの資料は予備試験の出願者,受験者,最終合格者の数を,法科大学院別に表にしたものでございまして,次の資料1-5は最終学歴が法科大学院である者についての詳細を表にしたものでございます。資料1-6と1-7はその大学のバージョンでございます。
 予備試験の結果についての資料は以上でございますが,引き続き,資料2を御覧いただきたいと思います。こちらは前回の会議におきまして,法科大学院の内訳を示した最終学歴別の表をお出ししたところ,法学部,非法学部別のデータも必要であるという御要望などがございましたので,資料2はそれを踏まえて作成した表でございます。法科大学院につきまして,既修・未修の別,法学部・非法学部の別にそれぞれの内訳が分かるような資料ということでございます。
 なお,同じ表につきまして,さらに,松下委員から,大学の内訳のデータも出せないかという御要望がございました。確認しましたところ,大学別のデータにつきましては,機械的な統計処理が可能な形での蓄積を現在行っておりませんので,事実上不可能であるということでございますけれども,御依頼があったことも踏まえまして,平成29年の司法試験からはそうした処理が可能となる形でデータ蓄積を試験的に行う方針でございます。
 私の説明は以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございました。
 それでは,ただいまの御説明について,何か御質問がございましたら,お願いいたします。どうぞ,片山委員。

【片山委員】
 慶應大学の片山でございます。詳細な御説明,どうもありがとうございました。
 1点,コメントを頂きたいと思います。可能であればということですが,資料1-1を見ても分かりますとおり,最終合格者の数は少しずつ毎年増えているということでございますが,最終的な司法試験の合格者数が減少している中で,予備試験の最終合格者数がこのような形で増えているという点につきまして,法務省の方で何かコメントができるようでしたら,よろしくお願いいたします。

【佐伯委員】
 増えている人数が微増ということで,それほど大きく増えているということでもありませんので,その原因が果たしてどのようなところなのかという細かな分析まではしておりませんが,いずれにいたしましても,合格者につきましては,司法試験委員会の方で決定したところでございます。実際の試験結果に基づいて,適正に決定されたものというふうに承知しておるわけですが,それが今回このように微増になっているというところについてまで細かくこういう理由であるといった分析はしておりません。

【片山委員】
 了解いたしました。

【井上座長】
 ほかにございませんでしょうか。よろしいですか。
 それでは,次に移らせていただきます。
 次ですが,御説明いただく方がまだお見えになっていませんので、議題の順番を変えます。
 法科大学院の「公的支援見直し強化・加算プログラム」の見直しにつきましては,文部科学省としての方針をまとめたということですので,事務局から資料の説明をお願いしたいと思います。

【塩田専門職大学院室長】
 それでは,資料4でございます。
 前回の特別委員会の意見を踏まえまして,見直し方針を作成いたしました。前回も御説明いたしましたが,趣旨といたしましては,二つ目の丸でございますが,目指すべき法科大学院の定員規模を当面2,500人程度と設定したところでございますけれども,来年度の入学定員が2,566人とほぼ達成できる見込みとなったということでございまして,これを踏まえまして,三つ目の丸でございますが,本プログラムに適切な修正を加えることが必要であろうということでございます。
 見直しのポイントでございます。最初の丸のところでございます。入学定員の充足率ということで,定員充足率については基礎額の指標から削除するということにしてございます。
 一方,入学者数が10名を下回る場合は,教育環境への悪影響が懸念されることから,引き続き残すことにいたしまして,減点要素とするということにしてございます。
 また,2,500という数字とは直接関係ないんですけれども,機能分化の促進と,夜間開講というところでございまして,法科大学院の機能分化を促す観点からということで,夜間開講について,直近の社会人入学者が10名以上で,かつ,割合が全国平均以上と,さらに,授業を録画して学生の利用に供するとか,自習室を遅くまで開室しているということ,また,さらに,最後のところですが,直近の合格率が全国平均の半分以上になった場合と,こういった場合は加点してあげようということで,こういったところを応援してあげると,このような指標の見直しを予定しているところでございます。
 説明は以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございます。
 ただいまの説明につきまして,御質問等ございましたら,御発言をお願いします。どうぞ。

【上田委員】
 質問ですけれども,今,見直しのポイントを二つ上げられましたが,入学定員の充足率を見直しの対象にするというのは理由のあることと思いますが,もう一つ,入学試験の競争倍率ですね。2倍を一つ指標にして,プラス8点と,それから,0点と,マイナス4点というあの指標がありますけれども,あれは見直しの対象にはされないということでしょうか。

【塩田専門職大学院室長】
 そこは,はい,特段変更は考えてございません。

【上田委員】
 この場で議論していいのかよく分かりませんけれども,入学試験の競争倍率についても見直しというか,やや緩和してもいいのではないかというふうに考えております。
 理由は,プラスマイナス12点という差になってきて,かなり点数差が大きいので,その辺り,少し緩和してもいいのではないかなと考えております。
 以上です。

【井上座長】
 ほかに。どうぞ。

【樫見委員】
 今お話しいただきました機能分化の促進の夜間開講のところなんですが,この上から5行目で,「夜間開講実施科目の授業を録画して学生の利用に供し」といいますのは,録画した授業で学生が単位を取得するということは含まないんですよね。

【塩田専門職大学院室長】
 あくまでも補助教材として,どうしても有職社会人相手ですと,欠席する場合もあるかと思いますので,そういう学生の利便性のためにということでございます。

【樫見委員】
 分かりました。

【井上座長】
 補充的な手段ということですね。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【長谷部委員】
 私も今の夜間開講の点についてなんですけれども,いくつか基準がありますが,これをクリアできそうな法科大学院というのは大体どのぐらいあるという見込みなんでしょうか。

【塩田専門職大学院室長】
 あくまで今年度のデータでいうと,1校あるかないかということでございます。そもそも,夜間やっているところはそう多くはない現状でございます。

【井上座長】
 ほかによろしいでしょうか。
 御発言がないようですので,次に移らせていただきます。
 次は,法科大学院法学未修者選抜ガイドライン等に関するワーキング・グループの審議状況について,主査の松下委員より,御説明をお願いします。

【松下委員】
 前回のこの特別委員会で設置が認められました法科大学院法学未修者選抜ガイドライン等に関する検討ワーキング・グループで,既に2回,会合を持ちまして,資料3にありますとおり,ガイドラインの骨子案というのを現在作っております。これは更に検討を続けて内容をブラッシュアップすることになりますが,内容については事務局から御説明をお願いします。

【井上座長】
 それでは,事務局の方からお願いします。

【塩田専門職大学院室長】
 説明させていただきます。
 ガイドライン,資料3でございますけれども,本骨子案というのは本年9月に本委員会でまとめていただきました「統一適性試験の在り方について」という提言におきまして,統一適性試験を任意化する場合であっても,専門職大学院設置基準にあるとおり,受験者の適性を的確かつ客観的に判定することが必要であるために,ガイドラインを策定する必要があると,こういったような御指摘を頂いたことを踏まえて作成しているものでございます。
 1.の「はじめに」のところでございます。二つ目のくさびでございますけれども,平成13年の意見書におきましては,判断力,思考力,分析力,表現力等の資質を判定する必要があるということで,これを踏まえて,統一適性試験が実施されてきたところでございます。
 なお,統一適性試験は,論理的判断力を見る第1部,分析的判断力を見る第2部,長文読解力を見る第3部と,あと,任意でございますが,表現力を見る第4部と,こんなような構成になっていて,こういった構成で,先ほどの四つの資質を見ているというたてつけになってございます。
 三つ目のくさびでは,先ほど申し上げた本委員会での議論を記載したところでございます。
 二つ目でございます。ページをめくっていただきまして,2ページにあるとおり,1から4の試験の実施方法が想定されるということでございます。4は,統一適性試験の過去問を活用するなどして,類似問題を同じ程度の量,作成するということを想定したものでございます。
 各方法の特徴と留意事項でございますが,1の小論文・筆記につきましては,長文読解の要素を含め,かつ,少なくとも1,000字程度の記述を求める場合を想定しております。また,2の対面審査でございますが,学習意欲や協調性を見る人物審査と,それにとどまらず,読解力を判定する要素を含めた能力審査に分類して考えております。
 また,3の書面審査でございますが,こちらも学部成績,活動実績,能力証明書類等を評価する実績等審査と,さらには,一定量の記述を伴う志望理由書等を作成させて,それを対面審査で本人が記載したことを確認するような能力審査に分けて考えてございます。
 こうした前提の下で,3ページの方に,適切と考えられる組合せを提示しております。
 なお,3ページの冒頭にございますように,1の小論文・筆記を課すことが基本であろうということと,3の書面審査はいずれの場合も必須であろうという前提でございます。
 ローマ数字の1.でございますが,1,2,3,これを全て実施する場合でございます。この場合は,二つ目のぽつにありますように,対面審査は人物審査で,書面審査は実績等審査で今後も許容されるであろうということでございます。
 ローマ数字の2.でございます。対面が抜けて,1と3の場合でございますが,この場合におきましても,二つ目のぽつにあるように,書面審査は実績等審査で許容されるであろうということでございます。
 ローマ数字の3.でございます。統一適性試験類似問題を実施するこの4がある場合でございますが,この場合は,1と3を組み合わせることが考えられるであろうということでございます。ただ,その場合,小論文・筆記におきましては,長文読解の要素を含まないなど,簡易な出題方式であっても許容されるであろうという考えでございます。
 小論文・筆記を行うことが原則なんですけれども,ローマ数字の4.のようなある意味例外的なのも考えられるであろうということでございます。ローマ数字の4.でございますが,2と3を組み合わせるということでございます。この場合は,対象を社会人,他学部出身者にする場合でありまして,かつ,対面審査において,一定の長文を読ませた上で,それを基に口頭試問を行うといった工夫があり,かつ,書面審査で一定以上の記述を伴う志望理由書等の書面を書かせて,それを本人が作成したことを確認すると,このようなプロセスを経た場合には,小論文はなくても対応可能ではないかということでございます。
 続きまして,4ページでございます。4ページの最初のくさびは,これ以外にも方法は,法科大学院の創意工夫によってこれ以外にも方法はあり得るだろうということでございますが,その場合は,適確に判定できていることを対外的に説明してもらいたいということを書いてございます。
 続きまして,3.の客観性の担保でございますけれども,二つ目のくさびで,「どのような能力を判定するのかを公表することが必要」と。また,次のくさびでございますが,配点や採点基準等を明確に定めることが必要であるということと,可能な範囲で公表することが必要と。ただ,公表できない場合は,「又は」ということで,事後的に外部有識者の意見を聞くことが望ましいということを記載してございます。
 さらに,次のくさびにおきまして,内部的なチェック体制の構築も必要だろうということを記載してございます。また,対面審査は複数の者で実施してほしいということも書いてございます。
 続きまして,4.の法学既修者選抜についてでございますけれども,最初のくさびでございますように,法律科目試験を実施することによって,一定程度資質を見ることが可能と考えられるということでございますが,脚注にもあるように,既修者認定は,統一適性試験がなくなることも踏まえ,厳格にしてほしいということを書いているということでございます。
 また,5ページ目の最初のくさびにございますように,法律科目試験だけではやっぱり足りないということで,法律科目試験に加えて,様々な方法・観点による選抜となる工夫が必要ということでございます。
 5.の「終わりに」で書いてございますように,最後ですが,受験者に混乱をきたさないよう,適切な時期に周知を行う必要性があるということを言及してございます。
 説明は以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございました。
 それでは,ただいまの御説明につきまして,御質問あるいは御発言がありましたら,お伺いしたいと思います。どうぞ。

【磯村委員】
 確認なんですけれども,4ページ目のところの「客観性の担保等について」の最後のところの内容なんですが,今,私の聞き間違いでなければ,口頭の御説明では,対面による審査のときに,複数の者で実施することが望ましいというように言われたと思うんですが,ここの文章は「必要である」という言い方になっているので,少し
ニュアンスが違うのかなと。

【塩田専門職大学院室長】
 済みません。必要でございます。

【井上座長】
 「必要」なら良いということですね。

【磯村委員】
 はい。

【井上座長】
 どうぞ,大貫委員。

【大貫委員】
 私も確認ですけれども, 2ページ目の真ん中辺りにある対面,2の対面による審査の(2)の能力審査,ここが少し意味がよく分からないのでお聞きしたいんですが,「長文読解の要素を含め,読解力を判定できる場合」という特に限定があって,その場合には,この能力審査によって,「法科大学院における履修の前提として要求される資質の多くを判定することが可能」だと書いてあるので,あくまで読解力というところに限定した趣旨なのかどうかということです。
 これまでは、例えば,能力審査のところで,コミュニケーション能力とか,人の質問を聞けるのかとか,そういうことも見ることは見ていたと思うんですよ,単に人物だけじゃなくて。そういう審査は排する趣旨なのかどうかどうかというのを教えていただきたいと思います。
 関連して,3ページ目のやはり下の一番下の対面による審査のところです。この場合による対面による審査というところも非常に少し複雑で,先ほど少し言及した内容,プラス,確認というのが入っているのは,これは小論文・筆記試験を実施しないということを正当化するためにはこういう条件が必要だという趣旨で書かれているんですか。少し分かりにくかったものですから,確認させていただきました。
 以上です。

【松下委員】
 2ページの2の(2)についての御質問ですけれども,ここで,コミュニケーション能力をこの能力審査の中で判定する,判断すること自体は全く排除していません。ただ,この2の(2)は,今御指摘のあった3ページのローマ数字の小文字の4.の二つ目のぽつに記載のある,対面だが,そこで文章を読ませて,読み取る力があるかどうかを見ることを主に念頭に置いた記述になっているので,こういう書き方になっているだけです。
 2ページの2,(2)は,その人の質問を聞く能力というのを測ってはいけないという趣旨では全くございません。

【井上座長】
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【木村委員】
 済みません,私,読解力がなくて申し訳ないんですけれども,これ,1ページから3ページまで見ると,未修,既修関わりなく,統一適性試験に替わるものとして,1から4を組み合わせるというふうに読めてしまうんですけれども,4ページ目の既修者認定だと,法律試験科目だけじゃなくて,もう少し工夫してくださいという書きぶりになっていて,これ,1,2,3については未修者の試験を前提にという理解でよろしいんでしょうか。

【塩田専門職大学院室長】
 分かりにくくて申し訳ございません。おっしゃるとおりで,1,2,3は未修者のことを書いているものでございます。

【木村委員】
 ありがとうございます。

【井上座長】
 その意味では,項目立てを少し整理された方がいいかもしれませんね。

【磯村委員】
 タイトルがそうなってるので,途中までは未修者が前提でというのが御趣旨だったと思うんですが。

【井上座長】
 そうですね。

【木村委員】
 申し訳ございません。

【井上座長】
 ほかに御質問,御意見等ございますでしょうか。

【磯村委員】
 3ページのところのローマ数字の4.のところですけれども,最初の黒ぽつが,「社会人や他学部出身者を対象とした特別選抜を実施する場合は」という,これ,限定が付いているように思いますけれども,未修者の枠が非常に少ないような小規模大学で,2と3だけを行ってという方法は一般的には取れないという趣旨でしょうか。

【松下委員】
 私の方からお返事をさせていただきます。
 ここは限定する趣旨です。未修者一般について,2,3の組合せだけで入学者選抜をするのはどうかというワーキング・グループの意見でこういうことになっております。ここの趣旨は,社会人や他学部出身者,特に社会人については,小論文試験の対策をするのが容易ではないのではないかという御指摘があり,そういう受験生については小論文を課さないというルートもあるのではないか,ということです。
 この骨子案の全体のトーンは,小論文・筆記試験が基本であるというたてつけでできていますので,それを除外する,小論文・筆記試験を課さないでいいという場合にはやはり何らかの限定が要るんではないかと思います。それで,こういう書きぶりになっているということです。

【磯村委員】
 念のための確認ですけれども,今の御説明は社会人について当てはまるわけですが,他学部出身者と法学部出身者でいずれも未修者試験を受けるというときに,そこに区別を設ける必要があるかどうかというと,よく分からないなという感じもするんですが。

【松下委員】
 その点若干議論はあったんですが,未修者の小論文試験とはいえ,やはり何か社会科学的な文章を読ませて書かせるというのが多いように思われ,例えば理系出身者だと,そういう文章を書くのにそもそも慣れていない場合もあるんではないかということです。しかし,そのような場合でもほかの試験で能力を測って,入学してから文章を書けるようにすればいいではないかという御意見があったので,こういう書きぶりになっております。

【磯村委員】
 分かりました。はい。

【井上座長】
 今のような御疑問もあったということを踏まえて,さらに御検討いただければと思います。

【松下委員】
 きょう頂いた御意見を踏まえて,あるいは,お気付きの点がありましたら,事務局の方に伝えていただいて,更に内容をブラッシュアップしていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【井上座長】
 ほかに御意見等ございますでしょうか。どうぞ。

【樫見委員】
 今の点と絡むのですけれども,今回,未修者等の選抜ガイドラインを作成するについては, 1ページ目の「はじめに」と書いてある2番目の矢印ですけれども,そこに書いてあります,これまで統一適性試験が判定してきた判断力,思考力,分析力,表現力の資質,これをどの試験によってきちんと判定するのかと,ここが担保されないと,まずいであろうという判断が会議体の中でありまして,それはやはり小論文・筆記試験のところで書いてあるかと思いますけれども,2ページの各方法の特徴と留意事項の1です。小論文・筆記試験,ここのところで,やはり今掲げた能力の多くがこの小論文・筆記試験で,全てとは申しませんが,資質の多くを判定することが可能であるという判断に立ちましたので,会議体としては,この能力が基本的には原則的に小論文を課するということで測れるだろうと。
 ただ,これだけに限定すると,やはり今申し上げた質問がありました社会人ですとか他学部の方については少しハードルが高過ぎるという場合もあるというので,例外的に,しかし,余り無条件に認めてしまうとまずいだろうと。
 あとは,既に社会人についてそういう試験を実施している例がありましたので,それを参考にということであったかと思います。
 以上です。

【井上座長】
 ありがとうございます。補足説明ですね。

【樫見委員】
 はい。

【井上座長】
 ほかに御意見等ございますでしょうか。笠井委員,どうぞ。

【笠井委員】
 私もこのワーキング・グループのメンバーです。このガイドラインが直接対象としている問題ではありませんが,そのワーキングの中で一言発言させていただいた点があります。
 4ページの「法学既修者選抜について」という項目がありますので,それに関連して一言だけ補足させていただきます。
 これは入学者の質の保証,それから,教育の質の保証の問題とも関係するという意味で,未修者・既修者を問わず,関わりがあると理解しております。
 既修者として選抜しながら,その既修者の最終的な司法試験合格がひとりもいない法科大学院が存在する。修了後1年目の修了生が司法試験を受験した場合のデータとして,10校足らず7校ぐらいが,既修者コースを終了したという認定を受けながら,一人も合格を出していない法科大学院が存在しているようです。これは既修者選抜について,より厳格にすることが正しいか否かはさて置き,適切な既修者選抜が行われていない可能性があるると思えるわけです。
 そうした点からするならば,既修者選抜の段階で,より適切な,適確な選抜方法を考えていかなければならない。共通到達度確認試験は,入学後の進級度を確認することになっていますが,それとの見合いながら,入学段階における既修者選抜についても考えていくべきだろうと思います。このガイドラインは直接に,このことを対象にしておりませんので,既修選抜の記述が比較的少なめですけれど,その点,今後,各委員に議論をしていただきたいと思います。

【井上座長】
 分かりました。これについては,現在では既修者の場合も適性試験を共通して受けることになっており,それによって,ある程度の統一性が保たれている。それがなくなった場合,その辺の厳格性の確保を図っていかなければならないというのが,恐らくこの中間報告の注で書いてあった趣旨だと思います。
 今の笠井委員の御発言も,同趣旨だというふうに考えますが,この点をも未修者に関するこのワーキング・グループでやってくれというのはちょっとお門違いかなという感じもします。これは今言及された共通到達度確認試験の在り方についてと非常に密接な関係がある問題ですので,この点については,そちらのワーキング・グループの方で,その点をも含めて議論をしていただこうと考えます。
 そういうことでよろしいでしょうか。

【磯村委員】
 今,笠井委員に逆に触発された発言になるんですけれども,法律家のひねくれた読み方をすると,この脚注というのは,統一適性試験を実施していたときはより厳格でなくてもよかったという読み方をされかねないので,むしろ要らないんではないかという気がするんですけれども,それが一つ。
 それから,もう1点,先ほどの社会人の問題ですけれども,社会人というのは現在、各法科大学院で自由に定義ができるという作り付けになっていると思いますが,ここでの社会人はある程度の枠をはめた概念なのか,そこはそうではないのかという点をお尋ねしたいと思います。


【松下委員】
 まず, 4ページの脚注の1の話ですけれども,「より厳格に」と書いてありますので,実施していた頃も厳格にはやっていたはずだが,それをより厳格にやってほしいという趣旨なので,厳格でなくていいというような反対解釈は取り難いのではないかと思います。
 それから,3ページの下から二つ目のぽつの社会人ですが,特にここで定義はしていません。もう少し社会人について統一感のあるガイドラインを作った方がいいかどうかについては更に検討を続けさせていただきますが,もし何か御示唆があれば,この場で頂戴したく存じます。
 以上です。

【磯村委員】
 問題点として感じているのは,例えば,卒業後3年というような基準を当てはめる場合と,もう卒業していれば全部社会人だというのでは随分状況が違うのではないかということで,ここの定義を全然触らずに,社会人枠であればオーケーだというのは,尻抜けになるのではないかという,そういう印象です。

【井上座長】
 認証評価などについても同じ問題があるわけですよね,その辺も視野に入れながら,さらに,検討可能であれば・・・。

【松下委員】
 そうですね。

【井上座長】ここだけ突出して何か枠をはめるというのは難しいのかもしれませんけれども。

【松下委員】
 どう見ても社会人ではないだろうという人を排除することは簡単だと思いますけど,積極的に定義するのは容易ではないかもしれないという印象を今のところ持っております。

【井上座長】
 ほかに。どうぞ,片山委員。

【片山委員】
 今の4ページの注の1の既修者認定と適性試験との関係に言及しているところと逆の問題になるのかもしれませんが,その注が付いている部分というのは,基本的に法律科目の試験の実施によって,適性の立証の前提として求められる資質を一定程度評価することが可能だという形で連動しているということになるわけですけれども,今まで未修者に関しては,適性を判断するときに,法律に関する知識を問うてはいけないとか,あるいは,法律的な思考を問うてはいけないというようなことが前提とされてきたという印象ではありますが,改めて考えてみますと,未修者の適性の認定の中で法律的な知識を問うということ自体が問題かもしれませんが,素材として法律に関する論文を読ませたり,あるいは,法的な思考を問うということがあっても決しておかしくはないのではないかと改めて思うに至りました。
 その点について,今回のガイドラインではどのように認識されているかという点を改めて御質問させていただければと思います。

【松下委員】
 このガイドラインは,試験のやり方についてのガイドラインであって,どういう問題を出すかということについては触れていないのですけれども,ただ,今お話を伺う限りでは,法学部卒が有利になりうるというのでやはり入試の開放性,あるいは,多様性の確保という点に問題が生じかねないかなという印象を持ちました。
 以上です。

【井上座長】
 そこはかなり根本的な,根源的な話で,本当に公平性が保てるのかということですね。法的知識は要求しないけれども,法的なものの考え方というのを聞くのはいいのではないかというご意見は,前からあるものですけれども,しかし,その点でも,一定の法学教育を受けている人とそうでない人とではやはり差が出るという見方もあって,そこは決着がついていない。むしろ,純粋未修者を理念型して行うべきだというのが本来の制度設計の考え方であったわけです。
 その辺も踏み込んでやるというのは,恐らくこのワーキング・グループのミッションを超えているところもあり,未修者教育の在り方などとも関係してきますので,その辺の議論とも絡めて,より大きな視点で今後議論させていただければと思います。
 まだ御意見等あると思うのですけれども,本日のメインであるヒアリングが次に控えており,お出でくださっている先生方は今か今かと待ち構えておられますので,今の議題については,ご発言はあとお一人でよろしいですか。土屋委員,それではどうぞ。

【土屋委員】
 5ページの一番上のところに,「法律科目試験に加えて,様々な方法・観点による入学者選抜となるよう,工夫することが必要」だとありますけれど,例示的に,こういうようなことが考えられるとかいうことがもしあれば,それを書いた方が具体的に分かるんではないかと思います。
 それと関係することなのですけれども,ここは4ページの「法学既修者選抜について」の枠の中で書いてあるのですが,これは何も法学既修者に限らない部分だろうと思うので,もしこれに言及するのだったら,もっと前に出してもいいのかなという気がしました。
 それで,気になる部分というのは,もし未修者の方にもこういうようなことを言うとしたら,例えば他学部出身,特に理系の人の場合、マスターやドクターの学位を持った方が社会人として法科大学院へ行くというケースもあるのですね。
 そうすると,そういう人についてはどうするのか。つまり,本人の努力の結果である一つの学位だとか,そういうものをもし持っているとしたら,どう評価するか。そこら辺りも必要なところかなというふうに感じますので,質問させていただきました。

【井上座長】
 そういう点についても更に突っ込んで検討してほしいという御注文ということでよろしいですか。
 まだ御注意,御意見等おありになる場合は,事務局の方に申していただければ,ワーキング・グループの方に伝わるようにいたしますので,この辺で本日の議論は打ち切らせていただいてよろしいでしょうか。
 それでは,次のヒアリングでございますけれども,御承知のように,これまで,本特別委員会におきましては,学部教育と法科大学院教育の関係や学部と法科大学院の連携の在り方等に関する検討の必要性について,種々御意見を頂いていたところです。
 これらの問題は,おそらく次期の特別委員会への申し送りということになるかと思うのですけれども,それについて議論するに当たっては,やはり法学部教育の現状について正確に理解しておく必要があると考えられますので,本日は六つの大学の法学部長の先生,あるいは,関係の先生に御出席をお願いしました。それぞれの大学における法学部教育の現状について御説明頂き,その上で,委員の皆様と意見交換を行いたいと思います。
 進行の都合上,まず各先生方から順次御説明をお伺いし,その後,まとめて意見交換の時間を持ちたいと考えております。
 本日のヒアリングに当たり,基礎資料を用意していただいておりますので,これについて事務局の方から簡単に御紹介をお願いします。

【塩田専門職大学院室長】
 それでは,ごく簡単に,資料5-1のデータ集でございます。
 1ページでございますけれども,枠の中に書いてございますように,大学全体の志願者数は,進学率の上昇等によって一応増加傾向ということでございます。
 2ページでございますけれども,そういった中で,法学部への入学者,大学入学者に占める割合ですが,23年度頃から横ばいで,近年は微増という状況になってございます。
 続きまして,3ページでございます。3ページは,法学系課程への学士編入学の状況でございますが,左下に医学部の状況も書いてございますが,医学部の状況に比べまして,法学部については極めて限られた数になっているという現状でございます。
 4ページが法学部卒業者の進路でございますけれども,多様な進路になってございます。平成16年と28年を比較して,大きな変更はないわけでございますけれども,製造業や卸売・小売業が少し減って,サービス業や地方公務が増えていると,このような現状が見て取れます。
 続きまして,5ページ以降でございますが,これまでの報告書等で法学部に言及した部分を抜粋したものでございます。
 6ページを見ていただければと思うんですけれども,これが法科大学院の設置基準を作成する際の中教審の答申でございます。「中略」の後でございますけれども,「法科大学院制度の導入後は」ということで,学部段階において,教養教育に重点をシフトするもの,複数の学部・学科の専門教育を同時履修するような工夫をするもの,法曹以外の法律関係専門職の養成を中心にするものなど,多様なプログラムの展開が考えられると,このような指摘がございます。
 また,ページをめくっていただきまして,7ページでございます。7ページの下の部分で,本委員会での提言でございますけれども,「法科大学院における」,真ん中辺りで,2行目ですけれども,「教育の前提としての学修が不十分である者が少なくないことから,学部段階における法学教育の在り方も含め,その改善方策を総合的に検討する」という,一方でこういった提言も出されているところでございます。
 続きまして,ページ飛んで,10ページでございます。これは直近の修了年度別の合格者の累積合格率でございますけれども,青いところが未修コースでございまして,青い線のうち,丸が法学部出身,三角が非法学部出身で,丸の法学部出身者の方が低い傾向にあるということが見て取れるかと思います。
 続きまして, 12ページでございますが,これが入学者の属性でございます。薄い黄色が未修コースの法学部出身者,オレンジが未修コースの非法学部出身者ですけれども,オレンジの非法学部の出身者の減少が顕著になっているということが見て取れるかと思います。
 続きまして, 13ページは法科大学院に進学する学生を多く輩出している大学の順に並べているものでございまして,中央大学,早稲田大学,慶應義塾大学,こういったような順に並んでいるという状況でございます。
 続きまして,ページ少し飛ばしまして,17ページを御覧いただければと思います。これは特に予備試験との関係でございます。17ページの右側は,司法試験合格者に占める予備試験ルートの合格者の割合が増えているというのをお示しした図でございます。また,18ページでございますけれども,左側は,予備試験合格者に占める学部生や法科大学院生の数,割合でございます。また,右側は,司法試験の合格,予備試験の合格等による中退者が増えていると,こういった現状をお示ししたものでございます。
 説明は以上でございます。

【井上座長】それでは,各先生方から御説明をお伺いしたいと思います。
 初めに,京都大学の潮見先生から,お願いいたします。

【潮見教授】
 京都大学の法学部長を務めております潮見でございます。事前に照会を頂きました3点を中心に,京都大学の状況について説明をいたします。
 第1は,進路の多様性を踏まえた法学部における法学教育の現状についてです。
 京都大学法学部における教育カリキュラム体系の概要は,配付資料に示したとおりです。全学共通科目,教養教育を含めた4年の一貫教育の下,コース制は取っておりませんが,1年段階で入門科目や基礎演習科目を通じて,法学・政治学を学ぶための基礎的能力を習得させた上で,学年が進行する中で,より専門的な基礎理論を学ばせるとともに,実務への関連を意識させ,また,理論が実務でどのように展開しているのかを理解させる科目を配置しています。
 これにより,学生個々人の関心に応じた履修をさせることで,将来の進路選択へとつながるとともに,より専門的な学習をするために,大学院修士課程,専門職学位課程への進学の意欲を高めることを意識したカリキュラム体系というものを用意しております。
 そのほか,多くの経済系科目を,他学部科目としてではなく,法学部専門科目として提供していること,初修外国語に当たるドイツ語,フランス語も含めた専門文献講読の授業を配置し,さらに,近年では,ヨーロッパ私法,外国政治などの複数科目,博士の学位を取得している外国人専任教員により英語で提供していることも,将来の学生の進路を見据えた我が法学部教育の特徴として上げることができます。
 もとより,進路の多様性といいましても,学部で学ぶ学生にとって,専門教育を受けるための基礎学力を磨くことが,近時は喫緊の課題となっております。専門科目を学修するための基礎学力を磨くには,高校時代に培った基礎学力をさらに専門科目の学修に堪えられるように一段と強化するために,入学後の教養教育を充実したものとしなければなりません。
 このことは何も法学・政治学教育に限ったものではございません。京都大学では,本年度より,教養教育の在り方を抜本的に見直した新たな全学共通教育体制を実施しておりますが,これも専門につなげる形での基礎学力の向上を目指してのものでございます。
 次に,照会事項の第2,法曹志願者に対する法学部教育の現状についてお話をします。
 京都大学では,近年,法曹志望の学生が減少する傾向にあります。このことは,京都大学法科大学院合格者に占める京都大学出身者の減少に見て取ることができます。他学部からの志願者数とも併せて見たとき,これは京都大学法学部出身者が受験において他の大学,あるいは,その他の大学の法学部出身者に競い負けたというよりも,京都大学法学部からの志願者自体が減ったことによるものと推測をしております。
 このことは,京都大学法学部生を対象に,本年度に実施しました進路希望等に関するアンケートの結果にも表れております。以前は,1学年定員330名のうち,200名ぐらいは司法試験を受けていたように思われますが,最近では1学年の中の4分の1程度しか法曹を志望しておりません。
 その原因として考えられることは,配付資料に挙げておきました,いずれも,いろいろな場面で既に語られている事柄でございますが,特に最近感じますのは,法曹の仕事に対する学部学生の情報不足,法曹になることへの動機付けの欠如でございます。高校を卒業して法学部に入ったものの,法学部を出てから何になりたいのか,何になれるのかと,こういうことを全く意識していない学生が余りにも多いということでございます。
 そうした学生たちに,3年次,4年次の段階で,法学部卒業後は法曹の道がありますよと,こんなことをいくら言ったとしても,学年が進行した段階では,正直,手後れです。就職状況が大きく改善した現在,希望する企業等からは,特別なえり好みをしなければ採用内定をもらえますし,企業等の情宣活動に魅力が感じられるこの頃,3年次,4年次になって手を打とうとしても,遅きに失するというのが私の実感でございます。
 こうした中,京都大学法学部では,優秀な学生に対しては,将来の法曹への道筋を付けるためには,1年次,2年次からの教育指導や進路情報の提供ほかの動機付けが不可欠であると考えまして,法曹志望者に対する法学部教育,さらには,その一環として,昨年度より様々な取組をしております。もちろん,一部はそれより前から実施しているものもございます。
 これも,その概要は配付資料の3.のところに書いておきましたが,とりわけ,2番目の鍵の矢印のところをご覧ください。これは,法科大学院説明会,これは法科大学院での学びとはどのようなもので,先輩たちがどのような進路状況にあるのかを情報提供するとともに,3年次,飛び入学への推奨を兼ねたものでございます。あるいは,現職法曹による学生対象の学術講演会の連続企画,2年次,3年次生にも理解できるような形での裁判官出身教授による裁判実務の講義,大手弁護士事務所による寄附講義の開講などが大きな特徴かと思います。
 とりわけ,初期段階でできるだけ多くの優秀な人材に法曹への関心を抱かせ,2年次以降の専門科目履修にインセンティブを与え,かつ,成績上位層には,3年次からの既修への飛び入学を積極的に意識させる必要がある,こういう認識に出た試みでございます。
 最後に,第3の照会事項である「法学部と法科大学院の現状と今後について」,私の思うところをお話しいたします。以下では,法科大学院側から見た視点でお話をさせていただきたいと思います。
 まず,既修者につきましては,先ほども少しありましたが,予備試験が法科大学院教育を侵食しているということを指摘しなければなりません。先ほどの資料にもデータとして示されていましたが,京都大学法科大学院におきましても,予備試験合格,あるいは,予備試験資格による司法試験合格というものを理由とする法科大学院在籍中の退学者が近年急増しております。
 アンケートに表れた数字からは,京都大学法学部の学生で法曹志望の者は,ほとんど全てが予備試験を受験する傾向にあるということが伺われます。昔から,京都大学法学部の学生はのんびりしているというように言われてきたのですが,この頃は,関東の幾つかの大学と同様に,在学中の予備試験合格,あるいは,法科大学院1年目の予備試験合格を目指して頑張っている学生が増えてきているように見受けられます。
 しかも,そうした学生たちは,概して,学部の成績も悪くありません。法学部での専門科目の授業が充実していればいるほど,また,学生が本気を出して予備試験に向けて取り組めば取り組むほど,京都大学法学部の学生たちは予備試験に通る水準に達しますし,現に達している者が多いと言えます。
 法学部の学生が法科大学院への進学をせずに,予備試験を通じて法曹になっていき,また,法科大学院に進学しても,予備試験に合格すれば,法科大学院を中途退学していくというのでは,法曹養成制度を改革しようとした当初の理念が実現されず,法科大学院制度自体の瓦解を招きかねません。
 法科大学院での学習を通じた法曹養成制度に意義があると考え,相応の,あるいは,期待以上と思われる成果を上げている京都大学としては,予備試験の在り方自体を再検討願いたいというのが本音ではございますが,ともかくも,法曹養成制度,司法試験制度改革の当初の理念を生かし,法科大学院を通じた法曹養成制度を実効性のあるものとして維持するのであれば,教育カリキュラムの内容面での法学部と法科大学院の連携,一体性を強化する方向で一環した教育カリキュラムを提示し,法科大学院での学習が法曹養成にとって意義のあるものであることを示す必要があると思います。
 学部,法科大学院の連携による一貫した法曹養成教育を目に見える形で推し進めるべきではないかと,考えるところでございます。資料3ページの枠の中に,例として,個人的意見として上げましたが,法学部成績優秀者のための5年ルートと4年修了モデルでの6年ルートを平行させることにも意味があるのではないかと思うところでございます。
 他方,未修者につきましては,今回のヒアリングの対象事項ではございませんが,気になる点を配付資料のところに書いておきましたので,御関心がございましたら,御覧いただければと思います。
 最後に,法学部と法科大学院教育の在り方をどのように考えるか,ということは,私どものように,次代を担う研究者を養成することを主たるミッションの一つとする大学では,研究者養成にとって大きな影響を及ぼすことも強調しておきたいところです。
 法曹志願者の低下,さらには,予備試験合格者や予備試験資格での司法試験合格者が大学を離れることは,それらの者の中に一定数存在している優秀な学生層を研究者のルートから切り離すことになります。もちろん私どもも手をこまねいているわけではなく,優秀な学生たちを研究者へと進ませるために,様々な取組,工夫をしておりますが,法科大学院への進学者,修了者がいることは将来の優秀な研究者を質量ともに減少させることにつながります。
 この点も考慮に入れながら,法学教育と法科大学院教育の連携,教育の姿を再構築する必要がありはしないかと,このことを申し上げて,私からの説明とさせていただきます。ありがとうございました。

【井上座長】
 どうもありがとうございました。
 続きまして,広島大学の三井先生の方から,御説明をお願いします。

【三井教授】
 広島大学の三井と申します。10分ということで,文章にしておいたんですが,他大学と比べて資料が薄いということでございますが,口頭で補足しながらお話をさせていただきたいと思います。
 まず,「進路の多様性を踏まえた法学部における法学教育の現状について」ということでございますが,広島大学は夜間を抱えておりまして,昼が150名,夜間が50名,編入後の3年の定員でございますが,そうなってございます。それで,コース制を取っておりまして,夜間は1コースなんですけれども,昼はビジネス法務プログラムと公共政策プログラムという形で分けております。
 ビジネス法務は,民間企業と主として考えておるんですが,司法試験を受ける学生は広島大学のロースクールなんかもビジネス法務を売りにてしおりますので,ビジネス法務を取ると。主として公務員志望の学生が公共政策プログラムを取るという形になっております。
 それで,広島大学の場合,昼の定員が150ですが,ざっくり言いますと,10人程度,恐らく資格試験とか何とか,進路模索ということでございますが,残った140人のうち,これははっきりうちの悪いところは,ロースクールと普通の大学院,区別してないんですけど,大体,大学院進学が10名,残りの130名のうち,70名から75名が公務員,異常な事態でございますが,60名から55名が民間ということで,最近,公務員の方が多くなっているという状況がございます。
 そういう多様な学生がおります中で,どういうふうに教育しているのかと。意外と最近は,税理士とか司法書士,それから,場合によっては,社会保険労務士という資格を取りたいという学生もおりますので,これらの学生にどうきちっと対処していくかということは頭の痛い問題でございますが,とにかく,うちは定員も少ないですし,教員定員も少ないので,できることというと,後でまた言いますように,うちは法学,政治学,国際関係論,社会学という科目までございます。ですから,とにかくどの道へ進もうとも,きちっとその進んだ進路で地に足を着けて立っていけるような基礎と素養をコンパクトに身に付けさせるということを目的にしております。
 場合によれば,1年から,基礎的な専門科目を取れるように配慮しております。弁護士になっても,意外と社会学とか社会調査とかが必要になるんですが,そういった科目も,将来,法曹になったときに見据えて取れるような形で配置をしております。
 特に公務員志望の学生が多いということでございまして,1年からきちっと積み上げれば,公務員試験及び法科大学院の既修者試験には十分対処できるというようなこと,基本科目については2年次,選択科目等についても3年次までにきちっと勉強しようと思えばできるような形で,カリキュラムを組んでございます。
 それで,全部2単位化をしまして,機動的に2単位の授業を積み上げて,自分のニーズに即していけるように学生に対して教育を行っております。ただし,昼の方はそうなんですが,どちらかといえば,夜間の方が法科大学院志望が多くて,夜間も昼も,どうやら広島大学のロースクールに行かずに,全部よそへ行ってしまうという傾向があるんですけれども,どこのロースクールへ行こうと,きちっと将来法曹になれるような社会科学的な見方を身につけさせようとしています。
 私は弁護士登録を実はしており,大学から兼業許可をもらって法律事務所にも所属しておるわけですが,やっぱりいろんな弁護士に聞くと,法律だけではなくて,広く大学で勉強していた,教養科目も含めて,それは実際,事件を持ったときに役に立つと。法律だけでは弁護士として法曹としてやっていけないというお話がありますから,そういうことを含めて,我々としては広く,法律系だけじゃなくて,将来,法曹へなる学生も,1年のうちから多様な科目を取りなさい,こういうふうな指導を行っておるところでございます。
 そういう中でも法律系は充実をさせておりまして,既修者,それから,場合によっては,予備試験を受けようという学生はきちんと1年から真面目に勉強していただければ,対応できるカリキュラムと科目選択ができるような形になっています。
 ただ,民間志望の学生は4割程度ということになってございますが,中四国からというと,広島大学法学部,人数少ないこともあって,非常に就職がいいので,皆さん,民間志望の学生は法律系は余り勉強しないということがございまして,それが頭の痛いところなんですが,そういう形で多様な学生を教育しています。
 国際関係論。今はやっぱり弁護士になっても,渉外事件とかそういうことがございます。それから,民間企業へ行っても,公務員もそうですが,グローバル経済ということでございまして,グローバル化が進んでおるということで,結構うちは国際政治学とか国際政治経済学とか,こういう科目も設けてございまして,とにかく幅広いニーズに応えた学生を,しかも,司法試験,法曹志望,公務員志望も対応できるカリキュラムにしております。
 次ですが,法曹志望者に対する法学部教育ということでございます。広島大学法学部は就職がいいもんで,公務員も大体みんな要領よく通るもんですから,苦労して司法試験を受けようという学生がいないんですが,中には将来,法曹になって頑張っていこうという学生もございますので,そのニーズに応えるためには,まず,先ほど申しましたように,学部レベルで相当な法律の知識レベルが身に付く法律学の授業を積み上げ方式で提供しております。
 それから,公務員も多いんで,併せてですが,法科大学院志望,希望する学生を含めて,論文指導という形で,小論文,それから,各法律学科目の論文を書く力を養う指導を,希望者に対してでございますが,しております。
 それから,法科大学院の教員によります法学基礎,この中には,法曹実務課程も入れまして,例えば広島高裁の長官の講演とか,そういうことも盛り込んでやっておりますし,それから,実定法科目におきましても,実務的視点を入れるということでやっております。私,数少ないんですが,裁判とか労働審判も経験したことがあるんですが,授業ではそういう実務の経験を含めて,できる限り学生に,例えば私の労働法の授業でさせていただくということもしておるわけでございます。
 それから,国家試験対策委員会というのがございまして,公務員試験だけじゃなくて,法曹界,それから,法科大学院進学者,これに対して相談,それから,勉強指導,これを徹底してやっております。
 そういう形で法曹志望の学生も来てくれたら,きちっとこちらは受けて立つというふうにやっておるんですが,いかんせん,法科大学院進学者が希望が少ないというのは少し頭の痛いところでございます。
 ただ,うち,公務員でも地方公務員が多いんですが,1,2年は田舎にあるもんで,移転しましてかなり田舎の方に大学がかつて移転しましてあるもんですから,どうもスタートが刺激がなくて遅いということで,公務員試験の勉強なんかでも遅くからスタートするという学生がございまして,むしろ,一遍勤めてから,やっぱり企業で法実務に触れて,司法試験,ロースクールを目指したいという学生もおりますので,そういう学生に漢方薬的に効いてくるように,ロースクールの先生の話を聞いていた,専門科目の先生の話を聞いておった,それから,実務関係の授業を聞いていたというようなことで,場合によっては,その卒業後の学生が聞いた授業を思い出して,また将来,法曹へ進んでいただけるような授業を提供しております。
 それから,緊張して言い忘れましたが,弁護士による実社会と法という授業もやっておりまして,オムニバスで弁護士が実社会でこういう事件をやったという自分の事件を一コマずつ担当していただいて,これ,結構人気授業でございまして,2年生に聞かせるということをやっております。
 それから,あとの法科大学院との連携にも関わるんですが,去年辺りから,法科大学院の私法と公法の基本的な見方,考え方,ロースクールの法曹のセンスを磨く実務的な視点を入れた授業も学部で開始をしておるということでございまして,一応,今言ったような形で,法曹希望者には,もしも本気でやっていただけるんならば,受けて立てるようなカリキュラム,それから,さらに,実務的な視点を入れた授業があります。
 それから,一応,弁護士だけではなくて,あと,司法書士による授業とか,そういう有資格者による授業,例えば弁護士になっても,そういう司法書士とかそういう方との連携,コラボレーションというのは大事でありますから,そういった併せて実務をにらんだ授業をやっております。
 それから,法科大学院との連携ですが,実は広島大学,法学部は21年前に広島市内から40キロ離れた東広島市という所に移転してしまったんですが,夜間と法科大学院はもともと広島大学がございました広島市内の一等地に残っておるんですが,いかんせん40キロ離れておるわけでありまして,法学部とロースクール,連携が取れないということでございますが,うちの学長の肝入り等もございまして,また,法科大学院の要請等もございまして,法学部とロースクールができる限りタッグを組んでこれから連携していこうというコンセンサスができております。
 もともと,昔から,法科大学院の教員に40キロ離れた学部まで来ていただきまして,そこでロースクール説明会を何度もやっていただいておりますし,去年から,ロースクールの先生方,私法と公法の基本的な法曹養成を見据えた入門授業,これを法学部でやっていただいているということもございます。先ほど申しました法学入門の法学基礎という授業ですが,これは実務的な視点を踏まえたロースクール教員によって担当をしていただいております。
 最近,やっぱり教員定員のポイントが減ってきた,人数も減ってきたということでございまして,いかんせん,ロースクールに今後頼らざるを得ないであろう。逆に,ロースクールの方も,法学部の教員の授業を当てにしているという状況でございますので,これは追い掛けと言ったら悪いんですが,そういう形で,今後,法学部とロースクールは相互乗入れをある程度いたしまして,お互い自分の長所を相手の陣地といいますか,法学部はロースクールで,それから,ロースクールは法学部で授業をして相互乗入れをして,できれば,法科大学院志望の学生に早く注意を喚起をする,できれば,広島大学の法科大学院に行っていただくような方向で今後考えていきたいというふうに考えております。
 そういう授業が増えてきますと,たとえスタートが遅い学生でも,あの頃,ロースクールの先生から聞いた授業だと,若しくは,実務関係の授業だということで,社会人枠ということになろうかと思いますが,勤めてから,また法曹を目指すというような道も,漢方薬的な意味でじわじわ効いてくるような形で授業を行うことも一つの戦略ではないかというふうに考えております。
 大体私に与えられた時間はこれぐらいでございますので,どうも御清聴,ありがとうございました。

【井上座長】
 ありがとうございました。
 それでは,次に,慶應義塾大学の君嶋先生から,お願いします。

【君嶋教授】
 君嶋でございます。慶應義塾大学の法学部に関しましては,学科が法律学科と政治学科に分かれておりますが,本日お話しさせていただくのは法律学科の方のカリキュラムでございます。
 まず,1ページ目,カリキュラムの概要でございますが, 2006年度までは専門科目について系列をかなり細かく分けておりまして,そこで必ず8単位ずつ取りなさいというような形でやっておりましたけれども,2007年度のカリキュラム改訂によりまして,専門科目を「導入・基幹・展開」の3段階に分けるにとどめまして,履修の自由度を高め,学生の多様な進路に応じた重点的な履修なども可能としてまいりました。
 大学1年生から,専門科目の授業が始まりますけれども,まずは導入科目,憲法・民法・刑法,それから法学などから始まりまして,基幹科目,展開科目に関しましては,割と自由に自分が,重点的に取りたいところを中心に取る学生もいれば,広く取る学生もおるというようなカリキュラムになっております。
 現在検討中の事項としましては,自由度を高めた結果としまして,履修の仕方に迷う学生も多くいますので,希望進路に応じて計画的な履修の参考にするために,何らかのモデルを提示していこうということが1点。それから,二つ目は法曹志願者のための科目,あるいは,実務的ニーズの高い先端的な科目と,さらに進路適合的な科目を設置することを検討しております。
 2ページ目に参ります。次に,当大学の法学部教育の特徴は何かということで,これは私の独断と偏見もあるかもしれませんけれども,私自身,慶應大学法学部法律学科の出身でございまして,その頃から今まで,特に1番目の特徴はずっと維持されているかと思うんですが,一つは,演習,研究会,あるいは,ゼミの重視ということでございます。
 これは専門科目,教養科目,全体を通しまして,多様な演習科目やゼミを用意しまして,学生の希望進路や興味に応じた履修を可能としております。特に大学3,4年次においては,専門科目のゼミを多くの学生が履修するわけなんですけれども,2年間連続で一つのゼミを履修するということを原則としておりまして,そのゼミのテーマに関連する科目を重点的に履修するというような学生も一定割合おりまして,多くの学生にとっては大学生活後半の中心となってまいります。
 釈迦に説法でございますけれども,演習科目やゼミの効用といいますのは,ゼミでの討論や共同研究を通じまして,単なる知識伝授にとどまらず,情報を自ら調査し,取捨選択して読みこなす能力,特に情報化社会でございますので,有用な情報をいかに見付けて取捨選択するか,あるいは,大量にある情報をいかに読みこなすかということ,それから,その後でございますが,さらには,柔軟な思考,討論の場では柔軟な思考やチームでの共同作業を通じまして,一問一答のような回答のない問題を解決する能力を育成できるという点にあると思います。
 それから,2番目の特徴といたしましては,国際化への対応であります。段落が前後しますが,従来から外国語科目に関しましてはインテンシブコースなどを設けまして非常に重視してまいったわけですけれども,専門科目といたしましても,大学1,2年次から,法律外国語演習,及び,Legal Writing and Presentationという授業を設けまして,3,4年次には,さらに,多様な国・地域の外国法,外国法演習,それから,さらに,そのWriting and Presentationの発展系を用意するということで,外国人の専任の専門教員もおりますし,非常勤あるいは短期での教員が担当するものもございます。
 次に,法学部卒業生の進路でございますけれども,非常に大ざっぱな区分けですが,過去3年間の法学部卒業生の進路先について整理したものでございます。こちらは卒業者数よりも,この左側の数字,一般企業,公務員,その他,大学院進学と併せた数字が合わないんですが,自己申告でありますので,1割ぐらいつかめてないところがございます。
 この大学院進学者については,どこに行っているかというのは全部は分からないんですが,慶應義塾大学の法務研究科,ロースクールと法学研究科,こちらは法学研究科の方は研究者や就職希望の学生が来ることが多いんですけれども,そこへの進学の数字がこのぐらいでございますので,その残りの部分のかなりの多くの学生が他大学の大学院に進学していて,さらに,先ほど1割減ぐらいですが,その上がいるだろうということでございます。次に,3ページ目に参ります。3ページ目はもう法務研究科への入学者のうち,慶應義塾大学法学部からの出身者の数と割合でございます。
 次に,2番目のポイントとしまして,法曹志願者に対する法学部教育の現状といたしましては,まず,授業科目及び担当に関する取組といたしまして,法科大学院設置以前より,当大学では法曹実務家教員による法律学専門科目の演習を開講して,試験ということではなくて,あくまでも法律実務を知ってもらおうということで実務家の視点からの法学教育をやってまいりました。大学1,2年生から法学演習の履修が可能でありますし,それから,3,4年次になりますと,かなり専門分野に分かれた演習がございます。
 ロースクール設置後も,実務家による演習科目の充実を図る一方,ロースクールの方の専任教員による授業担当などを通しまして,法曹志望者に対する専門教育について連携を進めております。なお書きは飛ばさせていただきます。
 次に,2.でございますけれども,早期卒業制度に関してですが,従来から飛び級で3年生から法科大学院に進学するという制度はあったんですけれども,2015年入学者より,早期卒業制度を導入しました。学業成績が優秀でありまして,こちらに書きましたような要件をクリアしますと,早期卒業ができるということであります。
 4ページ目へ参りまして,その早期卒業制度の導入に伴いまして,2017年度からでありますけれども,法学演習,憲法・民法・刑法を充実させることにいたしました。特に民法に関しましては,法曹実務家教員と研究者教員が半期ずつ担当するというような指導の連携を図る予定でございます。
 最後の3.の点でございますが,上記を踏まえた法学部と法科大学院の接続の現状と今後についてということですが,まず,1.ですけど,法務研究科設置科目の履修の検討ということで,これは法務研究科の方の制度としまして,未修者コース設置の入学予定者を対象としまして,「未修チャレンジコース」として,民法と刑法の科目を開講しております。これを法科大学院の入学前に履修しておくと,その単位が取れていれば,入学後にそこはクリアしたという扱いをしていくということでございます。
 2017年度から,当大学の法学部以外の4年生については,その科目を自由科目として履修することを認めまして,法科大学院進学後に単位認定を行うことになっております。法学部の方も同様の対応をするかどうかということを現在検討中でございます。
 それから,2ぽつ目でありまして,集中開講の導入も検討しております。これは飛ばさせていただきます。
 最後,5ページ目でございますが,3.法学部専門科目カリキュラムの再検討ということで,こういったいろいろな状況の変化に伴いまして,法律学専門科目のカリキュラム編成やコース編成なども,現在もいろいろ従来のカリキュラムの中で対応しているわけですけれども,さらには,再検討に取り組むことが必要になってくるのではないかと考えております。
 最後,4.ですが,グローバル化に対応してということで,ロースクールにおいても外国法あるいは外国語による専門科目,現在もございますけれども,さらには,2017年4月より,グローバル法務専攻ということで,英語によるLL.Mコースを開設の予定でございます。
 最後になりますけれども,私自身,かつて,旧司法試験に合格しまして,司法修習をやってから大学に助手として戻りまして,ずっと実務をやりながら大学教員をしてきた者なんですけれども,その当時の同期の人たちの様子を思い出すときに,合格した年齢は様々でございますけれども,やはり法律の専門科目を早めにしっかりどんどん学びたい,あるいは,もう大学へ入ったときから準備ができている学生もいれば,4年間,広く学んで,あるいは,体育会などでいろんなことをやってから,よし,これで法律やるぞという学生まで様々ございますので,学部とロースクールでの連携に当たりましては,そういった3年生,4年生でもう上がりだという学生もいれば,5年ぐらいがちょうどいいという学生もいるでしょうし,いや,6年,7年必要なんだという学生,いろいろいると思いますので,様々な対応ができるような形に大学が対応できるといいかなと個人的には思っております。
 以上,長くなりまして。ありがとうございました。

【井上座長】
 ありがとうございました。
 続きまして,同志社大学の瀬領先生からお願いします。

【瀬領教授】
 同志社大学の瀬領でございます。よろしくお願いいたします。
 私のはお手元にパワーポイントのスライドを御提供させていただいております。一応それぞれのスライドの右下の方にページ数が打ってあるんですが,以下,1枚目,2枚目というふうに申し上げておきます。それぞれのページに,1ページ,2ページ,3ページというのがありますので,紛らわしいので,スライドの方は1枚目,2枚目というふうに申します。
 1枚目のスライドの方で,今回,お問合せがあった3点についてお話をするということで,2枚目のスライド,「進路の多様性を踏まえた法学部における法学教育の現状について」ですけども,今回はここに掲げた4点に関して特に御報告をしたいと思います。
 まず,この4点をお話しする前提として,法学部の法学教育の基本構造としては3枚目のスライドに書いたような形になっております。特徴的なのは,この幅広い教養を持つジェネラリストというところは, 2年生の春までの段階で,知財労働,国際等も含めた幅広い法律科目を履修させるという,そういうシステムを取っているというのが特徴です。それを踏まえて,より深い専門の勉強をするという形になっています。
 進路の多様性に対応した法学教育としては,4枚目のスライド,スペシャリスト向け教育ということで,6点くらい特徴があるんですけれども,5点目,6点目に関しては通常どこの大学でもやっているということだろうと思いますので,1から4に集中してお話をしようと思います。4に関しては,二つ目の法曹志望者に対するということなので,2の,大きな項目2の方に移ってお話をしたいと思います。
 まず,企業法務プログラムですけれども,5枚目のスライドに書きましたように,これは実は2000年くらいから展開をしているんですけれども,2005年,2006年,文科省の現代GP(現代的教育ニーズ取組支援プログラム)にも採用されてそれを拡充し,更にそれを発展させて,現在も維持しております。ここに書いてありますように,単なるインターンシップだけではなくて,その前後を含めた企業法務教育を行っているということでございます。
 2ページ目,6枚目のスライド。二つ目の特徴としては,国際化といいますか,英語を使って,あるいは,英語を受け入れた形で法律を使いこなせる人材の育成に力を入れております。学部レベルでは,ここに書きましたように,ダブル・ディグリー・プログラムを展開しておりますし,あるいは,正課科目として,コンペティションですね。英語を使った討論会への参加を科目として認定するという形を取っております。
 7枚目に行きますと,これは学部ではなくて大学院なんですけれども,大学院レベルでも英語で授業を行い,それで単位を修得し,修士号も取得できるような形での科目展開をしており、海外の大学とのダブル・ディグリー・プログラム,そして,インターンシップも展開していますということでございます。
 8枚目のスライド,同志社大学法学部では,大学院法学研究科との連携も以前から重視しておりまして,それは継続しております。ここに4点ほど特徴を書きましたけれども,こういう4点の特徴を持った連携を取っているということでございます。
 こういう成果もあって,9枚目の資料のように,今年度は少なかったんですけれども,毎年,六,七十人ちょっと修士課程の進学者がおります。
 続きまして,2点目の法曹志望者に対する法学部教育の現状についてということでございます。ここでは大きく3点,履修モデル,正課科目,課外講座ということで御説明をしてみたいと思います。
 履修モデルですけれども,これは通常の学部科目を履修する際のモデルを学生に提示することによって,法科大学院進学を目指す学生にとって,望ましい履修のプロセスを示しているということでございます。形態・内容に関してはこの1から4までにお示ししたとおりでございます。モデルであり,コース制は取っておりませんので,任意ということになっております。
 次,2点目の正課科目としては,この司法特講,特殊講義というものを展開しております。いずれも,事例問題の検討や答案作成等を行うことによって,法曹への動機付け,誘導を図るということとともに,法学部での勉強を法科大学院への入試対策に費やすのではなくて,法科大学院での授業や司法試験を見据えた学修を法学部在学中からスタートさせるという狙いを持って,この科目を展開しております。お示ししてあるように,法科大学院の教員,あるいは,実務家の方に担当してもらっております。
 三つ目は,課外講座でして,これは要するに動機付けですね。全ての法学部学生を対象にして,法曹だけではなくて,それ以外の法律関係職,あるいは,企業法務等も含めて動機付けを行い,学習支援を行うというものでございます。例として,ランチョン・セミナーというのを書いてありますが,ランチタイムに30分程度,月数回開催し,法学部,法科大学院の教員が共同で運営して,ゲストスピーカーを呼んで,動機付けを行うということです。これについては入学式直後からそういう動機付けは行っております。
 次,3点目の接続の現状と今後についてでございますけれども,教員,学生ともに,法学部と法科大学院の接続の現状に関しては,それぞれの組織が分離構造になっています。そういうことを前提にして,それぞれの組織に相互に乗入れ,接続制度の展開をすることで,円滑な接続を試みております。
 教員については,この16枚目のスライドでお示ししたように,法学部教員,法科大学院教員がそれぞれの組織,法科大学院の教員であれば法学部の科目,法学部の教員であれば法科大学院の科目を担当し合うという形になっております。先ほど,司法特講,答案作成ゼミナールについて法科大学院教員が担当していると申し上げましたけれども,それ以外の法学部科目においても法科大学院教員が担当している科目もございます。
 これによって,法学部教員は卒業後も指導した学生のサポートが可能になりますし,法科大学院教員は入学前から学生の状況を把握できますので,法科大学院入学後の学生の円滑で適切な学習サポートというのが期待できるということかと思います。
 続きまして,17枚目と18枚目のところで,早期卒業制度,飛び入学制度に関して説明をしております。時間の関係もありますので,18枚目を見ていただくと,早期卒業の要件等を御理解いただけるかと思います。既存の法学研究科では2009年度から,法科大学院については2014年度から展開しておりまして,今年度,法学研究科には10名,司法研究科には8名の早期卒業者が入学しております。
 続きまして,20ページです。組織的な接続ということで,この様々な接続のための組織的補完として,法科大学院,法学部,双方の教員が年2回程度,数名の組織で連携委員会というものを作っておりまして,法学部,法科大学院間での連携・調整に関して検討する事項,課題に関しての情報交換,意見交換をやっております。これは科目担当とか各種企画の実施等,短期的な調整必要事項と入試等の長期的な調整必要事項に関して議論をしております。
 ただ,組織的決定に関わる事項は所属長や役職者による調整を必要としますので,その両組織の決定に委ねられますけれども,その前提として,組織の実情・意向等の相互把握,意向のすり合わせや政策の方向と意思決定についての調整に寄与しているということが言えるかと思います。
 今後に関しては,21枚目のスライドにお示ししてあるとおり,「特殊講義-答案作成ゼミナール-」の見直しと法科大学院の未修コースの圧縮版を法学部で開講できないのかということを検討しておりまして,これは法学部生の進学の動機付けを行うとともに,入試の準備にとどまらない法科大学院進学後の学修準備円滑化を狙っているものでございます。
 私からは以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございました。
 続きまして,創価大学の加賀先生からお願いいたします。

【加賀教授】
 創価大学の法務研究科長をしております加賀でございます。この3月までは法学部長をしておりましたので,創価大学における法学部・法科大学院というのをどのように構成するかということに関しては,一応,本学では了解している立場かなというふうに思っています。きょうは本学における法学部・法科大学院の有機的連携,割合珍しい事例かと思いますので,御報告をさせていただきます。
 まず,最初に,本学の法科大学院・法学部の概要ですけれども,特にこの法科大学院の概要については簡単にいきたいと思います。ただ,余り知られていない大学かもしれないので,多少はお話をしておきます。
 法科大学院が設置されてから,13年目になりました。入学定員は当初50名だったんですけれども,現在は28名にしております。在学生数も,当初は40名から60名おりましたけれども,現在では二十数名という状態になっております。ただ,充足率は85%以上を確保しております。
 年度ごとの司法試験の合格者数は最大で,22名,今年は13名,合格率21%と,こういう状態になっています。いわば,自分たちで言うのも何なんですけれども,健闘している小規模法科大学院なのかなと,こういうふうに自負しております。
 小規模であるということは反面メリットでありまして,修了者の進路についてはほとんど完璧といっていいほど進路先をつかんでいる状態にあります。数字だけを後ろに資料を載せさせていただきました。
 法学部ですけれども,本学の開学は昭和46年,1971年に開学をしておりますけれども,そのときから法学部がスタートいたしました。おかげさまで,旧司法試験には,第1期生から毎年合格者を輩出しております。法学部の定員は現在250名です。
 途中からコース制にいたしました。これはどこの大学もよく取っていることかと思いますけれども,平成19年から3コース制をやりましたけれども,平成26年からは4つのキャリア・コース制という形でうたいまして,リーガルプロフェッションコース,ビジネス法務コース,公共政策・行政コース,国際平和・外交コースと,この4コースにいたしました。
 特に「法的思考力」,「論理的思考力」を身に付けてキャリア形成するという,これを基本にいたしましたので,就職についても公務員や様々資格試験についても一定の成果が出ております。
 もちろん,この関連性でいくと,リーガルプロフェッションコースのことになるわけですけれども,1学年の16%から18%の四,五十名がそこのコースにおります。その中で,ここ最近の法曹志望者というのは毎年30名程度という状態になっています。本学の学生は大変母校愛が強いところがございまして,他大学の法科大学院に進学する者は多少いる状態で,ほとんどの法曹志望者の人が本学の法科大学院に進学してくれているという状態であります。
 2番目です。法学部における法曹志望者に対する教育ですけれども,自校一貫教育の意義と必要性というふうに書かせていただきました。まず,法的思考力の涵養に一体どのぐらいかかるのかということですけれども,本学の学生のレベルからすると,物すごく実力の幅はピンキリの大学ですけれども,アベレージでいうと,最低5,6年は必要だというふうに見ております。やっぱり法曹マインド,それから,スキルということを両方とも涵養するためには5,6年かかるのではなかろうかと,こういうふうに思っています。
 早期卒業3年の既修2年で5年,あるいは,4年卒業して既修2年の6年と,あと,,早期卒業の未修で6年と,いずれかのコースで学生に法曹になってもらいたいと,また,そういう指導をしております。
 なお,本学では予備試験は全く推奨しておりません。自由です。確かに自由ですけれども,本学ではあくまでも法科大学院を法曹教育に必要不可欠な機関というふうに位置付けておりますので,学生は数名受ける程度ですけれども,現実は推奨しない大学というふうになるかもしれません。
 特に,我が大学においては,自校における法曹教育の有機的連携が必要じゃなかろうかというふうに考えて踏み出しました。やはり建学の精神,理念を同じくする法学部と法科大学院が連携するということはある種のごく自然さがあるというふうに考えております。全国的に見ても,法学部出身者の割合がやっぱり一番多いというのは当たり前のことですけれども,そこを本学では真正面から捉えました。
 したがって,次のページの(2),GLPの設置と書きましたけれども,以上のような考え方で,恐らく全国的にもここまでのプログラム化という例は少ないかなと思うのはここからであります。本学の法学部では,26年新カリキュラムから,名称はGlobal Lawyers Programというふうにいたしましたけれども,ポイントは,1年生の入学段階から選抜をして,法曹希望者を教育するというプログラムを特別化いたしました。
 目的としては,一応,既修コースを狙う,そして,又は,早期卒業を狙うということを前提に,国際力・実践力・人間力を養うというふうにいたしました。最初の年度は20名,27年度に26名,今年は29名という選抜を行っております。法学部の専任教員は21名しかおりませんけれども,何と6名がそのプログラムの担当に付いておりまして,また,各学年に本学の法科大学院修了生の弁護士を3名ずつ付けて,チューターとしております。後でパンフレット等を御覧になっていただければと思っています。
 また,本学の出身法曹から成る奨学金がございまして,法曹会というのを組織されていて,学費相当半額免除を最大10名,毎年与えるということで,このプログラム生の中から選抜をするということになっております。具体的には,英語力,グローバルという言葉が果たしてどこまで,卒業生を出し,司法試験合格者を出し,法曹を出してみて検証できることだと思いますけれども,どこまでグローバル的な人材が育つかということはちょっと未知数です。しかし,1年生から始めているのが英語力と論理的思考力と文章力と,これを割合徹底的に行うようにしている次第です。
 (3)番,特にこのGLPにおいて,実務家によって教育の関与をしてもらっています。2年後期から始まる「法務演習」というのを組んでおりまして,これが接続という意味では完全に功を奏しているかというふうに見ております。公法法務演習1から始まりまして,2年後期から4年の後期卒業まで,演習系をずらりと実務家によって担当してもらっていると,こんなプログラムになっております。いかんせん,このプログラム制が設置されて三年ですので,法学部生が法科大学院生になるという実績はあるものの,プログラムの実績というのは,まだ3年生ですので,具体的には出ておりません。
 今後の課題として捉えさせていただいたのはきょうは3点上げさせていただきました。
 もうこれは言わなくてもいいことかもしれませんが,法曹志望者が減少しております。本学では,数年前まで3分の1の100名ほどが法曹志望者でスタートいたしました。どんどんそうじゃなくなっていくわけですけれども,学年が上がるにつれて。でも,現在では3分の1ぐらいしかおりません。
 それから,2番目は,法曹の仕事に就職するまでのやっぱり経済的問題というのは相当大きいというふうに見ております。法科大学院生,毎日のように面談をしておりますけれども,彼らの悩みの筆頭は奨学金です。学部,大学院,多い者で1,000万円を合計超えてしまうという,この現状をどのように考えていくかというのは相当大きなテーマというふうに思っております。
 それから,三つ目,法曹志望が安定しないというのも一つの悩みの種になります。プログラムを組んで4年間でしっかり,あるいは,3年間で卒業させるというふうにしておりますけれども,いかんせん,途中で脱落していくという傾向が見えます。1年生のときから組んだ,入学時から組んだプログラムですので,いたしかたない面,あるかもしれませんけれども,その辺のモチベーションの維持というのが課題かなと,こういうふうに思っております。
 いずれにしましても,一言で言うと,創価大学というのは意外に教員が必死になって法学部も法科大学院も教育している感がございます。
 以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございました。
 最後になりましたけれども,東京大学の岩村先生からお願いします。

【岩村教授】
 東京大学の大学院法学政治学研究科長の岩村でございます。お手元にパワーポイントの資料がございますので,1枚めくっていただいたところから,1ページ,ナンバリングで1と振ってあるところから始めたいと思いますので,御覧いただきたいと思います。
 法学部では,今年の4月からになりますけれども,カリキュラムの改革というのを実施しております。なぜこうしたカリキュラム改革を行ったのかというその背景でございますけれども,事実の認識としまして,法学部を卒業した後に就く職種の間での流動性が高くなっていることに加え,さらに,例えば取引法に関わる方も政治学,あるいは,経済学に通じているということが求めれるようになっています。他方で,公務員,国家公務員とか地方公務員の場合であっても,国際ビジネス法などの知識が必要となっているます。そういう事実認識が背景にございます。
 そうしたことを背景としまして,そこに改革の目的と書きましたけれども,狙いは,卒業後の進路の多様化とか,あるいは,仕事を巡る環境の大きな変化へ対応していこうということがございます。
 つまり,学生自身が主体的に学修に取り組むということを可能にしましょう,さらに,併せて,法学部生がどのような仕事に就いても,将来直面するであろう国際的な様々な課題に取り組む力を身に付けさせましょうということが目的として存在いたします。
 改革の非常に大まかな概要はそこにあるとおりでありますけれども,一つは,外国語,特に英語による授業を増やすということ,また,必修科目や選択必修科目を削減するということがあります。後者は先ほど申し上げた学生自身が主体的に学修に取り組むということを促すという趣旨であります。同様に,卒業単位数も,従来90単位でありましたけれども,これを80単位に削減しております。そういう意味で,学生の自由度を上げ,自主的な勉強を促すということを考えております。
 ただ,こうした今御説明した改革は,突然何か従来とは断絶した形で行ったということではございませんで,これまで順次行ってきましたカリキュラム改革の延長線上に存在するものと言うことができます。
 そして,このカリキュラムの改革と併せて,法学部の場合はコース制を取っているのですが,そのコース制についての改革も行っております。これが次のページになりまして,コースの再編を行っております。従来,法学部では三つのコース,第1類,第2類,第3類というのがございました。一番左側にあるのが従来のコース制でありまして,第1類が今までは私法コース,それから,第2類が公法コース,そして,第3類が政治コースという,そういう形になっていました。
 これを今般再編いたしまして,新しい第1類は法学総合コースと新たに位置付けております。これは,余り言い方は良くないんですが,第2類でも第3類でもないという人が行くというか,昔でいうと,食うに困らないというか,コースを選ぶ時点では特定的に目的が決まっていないという学生が最後の受け皿として第1類を選ぶということもあろうか思います。しかし,われわれの考え方はそこまで消極的ではございませんで,具体的には,公務員になる人たち,それから,企業に就職する人たちをこの第1類については想定しております。
 新しい第2類は,法律プロフェッション・コースであります。これは具体的には将来,法曹などを目指すという人たちというのを想定したものであります。3番目は,これは前と変わらないものでありますけれども,政治コースということで,主として政治学などに興味を持っている人たちということになります。行き先としては,中央官庁の方もいますし,例えばマスコミなどに行く方もいますし,意外と政治コースからは研究者コースに行く人たちというのもいるというのが状況であります。
 大まかに言うと,今までの私法コース,公法コース,政治コースとの対応関係というのは矢印でお示しをしたような感じになっております。この新しいコース制は今度の4月に本郷に進学してくる学生から新たに適用になります。この学生達が大体どういうふうに志望してきたかというのがちょうど分かったところであります。新しい1類については,234名,それから,新しい2類が115名,新しい3類が43名ということで,実はほぼ今までの第1類,第2類,第3類,それぞれ対応するこの矢印で対応関係にあるものとの人数比は余り大きく変わってはおりません。
 お話しする順番が前後してしまいますけれども,御説明する前提としまして,東大の場合は,学部段階は前期課程と後期課程に分かれております。前期課程は駒場のキャンパスで一般教養の教育を行い,後期課程は大ざっぱに言えば本郷のキャンパスで専門教育を行うというふうになっております。法学部その他の専門教育は,駒場の前期課程の2年次から原則として行うことになっています。逆に言いますと,前期課程1年次においては法学部の専門科目は開講されていないというのが前提状況です。
 1枚おめくりいただきまして,新しい法学総合コースが考えているものを少しだけ追加的に御説明しておきますと,先ほど申し上げましたように,ある意味,法学総合コースではいろいろな科目を履修できます。それでも,一定のガイドライン的なものを示さないと,学生がやみくもに単位だけを取ってしまうというおそれもあります。そこで,学生に対して履修科目選択のためのガイドラインとなるような二つのプログラムを設定しております。
 一つが公共法務プログラムでありまして,これは言葉が示すとおり,国家公務員とか地方公務員とか,そういった職業を将来目指す学生が対象となりますし,もう一つは,国際取引法務プログラムでありまして,こちらの方は将来,民間企業などで例えば国際的なビジネス等の仕事をしたいというような学生を対象とするものであります。それぞれ,履修・修了要件等はそこに書いてあるとおりでありますが,修了しますと,卒業証書とは別に,修了証を授与するということにしております。
 それから,もう一枚おめくりいただきまして,法学部では早期卒業がこれから始まります。なぜ早期卒業を導入したかというと,そこに導入の目的として書いてありますけれども,学生の学修の多様な在り方を我々としても認めようではないかという理由からです。
 具体的には,かなり的を絞っているわけですが,法学部を卒業した後に,大学院進学であるとか留学といった形で勉学を続けたいという学生に対して,早期の卒業を認めて,早くそちらに進む道を開きましょうということであります。この早期卒業というのを目指す条件は,優秀な成績を修めていることでありまして,それを条件としつつ,3年次末,又は,4年次9月をもって卒業することを認めることになっております。
 ただ,カリキュラム改革に伴い,2018年度からキャップ制を適用することにしていますので,そのままにしておくと,早期卒業が非常に難しくなります。そこで,早期卒業を予定する認定を受けた学生についてはキャップ制の適用を緩和することにしております。早期卒業自体は,この今年の4月に入学した学生から適用しますので,実際に早期卒業者が出てくるのはもう少し後になります。
 それから,東大は今年の4月に初めて推薦入試の入学者を受け入れております。法学部も受け入れましたこの推薦入試の入学者に対しては,一定の,学修を促す措置を行っておりまして,先ほど申し上げたように,法学部の専門科目は前期課程の2年次から履修することになっているのですが,推薦入試の入学者は1年次から履修してもよいことにしております。
 また,推薦入試の入学者には,法学部に進学してから,つまり,本郷に来てからの3年次目以降は,大学院の総合法制専攻の授業の受講も認めるという道を開いております。大学院総合法制専攻の授業,特に演習については,法科大学院の演習と合併で行っているものもありますので,そういう意味では,こうした学生は法科大学院の演習などに早めに触れることが可能になるということでもあります。
 最後のページでありますが,予備試験が東大の法学部,そして,法科大学院にどういう影響を与えているかについて,簡単にだけ申し上げておきたいと思います。
 まず,2016年に予備試験のルートで司法試験に合格した者の数でありますが,法学部の在学生につきましては,これは確定的ではありませんけれども,数えたところでは大体10名程度いることが分かっております。それから,法科大学院につきましては,みんな退学した人でありますけれども,42名いることを把握しております。
 御注意いただきたいのは,例えば法学部については10名程度ということでそんなに多くないではないかと思われるかもしれませんが,実はこのほかに予備試験合格者が結構な数いると思われます。そして,そうした者の相当数は予備試験に合格しますと,結局,法科大学院には進学しないで,司法試験を受験すると考えられます。
 他方で,予備試験に合格した後,法科大学院に来る学生もいるのですが,そういう学生は結局のところ,司法試験に合格すると退学あるいは休学するということになってしまいます。予備試験の合格者で休学した者の数もそこに参考として記しております。
 こうしたことが一体現在どういう影響を及ぼしているかといいますと,まず,第1に,法曹を目指す文科1類の学生,法学部生,そして,法科大学院生のマインドに大きな変化を与えております。
 とりわけ危惧をされるのは,大学の入試に合格して文科1類に入って,即座にそのまま予備校に行って司法試験の勉強を始めるということが現実にもう起き始めていることです。先ほど御説明した駒場で開講している2年次の専門科目の法律系の先生に聞きますと,やはり受講生が減っていると伺っております。
 それから,もう一つの非常に重要なマインドの変化は,東大の場合ですと,予備試験のルートで行くのがエリートであって,ロースクールに行くのはその下だという意識が非常に強くなっていることが挙げられれます。さらに,法科大学院にとって非常に危惧されるのは,法科大学院の受験者,とりわけ,既修の受験者が減っているということであり,かつ,東大法学部卒業の受験者,そして,合格者の比率が減っていることです。
 さらに,予備試験が法科大学院の授業へも悪影響を及ぼしております。予備試験の短答試験や論文試験が近付きますと,明らかに学生の意識がそっちに向いてしまって,授業の予習の手抜きをするようになっている。また,論文試験の直前は,授業を連続して欠席する学生が相当数出ます。予備試験の結果が出る11月になりますと,休学する学生が一気に増えます。その結果として,クラスの雰囲気が非常に悪くなるということが指摘されております。
 そのほかにも,法科大学院の3年次科目に,実は必修ではないけれども,実務に行くと非常に役に立つという科目を先端・展開科目という形で相当数開講しているのですけれども,この履修者が著しく減少しているのが現実であります。もう一つ付け加えますと,英語で行っている授業の履修者も実は減っていると聞いております。
 そして,もう一つ非常にこれも危惧されることでありますけれども,今申し上げたこととの表裏一体の関係にありますが,司法試験に合格する,あるいは,予備試験に合格するための受験技術志向が学生の間で非常に高まってしまっています。。ロースクールにおいても同様であると言えるかと思います。
 少し長くなりましたけれども,私からは以上でございます。ありがとうございました。

【井上座長】
 ありがとうございました。
 ただいまの各先生からの御説明や法学部教育の現状ないし在り方等について,御質問でも結構ですし,御意見等でも結構ですので,御発言いただければと思います。どなたからでも結構ですが,どうぞ。

【大貫委員】
 大変有意義なお話,ありがとうございました。最後の岩村先生がおっしゃった予備試験のお話,潮見先生もおっしゃったものですけれども,中央大学法科大学院でも極めて深刻な問題だということは強調しておきたいと思います。
 質問はそこではありません。
 特に冒頭でお話しされた潮見先生のお話を聞いて,なるほどなと思ったのですが,やはり法学教育というのはいろんな能力を積み重ねてつけていくものだと思います。読む,書く,それから,コミュニケーションする,調べる,そんなようなことをちゃんとできないといけないと思うんですね。とりわけ,法曹を担う人間はそういう能力は必要だと思うんですね。
 そうなりますと,本の読み方,判例の読み方とか,それから,文章の書き方とか,そういうのは積み重ねてやっていかないと効果的ではないような気がいたします。
 中央大学法学部の状況を調べましたところ,非常に教育がいき届いていました。法科大学院の教員ですので,宣伝に来ているわけではありませんが、例えば2年生では,基本書をしっかり読む少人数の授業を10名,20名でやる。3年生になると,法曹専門職養成プログラムということで,50人クラスの双方向の授業をやる。この授業には実務家教員が付いていて,7,8名学生を集めてレポートの添削をするということをやっております。それから,3,4年生になると,基本7法についてアクティブラーニングをやって,論点研究をするということが行われる。ついでに,1年生では,法曹論という授業がありまして,法曹三者の方に土曜日に来ていただいて講義をするということで,モチベーションを高める。
 最後はついでですけれども,少し御紹介した,こうした教育を行っているからかもしれませんけれども,基礎資料の13ページにある平成28年度出身大学別法科大学院進学者数は何と中央大学は178名の学生をいろいろな法科大学院に送り込んでいます。このことは、こうした教育の仕組みとも関係しているのではないかと思います。
 元に戻します。積み重ねる教育は非常に有効だと思うのですが,先生方の大学で,全員に聞くわけにいかないんで,ちょうど目の前にいる潮見先生にお聞きしますが,さっき申し上げたような本当に基礎的なこと,本を読むとか,判例を調べるとか,それから,判例を読むとか,そういう教育を積み重ねてやっていらっしゃるのかどうかお聞きしたいと思います。
 先生方のお話を聴いていると、ゼミ重視とかいうことも出てきました。しかし、ゼミの中身がどうなっているかは,創価大学を除くと,必ずしもはっきりしなかったものですから,その内容をお聞きしたいというところもあります。
 以上です。

【潮見教授】
 ありがとうございます。ヒアリング説明資料の5-2のところの冒頭に色を付けた重ねたものがございます。こういう形で基本的に京都大学はやっているんですが,今,大貫先生がおっしゃったところは,京都大学で言いましたら,一番下のところの1年次のところの法学部基礎演習,この辺りに対応しているのではないかと思います。
 私が京都大学の学生でいた頃はこんなものはなかったんですけれども,今はこの枠組みをを入れています。恐らくお尋ねになったのは中身だと思うのですが,基本的に准教授と一部の教授が古典的な文献を読んだり,あるいは,判決文を徹底的に読ませたり,あるいは,将来,3回生,4回生になったときに,ゼミとかがありますから,そこでの文章,レポート,報告書の書き方,このようなものを半期にわたって指導するということでやっています。少人数ゼミですから,20人ぐらいでやっています。この授業を履修した学生にとっては,その後の,学修成果,あるいは,実際に出てきている成績等を見たら,それなりにうまくいっているんではないかという感じがいたします。
 ただ,いかんせん,ここからがこれから先の課題でございますが,当初これを導入したときには,比較的多数の学生がこの科目を取っておりました。これは実は必修科目ではございません。京都大学は必修科目がございませんから。先ほどの2ページ目の京都大学法学部生アンケートというのがありまして,さらに,1回生アンケートというのもございますが,これは,この法学部基礎演習に参加している学生を相手にアンケートを取ったものです。
 見てのとおりで,今回,母数に43.8%という数字が出ています。ということは,科目は作ったけれども,半分ぐらいの学生が取っていないという状況が出てきております。これはいろんな原因があるというふうにも思われるのですが,エビデンスも何もないのですが,学生に聞いている限りですと,京都大学では,今年から全学の共通教育科目の再編を行いました。先ほどの創価大学ではございませんが,英語力の強化とか,あるいは,基本的な論理的な展開力,思考力を養うために,従来のその教養の先生がやっていたようなものにもメスを入れて,かなりハードなものを導入しました。さらに,外国人教員を60人ぐらい雇って,そこで英語での授業を,自然科学も,それから,社会科学も人文科学もやっていますから,そうなると,学生たちにとると,その部分の予習・復習に物すごく時間がかかり,また,力も使わなければいけない。そうなってきた場合に,法学部の専門科目に通じる窓口であるはずの法学部基礎演習というものが,必修でもないということもございまして,どちらかというと,敬遠される。特に成績が伸び悩んでいる学生,あるいは,しんどい学生は敬遠しがちになるということです。今後,場合によれば,何らかの形でこれを受けた対策を講じなければいけないという思っているところです。
 ありがとうございました。

【井上座長】
 ほかにどなたからでも。片山委員。

【片山委員】
 どの大学におかれましても,法学部と法科大学院との教育の連携ということに力を入れておられるということが大変よく分かる御報告であったかと思います。どうもありがとうございました。
 そこで,1点確認させていただきます。特に同志社大学,創価大学等では学部とのロースクールとの連携が非常に進んでいると拝聴いたしました。確かに法学教育での積み重ね,法曹養成教育の中での積み重ねということの必要性というのはよく理解できますが,そもそも,法科大学院における法曹養成のカリキュラムもこれも積み重ねで,未修1年でやるべきこと,既修1年でやるべきこと,既修2年でやるべきことという形で積み重なっているということになっております。
 そのロースクールにおける教育と学部との教育との関係といいますか,そこが必ずしも見えないところがございまして,基本的に,連携というときに,法学部で3年ないし4年勉強してきた学生が既修のコースに入ってくるということになろうかと思いますが,その法学部で法曹養成コースとしてやっておられる教育内容というものは,要するに,未修で行っている内容をいわば先取りするということなのでしょうか,それとも,その後の既修に入った後の既修2年目,3年目での教育も先取りする形で行っているのでしょうか。
 その辺りの法科大学院教育と学部教育との内容面での関係を御説明していただければ有り難いと思います。よろしくお願いいたします。

【瀬領教授】
 御質問,ありがとうございます。結論から言いますと,明確な形で法学部教育において,これは法科大学院の未修コースでの内容を教育している,あるいは,法科大学院における既修コースの専門的なものを対象にしてやっている,そういう区別はしておりません。ただ,確かに一部の科目については,先ほどお話ししたように,司法特講とか,答案作成ゼミナールというところでは,法科大学院での勉強をにらんだ形で,そちらの勉強に資するような教育を提供するという形で,未修の前提のお話を勉強してもらっていると。そこの中では,先ほどの積み重ねということで言えば,同志社大学の場合には,1回生のときに,リーガルリサーチという形で,判例の読み方,文章の書き方を学修する機会がございます。それにプラスアルファとして,法科大学院進学者については「司法特講-答案作成ゼミナール-」というところでその法科大学院での勉強に備えた形での勉強をするという形になっております。
 私からは以上です。

【加賀教授】
 創価大学の場合は,言われてみれば,こういうふうに考えているかなというような回答になるんですけど,おっしゃるように,やっぱり未修1年間で学ぶのをしっかり4年間かけて学んでいるというのが目標だと思います。なぜならば,我が大学のプログラムというのは,結局は既修に出すのが目標になっていますので,その意味では,間違いなくそうなんだろというふうに思うんです。
 ただ,先ほど,大貫委員がおっしゃった文章読解力であるとか文章力ということについて,どこまでやったら未修で,既修でというのがなかなかそこのところはまだ難しいなと思っていますので,ここは個々人によって実力の差がある状態になっていきつつあるんですけれども,回答としては一応既修狙い,したがって,未修まで。
 もう少し端的に言うと,基本3法の短答式は得点できる,ある程度得点できるところまで持っていくということにもなるかもしれません。
 大体そんな感じです。

【井上座長】
 日吉委員,どうぞ。

【日吉委員】
 東京大学の岩村先生に御質問です。先ほど,2017年の4月から,新たなコースに再編して再出発されるということでしたが,その際,教養科目,そこのコースとしての専門のスタートが2年次で,1年次は駒場の方でいわゆる教養課程としての履修をし,基本的に法律科目は勉強しないというような御説明があったかと理解しています。
 多分,制度設計としてはいろいろなことが頭の中では考えられて,例えば,コースの年限を2年次スタートにしなくても,3年次でもよかったんではないかとか,あるいは,逆に,他大学がそうであるように,コースをきちんと分けて,1年次からそういういろいろな行き先を意識したコースに分けるという選択肢もあったかと思うんですけれども,東大の方で,1年次は法律の勉強しないで,教養科目,2年次からそれぞれのコースに必要な専門的な法律科目を導入するというふうな設計にされたのは,どういうお考えからだったのか,御教示いただければと思います。

【岩村教授】
 御質問,ありがとうございます。
 最初に全体的にお答えしますと,私の説明がちょっと悪かったのかもしれませんけれども,コースを選択するのは本郷に進学してくる際でございます。ですので,駒場の2年目にいる学生が来年,つまり2017年の4月からどのコースに行くかというのをちょうど選択してきたところなのです。それで,先ほどその人数を申し上げたのです。ですので,実際にコースへ進むのは3年次からということになり,コースを選んで,実際にコースで学修していくというのは3年目に来てから,本郷に移ってからということになります。

【日吉委員】
 そういうことですか。

【岩村教授】
 はい。2年目のところはまだそのコース分けというのはないということになります。
 なぜ1年目に専門科目を開講しなのかというのは,これは法学部が決めているというよりは,東大全学の方針です。つまり,先ほど申し上げたように,東京大学の場合,学部教育課程を全体として前期課程と後期課程に分けていて,前期課程については一般教養を中心にやる,。そして,専門への特化は後期に進んでからという組み立てになっています。したがいまして,それとの関係で,専門科目を始めるのはは2年次からという決まりになっています。ですので,1年目はまさに一般教養のみであって,2年目は,将来自分が法学部に行きたいというのであれば,法学部の専門の授業を取りつつ,一般教養の科目も取るということになっております。基本型はそういう形になっています。

【井上座長】
 私も以前いた大学ですので申し上げますと,東大の場合,ほかの大学とはかなりそこは違っていまして,2年生までは法学部とは違う教養学部の所属なのですね。ですから,法学部の方は遠慮しながら,教養学部に対して,少し早めに法学専門科目を始めさせてほしいとお願いして,その了解の下にやっていますので,1年生まではなかなか手を伸ばせないというところがあるわけです。

【杉山委員】
 私は教育界に身を置く者ではありませんので的はずれな質問でしたらご容赦ください。各大学の皆様,たいへん工夫されて,いろんな施策を打っておられるのがよく分かりました。予備試験ということで,人が流れやすい早くて安くて楽なルートがある現状において,学生に伝えなければいけないのは,安近短の道を取ったときには,最終的な目標である社会に出てそれを生かそうとするときに差が出るよということだと自分は思っています。
 本日、御説明を伺った中で,各大学の中で,制度的に仕組みとして学生に,やっぱりこういうことを勉強していったら,最終目標である社会に出たときに,それがきちっと発揮できるんだよというようなアピール,宣伝というのをやっている大学がおられるのか。おられるとしたら,どういうタイミングでどういう内容で学生にアピールされているのかというのを御紹介いただけたら,有り難いと思います。

【井上座長】
 いかがでしょう。難しい御質問ですが,君嶋先生,いかがですか。

【君嶋教授】
 アピールできるほど自信があるわけではございませんけれども,先ほどゼミナールという話をいたしましたけれども,知識を短い期間に付けて試験に合格するということだけを言えば,効率的な講義を一方的に与えて,ひたすら答案練習などをすれば,早く合格するわけですけれども,ゼミナールでこういう課題を調べてきなさいと,この判例を自分でデータベースにアクセスしてどういう文献があるかを調べて,それをちゃんとコピーを取って,今ですと,それをゼミの仲間とシェアして,それを当日持ってきて,最初は読みこなせないわけですね。読みこなせないものを,どういうふうに読んでいくかなんていうのをちょっとヒントを与えながら,事実の概要は何だ,なんてやっているわけですけれども。
 そういう意味では,非効率的ではありますけれども,自分で汗をかいて,データベースへ行って,『判例時報』だと図書館へ行ってコピーしないといけないとか,そういうことをやってみて初めて。あるいは,ほかの学生と議論をしてみると,この学生はインターネットについての知識が物すごいとか,この学生は,私,知的財産法ですので,そういう割と軟らかい系の学生が多いんですけれども,この学生は音楽について語らせるとすごいぞとか,それぞれの得意分野が見えてくる。そこで協働させるというようなことをやらせると,学生が体験として,将来社会に出たときに,自分の得意分野をどういうふうに生かすかと,あるいは,不得意なところをどんな人と協力するかということを学んでいけるのではないかという希望的観測を持って指導しております。

【杉山委員】
 ありがとうございました。
 実は,日本経済がデフレの中でずっとやってきたというとき,企業が何をやってきたかというと,当社の商品は付加価値が高いんだよ,だからこの値段を出しても買っても満足感が高いよと価値を認めていただく打ちだしをしてきました。遠回りしても付加価値が高いんだよということを我々は学生に宣伝する責務がある。そちらの道に誘導していきたい。そういう意図での質問でした。ありがとうございます。

【潮見教授】
 制度的にどうかということじゃございませんが,これは私個人の感覚ということでお聞きいただければと思いますけれども,法科大学院とか,法学研究科に身を置く教員として見た場合に,教員がいくら学生に言っても,説得力はありません,私の生きざまを見ろと言っても,あるいは,私の言っていることをそのとおり信じてやったら,君たち,何とかなるぞとと言っても,もちろんそれを信じてくださる学生はたくさんいますけれども,半分ぐらいは,おまえ,何言ってるんだというようなことにもなります。
 実際のところ,日弁連キャラバンとか,いろんなことをやっておりますけれども,一番効くのは何かといったら,ロースクールに進学した学生の生の声を学生に聞かせる,それから,修了して法曹になった方,法曹に限らせていただきますが,法曹になって偉い方に話をさせても,この先生はすごいからそうなんだと言われますから,むしろ,少し年が離れたぐらいの現役の法曹の方に話をしてもらって,実際にどういう形で君たちが勉強していって育っていけば,将来道が開けるのか,あるいは,よりよい経験をすることができるのか,あるいは,社会に役立つのかということが分かっていただけると思います。アンケート等にも,どうもそういうところが見受けられますので。
 実際には,先ほども少し申し上げましたが,京都大学では1年次で法科大学院説明会という形で,法曹というものの進路をそういう先輩に語ってもらう。それから,3年生とか4年生のところでは,同じような形で,ロースクールの修了生とか,あるいは,卒業して法曹になってまだ間もないような方々に話をしてもらう。さらには,京都大学にもも同窓会がございますから,同窓会の企画というのは毎年定例のものがありますので,そこで現役の法曹のうちの若い方に,どういうふうに考えていってもらったらいいのか,法科大学院制度という中での養成がどういう価値があるのかということを分かりやすくしゃべってもらう。これでかなり変わるんではないかと思っております。そういう努力も私らがしなきゃいけないかなという感じがいたします。
 ありがとうございます。

【上田委員】
 広島大学の三井先生にお伺いしたいんですけれども,地方の国立大学,法科大学院にとって,学生を確保するというのは非常に今難しい状況になっていると思います。特に先生の御報告では,法学基礎という授業を設けて,法科大学院の先生が学部に授業を提供しているということなんですが,それの履修状況,学生が大体どれぐらい履修をしているのかということが一つ。
 それから,もう一つ,先ほどのお話の中で,夜間の学生が法科大学院に志望しているということだったんですけれども,その理由というか背景はどこにあるのか,教えていただければと思います。

【三井教授】
 1点目でございますが,法学基礎は1年の授業ですので,ほぼ1年が聞くということでございます。だから,逆に,1年のうちから,こう,高裁長官を含めて ,法の基礎,実務的な視点も見せてやるということで,結構これはほぼ1年生が全員受講すると。
 それから,先ほど,こっちの委員とも関わるんですけど,実社会と法という弁護士の授業を2年で,これも結構聞いておるんですけれども,やっぱり弁護士が,法律だけでは駄目で,裁判に勝つためには財務諸表が要るとか,科学の知識が要って,ここの機械,さびてるから,これは廃棄処分したらいいとか,そういうところまで行って裁判勝ったということで,広くやっぱり教養というか,理系の知識を含めて勉強せんといかんよということをオムニバスで学生に言っていただいておりますので,結構うちの学生はそれを聞いて,法律だけではいかんというような方向も考えておって,それも1,2年でそういう授業をやっておりますから,結構学生は身にしみているんではないかと思います。実務的な視点が1年,それから,実務についても,ほかの法律科目以外の広い,幅広い知識が要るんだということですね。そういうことを勉強していただているということでございます。
 それから,夜間の学生がなぜ多いかというと,はっきり言いまして,夜間は,まず,就職率が非常に悪いという状況がございます,やっぱり昼に比べまして。ですから,どうしても民間へ行くとか,公務員へ行くよりは弁護士になろうと。夜間に来る学生はある意味でしたたかでございまして,夜間でも来て勉強しようというところがありますから,意欲はあるんですよね。ですから,就職が悪いということと,それから,やっぱり就職悪いなりに法律が身を立てたいという意欲がございますから,それが結構その夜間の方の進学率につながっているんではないかと思います。
 私は廃校になるまで,広島修道大学の方のロースクールも非常勤で行っておったんですが,意外とうちの夜間の学生が修道大学のロースクールに来て,結構司法試験に通ったりしておりましたんで,やっぱりそれなりの夜間の学生は,ハングリー精神というのがあるのかなという気がいたします。
 以上です。

【上田委員】
 ありがとうございました。

【井上座長】
 私から伺うのはどうかとも思うのですけれども,潮見先生のペーパーの一番最後のところで,「独自の見解」として,未修者教育について学部の方で連携して云々という記述があるのですが,これについて,少し御説明頂けますか。

【潮見教授】
 ありがとうございます。ちょうど私のレジュメの3ページのところにあろうかと思います。
 何を個人的に考えているのかといいますと,先ほどの創価大学の加賀先生の話等にもつながりますが,基本的に私どものところは,法科大学院の既修,そこできちんと学修に堪えられるような,そういう素養を備えた学生というものを法学部で養成するべきだ,そういう形で法学部の専門教育というものは充実していなければいけないと,少なくとも,京都大学としては,それに堪えられるような学生を養成しようという形でやっておるわけです。
 他方,そういう目で見た場合に,法学部でそのような教育を経て法科大学院に入学した既修1年目(全体としては2年次)にいるその人たちと同じようなレベルで,1年目の未修者の方が2年に上がって,果たしてどれだけ能力を発揮して勉強することができるかということを考えた場合に,今の未修者の1年の教育ということが果たして十分なのだろうか。あるいは,従来は未修者の教育のところでも双方向,多方向の授業ということを表に出しているような形での授業等もやっておられたところもあろうし,京都大学の場合にも一部そういうことをやっておられた方もいらっしゃったと思いますが,果たしてそれで将来の2年,3年とつないでいく法曹養成の教育にとって堪えられるものができるのだろうかという思いを抱きます。
 こう考えた場合に,未修者の教育を今のようなプロセスの中の法曹養成教育でどう位置付けるべきかと考えた場合に,基本的に,2年次以降の授業に堪えられる,そのための理論的な思考力をきちんと養成する必要があります。しかし,それは1年で十分であろうか。さらに,双方向,多方向という授業をやるというよりは,むしろ,講義の形で基本的な考え方とかルールはどのようなものかとか,あるいは,さっきの話じゃありませんが,判例ってこんなものですよとか,そういうことを教育していく方に未修者教育というものはシフトしていくのが望ましいのではないかと思います。
 そのように考えた場合に,講義方式をきちんと取り,さらに,文書もきちんと書けるようにし,さらに,理論的な面での基礎的素養というものを十分に身に付けさせるために,何らかの形で,学部の授業を活用するという方向はないのかなというふうに思って,その辺りのところをいろいろ書いておるわけです。
 実際には学部の教育,学部の講義というものを有効活用するということを少し考えないと,未修者というものを育てて,そして,実際に社会に送り出して,その前のところで司法試験に合格させていくところまで持っていくというところが果たしてできるのであろうか。幻想とは申し上げませんけれども,現在の制度に対して少し変革を加えるような形での未修教育の再編をやる必要があり,さらに,きょうも法科大学院の先生方もいらっしゃっておりますけれども,全国の法科大学院での未修者教育のやり方についての成功例の共有というものを考えていったらいいのかなというふうに思って,少し書かせていただいたという感じです。
 
【井上座長】
 ありがとうございました。言いにくいことをあえて言っていただいたかもしれません。
 もともと,法科大学院制度を立ち上げるときもそういう議論をしたうえで,現行のような制度として発足させたわけですけれども,そのときの了解事項として,これは従来にない初めて行う新奇な制度ですので,一定の年月が経てば,再検証し,場合によっては根本的な見直しをすることもあり得べし,ということであったはずなのですね。その意味では,制度の根幹を見直すようなことも,堂々と意見を言っていただいて構わないと思います。
 むろん,現行制度の枠組みの中でどこまでできるかはまた別ですけれども, 10年余り前に始めた新しい制度ですので,そろそろそういう大掛かりな見直しもしていく必要があるかもしれないと,私も思っています。
 ほかの点でも結構ですが。あと何人か,ご意見をいただければと思いますけれども。大貫委員。

【大貫委員】
 今の潮見先生のまさに未修者教育の立て直しと申しますか,改善のための学部の授業の利用という点に関して,君嶋先生にお伺いしたいのですが,先生のレジュメの4ページ目のローマ数字の3の1.のところで,「2017年から,当大学の法学部以外の4年生が自由科目として履修することを認め,法科大学院進学後に単位認定」するという記述があるのですが,これがうまくできると,未修者が入ってくる前に,法科大学院の科目が大分取れちゃう。
 あるいは,極端に言うと,組織だった教育をしなきゃいけないと思うのですけど,学部段階で教育が終わっちゃって,その方は,本来未修者の方が既修で入れるということにもなるのかもしれない。教育がうまくいけばですよ。ということもあるのかなと思ったのですが,これは具体的にはどういう構想でおっしゃっているのか,少し教えていただければと思います。

【君嶋教授】
 こちらは法科大学院の方の制度ですので,片山委員にお願いした方がいいかと思います。それを受けて,法学部としてどうするかということで。
 私が伺っている限りでは,2015年度からこれを設けまして,希望者だけで,まだそんなに履修者は多くなくて,4人,5人ということなんですけれども,実際にこの入学する半年前ですね。秋学期に民法と刑法を開講しまして,履修した学生を見ると,他学部であるとか,あるいは,外国の大学を卒業した者ですとか,非常に多様な学生が履修してくれていると。しかも,半年早く始めるわけですので,学修の一助にはなっているのではないかなと思います。
 それから,もう一つ大きなことは,2017年度から自由科目として4年生,取らせますので,そうなりますと,法科大学院に行きたいなと思っているけれども,まだ,他学部として法律学を履修したり,ゼミを履修している学生ももちろんいるんですけれども,法科大学院へ行く前に,学生の間に4年生で履修できるということで,かなり集中的に,やはり動機付けが違いますので,普通に他学部にいて法学部の授業を履修して,私のゼミにもいますけれども,そうやって履修するのと,法科大学院に行くという前提で法科大学院がその人たちのためにしつらえた授業として民法,刑法を学べるのとでは,やはり習得の割合が全然違うのかなというふうに想像しております。
 片山委員,もし追加があれば,よろしくお願いします。

【片山委員】
 特に追加することはないですが,そもそものこの「未修チャレンジコース」の仕立てというのは,むしろ法学部の学生を対象としたものではなくして,より広くバックグラウンドを持った他学部の方々に法学に興味を持っていただいて,かつ,ロースクールへの進学を促進するという趣旨で,最初は未修者コースを受けて合格した方について,その秋に履修をしていただくということになっておりましたが,そうすると,既卒者の方についてだけ科目等履修生として履修するということで,非常に対象者の範囲が狭かったもので,今年から,他学部の方々に自由科目としてその二つの科目を取っていただいて,法学に対する,法曹に対する関心を持っていただく,あるいは,ロースクールへの進学を考えていただくという趣旨で対象を広げました。その先の問題として法学部の学生さんに開放するかという点がありますが、法学部の方々にその科目の履修をということになりますと,それは法学部で同様の授業が実施されているわけですから,それを法学部の方でどう考えるかという点が今後の課題になると思っております。

【大貫委員】
 そうしますと,現在の2017年度から始まる制度でも,あくまでも動機付けとか,そちらの方が強いということですか。

【片山委員】
 そうですね。

【大貫委員】
 未修コースで法科大学院に入ったときの学修をサポートするという趣旨ではないということですか。

【片山委員】
 両方です。

【大貫委員】
 分かりました。ありがとうございます。

【井上座長】
 ほかにございますか。じゃあ,どうぞ。

【土屋委員】
 加賀先生に伺いたいと思ったんですが,大学独自の奨学金制度がありますね。私は法科大学院の志願者が減っている原因の一つは経済的条件にあるんだろうと思ってよいます。私自身が奨学金をもらい,学費免除で卒業できたという学生なもんのですから,非常に重要な問題だと思うのです。
 奨学金を支給する仕組みとしてはいいんですが,この返済条件はどうなっているのかとか,ほかの法科大学院もそうですが,制度作りの問題,経済的援助についての助言みたいなものがもしありましたら,教えていただきたいと思います。

【加賀教授】
 先生がおっしゃるように,また,先ほど私が申し上げましたように,経済的問題というのは法科大学院,司法試験ということを考えるに当たっては大変重要な要素だというふうに思っています。
 いわば,先生の返還はということをお聞きになっているということは貸与の場合のお話で,学生支援機構の奨学金の貸与について,大学全体は別として,法科大学院の修了生の返還率はそう悪くない。つまり,合格した人は何とか返済のめどが立っているのかなと,こういう実態かと思っています。
 ただ,合格率で考えていけば,全員が司法試験合格して法曹になっているわけじゃございませんので,何らかの仕事を取りながらやっているわけですよね。ですから,その者にとっては返還が滞っているということはかなり聞きます。これもまた聞くお話です。正確にそこまでのデータがございませんので,これ以上はちょっと回答が難しいんですけれども。
 したがって,何とか給付の奨学金制度を作れないかということで,うちの法曹会の奨学金を学部1年生からという,もともと法科大学院にあった奨学金制度を学部におろしちゃったんですね。そういうふうにしないと,もう法曹志望者が確保できないというかなり深刻さの表れとして学部に持ってきました。これは半額給付にしています。こんな実態です。

【土屋委員】
 ありがとうございます。

【井上座長】
 本日は,非常に有益なお話を伺えたと思います。我々の任期は来年の2月までですが,これをベースに,さらに議論ができればと思いますし,次期の特別委員会では大きなテーマになることは間違いありませんので,そのためにも,有益な御意見,材料を頂いたと思っています。きょうは,先生方,どうもありがとうございました。
 最後になりましたが,司法試験漏えい問題に関する対応について,司法試験委員会が再発防止策をまとめたということですので,佐伯委員の方から御報告を頂きます。

【佐伯委員】
 そうしましたら,私の方から1分程度で説明いたします。
 資料は6-1から6-5まででございまして,6-1は,司法試験委員会の下に設けられましたワーキングチームの提言内容でございます。これを受けました決定が資料6-2でございます。資料6-2,御覧いただきますと,平成29年以降の司法試験につきましては,十分な再発防止策を講じることを前提として,法科大学院で現に指導している者についても問題作成担当の考査委員として推薦対象とするとの方針が決定されたものでございます。
 資料6-3から6-5のとおりの各種決定も併せてなされております。
 本日現在,既に14校の法科大学院において,再発防止策を策定していただいたと承知しております。今後も不断の検証を行うということでございますので,二度とこうした事案が発生しないよう,法務省,司法試験委員会としても意を尽くしてまいりますので,関係者の皆様におかれましても,引き続き御協力をお願いしたいと存じます。
 以上でございます。

【井上座長】
 どうもありがとうございます。我々法科大学院の関係者としても,襟を正し,各法科大学院に対しても,この趣旨に沿った取扱いをお願いしたいと思います。
 次回の会議につきましては,改めて事務局の方から日程等につきご連絡を差し上げたいと思います。
 本日は長時間にわたり,ありがとうございました。これで終了させていただきます。

お問合せ先

高等教育局専門教育課専門職大学院室

(高等教育局専門教育課専門職大学院室)