法科大学院特別委員会(第66回) 議事録

1.日時

平成26年10月9日(木曜日) 10時30分~12時30分

2.場所

文部科学省東館15階 15F特別会議室

3.議題

  1. 法科大学院教育の改善・充実について
  2. 認証評価の見直しについて
  3. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)有信睦弘、井上正仁、土井真一の各委員
(専門委員)笠井治、片山直也、鎌田薫、木村光江、椎橋隆幸、杉山忠昭、田中成明、土屋美明、西山卓爾、長谷部由起子、日吉由美子、松下淳一、吉崎佳弥の各委員

文部科学省

吉田高等教育局長、徳久大臣官房総括審議官、義本高等教育局審議官、藤原高等教育局私学部長、牛尾専門教育課長、今井専門職大学院室長、佐藤専門教育課課長補佐、真保専門職大学院室専門官
 

5.議事録

【井上座長】 
 それでは所定の時刻ですので、第66回、中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会を開催させていただきます。
 まず、事務局から配付資料の確認をしていただきます。

【今井専門職大学院室長】 
 失礼いたします。それでは、議事次第に基づいて御説明をさせていただきます。中ほど、配付資料でございます。資料1は前回の法科大学院特別委員会の議事録案でございます。続きまして、資料2は中央教育審議会大学分科会及び法曹養成制度改革顧問会議における議論状況の御報告の資料でございます。続きまして、資料3は法務省より御提出いただきました平成26年司法試験総合点別人員調でございます。続きまして、資料4-1は法科大学院教育の抜本的かつ総合的な改善・充実方策についての提言案でございます。資料4-2はその参考資料となっております。続きまして、資料5は法科大学院に係る認証評価の見直しについてのペーパーでございます。そして、最後、資料6として「今、なぜロースクールで学ぶのか、列島縦断リレー法科大学院がわかる会」のポスター、チラシを配布させていただきました。資料に不足等ございましたら、お申し出いただきたく存じます。

【井上座長】 
 よろしいでしょうか。議事に入ります前に、9月29日に開催された中央教育審議会大学分科会と、9月30日に開催された政府の法曹養成制度改革顧問会議において、法科大学院に関連した議事があったということですので、事務局からそれについて報告していただきます。

【今井専門職大学院室長】 
 失礼いたします。それでは資料2に基づいて御説明させていただきたいと存じます。中央教育審議会大学分科会及び法曹養成制度改革顧問会議における議論状況の報告でございます。まず、上段でございますが、先月29日、中央教育審議会大学分科会におきまして、この特別委員会で御議論いただいていた提言案を含めた検討状況について御報告をさせていただきました。その御報告後、四角の枠囲みの中にございますように、大学分科会の委員の先生から幾つか御指摘を頂きました。例えば、一つ目の黒ぽつにございますように、現在、制度創設から10年がたって社会状況が変わっている中、現状についてその内容をしっかりと明確に示さないと若い方々への進路選択を誤らせることになってしまうのではないか、という御指摘がございました。
 また、予備試験の制度改革を含めた抜本見直しについて提言で触れているが、どのようなものが想定されているのかといった御質問がありました。また、三つ目の黒ぽつにございますように、予備試験についての国際的通用性についての疑念、また、法科大学院と予備試験の両立の難しさについて御指摘を頂きました。
 また、同じく先月の30日でございますが、政府に置かれております法曹養成制度改革顧問会議におきましても、現在の法科大学院特別委員会での審議状況を含めて、私ども事務局から御説明させていただきました。それにつきましては、同じく枠囲みでございますけれども、顧問会議の顧問の先生方からも幾つか御指摘を頂いたところです。例えば、一つ目の黒ぽつでございますが、飛び入学についてどの程度活用することを考えているところなのか、また、特別委員会の中では、さらなる短縮といった議論をされているのか、といった御質問がございました。
 また、二つ目の黒ぽつにございますように、地方のロースクールの学生募集停止が続いており、また、法学履修者の減少傾向の中で、是非ICTの活用を考えて検討していただいた方がよろしいのではないかといった御意見もございました。
 また、三つ目の黒ぽつにございますように、今、議論いただいています法科大学院特別委員会の提言がまとまったら、それを受けて文部科学省として取り組むべき施策について、いつまでにどのように具体化するのかということについての報告をしていただけないか、といった御指摘がございました。
 また最後の黒ぽつですが、この特別委員会の提言案の中には予備試験の制度見直しについて触れられているけれども、その予備試験に関し、特別委員会においてどのような議論がなされてきたのかについて、議事録を配付するなどして審議状況を教えていただけないかといった御指摘もございました。
 このような御指摘を踏まえまして、次回、政府に置かれているこの顧問会議につきましては、11月の終わりに開催予定と伺っておりますので、このような御指摘に対してお答えできるように、文部科学省からその依頼に対しての回答の準備をさせていただきたいと考えております。
 大学分科会、顧問会議での議論の状況についての御報告は以上でございます。

【井上座長】 
 ありがとうございました。以上のとおりですけれども、何か特に御質問等ございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、議事に入らせていただきます。本日も前回に引き続きまして、法科大学院教育の抜本的かつ総合的な改善・充実方策に向けた提言案について御審議いただきたいと思います。
 審議に入ります前に、前回、平成26年の司法試験結果について御質問がありましたので、この点について西山委員から御回答をお願いします。

【西山委員】 
 それでは、御回答いたします。まず、一つ目でございます。片山委員から1,800番台から2,000番台の受験生について既修・未修別の人数等が分かるかという御質問を頂いたと認識しております。これにつきまして、本日、資料3としてこれに関連する資料を配付させていただいております。細かい数字が並んでいる表です。
 まず、グレーで色付けしているところが合格点である770点の人員別です。既修・未修・全体という順になっております。これで黄色でマーキングしている部分ですが、既修のピークが760点、未修はピークが二つ出ておりまして790点と740点。それで、全体のピークとしては710点というところをマーキングしております。
 片山委員の御質問との関連でいきますと、例えばではございますが、合格点770点という枠を一つ下に下ろして760点とすれば、既修は何名、未修は何名という見方はこの表ではできるかと思いますので、そのような形でこの表を御覧いただければと思います。
 それから二つ目、笠井委員から公法系科目、あるいは選択科目の一部におきまして、足切りが多いという点についての御質問がございました。御回答は必ずいたしますと申し上げましたが、結論から申し上げまして、分析結果等の御回答は困難という回答をせざるを得ないところでございます。もちろん、司法試験考査委員におかれましては、これは本年に限らず、毎年継続的に、次の出題をより良くするためにという観点もあって、必ず検討いただいているところであると認識しております。
 したがいまして、本年の試験結果につきましても御指摘の点も含めて検討がなされておるものと承知しております。ただ、現在のところ試験結果発表後、まだ考査委員による採点の実感なども公表されていない段階です。何ら具体的なものが出されていないということもありまして、現段階での御説明が困難ということです。なお、仮に御指摘の足切りの多さについて何らかの分析がなされたといたしましても、それをこのような場も含めて公表できるかどうかについては、また別問題でございます。分析の内容によっては今後の具体的な出題傾向を推知、想像させるというような弊害が生じるという観点も含めて、慎重に考えなければならないという点もどうぞ御理解いただければと思います。
 私からは以上でございます。

【井上座長】 
 ありがとうございました。何か御質問等がございますか。

【鎌田委員】 
 前回欠席したので、経緯がよく分からないのですけれども、足切りについては、昔からあって、素点と得点調整後の点と両方が最低基準点を下回ったときに初めて足切りに引っ掛かったような記憶があるのですが、今はどのようにしているのでしょうか。

【井上座長】 
 お分かりでしょうか。

【西山委員】 
 お待ちください。直接の所掌ではないので。

【鎌田委員】 
 申し訳ございません。こんなことをお伺いするのも、素点で設定しますと採点者の傾向がじかに反映するのですが、得点調整後でやればそれほど特定の科目に限って異常に多い数が出るはずはないのだろうと思うので、その辺のところの実態が少し分かると。

【西山委員】 
 すみません、不確かなお答えをしてはとは思いますけれども、25%未満を足切りということでございますので、それは素点をベースに判断されるものと理解をしております。

【片山委員】 
 まずは、西山委員並びに法務省におかれましては貴重なデータを御提供いただきまして誠にありがとうございます。
 この表の分析につきましては、今ざっと見ただけではできないところですので、改めて持ち帰って分析させていただきたいと思います。恐らく、ピークという意味では、既修・未修それぞれ大きなきれいな山ができており、既修に関してはそのピークのあたりで切っているということだと思いますが、未修に関しましては、73人のピークが上に出ておりますけれども、これは突出している点数で、恐らくピークはもう少し下の方にあって、未修に関しては当然のことといえば当然のことですけれども、既修よりも山が低めにあり、山の上のあたり、すなわち、未修の中では比較的レベルが高い人たちのところで線が引かれているというです。そのことの持つ意味を改めて今後検討させていただければと思います。
 それから、未修の中でも非常に優秀な人たちは上位陣にいるということがわかりますが、未修をひとくくりに未修といいましても、純粋未修、他学部、他研究科卒業、あるいは社会人経験者と、それから隠れ未修、すなわち法学部出身者と多様な範疇(はんちゅう)があります。そのような人たちの中で、更に細かいデータ分析をしていくことが、今後の法科大学院教育における一つの重要な貴重なデータになるかと思いました。

【笠井委員】 
 先ほど、西山委員から御説明がありました今年度の試験結果の分析を公表できないという点についてですが、試験制度に伴う問題として、これを公表するのか否か、公表する程度、内容等について非常に難しい問題があることは、よく分かっているつもりです。しかし、今回、足切りの問題で特別な状況が生まれているのではないかという疑いが存在する以上は、受験生の公平性を図るという観点からも、極めて重要な問題であると考えております。この問題について、西山委員のおっしゃることもよく分かりますので、それを踏まえまして、どのように今後、どの程度に、またどのような内容で公表していただく方向で考えていただくかについて、十分検討したいと思っております。以上です。

【井上座長】 
 御意見として承っておくことにしたいと思います。それでは、議事の中身に入ります。
 提言案につきまして、前回、委員の皆様から頂きました御意見等を踏まえまして、事務局で資料を準備していただきました。まず、その資料について事務局から説明をお願いしたいと思います。

【今井専門職大学院室長】 
 それでは、失礼いたします。資料に基づいて御説明をさせていただきたいと存じます。資料4-1でございます。法科大学院教育の抜本的かつ総合的な改善方策の充実について(提言案)でございます。この提言案につきましては、前回の会議で極めて多くの御指摘・御意見を頂きました。そのような御意見、また会議後にも事務局に御意見を寄せていただいておりますので、そのようなものも含めて今回、修正をさせていただいたものを案として提出させていただいた次第でございます。その中で、特に修正をした箇所を中心に御説明をさせていただきたいと存じます。
 まず、ページを1枚おめくりください。2ページ目です。真ん中にローマ数字1、これまでの改革の成果と現状という項がございますが、この下から二つ目の白丸の上から数えて3行目以下でございます。前回、規模のことだけ書くのではなくて、分野でも広がりが見えつつあるということが記載できないかという御指摘・御意見を頂いておりました。その御意見を踏まえまして、今回は例えば地方で活躍する弁護士、また企業内弁護士、裁判外紛争解決手続や少額訴訟などを扱う弁護士が司法制度改革以降、以前に比べて増えつつある傾向も認められるところであるということで、表現をさせていただいております。
 それ以外につきまして、2ページ目以降、若干事後の修正をさせていただいております。3ページ目は特に下段のローマ数字2の箱の中でございますが、ここにつきましては、二つ目の白丸のところが少し文章が長かったので分けたらどうか、という御指摘を頂いてその部位を分けております。
 続きまして、4ページ目を御覧ください。上から数えまして二つ目の白丸以降です。この後につきましては、前回の会議の中で特に、グローバル化が進んでいる中で法曹の養成を見ていく必要があるのではないか、という御指摘を踏まえまして修正、追記をいたしました。特に三つ目の白丸以降ですが、様々な条約なり国内外法、またその商慣行などのルールに基づいて問題解決に当たるとともに、新たなルールの創出にも積極的に関与していかなければならない場面が増大しているのではないか。
 それを踏まえて、さらに四つ目の白丸ですが、民間、公務における様々なニーズに応え、グローバルな視点を有した上で法、ルールを駆使して課題分析、解決、立案、交渉、調整に取り組むことができる法曹ということで、ここに前回頂いた御意見を集約させていただいて修文案を作らせていただきました。
 また、4ページ目の一番下の白丸について、唯一の道というところについては、その表現の適正化を図らせていただきました。
 また、5ページ目につきまして、最後の黒ぽつでございますが、それまで当面の間はとあった上で、また当面取り組むべきというところに御指摘がございましたので、引き続き取り組むべきであるということで文言を修正させていただきました。
 続きまして、6ページ目です。上から一つ目の黒ぽつですが、ここにつきましては下から3行目からですが、地方在住者や社会人への配慮というところで、前のページでこの文言が書いてあったので、この高い教育力を持つ法科大学院が全国的に一定のバランスを持って配置されることに配慮をしつつ、ということを追記をさせていただいたところでございます。
 続きまして、6ページ目の真ん中の中段から始まります教育の質向上について、でございます。前回、御議論いただいた際には、特に四つの黒ぽつがございましたが、最初の黒ぽつが教育の質の向上という観点から見て、若干、異質ではないかという御指摘を頂きました。その御指摘を踏まえまして、この優れた資質を有する志願者の確保については、むしろ教育の質の向上というくくりではなくて、一つ別項を立てさせていただいて、3ぽつを新規で設けさせていただいたところでございます。その結果、ここで黒ぽつが今、三つになっておりますけれども、その部分が移動したということになっております。なので、前回からは、最初の志願者確保についての項が、次のページに移っているという状況になっております。
 その上で、従来、二つ目の項であった6ページの下段から始まっております法曹として不可欠な基礎・基本の習得の徹底について、というところが1番に変わって順番がずれているということです。その(1)でございますが、特に7ページ目を御覧ください。
 修正箇所としては最後の、さらに、のところを御覧ください。ここで司法試験問題の取扱いについて、前回は詳しく書いておりましたが、ここはもう少し表現をマイルドにした方がよろしいのではないかという御指摘を踏まえまして、現在のような、司法試験問題等を適切に活用した指導の在り方について改めて周知、ということで修正をさせていただいたところでございます。あと7ページ目、8ページ目の(2)、(3)は順番の修正だけでございます。
 続きまして、8ページ目の中段から御覧ください。この3ぽつが先ほど御説明をした2ぽつの四つの黒丸の一つ目をこちらの方に新たに項立てをさせていただいたものであります。優れた資質を有する志願者の確保について、ということでございます。四角の中はその項立てをしたことによって、その概要を新規に起こしたということで、追記をさせていただいたところでございます。
 その上で、内容的に修正をさせていただきましたのは、9ページ目以降でございます。特に、上から数えて二つ目の白丸でございますが、経済的な理由によって進学を諦めることがないような経済的支援について充実した記載ぶりができないか、ということについて御指摘があったと理解しています。そのため、中段にございますように授業料の減免措置の中の給付型支援の充実を図るという形で修正をさせていただいたところです。
 続きまして、同じ9ページの上から数えて四つ目の白丸です。ここは就職支援について充実をさせていくということで前回、案を出させていただきましたが、その就職支援の充実ということだけではなくて、もう少し深く中身を記すことができないかという御指摘がございました。そのため、 3行目以降を充実させていただいて、例えば体制整備を図るととともに、在学向けのセミナーの開催、教育課程における授業科目等の設定といった取組を更に充実させるということで追記をさせていただきました。
 また、その際、というものを新設しておりますが、これは特に民間とか公務との連携協力という観点を記載したらどうかということで、追記させていただいたところでございます。
 また、その更に下でございます。下から数えて二つ目の白丸のところに、広報について記載をさせていただいている箇所がございました。この点につきましては、分かりやすく丁寧に伝える広報だけではなくて、もう少し具体的に積極的なものを打ち出せないかということで、将来のキャリアパスの具体的なイメージを持てるよう、積極的な広報活動ということで追記をさせていただいたところでございます。
 そして、続きまして、10ページ目を御覧ください。法科大学院教育と司法試験修習との有機的な連携の在り方ということでございました。前回、特に予備試験の話が先に来ていることについての唐突感について御議論があったかと認識しております。そのため、今回、修正案としては、まずは司法試験及び司法修習との関係を前に持ってこさせていただいた上で、予備試験をその次に持っていくという修正をさせていただきました。10ページ目の下段にございます(1)については、内容は前回から修正がなかったというところでございます。
 11ページ目にございます予備試験との関係については、順番を入れ替えた上で、御意見を頂戴いたしましたので修正をさせていただいた箇所がございました。それは、最後の12ページを御覧ください。丸2番ですが、黒ぽつが三つございます。そのうち、まず一つ目の黒ぽつですが、前回のところから修正をさせていただいたところは、下から数えて5行目以降です。文章といたしましては、科目に関する1回だけの試験によって判定が行われておらず、の後ですが、必ずしも十分な社会経験を有しておらず、かつ法科大学院における幅広い学習経験を有しないまま予備試験に合格する者が生じうる制度となっていることから、予備試験についてもプロセスしての法曹養成の理念を可能な限り及ぼすものとなるようという、要は中身をより詳細に整理をしていただいた御意見を頂きましたので追記をさせていただいております。
 また、三つ目の黒ぽつですが、こちらにつきましても、特に1行目の終わりから2行目にかけてでございますが、受験者の学識及びその応用能力等を丁寧に判定できるよう実施方法を工夫、ということでその内容の具体化をさせていただく修正を頂きましたので、反映をさせて本日お出ししたところでございます。
 以上、前回からの修正点について御説明をさせていただいたところでございます。
 御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

【井上座長】 
 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明に基づきまして、御意見・御質問をお伺いしたいと思います。これまでもこの提言案の中身につきましては議論を重ねてきたところでありますので、本日の議論を通じて、できれば本特別委員会としての一定の共通認識を得るところまで持っていければと、座長としては考えておりますので、是非御協力のほどをよろしくお願いしたいと思います。
 事務局から説明がありましたとおり、法曹養成制度改革顧問会議からは特に予備試験に関して、本特別委員会での審議状況を報告してほしいとの要望があったようです。これはもう既に何回か議論しているところですけれども、そのような要望があったということをも念頭におきながら御発言を頂ければと思います。
 どなたからでも御質問あるいは御意見をお伺いしたいと思います。

【松下委員】 
 2点ございます。1点目は9ページです。中ほどに、白丸の四つ目、さらに、で始まる項目がございますが、ここでは法科大学院生の修了後の職域の拡大という問題意識からの記述がなされているところで、民間企業や公務部門が挙げられています。従来、職域の拡大という文脈ですと、もう一つ国際分野でも活躍が取り上げられていたらと思いますので、そこにも言及があった方がよろしいのではないかと思います。グローバル化については、4ページ目の二つ目の白丸で触れられてはいますけれども、重要なことですので、もし可能ならばここでも言及いただければと思います。以上が1点目です。
 それから、2点目ですが、今度は最後の12ページの丸2の一つ目の黒ぽつで、意見に基づいて加筆があったという御説明がただいまございましたが、その一つ目の黒ぽつの7行目、一方、で始まる予備試験についての言及がございます。予備試験というのは、基本的な法律科目を中心とした科目に関する1回だけの試験で判定が行われているという制度であることから、予備試験についてのプロセスとしての法曹養成の理念を可能な限り及ぼすものとなるよう、速やかに検討していくことが望ましいと考えられるという記述がございます。
 ただ、予備試験というのは1回だけの試験なので、プロセスとしての法曹養成の理念を及ぼすというのは、相入れないことなのではないかというのが、従来の意見の大勢ではなかったかと私は思います。予備試験についてプロセスとしての法曹養成の理念を可能な限り及ぼすというのは、具体的に何を言っているのか、これはどのような御意見なのか。この委員会で出た意見ではなかったように記憶しておりますが、もし可能ならば御説明をいただけると有り難いと思います。以上です。

【今井専門職大学院室長】 
 まず、事務局から入れさせていただいた経緯を御説明いたしますと、こちらの御意見は会議後に頂いた意見でございます。私どもの頂いたものを拝見しますと、内容的にはここにございますように、より問題意識を明らかにしていただいているということ。それから、予備試験についても現在は、プロセス養成としての法曹養成の中に制度としては位置付けられているという流れの中で、さらに二つ目の黒ぽつの方で、速やかに検討していくことが望ましいと考える、の後に、具体的には、とつながっておりますので、その文意の中で明らかにしていただいた御意見だと思って、本日修正をして提案をさせていただいた次第でございます。この件について、是非御議論を深めていただけたらと思っております。

【井上座長】 
 私が承知している限りでは、この表現がいいかどうかは別として、予備試験が法律科目、法律の基礎知識のテストに傾きすぎているというか集中しすぎているが、法科大学院ではほかに先端科目、あるいは基礎科目、あるいは実務科目を学んでいる。そのようなものを取り込んだ試験にできないかという御意見があったところです。
 「プロセス」というのを、法科大学院だけではなくて全体を指すプロセスと捉えると少し意味が違ってくるのですが、法科大学院の教育に相当するような学識や能力を試す試験になっていないのではないかという御意見だったと思うのです。それをこのような形で表現したと、私としては理解しているところです。前は「同等」と書いてあったのは、そのような意味だったと思います。

【土井委員】 
 多分、予備試験について、私も何度かこの委員会で申し上げていて、プロセスとしての法曹養成の理念を損なわないようにしてほしいと申し上げてきたところです。ここの言い方で、理念を及ぼすという言い方をすると、どう及ぼすのかな、という感じがするのです。表現としては、法曹養成の理念を可能な限り踏まえたものにしてもらうというような形でしてもらえば、趣旨は通るのかなという気はします。

【井上座長】 
 ほかの方、いかがですか。

【長谷部委員】 
 「プロセスとしての法曹養成」という表現は、何箇所か出てきています。例えば、6ページの囲みの中で法科大学院教育における「プロセス教育の確立」というのがございます。それから、10ページの一番下の丸のところ、最後の行に「引き続き、プロセス養成の理念を踏まえ」という表現があります。そして先ほどの、12ページの予備試験との対比のところで出ているのですけれども、プロセスとしての法曹養成ということの中身が、もう少し具体的になっていないと分かりにくいのかなと思います。そのために、それをどのように予備試験に及ぼすのかという論点が出てくるのではないかと思うのです。
 法科大学院における法曹養成教育に、予備試験の1回だけの試験と比べてどのような特徴があるのかについては、今までこの会議でもいろいろな御議論があり、前回も御議論のあったところでありますが、あえて申し上げますと、予備試験については、確かに法的な知識や思考力というのは試せると思います。それで一定の水準に達した人が合格しているのだと思うのですけれども、では法科大学院の教育はどのように違うかということです。先ほど座長が御指摘くださいましたように、法科大学院では、先端科目、基礎法学なども学んでいる、視野を広げているということももちろん大事なことだと思います。
 このほかにも、社会に生起する法律問題や紛争というものについてはいろいろな面があり、それについての個々人の利害関係は非常に多様であります。利害関係人はそれぞれ多様な価値観を持っているということを前提にして、ある法律問題についての解答というのは決して一つに決まっているものではなくて、いろいろ議論をしながら調整していくものだということで、学生間で議論をさせ、教師の側(がわ)でも、別の観点はどうなのかと。落ちている観点なども踏まえて議論してもらうということもしております。そのようなことを経ていないと、実務法曹として将来、立派にやっていくということは困難なのではないかと、私個人は考えているところであります。
 そのようにじっくり時間をかけて、いろいろな議論があり、いろいろな考え方がある中、どうやってよりよい解決法を見いだしていくかを考えるということは、予備試験で合格した人がそのような能力を持っていないとは決して言いませんけれども、そのような能力を持っているかどうかを保証する機会は、これまでのところないのだろうなと思います。
 このような点を少し踏まえていただけないかと。リーガルクリニックその他の実務基礎科目なども学んでいるからという、そのようなことですと、そのような研修を受けさえすればいいというようなことになりかねないわけですが、法科大学院においては法律問題に対処する姿勢といいますか、心構えや、あるいはいろいろな人に対する配慮や思いやりなど、そのようなことも教育しているわけです。そのようなことを是非盛り込んでいただきたいと思います。以上です。

【井上座長】 
 思いは共有するところなのですけれども、今回は予備試験についてどうするかという話なのです。試験でどこまで測れるかということを中心にした御意見だったものですから、私の理解を申し上げたのですけれども、今、それを更に踏み込んでどこまで表現できるかですね。その点は、少し表現上の工夫をさせていただきたいと思います。趣旨としては、皆さんそんなに大きく食い違ってはいないと思うのです。
 今の点でも結構ですし、ほかの点でも結構ですけれども、御発言をお願いします。どうぞ。

【片山委員】 
 私としましては、それほど分かりにくいとは思いませんので、及ぼすという表現となるのか、踏まえたという表現となるのか、表現等を十分に御検討いただければと思います。
 まずは、プロセスというのは、仕組みとしては法科大学院と司法修習とを組み合わせたプロセスによる法曹養成という枠組みのことがまず前提としてあって、予備試験はその前半部分の法科大学院教育のところを飛ばして、後半の司法修習に入るということですから、そのような意味での予備試験の在り方を、プロセスとしての法曹養成等の理念を踏まえたものにしてほしいということは非常に分かりやすいことです。
 さらに、具体的にはと下に書いておりますので、まさしく科目について関連付けを持たせるとか、あるいはもう一つ踏み込んで予備試験合格者に対しても別途法科大学院等での授業を受けさせること等が具体的に提言されていますので、分かりにくいということはないように思った次第です。

【松下委員】 
 重ねての発言で恐縮です。御説明を頂いて大分私の誤解も解けたような気もするのですが、二つ目の黒ぽつの具体的には二つのことが書いてあるわけでして、その後半の方、試験になじまない科目は別途法科大学院等で学習させる仕組み。ここにあるのは、試験というのは予備試験でしょうか、それとも一般的な試験なのでしょうか。どちらでしょうか、というのがよく分からないのと、それから、仮にどちらであったとしても、試験になじまない科目は別途法科大学院等で学習させるというのは、これは予備試験経由で司法試験を受かった人に、もう1回法科大学院で、例えば、科目等履修生のような形で学習せよというようなことを、具体的には考えていらっしゃるのでしょうか。そこがいま一つ読み取れないので教えていただければと思います。

【井上座長】 
 二つ質問がありましたけれども、まず、「試験」というのは何なのでしょう。

【今井専門職大学院室長】 
 失礼いたします。事務局から御説明をさせていただきます。
 まず、ここはまさに法科大学院教育と予備試験の内容について一つ目の黒ぽつで整理して、具体的な、とつないでおります。これは文意が明らかでございませんでしたが、予備試験についてということで、試験一般ということではないつもりで書かせていただいているところでございます。
 加えて、その文章の別途学習させる仕組みの可能性については、実は特別委員会の中で、委員の御意見の中から、このようなことも、もしかしたら考え得るのではないか、という御提案を頂いたところがございまして、その可能性を含めて検討ということで、明記をさせていただいたという経緯でございます。

【井上座長】 
 その点は、別にそれを採用しろということではなくて、そのようなアイデアもあったのでその可能性も含めて検討するという表現にしてあるということです。

【松下委員】 
 すみません、一つだけ。別途、法科大学院で学習させるというのは、これはリカレント教育とは問題意識が違うのだと思うのですね。足りないところを補うという話になると思いますので、これはまた結構大きな議論になるのではないかという気がするということだけ、一言申し上げたいと思います。

【笠井委員】 
 意見と言いましょうか、質問は、共通到達度確認試験と司法試験短答式試験の免除の問題。ページで言いますと10ページと、6ページから7ページにかけてのところです。その点の記述がありますのは、 10ページの(1)の白丸の2番目のところであります。上述のアラビア数字の3(1)に記載した共通到達度確認試験の結果において司法試験の短答式試験を免除するなど、とあります。実はそこで引用されている3.3.(1)は引用間違いで、3.2.(1)でないかと思います。
 言いたいことは、10ページでは、共通到達度確認試験の結果において、司法試験の短答式試験の免除ということが記述されていると。しかし、その記述が引用されている7ページについては何も記述がないと。とりわけ、既修者に対する共通到達度確認試験を実施するということを盛り込んだ提言案になっておりますので、それとの関係で言うならば、10ページの趣旨を生かして、7ページの2番目の黒ぽつの末尾にでも同趣旨の記載を書いていただいた方がいいのではないかと考えた次第です。以上です。

【井上座長】 
 御注意いただいた、これは誤記ですよね。

【今井専門職大学院室長】 
 数字の番号については修正をさせていただきたいと存じます。

【井上座長】 
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【吉崎委員】 
 2ページの下から2番目の白丸の下から3行目、少額訴訟という表現が出てまいります。読み方によっては、民事訴訟法上の、制度としての少額訴訟のように読むことも可能だと思うのですが、恐らくここでの趣旨は、これまで弁護士が扱ってこなかった比較的少額の訴訟のことを意味しているのではないかと思います。語句の問題にすぎないですけれども、少しかみ砕いて、四文字熟語ではない形でしていただいた方が多分、誤解がないのかなと思って指摘させていただく次第でございます。以上です。

【井上座長】 
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【鎌田委員】 
 お話をまた先ほどの12ページのところに戻して、確かにプロセスとしての法曹養成の理念を可能な限り及ぼすものとなるように検討するということで、かなり多くのことが包摂されているのだと思います。けれども、その後の具体的な提言が細かいというと語弊がありますけれども、非常に具体的なことだけなのです。
 可能であればですけれども、その理念を可能な限り及ぼすために予備試験受験者が法科大学院教育を通じて実現されるべき能力を有するかどうかを十分に検証できるように、今、これを入れない方がいいのかもしれないのですけれども、受験資格や試験科目や試験方法等々を総合的に検討することが必要だというようなことを入れた上で、当面、具体的にはこのようなことがとした方が、言おうとしていることが広く皆さんに理解されるのではないかという気がします。可能であれば、修文上の工夫をお願いできればと思います。

【井上座長】 
 それは、丸2の最初の黒ぽつの最後の部分のところを修文するということですね。

【鎌田委員】 
 はい、そうです。

【井上座長】 
 どこまで具体的に書けるか、あるいは書くのが適切かという問題はあるかと思いますけれども、事務局と少し工夫をさせていただきます。ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【椎橋委員】 
 同じく、12ページの②の記述は最初から気になっているものですから、一言だけ申し上げます。プロセスとしての法曹養成の理念を可能な限り及ぼす、ということについては、最初は本当に可能なのだろうかと第一印象で思ったのですけれども、先ほどからの御説明ではそのような趣旨を踏まえてやるのだということであれば、理解は可能です。それを具体的にどうするかということについて、次の黒ぽつについて、最初の部分の試験科目について法科大学院教育と密接に関連付けるということは、このとおりでよく分かります。
 けれども、その後、試験になじまない科目は法科大学院等で学習させる仕組みの可能性も検討するべきだということで、これが実際はどのようなことなのか。短い期間、法科大学院に入学させるのか、編入学や科目等履修などそのようなものを考えておられるのか、ここもまずお聞きしたいところなのです。そのようなことを考えた場合に、確かに、プロセスの一部を取り組むということなので、現実的に考えるとそのようなこともあり得るかなと思います。ですから、まさにその仕組みの作り方次第なのではないかという気もしています。
 その仕組みをうまく作ればいいのですけれども、下手をすると予備試験中心の勉強する態勢をとりつつ、しかし、1回だけの試験である予備試験ではプロセスとしての法曹養成のプロセスの部分が充足できない。そこで、一部、法科大学院でプロセスの部分を補えばいいのだという安易な方向に行くということになると、すごく心配な面がある。単なる杞憂(きゆう)なのかもしれませんけれども、そのような心配もしたということだけ申し上げたいと思います。

【井上座長】 
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【吉崎委員】 
 4ページの上から二つ目の白丸のところに、新たに挿入されたグローバル化に関する記載についてでございます。私の断片的な記憶では、世界的に見て余り例のない予備試験制度というものを通用させるかどうかについては、グローバルな視点を欠いてはいけないのではないか、という文脈の中で出てきた御指摘が、このような記載となったのかなと判断しております。
 その趣旨を貫くのであれば、この場所に置くというのは意味が薄まってしまうイメージがあります。予備試験のコーナーに置くことで、その部分がどんどん分厚くなってしまうことにつながり、必ずしもそれを希望しているというわけでもないのですが、先ほど申し上げた御指摘の趣旨との兼ね合いで若干、懸念があると思います。
 それから、表現の問題なのですけれども、2行目にある評価という表現を、もし法科大学院における認証評価のことだと捉える向きがあるとすると、認証評価が大変なことになるなといいますか、法科大学院が大変なことになるといいますか、そのようなことも懸念されます。
 この評価という言葉が独り歩きすることについては懸念があります。いずれにしても、法曹養成の在り方についてグローバルな基準によって評価、とするその評価の主体がどこかというのが、分かりにくい文章になっている点に、若干不安があるように思いました。
 意見としては以上でございます。

【井上座長】 
 今の最後の点は、グローバルな基準になるべく合わせていく方向にすべきだと、そのようなニュアンスの方がよいということですかね。評価というと、照らして評価ということになると思うのですけれども。

【吉崎委員】 
 基準を持っている人がいて、その人が何かを判定するというシステムの中で、グローバルな視点を必ず満たさなければいけないよ、と読まれるとすると、かなりいろいろな意味で大変なことになるかなという懸念でございます。

【井上座長】 
 分かりました。どうぞ。

【田中座長代理】 
 これは前回私が言ったことと関連していますけれども、予備試験の問題だけではなくて、司法制度改革のときから、日本の法曹養成制度をグローバルな観点から見ても国際的に通用するものにしなければ、ということになっていたのです。予備試験などは、やむを得ず残ったものなので、グローバルな観点からは問題外なのです。そういう話ではなくて、例えば修業年限が長すぎるとか、もう少し短くしないと国際的競争に勝てないとか、あるいはボローニャ基準に合致する形にしないと、国際的相互承認の問題があるなど、いろいろな国際的な問題も視野に入れながら改革の方向が議論されました。そのようなものに耐えうる法曹のプロセス養成のシステムを作るにはどのようにしたらいいかという視点も入れて検討されました。
 少し表現の問題はあるのですけれども、グローバルな視点から見ても、誇り得るとまでは言えなくとも、日本はこのような制度になっています、これが法曹養成制度です、ということを国際的な場でも自信を持って言えるようなものにすべきだという話なのです。予備試験などはドメスティックな話で、グローバルな視点からは全く評価できず、議論にならないということです。専門職大学院や法曹養成制度というものをグローバル化の流れの中でどうするかということが、当時は問題になっていました。
 その当時の現実的な問題の一つとして、司法試験に受かるのに長くかかる、司法修習を2年もやっていると、実際に法曹として働き始めるのが遅すぎる、これらは国際的に見ても問題だということがありました。そこで、まず司法修習を1年にしようということになり、そうなれば、司法試験だけで能力を判定するのは難しく、その前にロースクール制度を導入し、少し実務基礎教育をやる必要があるというように、全体として法曹養成制度を再編成しようということになったわけです。とにかく司法試験に受かってその後1年間の司法修習をするというシステムだけでは、プロフェッショナルの養成制度としては、国際的な標準から見て、耐えられないのではないか、法曹資格の国際的な通用性という観点からは、日本の法曹はグローバルスタンダードに合いませんよということが問題になっていました。
 当時は、日本だけではなくてドイツの法曹養成制度についても、そのようなことが問題になっていました。そのような制度改正当時の事情を踏まえて議論していただきたいという趣旨で、表現は少し変えてもらった方がいいと思います。

【井上座長】 
 適合とか整合とか、そのような言葉の方がよいでしょうか。

【田中座長代理】 
 国際比較にも耐え得るとか、国際的に通用するとか。

【井上座長】 
 少し工夫させていただきます。ほかの方、どうぞ。

【杉山委員】 
 1ページ目の、はじめに、のところなのですけれども、そもそもこの提言というのは、もともと司法制度改革があって、その目的を達成するために法曹を要請する。それはプロセス養成がベストな方法で、その中核となるのが法科大学院制度であるという前提に立っての提言だと思うのです。ですから、それを更に維持してよりよく改善していこうと。
 二つ目の白丸のところで、確かに、一定の評価を受けていると書いてはあるのですけれども、もしその前提に立った提言であれば、我々メンバー全員が法科大学院制度、プロセス養成というものが法曹養成にはベストな方法だと強く信じ、だからもっとよりよく改善するのだということをもう少し強く書いた方が、提言としては迫力があるかなと。

【井上座長】 
 御趣旨ごもっともだと思います。もう少しポジティブというか、確固とした姿勢を出した方がよいということですね。

【杉山委員】 
 一つ言い忘れたのがその関係で、予備試験というのは、今ようやくこのような状態になっているわけです。けれども、この人たちが実際に社会に出て活躍して、社会の評価が予備試験を出た方と法科大学院を出た方と、実際どうなのだという実証検証は今、できていないわけですよね。したがって、その意味でも我々の理念を強く信ずるところを書いた方がいいのではないかと思いました。

【井上座長】 
 ありがとうございます。ほかの方はよろしいですか。

【土井委員】 
 提言の内容そのものについては、基本的に異論はございません。今、各委員から出た表現等の最終調整は座長に一任したいと思うのですが、この際、この提言に関して、少し要望を申し上げたいのですが、よろしいですか。

【井上座長】 
 どうぞ。

【土井委員】 
 法曹養成問題については平成22年の法曹養成制度に関する検討ワーキングチームから3年にわたって有識者、関係機関で検討を積み重ねてきたわけです。我々の委員会の議論の前提として法曹養成制度検討会議の取りまとめがあるわけですけれども、その取りまとめの中で、検討会議が示した結論や方向性を前提に残された課題の検討を行うに当たっては、個々の問題のみを検討するのではなく、制度全体の在り方を一体的に見て整合的な検討を行う必要があることを忘れてはならないと、はっきり記載されているわけです。
 ただ、その具体化に際しては、特に法科大学院制度の在り方に問題が多いから、まずは法科大学院の改善から取り組むべきであるという声が非常に多くあったと認識しています。私は、これはかなり偏った見方ではあると思いますけれども、ただ、法科大学院に改善すべき点があるのも事実ですので、法科大学院教育を担う関係者としては、その改善に向けて努力するのが責務であると考えて取り組んできていると思うのです。
 今回の提言は、組織見直しの推進あるいは共通到達度確認試験の導入をはじめとして、高等教育あるいは大学政策のスタンダードからすると、かなり踏み込んだ、見方によれば異例という言い方もできるような内容になっているのだと思います。
 ただ、これは法曹養成制度を取り巻く厳しい現状を踏まえて、また先ほど委員からも出ましたように、我が国の司法、法曹の将来にとって時計の針を逆戻しにするのではなくて、現在のプロセスとしての法曹養成制度を堅持して、その改善を図っていくのが最善であるという認識から、現時点でできることは全てやるという覚悟でこの提言をまとめてきているのだと思います。
 それだけに、政府におかれましてもこの提言について、真摯(しんし)に受け止めていただいて、法曹養成制度全体の改革を早急に進めていただきたいと思います。先ほど来、予備試験の問題が出ていますし、私もこの場で何度も繰り返して申し上げてきました。予備試験は法科大学院制度に対して非常に深刻な影響を及ぼすのではないかという懸念を申し上げてきました。これについては、まだ予備試験の問題については、必ずしも実証的に示されているわけではないという意見があるということも承知はしております。
 しかしながら、今年の司法試験の合格発表等を受けて、法科大学院に在籍しているもの、とりわけ実績を上げてきた法科大学院に在籍している者の中から、どの程度退学者あるいは休学者が出るかということについては、我々が懸念していることがかなり現実化してきているのではないかという感じを受けております。今回の提言については、予備試験、司法試験の在り方を踏まえて、法曹養成制度全体について適切に改善を図っていただかなければ、この提言の効果も十分発揮できないと思いますので、是非制度全体の検討について、早急に行っていただきたいというのが私の要望でございます。以上です。

【井上座長】 
 これは、政府の検討の場で、西山委員なり文科省の方から、そのような強い御意見があったということお伝えしていただくということであろうかと思いますので、よろしくお願いします。
 ほかの方、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 幾つかの点で御注意等を伺いましたが、私の誤解でなければ、基本的にはこの提言案の線でほぼ皆さんの共通認識が得られるまでに至っているのではないかと思います。もし、そのようなことでよろしければ、本日頂いた御注意を踏まえて必要な修正は行わせていただきますが、土井さんから御提案がありましたように、修正内容については座長である私に一任ということにさせていただけますか。それでよろしいでしょうか。

(「賛成」の声あり)

【井上座長】 
 ありがとうございます。それでは、次の議題に移りたいと思います。本年3月に本委員会で取りまとめた、今後改善すべき法科大学院教育の改善・充実に向けた基本的な方向性等に沿いまして、事務局の方で、特に認証評価の適格認定の改善に向けて、評価基準や評価方法等を抜本的に見直すために、認証評価に係る省令等の見直しにつき検討が進められてきたと承知しております。
 本日は、その事務局の検討に基づく見直し案について報告をしていただき、皆様から御質問あるいは御意見を受けたいと思っています。それでは、事務局から御説明をお願いします。

【今井専門職大学院室長】 
 失礼いたします。資料5に基づいて御説明させていただきたいと存じます。法科大学院に係る認証評価の見直しについて、でございます。法科大学院に係る認証評価の見直しにつきましては、この法科大学院特別委員会におきましても、昨年来、御議論いただいてきたところでございます。
 特に、資料1ページ目の上段にございますように、特別委員会のもとに組織見直し促進に関する検討ワーキンググループを設置いただきまして、御検討を頂いた検討経過報告の中に認証評価の見直しについての方向性を頂いております。ここの一つ目の白丸のアンダーラインにございますように、認証評価において客観的な指標を的確に活用し、厳格な適格認定が行われるような見直しを行うことを目指していくべきであるということ。また、二つ目の白丸にございますように、そのためには客観的な基準と認証評価の関連性の整理に向けた検討も必要であろうという御指摘をいただいております。また、三つ目の白丸にございますように、それが将来に向けて改善する能力を有しているということまで評価すること。また、地域における法曹養成、特定課題への対応といったことに注力している法科大学院には積極的な評価が行われることも必要ではないかということ。さらに、そのようなもろもろを含めまして、3巡目の評価から実施を念頭に検討に着手していくことが必要であろうということで、御指摘をいただいていると理解をしているところでございます。そのようなワーキングでの報告、また本年3月の基本的な方向性にのっとって検討を進めるようにということで御提言をいただいているところでございます。このたび、事務局でおおよその考え方を一旦整理ができてまいりましたので、是非この法科大学院特別委員会の下でも御指摘・御指導を頂けたらと考えているところでございます。
 3巡目の認証評価の充実に向けて改善すべきポイントとしては、以下、1ページ目の下段にございますように、大きく三つの論点で整理をいたしました。一つは客観的な指標というものを一体どのような形で認証評価に位置付けていくのか、また、特にどのような指標を活用してどのようなポイントを重点的に評価していくべきなのかという、相関関係なども整理してはどうかということで考えております。
 また、論点の二つ目といたしましては、では実際にどのような形で具体的な指標を活用していくのか、その活用するための指標についての検討が必要であろうかと思っております。その指標が特定できたとしても、それを活用する際の留意点についても整理をしていく必要があろうかと思っています。そのようなことを整理した上で、制度改正について必要な検討を整理させていただいたというのが、本日御説明する見直しの考え方でございます。
 それでは、 2ページから御説明させていただきたいと存じます。その見直しの方向性の案でございます。まずは客観的な指標をどのように位置付けていくのかというところでございます。大きな箱の中にその方向性を書かせていただいています。認証評価機関において法科大学院教育の実施状況やその成果等に関する客観的な指標を評価の実施の中に取り入れるとともに、客観的な指標の水準を下回ったことだけをもって直ちに不適格とすべきではないが、水準を下回っている理由、また今後の教育の質の改善の見込みなどを具体的に分析・評価した上で、総合的に適格・不適格を判断するという大きな流れの中で、その客観的な指標を位置付けたらどうかと考えているところでございます。
 それは、基本的な考え方にございますように、一つ目の白丸にございますが、その客観的な指標というものはまた後で御説明いたしますが、それが水準を下回る場合は、それをもって認証評価の中で不適格認定をする直接の判断にするというものではないものの、そういった水準を下回っていること自体は、例えば、教育課程や教員などに関しまして、当該法科大学院の教育の質に関して何らかの深刻な課題を抱えているということが強く類推されるのだろうと。そういった中で二つ目の白丸にございますように、仮に客観的な指標に深刻な課題があると考えられる法科大学院に対して、適格判定が出てしまうとなりますと、それはその評価結果やその判断をした理由について、社会に対してより強く説明していく責任が求められるのだろうと考えております。
 ですので今回、認証評価の厳格化を進めていくに当たりましては、三つ目の白丸でありますが、厳格化を図る観点から客観的な指標というものは、対外的にきちんと明示、明確化した上で評価の実施の中に取り入れていくとともに、その評価に当たりましては二つございます。一つ目はまず、なぜ水準を下回ってしまったのか、その理由に関して当該法科大学院の教育の質と明確に関連付けて対外的に説明できるような精緻(せいち)な評価をしていただく必要があるのではないかということ。さらに二つ目は、そのようなことを評価いただいた上で、今後当該法科大学院の教育の質が改善される見込みがあるのかどうかを含めて、具体的に分析・評価して対外的に明示していただく必要があると。
 すなわち、適格認定が出てしまいますと、次の評価までは制度上は5年間空(あ)いておりますので、適格認定をもって5年間は適格なのだという評価をする際に、例えば、これから御説明をする客観的な指標を下回っているのだけれども適格認定が出るということについては、かなりしっかりとした説明責任を持って評価に当たっていただく必要があるのだろうと考えているところであります。ただ、そのようなことをしていただいた上で、最終的には総合的に適格・不適格を判断いただくことが必要なのだろうということで、その位置付けを整理させていただいたところでございます。
 続きまして、3ページ目でございますが、今度は、その客観的な指標を活用して特に重点的に評価すべきものは何なのだろうということを整理させていただきました。四角の箱の中にございますように、認証評価機関において総合的に適格・不適格を判断する際に、特に客観的な指標を活用して重点的に評価いただきたい項目はここにありますように、入学者の質の保証、入学定員の適正な管理、教員の質の保証及び教育活動の実施状況及びその成果ということが適当ではないかと考えているところであります。
 その基本的な考え方といたしましては、今、申し上げたもの、特に法科大学院の実態を的確に判定していただくためには、一つ目の白丸にございますように、法科大学院の入り口から入っていただいて教育を受け、そして出て行くという、この三つの大きな観点から客観的な指標を活用しつつ重点的に評価いただくことが必要ではないかと思っております。その入り口の観点といたしましては、二つ目の白丸にございますように、入学者の質の保証、入学定員の適正な管理、また教育活動の観点からは教員の質の保証、教育活動の実施状況、そして出口の観点ではその教育活動の成果という観点で見ていく必要があるのだろうと考えております。
 そのようなものを評価していくに当たりまして、まさに客観的な指標との主たる対応関係を整理いたしますと、3ページ目の下段のような概念図が生まれてくるのではないかということで整理をいたしました。それは、入学者の質保証、入学定員の適正な管理、教育活動の実施状況及びその成果というものが、それぞれこれまで客観的な指標として用いられてきた入学者選抜における競争倍率の確保や入学定員の充足率、また、入学者の規模が余りにも小さくなることについて、懸念が示されてきたところでもあります。そして、何よりも司法試験の合格率についても大変重視して評価に当たっていただく必要があるのではないかということで整理をさせていただいたところであります。
 そして、4ページ目を御覧ください。このように評価すべきもの、積み重ねたものについてどのような形で客観的な指標をお示ししていくのかという考え方の整理をさせていただきました。黒ひし形は、先ほどの客観的指標として四つのものを挙げているところでございます。なぜその四つの指標が示せるのかという重要なポイントといたしましては、二つ目のひし形の項にございますように、四つの指標を三つの観点から取り上げることが可能ではないか。すなわち、近年、中央教育審議会の特別委員会の中でも大変様々な議論を頂きました中で、特に課題が深刻な法科大学院のメルクマールとしてこのようなものを今まで示していただいてきたということ。また、二つ目のポイントとしては、そのようなものを含めて文部科学省におきましても、ここ数年来、公的支援の見直しなどを通じて組織見直しの促進を図るための方策を進めておりますが、その中の重要な指標として、この四つの指標を活用し、かつその一定の数値も示させていただいてきたところでございます。そして、三つ目のポイントとしては、かつ、となっておりますが、そのような示した一定の数値を各法科大学院も改善する方向でこれまで取り組んできていただいた経緯がありました。そのような形で、この三つの取組の中で、具体的な客観的指標やその目安となる数値というものがある意味、デファクトスタンダード化してきているのではないかと考えております。そのようなものを活用していくことが適当ではないかということであります。
 具体的には、4ページ目の箱から下でございますが、入学者選抜における競争倍率については、その目安として2倍未満というのは大変厳しい状況ではないかということです。その根拠としては、競争的な環境の下で入学者選抜が十分機能しているとは言い難い状況というものが類推できる。その可能性を示す指標として、一定の合理性があるのではないかと考えております。ただ、その指標を活用する上での留意点といたしましては、単純に2倍を切ったからすぐバツということではなくて、いろいろな適性試験結果による足切りや、個別の入学者選抜を通じて更に入学者の質の確保というものができているかどうかというのを重点的に確認していただくということが、必要なのではないかと思われるところであります。
 また、二つ目の白丸にございますように、入学定員の充足率の目安としては、例えば、定員に対して50%を切ってしまう実入学者数しかいない場合というのは、大変厳しい状況ではないか。それから、入学者数につきましても、目安はひと桁を切っていく、10名未満というのは大変厳しい状況ではないかということであります。例えば、入学定員の充足率の大幅な低迷というのは、教育組織としての規模が小さくなりすぎている恐れ、若しくは、教育活動、教育成果において支障が出ている可能性を示す指標として使えるのではないかと考えております。また、1学年の学生数がひと桁にまで減少してしまいますと、例えば、特別委員会のもとに置かれておりました改善状況調査ワーキングでは、実際に現場に行って見ていただくと、競争的な環境ではない。若しくは、切磋琢磨(せっさたくま)する環境としては厳しいのではないか。また、ここにございますように、双方向的、多方向的な授業を効果的、継続的に実施することが難しいのではないかという観点から、教育の質に悪影響が出ている可能性を示す指標として考え得るのではないかと思っております。ただ、現時点といたしましては、夜間開講だけで頑張っている大学や、地方にある大学ということで、いろいろ不利な事情を抱えているということはございますので、そのようなことも勘案して重点的に評価していただくという留意は必要なのではないかと思っております。
 そして、三つ目の白丸ですが、司法試験の合格率でございます。この点の目安といたしましては、司法試験の合格率が全国平均の半分にも満たないというのは、大変厳しい状況ではないかということであります。5ページ目以降に出てまいりますが、各法科大学院で修了認定が行われて、法科大学院を修了すると。ただ、修了後に行われている司法試験の合格状況につきましては、データが示しますとおり、各法科大学院間での差が極めて大きく開いている状況が続いており、特に状況が悪いということについては、法科大学院教育の実施又は教員の質の保証に課題があることが強く類推されるのではないかということでございます。そういった意味で、司法試験の合格状況に極めて大きな課題が続いている場合につきましては、まさにプロセスとしての法曹養成の中核的な教育機関としてふさわしい教育の質、これが確保されていない可能性を示す指標として、活用していく必要があるのではないかと考えております。
 ただ、活用する際にも、例えば法学未修者に対して手厚い教育をしながら実施している場合、また、地方若しくは夜間、そのようなものに配慮しながら取り組んでいる場合には、例えば、学生がそもそも学習時間の確保が難しい場合もあったりするのもあるのではないか。そのような不利な状況を全部勘案して教育の質が適切に確保されているかどうかを確認していただくということで、その留意を付記させていただいているところでございます。
 以上、客観的な指標を活用して認証評価を進めていく厳格化についての考え方を整理した上で、6ページ目でございます。その具体的な制度改正としては、(4)でございますが、主な制度改正としては、一つは細目省令で評価の見直しをさせていただく方向で今、検討を進めさせていただいております。ポイントといたしましては、教育課程の実施状況及びその成果という文言。また、入学定員の充足状況というのは、現在の細目省令では読み取ることが難しいのではないかということで、そのようなものを追加するとともに、先ほど御説明してきました客観的な指標をそのまま細目省令には上げにくいのですが、この考え方を整理し、施行時に留意事項としてきちんと各法科大学院に加えて認証評価機関にお示しをしていければと考えているところであります。
 また、丸2番につきましては、少し適格認定が出た後であっても、5年間の実際運用をしていく過程で数値状況が悪くなる場合もございますので、現行制度の中でも認証評価を実施して、適格認定が出た後であっても、教育課程や教育組織に大きな状況変化が生じた場合には、認証評価機関はその変更があったと認められる事項を把握して必要に応じて評価結果に付記していくこと、努めるということが制度上想定されています。
 それ以外の他の教育状況について同様の措置が求められていないような制度になっておりますので、教育課程、教育組織に加えて法科大学院の教育活動全般にもそのようなことができるよう、拡大していく方向で改正ができないかと考えているところでございます。
 以上、昨年来、法科大学院特別委員会の下で御指摘、御議論いただいたものを踏まえて、現在、認証評価の見直しに向けて動いているところの考え方の整理をさせていただいたところでございます。是非、御指摘、御指導いただけたらと考えておりますので、御審議のほどよろしく申し上げます。

【井上座長】 
 それでは、ただいまの説明を踏まえまして、御質問あるいは御意見等がございましたら、どなたからでも御発言をお願いします。どうぞ。

【有信委員】 
 非常に御苦労されていてありがとうございます。幾つか認証評価に関してその問題と、今回の中で少し要望がありますので述べさせていただきたいと思います。もともと認証評価あるいは適格認定にしても、複数の認証団体を認可してしまったために、認証評価あるいは適格認定が低きに流れてしまうというという可能性があったわけです。
 結果的に言うと、それが現実に起きてしまって、実際に適格認定されたにも関わらず、教育システムの改善が行われていないという状況が起きてきたということがあると思います。そのようなことに対して、本来であれば複数の認定団体がお互いに切磋琢磨(せっさたくま)して、より改善されるというのがいい方向だったにも関わらず、それはどうもそのように機能していない。したがって、共通の客観的な尺度を導入しながら、それぞれの認定団体のクオリティを確保せざるを得ない。これが一つの背景と思っています。だから、そこの部分をきちんとやるというのが一つのポイント。
 それから、認証評価と適格認定の具体的な内容に関して言うと、基本的には教育システムの問題と、その教育機関がいわば何を目的として教育をしているかということです。特に法科大学院の場合は、高度に専門的な専門家を養成するという観点ですよね。だから、プロフェッショナルクオリフィケ―ションで、このときに社会が要求するようなクオリフィケーションに耐えるような教育が、きちんとできているかどうかということを見ないといけない。このための客観的な尺度として幾つかのものが作られるということになる。ここで一番重要なのは、スタティックにそのようなものがきちんと判断できれば問題ないのだけれど、通常はそうはいかないわけです。
 したがって、常にある種の改善が進まなければいけないということです。結果的に言うと、プロフェッショナルとしてクオリファイされる人たちを養成した結果が、本当に当初の目的に合っているのかどうかという観点で常に見直しが必要。そうすると、そこで出てきた問題点が必ず教育システムにフィードバックされて、その教育システムが抱えている問題が改善されていかなければいけない。このような観点で今回提案されている客観的な指標というのを見ると、例えば、司法試験の合格率のようなものは、いわばクオリフィケーションの一つの尺度になっているわけです。どれだけきちんと育成されているかという観点で見て、それを尺度にしましょうということ。幾つかそのような形で客観的な尺度を整理し直してみると少し明確になると思います。
 要望として申し上げたいのは、この中で、そのような結果を踏まえた教育改善というのですか、あるいは教育システムの改善の契機といいますか、そのような仕組みがきちんと機能しているか、あるいはそのような仕組みが埋め込まれているかということです。PDCAと言ってしまえば話は簡単なのですけれども、要はそのようなことで評価をした結果、よかった、悪かったというだけでは困るわけです。その評価機関が改善に向けての仕組みがきちんと埋め込まれているか、あるいはそこが進んでいるかということをきちんと評価する。これも、一つの基準として是非検討していただきたいと思います。以上です。

【井上座長】 
 ありがとうございました。ほかの方、いかがでしょうか。どうぞ。

【片山委員】 
 法科大学院の認証評価についてはその中に適格認定の側面もありますので、客観的な指標の導入というのは、ある程度やむを得ないとは思っておりますし、積極的に導入すべきだとも考えますが、3ページのところの抜本的な考え方の重点評価事項と指標との結び付きが、必ずしも明確ではないところがあるとの印象を持ちました。
 例えば、重点評価項目事項の中で一番重要なのは、三つ目の教育活動の実施状況及びその成果というところになるかと思いますが、これと指標との関連について、司法試験のところは実線で結ばれていますのでよく分かるのですけれども、その上の入学者選抜における競争倍率の確保や、あるいは入学定員の充足率といったものとの結び付きが、果たしてどれぐらいあるのかというところです。何か、客観的な指標と重点項目との結び付きをもう少しクリアになるような説明が必要ではないかと思ったのですが、その辺りはいかがでしょうか。

【今井専門職大学院室長】 
 まず事務局から御説明させていただきます。実は、破線や大きな点線と実線には意味を込めておりません。真っ黒な線で全部つなぐとごちゃごちゃになるということで、今回、本当はカラーで資料を作れたら、分かりやすかったかもしれません。そのことをおわび申し上げた上で、私どもも、それぞれの重点的な評価をしていただきたい事項と客観的な指標が100%相関関係にあるというのはなかなか作れないのかなと。
 お互いに補い合ったり関連し合ったりしている中で、特に今回は一歩踏み込んで客観的指標を認証評価にお使いいただく中で、何を見てもらいたいからこれを確認するというのが示せないかということで、ある意味トライをさせていただいて、是非先生方の御意見を頂きたかったというのが趣旨でございます。ですので、この関係については、本当にこうなのか、もっとこちらがよいのではないかというのがあろうかと思いますので、そのような御指摘も含めて御示唆いただけると、更に詰めていく際に私どもも制度化がうまく進められるのではないかと思いますので、また御指導いただけたらと考えております。

【井上座長】 
 ということで、私も少し右の上の二つの箱と一番下がつながりを説明するのは難しいかなと。私とほかの方もあれですけれども、第3ワーキングと称していたところで各校を回ったときに、ここのところは司法試験の合格率のほかに、あと進級率や途中でドロップアウトされる方がどれくらいいるかとか、あるいは卒業して司法試験を受けている方がどのくらいいるか、逆に言うと司法試験の受け控えがどれぐらいいるか。そのようなこともサブの指標にして使って、そのようなところに少し問題がありそうなところは、それをきっかけにして中身について伺うというようなことをやっていました。認証評価機関の方で、更に詳細なそのような指標作りをやっていただければ、それはそれで詰められるのかなと思うのです。
 ほかの方はいかがでしょうか。

【長谷部委員】 
 具体的な指標の内容についてなのですが、4ページ目の(3)のところです。この最初のひし形のところに、「入学者選抜における競争倍率」等を活用することが適当であるとあり、次のひし形のところで、「上記指標は、近年、中央教育審議会の審議の中において課題が深刻な法科大学院のメルクマールとして示され」てきたとあります。これを基準としてきたところがあるということなのでありますが、競争倍率に関しては確かに、適性試験を受ける人数がある程度あったときには2倍を確保できないところは問題があると言われてきたのです。けれども、現在、適性試験を受ける人が非常に少なくなっている中で、もちろん2倍を切ったからといって直ちに不適格ということにはならないという留保は付いていますけれども、現状で2倍未満だとこれを指標とするというのは少し厳しいのかなと。従前そうであったからといって、現在も維持できるかというとどうかなと思います。

【井上座長】 
 そこのところでは、そのような御意見もあり、状況が変化してきているということもあって、財政的支援の方では、その競争倍率の数字をダイレクトに使うことには慎重な姿勢になっている。
 ただ、現場に行って実際にいろいろ見たり聞いたりしてみますと、競争倍率が余りにも低い、例えば、1倍を少し超える程度のところでは、ほとんど全入であり、実質的な選別がなされていない。そのようなところでは、基礎的な学力に問題がある人も入ってきていると言わざるを得ない、そのような経験知があるものですから。2倍という数字が適切かどうか、あるいは、それをどこまで下げるのが適切かはなかなか難しいところですけれども、一応のメルクマールとしては機能するのかなと思っています。
 申し上げたのは、競争倍率が余りにも低くなると入学者の質に問題が出てき得るので、そのような方々を入れて充足率を上げるということにそもそも問題があるのではないか。むしろ、そのようにしなければ定員が充足しないというのは、入学定員の適正さを疑わしくするわけで、そこをむしろ考えていただかないといけないのではないか。そのような話をしてきたところです。

【西山委員】 
 簡単に意見を申し上げます。事務局案にございます厳格な認証評価の実現のために客観的な指標を用いることが非常に重要であるというのは全く同感でございます。他方、これも事務局案にあるとおり、客観的な指標のみで適格・不適格を判断するのは困難で、総合的な評価をせざるを得ないといいますか、そのような評価で判断すべきというのもまた異論はございません。問題意識としては結局、総合評価の名の下に、せっかく作った客観的な指標が骨抜きにならないかという懸念がございます。そのようなことがないように、実際の評価の仕組みをこれから具体的に検討いただくとは思うのですけれども、その際には御留意いただければという意見です。以上でございます。

【井上座長】 
 ほかの方はいかがでしょうか。特にございませんか。それでは、この件につきましては、本日皆様から頂いた御意見等も踏まえまして、事務局において更に詳細について検討していただければと思います。また適宜、その検討の進行状況についてはここで御報告いただけると思います。
 本日、議事としては以上ですけれども、1点御報告があるということです。法科大学院協会から、「今、なぜロースクールで学ぶのか、列島縦断リレー法科大学院がわかる会」という企画のポスター、チラシが配付されておりますので、これについては事務局から説明をお願いします。

【今井専門職大学院室長】 
 失礼いたします。資料6として配付をさせていただいた資料を御覧ください。これはポスター、チラシをコピーさせていただきましたが、現在、主催が法科大学院協会、そして共催が日本弁護士連合会ということで、法科大学院をこれから目指していこうと考えている学部生を中心にこのような、法科大学院に進学して学ぶ意義を御説明していく、そのような会を全国各地で組織的に展開をしていくという動きがございます。
 10月25日以降、全国の各地で資料の下段にございますように、このような会が開かれていくということが出てきたということでございます。せっかくの中教審のこの場でもございましたので、このような努力も今、協会を通じて行われているということを御紹介申し上げさせていただいたところでございます。

【井上座長】 
 ありがとうございます。何か質問等ございますか。どうぞ。

【松下委員】 
 私はたまたま、法科大学院協会の事務局長をさせていただいていますから一言だけ付け加えさせていただきます。本日の提言案でも優れた資質を有する志願者の確保という項目がございましたが、これと連動した問題意識でございまして、法科大学院側でどのような努力、取組をしているかということを示すものと御理解いただければと思います。先ほど御紹介がありましたとおり、法科大学院志願者増を目的として法科大学院協会主催、日弁連共催で行う企画であります。全国に逐次多発的に、法曹という進路の魅力や法科大学院での学習及びその支援体制について説明を行うものであります。
 どのようなことをするかなのですけれども、資料6の1枚目がポスターを小さくしたもので、実際にはもっと大きいもので、ポスターなので裏がありません。2枚目がチラシで、これは裏があるものなのですけれども、1枚目のポスターの方で右側の真ん中より少し下に第1部、第2部とありますが、おおむね各地で行う内容はここに書いてあるとおりでございます。法科大学院での授業の様子や、奨学金制度などの説明。法曹3者それぞれによる仕事の魅力の説明、あるいは少しスペシフィックなテーマになりますが企業内弁護士の働き方の説明、さらに参加した学生、社会人などと法科大学院の教員、修了生、法曹などが個別にフランクに相談する、いろいろな個別の話を聞けるという機会を設けるというのが企画の内容でございます。以上でございます。

【井上座長】 
 ありがとうございました。それでは、本日の議事はこれで終わりますが、今後の日程等について事務局から御説明をお願いします。

【今井専門職大学院室長】 
 次回の法科大学院特別委員会の日程につきましては、事務局より改めて日程調整をさせていただいて御案内をさせていただきたいと存じます。

【井上座長】 
 それでは、本日の会議をこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

 

お問合せ先

高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

(高等教育局専門教育課専門職大学院室)