法科大学院特別委員会(第64回) 議事録

1.日時

平成26年7月16日(水曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 法科大学院教育の改善・充実について
  2. 法学未修者教育の充実について
  3. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)有信睦弘、井上正仁、土井真一の各委員
(専門委員)磯村保、笠井治、樫見由美子、片山直也、鎌田薫、木村光江、椎橋隆幸、田中成明、土屋美明、日吉由美子、松下淳一、松本裕、山本和彦、吉崎佳弥の各委員

文部科学省

吉田高等教育局長、牛尾専門教育課長、今井専門職大学院室長、佐藤専門教育課課長補佐、真保専門職大学院室専門官

5.議事録

【井上座長】  
 所定の時刻ですので、第64回中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会を開催いたします。
 まず、事務局から配付資料の確認をしてください。

【今井専門職大学院室長】  
 失礼いたします。それでは、議事次第に基づいて御説明させていただきます。
 資料1につきましては、前回、第63回の議事録の案を添付させていただいております。資料2につきましては、今週開催されました、政府に設置されております法曹養成制度改革顧問会議の第11回の配付資料を添付させていただいております。続きまして資料3につきましては、法科大学院教育と司法試験予備試験との関係について(委員意見の整理案)、資料4につきましては、法科大学院教育の抜本的かつ総合的な改善・充実方策について(骨子案)、そして資料5につきましては、法学未修者が基本的な法律科目をより重点的に学ぶことを可能とするための具体的な改善方策について(案)でございます。
 配付資料は以上でございます。お手元を御確認いただきまして、不足等がありましたらお申し出いただけたらと思います。
 以上でございます。

【井上座長】  
 よろしいでしょうか。
 本日は、議事に入る前に、今言及されました政府の法曹養成制度改革顧問会議が直近では7月14日に開催され、法科大学院に関連した議事があったと伺っておりますので、それについて事務局から報告をお願いしたいと思います。

【今井専門職大学院室長】  
 それでは、資料2に基づいて御報告させていただきたいと存じます。第11回法曹養成制度改革顧問会議の配付資料でございます。これは今週月曜日に開催されまして、以下の資料に基づいて審議が行われたという状況でございます。
 それでは、表紙を1枚おめくりいただいて、通し番号1ページ目から御覧いただけたらと存じます。
 1ページ目はA3の資料でございますが、法曹養成制度の改革推進について、その進捗状況が記されたものでございます。左側は昨年7月に政府の関係閣僚会議で決定されました、有資格者の活動領域から法曹人口の在り方、そして法曹養成制度の在り方については4点、法曹養成課程における経済的支援、法科大学院、司法試験、修習について、それぞれ取り組むべき、検討すべき事項が書かれているものでございます。なお現在、この進捗状況に応じまして、真ん中から右側のところにございますように、設置後1年間たった報告等がございまして、これから来年の7月まで、約1年間での検討すべき内容が記載されているものでございます。
 続きまして、1枚おめくりいただいて、通し番号2ページ目を御覧いただけたらと存じます。法科大学院適性試験について、この7月に法科大学院の適性試験管理委員会から御報告のあったものでございます。本年、平成26年度第1回、第2回の適性試験が、5月、6月にそれぞれ開催されております。
 4ぽつでございますが、志願者、受験者数の推移について、特に一番下の箱の平成26年度の欄を御覧いただけたらと存じますが、実際に受験をされた実人数につきまして、特に一番右下でございます、受験者数につきましては、前年度4,945名だったところ、本年度の実人数の受験者数は4,091名だったという御報告があったということでございます。
 続きまして、3ページ以降を御覧いただけたらと存じます。3ページ目は法科大学院教育の意義を発信する広報活動の案として、法曹養成制度改革推進室より御報告、御説明のあった資料でございます。
 こちらにございますように、法科大学院教育の意義を発信するため、趣旨といたしましては、以下のような広報活動を政府として行っていくということについての御説明がございました。一つ目は、法科大学院の意義、重要性を周知していきたいということ、二つ目は、その法科大学院を経て法曹を目指すことについて周知をしたいということでございます。企画といたしましては、中段から下段に掛けてでございますが、法科大学院で学ぶということに関しての普及啓発用のパンフレットを作り、その中に、例えば法科大学院出身者の若手法曹、有資格者からのメッセージ、また法科大学院で今実際に教えていただいている教員、また実務家の方々から、法科大学院出身の法曹に対する期待が記載されているものを出していこうということでございます。
 このパンフレットの主な対象者といたしましては、法曹を将来の選択肢の1つとして考える学部生を対象としていこうということで、企画主体は内閣官房推進室を中心に、関係機関、法務省、文科省、それから最高裁、日弁連、法科大学院協会といったところが協力していくということで、こういった広報活動を進めていくことについて御報告があったところでございます。
 4ページ目以降でございますが、今回の顧問会議では、法科大学院を修了して、現在法曹として、特に弁護士として活躍されているお二人の先生からヒアリングが行われたところでございます。4ページ目のところについては、神戸大学のロースクールで学ばれて、今法曹で活躍されている先生から、例えば法科大学院で学んだことについて、法的な問題のアプローチの仕方、議論をしっかりしてきたといった御報告なり、法科大学院の魅力といったものについて御報告があったところでございます。また、6ページ目以降でございますが、これは早稲田大学のロースクールを修了されて弁護士登録された方でございますが、例えば、7ページ目以降にございますように、法科大学院で大いに勉強してきたといった経験なり、学んできたものが実際にどういった形で現在の職務に役立っているのか、また法科大学院の持つ意味、そういったものを振り返って、これまでの様々な経験や、現在の職務に役立っている部分の御報告があり、そこでそれぞれ顧問の先生方から、いろいろな質問、意見交換などが行われたという状況でございます。
 最後に8ページ目でございますが、そういったようなことで第11回法曹養成制度改革顧問会議については議論が行われておりまして、今後の予定としては、本年9月30日に第12回会議が開催されまして、その後大体月1回のペースで本年は議論をしていくということでございます。また、来年の1月以降、第15回以降につきましては、ここにございますように法曹人口について含めて議論をしていくということで、来年7月の設置期限まで議論を進めていくということの御報告があったところでございます。
 事務局からの御報告は以上でございます。

【井上座長】  
 ありがとうございました。
 ただいまの御説明について何か特に、御質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、議事に入りたいと思います。
 本日は、これまで検討を進めてまいりました法科大学院と予備試験との関係について、現時点での本委員会としての考え方を取りまとめることと、法科大学院教育の抜本的かつ総合的な改善・充実方策に向けた骨子案について御審議いただくこと、この二つを中心にさせていただきたいと思っております。
 まず、法科大学院と予備試験との関係について、これまでに委員の皆様から頂いた御意見等を踏まえまして、事務局で資料を修正してもらっておりますので、これについて事務局から説明をお願いします。

【今井専門職大学院室長】  
 それでは、資料3に基づいて御説明させていただきたいと存じます。法科大学院教育と司法試験予備試験との関係について(委員意見の整理案)でございます。
 なお、前回、本日も含めまして数次にわたり、法科大学院特別委員会におきまして、この議論を重ねていただいているところでございます。前回も予備試験の関係につきましては多大な御指摘を頂いておりますが、この委員の意見の整理案につきましては1点だけ修正させていただいておりまして、2ページ目でございます。2ぽつ、基本的な考え方の項目でございますが、上から数えて五つ目の丸でございます。前回、委員の先生の御指摘がございまして、「具体的には」の後でありますが、制度的な見直しとその運用上の対応の関係が少し不明瞭であったということで、具体的には、制度の抜本的な見直しに速やかに取り組むとともに、その制度的な見直しの検討には一定の時間を要することから、その間の工夫として当面の予備試験の運用による対応が考えられるのではないかということで、修文の御意見を頂いておりましたものを反映させていただいております。
 資料につきまして修正を入れさせていただいたところは以上でございます。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

【井上座長】  
 ただいま説明していただいたとおりですけれども、この件につきましては、概(おおむ)ね本委員会としての一定の共通認識を得るところまで議論できているというのが私の認識です。今後は、9月の司法試験の合格発表や11月の予備試験合格発表等を踏まえて、更に引き続き御議論いただきたいと考えておりますが、現段階で、本日の修正された案について、特に御意見、あるいは御指摘、御質問がなければ、これをもって現時点での本委員会としての考え方を一応整理したものとさせていただければと考えますが、いかがでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【井上座長】  
 それでは、これを、現時点での本委員会としての考え方を一応整理したものとさせていただきます。
 続きまして、法科大学院教育の抜本的かつ総合的な改善・充実方策について議論をしていただきたいと思います。
 事務局の方で、これまでに委員の皆様方から頂きました御意見等を骨子案という形に整理してもらっておりますので、まず事務局からの説明をお伺いし、それに基づいて議論をしていただきたいと思います。

【今井専門職大学院室長】  
 それでは、資料4に基づき御説明をさせていただきたいと存じます。法科大学院教育の抜本的かつ総合的な改善・充実方策について(骨子案)でございます。
 今回、この資料は3ページにわたる資料でございますが、経緯のところを御覧いただけたらと存じます。昨年の7月に法曹養成制度関係閣僚会議決定が行われました。先ほどの顧問会議でも配付されたA3の資料でございますが、そちらに書かれておりますように、関係閣僚閣議決定におきましては、関係各機関において直ちに取り組むべきこと、また検討すべき事項がそれぞれの機関に示されて、検討をしてまいりました。特に法科大学院の改革につきましては、文部科学省におきまして、この中央教育審議会においての御審議を経ながら、その改善・充実に向けた取組を進めてきたところでございます。
 その資料としては、例えばこれまでの議論といたしましては、黒ぽつで四つ、整理させていただいておりますが、本特別委員会におかれましては昨年9月に、法科大学院における組織見直しの更なる促進方策の強化についての基本的な考え方をお示しいただいたところでございます。また、二つ目の黒ぽつにございますように、組織見直し促進に関する調査検討経過報告、また共通到達度確認試験等に関する調査検討経過報告をおまとめいただいたところでもございます。更にこれまで、課題を抱えている法科大学院に対しまして、その改善状況に係る調査というものもしておりまして、これは本年2月に、ワーキングにおいての調査結果報告をおまとめいただき、御報告いただいたところでもあります。
 このように、特別委員会に置かれました各ワーキンググループでの検討結果といったものを踏まえまして、四つ目の黒ぽつにございますように、「今後検討すべき法科大学院教育の改善・充実に向けた基本的な方向性」を、この3月におまとめいただいたところでございます。この基本的な方向性の中では、直ちに取り組むべき検討事項といたしまして、共通到達度の試行に向けた準備でございますとか、組織見直しの中で言えば公的支援の見直しの更なる強化策の推進、そういったものが示されているところでもございます。またその際には、今後引き続き検討すべき事項として、本日御議論も頂きますが、予備試験の在り方、また継続教育、法律実務基礎教育の観点、そういったものを今まで御検討いただいてきたという流れでございます。
 そういったことで、実は昨年7月から約1年間掛けて、様々な分野にわたってこの特別委員会で御議論いただいたということを踏まえまして、これまでの議論の成果を踏まえつつ、今後の法科大学院改革をより一層強力に推進していくということで、その考え方を整理していただいてはどうかと考えているところでございます。そして、経緯の最後のパラグラフでございますが、「このため、法科大学院が『プロセスとしての法曹養成』の中核的機関であることを前提に、制度創設後の改善の声に応える法科大学院教育の抜本的かつ総合的な改善・充実方策を目指し、以下の点について整理することとしてはどうか」ということで、本日、たたき台として、事務局で骨子案を整理させていただいたところでございます。
 続きまして、1ページ目の中段から下段にかけてでございますが、2ページ目以降、それぞれ個別の改革についての骨子を示させていただいておりますが、その前に、まずはあるべき将来の姿というものを示させていただいてはどうかということで、整理させていただいたところでございます。
 まず1段落目でございますが、現状についてでございます。法科大学院に関しましては一定の成果を上げているところがある一方で、深刻な課題を抱えた法科大学院というのが存在している中、弁護士の就職難などと相まって、3行目でございますが、法科大学院離れ、若しくは法曹離れといった状況に陥っているという現状にあるのだろうということでございます。二つ目のパラグラフにございますように、そのような状況を打開していくために、我が国におけるあるべき法曹像やその規模についての共通理解を確立するとともに、それに基づいて法科大学院の理想的な姿を早急に実現すべく、全力を挙げて取り組むべきだということで整理させていただいたところでございます。
 そういった方向性を目指すために、三つ目のパラグラフ、四つ目のパラグラフのような形で、具体的なあるべき姿というものを示してみてはどうかということで書かせていただいたところでございます。すなわち、当初の理想とされた修了者の7、8割が司法試験に合格できるような高い教育力を持つ法科大学院が全国的に一定のバランスを持って配置されるということ、そしてそれぞれの法科大学院が、その強みを生かして多彩な教育が展開されるということ、こういうことを通じまして、学生が、単に司法試験の合格という観点のみならず、将来の実務も視野に入れた、特色ある教育を安心して受けられる環境を整備する必要があるのではないかということでございます。
 加えまして、四つ目のパラグラフでありますが、プロセス養成の趣旨を損なわない範囲で、優秀な学生がより短期間で法曹になることができる道を確保すること、また一方で、多様なバックグラウンドを持った人材が、法科大学院において安心して法律を着実に学ぶことができる体制、そういったものも維持していく必要があるのだろうということでございます。加えまして、関係者の協力の下、資力のない学生、若しくは居住地の近くに法科大学院がない学生であっても法科大学院で学ぶことができるような経済的支援の充実、そういったことも含めて検討していく必要があるのではないかということで整理させていただきました。
 2ページ目を御覧いただけたらと存じますが、以上のような状況認識、それから、今後目指すべきあるべき姿、これを早期に実現することに向けて、有為な人材を法曹界に迎え入れる方法として、これから提案する特に三つの方策について、着実に実行、実現する必要があるのではないかということで、それぞれ2ページ目から3ページ目にかけまして、組織見直しについて、それから教育の質向上について、そして3ページ目の最後に予備試験についてということで、整理させていただいたところでございます。ただ、本特別委員会におきましては、特に組織見直しと教育の質向上について、やはりしっかりと御議論いただければと思っておりまして、その点について整理させていただいたところでございます。
 2ページ目の組織見直しについての欄を御覧いただけたらと存じます。この点につきましては、特に柱書きのところで1点、考え方を整理させていただいております。それは、これまで進めてまいりました組織見直しというのは、特に、例えば司法試験の合格状況でございますとか入学者選抜の状況において課題が特に深刻な法科大学院に対して、組織見直しの促進というものを強く進めてきたところでございます。ただこれからは、それに代わりまして法科大学院全体の体質強化、そういったことに目的を改め、更に推進していくということにしていってはどうかということでございます。具体的には、以下に掲げます事項について検討を進めるべきではないかと整理させていただいて、3点、そのポイントを整理させていただきました。
 1点目は、一つ目の黒ぽつでございますが、当面どのように組織見直しを進めていくべきかという観点でございます。実は、本年3月にこの基本的な方向性を特別委員会でおまとめいただいた際に、法科大学院全体の入学定員については当面3,000人程度を目途に見直しを促進するという旨提示いただいたところでございました。ただ、前回のこの特別委員会で御報告させていただきましたように、各法科大学院における定員見直しというのはかなり進んでいるところがございまして、本年6月末時点で、来年の4月からの入学定員の総数というのは、その見込み3,175人というところを御報告させていただいたところでございまして、基本的な方向性で示していただいたものにかなり近接するような状況になっているということ。ただ一方で、入学定員と実入学者数の乖離(かいり)というのがなかなか抜本的に解消しない状況が続いているということ、そういった点を踏まえまして、当面の目標について更に削減する方向をどう示していくのかということについて、御審議、御検討いただけたらと考えているところでございます。これが1点目であります。
 2点目は次の黒ぽつでございますが、その上で、現在政府で調査が進められている今後の法曹人口を踏まえた最終的に目指すべき適正な定員の規模について、こういったことも明らかにしていくことで、現在進行しております志願者の減、定員・入学者数の減が繰り返していく負のスパイラルから脱却を目指すことについてどう考えていくべきか、御審議いただけたらと考えているところでございます。
 こういった形で、当面、また最終的な目標について御議論していただきつつ、その際に、三つ目の黒ぽつでございますが、進める考え方といたしましては、これまでの司法試験の結果、若しくは教育成果等に基づいて、抜本的な組織見直しをより強力に推進するということ、また、その際には地方在住者や社会人で法曹を目指す方に配慮した、いわゆる法曹を目指すことができる環境を実質的に確保することについてどのように考えていくべきか、併せて御審議いただけたらと考えているところでございます。
 これが一つ大きな柱、組織見直しについてでございますが、2点目は教育の質向上についてでございます。2ページ目の下段を御覧いただけたらと存じます。
 こちらも柱書きで、一つの基本的な考え方を整理、今回提示させていただいておりますが、これまでも実は、この特別委員会におきましては、法科大学院の質向上については相当に議論を続けていただいておりました。そういったことを改めて、一度基本理念を整理させていただく形で、我が国の将来を支える法曹として不可欠な基礎・基本の徹底を図るということとともに、幅広い教養と豊かな人間性を涵養(かんよう)する、そういった方策を示すことで、3行目の辺りでございますが、法科大学院教育におけるプロセス教育の確立、これを目指していくべきではないかということで、その基本的な考え方を整理させていただいております。その上で、(1)から(4)まで、それぞれ4点に分けて整理をしております。
 (1)につきましては、まずはプロセス教育の基本となる教育方法の強化という関係でくくらせていただいたところであります。一つ目のくくりは法学未修者について、例えば現在進めております配当年次や単位数の見直しなどを含めた法学未修者教育の充実について、どういうふうな形で更に進めていくべきなのか御審議いただけたらと考えております。また、二つ目の黒ぽつにございますように、そのような法学未修者教育の充実と併せて、加えて既修者も対象にした共通到達度確認試験の導入を推進していくことについて、その考え方を更に深めていくべきではないかということで御審議いただけたらと考えているところでございます。
 また二つ目は、3ページ目の上段でございますが(2)、プロセス教育の、今度は「拡大・充実」という観点でくくらせていただいたところでございます。(1)でお示ししましたように、本来正規の教育課程である法学未修者教育の充実、また1年次から2年次、2年次から3年次にかけての到達度を確認する共通到達度確認試験、こういった形で、教育の、いわゆる方法の充実、強化を図っていくとともに、プロセス教育全体の拡大・充実という観点で、例えば、一つ目の黒ぽつにございますように、エクスターンシップやリーガルクリニックといったものの積極的な実施、また法律実務基礎教育を担う教員のFD活動の充実などを通じて、法曹として必要な、また法律の実務家を目指す者にとって必要な法律実務に関する基礎教育の充実を考えていくべきではないかということで、御審議いただけたらと考えております。また、二つ目の黒ぽつにありますように、それとともに、加えて特色ある教育活動の展開のため、例えば留学促進・受入れなどの国際化への対応、また教育力の高い教員の派遣、学生の受入れなどを通じた法科大学院間の連携など、優れた先導的な取組を行う法科大学院に対する支援というものについて検討を頂けたらと考えております。さらに、三つ目の黒ぽつにございますように、法科大学院の教育資源を活用した継続教育の充実、また職域拡大への貢献、更には法科大学院修了生の就職支援の促進といった点について御審議を頂けたらと考えております。
 次は3点目でございますが、そのようなプロセス教育の魅力向上に向けて、昨今特に御指摘の高い時間的、経済的コストの軽減に向けた対策でございますが、例えば、特別委員会でもこれまで御議論いただきましたが、飛び入学を活用して学部3年の修了時から2年の法学既修者コースへの進学を認めるなどの、法曹養成のための教育期間短縮の促進、また、関係機関との連携による法曹養成に特化した経済的な支援の充実方策の検討などについて、御審議を頂けたらと考えております。
 この(1)から(3)番までを支えるような形で、4番目でございますが、プロセス教育の環境整備に向けて、ここにございますように、例えば、必要に応じて教育環境の充実につながる設置基準等の内容の見直しの検討、また、一層厳格な認証評価の実施などができるような検討とともに、法科大学院教育を担う教員の質・量の充実方策。この中には、更に広げて我が国全体の法学教育・研究を担う教員の養成・確保も併せて検討してはどうかということで、御提案させていただいています。また、ICTを活用した教育連携、教材開発の検討など、この環境整備に資するような政策等について御審議を頂けたらと考えているところでございます。
 そして最後、3点目でございますが、予備試験についてでございます。上記整理をさせていただいた法科大学院の改革に実効性を持たせるため、また教育課程と試験との関係も踏まえた上で、予備試験の抜本的な改革も同時に進めていただくことによって、法科大学院が法曹養成の中核的な機関として機能を十分果たせるような状況を目指していくべきではないかということで、先ほど資料3でも御紹介いたしましたような形で、予備試験の受験資格者の範囲に関しての制度的な対応、あるいは修了生と同等性を判定するための試験科目や方法の見直しについて御審議を頂けたらと考えているところでございます。
 以上、本日事務局で用意をさせていただきました骨子案、たたき台でございます。是非御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。

【井上座長】   
 それでは、ただいまの説明について、御意見、御質問等、どなたからでも御発言いただきたいと思います。
 どうぞ、磯村委員。

【磯村委員】  
 2点について、どちらかといえば表現の問題なのですけれども、2ページ目の教育の質向上についてのところの(1)ですが、括弧書きに教育方法の強化とありますけれども、従来、方法というときには、どちらかといえば授業の仕方とかそういうイメージがありましたので、「内容・方法」の方が、この中身に対応するのではないかと思います。
 もう1点は、3ページの予備試験についてのところの2行目の表現ですけれども、文科省の委員会としての骨子案というときに、予備試験の抜本的な改革も同時に進めるというのは、主体が違うのではないかと思いますので、ここは受け身的に「予備試験の抜本的な改革が同時に進められることにより」という方が、趣旨としては合うのではないかという気がしました。
 以上の2点でございます。

【井上座長】  
 表現ぶりということですね。分かりました。
 表現だけでなく、中身についても御質問、御意見をお伺いしたいと思います。
 どうぞ、松下委員。
【松下委員】  
 2点、申し上げます。1点目は、3ページの(2)プロセス教育の拡大・充実に向けての三つ目の黒ぽつですが、ここは二つのことが書いてあって、継続教育の拡充や職域拡大への貢献と、これは見出しのプロセス教育の拡大・充実とつながっていると思うのですが、その後の法科大学院修了生の就職支援の促進というのは、やや、この見出しのプロセス教育の拡大・充実とは異質のものではないかと思われます。ですから、その就職支援の促進についてはどこに置くのかについて御検討いただきたいかなというのが1点目です。
 二つ目ですが、同じページの(4)プロセス教育の環境整備についてですが、3行目から5行目にかけて、法科大学院教育を担う教員の質・量の充実方策と、更に法学教育・研究を担う教員の養成・確保も併せて検討とありますが、ここは見出しとは合っていると思うのですが、そのほかの(4)、あるいはそれ以外の項目と比べると、はるかにスパンの長い話で、これも少し分けて書いた方がよいのではないか。ほかのものは制度を、多分1年、2年単位で見直しできるものであるのに対して、この教員の質、教員の確保というのはもっと息の長い話ですので、それが分かるように書いていただけたらと思います。

【井上座長】  
 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ、木村委員。

【木村委員】  
 このペーパーの性格にもよるのかもしれないですけれども、今更と言われてしまうかもしれませんが、これまで成果がなかったわけではないので、それをもう少し書いてほしいなという気がしないではないのですが、特に1ページのあるべき将来の姿のところも、一定の成果を上げているという、一定のというのも、すごく控えめ過ぎるという気がするのです。もっと成果が上がっているところは上がっているというふうに言ってもいいように思いますし、組織見直しも、これだけの数、やはり撤退しているということは非常に大きいですし、教育の質向上についても、これまで認証評価などを通じて随分、お互いにかなり厳しいチェックを加えているということは、このペーパーに書くべきことではないということかもしれませんけれども、どこかで表現できたらいいなと思います。

【井上座長】  
 どうぞ、樫見委員。

【樫見委員】  
 今、木村委員から言われたところは私も気になっていて、あるべき将来の姿というところは、司法制度改革の折に理念として掲げた、例えば多様なバックグラウンドを持った人材に法曹となる道を開く教育組織を作ったということとか、あるいは法曹実務の基礎教育や将来の法的な紛争を見据えた展開・先端科目ですか、こういったことを系統的に学べるような教育制度を作った。そしてそこから多くの法曹が育ったということが、やはり法科大学院の設置の意味があるわけですから、これがまず、あるべき将来の姿のところで、そういう制度を作って一定の成果を上げてきたと。そして、ではこの後、10年たった今の段階で、これからあるべき将来はどうなのかというふうに書いていただいた方が、木村委員と同じで、しっくりするような感じがいたします。

【井上座長】   
 鎌田委員、どうぞ。

【鎌田委員】  
 この中に盛り込めるかどうかというと、少々適合しないのではないかと思うところもあって、遠慮していたのですけれども、これ全体としては、司法試験合格率を引き上げることというようなところにフォーカスが当たっているように思います。現下の情勢の中ではそれは喫緊の課題ということで、やむを得ないと思うのですけれども、しかし我が国の法律実務家を評価するときには、やはり中央官庁や地方自治体の公務員でありますとか企業法務で頑張っている人たちのように、法曹資格者以外の、非常に幅広くて層の厚い法律実務家が優れた活動をしているというのが大きな特色であると認識しています。
 司法制度改革審議会の意見書は、そういう人たちにも理論と実務をしっかりと学んでいただいて、法曹資格を持って活躍してもらいたいと、こういう理念であったと理解してきたところでございますが、残念ながら、この10年の間に、むしろ法曹三者の養成というところに収れんしてきた。しかも弁護士の就職難というようなことが中心になって、司法試験合格者が削減される勢いになってきた、それが法科大学院進学希望者を激減させ、法科大学院の定員も大幅に削減されるということになってきたわけでありますけれども、その過程で、法学部を志願する学生も大幅に減少してきた。そして法学部教育も、大学によるのかもしれませんけれども、法科大学院がスタートしたと同時に、従来よりもやや緩和された内容に変わりつつあるのではないかと思います。
 そうだとすると、これからの我が国の法律実務を支える幅広い、すぐれた実務家層の養成ということを、どこがどういう形で担っていくのかという点が極めて心配な状況であり、この中に一部書かれています研究者の養成というのもそれと関連してくることなので、この骨子案全体は緊急の要請に応えるということですけれども、本来のあるべき将来の姿というのを考えるときには、もっと幅広に、場合によっては法学部教育の問題も含めて考えていく必要があるのではないかなと思うところでございます。

【井上座長】  
 今おっしゃった点についても、将来性のあるような形の文章にできるよう工夫させていただきたいと思います。

【笠井委員】  
 この骨子案は、過去の経緯、本委員会の中で、ワーキングを含めて取り組んできたことを掲げた上で、あるべき将来の姿について、表現としては遠慮した部分と、理想に走り過ぎている部分と、少しギャップが目立つ感じますが、骨子案自体としては、構成に私は賛成です。
 ただ、2ページの組織見直しに関する表現に意見があります。もちろん、柱書きの組織見直しの目的は全く同感で、課題が深刻な法科大学院の組織見直しを促進すること、その目的を法科大学院全体の体質強化に改めることは重要な課題だと考えています。これはこれでいいのですが、一つ目の黒ぽつで、入学定員と実入学者数の乖離(かいり)の抜本的な解消ができていない状況を踏まえて、入学定員の当面の目標値について更に削減する方向を示すよう検討することになっている。ところが、「更にその上で」という枕をおいて、逆に、政府で検討されている適正な定員規模についても明らかにすることにより、志願者減と定員・入学者減が繰り返す負のスパイラルからの脱却を目指すこと、つまり入学定員の削減という方向は負のスパイラルの一因であり、一要素であると書かれているような感じもします。そのことと、一つ目の黒ぽつの定員の目標値を示して更に削減するということが、方向性として逆に聞こえないかということです。
 むしろ言うべきことは、入学志願者増を図るべきことを強調するべき問題なのだと思います。入学定員を、まさか増加せよと言うつもりはないのですけれども、これまで行われてきた様々な作業、努力によって、3,175人まで入学定員が下がってきたわけで、当委員会が発表した3月の基本的な方向性でも3,000名と言われており、それを改めてもう一度確認するという程度でよいのではないか。それを踏まえて負のスパイラルから脱却するために志願者増を図るべきことと、そのような入学定員に対し、志願者を2倍以上確保できるような施策を打っていくべきだとする、前向きの方向での議論をしていただきたいと是非思います。

【井上座長】  
 この最初の黒ぽつの「削減する方向を示すことについて」というのは、示すことが既定事項で、その方法を検討するということではなくて、更にそういうことをすべきかどうかを検討するという趣旨だと思います。2番目の黒ぽつも、これまでに議論したことですけれども、そういうふうにどんどん後追いのように定員を減らしていくと、負のスパイラルが止まらないのではないかという問題もあるわけですので、定員と実員のギャップを縮める必要と、その両方を考えながらどうすべきかということを検討しましょうと、こういう趣旨だと思います。

【笠井委員】  
 趣旨はね。

【井上座長】  
 ええ、更に減らすのだと言っているわけではなく、そうするかどうかを検討しようということです。3,000人まで減らしたとして、まだギャップがあるという場合に、さらなる縮減の必要があるのかどうか、その方向ばかり追求していくと、負のスパイラルがより深刻になっていきかねないので、そうすべきかどうか、どういう対応をすべきなのかを議論しようということだと思います。

【笠井委員】  
 削減する方向を示すことについての検討もして、方向性を示しましょうと、こういうわけですか。必ずしも説得力があるとは思えないのですけれども。

【井上座長】  
 ただ、実入学者数とのギャップが大きい場合、放っておくことはできないわけでしょう、そのことは、いろいろな方面からも指摘されてきたことであり、目をつぶるわけにはいかない。実入学者が更に減るかもしれない状況ですので、この1番目と2番目は決して別々のことではないのだろうと私としては理解しているのですけれども、御意見を踏まえて、少し文章などを考えさせていただきたいと思います。
 それでは、山本委員。

【山本委員】  
 今のところです、2ページの組織見直しについての二つ目のぽつで、中長期的に見たときに日本全体でどれぐらいの法曹人口が必要なのかどうか、そのために毎年どの程度の法曹を生み出すべきであって、そのために法科大学院としてはどの程度の定員で、どういう体制で教育サービスを提供していくかという、やはり本来の話としてはそういう順番になっていくべきところであって、司法制度改革審議会でもそういう、やはり年間3,000人程度の法曹を生み出すことが日本社会にとって必要だということが前提で、法科大学院の体制を整えるということであったのだろうと思います。だからその3,000という数字が必ずしもそうではなかったということが分かったということが現状なのだろうと思うのですが、そうだとすれば、そこがまず、もちろん法曹人口が何万人というふうに明確に言えるかどうかということはありますけれども、少なくとも、どの程度の規模感の法曹というのが日本で必要なのかということを定めていただくということが、我々の作業の前提としてやはり必要になってくるように思います。
 そういう意味からすると、ここで「政府で調査が進められている今後の法曹人口を踏まえた」ということになっているわけですが、ここはやはりもう少し強く、そういう作業をやっていただく必要がある、あるいはそういう政策判断をしていただく必要があると。それを踏まえて、我々として将来の、こういう負のスパイラルからの脱却ということを考えていく必要があるのではないか、そこをもう少し強く言っていただいた方がいいのではないかというのが1点です。
 それからもう一つは、これは文言の問題なのですけれども、3ページ(3)のプロセス教育の魅力の向上に向けてという、この「魅力の向上」ということなのですけれども、これがコスト軽減、恐らくこの魅力というのは学生から見た魅力ということを指しているのだろうと思うのですけれども、経済的支援の方はよく理解できるのですが、この期間を短くするというのが、教育期間が短縮するというのがプロセス教育の魅力の向上というふうに言われると、少しやはり違和感があって、プロセス教育はやはりプロセスが大事だという話なので、それを短くすることが魅力の向上になるというのが。
 これは恐らく、学生も多様な学生がいるので、その学生個々に応じたきめ細かい教育を提供して、それで結果としてその期間が短くなるということもある、そういう教育の柔軟性というか、あるいは個々的な対応、きめ細かさということを表しているのだろうと思うのですが、この魅力の向上という言葉遣いが私には少しひっかかるところがあるので、何か考えていただけたら。代案はないのですけれども。

【井上座長】  
 1番目については、政府の方で進められている調査というのがどういうものとして結実するのか、いまだよく分からないものですから、山本委員がおっしゃっているようなレベルのものになるのかどうか分かりません。ただ、従来の司法制度改革審議会の議論も、司法試験合格者数3,000というのは一種の政策判断として出した数字であるわけですけれども、他方、法科大学院の定員は別に国で管理した結果そうなったものではない。一定の外形的基準をみたせば法科大学院の設置が認められたわけで、それが積み重なってああいう数字になってしまった。そこにいま生じている問題の原因の一つがあるともいえるわけですから、今後の方向として、あるべき法曹人口についてある数字が出てくるとすると、それを踏まえて定員についてどうするのかということも、やはり議論せざるを得ないと思うのです。従来のような形の自然調和に任すということでよいのか、あるいは一定の定員管理をするのか、さらにはもっと強力な韓国型の定員管理にするのか、その辺も含めて議論をしていかざるを得ないということなのだろうと思うのです。
 松本委員、何か、その点。

【松本委員】  
 推進室の方で予定しております法曹人口調査の状況でございますが、現在そのニーズ等についてアンケート調査というものを実施しております。その集計結果というのは年内にある程度の整理ができると思いますので、今のところの予定といたしましては、12月頃の顧問会議でその辺の概要を御報告できればと思っておりますし、またこの中でもと考えております。さらに、推進室は、それを踏まえて、あるべき法曹人口についての提言ということがオーダーとして掛かっておりますので、年明け以降は、そのようなデータに基づいた法曹人口についての提言に向けた準備を行うということでございますが、その中である数字を出した上で、法曹人口の増加の率というところから、毎年の司法試験の合格者数の目安といいますか、その辺を極力提言の中に織り込むことができないかという形で今検討している状況でございます。その辺になりますと、井上先生御指摘のロースクールの定員というところとも連動するところが出てこようかと思いますので、その辺また御意見等を頂ければと思っております。
 以上でございます。

【磯村委員】  
 この案全体の当然の前提になっていることだと思うのですが、法科大学院に進学したいという志願者をどう増やすかということが非常に重要であり、その点が表現としては余り明確に出ていないのではないかと思いますので、そこはもう少し強調していただくといいかなと思います。

【片山委員】  
 今の磯村委員と全く同意見なのですけれども、特に今一番懸念されていることは、未修者の中で社会人とか他研究科、他学部の学生の割合が減少しており、当初の理念から大きく乖離(かいり)している点にあります。ですので、やはりそれらの人たちに法曹養成制度の中に再び戻ってきてほしいという明確なメッセージが強く伝わるような内容であればいいと思います。

【土井委員】  
 私も、先ほど山本委員がおっしゃった3ページ(3)のプロセス教育の魅力の向上に向けてという部分について、意見を申し上げたいのですけれども、この箇所は、時間的・経済的コストの軽減に向けた施策として、飛び入学等の期間の短縮と経済支援の充実が取り上げられていて、これらの施策自体は私もよいと思うのですけれども、やはりここのところの整理の仕方、項目立てについては、もう少し工夫していただいた方がいいのではないかと思います。
 ここの大きなくくりは教育の質の向上というふうにされているわけですので、それと関連付けるというのであれば、今何人かの委員からも御意見がありましたように、入学者の質の確保という観点から、できるだけ優秀な法科大学院志願者、法曹志願者を確保するための施策という形で、ある程度まとめることが考えられるのではないかと思います。法科大学院制度のサステーナブルな発展を考える上では、この問題は特に重要な施策になると思いますので、明確に位置付けて、教育期間の短縮というのも、できるだけ優秀な学生を、法科大学院に入りやすくするというか、志願しやすくするための施策ですし、経済的な支援というのもそうなります。それ以外に、法曹の職業的な魅力とか法科大学院教育の意義、重要性といったもの、あるいは法科大学院の修了生の活躍なども広報していかないといけないということも含まれると思いますので、そういう形でまとめてはどうかと思います。今、片山委員からもありましたように、法曹の多様性を確保して、職域拡大を図っていくためには、社会人、他学部出身者の志願者を増やしていかないといけないわけですので、この点も明記していくべきだろうと思います。
 ただ、これとの関連で、少し意見として申し上げたいのは、専門職大学院に関し必要な事項について定める件というのが、この審査要覧の中に入っていて、その3条で、社会人、他学部出身者の比率について定めていて、3割以上になるように努めることと、2割に満たない場合は入学者選抜の実施状況の公表ということを定めています。これを受けて認証評価機関も認証評価基準を定めているのですが、ただ残念ながら、現状では、社会人、他学部出身者の志願者はかなり減少してきていますので、これを機械的に適用すると入学者の質の確保に問題を生じさせかねないという点もあります。そこで、社会人、他学部出身者の志願者増に向けた取組を強化するという方向性を示しつつも、当面の間は、やはり入学者の質の確保の観点から、運用としては柔軟な対応を可能にするというような点についても検討しておく必要があるのではないかと思います。
 そのほか適性試験の在り方とか、いろいろな検討課題になり得るところですので、入学者の質の確保という観点から何か項目を立てていただいて、整理をしていただくというのがいいのではないかと思います。
 以上です。

【井上座長】  
 3割、2割という縛りとどうすべきかは、前から課題になっており、実態と乖離(かいり)してきているので、突っ込んで議論しないといけないところだろうと思います。
 樫見委員、どうぞ。

【樫見委員】  
 組織見直しのところなのですが、先ほどもお話がありましたけれど、法科大学院はやはり教育組織ですから、出口を踏まえて組織の見直しなり定員の問題を考えると、このぽつの順番が、2番目の、要するに出口に当たる今後の法曹人口、あるいは、先ほどお話にもありましたけれども、社会が求める高度の法律知識を持った人材の職域といったことを踏まえて、どのくらいになるのか。定員規模、例えば司法試験の合格者人数はどのくらいなのかということをまず掲げて、その上で、では法科大学院全体として3,000人、見込みが3,175人となっていますけれども、入学定員を更に下げることが必要なのかどうか。そして最後は、下げた場合に、法科大学院の、最後の丸のところにあります地方在住者云々(うんぬん)といったようなことになると思うので、順番としては、やはり大学の教育組織の在り方からすれば、書き方としては定員が先にあるのではなくて、やはり出口のところで、そのように育てた人材が社会でどの程度のニーズをもって必要とされるのかということを踏まえた上で、定員とか、あるいは組織見直しの順番があるのではないかなと。順番だけの問題ではないとは思うのですけれども、書き方の話としてです。

【井上座長】  
 その辺、ちょっと難しいところがありますよね。最初から作っていくときは。

【樫見委員】  
 はい、そうなのですけど。

【井上座長】  
 おっしゃるとおりなのですけれども、現状がかなりのところまで進んでおり、ギャップが大きいという厳然たる現実があるものですから、それへの対応という面と、あるべき法曹人口というものがもし示されたとして、それを踏まえた定員設定という、両面をにらんでいかないといけないものですから、その点、おっしゃった趣旨も踏まえて、更に書き方について事務局で検討していただくことにしたいと思います。
 ほかにいかがでしょう。
 どうぞ、日吉委員。

【日吉委員】  
 すみません、1ページのあるべき将来の姿のところなのですが、表現ぶりが主な問題なのかもしれないですが、少し違和感があるところを申し上げます。
 第2パラグラフで「我が国におけるあるべき法曹像やその規模についての共通理解を確立するとともに、法科大学院の理想的な姿を早急に実現すべく」という言い方があって、そして第3パラグラフで、「すなわち」と受けた上で、当初の理想とされた7、8割が合格できるような教育力を持つ法科大学院云々(うんぬん)ということで、ある意味法科大学院の理想的な姿というものが、「すなわち」以下で一部書かれていると。そしてその上で、「併せて、プロセス養成の趣旨を損なわない範囲の中で、優秀な学生が」云々(うんぬん)ということで、プロセス養成の理念を保ちつつ、ややそれを緩和する措置をとるのだというようなことを第4パラグラフで書いておられると。
 違和感がございますのは、次のところです。まず第4パラグラフで、今の「短期間で法曹になることのできる途の確保や」の後の、多様なバックグラウンドを持った人材が法律を着実に学ぶことのできる体制を維持という言い方なのですけれども、私の感覚では、この多様なバックグラウンドを持った人材が法律を着実に学ぶというのは、ほぼ、法科大学院のあるべき姿なのではないかと。そのあるべき姿の中で、プロセス養成の趣旨を損なわない範囲の中で何かをするというものではない、むしろ本質的なものではないかという気がするのと、それとの関連で言うと、その「すなわち」以下で書かれた、理想的な姿と思われる記述と、この「多様なバックグラウンドを持った人材」云々(うんぬん)というのが、単にパラグラフに分かれて書かれているということではなくて、第2パラグラフを見ますと「あるべき法曹像やその規模についての共通理解を確立するとともに」を受けていますので、多分、先ほど山本委員がおっしゃった、当初の見込みによって法科大学院はこうあるべきだという一応確立した像があったはずですが、今それを、ある種一部修正を迫られているという中で、では今の段階であるべき将来の姿は何なのかということを考えていかねばならないという御趣旨で書いておられると思うのですけれども、そうしますと、そのあるべき法曹像やその規模については、まだ共通理解がないわけですよね、今。ないから確立するというふうに言っておられて、その後に、法科大学院の理想的な姿を早急に実現すべくというふうに書いておられる、その法科大学院の理想的な姿というのは多分今まだ見えていないのかなと。それを、ここにいる人間も含め、みんなで探っていかなければいけないというところに今我々はいるのではないかという認識が何となく、一部あるものですから、表現ぶりも含めて、この法科大学院の理想的な姿という言い方にも少しひっかかるものを感じます。
 ですから、そのあたりをもう少し、あるべき将来の姿というくくりの中で、ここで打ち出すべきことというのは、恐らくですが、当初のではなくて、今後の法曹像の、先ほどから言われている求められているニーズだとか、あるいはどんな人たちを迎えるべきなのかとかということを前提にして、法科大学院はどういった規模で、どういう教育をしていくような制度にすべきかということを、多分再考しなければいけないと、もう一回検討しなければいけないというような方向でのまとめ方の方がしっくりくるのではないかなというふうに、感想としては思いました。

【井上座長】  
 ありがとうございます。恐らく、この第4の多様なバックグラウンド云々(うんぬん)というところは、法科大学院の理念のところで盛り込まれている、そういうものというよりは、主に未修者をイメージして、中でも純粋未修者と言われる人たちが法律を着実に学ぶという体制も維持すべきだということなのだろうと思うのですね。その意味で「範囲の中で」というのが掛かってくるということですが、この表現ぶりは誤解を招きやすいのかもしれません。より大きな意味で言われたところは、基本的に同感なのですけれども。
 ほかの方はいかがでしょうか。

【椎橋委員】  
 ほぼ共通するので、控えようかなと思っていたのですけれども、先ほどの2ページの組織見直しの点についてなのですが、議論をお伺いしていて趣旨は分かったので、その点はよろしいのですけれども、この文章がややわかりにくい感じがしました。最初のぽつで当面の目標値について入学定員と実入学者数のかい離を解消するために定員をさらに削減する方向を示すとしています。次のぽつで、政府の委員会で法曹人口のあるべき適正な定員規模がより少ない数字として出た場合に、その定員規模にまたあわせて、その7、8割が受かるという程度の定員まで削減しようと。そういうふうに、読まれる可能性が高いと思いますが、このところは、要するに政府の委員会のあるべき法曹人口がこのくらいだということが出た場合、日本において適正な法曹人口の規模はどのくらいかについては、様々な意見があり得るところですが、またその時点で法科大学院のあるべき姿として定員規模も考えましょうということがよりよく分かるような形で表現していただく方がいいかなと、そういう感想を持ちました。

【井上座長】  
 どういう数字が出てくるのか分からないものですから、何とも言い難(にく)いところがあるのですけれども、丸ぽつの趣旨は、そういう目標値ができれば、それに合わせて定員設定ができる。その定員設定ができれば、下げ止まりになるかもしれない、そういう効果もあるだろうという趣旨なのかなと思います。
 ほかの方はいかがでしょうか。 どうぞ。

【土屋委員】  
 時間があるようなので、一言だけです。
 項目の立て方だけなのですけれども、3ページに予備試験についてという大きな項目が立っているのですが、このペーパーの趣旨というのは、法科大学院教育の抜本的かつ総合的な改善・充実という、その方策についてのペーパーですから、そこで予備試験をまともに取り上げることには、私は少々違和感を覚えます。前に、司法試験の合格率などについての一覧表が提示されたときに申し上げた意見と同じなのですけれども、予備試験グループというので表の一番下に、一つの法科大学院扱いにして書かれておりまして、私は、それは、本当におかしいと思っているのです。ですからこれも、予備試験についてという項目、ここに書かれている中身については異論はないですけれども、どこかに埋め込んでしまった方がいいのではないかと思います。
 予備試験によって法科大学院教育が見直されるというのは、何かおかしくありませんか。見直すべきは予備試験の方なのだろうというなら分かります。法科大学院を中核としてやろうというのですから、予備試験を見直せというのなら分かりますけれども、予備試験があるために、中核であるべき法科大学院が見直されなければならない理由がどこにあるのでしょうかという違和感です。
 以上です。

【井上座長】  
 その点もまた更に検討してもらうことにします。

【椎橋委員】  
 3ページの(3)のところですけれども、飛び入学等を活用して、学部3年を修了して、2年のコース、法科大学院の2年間の法学既修者コースへ進学することを認める案を示していますが、これは現実に優秀な学生が予備試験に流れてしまうという、そうすると、そこでは過去の点による選抜、予備試験と司法試験に向けた受験勉強ということになっている現実を踏まえた対策として、学部で3年十分に勉強して、もちろんそこでのカリキュラム等の在り方というのも、その後の法科大学院での勉強の在り方と連係するようなやり方で考えて、つまり、学部では法律学の基礎を中心に学習して、更に法科大学院では学部での学習の積み重ねる形でその応用を2年十分に勉強して、組織的、体系的に勉強して、司法試験に合格して、法曹になるということは、まさにプロセスとしての教育ということが実現できる一つの形なので、一つの選択肢としてこういうことを設けるというのは、私は賛成であります。ただ、山本委員が言われたように、魅力の向上という言葉が適切かどうかということはもう少し考える必要はあると思いますが。
 以上です。

【井上座長】  
 有信委員、どうぞ。

【有信委員】  
 では、一つだけ。いろいろな意味で大学教育の見直し等々がこれからも進むのですけれども、最初のあるべき将来の姿というところで、初めから現状の法科大学院の、今までの議論にかなりスティックした書き方になっていて、先ほどからもいろいろ意見が出ていますけれども、やはりグローバルな視点、国際的な視点の中で今の法科大学院の在り方がどうで、しかもそれにあわせて、いわば多様なバックグラウンドを持つ法曹養成という流れがやはり必要だと、こういう話になるはずなので、そこが抜けている。これは抜本的に改革をしていくときに、やはり何となく、ガラパゴスというのではありませんけれども、何だか自分たちの周りだけ考えているという感じになってしまうので、せめてそのあるべき将来の姿のところにでも、言及していただけないかなという気がします。

【井上座長】  
 ありがとうございました。
 ほかに特に御意見がなければ、今日頂いた御意見を踏まえて、たたき台を更にいいものにしていただき、それを基に更に議論していきたいと思いますので、事務局では、今日頂いた御意見を整理し、御注意いただいた点も踏まえて、よりよいたたき台にしていただければと思います。
 もう一つ議題がありまして、本年3月に本委員会が取りまとめた「今後検討すべき法科大学院教育の改善・充実に向けた基本的な方向性」等に沿いまして、事務局では、法学未修者が法律基本科目をより重点的に学ぶことを可能とするための仕組みについて検討を進めてきていただいたというふうに承知しております。本日は、その事務局での検討に基づく改善方策案について、報告を承りたいと思います。
 それでは、事務局から資料について御説明をお願いします。

【今井専門職大学院室長】  
 それでは、資料5に基づいて御説明したいと存じます。法学未修者が法律基本科目をより重点的に学ぶことを可能とするための具体的な改善方策について(案)でございます。
 総論的に一番上に書かせていただいておりますが、当方におきまして、この法科大学院特別委員会でおまとめいただきました3月の基本的な方向性の中で、特にこの未修者教育の充実については直ちに取り組むべきという形で整理を頂いたところでございます。それを受けまして、その具体的な検討をこれまで内部的にも進めてまいりまして、ここにございますように、現行制度の運用の変更、見直しを行うことを整理させていただき、具体的には、概(おおむ)ね以下のような内容について各法科大学院、また認証評価機関に対して明示し、その周知徹底を通じて法学未修者教育の改善・充実に努めていければと考えているところでございます。
 具体的には、各法科大学院に対しまして、学生の自学自習の確保など、学生にとって過度な負担にならぬような配慮をしつつも、これから御説明いたします1から3の事項に取り組んでいくことを促すとともに、認証評価機関に対しても、それらの取組を行う法科大学院に対して適切な評価が行われるようその対応を促していくということで考えていけないかというところでございます。
 まず、1から3までの具体的な取組について御報告させていただきたいと存じます。
 1点目でございますが、法学未修者の法律基本科目の単位数及び配当年次の扱いについてでございます。この点につきまして、特別委員会のワーキンググループでの御報告の中でも御指摘ございましたが、現在、文部科学省の通知におきまして、従来は1年次に限って6単位増加できるということを示していたところでございますが、実際に、現場、各大学のデータをとりましたところ、なかなか1年次に6単位、目いっぱいできるというのは少ないという実態もございました。そういったことを踏まえまして、よりフレキシブルに、法学未修者が法律基本科目をより重点的に学ぶことをできるようにするため、アンダーラインを引いているところでございますが、「1年次から2年次にわたり10単位程度」にそこの考え方を改めて、それを明示する方向で考えていけないかというところでございます。これが一つ目の考え方でございます。
 二つ目は、年間登録単位数の上限についてでございます。これにつきましては、現在、法科大学院の学生が履修登録することができる上限の考え方として、文部科学省の告示におきまして、1年間につき36単位が標準とされているところでございます。先ほど、上記1で御説明しましたように、1年次から2年次にわたって10単位程度増やすということになってまいりますと、やはり2年次における単位の上限の考え方についても一定程度見直しが必要だろうということで、その取組を円滑に進める観点から、その標準の範囲に関して、概(おおむ)ねその2割程度、括弧にございますように8単位程度までは単位数の増加が認められる旨を明示させていただいてはどうかということでございます。こう示すことによりまして、各大学がどこまでの範囲の中で泳げるのかという範囲を広げることによって、あとは各大学が御自身の学生の、いわゆる習熟度合い、若しくは状況に応じて、未修者教育に十分手当てできるような範囲を広げるということで整理させていただいてはどうかということでございます。これが2点目でございます。
 3点目はもう少し視点が変わりまして、ワーキンググループでも御指摘いただきましたが、入学時に実は既に十分な実務経験を有している方に関しては、大学におかれまして、それまでの実務経験等をしっかり把握、評価していただいた上で適当と認めた場合には、それに相当する展開・先端科目に代わって法律基本科目を履修しても適切であるということを明示してはどうかということでございます。
 これは、別紙2を御覧いただけたらと存じます。こちらに、展開・先端科目の一部履修の軽減のイメージというものを示させていただいております。これは一例でございますが、上の二重線の箱で書かれている下に例として、例えば税務署で十分な実務経験があり、租税法等に代えて法律基本科目の履修を認める選択科目の履修例のイメージを書かせていただいておりますが、要は、こちらにございますように、現在、展開・先端科目につきましては、おおよそ93単位のうち3分の1から4分の1が配当されることが望ましいだろうということで、各法科大学院におかれては、この選択必修が大体20数単位というところが多くございます。なので、その人に着目して、例えばそこで税法の関係の単位を4単位取ったと仮定して、全体では選択必修22単位取ってほしいのだけれども、4単位は減じて、選択必修は18単位でいいだろうと。ただ、その減らした分を、今度は左側の矢印でございますけれども、法律基本科目群で、例えば選択必修を設けておられるところであれば、従来取らなかった科目に充ててもかまわないということをすることで、そういった多様な実務経験を持っている方が、より法律科目を学ぶ可能性もできるということを今回示させていただいてはどうかと考えております。
 ただ、もう一度2ページ目にお戻りいただきたいと思いますが、そのような形であったとしても、やはり展開・先端科目をしっかり学んでいただくということは重要でございますので、法律基本科目によって代替できる単位数というものについては、法科大学院の本来の目的に沿った教育活動を展開する観点から、概(おおむ)ね2から4単位を目途とすることが適切である旨、あわせて明示してはどうかと考えております。これは、申し上げますと、大体20数単位を展開・先端科目に充てている法科大学院の、およそ1割から2割程度の単位はそういった形で考え方を整理させていただいてもいいのではないかということでございます。
 以上、1から3までのような形で、法学未修者の教育の充実に手当てをしていただいても結構であるということを明示させていただければと考えています。その上で、4番目でございますが、認証評価機関に対してもその旨をしっかりお伝えしたいと考えています。すなわち、このような上記1から3の取組を行いますと、当然ではございますが法学未修者の法律基本科目群の履修単位数の比重が高まってまいります。そういったことをもって、直ちに、ある意味そのバランスが崩れたとして否定的な評価をしていただくのではなくて、法学未修者教育を充実させるための適切な取組になっているかどうか、その中身をしっかり見ていただき、評価する必要性について明示することとさせていただいてはどうかと考えています。
 以上の1番から4番までの取組を文部科学省より、各大学、それから認証評価機関にお伝えすることで、法学未修者が法律科目を重点的に学ぶことを可能とすることを進めさせていただけたらと考えているところでございます。以上、御報告でございます。

【井上座長】  
 ただいまの御説明につきまして御質問でも御意見でも、ございましたら、御発言願います。
 では、片山委員。

【片山委員】  
 単位数を増やしていただくとか、あるいは1年、2年で継続的に履修が可能になるという御提案は、大変有り難い御提案だと思うのですけれども、他方、やはり実際に授業をやっておりますと、単位数を増やすという形の対応が、果たして未修者教育の充実にどこまでつながっているのかということが若干懸念される点がございます。単位数を増やすということではなくして、やはり同じことを説明するのに、もう少し時間を掛けて説明したいというところがございますので、単位数を、単純に時間に連動させるのではなくして、未修者に関しましては同じ2単位でももう少し時間を長くとって説明することを許容できるような枠組みが、ダブルカウントということではなくして、実際に必要ではないかと考えております。

【井上座長】  
 2単位を3単位にして、時間をその分長くすればできるような気がするのですけれども。2単位は2単位としておきながら1単位の時間を倍にするというのは難しいかと思います。

【片山委員】  
 そうなのですが、逆に言いますと、同じ内容を教えているにもかかわらず、理解に時間が掛かる学生については2単位の内容を10単位分の時間をかけて教えていいかということになりますと、やはり教えるべき内容もある程度その単位数に連動している必要があるのではないかということです。そうしますと、単に時間が掛かる場合に、2単位を3単位にすればよいとは単純にいえないのではないかと考えます。

【井上座長】  
 磯村委員。

【磯村委員】 
 この方針の1ぽつの考え方は、ワーキングでも出てきたところですけれども、例えば今1年生で開講されている民法の財産法分野科目のうち一部については、2年生の前期に回して、これまでと同じ単位数の中で従来よりも少ない範囲を充実してやるというようなイメージで、例えば、家族法の分野や担保物権法については、2年生の前期の履修とし、1年生は財産法の中で基本的な部分をより充実させるというのが一つのイメージです。片山委員の御提案の場合に少し気になりますのは、今の単位数の問題というのは、科目の単位数と同時に、教員の負担コマ数という問題にも連動するので、2倍の負担を引き受けて、しかし引き受けている単位数は2単位だというのは、その教員の負担数が数字の上で実態を反映しないという懸念もあります。したがって、やはり正面から、従来2単位でやっていたものを4単位をかけてゆっくりやることによって、知識・理解の定着を図っていくというのが望ましいのではないかというのが、今の点に関する問題です。
 もうあと二つだけ意見を申し上げたいのですが、一つは、2ぽつの年間登録単位数の上限についての運用の仕方なのですけれども、ここの文章では「上記1の取組を円滑に進める観点から」という限定があり、後ろの別紙1ではその趣旨がより明確に示されていて、別紙1のポイントの2というところに、赤字になる前の黒字のところで「法律基本科目の学修のためであれば」という目的制限が付け加わっているわけですが、これには重要な意味があって、単に、キャップ制の上限単位を増やすことができるということになってしまうと、1年生、2年生で例えば八十数単位履修できると、3年生の履修必要単位数が少なくなり、司法試験の勉強に多くの時間を充てられるというような運用になりかねません。そこに歯止めが掛かるようなルールの作り方というのが必要ではないかということだと思います。
 もう1点は、3ぽつのところなのですけれども、この御提案自体は、改善方策は、未修者がという主語が限定されているわけですけれども、入学時に既に十分な実務経験を有する者というのは、例えば企業法務をしていた人が既修者で入ってくるという場合にも当てはまり得るので、そういう場合にどういう対応をするかということも視野に置いて検討していただくのが必要ではないかと思います。
 以上です。

【井上座長】  
 ありがとうございます。
 どうぞ、山本委員。

【山本委員】 
 今、磯村先生が最後に言われた点は、私も同感です。これを検討していたのが未修者ワーキングだったので、未修者の話を基本的に検討していたわけですけれども、事柄は、やはりここに書かれているように、十分な実務経験を持っていれば、その実務経験の部分はむしろ法律の基本的なところを勉強していただくということで代えてもいいだろうという発想なので、既修者についても同じように考えるということは十分あり得る話かなというのが1つです。
 それからもう1点は、ちょっと細かい話なのですけれども、別紙2で、展開・先端科目群の具体的な科目を法律基本科目群に代えるというイメージの中で、この具体的な、各法科大学院で展開・先端科目として設けられている科目というのは様々に違ってくるわけなのですけれども、租税法の科目を置いていない大学はないと思うのですが、うちの法科大学院には、例えば消費者法みたいな科目はありませんと。ただ、その人は消費生活相談員とかで消費者の法律についてずっと実務経験がありましたというような事例で、消費者法を置いているところであれば、それに基本科目を代えるということはできると。そうでないところはできないのだろうかというのが、ちょっと気になるところです。
 趣旨からすれば、そういう場合でもできてよさそうな感じがするのですけれども、制度を仕組むときに、あるいは具体的な科目、1対1対応みたいな形で考えると少し難しくなってくるように思うのですけれども、個人的には、できれば可能になるようにした方がいいかなとは思うのですけれども、少し御検討いただければ。

【井上座長】 
 今挙げられた例の場合は結構分かりやすいのですけれども、実務経験といっても多様なものがあるので、果たして、またどういうふうに、読替えが可能なのか、結構難しい問題が出てきますよね。ただ、両面を考えながら、既修者についてもという部分もそうですけれども、基本的にこういうものにするのだということを定めた上で、それをどういうふうに発展させるとか応用していくのか、そういう発想で処理していかざるを得ないのではないかなというふうに思いますけれども、更に事務局でも御検討いただければと思います。
 どうぞ。

【松下委員】 
 改善方策の1のところなのですけれども、この単位数を増やすという発想自体は十分あり得る発想だと思うのですが、法科大学院も11年目に入りまして、聞くところによりますと、従来型の正規の科目以外に、修了生法曹などを使って事実上の補習をしている法科大学院が少なくないというふうに聞いております。法科大学院によっては、もしこういう制度ができたら、それを単位化したいと考えるところはあり得るのではないかと、それは、つまり任意の制度にしておくと、一番来てほしい学生に来てもらえないということがしばしば起きるので、必修の単位にして、研究者教員の授業と、それから若手法曹による補習授業とを組み合わせたいと考えるところが出てくるのではないかと。
 そのためにこの10単位を使うというところが出てくるかもしれないのですけれども、そのときに障害になるのが教員の資格だと思うのです。当該分野について、研究者教員だったら例えば業績論文があることとか、実務法曹だったら、概(おおむ)ね5年以上ですか、当該分野について実務経験が5年あることというような資格が掛かっていると思うのですけれども、93単位までの分はそれでいいと思うのですが、93単位を超えて、この1ぽつを使って積み増す部分にも同じような教員資格を要求しなければいけないのかといったら、それは違うのかなと思いまして、先ほど片山委員のおっしゃった丁寧な教育のイメージは、研究者教員が倍の時間を使って教えるということなのですけれども、似たような効果は、研究者教員が従来型の時間を使い、若手法曹がさらにそれをフォローアップするような形でも、その丁寧な教育は実現できるのではないかということで、未修者教育に特化した、この積み増した部分特有の教員資格というのを、緩和したイメージというのを考えられないかというのが、私の問題提起であります。
 これを最初に言ってしまうといけないので、最後に言うのですけれども、これは現在の教員の負担を過度に増やさないという観点からも大事なことではないかと思います。つまり、丁寧な教育をやるのに従来の教員に倍教えろというのではなくて、活用できる人材を使って同じ効果を目指すというのも十分あり得る話だろうと思うところです。
 以上です。

【井上座長】 
 今の点は、この前、未修者教育の充実ということで単位数の上限を増やしたときにも、現に問題が生じた点ですので、認証評価の審査基準とか、そういうところを、もう少し柔軟化を図ることを考えていくべきなのだろうと思います。その点もまたさらに検討をしていただきたいと思います。
 ほかに何かありますでしょうか。
 特にございませんでしたら、この点についてはこのくらいにさせていただきたいと思います。基本的に、事務局から御報告があった方向性については御異論なかったと思いますので、この方向で進めていただくこととして、本日、皆様から多様な御指摘、御意見が出ましたので、これを踏まえて、更に詰めを行う段階で、そういう御意見も反映させるべく調整していただければというふうに思います。
 今後の日程について、事務局から何かお話がありますでしょうか。

【今井専門職大学院室長】 
 次回の法科大学院特別委員会の日程につきましては、現在、9月で調整させていただいているところでございますが、日程が確定いたしましたら、改めて御報告、御説明させていただきたいと存じます。

【井上座長】 
 ありがとうございました。
 それでは、本日はこれで終了とさせていただきます。

お問合せ先

高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

(高等教育局専門教育課専門職大学院室)