法科大学院特別委員会(第63回) 議事録

1.日時

平成26年7月2日(水曜日) 10時30分~12時30分

2.場所

文部科学省東館15階 15F特別会議室

3.議題

  1. 入学定員・組織見直しに係るこれまでの施策の実施状況等について
  2. 法科大学院教育の改善・充実について
  3. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)有信睦弘、井上正仁、土井真一の各委員
(専門委員)磯村保、笠井治、樫見由美子、鎌田薫、木村光江、椎橋隆幸、杉山忠昭、土屋美明、長谷部由起子、日吉由美子、松下淳一、松本裕、山本和彦、吉崎佳弥の各委員

文部科学省

吉田高等教育局長、徳久大臣官房総括審議官、中岡高等教育局審議官、浅田高等教育企画課長、牛尾専門教育課長、今井専門職大学院室長、佐藤専門教育課課長補佐、真保専門職大学院室専門官

5.議事録

【井上座長】  
  所定の時刻ですので、第63回中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会を開催させていただきます。
 まず、事務局から配付資料の確認をお願いします。

【今井専門職大学院室長】  
 失礼いたします。それでは、資料の議事次第に基づいて御確認させていただきます。
 資料1は前回の議事録(案)でございます。資料2-1、2-2、2-3は、それぞれ法科大学院における平成26年度の入学者選抜の状況等、また入学定員及び実入学者数の推移、そして入学定員・組織見直しに係る施策の実施状況についての資料でございます。続きまして、資料3-1、3-2、3-3は予備試験の関係の資料でございまして、第9回及び第10回法曹養成制度改革顧問会議での配付資料の抜粋でございます。また、司法試験予備試験制度に関する6大学の緊急の提言、そして法科大学院生に対しての経済的支援等についての資料でございます。続きまして、資料4は法科大学院教育と司法試験予備試験との関係についての委員意見の整理案。資料5は、法律実務基礎教育及び法科大学院の継続教育機関としての役割の充実に関する論点整理案。資料6は、飛び入学等を活用した法曹養成のための教育期間短縮の考え方の案。そして資料7は、法科大学院における司法試験に関連する指導方法等の具体的な取扱いについての案でございます。
 なお、参考資料1から4につきましては、それぞれの参考として付けさせていただいているところでございます。
 資料の確認は以上でございます。

【井上座長】  
 それでは、もし不足がありましたら適宜御指示いただければと思います。
 議事に入りたいと思います。昨年11月に文部科学省が公表しました「公的支援の見直しの更なる強化策」におきまして、各法科大学院の平成27年度の入学定員について、本年6月末までに見直し、文部科学省に報告するよう促す仕組みが設けられております。本日、6月末までに文部科学省に報告のあった入学定員の見直しの状況を含め、これまでの入学定員・組織見直しに係る施策の実施状況を踏まえまして、今後の組織見直し促進の在り方について御議論いただければと思います。
 まず、事務局から資料についての説明をお願いします。

【今井専門職大学院室長】  
 失礼いたします。それでは、資料2-1、2-2、2-3に基づいて御説明をさせていただきたいと存じます。
 まずは、資料2-1を御覧いただけたらと存じます。資料2-1は、法科大学院における平成26年度の入学者選抜の状況についての資料でございます。この資料自体につきましては、以前、この法科大学院特別委員会でも御紹介をいたしましたが、ポイントは1ページ目でございます。平成26年度の志願者数、入学者数、入学定員充足率をここに記載してございますが、その横に参考として入学定員がございます。これが平成26年度は3,809名の入学定員でこの4月からスタートしているというところでございます。この入学定員につきましては、この表にもございますように、実際に入学された方との乖離(かいり)が大きいという状況が続いておるところでございますので、政府において関係閣僚会議決定が昨年7月に行われておりますが、この定員と入学者数の乖離(かいり)を埋めていく方向で入学定員の削減を進めていくという政策を今進めさせていただいているところでございます。
 その大きな政策といたしましては、4ページ目、最後のページでございますが、「公的支援の見直しの更なる強化策」について、昨年の11月に公表し、各大学にお示しをさせていただいたところでございます。この政策の中で、特にこの絵の青からオレンジ、赤と変わっていきます第1、第2、第3の分類がなされる際の一つの指標の中に、入学定員の充足率についてその指標の、振り分ける際の指標になっているという状況でございましたが、この指標につきましては、来年の平成27年4月の入学定員を見直すことによってその指標の点数を上げることができるという仕組みにしておりました。その結果、この6月の末でございますけれども、全ての法科大学院におかれて様々に検討された結果が文部科学省に寄せられてきておりますので、その数字について、資料2-2に基づいて御説明をしたいと存じます。
 資料2-2、各法科大学院の入学定員及び実入学者数の推移についてでございます。昨年度のこの時期に開かせていただいた会議でも配った資料の改定版でございますが、この赤色で囲ったところを主に御覧いただけたらと思います。
 入学定員の平成27年の予定でございます。資料の一番下にございますように、ここにこれから御説明する平成27年入学定員の予定は、飽くまで本年の6月末までに各法科大学院から文部科学省に報告されたものでございますので、今後変更の可能性は十分ございます。ただ、公的支援の見直しのスキームの中で各大学が検討して報告いただいたということで、およそこういった数字が一つの目安になるのではないかなと考えているところでございます。
 この平成27年の予定のところでございますが、対前年度のところの欄にございますように、▲が立っているものにつきましては、これは昨年度の平成26年からの減になっておりまして、一番下の欄を御覧いただけたらと存じます。この平成27年に向けた見直しとして各法科大学院から上がってきましたのは、前年比ベースで634名の減、合計で来年の4月1日からは3,175名の入学定員に縮減される方向性が見えてきたというところでございます。
 なお、一番横のピーク時の一番下を御覧いただけたらと思いますが、これは平成19年の最後、一番入学定員が多かったときでございまして、5,825名の入学定員で運営がされておりました。この5,825名から見ても2,650名の減ということで、パーセンテージで言えば45%減、おおよそ半減を達成できそうなところまで来ているという状況でございます。
 なお、この資料自体は、一番左側にございますように累積合格率順で各大学を並べさせていただいております。また、グレーの色を塗らせていただいておりますのは、基本的には学生募集停止を公表された大学ということでございます。
 続きまして、資料2-3を御覧いただけたらと存じます。このたび、平成27年度の入学定員の見直しの状況の報告がなされたところでございますが、これまでの入学定員・組織見直しの流れに基づいて、その実施状況を御報告させていただきたいと存じます。
 資料の一番左側に年度を、その横に、右側に並びますように、入学定員の削減に向けた施策、それから実際に入学定員がどう推移してきたのか、そして学生募集停止・廃止という流れを書かせていただいております。平成19年、ピーク時5,825名に対しまして、平成21年の欄を御覧いただけたらと存じますが、この法科大学院特別委員会で入学定員の見直しの提言を頂いたところでございます。その後、平成22年、平成23年と各法科大学院におかれましてはおおよそ全ての法科大学院が2割の減ということで定員の削減を進めてこられました。ただ、平成24年の欄を御覧いただければと存じますが、このあたりで少し前年度比での減少のスピードが落ちたという状況もございます。ただ、政策的には、実はその平成22年で公的支援の見直しのスキームを入れて、実際に発動させたのが平成24年からということでございまして、そこから先の平成25年以降からまたその入学定員の見直しが加速しているという状況です。
 特に今回は平成25年度の欄を御覧いただけたらと存じますが、平成25年11月のところで「公的支援の見直しの更なる強化策」を発表させていただきました。この結果、赤い破線の矢印が右側にございますが、一番右欄でございます。平成25年の12月以降、つまりこの更なる強化策を発表して以降、募集停止を御決断された法科大学院が全部で12校ございます。これは、これまで学生募集の停止を20校が公表されておりますので、その半数以上は昨年の12月以降、それぞれ加速度的に募集停止の決断をされているという状況かと考えているところでございます。
 こういった状況になりまして、先ほど御報告した平成27年度の数字になってまいりますが、この634名のうち、この右側の破線で囲った12大学に加えて島根大学が平成27年4月から募集停止の公表を既に報告されておられますので、ここを合計しますと大体290名が入学定員の削減となっております。残り約半数以上は、それ以外の各大学におかれまして、入学定員の充足状況を勘案しながら入学定員の見直しをかけられた数字と考えているところでございます。ちなみに、削減校数につきましては、33校がその入学定員の見直しを行ったという状況にございます。
 事務局からは資料の説明は以上でございます。

【井上座長】  
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問等がありましたら御発言いただきます。
 特にございませんでしょうか。 特に御発言がなければ次に移りたいと思いますけれども、また適宜後の議事の中で御質問あるいは御意見を賜ればと思います。
 次は、前回に引き続き更に検討を深めるべき事項としまして、法科大学院と予備試験との関係、もう一つは、法律実務基礎教育及び法科大学院の継続教育機関としての役割の充実という点を取り上げるとともに、飛び入学等を活用した法曹養成のための教育期間の短縮及び法科大学院における司法試験に関連する指導方法等については、本委員会としての考え方をできれば取りまとめたいと思います。
 議論に入る前に、政府の法曹養成制度改革顧問会議においても、本委員会での検討に関連した様々な議論が行われていると承知していますので、まず、顧問会議での検討状況について事務局から報告をお願いしたいと思います。

【今井専門職大学院室長】  
 失礼いたします。それでは、資料3-1、3-2、3-3に基づいて御説明させていただきたいと存じます。
 まず、資料3-1を御覧いただけたらと存じます。
 資料3-1は、第9回及び第10回法曹養成制度改革顧問会議配付資料の抜粋でございます。これは、この6月に政府に設置をされております顧問会議において配付された資料でございまして、この資料に基づきながら現在政府の中でも検討が進められているという状況でございます。
 それでは、簡単にどういった資料かを御説明させていただきたいと存じます。通し番号は1ページ目以降を御覧いただけたらと存じますが、1ページ目以降には、司法試験予備試験に関する議論の経緯ということで、例えば1ページ目にございますように、司法制度改革審議会の意見書における予備試験の記載や、その後、政府に設けられました司法制度改革推進本部におけるその考え方の整理。また、2ページ目以降は、与党三党合意での実施の内容、国会における衆議院、参議院での審議の中での特徴的な議論、それぞれの委員会で行われました附帯決議などのポイントが示されており、こういったことで経緯の確認をされながら議論が進められているところでございます。
 続きまして、通し番号9ページを御覧いただけたらと存じます。こちらは、その司法試験法の抜粋、またその後に連携法の抜粋が出てまいります。10ページ目を御覧いただけたらと存じますが、司法試験法自体は、現行法は、この第四条でございまして、司法試験の受験資格等につきましては、第一号におきまして黄色いマーカーが付されているところでございますが、法科大学院の課程を修了した者、そして第二号で司法試験予備試験に合格した者がその司法試験を受験することができるということが記載されているところでございます。
 また、通し番号13ページ目を御覧いただけたらと存じます。法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律でございますが、この中で、特に法曹養成の基本理念として第二条に掲げられておりますように、第二条、第一号でございますが、その上から3行目、黄色いマーカーが付されております。法曹の養成のための中核的な教育機関として法科大学院があるということが法律上規定されているというところを確認していただいているところでございます。
 以上、こういった経緯、またその法の仕組みの議論が資料として提示をされた上で、17ページ目以降を御覧いただけたらと存じます。平成26年司法試験予備試験の状況についての最新のデータの御報告がされているところでございます。17ページ目の一番上の箱を御覧いただけたらと存じますが、出願者で1万2,622名、また受験者は1万347名ということでございました。また、短答式の合格者数の発表がございまして、2,018名ということで本年度の最新の情報の報告がなされているところでございます。
 そのほか、17ページ目以降は、個別の、例えば最終学歴でございますとか、過去の司法試験の受験経験、そういったものがそれぞれ整理されているところでございます。
 なお、21ページ目を御覧いただけたらと存じます。その平成26年の予備試験における受験者層の中で、大学生在学時にその出願をされた方が短答式に合格した大学のリストが公表されているところでございます。このリストにございますように、先ほどの2,018名のうち462名が出願時に大学生であったということでございまして、このリストは、短答式試験の合格者がいる大学のみ個別名の大学が載っておりまして、合格者がない場合には、その他の中に分類されているということでございます。この中で、特に短答式の合格者数というところにつきましては、数字、一番右側にございますが、東京大学を筆頭に中央大学、慶応大学、そして早稲田大学、一橋大学の順でその短答式の合格者が出ているという実態が示されているところでございます。
 また、23ページ目を御覧いただけたらと存じます。今度は、その予備試験の短答式合格者で、その出願時の自己申告の際に法科大学院生であったところの大学が一覧で載っておるところでございます。こちらは全ての法科大学院が載っておるところでございますが、先ほどの2,018名の中のうち412名がその法科大学院在学時の出願時の資格で合格された方でございます。こちらもそのトップは東京大学の法科大学院生でございまして74名、以下、慶応大学、中央大学、そして早稲田大学、京都大学の順でその合格者が出ているという実態が報告されているところでございます。
 以上のような形で、その予備試験のデータが報告をされておりますが、続きまして、29ページを御覧いただけたらと存じます。29ページにおきましては、予備試験合格者に関するデータ一覧ということで、平成23年からの予備試験のデータが記載されているところでございまして、平成23年以降、その受験者数、一番上の箱の一番上でございますが、6,400名台から7,100名、9,200名、そして今回1万300名ということでございます。その中で、在学中、それから法科大学院在学中でその出願、自己申告された方の数字というのは、ここに記載があるように、大体前年度比で平成26年度を見ますと200から300ぐらいで増をしているというデータの報告があるところでございます。
 また、本年行われております司法試験の短答試験の報告がございましたので、真ん中の箱でございますけれども、本年の今の司法試験につきましては、現在7,771名の方が受験をされたところでございますが、予備試験の合格の資格に基づいて短答式を合格された方が244名という報告があったことも併せて御報告いたしたいと思います。
 続きまして、その後はより詳細な資料が30ページ、31ページとついているところでございます。
 また、33ページ目以降には、その議論をするための参考といたしまして、資格取得の要件の例ということで、例えば弁護士資格の認定、公認会計士の資格、税理士試験の受験資格などの状況が記載されております。34ページ目では、医師国家試験の受験資格などが記載された資料となっております。参考のところには、その受験資格要件のない資格試験の例や、一定の学歴等により試験科目が免除されている資格試験の例、年齢制限のある試験の例が記載されているところであります。
 また、35ページ目につきましては、奨学金の経済的要件といたしまして、日本学生支援機構で行われている奨学金の例や、特に各法科大学院で行われている大学独自のものなどが紹介されているところであります。
 最後にA3の紙がついておりますが、通し番号37ページ、38ページを御覧いただけたらと存じます。こういったエビデンスベースでの資料の御紹介があった上で、現在ここにございますように、予備試験制度に関しての意見が内閣官房の方で整理されたものをベースに今議論が進められているところでございます。
 この資料、まずは左側でございますが、現行の予備試験制度に対しての批判ということで、それぞれ白丸のところにございます。代表的なところだけ御紹介をいたしますが、例えば、現行の試験に対しまして今の実施状況、多数の学部生や法科大学院生が予備試験を受験していて、予備試験本来の制度趣旨に合わない状況が生じているのではないかという指摘。また、二つ目の白丸に、学部生の予備試験受験者が増加しているということなどから、特にその学部における教育に悪影響が生じているのではないかという指摘。また、三つ目の白丸にございますように、この予備試験がバイパスとして利用されているのではないかという御指摘。また、四つ目の白丸には、法科大学院生の予備試験受験者が増加しており、法科大学院における学習がおろそかになるといったことも見られるなど、法科大学院の教育に悪影響が生じているのではないかといった御指摘があるということでの御紹介がございました。
 ただ、この現状に対しての批判に対して、さらに、右側でございますけれども、そういったものに対しての批判というのもあるということでの御紹介でございます。
 一番上の箱から御説明をいたしますが、例えば一つ目の黒ぽつにございますように、受験資格の扱いについては立法時から議論されていたが、その資格を制限するという結論には至らなかったのではなかったかという指摘。また、予備試験は資格試験として、経済的事情や一定の社会的経験を有する者などに平等に受験の機会を付与されているということではないのかという指摘がございます。また、二つ目の箱にございますように、学部生で予備試験合格までする者はいまだ少数ではないのかという点。また、予備試験の対策だけでなく、学部生はその法科大学院入学対策も含めてその予備試験予備校を利用しているのではないかという御指摘。そして、三つ目の黒ぽつにあるように、学部教育への悪影響の実態というのは明らかではないのではないかという御指摘があるということでございます。また、三つ目の箱にございますように、法科大学院の進学は、まさに法科大学院の魅力に大きな決定要素があるのではないかという御指摘。さらに、二つ目の黒ぽつにございますように、今の予備試験の合格率というのは極めて低く狭き門であるため、法曹になるための安易なバイパスとはなっていないのではないかという御指摘。さらに、四つ目の箱にございますように、法科大学院への悪影響の実態は明らかではないのではないか。また、影響があった場合であっても、法科大学院における適切な教育指導、厳格な単位認定・修了認定により対応すべきではないかといった御意見があるということでの御紹介がされているところでございます。
 そして、続きまして裏のページを御覧いただけたらと存じます。こちらは、予備試験制度の例えば制度的制約について考え得る案として4案が示されているところでございます。A案といたしまして、予備試験の受験資格として資力要件・社会人経験要件を設ける案。B案といたしましては、一定の年齢以上であることを予備試験の受験資格とする案。C案といたしましては、法科大学院在学中の者には予備試験の受験を認めないこととする案。また、D案といたしましては、予備試験の試験科目として、展開・先端科目等を追加・変更する案というものが記載されているところでございます。
 これに対しまして、右側の箱には、それぞれの制度的制約に対して慎重な立場からいろいろと反論等の御指摘があるということでの御紹介がされているところでございます。例えば、A案に対しましては、その法曹志願者の減少に結び付くおそれがあるのではないか。また、二つ目の黒ぽつにありますように、様々な事情により法科大学院に進学できない者との間での不平等が生じるのではないかという御指摘。また、三つ目の黒丸には、現行制度の法の制度設計時にも検討されましたが、制度化には至らなかった。また、当時には想定されていなかった、新たに変更するのであれば、新たな立法事実が必要ではないかという御指摘があるということでございます。
 また、B案のところでは、一つ目の黒ぽつにございますように、学部段階で法曹の道を選ばなくなるおそれがあるのではないかという御指摘。また、二つ目の黒丸にありますように、現在だれでも受験可能な予備試験について、受験の権利を一定年齢で制約することの正当化するだけの根拠がないのではないかという御指摘。また、年齢での受験制限というものは、法の下の平等、あるいは、職業選択の自由に過度な制約となるおそれがあるのではないかという御指摘があるという御紹介がされておるところでございます。
 また、C案につきましては、同じように法曹志願者の減少に結び付くおそれとともに、法科大学院生だけ受験を認めなかった場合、法曹志願者が法科大学院か予備試験かの二者択一を迫られることになり、法科大学院に入学する者が減少するおそれがあるのではないかという御指摘があるということであります。
 また、D案につきましては、最後の黒丸でありますが、司法試験の選択科目廃止とも連動する問題であり、併せて慎重な検討が必要なのではないかといった指摘があるということでの御紹介がございまして、こういった資料に基づきまして現在顧問会議におかれましても予備試験についての検討が行われているというところでございます。
 また、続きましては、資料3-2を御覧いただけたらと存じます。資料3-2でございますが、これは、表紙の一番下にございますように、京都大学、慶應義塾大学、中央大学、東京大学、一橋大学、早稲田大学のそれぞれ法科大学院の研究科長名におきまして、司法試験予備試験制度に対する緊急の提言がなされたところでございます。本体につきましては、2ページ目、1枚おめくりいただいた以降にございますが、ここでは要旨に基づいて御紹介をさせていただきたいと存じます。
 まず、1段落目のパラグラフのところでは、旧司法試験に対しての制度の弊害の克服をするため、法科大学院としてこれまで優れた修了者を法曹として社会の様々な分野に送り出してきたという御指摘をしていただいた上で、ただ、現状の予備試験につきましては、本来、経済的事情や、既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により、法科大学院を経由しない者にも法曹資格取得のための適切な道を確保する例外的な制度であるにもかかわらず、受験者数、合格者数が増加する。また、その中で法科大学院生、学部生の割合が増えているということで、制度、趣旨に反する状況を招いているのではないか御提言がされているところであります。
 このような状況を放置した場合、3段落目以降でございますが、プロセスとしての法曹養成制度が瓦解していくのではないかという懸念から、次のような方策を講じることが必要であるという提言でございまして、まず、第一といたしまして、その予備試験が法科大学院修了者との同等の学識等を確認する、判定するものにふさわしいものとなるよう、試験科目及び出題内容、方法について見直しを行うこと。また、第二といたしまして、予備試験の制度趣旨に即した受験資格を設けること。第三に、法科大学院教育の改善が成果を示し、また上記のような方策が検討、実施されるまでの間、予備試験の合格者数が更に拡大することないよう運用されることといった提言がなされているところでございます。
 資料3-2にございますように、6大学からのこういった意見書がこの6月9日に公表されまして、顧問会議の場におきましても御紹介がされたということでございますので、この場でも御報告をさせていただきたいと存じます。
 そして、最後資料3-3でございますが、これは、この顧問会議におきまして、文部科学省からその顧問会議の要請に基づきまして御報告をした資料でございますので、御報告を併せてさせていただきます。
 資料3-3、法科大学院生の経済的支援についてでございます。ここ、1ぽつにございますように、独立行政法人日本学生支援機構により奨学金をまずは文部科学省としては進めておりまして、(1)、(2)にございますように、無利子奨学金、有利子奨学金の制度を運用させていただいているところでございます。丸1番から丸5番までは、それぞれ学力基準でございますとか家計基準がございますが、例えば丸4番でございます。返還期間のところの一つ目の黒ぽつにございますように、無利子奨学金制度の中には成績優秀者に対しての返還免除制度がございます。この制度を実は法科大学院生も活用しておりまして、平成24年度の実績は530名の方がこういった制度を活用して返還免除を受けているという実態があるということでございます。また、丸5番にございますように、平成24年度の貸与人員につきましては3,900名、これは法科大学院生の数字でございまして、全体の8,396名のうち約38%、4割近くがそういった無利子奨学金を受けている実態があるということでございます。
 また、有利子奨学金につきましても同じように学力基準等々ございますが、丸3番の平均貸与額につきましては、有利子につきましては様々ございまして、月額5万円から刻みで学生が選択できるような制度設計になっておりますが、法科大学院生のみ19万円、また20万円という高額な奨学金でもその貸与を受けられるといった優遇措置がなされているところであります。
 また、丸5番にございますように、平成24年度の貸与人員は1,550名でございまして、これは法科大学院生の約18%、2割近くはこの有利子奨学金も受けている状況がございます。
 また、一番下の※にございますように、こういった(1)、(2)につきましては、貸与基準を満たしておられる希望者には全員貸与されているという実態があるということでございます。
 続きまして、2ページ目を御覧いただけたらと存じます。授業料減免の制度でございます。上の段でございますが、この授業料減免制度につきましては、なかなかその法科大学院を特出しするような制度設計にはなっておりませんので御説明しにくいところがございますが、ただ、平成26年度の予算規模、国立・私立大学ともに前年よりもその増を目指すため、予算を増加させております。二つ目の白丸は予算額の推移でございますが、平成25年度から平成26年度まで、それぞれここに記載されているような形でその増額を目指している、また増額を進めていること、また、その対象人数につきましても平成26年度に向けて増えているという状況で、この授業料減免についてもこういった予算規模を増やしてきているという実態があるというところで御報告をしております。
 また、3ぽつにございますように、これとは別に各法科大学院において独自の奨学金制度を設けている例もございます。例えば、Aのところでございますが、これは法科大学院生に対象を限った形の独自の経済的支援制度を設けている大学が法科大学院のうち60校、全体の82%はそういった法科大学院生のみに対して奨学金制度を設けておりまして、その内訳は給付型奨学金から減免型等々、こちらにバーが書いてあるようなところでそれぞれ工夫をしていただいております。また、Bのところでは、その法科大学院生も利用可能な全学的な奨学金制度を設けているところも74%、54校があるということで報告を頂いておりまして、少なくともこのA若しくはBのどちらかの仕組みを持っているという法科大学院は72校、全体のほぼ100%はそういったものを持っていて進めているということでございます。
 なお、別添、次の3ページ目以降に法科大学院における独自の奨学金制度の例というものを示させていただいておりますので、適宜御参照いただけたらと存じます。
 なお、奨学金の充実につきましては、その時間的コストの軽減、経済的コストの軽減という大きな問題の中で、その充実を図るべきという御指摘も頂いております。そういった中で、現在文部科学省として御説明したような進め方で奨学金や授業料に関する取組を進めているとともに、ほかにも奨学金の在り方がないかということで、他の高度専門職業人養成の分野も調べているところでございます。
 そういった意味で、少し御紹介させていただきたいのが4ページ目以降でございますが、例えば他分野における高度専門職業人養成において、獣医師の世界で行われている事業を御報告したいと存じます。こちらは資料の中ほどに政策目標と書いてある箱の下に内容、1ぽつ、事業内容というところがございます。この(1)を御覧いただけたらと存じます。これは、農林水産省において進められている事業でございまして、産業動物分野等への就業の推進という観点で、丸1番でございます。地域の産業動物獣医師への就業を志す獣医学生を対象として、月額10万円の、また私立大学の場合は12万円を限度とする就学支援金を最長6年間貸与するといった事業を行っているという例があることが分かりましたので、御報告でございました。
 また、次のページを御覧いただけたらと存じます。同じく他分野における高度専門職業人養成として、医師についてでございます。まず上の方に、同じように地域の医師確保を目的とした都道府県枠の設定ということでございますが、現在その地域の医師偏在や、そういった医療過疎地域というものが、各都道府県でも極めて重大な問題となった中で、そういった医師を確保するために、例えば地域枠という、一番上の箱に書いてありますように、各大学の医学部がその地域の医療に従事する明確な意思を持った学生の選抜枠を設けた上で、各都道府県が設定する奨学金の受給があるということが条件となった上で、そういった事業に対して、資料の下段でございますが、現在、平成21年度以降、地域医療再生基金というものが立ち上げられているところでございまして、この基金に国費がそれぞれ補正予算等々の際に、2,350億からずっと投入されている状況がございます。こういった基金の積立ての中から、上の資料にございますように、各都道府県が今のような条件をクリアした中で奨学金を出されている際に、その資金として充当されるといった仕組みもございまして、この中で、月額10万から15万円ぐらい、6年間で1,200万円の貸与をしたときの返還免除の要件として、2ぽつのところでございますように、免許を取得後、下記のような条件で医師となった場合には、貸与期間のおおむね1.5倍、ですから9年間ぐらいの期間従事した場合は、奨学金の返還が免除されるという制度があるということであります。それは、例えば特定の地域の医療機関でありますとか、指定された特定の診療科に行った場合ということでございまして、こういった取組も他の高度専門職業人の分野では行われているということがございましたので、この中教審の場でも御報告をさせていただきました。
 事務局からの資料の説明は以上でございます。よろしくお願い申し上げます。

【井上座長】  
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明について御質問等がありましたら。どうぞ。

【松本委員】  
 ありがとうございました。1点、データについての注意喚起といいますか、配付資料の3-1の29ページ、予備試験合格者等に関するデータ一覧を御覧ください。こちらの29ページの上段の予備試験データの合格者数の欄に、法科大学院在学中という合格者の数字が6名、60名、161名という形で記載がございまして、そのうちの法科大学院3年生の合格者数の内数という位置付けで、5名、54名、157名という形で記載をしておりますところ、注意書きでも記載をしておるところでございますが、この法科大学院在学中の合格者の数は、実態はもっと多い可能性がございます。と、申しますのも、この続き、31ページで縦長の一覧表を付けさせていただいておりますが、例えば、平成23年の真ん中辺の茶色の帯のところで、出願時大学4年生であった人たちの合格者が10名、これは平成24年では25名、更に裏面になりますけれども、平成25年は54名という合格者が出ておりますが、この出願時大学4年生という人たちが、その後予備試験の受験時、あるいは合格時に大学を留年して試験に臨まれているのか、ロースクールに進まれているのか、そこまで事情を把握できておりませんで、この数字を入れてない数字というのが先ほどの一覧の数字でございます。したがいまして、潜在的には、これらの人数が更にそのロースクール在学中の予備試験合格者という形で加わる可能性がございますので、その点御留意願います。
 以上でございます。

【井上座長】  
 ありがとうございました。
 ほかに御質問等ございますでしょうか。
 よろしいですか。それでは、これから御議論をお願いしたいと思いますが、その中でもまた適宜御発言いただければと思います。
 本日、御議論いただく各事項につきましては、これまでに委員の皆様から頂いた御意見等を踏まえて、事務局でこれまで配付した資料について修正を施していただいております。その修正ないし整理を済ませた後の資料の説明を伺って、それに基づいて意見交換をしたいと思います。
 まず、法科大学院と予備試験との関係についてでございますが、これについて説明をお願いします。

【今井専門職大学院室長】  
 失礼いたします。それでは、資料4に基づいて御説明をさせていただきたいと存じます。
 資料4、法科大学院教育と司法試験予備試験との関係について(委員意見の整理案)でございます。前回この資料に基づきまして、各委員の先生方から様々な御指摘を頂いておりますので、その修正箇所を中心に御説明させていただきたいと存じます。
 ページは2ページ目以降でございます。2ぽつ、基本的な考え方というところで御指摘がございましたのは、上から数えて四つ目の白丸でございますが、「奨学金制度や」の後に「授業料減免」といったことも明記をさせていただいたという修正を施しております。あとは文言の修正が若干あるような状況でございました。
 一方、内容に関わる御指摘といたしましては、2ページ目の下段以降にございます(1)、(2)が中心となっております。まず、その(1)の御指摘でございますが、前回会議で御指摘いただきましたのは、その内容について基本的な考え方、若しくは(2)との関係でその構成がよく分かりにくいということがございまして、そこの関係をよく整理して分かりやすくするようにということでございました。そのため、(1)と(2)につきましては、以下のような修正をさせていただいております。まず大きくは三つの黒ぽつに分けさせていただいておりまして、この一つ目の黒ぽつがそれぞれ総論的な意見の整理、そして二つ目が制度的な検討の必要なものについての整理、そして三つ目の黒ぽつが、その制度的な検討と併せて運用上取り得るべき改善の整理ということで、それぞれ(1)と(2)は三つの黒ぽつに整理をさせていただいたところでございます。
 その上で、まず(1)のポイントでございますが、一つ目の黒ぽつにございますように、法科大学院と予備試験のその性格について理念的なところを整理させていただいたところでございます。それを前提に二つ目の黒ぽつでございますが、ここは予備試験の本来の趣旨、若しくは法科大学院の大学院レベルでの正規の教育課程としての位置付けられていることを踏まえた上で、予備試験の受験対象者の範囲について、その制度的な対応を検討していくのが望ましいということでその考え方を整理させていただいているところでございます。また、三つ目の黒ぽつにございますところは、その予備試験の合格者数の扱いにつきまして、昨今、特に実績を上げている法科大学院への影響を与えているということから、早急な対応が求められている状況にあるというということを明記させていただきました。また、現在その法科大学院教育の質向上に向けた改革が進められている中、それが更に加速させる観点からということを明記させていただいた上で、その当面の試験の運用による対応についての検討が望ましいということで文章を整理させていただいたところでございます。
 続きまして、(2)のところでございますが、これは法科大学院教育と予備試験の内容についての記載でございますが、一つ目の黒ぽつは総論的な整理をしておりますが、大きくは二つの内容に分けております。まず、一つ目の黒ぽつの前段につきましては、その法科大学院教育が幅広い学習を求められている点にあるということであります。前回からの御指摘では、その具体的な法曹養成のために必要な指摘として、その高度の専門的な法的知識なり幅広い教養、国際的な素養、豊かな人間性及び職業倫理等を備えた法曹を養成するためというのを明記させていただいた上でその文章の整理をさせていただいております。それで、「また」でつないでおりまして、今度は後段でございますが、こちらにつきましては、前回は二つ目の黒ぽつとして整理していたものをくっつけさせていただきまして、ここでは、特に法科大学院は、制度上、学部教育を前提として適性試験を受け、3年間の教育課程の中で厳格な進級判定、修了認定が行われているということ。また、その一方で予備試験が法律基本科目を中心とした科目による試験によって判定が行われていることで、その両者についてのその同等性について検討していくことが望ましいと考えられるということで整理をさせていただいております。
 二つ目の黒ぽつにございますように、「具体的には」として、その予備試験の科目については、法科大学院教育と密接に関連付けるとともに、試験になじまない科目は、別途法科大学院等で学習させる仕組みの可能性も含め、検討していくことが望ましいということで、その委員の先生方から頂いた意見を整理させていただいたところであります。
 そして、また三つ目の黒ぽつを新設させていただきまして、そういった制度的な対応に関する検討とともに、法科大学院教育との同等性を確保する観点から、予備試験の出題内容を工夫したり、時間をかけて試験を実施したりするなどの運用上の改善策も検討していくことが望ましいと考えられるというところを記載させていただいたところでございます。
 前回からの資料の修正点は以上でございます。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。

【井上座長】  
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明も踏まえまして、御自由に御意見でも御質問でも結構ですので、御発言を願います。
 どうぞ、有信委員。

【有信委員】  
 門外漢なのですけれども、今の全体のデータを含めて資料を見させていただくと、かなり論点が絞られてきてはいますけれども、それ以前にもう少し全体的な観点での問題点というのを少し明確にしておいた方が良いような気がします。
 例えば、今問題になっています予備試験の問題についても、基本的には司法試験の受験資格を与えるための資格試験であるという位置付けで、その論点で物事を考えていくと、機会均等、平等ということで、受験資格の制限についてはネガティブな意見が出てきている。一方で、法制審議会でしたか、もともとのロースクールの基本を作るときの基本理念というのは、多様な背景を持った法曹を養成するということと、それから、ここにも書いてありますようにプロセスとしての法曹養成でなければいけない。つまり、一定程度の教育訓練を経たということを前提にして法曹を養成するということと同時に、法科大学院という制度を設けることによって、他分野というのですかね、法学部以外での教育を受けた人たちへの法曹の道を拡大すると、こういう理念がありました。
 ところが、実際に予備試験の合格者のデータがここにずらっと書いてありますけれども、一番極端な例を言うと、高校卒業資格で合格している人が少数ではあるけれども存在するわけです。これがいけないというわけではなくて、この人たちがどういう背景を持って合格してきたかということをきちんと追跡をした上で議論を進めなければいけないということは分かりますけれども、それにしても、もともとの理念からはかなりかけ離れたところで予備試験が機能していて、これは従来の試験に合格しさえすれば法曹として認めるという、従来の概念に近いところへというか、逆にいうと元に逆戻りしているような印象を受けるわけですね。しかも学部の学生、あるいは法科大学院の学生が予備試験を受けて、それで資格を取って司法試験に臨むということがどんどん増えてくると、これは全くの逆行で、本来の理念から外れてきてしまっているという印象を受けるわけです。
 一方で、例えば医師の国家試験と法曹との比較をすると、医師も予備試験制度というのがあって、それを認める構図にはなっていますけれども、実質的にはほとんど多分機能していないし、一方で、医師に関して言うと、実はまた別な動きがあって、複数の医学部を持つ大学が共同でもっと国際的な要件に沿った形で教育課程を見直すということで、実際には教育認定をやる団体を立ち上げようということで動き始めているわけですね。これの目的は、アメリカの医師の国家試験の受験資格に合うような、そういう教育プログラムをきちんと認定する。一方で日本の医学部の教育プログラムは、それを満たしていないので、医学部の教育カリキュラムは極めて厳しい状況になってきているわけですね。こういう背景がある中で、もう少し本来の理念に戻ったところできちんと主張をしていかないと、個別の方法論だとか議論も重要ですけれども、これで行くと必ず反論というか、できない理由がいっぱい出てくるわけですよね。だからベースの理念をもう少し、もう一度思い起こさせるような前文が必要で、最初の理念は極めてすばらしい理念だったと思いますので、そこは喚起することを常にやっていく必要があるような印象を受けました。
 以上でございます。

【井上座長】  
 ありがとうございます。ただいまの点でも結構ですし、ほかの点でも結構です。
 どうぞ、笠井委員。

【笠井委員】 
 有信委員の御発言とも関連しますが、そのベースの議論について、きっちりとこの委員会における議論した上で、できる限り対外的に表明していくべきであると思います。
 配付していただいた資料3-1、顧問会議に提出された資料抜粋の通し番号で37ページ及び38ページを拝見すると、有信委員がおっしゃったこととの関連で、基本的なベースに基づいた議論、地についた議論が、顧問会議でどの程度されているのか、この資料を見るだけではいささか疑問に思えます。38ページには、司法試験制度の制度的制約についての考え方として、A案ないしD案、四つの案が具体案として示されています。これらの考え方の中身や効果という点も含め、当委員会においてこれまでかなり濃厚な議論がされてきています。ところが、この資料では、極めて簡単に四つの案が1行だけの記述で提示されているのに対し、これに対する再反論がまるで沸騰するかのごとく膨大な量をもって記載されている。これは全く公平でない感じがします。予備試験制度が新しい法曹養成制度及び法科大学院教育の中身にも強い悪影響を及ぼしていることは、この委員会における議論でかなり具体的に指摘されてきたことだと思います。これ対して、38ページの右側の再反論的な意見は、法科大学院教育の良い点をどれだけきちんと捉え得ているのか、認識にかなり欠落があると思います。それらのことも含めて、資料の右側と左側の意見の整理について、よくよくベースラインに立ってきちんと議論をしていくということが必要であると思います。

【井上座長】  
 ほかの方はいかがでしょうか。
 どうぞ、山本委員。

【山本委員】  
 私、前回欠席をしたのですが、今の有信委員と笠井委員と全く同じ感想を持ちました。この個々の資料の個々の議論について反論とか議論をしても余り意味はないのかと思うのですけれども、先ほどの資料の37ページの、私が一番気になったのは、この37ページの右側の一番下の囲みのところのぽつで指摘されている、つまりこの予備試験というのは、法科大学院修了者と同程度の学識能力の有無を判定するということが、結局は司法試験受験資格を付与するという目的に収れんされて、予備試験合格者の7割が司法試験に合格しているのだから、予備試験は適切に運用されていると、このロジックが私は非常に問題ではないかと思っています。
 先ほどから御指摘があるように、今回の司法制度改革審議会の提起した法曹養成というのは、プロセスとしての法曹養成であって、法科大学院での教育の中で様々な多様な知見、能力等を獲得していきながら、最後に司法試験で、その一部について確認をして法曹資格を与えると、そういうことではなかったかと思っているわけですが、このロジックですと、結局その予備試験は司法試験の受験資格を与え、そして予備試験合格者が司法試験にいっぱい通れば予備試験としては成功しているのだという、全く点としての法曹選抜という、旧司法試験の感覚に戻ったような論理構成がとられていて、このことが結局予備試験の資格制限というのも、その資格というのは均等に与えられるべきであるとか、あるいは、予備試験の試験科目についても現状で問題ないのだから、それを変える立法事実はないというような指摘に反映していっているように思います。ですから、私はこういう議論が、少なくとも現行の司法試験法あるいは連携法が求めている法曹養成の在り方というものとは基本的には整合しないという指摘が必要ではなかろうかと思っております。
 それから、38ページのこの具体的な案としてA案からD案、ここも笠井さんが言われたように、何で左側だけ1行になっているのかというのは私も気になるところではありますが、私が言いたいのは、この捉え方として、これはA案からD案まで並列に書かれていますけれども、私の認識では、このA案からC案というものとD案というのはやや性格が違っていて、A案からC案というのは、法科大学院というのが法曹養成のメーンルートであるということを前提に、その例外を認めるためにどういう要件が必要なのかという議論の立て方の問題類型なのかなと思うのに対して、D案というのは、法科大学院の修了者と予備試験の合格者が能力的に均等になるためにどういう措置というか要件が必要なのかという問題の立て方で、少しというか視点が違うのだろうと思います。そういう意味では、A案からC案までというのとD案というのは、本来両立することで、例えばA案からC案までの形で受験資格を制限したとしても、その後行う予備試験についてはD案の改革も必要であるということは、当然言えることであると私自身は認識しています。ですから、そういう意味では、この問題の立て方、先ほどの配付の資料4の(1)とか(2)の問題設定というのは、私は正しいように思いますので、その点も更に強調していく必要があるのかなと思いました。
 以上です。

【井上座長】  
 ありがとうございました。

【松本委員】  
 1点、お願いします。

【井上座長】  
 どうぞ。

【松本委員】  
 資料38ページの、どうして1行だけなのかという、これについて少し釈明をさせてください。
 もちろん顧問会議の場では、それぞれの案について非常に幅広な案であると。特に、C案というのは比較的単純な位置付けなのですけれども、A案の資力要件とか社会人要件についていろいろな考え方があるというところは御説明をしているところでございます。また、B案の一定年齢以上というところも、その年齢の設定の仕方について、考え方によっていろいろな御意見があるというところも御紹介させていただいているところでございます。さらに、先ほど山本先生から御指摘がありましたD案というものが少し性質の異なるものだというところも御説明をしているところでございます。その上で、制度的制約、これがA案からC案、あるいはD案に尽きるものではございません。例えば予備試験の受験資格を極めて限定的なものにして、ロースクールに基本的に行ってもらうような御意見もございまして、このような様々なものにつきましても御紹介をさせていただいているというのは顧問会議での現状でございます。
 以上でございます。

【井上座長】  
 確認ですけれども、これは推進室で用意されて顧問会議に提出された資料ということですよね。

【松本委員】  
 そのとおりでございます。

【井上座長】  
 顧問会議の意見がこうだというわけではないということですね。

【松本委員】  
 そのとおりでございます。

【井上座長】  
 どうぞ。

【土井委員】  
 松本委員からの御説明も伺いましたし、今の点は確認しましたけれども、ただ、その顧問会議というのがどういう位置付けなのかという問題はあるかとは思いますが、私が例えば顧問会議の顧問でこの資料を見せられて何を議論するのだと言われると、慎重な立場からの反論だけがざっと並んでいて、これに基づいて御議論をと言われたら慎重にならざるを得ないという感じもします。それが今後の、例えば、まさにこのペーパーは我々の議論している意味に関わってくると思うので、資料を読んで議論をしていますが、これを議論して、きちっと審議会として意思表明をしていくということになれば、きちっと取り合っていただけるのか。それとももうここに示されていることで実際上の方向性は出ていて、こうなのだというペーパーなのか、一体このペーパーはどういう御趣旨で作成をされたのかという点だけ伺わせていただけますでしょうか。

【松本委員】  
 ありがとうございます。推進室がこの37ページでいいますと右側の立場なのだという趣旨ではございません。いろいろと政治の場でもこの議論がされている中で、予備試験制度が問題だという方もいらっしゃいますが、いや、そうではないのだというまた強い意見もございます。そういうところを推進室として整理をしたというところで、右側に書かれているところに持っていってその議論を封じようという趣旨ではございません。顧問会議におきましてもいろいろなその制約の御意見が出ておりますし、またこの場でも皆様の御意見をいろいろとお聞かせいただければというところが推進室の立場でございます。

【井上座長】  
 ここを含め、いろいろなところでの意見は左側の欄にも随時盛り込んでいただけるということかなと理解しました。
 座長の立場からちょっと離れて発言させていただきますと、私はこの制度を作ったときの推進本部の検討会議のメンバーでしたけれども、少なくともそのときの議論に照らすと、立法事実論というのは違和感がありますというのも、そのときの前提として、この制度は飽くまで法科大学院を中核とする新しい法曹養成制度の例外的措置であり、その新たな法曹養成の仕組みにうまく乗れない人との関係で手当をするのだという位置付けであった。しかも、審議会の報告書にあるように、この制度をバイパス化させないようにするということも重要な確認事項でした。そういうものにならないようなものであることを前提に、司法試験法の改正行われたはずなのですね。そうだとすると、想定していたのとは違う事態が生じた場合に、それを本来的なものに直す必要があるわけで、これこそ立法事実なのではないかと思うのです。ですから、そのことを度外視して、法改正を必要とする立法事実を示せというのは、筋違いではないかと思うということだけ、申し上げておきたいといます。
 ほかの方,いかがでしょうか。どうぞ。

【椎橋委員】  
 今の座長の御指摘、まさにその通りであると思いました。
 そこで、今日の資料3-1の29ページにも数字として現れておりますけれども、予備試験の志願者とか合格者が最も増えているのは、ロースクールの在学生とその志願者ということになると思います。そういう意味で、予備試験の現状は、最初考えたときの制度趣旨とは大きく事情が変わってきていることがかなりはっきりしているのだろうと思います。
 それは、ある意味では、当然のことと言えば当然の結果だと思います。新制度では、法科大学院の修了生に司法試験の受験資格を与えるところ、法科大学院の修了生と同じレベルにあることを確認する試験をやって、それに通った人に司法試験の受験資格を与えるということですから、法科大学院の学生はまさに司法試験の受験資格を得るために体系的に学修をしている中で、1年早くその資格を得ようということで予備試験を受けるというのが現実なので、法科大学院在学生が予備試験に合格するのは、ある意味では当たり前とも考えられます。そういう結果が出ていて、法科大学院へ行けなかった人が予備試験を受けて、そして司法試験の資格を得るということとは、全然違った姿になっているということで、我々は、教育の現場にいる者として危惧を抱いております。
 それでは、この予備試験をどうやって制約するかという考えについてですが、38ページのC案とD案、先ほど山本委員からD案というのは他の案と性格が少し違うのではないかという御指摘、正しい御指摘だと思うのですけれども、現実的に考えてみれば、法科大学院の在学生の志願者、合格者がかなり多くなっている状況から考えると、C案というのは有効ではないかと思います。C案に対する反論というのも、志願者の減少に結び付くおそれがあって、果たしてこれが実証されているのかどうかというのは分かりませんし、他の理由についても説得的でないような気がしますので、このC案、A案、B案ともにむしろ正論ともいえ、検討に値するのですけれども、要件や基準の設定に難しさがある反面、C案は現実的かつ効果的と思われ、加えてD案というのも併せて考えるということであれば、一番無理のない考え方だなと今の時点で私はそう考えておりますので、意見として申し上げておきます。

【井上座長】  
 ほかの方はいかがでしょうか。
 どうぞ、笠井委員。

【笠井委員】  
 やはり38ページの関係ですが、右側の一番上の四角と2番目の四角に、いずれも予備試験を制約することは、職業選択の自由の観点から問題がある、職業選択の自由に対する過度な制約となるおそれがあるとの議論が紹介されています。過度の制約となるおそれがあるという記述は、一定の年齢以上であることを予備試験の受験資格とする案に対する意見としての記載ですが、事務局からの御紹介もあったように、医師資格制度には予備試験制度があり、それは外国の医師免許を持っていること等を一定の要件としていると資料から読み取れます。そのほか、予備的なルートを通じて医師免許を取得する場合にも、医療に従事していること等が要件となっているようですから、このような受験資格を設けることが右側の職業選択の自由に対する過度な制約になる、あるいは不合理な制約になるという意見は、どうもよく理解できません。そこで、土井先生に憲法学者としての意見を伺っておきたいのですが、いかがなものでしょうか。

【井上座長】  
 法科大学院制度を作って、その修了者にいわば排他的に司法試験の受験資格を与えることを検討したときも同じような議論がありました。それは職業選択の自由を不当に制限するものではないかということが反対論者から主張されたのですが、しかし、高度な専門職に就くためには、一定の求められる要件、資格というものがあるはずで、それを身につけさせるのにふさわしい制度を設けるわけですから、当然それに伴う制限というものもあるはずで、それは不合理ではないというのが大方の意見であったと思います。医師のことを考えてみれば容易に分かるはずなのですが。その議論がこの予備試験のところにまた登場したというのが正直なところです。

【土井委員】  
 精緻に検討をした結果というわけではございませんが、印象から申し上げますと、職業選択の自由に関わると言われると、それはそのとおりだとは思いますが、過度な制約で必ず違憲なのだと言われると、いや、それはそうではないだろうとは思います。
 被選挙権の話だとか、国家公務員の任用の話だとかも例として挙げていますが、我が国の法制度上、年齢を一つの能力あるいは経験の指標に使うこと自体が直ちに排されているわけではありません。多くの場合は、学歴と結び付いて年齢が事実上想定される部分もたくさんあります。医学部はもう明らかにそうですし、あるいはほかの専門職でも高卒程度、あるいは大卒程度というのを原則にして取り扱っているというのもあります。そのかわりに、例えば建築士などであったら実務経験が何年必要かといったものも付されているわけで、その人のものがおよそ駄目なんだと、必ず全ての人が受験できて、そうでなければ違憲なのだという話ではないと思います。
 特に笠井委員がおっしゃったように、また井上座長がおっしゃったように、専門職というのは、能力を高く要求されるというわけですから、その能力を要求するというのは当然憲法上も認められるわけですし、それから、そもそも法科大学院という形で大学院課程に法曹養成課程を置いたというときには、その人としての成熟の問題等は想定されたと思います。当然依頼人は自分の話をきっちり聞いてもらえると思って行くわけですので、そこで18歳の弁護士を想定しても、それはどうなのかというのが社会的にもあるだろうと。であれば、いろいろな経験をしてもらって、それなりの年齢になって実際の職に就くというのが予定されるのだろうと、そうした議論があったわけで、それが全部不合理だとは私は思えませんので、一憲法学者としては、直ちにこれで憲法違反なのだという立場では私はないということです。

【井上座長】   
 ほかに御意見は、どうぞ、松本委員。

【松本委員】  
 教えていただきたいのですけれども、38ページの内容がいろいろ取り上げられておりますが、推進室の認識といたしましても、この制度的な、特に受験資格制限につきましてどういう姿が良いのかというのは様々な意見があり、問題状況があるというところについては、基本おおむね一致はされているのですが、どこを問題状況と捉えて、それに対してどのように対応するのかというところにつきましては、人によって様々な御意見があると認識しております。
 今日、例えば椎橋先生から、ここで言うところのC案、ロースクール生の受験禁止というのが効果的ではないかのかという御指摘を頂いたところでございますが、皆様方はどのようにこの制度的制約を考えておられるのか。
 特に今日資料として出ております6ロースクールからの意見書、これは資料の3-2の4ページの本文になりますが、ここでも「予備試験の受験資格についても見直しを行うべきである」という記載がございまして、その内容といいますのが、「実社会での経験等により、法科大学院における教育に対置しうる資質・能力が備わっているかを適切に審査するような機会を設ける」、これは意見書の引用でございますが、などして、「経済的な事情や、既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者」、これも意見書の引用でございますが、に受験資格を限定するという御提案をされているところでございますが、この中身が分からなくて我々もいろいろな議論をしているというところですけれども、まさにこの6ロースクールに所属しておられる先生方もいらっしゃいますので、具体的にどのような制約を必要と考えているのかというところも併せて是非教えていただければ、またそれを顧問会議に持ち帰って御紹介をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【井上座長】  
 ここに委員として出られている方は、この6つの機関を代表しているわけではありませんので、あくまでも法科大学院に身を置く一教員としてどんな感じを持っているのか、そういうお尋ねとして受け取らせていただきます。
 もし御意見があれば伺いたいと思いますけれども。どうぞ。

【土井委員】  
 これもこの大学に属している一教授としての意見でしかございませんが。要旨の方で今御指摘になっているのですけれども、本文を御覧になっていただければ、4ページの上から3行目、「第二に」というところがその要旨の今御指摘の部分に当たっていて、予備試験を本来の趣旨に即したものにするには、意見書が引いてあるなどして、経済的事情や、既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由に、法科大学院を経由しない者に受験資格を限定する措置を検討することが必要であると書いてあるわけですから、基本的には、A案が想定されていると読むのが自然だと思います。特にB案、C案には触れてはいないと解釈できると思います。D案は第一の方で触れてありますので、だからA案とD案を併用することが考えられるという趣旨のものではないかと私は読めます。

【井上座長】  
 少し「等」という含みがあるので、ほかのB案とC案を排除していると、そこまで読めるかどうかは分かりませんけれども、表に出ているのは、今、土井委員が言われたようなこととは思いますね。
 ほかの方はいかがでしょうか。どうぞ。

【樫見委員】  
 必ずしも松本委員のことに関連したことではないのですが、1点は、まず予備試験についていただいた資料の3-1の5ページ、これは平成14年の段階ですから、制度設計のときに千葉景子さんから今回問題にしている点が提起されております。それに対する政府側の答弁では、法科大学院へ行く場合には、自分の将来というものを長い目で見て、人間の幅とか倫理、賢明な受験生なら十分にその法科大学院ルートへ行くのであって、そのアンダーラインの引いてある下の方で、実務家の方も教員となりましてきっちりとした教育をしていくことでございまして、そういう将来のことを考えれば、予備のルートである予備試験ルート、こちらへ流れ込むということはないと、つまり当時はそう考えていたと。この問題意識がまさに今そうなっていて、現実に流れ込んでいるということでありますから、このときには、受験資格については、そもそも当時恐らく想定されていたのは、先ほどお話がありました医師の場合の予備のルートのことも想定されていたのかと思いますけれども、そうしますと、この段階ではそんなに人は行かないだろうと、だから受験資格についてもそれほど厳格に考えることはないだろうし、そもそもどういうことで区切るのかということも難しいということはあったかと思います。
 こういう前提で考えますと、現在非常に流れ込んでいる、予備ルートが使われるということを考えると、当時の前提とされた事実を踏まえて、今は全くそれが通用しないのであれば、新たな政策決定をしなければいけないだろうという点が1点です。
 それから、先ほどから問題になっております38ページのところの案の点ですが、予備試験のA案のところで、資力要件・社会人経験要件を設けるというこの案なのですが、現在、法科大学院におきましても社会人枠ということで、多様な人材に入ってほしいということで、法科大学院自体がこの社会人要件を入れて、これに合致すると例えば優先枠で、平成19年とか非常にたくさんの方が受けられたときには、社会人の方を特に優先するという考え方があったわけです。ところが、受験資格を設けるときに、就業体験とかそういうことを現実には入れられなくて、年齢で結局入れざるを得なかったというところがありますので、ここに資力要件、資力要件につきましても、例えば授業料免除であるとかそういった点を考えると、この二つの要件というのは、なかなか受験資格を区切るための要件としては余り機能しないのではないか。あるいは、非常に認定には手間が掛かると考えております。なので、私自身は、先ほどからお話がありましたように、専門職の一定の資格であるということと、年齢といった面は様々なバックグラウンドを占めていることとほぼ対応関係にあるだろうと。とすれば、B案というのは、十分考えることのできる要件だと思っております。
 それから、D案のところなのですが、予備試験の試験科目ということに加えて、予備試験の受験者は適性試験を課されてないわけですよね。本来適性試験は、法曹になるためには、様々な能力が必要であると。それを判定するために適性試験というのは、法科大学院入学者については必ず備えなければいけないと言われているにもかかわらず、なぜ予備試験の受験者にこの適性試験が課されていないのか。これこそ不平等ではないかと。専門試験の方は、それは確かに分かるのですが、この試験科目の中になぜ必須で適性試験のところが言及されていないのかというのが私自身は疑問に感じておりました。
 以上でございます。

【井上座長】  
 ありがとうございました。
 まだほかにも議事がありますので、そろそろこの点での議論を終わりにしなければばらないということをお考えの上で御発言をいただければと思います。
 では、日吉委員。

【日吉委員】  
 手短に。資料4の委員意見の整理案について1点と、あと38ページについて一つだけ申し上げたいと思います。
 資料4ですが、大分事務局の方で工夫してまとめていただいたと思っているのですが、私の意見としては、先ほど資料1の方で御報告があったように、何事も制度的に何かをいじる、あるいは効果を期待するには時間が掛かるということを考えますと、この制度的な見直しと、その運用による対応というのをフラットに言及されているようにここからは読めるのですけれども、もう少し、早急な対応と言っている以上は、直ちに制度的な見直しの検討に着手する必要性というところと、その制度的な見直しが実際その慎重な検討を経て入れられるまでの間の運用的な工夫というような、ある種段階的な提言というものを入れた方が良いのではないかなとは個人的には感じました。
 それから、38ページの御意見がいろいろ出ているところなのですが、私もA案は実際の要件の設定の仕方とその認定が非常に実際の問題として難しいのではないかと思っておりまして、この中で言うとB案が、例えばロースクールもプロセスとしての教育課程を入れ込むことによって実質的に間接的な制約というのでしょうか、学部を出て2年か3年、純粋未修者ですと実際は4年ぐらい掛かって司法試験を受けているという実態を踏まえれば、一定の年齢以上とすることを要件に入れることも決して不合理ではないと思いますし、これでしたら要件としての設定の仕方も認定も比較的容易であるという意味で、実現性が高いのはB案ではないかなと思っております。
 ただ、B案だけというのではなくて、これはいろいろなメリット・デメリットをそれこそ早急に検討に着手をしていただいて御検討いただく必要はあるのでしょうけれども、場合によっては、もちろんB案とC案、あるいはB案とほかの案を併用する。そしてその上で今度は、内容については、つまり同等性の確保については、これはD案だけではないと思うのですけれども、また別個の要件というのを課すということは十分可能性があるのではないかと思っております。
 以上です。

【井上座長】  
 ありがとうございました。
 では、磯村委員。

【磯村委員】  
 重なっているところがあるかもしれませんが、短く申し上げますと、結局法科大学院制度が法曹養成の中核機関であるというところをどこまで認識するかという問題に帰着するところがあって、例えば法学部の段階では、そもそも法科大学院にまだ進学することができない年齢であり、そのような学部学生が法科大学院以外のルートを通って司法試験に合格することができるという仕組み自体が、制度の出発点において整合性がないのではないかというのが大きな問題です。司法制度改革のときに、なぜ大学院に法曹養成のための教育機関を置いたかということに立ち戻って考えると、ある程度の人間の成熟の必要性とか、そういうものが考えられていたのではないかと思います。その趣旨からすると、例えば法科大学院の在学生だけに受験資格を認めないという仕組みでは、十分ではないというのは私の認識の出発点にあります。
 それから、もう1点だけ、ここの38ページ等の反論等で掲げられているところの全体のトーンが、要するに変革を認めるべきではないという立場を前提とすれば全部ありうる議論なのですけれども、これらの内容が一つ一つ説得的かというと、先ほど椎橋委員がおっしゃったように、こういう制限を認めるとこういうおそれがあるというだけで、反論可能性が極めて低い抽象論のレベルで議論され、要するにどちらかよく分からない以上、制度を変えるべきではないということになりかねないので、そこは是非議論の立て方としてそれでいいのかを検討をしていただきたいと思います。
 以上です。

【井上座長】  
 ありがとうございます。
 どうぞ、鎌田委員。

【鎌田委員】  
 受験資格制限のうち、社会経験について、前にも申し上げているのですけれども、社会人としての生活を長くしていれば法科大学院教育を修了したのと同等の学識ができるわけではないので、そうなると、単に社会経験があるのではなくて、法科大学院教育を修了したものと同等の学識を有したと認められる社会経験を要求する。税理士試験も一定の実務経験を要件にしていますし、司法試験合格後も司法修習の免除要件は一定の職業要件があるので、そういう観点から資格要件を設定するということは可能ではないだろうかと思います。
 それから、B案との関係で適性試験のお話もありましたけれども、単に適性試験をスルーできるだけではなくて、原則として適性試験の下位15%は法科大学院に入れないのですけれども、適性試験で下位15%だったら予備試験を受ければいいというのは、これは明らかに制度間の矛盾がありますし、法科大学院での選択必修科目を予備試験はスルーできるというのも制度間の矛盾があります。それと何度も申し上げていますけれども、法科大学院で1科目単位を取ろうとすると長い授業とその間の議論と、それから何度かの試験を経なければならない。こういうものに相当するような予備試験にしてもらわないといけない。はるかに期間も短いし労力もかからない道を用意しておけば、そっちがバイパスになることは目に見えているわけで、言い方は悪いのですけれども、ロースクールへ行った方がよっぽど楽だというような試験にしない限りは、そちらに流れ込むのは食いとめられない。そういう意味で私は、試験の科目とか、試験の方法、内容、こういうものについては、大いに工夫の余地がある。現在の予備試験というのは、いみじくも37ページに書いてあるように、司法試験に通れる能力を備えることだけが法曹養成の教育の目的であるという前提でやられているわけで、そういう方向で今の法科大学院教育自体も動かされている。予備試験制度の法科大学院教育への悪影響は明らかでないと言いますけれども、それが一番悪影響中の悪影響だろうと思っていますので、そういう観点からも予備試験の在り方を是非見直す方向で検討を進めていただきたいと思っております。

【松本委員】  
 すみません、1点だけよろしいですか。

【井上座長】  
 どうぞ。

【松本委員】  
 ありがとうございます。いろいろ御意見を頂きましたので、推進室にまた持ち帰って顧問会議の議論にも反映させていただければと思います。
 すみません、1点だけ、私の理解が不十分かも分からないのですけれども、先ほど鎌田先生から、社会人要件のところにつきまして、その何例か挙げられて御指摘がございましたが、もともとのその制度設計のときのお考え方でそういう考え方もあったのかなと思うのですが、現状、一定の枠がはめられていない社会人の方々について、何か問題があるというふうに我々は感じていないところでございまして、学部生とかロースクール生の受験者、合格者が現れていることについては強く認識をしておるのですけれども、その辺も理念に立ち返って制約を課す必要があるというような問題意識と理解してよろしいのでしょうか。

【鎌田委員】  
 私は、A案的なものが最善かどうかということについては、むしろD案を基本に考えた方が現実性はあると思っているですけれども、しかし、理念に照らして言えば、これも制度間矛盾なのだと思います。法科大学院教育を経ることが最善の法曹養成の方法だと言いながら、法科大学院教育に匹敵するものは全く要求されない予備試験があるというのはおかしい。法科大学院教育を経なくてもいいだけの内容を持った実務経験を積んでいるから免除するというのは、税理士試験もそうですし、医師の予備試験もほかの国で医師免許を持っているから我が国での医学部教育を免除しても足りるという、内容における相当性があるから教育を免除している。これが本来の制度の在り方なので、今になってもともとの理念に立ち返って作り直せるかという、そういう問題点はあるかもしれませんけれども、私の視点は今申し上げたようなことです。

【井上座長】  
 この点についての本日の議論はこの程度とさせていただきたいと思いますが、よろしいですか。
 続きまして、法律実務基礎教育及び法科大学院の継続教育機関としての役割の充実について、これも資料を用意していただいていますので、できるだけ簡潔に御説明いただきたいと思います。

【今井専門職大学院室長】  
 失礼いたします。それでは、資料5に基づいて御説明させていただきたいと存じます。
 資料5、法律実務基礎教育及び法科大学院の継続教育機関としての役割の充実に関する論点整理案を御説明させていただきます。前回御説明したものから修正した箇所についてポイントを絞って御説明いたします。
 まず、1ページ目の二つ目の白丸、1ぽつの二つ目の白丸につきまして少しそこの修正をさせていただいているところでございます。ここは、基本的には現状の指摘、現状どういうふうに行われているかを明記したところであります。すなわち、実際はほぼ全ての法科大学院において、現在共通的な到達目標モデルを踏まえて、法律実務基礎科目に関する到達目標が定められる方向にあるということ、また、全ての法科大学院において体験的な法律実務基礎科目が実施されているということがあるという確認でございます。
 ただ、三つ目の白丸として、「しかしながら」としておりますが、法律実務基礎科目は極めて重要な科目であるということから、その教育内容の充実を図るために法科大学院の創意工夫を促し、こういった以下のような取組をしていく必要があるということで、二つ目、三つ目を整理し直させていただいたところでございます。
 具体的な方策例につきまして若干修正をしておりますので、例えば、二つ目の黒ぽつでございますが、これは前回もFDのことは少し触れておりましたが、例えばその後、「FD活動の推進とともに」の後でございますが、「指導科目や内容に応じた法曹からの実務家教員による適切な役割分担」の下、実施するということを明記させていただいたところでございます。
 続きまして、2ぽつの法科大学院の継続教育機関としての役割の充実についての修正箇所について御紹介をいたします。2ページ目を御覧いただけたらと存じますが、2ページ目の2ぽつの二つ目の白丸でございます。ここで2行目から3行目にかけてですが、「知的財産や中小企業の海外進出支援等をはじめとした法曹有資格者の戦略的な活用が課題となる中」というものを追記させていただいております。その上で、その後に「法科大学院が社会のニーズを的確に把握し」を追記させていただいたところであります。
 また、具体的な方策例のところにつきましても修正をいろいろさせていただいております。ここは、一つ目の黒ぽつにございますように、ここは「企業法務に深い知見を有する法曹有資格者を実務家教員として招聘(しょうへい)するなど、企業等のニーズの的確な把握」をしていくということでございます。
 また、二つ目の黒ぽつは、企業における活動領域を視野に入れた講座等の開設・提供で、特にビジネスローや外国法などといったものを明記したところでございます。
 また、三つ目の黒ぽつでございますが、その法科大学院の教育の持つ教育資源、これを活用した研修プログラムの展開、若しくは企業や地方公共団体のニーズを踏まえた講座開設・提供等ということで、地域社会に対しての高度人材供給を通じた貢献をしていくということを明記させていただいたところでございます。
 そして最後に、新規でございますが、「各法科大学院が実施している継続教育に関する情報の積極的な発信」ということで整理をさせていただいたところであります。
 以上、前回からの資料の修正点は以上でございます。御審議のほど、よろしくお願いします。

【井上座長】  
 今御説明していただいたとおりですけれども、御意見等がございましたらお伺いしたいと思います。
 どうぞ。

【笠井委員】  
 内容ではないのですけれども、表現と文意だけなのですが、1ページの最後の黒ぽつ、「臨床科目等の実務基礎教育の充実に向けた、実務修習との関係や連続性についての更なる配慮」というのは、これは前の文節と後ろを入れ替えた方が良いのではないですかね。よく分からない。実務修習との関係や連続性について更に考慮した上で、これを配慮した臨床科目等の実務基礎教育の充実が具体的方策なのではないかと思いますので。

【井上座長】  
 その点は工夫させていただきます。
 ほかに。どうぞ。

【鎌田委員】  
 継続教育の方ですけれども、実際に量的にどれぐらいのニーズがあるのかは分かりませんけれども、我々が接した中では、こういうふうに最先端の実務を法科大学院に行って教えてもらうということもあるのかもしれませんけれども、逆にもう少ししっかりした理論的な基礎付けを学び直したいという、こういうニーズもお持ちであります。その側面がなくて実務に追い付けということばかりが上がっているような印象を受けましたので、工夫をしていただければと思います。

【井上座長】  
 分かりました。ありがとうございます。
 ほかによろしいですか。どうぞ。

【樫見委員】  
 ここに直接書かれているのではないのですが、1ページの具体的な方策例というところで、二つ目の黒ぽつで、ここが問題になるかと思うのですが、実は来年、強化策のところで、入学定員が少ない法科大学院については、検察官や裁判官の派遣についてはできないという方策があって、それは確か入学定員が10人未満ですか、基準が今すぐ出てこないのですが、一定の国のお金を用いて派遣をするわけでありますから、そういう観点で考えれば、検察官あるいは裁判官の派遣というのが制限されるということは合理性を持っているとは思うのですが、逆に上の科目における法曹倫理、これは弁護士、それから裁判官、検察官、それぞれの立場における、共通したものも当然ございますけれども、それぞれにおけるその倫理というのもあって、その点、弁護士の中には裁判官なり検察官の御経験のある弁護士もいらっしゃいますが、そういう弁護士において講義をしていただけないという場合には、法曹倫理の実施というのが非常に困難な事態も予想されるわけです。法科大学院における実務教育の中で突出してこの法曹倫理というのが従来重要なものだと考えられるのですけれども、その点について制度的なものと少し矛盾をするのかなと。どうして欲しいというのはなかなか言い難(にく)いのですが、お考えいただきたいなという点がございます。

【井上座長】  
 それはこの具体的な方策自体ではなくて・・・。

【樫見委員】  
 その実施のための。

【井上座長】  
 そこで足りなくなってきた部分をどうやって補うのかという話だろうと思いますので、御意見として伺っておきます。
 ほかになければ次に進みたいのですけれども、よろしいでしょうか。
 それでは、もう一つの資料ですが、飛び入学等を活用した法曹養成のための教育期間短縮と、もう一つ、法科大学院における司法試験に関連する指導方法等、これをまとめて御説明をお願いできればと思います。

【今井専門職大学院室長】  
 失礼いたします。資料6、それから資料7を両方御覧いただけたらと存じます。資料6につきましては、飛び入学等を活用した法曹養成のための教育期間短縮の考え方の案、それから、資料7につきましては、法科大学院における司法試験に関連する指導方法等の具体的な取組についての案でございます。
 ただ、なおこの二つの資料につきましては、これまで大変しっかりと御議論を頂いてきたところもございまして、資料6については、大きな修正点というのは、前回からはございません。資料7につきまして、若干前回御指摘を頂いた点について御報告をさせていただきたいと存じます。
 前回、資料7の3ページ目以降から、その具体的な取扱いの考え方の例示がある中、4ページ目でございますけれども、その遵守事項に従ってという、その括弧書きの中の※のものがございました。この遵守事項というものが一体その3ページ目以降の(1)のどこに該当するのかというところについての御質問があって、その場ではお答えできなかったのですが、本日は、その遵守事項について机上配付資料という形で紙1枚置かせていただいておりますので、そちらをベースに御説明をさせていただきますと、この司法試験委員会ので決定をされている司法試験考査委員の遵守事項というものがございます。それにつきまして、冒頭に、「司法試験考査委員は、秘密の漏えいはもとより、試験の公正さに疑念を抱かせかねない行動をとることのないよう、十分に留意するとともに、以下の事項を遵守する」ということがございまして、以下4点その遵守事項が上がっております。
 ただ、1番、2番、3番につきましては、それぞれ、例えば1番であれば、問題作成に従事する考査委員について、その期間を明記して、例えば任命された日から翌年3月31日までの間であったりとか、任命の翌年4月1日から司法試験の実施が終わるまでの間であったりといったような期限が付されています。また、2番につきましても同じように、任命から試験が終了するまでの間という期限付でございまして、3番は任期中となっております。なので、この期間については、この1番から2番、3番については、その期間中に守らなければいけないということでありますが、恐らくポイントになりますのは4番目の遵守事項でございまして、「任期中及び任期後にわたり」となっておりますので、任期後、任期が切れた後も、これは遵守事項としてかかっているとなっております。なので、その順守事項を読み上げさせていただきますと、「考査委員として問題作成・採点等に従事した司法試験の論文式試験について、その解答作成方法を指導したり、作成された解答を採点・添削指導したりすることはしない」というふうになっております。あと、「また」以下は留意事項ということでございますので、この点につきましては、先ほどの3番、(1)の授業内とか授業外を含めてこの4番については該当してくると考えるものだと認識をしておるところでございます。
 前回の宿題につきましての御回答を含めて、資料6、7についての説明は以上でございます。

【井上座長】  
 ありがとうございました。
 ただいまの御説明のとおり、これらの項目については、これまでも御議論を頂きまして、ほぼおおむね一定の共通認識を得るところまで来ているのかなと思いますので、更に特段の御意見、御質問等があればお伺いしますけれども、なければ本委員会としての考え方を整理したものとして扱わせていただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
 よろしいですか。それでは、そのようにさせていただきます。
 以上、御意見をお伺いした点で、今日配付されたものについて修正すべき点があればまた事務局で適切に修正していただきたいと思います。
 それでは、本日予定した議事は以上でございます。
 次回以降は、政府全体の検討状況も注視しながら、法科大学院教育の総合的な改善方策に向けて御意見等を整理しながら議論していきたいと思いますので、事務局ではその準備をまたお願いしたいと思います。
 今後の日程等について御説明をいただけますか。

【今井専門職大学院室長】  
 失礼いたします。次回の日程につきましては、この7月の中旬の開催を御連絡させていただいているところでありますが、正式に決まりましたら改めて事務局より御連絡を申し上げたいと存じます。

【井上座長】  
 それでは、これで本日の会議を終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

お問合せ先

高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

(高等教育局専門教育課専門職大学院室)