法科大学院特別委員会(第60回) 議事録

1.日時

平成26年2月24日(月曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

三田共用会議所3階 大会議室

3.議題

  1. 法科大学院の改善状況調査について
  2. 法科大学院教育の改善・充実について
  3. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)有信睦弘、井上正仁、土井真一の各委員
(専門委員)磯村保、笠井治、樫見由美子、鎌田薫、木村光江、椎橋隆幸、杉山忠昭、田中成明、土屋美明、長谷部由起子、日吉由美子、松下淳一、松本裕、山本和彦の各委員

文部科学省

吉田高等教育局長、中岡高等教育局審議官、牛尾専門教育課長、今井専門職大学院室長、佐藤専門教育課課長補佐

5.議事録

【井上座長】
  所定の時刻ですので、第60回の中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会を開催させていただきます。
 最初に、事務局から配付資料の確認をしていただきたいと思います。

【今井専門職大学院室長】
 それでは、失礼いたします。配付資料の確認をさせていただきたいと存じます。
 議事次第の中ほど、配付資料でございますが、資料1、第59回議事録の案を用意させていただいております。内容を御確認いただきまして、御意見等ございましたら、事務局までお申し出いただけたらと存じます。続きまして資料2、各法科大学院の改善状況調査に係る調査結果報告でございます。資料3、司法試験予備試験に関するアンケート調査回答結果(概要)でございます。資料4、内閣官房法曹養成制度改革推進室提供資料でございます。最後に資料5、今後検討すべき法科大学院教育の改善・充実に向けた論点整理(案)を用意させていただいたところでございます。そのほか机上配付資料等でございますが、もしお手元の資料で不足分等ございましたら、事務局までお申し出いただきたいと思います。以上でございます。

【井上座長】
 それでは、議事に入りたいと思います。法科大学院教育の質の向上に関する改善状況調査ワーキング・グループには、平成25年の司法試験の結果を踏まえまして、各法科大学院における教育の改善状況について調査を実施していただいてきました。熱心に調査・審議いただいた結果、一定の結論が得られたということですので、本日はワーキング・グループの主査である田中委員より、各法科大学院における教育の改善状況に関する調査結果について御報告をお願いしたいと思います。
 
【田中座長代理】
 ワーキング・グループの主査を務めております田中でございます。
 このワーキング・グループは、平成21年4月17日の法科大学院特別委員会の報告を踏まえて、各法科大学院の協力を得ながら、各法科大学院の教育の改善状況について調査を実施してきております。本日は、平成25年司法試験の結果を踏まえて、ワーキング・グループが実施しました改善状況調査について、資料2に基づいて報告をさせていただきます。
 まず資料2の1ページから、これまでの経緯、調査の趣旨を記載しております。今回の調査では、平成25年司法試験の結果が昨年9月に発表されたことを踏まえまして、過去の調査結果で指摘した課題などを中心に、各法科大学院での改善の進捗状況についての確認を行って、調査を実施いたしました。
 調査の概要でございますけれども、2ページに記載しているとおりでございます。まず従来と同じように、全ての法科大学院に対して書面による調査を実施して、教育の改善状況の進捗状況について全体的な把握を行いました。次に、書面調査及び平成25年までの司法試験の結果を踏まえてヒアリング調査を実施しましたが、法科大学院の学生募集停止を表明している大学につきましては、ヒアリング調査の対象外としております。ヒアリング調査の対象は合計24校でして、内訳はそこにあるとおりです。簡単に説明しますと、平成24年度に行われた調査において、「改善の取組が全体的に進んでいるとは言い難(にく)い」とされた「継続校」と「重点校」、これらが12校ございます。それに加えて、司法試験の合格状況や、入学定員の充足率が悪い状況にある法科大学院について対象として加えておりまして、それで合計24校になるわけです。
 さらに、このヒアリング調査の結果を受けまして、そのうち3校については追加で実地調査を行いました。この点については従来の調査方法を少し改めまして、本年度の実地調査につきましては、課題が深刻と思われる法科大学院全てを対象として実施するのではなくして、フォローアップの仕方を変更する必要があるかどうかとか、ヒアリングだけでは状況が分からずに、より詳細に確認することが必要とされた法科大学院を対象として実施いたしました。
 調査の結果ですけれども、これは3ページ目以降でございます。今回の改善状況調査において、法科大学院を含む法曹養成制度をめぐる状況は極めて厳しい状況にあることに対しまして、課題が深刻な法科大学院において危機意識を持っていろいろ試行錯誤を重ねながら、改善の取組を進めているということを確認できました。ただ、その結果としていろいろな課題を改善して、成果を上げることができているとまでは言い難(にく)く、依然として厳しい状況にある法科大学院が存在すると言わざるを得ないというのが現状でございます。
 今回の改善状況調査において確認された内容と、今後の課題について主な点を報告しておきますと、まず入学者選抜における入学者の質の確保に係る取組ですが、これは3ページの最後のところからになります。入学者選抜における入学者の質の確保の重要性については、これまでもワーキング・グループとして繰り返し指摘してきたところです。今回、ヒアリング調査や実地調査を実施した法科大学院の多くでは、まだ調査実施時点の途中経過ではありますけれども、平成26年度入学者選抜における競争倍率を2倍以上の確保に努めているとか、あるいは適性試験の点数の著しく低い者は入学させないための合格最低基準を導入するといった改善の取組が実施されていることが分かりました。
 また、平成26年度の総入学定員は、最大時(5,825名、これは平成17年から平成19年です)に比べますと約2,000名削減、約35%減って3,809名が削減される見通しになっている状況で、こういったことも考え合わせますと、入学定員の見直しについては着実に改善されてきているのではないかと思います。ただ、それでもなお法科大学院全体としての入学定員と、実入学者数との乖離(かいり)は大きいという現状でございます。
 また今回の調査では、全国的に法科大学院志望者が減少しているということの影響を受けまして、志願者数の確保は困難な状況になっていると回答している法科大学院が非常に多く見られたところであります。この点に関しましては、入学志願者の大幅な減少に伴って、競争的な環境のもとで入学者選抜を実施することは行い難(にく)くなっているという可能性が認められまして、その結果、入学後の授業実施への影響も懸念されているところです。各法科大学院では、入学者数の増加に向けた取組を更に強化することに合わせて、入学段階での質の確保の重要性について、改めて認識して取り組む必要があると思われます。
 個別の大学院について見ますと、数は限られていますけれども、競争倍率が依然として2倍を大きく下回るなど、入学者の質の確保の必要性についての認識が不十分であって、入学者選抜に課題を抱えている法科大学院も見られるのが現状です。こういった法科大学院では、司法試験の合格状況などに鑑みますと、やはり入学者の質の確保の必要性についていま一度認識を新たにして、法科大学院の入口での質の確保の重要性について再認識して取り組んでいただく必要があると思われます。また競争倍率2倍は厳守しているんですけれども、入学者数が著しく少ない法科大学院が見られます。これらの法科大学院におきましては、競争倍率2倍の基準を最低限守りながらも、志願者数、それから受験者数の拡大に向けた取組を早急に行っていただく必要があると思います。
 さらに、問題は、定員充足率が5割に満たない状況が継続している法科大学院,あるいは入学者数が1桁になってしまっている法科大学院の増加傾向が見られることです。学生数が著しく少ない状況が続いた場合にはいろいろな影響がありまして、双方向的、多方向的な授業の効果的かつ継続的な実施とか、あるいは学生同士が切磋琢磨(せっさたくま)する学習環境が確保されるか、学生が自らの到達を客観的に確認できるかどうか、学生同士の自主的な学修が適切にできるのか、こういったいろいろなことへの影響が懸念されているところでありまして、教育の質の確保の観点から、一定規模の学生数の確保に向けて取り組むとともに、組織自体の見直しも早急に取り組む必要があると思います。
 次に、教育内容・方法の改善や成績評価の厳格化等に関する取組ですけれども、教育内容・方法の改善や成績評価の厳格化などにつきましては、課題が深刻な法科大学院において、共通的な到達目標モデルを踏まえたカリキュラムの改訂の実施やFDなどを通じて、教育内容・方法の改善や成績評価及び修了認定の一層の厳格化に関する一定の取組が行われているということは確認できたところでございます。しかし、修了者の多くが修了直後の司法試験を受験しない、いわゆる受け控えをしている状況とか、受験しても合格率が著しく低いといったような状況が、こういったところでは見られるわけです。また、数は少ないものの、改善に向けた取組の効果が現れていないにもかかわらず、なぜそうなったかという検証がなされていないとか、あるいは更なる改善に取り組む意識が低いというように思われる法科大学院も見られたところでございます。
 こういった状況を改善するためには、やはり十分な学力を身に付けた者のみを修了させることにして、同時に学生自身も到達目標を意識して学修し、司法試験を受験するのに十分な学力を身に付けたという自信を持って修了できるようにする体制を整備する必要があると思われます。
 また、成績評価や修了認定の在り方につきましても、これは平常点の取扱いや再試験の状況と合わせてみますと、厳格な成績評価に基づく進級・修了判定に関しての課題を抱えている法科大学院が確認されたところです。これらの法科大学院は、教育の在り方とか成績評価の在り方に関して改善を果たせるように、組織的な対応を強力に図る必要があると思われます。
 なお、個別の法科大学院の改善状況に関する所見につきましては、別紙にまとめてあるとおりでございます。
 そして、これらの改善状況調査で「重点的」、又は「永続的」にフォローアップを必要と指摘した法科大学院については、今回の調査結果を踏まえますと、抱える課題に対して成果が出ているとまでは評価できず、継続してフォローアップが必要と考える状況でありまして、前回と同様、改善の取組状況の進捗状況という観点から、所見としてまとめております。
 また、今回の調査で新たにヒアリング調査と実地調査を実施した法科大学院のうち、1校は「継続的」にフォローアップが必要との評価をしたのを、「重点的」にフォローアップが必要との評価に変更いたしております。詳細につきましては、別紙を御確認ください。
 「おわりに」でございますけれども、先ほど御説明しましたように、課題が深刻な法科大学院においては、この数次にわたる過去の改善状況調査におけるワーキング・グループの指摘事項などを真摯に受け止めて改善の取組を強化していることは、一応確認できたところです。ただ、いろいろな改善策を講じてきているにもかかわらず、結果につながっていない法科大学院も見られるわけでして、これまで行った改善策の検証やその原因分析を早急に行って、成果を上げてきている法科大学院の取組なども参考にしながら、更に対策を講じていく必要があると思います。
 また、残念なことですけれども、依然として危機意識が欠けて、教育の質の改善に関する取組が十分でないところも見られまして、それぞれの法科大学院における取組の進捗状況については、法科大学院の間でかなり差があるということもまた事実であります。各法科大学院には引き続き組織の在り方の検討や、教育内容の改善等に早急に取り組むとともに、改善の取組及びその経過について不断の検証を重ねて、実効的に改善を果たせるようにあらゆる手段を用いて抜本的な改善を果たせるよう、組織全体で取り組んでいく必要があると考えております。
 最後にワーキング・グループとしては、各法科大学院における改善策の内容やその効果については、なお引き続き確認していく必要があると考えているわけですけれども、同時に文部科学省におきましても、安定的な法曹養成制度の確立を目指して、様々な方策について引き続き検討を進めることが必要であるということを最後に述べさせていただいております。
 私からの報告は以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見あるいは御質問等がございましたら、どなたからでも御発言願います。
 どなたも声が出ないということでしょうか。基調としては、昨年と、それほど変わらないように思いますが。

【田中座長代理】
 そうですね、こういう重点校とか継続校から抜け出していく法科大学院が出てほしいと思うんですけれども、残念ながら余り変わらないという状況ですね。その中でも、いろいろ取り組んでいらっしゃるところもあるんですけれども、幾つかはちょっとなかなかいろいろアドバイスしても難しいという感じもあるというのが、ワーキング・グループでの感想です。

【井上座長】
 一所懸命努力をされているところもあるとは思うのですが、自助努力だけではなかなか快方に向かわないという、状況なのかもしれません。私も数年前までこの調査に携わりましたが、毎年調査するたびに気分が落ち込む、そういう調査でした。
 特に御意見等ないようですので、これで今回の調査についての御報告を承ったことにします。田中委員はじめワーキンググループの委員の方々、どうもお疲れさまでございました。
 この報告書にあるとおり、状況は益々(ますます)厳しさを増していますので、各法科大学院におかれては、この状況をこれまでにも増して深刻かつ真摯に受け止め、本委員会が取りまとめた改善方策その他に基づいて、引き続き一層の改善に取り組んでいただきたいと思います。
 次の議題に移りますけれども、前回及び前々回の特別委員会におきましても、司法試験予備試験に関する御意見を各委員から頂いていたところでありますが、本日は、この予備試験に関するデータ等関連資料を準備していただいておりますので、事務局の方から御報告いただけますか。

【今井専門職大学院室長】
 それでは、失礼いたします。資料3を御覧いただけたらと存じます。司法試験予備試験に関する法科大学院に対するアンケート調査回答結果の概要でございます。
 先ほど座長より御指摘いただきましたように、前々回と前回で本特別委員会におきましても、予備試験に御懸念を示すようなお声も頂いておりました。また、政府全体での法曹養成制度の改革についての審議が進んでいく中で、内閣官房からの要請も踏まえまして、このたび文部科学省におきまして、予備試験の影響などに関するアンケート調査を全法科大学院に対して実施し、その回答結果がこのたびまとまりましたので、本特別委員会におきまして御報告させていただきたいと存じます。
 それでは、資料1ページ目の上段から御覧いただけたらと存じます。今回のアンケート調査につきましては、全法科大学院を対象に、予備試験を利用して法曹を目指す学生の動向や、その影響等に関する状況について、自由記述の形で調査を実施させていただいたところでございます。そして、この四角の中でございますが、その調査結果全体についてでございますが、予備試験に対して何らかの懸念があるという御回答を頂いた大学は73校中54校、全体の70%ということでございました。そして、そのうち司法試験の累積合格率が全国平均以上の一定程度の成果を上げていただいている大学に着目いたしますと、15校中12校、約80%の法科大学院から予備試験に対して懸念があるとの回答を頂いたところでございます。
 なお、参考まででございますが、司法試験委員会等で公表されているデータに基づきまして、平成25年予備試験に関する状況を分析しましたところ、今御紹介させていただきました一定以上の成果を上げている大学と、それから残念ながら司法試験の累積合格率が全国平均の半分未満で苦戦されている大学を比較いたしますと、司法試験で一定以上の成果を上げている大学におきましては、在学生の約22%が予備試験を受験しているということになる一方で、苦戦されている大学におきましては、在学生の約10%が受験しているという実態があります。司法試験の合格率が高い法科大学院ほど、学生が予備試験を受験する割合が高くなっているのではないかという感触でございます。また、累積合格率の高い法科大学院の設置大学の学部からも、非常に多くの受験者が出ているといった実態が見てとれるところでございました。
 それでは、各法科大学院からの回答につきまして御報告させていただきたいと存じます。今回、各法科大学院から頂いた回答を分析させていただきまして、大きくは三つの観点から分類させていただいて、本日御報告させていただきたいと存じます。
 資料1ページ目の下段以降でございますが、まず一つ目の観点は、法科大学院教育全体に与える影響について御懸念を示されている大学からの回答をまとめさせていただいたところでございます。ここにございますように、優秀な学生が予備試験を選択することで、入学試験では一部の上位校に向かって合格者の吸い上げが加速し、法科大学院を取り巻く状況は激変しているのではないかという御意見。また、予備試験の準備のため、短絡的に結論だけを求める思考様式を抜け出せない者や、広い教養、他分野の知識、基本的なマナー等に欠ける学生が増えてきているのではないかといった御懸念。また、予備試験に受からなかった者が行くのがロースクールであるという印象が定着しつつあるのではないかといった御懸念など、予備試験が主流として認識されている状況について御懸念を示す回答があったところでございます。
 加えまして、資料は2ページ目以降でございます。例えば、受験対策意識が強くなり、プロセスによる優れた法曹養成の理念から離れ、司法試験に受かれば良いという風潮を醸成しているのではないか。また、学部段階で予備試験に合格して、法科大学院に入学せず、司法試験の準備をする者がおり、優秀な学生に幅広く奥行きのある教育を行えなくなっているのではないか。また、予備試験では基礎法学などの知識・知見をどう計っているのかが不明であり、司法試験受験資格を与える制度として法科大学院制度と予備試験制度はバランスを失しているのではないかといった回答もあったところでございます。
 続きまして、二つ目の観点を御紹介したいと存じます。資料は2ページ目の中段から以降でございますが、法科大学院の授業・教育活動に与える影響に対して御懸念を示す御意見があったところでございます。例えば、予備試験実施日と授業日が重なると、学生が授業を欠席したり、授業の予習をおろそかにしたりするほか、授業日の調整等を要望する学生がいるといった御回答があったところでございます。また、学生の授業に対する取組の変化といたしまして、予備試験の準備のため、授業の予習・復習がおろそかになり、対話型のソクラテス・メソッドによる授業が十分な効果を発揮できなくなるのではないかといった御懸念。また、予備試験の科目ではない基礎法学・隣接科目、また展開・先端科目を軽視する傾向や、受験情報の流布などにより浮き足立った雰囲気。さらには、予備試験合格による早期退学を目指して、法科大学院教育に積極的に関わらない傾向を持つ学生が現れつつあるのではないかといった御懸念が回答に示されたところでございました。
 そして、三つ目の観点につきましては、3ページ目を御覧いただけたらと存じます。学生に与える影響について御懸念があるという御意見がございました。この観点においてはまず3-1につきまして、入学前のいわゆる学部生に与えている影響。それから3-2で、法科大学院在学生に対して与える影響について、それぞれ分類させていただいております。
 まず、入学前の学部生に与えている影響といたしまして、ここにございますように、学生が予備試験を第一に考えて、法科大学院への進学は予備試験に合格しなかった、また自分で勉強をする自信がない場合に限られる傾向が出てきており、志願者の確保が難しい上位、中堅以下の法科大学院に大きな影響を与えているのではないかといった御懸念が回答としてございました。また、予備試験ルートの方が就職に有利と考え、法科大学院への飛び級の合格を辞退する学生がいるなど、学部学生の進路選択に与えている影響が懸念されるのではないかといった御回答がございました。また、優秀な学部生が予備試験を目指し、法科大学院に進学しなくなる傾向があることなども報告をされているところでございます。
 続きまして、最後4ページ目を御覧いただけたらと存じます。4ページ目には、今度は法科大学院在学中の学生に与える影響についての御懸念を示された回答を整理させていただいております。例えば、成績の良い学生を中心に、予備試験の準備を行う傾向が広く認められ、法科大学院教育の深化を妨げているのではないかといった御懸念。また、試験対策に特化した勉強に専念してきた受験生との競争を求められ、本来不要な焦燥感を抱いたり、クラス内に予備試験合格者などがいると、日々の勉強の仕方や修了後の進路に不安を抱いたりする者が出てきているのではないかといった御懸念が示されております。また、予備試験合格を機に休学し、大学の施設を利用し続けた上で司法試験を受験し、合格後に退学したいと申し出たケースなどがあったという御報告もございます。そのほか、法科大学院生にとって予備試験が自分の実力を知るための手段として使われているような実態もあるのではないかといった回答が、各法科大学院から寄せられてきたような状況でございます。
 このたびのアンケート調査の結果の概要につきましては、以上のとおり御報告させていただきたいと存じます。事務局からは以上でございます。

【井上座長】
 内閣官房法曹養成制度改革推進室からの提供資料もあるということですので、これについては松本委員の方から御説明いただきます。

【松本委員】
 ありがとうございます。お手元の資料の、先ほどの今井室長からの御説明に続いての一連の資料に基づきまして御説明申し上げます。
 まず順不同になって恐縮ですが、このカラフルなチャート(資料1-2)を御覧ください。こちらは予備試験の願書と司法試験の願書で、それぞれその時点での属性を書いていただくことになっておりますが、それに基づいて分析をしたものでございます。一つは自己申告ということがございます。さらに、予備試験と司法試験、横に見ていただきたいんですけれども、完全なひも付きではございませんので、それを前提に見ていただければと思います。
 非常に見にくい内容になっておりますので、ページを戻っていただきまして、資料4の通し番号で言いますと1ページを御覧ください。一応文章でまとめたものでございます。ポイントを読み上げさせていただきます。
 先ほどの属性の分析からうかがえる状況でございますが、予備試験の動向といたしまして、大学在学中に予備試験を受験する者が増えております。平成23年が951人でありましたものが、平成25年は1,708人となっております。さらに、これに伴いまして、大学在学中に予備試験に合格する者も一定程度増加しております。平成23年が29人、平成24年が44人、平成25年が53人という状況になっております。その上で我々、最短合格組というような言い方をしておるんですが、大学在学中に予備試験だけではなくて、司法試験も合格してしまう人たち。この人たちにつきましては、予備試験の合格者数そのものは増えておるんですが、逆に減っております。平成24年は9人でございましたものが、平成25年は5人。もちろん今年の本試験はまだでございますが、その母数となり得る者が平成25年度予備試験合格者で4名という状況ですので、今年は更に減るんじゃないのかというような状況でございます。そういう意味で、この最短合格組は予備試験の合格者が増えていけば、それと連動して増えるというようなものではないんじゃないかなというような見方をしておるところでございます。
 それでは、法科大学院と予備試験の関係でございますが、法科大学院在学中に予備試験を受験する者が非常に増えていっております。平成23年が170人。これはいろいろな可能性がございますので、基本確実かなというところが170人でございます。可能性として、最大313人と書いておりますのは、先ほどの状況からするとプラス313人が最大の可能性がございますという趣旨でございます。平成24年が508人、平成25年が1,426人と増えております。さらに、予備試験を受けるだけではなくて、予備試験に合格する者も増えておりまして、平成23年が6人でありましたものが、平成24年が60人、平成25年が161人という状況になっております。ただ、ちょっと御留意いただきたいのは、平成25年の法科大学院在学中の予備試験受験者1,426人のうち、1,156人が法科大学院3年生、既修の2年目、未修の3年目での受験となっております。合格者は157人です。この人たちは翌年の司法試験を受けることになりますので、基本予備試験にもちろん合格はしておるんですけれども、本試験を受けるときには法科大学院の修了資格で受けている人たちが大半であろうというふうに見ております。この法科大学院の人たちが予備試験を受けている理由につきましては、先ほど法科大学院からのアンケートの中にもございましたが、法科大学院生が予備試験を模擬試験的に利用しているのではないかなというふうに見ておるところでございます。
 続きまして、本試験、司法試験の動向でございますが、1枚おめくりいただきまして真ん中あたりでございます。司法試験、法科大学院在学中に予備試験合格の資格で司法試験を受験する者ももちろん増えております。平成24年が7人、平成25年は31人という状況でございます。さらに、その下でございますが、法科大学院在学中に司法試験に合格して、その司法試験合格を理由に中退する可能性がある人たちも、平成24年は25人でありましたところ、平成25年が最大69人という状況になっております。これも中退の年次で1年生、又は2年生、あるいは3年生という形で分析したものは、以下で記載しているとおりでございます。
 なお参考といたしまして、平成24年に司法試験を予備試験合格の資格で受験して合格した人たちは58人おりますが、この年の11月から開始されました66期の司法修習生になりました者は40人という状況になっております。この差につきましては現在調査しておるところでございますが、一つの要因としては、国家公務員という道を選ばれた方も中にはいらっしゃるでしょうし、大学3年生、あるいは4年生で司法試験に合格された人たちというのは、大学を中退して司法修習の道に行くのではなくて、もう1年待って大学を卒業して、翌年の司法試験から行かれる選択をされているのではないのかなというふうに見ているところでございます。最初の資料は以上でございます。
 続きまして、通し番号7ページの資料2を御覧ください。こちらは平成25年の予備試験につきまして、法科大学院別の受験者数や合格者数などをまとめたものでございます。さらに、8ページは、平成25年の予備試験につきまして、大学別の受験者数を同様にまとめたものでございます。
 さらに、9ページの資料3は、予備試験受験者の職種別人数をまとめたものでございます。
 さらに、その次の10ページでございますが、この10ページの資料4は、予備試験合格の資格に基づく司法試験受験者につきまして、職種別という視点でデータをまとめたものでございます。
 さらに、12ページからの資料でございます。こちらは司法試験との関係で整理したものでございまして、平成24年、平成25年の司法試験についての成績分布を整理したものでございます。
 分かりやすいので、平成25年の14ページの資料を御覧ください。この一番上の青色のグラフが、受験者全体の成績分布となっております。2番目の緑色は、いわゆる司法試験合格率の上位校、要するに平成25年司法試験において平均以上の合格率を上げている法科大学院14校の上位校の修了者についての成績分布でございます。一番下のオレンジの線が予備試験合格資格での司法試験を受験した者の成績分布でございます。これの最も人数の多いピークの部分を比較しますと、全体では780点が最も多くなっておりまして、上位校も同じ780点となっております。これに対しまして、予備試験合格資格のグループは、人数が少ないので山が分かりにくい状況ではございますが、一番高いところは800点となっております。ただ、逆に成績上位。これはグラフで言いますと右側になりますけれども、予備試験合格組が最上位にいるわけでもないということも御理解いただけると思います。
 続きまして、資料8を御覧ください。こちらは文部科学省に御協力いただきまして、法科大学院在学中に予備試験合格や司法試験に合格したことを理由に中退した者がどれぐらいいるのかというところにつきまして、各法科大学院に照会してもらって回答を得たものでございます。この総計のほかに平成25年の司法試験における合格率順で上位5校、それ以外の上位校、中位校、下位校という形で分けて分析しているところでございます。
 まず予備試験に合格したことを理由に中退した者について見ますと、平成23年度は全体で3人、平成24年度は9人、平成25年度は4人となっておりまして、必ずしも増加傾向にあるとは言えない結果となっております。いずれにいたしましても、限定された人数というふうに言えるのではないかと見ております。平成24年度を見ていただきますと、総計9人のうち、上位5校からの中退者が7人と、そのほとんどを占めているという状況でございます。
 次に、真ん中より少し下から、司法試験を理由とした中退の状況でございます。こちらはまだ2年分しかデータはございませんが、平成24年度の中退者が14人でございましたのに対しまして、25年度は29人となっておりまして、中退者が出ているロースクールの数も3校から8校と広がっていることから、増加傾向にあるように見えます。さらに、中でも司法試験合格を理由に中退する者は上位5校に圧倒的に集中していることが分かるのではないかと思っております。
 さらに、17ページからの資料9につきましては、予備試験合格資格で司法試験に合格した者の司法修習における状況について、最高裁から御提供いただいた資料でございます。修習の人数が17ページでございます。年齢分布が18ページ。この中で21ページを御覧ください。21ページが、いわゆる2回試験、司法修習考試の成績につきまして、予備試験資格者とそれ以外の内訳を示したものでございます。また、22ページは集合修習における成績について、同様の内訳を示したものでございます。全体といたしましては、予備試験合格者の優の割合が多いということがうかがえる内容となっております。
 1点ちょっと御留意いただきたいのは、21ページ、不可の情報も載せておりますが、これはちょっと人数が少ない関係で参考情報になりますので、この辺の取扱いはここ限りと言いますか、ホームページにも載せない取扱いをお願いしているところでございますので、よろしくお願いいたします。
 さらに、23ページの資料10を御覧ください。これは予備試験合格組を含む最初の期となります66期の司法修習が昨年12月に終了いたしましたところ、私が所属しております推進室から最高裁に対しまして、いわゆる予備試験組に対応するための修習のカリキュラムの変更等を検討されているのかというところを照会させていただいた文書でございます。
 次のページが最高裁の回答でございますが、最高裁としては、現時点で予備試験組に対応するカリキュラムの変更は検討されていないというような内容の回答等を頂いているところでございます。
 さらに、25ページは、66期の予備試験組を含む修習生の進路についてまとめたものでございます。いわゆる予備試験組につきましては39人が修習を修了いたしまして、裁判官に5人、検察官に2人、弁護士等に32人という状況でございますが、この32人につきましては、現在どの事務所に入ったのかというところは確定できておりませんので、完全な調査ではございませんが、新人弁護士の採用数の多い30位までの弁護士事務所を対象に、予備試験合格組の採用状況等についての調査を推進室において行っているという状況でございます。以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございました。司法試験予備試験の在り方につきましては、政府の法曹養成制度改革顧問会議等、政府の検討の場で今後議論されるものと承知しておりますけれども、いかがでしょうか。
 ただいまの御説明の内容につきまして、委員の皆様から御質問等がございましたら御発言をお願いしたいと思います。

【松下委員】
  質問じゃなくても。

【井上座長】
  ええ、御意見でも結構です。どうぞ。

【松下委員】
  詳細な御説明、どうもありがとうございました。今後議論するときに留意しなければいけないこと、自分に対してもなのですけれども、留意しなきゃいけないと思っていることなんですが、資料4で示されたとおり、予備試験の受験者が急増している。特に法科大学院生の受験が急増しているということで、資料3に示されたような懸念も、これから量的にどんどん拡大していく可能性が高いわけです。今、まだ小さい芽だからと思っていると、一、二年のうちに取り返しがつかないぐらい傷が大きくなるということが十分あるということを留意して、常に最新の情報を得ながら議論を進めていくべきだと、これは自戒を込めてですけれども、そういうふうに感じました。以上です。

【井上座長】
  ありがとうございました。ほかの方はいかがでしょうか。

【磯村委員】
  データに関する質問で、今、お答えいただけるかどうかちょっと分からないのですけれども、25ページで司法修習修了者でどういう人が裁判官、検察官、弁護士等に行ったかということとの関係なんですが、任官された方の、例えば年齢のデータとか、そういうものがもし分かると有り難いなという気がするんですが。

【松本委員】
  今ちょっと手元で承知してないんですが、対応をちょっと検討させてください。

【井上座長】
  では、どうぞ。

【有信委員】
  どうもありがとうございました。今の御説明の内容をざっと整理をすると、予備試験の合格者は増えていると。それから、大学レベルで予備試験に合格はしたものの、最終的に司法試験の合格者数は決して増えているとはいえないと。それとは別に、予備試験の合格者数の方が、司法研修課程での成績はいい。ただしその中で、予備試験の合格者数の方が成績上位者の割合が高いという結果は出ているんだけれども、それが大学卒業生なのか、法科大学院の修了生なのかという、ここの部分の区分けはできていないということですよね。実際には数が少ないので、その辺のところを区分けしても意味があるのかどうかはよく分かりませんが、何となく法科大学院を修了しないで予備試験だけをパスして、最終的に司法修習をやった人の方が優秀だというふうに何となくとれるような全体の流れになるんだけど、実質はそこの部分は分からないわけですよね。

【松本委員】
  ありがとうございます。最高裁の資料の司法修習と2回試験、いずれも注釈で、「予備試験資格者とは」と記載しておりまして、「予備試験合格資格に基づき司法試験を受験・合格した者」ということですので、可能性として予備試験で合格をして、ロースクールも修了して、ロースクール卒業資格ではなくて予備試験合格資格で司法試験を受けて合格した者も含まれますので、その辺の仕分は分析ができておりません。

【有信委員】
  しかももう一つの確認としては、実際にはロースクールを途中で中退をした人も含めて、ロースクール在学中に予備試験を受けて、予備試験合格者の割合で司法試験に合格している人たちの数は急速に増えているわけですよね、その前のデータからすると。ところが、学部といいますか、いわゆる大学段階で最終的に司法試験に予備試験の合格資格で合格している人の数はそんなに増えていないというところなので、この辺のところの分解能と、今後の対策にも多分影響が出てくると思いますので、御検討いただけると有り難いのですけれども。

【松本委員】
  ありがとうございます。御指摘を踏まえて検討したいと思います。

【井上座長】
  この研修所の成績ですけれども、予備試験資格で合格した人の数の母数が極めて少数ですね。ですから、優とか良のところが一つ増えるだけでもかなり数字が動くので、有意的な数字なのかどうか、その辺の取扱いについても気をつけていただかないとパーセントだけが表に出ますと、大きな違いがあるように見え、ミスリーディングになってしまいかねません。
 ほかにいかがでしょう。どうぞ。

【樫見委員】
  最後の25ページのところなんですが、もし差し支えがなければ、裁判官に採用された全体の数と、検察官に採用された全体の数をお教え願えればと思うのですが。

【松本委員】
  これ、別に公開情報なんですが、今手元になくて、次回併せて御説明させてください。申し訳ありません。

【井上座長】
  裁判官は100人ぐらいですよね。

【松本委員】
  100人で、検事が六十何人だったかと。ちょっと正確な数字は、申し訳ありません。

【樫見委員】
  はい、ありがとうございます。

【田中座長代理】
  100人切ってます。

【松本委員】
  分かれば途中で御説明いたします。

【井上座長】
 ほかにいかがでしょう。御意見等でも結構です。

【土井委員】
  資料4の9ページの司法試験予備試験職種別人員数の推移という資料なんですけれども、平成25年の予備試験について合格者数、全体で351人いて、法科大学院生で162人、大学生で107人、合わせると269人で、76.64%を占めるんですね。平成23年からの推移を見ても、公務員、教職員、会社員等々の職種はほとんど合格者数が増えていないか、減っているところもある。法科大学院生のところが著しい伸びを示していて、大学生のところが、そこまでは急激ではないけれども、伸び続けているという数字なわけですね。
 私は、制度というものにはやはり目的あるいは意義とがあるわけで、何のための制度なのか、どういう意義のある制度なのかというのが当然問われるんだと思うんです。そこで、この平成25年の結果が示すように、法科大学院生と大学生が、法学部生には限らないと思いますが、76.64%の合格者数を占めるこの予備試験の制度の目的と意義は何なのかと問われた場合、どう答えるのか。松本委員に伺っても答えは得られないと思うんですけれども、この際、敢(あ)えて伺いたいと思います。

【松本委員】
  ありがとうございます。いきなり剛速球を。まさにそこを検討しているところでございまして、予備試験制度ができた経緯は、これは皆様も御案内のとおりでございまして、その中で排除しようとしていた部分とか、あるいは想定されていなかった部分等々で何か問題が生じているのかどうなのかというところは、我々もデータに基づいて検証しているところでございます。そういう中で、先生御指摘のように、大学在学生が増えていますし、割合も増えている。特にロースクール生がこれぐらいの人数、さらに、増加傾向を見ますと、今後を見ました場合に、これだけの人たちが受けることが想定されていたのかどうなのか、その辺も含めて制度的な検討を行わなければならないのではないかというふうに認識しているところでございます。これ以上はすみません、申し訳ございません。
 先ほどちょっとお答えできなかったところでございますが、裁判官の採用は96人、検事は82人でございました。申し訳ありません。よろしくお願いします。

【井上座長】
  司法制度改革審議会の報告書では、バイパス化することにならないようにするということを強調していたわけですが、今の状況は、まさにバイパス化の傾向があらわに出てきているという印象を持ちますね。

【土井委員】
  別件でよろしいですか。今度は質問ではなくて意見を申し上げたいと思います。一部で予備試験と法科大学院は競争であるかのように言われるときがあるんですけれども、私自身は法科大学院というのは教育課程で、予備試験というのは試験ですので、試験と教育課程が競争関係に立つというのはちょっと理解できないんです。というのは、予備試験に合格した人たちもどこかの教育課程を経ているはずです。この数字が意味しているのは、結局のところ、予備試験に合格している人たちは法学部と法科大学院という教育課程に在籍しているということです。
 ということは、この試験がどのように機能しているかというと、本来法科大学院の課程、あるいは法学部の課程にいる学生のうち、試験で高い点数を取れる者から合格をしているという状態になるわけですから、法科大学院生と予備試験受験生、あるいは合格者を比較するというのは、そもそも誤った比較なわけです。結局、予備試験は、法科大学院の中で試験を受けて優秀な成績を取れる学生を、合格者数を増やすことによってどんどんどんどん吸収していってしまっているわけなんですね。
 それを互いに競争させているのだ、あるいは均衡が取れるところまで合格者を増やしていくんだというのは、そもそも前定がおかしい状態になっているので、ここのところは教育課程とはどういうもので、試験というのはどういうものなのか、それぞれはどのような目的があって、どこが比較できるものなのかというのをしっかり踏まえた上で御議論いただきたいというのが意見でございます。

【井上座長】
  ほかの方、いかがでしょう。どうぞ。

【有信委員】
  私は法律の専門家ではないんだけど、今の御意見には基本的に賛成です。つまり、予備試験の位置付けとしては、本来は法科大学院できちんと身につけるべき教育課程を、例えば法科大学院以外の修了生が受ける場合には、そこの部分がきちんと確認できるような試験になっていて、その教育課程の中の本当に基本的な要件がきちんと試験で試されるという構造になっていれば良い。しかし、単純に一般的な試験の作り方になっていって、それでさっき意見がありましたように、成績のできる子から順番にそれを取っていくという構図は、やっぱりおかしいんだろうと思うんですよね。全体の設計からすると外れているような気がします。

【木村委員】
  改善調査のワーキングに加わった感想から申し上げますけれども、先ほど田中先生から御説明いただいた報告書の中にも、やっぱり課題があるというのは全国的な法科大学院志願者の減少の影響というのは非常に大きいということだと思います。先ほど御指摘のあった表、資料3といいますか資料4ですか、全体でいうと。資料4の下ページ、9ページの予備試験受験者の職種別の数のところですけれども、大学生が受けているということになるんですけれども、それは本来であれば、ロースクールに行くべき人数というふうに思われます。ですので、やはり改善ということから言っても受験者数の減少が非常に影響が大きいと言わざるを得ないというふうに思います。以上です。

【井上座長】
  そろそろ次の議題に移らせていただいてよろしいでしょうか。
 前回に引き続きまして、本特別委員会として今後検討すべき法科大学院教育の改善・充実に向けた論点整理について議論をさせていただきたいと思います。
 前回の会議におきまして各委員から頂いた意見を踏まえまして、事務局において準備をしてくれました資料について説明していただき、それを基に意見交換をさせていただきたいと考えます。
 では、事務局の方から資料の説明をお願いします。

【今井専門職大学院室長】
  それでは、失礼いたします。資料5を御覧いただけたらと存じます。今後検討すべき法科大学院教育の改善・充実に向けた論点整理(案)でございます。前回、資料を事務局よりたたき台を出させていただきまして、この本特別委員会において御指導いただきました点を踏まえて修正させていただいております。私どもの方からは、修正をした箇所、大きな点についてそれぞれ御報告、御紹介をさせていただきたいと存じます。
 まず1ページ目でございますが、冒頭、基本的な方向性について確認をさせていただいているリード文のところでございますが、前回からこの黒ぽつが増えております。増やさせていただいた点につきましては一番上の黒ぽつ、それから三つ目の黒ぽつ、それから最後の黒ぽつでございます。前回座長よりも御指導いただきましたように、この点、基本的な方向性、本特別委員会においてこれまでも議論してきた点について大きな齟齬(そご)はないだろうということでございましたが、前回議論を頂いたときにはやはり様々な課題、それから改善方策を考えていくに当たって、やはりそもそもの理念をもう一度整理をしていくべきではないかといった御意見もございましたので、事務局の方でそういった御意見を踏まえて、ここを充実させていただいたところでございます。
 一つ目の黒ぽつにつきましては、これまでの大きな改革が、点による選抜からプロセスによる養成に切り替わっていくという過程の中、法科大学院が生まれたということを前提に、法科大学院教育の改善・充実方策をまとめてはどうかということで整理をさせていただいております。
 その次の二つ目の黒ぽつは、変更はございません。政府全体での議論を踏まえて議論をしていくべきであろうということでございます。
 そして三つ目のところについては、法科大学院についてそもそも一体どういうことを対象として教育をしていくのか。また、どういったものを身につけていただくのかということを改めて整理をさせ直していただいております。それが「このうち、法科委員会については」の以下の文章でございます。そういったことを前提に、プロセスとしての法曹養成の中核的な教育機関としての大学院レベルの教育を、充実した形で提供できるような改善・充実を図ることと整理をさせていただいております。
 そして、その具体的な進め方を4点目で整理させていただいておりますが、最後になお書きを付させていただいておりまして、これまで組織見直し促進に関する検討ワーキング・グループ、共通到達度確認試験等に関する検討ワーキング・グループからそれぞれ、調査検討経過報告を頂いておりましたが、このうち例えば公的支援の見直しのさらなる強化策の具体化、あるいは共通到達度確認試験の試行に向けた準備など、取り組めるものにつきましては文部科学省、それから大学において速やかに取り組むことということを明記させていただいたところでございます。
 以上、基本的な方向性を整理させていただいた上で、その後に検討事項を3点に整理させていただいております。まず1ページ目の下段でございますが、検討事項1の(1)でございます。先ほどの基本的な方向性同様、この点につきましても、基本的な理念ではございますが、改めてもう一度確認させていただいたところでございます。
 まず1点目の黒ぽつについて、追記させていただいております。追記したところは1点目、2点目、3点目、4点目、四つの黒ぽつをそれぞれ追記をさせていただいておりますが、まず一つ目につきましては、この法科大学院がこれまでの従来の法廷活動を中心とした人材養成のみならず、更に様々な多様な貢献ができるものとして考えられているということを前提に、様々な教育課程、特に科目群で言えば四つの科目群を開きながら、多様な教育課程を編成し、これまでも一定の成果を上げているのではないかということで整理をさせていただいております。
 また、法科大学院が大学院に置かれているということについての意義を、二つ目の黒ぽつで整理をさせていただいておりますが、それは大学院に入る前までの段階でも、なお一定の専門的な基礎の教育を受けていることを前提としたプロセスとしてなっているんだということを明記させていただいております。
 その上で、こういった法科大学院でのしっかりした教育を受ければ、次の2ページ目の上から一つ目の黒ぽつのように、司法試験に合格できなかった場合でも一定の素養を持った人材として、多様な活躍の場があるのではないかということで整理をさせていただいております。また、法科大学院の役割、その成果を積極的に発信し、男女問わず有為な人材が法曹を目指して、このプロセス養成の途へ進むことを目指していくべきだろうということを整理させていただいております。また、最後の黒ぽつでございますが、法科大学院の目指す本来の、今御説明したような役割を果たすことができない課題が深刻な法科大学院についてはということで、その組織見直しの強化の話。それから、基礎教育の質の向上に迅速に取り組むことを基本的に整理させていただいたところでございます。
 2ページ目の(2)、それから(3)につきましては、前回から若干の修正をさせていただいております。例えば、司法試験の適正な運用のもとという書き方を少し修正させていただきましたけれども、基本的には前回の議論を踏まえて,そのままにさせていただいております。
 続きまして、検討事項の2でございます。検討事項の2につきましては、今後検討すべき改善・充実方策についてとして整理をさせていただいております。(1)、(2)については大きな修正はございません。
 ポイントは3ページ目を御覧いただけたらと存じます。(3)法科大学院教育の質の向上に関する改善方策の提示でございまして、特に大きく二つ修正させていただいたところでございます。実はこの黒ぽつの一つ目、二つ目、三つ目は、前回たたき台の中では一つに整理させていただいていたところでございますが、前回の御議論の中でも、未修者教育の充実等についてしっかりと取り組むべきだといった御意見も踏まえまして、一つ目の黒ぽつは、共通到達度確認試験の基本設計・試行といった教育カリキュラムに係るものに限った上で、二つ目、三つ目を新たに項立てをさせていただきまして、法学未修者教育について充実した教育課程を作ること。また、ここにございますような学部との連携も踏まえたことを考えていこうと。そういった観点で、法学未修者教育の充実について、特出しをさせていただいたところでございます。
 また、そもそも前回は(3)の中に、実は認証評価の充実として評価機関、基準、方法の見直しの必要性について書き込んでいった黒ぽつがございましたが、この点につきましては、認証評価というものが組織見直しの促進にもつながるものでございますし、また教育の質の向上にもつながるということで、改めて(4)として、法科大学院認証評価に関する改善方策として、一つしっかりとした項立てをさせていただいたところでございます。書きぶりにつきましても、その点充実をさせていただきまして、法科大学院の適格認定をはじめとする認証評価が形式的な評価に陥らず、法科大学院として求められる成果を上げられない場合には、それらの課題を厳格に評価し、教育改善に向けた取組をより適切に評価できるようにするため、ワーキング・グループの議論などを踏まえつつ、期間、基準、方法等の見直しを行うということで記述を充実させていただいたところでございます。
 それに合わせまして、従前(4)法科大学院教育力を活用した法曹養成の方策というものを、5番にさせていただいたという修正でございます。
 そして最後でございますが、これまで検討事項は2点でたたき台を前回整理させていただきましたが、最後4ページ目でございます。本委員会におきましても様々な御指摘を頂いておりましたが、法曹養成制度との改革の全体の関係について、検討事項の中で起こさせていただいたところでございます。
 大きくは二つに分けて整理させていただいております。一つ目の黒ぽつでございますが、ここにございますように、本特別委員会においては、まずは法科大学院の教育改善・充実に向けた方策を深めていくとともに、2行目以降でございますが、政府全体で行われている法曹養成制度の改革との関係において、法科大学院の立場から、司法試験・司法修習との有機的な連携の在り方について引き続き検討していくということにしてはどうかということで、一つ黒ぽつを起こさせていただいております。
 そして最後に、これまで特に予備試験について御指摘を頂いてまいりました。この点につきまして、予備試験については、プロセスによる法曹養成を推進するという司法制度改革の基本的な理念を踏まえつつ、そのプロセス養成の中核的な教育機関である法科大学院の教育に与える影響を、顕在化しているものだけでなく、潜在的にあるものも含めて速やかに把握・分析をするということで、検討事項として挙げさせていただいたところでございます。
 前回からの修正点については以上でございます。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。

【井上座長】
  それでは、ただいまの資料説明を踏まえて、御意見いただければと思います。できましたら本日の議論で特別委員会としての一定の共通認識を得るところまでまとめていきたいというふうに考えておりますので、御協力のほどよろしくお願いします。
 それでは、御意見、御質問等どなたからでも結構ですので御発言をお願いします。

【日吉委員】
  どなたも御発言の方がいらっしゃいませんので、口火を切らせていただきます。3点申し上げたいと思います。
 1点目は、検討事項1の(1)の最初から1、2、3。三つのぽつの関係と整理の仕方なんですけれども、恐らくこの2番目のぽつの前提事項というのが最初にまずあって、そして1番目のぽつというのは、ある種法廷活動のみならず、企業、公務、地域の様々な場に多様な貢献ができる存在としての法曹を養成することを目指してというような、前提ではなく、それを目指して教育課程を設定し、教育を行っているという順番ではないか。そして、そういうふうにしているから、3番目のぽつにきて、法科大学院というのは仮に司法試験に合格できなかった場合でも、法務博士の資格を取得して、一定の人材としていろいろな活躍の、これ、場があるとありますけれども、恐らく今は場がないので、潜在的な可能性があるとか、そういう可能性を秘めているとか、そういうことなんだろうと。私は法科大学院を安定的に捉え直したときに、そういう存在なのではないかと思います。それが1点です。
 それから2番目は、今後目指すべき規模についての言及がいろいろなところでいろいろな言及のされ方がしておりまして、どのように整理するかというのが非常に難しいんですけれども、今後目指すべき規模といったときには、とりあえず改善策として、余りにも少ない人数でソクラテス・メソッドによる教育が満足にできないというようなところを何とかしなきゃいけないという、言ってみれば目先の問題としての規模の問題点の指摘は当然必要なんですけれども、今後安定的に法科大学院制度を考えていくということになったときには、当然その規模には、例えば上限だとか、あるいは数との関係で地域適正配置だとか、全日制と夜間コースの配分の在り方みたいなものも併せて検討していかなければいけないのではないかというふうに思っています。
 それから3点目なんですけれども、これは検討事項2の(3)のぽつの3番目の点なんですけれども、「法学未修者に対する教育課程において、学部段階で法学を学んでいるが、法科大学院への進学を想定した場合の学修が不十分である者がいることを踏まえ、学部段階における法学教育の強化策を検討する」という言及なんですけれども、これは多分今現在の未修のコースに、純粋未修と、いわゆる法学部の出身で、我々が通称隠れ未修とかと言っているような、法学部出身者である未修者とが混在していることをある種所与の前提として、法学未修者のうち、学部段階で法学を学んでいる人たちを何とかもう少し引き上げようということなんだろうと思いますけれども、今後のいわゆる中長期的な検討の中には、当然いわゆる未修コースと既修コースの在り方を根本的に少し考える。
 本当に当初スタートした時点で、未修コースというのが前提で、ある程度法学試験で点を取った者は既修コースに進むことができるという在り方で、今後もそれでいいのか。それとも、もし法学部の学部段階の教育をもっと充実させろというのであれば、ある種法学部の在り方と併せて一緒に未修コース、既修コースの設定の仕方みたいなものも見直す方向を検討することも必要なのではないかというような問題意識を持っておりますので、そのあたりのところも、もしこの報告書がある程度中長期的な提言、あるいは検討事項というのを出すのであれば、そういうところもちょっと御配慮いただければというふうに思います。以上です。

【井上座長】
  ありがとうございました。幾つかの点について御意見いただきましたけれども、今出された点でも結構ですし、ほかの点でも結構ですので御発言いただければと思います。

【山本委員】
  今の日吉委員の御発言との関連の質問になるかもしれませんけれども、この3ページの(3)の三つ目のぽつの、学部段階における法学教育の強化策を検討ということの趣旨というか目的というか、これをやって、何を目的としているかということなんですが、これは一つの考え方は、学部段階の法学教育を強化して、基本的には法学部生は既修者コースに入ってもらって、未修者はいわゆる純粋未修だけに限定していくという方策を考えるという趣旨なのか。それとも今言われた隠れ未修者の法学の能力を引き上げて、それで全体としての法科大学院の能力のかさ上げを図ろうとしているのかという、そこがちょっとどうもはっきりしなくて、かなりそれによって今後の在り方が違ってくるような気もするということです。
 それとの関係で、このことと2ページの総論のところで書かれている一番上のぽつで、法曹養成の中核的機関が大学院に置かれていることとの関係で、大学院入学前の学部教育の在り方についてここでは論じられて、その中では、幅広い教養というようなことが書かれているというところがありまして、これは重要なことだと思うんですけれども。それと法学部の学部段階における法学教育の強化ということとの関係ですね。これも必ずしも専門教育を充実していくという方向にいくべきだというふうにいっているのか、それともやはりそういう人間的な成熟とか教養みたいなところを学部教育では重視して、法科大学院では専門教育を行っていくという役割分担を考えているのか、そのあたりがどうも全体の文章として必ずしも。まあ、それも含めて、今後検討することかもしれませんけれども、考えていく必要があるかなというのが1点です。
 それからもう1点は、3ページの(5)の法科大学院の教育力を活用した法曹養成の支援方策というところなんですが、これは後の方に書かれている展開・先端科目群の弁護士への提供とか、弁護士に対する研修機能の充実という、要するに継続教育の提供において、法科大学院が果たすべき役割というのは、これを打ち出すこと、それから検討していくことは私も非常に重要なことだと思いますし、社会的なニーズもあるんだろうというふうに思うんですが、その前のところに書かれている「積極的なエクスターンシップの展開など教育内容の充実とともに」ということとの関連が、どうも私にはちょっと頭の中に入ってこなかったんです。これは要するに、法科大学院の学生に対してエクスターンシップを提供して、そういう臨床教育的なものを積極的に進めていくということが書かれているんですが、それと継続教育を充実させていくということが、何か余り関連性もないような気がするんですけれども、ここでちょっとまとめて書かれている。これは質問ですけれども、ちょっと御趣旨をおうかがいできればという。

【井上座長】
  まず質問に答えていただこうと思うのですけれども、最初の点は、むしろ御意見を伺いたい事項です。2番目の点は、「一定の専門基礎教育」と書かれているところに関わるものと思われるのですが、その辺を含めまして、まずこの文章を作成された事務局の方から、御説明いただきたいと思います。

【今井専門職大学院室長】
  それでは、事務局の方でこのような案を作らせていただいた経緯を御説明させていただいて、是非御審議いただけたらと存じます。
 まず、御指摘1点目でございますが、確かにまず1ページ目から2ページ目につきましては、これは飽くまで法科大学院の今後目指すべき姿を考えるに当たりまして、理念をもう一度きれいに整理したいという思いで書かせていただいた部分でございます。
 特に二つ目の黒ぽつにつきましては、法科大学院というものが、そもそも大学院として設定されているということは、その前段である学部教育等について、やはりしっかりとした様々な教養を得た方が来るべきだろうというところで、なかなか難しいかもしれませんが、法学部であっても、それ以外であってもあるんだろうと。ただ、そこで学部レベルの一定の専門的な基礎教育をしっかりと受けている方が法科大学院にやってくるという思いで書かせていただいておりますので、この段階では、法学部だけを念頭にとか、中心に置いたというつもりで書いたところではなくて、むしろ今一度法科大学院制度の理念を書かせていただいたつもりでございました。
 ただ、その関係で検討事項2の(3)になってまいりますと、実はより現実に引きずられて、私ども、もしかしたら書いてしまっているのかなということで、御指導いただけたらと思っておりますが。結局、法学未修者の教育の実施につきましては、一昨年からずっと御議論させていただいて、ワーキングでも御指導いただいておりました。
 その中で一番悩ましい問題といたしましては、先ほど申し上げましたように、多様な人材を引き込んでいくということで未修者のコースがいわゆる正規コースとして設定されているにも関わらず、正規コースの中に占める学生が、特に近年、法学部を出身した方々が多くなってきている状況です。既修者と未修者でコース別の司法試験合格状況を見たときに、どうしても未修者コースは合格状況が極めて厳しい状況にあるといった現実の問題を解決していくその施策の一つとして、学部との連携ということでここに書き込んでおります。ここの意図は、むしろ現実の問題にぐっと寄せて、実際に法学未修者教育を充実させようと思ったときに、現に未修者コースに入っているのが法学を学んできたはずの方々であるのに司法試験合格状況がなかなか厳しいということであるのであれば、その法学部の段階の教育と、法科大学院の接続をもう少ししっかり考えたらどうかということで整理させていただいたつもりでございます。この点、そういった意味では、少し法学部のことを念頭に置き過ぎたことになっているようにも思われますので、是非この点については、この場での御議論をお願いできたらと考えておるところでございます。
 それと二つ目、後段の御指摘につきましても、確かに前段の方にあります積極的なエクスターンシップの展開というのは、今いる学生に対しての教育ということになりますので、法科大学院の教育力を活用した養成の支援という意味では、少しずれているかもしれません。ただ、最初ここにこういう書き方をさせていただいた、外部との関係を念頭に置いた文章は、実は余り事務局で精査せず書いている部分もありますので、こういった積極的なエクスターンシップを行うためには、実は外部の協力がすごく必要だという思いで書いております。
 なので、場合によってはこれを教育の質の改善の方に持ち込んでいただいて、こちらは飽くまで展開・先端科目以下のもので整理していくというのもあるのではないかと、事務局として思いました。申し訳ありません、整理が未分化で恐縮でございますが、この点も併せて御審議いただけたらと考えているところでございます。

【山本委員】
  それでは、今述べられた最後の点なんですけれども、私、つい先日大阪弁護士会に行ってまいりまして、そこで法律相談の研修みたいなことをされていて、若い弁護士に模擬の法律相談を実施させて、比較的年輩の方がそれについての評価というかアドバイスをされるというような研修で、これは私が見ても非常に有益な研修だったんですが、そのノウハウみたいなものは、法科大学院の教育の中で実際に関西の大学の中で、そういう法律相談の授業をやっているところがあって、そのノウハウを活用して、弁護士会でもそういう研修を行っているというような実例がありました。
 そういうのはまさにこれに当たるのかなというふうに思いまして、そういうようなものは、私から見ても学生相手にやるのはちょっともったいないぐらいで、むしろ実際に実務に携わった何年目かの弁護士さんにやった方が、実際的な効果も非常に大きいようなものだったと思いますので、そういうようなものは、まさにここにあるような形で、法曹全体の質を上げていくという意味では、法科大学院の教育力の活用の余地というのは非常にあるのかなという印象を持ったということです。

【田中座長代理】
  さっきの3ページの(3)の「学部段階における法学教育の強化策を検討する」という表現ですが、これはやっぱり山本委員が指摘されたように問題があるので、「学部段階における法学教育の在り方を含め、総合的に検討する」とか、「改善策を検討する」とかと言い回しを直された方が無難じゃないかと思います。

【笠井委員】
  今回の論点整理(案)は前回の議論を踏まえ、うまく書き込んでいただいており、良かったと思っております。その意味では、前回に申し上げるべきことを今更言うのには躊躇(ちゅうちょ)がありますが。
 今回の検討事項は、まず、今後目指すべき法科大学院の姿についてという一種の理念をそこに置いて、以下検討事項2、3というような細部項目が挙げられる関係に立っています。今後目指すべき法科大学院の在り方に関する対応策として、規模の側面のみが中心的に取り上げられている印象を受けます。昨年6月の法曹養成制度検討会議・中間的取りまとめによりますと、「地域的配置」という言葉が出てきていました。今回の論点整理(案)は、法科大学院の目指すべき改善の在り方として、規模の点だけを考慮するということになってはいません。組織見直しだけでなく、組織見直し等を法科大学院全体としての連携・連合の進め方を関連させて進めるべきだからだと思っています。
 現実的に触ってみることは極めて難しい問題だとは思います。しかし今後の改善策としては、法科大学院の目指すべき規模、3ページの法科大学院の規模の適正化に関する改善方策の定義とありますがこれに限らず、組織見直しといった一通りの言葉ではなくて、教育内容の問題も含め、法科大学院の連携・連合を視野においた法科大学院全体の在り方について何らかの形で言及する表現はできないものかと考えているんですが、いかがでしょうか。

【井上座長】
  今言われた検討事項2の(2)の最初のぽつの中には入ってきている、連携・連合、改組転換と。

【笠井委員】
  そこには入っているわけですね。

【井上座長】
  それと、連携・連合については、一種のモデルメニューみたいなものはこれまでも検討してきたところですよね。

【笠井委員】
  失礼。これは、組織見直し検討ワーキング・グループの方で、専門的に検討していただくという形で、ここには一言言及するだけでいいというようなことになるんでしょうか。

【井上座長】
  私の理解では、そういうメニュー案みたいなものは既に出てきていますので、御趣旨は更にそれを深堀しろということなのでしょうか。

【笠井委員】
  ここにも少し深堀した表現ができないのかなということです。

【井上座長】
  分かりました。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【樫見委員】
  よろしいでしょうか。2点なのですが、先ほどから出ている議論の中で、(3)の部分ですね。先ほど3ページの(3)の3番目のぽつの点が出たのですが、さらに、その下の最後のぽつですね。法学部教育、あるいは法学部との連携した教育、この点は、先ほど予備試験のことでもございましたけれども、法学部の段階で予備試験を受けるという学生さんも出ている現状を考えますと、今、法科大学院のいわば受験対策的な教育がやはり問題になっているということを思うと、更に法学部にまで。この強化というのは、いい面ではなくて、逆に昔のような受験対策的な勉強に陥るのではないかという危惧があります。
 ですから、3番目のぽつと最後のぽつのところは、やはり最初の冒頭にあります法科大学院における多様なバックグラウンドを持った方、十分に大学の学士課程の教育を受けた多様な方に、法科大学院において法律専門職に就くにふさわしい教育を施すという理念からしますと、やや矛盾をはらんだ、あるいは若干危惧のある点ではないかということを思いますので、少しトーンを落としていただくということをお願いしたいというのが1点です。
 もう1点は、2ページのところにございます3番目、今後目指すべき教育方法・内容の在り方のこの点なのですが、この点はぽつが一つだからということではないですが、やはり法科大学院がより優れた人材を養成するためには、ここをやはりきっちりしなければいけないと思います。先ほど弁護士さんに対する実務研修的なことをおっしゃいましたように、もう少しこの教育内容の在り方について幾つか、例えば実務研修教育を重視するとか、あるいは実務家教員と研究者教員との間の連携した教育。これまで10年間、既に経験があるわけですので、法務省なり司法研修の中で、こういう点が法科大学院のところで足りないのではないかという点をむしろ挙げていただいて、それを法科大学院の教育の中に取り入れるというような形で提言案をもう少し具体的に入れて、少し、ぽつを多くしていただきたいなというふうに思います。意見でございますが。

【井上座長】
  最後の点は、ちょっと項目が違うような気がするのですが。

【樫見委員】
  ああ、そうですか。

【井上座長】
  これはむしろ、法科大学院においても、弁護士会を中心とする実務の場に役立つようなトレーニングをしましょうと、そういう趣旨ですので、むしろ(3)の中の話なのかなと思います。
 また、最初に言われたことは、多分誤解であり、皆さんの議論の中で出てきたのは、最近、学部レベルできちんと学力を着けてこない人が増えている。レベルが下がっているので、そこを強化してもらわないと、法科大学院の方で幾ら頑張っても、短期間では追いつかない。そういう意味で、学部の方をもっと強化してもらいましょうということが一つと、もう一つ相互の連携を強めるというのは、例えば未修者教育のために学部と連携した授業とか、そういう展開が図れないかということ。多分その両面を言おうとしていると思うのですね。

【松下委員】
  4ページの検討事項3の二つ目の、このペーパーの最後の黒ぽつについてですが、予備試験が法科大学院の教育に与える影響について速やかに把握・分析するとありますけれども、端的に言うと把握・分析だけでいいのかというのが私の意見です。少なくとも何か、一つ目の黒ぽつで、政府全体で議論することではあるんだけれども、本特別委員会として法科大学院の立場から検討するという書きぶりまでいっているので、予備試験についても、最終的に決めるのはもちろんここではないわけですけれども、本特別委員会として法科大学院の立場から検討するということはできるんじゃないかと思うんですね。ですから、把握・分析するという非常に静的なスタンスだけではなくて、もう少し何か物を言うというスタンスで書いていただけないかなというのが私の意見でございます。

【井上座長】
  ここは恐らく、本委員会の所掌との関係で、自制的な書き方をしているのだろうと思います。

【松下委員】
  所掌で言うなら、一つ目の黒ぽつだって同じはずなので。法曹養成全体については政府全体で議論するんですが、本特別委員会としては法科大学院の立場から検討するという書き方ができているわけですから。

【井上座長】
  1番目は、教育内容、改善・充実について深めるとともに、法科大学院の立場から司法試験・司法修習との有機的な連携の在り方について引き続き検討する。これは連携法の精神からいっても、こちらでも物を言える部分です。ところが予備試験の方については、法科大学院教育との連携ということはないものですから、そこのところの物の言い方は難しいのだろうと思うのですね。言えるとすると、法科大学院に行って教育を修了しなくてもそれに見合うだけのものがあるから、本試験を受けることができるという趣旨のはずなので、そういうことを確かめる試験になっているかどうかについて、法科大学院の立場からは疑いがある、そういう言い方は恐らくできるのだろうと思います。
 御趣旨を踏まえて、もう少し工夫できるか検討してみたいと思います。
 ほかの方はいかがでしょうか。

【椎橋委員】
  私は教育到達度確認試験について、若干意見を申し上げたいと思います。これは当然のことながら、プロセスによる法曹の養成、継続的・段階的な教育というものが前提になっているはずでありますから、予備試験の見直しという問題にも関わってくるのではないかと思っております。法科大学院でも、常に段階的に教育をし、その効果がどのぐらいあるかということを見極めながら、更に教育を充実させていくということが大事だと思い、各学年の終わりに進級制度を設けて到達度を確かめているのですが、外部の動きとの関係でも、その中身が変わってくる可能性があるのではないかと思います。
 今、政府の検討会議でどこまで議論が進んでいるか正確には分からないのですけれども、択一試験を廃止するとか、免除するとか、そういうような動きがありましたよね。そういうようなことになった場合に、果たして択一試験を司法試験からなくすのがいいのかどうかということ自体が大問題ですけれども、私は今の時点では択一試験というのは、やはり物事を短い時間で判断して的確に答えを見つける、論理的な判断が速くできるということは、法律家としては非常に重要な素養・能力であると思っておりますので、そのような能力はどこかで鍛えて、それを見極めておくということが必要であると思います。
 もしそれがなくなった場合には、現実の司法試験では、なかなか論文式試験だけでは出題数が2題とかいうようなことになっていて、しかも、出しやすい問題というか、重要な問題というか、要するに、余り重箱の隅をつつくような問題を出しても仕方ないので、どうしてもある程度出題分野が限られてこざるを得ません。そうしますと、各科目の重要な領域については全体を通して勉強してもらいたいということと、それから先ほど言ったような的確な素早い判断能力を養うという点で、やはり択一試験の勉強で養われる能力・素養というのも大事だと思います。もし、択一的な試験が廃止されるというようなことがあれば、この共通到達度確認試験というようなもので、それをカバーする必要があるのかなという意見を持っております。

【有信委員】
  この検討事項の整理は、基本的には私はよくいろいろ書き込まれていると思います。非常に難しいんですけれども、バックグラウンドとして、やっぱり法科大学院は専門家としての法曹を養成する。そうすると、専門家としての法曹ということに対しての理念は、もともと最初に法科大学院を設計したときにいろいろ議論をされて出てきていますけれども、例えば西洋側の国々だと、専門家というのは専門家の集団が、基本的な専門的職業に関する行動コンダクトのようなものがあって、基本的に要求条件が極めて厳しく設定されているわけですよね。その設定されている要求条件に合うような形で養成をしなければいけないから、当然それを養成すべき訓練なり教育のプログラムが要求されているわけです。それに合う形で、多分法科大学院も基本的に設計をされているという、ここの部分がいわば点からプロセスへということだろうと思います。点からプロセスへというときに、そういうことをやはりきちんと頭に置いて検討していく必要があると思います。
 それからもう一つは、ちょっと具体的に言うと、学部教育と専門教育との間の落差といいますか問題点は、実は法学だけじゃなくて、工学の分野でもかなり問題になってきています。工学部の学部教育が基本的に要求される基盤的な学問をきちんと教えきれているのかという疑問が、実は産業界からいろいろと出されてきています。これは例えば、工学系の大学院が、それぞれ専門的に新しい分野に特化をしてきている中で、世の中は特に専門的に特化している部分よりは、やっぱり技術者として基本的な素養、基盤を身につけている人を要求している部分がかなり多いわけですよね。だから、そこが手薄になっているということが言われていて。多分法学教育は、恐らく基盤的なところはそんなに変わってはいないんだろうとは思いますけれども、そういう部分の影響は多分いろいろと出てくるんだろうと思います。

【磯村委員】
  一つは体裁の問題なのですけれども、黒ぽつで記載されている事項は、ほとんどの場合、一定のアクションを前提とする内容になっているんですが、最初日吉委員が御指摘となった1ページの末尾から2ページの最初のところ二つまでは、状況認識の問題であって、他のものとは少し位置付けが違うので、これを書きたいという趣旨はよく分かるんですけれども、体裁についてちょっと御検討いただくといいのではないかと思います。
 それから、同じ2ページ目の二つ目の黒ぽつで、司法試験には合格しなかったけれども、法務博士を取得するという場合に、法律実務に関する一定の素養という表現が適切なのか。むしろ、法律専門家としての一定の素養という方が実態に合うのではないかという気がします。
 また、先ほどちょっと議論があった2ページの(3)の今後目指すべき教育方法・内容の問題と、3ページの検討事項2のところの(3)の問題は、項目の内容として実際には重なっているので、後者の方にまとめるというのも、柱の立て方としてはあるのではないかという気がしました。
 最後もう1点だけですが、今の3ページの方の(3)の四つ目のところの黒ぽつで、教員体制の充実を図るということの具体的な内容が、法律実務基礎教育の充実であるとか、研究者教員と実務家教員の割合ということで、どうも実務家教員関連にシフトし過ぎているのではないかと思いますので、もう少しニュートラルに、研究者教員も含めた教員体制の在り方というものを書き込む方がいいのかなと思います。以上です。

【井上座長】
  最後のところは、研究者教員についても今、後継者の育成が非常に難しい状況になっているので、そこを充実していかないと、法科大学院という入れ物はあっても、それを動かす人が絶えていくことになりますので、非常に重要だと思いますね。御指摘ありがとうございました。

【土屋委員】
  今の4ページの一番後ろのところなんですけれども、司法修習との有機的な連携の在り方というのが本文で上から4行目のところに書いてありますけれども、司法修習との有機的な連携というのは別項目にした方がいいんじゃないかと思います。というのは、法科大学院制度ができたときの1つの法科大学院の在り方として、実務修習、司法研修所での修習の前期修習の部分を法科大学院の方である程度取り込んでやるという考え方もあったはずなので、私は司法修習との連携というのは、法科大学院の非常に大きな役割だと思っております。どこかに埋没させてしまうのではなくて、書くならば一つぽつを作るなりして独立させてやった方がいいんじゃないかと思います。
 それで現状を見ますと、司法修習の時間が以前に比べて非常に短くなってきています。ということで、実際に若い法科大学院を出た弁護士さんなんかのお話を聞くと、実務修習についてもうちょっと充実した中身が得られるようなものが欲しいという声も聞くわけですね。そうしますと、それはここで議論する話ではなくて、司法修習というその在り方を議論するものだというのは分かるんですが、ただそこの橋のかけ方については、十分法科大学院の在り方として考えていく余地があるんだろうと思います。それが法科大学院の中で大きく位置付けられるとすれば、実務修習、実務家として、社会で活躍していく上でのベースを作るという法科大学院のもう一つの側面の大きな役割がきちんと位置付けられて、これは先ほどの予備試験じゃありませんけれども、予備試験の勉強では得難いものがそこにあるということになって、法科大学院としても大きな魅力の一つになるのではないかと思うんですね。
 そういうことに力を傾けてやっていただける、それだけの余力を法科大学院に求めるというのは大変だと思うんですが、そういう方向で法科大学院の在り方を見直してやっていこうというところがもしあるとすれば、そこを選んで入ってくる学生も多いだろうと思うんですね。そういう法科大学院の魅力を高めるという意味で、司法修習との連携というのは、私は重要なものだと思います。そういう意味で、書くとしたら一つ項目を立てて書いていただきたいと思います。以上です。

【鎌田委員】
  今の司法修習との関係については二つの側面からちょっとコメント的な意見を述べさせていただきたいと思います。
 一つは、まさに司法修習との連携の在り方の中で、研修所に入ってきた人の実務対応能力が低いということで、私から見れば事実上の前期修習の一部復活的な導入、修習が始まることになったという、この現状の中で何をどう言うべきかというのはかなり微妙な問題だなというふうに思います。と同時に、今の御提言のある側面は、先ほど来いろいろな形で言われている予備試験との関係にも関連してくるわけで、今先生がおっしゃった、司法試験の単答式を軽くしようというのも、これも法曹養成制度検討会議の一定の方向性として出されたんですが、その前提としては、法科大学院で日常的に議論を積み重ね、何度も試験を経て厳格な進級判定をされている人たちの最後の効果測定が司法試験だというふうに見たときに、現実に未修者グループが択一式試験対策に非常に苦労しているというふうなことを考え併せると、択一試験を全廃ではなくて、基本科目に限っていくというのが一つの選択だというふうに思います。
 ただし、実際に各法科大学院がそれに値するだけの教育をし、かつ効果測定をしているかというところに客観的信頼性を持たさなければいけないというのが、到達度を確認するための統一的試験制度と、こういうふうなものに結びついてくるのではないかというふうに思っています。そうだとすると、予備試験というのも実はそういう2年ないし3年かけた法科大学院教育を受けたのと同等の能力があるかということを試す試験であって、今のように司法試験と同じような形で、同じ委員が同じコンセプトで試験を出すというのは全くおかしいんだというふうに思うんですけれども、これを改めてくれということは幾ら言ってもなかなか難しいのかもしれない。
 私は制度改革までしなくてもいい、出題の考え方を変えてくれるのでいいんだと思うんですけれども、ただそのときに、しかし今のような流れでいくと、そんなふうに予備試験を難しくするほど法科大学院はちゃんとしたことをやっているのかというふうなことは常に出てくるんですけれども、医学部だってやっぱり長い期間かけて、日常的に様々な訓練を経た上での最後の国家試験だということで、授業に全然出ないで予備校に一生懸命行って、試験に通る技術を身に付ければいいなんていう発想はまずあり得ないんだと思うんです。今、そこのところで法科大学院が、実はどういうふうに書けばいいか名案が浮かばないから発言は遠慮していたんですけれども、やっぱり法科大学院に来ないとこういうことができないじゃないかという点を重視すべきだと思います。それは例えば、先ほど来の臨床法学教育なんていうのも一つかもしれませんし、法的な理解力だけじゃなくて、議論や何かを通じて、コミュニケーション能力であったりそういうものを身に付けていくとか、より理論的な研究に通じていくようなものも身に付けていくという、こういうことが法科大学院にはあるんだから、そうした学修を経た上で試験をやらなきゃいけないというふうな話が、前文の中でもどこでもいいですから、もうちょっと法科大学院ならではの積極面みたいなものが入れられるといいなというふうな感じを持っています。
  もう一つは、これも入れ場所が非常に難しいんですけれども、当面の課題についての対応なんですけれども、これからの法律学を支えていく人、あるいは法学教育を担っていく研究者の養成というのも、法科大学院にとっての大きな役割なので、そういう部分についても何かちょっと盛り込めるようなことがあれば、入れていただけるといいなという感想です。

【井上座長】
  これは、これから本委員会で議論していく入り口の論点整理でありますが、同時に我々には任期がありますので、その限られた時間の中で重点的にどこを議論していくか、そういう視点からはどうしても絞らざるを得ないところがありますけれども、御趣旨はよく分かりました。
 
【杉山委員】
  3ページの(3)の最終のぽつの書きぶりなんですけれども、「学生の希望や適正を踏まえ企業法務、公務部門など進路変更への対応とともに」という書きぶりなんですが、戻って1ページの(1)の一番下の大前提が、「法廷活動のみならず、企業、公務、地域の様々な場において多様な貢献ができる存在としての法曹」という大前提からしますと、この進路変更という言葉が次善の策のような感じで、多少書きぶりを御配慮いただけたらという思いを持ちました。

【井上座長】
  確かにそうですね。
 時間が迫ってきていますので、あと数人の方々に限りたいと思いますけれども、どうぞ。

【土井委員】
  特に変更を求めるものではなくて、検討事項1、それからその前の部分は、ここはやはりどうあるべきかということをお書きいただいている部分なんですね。検討事項2の部分については、実は今も杉山委員からありましたように、理想に向かってどう進むかという部分と、次善の策としてどうするかという部分が混在していて、そこは出てくるとは思うんです。ただ、私はそれでもなお検討事項1があった方がいいと思うのは、基本方針を明確にしていった上でそれに向かう部分と、現在どうしようもなくなってきている部分をどう対応するかという、二つがあった方がいいと思います。
 先ほどから出ている法学部の問題につきましても、法科大学院は大学院課程に置いているために、当然入学資格は学部卒か、それと同等の者しか入学できないわけです。ところが、予備試験には受験資格がない。だから、法科大学院修了者と同等の能力を持っているかどうかを試す試験は、法科大学院入学資格すらない者の受験できるという事態が生じていて、その結果、そのような事態に当面対応するために3年飛び級を認めましょうかとか、法学部の教育との連携を取りながら、どうやって優秀な人材を法科大学院に引きつけていくかという議論になるので、後ろにそれが出てくるという形になっているんですね。
 だから、矛盾していると言われれば、そうなのですが、やはりそこの部分は理想として向かう部分と現実の対応があるので、そういう形で整理していただくしかないんじゃないか。最低限表現は注意していただかないといけないと思いますが、両方議論しなきゃいけないのは当然なので、そこさえ注意してもらえればと思います。

【井上座長】
  分かりました。そろそろよろしいですか。
 今日頂いた御意見を踏まえまして、私と事務局の方で修文させていただいた上、各委員に御確認いただき、更に御意見があれば文書、あるいはメール等で御意見を承り、最後の調整については座長にお任せいただくというふうにしたいと思いますが、そういう運びでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【井上座長】
  ありがとうございます。
 それでは、この論点整理ができましたら、今後、それを基に、政府全体での検討状況をもにらみながら、中身について立ち入った御検討をお願いすることにさせていただきますので、今後ともよろしく御協力をお願いしたいと思います。
 それでは、事務局から今後の日程について御説明をお願いします。

【今井専門職大学院室長】
  失礼いたします。次回の法科大学院特別委員会の日程につきましては、事務局より改めて御案内申し上げたいと存じます。

【井上座長】
  本日はどうもありがとうございました。

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高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

(高等教育局専門教育課専門職大学院室)