法科大学院特別委員会(第58回) 議事録

1.日時

平成25年12月12日(木曜日) 16時~18時

2.場所

文部科学省中央合同庁舎7号館東館15階 15F特別会議室

3.議題

  1. 政府における法曹養成制度に関する検討状況について
  2. 法科大学院教育の改善・充実について
  3. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)有信睦弘、井上正仁、土井真一の各委員
(専門委員)磯村保、笠井治、樫見由美子、片山直也、鎌田薫、椎橋隆幸、杉山忠昭、田中成明、日吉由美子、松下淳一、松本裕、山本和彦、吉崎佳弥の各委員

文部科学省

(事務局)布村高等教育局長、常盤高等教育局審議官、牛尾専門教育課長、今井専門職大学院室長、佐藤専門教育課課長補佐

5.議事録

【井上座長】
 所定の時刻になりましたので、第58回になりますけれども、中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会を開催させていただきます。
 まず、事務局から配付資料の確認をしていただきます。

【今井専門職大学院室長】
 それでは、失礼いたします。事務局より配付資料の御説明をさせていただきます。
 議事次第を御覧いただけたらと存じます。資料1は前回の法科大学院特別委員会の議事録の案でございます。内容を御確認いただきまして、修正等ございましたら、事務局までお申し出ていただけたらと存じます。
 続きまして資料2-1、これは法曹養成制度改革顧問会議第4回会合におきまして、文部科学省より配付し説明した資料でございます。資料2-2は、同じく顧問会議で配付されました「法科大学院に対する法的措置について(案)」でございます。資料2-3は、「平成25年司法試験・司法試験予備試験受験状況等」について、法務省より提出いただいた資料でございます。
 続きまして、資料3-1は、本日御議論いただく事項に関しての関連の答申、報告書の抜粋でございます。資料3-2は「法科大学院教育に係る各種状況調査結果について」の速報値でございます。資料3-3は「今後更に検討すべき事項に関する論点(たたき台)」として資料を提出させていただいております。
 そのほか、参考資料1から4まで、それぞれ二つのワーキング・グループにおける検討経過報告書、また公的支援の見直しの更なる強化策、入学者選抜状況等の資料について配付させていただいたところでございます。
 お手元の資料を御確認いただきまして、何か不備な点等ございましたら、事務局までお申し出いただけたらと存じます。
 以上でございます。

【井上座長】
 よろしいでしょうか。
 それでは、議事に入りたいと思います。
 まず、今月9日に法曹養成制度改革顧問会議におきまして、法科大学院の現状とその改善方策などにつきまして議論されたと聞いております。
 このことについて、まずは事務局より御説明いただきたいと思います。

【今井専門職大学院室長】
 それでは、失礼いたします。
 まず事務局より、資料2-1、資料2-2に基づいて御説明させていただきたいと存じます。資料2-3につきましては後ほど松本委員より御説明いただきます。
 それでは、資料2-1を御覧いただけたらと存じます。
 第4回法曹養成制度改革顧問会議、文部科学省説明資料といたしまして、法科大学院の現状とその改善方策について、説明、報告をさせていただいたところでございます。まず、1ページ目は法科大学院に関する政府方針とその対応を表にしたものでございます。左側一番端にございますように、法曹養成制度関係閣僚会議の決定におきまして、法科大学院に関しての大きな問題点が三つ、規模の問題、先導的取組の支援策、そして、教育の質の問題について、それぞれ今後取り組むべき事項が書かれております。
 それに対して、今後どれぐらいのタイムスパンで検討していくのか、それがこの期限として書かれているところでございまして、私どもといたしましては、現在、一番右側でございますが、文部科学省における現在の進捗状況を、それぞれの規模の問題、先導的取組の支援、そして、教育の質の問題で取り組んでいる旨、御報告、御説明させていただいたところでございます。詳細につきましては、この資料の中で詳しく御説明させていただきたいと存じます。
 また、資料2ページ目を御覧いただけたらと存じますが、こういった政府の方針に至る前に、これまでの法科大学院の改革の進捗状況、推進状況を御説明させていただきました。詳しい内容は割愛をさせていただきますが、ここにございますように、プロセスとしての法曹養成、左側から、その取組を始めた中で、真ん中にございますように、顕在化した課題というものもございました。これ以降、まさにこの中央教育審議会法科大学院特別委員会での御報告、御提言を踏まえまして、こういった課題に対しての対応をそれぞれ取り組んできております。
 また、一番右側の現在の課題といたしましては、各法科大学院の差が拡大している、また、法学未修者教育の充実が必要であるといったところに対してのこれまでの取組状況について整理をさせていただいたものでございます。
 こういった取組を経まして、3ページ目を御覧いただけたらと存じますが、現在の法科大学院の入り口と出口の状況についてそれぞれ御報告させていただいたところでございます。
 資料の3ページ目は入学定員の適正化の経過でございますが、グラフにございますように、オレンジ色が入学定員、小豆色が実入学者数でございますが、これまで、特に平成22年度以降でございますが、入学定員の削減について、中教審での御提言なども踏まえながら、全ての法科大学院においてその削減に取り組んでいただき、直近のデータと比較いたしますと、ピーク時から比べて入学定員は約30%の減。また、競争倍率の確保ということについてもいろいろと指導させていただく中で、現在では実入学者数が50%強の減というところまでその規模が縮小してきているという状況でございますが、ただ、このままこのようなペースでの規模縮小というものが果たして法曹養成制度にどういう影響を与えるのか、そういったことを加味しながら議論していく必要があるのではないかということでの資料の御報告でございました。
 また、4ページ目を御覧いただけたらと存じますが、今御覧いただいたその入学定員、それから特に実入学者数でございますが、4ページ目の右側の方でございます。入学者数ピーク時が平成18年度の5,784名でございます。これを100とした上で、法学既修者と法学未修者の状況について整理させていただきました。当時を100といたしますと、平成25年度は法学既修者で言えばそのピーク時から75%のところで25%の減ということでございますが、特に法学未修者につきましては70%の減。現在は、ピーク時に比べて30%ということで、その規模の縮小がより進んでいるということを御報告させていただいたところでございます。
 続きまして、5ページ目を御覧いただけたらと存じます。今度は出口のところの動向でございますが、こちらは法科大学院の単年の司法試験の合格状況についてこれまでの経緯を整理したものでございます。ここにございますように、平成18年のときに初めて新司法試験が開始され、既修者を対象とした試験が行われたところでございます。そのときの合格率48.3%からスタートいたしまして、平成19年以降には未修者の受験開始。また、いわゆる5年3回の受験資格制限を使いながら、その受験者数が徐々に増えております。結果的には平成23年がピーク時でございまして、受験者数は8,765名まで増えて、合格率につきましても近年2,000人で推移している合格率との比較で申し上げますと23.5%まで下がったというところでございますが、この平成23年を境にいたしまして、受験者数の減も加味いたしまして、その合格状況、単年の率は今上がっている傾向にあるということを御報告しております。
 特に平成25年の合格状況につきましては、法学既修者で合格率38.4%、また、未修者では合格率16.6%ということで、既修者についてはより高い合格率を出しておりますが、その未修者との関係で申し上げますと、大変差が大きい状況ということでございます。
 その点を、今度は6ページでございますが、年度別修了者の累積合格率の状況についてお示しして御報告しているところでございます。特に修了年度、5年3回を修了されたうちの平成20年度修了者を御覧いただけたらと存じます。
 ここにございますように、特にその累積合格率、5年3回を終了されておられる方々の率を確認いたしますと、既修者につきましては68.7%の累積合格率状況となっております。一方で、未修者につきましては31.9%ということで、ここもダブルスコア以上の差が付いているという実態があるということを前提で、特に未修者に対する教育をどう充実させていくかというところにつながるのではないかということで御報告させていただいておるところでございます。
 続きまして、7ページ目を御覧いただけたらと存じます。御報告をさせていただいた入り口、そして、出口の状況を、特に現在問題が多いというこの課題を抱える法科大学院の状況に照らして資料を整理させていただいたものでございます。
 この小豆色、オレンジ色の各データは、表題に書いておりますように、司法試験合格率が全国平均の半分未満の法科大学院24校を前提に整理させていただいております。ここも同じように、平成18年度で1,200人弱ぐらいの実入学者数がおられましたが、例えば平成22年以降に公的支援の見直しを実施するなど、様々な施策を講じていった結果、平成25年の段階では実入学者数はピーク時から比べて86%の減、全体に占める割合も6.2%ということで、現在は166名の入学者というところになっている状況でございます。
 また、こういった施策を進めた過程におきまして、参考にございますように、学生募集停止をした大学というのがこれまで公表された学校が8校、また、現在検討している旨を公表されている大学も2校あるという状況で、またそれぞれにおいての自主的な組織見直しというのが加速的に進んでいるということも御報告させていただいたところでございます。
 以上のような形で入り口、出口の状況を御報告した上で、なお、8ページ目でございますが、一方で、その法科大学院教育において得られた成果として、在学生の声、また、修了生受入れ側として、本年5月に法科大学院協会もシンポジウムを開いていただきまして、そこで現在活躍されている方々の声を聞くといった、そういった広報の活動もされておられます。
 そういった中で出てきた修了者受入れ側の指摘として、例えば、法科大学院で学んだ法的な考え方をフルに活用して、離島での法律相談、また、現場ADRのような対応、これまでにマニュアルにないような対応に対処しているといったお声があったり、また、受入れ側からも、様々な分野で活躍するいわゆる法曹有資格者、弁護士なども増えているといった御報告があったような状況でございます。
 9ページを御覧いただけたらと存じますが、ここにございますように、そういった良いものをしっかりと引き上げていく、また、全体の教育資源を有効活用していくという流れで、こういった形での浮揚に向けた具体的な方策を打っていく必要があるだろうということを御報告させていただいたところでございます。
 その上で、10ページ目以降でございますが、では、今後どういった形で検討を進めていくのかというところでございます。この10ページ目の左側は、今まで御説明したこれまでの取組でございますが、真ん中の本年7月の関係閣僚会議の決定に基づいて、法科大学院については三つの方向性で今議論をしております。右側でございますけれども、既に現在、「公的支援の見直しの更なる強化策」を公表させていただいております。この公表に基づいて、現在、各法科大学院においては指標の改善、また、先導的取組の提案に向けた準備に着手をしていただいている状況でございます。更に今後検討していく、実施していく議論といたしましては、下の箱でございます。まさにこれから特別委員会で御議論いただければと思っておりますが、抜本的な組織見直しの促進の方策、また、共通到達度確認試験の基本設計等の検討、さらには、本日の議題でもございますが、その他も含めた教育の質向上に向けた検討。そういったものに着手をしていくということで報告させていただいているところでございます。
 続きまして個別の具体の報告でございますが、11ページは公的支援の見直しの更なる強化策でございますので、これは割愛をさせていただきたいと存じます。
 12ページ目を御覧いただけたらと存じます。前回の法科大学院特別委員会でも御報告をさせていただきましたが、組織見直しの促進のための改善方策の方向性を御説明しております。現在、中教審で検討しております方向性というのは、左側の箱にありますように、三つの改善方策、公的支援の抜本的な見直し、また認証評価の抜本的な見直し、連合・連携、改組転換の促進ということでございます。そのうち、右側にございますように、認証評価の抜本的な見直しにおきましては司法試験の合格状況や教育活動等に関する指標を充実させるなど各種改革に取り組んでいる、検討をしている旨、また、連合・連携、改組転換におきましても、課題が解決する、また、教育力が向上する、そういったことに資する連合大学院への改組や統廃合を促進していく。このような改革について検討している旨を御報告させていただいたところでございます。
 そして、13ページ目でございますが、共通到達度確認試験や法学未修者教育の充実方策の方向性についても御報告しております。
 共通到達度確認試験の基本設計につきまても、ここに書いてございますようなその目的、目標を御報告した上で、今後は更にその具体化に向けて試行を通じて検証作業に入っていきたいという旨の報告。また、特に法学未修者教育につきましては、その法学未修者にとってやはり一番大きなポイントでございます法律基本科目の充実した教育が行えるような、様々な改革。さらには、法曹以外の進路を目指す者についてはその適性なり希望に応じて進路の転換についての支援をしていく。そういった充実方策に取り組んでいきたい旨、報告させていただいたところでございます。
 最後は、14ページ目にありますように、今後に向けた改善のスケジュールは以上のようでございますが、こういった形で御報告させていただいて、今後の会議での御議論についてお願いさせていただいたところでございます。
 続きまして、資料2-2を御覧いただけたらと存じます。資料2-2につきましては、これは内閣官房に設置されております法曹養成制度改革推進室で作成された資料でございます。「法科大学院に対する法的措置について(案)」ということで、趣旨、基本的方向性、検討のスケジュールが示されてございます。
 特にポイントは基本的方向性でございます。一つ目の白丸にございますように、まず、公的支援の見直し強化策と施策の実施を通じて、各大学における自主的な組織見直しを促すことを基本と考えていくべきではないかということ、また、当該措置を講じても一定期間内に法科大学院の組織見直しが進まないと判断される場合には必要な法的措置を行うこと検討する。
 また、二つ目の白丸にございますように、その際には法曹人口、予備試験の在り方の検討とも整合性を図りつつ、更なる組織見直しを検討するという観点から検討していくということ。その際、ここにもろもろあるようなことについて、しっかりと考え方を整理していくということ。
 さらに、三つ目の白丸にございますように、対象となる法科大学院の判定に当たっては、これまでいろいろ指摘されてきた司法試験合格率が著しく低い、入学者選抜の状況、入学定員の充足率、教育状況に課題が大きいことなどを踏まえた基準を設定し、総合的に判断することを基本とする。
 そして、最後に四つ目の白丸でありますが、既に在学している学生へ不利益が及ぶことのないよう配慮する。
 そういったことが基本的方向性として案として示されたところでございます。
 また、検討のスケジュールにつきましては、この会議が設置されております平成27年7月15日までに法的措置の内容や指標などの具体的な在り方の検討について結論を得るということで検討していくということが報告をされたところでございます。
 以上、資料についての御説明は以上でございます。
 なお、こういった説明をさせていただいたとき、特に文部科学省からの説明に対しまして、顧問会議の顧問の先生方からは、例えば公的支援の見直しの強化策を講じることで得られる効果やその見込み、また、法的措置に関する今後の検討スケジュールの在り方などについての質問がございました。また、共通到達度確認試験と司法試験の関連付けについては、検討を更に要するのではないかということ。また、現在、法科大学院については三つの認証評価機関がございますが、その3機関間での評価基準の在り方についての指摘など、るる、ございます。今後、顧問会議としても、法的措置等に関する議論を含めて引き続き議論が行われるということで話が整理、議論されてきたということでございます。
 私からの御報告は以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございました。
 また、前々回の9月18日の法科大学院特別委員会におきまして、平成25年の司法試験結果に関する説明がありましたが、その際、委員から幾つか御質問がありました。これに関して、関連資料を法務省より提供いただいております。
 これにつきまして、松本委員の方から御説明をお願いできればと思います。

【松本委員】
 ありがとうございます。
 お手元の資料2-3を1枚おめくりください。1ページ目、こちらは前々回のこの会議で司法試験結果について御説明申し上げました際に、予備試験合格資格の者だけではなく、法科大学院修了資格の者につきましても年齢別とか前職の職業別、あるいは、出身学部別などのデータがないかという御質問を頂いておりました。この点について検討したところでございますが、年齢別のデータがございましたので、その点につきまして取りまとめたものでございます。
 法科大学院修了資格の者では、やはりこの表にございますように、25歳から29歳のこの層の者が圧倒的に多いという結果になっております。ただ、40代や50代におきましても受験者が相当程度いるということもお分かりいただけるかと思います。
 なお、出身学部別につきましては、法学部か法学部以外かということまでは把握しており、前々回の資料でもお示ししたところでございますが、それ以上に学部別の数までは把握していないところでございます。
 さらに、次のページを御覧ください。こちらが本年の司法試験を予備試験合格の資格で受験した者の最終学歴別のうち,大学在学中と法科大学院在学中の者につきまして、学年別の数字を出したものでございます。これは出願時、すなわち、昨年の11月から12月の時点での自己申告によるデータでございますので、今年の司法試験受験時には年度が1年加わることになるというところでございますが、大学在学中の者の中では4年生が多いこと、さらに、法科大学院在学中の者では2年次在学中の者が多いことがお分かりいただけると思います。
 続きまして、1ページおめくりください。これは御質問いただいていたところではございませんが、本年の司法試験予備試験の結果についての資料を用意しております。本年の予備試験の最終合格者数は、ここに記載しておりますように351人でございまして、昨年の219人に比べて132人の増加となっております。
 2ページめくっていただきますと、本年の予備試験につきまして、男女別、年齢別、職種別、さらに、この次のページに最終学歴別のデータをお示ししております。これも職種別、最終学歴別のデータにつきましては出願時、これは本年の1月になりますが、この出願時の自己申告に基づくデータでございます。
 最終学歴別を御覧いただきますと、最終合格者のうち、大学在学中が107名、法科大学院在学中が164名となっておりまして、全体の合格者の約77%を占めているという現状でございます。
 さらに、次のページには、この最終学歴別のもののうち、大学在学中と法科大学院在学中の者につきまして、学年別の数もお示ししておりますので、御参照ください。
 なお、資料では用意しておりませんが、前回の顧問会議の結果についての御報告が文科省からございました。内閣官房の立場から、1点追加で御報告がございます。
 内閣官房といたしまして、最高裁に設置されている司法修習委員会、あるいは、そのワーキング・グループの場で、導入的集合修習の創設という御提案をし、顧問会議でも議論をし、さらに、司法修習委員会、あるいは、その幹事会、あるいはワーキング・グループでも議論がなされてきたところでございますが、前回の司法修習委員会におきまして、この点につきまして大筋、次のような合意がなされております。
 まず、司法研修所におきまして集合型式でその導入的教育を実施する。期間は平日15日間とする。各科目ついて、導入段階に適した即日起案を実施し、解説を行う。さらに、具体的なカリキュラムにつきましては司法研修所教官室を中心に検討し、早期に結論を得るという状況で議論がなされまして、基本、この方針が了解されたという状況でございます。
 御説明申し上げましたように、このカリキュラムにつきましてはまさに今検討中でございまして、来年の1月に予定されております司法修習委員会におきまして報告がなされるものと承知しております。
 そこにおいて特段の問題がなければ、先ほど御説明した内容で導入的集合修習というものを実施し、かつ、その時期につきましては可能な限り早い時期に実施をするという状況でございます。
 内閣官房といたしましては、例えば寮の収容キャパの問題がございます。この点につきまして、例えば、同じ和光にございます税務大学校の寮の活用の可能性等につきまして、現在、国税庁に対して相談を申し上げているというような状況でございます。
 以上でございます。

【井上座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいままでの御説明につきまして、御意見、御質問等がございましたら、御発言願います。何かございますでしょうか。

【吉崎委員】
 よろしいでしょうか。

【井上座長】
 どうぞ。

【吉崎委員】
 司法研修所の吉崎でございます。
 今、松本委員の方から司法修習委員会の状況について、本来、私が報告すべきところを、気を遣っていただいて、御報告いただいたところでございます。
 私は、今御報告いただいたところのとおりでございまして、法曹養成制度検討会議の方から託されておりました導入的教育に関しまして、法曹三者で様々に議論した結果、先ほど、松本委員の方から御報告いただいた導入修習の創設という方向について、司法修習委員会で議論いただきまして、一定の方向性自体については御了解いただいたというふうに認識しております。
 もっとも、法科大学院教育、司法修習、その後の継続教育という法曹養成制度のトータルの流れの中での司法修習の位置付けを意識せよ、カリキュラム作成に当たって法科大学院教育を経ていることなどの流れについて意識せよという御意見も頂きました。その点については今鋭意検討しておりますカリキュラムの中で生かしてまいりたいと思っているところでございます。
 以上でございます。

【井上座長】
 どうもありがとうございました。
 どうぞ、片山委員。

【片山委員】
 よろしいでしょうか。今、研修所の新しい集合的な導入研修についての御説明をいただきましたが、お伺いしたのは、まず、その集合研修を導入する趣旨です。特に予備試験での合格者に対応したということなのか、それ以外でもやはり法科大学院での教育の格差に対応したということであるのかという点。それから、集合導入研修を15日行うということですと、その部分、15日研修が増えるということなのか、それとも、どこかで削るということでしたなら、どの部分が削られるのかという点を御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【井上座長】
 これは、吉崎委員の方からお答えいただけますか。

【吉崎委員】
 では、失礼いたします。
 まず、第1点、導入的教育のコンセプトというところでございますけれども、こちらはワーキング・グループの取りまとめとしましては、修習開始段階で司法修習生に不足している実務基礎知識、能力に気付かせ、かつ、より効果的、効率的な分野別実務修習が円滑に行われるように、という整理になっております。
 したがいまして、予備試験への対応ということを明示しているところは当然ございません。
 それから、15日の日数設定の御質問を頂きました。1年間という修習の枠組みを越えて日数を設定する、つまり、修習期間を延ばすということは一切考えておりませんで、平たく言ってしまうと、ほかの修習期間からつまんで日数を確保するということで検討しております。
 最高裁の係官からの方の説明としましては、現在、A班、B班という形で、実質日数35日程度ずつ行っております集合修習を、それぞれ5日ずつ、合計10日、それから、分野別実務修習の方から、4クールございますけれども、それぞれ二、三日程度削るという形で、この導入修習期間を捻出してはどうかと考えているという紹介をさせていただいていたところでございます。

【井上座長】
 ほかに御質問、御意見等がございましたら。
 どうぞ、土井委員。

【土井委員】
 質問でございますが、予備試験の方で、資料2-3、最後の7ページの数字で、今年度の出願者数、法科大学院の2年次1,301名という数字でございますが、法科大学院の2年次に在籍している者の数は今、正確に分かりませんけれど、3,000人程度だとすると、1,300名というのは半数近くが受験をしているという状態になります。これが、本来、予備試験が想定していた事態なのかどうか、重大な懸念を抱かざるを得ない数字ではないかと思います。これは意見でございますが。
 あと、その予備試験の受験者数は、経年で変化していると思うんですね。平成23年、平成24年、平成25年について、全体の合格者数と、そのうち、分かればで結構ですけれど、ここの分類で言えば、大学在学中の者、法科大学院在学中の者、その他に該当する者の数がどのように変化してきているのか、分かれば、教えていただきたいと思います。

【井上座長】
 1点目は、御意見ということでよろしいでしょうか。

【土井委員】
 はい。

【松本委員】
 御質問の点につきましてはちょっと資料を精査して、できましたら次回にまた整理をして御説明できるかと思いますので、よろしくお願いします。

【井上座長】
 そういうことでよろしいですか。

【土井委員】
 はい。

【井上座長】
 ほかに御意見、御質問等、よろしいですか。
 それでは、次に進ませていただきますが、もし何かございましたら、後の議題と併せて御発言いただいても結構です。
 次に、前回の本特別委員会におきまして、二つのワーキング・グループからの御報告に加えまして、法科大学院特別委員会として検討を要する事項案を事務局の方から示していただきました。この点につきまして、本日議論していただきたいと考えております。
 法科大学院に関する調査結果と併わせて、事務局の方からまず御説明をお願いします。

【今井専門職大学院室長】
 それでは、失礼いたします。資料3-1、3-2、3-3に基づいて御説明させていただきたいと存じます。
 まず、資料3-1でございますが、これは前回御報告した際にお示しいたしました論点として、養成に係る時間的コストの短縮、それから、法曹実務基礎教育の充実、また、法科大学院による法曹有資格者等を含めた活動領域の拡大の取組、また、法科大学院における継続教育機関としての役割の充実、そういった点についてのこれまでの関連する答申、報告の抜粋でございます。詳細はまた議論の中で御参照いただけたらと思いますが、ポイントだけ御説明させていただきます。
 まず、法曹養成に係る時間的コストの短縮の関連で申し上げますと、平成13年の司法制度改革審議会でも既に様々御指摘をいただいておりますが、特に1ページ目の下段(5)、法学部教育の将来像のところでございます。一つ目のアンダーラインにありますように、法学というのが今、法曹以外にも社会の様々な分野に人材を輩出しており、その機能は法科大学院導入後も基本的には変わらないだろうということでございますが、その次のアンダーラインにございます、「学部段階における履修期間については、優れた成績を収めた者には早期修了を認める仕組み(いわゆる飛び級)を適宜活用することも望まれる」ということが提言されていたところでございます。
 また、そういったことを踏まえまして、平成14年の中央教育審議会における法科大学院の設置基準等に関しての答申でございますが、この中で、2ページ目でございます。上の箱、3(3)のところの真ん中辺りにアンダーラインを付しております。「学部段階においては、優れた成績を収めた者に対して、大学院への学部3年次からの飛び入学や学部4年未満での卒業など早期に大学院に入学できるような仕組みが既に開かれている。ただし、これらの者については法科大学院での3年未満での短期修了を一般的に認めると、学部段階において法曹に必要な幅広い教養を身に付けることがおろそかになるおそれがあり、適当ではない」というのが当時の答申の中では示されていたところでございます。
 なお、2ページ目の下段でございますが、本年6月の法曹養成制度検討会議におきまして、その取りまとめの中では、一番下のアンダーラインにございますように、「法学部教育も含めた養成期間の短縮、例えば飛び入学等の積極的な運用」というのも考えられるのではないかということで提言を頂いているというのがこれまでの経緯でございます。
 続きまして、3ページ目を御覧いただけたらと存じます。法曹実務基礎教育の充実についての過去の提言等でございます。
 平成13年の司法制度改革審議会の中でも様々御指摘を頂いておりますが、法科大学院につきましては、「エ 教育内容及び教育方法」のところでございますが、法科大学院では、ここにございますように,「実務上生起する問題の合理的解決を念頭に置いた法理論教育を中心としつつ、実務教育の導入部分をも併せて実施することとし、体系的な理論を基調として実務との架橋を強く意識した教育を行うべきである」ということに基づいて、例えば教員の組織の在り方、また、司法修習との役割分担等についての提言がなされていたところでございます。
 それを受けまして、4ページ目でございますが、平成14年の中央教育審議会、先ほどの答申の中でも、4ページの(5)教育内容・方法等でございます。法科大学院において、「法理論教育を中心としつつ、実務教育の導入部分をも併せて実施する」、そのために、「法曹養成に特化した教育を行うという法科大学院の理念を実現するのにふさわしい体系的な教育課程を編成すべきことを基準上明確にする必要がある」という答申を頂いておりまして、その中で、法律基本科目群、それから、実務基礎科目群、基礎法学・隣接科目群、展開・先端科目群というバランスの取れた科目群の提示というのがなされたところでございます。
 こういったことを含めまして、5ページ目でございますが、さらに、法曹実務教育、科目の充実につきましては、平成21年の法科大学院特別委員会の報告の中でも御指摘を頂いておりまして、上から4行目から始まりますが、法律実務基礎科目につきましては、「法科大学院修了時に最低限修得されているべき共通的な到達目標の設定を検討することが必要である」という提言を頂いているところでございました。
 そして、そういったことを踏まえまして、6ページ目でございますが、下段の方でございます。法曹養成制度検討会議におきまして、この取りまとめにおきましては、こちらにございますように、法科大学院教育と司法修習の役割分担についての基本的な考え方を、上段のアンダーラインで整理しております。なお、下段でございますが、「現在、各法科大学院の実務基礎教育の内容にばらつきがあることを踏まえると、各法科大学院において実務教育の質を向上させることによって、その解消を図る」必要があるということが指摘を受けているところでございます。
 続きまして3点目の論点、法科大学院による法曹有資格者等の活動領域の取組についてのこれまでの提言でございます。司法制度改革審議会では、国民の様々な場面における法需要が量的にも質的にも増えていくということを前提として、そういった幅広い職域活動というものが考えられるということを前提にしております。その上で、例えば、昨年の平成24年7月に法科大学院特別委員会で御提言を頂きました中では、これから取り組んでいく改善方策の一番目の取組として、法科大学院の教育の成果の積極的発信ということを打ち出していただいておりまして、そういったものに基づいて、改善の初期段階に取り組むべきだろうということでございます。
 また、8ページ目を御覧いただけたらと存じますが、本年6月の法曹養成制度検討会議におきましても、ここにございますように、特に一番下の丸でございますが、法科大学院において幅広い知識を用いることができるよう、エクスターンシップ等の取組を充実させるということとともに、法曹有資格者に先端的分野等に学ぶ機会を積極的に提供するといった職域活動領域の拡大に向けた積極的な取組を行うべきだという提言を頂いております。
 この流れで、9ページ目でございますが、法科大学院の継続教育機関としての役割の充実についてでございます。平成13年の司法制度改革審議会におきましては、法科大学院において、現に実務に携わる法曹も、先端的・現代的分野等について学ぶこと、これは関係者の自発的、積極的な取組が求められるところであるという提言を頂いております。
 また、平成24年7月19日の法科大学院特別委員会の提言におきまても、法科大学院はこの法曹の継続教育に対する積極的貢献をすべきということで、下段の方でございます、「法科大学院においては、法曹関係者の要望を踏まえながら、最新の法学研究の成果に基づく専門的知識等を提供するための研修コース等を設ける」といった取組について提言を頂いているところでございます。
 そして、10ページ目でございますが、法曹養成制度検討会議においては、各法科大学院の継続教育機関としての役割を果たしていくことが期待されるということの提言を頂いているという状況でございました。
 以上、これまでの提言は今御説明したような状況でございます。こういったことも踏まえつつ、現状どのようになっているかということを、今回私どもで調査いたしましたので、その報告をさせていただければと存じます。資料は3-2を御覧いただけたらと存じます。法科大学院に係る各種状況調査の結果についての速報値ということでございます。今後、データが変わり得ることも前提でありますが、一応一定の取りまとめができておりますので、御報告させていただきたいと存じます。まず、1ページ目をおめくりいただけたらと存じます。法科大学院における飛び入学、早期卒業の実態について調査させていただきました。2ページ目はその入り口の状況でございます。
 一つ目の白丸にございますように、飛び入学による入学の仕組みを持つ大学は現在53大学ございます。ただ、入学者の実績があるというのは29大学というところでございます。実際これまで累積でこの飛び入学による入学者数のは合計289名、そのうち、既修者が36名、未修者は253名となってございます。また、早期卒業による入学者の実績がある大学は24大学でございまして、これまでの累積で早期卒業による入学者数は合計227名、そのうち既修者33名、未修者194名ということでございます。
 なお、この表の一番下の合計を御覧いただけたらと存じますが、これまで入学者数は累計で46,639名でございますので、今の289名、また、227名の数字というのはそれぞれ全体に占める割合は0.6%、0.5%といった状況でございますが、一応入り口の実態としては今回このように確認させていただくことができました。
 続きまして、3ページ目でございますが、今度はその修了状況についてでございます。飛び入学を活用して入学された方の標準修了年限修了率を確認させていただいたところ、全体で88%が標準修了年限で修了されておられました。内訳は既修者93.3%、未修者87.3%でございます。また、早期卒業により入学した方の標準修了年限修了率は全体が87.5%でございまして、既修者91.3%、未修者86.9%ということでございました。
 なお、これらのデータは平成24年度修了者の全体の標準修了年限修了率で比較をいたしますと、全体は68.2%、既修者で85.8%、未修者で53.0%ということで、どの数字も飛び入学、早期卒業による入学者の方が大きいデータであったということが分かったところでございます。
 もう1ページおめくりいただけたらと存じます。こういった飛び入学、早期卒業者の成績・能力についての大学の評価を自由回答で頂きましたので御報告させていただきたいと思います。
 これまでのところ母数が少ないので何とも申し上げられないですが、一定数の飛び入学や早期卒業によってその入学者を受け入れた大学からの回答といたしましては、ここにございますように、上から大体6校目まで肯定的な評価が多くございました。法科大学院入学後、比較的優秀な成績を収めているということ。全体としてもその中程度の学力を維持しながら,学力が低下していることはほとんどないであろうということ。また、司法修習の合格者の中でも当該大学の平均的合格率を上回る結果を残している等々、概して大変優秀であるというような報告も頂いております。
 ただ、中には、下から二つございますように、実際には飛び入学による入学者と飛び入学していない学生との間に顕著な差が成績や能力には見られなかったという感想や、また、実際に受け入れた学生は全体として余り芳しい成績ではなかったというような御報告も頂いているような状況でございます。
 以上が、飛び入学、早期卒業について、今回調査させていただいた結果の報告でございます。
 続きまして、5ページ目を御覧いただけたらと存じます。法律実務基礎科目の現状についてでございます。まず、一つ目は1.でございますが、法律実務基礎科目に関する最低修得単位数の各大学の状況を確認いたしました。平均では12単位を修得することになっておりまして、おおよそ10単位から14単位の中で設定をされている大学がほとんどであり、69校、全体の95%がこの辺りで設定をされているということでございました。
 なお、2番目でございますが、担当教員についていろいろ調査させていただきました。法律実務基礎科目として平成25年度に、全大学において810科目が開講されているところでございましたが、必修、選択必修、選択科目のそれぞれにおける担当教員について確認させていただきましたところ、ここにございますように、いずれもほぼ90%以上、選択科目は86%でございますが、法曹三者である実務家教員が担当さているということでございます。
 また、法曹三者の実務家教員が担当されていない教科の内訳について確認いたしました。例えば法情報調査、法情報処理といった科目や、ベンチャー社会と法、エクスターンシップ、さらには、法律英語、企業法務論。そういった科目については法曹三者以外の教員が御指導されているという実態も把握できたところでございます。
 続きまして、6ページ目を御覧いただけたらと存じます。そういった法律実務基礎科目の中の特に体験的な法律実務基礎科目の状況でございます。ここにございますように、各大学での開講状況にばらつきがございますものの、全ての法科大学院において、何らかの形で体系的な法律実務基礎科目というものが開講されている状況でございます。多い順番から申し上げますと、模擬裁判、エクスターンシップ、クリニック、ローヤリングという状況でございまして、開講しないというところはこの紫色のところのような所でございます。その数は比較的少ないように見えて取れるところでございます。
 また、7ページ目を御覧いただけたらと存じます。共通的な到達目標モデルの取扱いでございますが、下段の円グラフでございます。到達目標を各大学によって策定、若しくは、策定予定である法科大学院を調査いたしました。平成23年6月時点は52校、これは法科大学院協会の発表資料に基づいた数字でございますが、今回、私どもでそのデータを平成25年4月現在で再度確認をさせていただいたところ、69校まで増加をしております。
 その内訳につきましては、緑色のところにございますように、全体の75%、55校の学校で既に全部策定をしているという報告が出てきております。また、黄色いところは既に策定に着手しており、一部について未策定であるという回答、また、現在未策定ではございますが、今後策定する予定にあるということ、そして、若干ではございますけれども、共通到達目標モデルをそのまま使用しているという御回答もありました。その他の大学につきましては、学生募集停止をされるといった大学ということでもございますので、基本的には何らかの形で共通到達目標モデルをそれぞれの大学で導入しようという傾向が見えてきたのではないかということが分かったところでございます。
 続きまして、8ページ目を御覧いただけたらと存じます。活動領域の拡大に向けた取組の実施状況についてでございます。ここについては、それぞれの大学からの御報告を紹介させていただきたいと思いますが、多くの大学におきまして、活動領域の拡大の取組を進めていただいております。一つ目は、8ページ目の上、真ん中にございますように、法曹または修了者の職域拡大に向けた取組といたしまして、求人情報の共有、また、ジュリナビへの登録、さらには、自治体においての法制執務担当者による講義、また、企業の法務担当者による講演会、そういったものを実施しているというような報告がございます。
 また、企業における活動領域を視野に入れて授業等でそういったものを整備している大学というものも多数出てきております。例えば、弁護士、公認会計士、その他企業法務の造詣に深い教員による企業法務、金融取引法、知的財産法、労働法といった授業・演習の開講に取り組んでいるという回答を頂いた法科大学院が多数ございました。
 また、数は少なくなってまいりますが、ビジネス法分野の授業科目の重点配置、ビジネス法コースの開設をしている大学、また、企業法務分野からの実務家教員の採用をしているという大学も中にはございまして、こういった点についても、各法科大学院で意識しながら取り組んでいることが分かるような状況でございます。
 続きまして、9ページ目を御覧いただけたらと存じます。より魅力ある教育を目指して取り組んでいる例として、各法科大学院から様々報告を頂いております。例えば上から一つ目、二つ目の四角にございますように、それぞれ公正取引委員会や東京都などからの経験者など、より多くの実務家に対して教育への参加を促進しているという取組をしている大学、また、ITなどを活用した学習支援システム、社会人が通いやすいという意味での都市部でのサテライト教室の開設などに取り組んでいるということがございます。
 また、上から五つ目、六つ目でございますが、グローバルを意識した取組もなされております。例えば多彩な外国法科目の開設をしているということ、また、英語によるライティングやプレゼンテーションの訓練、さらには、海外の法曹有資格者による講義や講演の実施。そういったものに取り組んでいること、また、海外の法科大学院も含めた学生の交換プログラムを実施しているといったような取組をしている大学の報告もございました。
 次に、その交換プログラムから数えて三つ目辺りには、例えば地域に特徴的な法律問題を学ばせるための司法過疎地域における巡回無料法律相談へ学生を参加させている。また、下から二つ目にありますように、学内に設置されている法律事務所と連携した臨床実務に関する教育の実施に取り組んでいるといった例なども報告を頂いておりまして、さまざま工夫をされているということも実態として判明してきているところでございました。
 そして、最後に継続教育の実施状況についてでございます。この継続教育に今積極的に取り組んでいく、また、これから取り組もうとしている大学が50校以上ございました。その中で、10ページ目にございますように、法曹有資格者に対して、応用的・先端的な授業科目を履修できる場を提供している大学がございます。ここにございますように、BUSINES LAW SEMINARを開講しているという取組、また、弁護士会に対して10科目程度の授業を提供している大学、また、実務家を対象とした聴講制度を設けるといった取組の報告が出ております。2番でございますが、新人弁護士に対しての研修や法律相談・ADRの補助業務の場を提出しているという例もございます。一つ目の黒ぽつにありますように、法科大学院出身者の新人弁護士を大学の中に、法科大学院の弁護士研修センターという形で設置をした所に所属をさせて、司法修習直後からその継続教育に取り組んでいるという大学、また、法科大学院の中に下部組織をそれなりに設けて、その法律相談の担当者を、法務研究科のOBの弁護士から募ってそういった相談に当たっていただく等の取組もしているという報告があったところでございます。
 さらに、11ページ目にございますように、法科大学院とは別に設置された法務研究所や司法研究所といった機関において実務家同士の情報交換、研さんの場を提供しているという例も幾つかございました。一つ目の黒ぽつにございますように、専門法曹養成研究教育センターという形で研究会を設置しているところ、また、法務研究所を設置して、弁護士同士の幅広い情報交換を可能にするような取組といったものをしているということでございます。
 なお、11ページの下段でございますが、継続教育に取り組むことを予定していない法科大学院も若干数ございます。理由として今回報告いただきましたのは、継続教育を別の機関、要は博士後期課程の方で担っているといった御報告、また、地元の弁護士会において既に研修制度がある中で継続教育の需要がなかなか見込めないのではないか、さらには、現時点ではやはり在学生を対象とした教育に注力したい、継続教育に取り組む教員数の余裕がないといったような声もございます。
 以上、長くなってしまい恐縮でございますが、各種状況調査の結果の報告でございます。以上のことも含めまして、資料3-3でございますけれども、事務局におきまして、この特別委員会の場において御議論いただいてはどうかと思う論点のたたき台を本日整理しております。
 1ページ目にございますように、前回、ワーキング・グループの調査検討経過報告された中で組織見直しと共通到達度確認試験の基本設計等についての議論がございます。これらに加えまして、今後の法科大学院の在り方をはじめとして、以下に掲げるような事項について御議論を更に深めていただければと考えているところでございます。
 一つ目は、ワーキング・グループの経過報告の中も含めてでございますが、これからの法科大学院に取り組むことが期待される取組というものについて、例えば公的支援の見直しの中でも、その先導的な教育システムの構築なり教育プログラムの開発というものを示しておりますが、これをより具体的に、若しくは、もっといろいろ考えられるのではないかといったところを、内容として御意見、御議論いただければどうかと考えているところでございます。
 また、2.でございますが、それ以外の検討事項といたしまして、法曹養成に係る時間的コストの短縮の関係では、飛び入学や早期卒業に関し、これまでの実施状況等を踏まえ、具体的にどのような積極的な運用を検討することが可能なのか、また、過去の中教審との考え方をどのように整理していくべきかというのが論点ではないかと考えられるところでございます。
 次に2ページ目でございますが、法曹実務基礎教育の充実でございます。先ほど御説明したような実態、実施状況を含めまして、各法科大学院でのばらつきを抑えていく観点から、教育すべき内容や指導する教員の資質等を高めるための具体的な方策をどういうふうに考えていくのか。例えば教育カリキュラムの改善なのか、また、教員間のFDを含めた教育指導力向上に関する取組なのか、そういった実質方策について御議論をいただけたらと考えているところでございます。
 また、(3)でございますが、法科大学院による法曹有資格者等の活動領域の取組でございますが、法曹有資格者を含めた法科大学院修了生について、組織的な就職支援等の取組、それは具体的にどういうことが考えられるかということで御議論いただけたらと考えております。例えば、エクスターンシップを通じたその充実方策、あるいは、就職支援の組織の設置なり、また、説明会や情報提供、相談体制の充実といったことについて御議論を深めていただけたらと考えています。
 そして、最後に、法科大学院による継続教育機関としての役割の充実でございますが、今後、推進していくべき先導的な取組としてどういったものが具体的に考えられるかというところで御議論いただけたらと存じます。ここに例示として示させていただいておりますように、例えばビジネスローや外国法など応用的・先端的な授業科目の提供、あるいは、法科大学院などを活用した研究会や研究の場の提供といったことが考えられるのではないかということでございます。
 以上、説明が長くなって大変恐縮でございますが、今後更に検討すべき事項の論点も含めて御報告を、御説明させていただいたところでございます。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

【井上座長】
 ありがとうございました。
 ただいま御説明がありました点について、何か御質問等があれば御発言願います。また、御質問に限らず、このたたき台を基に、こういうことも考えられるのではないか、あるいは、こういうことを更に検討するべきではないかといった御意見もありましたら、お出しいただければと思います。どなたからでも結構ですし、どこからでも結構ですが、少し時間に余裕がありますので、御自由に御発言いただければと思います。どうぞ。

【有信委員】
 どんな観点からでもということなので、全くある意味で法律の門外漢の立場で少し意見を述べさせていただきたいと思いますが。
 様々な観点から検討されていて、特に法律の専門的な内容についての教育の在り方については非常によく検討されていると思うんですけれども、現実に今非常に悩ましい問題として、例えば大学の中で具体的に大学教員の不祥事が目立つようになってきているという実情があって、これは何かというと、研究費の不正であるとか、あるいは、研究論文の不正であるとか、現実に東京大学でも様々問題になっておりますけども、これは実はそれを行っているその個人の資質だとかいう問題は当然あるのはあるんですけども、実際にそういうことを招来する様々な制度的、あるいは、システム的な問題もあって、そういう中で現実に不正に陥ってしまうという形にもなっている。これを、よくよく考えてみると、一つには、採用のときの問題も多分あるかもしれないという議論も一方であるわけですね。導入が長くなってしまってすみません。言いたいことは、要するに、法曹にせよ、大学の教員にせよ、入るときまでに大学の中できちんと教育をしていなければいけないことが多分十分に教育をされてなくて、例えば大学の教員であれば、研究至上主義的な見方から、単に成績であったり、研究のパフォーマンスであったりとか、極めて限られた見方で採用してしまっている。しかも、その採用するときに単純に論文の数が多いとか少ないとか、そういうようなことで見てしまっている。
 法曹に関しても、もちろん専門的な知識も必要なんだけども、法曹として備えていなければいけない資質、教養、そういうものを、きちんと見て育てていくというのは、もともと新しい法曹の在り方が議論されたときには議論の対象になっていて、様々なバックグラウンドを持ったということと同時に、単純に法律、極端な言い方をすると法律ばかではない、そういう法曹を養成しなければいけないという非常に高い理想があったと思うんですね。ですから、これからの審議の中でも、そういう意味で教育の在り方と併せて、これは多分ここの議論の枠を越える部分もあるかもしれませんが、法曹の採用の仕方というんですかね、そこまでつながっていかないといけないと思うんですね。
 今のように、単純に法律の専門的な知識の非常に高い競争率を抜けて、きちんとした教育を受けないで、そのまま横のパスで試験の成績がいいというだけで法曹を採用してしまう、こういう在り方もある意味ではよく考えなければいけないということだろうというふうに思いますので、そういうところをよく議論すべきだろうと、門外漢からはそういう印象を受けました。

【井上座長】
 ありがとうございました。
 どうぞ、松下委員。

【松下委員】
 よろしいですか。それでは、自由にということですので、事務局におまとめいただきました資料の3-3、たたき台の1ページ、ワーキング・グループ経過報告を踏まえて検討を要する事項、法科大学院が取り組むべきことが期待される取組について一言考えているところを申し上げます。
 言いたいことは未修者教育の充実と、それから、認証評価の在り方ということでございます。先ほど資料3-2の9ページで各法科大学院のより魅力ある教育を目指した取組例ということでここに様々な例が上がっておりますが、これの三つ目に、「法曹となった修了生等による教育補助、未修者に対する少人数での学習指導・助言」と、これが取組の例として、恐らくこれは積極的な意味で取り上げていただいているんだと思いますけれども、私の勤務している大学、法科大学院でも修了生の若手弁護士であるとか、助教の任期を満了した者を使って未修者の学習をサポートするという科目を設け、学修の履修の動機付けをするために正課の授業として単位化したわけであります。
 ところが、今般、認証評価の過程でそれは教員不適格だという指摘を受け、来年以降それを閉じざるを得ないのではないかということで現在検討しているわけでございます。サポート科目の担当者にまで従前の一般の教員の基準を当てはめるというのがどうなのかなと、そこは大分議論させていただいたんですが、どうも認証評価機関の御判断は変わらないということのようでありまして、より一般化していけば、認証評価機関が各法科大学院での創意工夫を、ややきつい言い方になりますが、足を引っ張らないような体制作りというのが是非必要であるというふうに思った次第でございます。以上です。

【井上座長】
 今のお話のうち、具体的な件については何ともコメントしようがありませんけれども、一般的な問題としては、かつて本特別委員会でも議論したことがありまして、これまでのように基準を四角四面に形式的に当てはめるのではなく、もう少し実質的に柔軟な対応をしてほしいといった議論をしたのです。
 そういう議論をもしながら提言した法科大学院教育の改善のための方策案を反映した試みが各法科大学院で種々なされているにもかかわらず、今お話しのような対応がなされると、せっかくの試みも断念せざるを得ませんので、認証評価の方でもお考えいただく必要があるように私個人としては思っています。
 どうぞ、笠井委員。

【笠井委員】
 ほぼ同様な問題が、私が関係しているロースクールでもありました。先ほど実務家教員を含めた教員の教育力を高めていくという必要があるというお話がありましたが、それとの関連で、法科大学院修了者に実務家教員になってもらい先輩が後輩の養成に力を尽くすというシステムは十分に考慮に値するものと思います。その場合、法科大学院を修了した数年の実務経験を有する者に、これから教育力を高めていくための訓練として、授業科目のサポート要員として使う過程が当然に必要になります。ところが、必須科目では、訓練のためのサポート教員であり、主任教員が責任を持っている場合にも、ある認証評価基準によっては、年限が足りないとか、その他の視点から教員不適格と指摘され、結局、その実務家は必須科目の授業にはサポートとしても立ち会ってはならないということになってしまいました。
 こういうことでいいのか、認証評価の在り方が法科大学院教育の改善・発展、充実に重大な影響を与えることがあるということについて、真剣に考えていく必要があると思っています。

【井上座長】
 その背景には、教員資格について厳しく線を引いておかないと、特に法律基本科目などについていい加減になってしまいかねないので、強い危機意識を持ち、基準を厳格に適用しようという姿勢で臨んできたということがあると思うのです。そうでないと、補習的な授業や、実体は法律基本科目なのに、履修単位の制限などを回避するため隠れてやってしまうというようなことが起こり得、実際そういう法科大学院も現にあったので、そのような厳格な姿勢で臨んできたのだと思うのですけれども、今お話しの件などは、それとは性質の異なった事柄だろうと思います。ですから、その辺について、またここでも議論いただきたいと思いますし、それを含め認証評価の在り方について認証評価機関ともお話をさせていただき、全体として見直していく必要があるように思いますね。
 今の点でも結構ですし、ほかの点でも結構ですが、御意見等ありましたら。片山委員。

【片山委員】
 全くほかの点になってしまいますが、文科省の方でおまとめいただいたたたき台には、かなり重要な項目が既に挙がっているように思います。これらの点についてここでじっくりと議論ができればいいのですが、他方、今般の法曹養成制度の改革に関しましては、顧問会議とか推進室とか、いろんなところで議論が行われておりまして、結局、この中教審の法科大学院特別委員会でどこまでの議論ができるのか、あるいはすべきなのかという点が問題になると思います。既存の制度枠組みを前提とした議論はもちろん重要ですけれども、せっかくの機会ですので、既存の枠組自体をより良い方向に見直すという議論ができればと考えております。
 例えば、継続教育の問題に関しましても、法曹リカレントをロースクールの場で積極的にやっていくということは大賛成ですが、それをより推進していくということになりますと、今の展開・先端科目が大体30単位ぐらいあるわけですが、それをロースクールで全て履修した後、司法試験を受けて、研修という形から、その一部分をロースクールでまずやって、それから司法試験を受け、そしてその後、法曹リカレントで残り部分をきちんとやるという方向の改革も考えられると思います。そうしますと、司法試験の選択科目の在り方等にも関係してくることになります。そういった点を含めて、もう少し幅広く既存の法曹養成システム自体の見直しといった議論をここでどこまでできるのかという点を、まずは確認したいと思っております。
 また、未修者教育の充実が最重要の課題であるということは言うまでもありませんが、今、未修者のほとんどが法学部出身者であるという現実を前提としたのでは、何をやってもそんなに良くはならないのではないかという気もしております。逆に、基本的に社会人とか、あるいは他学部出身者を中心に受け入れる未修者コースということを考えるのであるならば、やはりそもそも適性がないという方もかなり入ってくる可能性がありますが、その方たちを共通到達度確認試験をやって振り落としていくというだけのシステムでは、なかなか多様なバックグラウンドを持った方々が安心して法科大学院に入ってこられないでしょうから、別の進路への転換が可能になるような教育システムの枠組みといったものが必要になってくると思われます。今の既修者コースと未修者コースの区分に必ずしも捕らわれずに、社会人とか、あるいは他学部・他研究科出身の人に特化したような教育システムを作っていく必要もあるのではないかと考えております。以上のような点をここでどこまで議論ができるのかをまず確認したいと思いまして質問申し上げている次第です。

【井上座長】
 最初の点は、最初から制度の枠組を見直すということを目標とするのではなく、中身を充実させていく、特に先端・展開科目や、その発展形としての継続教育の中身を充実させていくにはどうすれば良いかを考え、その結果として、枠自体を見直す必要があるということになれば、そういう方向に発展していくということだろうと思います。
 最初から枠組を見直すということにすると、受取方によっては、展開・先端科目の比重を軽くして、司法試験対策に特化した法律基本科目中心にするというふうにも誤解されかねませんので、そういう趣旨ではなく、展開・先端科目の中身を充実させるための議論を積み重ねた末、制度枠組がこのままでいいのかということになれば、それを見直してみるということになるのだろうと思うわけです。
 2点目も非常に悩ましい問題ですけれども、では、法学部出身者で未修に入ってきている人たちについては適性が問題にならないのかと言いますと、同じように問題があると思うのですね。実際、未修者コースに法学部出身者が多数入ってくるわけですけれども、その教育に当たっていますと、同じように適性があるかが疑わしい例に接することが決して少なくない。さらには、既修者についてすら、同じように感じることがあるわけで、幅広く議論する必要があるという感じがします。
 もっと大胆に言えば、そのような実態に照らして現行の既修2年と未修3年の併用制がそもそも適切なものかどうかというようなところまで踏み込んで議論しないと、この問題は解決しないのかもしれません。
 どうぞ、磯村委員。

【磯村委員】
 2点発言をしたいと思います。1点は、先ほど松下委員から出た教員資格の問題に関わるものですけれども、これはもともと認証評価基準で自由に決めるというよりは、設置審査の段階で随分厳格に決まってきていたものを、どこまで緩めるかということで、三つの認証評価機関が、それぞれ幅があると言いつつ、現在では相互に余り異なる基準ではいけないという枠の中で、現在の指針が決まってきたのではないかと思います。
 そうすると、一つの認証評価機関だけで、弾力的に運用できるというような問題かといえば、やはり教員資格というのは法科大学院における教育の質そのものに関わるのであり、そういう意味では、三つの認証評価機関が文科省とも調整をしながらその運用をどうするかということを考えていく必要がある問題ではないかと感じます。
 もう1点は、法曹養成に関わる期間短縮等の問題ですが、飛び入学、早期卒業という点に関しては、従来、学部段階で余り法律の勉強ばかりをしていていいのかという点が問題とされてきました。それとの兼ね合いで言うと、現在においては、例えば、単に成績優秀者であるという基準で早期入学や飛び入学を認めるということが多いかと思いますが、学部でどういう授業科目単位をどのように修得しているかということも考慮要素の一つとして、その要件を考えていくという必要があるのではないかと思います。
 現在の予備試験の受験者についても、大学に入学した途端に法律の勉強ばかりに集中して、教養科目は最低限必要な単位だけをそろえて、という事態が懸念されます。これはもともと避けられるべき状況であると考えられていたものなので、新たに制度を設計するときにも、そういう観点を是非重視していただければと思います。

【井上座長】
 飛び入学については法科大学院の方にかなりの裁量権がありますから、何とかできるのでしょうけれど、学部の卒業資格がないままになる。他方、早期卒業の方は正規の卒業資格があるけれども、法科大学院の方で、入学者選抜に当たってどういう点を見て決めれば良いかが悩ましい問題になるように思います。
 どうぞ、土井委員。

【土井委員】
 これも意見としてお聞きください。先ほど予備試験について申し上げた続きですが、検討を要する事項、2.に挙がっているうちの(1)から(3)は、基本的にはやはり予備試験の在り方と密接に関連せざるを得ないと思います。(4)は司法試験に合格している人たちの継続教育ですので、これはこれで独立に議論できますが、(1)、(2)、(3)は予備試験と無関係に議論することができないと思います。
 先ほど磯村委員がおっしゃられたように、そもそも法曹養成に特化した教育機関を大学院課程に置いたということは、やはりここに書かれてあるような幅広い教養を学部で身に付けてもらう、あるいは社会において様々な経験を有する人を採るのだと考えて制度設計したわけです。そのような考え方を前提にして、まともに設計すればこうなるはずなんです。
 ところが一方で、年齢制限もないし、資格制限もない予備試験があって、それが広がっている。そして、それを合格した人間が優秀であるとさえ言われている状況の中で、どのように対応するのかが最大の問題になっているわけです。「過去の中教審等での考え方」、その理念とどう整理していくのかと言われても、整理のしようがありません。理念としてはこうあるべきなのですけれども、予備試験の現実がそういう方向で動くから、どう対応するかという話になっているわけです。予備試験と法科大学院制度のどちらを修正するのかというのは大問題なわけで、法科大学院側で修正する場合でも、それは予備試験を巡る一定の現状、現実の中で最低限どのように対応するかということだと思います。他方でやはり予備試験の在り方についても、推進室を設けて内閣官房で御検討いただくことになっているのですから、適切に検討していただかなければ、これはおかしいという気がします。
 それから、法曹実務基礎教育を充実していくことについても、活動領域の拡大を図るために例えば展開・先端科目等を充実していくことについても、これはやはり教育課程をきちんと充実させて、法曹養成の主軸を置くということです。しかし、これは、場合によっては司法試験との関係で学生にとって過重な負担になるわけで、片方に、その種の負担を負わない予備試験があり、このような教育をしっかりしようという法科大学院課程があって、両者を司法試験の合格率で競争させるというのは、これは制度の在り方としておかしいと思います。
 法曹の活動領域の拡大も大事だと思いますし、それから実務基礎教育の充実も大事だと思いますけれども、これらが大事だから法科大学院でしっかり学修をさせるのだという方針を示すのであれば、法曹養成の在り方全体をその方向に舵を切ってもらわないと、一体何をしているのか分からないという事態にならざるを得ないんじゃないかと私は思います。これは意見でございます。

【井上座長】
 全く同感ですね。
 ほかの方、御意見どうぞ。

【有信委員】
 今の御意見はそのとおりだと思うんですね。何となく変なのは、変なのはというのは、今の日本の制度そのものが変だという印象なんだけど、もともと法科大学院というのはプロフェッショナル・スクールで、プロフェッショナル・スクールというのは、例えばそこで社会に出て専門的な活躍をするのに必要なスキルなり知識なりをきちんと身に付けさせる、それがちゃんと身に付けさせるような体制になっていて、身に付いていれば、その人たちは当然社会に出てそういう活躍ができる。もちろん出来不出来はあるから、社会に出て活躍する人たちの出来不出来は当然競争原理で、活躍の幅が異なるというのは当然の話。
 基本的な素養なり知識が身に付けさせられているかどうかというのは、しかも身に付けさせるシステムが常に改善される形になっているかどうかというのは、認証評価機関が評価する。そこで目標としている法曹に対してそういう形できちんと教えられているか、あるいは身に付けさせられるようになっているかということは認証評価機関がきちんと確認しなきゃいけない。その上で改善をさせなきゃいけないということなんだけど、それが何となく逆立ちした議論になっているんですよね。
 日本の制度がみんなそうなっていて、それぞれ目的を持って教育をしているんだけど、目的が達成されたかどうかというのは実は誰もチェックしていないわけで、それぞれの大学もチェックしていないものだから保証ができないわけですね、いろんな分野で。だから、結局は学生を採用する側も、法曹に限らず、結局は大学が質を保証してくれないものだから、採用の基準というのは全く取れないという状況になってきている現状をどこかで変えないといけない。
 見直しをきちんとかけていく必要がある。要するに法科大学院の中での教育内容等々についても、具体的に何を教えているかということだけではなくて、それが身に付けられるように教えられているかということが、ある意味で到達度試験のようなことでチェックをするという仕組みを入れるんであれば、単純に試験で振り落とす、振り落とさないということよりは、もう少し実質的にきちんとそれを見るようになっていないといけないという気がします。いろんな意味で、今のシステムを変えていくような形で、これが回るように検討を進めていければいいかなというふうに思っていますけど。

【井上座長】
 ありがとうございます。どうぞ。

【鎌田委員】
 最初の1.に関しては、これからの法科大学院で取り組むことが期待される取組、これを推進していくというのも、一つの法科大学院の本来の在り方が、これまで司法試験の合格率だけが注目される、あるいは問題のある法科大学院ばかりが議論の対象になったけど、本来のあるべき法科大学院、もっと望ましい法科大学院へというふうに進めていく上では、この項目は重要であって、法曹養成制度検討会議においてもグッド・プラクティスには奨励策をという条項も入れていただいたんですけれども、現時点ではやむを得ないと思うんですけれども、一私学の経営者として言いますと、基礎額、一番いいところでもまず90%削減から出発する。そして最大限頑張って、やっと110%だと。これ私立大学発足時にはもうちょっと特別補助があるという前提で比較的安い授業料設定をしていますんで、200%ぐらいまで引き上げていただかないと経営的には本当に成り立たなくなる危険性もある。そういう意味で、将来的には是非、理想的な法科大学院教育をしているところにはもっともっと励みになるような制度にしてもらいたいというのが一つであります。
 それから、裏面の(2)で、私も司法修習委員会の委員でございますから、ここで言わなくても発言の機会があるんですが、これの新しい導入教育については幾つか懸念していることがあって、これが本当に杞憂に終わればいいというふうに思っているものがある。そのうちの中で法科大学院教育と関連するものは、先ほど片山委員から質問がありましたけど、どういうコンセプトでやるのかということについて二つ並んでいるわけですよね。
 正確な言葉が今出てこないんですけど、一つは、法曹養成制度検討会議なんかでもあったように、実際に司法研修所に入ってくる人の能力、実務的な実務基礎についての能力に非常にばらつきが大きい。その点に気付かせるというふうな表現がされていますけれども、ばらつきが多いことを前提にして、一番程度の低い人でも安心して修習ができるようにという水準で導入教育をやられると、受験生としては、実務基礎については最低限のことをやっていれば良くて、それ以上のことは研修所へ行けばやってくれるんだということになるし、予備試験ルートは法律実務基礎の授業を十分受けられないというハンディがあるけれども、これも司法研修所へ行けばそれでいいんだと。
 結局は司法試験に合格するための法律基本科目を一生懸命やって、実務基礎については司法研修所で面倒を見てもらえる、こういうふうになるのは法科大学院が予備試験ルートに対して持っている大きなメリットの一つを失うし、そもそも法科大学院教育を法曹養成制度の中核にしたことの根幹が揺らぐんじゃないか、これが第1の懸念なんですね。
 第2には、もう一つは、分野別実務修習にスムースに入れるという、これも一番極端なのは、ちゃんと書式が書けるようにして、弁護実務修習が始まったら、その瞬間に書類を渡せばちゃんと準備書面が書けるようにまでするという、こういうふうな発想がないわけでないんで、だから導入教育を3か月やれという、こういう主張もなされているわけでありますが、これも先ほど読み上げていただいたように、法科大学院教育でどこまでを法科大学院が担って、その後は実務修習にお願いするんだというところの組み方を完全に組み替える危険性があるのと同時に、研修所へ入るまでに書式をちゃんと書けるようになることが重要だと。
 そのためのマニュアル的な勉強をすることの方が良くて、今の実務を根本から疑うような理論的な議論なんてするのは全くナンセンスだという、こういう方向に学生たちを仕向けるという、これもどちらかと言えば、やはり効率的に試験に通るために予備試験を受けて、予備校教育になじんだ方がいいとか、法科大学院に行っても試験のための勉強だけをやり、かつそれを適宜書式に移し替えられるマニュアル的勉強だけをすればいい。こういう方向にならないという保証はないんじゃないかということが懸念なんですけれども、それが本当に杞憂に終わるように是非、これは司法修習側での議論だけじゃなくて、法科大学院はどこまでをどういう理念に基づいて引き受けるから、次をこういう形で司法修習につなげたいということをこちらの側からも発信しなきゃいけない問題だというふうに考えておりますので、修習委員会でもこれからはどういうカリキュラムかという議論が始まる、そこの中でじっくりと英知を集めて議論してくれると思いますけれども、法科大学院側からは何を期待するのかということをもっと本気になって議論する必要があるんじゃないかなと、こういうふうに考えます。

【井上座長】
 1点目は文科省の方の問題ですので何とも言えませんし、司法修習委員会でも鎌田委員に大いに発言していただき、注意深く見ていっていただければと思います。
 最後に言われた実務教育については、法科大学院がどこまでのことをどういう形で負うのか、常に検討する必要がある問題であることは確かですが、法科大学院を出た先との関係もありますので、そういう意味で、継続的に関係機関とも話し合い、連携を取りながら議論を続けていかなければならないと思っています。

【今井専門職大学院室長】
 鎌田先生からの御指摘でございますけれども、参考資料3の6ページを御覧いただけたらと存じます。
 6ページのところに類型、基礎額、そして加算の条件として、具体的には審査委員会で今後審査して判定していくということを書いた上で、右側に取組ごとの加算率という書き方をさせていただいております。私どもの考え方としましては、ここに黒ぽつが四つずつございます。この四つずつでそれぞれ、例えば教育システムに資するような話、若しくはプログラム、さらには就職支援、第2・第3に該当した場合の支援プログラムという多彩なプログラムを御用意いただいて、提案を頂けると、その取組ごとに審査・判定していくということを考えておりますので、加算は上限20%でもう頭打ちという趣旨ではございません。
 ただし、これは審査委員会でいろいろ審査をしていく中で、予算の範囲の中で議論していくということでございます。では、積み上げていったら加算は20の4倍なのかという話になると、それはお答えできかねますが、少なくとも20%で頭打ちということではございませんので、各大学には是非積極的に提案をしていただきたいところでございます。

【鎌田委員】
 分かりました。失礼しました。なるべくたくさん項目を作るように。

【井上座長】
 一見すると110%で頭打ちだというふうに見えるのは確かですね。鎌田委員には、ささやかながら朗報かもしれません。

【鎌田委員】
 大変朗報でございます。ありがとうございました。

【井上座長】
 どうぞ。片山委員。

【片山委員】
 2点、ございます。まずは法曹養成の期間の短縮化の点です。この点につきましては、先生方からいろいろな御意見が出ましたが、これからの法曹は幅広い教養、素養を身に付けなければならないということで、安易に短縮化をすべきではないという方向での議論が強かったという印象を受けております。
 ただ、もちろん幅広い教養等が必要なのも言うまでもないことですけれども、それでは期間が短ければだめなのか、例えば学部は4年いなければ幅広い教養が身に付かないのかというと、必ずしもそうは言えないのではないかと思っております。
 現状ではそのよしあしは別として、法学部では、3年生の段階で単位を取り終えているという大学が多いと思われますし、それから近時はどの大学でも、例えば語学とか、あるいは人文科学あるいは自然科学に関するインテンシブなコースがいろいろと設けられていますので、そういったものをきちんと取って、関心を持って学修している学生はかなり幅広い教養を身に付けているというように思われますので、4年間を3年間に短縮することが、直ちに幅広い教養が身に付かなくなるから困るという議論はいささか短絡的ではないかと思った次第です。
 また、短縮化に関しては、ロースクール自体についても検討の余地はあると思います。先ほどの、法曹リカレント等にも関係する点だと思いますが、以上が第1点でございます。これは意見でございます。
 第2点は、これは再三ここでも申し上げている点ですが、やはり法曹養成というときの法曹概念をどう捉えるかという点です。もちろん多様な法曹の養成が新しい法曹養成システムの一つの課題ですので、本来ならば有資格者を前提として、その多様性をいかにロースクール等で身に付けさせるかということなのでしょうが、現実問題として、司法試験、法曹の垣根が高くて、いわゆる狭義の法曹三者を前提とした上では、なかなか多様性というのは難しいとなると、法科大学院としましては、修了生、特に法曹資格を持っていない修了生をどう位置付けるべきか、逆に法科大学院が養成すべき法曹という概念を、再度定義し直す必要があるのではないかとも考えております。
 また、法科大学院が法曹有資格者だけの養成機関だということになりますと、資格を取っていない者は、言葉は悪いですが、落第組というような位置付けになってしまいますが、そうではなくして、修了生、すなわち2年ないし3年のJDの課程を終えた者に対して積極的な評価ができるような枠組をきちんと議論していく必要があるように思います。
 それから、第4の法曹といった議論を職域拡大の場面で行いますが、そこでは、法曹有資格者の職域拡大の話と、ロースクール修了生の職域という問題との間にやはりずれがあります。その点も踏まえて、今後、法曹という概念を法科大学院においてどのように捉えていくべきかを検討しておく必要があると思っております。

【井上座長】
 それは、前から検討課題に挙がっているところですけれども、反面、注意しなければならないのは、ロースクールはやはり法曹養成に特化したプロフェッショナル・スクールですので、その基本を見失わないような形で制度が組めるのかということだろうと思います。そこを見失ってしまいますと、法科大学院修了者に司法試験の受験資格がほぼ排他的に与えられている、そういうところにまで影響が及びかねないものですから、現実を見据えると、重要であることは確かなのですけれども、そういう反対面にも配慮しながら、慎重に、しかし集中して議論をさせていただければと思っています。

【山本委員】
 (2)のところで先ほど鎌田先生の言われたことの繰り返しみたいなことになるんですけれども、私も司法修習委員会の幹事をやっていまして、議論を伺っていて、やや衝撃的に思ったのは、裁判所の見方と検察、弁護士会の見方がかなり違っていて、裁判所側は比較的法科大学院教育から司法修習に円滑に移行できるという考え方を示されていたのに対して、検察官、弁護士はかなりそこにギャップがあるという認識を持たれていたというのが、私は興味深いというか、やや驚いたところです。
 その中で語られたことで、法科大学院の教育の中で実務教育が、当事者法曹の見方というのが必ずしも十分に教育が行われていないのではないかという指摘がされたのが、私には印象的でした。
 確かに、共通的な到達目標モデル、民事裁判、刑事裁判の基礎が設けられているわけですけれども、どちらかというと事実認定にしても要件事実にしても裁判所的な観点が中心になっているのかなという印象を持っていまして、言いたいことは、実務基礎教育の充実を考えるに当たっては、もちろん今、結構臨床科目を充実させるという方向で各法科大学院が動いているのではないかというふうに思うのですけれども、実務サイドというか、実務修習との関係、連続性ということについてより配慮しながら、その実務との対話をしながら、どういう部分を充実させていくかということはかなりしっかり考えた方がいいかなという印象を持っております。

【井上座長】
 日吉委員、どうぞ。

【日吉委員】
 文科省から出されているさらに検討すべき事項に関する論点の捉え方について、意見と質問と両方ございます。どういうところに視座を置いて論点を設定し、そしてどのくらいの範囲でそれを検討していくのがこの中教審に与えられたミッションかというのが、もう一つクリアではないというふうに思います。
 この幾つか出されている論点を見ますと、先ほど土井委員、意見をおっしゃっていましたけれども、どう見ても、今現在直面している外部的要因からもたらされるある種の現象、例えば時間が問題になっているだとか、あるいは仕事がないだとか、外部的要因に何だか対処しなきゃいけないという非常に対症療法的な意味での議論をしなければいけない論点というのもたくさん書かれております。
 しかし、全体的な文章を見ますと、今後の法科大学院の在り方をはじめというふうに非常に大きく捉えておられますので、今後10年、20年、30年、法科大学院制度がどういうふうな在り方であるべきか、当初の理念をどのくらい維持して、どこを修正し、あるいは修正しないで制度を考えていくのかという非常に大きな大くくりな論点も当然入ってくるべきものなんだろうというふうに思います。
 それが混在しているような気がしておりまして、それでこちらサイドとしては、先ほどからいろんな意見が出て、それぞれみんなとても重要な論点だと思うんですが、それをどの程度、どれだけのウエートを配置して、そして時間を投下して議論すべきなのかというところが、もうひとつ全体が見通せないということが問題じゃないかというふうに思っておりますので、是非その辺をもう一度整理をしてお聞かせいただければというふうに思っております。

【今井専門職大学院室長】
 失礼いたします。まず今回、更に検討すべき事項に関する論点と、たたき台を整理させていただきましたが、その考え方について御報告させていただけたらと思っております。まさに今、法科大学院特別委員会で御議論いただいているのは、政府の決定事項でございます関係閣僚会議決定に基づいて法科大学院の検討していくというところに、まず大きな出発点があろうかと考えております。特に、中教審の検討を踏まえるということで、組織見直しの議論、それから共通到達度確認試験等の基本設計の議論が大半を占めていたと思っております。
 7月に開催されました中教審法科大学院特別委員会で、今後大きく御議論いただきたい点をA3の紙で一度整理させていただいて、お示しさせていただきました。その中で特に重たかった組織見直しの議論、それから共通到達度確認試験の議論、未修者教育の充実の議論をワーキング・グループで御検討いただいていたところです。
 その検討の中で、実は、政府の検討、また法曹養成制度検討会議での御指摘の中に幾つかプラスアルファの議論があったということで、ここにお示しした時間的コストの短縮の議論から法曹実務基礎教育の充実、それから活動領域、そして継続教育等の充実というのがありました。前回までは、特に重たかった組織見直し促進と共通到達度確認試験等に関するワーキング・グループでの検討成果を御報告させていただいた上で、今回はその二つのワーキング・グループではフォローできていなかった課題を御議論いただけたらという趣旨でお願いをしておりました。
 ただ、日吉委員が言われているように議論が少し混在しているのは、こういった議論を経た上でワーキング・グループでの御議論、それから本日お示ししたような検討の課題、それらを例えば共通概念と言いますか、一つの目指していくべき方向にまとめ上げて統合していく御議論も恐らくお願いをしていかなければいけないと考えた次第です。恐縮でございますが、この資料3-3自体ではそういった意図が読めなかったというのは事務局の不備だと思っておりますが、是非そういったことを含めて御議論いただけたらありがたく存じます。お答えになっていなければ、またさらに御質問いただけたらと思っております。

【井上座長】
 今日は、余り比重を付けずに、いろいろな御意見を出していただき、それを整理した上、これからどのような順序で検討していくのかを考えさせていただきたいと思っているのですけれども、特に政府全体の検討体制の方から中教審でも議論しろと言われている問題については、なるべく早く集中的に議論して、しかるべき回答を出すようにする必要があります。
 無論、長期的な問題や中期的なものが当然あるはずですので、我々としては、これをやれと言われて、すぐやりますということだけではなく、更に中期的なものにつながるような議論ができると良いと思っています。

【杉山委員】
 私の方から2.の(3)、職域拡大についてということで、拡大の一つの領域である私、企業の立場から、また皆様方が学生さんを輩出して、吸収する大きな市場であると期待していただいていると思っているんですけれども、その立場から企業が今この問題に関して思っている期待と課題をちょっと共有させていただきたいと思います。
 企業は大体実務を経験したことない人たちですから、二、三年かけてOJTで何とか実務をやろうということで、この取組というのは、入ってくるときに打てば響くような基礎体力を鍛えていただいているので大変ありがたく期待しているところであります。が、残念ながら、この取組だけですと、今の企業の採用のところは現状止まり、微増というのが残念ながら結果だと思います。
 これは、先ほど座長が今日は何でもありよと言ったので、多分この委員会の範ちゅうを出てしまうと思うんですけれども、企業というのは御存じのとおり利益追求というのがどうしても頭にあります。採用の面においても当然コストが優先するということで、エグゼクティブの採用ですと、コストをかけてカスタマイズしてもトップ・エグゼクティブを採ろうというのが企業のインセンティブなんですけれども、残念ながらこの方々はジュニアに入りますので、大量効率採用の域に入ります。
 そうなってきますと、どうしても今のスケジュール感、法科大学院の卒業時期、司法試験の時期、合格発表の時期ということを考えますと、そこになじまない。さらに、無理してそこで採りますと、内定を出しておいても、そのまんまそちらに行かれるということで、企業としては非常に内定を出しにくい。
 したがって、ここの場での議論ではない、各委員の皆様が別の委員会でやられている議論だと思うんですけれども、是非企業側のネックになっているところを御紹介させていただいて、何とか議論のそ上にそういうことも御紹介いただければと思って、ちょっと共有させていただきたいと思います。

【井上座長】
 ありがとうございます。どうぞ。

【樫見委員】
 一つは、今おっしゃっていただいた採用の職域拡大の点なんですが、企業さんとお話をした機会に、要するに司法試験に三振したような学生、あるいは一回でもそうなんですけど、その段階で企業に来たいと言われても、企業さんの方は恐らく多様な人材を採用したいということで、院生であるとか、あるいは学部生であるとかということは問わないという話はあったのですが、要するにこっちがだめだったんで、しようがない、こっちへ来ようかというような形になる、法科大学院には限定されないとは思いますが、そのような学生ではなかなか採れないと。
 逆に今度は学生の立場で見ますと、じゃ、在学生のときから、ここに書いてあります組織的な就職支援の取組というのをしようとしますと、では、もし司法試験取れなかったときに一般の職、こういうふうな状況にあるんですよというふうに私どもの大学でも何回かやっているのですが、学生がほとんど参加しません。ということで、そういうふうな心配があるということが1点でございます。
 それから、2番目に書いてあります時間的コストの短縮という点で、早期卒業はよろしいのですが、飛び入学という場合には、これは大学の卒業資格は得られない。法科大学院を出てくれれば、それは法科大学院卒業になるんですが、じゃ、途中で中退をしたらどうするのかと。そのようなときに、法科大学院の場合にはいわば留年制等も敷いておりますから、適性に合わない学生は出ていく。そのときにその学生は法科大学院中退というふうに書くよりは、できれば学部卒の方がまだ相手の就職企業にとってはよろしいだろうと。
 その点で言うと、飛び入学の導入そのものはよろしいんですけれども、法科大学院の、例えばですが、在籍期間によって卒業資格なりを与えるということはできないのか、制度的には無理なのかというような、これは制度の問題なので、私の個人的な意見です。

【井上座長】
 今言われたのは、法科大学院での在籍期間によって学部卒の資格を与えるということでしょうか。

【樫見委員】
 ええ。せめてそのくらいは何とかならないのかと。やはり一種の学歴社会でもありますので、全て中退というのはいかがなものかと。
 それから3点目は、今回、法務省の方から予備試験の受験者と、それから法科大学院の受験者の特に年齢的な資料を出していただいたことに本当に感謝しております。ただ、逆にあれを見たことによって、先ほどからいろいろ意見ございましたけれども、要するに法科大学院の場合には本来の制度趣旨である多様な人材、あるいは社会人、社会経験を踏んだ方が受験をするというようないろいろな分布になっているのですが、やはり予備試験を受けることは若い方に偏っている。
 これは、法科大学院の改革・改善もそうなのですが、予備試験制度というか、受験資格であるとか、そちらの方もやはり制度設計を、法科大学院と併存させるならば、本来の意味での在り方というか、法科大学院制を取るといいますか、制度を潰さないような形での制度設計をお願いしたいと。3点でございます。

【井上座長】
 ありがとうございます。

【椎橋委員】
 私は、先ほど土井委員がおっしゃったことと、今、樫見委員がおっしゃったことと趣旨は同じなのですけれども、やはり申し上げておきたいと思います。予備試験のことですけれども、先ほど松本委員から数字を教えていただきまして、合格者の77%が大学と法科大学院の在学生だということで、改めてまたびっくりしたんですけれども、ここのところずっと受験生にしても、合格者も増えているということで、今後どうなるんだろうかということが大変心配であります。
 司法試験に合格するためのショートカットになっているという実態がますます明らかになってきてしまっているのではないかと。つまり、将来法曹になりたいと思っている法学部の学生とか法科大学院の学生は、まずは予備試験を受けて、だめだったら法科大学院へ行こうと。法科大学院在学中もなるべく早く受かって、それでなければ卒業してから法科大学院卒業生という資格で受けようと。こういうような形になってしまって、法科大学院の存在自体がその分軽くなってしまっている。
 ところで、法学教育は、法学部、法科大学院、そしてその課程を終わった者が受験資格を得るという形で一貫教育ということが考えられているわけですね。法学部からの接続もそうですし、法科大学院の中でも順を追って積み重ねという形で教育をして、工夫してきているわけなんですけれども、どうもその一連の過程が無視されているような形になっているというような実態があるのではないかと思います。
 実際に予備試験で合格してしまえば、法科大学院で考えている実務基礎科目とか展開・先端科目ということも一部しか受けないか、あるいは全然受けないかというような形の法曹が出てきているということでありますから、その点は心配です。また、司法試験の前になると、法科大学院の学生の授業への欠席が多くなるというようなこともあって、そういう具体的な影響も出ているということもありますので、そこら辺のあたりをどういうふうに考えておられるのかということ、このままの形でずっと予備試験を続けて合格者も増えていく、そういう状況を良しとしておられるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
 ところで、その背景として、学生の方で早く司法試験に受かりたいというニーズがあるんだと思うんですね。そういう意味では、本日出されているたたき台の2に関係する時間的コストの短縮というところがあるんですけど、飛び入学とか早期卒業の問題も、ある意味では予備試験との整理をどうするかという問題があると思います。飛び入学、早期卒業を考える場合で幅広い教養をつけるという問題がありますけれども、先ほど片山委員も言われたけど、それはいろいろ学部のカリキュラムの組み方の工夫とか、また教養というのはあるときだけに教養が付くものではなくて、ずっと継続的な勉強の過程の中で教養というのは付いていくものですから、最初だけ教養の勉強をしてそれでおしまいということではなくて、ずっと学部、法科大学院、それからその後にも教養の幅を広げる努力は続いていかなければならないので、そのような観点からどうやって幅広い教養を付けるかというのをうまくカリキュラムの中に組み込んでいくということによって実現できると思うのです。
 そのためには、やはり一貫した教育というか、一貫したカリキュラムの下に教育をしていくということが必要なので、そういう観点からは、予備試験の実態は一貫した教育を阻害している部分が大きいと言わざるを得ません。これをどうにか解決しないと、この問題はほかの問題とも関係してくるということがありますので、予備試験はここのところで予備試験を設けた当初の趣旨を踏まえて根本的にもう一度考え直すべきではないかということを申し上げます。

【井上座長】
 この委員会に出ておられる方はそういう思いを共有しておられるだろうと思うのですけれども、私や鎌田委員は、前の法曹養成制度検討会議等で同じようなことを再三言ってきた。そういった兆候が既に明らかに表れており、現場の肌感覚として、地盤がそちらの方向へ動いているということを指摘してきたのですけれども、ほかの多くの方の反応は、まだそこまでのことではないでしょう、様子をもう少し見ましょうというものだったのですね。でも、現実には事態はどんどん進んでいる。このまま行けば制度全体が瓦解し、旧試験の頃よりもっとひどい状態になるのではないかと懸念されます。土井委員が言われたように、一般的な情勢がそういうふうになってきているため、学生の方はショート・トラックで早く受かることがベストだと思う、そういう流れになっている。そして、それに対症療法的に対処するには、こちらの方も短くした方が良いという考えになる。多分政府の検討会議での御意見は、そういう趣旨なのだろうと思うわけです。
 しかし、それをそのままこちらに持ち込むのはやはり危険なところがあり、片山委員がおっしゃったように、個々の学生の特性を見て、この人はこういうバックグラウンドがあるので短くても十分だと判断されるのなら良いのですけれども、ともすれば一般的に短ければ短い方が良いというふうになりかねないので、かなり注意しないといけないように思います。

【磯村委員】
 1.の問題なんですけれども、法科大学院の専攻長とか研究科長の立場にある人が何を考えるかというと、恐らく入れ物をどう変えるかということで、形に見えるものを作ろうとすることになると思うのですけれども、一番大事なのは、そこではなくて、中身の教育をどううまくできるかということなので、その点をチェックできるように是非工夫をしていただきたいと思います。
 こういうプログラムを作りましたとか、こういうカリキュラムの変更をしましたというのは外に見えやすいんですけれども、それが本当に良い教育につながるかどうかというのが、実はかなり問題があるかなというふうに感じています。
 以上です。

【井上座長】
 よろしいですか。ほぼ予定した時刻になりました。本日は皆様から様々に活発な御意見を頂きまして、非常に有意義だったと思います。これらの御意見を踏まえまして、今後さらに法科大学院教育の改善・充実に向けた方向性について、次回以降も継続して議論していきたいと思います。
 法科大学院特別委員会としての取りまとめにもこのような議論が生かされるよう、事務局の方で次回までにまとめていただければと思います。
 議事は以上でございます。事務局から今後の日程について御説明ください。

【今井専門職大学院室長】
 失礼いたします。次回の法科大学院特別委員会の日程につきましては、年明け以降ということで考えておりまして、事務局より改めて御案内させていただきたいと存じます。

【井上座長】
 それでは、本日の議事はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

お問合せ先

高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

(高等教育局専門教育課専門職大学院室)