法科大学院特別委員会(第52回) 議事録

1.日時

平成24年12月6日(木曜日) 11時~12時30分

2.場所

文部科学省中央合同庁舎7号館東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 法学未修者教育の充実方策について
  2. 適性試験管理委員会からの報告について
  3. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)有信陸弘、田中成明の各委員
(専門委員)磯村保、井上正仁、笠井治、笠井之彦、鎌田薫、木村光江、椎橋隆幸、杉山忠昭、土屋美明、土井真一、永田眞三郎、長谷部由起子、日吉由美子、松並孝二、山本和彦の各委員

文部科学省

常盤高等教育局審議官、内藤専門教育課長、今井専門職大学院室長、佐藤専門教育課課長補佐

オブザーバー

(適性試験管理委員会)山本昌平事務局長、柴山直分析委員会副委員長、藤本亮分析委員会委員

5.議事録

 【田中座長】
 どうもおはようございます。では、所定の時刻になりましたので、第52回中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会を開催いたします。最初に事務局から配付資料の確認をお願いいたします。



【今井専門職大学院室長】  
 失礼いたします。配付資料でございますが、資料1は、前回の第51回のときの議事録案でございます。内容を御確認いただいた上で、私ども事務局の方にお申しつけいただけたらと思います。続きまして、資料2-1でございますが、法学未修者教育の充実方策に関する調査検討結果報告の概要でございます。続きまして、資料2-2が、その調査検討結果報告の本体でございます。なお、資料といたしましては、資料2-2の参考資料1といたしまして、実践例、それから参考資料2といたしまして、その関連データ、さらに参考配付資料といたしまして法学未修者教育の充実のためのワーキング・グループの委員名簿を付けさせていただいているところでございます。そして最後に資料3でございますが、適性試験管理委員会の事務局より、適性試験のスコアと法科大学院成績・司法試験合否との関連について御報告をいただくこととなっているところでございます。資料につきましては以上でございます。



【田中座長】  
 ありがとうございました。それでは、議事に入らせていただきます。
 今日の議事は法学未修者教育の充実方策についてと法科大学院適性試験管理委員会からの報告の2点でございます。
 まず、法学未修者教育の充実のための検討ワーキング・グループの主査を務めていただいております山本委員より、このワーキング・グループにおける調査結果について御報告をお願いいたします。



【山本委員】  
 それでは、私からワーキング・グループにおける調査審議の結果について御報告をさせていただきます。本ワーキング・グループは、本年7月19日の法科大学院特別委員会において設置が決定され、9月末から11月末までの間、5回にわたって慎重な調査審議を行い、このたびワーキング・グループとしての報告書を取りまとめたものでございます。それでは、御手元の資料に基づいて御説明をさせていただきます。
 まず、資料2-1の概要を御覧いただきたいと思います。ここに本報告書の全体構成が書かれてございます。構成は、一番上のところで法学未修者教育の現状の分析を行い、その下の欄ですが、法学未修者教育をめぐる「四つの課題」というものを明らかにした上で、最後に下半分の部分でありますが、その課題の解決に向けた充実方策について、具体的な方策としては左側の「1.システム改革に向けた検討」と、右の「2.入学前から卒業後を一貫した充実方策」というものを提示するという全体の構成になっております。
 それでは、報告書の具体的な内容でございますが、資料2-2の報告書の本体を御覧いただければと思います。これに基づいて御説明をさせていただきます。まず、2ページは「はじめに」、最初の段落ですが、3ページ以下がまず法学未修者教育の現状の分析ということでございます。司法制度改革で目指された姿としまして、法科大学院には社会人としての経験を積んだ者等を含めて多様なバックグラウンドを有する人材を多数法曹として受け入れるため、学部段階での専門分野を問わず広く学生を受け入れて、社会人等にも広く門戸を開放する必要があるとされたわけでございます。また、法科大学院の課程を修了した者のうち、相当程度、例えば7~8割の者が司法試験に合格できるような充実した教育を行うべきであるとされております。この法科大学院の総入学者数でございますけれども、最も入学者が多かった平成18年度の5,784人と比較しまして、平成24年度は3,150人と、2,634人の減少となっております。この辺りの数字は4ページから5ページにかけて書いておりますけれども、そのうち法学未修者の減少分というのは、平成18年度の3,605人から平成24年度は1,325人となっておりまして、2,280人減少していると。つまり、全体の減少分2,634人のうち2,280人は法学未修者の減少が占めているということで、その割合は86%と極めて大きいものになっております。さらに、制度創設後、法学未修者入学者のうち法学部以外の学部出身者の数は、平成16年度の1,677人から平成24年度には396人と、4分の1弱まで減少する一方、法学未修者に占める法学部出身者の割合は、平成16年度の50.9%から平成24年度には70.1%と年々上昇しているところであります。さらに、法学未修者の学修の状況として、標準修業年限での修了率が、平成16年度入学者の75.1%から、平成21年度入学者では56.8%まで、次第に低下をしてきている。ほぼ9割前後が標準修業年限に修了する法学既修者と比べて、その差が非常に大きい傾向も見られているところでございます。また、司法試験の合格状況についても、既に結果は確定している平成18年度修了者と平成19年度修了者について見てみますと、既修者の累積合格率は平成18年度に63.4%、平成20年度に65.4%でありました。未修者の累積合格率は平成18年度に39.5%、平成19年度に32.6%であります。法学既修者の合格率に比べて法学未修者の合格率は半分近くになっているという現状になります。こうした現状を踏まえて、今後、未修者教育について改善を検討すべき課題について四つの観点に整理できるものと考えたのであります。資料6ページ以下でございます。
 まず、一つ目に法学部以外の学部出身者をめぐる課題についてでございますけれども、法学部以外の学部出身者は、大学等において体系的に法学を学んだ経験がなく、法科大学院に入学して初めて本格的な法学に関する学修に取り組むため、まず法学の基礎的な学識の修得が課題となります。特に1年次においては、法学に関する学修の方法や法律用語の理解など、法科大学院で学修を進めるための前提となる基盤ができていない可能性があることに配慮して、教育課程を構築する必要があるという指摘がありました。また、入学者の中には、法理論を身に付けていく上で必要となる法的な思考力、あるいは事実に即して具体的な法的問題を解決していくために必要となる法的な分析能力など、いわゆる法的な考え方に十分なじめない学生というものが一定数存在していたということも課題として指摘されているところであります。二つ目に、法学部出身者をめぐる課題であります。標準修業年限3年の教育課程は、法学の基礎的な学識を有していない者を対象としているものでありますから、そのスタート時点において、法学部出身者が入ってきた場合に、最初の段階で学修に対する意欲あるいは姿勢というものを保ちにくいといった影響を及ぼす場合があるということが指摘をされました。また、その者も法学部出身者であるとはいえ、既修者認定を受けていない、あるいは受けられていない者であるということを勘案しますと、法科大学院入学後の教育上の工夫を要するとともに、法的な考え方になじみにくい者が一定割合は存在するということも留意する必要があるということが指摘されました。三つ目に、社会人経験を有する者をめぐる課題です。民間あるいは公務の分野で活躍してきたなど、既に豊かな社会人経験等を有している者については、視野を広げたり、あるいは専門領域の幅を広げたりすることよりも、むしろ基本的な法学に関する科目の確実な修得が求められるところと考えられますが、現在のカリキュラムではその点に注力した指導がしにくいとった課題が指摘されました。特に、仕事を続けながら法科大学院に通うことを希望する社会人にとっては、学修時間が夜間等に限られるなど、時間的制約の中で効果的・効率的に学修することができる環境整備が現在不足しているのではないかという課題も指摘されたところであります。四つ目に、今御説明をした三者が混在して学ぶことについての課題であります。同一の教育課程の枠組みの中で、法学に関する学識や専門的資質・能力の水準が異なる者が混在して学ぶということ、それぞれに到達度あるいはバックグラウンドが異なる学生に対して、きめ細やかな対応を取る必要があるわけでありますけれども、それがなかなか難しい。授業の内容・方法に一定の工夫が求められるということは当然ですが、授業以外の時間においても、きめ細やかな対応を取ることが求められるのではないかということが課題として指摘されたところであります。
 以上のような課題認識に基づきまして、それを解決するための充実方策ということであります。これが8ページ以下でございますけれども、枠組みといたしましては、司法制度改革における理念に基づいて、多様なバックグラウンドを有する者に対して、更に充実した教育を行えるよう改善方策を講ずることで、法学未修者が安心して法科大学院で学び、法曹を目指せる環境を整えることを目指す必要があるという基本的な認識を確認し、そのため今後検討を実施していく必要があると考えられる具体的な方策について取りまとめたところであります。
 まず1として、システム改革に向けた検討ということであります。この部分は、三つの点が指摘されておりますが、まず第1に、8ページの(1)でありますけれども、法科大学院全体を通じた厳格な到達度判定の仕組みの検討ということであります。これは将来の法曹として求められる法学的な素養や法的思考力等をどの程度修得できたのかを教育課程の各段階で客観的に把握し、その後の教育指導に生かすとともに、次の年次に進級し、新たな学修に取り組むことが適当かどうかを厳格に認定することができるような新しい体系的な仕組みの導入を検討する必要があると考え、御提案するものであります。そのような観点から、法学未修者1年次には、公法系・民事系・刑事系の基本的な法律である憲法・民法・刑法といった法律基本科目をより重点的に教育することで、その基礎・基本の修得の徹底を図ることを前提にして、2年次以降の教育課程における学修への適性等を判定するため、憲法・民法・刑法等の基礎的な学識や法的思考力を客観的かつ厳格に評価することが重要であり、法科大学院教育全体の質の保証を図るという観点から、1年次から2年次への進級に当たって、共通到達度確認試験─仮称でありますけれども、そのようなものの導入など、法科大学院が共通して客観的かつ厳格に進級判定を行う仕組みの構築を検討する旨を提言しております。また、今のは1年次から2年次への進級ですが、2年次から3年次への進級に当たっては、画一的な方法による実施は必ずしもふさわしくないと考えられるものの、その後の発展的な学修に取り組むため必要となる法的な知識を活用して、課題を解決する能力が確実に修得できているかどうかということを客観的かつ厳格に判定することができるような仕組みの導入というものは、やはり検討されるべきであるという提言をしております。ワーキング・グループの議論の中では、以上のような仕組みと各大学が行う進級判定との関係につきまして様々な議論があったところでありますが、その点は報告書の10ページの上から三つ目の段落「なお」で始まっているところでありますが、在籍学生の進級判定に関する最終的な判断は各大学が行うものであって、以上述べたような仕組みも各大学の判断でその活用の程度などが決められるよう制度設計をすることが必要であるというという点に言及をしております。ただ、この仕組みによって各法科大学院の教育内容の改善はもとより、法科大学院で学ぶ学生は全国規模の比較の中で自らの学修到達度を把握するということも可能となり、各学生の学修の促進にも資するという利点があると考えられますので、各法科大学院がこの仕組みを活用した取組に主体的に参加するということが期待されるということも併せて言及をしているところであります。
 二つ目は、(2)ですが、基本的な法律科目をより重点的に学ぶことを可能とするための改善の検討であります。これは、学修の出発点である1年次は憲法・民法・刑法といった法律基本科目をより重点的に教育し、基礎・基本の修得の徹底を図る必要があるという点を確認しているわけでありますが、一方で、基礎法学・隣接科目や展開・先端科目は、学生の視野を広げるとともに、社会の様々な領域における法的ニーズの増大・多様化に対応できるようにする趣旨から設けられているものと認識しておりますが、法学未修者が有する多様で幅広い、法学部以外の学部における学修経験や実務経験・社会経験等を考慮すれば、必ずしもそうした基礎法学・隣接科目や展開・先端科目を法学既修者と全く同じレベルで履修する必要はないとも考えられるところであります。このため、法学未修者、特に社会人、法学部以外の学部出身者については、法学部以外の学部における学修経験や実務経験・社会経験等を考慮して、基礎法学・隣接科目や展開・先端科目の履修を一部免除し、より法律基本科目に注力して学べるような仕組みの導入を検討する旨を提言しているものであります。
 三つ目は、11ページの(3)でありますけれども、法学未修者に対する入学者選抜の改善の検討であります。法学未修者につきましては、入学者選抜の段階で法律科目に関する試験を実施していないため、結果として入学後に法学になじめない者が一部生じてしまうという現状があります。法学になじめるか否かを判定するということは容易ではない作業ではありますが、そのような法学になじめる者を判定していく入学者選抜の精度を上げる努力というのは、引き続き必要であるというふうに考えるところであります。このため入学者選抜における適性試験の在り方に対する改善・見直しや各法科大学院の入学者選抜において、いわば法的なセンスの判定の精度を高める手法の検討・実施というものが望まれるということを提言しているものであります。
 以上が1のシステムに関する問題でありますが、次に12ページ以下につきまして、入学前・入学後・卒業後を一貫した法学未修者教育の充実方策ということであります。
 まず、(1)入学前の段階における方策でありますけれども、ここでは法科大学院志望者への入門的な教育機会の提供の促進として、すぐれた入門教材の作成やインターネット等を活用したすぐれた法学講座の配信等の取組について検討する必要があるということで、法学部との連携・協力を視野に入れた取組について検討が望まれることなどに言及しております。また、法科大学院入学予定者に対する学修支援の促進として、各法科大学院において入学前ガイダンスの実施や入門用の基本書・教材の紹介、学修の奨励など、事前準備に取り組んでいく必要があるということの提言をしております。
 次に、(2)入学後の方策でありますけれども、ここでは教育内容の改善と教育方法の改善の両面からの充実の方策に言及しているところであります。12ページの(2)丸一番の教育内容の改善のところでありますが、ここでは共通的な到達目標の設定とそれに応じた教育課程の見直し・改善を行うことや法学の基礎・基本を徹底的に身に付けるために、例えば講義形式を中心とする基礎的な授業科目の充実はもとより、別途その科目に対する補充的な履修科目を設けて履修可能とすることや、法曹として共通的に必要とされる法的文書の作成の基礎的技能を伸ばすことについて、そのようなものを授業科目として設定するなど、更に充実した内容となるような取組を推進する必要がある。また、法律基本科目など講義形式を中心とする授業科目については、双方向性を確保しつつも、必ずしも少人数授業にこだわらないこととし、それによって生じた教員の余力を補充的な演習科目等に振り向けることができるようにすることの検討などの点について提案をしているところであります。
 それから、13ページの丸二番の教育方法の点でありますが、ここでは、先ほども出てきましたが、講義方式の適切な活用や小テスト、あるいはICT等を活用した学修、定着・理解度の把握の推進など教育方法等の改善を行うこと、希有な事例あるいは過度に難しい事例を授業で扱うのではなくて、むしろ典型的な事例、適切な難易度の事例を素材とした授業を展開すること、あるいは初学者の指導に用いる教材の開発に取り組む必要性、さらに、授業や演習の中で修得した基本的学識を文書に表現させる機会を設けるとともに、定期試験等の講評の機会等を捉えて模範的な学生の答案について公表することや、添削指導等の方法により学生に文書作成能力を修得させる機会を積極的に与えることの必要性などについて言及しているところであります。
 さらに、14ページの(3)、今度は卒業後の方策ということでありますが、卒業後については既に法科大学院を修了していますので、そういった学生に対する対応の方策を講ずることには自ずから限界があるわけでありますけれども、その中での考えられる方策として、各法科大学院において修了者の状況に応じて適切な支援を行うための前提として、修了後の動向把握の徹底を図るとともに、修了者に対して授業や学校施設の開放の促進、就職支援を含む相談体制の充実に努める必要があるということについて提言をしているところであります。
 最後に、14ページの(4)で、充実した教育体制・支援体制の整備という点であります。ここでは法学未修者に対する教育を充実させるためには、教育内容・教育方法の改善とともに、学生の指導に直接当たる教員の資質能力の向上が求められるため、国内外からの外部講師の招へいや講習会等への参加、研究会の実施等のFD活動を充実させるべき旨を提言しております。また、法学未修者、特に社会人や法学を学んだことのない者を含む法学未修者が学修しやすくなるよう、夜間開講コースの充実の検討が望まれることなどについても言及をしているところであります。
 以上、駆け足になりましたけれども、以上がこの提言の内容の説明であります。
 それから、今回ワーキング・グループの検討を進めていく過程で、現在、法学未修者教育の充実に向けて様々な改善に取り組んで法科大学院も多数あるということが見えてまいりました。このため、このような優れた取組の中から、各法科大学院で共有していただくことは有益であろうと考えられる実践例について取りまとめたのが、資料2-2の参考1としている資料であります。ここでは今回のワーキング・グループの過程で、委員等からの発言あるいは各法科大学院に対するヒアリング等々の中から幾つかの有益な取組というものをまとめさせていただいているところでありまして、今回併せて御報告をさせていただきたいと思います。
 以上をもちまして、ワーキング・グループにおける調査審議の報告とさせていただきます。よろしく御検討のほどをお願いいたします。



【田中座長】  
 どうもありがとうございました。今、山本委員から御報告がありましたけれども、この法学未修者教育の充実方策として検討された事項の中には、法科大学院制度の改革につながる内容を含んだものと個々の法科大学院における教育の改善の促進という観点からのもの、この二つのものが骨格となっていると思います。特に、前者の方には法科大学院のシステムそのものの改革に向けた検討に関連する部分がございますので、これは中央教育審議会の段階から問題になっていたところが、ある意味では顕在化したという点もございますので、この委員会でも少しまとまった時間をとって十分議論していただく必要があるのではないかと思うのです。
 まず、ただいまの山本委員からの御報告について、実践例なども含めて御意見、御質問などがありましたら、御自由に御発言をお願いします。どうぞ御自由に。



【井上座長代理】  
 ちょっと今日は驚かすような発言をするかもしれません。短い期間で集中してよくまとめていただいたと、その労に感謝させていただきたいと思います。内容的にも現行の3年課程を標準として、既修者はその一部を免除する、基本として1年目を免除するという、こういうシステム。また、未修者にはいわゆる純粋未修者といいますか、他学部、社会人出身者のみならず法学部出身者も多数いると。こういう実態を前提にする限り、よく考えられている妥当な範囲ではないかというふうに思うのですが。そして、これが本当に隅々まで実施されれば更に制度の改善が期待できるというふうにも思いますが、その意味ではワーキング・グループとしては本当にベストを尽くしていただいたと思うのですが、ただ、現在の危機的な状況、つまり少なくとも司法試験の合格率に見る限りにおける既修者との大きな格差、そしてさっきワーキング・グループの報告でも触れられました他学部出身者、社会人、全体としての未修者の人数が激減している中で、特に社会人、他学部出身者の志望者が大幅に減っていると。これを大きく変えるという視点からすると、やはり物足りないと言わざるを得ないと思うんですね。ワーキング・グループとしてはやむを得ないことだと思いますが、もっと大胆な、恐らく踏み込んだ改革が求められているのではないか、一刻も猶予がないような状況ではないかというふうに思っています。この会議とは別に、法曹養成制度検討会議というのが設けられていて、そこでかなり踏み込んだ議論がされているわけですが、18日には恐らくこの未修者教育の問題を中心とした法科大学院の教育法の問題が議論されるだろうと思うんですね。そういうことの、そこでの雰囲気ですね。この間はもう一方的にいろいろ言われて、たじたじとなったというような雰囲気もあって、そういうことから考えても、もっと踏み込んだ改革というのが求められているのではないかというふうに思いました。
 基本的な方向としては、未修者については、法律基本科目をより手厚く教育すると。その反面として、先端・展開科目と隣接科目の比重をやや軽くすると。こういうアイデアで、この方向は恐らく実情を踏まえた現実的な対応であるということのみならず、理念的にも私は間違った方向ではないというふうにも思っています。というのは、未修者教育、これはロースクール自体が、幅広く多様性に富んだ人、法曹を育てると、こういう理念で、特に未修者はそれが期待されているわけですけれども、法学部出身者の場合は学部で法律を十分やってきているはずだと。更に法律漬けにするというのはこの理念に反するので、もちろん基本的なところをきちっと確認しないといけないんですけれども、やはり幅広い教育というのがロースクールに求められる。それに対して、非法学部社会人の方は、法律を全くやってきていないとか、かつてやったんだけれども、賞味期限がとっくの昔に済んでいるという方が念頭に置かれていますので、やはりそれはロースクールに来て多様な教育という、その多様なものを持っているはずなので、法律に重点を置いて教育するというのは理念的にも間違っていないのかなというふうに思います。
 ただ、問題は未修者にいわゆる純粋な方、純粋というと何か他方は不純で違法だというふうに捉えられるので、ちょっと私は抵抗があるんですけれども、他学部、社会人のほかに大学法学部で法律を十分学んだはずの人も多数入っていると。現状では恐らくどちらかというとそちらの方が多くのロースクールに入ってきているという、そちらも含めて考えているために、さっきの基本的な方向がちょっと中途半端で曖昧なものになっているのではないかということなんですね。特に現状を見ますと、未修者で非法学部、他学部出身者が入ってこられて、私どものところではかなりの数がいるんですけれども、ただ既修者は全部ほとんど法学部出身、未修者もかなり多くが法学部出身、そういうカルチャーがかなり全体に行き渡っていて、本当にいわゆる純粋未修者の方がちょっと肩身の狭い思い、あるいはちょっと乗り切れない部分、そういう思いを抱いているんじゃないかと思うんですね。その意味もあって、私はこれからの方向としては、未修者はいわゆる純粋未修者、他学部出身、社会人のみに限るという方向を大胆に出した方がいいんじゃないかと。それを前提に法律基本科目の教育というのをより強化するということが必要なんじゃないかと。
 ワーキング・グループで、学部教育との連携というのもうたわれていますが、何かおっかなびっくりのような感じなんですよね。これはロースクールの基本理念に反するんじゃないかという、そういう意見も当初は特にあったんですけれども、そういう非法学部、社会人出身者を前提にする限りは、理念的には間違っていないのではないかというふうに思うんですね。その意味で、やっぱりそちらの方にできるだけ主にしていくということが必要なんじゃないかと。ただ、じゃ法学部出身者で既修者に入れないときに行きどころがなくなるんじゃないかと、こういう議論もあると思うんですが、それは本来、そういう方たちを広く受け入れて救済するというものとして、未修者のコースが考えられていたわけなので、やっぱり本来的には非法学部、社会人の教育ということを主にして、しかし法学部出身者も特にあえて入ることはないという、そういう従の位置づけだったと思うんですよね。ですから主従が逆転して教育がぐちゃぐちゃになっちゃうというのはやっぱり本末転倒じゃないかなというふうに思うんです。
 ただ、これをやるためには、ワーキング・グループの提案自体もそうですけれども、ロースクール全体のカリキュラムとしてうまく整合的に組めるのか、それともう一つは、やっぱり未修者の方と既修者の方が、あるところで合流をして、お互いに刺激し合って学修していくと。そのメリットもやはりあると思いますので、その辺を考えて、現実的にちゃんとしたカリキュラムが組めるのかということは、更に詰めて、モデルのカリキュラムのシミュレーションをやってみるとか、そういうことをしていく必要はあるだろうと思うんですね。そういう意味では私自身はもっと踏み込んで、システム全体をこの際見直すというようなことをやっていかないと、十分な改革にはならないのではないか。もしそれがうまくいけば、未修者の方の志望者というのもまた戻ってくると。実績を上げて、それと純粋未修者の方にとって居心地のいい、期待の持てるシステムになれば戻ってこられるんじゃないかなと、そういうふうに思います。
ちょっと長くなりましたが、以上です。



【田中座長】  
 どうもありがとうございました。どうぞ。



【山本委員】  
 今の井上委員のお話ですけれども、ワーキング・グループの中でもそのような議論あるいは意見が出たことは確かです。ただ、ワーキング・グループでは、私の認識では、今のようなお話というのは、現在は3年を標準修了年限として、法学についてある程度能力がある者については1年それを免除するという仕組みを恐らく根底から見直す必要があるということになる。つまり誰でも3年で入ってきて、たまたま法律的なものがある人については1年縮めるということではなくて、法律的な素地を持った法学部出身の人はもう2年のところにしか、いわば行けないという形にするものですから、これはかなり現在の法科大学院の基本的な設定を変えるものであるというふうに認識しました。我々ワーキング・グループのマンデートはどこまでなのかということなんですが、やはり我々としては現在の基本的な法科大学院の制度的な枠組みを前提としながら、未修者教育をどこまで改善していけるかということを考えるのが、我々に与えられたマンデートではないかというふうに認識をしまして、そこで現在の制度的な前提に沿った上でどこまでいけるかというところを考えたということで、井上委員の言われた御指摘を否定しているわけではなくて、我々はちょっとそことは違うところで考えましたと、そういうことでありました。



【井上座長代理】  
 その点は重々よく分かっております。ただ、出発点の制度枠組みなんですね。これは要するに今の一つの課程としてつくるためには、そういう形にしかできないと。2年を標準にしてプラス1という形はとれないので、3年で完結するものにして1年免除する。こういう形をとったんですけれども、基本的な考え方は、今、山本委員がおっしゃったような考え方をとる方もおられれば、基本的な理念としてですね。そうじゃなくて、やっぱり既修と未修というのは並行で、どっちが原則なわけでもないと。ただ、1つの確率を含む形としてはこういう形をとらざるを得ない。そういう考え方もあったんですね。もし後者のような考え方であれば、理念的にはそれには反していないというふうに私は思いますけれども。



【田中座長】  
 井上委員の御提案ですけれども、制度をそうするという問題と、それから個々の法科大学院でそういうふうにする法科大学院もあってもいいかどうかとなると、各法科大学院によって、私のところはそういう方針にしますということ自体は……。



【井上座長代理】  
 今もそういうところがありますよね。



【田中座長】  
 制度としては許容限度で、未修者しか受け入れないということは可能ですね。制度全体で山本委員がおっしゃった……。どうぞ。



【磯村委員】  
 井上委員ほどドラスティックではないんですけれども、正に山本委員がおっしゃった枠の中でどう捉えるかということを、幾つかちょっと検討しておくべき問題があるかなと思うのは、一つは、9ページの1年間の学修到達度を確認するという発想で、これは試験もそうなんですけれども、最初は法科大学院のカリキュラム設計をするときに、3年間でどういうカリキュラムをつくるかということが、ある程度各法科大学院の創意工夫に委ねられている。そうすると、1年次に例えば法律基本科目を重点的にやるという法科大学院もあれば、例えば実務科目と組み合わせてやるというようなこともあり得べしという、そういう前提で制度全体が動いていたと思いますので、これがある程度縛りをかけるということになると、そこの発想をどこまで組み替えることができるかという検討が、同時に必要になるのではないかと思いますし、もう一つは、やはり各法科大学院の事情を考慮されて、9ページである種の共通テストという発想をとりながら、しかしそれをどう利用するかは10ページでは各法科大学院の最終的な判断という、かなり苦しい選択をされたのではないかと推測をするんですけれども、そこの兼ね合いがなかなか難しいのかなという気がいたします。
 それからもう一つは、やはりこういう共通到達度確認という発想をとるというときに、それをどういう方法でチェックするかというと、恐らくマルチプルチョイス式にしかならざるを得ないと思うんですが、それが逆に言うと、従来より更に知識獲得型の学修を助長することになるのではないかという若干の懸念がやはり残ります。
 それからもう一つ、これは裏返しの問題で、井上委員がおっしゃったことにも関係するんですけれども、現在既修者についての認定の仕方というのは、各法科大学院でレベルをそれぞれ判断しているということになるんですが、まずそれでいいのかということが今度は逆に、ある種の1年間でこれだけということになると、その逆の反面、既修者を採るときには、どれだけのレベルを要求するかという問題が、これもマンデートの問題とは外れている問題ですけれども、出てくるのかなというように思いました。
 ただ、もう1点だけ、ちょっと13ページのところで、これは授業の内容の改善と方法等の改善のところで、かなり意図的に踏み込んだ表現として、「講義形式を中心とする基礎的な授業科目」というのがフレーズとして何回か出てくるんですけれども、特に13ページの丸二番のところの4行目から5行目と6行目なんですが、「質疑応答や討論を中心とした授業方法に過度にこだわるのではなく」というのと、その次の「講義形式での授業方法を中心として」というのは随分ギャップがある表現であって、逆の振り子の振り方をしているのではないかと思いますので、これは私自身の経験でもそうなんですが、やっぱり学生の授業に対する、例えば対応の仕方とか、あるいは学生の能力等々に応じてどこまで質疑応答形式が効果的であり、どこまで講義形式が効果的であるかというのは随分違いますので、ここのフレーズが独り歩きすると、何となく、未修者授業はむしろ講義中心であるということの方が望ましいというニュアンスに何か受けとめられかねないので、そこの表現をちょっと避ける方が良いかなというように思いますし、そうであるとすると、講義の形式もそうなんですが、やっぱり少人数教育というのが基本かなというように思います。それはなぜかというと、講義をする場合でも学生が講義についてこれているかどうかということを教員が反応として見るということが一定の数であればできるんですけれども、それを超えるとかなり難しいことになるのかなというように思いますので、実際問題として、今、少人数という場合も50人を標準とするという法律基本科目の基準からいえば、それ以上増やすという、緩めるという必要はどうも実際にないのではないかという気がするので、ちょっとその点も併せて付け加えました。
 以上でございます。



【山本委員】  
 再びワーキング・グループの状況を御紹介させていただきますと、確かに共通到達度確認試験と各法科大学院のカリキュラムの関係ということをどう考えるかということは、かなり議論としてあったところであります。最終的に科目として憲法・民法・刑法を例示しているのは、さすがにこれを1年生でやらない法科大学院というのはちょっと考えにくいだろうと。民訴・刑訴というのももちろんあるわけですけれども、そこになってくると果たしてどうかというところもあったものですから、一応例示としてはその憲法・民法・刑法の3科目、ここに絞った形で提示をさせていただくという。
 それから、こういう共通到達度確認試験を設けるとしても、設けるにもかかわらず各法科大学院がそれをどういうふうに使うかは自由であるというふうに書いてありますけれども、これはもちろん各法科大学院の枠の自由な拡大が各法科大学院にありますけれども、ただ実際の効果としては、認証評価等を考えますと、実際に学生がその試験を受けて、ある一定の成績をとっているということが明らかになっているときに、それをこの成績で進級させているのでしょうかということは、やっぱり当然出てくるのではないかというふうに思いまして、だからといって法科大学院が学生にこの試験を受けるなということにはやはりならないだろうというふうに思いまして、そこはある程度自ずから多くの法科大学院がこれを採用していくとすれば、こういう形でも初期の目的を達成できることになるのではなかろうかというような認識ではありました。
 知識重視になるのではないかという、確かにその懸念はあるように思います。それは結局この試験をどういうふうにやるのかということにかかわっているところでありまして、そこは相当の工夫がやはり必要ではないかというふうには考えています。ただ、一つの参考としては医学部の4年生を修了した時点で行われる、いわゆるCBTという共通試験があるようでありますけれども、それについてもワーキング・グループの中ではある程度考慮して検討をしております。そこでは、もちろん知識というものがある程度中心にはなっていますけれども、もう少し考える力と言いますか、医学部の場合は医師の診断の具体的な手続にのっとった形でいろいろな質問とか工夫みたいなものもされているようでありまして、そういったようなものも参考にしながら、知識の偏重にならないようなものを工夫していく必要があるというのは、ワーキング・グループでもそういう認識でございました。
 それから最後の、講義中心という点は、確かにちょっと我が意を得たりという感も中にはあるわけですけれども、やはりどの程度の人数なのかということはかなり議論されまして、とりわけ大規模法科大学院においては、やはりクラスの最低の人数を定めることと、教員の負担との問題、兼ね合いというものがあって、教員の負担を、教員の能力をどの部分に重点的に使ってもらう、限られたリソースを投資するのがより有効な教育になるかという観点からの問題提起がされました。それで、講義とともにそれを補充するような演習科目というような提言がされていますけれども、大規模な法科大学院では、授業の段階ではある程度多くの人数で講義的な形で授業をやって、そこでクラスの数を少なくすることができれば、そこでいわば浮いた教員の能力をこういう演習のような、補充的なところに活用できるのではないかと。その方がより実効的な、効率が上がる教育が可能になるのではないかというような提言もございまして、それでそれはなるほどということで、こういうような書き振りになっているというのがございます。
 私からは以上です。



【永田委員】       
 もう一つのワーキング・グループの方で、法科大学院の教育の改善に関する調査をやっているわけです。その観点から考えますと、まず課程として未修者3年制というのは維持される。それから修了所要単位数を100単位前後にということも維持されると。それから学生も維持されるというような課程で確保するということですけれども、一方で、改善状況調査をやっていると、法律基本科目を偏重しないということを、司法試験受験対策に過度に偏らないようにという希望がすごく大きいので、私どもはその法律基本科目の割合をですね、認証評価では60パーセントぐらいを超えないというような、あるいは60から70ぐらいのパーセントでという項目がある中で、そういうことを考えている中で、これもある程度やらざるを得ないのかというのは認証評価の質問というよりは、こういう課題もあるというポイントになるのではないかと。
 それから、入り口の問題で、適性試験が法科大学院教育に耐え得るかということの試験であるというふうに、知見についてはいろいろな議論がありますけれども、未修者には法学的な素養があるかないかは大事だけれども、法学的素養を含む内容の試験をしてはならないというルールがある。これは非常に微妙なところで、幾つかの法科大学院はそれに微妙に引っかかって、問題視される。ここら辺りをどう取り込むかということで、少しはそういう形で見ていかないと、法科大学院教育に耐え得るかどうかということが、結果的には見えていないじゃないかという反論も幾つかの法科大学院にあるわけですね。そういう問題です。
 それから、方法としては、磯村委員がおっしゃったとおりでして、双方向を維持するのか、あるいはこの調査をやっていますと、1年生の講義科目は、もう講義形式をとると断言する法科大学院も幾つかございます。あるいは民法等は双方向ができるかもしれないけれども、行政法とかそういうものは難しいという、そういう議論もあります。そういう中で、やはりこれもやっぱり慎重に、磯村先生が言われた、どちらを表に、どちらを裏にするかというような、そういう姿勢もこれは必要ではないかと思います。 
 それから、法律文書の作成というところはこれは非常に微妙でして、これが答案練習の関係になっているのかどうかとして調査をしてみますと、それが過度な司法試験対策になるような文書の作成と、基本的なそういう法曹としての素養としての文書作成と、そのトレーニングの在り方に微妙な差がありまして、未修者には特に必要としてやるべきだというのはよく分かりますけれども、その辺りもきっちりと具体的なイメージをつくる必要があると。
 それから、少人数教育に関しましては、磯村委員がおっしゃったとおりでして、50人というのはある意味でそれでも多いんじゃないかというぐらいの一つの案で、それを更にということであるとしたら、かなり問題である。それを超えている法科大学院というのは幾つかございます。それなりの理由があります。それは言いにくいんですけれども、それに耐え得る法科大学院生の層を抱えている法科大学院と、なかなか多人数に耐え得ない法科大学院がありますので、それは微妙なところでありますが、ここを緩めてしまうということは、そしてそれは法科大学院の人的資産をうまく分散するためというのとは別の要素が入っているように思うんですね。この制度を考える場合、それを補完する、そういう形の教員を補充していくということはむしろ重要だと思いますので、そのあたり、ちょっと違う要素が入っていると思います。
 それから、最後の出口のところですけれども、出口ないしは途中の到達度確認試験というような仮称のものでございますけれども、これは途中でそういう形で良いのですが、それでは単位認定をして、どの科目も絶対評価はまずいというのがほとんどだと思うんです。そういう中で、この共通到達度確認試験というのは何を見る問題か。一方で、全体的に見るにはGPAというものを導入して、大体、進級のところに入れているわけですね。そうすると、この試験を共通的にやって、質の平準化といいますか、そういう意味で重要なのだということは分かります。特に問題を抱えている、課題を抱えている法科大学院にとって、この辺りが甘いということはあるのかもしれませんが、これまでの単位認定というのはどういう意味を持つのか。単位をそろえれば最終的に受験資格を与えられるという仕組みに、もう一つものを入れるのかという問題が一つありますね。また受験対策的にはならないかということの検討はあります。
 多くの、幾つかの法科大学院は、この単位認定以外に修了試験というものをやって、最終的に総合的に見るというのがあるのですが、これは非常に疑わしい、悩ましいものでして、結局、自分たちは単位は与えたけれども、司法試験に通るかというところで、受験させられるための試験になっているというようなところもある。合格率を上げるという。そういうようなこともあって、若干これは限られた大学ですが、そういうところもございます。そういうことで、共通到達度確認試験というのはこれまでの単位認定によってそれを最終的にその集積でやっていくというやり方。それから、多くの大学はGPAを取り入れて、総合的に全体的にバランスがとれた教育をやっているかというところを見るとやってきている中で、これをどう位置づけるかというような問題もあります。
 入り口、中身、出口、それぞれ改善状況調査をやっている中で、一つのこういう枠組みでやっていますよという形でお話しするわけですけれども、やはりそこに無理があるところもありまして、もう議論していても何の手立てということもございません。そういうものが新しい提案には含まれていると思います。この辺りを考えながらワーキング・グループはやっているんだということだけを報告しておきます。今日は特にいいです。



【日吉委員】  
 私も山本委員と一緒にワーキング・グループの議論に参加させていただいた人間ですが、共通到達度確認試験をどう考えるかということについて、特に授業を受けた学生の立場から意見を紹介したいと思います。私もワーキング・グループの中で同じような意見を申し上げましたが、この確認試験という仕組みを新たに導入するというのは、本当に多目的なものだというふうに思っております。これはもちろん学生を評価して、成績をつけて、進級を考えたりというような先生の立場からの何か道具を与えるという側面があると同時に、私の経験から見ても、学生にとって非常に資するものだと。それは二つ意味がございます。
 一つは、仲間からもよく声が聞こえるんですけれども、1年次の春休み、前期・後期の授業が終わってみんなほっとしているときに、非常に気が緩んで一切勉強しない人が多いと。そのときにきちんと勉強をして復習をするかどうかが、その後が随分変わってくるのだと。そんな話を聞くと、いい歳をして、一々そういう面倒を見なきゃいけないのかというところまで心配になるんですけれども、でも実際そういう学生が多いという、そういう声があります。そうしますと、1年次から2年次の到達度確認試験というのは、自然に春休みに行われるということになろうかと思うんですけれども、一つこういう仕組みを入れることで、1年次の復習をするインセンティブを与えると。そういう道具となり得るという側面が一つあるということは無視できないのではないかなというふうに思っています。
 それともう一つは、山本主査がおっしゃいましたけれども、そもそも未修者の中には多様性が大分減ってきたという悩ましい側面もある半面、それでも既修者と比べれば多様なバックグラウンドの人がいることは間違いございません。そうすると、よほどロースクール側の仕組みが、迎える側の方が柔軟でなければ、あるいは柔軟に対応できるようにしてあげなければ、その学生が、人間によっては1年で追いつく人間もいれば、2年たたないと目から鱗が落ちないような学生もいれば、全く学修の進み方も個人差がございます。そういうふうな人間に、ある種定点観測のように、ある時点でそういった共通の確認ができる何か指標みたいなものを与えて、本人にも考えさせると。場合によってはそういうものを契機にして、例えば3年は無理だから4年へという長期履修制度に自ら転換するということを判断するような、そういう気付きの機会を与えたり、そういった道具といったらいいのでしょうか、そういうシステムとしてこの法科大学院制度の中に組み込んでやるというのは、もちろん使う側の何でも道具を入れたからといって、それが自然に解決方法をもたらしてくれるものではなくて、それを使う方の学生側のそれこそインテリジェンスというものも問われるわけですけれども、少なくともそういう仕組みを入れてあげることによって、今よりはより柔軟な制度に転換していくということの一つのきっかけを与えるのではないかと、そういった意見があったことを御紹介したいと思います。



【笠井(治)委員】  
 私も先ほど出ました共通到達度確認試験の導入ということの検討については、幾つか留保を付けながら前向きに検討すべきではないかというふうに感じます。私も永田委員と同様に、第3ワーキングとは今は言わないんでしたっけ、改善状況調査ワーキング・グループの一員でありますが、特に未修者だけの学生を受け入れている少人数のかつ地方のロースクールなどを訪問調査いたしますと、そこで学生にとってみるとすると、全国的な中での自分のポジションというのがどうなっているのか、気にもしないし、分からないというような答えをする学生が数多くいらっしゃるわけですね。そのような学生に対して、それでは出口として君はその後自分自身が司法試験に本当に受かると思っているのかどうなのかというようなことを尋ねると、分からないと。その結果として出てくるものが、それでは全国的な自分のポジションを確認するために、いわゆる司法試験の受験予備校の模擬試験を受けると、あるいは通うというような対応すら出てくる可能性、答えもあるわけです。
 そういうものではなくて、各ロースクールの共通的な到達度の確認試験というものは、仮にできるのであればいいのではないかというふうに思います。そこには確かに知識偏重になり、それから試験のつくり方等々、問題や各ロースクールの単位認定の在り方とどのようにかみ合うのかという問題があるわけですけれども、その点の留保を付した上でこういう試験を導入していくというやり方があるのではないかというふうに思っております。
 それから、この報告書の中で基本的に未修者の層を3様に分類されて、法学部以外の学部出身者をめぐる課題があり、法学部出身者をめぐる課題があり、社会人経験を持つ者をめぐる課題があるというふうに分けた上で、未修者にとっては社会経験等々、それから非法学部の学修経験を経たという点を考慮した上で、法律基本科目を重視し、展開・先端科目についてはこれを少し軽減してもいいのではないかという考え方に合った整理をされているわけですが、この点について基本的な方向としては、これが妥当なのではないかというふうに思います。
 ただし、法学部出身者をめぐる課題として、この方たち、未修グループとして入ってくる方たちの問題をどうするかという点について、この点、論理的にはちょっとその部分についての言及としては難しい部分があるのかなというふうに思います。
 そういう点からしますと、先ほど井上委員が強い危機感に駆られた大胆な革命的な御意見ではないかというふうに思ったんですが、非常に気になるところでありまして、今回のこのようなワーキング・グループのマンデートではないとしても、これは真剣にやっぱり考えていかなきゃいけない課題であるかというふうに思います。この委員会でそうした討論を継続できるのかどうなのかもよく分かりませんけれども、また時期的にいつまでということがあり得るのかもしれませんし、政治要件もあるようですから、真剣に幾ら議論しても、答えが出ないという話になるかもしれませんし、だがしかし、この点については本当に真剣な認識を持って議論をする必要があるのではないかというふうに思いました。



【松並委員】  
 私はこの検討委員の一員に入れていただいて議論しました過程で、そのときの状況を若干お教えいたしますと、先ほどの基礎科目を重点的にまず教育するということの重要性は、実務家という立場からお話ししますと、やはり憲法・民法・刑法という、この基本をしっかり押さえて、法的センスを修得する。こういった実務家になるための素養は、この3法をしっかりすれば、まずはそこから他の科目というのは比較的吸収しやすくどんどん展開していくのではないかという議論がございまして、自分たちが受験勉強をしていたときのことを思うと、それが効果的ではないかという議論が出て、各委員の方々にも御賛同をいただいたということです。やはりそこの発想を是非御理解いただいて、推し進めていただければと思っております。
 それで、各大学の認証評価をはじめ、各基礎科目に対する受験目的への行き過ぎというような指摘をせざるを得ないというのなら、むしろその発想自体を変えていくという観点も必要ではなかろうかと思っています。
 それから、共通到達度確認試験、これは私の方で提言させていただいたんですが、先ほど知識偏重に偏り過ぎないかとの御懸念の意見がございましたが、確かにそういう面があるかもしれませんが、私はむしろ反対に、誤解を承知で言わせていただければ、余りにも知識を軽視しているのではなかろうかと思うような幾つかの法科大学院を見せていただきましたが、そのように感じるような講義がとても多く、時間中に六法を一度も開かない民法の講義があるというのが現状として、現実としてあると思うんですね。かつ、やはり情報を基本とする、基本的な知識の概念なくして実務家というのはあり得ないと。まず、そこの認識を各法科大学院におかれてしっかりと持っていただき、それからの議論、幅広い多様な人材というのは、そこから始まるんじゃなかろうかという発想で、この到達度試験という一つの手法を提言させていただいたところです。
何も難しいことをする必要はなくて、今日の参考に出ております、例えば名古屋大学の「学ぶ君」のシステムというのがあるんですが、個々の学生がコンピュータで逐一自分の学修の到達度をチェックできるように、極めて簡単な問題、○×式の問題を御用意されて、私はこれはとても法科大学院の教育の手法として適切だと思っており、ここからどんどん発展していって、最終的には医学部の共通試験のようなものができれば、私はそういう方向を目指していただければ、理想はこういうことを積み重ねていけば、最終的には卒業できた人は実務家ぐらいのレベルまで持っているはずであり、法務省の私が言うのもあれですけれども、試験もなくなってそれはそこまで到達できるようになればですね、それが理想なのではないかとは思っております。
 それから、先ほどGPAというお話もございましたが、この会議でヒアリングをさせていただいたときに、ある大学の方が、自分のところの歴代の学生の成績をGPA順にながめて、そして1回、2回、3回目で通った人・通っていない人をチェックしていただいたのを全部見せていただいたんですが、シミュレーションですね。そうしますと、確かに1.6何がしで通っている人もいますが、2以上をとっても、2.5をとっても、5年3回で通っていない人は山ほどいる中で、仮に例えば1.4で進級と決めていたとすると、これは直接その大学の中での一定評価でしかないので、これをもって適正に評価をし、受験資格を与えるだけの教育をし切っていますとはさすがになかなか言えないのではないだろうかという発想もあり、到達度試験というものを提言させていただいたということです。
 以上であります。



【椎橋委員】  
 今日初めて拝見させていただき、十分に理解しているかどうかは分からないのですけれども、入学した後に未修者の教育について、今議論になっている共通の到達度試験を、それから講義のやり方についての見直しとか、それから進級制度を厳格化するとか、いろいろ工夫がされていて、全体としては私は評価できるものではないのかと思いますけれども、先ほどの永田委員の意見と関係するところで教えていただきたいところがあるんですけれども、入り口のところの問題ですね。現在でも純粋未修の入学者はかなり優秀な方が入ってきていると思うんですね。ところが、そうであるにもかかわらず、なかなか伸びない。その原因の一つに、どうも法科大学院になじめないというようなことがあって、入っていけないということがあります。ですから、そういうことを考えると、優秀だから伸びるというわけにはいかないので、やっぱり法学が好きだ、なじめる、伸びていけるというような、そういうことを測るようなものを入学の時点で何かできないだろうかと。つまり、法律試験科目を実施するということは現在ではできないわけですけれども、既修者試験でやるような試験というものではなくて、基本はもちろんいろいろな適性試験とか、あるいは社会人経験とか、そういったものをもちろん重視していいんですけれども、法学の中に入っていけるのかどうかというようなことが測れるような、何か少しでも良いですから、法学の思考力とか、そういうものを測れるような試験を工夫して取り入れると。ですから、そういう社会人とか、他学部出身者でも、そういうようなものがあることによって、受験の時代に少し適性試験だって、そのほかだって、いろいろ小論文だって、そのためのやっぱり受験の時間はある程度使うでしょうから、それに法律学を続けていく上に適しているかどうかということが測れるような試験を、入学のときに何か入れることはできないだろうかと、そういうようなことは議論されたでしょうか。あればお願いします。



【山本委員】  
 ありがとうございます。正に今、椎橋委員が言われたことが、我々の認識では11ページの(3)に書かれていることで、今、まず適性試験というのは、やはり将来、法曹に教育すればなれるような適性を測るという意味からすれば、今おっしゃった法律学というものになじんでいけることなのかどうかということを判定するというのがある種第一義的な目標の試験なのではないかというふうに思っていまして、そこがどの程度うまく機能していくのかどうか、それから、各法科大学院が行っている試験というのは正にそこを捉えようとしているのではないかというふうに思っております。一部の法科大学院では、やはりこの既修者の将来の、法科大学院の中での成績の伸びと入試での成績、どの科目、どの問題でどういういい点を取った人がどの程度伸びていったかというようなことを後から追跡調査して、それで問題の精度を高めていくと。これはいい問題だったと、この問題は全然法科大学院の後の成績と関係なかったねというような、こういう問題では駄目なんだというようなところをかなり入学試験の経験も各法科大学院は積んできていますので、そういった形で各法科大学院がチェックをする。さらに、そういった経験を法科大学院間でその経験を共有していくというような形で、そういう法的なセンス、あるいは法学になじめるかどうかという能力を有効にチェックするようなスキームをつくっていけないかという問題意識はまさにワーキング・グループの中にあったということです。一応こういうような提言で、今のところは各法科大学院なり、適性試験の中でその試験の結果と、将来の法科大学院での成績、場合によっては司法試験の成績といったようなものを追跡調査をしていって、各問題の具体的な有効性みたいなものをチェックしていくような仕組みがとれないだろうかということを提言させていただいたと、そういう次第です。問題意識は共通しているところだと思います。



【田中座長】  
 時間が超過していますので、もう二、三ありましたら。



【土井委員】  
 私からは3点申し上げさせていただきます。
 第1点目は、ワーキング・グループでのこの結果報告は、非常にいい内容で、この方法で改善を図っていくべきではないかというふうに私は思います。ただ、この結果報告で出されている方向で改善を図っていく上において、それをより実際に成果が出るような形で進めていこうとすれば、それは先ほど井上委員がおっしゃられたような、もう少し仕組みですね、制度に立ち入った検討をしていく必要があるのではないかというふうに私も思います。今回示されている充実方策があるんですが、私自身がやはり未修者の問題を考える上で重要だと思っていますのは、未修者こそ受けようという受験生を増加させるということが何より重要なんだと思います。そのために考える際に、今回幾つかの提案がなされているのですが、例えば厳格な到達度判定等について、私は法科大学院能力の改善のために必要だと思います。ただ、それを打ち出したからといって、受験者が増えるというふうにはなかなか繋がらない施策なんですね。そう考えると、やはりカリキュラムあるいは授業内容の改善ということが大事なんですが、授業方法の改善についても提言をされておられるんですが、こういうミクロの対策でもつのかどうかということになると、もうそういう状況ではないんだろうと思います。それを示しているのが未修者の司法試験の合格率について見たときに、既修者ですと、やはり1年目がかなり高くて、受験2年目ぐらいになると少し下がり、だんだんと下がっていくということになっているんですが、未修者の場合1年目、2年目の合格率も変わらない状況になってきています。中位校以下ですと、かえって2年目の受験生の合格率が良いという状況になっているというのは、やはり学修時間がもう司法試験科目、法律基本科目を中心に足りないという状況になっているのは確かですので、やはり法律基本科目を充実させていくという方策は考えないといけませんし、それを考える際に制度の変更が必要であるというのであれば、そこに立ち入るべきだと思います。
 実際2年目になりますが、今申し上げたように、法律基本科目の充実を図る上においても、やはり科目の性質を分類していく必要も出てこようかと思います。例えば、未修者も既修者もともに受けて思考力を充実させていくような科目というのもあれば、既修者については学部で大体、基礎的な知識を修得させている授業というのもあると思うんですね。そういうものを整理して科目の編成をどう考えるか、あるいはクラスの規模をどう考えるかということも検討していかないといけませんし、こういうことをやろうとしますと、やはりどうしてもモデルカリキュラムですとか、あるいは既に作成しているコア・カリキュラムとの関係をどう考えるかという問題も出てきます。共通試験の導入を検討するに際しての実施主体をどうするのか、試験の内容をどうするのか、利用方法をどうするのかと、かなり詰めるべき必要が出てきます。これらの提言を私は迅速に実現すべきだと思いますが、実際に具体化をしようとすると、全国での検討も更に必要ですし、各法科大学院での準備も必要ですので、相当程度時間がかかる。その教育を受けて、その子たちが受験して初めて結果が出ますので、かなり時間がかかることになると思います。それを考えますと、早急にこれの具体化に向けて検討していただかないと、遅きに失するということになりかねないので、この提言を受けて継続した結果の検討を進めていただきたいというのが2点目です。
 第3点目は少し話が変わるのですが、いわゆる社会人、とりわけ在職学生の教育の問題で、今回の報告の7ページで触れていただいております。実際、私も改善状況調査ワーキング・グループをやっておりますと、夜間コース等を中心に在職者学生の教育に力を入れておられる法科大学院が軒並み苦戦されておられるという状況にございます。これをよく分析しますと、やはり在職学生は平日の学修時間が少ないということもありまして、中には長期履修制度を利用しているという学生もおります。また、そちらの利用をすすめているというところもございます。ただ、調査をしてみますと、長期履修制度を導入しておきながら、やはり通常の3年コースで採用されている段階的履修をそのまま当てはめている学校等が見られます。この場合、1年次とか、2年次の前期に配当されている科目というのは、5年長期履修の場合ですと、後半2年半でほとんど学修しないという状態が発生します。それが憲法等、司法試験科目ですと、修了した段階で2年ぐらい結構詰めてやっていないという状態になりかねません。そうしますと、どうしても修了してから1年をかけて復習をしたりというような動機づけが発生して、受け控えになるんです。ところが、在職者は修了しますと仕事に専念しないといけないという状態が発生しますので、復習したいと思っていたけれどもうまくいかないという中で、なかなか合格しないという状態が発生して、非常に悪循環になっているんだろうと思います。その意味では、長期履修については、やはりもう少し違った形でカリキュラム等を検討していただく必要があるのではないかと思いますので、この点については要するに全日制のコースとは違う形で早期に検討していただくべきではないかと。
 以上です。



【田中座長】
 どうもありがとうございました。



【山本委員】
 先ほど申し上げたのは、ワーキング・グループでの議論の中のせめぎ合いの部分でありまして、若干私自身の意見も入れましたけれども、基本的にはこういうところでせめぎ合って、こういう基準でやってきて、それをどのように考えるかは二つ、三つの考え方があり、どういうふうに選択されるかという入り口、出口の議論というのを御理解いただければいいので、これに対して後ろ向きのという意味ではございませんので、御理解いただきたいと思います。
 以上です。



【田中座長】
 活発な御議論をいただきましたわけですけれども、このワーキング・グループから報告をいただいた内容も、非常に重要な内容を含んでいることが今の議論から分かったと思いますので、この特別委員会としては、次回の会合でも再度議論していただきたいというふうに考えております。
 また、先ほど井上委員からもお話がありましたように、現在、法曹養成制度検討会議でも法科大学院に関する議論が行われている最中のようでございますので、文科省から本日の資料の内容につきまして、現在の未修者教育のワーキング・グループの報告としてまとまったものを御報告いただいて、検討会議での御意見、反論なども伺っていただいたというふうになります。
 その上で、この特別委員会におきまして更に検討を進めて、最終的には一定の取りまとめをこの委員会として行うという方向を目指したいというふうに考えておりますけれども、こういった進め方でよろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。それでは、文科省で検討会議との連携、調整をよろしくお願いします。
 今日はもう1件ございまして、適性試験スコアと法科大学院の成績・司法試験合否との関連につきまして、適性試験管理委員会から御報告がございます。適性試験管理委員会の山本事務局長から御説明をいただきます。よろしくお願いします。



【適性試験管理委員会 山本事務局長】
 ただいま御紹介いただきました適性試験管理委員会事務局長の山本でございます。本日は御報告の時間をとっていただきまして、まことにありがとうございます。それでは着席して御報告させていただきます。
 まず、本日の資料でございますけれども、配付資料の一番後ろから5枚を入れさせていただきました。内訳は、資料3と書かれている本紙と、一番最後に別紙というのがございまして、別紙は適性試験を受けた受験年、それから法科大学院の入学の年、それから順調に、既修者であれば2年、未修者であれば3年で卒業した場合、どの年の司法試験を受けたかということの一種の早見表的な参考の資料でございます。
 本日、5分ほどの時間を頂戴いたしましたのは、法科大学院教育の更なる充実に向けて、その改善が議論されている中、適性試験に関しましては、この法科大学院特別委員会におきましても、適性試験の結果と法科大学院入学後の成績、それから司法試験の相関性の検証を求めるというような御提言を頂戴しておりますし、また4月には総務省の政策評価におきましても、適性試験の成績と法科大学院入学後の成績の相関関係についての検証を求めるというような勧告もいただいておりまして、これを踏まえまして、今、適性試験管理委員会でその相関性につきまして、どのようなデータを持っているかということについて御報告を、概要について差し上げるとともに、継続的な調査につきまして是非御協力を賜りたいということでお時間をいただいた次第でございます。
 報告の資料でございますけれども、大きく分けて三つのパーツに分けてございまして、本紙資料3の3枚目を見ていただきたいのですけれども、スライド番号5番からなのですが、これはこれから御説明させていただくに当たっての前提となる点について、まず御説明を差し上げまして、その後に法科大学院の成績との相関関係ですね、それから最後に司法試験との相関関係について、我々が現在有しているデータについて御説明をさせていただいております。
 最初の前提につきましては、適性試験管理委員会分析委員会の藤本委員から、それから相関関係につきましては分析委員会の柴山副委員長から御説明をさせていただきます。それではよろしくお願いします。



【適性試験管理委員会 藤本分析委員】
 早速説明させていただきます。分析委員の藤本でございます。どうぞよろしくお願いします。
 スライド番号でいいますと、順番がちょっと逆となって恐縮ですが、5番のスライドからローマ数字3の部分を私が説明させていただきます。
 入学試験とそれから学業成績、あるいはその後の資格試験との相関関係を検討する際に、やはり一定の前提がございます。その点について少し御説明をさせていただきます。
 まず、a-1とa-2と、日本とアメリカのロースクールに関わります入学者選抜制度の違いであります。合衆国のロースクールの入学者選抜試験におきましては、いわゆるローリング・アドミッションという制度がとられておりますので、一斉に合否判定をするという仕組みではございません。そこで使われる成績基準、あるいは判定資料というのは、その四角に囲ったものであります。
 それに対しまして、日本の制度、これはよく御存じのものと思いますが、模式図で書かれておりますけれども、いわゆる内部入学方式と別枠方式を並べております。このうち、非常に複雑であるということは一目瞭然でありますが、もう一つ留意していただきたいのは、例えば適性試験のスコアというものを第1段階のところで使う、さらに第2段階で第1次試験の成績の 何パーセントかを算入するという形で、適性試験のスコアを二度使いをしているということです。その点からいっても、いわば入学試験の各要素とそれから学業成績、その後の資格試験の合否といったものとを考える上で、検証モデルがかなり複雑になるということをまず押さえておきたいと思います。
 続きまして、スライド番号7に移らせていただきます。本日御報告いたします、検証した、手持ちのデータでできた部分ということは、点々の両矢印で書いている部分であります。内側の両矢印がローマ数字1)、それから外側の矢印がローマ数字2)に相当する部分であります。この部分だけでありますので、下の米印のところにも書いておりますけれども、入学試験の他の要素、あるいは法科大学院における教育の効果、また司法試験のテストとしての精度といったようなものについてのデータはここでは検証をしておりません。また、司法試験の合格者データにつきましては、官報公告の紙面のみで行っておりますので、不合格者の成績というものは計算できません。ただ、適性試験を受験しているけれども、司法試験に合格をしていない、青の囲みで左に三つ出ています非入学、非修了、未受験、不合格、この4カテゴリーにつきましては、合格者ではない「非合格者」として一括して合格者と対比して分析をしているということであります。
 さらに、入学試験一般につきまして、学業成績とそれからその後の資格試験のときの関係を見る上での基本的な関係性ということについて、スライド番号8の右側の模式図を御覧ください。これは選抜効果と言われるものを説明する模式図です。通常、相関を計算する場合には一人の学生につきまして二つ、つまり入学試験の成績と学業成績の二つのデータが必要となります。入学試験の特殊性といたしまして、入学試験の成績については全員ありますが、入学後の学業成績につきましては合格して入学した人の分しかございません。したがって、入学試験不合格者については相関係数が計算できないという制限があります。これにつきましては、統計学的に修正する公式がいろいろ確立しておりますので、それを用いて修正した上でデータを分析するということになります。
 ただし、左上を御覧いただきたいのですが、これはある医学部の入学試験のセンター科目の科目ごととの相関関係であります。医学部でありますので、非常に競争性が高い。その中でここでお示ししました選抜効果も非常に強いという状況のもとですと、例えば医学教育に不可欠である化学とか、生物の相関係数がネガティブになるといったようなことが発生するということがあります。もう一つ、この統計的な修正についての制約でありますが、ネガティブになったものについては修正ができません。ですので、相関係数で検証するということができなくなります。実際に各法科大学院で個別に検証された場合に、例えば入学試験の適性試験に限らず、適性試験と学業成績の成績がネガティブだった、あるいは面接試験と小論文はポジティブの相関があったけれども、適性試験はネガティブであったというようなことが発生するのは、こういったデータの特性によるものであるということを踏まえた上で、この数字について御議論いただきたいということであります。
 では、報告を替わります。



【適性試験管理委員会 柴山分析委員会副委員長】  
 報告を替わりまして、分析委員会副委員長の柴山です。よろしくお願いいたします。
 それでは、スライド2にお戻りください。まず、法科大学院成績の相関です。データは法科大学院統一適性試験採用の六つの法科大学院の入学者のものです。選抜方法によって見た目が低く見積もられる相関係数を修正したものを記載しております。この方法は、アメリカの法科大学院適性試験の妥当性検証にも使われている方法です。相関係数の代表値としては中央値をとっています。中央値の説明は記載のとおりです。例えば適性試験成績と1年次必修科目成績との相関係数の中央値は、既修者では0.361、未修者では0.657でありまして、適性試験成績と法科大学院における学業成績の間には相関があると言えます。
 なお、合衆国の同様の追跡調査でも、適性試験と1年次の成績は0.39程度の一定の相関を示しております。この値は入学試験と学業成績の相関としては十分な値ということになります。
 次に、司法試験との関係を御報告します。1枚めくっていただいて、スライド3を御覧ください。このスライドでは適性試験と司法試験の合否の関係を見ています。結論から申し上げますと、司法試験合格者の適性試験スコアの平均は、司法試験非合格者の平均よりも統計的に明らかに高いと言うことができます。もとにしたデータですが、最近5年のものを使いました。データの内訳としては、各年度の1万名前後ということになります。また、司法試験合格者は官報に基づくものです。司法試験合格者と適性試験受験者は、氏名によってマッチングしています。非合格者は司法試験に不合格となった者だけではありませんので、重ねて御注意申し上げます。
 グラフの説明にまいります。横軸は適性試験受験年度を示しています。縦軸は年度間比較が可能なように、適性スコアをいわゆる偏差値に変換したものです。緑の折れ線は司法試験合格者の平均、赤が偏差値の平均、偏差値の平均は全ての年度で50となります。最後に青が非合格者の平均です。このように適性試験の平均で比較しますと、司法試験合格者の平均が上にきていることは直感的にも明らかかと思います。
 次に、下のスライド4を御覧ください。このスライドは司法試験に合格する早さと適性試験との関連を表します。結論から先に申せば、適性試験受験から司法試験合格までの年数が長いほど、偏差値平均が下がる傾向があります。横軸は司法試験合格年で、最近5年間を表示しています。縦軸は、上のグラフと同じく、偏差値に変換しています。例えば2004年度の適性試験受験者を例にとりますと、その集団は2005年度に法科大学院に入学しますので、早い人では2007年の司法試験を受け、合格していきます。2年目に合格する人は2008年に司法試験を受けていることになります。1年目と2年目の平均は余り差がありませんが、3年目以降には司法試験に合格するグループは明らかに平均が落ちております。他の年度でもほぼ同様の傾向がございます。このように適性スコアが高いほど、早く司法試験に合格する傾向があるということが言えます。
 まとめますと、適性試験は司法試験に対して予測的妥当性、予測力を持っていると、このように限られたデータの中からも言うことができるかと思います。
 報告は以上です。御清聴ありがとうございました。



【適性試験管理委員会 山本事務局長】
 若干私の方で補足させていただきますと、スライドの2ページを見ていただきたいのですけれども、このデータはどこで取ったかといいますと、平成20年3月に法科大学院協会に提出いたしました相関性の調査研究で、我々の対象は6校ということでございます。この6校からデータを取ったと。この対象は平成16年、17年ということでございまして、まだ法科大学院制度がスタートしたばかりということでございまして、今後の相関がどうなっているのかということにつきましては、是非継続的な調査が必要だというふうに我々は認識しております。そのためには、法科大学院協会、それから各法科大学院からも成績を御開示いただいて、必要な協力を賜りたいというふうに思っている次第でございます。
 それから、司法試験との相関でございますけれども、先ほど御説明がありましたとおり、我々は司法試験に受かったかどうか、それは官報でしか今情報はいただけていないと。ですから、正直言って同姓同名は全部マーキングから外しておりますので、この辺についてのデータをいただけると、特に何番で受かったのかというデータをいただけると、より詳細な追跡調査ができるということで、この点に関しましても、是非関係機関に対しては協力を賜りたいというふうに思っている次第でございまして、また、入学後の成績につきましては、規模を拡大すればするほどそれだけマンパワーというか、費用が必要になることになります。その点につきましても是非御理解賜りたいというふうに思っている次第でございます。
 以上でございます。ありがとうございました。



【田中座長】
 ありがとうございました。
 ただいまの御説明について、何か御意見、御質問がありましたら。
 どうぞ。



【有信委員】
 ちょっと技術的な話ですけれども、1ページのスライド番号2で、相関係数が示されていて相関があるという、こういう説明だったんですけれども、既修者と未修者で相関の値が、相関係数の中央値がこれほど大きく違うというのは何か理由があるんですか。



【適性試験管理委員会 藤本分析委員】
 一つは先ほどの入学試験の仕組みのところでも見ていただけたらいいのですが、入学試験の要素ですね。適性試験だけで選択をしているわけではなく、それぞれの過程において入学試験科目があって、既修者の場合は法律学試験をかなりのウェイトで入れておりますので、この調査をした時点におきましては、適性試験の比率という点、入学試験100点満点の中での適性試験の点数と重みですね、この点で既修者と未修者でかなり大きな違いがあるということが結果としてこれだけの違いということです。



【田中座長】    
 御意見がないようでしたら、予定した時間も過ぎておりますので、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
 本日の議事は以上で終わります。事務局から今後の日程について御説明をお願いします。



【今井専門職大学院室長】  
 失礼いたします。次回の法科大学院特別委員会の日程でございますが、年が明けまして、1月16日の水曜日で開催させていただきたいと考えております。場所は文部科学省の会議室を予定しております。詳細につきましては、後日改めて御報告させていただきたいと思います。
 以上でございます。



【田中座長】  
 それでは、これで本日の議事は終了となります。どうもありがとうございました。

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