法科大学院特別委員会(第50回) 議事録

1.日時

平成24年7月19日(木曜日) 10時30分~12時

2.場所

文部科学省中央合同庁舎7号館東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 法科大学院教育の更なる充実に向けた改善方策について(提言案)
  2. 法科大学院における組織見直しの更なる促進方策について
  3. 法学未修者教育の充実のための検討ワーキング・グループの設置について

4.出席者

委員

(臨時委員)田中成明、有信陸弘の各委員
(専門委員)磯村保、井上正仁、笠井治、樫見由美子、木村光江、椎橋隆幸、杉山忠昭、土屋美明、土井真一、長谷部由起子、日吉由美子、松並孝二の各委員

文部科学省

板東高等教育局長、小松私学部長、常盤高等教育局審議官、内藤専門教育課長、今井専門職大学院室長、佐藤専門教育課課長補佐

5.議事録

【田中座長】
 おはようございます。所定の時刻となりましたので、第50回中教審大学分科会法科大学院特別委員会を開催したいと思います。
 まず最初に、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

 

【今井専門職大学院室長】
 それでは配付資料について、御説明を申し上げます。
 資料1につきましては、前回第49回の議事録を付けさせていただいております。御意見がございましたら、事務局までよろしくお願いいたします。その後、資料2-1、2-2につきましては、「法科大学院教育の更なる充実に向けた改善方策について」の提言の概要及び本体を付けさせていただいております。また2-3につきましては、その他の必要な参考資料となっております。資料3につきましては、「法科大学院における組織見直しの更なる促進方策について」の資料を付けさせていただいています。また、資料4につきましては、法学未修者教育の充実のための検討ワーキング・グループについての設置概要案を付けさせていただいているところでございます。
 足りない資料等ございましたら、お申し出いただきたいと思います。

 

【田中座長】
 それでは、議事に入らせていただきます。
 最初に、前回御議論いただきました「法科大学院教育の更なる充実に向けた改善方策について」に関しまして、委員の先生方には既に事務局から文案をお送りして御意見をいただいて調整したものを、本日資料として提示させていただいております。
 議論を始める前に、主な修正点を中心に事務局から簡単に説明をお願いできますでしょうか。

 

【今井専門職大学院室長】
 それでは資料を説明させていただきたいと思います。
 資料2-1、2-2、2-3を御覧いただけたらと思います。そのうち資料2-1は、提言の概要でございますので、これは割愛させていただきますが、資料2-2、今回の提言案について、特に前回の会議での修正がございました点を中心に御説明したいと存じます。
 1ページをおめくりいただけたらと思います。
 今回、6月14日に第49回の会議を開かせていただいた後、そこの会議での御指摘、またその後、委員の先生方と数次にわたりまして、調整をさせていただきました。様々な御意見をいただきましたことを、この場を借りて御礼を申し上げます。そういった中でいろいろいただいた御指摘がございますので、御報告を申し上げます。
 まず、「はじめに」の2ページのところでございますが、大きな修正点は二つございます。一つは、左に振ってあります数字1から5番までに関してでございます。まずここは、法曹養成制度の中で、法科大学院の置かれた理由からスタートいたしまして、正に法科大学院において培われてきた成果について、しっかりと表現をすべきではないかという御指導をいただいておりました。その点につきまして、様々な御意見をいただいたところでございます。特に1番、2番、3番のところでございますけれども、法科大学院修了生についての評価をしっかり書くことができないかどうか。また、5番でございますけれども、この中教審の特別委員会以外でも、法曹の養成に関するフォーラムにおいて法科大学院の教育の評価がなされている箇所がございましたので、それを検討させていただいたというところでございます。これが大きなポイントでございます。一方で、やはりそういった成果が見られる反面、6番以降でございますけれども、法科大学院の課題がやはり見えてきているということでございます。
 おめくりいただきまして、例えば左肩、7、8のところでございます。7番につきましては、法科大学院において教育、特に課題のある法科大学院等というのがございました。そういった中で、いろいろ改善は進んでおりますけれども、やはり例えば合格者数が政府目標の3,000人を下回っている関係や、就職の道がなかなか開かれていないという状況なり、また社会全体で経済的に厳しい中、例えば法曹の就職等々の状況も勘案していくと、今、非常に法科大学院を中核とした法曹養成制度全体が厳しい環境に置かれているということを表記させていただいております。また、8番につきましては、法科大学院制度が創設されたときの一つの大きな柱でございます、多様な人材を引き入れるという観点での課題があるだろうということを踏まえた大きな修正をさせていただいております。これが「はじめに」についての大きなポイント、2点目でございます。
 続きまして、3ページ以降でございますが、まずローマ数字1のこれまでの改善状況と主な課題につきましては、今まで先生方、いろいろ御指導いただきました点から大きく変わることはございません。幾つか修正等も含めて、いろいろ御指導いただきましたが、3ページ目から4ページ、5ページのいわゆる過去の改善状況の評価、また6ページ目以降の現状についての御指導、御指摘、それから8ページ、9ページの主な課題、ここは従来の議論を踏まえた形で字句修正等をさせていただいたような状況でございます。
 なお、10ページからこういう表がまたございます。ローマ数字2でございますが、今後の見直しに関する基本的な考え方でございます。ここは従前より法科大学院特別委員会の検討状況、10ページ一つ目の両括弧のところがそうでございます。また、政府全体の検討状況を示した上で、11ページにございます、今回の見直しに関する基本的な考え方を整理しておりました。このうち、11ページの見直しの基本的な考え方につきましては、前回お示ししたものは非常に分量が多くございました。ただ、内容的には、ほかに入れるべき適切な場所が見受けられるもの、例えば検討状況について触れているフレーズ、パーツとかがございましたので、それは例えば10ページの法科大学院特別委員会の検討状況、例えばパラグラフの三つ目、四つ目辺りの表現はこちらに移したというような、そういう形で修正をさせていただいた上で、基本的な考え方はその本質に迫るものだけにさせていただいたという修正をしております。
 その結果、11ページでございますけれども、法科大学院を取り巻く厳しい環境に鑑みて、いわゆる法曹養成制度、政府全体での議論、フォーラムにおいて行われておりますが、そういったところでの制度の在り方に関する検討を待つまでもなく、対応できる課題については速やかに具体的な方策を検討し、実施していく必要があるという基本的な考え方を示していただいたような形で整理をさせていただいたところでございます。
 続きまして、そういった基本的な考え方のもと、12ページ以降でございます。今後、検討すべき改善方策について整理をさせていただきました。ここは大変大きく変わったところでございます。構造上でございますけれども、従前、三つの柱で御議論をいただいておりました。課題を抱える法科大学院を中心として、いわゆる入学定員の適正化、それから、二つ目の柱といたしましては組織見直しの加速ということ、その上で、三つ目の柱として未修者教育の充実を初めとした法科大学院教育の質の改善という構造でございます。ただ、この特別委員会でも御指摘をいただいておりましたように、法科大学院自体、大変優れた成果を上げているものも多々ある。そういったことをしっかりと表現していくべきではないかという御指摘をいただいておりました。
 また、7月に入りまして、大学分科会、それから大学院部会でも、今の進捗状況を事務的に報告させていただいております。その際、大学分科会、大学院部会からも御指導いただきましたのは、正に法科大学院の改革をしなければいけないというのは急務であるということとともに、やはりしっかりと取り組んでいる法科大学院もあるということもしっかりメッセージを出すべきではないかという御指導も含めて、御指摘がございました。
 そういったことも含めまして、12ページ、13ページの方に、従来であれば、その三つ目の柱にあった法科大学院教育の成果の積極的に発信というものを一つ柱を立てさせていただいて、構造上、変更をさせていただいたところでございます。12ページの中段から下段に始まりますように、法科大学院教育の成果の積極的な発信といたしまして、基本的な考え方を整理した上で、13ページに今まで議論をいただきましたように、例えば法科大学院のいわゆる情報発信にしっかり取り組むという観点で、このエクスターンシップを、例えばそういった教育の成果の発信の場として捉え直して積極的に活用すること、また民間や地方公共団体とネットワークを構築して、法科大学院教育の意義や内容が広く知られるように努めるといったような御指摘、また、13ページの三つ目のパラグラフにございますけれども、修了者の正確な把握、そして進路指導の充実ということについて改善をしていくべきだということで、整理をさせていただいたところでございます。
 続きまして、14ページでございます。教育の成果の積極的な発信を示した上で、ただ、課題があることについてはしっかりと対応していく必要があるということで、従来、二つにあったものを一つにまとめさせていただきましたが、課題を抱える法科大学院を中心とした入学定員の適正化、そして教育体制の見直し等の取組の加速ということで整理をさせていただいております。ここにつきましては、従来御議論いただいたものと大きく変わっておりませんが、三つ目の括弧、15ページでございますけれども、組織改革の加速に向けた取組のところを、なお書きを追記させていただいたところでございます。ここにつきまして、抜本的な改革をしっかり進めていくためにモデルを示す、若しくはその推進方策を提示するといった改善方策があるだろうという指摘でございます。その際に、やはり抜本的改革を行う際には、当該地域において様々な事情がございます。そういった観点を留意する必要があるだろうということで、例えば学部段階における法教育の充実なり、他の法科大学院との連携・協力、又は地方自治体との協力といったことに配慮しながら検討していくべきではないかということを御指摘させていただくという表現を書いているところでございます。
 続きまして、16ページ以降、3点目の柱でございますが、従来は教育の質の改善の中に入っておりました法学未修者教育の充実というものを一つの柱として立てさせていただいたということでございます。内容につきましては、これまで御議論いただいたものを前提としております。その上で御議論いただきまして、今後、新たなワーキング・グループを設置して、集中的に検討する体制を構築することが必要だろうという改善を指摘いただいたところでございます。
 そして、最後、17ページ以降でございますけれども、法科大学院教育の質の改善全体について御指摘をいただいております。この点については順番の入替えを少しさせていただきましたが、(1)から(5)まで、いわゆる入り口の改善から入学者選抜の改善、そしてプロセスとしての法曹養成としての教育課程の確立、それから、そういった教育内容をしっかり伝える意味での教育環境の充実、特に教員の資質能力向上を含めた観点での改善方策。その上で、認証評価等をしっかりと活用して、大学の積極的な教育の改善を取り組むということとともに、継続教育にもしっかりと貢献していくということで、入り口から出口に至るまで、またその後の継続教育の関与ということで、項目、指摘をさせていただいているところでございます。
 17ページ以降、それぞれ17ページの下段から19ページに至るまで、その改正をさせていただいています。特に大きなポイントとしては18ページのところでございますが、この教育の確立という項目を一つ立てさせていただきました。法科大学院教育における教育の重要性、役割をしっかりと認識した上で、各大学が教育課程の不断の見直しを行うよう取り組むべきであるという指摘をいただいております。また、18ページにつきましては、質の高い教育環境の確保ということで、FDの様々な充実の観点、また質の高い教員を確保する観点での、例えば研究者と実務家等の役割分担、また、その配置割合等についても改めて検証して、必要な措置を検討する必要があるということで記載をさせていただいております。
 また、18ページの「一方」のところでございますが、法科大学院を今後支えていく教員の安定的な養成についての検討も必要だろうということで指摘をさせていただいております。さらに、18ページから19ページにかけてでございますが、前回の会議でも御説明、御報告させていただいたように、昨今の法科大学院の入学者の状況を鑑みますと、大変厳しい入学者の状況が続いております。一桁しか入らないような大学もある中で、教育環境として適切なものかどうかということをしっかりと検証する必要があるだろうということで、改善の方策を指摘いただいているところでございます。
 19ページに、認証評価の結果の主体的な活用、また継続教育についての積極的な貢献を、それぞれ充実をさせていただいたところでございます。
 最後に、20ページ、21ページでございますが、今後の政府における検討に期待することということで、法科大学院制度の改革が司法制度改革全体の中で取り組んでいくということで書かせていただいたパートでございます。ここについてもいろいろ御指導いただいておりますが、全体御説明した構造が大きく変わることはございませんが、こういった期待をしっかりと伝えるということでいろいろと御意見をいただいて、少し修正をさせていただいたというところでございます。
 以上、雑ぱくな御説明で恐縮でございますが、今回の主な改正点の説明は以上でございます。御審議のほどよろしくお願いいたします。

 

【田中座長】
 どうもありがとうございました。
 先生方からいろいろな御意見をいただいたのですが、御意見が必ずしも一致しているわけではなく、事務局である程度調整していただいたので、この文案に御不満の方もいらっしゃるかと思いますけれども、その点は全体としての意見を取りまとめたということで少しお考えいただくことにいたしまして、全体としてこのようなまとめでよろしいかどうかについて御意見、御質問がありましたらよろしくお願いいたします。

 

【有信委員】
 中教審の大学分科会でこの審議経過が報告されたときに、やはり一部の委員から、とにかく早急に手を打ってほしい。ほとんど余裕がない状態であるという指摘が出されました。これは非常に切迫した事情がそれぞれのところにあるということだと思いますので、この点は是非踏まえて進んでいただければと思います。
 今回のまとめは、それぞれの意見を取り入れられて、よくまとまっていると思います。この中で特に強調したいのは、一つは、法科大学院というのは専門職大学院であって、専門職大学院であるからには、その中で教育をした学生の進路について、大学そのものがきちんとした責任を持たなければいけない。にもかかわらず、修了者の行き先がこれからデータを取らないと分からないような状況で、つまり司法試験に対する合格率が低いと言われながら、それでは、不合格だった人たちは一体どうなっているのか。その間の教育が一体彼らのその後のキャリア活動にとって、どういう役割を持つのかということに対して、やはり大学側もきちんとした責任を持つべきである。つまり、法科大学院修了者のキャリアパスについて、もっときちんと考えるべきである。
 特に、私はもともと理系のバックグラウンドなものですから、理系の場合には産学で共同してそういうことを議論するということは比較的当たり前なんですけれども、これから確実に要求されているというか、要望されている。法律のバックグラウンドを持った人たちも、言わば非常に限られたところでしか議論されていないので、その点についてきちんと早急に進めていくだろうと思います。
 それから、もう一つは、この中で、本来は中教審のスコープを超えるわけですけれども、司法試験についての言及が一応取り入れられたということ。実はエンジニアリングの方でも教育認定をやるというプロセスができていて、認定されたプログラムの修了者は技術士の一次試験が免除されるということになっています。これは、もともと技術士の受験要項の中に学歴要件がないものですから、それをどこかでバランスを取らなければいけないということで、JABEEという認定機関の認定を受けたプログラムの修了者は一次試験が免除されるということになっています。徐々に技術士の合格者が増えてきていますが、逆に言うとその合格者数が少ないということで、技術士の側から一次試験の免除というのはやめるべきであるという、こういう議論が実は出てきたりするわけです。
 実際によくよく考えてみると、認定プログラム修了者の技術士試験の合格者の年齢は、平均的に20代後半なんですね。一般的に技術士のそれ以外の人たちの合格年齢というのは、大体40代後半になります。したがって、技術士の試験が、一定期間の経験を要求するものですから、試験内容もそういう形でずっとつくられてきているわけです。試験内容そのものは一朝一夕には変わらない。そのことによって、実際には合格率が今の時点では少ないかもしれないのに、そういう意見が出ているという状況もあります。
 したがって、現在のいわゆる法学未修者の合格者数が少ないということについても、基本的にはやはり試験問題そのものの内容の問題もあるのではないかというふうに思っています。ただ、この内容についてはそう一朝一夕には変わるものではないので、そのことだけで早急に判断を進めることのないようにということで、もう少し、ここにも書かれてありますように、未修者の教育の問題だとか、その後の指導の問題だとか、そういうことも含めて手を打って、徐々に変えていくしかないというふうに考えています。

 

【田中座長】
 ほかにございますでしょうか。

 

【磯村委員】
 若干細かいところかもしれないんですけれども、一番最後の方に、学力の関係の部分で使われている表現に、法教育というようなのがありました。これは、あるいは土井委員にお伺いするのが良いかもしれませんが、学部において法学教育という言い方をするか、法教育という言い方をするかというのは、これは結構意味が違うのかなという気がするので、これが意図的に使われた表現なのかどうかというのが若干気になりました。
 それから、もう一つは、一番最初のところで、これは日本語の問題だけなんですけれども、2ページの8番「また、法科大学院は」で始まるフレーズなんですが、「法科大学院は」のところに句読点を入れないと、何か「多様なバックグラウンドを持つ者を受け入れ」のところにかかってしまって、むしろこれは制度設計されているということが重要なので、そこに句読点を入れる方が趣旨が明確になるかなというふうに思います。

 

【田中座長】
 磯村委員、その法教育というのは何ページですか。

 

【磯村委員】
 15ページの一番下の方です。

 

【今井専門職大学院室長】
 改善計画、2番の15ページの組織改革の加速に向けた取組でございまして、ここは少し御議論が、確か委員の先生からいただいたところは、法学教育と書いてあると法学部をいうのを強くイメージさせてしまうのではないかという御指摘があって、法教育という言い方の方が良いのではないかという御指摘があって、今、修正をさせていただいているところでございますが、確かに後段では法学教育というものがまた出てきたりしますので、もしよろしければここで御議論いただいて、正しい用語について御指導いただければというふうに思っているところでございます。

 

【笠井(治)委員】
 15ページの法教育について指摘した一人です。ここでは、例えば学部段階における法教育という表現になっているわけですけれども、学部というのは法学部に限らないわけですね。幅広い法学部にもつながる法教育というものが、いろいろな地域の実情を踏まえた形でなされるべきであるという観点から、私はむしろ法学教育というふうに断言してしまわない方が良いのではないか。広い意味での地方を含めた、そういう法曹としての能力についての教育というものをしていくべきではないか。法学部における法学というふうには限らないという趣旨のことをここに入れるべきではないかというのが、私の意見です。
 一方で、17ページに法学部教育というふうになっているわけですけれども、正直言って、この場合の連携強化というのは、ここに解釈を盛り込むことはできないと思いますけれども、どういうイメージになってくるのかなとか、その次には飛び級とか、早期卒業などの既存の仕組みの活用を検討するというふうになって、当面はこういうことを考えていくだろうというふうには思うんですが、これは統一する必要があるかないかという点で言うと、ある程度の具体策として法学部教育ということを考えた場合には、これは17ページの方が良いというふうに、私はとしては考えているということです。

 

【井上座長代理】
 15ページの全体の趣旨としては、地域配分の適正ということについて、これまで随分言われてきたのですけれども、それぞれの地域に必ず法科大学院が置かれていないといけないという狭い発想だと行き詰まってしまう。そもそも法科大学院が置かれていない県は20県前後あるわけで、そういう発想ではなく、それぞれの地域で活動してもらえる法曹を制度全体として育てていくという発想が必要なのではないか、そういうことなので、笠井委員が言われたことは、それ自体として重要だとは思うのですけれども、「学部段階における法教育の充実」としてしまうと、今申したような全体の趣旨がかなり限定されたものになってしまうのではないかという感じがします。
 「法学部教育」という表現ではちょっと狭くなるかもしれない一方、「法教育」という言葉では逆にかなり広くなってくる。「学部段階における法教育」とするのも、土井委員が携わっておられる法教育に関する活動で用いられている用語法とは異なり、もっと広げることになってしまい、何か非常にちぐはぐな感じもするのですね。余りこだわりませんけれども。

 

【土井委員】
 よろしいですか。余り私はここは意見を申していなかったんですが、確かに法教育を一般に初等、中等教育で使われている用語で用いますと、専門的な法学教育を外す理解になってしまいますので、そうであれば、すごく妥協的ですが、法に関する教育というふうにし、余り専門色のない用語にされた方が良いんじゃないかと思います。

 

【笠井(治)委員】
 1点だけ。私もこだわりませんけれども、ただ、余りに狭めることはどうかなと。将来的な法曹を養成するということを、全国的な法科大学院の配置も含めて考えてみた場合に、学部というのは法学部に限らないわけですけれども、それとの関連で言えば、少し広めに取っておくべきなのではないかという観点から、事務局に無理やり入れ込むようお願いしたということです。「法学に関する」でよろしいんじゃないですか。

 

【井上座長代理】
 「法に関する」では。

 

【田中座長】
 学校段階に限定することもないし、「大学における」くらいでよろしいのではないですかね。

 

【笠井(治)委員】
 前の方も、学部段階に限るものではないと、大学におけるものと。

 

【田中座長】
 大学における法に関する教育の実施では、法関連教育でも良いですし、何かそういうふうな一般的な法に関する教育にしましょうか。

 

【磯村委員】
 よろしいですか。これは、全体としての文脈では、組織改革で法科大学院を現在の形では維持しないで、もう少し違う方向で動かしていこうという中で、大学院と法学部の関係を見直して学部を改革するという問題意識なので、ここは大学と曖昧に言い過ぎると、その趣旨がやや不透明になるかなと思います。単純に学部段階における法教育というのを学部教育の充実というふうに言い換える方が、その趣旨がくみ取りやすくて、法に関する教育と言うと、確かに広がりはありますが、ややまどろっこしい感じがするという印象を持ちました。

 

【田中座長】
 学部教育の充実というのでどうですか。笠井委員。

 

【笠井(治)委員】
 結構です。

 

【田中座長】
 前回からかなり中身も充実したものになっておりますし、先生方からいただいた意見をできるだけ集約して、整合性が保てる方向でまとめていただいたので、御意見がなければ、これでよろしいでしょうか。
 それでは、何回も御議論いただいたわけでございますけれども、法科大学院教育の更なる充実に向けた改善方策については、この原案をもってこの委員会の基本的な考えとしてまとめさせていただきます。

 

【井上座長代理】
 先ほどの修正点を含めて、ということですよね。

 

【田中座長】
 失礼いたしました。先ほど修正した箇所も含めて御承認いただいたということでお願いいたします。
 それでは、どうも長い間、ありがとうございました。また何かお気付きの点がありましたら、個別に事務局へお願いいたします。
 それでは、次に、前回報告がございました、本年度の入学者選抜の結果を踏まえて、課題を抱える法科大学院の組織見直しを更に促進する観点から、この特別委員会として、改めて基本的な考え方を整理する必要があるのではないかという意見がございましたので、事務局の方で資料3を準備してもらいました。この資料につきましても、委員の先生方には事前にお送りして、意見を伺っておりますけれども、もう一度議論をお願いする前に事務局から説明をお願いします。

 

【今井専門職大学院室長】
 それでは、資料3に基づきまして、御説明を申し上げたいと思います。資料3につきましては、「法科大学院における組織見直しの更なる促進方策について」ということでございます。
 1ページ目の1番でございますが、現在の取組についてでございます。
 前回、平成22年3月に法科大学院における組織見直しの促進方策についてということで、基本的な考え方を特別委員会においておまとめをいただいたところでございます。それに基づきまして、(2)にございますように、文部科学省におきましては、平成22年9月に、公的支援の見直しについての発表を行わせていただいたところでございます。そして(3)にございますように、平成24年度の予算に、競争倍率や司法試験合格率等を指標として、いわゆる国立大学であれば運営費交付金、私学でありましたならば私立大学の経常費補助金等の減額を行うことを通じた自主的、自律的な組織見直しを促す、そういった取組がスタートしたところでございます。そして、平成24年度の予算につきましては、6校の法科大学院が公的支援の見直しの対象になるという状況になっています。
 こういった状況とともに、先ほどお話がございましたように、今年度の入学者選抜の状況なども加味いたしまして、2番でございますが、法科大学院特別委員会として意見の概要を取りまとめていただければということで整理をさせていただいています。
 まず、ポイントといたしましては、公的支援の更なる見直しの必要性の中で、(1)にございますように、法科大学院が法曹養成制度においての中核的機関であるということ、また(2)にございますように、その法科大学院につきましては司法試験の受験資格が原則、法科大学院修了生に限定されるなど、プロセス養成の中核になっていることを前提にして考えるべきではないかということでございます。
 そして、次のページでございますけれども、ただ、そういった中で法科大学院の修了生の司法試験合格状況につきましては、当初の期待されている目的や役割をしっかりと果たしている法科大学院がたくさんある一方で、やはり一部、深刻な課題を抱えている法科大学院におきましては、厳しい状況が続いているという状況について、これを看過してしまいますと、制度全体に対して非常に大きな影響を与えるということで、問題認識を持つべきではないかということで考え方を整理しております。その上で、(4)にございますように、更に自主的、自律的な組織見直しを促すようなことを取り組むことが喫緊の課題であるということで考えているところでございます。
 では、その更なる見直しの観点をどう進めるかというところでございますが、(1)にございますように、正に現行の公的支援の見直しにつきまして取組を進めていきましたところ、入学者の選抜状況における競争倍率につきましては、22年度は40校ございましたものが、23年度は19校、24年度には13校と、その状況が着実に改善されてきております。
 ただ、その一方で、その競争倍率との裏腹でもございますけれども、深刻な課題を抱える法科大学院の中には、入学定員と実入学者数の乖離が極めて大きくなるという状況が見られております。例えば、入学定員充足率が50%未満である法科大学院につきまして、平成22年度12校であったものが、23年度には21校、24年度には35校と、年々厳しい状況になっているという実態がございます。
 (3)にございますように、そしてこのような状況を改善するため、従来、競争倍率と司法試験合格率の二つの指標で公的支援の見直しを運営しておりましたが、さらに、こういった実態を踏まえまして、新たに法科大学院の入学定員の充足状況を新たな指標として追加する措置を講じる必要があるだろうということで整理させていただいております。そして、こういった取組を通じまして、質の高い教育を提供できる体制となる法科大学院におきましての組織見直しに取り組むことを期待したいということで整理をさせていただいています。
 そして、最後に、その新たな指標を導入するに当たっての留意点といたしまして、3点整理をさせていただいております。一つは、そもそも従来ございました競争倍率、それから司法試験合格状況という指標につきましては、いわゆる教育の質を担保する指標でもございます。そういったところなども勘案いたしまして、今回新たに入学定員の充足状況の指標を追加する場合には、特にその競争倍率の確保も同時に図られるよう、その指標の組合せ方などについて工夫が必要ではないかということでございます。また、(2)にございますように、入学定員の充足状況、特にその率につきましては、やはり毎年、歩留りがいろいろございます。そういった意味では、大学が予期できない大きな変動というのも、単年度ベースで見ますと起こり得る可能性がありますので、そういったところに配慮する必要があるんじゃないかということでございます。
 そして、3番目でございますが、特に今後24年から、これは発動しております。そういったことを加味しまして、今後適用を考える際には、平成25年度の入学者選抜のデータにつきまして、今現在、正に学生募集を開始している法科大学院がございますので、この新たな指標の導入に当たりましては、現在、平成25年度の入学者選抜に混乱を与えないように配慮が必要だろうということで、整理をさせていただいたところでございます。
 御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

 

【田中座長】
 ありがとうございました。
 御意見か御質問がありましたらお願いいたします。

 

【有信委員】
 単純な疑問なんですけれども、競争倍率が2倍未満であった法科大学院は減少している。一方で、充足率が50%未満の法科大学院は増加している。ということは、一部の法科大学院では、競争倍率が2倍以上ありながら、充足率50%を満たしていない。こういう状況の大学院があるということの理解で良いわけですね。だとすると、少なくとも入学者の選抜については極めて正当に行っているからこそ充足率が悪い。こういうことについてどういう配慮をするかということの検討がないと、一方的に充足率という指標を捉えてしまうと、一生懸命入学者の選抜のところで努力をしているところが、逆におかしくなってしまいやしないかという気がするので、この辺のところをどういうふうに考えるかということについて検討が必要だと思います。

 

【今井専門職大学院室長】
 ただ今の御指摘、正に大変難しいポイントだと思っております。従来、競争倍率について、いろいろ各大学での取組を促してまいりました結果でございます。要は、本当であれば、2倍ということがなければ取れるのではないかというところについて、競争倍率を確保するために、取れるべきところを少し少なめにしているということもございます。
 ただ、今回は、前回の6月14日に御報告を申し上げました入学者選抜状況、資料で申し上げますと、先ほどの資料2-3の参考資料でございますが、A3の折込資料がございます。それでもう一度状況を御報告したいと思いますが、ページ数は5ページでございます。正に前回御報告を申し上げたときに、この入学者の競争倍率等の比較で、資料上は右の方から御覧いただけたらと思いますけれども、司法試験の合格率の横に入学定員の充足状況がございます。このデータを御説明させていただいたときに、特に平成24年につきましては、法科大学院の平均で0.7というところで入学定員の充足状況が推移をしております。それは6ページの一番下段に数字がございます。全体としてはそういった形で、0.7というのがございますけれども、一方、入学定員の充足状況ということで、例えば前回半分以下のような大学が35%ということで、中にはございますけれども、確かに競争倍率を守るためにやってきたというのもございますけれども、一方で入学定員の見直しをすることで、この入学定員の充足状況を上げていくということも、取組としては可能だと思っております。その過程の中で、一体各大学でどういう取組をしていくのかということについて、その促しが進められればというところが大きなポイントだと思っております。
 そういった意味で、例えば0.5前後であれば、またそうなのかもしれませんけれども、例えば0.5以上にもっと低いような定員充足状況の大学もございますので、そういったところについては、どこに線を引くかという問題もございますけれども、やはりまずは入学定員の適正化に向けた御検討を進めていただく必要があるのではないかということで、競争倍率の確保は難しくはございますけれども、やはり今回指摘をさせていただく必要があるんじゃないかと考えて整理をさせていただいているところでございます。

 

【有信委員】
 競争倍率というのは定員に対する倍率ですよね。入学者数に対する倍率ではないですよね。

 

【常盤高等教育局審議官】
 受験者数対合格者数の関係です。競争倍率というのは。

 

【有信委員】
 受験者数対合格者数。そういう取り方をしているんですか。

 

【常盤高等教育局審議官】
 はい。

 

【有信委員】
 分かりました。私の誤解です。

 

【田中座長】
 今まで二つだったチェック項目にもう一つ加えようということです。

 

【有信委員】
 そういう競争倍率というふうにした。

 

【井上座長代理】
 少なくともここではそうです。この点で、法科大学院の間でも幾つかの一群があって、競争倍率を確保しつつ、定員充足率もかなり高く保っているというか、ほぼ100%というところもあれば、今おっしゃったような、競争性を確保しようとした結果、最終的な入学者数が抑えられて、定員充足率が守れなかったというところもある。そういうところの関係者からは、競争倍率を守れと言われ、守ったために充足率が落ちてしまったという声も聞かれるのですが、現象的にはそうかもしれませんけれども、もっと根本的なところに真の原因があるというのが我々WGの捉え方です。
 しかし、これと異なる法科大学院もあって、充足率を確保することを優先したために、競争倍率をかなり下げている。しかも、そういう状態が継続しているというところも幾つかあるのです。ところが、それにもかかわらず、実入学者は全く増えないか、むしろ減っている。そういうところが最も深刻だと思いますね。
このような状況に対して、今までの我々の考え方は、競争性を確保することによって、定員充足率や実入学者数がかなり少ないという状態が継続しているのは、定員設定に問題があるので、そこを適正に見直してもらいたいというものであったわけです。
 もっとも、これまで既にかなり定員を減らしたにもかかわらず、そういう状況になっているというところが結構多い。これ以上更に定員を減らすことができるのかどうか。法科大学院としての適正規模というものもあるはずなので。そういうところが恐らく最も深刻だと思います。

 

【磯村委員】
 これもちょっと細かい問題なんですけれども、最初のページの現状の取組についての(3)で、1行目なんですが、「競争倍率や司法試験合格率」の後に「等」が入っているんですが、これ指標が二つだけではないんですか。もしそうだとすると、「等」が入ると、ほかにもあるけれどもというニュアンスになるので、単純に削除する方が良いかなと思いますが。

 

【今井専門職大学院室長】
 恐縮でございます。そこはそのとおりだと思っています。当初、二つ目の指標、実は制度に今落とし込んでいるときには、3年目のときで全国平均の半分という意味の場合の指標と、もう一つは直近の修了者に関するものがありましたので、多分二つあることを念頭に「等」と入れてしまったというのが、今、合格率というのが両方ありますので、「等」は落とさせていただきたいと思っております。

 

【笠井(治)委員】
 今の磯村委員の発言についてですけれども、「等」というのは受験率のことを含んでいるわけですね。競争倍率と司法試験の合格率という二つの指標であることは間違いないけれど、その二つの指標の中に受験率を含んでいるということを意味する上で、むしろ「等」は残した方が良いように思います。司法試験合格率というふうに切っちゃうと、それだけしか見られないような印象というのもある。物を分かられた皆さんはそこは十分理解いただいているとは思うんですけども、残した方が良さそうな気がするんです。

 

【磯村委員】
 こだわらないですけど、2ページの方で、更なる見直しの観点のところの(3)では「競争倍率と司法合格率の二つの観点の指標に加え」となっているので、そこと平仄を合わせる必要があるかなというふうに感じました。

 

【笠井(治)委員】
 私もこれは賛成ですね。

 

【永田委員】
 先ほど有信委員がおっしゃったことで、競争倍率2倍というのはもう本当にぎりぎりのところなので、厳しい競争倍率ではないんです。それを守って、かつ定員充足ができなかったら、やはり吸引力がないんですね。それはそのときの実績があるわけで、実際は優秀な学生がたくさん来たのに、2倍というルールがあって落としてしまった。そして、司法試験合格という能力のある者を落としてしまったという状況ではない。その点は各法科大学院は自覚しております。何とか大学の経営ないしは組織の成り立つように維持していこうとして定員を充足しようとしていますけれども、確かにそのルールを守ったから定員を充足できなかったという法科大学院もありますけれどもそれは厳しいからというわけでもなく、別の吸引力の問題がありますので、やはりこの指標というのは、我々としては重要であると。
 特に、入学者数が一桁になりますと、教育の組織が成り立たないですよね。クラスの規模が少ないということもあって、ここをどうするかという問題も考えられますので、やはり定員の見直しないしは更なる組織の改革ということをお考えいただきたいということで、我々自身はこういう方法を出したということです。

 

【椎橋委員】
 永田委員の意見と一部共通するのですけれども、現実は、受験者を集めるのに苦しんでいる法科大学院にとっては、公的助成を削減されないために、2倍の競争率を守ることは指標の一つでありますので、それを何とか守ろうという姿勢はある意味では評価できる。競争倍率と充足率は相反する関係にあることを知りながら公的助成を削減されないことを優先すると競争倍率を2倍というところで合意決定する。競争倍率を2倍としている法科大学院が相当な数に上るということは、この現状をよく表しているものと思います。
 ただ、永田委員も言われるように、入学者が一桁とか、それに近い数の学生数になるということになりますと、ロースクールの目標としている教育の質の保証という観点からすると、現場の者から言うと、教育がある意味では成り立たないという感じはいたします。ある程度以上の学生数が確保されるところにおいては、刑事法は得意だからこの人に教わるとか、あるいは民事法が不得意な人に教えるとか、また、この人は論理的な考え方が優れていて、この人は論点の読み方がすばらしいというので、いろんな形であるクラスの中で見習うべき人を探して、お互いに教えたり教わったりというような、そういうような環境がないと、恐らくロースクールは成り立たないのではないかと思いますので、そういう意味では、ある程度以下の学生数では成り立たない。ある程度の学生数がいて、他の学生との関係で自分の位置を見定め、ある程度になれば司法試験にも合格するという予測が立てられるような環境が必要だと思います。
 それから、もう一つのロースクールの目標である多様なバックグラウンドの法曹を養成する。学生数が少ないと限られた背景の人しか来られないということになってしまいますので、そういう意味では、ロースクールが育てようとしている目標である多様な法曹の養成が実現しにくいということになってしまいますので、そういった意味で、今回の定員の充足率を三つ目の指標として入れるということには、私は賛成であります。
 ところで、ここの提案にもありますように、指標の組合せ方というのが大事だと思いますので、新たにこの指標を入れる趣旨が実現されるように、形式的にそれらの指標の一つが少しでも欠けると直ちに見直しの対象だとかそういうことではなくて、総合的に勘案して、より良いロースクールの実現という目標が達成されるような、そういううまい組合せ方を慎重に考える必要があるだろうというふうに考えています。

 

【田中座長】
 どうもありがとうございました。
 今、御質問があったことですけれども、最後の新たな指標の導入に当たっての留意点を3点挙げていただいているのですが、ほかに特に留意すべき点などがございましたら、ここで指摘していただくとありがたいです。なかなか微妙なところがありますので。

 

【日吉委員】
 質問と言った方が良いかもしれません。この新たな指標の導入の下で組み合わせていくと、恐らく入学定員の数の是正が行われていくだろうということを期待されていると。その場合、入学定員について最低の数みたいなものというのは規定されていないと。極端なことを言うと、例えば入学定員を、実際まだここにもありますが、15人だとか16人とか18人とかという設定にしますと、全部の指標を充足してなおかつ一桁の実入学者数でやっていける大学院が出るというような、机の上での計算ではそういうふうなことになりかねないと。そういうことも想定して、それでも良しという考え方で、実際、法科大学院の経営の考え方もあるでしょうから、そうなるのかどうか分からないんですけれども、実入学者数の方の指標を導入しないということには何かお考えがあるんでしょうか。

 

【今井専門職大学院室長】
 現状について、御報告したいと思います。
 正に御指摘いただきましたように、法科大学院制度の中では、入学定員の最小が確か15名ということでございます。また、法科大学院を含めた専門職大学院としては、一応、事実上186専攻、今、募集停止をしているものが3専攻でございますけれども、それでも最近は10というのが本当にぎりぎりというのがまず実態でございます。
 一方、今、先生の御指摘の点は、かなり小さくなっていくという方向の中でどうなのかということでございます。この点につきましては、実はこの見直しの中というよりも、むしろ中教審の先ほどの提言の中でも、18ページの下段に正に御議論をいただくことになろうかと思っておりますけれども、教育環境の確保という観点で議論が必要なのではないかということになっております。
 18ページの下段の2行目でございます。入学者が一桁の人数にとどまるなど極端に学生数が少ない法科大学院が見られるという状況の中で、教育環境として、例えば双方向的、多方向的な授業が効果的に実施できるのかどうか。また、そもそも異なる意見や見識を持った複数の学生間でお互いに切磋琢磨する、影響を与え合う環境として維持するという点が危惧されるということが、提言としてあろうかと思っております。
 この点について、正に必要な規模を含めて学生の在り方について検討していくということで提言の中でございますので、実際にどこで線を引くかというところについて、まだ私どもも明確にはなっていないかと思っております。ただ、低いことについて問題意識は十分提言でも出ていて、それを更にこれから詰めていこうという流れの中で、恐らくはこちらの提言をいただいたものをどうこなしていくかということで、今の御指摘については御議論させていただくことがよろしいのではないかというふうに思っているところでございます。

 

【日吉委員】
 今後、具体的な施策、こうしたら良いんじゃないかという方向性を考えた上で、可能性としてはそういったものも、この見直しの中に一つの施策として入れていく可能性があるということですか。いわゆる補助金だとか公的支援の見直しにかかる指標の一つとして入れていく可能性があるというふうに考えて良いんですか。

 

【今井専門職大学院室長】
 正にその点につきましては、現状をよく分析をしながら、次のステップ、次のステップと議論していく中で、その指標についてどう扱うかについて、ここでもうすべて即決することはありませんから、やりますということを申し上げる段階ではないのかなと思っています。現段階で今度お示ししたものが、正に充足状況ということで御議論させていただいておりますが、今後その議論が進んでいく中、法科大学院全体の取組を見ていく中で、これはやはり懸念が示されるなという新たな指標なり新たな観点が出てきたら、また御議論いただくということは十分あろうかというふうに思っておるところでございます。

 

【井上座長代理】
 論理的には、恐らくそういう可能性もあると思うのですが、まず我々が考えなければならないのは、それで教育の質が保てるのかどうかということだと思います。そういう観点からすると、認証評価の基準や、指標として変えていくこともあり得れば、本特別委員会の提言とするということもあり得るので、公的支援の見直しという劇薬を用いるということにいきなり行くということにはならない。今正におっしゃったように、これまでも委員の間ではそういう御指摘があったのですけれども、まだ、突き詰めて議論をしているわけではないのですね。5名以下だと本当にうまくいかないのかどうか。そういうところもやはり立ち入って実情を調査したりして検討する必要がある。先ほど椎橋委員が言われたことに、私も比較的似たような感じを持っているのですけれども、ただそれは我々が大規模校で教えているため、そういうことを言いやすい立場にあるのかもしれませんので、本当にそういう視点だけで良いのかどうか慎重に考えなければならないと思います。

 

【永田委員】
 最終的にその指標を入れて、公的支援の見直しに一部着手する可能性もあると思うんですけれども、今の段階では私どものワーキング・グループにおける調査で、この指標を入れてヒアリングをしてみると。どういう状況ですかと。それぞれ問題を抱えている法科大学院もあると思うし、こういう工夫をしてこういうことはやっている、これぐらいはできそうで努力するというようなことも引き出せると思いますので、今回の調査のヒアリングにはそういう要素を入れてお聞きする。強制的にこういう基準で、この数値でこうですよという話を我々が持つんじゃなくて、そういう形でワーキング・グループは進めて、それをまとめましてまた御報告した後に、それを指標として公的支援の見直しにつなげていくという議論になれば良い。井上委員と一緒にやっていますワーキング・グループで状況をお聞きする形で進めていきたいと思います。また御報告します。

 

【田中座長】
 入学者がごく少人数という状況は、ちょっと具合が悪いというふうに考えられるかも分からないのですけれども、中には本当に少数精鋭の選考と教育を精力的にやられて、司法試験合格率も100%近いというふうな事例があったりしますと、画一的に見るというのはすごく難しいということもあり得るわけです。今のところ、実態を見てもらわないと分からないところが多いので、その点はワーキング・グループでも少し実態を調査して検討いただくことにして、今回そこまでは入れないということでいかがでしょうか。

 

【常盤高等教育局審議官】
 先ほど競争倍率で、司法試験合格率等の指標ですね。「等」を入れるかどうかの話なんですが、先ほど御指摘がありましたように、今の指標の中には、合格率が基本ではありますけれども、受験率が含まれているのは確かでございます。その受験率を入れたときの議論の経緯もあるようですので、調べさせていただいて、その上で、「等」を入れるかどうかは田中座長の御判断ということでお預けいただければありがたいかなと。

 

【田中座長】
 イメージをもう少し統一する必要もあり、見方が分かれていることは今回はやめるということにしてはいかがでしょうか。

 

【常盤高等教育局審議官】
 また御相談させていただいて。

 

【井上座長代理】
 表現上の問題がありますね。

 

【田中座長】
 その点をどう処理するかはお任せいただくことにして、それ以外の点については、この提案をこの委員会の基本的な考え方としてまとめさせていただくことでよろしいでしょうか。
 では、そのようにいたしたいと思います。
 それでは、引き続きまして、資料4にあります、法学未修者教育の充実のための検討ワーキング・グループの設置についてお諮りしたいと思います。
 先ほどの提言にもありましたが、法学未修者教育の充実方策等について、専門的な検討を深めていくため、この特別委員会の下にまたワーキング・グループを設置して、集中的な審議を早急に行いたいと考えております。そこで、まずワーキング・グループの設置につきまして、事務局から資料4について説明をお願いいたします。

 

【今井専門職大学院室長】
 資料4に基づいて、御説明させていただきたいと存じます。先ほどの提言の中にもございますように、法学未修者教育の充実のための検討ワーキング・グループの設置についてお諮りしたいと思います。
 資料の1番でございますが、その所掌といたしましては、中段よりございます、昨今の入学者選抜におけます法学未修者の割合の著しい減少や、法科大学院教育における法学未修者の修了認定等での厳しい状況を踏まえまして、法学未修者教育の充実に向けた調査・分析を行っていることをその所掌事務とさせていただきたいと存じます。なお、そのワーキング・グループに属していただきます委員、主査につきましては、座長の御指名をいただくということで考えております。なお、設置の期間につきましては、設置をされた日から、平成25年、来年の1月31日まで、この第6期の中教審の委員の任命等々の関連で、1月31日とさせていただきたいと存じます。
 簡単ではございますが、以上でございます。

 

【田中座長】
 ありがとうございました。
 特に御意見、御質問がなければ、これも前回既に議論していただいたことですので、設置を認めていただいたということで、次の作業に入らせていただきたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
 このワーキング・グループの主査につきましては、以前にこの特別委員会のもとに設置されていた第2ワーキング・グループの委員として、法科大学院教育全体についても検討に関与していただき、先日もこの未修者教育に関してのメモをいただいたのですが、世代交代して、未修者教育について実績も上げていらっしゃる一橋大学の山本和彦先生にお願いしたいと考えております。ほかに、このワーキング・グループの構成につきましては、この特別委員会のメンバーからも入っていただき、それぞれの科目についてもバランス良く選考して、実務家の方にも入っていただきたいと思いますので、山本先生と相談して、また関連分野の先生とも相談した上で、改めて報告させていただきたいと思います。今日は山本和彦先生に主査をお願いするということだけ、御報告させていただきます。
 それでは、本日の議事は以上で終わります。
 今日の会議は、この特別委員会といたしましても、最近数回にわたって議論していただいた改善方策につきまして、一つの節目を迎えたことになりますので、最後に一言、文科省の方からお願いします。

 

【板東高等教育局長】
 それでは、今ありましたように、節目を迎えたということで、改めて感謝の言葉を述べさせていただきたいと存じます。
 先ほどから法科大学院教育の更なる充実についての改善方策についての御提言をまとめていただき、それから、併せまして組織見直しの更なる方策についてということについてもおまとめいただきましてありがとうございます。正に有信委員が先ほど最初におっしゃいましたように、待ったなしという、非常にスピード感を持って取り組むということが重要な状況になっているかと思います。そういった非常に強い問題意識を持って、ここ半年弱の間にこれだけ精力的な御議論をいただいて、先ほどの御提言をおまとめいただいたことを、本当に感謝を申し上げたいと思います。
 これから文部科学省といたしまして、この御提言を受けて、早急に取り組むべきことはすべて洗い出して取り組むということを考えていかなければいけないと思っておりますし、そしてそれも早急に整理をさせていただいて、迅速かつ計画的、総合的に実現、実施に移していきたいというふうに思っておりますので、更なる御指導をいただければありがたいというふうに思っております。
 それから、先ほどお決めいただきましたように、これから未修者教育についても本格的に突っ込んだ御議論をいただいて、残された課題等も本当に精力的にこれからも御議論いただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。やはりこれだけ早い段階で、この法科大学院制度、新しい法曹養成制度を目指しました理念、趣旨というものが最大限実現されますような良い循環の方に、一刻も早く転換をしていきたいというふうに思っておりますので、本当に感謝を申し上げますとともに、これからも一層の御指導をいただきたいと思っております。
 本日はどうもありがとうございました。

 

【田中座長】
 ありがとうございました。文科省だけでなく、法科大学院にとっても必ずしもありがたくない土俵の設定をされて、そこで対応を迫られているので、非常に御苦労が多いと思いますけれども、私どももできることは協力していきたいと思いますので、よろしく対応くださるようお願いします。
 それでは、事務局から、今後の日程について御説明の方をお願いいたします。

 

【今井専門職大学院室長】
 次回の法科大学院特別委員会につきましては、改めて日程調整をさせていただきまして、詳細につきまして事務局より御案内を改めてさせていただきたいと存じます。

 

【田中座長】
 大体また9月の中旬以降ですね。

 

【今井専門職大学院室長】
 また司法試験の最終合格の発表が9月11日に予定されているという状況でございますので、次のタイミングはその辺りかと存じます。よろしくお願いいたします。

 

【田中座長】
 司法試験の結果が出るので、また対応が難しいことになりますが、どうかよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議事はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

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高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

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