法科大学院特別委員会(第47回) 議事録

1.日時

平成24年3月7日(水曜日) 16時~18時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 法科大学院の改善状況調査について
  2. 適性試験の最低基準点の取扱いについて
  3. 法科大学院教育の充実について
  4. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)田中成明、有信陸弘の各臨時委員
(専門委員)磯村保、井上正仁、笠井治、鎌田薫、椎橋隆幸、杉山忠昭、土屋美明、土井真一、永田眞三郎、長谷部由起子、日吉由美子、松並孝二の各専門委員

文部科学省

常盤高等教育局審議官、内藤専門教育課長、今井専門職大学院室長、小代専門教育課課長補佐

5.議事録

【田中座長】
 予定された方、皆様お見えになりましたので、第47回中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会を始めたいと思います。
 まず、委員の交代がございますので、事務局より御紹介をお願いいたします。

 

【今井専門職大学院室長】
 委員の交代がございますので、お知らせを致します。関一穂委員より中央教育審議会専門委員の辞職願が提出されました。平成24年3月6日付で辞任されることとなりましたので、それを以って平成24年3月7日付法務省大臣官房付の松並孝二氏に、中央教育審議会専門委員に御就任いただくこととなりましたのでお知らせを致します。

 

【松並委員】
 今、御紹介いただきました松並です。どうぞよろしくお願いいたします。

 

【田中座長】
 それでは、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

 

【今井専門職大学院室長】
 それでは、引き続き、配付資料に関して確認をさせていただきます。資料1、中央審議会大学分科会法科大学院特別委員会第46回議事録の案を作らせていただいています。資料2に関しては、各法科大学院の改善状況に係る調査結果、資料3-1適性試験の最低基準点の設定について、資料3-2適性試験の点数が下位15%未満の者に関するデータについて、資料4-1法科大学院教育の更なる改善に向けた検討事項等について(たたき台)、同じく資料4-2検討に係る参考データ等、となっています。
 また、机上参考資料を2点配付しております。資料につきましては以上です。もし、御手元の資料で足りないもの等がありましたら、事務局にお申し出いただきたいと思います。

 

【田中座長】
 それでは議事に入らせていただきます。
 改善状況調査ワーキング・グループに、平成23年新司法試験の結果を踏まえて、引き続き各法科大学院における教育の改善状況について、調査を実施していただいております。精力的に御審議・調査いただき、一定の結論を得られたので、本日はそのワーキング・グループの主査である永田委員より、各法科大学院の改善状況に係る調査結果について、御報告をお願いいたします。

 

【永田委員】
 御報告いたします。法科大学院教育の質の向上に関する改善状況調査ワーキング・グループは、平成21年4月17日の特別委員会報告を踏まえ、各法科大学院の協力を得ながら、各法科大学院の教育の改善状況調査を実施いたしました。本日は平成23年の新司法試験の結果を踏まえて、本ワーキング・グループが実施した改善状況調査の結果について、資料2に基づいて報告したいと思います。
 今回の調査は、昨年1月に本ワーキング・グループが報告しました第3回の改善状況調査で指摘しました課題等について、各法科大学院での改善等の進捗状況について確認を実施いたしました。
 まず、具体的な調査方法については、第1回及び第3回の改善状況調査と同様に、全ての法科大学院を対象に書面調査を実施し、教育の改善の進捗状況について、全体的な把握を行いました。
 次に、書面調査及び平成23年の司法試験の結果を踏まえまして、修了者の質の確保に早急に取り組む必要があると考えられる法科大学院10校については、ヒアリング調査を実施いたしました。それにより、更に詳細に確認することが必要と判断された法科大学院5校について、実地調査を実施することにしました。過去の調査において、継続的又は重点的なフォローアップが必要とされた法科大学院を含めますと、合計32校に対して実地調査を実施いたしました。
 それでは、その調査結果を御報告いたします。各法科大学院では、過去2回の改善状況調査で本ワーキング・グループが指摘した事項を踏まえ、試行錯誤を重ねながら、改善の取組を強化してきている状況にあります。今回の改善状況調査において確認された改善の取組と今後の課題について、御報告いたします。
 入学者選抜での、入学者の質の確保については、これまでも本ワーキング・グループと致しましては、再三再四指摘してきたところです。今回ヒアリング調査や実地調査を実施した法科大学院の多くでは、調査実施時点での途中経過ではありますが、平成24年度の入学者選抜で競争倍率2倍以上の確保に努める、適性試験の点数が著しく低い者を入学させないために、合格最低基準点を導入するなど改善の取組を実施してきています。
 既に御案内のとおり、平成24年度の総入学定員が、最大時5,825名ですが、それと比較して約2割減4,484名まで削減される見通しになったことを併せて考えると、各法科大学院の質の確保の意識は着実に改善されてきていると考えられます。
 もっとも、数は限られてきているものの、競争倍率は依然として2倍を下回るなど、入学者の質の確保の必要性について認識が不十分であるなど、入学者選抜に課題を抱えている法科大学院も見られました。これらの法科大学院では、入学者の質の確保の必要性について今一度認識を新たにし、法科大学院の入り口での質の確保の重要性について再認識していただく必要があります。
 また、定員充足率が5割に満たない状態が継続している法科大学院にあっては、組織全体の見直しに早急に取りかかる必要があります。一部の法科大学院では、修了者の多くが修了直後の司法試験を受験しない、いわゆる「受け控え」をしている、あるいは受験をしても合格率が著しく低い、といった状況が見られます。
 このような状況を改善するためには、十分な学力を身に付けた者のみを修了させること、同時に学生自身も到達目標を意識して学修し、司法試験を受験するのに十分な学力を身に付けたという自信を持って修了できるようにする必要があり、成績評価、修了認定の厳格化は必要であります。
 成績評価、修了認定の厳格化については、今回のヒアリング調査や実地調査を実施した法科大学院でも、GPA制度の導入や、あるいは成績評価基準の見直し等、昨年と比較しても一層の改善の取組がなされていることが確認されました。シラバスに記載している成績評価の基準と異なる方法で成績表を付けたり、GPAの制度を導入しているもののS又はA評価の学生が過半数となる科目があり、その厳格性が疑われるなど、成績評価や修了認定の在り方になお課題を抱える一部の法科大学院もあります。
 これらの法科大学院では、改善の取組の実効性を早急に検証し改善を図れるよう、組織的な対応を図る必要があります。なお、個別の法科大学院の改善状況に関する委員の所見については、別紙にまとめてあります。
 これまで、改善状況調査で、重点的又は継続的にフォローアップが必要と指摘した法科大学院のうち、重点的にフォローアップが必要とされた2校につきましては、相当程度の改善の取組が継続的になされていることから、継続的にフォローアップが必要な法科大学院としてその区分を変更いたしました。過去にフォローアップが必要とされている他の法科大学院につきましては、第3回調査の際と同様に、今回の改善の取組という進捗状況の観点から所見としてまとめました。また、新たに実地調査を実施した5校のうち4校につきましては、継続的にフォローアップが必要と判断いたしました。詳細については、別紙を御覧ください。
 最後に、先ほど説明しましたとおり、多くの法科大学院では、過去2回の改善状況調査における本ワーキング・グループの指摘事項などを真摯に受け止め、改善の取組を強化してきています。ただし、一部の法科大学院では危機意識に欠け、改善に対する真摯な取組が不十分なところも見られ、改善の取組の進捗状況については別紙に示すとおり、法科大学院間で差があることも事実であります。各法科大学院は引き続き組織の在り方の検討や、教育内容・方法等について早急に取り組む、殊に改善の取組及びその効果について不断に検証を重ね、実効的に改善を成すべく、あらゆる手段を用いて徹底的な改善を目指し、組織全体で取り組んでいく必要があります。
 本ワーキング・グループとしては、各法科大学院でのこれらの改善が一層加速され、実効を上げるよう平成24年度入学者選抜の結果や、平成24年の司法試験の結果を踏まえ、特に課題を抱える法科大学院を中心に、引き続き改善状況調査を実施する必要があると考えます。私からの報告は以上です。

 

【田中座長】
 どうもありがとうございました。それではただ今の報告につきまして、御意見・御質問がございましたら、挙手をしてお願いいたします。 
 私から質問というか、お伺いしたいのですが、実際にヒアリングとか実地調査をされていて、各法科大学院の改善テーマについての認識の程度とか、問題があるという状況が改善されてきているというような状況など、何か印象的なことがありますでしょうか。

 

【永田委員】
 私たちが実地調査等で、問題意識のあった課題等につきましては、ほぼ、いずれの法科大学院も基本的には受け入れている状況にあると思います。それにもかかわらず、やはり、実効性のある改善ができていない状況があります。ですから、その危機意識が十分にあるのに、実際の対応ができていないというところに問題があると思われます。

 

【田中座長】
 対応をしているのだけれども、効果が出ていないということでしょうか。

 

【井上座長代理】
 今、永田委員がおっしゃったように、課題を抱えていると思われる法科大学院の多くは、指摘されたことに危機意識を持っていろいろな試みをなさっている。例えば、入学者の質の確保については、2倍の競争倍率を確保するよう努めるということなどについては、かなり徹底されてきています。それらの法科大学院の間にも、改善の取組がかなり成されているので、なお見守って行かなければいけないところがあるのだけれど、「重点」というほどでもなくなっているところと、改善の取組はなされているものの、その効果がまだ見えないので、なお見守りたいと思われるところがあり、これらが多くなのですが、数は限られているのですけれど、本当に厳しい状況にあるところがやはりあるということです。
 そういうところについては、我々としても、何度か、こうしたところを改めるよう、もっと組織的に取り組んではいかがですか、というようなことを申し上げてきたのですが、我々の目からすると余り変わっていないと思われる。正直言って、何度かやってきて、徒労感を禁じ得ません。そこで、この報告書の一番最後のところで、特に課題を抱える法科大学院を中心に次回以降調査を実施していくことが必要であるとして、より重点化するというか、メリハリをつけてやっていく必要があると書かせていただいたのです。多くのところはしっかりと取り組んでくださっているのですが、対応がいまだ不十分で、有体に言えば、危機意識を持ってしゃかりきに対応されているのか疑問を感じる法科大学院も、ごく一部ですが、あるのです。

 

【笠井(治)委員】
 今のお二人の発言にほぼ尽きているのですが、実地調査に行きまして、結局、調査側である我々と論争になるケースもいまだあります。永田委員は、ほとんどの大学がこちらの批評を受け入れてくれているとおっしゃっていましたけれど、確かにそうなのですが、僅かな数校の中で、例えば入学者の質の問題について言うと、競争倍率2倍を切っても我々は厳格な入試を実施しているのだと、良い学生を採っているのだと言いながら、他方で近隣の有力校に、あるいは、東京の有力校に良い学生を採られてしまって良い学生は来ないのは仕方がないのだ、というふうな開き直りと同居するような発言があったりします。それで、なぜあなた方はこの法科大学院を運営しようとしているのですかという疑問を持たざるを得ないような学校も数校、断固として残ってはいます。

 

【井上座長代理】
 今、笠井委員が言われたようなところはまだ良いのです。その法科大学院なりのお考えを持ってそうされているわけですから。しかし、そういった明確な考えもなく、例えば競争倍率を見ると、去年とほとんど変わっていない、あるいは去年より更に酷くなっている、というようなところもあります。そして、その言い訳として、分かってはいるのだけれど、このくらい受け入れないと学校を維持していけない、というようなことをおっしゃるところが、僅かですがありました。

 

【永田委員】
 ワーキング・グループとしては、ワーキング・グループがこれまで示してきた基準について、理解されているのかどうかというのが1点。その認識のもとに教授会等で検討され、一定の改善の方策を決めているのかどうかというのが第2点。それが最終的に実現しているのか、あるいは実現しつつあるのかというのが第3点。この3点を順に整理・分析してきました。
 そういう意味で、第1点と第2点については、この間、大きく進展してきたと言えます。最後第3点について、なかなか実効性が上がらないところが多く、そのような法科大学院については、少し継続的に見せていただこうという趣旨です。

 

【磯村委員】
 調査結果の取りまとめのところでも出て来ましたし、実地調査の意見のところにも出ているところですが、一部の法科大学院で授業に対する信頼度が必ずしも高くないと、これは、二つの可能性があって、授業自体は良いのだけれど、学生が不当に信頼しないという面と、それからやはり、それなりの不安を抱くような授業が行われているという、その印象としてはどちらがどうという印象なのでしょうか。

 

【永田委員】
 やはり、そうした問題は正直これまでもあったと思いますが、特に一所懸命教育されている、学生もそれなりに頑張っている、その時に学生は修了してみて、ふと顔を上げてみると司法試験が遠いところにある、すなわち修了したときの学力と司法試験との要求される学力との間に差がある、こういう状況が多く見られました。そこでは、教育の側がしっかりした到達点を考えて、組織的に適切に対応していくことが必要で、それを我々は実地調査で度々お話ししてきました。共通的な到達目標が公表され、それに対応する教育も今、かなり進んできましたけれど、まだ不十分なところがあると言えます。

 

【井上座長代理】
 磯村委員がおっしゃった、教員の方では良い授業をしているのだけれども、学生に不当な不満があるという場合が仮にあるとしますと、学生の方に評価の基準となる何かを持っていることが前提となると思うのですが、我々が実地に見た限りでは、そうした状況にはないと言えます。例えばダブルスクールで予備校に行っていて、そこでの授業と比べて法科大学院の授業はレベルが低いなどといった捉え方をする例はありませんでした。
 そうではなく、二つの面で不安と不満が生じていて、その一つは、多くの先生は学生側から見ても満足できる、あるいは信頼できる授業をしているのだけれど、一部に、これで大丈夫なのかというような先生がいる。それなのに、その点について組織として改善の手立てを講じる、例えば、先生方の間で統一を図るとか、調整するといったことが行われていないため、学生が不満を抱くということです。もう一つは、その法科大学院の中だけで見ると、先生たちは懇切に指導してくれ、学生は満足しているのだけれど、いざ修了して全国レベルのところに放り出されたときに、自分の学力で十分なのか不安を覚える、自信を持てない。そういったことで、その法科大学院での授業や学修生活だけ見ると、ほんわかとした雰囲気で、それなりに楽しく過ごしている。しかし、本当にこれで大丈夫なのだろうかという不安を感じている。そうした、二つの面があるように思います。

 

【田中座長】
 ありがとうございました。この報告書にありますように、法曹養成制度に求められていることがだんだん厳しくなっているという状況でして、各法科大学院においても、特にこのヒアリングとか実地調査の対象となっている大学におかれては、こうした状況をよく認識していただいて、この委員会が取りまとめる意見も反映させて、一層の改善に取り組まれることを期待します。
 それと、従来もそうしたのですが、この報告書についても、各認証評価機関に送付いただいて、ちょうど2巡目に入りますので、この委員会で重点的に取り組んでいる項目や、それに関する各法科大学院のデータを十分に踏まえて、厳正な認証評価をしていただくようにという文書を添えて、送付いただくようよろしくお願いいたします。
 では、続いて前回の委員会での意見交換を致しました適性試験の最低基準点の設定についてですが、前回の議論を踏まえまして、事務局で取りまとめ案を作っていただきましたので、それについての説明を事務局よりお願いいたします。

 

【今井専門職大学院室長】
 それでは事務局より、資料に基づいて説明いたします。資料3-1、それから資料の3-2を御覧いただけたらと思います。
 適性試験の最低基準点の設定につきましては、今、座長よりお話がありましたように、前回の特別委員会におきましても意見交換をしていただいています。また、先ほど議題で報告のありました改善状況調査の関係でも、ワーキング・グループの中でもこの取扱いについて議論を重ね、特別委員会でも審議をお願いしたいということもありました。
 そうしたことを踏まえ、資料3-1、3-2の資料経緯の状況を説明いたします。まず、資料3-1ですが、一番上の破線囲い、これは平成21年4月の本特別委員会で報告してまとめていただいたものの抜粋です。現在、適性試験の最低基準点の扱いについては、一つ目の丸にありますように、適性試験を課している制度趣旨を無意味にするような著しく低い点数の者を入学させないよう、統一的な入学最低基準点を設定する必要がある。そして二つ目の丸に、その統一的な入学基準点については、総受験者の下位から15%程度の人数を目安として、適性試験実施機関が、毎年の総受験者数や得点分布状況などを考慮しながら、当該年度の具体的な基準点を設定すべきであると、これが報告としてまとまっている状況です。
 一方、その報告の現状ですが、真ん中にありますように、3点に分けて整理しています。まず1点目は、適性試験の点数において、総受験者の下位から15%未満の者について、状況やデータを調べさせていただいています。そもそも、入学者に占める標準修業年限修了者の割合、また、退学者の割合等が全体と比較しても非常に厳しい状況にあるということ、資料3-2を見ていただければと思いますが、そこにありますように、一番右側の欄が新司法試験の合格者数、二つ目の欄が修了者数となっています。この数字については、適性試験の点数が下位15%未満の方に限っています。また、一番下に参考として、全体のデータを載せている、そうした資料のつくりになっています。
 やはり、これを見て、私どもが調べましても、修了者数が全体で25,825名ありますが、そのうち15%未満の方というのが約一割、249名います。一方、新司法試験の合格者が全体の累積で、今11,105名合格者としています。そこの割合に占める、いわゆる、15%未満の方というのは、0.2%、22名です。また、そうした15%未満の成績で入学された方の95%が、新司法試験に合格できない状況でもあります。これがデータとして調べました点です。
 また2点目ですが、現状においては、適性試験実施機関において、総受験者数や得点分布状況等の公表は行っていますが、具体的な基準点の設定は、今は行われていないという実態があります。
 そして、3点目、大学としての取組については、平成23年度の入学者選抜において、27の法科大学院において自主的に入学者選抜における適性試験の最低基準点を設定しているというような状況で、そのうちの23校が下位15%以上の水準で定めているという実態もあります。
 以上のような現状を踏まえ、今後の考え方として、下段にあります平成21年の特別委員会報告にあります、適性試験の入学最低基準点の設定にかかる考え方については、今後は以下のような考え方としてはどうかということで整理しています。
 破線の中を読み上げます。一つ目の丸、適性試験において著しく低い点数の者については、入学後の学修状況や司法試験合格状況等を考慮すると、これらの者を入学させないよう、各法科大学院において、入学最低基準点を設定する必要がある。二つ目の丸、その際、入学最低基準点については、総受験者の下位から15%を基本とする。三つ目の丸、また、入学最低基準点の設定にあたっては、各法科大学院の募集要項等に明示するなど、受験生に対して周知することが必要である。以上のような考え方として整理してはどうかということで、資料を整理した次第です。どうか、審議の程よろしくお願いいたします。

 

【田中座長】
 ありがとうございました。ただ今の事務局の整理及び先ほどの改善状況調査ワ-キング・グループの報告を踏まえて、適性試験の最低基準点の設定について議論いただきたいと思います。前回もかなり御意見があって、それに関するデータなども配付されています。これに関して、御意見・御質問などありましたら御発言お願いいたします。

 

【杉山委員】
 すみません。平成21年4月の時に15%と設定したのは不在で知らないのですが、これ15ではなくて10や20、25、30で取った時の数値というのはありますか。
 どのくらい違うのかなと、15が適切なのかなと。

 

【今井専門職大学院室長】
 今回のデータについては、下位15%だけのデータということでしたので、いわゆる、他の下位のデータについては、集めていません。

 

【杉山委員】
 そうすると、前回の15を目安とするという時の議論を知らないのですが、その時に15と設定する妥当性が、どういうところにあったのでしょうか。

 

【今井専門職大学院室長】
 机上資料の中にある中教審法科大学特別委員会の平成21年4月の報告を見ていただければと思います。この報告の参考資料で基礎資料というページが入っています。このページ以降の16ページを見ていただければと思います。前回の議論をする際に、平成18年度、それから平成19年度以降の適性試験のデータとして、適性試験の得点分布となりますが、平成21年度の議論としましては、例えば16ページのところを見ていただきますと、ここの下位から10%、また下位から15%というデータを示しながら議論していただいたというのが経緯となります。

 

【井上座長代理】
 補足しますと、これはもともと、前期の特別委員の下に三つのワーキング・グループが設けられていまして、そのうち法科大学院への入り口における質の確保の問題を担当したのが第1ワーキング・グループであり、その主査は鎌田委員でしたので、鎌田委員が来られてから説明していただく方が良いのですけれども、そのワーキング・グループの報告に基づいたものなのです。その報告では、最低基準点を設定する一つの目安として、標準偏差の取り方では、成績分布の下位15%と上位15%を除いて偏差を取ることになっているのですが、その下位15%というのが一つの目安となるのではないかというのが、ワーキング・グループのお考えでした。そして、それに基づいて、改善状況調査を担当した第3ワーキング・グループでも、書面調査やヒアリング、実地調査をしてきたわけです。その際、その数字の設定の仕方についても、各法科大学院関係者との間で議論もありましたけれども、多くのところは、それがミニマム・スタンダードとして考えられる妥当な線ではないかという受け止め方をされていまして、既にそのような最低基準を明記しているところも少なからずあります。さっき笠井委員が言われたように、設定の仕方について強い異論もない訳ではなかったのですが、そういう異論を述べられる関係者の方々も、実際にその点数を下回る人を受け入れてみると、大抵はやはり授業等についていけなかったり困ることが多いことは認められているのです。もちろん、ごくまれには、低い点で受け入れた人が大きく育つことがないわけではないとしても、それはエピソード的なものにとどまり、やはり多くは入学してからの学力という点で問題があることは、認めておられました。その意味で、最低の基準としてはこの辺ではないかというのが我々の現場に行った者の感想です。実際、この下位15%というのは相当低い数字で、もっと上の20%くらいを最低基準にしても良いと、個人的には思いますが。

 

【杉山委員】
 御説明ありがとうございます。直感的に、この3-1の資料を見た時に低いかなと、15じゃなくて今のこの議論の流れから行くと、20、25という数字だとどうなのかな、という感じがしたのでお伺いしました。そうした議論があったのであれば、了解です。
 ただ、個人的には間口を広げろという方なので、もっと下げても良いのかなという気持ちもありました。よく分かりました。ありがとうございます。

 

【日吉委員】
 逆に一つ質問なのですが、この15%未満の者は、この資料3-2を見ますと、累積で入学者数を比較しても、4万幾らあるうちの600人だったと、過去ですね。修了者数は2万5千のうちの200人程度。そのうち、合格者数は1万ちょっとのうちの20人。この15%が改めて、それ未満の人間は入学を認めないようにしようというようにルールを設定しようということは、この607人、今までで言うとこのくらいの%の人間の、言ってみれば運命をこうした設定で決めようと、もう今後は入って来られないことにしようと、そういうことなのだろうと思うのですが、今の時点の他の部分、そもそもの入学者数を大分減らしていることだとか、いろんな施策を取っている中で、象徴的にこのルールを導入することの、今更ながらのメリットというのはどこにあるのでしょうか。かなり、非常に少ない人数の%の話を既にしている中で、今これを改めて設定するということで、一体どういう改善を狙うのか、あるいは見込めるのか、そこら辺が、もう一つ見えないのですが。

 

【永田委員】
 私ども、先ほど説明しました調査をして、2点あると思っています。平成18年度の12名、これは特別な事情でこうなったと思いますが、大体最終的な司法試験合格者は2名ないし1名、うち3年は0名です。そういう意味で、多くの者を受け入れて教育するということは意味があるのですが、逆に言うと、修了しても司法試験に通らない者をたくさん増やすということになる。法科大学院としては、受け入れながらもその成果が示せない、そうした層を入れてしまうということで、我々は入り口のところでしっかりとやってください、ということがあります。
 もう一点は、これは非常に残念なことなのですが、言わばモラルハザードでして、これを認めますと、低い学生を入れると、一つのインセンティブとして働き、そうしたものが出てくるし、現に多数、この15%未満の学生を入れている法科大学院は、そうした形で何とか志願者を維持し、競争倍率以下の体を成す、そうしたものが動き始めています。
 ですから、この点数を緩和するということは、多くの合格できない学生、そうした資質に関し疑念がある学生を受け入れる、それはその人の個人の責任だと言えばそうかもしれませんが、そうした問題と、それからもう一つは、今、我々が入り口できっちりと法科大学院制度の信頼を守るために質を確保しようとするのに関して、良い学生を採ろうとする上位の学校と、下位の学生で学生を集めようとする学校とそれが両方存在し、悪循環で修了できない学生をたくさん作るということになります。なので、せめて15%、これはやはり、そうした試験の制度がある以上、一つの入り口としてチェックしていきたいと我々は考えています。その2点だろうと思っています。

 

【日吉委員】
 それもよく分かるのですが、恐らくこのことだけではなくて、別の、入学試験に関してはここ数年来、中教審を中心にして様々な施策が打ち出されて、それが併存している中で行われようとしているものだと思います。そうすると、今の話を拝聴しますと、むしろ、この15%という数字、今お話を伺った目標・目的を達成しようとすると、15%では何の効果もないのではないかな、という気がします。
 そうすると、なぜ、今更ながらこれを導入しなければいけないのか、そこがもう一つ見えないという気がします。

 

【井上座長代理】
 新たに導入するということではなく、それぐらいの数値を目安に、各適性試験実施機関が基準を示して欲しい、というのが本委員会のこれまでの提言だったのです。しかし、各実施機関の方は、そういう設定はできない、していただけないという状態であったので、我々のワーキング・グループとしては、本委員会の提言の趣旨を体して、ここ数年間、下位15%というのを一応の数字としながら調査し、各法科大学院ともお話をさせていただいてきたわけです。そして、多くのところでは、そのぐらいをミニマム・スタンダードとしており、むろん、これを確保すれば入学者の質が必ず確保できるという程の数字ではありませんが、最低限の基準として志願者にも公表するということで、かなり浸透してきています。それを、より正面から明示していただきたいというのが今回の提案の趣旨であり、そのような明確な根拠となる考え方を示していただかないと、今後ワーキング・グループにおいて改善状況調査を進める上でも、どこにそんな根拠があるのかとして、その点での対応を何ら講じてくださろうとしないところも少数ながらありますので、困ってしまうというのが正直なところです。

 

【日吉委員】
 そうすると、今、お話を伺った限りで言うと、新たに導入するわけではなく、前々からある程度そうしたことは言われてきて、それに基づいてワーキング・グループも作業されてきたけれど、いまだにそれを重視されない幾つかのロースクールがあるので、改めてきちんと重視していただくために、根拠付けとしてここで確認をする必要があると、こういうことでよろしいでしょうか。

 

【井上座長代理】
 そういうところのほかにも、基準を明確にしてくれれば、それを取り入れる用意はあるのだけれど、明確にされていないので、いまだに踏み切れないというところもあります。これまでの提言では、適正試験実施機関の方で決めてもらうということになっていたので、決まればそれは受け入れるつもりなのだが、いまだ決まっていないから、自分のところで独自に設定しかねる、という姿勢でいる法科大学院も少なからずあるわけです。そういう状況です。ワーキング・グループとしては、これ以上やれることには限界があり、お願いしている次第であるため、明確にしていただきたいという感じです。

 

【田中座長】
 今更というところはあって、こういった基準を設定しても意味があるのはごく少数の大学なのですが、こうしたことをそのままにしていることが、弊害をもたらし始めたので、この際、はっきりとしておこうということです。適性試験を実施する側からすると、適性試験のウェイトをもう少し高めるべきであるとか、いろんな要望もあるのですが、最低限、このくらいはしておかないと弊害が出始めたということで、やはりこの際、弊害をはっきり打ち消すと、そういう趣旨だと理解していただければと思います。

 

【日吉委員】
 はい。趣旨は理解いたしました。

 

【田中座長】
 これを導入してどうのこうのということはあんまりないと思われ、しかも、受験生に対して周知するわけでして、受験生にとっては、こういうことになったとすれば、対応するのは簡単な基準ですから。これで、受験者が減ったりするというようなこともないと思われ、とにかくルールを示して、これは困るのだということをはっきりさせておこうという趣旨です。
 これは、鎌田先生のワーキング・グループから出された案なのですが、15%となった趣旨は、覚えておられますか。

 

【鎌田委員】
 なぜ15%になったか、あるいは、15%は何によって正当化されるのかというのは非常に議論の難しいところです。いろいろ考え方があると思うのですが、私的にこういうところで説明するしかないだろうなと思っているのは、標準偏差というのが真ん中の70%を取ります。上の15%というのは、普通の人と比べて、格別にできる。下の15%は普通の、標準の範囲の外にある、格別にできない、というのが標準偏差の基本的な考え方です。なので、一定の受験者集団が存在しているということで、特に切る、標準的な人というのを基準に考えた時、標準の枠を外れるぐらいの水準の低さは切るとしたら、下15%ぐらいというのが一つの考えからであろうと。今おっしゃったように、下15%は、教育的には、法科大学院における学修に要求される一定の水準を備えていない、備えたというには足りないということができる。ただし、それを合否の判定にどう使うのかというのは、一般的には、試験実施機関と、合否判定機関との関係では、合否判定機関側がどう考えるのかということであるのだけれど、法科大学院というのが司法試験受験資格を認定する特別の機関であるということになると、法科大学院制度の趣旨からいくと、このくらいの条件が必要だというのは、私個人的には、もっと早くからこうした形で、中教審の基本的な考え方として全国の法科大学院は、この水準を維持してくださいというのを決めるのが筋であって、もともとの指針もそうしたことを念頭に置きつつ、各試験実施機関は15%という基準を考えた時に、今回の試験でそれが何点なのか、それは各試験実施機関が点数は決めるのだけれど、15%以下を入学させるべきであるかどうかというのは、試験実施機関の判断の問題であって、中教審での基本的な施策の決定の問題であると、もともとそうした趣旨で提言されたものだと思います。だから、今回のような書き方にするのが、その趣旨はより明確に伝わるのだと、そういうふうに思います。全体の議論の途中で入ってきましたので、流れと違うような部分があったかも知れませんけれど、そのように私は理解しています。

 

【田中座長】
 ただ今鎌田委員のおっしゃったような流れで来ています。それで御了承ください。
 それでは、この適性試験の最低基準点の設定については、本特別委員会としましては、この案のとおり進めたいと思います。それで、この内容の趣旨については、各法科大学院及び各認証評価機関に対して、鎌田委員が説明された趣旨をきちんと理解いただけるように、事務局からの周知をお願いいたします。
 続いて、法科大学院の教育の充実について議論していただきたいと思います。前回の特別委員会では、未修者の状況に関するデータが出されて、意見交換が行われましたが、それを踏まえまして、事務局で資料を作成してもらいましたので、まずその説明からお願いいたします。よろしくお願いいたします。

 

【今井専門職大学院室長】
 それでは説明を行っていきたいと思います。資料については、資料4-1及び資料4-2を御覧いただきたいと思います。前回の特別委員会において、現在の法科大学院制度をめぐる動向について説明いたしました。昨年来、11月に提言型政策仕分けがあり、法科大学院に関しての厳しい御指摘も多々あるところです。そのような中で、是非特別委員会の場において、法科大学院教育の更なる改善に向けた検討を進めていただければと、事務局でたたき台を用意しましたのが資料4-1です。それでは資料4-1に基づいて説明いたします。
 まず、資料4-1については大きく三つの枠でできています。一つは、一番左側にありますように、平成21年に報告いただいています、法科大学院教育の質の向上のための改善方策について、主な指摘事項を書いています。資料は2ページにわたっていますが、それぞれ二つの分類があります。(1)が入学者の質の確保、(2)が修了者の質の確保、そして2ページ目、(3)組織見直しの促進、(4)評価システムの改善、およそ入り口、出口、そして組織、それを評価する仕組み、といったかなり包括的な提言を頂いてきたところです。そしてそれぞれについて、提言があったところを説明したいと思います。
 例えば、(1)入学者の質の確保です。ここで大きく二つのポイントがあります。入学定員の見直し等による競争性の確保ということ。その中で、アンダーラインがありますように、各法科大学院にとって、早急に入学定員の見直しなど、競争的な環境を整えることが不可欠だという提言を頂いたところです。また、二つ目の適性試験の入学最低基準点の導入については、正に先ほど議論いただいたような状況がありまして、入学最低基準点の設定を提言いただいたところです。
 このような中で、真ん中の枠ですが、これまでの主な取組状況については、例えば一つ目の丸、入学定員の見直し等による競争性の確保ということで、小さな黒ポツが三つあります。その一つ目、競争倍率の2倍以上の確保ということで平成21年度は32校が競争倍率2倍以上を確保していましたが、2年後の平成23年度には54校が競争倍率2倍以上を確保するという、そうした努力に努めてきているところです。二つ目の黒ポツにありますように、入学定員についてはピーク時から約2割減になっていること、三つ目にありますように、実入学者数についてもピーク時より約4割減というところまで来ています。また、適性試験の最低基準点についても、こうした形で、できるだけ15%という数字をもって入学者選抜を行ってきている、そうした取組もございます。
 しかし、さらに、こうした取組も含め、今後入学者の質の確保をどうしていくのか、というのをできれば議論いただきたいと思います。その際の検討の事項としましては、一番右の枠です。入学者の質の確保に関し、三つの観点で、これまでの取組状況をどう評価するのか、二つ目として、現在推進している方策について更なる改善すべき点はないのかどうか、また三つ目として、二つ目にある今取り組んでいるもの以外にも更なる新たな方策、そうしたものがないのかどうか、という観点で議論いただければと思います。最後に検討のポイントとして例示をしましたのは、まず一つ目の黒ポツ。入学定員の適正化が強く求められていますが、この促進のためにどのようなことができるのか、現在、入学定員と実入学者の乖離は約900人あるという状況です。また二つ目の黒ポツ。入学者数が著しく少ない大学、また入学定員を大幅に下回っている大学、こうしたところに対して一体どのような対応ができるのか、この辺りについて、御検討、御議論いただければと考えています。
 それで、二つ目です。(2)の修了者の質の確保ですが、ここは主な指摘事項としては、3点挙げています。一つ目の丸、共通的な到達目標の設定、アンダーラインにもありますように、全ての法科大学院における学修として、共通に必要な水準、ミニマム・スタンダードを定めるということで、ここにありますように、共通的な到達目標を超える到達目標を設定することを期待する、ということを提言されています。二つ目の丸にありますように、法学未修者教育の充実が挙げられています。この提言時には、アンダーラインの部分にありますように、各法科大学院が法律基本科目の単位数を6単位程度増加させ、これを1年次に配当できるようなことを可能にするようなことを取組・改善すべきであると御指摘いただいています。また、三つ目の丸、成績・進級判定の厳格化というところでは、アンダーラインにありますようにGPA制度を進級判定や修了認定において積極的に活用するということを提言いただいています。
 それについての主な取組状況は、例えば、一つ目の丸にありますように、実際、現在共通的な到達目標が示されていて、各大学がそれらを見ながらカリキュラムの編成をしていこうというような学科となっている状況もあります。また、法学未修者教育の充実で掲げていました法律基本科目の単位の増加については、必要な省令の改正等も行い、各大学で取組を進めていただいているような状況です。成績・進級判定の厳格化については、標準修業年限で修了する学生の割合というのが平成18年度は8割ほどいましたが、平成22年度にはそれが7割強にまで落ちてきており、厳格な成績評価が行われてきている状況にあると考えています。
 ただ、こうしたところの修了者の質の確保を更に図るために、先ほどと同じように、これまでの取組状況をどう評価するか、また現在推進している施策についての改善すべき点はないのか、また更なる、新たな方策というところはないのかというところで御議論いただけないかと思います。特に検討のポイントで挙げましたように、一つ目の黒ポツ、特に未修者の教育状況を改善するためにどのような取組があるのかというところ、また二つ目の黒ポツ、共通的到達目標の活用を推進するためにどのようなことが考えられるのかということ、また三つ目の黒ポツ、そういった教育内容目標等々の達成のための質の高い教員、これを確保していくためにはどうしたら良いのか、といったところを、御検討いただけたらと考えています。次に、2ページ目左端にあります、3番目の組織見直しの促進です。ここで大きく二つの丸で指摘しています。一つ目、入学定員の見直しやまた統廃合の促進ということです。提言にはアンダーラインの部分にありますように、自ら主体的に平成22年度の入学者からの入学定員の削減をするなど、入学定員の適正化に向けた見直しを個別に検討する必要があると御提言いただきました。その際、特に、小規模の法科大学院や、地方の法科大学院においては、他の法科大学院との間で教育課程の共同実施、統廃合を図ることなどを積極的に検討する必要があると提言いただいています。また報告ではありませんが、その他、更なる財政支援での見直しについても、中教審で御提言いただいています。その際には、法科大学院に対する組織の自主的・自律的見直しを促すために、法科大学院に対する公的支援の在り方も見直しを検討すべきだと御提言いただいたところです。
 その取組状況についてですが、入学定員は先ほど御説明しましたとおり、その後、進捗はしています。また、法科大学院について2校が学生募集停止を表明しているのが現状です。さらに、二つ目の丸、財政支援の見直しにもありますように、深刻な課題を抱える法科大学院については、自主的・自律的な見直しを促進するため、司法試験合格率、入学者選抜の競争倍率、いわゆる、入り口と出口について指標を設け、その促しを図るため、財政支援として国立大学であれば運営費交付金、私学であれば私学助成について減額を行うという取組を正に平成24年度の予算から行うという段階まで来ています。現在、その平成24年度の対象校は6校です。
 そして、こうした取組を進めていく中でさらに、組織見直しの促進、今までの取組の評価、また現在の方策、そして更なる方策について御議論いただければと思います。その際の検討ポイントとして、現行の財政支援の見直しについて、入学者選抜の状況等も踏まえて、新たな指標の設定などそうした更なることを検討する必要があるのではないかという観点。また、二つ目の黒ポツにありますように、この深刻な課題を抱える法科大学院に対して、共同教育課程の実施、統廃合を促すための新たな方策について、より具体的に検討することはできないのか、この辺りを審議いただければと考えています。
 そして最後(4)のところですが、評価システムの改善です。ここは主に提言事項として二つ挙げています。一つは認証評価基準・方法の改善。この提言を頂いた時には、評価方法の重点的な評価項目を挙げてはどうかという御提言を頂いています。例えば、適性試験の統一的な最低基準の運用状況、また、厳格な成績評価・修了認定の状況、教員の教育研究上の業績・能力、そして修了者の進路、司法試験の合格状況を含めてです。そうしたものを評価項目としてはどうかということを提言いただいています。また、不適格の認定については、先ほどの重点評価項目を踏まえ、評価基準・方法の見直しの必要を提言いただいたところです。また、二つ目の丸ですが、中教審によるフォローアップとしましては、フォローアップを行うための組織を本委員会に設置していただき、正に改善状況調査ワーキング・グループにおいて、実態を把握していただきながら、必要な改善を促していただいている、そうした改善を行うべきではないかという提言がありました。
 それに対して、現在の取組では、認証評価基準の方法の改善については、平成22年施行ですが、省令を改正し新たな評価項目の追加、また重点評価項目等の設定をしています。また、中央教育審議会にワーキング・グループを設置し、現在まで5回の調査を行っています。その他、随時、法科大学院に関して、御指導していただいている、そういった状況です。
 そうした評価システムについても、これまでの取組状況の改善すべき点、また新たな方法・方策がないのかどうか、検討の方向としては、先ほどの改善状況調査にもありましたが、特に大きな課題を抱える法科大学院を中心に、フォローアップを実施していくべきではないかという観点、また、修了者の進路状況の把握、また就職支援の取組等の強化について検討が必要なのではないかといったことについて御議論いただければと考えています。以上、たたき台として、事務局が用意させていただいた資料の概略を説明いたしました。
 また、これから検討いただくにあたり、資料4-2、参考データ等も整理しています。1ページ目からですが、1ページ目は司法試験の合格状況、2ページ目以降、志願者・入学者の状況、それから3ページ目以降、入学定員・実入学者の状況、そして、4ページ目として、修了者の状況ということで、全体のデータを付けています。
 また、5ページ目以降、未修者教育の充実について載せています。これは前回説明しましたので、割愛させていただきますが、入学者数の推移、1ページめくっていただきますと、標準修業年限修了者の状況、進級率の推移。また、8ページ以降、新司法試験の合格状況として既修・未修の別、また9ページ目には累積合格率、10ページ目には法科大学院の修了年度別の比較などもデータとして出しています。11ページ目には、未修者教育での観点でのいわゆる1年次での履修の状況。単位増加の状況や内容、それから未修者教育のための取組内容は12ページに載せています。13ページ目には公的支援の見直しについての概要。14ページ目以降には法科大学院修了者の進路の状況について、私どもで現状の調査を致しました。平成23年度10月末現在ということですが、各法科大学院修了者の年度ごとの推移を14ページのグラフで表しています。基本的には、司法試験の合格者、就職、新司法試験の受験勉強をされている方というのが、それぞれの年度にこうした形で分布しているという状況です。その後、15から17ページは各年度の詳細なデータも付けている状況です。
 以上このような参考データも使っていただきながら、正にこれからの法科大学院教育において、更なる改善について御審議・御検討をしていただければと思います。よろしくお願いいたします。

 

【田中座長】
 どうもありがとうございました。ただ今の説明について、御質問、他御意見ございましたらお願いいたします。また、事務局で整理していただいた資料を踏まえ、改善の方向性、そうした改善の方向性の実現に必要な施策、引き続き議論いただく必要な部分などがありますので、どなたからでも結構ですのでよろしくお願いいたします。

 

【有信委員】
 何か、絶望的になるのですが、それはちょっとおいて、質問させてください。具体的に教育内容であるとか、その他の見直しで実質的な修了年限内の終了者数が減少したという説明がありましたけれど、これは、後のデータでも大体平均では確かにそうなっているのですが、これは具体的に、例えば問題のある大学で大きく減少しているのか、全く問題のない大学も含めて減少しているのか。この辺の分析もあるのでしょうか。

 

【今井専門職大学院室長】
 すみません。現段階では総括的な表しかありません。そういったデータが出せるのかどうか、少し整理させていただきたいと思います。

 

【有信委員】
 こういう質問をしたのは、やはり、そうしたところがすごく重要だと思うのです。設置認可の際、結局設置認可の基準となるのは、いわゆる、外形的な基準だけで、外形的に条件を満たしていれば、これは認めざるを得ない。認めた後の質的な保証をどうやってするのかというところで、5年ごとに認証評価をする、こういう仕組みが取り入れられたわけですね。それで認証評価をする時も、しかし、当初の認証評価で散々問題が起きましたけれど、その結果、極めて形式的な基準のところでチェックをするという形になったために、それぞれの法科大学院の形式的な基準を満たしていれば、この認証評価上大幅に悪い点数をつけるということがなくなって、実質的なものがだんだん見えなくなってきています。
 今日の資料、全体の量だけで議論していますので、実は重要なのは、もともと法曹と言いますか、法務に関する業務、法務知識を持った人々の量的な拡大が必要だという、基本的な状況は変わっていないわけです。現実的な問題は、それが、例えば司法試験の合格者が少ないだとか、違う面で議論をされているようなところがあるような気がします。ここでの基本的な考え方は、入り口の基準と出口の基準とその間の教育の内容を具体的に議論しましょうということで、平均値を議論しているものだから、例えば、経済支援をどうこうというところで初めて特定の大学となって、その根拠も三つある。そうした意味では余り明確に示せていないというか、もっと量的な問題で、きちんと整理をすれば、それはそれで示せると思うのです。
 もう少し具体的に言ってしまうと、もともと必要な人材の量があるのであれば、そうした人材を養成できるところにたくさん入れて、そこを充実させてそこから本当に必要な知識、あるいは技量を持った人たちを輩出するような仕組みを作れば、その方が良い気がします。だから、一度設置認可したものを、なかなかつぶす根拠がないので、ちょっと極端な話ですが、つぶせないために予算も非常に苦労をしていると思います。
 一度、そうした、きちんとした育成ができるところを充実させて、そこである程度の量の人たちをきちんと教育をして、その教育内容についても、もう少し見直し、教育訓練が充実するようなやり方を基本的には考えるべきかなという気がしたのですが。

 

【井上座長代理】
 今の御発言はもっともな御意見ですが、途中で言われた公的な財政支援につきましては、明確な数値を示し、かつ、個々の法科大学院ごとのデータを単年度ではなくて複数年度にわたって取りまして、やっていますので、そうした意味では明確であると思っています。
 例えば、修了率や進級率についても個別のデータを取っており、おっしゃるように、認証評価で不適格だとか、設置を取り消すというところに行くまでの根拠にはなり得ないでしょうが、成績評価や、進級・修了の認定の在り方等、出口の質の問題に直結しますので、そういった点で問題があると思ったときには、我々の方から申し上げてきており、そこはかなり改善されつつあります。
 一般的にも、GPA制度を導入したり、進級・修了認定がかなり厳しくなっている上、問題があって特に改善を要するところで、かなり大胆な数字を出しておられるところもあります。ただ、そういった改善の取組が、結果としてアウトプットのところに結びつくのかどうか、いまだ分からないというのが現時点での状況だと言えます。

 

【永田委員】
 最初に指摘された修了率や進級率については、それが、どういうふうに推移してきているかと言いますと、まず、受験者の合格率を基礎に、次に各年度の修了者の合格率をデータとして求める、さらに、直近の修了者の合格率をデータとして求める。そうしたことをしますと、まず、問題のある法科大学院は修了をなかなかさせないという方向に動く傾向にあります。
 それから、もう一つはやはり、先ほどのデータに明確には出ていませんけれど、入学定員が守られていない、あるいは半数以下、入学者の実数が一桁という法科大学院が相当数あり、授業を行う適正規模が得られないという状況にあります。しかし、おっしゃるように企業でしたら、その事業を止めるのですが、大学経営の特殊なところなのか、なかなかそうした方向に動いていません。法曹養成の仕組みとしては、法科大学院制度全体としても、極めて効率的でない状況にあると言えます。

 

【有信委員】
 ありがとうございます。大分理解できました。ただ、私が感じるのは、他のところもそうなのですが、やはり、共通に全てを論ずるというのは、もうそろそろ限界で、上位校・下位校という言い方を避ける訳にもいかないと思います。もうそろそろ、具体的に絞り込んでいかないと、ある意味で、入ったところでそうしたことが見えないまま、ある程度見えているのかもしれませんが、学生の利益ということを考えれば、明確にしてあげないと、学生のためにもならない。

 

【井上座長代理】
 踏み込んだことを言うのは遠慮していたのですが、正に今、御指摘のとおりで、全体的な状況としては二極化がかなりはっきりとしてきています。そして、今、社会のいろんな方面から法科大学院に対しては問題点が指摘され、非常に強い批判が浴びせられていますが、それが、そのような二極化を度外視して全体に当てはまるものかどうかは疑問とする余地が大きいように思っております。
 我々のワーキング・グループの報告でも、大多数の法科大学院は質の確保・向上のために懸命に努力しているということも書いてあるのですが、そこにはほとんど目を留めてもらえず、マスコミの報道などでも、問題があるというところばかりに、焦点が当てられます。確かに、問題のあるところは問題もあり、我々も厳しく指摘しているのですが、どうも全体の議論が後ろ向き一方になってしまって、きちんと実績を上げているところは間違いなくあるのに、その面は見過ごされてしまっている。その面をもっと強調し、さらには伸ばしていくような議論をしていかないと、非常に歪んだ議論に陥ってしまうのではないかと思います。

 

【田中座長】
 今、井上委員がおっしゃったように、全般的に法科大学院システム全体が悪いような評価をされているところがありまして、確かに問題のあるところを集中してチェックするということは大事なのですが、そろそろ、チェックして改善して良くなる可能性があるのかどうかという問題と、まずまずの成果を収めている法科大学院について、それを更に伸ばすためにどのような支援が必要かという問題を少し分けて考えないと、議論がますます歪んでいくのではないかと心配しています。問題のある法科大学院をどうするのかということばかりに関心が集まった結果、まずまずの成果を収めている法科大学院の実績がきちんと評価されず、法曹養成制度全体の改革が順調に進んでいないのは、法曹の職域拡大などが予想どおりに進んでいないことによるところが大きいことなどを視野に収めた議論が、きちんとなされていない観があります。司法試験の合格者数をめぐる議論などを見ていても、法科大学院の教育内容を充実させて法曹の職域拡大につなげていくというような発想が欠落してしまっております。まずちょっと、全体的に法科大学院の現況のデータ分析がネガティブな面に偏っているところがありますので、ポジティブなデータもきちんと集めて、法科大学院の実情をバランスよく示す必要があるのではないかと思っています。それをやらないと、法曹養成制度全体の建設的な改革論議につながっていかないのではないかという感じです。

 

【有信委員】
 そのとおりだと思います。それから、要するに、法律に関わるというか、もともと足りないと言われていた人たちの働き口というか、活躍する場所が十分にはないという気がしますけれど、これも実際にないわけではなくて、ある意味で産業サイドの要求との接続の部分で、実はきちんとした接続が十分にやりきれていない、そこのところにミスアライメントがあるという部分もあって、その辺は実は法科大学院で教えていること自身と、例えば産業サイドで要求している実務的な知識との間にそもそもの差が実はあるわけで、こうしたことは実際にはどこにフォーカシングをして、専門的な法律家を養成していくのかということを本当は考えなくてはいけないという問題があります。
 それは、教育の内容に関わることなので、余り十分には協議できないのかもしれませんが、そうしたことを頭に置きながら、井上委員が言われたように、やはり強いところを少しずつ強化していくというか、十分にそうした人たちを養成できるところを、例えばバリエーションを増やすなり、あるいは強化をするなりと、良いところにリソースを重点的に配分することで、いわば、良い例、先例をどんどん作っていくことが良い方向だと思います。
 悪い方向だと、何とかしようと思っていろいろと言っていても、結果的に足を取られてしまって、本当に良い学校が、逆に足を取られるということになりかねないというのを心配しています。

 

【常盤高等教育局審議官】
 正におっしゃるとおりで、法曹養成の問題については、法科大学院の問題もありますし、法科大学院の修了者、それから法曹資格を取った方の職域の問題をどうするのか、というようなことが含まれて、非常に広範な問題があると思います。
 その点については、文部科学省、法務省、それから4省庁が参画をして、政府全体で法曹の養成に関するフォーラムという会合が設けられていて、その中で検討しているというのが全体の状況ですが、是非この法科大学院特別委員会においてもそうした幅広い視点で議論いただく機会を設けられたら良いなと思っています。
 また、法科大学院に絞って議論をするということにしたとしても、その中に先ほど来、お話がありますように、着実に実績を上げて成果を上げているという法科大学院も非常に多くあるわけです。ただ一方で、そうして着実に成果を上げて伸ばしているところを支援したり、その成果を広く共有していくかという問題はありますが、一方で、かなりばらつきが、はなはだしくなっているというのが状況としてあります。先ほどまとめていただいた改善状況調査の結果でも、31校に対して、そうした課題を指摘するという状況です。その中で特に課題の大きな6校については、今、財政支援措置の削減ということもしていますが、その6校だけで良いのか、現実の問題として言うと、ここで問題としても出ていますけれど、入学定員と実入学者の乖離がもう900人ということなので、大学によっては入学定員が充足していない、かなり大幅に充足していないという大学もかなりの数がある訳です。
 そうした点も視野に入れた上で、有信先生の御言葉を借りると、一律には議論できないので、そうした課題のあるところに対してどうしたらいいのか、課題のないところに対してどうするのかということについて焦点を絞った議論をより深めていく必要があると思います。それで、ここで諮っていますのは、これまでは課題のあるところについて、具体的な措置を取ることによって質を改善し、全体としての法科大学院制度に対する一種の信頼というのでしょうか、そうしたものを獲得していくための手立てを講じてきたわけですが、それについて、今申しましたように、ばらつきが非常に広がっている中で、課題のある学校もある意味増えている中で、もう一歩深めていく必要があるのではないかという問題意識で、今日は進行をしている状況です。

 

【有信委員】
 分かりました。

 

【永田委員】
 改善の実効性が見られない法科大学院については、その改善状況を見守る、そのうちの一部の法科大学院については、かなり重点的にフォローアップを行う、そういうような形で多くの先生方の協力を得て調査を進めてきました。確かに、これまでのワーキング・グループの調査は重要であり、また、法科大学院の質の向上にとって効果的ではありましたが、しかし、そのエネルギーを改めて集約して、法科大学院全体の問題解決のために、むしろ前向きな方向の議論を進めていただきたいと思っています。ワーキング・グループの所掌事項ではありませんが、最後に、ワーキング・グループからの要望としてお伝えいたします。

 

【田中座長】
 他にこうした点にもっと重点を置いてここを修正したら、というような御意見がありましたらどうぞ。

 

【磯村委員】
 資料4-1の1枚目の未修者教育の充実の問題で、この問題が取り扱われた時も既に議論となった点であるのですが、この問題は、現在の対応は、法学未修者の1年次にどう積み上げていくのかということなのですが、恐らく、その段階での発想は、法学未修者が1年終わった段階で、大部分の法科大学院では既修者の入学者と同じ授業を受けるので、その時点での底上げが必要であるということであったと思います。しかし、今の未修者問題は、1年次だけではなくて、更にフォローアップしていくという体制が必要なので、カリキュラムをどう軌道修正していくのかを議論するときには、恐らく、2年次以降の在り方についても考える必要があります。同時に、かつての法学既修者と今の法学既修者のレベルが同じか、あるいはどれくらい違っているかということも併せて、制度設計を考えていく必要があるのではないかというように感じています。
 それから、もう一つは、先ほど有信先生がおっしゃった、成績の進級判定の厳格化なのですが、確かにこれはマクロ的な数字なのですが、私は、法科大学院協会へのアンケートとか、あるいは、認証評価で関わってきて、当初は、従来の法学部の意識が必ずしも脱却できない形での成績評価が多かったのですが、これは全体としては明らかに改善方向に動いているというように思えます。とりわけ、GPA制度を導入する法科大学院が増えてきて、例えば可ばかりを並べて、単位数を揃えて進級できるかというと必ずしもそうではないという形で、ここのところは意識改革も出てきていて、逆にそこの危機意識を持っていないような、一定の法科大学院では、例えば優を半分に与えるとか、そうした状況が突出した形で残っているというのが現状ではないかと思います。

 

【鎌田委員】
 今の磯村委員のお話と重なるのですが、私どもの大学では、もともと1年から2年への進級制で一定の合格単位を取らなければ進級できないという制度を始めたのですが、その次には、全科目単位が取れても一定以下の成績なら、全科目取り直しというようにしてきました。それを更に、2年から3年に上がる段階についても同じ制度を入れる、こうして進級要件をどんどん厳しくしてきています。
 それには幾つか理由があって、本学は95%以上が未修者でしたから、未修者の場合には入り口の段階で、将来の法的能力を見通すことは難しいわけですから、入り口で絞るよりも、出口で絞るのが良い。それが、本学の理念であって、その部分を切ってしまっては法科大学院教育の意味がないということ。それから、もう一つは、法科大学院での学内での成績と、司法試験の合格率との相関関係が極めて高いということです。それで、学内の成績の悪い人を進級させて卒業させていくということは、これは、大学院としても許容しがたいということ。それと、もう一つは、今、磯村先生のおっしゃったこともあるのですけれど、未修者が1年間で既修者のレベルに追い付こうというのは、非常に難しい人の比率が高いです。そうすると、基礎がきちんとできていないのに、上に積み上げても無理だということで、1年の基本科目ができない人はもう一度基本を学び直してもらうのが、本人のためにもなるということがあります。それを拡大していったのが、かつての未修者問題でしたけれど、現在は既修者問題というのは起きていて、かつて、司法試験を大学中に合格しようとしている学生集団が大勢いた時期から、今はいなくなってきている。他方で定員の削減で、多くは未修者定員を削減しましたから、相対的に既修者が入りやすくなっている。そうなると、既修者試験で合格した人のレベルは確実に低下しているわけですので、その分のフォローが非常に重要になってきています。そうした意味で、1年から2年だけでなく2年から3年への進級判定を厳しくしていく責任を負っています。ただし、これが幾つか問題を起こしていて、現実に入学試験の合格者から言われたことですが、早稲田に行くと所定の年限で卒業できないからよそへ行くという形で、これを厳しくすればするほど、入学者を遠ざける。そうした意味では、全てとまでは言いませんけれど、法科大学院が足並みを揃えて進級判定を厳格にするか、我々が努力してどれほど厳しくてもそれを上回る魅力のある法科大学院になっていくかしかないということが一つです。
 それともう一つは、これが学生にとって酷だと言われるのは、現在の奨学金の制度でいくと、所定の年限で卒業できないと決まった途端に、奨学金がストップするのです。そうなると、そんな犠牲を強いれるのかという、学生の生活への影響も、数は少ないかもしれないけれど、考えなければいけないと。それでも、そうした意味での進級判定の厳格化、修了者の質の確保はやっていかないと、法科大学院制度自体の根幹に関わるというふうに考えています。そうした我々の努

力も、数値の変化には反映していると言えるのではないかと思います。

 

【井上座長代理】
 未修者問題は極めて深刻で大きな課題であり、例えば司法試験の合格率を見ても、既修者と未修者との間の格差はますます歴然としてきています。その原因としては教育システム上の問題もあると思うのですが、それだけではなく、司法試験の在り方というものも関係しているようにも思っています。新しい法曹養成制度の下で、どういう人を法曹として求めているのかというところが、新制度への移行に応じて、適切に見直され変わったのかどうか、そこは従来どおりの考え方が無反省に維持されたままなのではないかということも検証してみなければならないと思うのです。それは、この委員会のタスクではなく、法曹養成フォーラムなどでそうした角度の議論を突っ込んですることになるでしょうが、同時に、未修者に対する教育そのものの問題としては、磯村委員が言われたように、これまで、1年次のカリキュラムとか単位数などを手厚くすることによって、改善を図ってきたのですけれども、もともとのそもそも論においても、既修者と未修者を一つの課程でまとめて教育するという仕組みが絶対だということで作ったわけでは必ずしもない。むろん、そのときにあり得た選択肢の中でこれが良い案だと考えて作ったのですけれども、実施後の実情を踏まえて、不断に見直していくという前提ないし、共通の理解に立っていたと思います。全体の仕組みが何かおかしいのに、一部だけ手当をしても問題が解決できるものではないかもしれないわけで、かなり大胆なことを目しますと、そうしたところまで視野を広げて議論をしていただくことが必要かもしれないと思うのです。
 もう一つ、一くくりに「未修者」と言っても、実態としては法学部出身者が多い。むろん、個々の法科大学院によりかなり差異があるのですが、そうした点にも踏み込んで、きめ細かく分析していく必要があると思っています。
 これらは、改善状況調査のワーキング・グループでは、とてもできませんので、本委員会全体でやるのか、別のワーキング・グループでも設けるのか、あるいはそれ以外の形を取るのか、そうしたことを含めて、早急に決定し取り組んでいただくべき段階に来ていると思われますので、よろしくお願いいたします。

 

【永田委員】
 少し広がりますが、今の未修者というのは法学部卒で、未修者というのはそうそう多くない。一方で今、磯村先生の話にありましたが、既修者の方はすそ野が広がって合格しやすくなっている。そうするとどうなっているかというと、既修者枠で入れなかった者が、未修者枠で入ってくる。しかも、そこは法律の試験をしないということで、法学部での学習に十分に成果が上げられなかった学生が、未修者として入ってくる状況があります。そうした意味でますます、未修者としての合格率が下がる。ということは、法学部教育は、この法科大学院の制度で、かなり軽量化してしまったというところで、今後、もう少し法学部教育を充実させる方向に合わせる、こういうふうな視点がいるのではないかと思います。18歳でフレッシュな学生が正に弁護士志望という時に、大抵は既修者枠で入れると、そうでなくても未修者で入れるという弛緩した状況が4年間続いて、そして法科大学院に来るというのは、非常に僕はもったいないなと思う。前段階に入るのにまた試験勉強という、その青春の過ごし方が良いとは思いませんけれど、本当に学部での緊張感というのがかなり薄らいでいて、それが法曹全体の資質に影響していることがあるとすれば、この辺りも我々のタスクではないかもしれませんが、検討する、そういう時期ではないかと思います。以上です。

 

【長谷部委員】
 今、永田委員がおっしゃったことと同感なのですが、その前の鎌田委員の御発言にもありましたように、既修者として入学してくる学生に、学部から直ぐに来る学生が多くなっているために、学部時代にどのくらいのことを勉強できていたのかということが、法科大学院での教育の質に非常に影響するという状況です。
 その関係で、共通的到達目標として非常に詳細なものを作っていただきましたが、その活用法として、学部の授業の担当者にもこれを見せて、法科大学院では最終的にはここまでいかなければならないので、学部の段階では、ここまでは教え込んでおくというようなことを、そちらで少し検討していただくという、そうした共同作業が必要なのかなという気が致します。
 共通的到達目標に挙げられた項目は大変詳細ですので、項目によって基礎から応用までいろいろな段階があると思います。既修者の中の法学部出身者のほか、未修者でも法学部卒の未修者もおりますし、他学部出身者であっても、法科大学院に行く以上は、基礎的なことは入学前にマスターしておこうというそういう気持ちを持って入ってきていただきたいということがあるので、入学前の勉強というのはやはり重要なのだと思います。とりわけ、入学試験の時期がかなり早くなってきていますので、合格が決まってから入学までの時期に勉強しようと思えばできるはずです。その期間を、上手く活用できるように、共通的到達目標の活用を、そうしたところを考慮に入れた上で、何かできれば良いなと思います。以上です。

 

【田中座長】
 未修者と既修者の入学者選抜の枠の問題と修業年限の問題は、なかなか制度上も難しい問題でして、さっき鎌田委員がおっしゃった未修者の修業年限を、最低何年と規定し、長期延長した場合に、例えばその期間は奨学金も延長するとか、何かそういうふうな工夫をして、修業年限を弾力的にすることは、専門職大学院の特質への対応として何か考えるべきだと思います。そうなると、司法試験の受験資格の問題とか、またいろいろ難しいところはあるのですけれども、当初想定していた未修・既修の区別と、磯村委員が指摘された未修・既修の区別と何かずれてしまっているところがあるので、それは少し整理する必要があるのではないかと思います。

 

【日吉委員】
 今、田中座長がおっしゃったことと、ちょっと関係すると思いますが、前回お示しいただいた資料で、私も非常に気になっている数字がありまして、これが、資料4-2の8ページ、新司法試験の合格状況、既修・未修別というところですが、これを、未修者の法学部出身者と非法学部出身者を見ていくと、最初の3年は、非法学部出身者の合格率が高い、平成22年からはかなり極端に低くなっていて、3%ぐらいの差が常につくようになっています。今後どうなるのかは注視されるところですが、恐らく、これの示すところは、先ほど鎌田委員もおっしゃったように、評価はどんどんきちんと厳正にされるようになっているので、その中でも最初の3年は非法学部出身者が、そこそこの合格率が取れたにもかかわらず、最近の2年が極端に落ちているということは、思うに先ほど来出ている、ある種の広報が下手なのか、問題だけが前面に出るのかは分かりませんけれど、前年度数が恐ろしく減っているということとあいまって、いわゆる、入学試験を受ける段階の質の問題が非常に大きいのではないかというふうに思います。
 そうしますと、今日示していただいた検討事項というところなのですが、1番の入学時の質の確保と2番の修了時の質の確保というのとを、別建てで考えるというのは、今までの最初の段階でいう、そこそこの母数が集まってそこから各法科大学院がかなり余裕を持って質を問題にしながら選別していく、なおかつ教育の課程でも厳正に評価をして、そして、最後の修了者の質も確保していける、というある程度恵まれた状況であれば、章立てと言うのか、この方法で良いし、恐らく理想的にはそうした状態に持っていきたいというのがここの全員の願いだと思います。
 ですが、今の状況でいきますと、先ほど来のデータから見ても、この1の入学者の質の確保と2の修了者の質の確保というのは、多分、一緒に考えざるを得ないというのでしょうか、全体で考えていかざるを得ないのではないでしょうか。そうしますと、先ほど来、鎌田委員から出ておりますが、入学試験で恐ろしくボトルネックのように締め付けてしまって、果たして今の状況で、適性な人間をきちんと質を確保するというまでのことができているのか、今後できていけるのかという問題。それとは別個に進級判定も厳格化して、最後の修了者の質の確保を図ろうということを、別個の縦割りの状況で考えると恐らく成り立たないのではないかと。今の状況ですね。少なくとも現状は、その時期は過ぎてしまっているのではないかと、ちょっと心配するところがあります。その根拠は先ほどのデータが示す数字ということになります。ですから、分かりませんけれど、先ほど井上委員も、少し大胆なところまで踏み込まなければいけないと、田中座長もおっしゃいましたけれど、私もやはり、それでは3年というのは果たしてどうすれば良いのか、集め方、入学者の選別の仕方というのをどうすれば良いのか、その後、リンクする形で、各進級をする段階でどういうふうな判定の仕方をして、最終的に修了者の質を確保していけば良いのかということを、総合的にもう1回考え直す必要が現時点ではあるのではないかというふうに考えています。以上です。

 

【井上座長代理】
 我々も現場に行ってみて、いろんな支障があると感じており、全く同感です。ただ、我々としては、最初の入り口のところで幾つかのチェック項目があるわけですが、それがボトルネックになるとは思っていません。これはもう本当に最低限のことなので、これをクリアーしても、それで十分だということではないのです。
 結局のところ、各法科大学院それぞれにおいて、実質的に良い人を取るようにしなければ駄目ですし、そこでそのように努力しても、入り口のところでは分からないことが多いので、不適合な人も必ず一定数は出てくる。そこはやはり、教育のプロセスを経ることによって、適合性を見分けていかなければならない。そういったことが図られているかということなどとも連動させて見てきたつもりです。単にいくつかの数値的基準のみによりブツブツと切っていっているのではなく、あくまで実質を見ようとしてきたのですが、それらの数値も意味がないわけではなく、問題があるところでは、それらの数値にも表れていることが多いというのが、我々の共通した実感だと言って良いと思います。

 

【鎌田委員】
 未修者の合格率、特に非法学部系の未修者の合格率が急激に下がっているという要因はいくつもあると思われますが、もともとある程度あった母集団の性質が当初とは変わってきたということを無視できないのですが、一つは、入学者は少しずつ減ってはきているのですが、司法試験の受験者は増えています。どんどん溜まっていきますから。それで、合格率はどんどん低くなっている。そういう意味でも司法試験の合格率は低下している。そうした中で、現在の司法試験の幅広い科目の詳細な知識量の差というのが、そこの競争の激しさが以前よりもはるかに強くなり、法学になじんだ人の年数が短い人にとって不利に作用してくる部分があるのではないか、というふうに思っています。
 こうした現状の下でどうするのかということを我々は当面考えなくてはいけないことは確かだと思いますが、それが先鋭化して、法学部4年プラス法科大学院2年が標準形態という方向に進んで、それに即効性がありますから、定員削減でも多くの学校が、未修者を削減した。卒業後の新司法試験と合格率の相関を持っているのは法律の試験ですから、法律科目の試験をして法律のできる人を入れるのが、一番即効性があるということです。これは最初の司法制度改革審議会の意見書が想定した将来の法曹の在り方というものと比べると、逆行している要素というものがあって、それのどこに根本があるのか、いろいろな考え方をみると、やはり司法試験の合格者数を弁護士の就職状況との関係で決めていくのかとか、司法試験の科目、内容とか、合否判定とかをどういう法曹を思い描いて決めていくのかという議論が必ずしも十分に尽くされているとは思われない。法科大学院の志願者数や入学者数の減少という傾向の中でどう対処していくのかという問題と別に、将来的にどのような法曹を描いてそれに相応しい教育と試験の在り方というのを考えていくということが必要ですが、これは、むしろフォーラムなどでするべきことかなと思います。
 それを見て行かないと、今年の司法試験の合格率はもう少し厳しくなり過ぎてしまうという懸念もなくはないと思います。

 

【田中座長】
 もうそろそろ時間になりましたが、いろいろ御議論いただいたので、改善の方向性について、特別委員会としての提言を行う必要があるのですが、提言にあたってもう少し揃えたいデータとか調査をする体制の検討も必要だと思います。
 今日いろいろとお伺いしたことについて少し整理させていただきたいと思いますが、私と座長代理と、改善状況調査ワーキング・グループ主査を中心に、事務局と相談して、どういう体制にするのか、どういう方向性でまとめるかということを少し検討させていただいて、改めて提案したいと思います。
 本日予定した議事は以上ですが、事務局からは何かありますか。

 

【今井専門職大学院室長】
 どうもありがとうございました。次回につきましては、日程の調整をして、改めて連絡させていただきます。

 

【田中座長】
 どうもありがとうございました。それでは、本日はこれで終了させていただきます。

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