法科大学院特別委員会(第36回) 議事録

1.日時

平成21年12月3日(木曜日) 18時~20時

2.場所

文部科学省 東館3階3F 1特別会議室

3.議題

  1. 共通的な到達目標の検討状況について
  2. 第3ワーキング・グループの審議状況について
  3. 認証評価の見直しについて
  4. その他

4.出席者

委員

(専門委員)磯村保、井上正仁、稲田仁士、小山太士、笠井治、笠井之彦、鎌田薫、土屋美明、椎橋隆幸、永田眞三郎、長谷部由起子、松村和徳、山本和彦 の各専門委員

文部科学省

小松高等教育局審議官、澤川専門教育課長、浅野専門職大学院室長、小代専門教育課課長補佐

5.議事録

【井上座長代理】
 所定の時刻になりましたので、第36回中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会を開催いたします。本日は田中座長が所用のため欠席されていますので、座長代理の私が進行を務めさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。それでは、まず事務局から配付資料の確認をお願いします。

【浅野専門職大学院室長】
 配付資料の確認をさせていただきます。
 資料1といたしまして、前回の議事録案でございます。それから、資料2といたしまして、本委員会報告を踏まえた各法科大学院における改善状況についてということで、第3ワーキング・グループの経過報告について配付をさせていただいております。それから、机上配付資料として、資料2の別表で、個別の各法科大学院の状況の資料を配付させていただいております。それから、専門職大学院設置基準及び学校教育法第110条第2項に規定する基準を適用するに際して必要な細目を定める省令の一部を改正する省令案の概要を机上で配付させていただいております。それから、法学未修者1年次における法律基本科目の6単位増についての案、これも机上に配付させていただいております。最後に、法科大学院の共通的到達目標のイメージを配付させていただいております。

【井上座長代理】
 過不足等ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、まず議事の第1番目、「共通的な到達目標の検討状況について」から始めさせていただきたいと思います。第2ワーキング・グループの主査である磯村委員に、共通的な到達目標に関する現在の審議状況についてご報告していただきます。よろしくお願いします。

【磯村委員】
 それでは、机上配付資料、法科大学院コア・カリキュラム共通的到達目標イメージの資料をおめくりいただきながらお聞きいただきたいと思います。現在、各研究班で、公法系、民事系、刑事系及び法律実務基礎科目系について、それぞれコア・カリキュラムとしてどういうものがあるかということを検討し、ほぼその第1次案が固まりつつあります。このうち民事系では、民法について相続法の部分が現在作成中であり、商法については会社法が全部整いましたけれども、商法総則、商行為の部分がまだ一部残っているという状況でありますが、全体としての分量がこれぐらいというイメージはこれで十分おわかりいただけるのではないかと思います。民事系の項目、とりわけ民法、商法の項目が非常に多くなっておりますが、1つには、民事系全般についてですが、コア・カリキュラムが2種類に分けられておりまして、これは確実にコア・カリキュラムに属するものであろうというものと、それから、場合によっては含まれ、場合によっては含まれないという、そういう可能性のあるものも上げております。しかし、例えば民法について言いますと、50~70ページぐらいにわたっておりまして、概算ですが、1ページ20項目とすると1,200項目を超えるというような状況であります。しかし、例えば民事訴訟法について、大体これも400項目ぐらいですが、法科大学院の中での配当単位数等々を考えると、それであり得るのではないかということで、ワーキングの中では、この分量の査定でそれなりに意味があるのではないかということで検討してまいりました。
 案の基本的な考え方は、既にこの特別委員会でも取りまとめられましたものをベースにしております。要するに、法科大学院の修了時点でどの法科大学院においても共通に設定される到達目標を修了生は満たしているということを念頭に、しかし、実際に授業でそれを取り上げるかどうかということは、その都度法科大学院の裁量に任せられている。しかし、ワーキングの中で実際の感覚として大体この項目の恐らく7割程度は少なくとも授業で取り上げることができるのではないかという認識で一致しております。
 幾つかの問題点が残っておりまして、目標設定を定めるというときにどういう書き方をするかということで、例えば「理解できる」、あるいは「説明できる」、「具体例に即して説明できる」等々の書き方は各系においてなお調整が必要です。それから、より大きな問題になるかもしれませんが、一つ一つの項目に随分重みの違うものがあります。非常に重要な原則であるが、個別的な問題と並んでいるというようなことが、それほど意味があるのかどうかということで、例えば、項目の中にある種の段階づけをすることも考えられるのではないかという意見も出ているところであります。
 それから、どこまで具体的に書くことができるかということですが、抽象度を上げれば項目数も減り、カバーする範囲が広くなるわけですが、そうすると、そこでは何が期待されているかということが、到達目標として見えなくなるという面があります。しかし、他方で、余り具体的に書くと、数だけが増え、かつ知識ベース的な聞き方をしていると受け止めかねられないような状況もある。このあたりのところを含めて、現在、体裁の統一を図り、私どもとワーキングと、共同で検討をお願いしております法科大学院協会のカリキュラム等検討委員会でご議論をいただいて、できれば今年中に第1次案を確定し、関係の機関からご意見を頂戴するということを目指しております。最終的には、来年の2月の後半ぐらいに案を策定し、3月に予定されておりますシンポジウムで最終的に公表するということを予定しております。 若干コア・カリキュラムとやや外れる問題ですけれども、現在、公法系訴訟実務の基礎というものがどういう位置づけを持つかということが議論となっておりまして、その点についても検討しているということをつけ加えさせていただきます。

【井上座長代理】
 ありがとうございました。
 以上のご説明につきまして、ご意見あるいはご質問等がございましたら、どなたからでもご発言ください。

【笠井(治)委員】
 前回、磯村委員からご説明がありましたスケジュールの中に、総論的なものを含めてまず第1次案でまとめるというふうに記載があったかと思うんですが、その総論的なものというのは、いつごろまでにどのような内容のものをお考えなのですか。

【磯村委員】
 総論の部分についても、第1次案を公表する前の段階で取りまとめたいと思いますが、個別的なものと並行してまずたたき台案を作り、各分野の主任の先生方と調整をし、作業に関わっていただいている先生方全員にご意見を頂戴した上で公表するということにしております。

【笠井(治)委員】
 各系すべてを共通にするような内容のものだと伺っていますが、その他に今ご説明になりましたように、例えば段階付けにするというようなことについても、その解説が入るということですか。

【磯村委員】
 まず第1に、考え方をどうとるかということが一番重要で、そういう総論の部分が一つあるかと思います。それから、ご参考までにコア・カリキュラム案の43ページの資料を見ていただきますと民法の中で割と総論的な性格のある部分をまとめておりまして、例えば司法とはどういう法分野を意味するかですとか、あるいは法の体系というのはどうなっているかというような個別的な項目ではカバーできないような問題点についても拾い上げるということをしています。こういうものが、各法律基本科目あるいは法律基礎科目を含めてかなりの部分あるのではないかと思いますので、そういう法的な考え方等々について、例えば裁判所で民事系や刑事系はどういう手続で行われるかというような基本的なコンセプトの問題は、総論的なところで取り扱うということもあり得るように思います。しかし、これも少し書きながら考えるというところもございまして、それぞれの総論的な部分というのは、それほど大きくならないのではないかと思いますが、もう少し作業を進めて検討させていただきたいということでございます。

【笠井(治)委員】
 わかりました。

【井上座長代理】
 ほかの方はいかがでしょうか。

【松村委員】
 今のご説明ですと、この項目をどう取り上げるかどうかというのは、各大学に任せられるという形になっておりまして、共通項目という意味合いと少しずれてくるところがありますけれども、重みの違い等を段階付けるという意見も出ているとお話がありましたが、そもそも民事としてコア・カリキュラムを考えたときに、私自身がイメージしていたのは、一定の項目があった上で、どこに時間を多くかけるかという重点化が一つコアの意味合いかと思ったものですから、その部分は今後どういう展開になるのでしょうか。、

【磯村委員】
 基本的な考え方として、そもそも授業で取り上げる内容かどうかということは、コア・カリキュラムの内容では意識しておりません。自学自習の部分も含めて、各法科大学院でどの部分を授業で集中的に取り上げ、どの部分を自学自習に考えるかというのは、それはまさに裁量判断の問題だと考えております。重みをつけるかどうかという話は、これは必ず要る、これは必ずしも要らないという発想ではなくて、むしろコア・カリキュラムというのは全部要るのですけれども、1、2と並んでいる中で、その1と2の重みが違うという趣旨をメッセージとして伝えるということが必要かどうかということを検討するういう趣旨でございました。

【松村委員】
 授業時間も、従来の法学部から見るとかなり狭まってきているということと、もう一つは、自学自習は、特に未修者は一定での時間をかけてやりますので、そういった面では少し比重をつけるというほうがわかりやすかったものですから、質問をさせてもらいましたけれども。

【井上座長代理】
 もともとこれは、学生がどこまで到達できているべきかという考え方で、それを授業でやるのか自学自習でやるのか、しかも授業でやる場合もどの年次で、どのくらいの単位で、どういう内容でやるのか。それは各法科大学院あるいは教員の創意工夫という位置づけで始まっているものですから、それを前提にご理解いただきたいと思います。これは体裁や各ページのバランスをとって12月に第1次案を確定するということですか。

【磯村委員】
 まず、体裁については、例えばフォントをどうするかということは、もちろん統一をとりたいと思います。それから、分量の相違については、ワーキングの中では、十分許容範囲ではないかということで、もう一度確認をする予定ではおりますけれども、個々の部分での大きな調整というのは必要ではないだろうと思います。どういう目標設定の表現を使うかということが、さらに調整が必要な部分として残っているかと思います。

【井上座長代理】
 ほかにご質問、ご意見がございませんでしたら、次の議題に移りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、次の「第3ワーキング・グループの審議状況について」で、第3ワーキング・グループの主査である永田委員より、現在実施中のフォローアップに関する審議状況についてご報告いただきたいと思います。よろしくお願いします。

【永田委員】
 第3ワーキング・グループの主査を務めております永田でございます。この第3ワーキング・グループでは6月5日の法科大学院特別委員会でご説明いたしましたとおり、各法科大学院と連携協力を図りながら、各法科大学院の現状、改善計画とその進捗状況についてフォローアップを行っております。現在、調査・分析を行っているというところですが、本日はその進捗状況につきまして、資料3に基づいてご説明いたします。
 これまでもご説明してきましたとおり、本ワーキング・グループでは、各法科大学院のご協力により提出いただきました改善計画の内容を確認いたしまして、入学者選抜における競争倍率が低いなど、今後、入学者の質の確保がさらに困難となることが懸念される。それから、新司法試験の合格者数が著しく少ない、または合格率が平均の半分未満の状況が継続しているなど、修了者の質の確保に早急に取り組む必要がある。現状分析が不十分ではないかと懸念する。そして、改善のための取り組みが不十分ではないかと懸念する。またはその改善計画の内容が不明確である。この4つの観点に該当する大学についてヒアリングを実施しました。
 その結果、法科大学院の現状や改善のための取り組み等をより詳細に直接確認する必要があると考えた法科大学院につきましては、在籍中の法科大学院生との面談や授業見学等の実地調査を10月より順次実施しているところでございます。ヒアリング及び実施調査の対象校につきましては、机上配付の個別法科大学院の状況の別表で、右側の位置にそのチェックを上げているものがその対象となっているということでございます。
 一方で、現在実施中の平成22年度の入学者選抜で競争倍率2倍を大きく下回る結果となっているおり、入学者の質の確保が困難になるのではないかと懸念される法科大学院について、一部の科目の定期試験問題及び答案を確認した結果、学習到達度の測定や厳格な成績評価の確保の運用に改善の余地があると見られる法科大学院も幾つかありました。
 また、これは例外でありますが、司法試験予備校が実施する通信教育による試験対策答案講座を学内で行い、その受講費用を大学として負担し、学生に受講を推奨しているというような法科大学院も1校ございました。
 こういう状況ですが、今後は実地調査を軸にするとともに、個別の法科大学院ごとの分析を含めた調査結果全体の分析をワーキング・グループで進め、その結果を取りまとめ、本委員会に改めてご報告させていただきます。また、平成22年度の入学者選抜の状況なども踏まえつつ、本ワーキング・グループでは引き続き審議を行い、フォローアップを実施していく予定でございます。

【井上座長代理】
 どうもありがとうございました。
 私自身もこの第3ワーキング・グループの主査代理として、ヒアリングと実地調査にも半分くらい関与していますけれども、さきほど永田委員がおっしゃったような問題点というのは、実は同じ法科大学院に集中しているという特徴があります。入学者選抜の競争倍率の低いところは、厳しい選抜をしていない、あるいは選抜の実質を持っていないということになろうかと思いますけれども、そうしますと、学力の十分でない学生もかなり入ってくる。その人たちは、やはり、入ってきてからの成績が伸びない。それに対し、成績評価がかなり甘いところがあることも少なくなく、そういう状態で修了してしまうと、本人たちは自信を持って修了していないものですから、新司法試験の受け控えが多くなったり、受験してもうまくいかないのです。もちろん優秀な学生も入ってきているのですが、そういう人は、大学の授業あるいは先生に対する期待度は低くなってしまう。そういうことで、全体のモチベーションが下がって、自学自習により頑張るのですけれども、それではなかなかうまくいかず、成功するのはレアケースということになる。そういうことでで新司法試験の合格率等が低くなると、今度は優秀な入学志願者がまた減ってしまうという一種のマイナスのスパイラルに入ってしまっている。そういうところが少なからず見受けられ、実際に見て、私自身も非常にショックでした。もちろん中には、苦戦してはいるものの、例えば教員の交代をしたり、教育方法・内容の改善に努めて、このまま着実にいけば質が向上するのではないかという希望を持てるところも幾つかあるわけですけれども。以上のような印象をワーキング・グループのメンバーが共通して持ったということを補足的につけ加えさせていただきます。

【永田委員】
 補足いたしますと、そのような問題も多いのですが、大方の大学は、その進捗状況に差があるものの、この委員会の提言を踏まえて改善に主体的に取り組んでいると考えられます。それは、その一部の大学にそういう問題が見られるということでございますね。今の井上委員のお話で、入り口の選抜が甘いので、全体として法科大院側の教員側は到達点をしっかり信用して教育できないということがあります。それから、学力により学生を2つの層に分けた対応をしている法科大学院もあるという傾向もございます。

【井上座長代理】
 以上の説明を踏まえまして、ご質問、ご意見等がございましたら、どなたからでもご発言いただければと思います。

【小山委員】
 今のご報告の中で、予備校の通信教育を学内で実施しているところが1校あったということですが、これはショッキングでして、当初の法科大学院の設置認可の際にも予備校との提携ということが問題になり、認可を得られなかったところもあったと記憶しております。そういう法科大学院が堂々と生き延びているというのはどうかなというふうに感じるわけです。今この場で、その学校の名前を言っていただくというのは支障があるでしょうか。

【永田委員】 
 これは今年の新司法試験結果の発表の際の新聞記事で、研究科長が予備校に行く学生を推奨して大学はそれをサポートするという形でさらに合格者を増やしていきたいというような趣旨を述べたものがありましたので、もう名前はご存じだと思いますが、愛知学院大学の法科大学院でございます。

【井上座長代理】 
 その当該法科大学院に対する認証評価の結果は、これから出るようです。傍聴の方もおられますので、誤解のないように申し上げますと、これは極めて異例のことで、1校だけですので、法科大学院全体がそういうことをやっていると、くれぐれも誤解されないようにお願いしたいと思います。

【土屋委員】
 合格率が一時期落ちて、それからまた上がった法科大学院がありますね。そういう法科大学院は、何か特徴的に見られる傾向があるのでしょうか。どのような原因が共通して見られるということは、わかりますか。

【永田委員】
 それを読み取るということは必ずしもできませんけれども、このヒアリングあるいは実地調査の対象になっていない大学に関しまして、改善計画書等の記載を見ますと、やはり競争倍率をきちっと絞ろうとしているというところ、それから、それぞれの教育が法科大学院の本来の趣旨に従って、大学の授業でその基本的な力をつけ、大学の期末テストでその到達点をはっきりと示そうとしています。授業と期末テストで基礎的な学力が身につき、学生もの新司法試験のレベルというものが感じられるとういうことで、もちろん個々の学生の努力、自学自習がないとそこに到達いたしませんけれども、基本的なものを大学が授業と試験で提供しているということです。きちんと到達度を先生方が認識し、そして学生もそれによって到達度を理解しているところが成功しているというふうに感じますので、そういう方向に転換したところが、改善されているということは明らかです。

【井上座長代理】
 全体の合格率が下がっていますので、上がったところは少なく、余り目立たないのですけれども、母数の学生数との関係で、合格者が1人増えるだけで合格率も上がるというところがある。しかし、それは一時の現象に過ぎないのです。我々としては、むしろ、一定のタイムスパンをとって、少なくとも全体として合格率が下がっている中でどれだけ健闘しているかという視点に立って物を見ました。そして、、今、永田委員がおっしゃったような努力をされているところについては、それが実を結んでいる、あるいは実を結ぶことが期待できるのではないかという評価になるということです。
 ほかによろしいでしょうか。それでは、ご質問、ご意見がないようですので、次の議題に移らせていただきます。
 3番目の議題は「認証評価の見直しについて」で、法科大学院の認証評価の見直しにつきましては、これまで随分議論してきました。その内容を踏まえまして、私から11月18日の大学分科会で本委員会の審議状況を報告し、今後の予定等についてご了解をいただいたところであります。事務局から資料及び今後の予定について説明をお願いします。

【浅野専門職大学院室長】
  机上配付資料の専門職大学院設置基準及び学校教育法第110条第2項に規定する基準を適用するに際して必要な細目を定める省令の一部を改正する省令案の概要という資料をご覧ください。
  これまで専門職大学院設置基準及びいわゆる細目省令の改正についての検討をお願いしてきたところでございますが、大体の内容がまとまりましたので、パブリックコメントにかけるための資料を今回机上配付資料として配付させていただいております。この資料については、本日ご意見をいただいてご了解いただければ、速やかにパブリックコメントを実施して、年明けの特別委員会で結果を報告した後、大学分科会で諮問及び答申を行い、制度を改正するという流れになっております。この資料につきましては、今までご議論を何回もいただきましたので、簡単にご説明をさせていただきます。
  1ページ目で、今回の4月にこの委員会で出されました報告に基づきまして、専門職大学院の設置基準及び細目省令を改正するということで、施行期日を平成22年4月1日ということにしております。
  それから、専門職大学院設置基準については、2つの改正がございます。1つは、専門職大学院設置基準の改正として、これまでご議論いただきましたように、法学未修者が1年次に36単位の上限のところ、42単位まで履修することが可能となるということでありますので、それにあわせて法学既修者についても、これまで専門職大学院設置基準第25条第1項では30単位まで履修したとみなすことができる単位数として上限が定めてあったわけでございますが、今後法学未修者1年次の法律基本科目の単位数が増えるということで、これを6単位分増やし、93単位を超える単位の修了要件とする法科大学院については、その超える部分について30単位に上乗せができるということに改正をさせていただくということでございます。それから、2つ目としまして、専門職大学院設置基準第25条第3項の改正として、法学既修者修得したものとみなすことができる単位は、専門職大学院の設置基準の21条第1項及び22条第1項において規定されている、他法科大学院の授業科目の履修及び入学前の既修単位等の認定の単位と合わせて30単位を超えないものとするとされているところですが、今回増えた分の30単位を超えて認定する部分については、単位数を除いて計算するということを規定しているものでございます。
 それから、2ページ目はいわゆる細目省令の改正でございます。特別委員会の報告を受けまして、2のところで評価項目の改正の内容がございます。1つは、学校教育法第110条第2項に規定する基準を適用するに際して、細目省令の第4条第1項第1号を改正しまして、今回の特別委員会の報告の趣旨に沿って各認証評価機関が評価を実施していただくように、評価項目の内容を一層明確化するということと、3ページ目では、新たに修了者の進路について評価項目を新設するということで、第1号の改正を行うということでございます。
 それから、2つ目は、同細目省令の適格認定の方法を定めている規定についても、今回の特別委員会の報告を受けまして、重要と認められた事項の評価結果を勘案して総合的に評価し、適格認定を行うということを具体的に適格認定の方法として追記するということで、細目省令についてはこの2つの改正がございます。
 以上でございますが、これまで先生方にご議論いただきました設置基準の改正、それから細目省令について内容をまとめまして、今後パブリックコメントにかけていきたいということでございます。

【井上座長代理】
 ありがとうございます。
 それでは、今の説明につきまして、ご意見、ご質問等がありましたら、どなたからでもご発言願います。実質的にはこれまで議論を重ねてきたところを法令化するものですが、いかがでしょうか。

【磯村委員】
 専門職大学院設置基準25条第1項の一部改正のところで、例えば97単位の修了要件ですと、93を4単位超えるので、4単位プラスして34単位まで既修得単位と同じような形で既修者認定ができるということなのですが、これは例えば法学未修者が入った学年では32単位しか法律基本科目を履修しないというときに、既修者はそれを超えて単位認定をするということは可能だという設計でしょうか。

【浅野専門職大学院室長】
  この条文を読むだけではそれが可能なように見えますけれども、この制度改正の趣旨は、法学未修者の法律基本科目について6単位増やしたことに対する制度改正でございますので、今のこの改正の概要の中では読めないですが、この解釈として当然この改正の趣旨を前提にしているということでございます。それはこの制度改正とは別に、きちっと改正の趣旨についてもお伝えするような形にはしたいと思いますが、とりあえず今回のパブリックコメントについては制度の改正の概要をお示ししているところです。

【磯村委員】 
  例えば、「ただし法学未修者1年次に配当される単位数を超えることはできない」というような文言を入れると、技術的にも対応できるのかと思ったのですが。

【浅野専門職大学院室長】
  そのとおりですが、設置基準の文章として書いておりますので、制度の改正内容ではなく、解釈についてまでここに書くことは難しいかと思っております。

【澤川専門教育課長】
   専門職大学院設置基準第25条に、法学既修者として認めることができるのは、あくまで法学の基礎的な学識を有すると認める者とするという規定があるわけでございますので、単位を修得したと認めるのは、その法学の基礎的な学識に関する科目と解釈すべきだということになると思います。そこのところを解釈として我々も明確にしたいと思っており、専門職大学院設置基準第25条本文の解釈からそういうものしか対象にならないという趣旨を確認してきているところでございます。

【磯村委員】
  わかりました。

【井上座長代理】
  それでは、座長及び事務局のほうでパブリックコメントの最終調整の手続を行うということでご了承いただけますでしょうか。

(委員了承)

 ありがとうございます。
  次に、「法学未修者教育の充実について」を議題として取り上げたいと思います。これについて配付資料があるようですので、これも事務局からご説明いただきます。

【浅野専門職大学院室長】
  お配りしております「法学未修者1年次における法律基本科目の6単位増について」という机上配付資料をご覧いただければと思います。この6単位増につきましては、4月の本特別委員会の報告の中で、法学未修者教育の充実のために、1年次において法律基本科目6単位増加を可能にするようなカリキュラムの見直しができるように考えるということで提言をいただいたわけでございます。その提言の中で、最大履修登録上限単位数最大標準に対処するということで、その前提として、法律基本科目を6単位程度増加させるということを提言で言っておるわけでございます。今回、各法科大学院においてこの6単位の増加についてさまざまな検討が行われているわけでございますが、その検討の中で、いろいろと疑問点が生じているということがございまして、その点について、今回この資料を提出させていただいて、特別委員会の報告では読み切れない部分についてどう考えるかということをご検討いただければと思っております。
   明確にしておくべき事項ということで、1つは、履修登録上限単位数を42単位まで増加させるには、特別委員会の報告の提言に基づいて増加した6単位について、その法律基本科目を特定する必要があるのかということと、もう一点は、今回の特別委員会報告の提言に基づく見直しを行う以前のカリキュラムにおいて、法学未修者2年次あるいは3年次の配当であった法律基本科目の一部を、法学未修者1年次の授業の単位数が増えるということで、そこへ一部移行するという取り扱いを認められるのかということであります。
   こちらの案については、法学未修者1年次における履修登録上限単位数を36単位から引き上げ42単位まで増加することを可能とすべきという提言を受けて、当該履修登録単位数の引き上げによって法学未修者1年次における法律基本科目の充実を図るという考え方であります。その際、カリキュラムの見直し内容が、法学未修者の1年次において法律基本科目の基礎的な力を着実に身に付けさせる趣旨であることを説明できるようにする必要があるということです。それからもう一つは、法学既修者における法律基本科目の十分な学習を確保しつつ、法学未修者1年次における6単位の増加に伴い、法学未修者教育の充実を目的とした柔軟なカリキュラムの見直しを行うことを可能とすることが適当だということであります。
   そういうことで、(1)は、明確には書いてありませんが、増加させた法律基本科目の特定は必ずしも必要ないが、法学未修者の1年次において法律基本科目の基礎的な力を着実に身に付けさせる目的であるということが説明できるようにする必要がある。それから、2つ目は、これもはっきりは書いていないのですが、法学未修者教育の充実を目的として柔軟なカリキュラムの見直しを行うことは可能であるので、従来1年生には非常に難しいというふうに扱われていた科目を、1年次の基本科目をしっかりやるという観点からそこに一部回すであるとか、柔軟なカリキュラムの見直しは可能とすることが適当ではないかということで、その一方では、それを行ったことによって法学既修者の法律基本科目がおろそかになるということがないように、きちっと十分な学習を確保しながらということを前提として書いてございます。

【井上座長代理】 
  以上のご説明を踏まえ、ご意見あるいはご質問がございましたら、どなたからでもご発言願います。

【永田委員】
   基本的には、憲法、民法、刑法等の科目が窮屈であるから、講義を増やしていくというイメージを持っているのですが、それ以外のあり方もあるということでしょうか。

【浅野専門職大学院室長】
   大学によっていろいろなカリキュラムの組み方をされていますので、永田委員がおっしゃったようなやり方もあるでしょうし、それから、これまでは1年次においては非常に基本的なことだけやってきたところを、少し難易度が上がり、2年次にやっているような内容を一部1年次に移すということも大学の考え方としてはあるのではないかと思います。その内容については、他の法科大学院では1年次でやっているかもしれない内容も含まれるということです。ただ、法科大学院によって、学生の水準、教育の水準、それからカリキュラムの組み方に違いがございますので、余り一つの方法に決めないということがこの趣旨でございます。

【磯村委員】
   恐らくどこまでルールで縛るかというのは難しいと思いますが、例えば、従来1年次では家族法を扱うことはできなかったので家族法を2年次に配当していたけれども、その枠ができたので1年次に回し、2年次の法律基本科目がそれだけ減るというのは、恐らく趣旨としては全く違う話だろうと思います。したがって、今ご説明があったように、法学既修者教育の充実がそれによってむしろ損なわれることがないように配慮をするというのが非常に大事なことです。それから、規定をする必要はないと思いますが、例えば36単位に6単位増やすが、それは法律基本科目以外でカバーするというのは、これも恐らく無い選択肢だろうと思いますので、ご説明の仕方のニュアンスだと思いますが、やや幅を広げ過ぎると、違う使われ方をすることもあるのではないかという懸念も少しあります。

【浅野専門職大学院室長】
   まさに磯村委員のご指摘のとおりでございまして、(1)のところで、「法学未修者の1年次において、法律基本科目の基礎的な力を着実に身につけさせる趣旨であることを説明できるようにする」ということが一文として入っているわけでございます。

【井上座長代理】
  例えば既修者を全く採っていないところというのは未修者のみでやっている。その場合に、2年次でやっていた内容を1年次におろすとして、その場合も、2年次の法律基本科目がおろそかになるということではいけない、というご趣旨でしょうか。

【磯村委員】
  恐らく、もともとは1年次に十分でないので、2年次、3年次でそれでは足りないということだったので、その組みかえでトータルが同じだということになると、余りその趣旨は生きないのではないかなというふうに思います。

【井上座長代理】
  そうすると、ここのところは「法学既修者における」ではなく、「2年次」とすべきですね。

【磯村委員】
   そういうことかもしれないですね。

【井上座長代理】
   「法学既修者における」と限定して書いているのですが、未修者のみを受け入れているというところでは、2年次で教えていたのを1年次に前倒しするだけになってしまい、トータルとして見ると、法律基本科目の学習が不足しているのを強化しようという趣旨からはずれてくるのではないかというのが、磯村委員のご意見です。そういう意味では、既修者に限らず、2年次における法律基本科目の十分な学習を確保しつつという留保を置いておかなければいけないということですね。

【磯村委員】
  そうですね。

【浅野専門職大学院室長】
   では、ここの文章は、「既修者における」というより、「2年次以降の法律基本科目の十分な学習を確保」ということにしますか。

【井上座長代理】
   恐らく(1)の「その際」というところが効いてくるのではないかと思います。趣旨に合った組み替えかどうか、実質的に教育できるように改めているのかどうか、ということでしょう。ほかにご意見いかがでしょうか。

【鎌田委員】
   今の趣旨は、いずれ解説なりコメントなりで出てくることになるのですか。

【浅野専門職大学院室長】
   各法科大学院でカリキュラムの改定作業をやっておられますので、何らかの形で、この委員会の考え方について、できるだけ早くお伝えはしたいというふうに思っております。

【鎌田委員】
   その際に、少し前のご発言の受けとめ方もさまざまかと思いますので、2年次の内容を1年次に下ろすのは、2年次の法律基本科目の教育をむしろ低下させることになるということでしたが、それだけで見るとそういうことになりますけれども、下ろす替わりに違う科目を入れるということもありますので、むしろその趣旨が重要なのであって、上の科目を下に下ろすこと自体が全ていけないという理解のされ方をしないほうがいいと思いますので、ご配慮をお願いできればと思います。

【井上座長代理】
   恐らく(2)の「確保しつつ」というのは、そういう趣旨だと思うのですね。個別の科目が欠けるのはいけないという意味では、トータルで見た場合に、その充実度が減るので、それはよくないと思います。

【浅野専門職大学院室長】
   まさに鎌田委員のご指摘どおりで、このような柔軟性のある書き方にしているのです。各法科大学院は毎年のようにカリキュラムの見直しをやっていますので、たまたま前の年には1年次にあったものを今年は2年次にしていて、それをまた1年次に戻すのはだめだということではないのです。それはまた、いつのタイミングをもって6単位増やしたということにするのかという時間的なとらえ方が非常に難しいのですが、そこは鎌田委員のおっしゃるとおりです。

【井上座長代理】
   我々は今日説明を聞いたので分かったのですけれども、この文章だけが一人歩きしたり、誤解を受けるおそれもあるかと思います。4月の報告についていろいろな質問が事務局に寄せられているため、明確にしておいたほうがよいということでまとめたわけなのですけれども、この文章がまた新たな誤解を生むということもあり得ますから、その点については、わかりやすく説明し、周知を図ったほうがよいと思いますので、工夫していただきたいと思います。

【磯村委員】
   適用の時期ですけれども、未修者1年次について6単位を増やす時期と、それから既修者認定の単位が30単位を超える時期を同時に走らせるかどうかということなのですが、趣旨から言うと、法学未修者の単位が増えて、その次の年に法学既修者が入ってくるときに、それに合わせて増やすことができるというのがあり得る選択肢のように思うんですが、これはそうではなくて、同時に法学既修者の認定も単位を増やすということでしょうか。

【浅野専門職大学院室長】
   今の予定では、制度改正が22年4月1日になりますので、おっしゃるように同時のタイミングで増やすというこということです。

【井上座長代理】
   よろしいですか。

【磯村委員】
   はい。少しずれるかなと思いますけれども。

【井上座長代理】
  ほかにご意見ございませんでしょうか。それでは、いただいたご意見を踏まえまして、特に周知方法については工夫の上、十分な周知を図るようお願いしたいと思います。最後に今後の日程等についてご説明をいただきたいと思います。

【浅野専門職大学院室長】
  次回は1月22日金曜日15時から17時の開催を予定しております。詳細につきましては改めて事務局からご連絡をさせていただきます。なお、本日机上配付資料のうち、コア・カリキュラムのイメージの資料、それから今ご審議いただいた6単位増についての資料、それからパブリックコメントにかける資料につきましては、本日、会議後回収とさせていただきますので、机上に置いていただければと思います。

【井上座長代理】
  よろしいでしょうか。

【鎌田委員】
  先ほどの省令の改正ですけれども、いつぐらいの見通しになるか、大体のプロセスをお伺いしたのですけれども、我々としては学則を改定しなければ対応できませんので、学則改定の時期として、新入生に対しての告知の時期が省令改正よりも前にはできないので、早目にしていただきたいと思います。時期がわかるのであれば教えていただきたいと思うのですが。

【浅野専門職大学院室長】
  まだ明確には定まっておりませんが、年明けできるだけ早い時期にと思います。

【井上座長代理】
  よろしいでしょうか。
  それでは、本日の議事は、以上で終了したいと思います。どうもありがとうございました。

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