法科大学院特別委員会(第28回) 議事録

1.日時

平成21年4月3日(金曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省 東館3F 1特別会議室

3.議題

  1. 法科大学院の認証評価について
  2. 第2ワーキング・グループの検討結果について
  3. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)有信睦弘、田中成明の各臨時委員
(専門委員)磯村保、稲田仁士、井上正仁、小山太士、笠井治、鎌田薫、 木村光江、土屋美明、椎橋隆幸、永田眞三郎、長谷部由起子、林道晴、松村和徳の各専門委員

文部科学省

久保高等教育局審議官、藤原専門教育課長、浅野専門職大学院室長、小代専門教育課課長補佐

オブザーバー

(ヒアリング協力者)
【財団法人日弁連法務研究財団】評価委員会委員長 柏木昇、評価委員会副委員長 飯田隆、 認証評価事業部事務局長 清永敬文
【独立行政法人大学評価・学位授与機構】理事 川口昭彦、法科大学院認証評価委員会専門委員 野坂泰司
【財団法人大学基準協会】法科大学院認証評価委員会副委員長 佐上善和、大学評価・研究部長 工藤潤 、大学評価・研究部審査・評価系副主幹 橋本孝志

5.議事録

【田中座長】
 第28回中教審大学分科会法科大学院特別委員会を開催いたします。それでは、事務局から配付資料の説明をお願いします。

【浅野専門職大学院室長】
 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。
  資料1といたしまして、前回の議事録案でございます。資料2の1といたしまして、法科大学院の認証評価について、資料2の2といたしまして、平成20年度法科大学院認証評価結果概要、資料2の3といたしまして、法科大学院認証評価関係法令、資料2の4といたしまして、法科大学院の認証評価のあり方について(論点)(案)、資料3といたしまして、法科大学院認証評価機関の説明用資料、資料3といたしまして、修了者の質の保証について、第2ワーキング・グループの検討結果報告でございます。
  それ以外に、前回報告をいただきました第1ワーキング・グループの取りまとめが参考資料として配付しております。その5ページ目に既修者の単位認定について、その認定を厳しくし、積み残した部分については2年次以降の6単位を上限として、単位の履修を認めようという方向が打ち出されている資料を参考としてお配りさせていただいております。
 それから、机上配付資料といたしまして、法科大学院のこれまでの認証評価における不適格となった理由についての資料を配付させていただいております。配付資料は以上でございます。

【田中座長】
 どうもありがとうございました。それでは、議事に入らせていただきます。初めに、法科大学院の認証評価についてを議題といたします。事務局から、平成20年度の法科大学院認証評価結果の状況についてご説明をお願いいたします。

【浅野専門職大学院室長】
 それでは、資料2の1に基づいてご説明させていただきます。法科大学院の認証評価についてという資料でございます。法科大学院は、5年に1回、認証評価を受けることとされております。一番下の表にございますように、既に平成20年度、今年度までに68校の評価が終ったわけでございます。平成21年度につきましては、残る6校を予定して、74校の1回目の認証評価が終ることになるということでございます。認証評価の実績のところを見ていただきますと、これまでの68校のうち適格が46校、不適格が22校という結果になっております。それから、資料2の2、平成20年度法科大学院認証評価結果概要でございます。これにつきましては、後ほど3つの法科大学院評価機関から報告をいただくことになっておりますが、日弁連法務研究財団でありますと、4大学が適格で、不適格が3大学、大学評価・学位授与機構につきましては、14大学が適格で、不適格が2大学、大学基準協会につきましては、適格が5大学、不適格は9大学ということになっております。それから、資料2の3は、認証評価の関係法令でございまして、 認証評価は学校教育法の第109条の第3項に基づいて評価が行われているわけでございます。おめくりいただきまして、3ページ目でございます。認証評価で法科大学院の教育活動の状況が法科大学院認証評価機関の評価基準に適合しているかどうか、認定をしなければならないということが、法科大学院の教育と司法試験とのいわゆる連携法の第5条第2項に基づいて決められているわけでございまして、その2項に基づいて適格の認定を行うということになっています。そして、その第5項におきましては、適格認定が受けられなかった法科大学院に対して、文部科学大臣が報告または資料の提出を求めるということが規定されているわけでございます。次の4ページ目からは、この評価についての必要な細目を定める省令において、運用が規定されております。5ページ目の一番最後の第4条のところで、法科大学院の評価にあたっての必要な基準を、第2項第1号でイからワの視点での評価を定めているわけでございます。
 資料2の4は、法科大学院の認証評価のあり方について(論点)(案)でございます。これから3つの法科大学院認証評価機関のヒアリングをしていただくわけでございますが、68校が終了いたしまして、これまでの評価の課題等について併せてご説明いただくことになっております。その際に、これまで様々なところで現在の認証評価についてご指摘があり、そういったご指摘を整理させていただいた内容でございます。1つ目の認証評価基準につきましては、1点目が、評価項目が広範にわたり、過度に細部まで評価を行うものとなっていないか。2点目が、個々の評価項目を形式的に評価するものとなっていないか。3番目は、特に評価基準を重点的な事項として定める必要があるのではないかということで、入学者の質や修了者の質、教育体制の確保という点を列挙させていただいております。2つ目は不適格認定についてでございます。1つ目が、不適格という文言が社会に与えるイメージと不適格の機能にギャップがあるのではないか。2点目が、重点的な評価の基準という観点について、法科大学院の教育の質に重大な欠陥が認められるときに限定して、一層の厳格な評価基準に基づいて行うべきではないか。3点目に、不適格要件の方法・基準については、3つの認証評価機関の間で調整を図り、共通認識を持つことが必要ではないか。4点目に、3つの認証評価機関の考え方の共有化を図るため、協議機関の設置が必要ではないか。3つ目は他の評価との効率的な連携ということで、1つ目は、他の評価と同様の基準で重複して評価される事項で、省略できるものはないか。2点目に、法科大学院の認証評価機関とその他の評価機関間で、共同して評価の視点の調整や提出資料の共有化などを図れないかという、効率化の観点でございます。以上が資料2の4点でございます。
 それから、机上配付資料の認証評価の不適格の理由についてでございます。これは、これまでに出されました評価の不適格の理由について、入学者選抜の観点、カリキュラムの観点、それから、厳格な成績評価、クラス単位、専任教員、それから、組織運営という項目で整理させていただいております。本日、第2ワーキング・グループの検討結果の報告の内容とも関連いたしますが、不適格の理由として、カリキュラムの編成に関することが非常に多い状況となっております。以上でございます。

【田中座長】
 続きまして、本日は、法科大学院の各認証評価機関にお越しいただいておりますので、認証評価の結果、認証評価の課題などにつきまして、各認証評価機関からご説明いただき、その後、まとめて意見交換をさせていただきたいと思います。今、事務局から認証評価結果の概要についてご説明いただきましたので、認証評価の課題などを中心にご説明いただければと思います。
 それでは、日弁連の法務研究財団からお願いいたします。

【日弁連法務研究財団 柏木委員長】
  日弁連法務研究財団の認証評価委員会の委員長をしております柏木です。私から、本研究財団の認証評価につきましてご報告いたします。
  平成20年度認証評価結果につきましては、お手元の資料のとおりであります。下期は、適合が4校、不適合が3校で、適合のうち2校に再評価要請が付いております。
  認証評価の課題につきましては、幾つか課題を持っております。1つは、法律基本科目の重要性と法律基本科目偏重をどう判断するかということであります。法律基本科目が重要であることは間違いがないわけですけれども、一方、司法試験対策として法律基本科目が偏重されては困る。重視と偏重をどう線引きするかという問題があります。1年次には弾力的な取扱いをして、あるていど法律基本科目を重点的に教えることを容認するのか否かということが、もう一度検討されなければならないと思っております。日弁連法務研究財団としましては、法律基本科目の他に、実務基礎科目、基礎法学、先端・展開科目で、原則として合計33単位以上とるよう要請しておりますけれども、これでよろしいかどうかという問題も含みます。それから、教員審査のあり方の問題でありますが、教員審査につきましては、当財団の特色と独自性を生かしつつも、審査の観点につきましては、他の評価機関と共通の尺度を設けなければいけないのではないかということを検討する必要があります。かつ、それをある程度客観的に表明しておく必要があるのではないかと考えます。例えば、5年目に評価をいたしました場合に、それまでずっと教員をしていた者が評価の時点で始めて教員適格性がないと判定されなりますと、法科大学院にとりましても大変大きな問題となります。そのような不意打ちを避けるため、各法科大学院は教員採用審査をやるときに明確な基準に従ってて、適格な教員を採用できるような方向に持っていくことが大事なのではないかと考えております。
  なかには、採用基準自体も不明確な法科大学院が散見されます。採用基準の明確性、合理性、適切性なども評価対象に入れる必要があるのではないかということを感じております。また、法律科目の専任教員ですが、本科目につきましては、最低数の専任教員を有しなければならないという規定がありますけれども、例えば演習科目だけを担当するとか、民事法総合というような名前のオムニバス科目でわずか2時間を教えるだけで、法律基本科目の専任教員とカウントしていいかどうか。この点も不明確なので、明らかにする必要があるのではないかと考えております。
  今までの日弁連法務研究財団の評価基準で想定していない事象も起こっております。クラス定員は、あまりに多い場合には少人数教育の趣旨に反しいけないとする基準はあるわけですけれども、逆に入学者数が大幅に減りその結果一クラスの学生が余りにも少ないときには問題がないのだろうか、ということです。クラス学生数があまりに少ない場合には、双方向・多方向の法科大学院教育がうまくいくのであろうかということに関しては評価基準はございません。定員割れが起きてきますと、クラス人数が非常に少ないところをどう評価するかということも考えなければならないのだろうと思っております。
  日弁連法務研究財団の第三者評価では、法曹に必要な資質・能力の養成が適切になされているかという独自の評価基準があります。これは、法科大学院を設置した目的に照らし合わせて、法曹としての基本的な知識、スキル、価値観というようなものをしっかり教えているかどうかという、項目です。この総合評価的な項目をどう活用するかという問題です。たとえば、ある法科大学院は、各評価項目について、合格最低の評価ですれすれでパスしている、だけれども、これといって決定的に評価項目、特に法令基準、由来基準で不適合の評価を受けている項目がない。そうすると、今の法務研究財団の評価では適格に認定しなければいけないわけです。しかし、それでいいのかという問題です評価結果は常識と違ってはいけないわけです。だれが見てもおかしいと思う法科大学院が適合評価を受けてしまうということがあってはならないわけで、「法曹に必要な資質・能力の養成」という評価項目で、この点を評価できるのではないかということも、これからの検討事項であります。
  次の問題が、不適合校へのフォローの方法であります。不適合校につきましては、再評価や繰上げの評価の依頼がない場合、当財団がどのようにアプローチして改善を促していくかという問題も懸案事項として残っております。先ほどの問題に戻りますけれども、定員割れを起こしている法科大学院につきまして、評価基準をはっきりしなければいけないと考えておりますのは、入学者の選抜基準であります。定員の数倍の応募者があるような法科大学院は上から順に合格させていけば問題はないのです、定員割れを起こしているようなところでは、何らかの明確な絶対基準を持って、それをもって判断しなければいけないだろうと考えます。この明確な基準の設定につきましても、そういう明確な基準を設定できるのか。できるとすればどういうものが明確な設定基準になるのかということは、これから検討していかなければならないと思っています。それから、定量評価はやりやすいわけですが、定性評価というのは難しい。定性評価の客観基準づくりをもう少しきめ細かくやっていく必要があるのではないかと考えております。
  さらに、法科大学院特別委員会の中間まとめで示された改善の方向性、教育水準と教員の質に重点を置いた認証評価ですけれども、これは我々としましても昔からやってきたというふうに考えております。なお、平成18年下期以降27校の認証評価の経験を生かしまして、さらに改善・改良を検証・検討していきたいと思っております。

【田中座長】
  どうもありがとうございました。

【日弁連法務研究財団 飯田副委員長】
 副委員長の飯田でございますが、一点だけ補足をさせていただきます。
 現在、評価が非常に大きな問題になっているところは、成績評価の厳格性が上げられると思っております。成績評価の厳格性については、学校間格差も非常に大きいですし、同じ学校の中でも教員間格差も非常に大きいと思っております。特に不可、D評価と合格評価の基準については千差万別でございます。ヒアリング等の結果によりますと、教員の教育の到達レベルについて、共通認識が不十分であるというところに大きな問題があるのかなと思っております。現在まさに教育の到達目標が議論されておりますが、教育の到達レベルについての共通認識の形成が、厳格な成績評価のために不可欠だろうと思います。
  同時に、成績評価のプロセスの可視化ができるようにしていただく必要があるのではないか。すなわち資料等の整備状況、これは学校間格差が極めて大きいと思います。可視化がされているところは、批判が可能ですので、比較的厳格性が保たれる方向にありますが、そうでないところは、同じ学校の中でも教員間格差が非常に大きい。この点、平常点をどう確認するのか難しい問題はございますが、成績評価の厳格性は、予備試験との関係でも絶対に厳しくやらなければいけないところであると思いますし、認証評価の上でもその手法を確立して適切な評価ができるようにすることが、今後の重要な課題だと思っております。

【田中座長】
  どうもありがとうございました。
  それでは、引き続きまして、大学評価・学位授与機構からお願いいたします。

【大学評価・学位授与機構 野坂専門委員】
  大学評価・学位授与機構の専門委員をしております野坂と申します。私から、以下「機構」と申し上げますが、大学評価・学位授与機構の実施いたしました法科大学院認証評価の概要について、また、その課題等についてお話させていただきます。
  まず、法科大学院認証評価の状況でございます。平成20年度本評価で、16法科大学院のうち、14法科大学院が適合、2法科大学院が適合していないということ。また、追評価につきましては、19年度の認証評価において適合しなかった3法科大学院から追評価の申請がありまして、追評価の結果、昨年度の評価結果と合わせて、すべての法科大学院が機構の定める法科大学院評価基準に適合するという結果を得ております。続きまして、平成20年度認証評価の結果及び総合所見について申し上げます。全体的には、本評価の対象となりました16の法科大学院においては、種々の創意工夫ある取組がそれぞれに行われていると見ることができます。なお、一部の法科大学院について、適格と認定されなかったわけですが、これは機構が定める54の基準のうち1ないし2の基準を満たしていなかったことによるものであります。これは、機構の評価が、評価基準・評価過程の明確性・透明性の確保のために個々の基準について判断する仕組みになっているために生ずることでありまして、適格と認定されなかった理由となる基準の判断のすべてが、必ずしも当該法科大学院の教育全体の質の評価に直接つながるものではございません。適格と認定された法科大学院におきましても、教育内容、教育方法、成績評価等に係る基準について、改善を要する点として指摘しているところがございます。これは、適格であるか否かにかかわらず、改善を要すると判断した事項をフィードバックすることで、当該法科大学院における教育活動等を改善する取組に向けて、インセンティブを与えるものでございます。
  各法科大学院には、今回の指摘事項を踏まえて、教育活動等の改善に努めていくことはもとより、法科大学院にふさわしい教育水準の確保と向上のために、より一層の努力を期待したいということでございます。また、昨年度の評価において適格と認定されなかった3つの法科大学院については、指摘のあった事項に対して真摯に、かつ、早急に改善がなされており、すべて適格と判断されております。評価実施後の取組につきましては、機構では次の評価までの間、毎年度、年次報告書等を法科大学院に提出いただくこととしておりまして、年次報告書によって改善を要する点と指摘した事項の改善状況を、また、変更届によって重要な変更の有無を確認して、次の評価までの間フォローアップすることとしております。
  認証評価の課題等についてでございますが、機構が実施する法科大学院認証評価は、機構が定めた評価基準に適合しているか否かの認定を行うものであり、それは書面調査及び訪問調査によって、この評価基準を満たしているかどうかを判断しております。よって、法科大学院特別委員会による「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について」は中間まとめでもあることから、当該提言で示された改善の方向性の内容すべてについて、平成20年度の評価に直ちには反映しておりません。ただし、このたびの中間まとめにおいて提言されている内容のうち、以下の事項については既に平成20年度の評価において確認されております。
  第1に、厳格な成績評価の実施について、評価前年度の成績分布を確認し、過度に一部の成績評価区分への偏りがないか。第2に、再試験が成績不良者の救済措置とならないよう適切に運用されているかについて、本試験と再試験の出題をすべて確認し、同一または類似の出題がないかどうか。第3に、質の高い教員の確保という観点から、専任教員の他、法律基本科目及び必修科目を担当する兼任教員、兼担教員の担当する授業科目の内容に即して当該授業科目を担当するにふさわしい教育研究業績等があるかどうかという点の調査を行っております。
  なお、機構では平成21年度から次の評価サイクルに向けた評価基準の見直しを検討する予定でありまして、その際には中間まとめ、ひいては最終取りまとめの趣旨を踏まえた内容としたいと考えております。
  最後に、機構が実施する評価につきましては、法科大学院の教育活動等の水準の維持及び向上を図るという目的に沿って実施しております。したがって、評価基準に適合しているか否かという評価実施時の結果のみをもって、当該法科大学院の教育活動すべてを肯定的ないし否定的に評価することは必ずしも適切ではないと考えております。
機構は、評価実施後も、改善点に対する法科大学院の取組をフォローアップすることで、各法科大学院の教育活動等の質を継続的に保証するとともに、機構の評価を受けた各法科大学院の教育活動等の質の改善のための自主的努力を促進・支援するという役割を適正に果たすように努めているところであります。関係者におかれましては、機構の実施する評価の結果を、このような全体的な仕組みの中で総合的に理解していただきたいと考えております。
  以下、「項目別所見」と資料にはございますが、機構の評価基準には、教育内容、教育方法、成績評価及び修了認定、教育内容等の改善措置、入学者選抜等、さらに、学生の支援体制、教員組織等々がございます。このうち、今回評価基準に適合していなかった法科大学院で問題になった点は、4章と6章になりますが、その点を中心に、課題も含めて申し上げたいと思います。
  まず、教育内容に関しましては、実質的には法律基本科目でありながら、展開・先端科目に分類するといった例が少なくない状況であり、科目区分整理というのが一つの大きな問題であろうかと思います。法科大学院独自のカリキュラム編成がありますので、独自性を出そうとすればどうしても特色ある区分になります。しかし、基準により法律基本科目、法律実務基礎科目、基礎法学・隣接科目、さらに展開・先端科目といった科目区分を確認しておりますので、そのあたりのすり合わせをどのように行ったらよいかが今後も問題になるのではないかと考えております。
  また、第4章の成績評価及び修了認定も大変問題のあるところでございまして、成績評価につきまして、法科大学院によっては、一部の授業科目において成績評価基準に沿った成績分布となっていない、つまり成績評価基準自体は定められているが、そのとおり運用されていない。また、一部の授業科目について平常点が一律満点となっている、あるいは出席のみをもって満点を一律につけるというような状況。また、再試験又は追試験と期末試験との間で同一又は類似の出題がなされているといったことが散見されるわけであります。
  なお、一部の法科大学院では、低い出席率で定期試験を受験させ合格させるということが行われておりましたし、期末試験を行った結果、不合格を相当とする学生に対して、当該学生の成績評価を最終決定する前に、あらかじめ学生に明示していた成績評価基準とは異なるものを用いて再度評価するといったような形で、成績評価を行うといったものが見られましたので、こういったものについては、評価基準を満たしていないという判断をしたところでございます。第6章の入学者選抜等でございますが、これは、創設当初と比較しますと、特に法学を履修する課程以外の課程を履修した者又は実務等の経験を有する者が減少傾向にあることは否定できないところでありまして、いわゆる未修者教育をどのようにするのかということは一つの課題になってくるかと思います。
  なお、一部の法科大学院において、法学未修者の選抜に際して、旧司法試験の論文式や短答式の合格実績、法学検定2級の合格実績など、法学の知識というものを考慮しているところがございましたので、入学者選抜における公平性の確保の観点から、評価基準を満たしていないという判断をいたしております。
  以上、簡単ではございますが、平成20年度に大学評価・学位授与機構が実施しました法科大学院認証評価の概要説明とさせていただきます。

【田中座長】
  どうもありがとうございました。
  それでは、続きまして、大学基準協会からお願いいたします。

【大学基準協会 佐上副委員長】
  大学基準協会の法科大学院認証評価委員会の副委員長をしております佐上でございます。今年度の認証評価の結果でございますけれども、お手元の資料の2の2の2ページ目以下に載せております。今年度、14大学から申請がございまして、そのうち5つの法科大学院については適合という評価をいたしました。ただ、その中の3つの大学につきましては、適合はしているけれども、過度に司法試験の指導というような形でなされておりまして、これが正課にも影響を及ぼしていると判断した上で、付記事項という形でその関連の事項について毎年報告していただくようにしております。残りの9校につきましては、不適合という大変厳しい結果になりました。そのポイントにつきましては、配付資料の2の2に上がっておりますので、ご覧いただければと思います。
  それから、昨年度実施いたしました認証評価で、慶應義塾大学で元司法試験委員によります問題の漏洩疑惑というのがございました。これにつきまして、主文に付記をさせていただいて、再発防止策について毎年、報告いただくということをお願いしていたわけでありますが、その結果につきましても幾つかの資料が出されてまいりました。その判断結果につきましては、配付資料3の19ページ以降に出ておりますので、ご覧いただきたいと思います。再発防止策の履行状況が十分であるとは言いがたいという形で、来年度も改めてまた報告をしてもらうというお願いをしております。
  今年度、評価いたしました中で、問題となってまいりますことは、他の評価機関からも出ておりますように、一つは、ほとんどの大学で完成年度を迎えた後、カリキュラムの改革がなされております。そのカリキュラムの改革が、どちらかというと法律基本科目に偏向するような形でなされているところが多いということでございます。ただ、法律基本科目あるいは実務基礎科目、隣接科目、あるいは、展開・先端科目の適正なバランスをどう考えるのかということは大変微妙な問題です。例えば、隣接科目を最低限何単位とらなければいけないのか、必修にするのか、あるいは、実務基礎科目についても、何単位を必修にするのかというようなことについては、それぞれの法科大学院でみんな違うわけですね。法律基本科目というときに、シラバスからは判断できるけれども、これを展開・先端科目にした上で、単に選択科目という形で履修できるだけではなくて、シラバスを見ると必ず履修しなさいというふうな指導がなされていて、実質上履修を求めるという形で、最大七十数単位が法律基本科目の履修で修了できるというふうな条件ができているわけですね。こういうところにつきましては、バランスを欠くという形で評価せざるを得ないわけですけれども、この限界はどの辺まで考えるのかということが問題になってくるところでございます。
  もう一つは成績評価であります。これも、各法科大学院によりまして、相対評価あるいは全体評価というふうな幾つかの判断基準を設定しているわけでありますけれども、実地視察の際のヒアリングの結果でもその水準が明確になってこない。合否については絶対評価によるのだということでありますが、成績の合否のデータを見るとかなり甘いと言わざるを得ない、あるいは、平常点評価と期末試験の成績の評価の割合といったものもだんだん曖昧になっているという部分を指摘せざるを得ないわけです。今後、厳格な成績評価ということが一番大きな問題になろうかと思いますけれども、それぞれの法科大学院の独自性と言いましょうか、自主性を尊重しつつも、質の確保という点で大変大きな問題になるのではないかということでございます。
  それから、今回の評価でもう一つの特徴的なことと言いますのは、いわゆるティーチングアシスタントとか、弁護士を登用して、院生の指導の補助にあたらせることがだんだん多くなってきているようであります。しかしながら、場合によりますと、ティーチングアシスタントが専任教員の補助を行うということを超えて、正課の授業の一部を完全に担当しているというふうな状況が見られるということであります。そうなりますと、教育を担当することについて、任用基準が定められているにもかかわらず、こういうふうな形でそこがしり抜けになってしまう危惧が出てくるわけでございますので、こういった点について注意していく必要があるのではないかということでございます。
  それから、もう一点は既修者の認定ということでございます。30単位ということは法令上の限界でありますけれども、その認定の方法であります。法律基本科目の講義形式の科目30単位というのが一般的な方法であろうかと思いますが、例えば民法の幾つかの科目を除外する、あるいは、刑法の一部の科目を除外して単位を認定する。その法律基本科目以外の科目を認定するという方法も出てきております。この点で、既修者認定というのを、30単位上限であるけれども、どの科目をどういう形で認定して運用するのかということを明確に示しませんと、いろいろな逸脱状況生れてくるのではないかということが危惧されるということでございます。
  最後に、当初予定していなかった状況でございますけれども、広く流布していると考えられますのが、課外での指導であります。中教審のほうでもガイドラインが示されておりますけれども、その限界というのは大変微妙であります。大学基準協会でも、正課内でこのような指導が行われているということをもって不適格の理由にはしておりませんが、それが正課の授業に影響を及ぼすと見られる場合には、冒頭に申しましたように、適合はしているけれども、その他の状況について改善するように、資料の提供あるいは改善の報告を求めるという形の認証評価をしているわけです。
こういった点について、それぞれの評価機関でも一定の基準に従って対応を行っていけるように検討してみる必要があるのではないかと考えているわけでございます。これが全体の評価を終えてみて、なおかつ、中教審の法科大学院特別委員会でもこの間、司法試験との関係とかいろいろと検討されているわけでありますけれども、今申しましたような各法科大学院の実情も十分に認識していただきまして、検討をより深めていただきたいと考えている次第であります。
 以上です。

【田中座長】
  どうもありがとうございました。
評価機関からそれぞれご説明をいただきましたけれども、それに関してご意見並びにご質問がございましたら、お願いいたします。先ほど事務局から紹介いたしました資料なども参考にしながら意見交換していただければと思います。

【井上委員】
  どの機関からでも結構ですけれども、それぞれの機関や関係者がご努力されて、一生懸命適正な評価をしていただいていると認識していますが、世間からは、3つの機関それぞれの評価のやり方とその結果にばらつきがあるのではないかと見られているところがあります。それが認証評価全体の信頼性についての不信に結びついていると思うのです。この点で、3機関の間ですり合わせとか協議が行われているようにも伝え聞くのですけれども、その際の問題認識と、どういうことを検討して、どういうところまで検討が進んでいるのかについてご説明いただければと思います。

【日弁連法務研究財団 清永事務局長】
  それでは、法務研究財団の事務局長の清永からご説明いたします。今は評価に集中している関係でできてはいないのですけれども、一連の評価の前の段階で比較的余裕があったときに、3機関の事務局レベルで打合せというか連絡会議を行っていました。そこでは、それぞれの機関が、評価にあたっては、こういうような事例がありました、問題点がありましたと。それについて他の機関ではどう考えるかという点も含めて意見交換をいたしました。私の感じとしては、事例ごとに特質があるものですから、それぞれの結果だけを見るとばらつきがあるように見えるけれども、3機関とも考えていることは似通っていて、同じケースであれば同じような結論が出てくるのではないかなという印象は抱いております。

【大学評価・学位授与機構 川口理事】
  日弁連法務研究財団からのご報告のとおりですが、評価結果を公表する前にすり合わせて調整するということはやっておりません。私どもとして3機関にそんなに差があるという印象はあまり持っていないというのがお答えのような気がします。

【大学基準協会 工藤部長】
  先ほど日弁連法務研究財団の事務局長からご報告がありましたけれども、20年度の評価の忙しくなる少し前に3機関で議論しました。18年度は日弁連法務研究財団の結果のみですが、19年度の評価結果、事例に、それぞれで問題になったことを入れまして、どういうふうな判断をしたかということをお互いに報告しあって、それに関していろいろと意見交換させていただきました。先ほど日弁連法務研究財団からもお話があったように、3機関とも大体同じような見解でございます。そうした内容につきましては、実際の評価の中でもフィードバックして評価をやっております。

【井上委員】
  付随してお聞きしたいのですが、評価の仕組みについては、私どもも一応理解しているつもりですけれども、1つの基準に不適合であれば全体が不適格となるところから、少し緩やかなところ、あるいは、総合的に判断しているところと、一見するとそういう違いがある。その辺のところは、実質的には違わないというご説明であったと思いますけれども、その点についての協議はなさっているのかどうか。

【日弁連法務研究財団 清永事務局長】
  この辺の基準のつくり込みと言いますか、最終的にどうやっていくべきものであるかというのは、3機関それぞれの特徴、特色ではないかと、私個人としては考えております。財団につきましては、それぞれ段階というか、法令由来基準とそうでない基準等々に分けており、判断しております。特に、他機関に合わせようということは財団では考えておりません。

【田中座長】
  今、井上委員が指摘された点は、各認証評価機関の結果について、主としてマスコミの報道の仕方の問題だと思いますけれども、評価機関のいずれかの評価基準に不適合だと、全体として不適格にしている場合の問題です。今日も説明されたところですが、そのあたりがよく理解されていないところがあるので、不適格という結果がかならずしも常に教育の質の全体的評価と直接結びつくものではないということをもっときちんと説明する必要があります。

【大学評価・学位授与機構 川口理事】
  ご指摘の点は、先ほど野坂委員からも申し上げましたように、私どもは評価結果を公表する際に、委員長名で、今出てきたようなことも同時に記者にお渡ししております。私どもは予備評価のときはもちろん公表しておりませんが、その後も毎年同じような説明をしています。私の個人的な印象も含めて、次第に皆さん理解してくださっているとは思いますが、完全ではないということも事実でございます。その辺をきちんと説明することも必要という気がいたします。これは法科大学院だけの問題ではなくて、機関別認証評価の問題でも同じようなことがあります。

【日弁連法務研究財団 飯田副委員長】
 日弁連法務研究財団では、資料2の4の2枚目に適格認定の方法が書いておりまして、3種に分類されておりますが、5年間の経験を経まして、次なる5年間に向かって評価基準等々の見直しが必要になってまいりますけれども、この3つだけでいいのか。例えば、先ほど柏木委員長から話がありましたように、全部一応適格であっても、トータルで不適格とすべきケースがあるかもしれませんし、法令由来基準でも、法令そのものなのか、法令プラス解釈が必要な場合、1個が不適格で、それだけで直ちにトータル適格としていいかどうか。このあたりの仕組みについては、再度議論する必要があるかなと考えているところでございます。

【有信委員】
  法科大学院とは違いますが、工学系のドクターでは、やはり4つのランクに分けて評価をされています。例えばアメリカでやっていただいたこととうまくつながっているだろうかということ。それから、ウィーク、コンサーン、最後はディフェクト。最後のディフェクトが1つでもあると、これは不適格だという話になるわけですね。したがって、A、B、C、Dという分け方にすると、ここの部分の基準の共通化は難しい。例えばウィークとかコンサーンの余裕がどうであるかということであれば、多少評価の部分は、例えばウィークだと、具体的にいうと例えば3年ぐらいの時間をかけると十分に完成できるわけですが、コンサーンだと3年ぐらいの期間をかけて改善がなされるかどうかというレベルで評価をする。
  つまり、言いたかったことの一つは、評価というのは、区別をして、出来が悪いものを排除するということではなくて、大学評価・学位授与機構の資料に書いてありますけれども、基本的には今の教育機関をよりよくするための評価であるという点で見ますと、そういう点でも評価される。ディフェクトというのは、少々のことでは、根本的にやり方を変えないと直しようがないというようなものについて、あり方を変えてもらうということで適格にしていく。こういうことでありますから、1個でもDがあると全体が不適格という思想になります。
  それから、質問ですけれども、今言ったように、教育プログラムあるいは教育機関そのものが、今のコンサーンというレベルからよりよくなるということであるとすると、連結の部分で様々な問題があるものが、具体的にフィードバックされて、教育プログラムの改善に結びつくようなシステムが重要だと思います。例えば、教育プログラムが改善されるような仕組みが埋め込まれているかどうかというのは非常に重要だと思います。そういう点については、今回の評価の中で組み込まれていたのでしょうか。
 もっと簡単に言うと、PDCA、Plan Do Check ActionのときのCheckまではここでいいわけですね。その次のActionに結びつくところ。PDCAというのは、教育プログラムの中にPDCAのサイクルが埋め込まれていないとよくなっていかないわけですから、CheckからActionに結びつく部分についての視点が評価基準の中にあったような気がします。

【大学評価・学位授与機構 川口理事】
  今ご指摘いただいたように、そういう視点はもちろん入っていますが、評価はまだ1サイクルですし、法科大学院も設置されて間がないわけですから、それがきちんと機能しているかというところまではまだちょっと判断しにくいというのが、今のご質問へのお答えではないかと思います。

【日弁連法務研究財団  飯田副委員長】
 日弁連法務研究財団の場合は、最終的に発表されている報告書の手前の原案の段階では、改善勧告という欄がございます。ですから、ご指摘のような点は改善勧告のところは相当書き込んでおりますが、公表時はそこは削除しております。
  もう一点は、法科大学院と評価チームとの意見交換会をやります。現地調査の3日間で非常に長時間やられますが、そこでフィードバックするということですね。評価に問題がある教員については、個別面談をしておりまして、その教員の教育レベル等についての議論を行い、個別的なフィードバックをしております。

【有信委員】
  外部からのフィードバックについてはそれで結構だと思いますが、法科大学院そのものが事後改革の仕組みを自分のところで持っていなければいけないということです。法科大学院の目的があって、その目的を達成するために教育プログラムがつくられていて、それの達成度がどういう形で図られていくのか、こういうことをチェックしていただいているわけですね。
  最初の説明にありましたように、総合的な判定が非常に悪いという問題があるにしても、結果的に高度な専門的職業人が育成できているかどうかということを、法科大学院自身が評価をして、その間のギャップを埋めるための努力をするための仕組みを自分のところで持っていなければいけない。今、評価基準がどうのこうのというつもりはありませんが、今の説明では、そこを評価したという観点があまり見えませんでした。

【日弁連法務研究財団 柏木委員長】
  日弁連法務研究財団の評価基準では、自己改革という事項がございまして、自己改革を目的とした組織体制が整備され機能しているかという点で、ご指摘の項目はチェックしました。今回この点でも不適格と出ております。

【大学基準協会 佐上副委員長】
   大学基準協会のほうでも同じく、自己点検の組織がきちんと機能しているかどうか、それが教育の改革につながっているかどうかということは、一定の評価をしているわけでございます。まず、それぞれの法科大学院で自己点検をしていただいて、その結果をご報告いただくという形から、それぞれの法科大学院がそういう活動ができているのかどうか。できていない場合はこの点を評価をするということであります。
  ただ、例えば、点検・評価活動にしましても、それがどういう仕組みでそれぞれの法科大学院で教育の改革につながって、どういうふうな成果を上げたのかというところまでは、現在まだ明確な成果としてもうひとつ出ていないところがございます。カリキュラムの改革という形で出ているところもありますけれども、そういった印象については、もう少し待たなければいけないのではないかと考えているところです。

【大学評価・学位授与機構 川口理事】
   ご指摘の点ですが、機構の場合の評価は、一つは、第5章に教育内容等の改善措置ということでは、例えばFDなどがありますし、それ以外に第9章の管理運営等の中に、自己点検及び評価に係る基準がございます。       

【松村委員】
   評価の現場からの視点で感想とご質問をしたいと思います。まず評価自体ですが、3つの機関が評価基準で少しずつ違ってきているような気がしています。我々はいろいろな情報を集めて、どこがどういうふうな評価をしているか見ながらやっていきます。その場合に、評価機関と我々の考え方、教育方法と評価自体が合わなかったり、意見が対立する場合が幾つかあります。その場合、評価機関の判断が本当に適切なのかどうか。この検証をしなければいけないのではないかと思います。要するに、評価される側の意見をどのように汲み上げて、それが評価の基準等にどのように反映されていくか。それが3つの機関でどのような形でもよいので、連携していただきたいと思いますが、そういった形での評価基準の見直し、その辺をどう考えられているかということをお聞きしたい。
  もう一つは、昨今、司法試験の合格者数、合格率が非常に強く指摘をされています。中教審の中間まとめにもそういう方向性が示されています。ところが、現在の認証評価は、その部分を評価していないのですが、今後もその方向性は変わらないのかどうか。その辺の認識をぜひ聞かせていただきたいと思っております。

【日弁連法務研究財団 柏木委員長】
  第1点の評価基準ですけれども、これは先ほど私どもの事務局からご説明いたしましたように、3機関で特徴を出していいところと、共通でなければいけないところと、その2つがあるのだろうと思います。これにつきましては、これからもすり合わせが必要だろうと思っております。
  もう一つ、評価対象の法科大学院と評価機関との意見が合わないという点でありますけれども、これも直さなければいけない。どっちに合わせるかということは別として、日弁連法務研究財団としましても、トライアル評価をずいぶんやりまして、その辺の評価基準は精緻なものにしたはずですが、トライアル評価と本評価は大分違うという印象を私個人は持っております。そういうことから、5年で一巡したところでもう一度評価項目、評価基準の見直しが必要だろうと思っております。

【大学評価・学位授与機構 川口理事】
  ご質問に関しましては、私どもは各年度の評価が済み次第、対象法科大学院、それから、評価を担当してくださった方々にアンケートをお願いして、それを毎年集計して、すぐ評価基準に反映できるものは反映させております。
  それから、今のご指摘の点は、例えば訪問調査したときに、意見交換をしているときの情報も取り入れるようにしております。最後には意見の申立てというプロセスがございますので、そのときにそれぞれの法科大学院から意見をいただくこととなっています。今回で1サイクルが済みますので、これから評価基準の見直しの検討を始め、今まで指摘されたものが十分反映されているような形で、次のサイクルに向け見直していきたいと思います。

【大学評価・学位授与機構 野坂専門委員】
  補足的に説明をさせていただきます。今、川口理事からお話があったとおりですが、実際に書面調査と訪問調査を通じて、特に訪問調査で現地に赴いて対象法科大学院の教員との面談を行い、それを通じて意見交換をする。そのときに、明らかに意見の対立が見られる場合もございますが、ご意見を伺った上で、それを持ち帰って、様々な法科大学院を調査した各部会の間で議論し、出てきた問題点をすべて検討するようにしております。
  その中で、対象法科大学院のご意見にもっともなところがあるのでないかというようなことがないわけではない。そういうものについて真摯に検討して、これまでに予備評価から本評価へ向けて何回か評価をしてきたわけですが、その過程で基準や解釈指針の趣旨をより明確にするということはやってきたと思います。他の認証評価機関との間でさらにそれを調整するというのは、その適否も含めて今後の課題かなと考えております。
  それから、先ほどご質問のあった司法試験の合格実績との関係ですが、これも機構の中でまだ十分検討している課題ではないと思います。理念としては、法科大学院で教育を受けた者が、制度の目指す質の高い法曹としての適格性を有するかどうかというのを判認定するために、新しい司法試験があるのだと思いますので、法科大学院の教育がきちっとできていれば、おのずから合格にもつながるはずだと思います。法科大学院協会でも参加校に協力を求めていわゆる連携調査を行っておりますし、私の本務校でも独自の調査をしておりますが、法科大学院での成績と新司法試験の合格実績との間には明らかに相関関係があって、法科大学院で成績のいい者はやはり合格により近いということは、はっきり言えると思います。
  ただ、今のところまだ法科大学院教育の成果が試験のほうに十分反映していない面があることも否定できないように思われます。そのためにいろいろな意見が出てくるのでしょうが、その点は、合格実績を上げることだけを考えた教育をするということが適当なのかというと、それはそうではないだろうと、また、受験対策的な教育をすれば、合格実績が上がるかというと、それも違うと思います。その意味で、全く実績がないということは、法科大学院教育の方にも問題があるという考え方はできると思いますが、満足な結果が得られないからと言って、合格実績を上げることだけを考えて教育内容をどうしたらいいのかということを問題にするのはおかしいと思います。やはり理念どおりに新しい法科大学院教育をやっていくのが筋であって、我々はそういう法科大学院教育を認証評価の対象にしていくということだろうと考えております。

【大学基準協会 佐上副委員長】
  先ほどのご質問で思い当たるところがあります。評価基準が多様な法科大学院に等しく適用されるということであります。そういう中で全く同じ基準を適用しますと、様々な委員会を立ち上げていくにしても、大規模校、中規模校と比べれば、小規模校の先生方は大変忙しくなってしまう。かといって、小規模校については基準を変えるのかということになると、そうはいかないだろうと。多様な法科大学院を対象にしていますが、こちらで定めた基準を適用していかないと、評価自体が信頼性を失ってしまうということも出てきかねないということで、受ける側からすればご不満があるかもしれませんけれども、それを全部聞くということについても限界があるということはご了解いただきたいと思っております。

【林委員】
  資料2の4で、様々指摘されているわけですが、各機関の評価活動に対しては敬意を表したいと思いますし、私どもの教官も評価に参加させていただいているわけですけれども、1の(1)、(2)にあるとおり、認証評価基準は余りにも項目か過度に細部にわたって、あるいは、形式な事項があるような感じが否めません。このあたりは1巡した段階で評価基準をこれから見直されるんだろうと思いますが、費用対効果の視点も含めて評価基準を考えていただく必要があるのではないかと感じています。
  先ほど来伺っていると、新しい課題のご指摘はありますが、こういうものは評価基準から外した方がよいのではないかというようなご指摘がなかったものですから、今この場で具体的にそれを伺っている時間はありませんけれども、こういう方向性について、あるいは、重点的な形で、教育の質の保証という観点で、1つなり2つの視点を重点的に評価基準を整理していくということも考えられると思います。そのあたりのご意見があれば聞かせていただきたいと思います。

【大学評価・学位授与機構 川口理事】
  この部分は、必ずしも法科大学院固有の問題ではないという認識の上でちょっとお話させていただきたいと思います。国際的に評価というのは行われておりますが、今の国際的な評価の中身というのはアウトカム、成果をきちんと評価すべきであるというのが基本的な考えです。今ある項目はどちらかというと、評価の専門用語でいうとインプット、投入する項目となっています。どのくらいの教員組織をつくってとか、あるいは、教育のプロセス、これを評価しています。特に法科大学院の場合には、最後の成果を見せられるというか、見せるような状況に必ずしもなっていないとすると、どうしてもそこの部分に注目が集まって評価をしていきますので、おっしゃるように非常に細かいところまで評価しているという印象があると思います。これは、今申し上げましたように、そこの教育を受けた成果としてどのぐらいの成果が上がっているかということを評価できるような状況になればと思います。評価をしていて、項目に重複があったりとかしておりますので、整理するところは努力するつもりでございます。

【磯村委員】
  最初に、井上委員からご指摘のあった点に関係することですけれども、各認証評価機関があるということは、各認証評価機関にそれぞれ独自性があるということは当然の前提となっていると思いますが、コアな部分で判断がずれてくるというのは、受ける側としては十分納得がいかないという点があるのであろうと思います。先ほど法令基準についてはというご指摘もございましたけれども、法令基準といっても、例えば30単位しか認定してはいけないところを34単位というのは非常に厳格ですが、数字的な形ではない、定性的な部分も含んだ事柄については、各認証評価機関でのそれなりのすり合わせというのがあるといいなと思います。
  とりわけ、受ける側からのご意見がございましたけれども、透明性というのはすごく大事で、私は評価する側と評価される側と両方経験しておりますが、こういう基準でこうなるのかということの事前予測が認証評価を受ける側にとって非常に重要だと思います。今後基準を見直していかれると思いますので、ご考慮いただけると大変ありがたいと思います。

【井上委員】
  同じような趣旨ですけれども、先ほど定量的なものより定性的なものについては客観的な評価が難しいとおっしゃった。それはそのとおりだと思います。ただ、客観性を強調される余り、数値目標を設定し、それを杓子定規的に適用して判定していくと、かえっておかしなことにもなっていくおそれがあります。現に,1つの基準に適合しないだけで不適格とされる一方、すれすれだでも適合となってしまうという現象が生じているように見える。トータルで見ると、非常に教育の質も高い法科大学院が、1つの基準に適合していないだけで不適格の判定され、世間的にはあたかも質がトータルで悪いような印象を持たれてしまう。ところが、質的に問題があるのでではないかと感じられる法科大学院の方は、すれすれで適格の判定をされているというところもあるように思われます。評価基準を見直していかれるときには、その辺にも十分配慮して、質を適正に評価できるようなものにしていただければと思います。

【日弁連法務研究財団 柏木委員長】
  先ほど法律基本科目以外で33単位という数字を申し上げましたので、ちょっと杓子定規に聞こえたかもしれませんけれども、我々は実に柔軟にやっております。33単位を切ったからといって、即不適格というふうにはしておりません。実質的に33単位未満で卒業した人がどの位いたかなどを評価しやっております。おっしゃるようなことはこれからの見直しで念頭に置きながら、評価基準の見直しをやっていきたいと思います。
  それから、つけ加えておきたいことは、最初の一巡目につきましては、幾つかの法科大学院については特殊事情があります。特殊事情というのは、情報の伝達がよくないのか、当然守っているだろうと私たちが考えていることについて誤解がある。その誤解のために、法令由来基準を満たしておらず、その程度も看過できず、すくえないというところがいくつかありました。その点以外は非常にいい教育をしているのに、法令由来基準を誤解していたために救いようがないというので不適格にしたところがあります。これは二巡目ではなくなるんだろうと思います。ですから、非常に評判がよいのに、不適格の判定を受けたという法科大学院は二巡目では少なくなるのではないかと考えております。

【田中座長】
  どうもありがとうございました。
  まだいろいろご議論があるかと思いますけれども、予定した時間がまいりましたので。各評価機関において改善のご努力をしていただくとともに、文部科学省の方でも認証評価の仕組みとか特徴を社会的によく理解してもらうように説明する努力をしていただかないと、誤った情報が流布していく可能性がありますので、そのあたりも考慮して説明をしていただきたいと思います。今日ご指摘いただきました問題点につきましては、法科大学院教育の質の向上の改善方策のまとめに反映させていきたいと思います。お忙しい中、長時間、ありがとうございました。

【磯村委員】
 それでは、資料4に沿いましてご報告をさせていただきたいと思います。
大きな柱として3つございます。まず、1ページ目の1共通的な到達目標の設定と達成度評価方法の囲みを中心にご説明いたします。
  将来の法曹として、法科大学院でどういう学修をするかということですが、いずれの法科大学院にあっても最低限これだけのことを共通に学んでほしいということを前提として、修了者の質は確保されるということになるかと思いますので、共通的な到達目標を策定する必要があり、また、そのような到達目標の設定によって、法科大学院における教育内容・方法の改善が図られるということが、スタートの考え方であります。これを前提として、2つ目でございますが、対象とする科目としては、法律基本科目と法律実務基礎科目、これは一般的ではなくて、必修科目としての法律実務基礎科目を対象と考えております。これは、先ほどの法曹としての教育に必要な能力と連動する問題でございます。どういう内容かということについては、そこにありますように、単なる一つ一つの知識ということではなくて、基礎的な理解ができているか、体系的な法的思考能力があるか、創造的・批判的思考能力があるか、等々の幅広い内容とすることが適切であると考えられます。
  かつ、このような共通的な到達目標の水準は、ミニマム・スタンダードという性格を持っておりまして、各法科大学院はそれを踏まえて、それぞれの教育理念に則って、よりよい方法により、レベルの高い到達目標を設定していただくことが強く期待されるところであります。ちなみに、資料4の後ろのほう、9ページの後でございますけれども、複数の法科大学院の教員や法曹界の方々の参画にりどういうものが共通的な到達目標に相応しいかという調査研究を進めております。現在の時点ではまだ未確定のものでありますけれども、どういうことが考えられているかということを示す一つのイメージとしてご参照いただければと思います。こういう共通的な到達目標の考え方は、既に中間まとめの段階でも基本的な方向は示されていたわけですが、今回、あと2つ、重要な問題点を付加しております。1つは、共通的な到達目標が設定されたとしても、それは社会状況あるいは法的状況、学問的な進展等々によって、見直しが必要であるという点です。一応の目安としては、5年程度に1回ということを考えておりますが、大きな法改正があれば、当然そういうことを待たずに改善をすることは必要だと思います。最後に、5点目でございますけれども、共通的な到達目標を前提とするときに、どうやって到達目標が実現されたかをチェックするかということが問題になります。各法科大学院において、未修者1年次から3年次まで、修了認定に至るまで、段階的にチェックポイントがあるわけでありますけれども、同時に、今日も問題となりました認証評価機関における認証評価においても、そのような観点が考慮されることが期待されるということでございます。
  続きまして、3ページの2をご覧いただきたいと思います。(1)から(3)まで3つに分かれておりますが、まず(1)、法律基本科目の基礎的な学修の確保、特に法学未修者1年次の学修についてというところでございます。5つの項目がございますけれども、とりわけ法学未修者1年次について、十分に法学の基礎的な力がつかないままに学修が進められ、それがひいては全体としての法律の学力に対する問題点の指摘につながっていくという面がございます。これは法学未修者だけではなくて、法学既修者についても程度問題として起こっている問題でありますけれども、どういう者を法学既修者として考えるかということとも関連し、第1ワーキング・グループでもご検討いただいているかと思います。
  とりわけ法学未修者に焦点をあてて、以下の問題点をご説明いたします。
  法律基本科目を重視することが偏重になってはいけないということを、同時に考慮する必要がありますけれども、法曹の前提として法律基本科目に対する十分な理解が必要となると思われます。したがって、それを質的・量的にさらに充実させることが重要な課題となります。そこで、具体的にどういう方策を考えるかということですが、これが2番目の丸でございます。現在、履修登録単位の上限は標準が36単位でありますけれども、法学未修者1年次の段階でこの単位数を最大限に使ったとしても、十分な基礎的な学修ができているかどうかということについては、種々の疑問が提起されているところであります。
  したがって、今回の提案は、法学未修者1年次については、36単位という履修登録単位数の上限を標準という枠内で柔軟に解釈して、例えば42単位程度、つまり6単位程度を上乗せするような形で運用することを考えてはどうかということでございます。仮に現在の修了単位を93単位としている法科大学院について言いますと、93単位に加えて6単位の1年次における法律基本科目系の単位を上乗せすることも制度的に可能とするものであります。したがって、法律基本科目を増やすことによって、法律基本科目以外の科目の履修が損なわれることにはならないという仕組みを考えているところであります。これが一つの重要な変更点でありますが、もう一つ、授業方法の問題としては、法科大学院における授業は双方向型であるということが過剰に強調されてまいりました。その重要性が失われているわけではありませんけれども、法学未修者1年次については、どういう形でどういう授業のテーマをどのようにひくかということについてもう少し多様な考え方があり得ることを考慮し、例えば、双方向型と講義型の授業形式を適切に組み合わせるというような方向も考えられるということかと思います。
  4点目は、法学未修者が1年次から2年次へ進級するときに、多くの法科大学院では進級制度をとっておりますけれども、これが緩やかに運用されることになりますと、法学未修者が2年次になって法学既修者と同じ授業を受けるというときに、場合によってはその授業の中で十分に対応することができないという問題がございます。進級制度についても、そういう観点から進級させていいだろうかということを入念にチェックすることが必要になるかと思われます。こういう新たな考え方をとるということになりますが、法科大学院においても柔軟に考え、あるいは、授業方法について自由度の高い組み合わせができるということを踏まえた評価の必要性が生じることになるかと思います。
  次に、6ページにまいりまして、2つ目の柱として、(2)法律実務基礎科目のあり方というテーマが挙がっております。法科大学院における法律実務教育のあり方はどういうものかということについては種々の考え方がありますけれども、従来、それについての関係者の認識は必ずしも十分に共通していなかったという面がございます。こういう実務教育の導入的役割を果たす面がある科目についても、共通的な目標設定が必要であると考えられます。その場合に、法律実務基礎科目の到達目標というのは、法律基本科目の到達目標は何かということと無関係に定めることは不可能であります。
   したがって、法律基本科目との連携が必要であり、そういう点を考慮すると、法律実務基礎科目の配当年次については、基本的には2年次、3年次というのが考えられる方向であろうと思います。ただ、この点はやり方によっていろいろな考え方があり得るところであり、ここではそういう考え方が有力であるということを指摘するにとどめております。いずれにせよ共通的な到達目標を設定し、実際にその科目を実施するときには、実務家教員と研究者教員の連携が不可欠であるということを特に指摘しているところであります。
  3つ目は、7ページの(3)厳格な成績評価・修了認定の徹底ということであります。先ほどもお話が出てまいりましたけれども、成績分布が適正に進められているかという問題とともに、その成績分布に従って成績評価がなされているかという点では、これまでにも幾つか問題点が指摘されております。この点でさらに適正な成績分布を実現することが必要であると同時に、そういうものを前提として、いわゆるGPA制度を活用することによって、ぎりぎりの単位はとれているけれども、全体として成績が芳しいとは言えないという者をチェックするという制度は必要になると思われます。成績分布が適正であるということは、すべて相対評価ということではなくて、法科大学院においてこの科目に対して単位認定をするためには、法科大学院のレベルとして最低限これだけのものは必要であるという意味での、ある種の絶対評価的な性格を持つものであるということを特に強調しておく必要があるかと思います。
   2つ目は、繰り返し指摘されているところでありますが、再試験制度は運用の仕方によっては本来の期末試験で十分な成績を上げることができなかった学生を救済することになりかねないという意味で、再試験制度を採用する場合には、適切な運用に特に留意される必要があるということを指摘しております。
  最後に、8ページ、3司法試験との関係でございますが、ここでは2つの項目を挙げさせていただきました。法科大学院における教育は、将来どういう法曹になる者を育てていくかということで、その内容・方法が問われるところでありますので、単に司法試験の合格率がどうかと、合否の問題だけを過度に強調することは適切でないということは繰り返し触れられているとおりであります。他方で、法科大学院というのは法曹を養成する中核的な教育機関であるということであれば、司法試験に合格する者が極めて少ないという状況、例えば名目的な平均的な合格率に比べて、それを相当下回るような合格率で推移しているという場合には、適正な者を入学させられるかどうか、その入学者に対して十分に適切な教育を行っているかどうか、あるいは、修了者認定が適切に行われているかどうかということを見直していくことが必要であると思われます。加えて、合格者がほとんどいないという法科大学院については、法曹養成機関としての役割が十分に果たせているのかという観点から、そのあり方を根本的に見直すことも考える必要があると思われます。
  第2ワーキング・グループとしては、以上のとおり、修了者の質の確保について報告を取りまとめました。

【田中座長】
  どうもありがとうございました。それでは、ただいまのご説明についてご意見、ご質問がありましたら、ご自由にご発言いただきたいと思います。

【永田委員】
  3ページの2の(1)の枠囲みの中の3つ目ですけれども、少し表現を慎重にというのが私の意見です。と申しますのは、双方向の授業法というのは1年生で一番大事だと思います。そこで、法律とはこういうふうに考えるものかというものを身につけさせて、その後の法科大学院で学修するということが大事だと思います。ですから、これまで様々な経験をしてきた法科大学院の1年生に、法律とはこうやって考えるんだということを示しながら、双方向・多方向というのを中心にして授業を行うことが基本であると私は思います。現在の表現ぶりですと、知識教育偏重になってしまう懸念がありますが、いかがでしょうか。

【磯村委員】
   この点は多様な意見があり得るところだと思います。ワーキング・グループの中で議論をしたときにも、2年次あるいは3年次に対する双方向からの教育と、1年次に対する双方向型の教育は、やり方は違うけれども、双方向型それ自体には効果的であるという意見もあり、他方で、ある程度体系的な枠組みを使えるときに、それだけでいいのかというご意見もあったところです。 双方向型は十分に成り立ち得るし、むしろそういうほうが学生諸君にとってより効果的ではないかというところも感じるけれども、これが本当に未修者1年次に適切な方法だと法科大学院の教員全員が思っておられるかというと、そこには少し幅があり得るのではないかということで、こういう含みのある表現を選んでみました。しかし、この委員会においてはそれは適当ではないというご意見が支配的であるということであれば、ここのところはさらに検討し直す余地はあるというように思います。

【鎌田委員】
   今の点につきまして、私自身は1年次について一貫して双方向の授業を行っておりますけれども、いわゆる純粋未修の学生につきましては、それと講義形式を併用したほうが効果が上がるだろうという印象を持っております。永田委員も表現上の工夫ということでのご意見だと思います。それに関連した質問ですが、1年次未修者について、現在の36単位から42単位に増やすとされています。現実を踏まえたご提案だと思いますが、現在、設置基準上、既修者について1年の修了年限の短縮を認めていますけれども、単位免除の上限が30単位です。そうなると、法律基本科目6単位を全部1年生に設置しますと、第1ワーキング・グループの原案では、法律基本科目30単位を1年次に設定して、30単位を一括免除するという方向で議論しておりますが、1年次に法律基本科目を36単位開設してしまいますと、6単位は免除できないということになるので、2年既修で入学してきた者が6単位分は1年の科目を履修しにいきなさいということにならざるを得ないように、形式的には思います。
  それができないとなると、増加した6単位は1年ではなくて2年に配当するということになって、ここのねらいと少し違った方法になっていってしまうように思います。単位免除の上限との関係で、どのような形での組立になるかを教えていただけますか。

【磯村委員】
  これは事務局にご説明いただく方がよろしいかもしれませんが、法学既修者について30単位が認定される限度であるということについては、変更を加えることは全く考えておりません。現在においても、1年次に例えば法律基本科目を36単位、履修登録単位の上限まで対抗して履修させるということになると、今、鎌田委員がおっしゃった問題は既に現時点で生じているところであります。これはあくまで法学未修者として1年次に入った者についての上限をゆるめるという考え方でありますので、2年次からの履修については逆に法学既修者と同じコースを履修していくという発想をとっています。したがって、仮に法学未修者1年次にこの6単位を上積みした法律基本科目を履修したとしても、法学既修者については法学既修者として入ってきた段階で30単位が免除されて、その部分の法学の前提となる学力と、法学未修者1年次に、これだけの学修を経て同じクラスで授業が受けられるというのを実現すると。そういう制度として考えておりました。逆に言えばそういうずれがあるということは、そのまま認めようという考え方を前提としているところです。

【鎌田委員】
   よくわかりました。その6単位分は、未修で入ってきた者のほうが既修者よりも卒業までに取得する単位が6単位多いという仕組みということですか。

【磯村委員】
  そういう仕組みです。

【林委員】
  ただいまの法学未修者についての6単位のところですが、私どもは前々から法律基本科目の重要性を感じており、そういう意味で非常に評価できます。ロースクール2回目の卒業生の修習生が昨年二回試験を受けて卒業していったところ、二回試験に落ちた人数は6%を切っていますから、大多数の94%がコースに乗ってスタートしているので、そこは評価していますが、落ちた人の大多数は法律基本科目の理解が不十分ということで落ちております。また、修習において、2回試験に落ちるまでに至っていませんけれども、法律基本科目の理解が不十分な層があるという声は、修習の指導に関わる者共通の認識です。法科大学院に教員として派遣されている裁判官の感想等を集めてみても、法律基本科目に対する理解が不十分な層がおり、そういう人たちに幾ら法律実務基礎科目を教えたとしてもなかなか伸びていかないという話も聞きます。また、これは極端な例かもしれませんけれども、自分は先端科目的な領域は非常に詳しくて自信があるという修習生の中には、民法といった基本法の理解ができてない層もいるわけでございます。
  そういう意味で、法律基本科目の教育についてもう少し充実を図っていただきたいという問題意識を持っておりまして、第2ワーキング・グループでも私どもの代表者からかなり強く申し上げました。その問題は未修者に限らない問題でありまして、既修者に関しても共通に見られるわけです。それについては、3ページの部分は、未修者を対象にしている項目ということでなかなか対処しづらいというお話がありましたが、先ほどの認証評価の話になるといつも私どもが違和感を覚えますのは、司法試験の受験対策でやってはいけないのは当然のことだと思いますが、展開・先端科目の名前で法律基本科目をやっている。隠れ法律基本科目が問題視されます。
   教育の内容、問題にされた実務を私どもは知らないわけですが、先ほど申し上げたように、その気持ちの中には法律基本科目をしっかりやるべきではないかという、秘められた部分もあるのではないかと。そのあたりをもう少し実態に合った形での見直しなり、認証評価についての柔軟な扱いの余地を認めていただけないだろうか、そういう感じがいたします。

【磯村委員】
  今のご指摘は、ワーキング・グループの中でもご意見としてお伺いし、具体的にどういう形で対応できるかということを議論いたしました。法学既修者の場合、30単位が既修者として免除されるということになると、仮に93単位を前提とすると63単位の中で三十数単位を法律基本科目にあてるというときに、仮に10単位法律基本科目を増やすとどうなるかというと、法律実務基礎科目を含めて履修する単位単位数は20程度になって。10単位の法律基本科目を増やすとどれぐらい効果的かというと、民法だけで10単位とかいう配分の仕方をすることはできないとすると、各法律基本科目分野に配分される単位数はごくごく限られたものになってしまって、それほど効果的な単位数の増加とは言えないのではないかということが議論となりました。
   そうだとすると、どういう人が法学既修者として1年をスキップして、2年次からスタートすることができるというところがポイントであって、十分力のない人が2年間でプラスアルファの法律基本科目を積み上げることによって、それで足りるかというとそうではないのではないかということが、ワーキング・グループの中では多数の意見になったということで、とりわけ法学未修者の1年次から入ってくる学生に対して、どういう対応が可能かということに今回は焦点を絞ってみたということでございます。ご指摘のところはよく理解できるところもありますけれども、大きな司法制度審議会の枠の中で何ができるかということも、同時に検討する必要があったということかと思います。

【稲田委員】
   先ほど林委員から基礎科目をもう少し力を入れたほうがいいのではないかというお話がありましたが、法務の実務の立場から申し上げましても、全くそのとおりかなというように感じております。今、お話があったように、司法制度審議会等の大きな枠の中での話ですので、それと違ったことを申し上げるのもどうかと思いますが、実務科目とかが、実際に社会に出て、あるいは、私ども実務法務の中で、学校で勉強してきたことがどのぐらい役に立つのかというと、正直申し上げて、中途半端な勉強をされてきて、私はその部分は勉強していますからできますというような新入社員がいるとすると、かえって困ることになってしまいます。そういうことは実務を通じて勉強していってほしい。むしろ基本的な法律的な知識とか考え方を勉強してきてくれた人のほうが将来的に伸びる面が非常に大きいというのが、私どもの経験に基づく実態でございます。
   この点、若干ポイントがずれますが、修習生で若干誤解があるように思っていますのは、私どもが修習生を採用しようとして面接しますと、実務経験がないので実際に働き始めるまでにどういった勉強をしてきたらいいでしょうかということを聞く修習生が非常に多い。どういうことかというと、彼らが自分に期待されているものとして、自分は大学を出て、法科大学院も出て、司法試験にも合格して、修習所でも勉強した弁護士なんだと、会社に入ったらいきなり1日目から新卒の大学生とは別のレベルで活躍しなければならないというように誤解している部分があるように私は感じています。
  そういった質問が出たときに私どもが常に申し上げているのは、勉強をされてきて、司法試験に合格して、弁護士になられたということは十分尊重して、人事上も適切な調整はするけれども、我々としては新卒で入ってこられた新人と全く同じスタートラインから始めていただきたい。実務的なことはこれから勉強してくださいということを申し上げています。そういった意味で基礎科目を充実させていただきたい。まして、カリキュラムの制度的なもので隠れ基礎科目をやらなくてはいけないようなことがあれば、むしろそれを変えていただくほうがいいのかなというのが、私の感じているところでございます。

【笠井委員】
   今の幾つかのご意見を踏まえまして、私の感じたところを申し上げたいと思います。法律基本科目の教育の重要性を十分踏まえた上で、かつ、法律基礎科目、実務基礎科目との関係を考えていただきたいと思います。6ページの実務基礎科目の2番目の丸に、配当年次については、法律基本科目の基礎的な学修を終えた後の2~3年次とすることが望ましいとする考え方が有力であると書いてありますけれども、有力であるということを四角の中に書くことによって、そのように法科大学院教育の配当年次を誘導していこうというような意味に受け取られる余地もあると思います。実務基礎科目などを担当しておりますと、例えばエクスターンシップの履修報告書を見てみますと、エクスターンシップで実際に現場に触れてみることによって初めて自分に基本法の基礎的な知識がないということに気づかされたと書かれて、物事を見る切り口について法律の基礎的な理解は深まっていくということを報告するレポートが多いです。
   また、ほかにも実務基礎科目はモチベーションを高めるという意味でも非常に効果的なところがあるものですから、先ほどの四角の中に授業を効果的なものとするため、研究者教員と実務家教員の緊密な連携協力が必要であると書かれているとおり、組み合わせについては各法科大学院の創意工夫によるところが大きいのではないか。まさに法律実務基礎科目についての共通の理解というのはこれまで乏しかったという評価でありますけれども、そうしたところはまだ一律に基本科目の基礎的な学修を終えてから2~3年次に配当しなければならないというふうに言える程度になってはいないのではないだろうかと思います。この中に書かれていることについて大方は賛成でして、2~3年次とすることが望ましいとする考え方が有力であるということが認めますが、四角の枠の中にあえて書く必要はなくて、四角の枠の外に記載していただく方が、法科大学院の教育にとっていいのではないかというように思いますが、いかがでしょうか。

【田中座長】
 例えば、法律基本科目との連携の仕方をそれぞれ工夫するとかいうような表現ですか。

【笠井委員】
 そうですね、配当年次を含めて。

【田中座長】
 配当年次を含めてもう少し抽象的にした上で、2~3年と書かずにということですね。法律基本科目と法律実務基礎科目は内容的にオーバーラップしているところがあり、同じような内容が法科大学院によって別の科目群に分類されている場合もありますから、そのあたりの連携をきちんとするという方が、2~3年にもっていくことよりも大事だという面もあるようには思いますね。

【笠井委員】
 有力であることは認めますが。

【鎌田委員】
 2~3年次とすることが望ましいというのは、1年でやってもいいということですか。あるいは、1年に限定するよりも2~3年のほうがいいということなのか、どちらの趣旨ですか。

【磯村委員】
 実態としては1年次からやるという法科大学院もあって、ワーキング・グループの中では、それはおかしいのではないかという意見が大勢を占めていたのですが、いろいろな法科大学院のカリキュラムを見たり、あるいは、普通科の教員の先生方は最初から強力にやるべきだという意見もありました。例えば、法曹倫理に関しては1年次でやるべきだという意見があって、そこで両方に読めるような書き方をしたということであります。
 しかし、ここで具体的に挙げるということにどれだけの意味があるかというと、今、委員がおっしゃったようなことになってしまいかねないところはあるかと思いますので、これは委員の方々のご意見を聞かせていただければ、それに応じて表現の仕方をさらに工夫したいと思います。

【鎌田委員】
 法曹倫理は授業の組み立て方によっては、1年次でもあり得るという気がしなくもないですが、1年生の単位免除との関係でそういうものがどのぐらい入れるとどうなるか。先ほどのお話に戻って恐縮ですけれども、林委員がおっしゃられること、教育現場でもそういう感じがありまして、正確な数字は知りませんが、全国の法科大学院で既修者枠を設定しているところを合算すると、2,000人以上、既修者枠があるような気がしますが、率直な実感として、今日配られましたコア・カリキュラムを拝見して、これだけその内容をきちんとマスターした方が既修者として全国に2,000人以上本当に存在しているんだろうかと、疑問に思います。既修で入ってきたばかりの人たちにもう一度しっかり法律基本科目を学修させる機会ができるようなことも検討課題にしていただければと希望いたします。

【磯村委員】
 2点補足させていただきたいと思います。1つは、コア・カリキュラムの例というのは、先月に行われたミニシンポジウムで、特に民法については多すぎるのではないかとというご意見もあったところであります。もう一つは、法律基本科目の科目数あるいは単位数が、既修者については少なすぎるのではないかとの点ですが、これはワーキング・グループの方でも説明した点でもあるのですが、若干の誤解があったところです。
 例えば、現在93単位を前提に30単位既修者認定をすると、残り63単位ということで、その中で、先ほどの柏木先生のお話ですと、33単位の法律基本科目以外の単位を履修しないといけないという構造になっているわけですが、履修登録上限単位を考慮すると、2年次で36単位、それから、3年次で45単位ということですので、80単位の総単位数の履修が可能であり、63単位を超える部分の17単位については、法律基本科目を履修することが制度的には配慮されていないという設計になっているかと思います。
 したがって、必修科目として設定するということは非常に難しいですけれども、法律基本科目を例えばプラスアルファで先端科目として提供し、その先端科目について学生諸君が履修するような指導をするというのは、現在の制度を動かすことなく可能な仕組みになっていると思います。いずれにせよそれ以上に設定するというのは過剰供給になって、学生諸君も十分に対応することができないということだろうと思います。必修科目だけの単位数を見るとやや不十分であるところも、各法科大学院の創意工夫によってかなりの程度は可能にできる部分があるのではないかと考えているところであります。1年生については、36単位の上限をゆるめないとそういう可能性はないということで、各単位年度の履修登録単位数をさらに上乗せすることがより重要になるかと思います。

【浅野専門職大学院室長】
 第1ワーキング・グループと第2ワーキング・グループからそれぞれ別の報告が出てきているので、この関係について簡単にご説明させていただきたいと思います。第2ワーキング・グループは、今ご議論いただいているように、未修者の1年次について、36単位の上限を法律基本科目の6単位を足して42単位まで認め、法律基本科目を充実していくという考え方に立っております。
 それから、机上に配付させていただいております第1ワーキング・グループの入学者の質と多様性の確保という資料をご覧いただきたいと思います。この5ページ目で、先ほど私が言及させていただきましたが、併せて、既修者の認定について厳しくし、既修者の認定の際に法律基本科目の能力が一部不十分な者については、2年次以降に履修する必要があることに鑑み、6単位を上限として再履修を認めるができるということになっております。
 未修者は、第2ワーキング・グループで1年次36単位プラス6の法律基本科目の42単位上乗せできると。それから、第1ワーキング・グループで既修者についても、既修者認定で漏れた、十分でないという法律基本科目の分野については、2年次を36単位ではなくて6単位を加えて、42単位まで、法律基本科目を履修できるという形で、両方向併せてお考えいただくと、未修者、既修者それぞれ6単位プラスできるような形に結果的にはなっているということでございます。

【井上委員】
 林委員がおっしゃった法律基本科目を増やすということについては、それは現在の仕組みの下でもできるというのが磯村委員のご説明であり、それについて実務基礎科目との関係で議論があったと思いますが、司法制度改革審議会の意見書では、展開・選択科目とのバランスということが眼目であったように思います。それとの関係をどうするのかは避けて通れない問題であり、私自身、個人的には法律科目が少し不足しているという感じをもっていますけれども、そこが一番大きな問題であり、今この段階で、そもそも論にまでさかのぼって議論することは難しいという意見です。
 もう一つ、第1ワーキング・グループの報告は、一つのアイデアですが、実際に法科大学院を運営する立場からしますと、その授業はどこに配置して、誰がやるのか。恐らく新たにそのための授業を設けるというのは運営上非常に難しいと思います。そうすると、2年次に選択科目を増やして、磯村委員が言われる余裕分でそれをやるのか、それとも未修者1年次の法律基本科目の初歩的なものを履修させるのか。そうなってくると、そっちの方に影響が及んでいく一般論としてはよくわかりますが、それをどういうふうに手当すればいいのかというところがよくわからないものですから、その辺、お考えがあれば教えていただきたいと思います。

【鎌田委員】
 第1ワーキング・グループの方で考えているのは、組織的にではなく、例えば既修で入ってきた者には、6単位分だけは民法を追加でやらそうとかいう発想ではなくて、6科目あるいは7科目の既修者認定試験をしますと。総合点では非常にいい成績をとっているけれども、本来の理想から言えば全科目合格して初めて全科目単位免除のはずですが、例えば、刑事訴訟法だけは基準点に達していないというときに、既修者の認定をしないで、全科目1年次に入ってやりなさいというよりも、既修者として入れて、刑事訴訟法だけが水準に満たないから、刑事訴訟法だけは1年のクラスに入って勉強しなさいと、こういう扱いも認めている。ただ、それをあまりやると、2年生は2年生でキャップが厳しくて、目いっぱいで必修科目やっていますから、2年生で履修するべき必修科目が1科目、3年に持ち越しになる。それをゆるめるために、キャッププラス6単位ぐらいまでは認めてもいいのではないかという発想です。

【井上委員】
 1年次の科目をとらせ、その科目は単位免除しないということですか。

【鎌田委員】
 そういうことですね。そのときに、今のご提案のように、未修者は36単位、必修科目があって、6単位はエキストラで、30単位免除されるけれども、6単位は既修者にとっては消えちゃった科目となったときに、水準に満たない科目の6単位分はこれにうまくはまらないかもしれない。その調整をどうするかは、今日の構想を伺った上でどう整合させるかは少し考えたいと思いますけれども、組織的にそういう保留を考えているのではなくて、不合格科目を平行して履修させることも可能ということです。

【田中座長】
 基本的には既修者認定を厳しくやって、1年次の未修者の授業をこれだけ手厚くするのであれば、それに見合う学力を持った者を入学させるようにするのが先決で、今、鎌田先生がおっしゃったことをやると、既修者認定を厳格にするよりも、そういうことはあまり好ましくないのですが、逆に少し緩めて多目に既修者をとって、補講的に弱かった科目をカバーするというふうなことが広がっていく心配はないでしょうか。

【鎌田委員】
 そういう使われ方をするのは不本意ですけれども、逆に全科目非常によくできるけれども、たまたま1科目、苦手科目があるから失敗したという者、本学の場合はそういう者は未修者に入れていますが、そうすると、ものすごいできる科目について、初心者の授業を1年間ずっと聴かされているという者は、彼なりのもっと高度な学修をやりたいはずです。むしろ2年生に入れて、不得手な科目だけは補助的に勉強するという道を開いてやったほうがいいんという気がします。本学はそれをやっていませんし、今後も多分やらないと思いますけれども、既修者の水準を高めようとするときに、幾つかのバリエーションを持つこと自体、悪くないだろうということでございます。

【磯村委員】
 今のような履修科目免除制をとるのと、例えば刑事訴訟法についてそれを使うと、本来、既修者の2年次に履修すべき刑事訴訟法の応用的な科目というのは、その次の学年になって初めて履修できるということになるのでしょうか。

【鎌田委員】
 そこは組立方次第で、並行してやるのもいいと思います。先ほど申し上げたようなタイプの者は追いつくのに時間がかかるというタイプではないので、未修で入ったけれども、刑事訴訟法の単位だけ落した人が2年生の授業は受けてはいけないとしている学校だったら受けてはいけないですし、1年次で落とした刑事訴訟法の基礎を再履修しながら2年次配当の刑事訴訟実務の基礎などの科目を受講してもいいという大学なら、両者を並行して受講しても差し支えないということです。

【永田委員】
 隠れ法律基本科目がとられているというのは、一定のレベル以上の法科大学院ではそれほどその問題は起こっておりません。基本的に、司法試験の合格者が少ないところが、まさに受験対策的にやっているということが指摘されているのであって、きちっとした法科大学院が隠れ法律基本科目でカバーしているということではないと思います。
 もう一点は、磯村委員が今日報告されたところは、法律基本科目を軽量化、あるいは、定量化したときに、まずい定量化にならないように重点化して、その枠内で法曹として求められるものをきちっと身につけさせようではないかという発想だと思いますので、現段階でこの委員会としてはこの到達目標型で定量化、利便化で、法律基本科目で求められるものを身につけさせるという試みがどこまでいくかということを検討すべきだと思います。

【田中座長】
 予定した時間がかなり超過しましたので、今日の審議はこれぐらいにさせていただいて、今日ご指摘のあった部分について修正した方がいいと思われるところは整理して、次回引き続き議論していただきたいと思います。事務局から今後の予定について説明いただけますか。

【浅野専門職大学院室長】
 次回は4月10日、金曜日の14時から開催を予定しております。詳細につきましては、改めて事務局よりご案内を差し上げたいと思います。

【田中座長】
  本日はこれで終りにしたいと思います。どうもありがとうございました。

 

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