法科大学院特別委員会(第26回) 議事録

1.日時

平成21年2月24日(火曜日) 15時30分~17時

2.場所

文部科学省 東館16F 特別会議室

3.議題

  1. 特別委員会の座長の選出等について
  2. 特別委員会のこれまでの審議状況について
  3. 法科大学院教育の質の保証に関するワーキング・グループの設置について
  4. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)有信睦弘、田中成明の各臨時委員
(専門委員)稲田仁士、井上正仁、小山太士、笠井治、木村光江、土屋美明、永田眞三郎、長谷部由起子、林道晴、松村和徳の各専門委員

文部科学省

久保高等教育局審議官、藤原専門教育課長、浅野専門職大学院室長、神田専門教育課課長補佐

5.議事録

(1)委員の互選により田中委員が座長に選任された。座長代理については、座長から井上委員が指名された。

(2)事務局から配布資料の説明があった。

(3)事務局から特別委員会の会議の公開規則について説明があり、原案のとおり決定された。

(4)事務局から教育の質の保証に関するワーキング・グループの設置について説明があり、原案のとおり決定された。

(5)公開された後の議事は以下のとおり

【田中座長】
 それでは、特別委員会のこれまでの審議の状況について事務局から説明をお願いします。

【浅野専門職大学院室長】
 それでは配布資料、資料3の1、資料3の2、資料3の3にもとづいてご説明をさせていただきます。前期の法科大学院特別委員会におきましては、9月30日に法科大学院教育の質の向上のための改善方策についての中間まとめをおまとめいただきました。資料3の1についてはその概要でございまして、改善の方向について4点おまとめいただいております。資料3の2の中間まとめの本文の1ページ目でございます。前期の法科大学院特別委員会の話の中で、各法科大学院に対する実態調査、それから司法研修所の教官、司法試験の考査委員会のヒアリング日弁連司法修習委員長の方にもお越しいただきヒアリングを実施いたしまして、現状の正確な把握につとめて以下のような認識にたったということでございます。
  法科大学院の多くにおいて、理論と実務を架橋する教育課程の整備が進み、修了した司法修習生の素質能力も、司法修習生の指導に携わる関係者から全般的に従来に比べて遜色はないばかりか、以下のような優れた点が見られるとの評価がなされているということで、1から5までの自発的・積極的な学習意欲が高いとか、コミュニケーション能力が優れているといったいくつかの点について評価をされているという認識を有したわけでございます。それに対して(2)のところでは、認証評価の結果や考試の司法修習生の評価や理解度などの結果を踏まえると、やはりその教育の実施状況、それから修了者の一部について、法律基本科目の基本的な知識・理解が不十分な修了者が一部に見られるとか、論理的表現能力の不十分な者が見られるとか、法律実務基礎教育の内容が各法科大学院によってバラツキがあるといったような問題点については認識をし、それのための速やかな改善が必要という結論に至ったわけでございます。そういう認識にたって、次の2ページ目にございます、第1から第4の改善の方向をまとめたわけでございます。
  おめくりいただきまして3ページ目でございますが、第1の入学者の質と多様性の確保というところでございます。資料集の1ページ目に法科大学院入学者選抜の実施状況の概要があります。この(1)のところでは志願者数・志願倍率の推移ということで、H16年の72,000人という数字は、特殊な1回目の年だったわけですけれども、その後、H17年から20年にかけては、大体40,000人前後で推移し、倍率も大体7倍弱ぐらいで推移しています。
 それから(2)の社会人の入学者の割合というのも、徐々に下がってきておりますが、平成20年度でも3割弱という数字になってございます。
 それから(3)で定員過欠員の推移につきましても平成20年度は388名欠員ということで、少し定員割れが増えてきているということでございます。それから他学部出身者についても26%という数字で、ここのところ安定してきているというような状況でございます。こういった今のその状況を踏まえて、本文の3ページ目に戻りまして、基本的には入学者の志願者数は今後ほぼ一定の水準で推移していくものと見込まれますが、(2)で法科大学院の志願者の確保に努めていく必要があるということと共に、(3)のところでは一定程度の志願者数の確保が困難である法科大学院については、質の高い入学者を確保するために、入学定員の見直しなど、競争的な環境を整える必要があると述べられてございます。
 それから、4ページ目でございます。それに併せて、資料集の10ページ目をご覧下さい。適性試験の状況等について記載してございます。特に10ページ目の、平成20年度入試における合格者の適性試験最低点について、大学入試センターにおいて50点未満というのは4割にのぼっているということ、それから日弁連法務研究財団においても110点未満が3割ぐらいあり、そういう入学者が入ってきているということでございます。そういった状況も踏まえながら、4ページ目の方の本文の方にお戻りいただきまして、適性試験は、多様な経歴を有する志願者について、法科大学院における学習の前提として要求される判断力・思考力・分析力・表現力等の資質を試す共通の方法として、すべての法科大学院において十分活用されるよう、法科大学院入学後の成績などとの関係をも考慮しながら、適切な改善が図られる必要があるということでございます。
 2つ目でございますが、適正試験の点数が著しく低い者を入学させることにならないよう、適性試験の低得点者の法科大学院入学後の成績などをも検証しながら、統一的な入学最低基準を設定することを検討すべきであるとまとめてございます。
 それから3番目に、適性試験の公正かつ安定的な実施を図るために、適性試験の統一化を図る必要があるということも述べられてございます。
 それから(4)のところでは、法学既習者コースについても、今後、検討を継続していく必要があるということが述べられてございます。
 本文の6ページ目でございますが、先ほど社会人の状況についてご説明させていただきましたが、多様な人材の確保という3点目のところで、社会人の入学志願者数がほぼ一定水準で推移していくと考えられるということと、それからやはり適性試験の実施時期も弾力的に考えていく必要がある。それから、社会人がアクセスしやすい環境を整えるために、夜間コースの設定であるとか、修業年限よりも時間をかけて履修していく長期履修コースの運用などの環境を整備をしていく必要があるとされています。第1の入学者の質と多様性の確保につきましては、これまで第1ワーキング・グループで検討をいただきまして、特に適性試験の改善の方向性、さらには適性試験の最低基準の設定の方法、法学既修コースの質の確保のための統一的な在り方について検討をいただいたところでございます。
 それから、続きまして7ページ目の修了者の質の保証のところでございます。資料集の後ろの方の12ページもご覧ください。法科大学院の修了認定の状況が記載されてございます。平成17年度につきましては、法学部を出た法学既習者の方たちが中心になっておりましたので、修了率が92.6%でございましたが、18年度は法学部未修者3年コースの方も修了されて75%、既習者の方が高くて90.0%、ならすと全体として80.6%。それから平成19年度につきましては、未修者コースは修了率が下がりまして73.2%、既習者コースは上がりまして91.5%。合わせて80.2%という修了状況になってございます。
 そういった修了状況の中で、8ページ目をご覧いただきまして、司法試験委員会の考査委員ヒアリングや司法研修所の教官の所感などから、法科大学院を修了して司法試験を受験している者や司法修習を受けている者のうち、基礎的な理解や思考能力が十分身についていないと思われる者が一部にみられるとの指摘がなされております。それから法科大学院が担うべき法律実務基礎教育の内容について、明確な共通の理解力が必ずしもなく、法科大学院によって法律実務基礎科目の内容にバラツキがあることの指摘もなされています。こういった状況を踏まえまして、第2の修了者の質の保証のところでは、1つ目として、法科大学院の学生が修了時までに到達すべき共通の目標を設定し、法科大学院修了者の一定以上の質の確保を図るという方向性を打ち出してございます。その目的といたしましては、法科大学院修了者が共通に備えておくべき能力の明確化や偏りのない学修の確保、法科大学院における教育内容や方法の改善の促進となっています。それから目標の設定に当たっての留意事項として、多様性と裁量の確保、創意工夫の尊重、授業内容や授業方法への過剰な干渉の排除、知識偏重の回避といったことが上げられてございます。
 それから3つ目の到達目標の性格として、デファクスト・スタンダードとなることを期待することや授業内容に直接取り上げるかどうかに関わらず、法科大学院の学生が修了時までに必ず修得しておくべき項目と、共通的な到達目標の学修のみで足りるとする趣旨でないということが確認されています。
 それから4つ目には共通的な到達目標の内容として、法律基本科目及び法律実務基礎科目を対象とするということが述べられてございます。また8ページ目にいきまして、到達目標の内容についても当該法領域の理解にとって不可欠な制度枠組、基本となる法理、重要な条文等についてまとめていくこととされています。
 それから5つ目には、共通的な到達目標の水準として、ミニマム・スタンダードを定めるということについて記載がございます。
 それから6つ目には、共通的な到達目標の抽象度については、可能な範囲で具体的な項目を定めて明確化するとされています。
 そして7つ目には、共通的な到達目標達成の評価方法として各法科大学院における単位認定・修了認定における評価、認定評価機関による評価において、どのように活用するか等について今後引き続き検討するとされています。それから学生の到達度を厳格に評価するシステムのあり方についても今後検討を進めるということがまとめられてございます。
  この共通的な到達目標につきましては、第2ワーキング・グループで検討をしていただいたものです。
 それから9ページ目でございますが、教育内容の充実と厳格な成績評価・修了認定の徹底ということで、改善の方向性として、各科目群のバランスに配慮し、適切な科目区分整理を行いながら、法曹として求められる法律基本科目の基礎的な学修を確保することが必要であるとされています。
 それから2つ目には、法律実務基礎科目の内容をさらに広げるか、また配当年次をどうするか等について検討すべきとされています。
 それから3つ目には法学未修者の教育の充実のために、1年生で学ぶべき内容、学ぶことができる内容の明確化を図るとともに、1年生における法律基本科目の履修可能単位数の上限や単位認定のために必要な授業時間数につき弾力的な取扱いを認めるべきかどうかについて検討が必要であるとされています。
 4つ目には厳格な成績評価を徹底するため、適切な成績分布の確保が必要であり、またGPA制度の有効活用が期待されることや5つ目には再試験の適切な運用、6つ目には1年次から2年次への進級の厳格な適切な判定、7つ目には成績評価や進級判定を厳格に実施しているかどうかについて、認証評価において特に重点的に評価される必要があるといったようなことについてまとめられています。
 続きまして、10ページ目の3の司法試験との関係でございます。一つ目のところでは、平成17年度の既修者の修了者の50パーセント以上が平成18年から平成20年までの3回の新司法試験に合格しているが、50パーセントに満たなかった法科大学院は8校あったということや、それから直近の試験で合格している割合が、平均の半分にも満たない法科大学院が平成18年は11校、平成19年は30校、平成20年は34校あったというようなことが述べられてございます。そういった現状を踏まえて、3回の司法試験の結果、修了者のうち、司法試験に合格し、法曹として活躍できる者の割合が著しく低い状況が継続的に見られる法科大学院については、入学定員数の調整を含めた適切な入学者選抜や教育水準の確保・向上を前提とした上での厳格な成績評価及び修了認定の徹底などを担保するための方策を講じ、現状の改善を図る必要があると述べられてございます。
 それから第3の教育体制の充実でございます。10ページ目ですが、これは、この特別委員会で主体的に検討が進められた内容でございます。第3の教育体制の充実につきましては、資料集の19ページ目をおめくりいただきますと、今後、専任教員確保がより困難になると考えられる分野を各法科大学院に調査したところ、やはり法律基本科目の教員の確保が今後、かなり困難であるということ、特に行政法、民法、民事訴訟法、刑事訴訟法といった科目について困難となるというようなことが結果として出ているということを踏まえまして、11ページでございますが、改善の方向性として、適切に専任教員を配置し、十分な教育体制を確保すべきとされています。2点目に、平成25年度まで認められている学部等とのダブルカウントの暫定措置は延長しないこととし、可能な限り早いうちに自主的にこれを解消することが望まれるとされています。
  3つ目の認証評価機関による評価において、教員の資質・能力・実績について、適切に評価が行われることが期待されるとまとめられてございます。
 続きまして、12ページ目につきましては、入学定員の見直しと法科大学院の教育課程の共同実施・統合等の促進ということで、(2)のところで法科大学院の教育の質の一層の向上のために、例えば以下のような状況が見られる法科大学院については、主体的に入学定員の見直しを個別に検討する必要があるということで、入学定員の規模に比して、質の高い教員の数を確保することが困難であるとか、競争率が低いために質の高い入学者を確保することが困難であるとか、修了者の多くが司法試験に合格していない状況が継続しているといったようなことが例示としてあげられてございます。
 それから3点目に、特に小規模の法科大学院や地方の法科大学院において、今後、単独で質の高い教員が十分確保できず、充実した教育水準の継続的・安定的な保証について懸念が生じている場合には、他の法科大学院との間での教育課程の共同実施・統合等を図ることを積極的に検討する必要があるということが提案されてございます。
 それから13ページ目は、今後の法科大学院教員養成体制の構築についてでございます。改善の方向性が、(1)に法科大学院の教員がダブルカウントの暫定措置終了後も博士後期課程において研究指導に携われることができるような配慮を検討する必要があると述べられてございます。その他、法科大学院のカリキュラムの中でも、教員を志す学生のために外国法や研究論文の作成といった選択科目の配置であるとか法科大学院生が継続的に博士後期課程に進学するための経済的な支援といったようなことが述べられてございます。
 それから14ページ目は、教員の教育能力の向上のため、FDの充実について改善が検討されてございます。
 それから15ページ目は、第4の質を重視した評価システムの構築ということで、1つ目は教育水準と教員の質に重点を置いた認証評価ということで、現在2回目の認証評価が行われているところで、平成20年度にはピークを迎えて44校が認証評価を受けることとなっており、これらの状況を踏まえながら、本委員会においても検討を継続していく必要があると述べてございます。認証評価においては、法科大学院教育の質の保証の観点から、例えば、入学者の適性試験の状況、共通的な到達目標の達成状況、厳格な成績評価・修了認定の状況、教員の教育研究上の業績・能力、著しく低い司法試験合格割合の継続などについて、重点的に評価を行っていくことが期待されると述べられてございます。これについては、3月に今年度の認証評価の結果が出て、ほぼ一巡に近い形になりますので、その結果も踏まえて、この委員会で認証評価のあり方についてもご検討をいただきたいと思っております。
 次に2といたしまして、積極的な情報公開の推進について、今後、具体的な方策について検討を継続していくということで今後の取りまとめに向けてご検討いただきたいと思います。
 それから16ページ目でございます。フォローアップ体制の構築ということで、今後、各法科大学院において改善が適切に進められているかについて、本委員会の中にフォローアップを行う組織を設置し、継続的に実態を把握しながら必要な改善を各法科大学院に対して促していく仕組みを構築する必要があるということが述べられてございます。
 以上が法科大学院の教育の質の向上のための改善方策についての中間まとめの結果でございまして、この中間まとめを踏まえまして、この改善の方向性に基づいて全ての法科大学院から3週間かけて、現在の状況や今後の改善の方向についてヒアリングをさせていただきました。
 資料3の3の3、2ページ目でございますが、ヒアリング結果の概要でございます。第1の入学者の質と多様性の確保に関する取組状況につきましては、競争性の確保ということで、多くの法科大学院において、競争倍率がやはり減少しており、競争倍率が2倍を切っている法科大学院も複数見られました。各法科大学院においては入学定員の見直しなど、入学者選抜の競争性の確保のための改善策について現在検討を行っております。なお、複数の法科大学院からは質の低下論による全国的な受験生の減少に対して全体的に入学定員の見直しによる合格率の向上など、法科大学院の受験者を増やすための方策を考える必要があるとの意見がヒアリングの中でも寄せられております。
 適性試験の改善につきましては、多くの大学で総合判定方式として、適性試験の成績の一部を使っておりますが、競争倍率が低い法科大学院の多くが、適性試験が著しく低い者が入学している状況が散見されました。このうち複数の法科大学院においては、独自に最低の基準点を設定し、今後状況が改善していくという意向が見られました。一方、多くの法科大学院から、適性試験の成績と入学後の法科大学院での成績に相関関係がないので、適性試験の低い点数の者を入学させざるを得ず、試験内容の検証・適性試験のあり方についての改善が求められております。
 それから3でございます。多様な人材の確保ということで、現状においては、ほとんどの法科大学院において、一定数が、社会人・他学部出身者が確保されております。ただ、減少していることが考えられます。こういった中で多くの法科大学院において、未修者の学修支援体制の構築や長期履修制度導入等の検討を現在行っております。それから2つ目の点でございますが、修了者の質の保証に関する取組状況でございます。1つ目の共通的な到達目標の設定と達成度評価方法でございますが、全国的な共通的到達目標の設定が行われた際には、それを踏まえて自学の到達目標を検討する方向であるという回答が法科大学院の多くでございました。
 それから2点目の教育内容の充実と厳格な成績評価・修了認定の徹底でございますが、やはり通常の修業年限内で修了できない者の割合も3割程度になっているわけですけれども、しかしながら修了率が9割近くなっているが、司法試験に不合格となる者が多く見られるような法科大学院であるとか、1年次から2年次に進級する際の要件が単位の修得のみをもって行われている例等、厳格な成績評価・修了認定が十分行われているとは言いがたい法科大学院も複数見られたということで、これらの法科大学院や、これらの法科大学院以外についても、平成21年度からかなりの法科大学院で修了試験の実施であるとか、GPA等を使った進級時・修了時の判定を厳しくするといったような大幅な改善を図るということを伺っております。
  それからおめくりをいただきまして、教育体制の充実に関する取組状況でございます。質の高い教員の確保につきましては、多くの法科大学院の現状において、ダブルカウントが解消されております。今後急な離職者であるとか定年退職者の補充のため教員体制を充実するという法科大学院が見られた一方で、将来的な採用の対応については十分検討されていない法科大学院も見られました。
 2つ目の入学定員の見直しについてですが、法科大学院の教育課程の共同実施・統合等の促進につきましては、先ほど提示された3つの状況について当てはまるいくつかの法科大学院で、具体的に入学定員の見直しが行われておりますが、現時点で入学定員の見直しを十分に行っていない法科大学院も見られました。ただこれは、このヒアリング結果の内容を特別委員会に報告した時点の12月の状況とは変わってきてはいるとは思います。特に教育水準及び教育体制の維持に懸念が見られる法科大学院について、共同教育課程の設置・統合などの方策について十分な検討がなされていない。あるいは今後検討する予定がない状況であるということであります。
 中間まとめに示された3要件にあてはまる法科大学院から、率先して抜本的な入学定員の見直しを検討する必要がある一方、複数の法科大学院から地方の法曹養成機関の適正配置の必要性であるとか、大規模校の率先した定員削減の必要性を唱える意見も見られました。
  それから3つ目の教員養成体制の構築につきましては、多くの法科大学院で必要性を認識されて、そのための科目の開設が行われているわけですが、教員を希望する方々が少ないという状況があります。それから奨学金の導入や博士課程の入学希望者の連携体制の構築など、かなりの法科大学院でも改善策が検討されております。
  それからFDにつきましても、かなりの法科大学院で行われておりますが、一部組織的な取組が行われていないような状況もみられます。積極的な情報公開の促進につきましては、多くの法科大学院でかなりの情報が公開されてございます。
  以上が法科大学院の教育の改善に関するヒアリングの結果の概要でございます。

【田中座長】 
 どうもありがとうございました。ただいまの説明に対しまして、ご質問・ご意見がありましたらご発言ください。

【笠井委員】
  今のご説明のヒアリングの結果についてなんですが、資料3の3(3)の2、入学定員の見直しと法科大学院の教育課程の共同実施・統合等の促進についてですが、複数の法科大学院から、地方の法曹養成機関の適正配置の必要性や大規模校の率先した定員削減の必要性を唱える意見も見られたとあるが、これは具体的にどこの法科大学院のことかお伺いしてもよろしいでしょうか。

【浅野専門職大学院室長】
 記録が残っているわけではなく、申し上げることはできないですが、入学定員の見直しを検討されている中で、いわゆる大規模校がいい学生をとって、自分のところにはいい学生が来ないというような主張をされた法科大学院もありました。

【笠井委員】
 中間まとめが9月30日に発表されたのですけど、その後日弁連が中間まとめに対する意見を12月に公表した。それに関連してもっと幅広いトータルな問題に関しての提言を本年の1月16日にしておりまして、中間まとめについて高く評価する部分と、やや批判的な部分がありました。共通的な到達目標の策定をするということは評価していますが、入学定員の見直しの問題については中間まとめには司法試験の合格率との関係、それから規模の問題、小規模についての記述があるんですけれども、日弁連としては、むしろ大規模校についての入学定員の見直しということを考えている。もちろん、全国的に適正な法科大学院の配置ということを考えた上で大規模校についての入学定員の見直しの提言をしていることをむしろ強く申し上げておきたいと思います。日弁連は私一人で担っているわけではありませんが、この委員会の先生方のご意見等も是非伺いたいと思いますし、そうした方向で議論していただけるといいかと思います。

【井上座長代理】
  中間まとめ自体が、特に問題があると思われる法科大学院については、率先して見直しをしていただきたい旨を明示しているのであって、他のところは問題がないとか、あるいは、見直しが不要だということまで意味しているものではないと私は理解しております。社会の様々な批判の中には根拠のない、いわれのない批判も多かったのですが、当たっているところもありました。我々自身、5年の実績を積んできたわけで、この辺で、それを踏まえ、また教員の体制や学生の実態などに照らして、もう一度、入学定員の問題だけでなく、カリキュラムの問題などをも含めて見直してみることが必要だということだと思います。
  その意味では、小規模だとか大規模だとか、あるいは、司法試験の合格率がどうだとかということに関わらず、すべての法科大学院が、自ら見直しを行い、改善すべき点は改善していくという社会的責任を負っていると思うのです。。
  その際、司法試験の合格率とか、あるいは日弁連の提言などでは不合格者の数が問題にされて、大規模校の方が多数の不合格者を出しているので減らすべきだという見方もありますが、我々にとっては、法科大学院で身につけたものを有効に活用して社会で活躍していただきたい。それが本来の理想で、その点での教育体制ないし教育力が不十分であったとすれば、見直して改善すべきだと思います。去年の中間まとめの後のヒアリングを踏まえて、法科大学院協会の方でも、すべての法科大学院で自主的に入学定員も含めて見直しをしようという話になり、少なくとも私どものところなどでは、非常に真剣に、できるだけ速やかに結論を出すように検討を積み重ねておりますし、他のところもそうであってほしいと思っています。
  ただ、司法試験合格率が結果として低いということでは非常に残念なことで、また、そういう状態が続いていくと、やはり社会からの信頼を失っていくばかりですし、心ある有望な法曹をめざす方たちが法科大学院に来てくれなくなってくる。これは結局、自分たちで自分たちの首を絞める結果になっていくわけですので、協会などでも議論をして、会員校に検討を促し、全体として、入学定員の見直しを含めた思い切った改革を行うべきだと思っています。

【笠井委員】
  もちろん、入学定員の見直しだけで改善が図られるという主旨ではないですけれども、入学定員の見直しについて言うならば、志を高くよりよい思想を持った入学者を広く求めるためには、やはり入学定員の削減がどうしても必要になるだろう。その関係で、現在の法科大学院の入学定員は5,795名ですが、今となってみればやはり多かったということになるだろうと思います。これまでの司法制度改革審議会あるいは検討会等において議論がされたことはあったんでしょうか。

【井上座長代理】
  特に法科大学院の適正な数あるいは入学定員はどうかといった議論はありませんでしたが、シミュレーションとしてもっと低い数やもう少し大きな数を想定して考えたりしたことはありました。しかし、ご存知のように設置認可については、規制緩和の時代でしたので、学校の数とか入学定員数を決めてそれで抑えるということはできない。ですから、法曹養成に参画しようとする大学で、一定の要件を満たすところについては、設置を認めざるを得ない。その結果として現在の入学定員になっているということだと思います。ついでに言いますと、合格率を上げようという話をされるなら、日弁連も、合格者数を当面2,000人に抑えるというようなことをおっしゃらないで、少なくとも政府の閣議決定どおり3,000人までは粛々と増やし、その上で、これからどうしようかということを言われるべきだと思うんです。

【田中座長】 
  今、井上委員がおっしゃったことですけど、日弁連は自分たちの受け入れ態勢の関連で、入学定員の削減という議論をしていた。法科大学院としては、入学定員の見直しは、7,8割は合格するのが理想的だというような教育環境の質の関係から検討すべき話だと思うんです。そういった教育環境の質の観点から考えれば、現在の法科大学院の教育では3年で養成できないというのは、全く根拠がない話だと思います。

【笠井委員】
  合格者数が連動した意見ではございませんので、くれぐれも誤解のないようにお願いします。合格者数が3,000人に達するまではしばらく待ってみてはどうかということです。

【田中座長】
  日弁連のおっしゃる法科大学院の教育内容が3年で養成できない体制というのは何の根拠もない。日弁連が受かった人を全部受け入れることはできない体制だということは事実なんじゃないでしょうか。

【笠井委員】
  繰り返して申し訳ありませんけど、日弁連では合格者数と連動させて意見を出しているわけではございません。それから法曹の受け入れという点でいうならば、弁護士のみならば受け入れるということではなくて、裁判官・検察官等についてもそういうことが増えている。

【有信委員】
  私はこの中で唯一の門外漢なのですが、特に法律のことで今の議論を伺っていると、我々から見ると専門的な範囲で進められていると思います。私は門外漢というだけじゃなくて産業側にいる人間として、今の世の中の状況から見て、法科大学院がどういう風に見えているか、そういう視点からどういうふうに考えていくかということで検討はずれのことが多々あると思いますので、そういうところはご指摘をたまわりたいと思います。 一つは、いわゆる職業資格という問題なんですが、例えば、今、議論されている弁護士とか、建築士、看護士、それ以外の様々な職業資格がございます。特に欧米では、職業資格は、基本的にある職業に就くためには、要求される教育プログラムを修了していなければならない。従って特定の修了すべき教育プログラムを指定されていて、その質を担保するために、基本的にそのアプリケーションを受けなければならない。こういう構造になっており、質が担保されているわけです。
  それからもう一つは、GATTがWTOに移行されたのが1995年でしょうか、あのときに、GATTが物の移動だけを扱っていたのに対して、WTOは提供するサービスについても、各国の持っている職業資格が非関税障壁になってはならないという合意がなされているんです。従って、各国の持っている職業資格は、もちろん弁護士などまで共通になるとは言いませんが、特定の職業資格は、国際的にどう評価されているかという全体の流れの中にある。そういう流れの中で考えると、その職業資格の前提となっている教育プログラムも国際的な質が問われている。こういう観点で考えると、今、議論されているような法科大学院の教育の質の問題というのは、グローバルな視点で見なければいけない。また、職業資格との関連で一定の質が担保されなければならない。その質がグローバルに通用するものでなければいけない。それから、職業資格そのものがお互いに相互に認証し合えるとか、承認し合える形に将来的にはなっていかなければならないので、量的な問題というのが必ず出てきます。従って、当初の量的な計画は国際的なバランスを考えた上で、例えばアメリカの場合は特許関係を扱う人も弁護士になっていますから、そういう日本の法曹関係者の数をもう少し増やすという観点で、法科大学院の入学定員を決めるのに影響があったんだろうと想像しています。今、様々な問題があるときに、先ずその質の担保をきちんとした上でいくのか、量を先ず増やすのかという議論になると思うんですね。ですから、基本的には、やはり質をある程度担保するが、将来的な量の確保を視野に入れた上で、質の担保という観点で入学定員も試算した方が良いのではないか。今入学定員を絞ってしまって、これが影響して法曹が増えないという形になっても困るので、そういう視点をきちっと議論をすべきだろうと思うんです。地方の問題だとか、大学の問題だとかあると思うんですけども、入学定員の影響についてはそういう観点で議論も必要かと思います。

【井上座長代理】
  今のご発言は非常に的を得たご指摘だと思います。司法制度改革審議会で数を増やす議論をした際に、法曹を増やしていくべきなのだが、いきなり数を増やしたのでは質が落ちるので、やはり法曹資格を得る前の教育プログラムを充実させることを併せて図ろうとしたわけです。そして、その教育プログラムの質を、設置認可と認証評価で担保するという仕組みにしたのですが、実際には、設置認可の段階で予想以上に数が膨らんでしまい、それが今の議論されている問題につながっているのです。

【稲田委員】
 私は、質の問題から少し離れるのですけれども、法科大学院の多様な人材ということですが、現実問題として、社会人を経て司法試験を抜群の成績で受かった方が、実際どのくらい就職できているのかという問題があるかと思うんですね。職務経験のある方が法科大学院に入学して、将来法曹として活躍されるという理念には大変共鳴するのですけれども、一方で法科大学院に入ってしまって、結果として就職が難しい方が多いという現実があるのであればフェアではない面があるのですね。なかなか難しいと思うのですけれども、実際の就職の状況も理解して議論する必要があると思います。

【田中座長】
  今おっしゃったのは、社会人を受け入れるということですけど、受け入れた後の就職の問題になってくると、ここでだけでは解決しようがなく、司法試験のやり方とか、あるいは受け入れ体制の問題もあります。法曹の活動そのものを抜本的に変えないと今のままでは数を増やしても全部収容できないのは当たり前の話だと思います。

【稲田委員】
 2,000人とか3,000人という合格者数を設定する場合、結局その方が社会に出て活躍される場として、企業がそれを受け入れると想定されたと思うのですが、企業の方の問題といえば問題なんですが、企業は年功序列のなんですね。中途採用は問題ないんですが、就業経験がなくてある程度年齢を重ねていると非常に難しいんですね。あまり多様な人材といって社会人を受け入れても、結果的に就職ができないということになれば、もったいないことです。

【井上座長代理】
 理想論だけではなく、社会経験を積んだ方が法曹となり、経験を活かしていい仕事をしているのは事実で、そのことをも視野に入れて、法科大学院を出ていないと原則として司法試験は受けられないという制度を採ったのは、そういった多様な人材にも法科大学院に入ってもらって法曹資格を得てもらおうという考えがあったのです。また、社会人を経験してた30代後半の方で、法科大学院で苦労して勉強し、法曹資格を得た上、企業に就職したという人もいます。こう言ったことは何ですが、弁護士界自体、就職については非常に保守的な対応をしているというのが現実で、それが大きな壁としてあるのですが、。新しい法科大学院の修了生が育っていって10年ぐらい経って、自分たちで事務所を立ち上げ、法科大学院の後輩たちを積極的に採用していくようになれば、大きく変わっていくだろうと思います。さらに、公務員の方などでも、法科大学院修了者からの採用に関心をお持ちのようですので、ニーズが次第に広がってきていると思います。

【有信委員】
  たぶんこれからはものすごい勢いで国際化が進むと思っています。そうなったときに、企業と企業で何かをやるときに、向こうから弁護士から出てきたらこちらも弁護士を出す必要があるんです。科学技術テクノロジーの分野では国際的な情報化が必ず進むが、そのときは必ず一定の資格をもっていないと職にはつけない。従って日本の中でもそういうことをきちっと整備をしていかなればならない。国内だけでみると、日本の企業は今まで実力主義という名の下に、例えば資格制度の整備などいろいろなことをさぼってきています。それは国の資格試験でも同じで、司法試験が変わらないというのは全く実力主義という名の下に通っていないので、非常に職業基準が偏っています。私たちの分野では、技術士を国際的に流通させるために2,000年に国際法が改正されたんですけど、いまだになかなか抜本的な改善につながっていかない。専門性に閉じこもって国際的な視点がなんとなく欠けてきてしまっている。これは日本にとっては決していいことではないと思うので、今度は質をきちんと担保し、国際的に必要な人材をどうやって確保していくかということをきちんと考えていくべきだろうと思います。

【田中座長】 
  法科大学院特別委員会は基本的には教育の質を向上するという観点で審議すべきで、当初から、数が多いから減らすという発想でここで検討しているわけではありません。数が多いから減らそうという悪循環があるから批判されたりと非常にいろいろ難しい。新しい論点もご指摘いただいたので、最終まとめに向けて検討していきたいと思います。
 今ご指摘いただいたこととも関連するんですけれども、前期の特別委員会で2つのワーキング・グループを設置して議論してきましたが、今期の特別委員会における法科大学院の質に関するワーキング・グループの設置につきまして事務局からご説明いただきたいと思います。

【浅野専門職大学院室長】
  資料4に基づいて説明をさせていただきます。資料4の法科大学院の教育の質の保証に関するワーキング・グループの設置についてですが、第1ワーキング・グループで引き続き入学者の質の確保に関する検討を行っていただくということと、第2ワーキング・グループは、修了者の質の確保に関する検討、そして第3ワーキング・グループとして教育の質の改善状況に関する検討をしていただくものです。各ワーキング・グループに属すべき委員については、座長が指名することになっております。また、設置期間につきましては調査審議が終了したときには廃止することになっています。なお、ワーキング・グループの審議状況は適時に法科大学院特別委員会へ報告するものとなっております。以上でございます。

【田中座長】
  ありがとうございました。説明に関して何かご質問はございませんか。
  ご質問がないようでしたら、資料4のとおり、ワーキング・グループを設置することでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声)

【田中座長】
  それでは、資料4のとおり、ワーキング・グループを設置することとさせていただきます。それでは、次回の会議の予定について、事務局から説明をお願いします。 

【浅野専門職大学院室長】
  次回は、3月中旬の開催を予定しており、改めまして事務局よりご案内をさせていただきます。

【田中座長】 
  それでは今日はありがとうございました。

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