法科大学院特別委員会(第17回) 議事録

1.日時

平成19年10月19日(金曜日) 15時~17時

2.場所

三田共用会議所第2特別会議室

3.議題

  1. 司法制度改革の本旨に則った法科大学院教育の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

臨時委員
 田中委員(座長)
専門委員
 磯村委員、井上(正)委員、井上(宏)委員、小幡委員、鎌田委員、川端委員、川村委員、小島委員、永田委員、中谷委員、林委員、諸石委員、山中委員

文部科学省

 清水高等教育局長、土屋審議官、藤原専門教育課長、鈴木企画官、堀大学改革官、新田専門職大学院室長、神田専門教育課課長補佐

5.議事録

 事務局より配付資料の説明が行われた後、司法制度改革の本旨に則った法科大学院教育がどうあるべきか意見交換が行われた。

司法制度改革の本旨に沿った法科大学院教育の在り方について

【委員】
 今回は正課外における指導・学習の在り方から、議論を進めたい。

【委員】
 文中、「修了生である法曹関係者」という言葉は、法科大学院修了生のみと受け取られないよう、より幅広い表現とし「法曹関係者」ではどうか。また、現役の学生以外にも、修了生である司法試験の不合格者を研修員、研修生等として所属させている事に対しては、どう対応するか。

【事務局】
 意図的に「学生」と限定をして書いた。修了生についてどの程度書くか、書けるのか、ご検討いただきたい。

【委員】
 3月に卒業して5月に試験を受けるまでの指導は、今回問題になったケースであり、修了生への試験までのサービス供用は、多くの法科大学院が行っているため、ある程度触れなければいけない、触れることができる部分である。

【委員】
 直後の修了生、あるいはその後の修了生等、指導の対象の問題もあるが、基本的には法科大学院による、本来の制度の趣旨に反するような行為に対しては、何らかの指摘ができるのではないか。もう1つは、法科大学院が連携している組織が指導を行う場合もウォッチングする必要がある。

【委員】
 法科大学院自体の関与なしに、OB会が指導する形態が多いことについてどのように考えるか。

【委員】
 OB会が指導する組織が復活すると、法科大学院制度創設時に、排除しようとした予備校教育型のものが復活する心配があるので、全く関与しないことはないだろう。

【委員】
 対象になる学生の問題はもちろんあり、対象にする機関も、法科大学院との関係も様々な形があり得る。法科大学院側で適切に配慮することが必要で、可能であればやめていくことを考える、というニュアンスで良いと思う。

【委員】
 仕切りは大変重要だが、その禁止措置によって受験指導的なものはゼロになることはなく、厳しい競争試験の中では、どうしても存在することを、見据えて考える必要がある。

【委員】
 予備校の人的リソースには限界があるため、予備校に法科大学院の教員が直接は関与できなくすることも考えられる。他面において、司法試験の問題や評価の在り方について、効果的な工夫があり得るのならば、正しい方向に軌道を設定することができる。

【委員】
 結論的には、やはり各法科大学院は、外部の関係する組織が、法科大学院の本来の趣旨に反するような受験指導にならないように配慮するということしかない。

【委員】
 もう1つ考えなければならない現実的な問題は、大都市と地方の場合で環境が随分違うことである。厳しく全法科大学院に原則の徹底を求めた結果、地方の学生にとっては、適切な受験指導を受けられないという現実も出てくる。法科大学院の成功のためには、そこを肝に銘じておくことも必要ではないか。

【委員】
 確かに法科大学院が、修了者に引き続き指導をしていくことが有り得るが、学生の不足部分を補う教育をする事が、必ずしも直ちに受験教育に偏する訳ではない。各法科大学院が、受験指導に偏した教育を排するべく、各自工夫をしていくしかない。

【委員】
 原案では、学生の身分を持つ者に対する正課外における指導についてのみ書かれているが、大学教員の授業負担に関する審査については、第三者評価、設置認可も含め、卒業生への指導に関する負担はカウントされない。このことから卒業生に対する教員の指導は、初めから制度設計にないと考えざるを得ないのではないか。法科大学院の教員が修了生に時間を割くと、正規の学生に対する指導がおろそかになりかねない。

【委員】
 修了者に何の手当てもしないことと、法科大学院の教員がサービスとしての指導をできないこととは、論理的には必ずしも直結しない。ただ、そのことによって、本来の本分である法科大学院に影響が来るとすれば制約はできる。けれども、それ以外のところで何か事実上指導することを、直ちに法科大学院の教員であることを理由に禁止できない。ただ、その中身が受験指導に傾くと本来の教育に影響が来るため、適切ではないという制約が出来るのみである。

【委員】
 修了生を対象に組織立ててクラスを持つとか、週1回クラスを持つなどということになれば問題ではないか。

【委員】
 そうなると個人的なサービスを超えており、継続的に行われるとすればその法科大学院自体の責任になってくる。しかし指導の中身について、個人的なサービスで質問に答えることまで禁止はできない。

【委員】
 法科大学院の教員が正規のカリキュラムの補完教育として必要な事項を、法曹の協力者たちに示すことができるよう、法科大学院の趣旨の範囲内で、法科大学院側が検討するべきである。もちろん、自学・自習に影響のない範囲内でやっていくという選択肢もある。

【委員】
 修了生をどうするかという問題は、法科大学院にとって、課題であるので、やはり一言触れるべきと思われる。一方、個々の教員に向かってガイドラインをつくる際、指導の中身について具体的に掲げることはできない。試験に通るための技術ではなく、法律の中身、法律的な物の考え方を発展させる教育に専念しなければいけないという部分は非常に抽象的な言い方でなければいけない。

【委員】
 もう少し制度に則して考えると、受験指導を鋭意行ったとしても、新司法試験にさして役に立たず、むしろ逆行感を及ぼす側面があるというのは制度設計の基本であるが、修了生の問題は、司法試験の受験回数が5年間で3回まで、という制約がある法科大学院のスキームの中では、排除するという結論がそう簡単に出るものでもない。内容に着目してという話になるが、結論としてはやはり修了生について言及する必要はある。

【委員】
 修了生も含めるけれども、関与を一定の視点、一定の姿勢で行うということは古い姿勢であり、指導の内容により方向を示しているという形にするということか。

【委員】
 方向を示すのはよいが、法科大学院の数が多いと、多様な事例が生じると思われる。法科大学院は今いる学生のための教育が本分なので、それを超えて教員自らが授業を持つことは、やめるように言う方がよいと思う。

【委員】
 この部分では、そこまで踏み込む必要はなく、むしろ修了生、卒業生を中心とする法曹関係者に法科大学院の理念に反しないよう、協力を求めることに尽きるのではないか。法科大学院の教員の関わり方は、次の問題であって、人的な余力があれば、サポートすることもあり得るので、ここは、法科大学院教員が主体的に関与するところまで触れる必要はない項目ではない。むしろ気になるのは、予備校等の関与というタイトルがあるが、本文自体にはそれが全然入っていない。現実に学生が予備校に行っているという事態を、法科大学院としてどう見るかという姿勢をメッセージとして示す必要はあるのではないか。

【委員】
 当初の制度設計の場合には、予備校に行っている暇がないというイメージで、制度が成り立っていたが、現実にはそうなっていない。

【委員】
 予備校に行くなとは言えない。制度設計と異なり実際は予備校に行く暇があり、行きながら法科大学院を修了できることの方が問題。予備校でやることと、法科大学院で本来やるべきことはかなり違うので、予備校に行っていれば学習効果が上がっていないはずであり、行きながら修了できるのは問題であるという視点なら語ることができよう。

【委員】
 現実には学生の選択の視点からすると、予備校に行くことが有用であり、法科大学院が不十分であるという認識が広範に存在する。そうではないという行動とメッセージが必要。

【委員】
 法科大学院の授業を信頼して、一生懸命勉強することが最大の、最も確実な合格の方法だと、修了生にメッセージを発すべきである。しかしメッセージの発出に効果があるかどうか。

【委員】
 実体験として結局、予備校へ行くよりは、授業に準備して出席し、復習した方が結局、新司法試験を見据えた場合、効果的だという指摘は相当真実であると思うが、そうは信じない学生もいる。実際に法科大学院の授業が一番正しく、効果的だとメッセージとして発し、それに向けての細かい措置をとっていくべき。現在、制度の大きな転換期であり、司法試験及び法科大学院の側から相当程度のアクションをする必要がある。

【委員】
 慶應の事例を意識して方向性を考えると議論がゆがむ。法科大学院の授業をベースにする方向へ持っていくときに、受験指導は予備校で行うものだとされてしまう。法科大学院の授業を充実することで受かる、スキームの形成にウエートを置くべき。受験指導の適切さの基準を議論するのは、あまり生産的ではない感じがする。

【事務局】
 今回の慶應の事案は学生に非常に不安感が存在している中で発生したこと。今回の事案を契機に慶應は法科大学院の専任教授に、司法試験の回答のための受験指導、方向、技術論指導は正課内外問わず一切やらないとルールとして定めている。また司法研究室は解体し、受験対策は行わないこととした。逆説的には、受験指導をしなかった法科大学院の象徴としての意味でも、慶應大学は来年成果をあげてほしい。

【委員】
 予備校等の関与という標題を外した方が良いのではないか。予備校と関係なく、法科大学院が自己完結的に教育すべき。標題に同じように並列で入る問題ではないと思われる。

【委員】
 今の議論を踏まえると、法科大学院自体あるいは教員が関与する限り、一定の姿勢、視点が要求される。教員の負担については、第三者評価等で、OB等のケアも教員の負担に加算してチェックすることを要請する等といった、間接的な話の方が良いのではないか。

【委員】
 多くの修了生が不合格者として残ることが本来の法科大学院教育を歪めることのないように、修了生の教育については配慮するよう努める等、問題提起をしておいた方が良いのではないか。

【委員】
 原案は修了生については一切書かれていない。法科大学院の教員の業務が過度になることで、現役学生に対する教育を損なってはならないと提言しておいて、最終的には第三者評価が機能することで対応する。

【委員】
 法科大学院が何のケアもしなかった修了生が合格すると、旧試験の再来にもなるため、修了生への対応については、慎重に考えた方がよく、ここに書き込むには早急だと思われる。

【委員】
 現役学生に対するサービス・教育が劣化する問題と、修了生に対する受験指導が在校中の教育効果を薄める可能性がある問題と、2つの問題が混在している。前者の方は、まさに本来的には認証評価機関による評価ができる話で、教育が妨げられているならば、指摘を受けるべきであり、それをここで書く必要は特にない。修了生については法科大学院によって随分対応の仕方が違い、現在模索段階であり、今踏み込んで書いてしまうと、何か逆に一定のケアをしなければいけないように受け取られる。差し当たりは在校生と同様に全般的な法科大学院の姿勢として作成、対応したらどうか。われわれが想定していない事態になっている法科大学院の事例が確認されれば、改めて議論すればよい。

【委員】
 法学部等における法職教育についても今回は書かない方がよい。これはもっと全体について見直す中で考えるべき問題である。

【委員】
 これからの法学部の在り方も非常に大きな問題であり、旧司法試験がなくなった後の既習者とは、どのような教育を受けた人を想定するのかも含め、慎重に考えなければいけない。

【委員】
 未習、既習の問題、法科大学院と博士課程の連携の問題は、当初あまり想定していなかったが、深刻な問題が生じている。機会を見て集中的に議論すべき話であり現段階では触れず、コア・カリキュラムの話も出さない方がいい。

【委員】
 法科大学院及び教員による、正規内、正規外の学生あるいは修了生に対する教育についての整理の仕方しかないと思うが、現実問題として、新しい修了生に対する3月から5月までの対応は、学生とかなり密接な関係があるため、同じ修了生でも、新修了生の取扱は別に考えるべきではないか。

【委員】
 学生に対しても一定の不適切な関与を止めるメッセージを出すことになるため、学生のところを修了生に一定範囲で延ばすことでカバーできる。

【委員】
 OB会による指導については、法科大学院とOB会との関係性にもよるが、法科大学院に発するメッセージにより、考えは伝わるのではないか。

【委員】
 トップ校が一切受験指導に関わらない結果、予備校へ行く修了生が相当数存在するようになり、彼らが大量に合格することで、法科大学院の教育ではなく、予備校教育で合格したという神話を再生することにならないか。法科大学院が一切技術的な受験教育をしないとメッセージを発するだけで、本当に良いのか。もっと根本的に考えなければならない問題があるのではないか。

【委員】
 問題意識は非常にわかるが、根本的に何が言えるのかというと、授業で行ったことをしっかりと学習せよとしか言えない。受験指導をするようには言えない。合格率が8割にならないのは、合格者数が限定されているという理由もあるが、合格するまでの実力がついていないというもう一つの現実がある。それは教育の仕方の問題もあるが、入り口の問題もある。AO入試によって多様なバックグラウンドの学生を入学させる理念は良いが、選別が不十分のため、学生間の格差が開いていることは事実である。教員側からすると、成績管理を非常に厳しくする方が親切だという意識が大分出てきた。

【委員】
 法科大学院の教員が何か言っても、学生はそれをにわかには信じないので、唯一効き目があるのは司法試験そのものである。司法試験は、次の受験者に対する最大のメッセージを発している。司法試験委員会は1回目よりも2回目の方がより詳しく出題の趣旨を出し、1回目でもインタビューを出した。こういう答案を期待しているというメッセージをもっと出すべきである。また、試験委員が採点基準を漏らすことは批判されるが、もっと批判されるべきは司法試験委員会が採点基準を明らかにしていないことである。そのため模範答案を示すのは唯一予備校のみとなり、不安のある受験者は予備校へ行く。そして出題者が期待しない答案でも、全員がそれを書くとその中から必ず合格者が出てしまうという、旧試験をだめにしていった一番の要因を生み出す。本当に合格する力のない人は合格させないようにしなければならない。また、司法試験合格者や実務家教員が、自分が司法試験に合格した答案の書き方を教えることで、法科大学院自体が予備校型教育の再生産をしている部分がある。司法試験自体がもっと情報を開示していく方向で、一人一人の法科大学院生あるいは教育する側も安心して、本来の授業に集中できる環境を目指すべきである。

【委員】
 それらを背景として、この文章は、何らかの形で意識する機会、何らかの動きの契機となるべきであり、削除の指摘があったところは削除し、焦点を絞った明確なことをまとめ、言えないことを無理に言う必要はないと思われる。この問題の2面性は非常に大切であるが、その2つをどう制度の中ですり合わせるかは大きな課題であって、大問題として近い将来上がってくると思われる。それを我々もやはり見据えておく必要がある。

【委員】
 司法試験には、合格者像や模範答案を明確にしたものがない。予備校が示すものは間違っている。司法試験委員会が主催する考査委員会の申し合わせで採点基準を明らかにしないことが、一番批判されるべきというのはそのとおりである。考査委員による、採点の申し合わせ事項の公表が一番権威があると思うが、その可能性はあるのか。

【委員】
 司法試験関係の情報は大分公表されるようになった。試験委員会も新試験になってから、考査委員会が採点した実感等も公表している。採点基準に実質当たるものを公表することは大事だと考えている。

【委員】
 司法試験委員会は昨年考査委員にヒアリングを行い、採点した実感についてホームページに公表したところ、非常に好評であった。採点基準はほぼわかり、かなり裁量の点数もあると言っており、非常に詳細なものであった。今年も実施しており、近日アップされるので、学生たちには必ず見るよう言っている。そうすれば予備校に惑わされない。今回の問題については、考査委員が採点、添削まですると問題があるが、採点基準自身についてはかなり公表されており、できが悪い、予想よりできていないと明言している。

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