法科大学院特別委員会(第22回) 議事録

1.日時

平成20年8月21日(木曜日) 14時~17時

2.場所

金融庁 9階 903共用会議室‐1

3.議題

  1. 法科大学院の教育体制の強化について
  2. その他

4.出席者

委員

臨時委員
 田中委員(座長)
専門委員
 小幡委員、小山委員、鎌田委員、川端委員、川村委員、小島委員、瀬戸委員、中谷委員、永田委員、林委員、諸石委員、山中委員

文部科学省

 久保審議官、藤原専門教育課長、浅野専門職大学院室長

5.議事録

 事務局より配付資料の説明が行われた後、法科大学院の教育体制の強化について意見交換が行われた。

【委員】
 国立大学は比較的、教員数に余裕があるケースが多いが、私立大学だと厳しいという話を以前聞いたが、ここで問題になっているダブルカウントで、修正が非常に困難な大学もあるのか。例えば、学部の教員を減らして法科大学院に移すという形で対応できるのか。

【委員】
 国立大学は比較的専攻でやっているが、ほとんどの私立大学は別々につくっているから、教員の相互移動も非常に難しい。

【委員】
 法科大学院と法律関係の教育システムの中で、次期世代を育て上げるのが難しい。

【委員】
 法学系の研究者、教員養成は、法科大学院がつくられる前から中教審などで言われている大学院の教育課程の実質化には全く乗らない形になっていた。もともと法学系の研究者養成は難しいが、法科大学院制度によって顕在化、拡大されたというのが実相ではないか。

【委員】
 ダブルカウントは、適格のある教員が少ないから暫定的に認めた制度。ただ、その結果として簡単に教員が確保できたため、予想以上の法科大学院が設置されたと思われる。ダブルカウントは予定どおり解消することを前提として、それとは別に教員の後継者の養成の制度を考えるべき。その際に、ダブルカウント的なものが最終的に必要になるかもしれないが、研究者養成のための実力のある後期博士課程を持っているところでのみ認められるように考えるべき。

【委員】
 ダブルカウントを認めたことで、教員がロースクール、学部、大学院も教えることになり、忙しくなっているという実態がある。そのため、学部や大学院の講義のスリム化という形で対応するという、教育という面から逆方向に進んでいる大学が多い。今ダブルカウントをやめたら、例えば国立大学では教員数が決まっていて増やせないため、今の弊害がより大きくなる懸念がある。また、仮に形式上は専任にしても、依然としてそういう状態が続くのでは。

【委員】
 今、指摘された点は、定員を減らせば済む話。

【委員】
 結局のところ、例えばロースクールの教員が学部を教えるものの枠をある程度はめていくという形でないとあまり意味がない。

【委員】
 教員の負担については第三者評価で基準を決めているから、適正規模に押さえていく。

【委員】
 今の基準が本当に適切か、もう少し絞ったほうが良いのではないか、考え直す必要がある。

【委員】
 法学研究者養成システムの問題から検討しなければならない問題が多いが、それは法科大学院ができる以前からの問題で、ここでは主として法科大学院の教員をどうして確保するかという観点から、それも一定限度の視野に入れて検討する。

【文部科学省】
 法科大学院から見た基準を満たしているかだけでなく、学部や博士課程から見たデータを押さえておく必要がある。どの程度弊害が及んでくるか、実際のあてはめを見ながら実態を把握しておく必要がある。

【委員】
 専門職大学院という枠との整合性の問題もある。法科大学院の場合、必要があればできるだけ特殊扱いにしてもらう。ただ、法学系の学部・大学院との関係は調査し、そのデータを踏まえてここで議論したい。

【委員】
 法科大学院の教育と研究者養成という問題だが、確かに法科大学院の上に研究者養成のコースを設けるというのは制度的に考えてもいいことだろう。もう一つ考えるべきは、法科大学院で現在行われている教育がある面で全法科大学院共通みたいな形になっているが、これまで研究者養成で成果を上げてきた大学院については、法科大学院の教育研究というようなものを強調できるようなカリキュラムをある程度認めては。

【委員】
 基本的にこのダブルカウントは廃止すべきだが、その場合どんな問題があるか検討する必要がある。また、研究者養成、後継者養成の問題は別の問題として考えるべき。

【委員】
 ダブルカウントの廃止は前倒しもあり得る。様々な弊害があることに取り組んで準備しなければならないし、延長するのではという期待を抱かれないよう、なるべく早い段階で廃止の姿勢を明確にすることが大事。

【委員】
 ダブルカウントの問題と教員の確保、養成の問題は切り離したほうが良い。その中で、研究者養成のコースを従来の学部から法律のドクターコース以外に、法科大学院修了者から研究者を養成するというコースを考えるのかどうか。もう一つは、そういう中で指導体制をどうするのか。従来型の学部出身者から養成していくところにロースクールの教員がどれだけ関与できるシステムをつくるのか。また、ロースクールの上にドクターをつくった場合に、そこの集大成をどうするか。そういう複線化するようなものを将来的につくるのか。

【委員】
 複線化の問題は定義を要する。法科大学院から従来の学術系の大学院の後期に入るのは当初の制度設計から予定されているが、問題はそれが現実的でないこと。その状態の中で複線化というのは、制度として置いても現実にはあまり働かないかもしれない。当初、制度を発足させるために無理をしたところがある。実定法を中心に法科大学院を設計することが実務界に受け入れてもらう最低限度の条件だったが、法律を記憶するのではなく、それを素材にしながらものの考え方を多角的にするのが法科大学院の目的。実定法はベースになるが目的ではない。

【委員】
 法科大学院をつくったときの発想としては、法学の理論的な教育自体を高度化した上で実務と連携するという話で、大学院レベルの法学教育をやるのが基本的な前提にあった。研究者養成と全く別の法科大学院をつくることを強く意識していたわけではない。カリキュラムの独立性を確保する必要性はあったと思うが、教員組織まで独立化する必要が本当にあったのか問題。既存の法学研究科では指導できないという制度設計自体おかしい。

【委員】
 ダブルカウントの解消を厳格に進めていった場合にどういうことが起きるか。今の教員に全く変動がないとして、どれぐらい劇的な変化が起きるか。

【委員】
 大規模校は、経営的に削減の中で取り組めるところもある。あるいは、先ほどから問題になっている後継者養成型のものを被せることで、別の制度でそれをカバーしていく。定員100名ぐらいの大学は調整しながら何とかやっていけると思うが、40、30名の大学は劇的に変わると思う。

【委員】
 大規模校の国立大学の問題は、定員を減らすことと、ダブルカウントを解消したときのポストがないこと。だから、学生数を減らすにせよ教員をそろえるにせよ、対応は大変。

【委員】
 私学の場合、経営の問題がある。また、国立も授業料で何とかしろという形で非常に厳しく、定員を減らせる状況ではないと聞いている。

【委員】
 大学によって事情は違うと思うが、多くの大学は教育学部の再編などで余った教員数をロースクールに持っていったりしたので、教員採用は難しい。学生定員を減らすほうが現実的で、それに見合った教員を補充していくのは非常に難しいのが現状ではないか。

【委員】
 教員をどうやって確保するかが一番重要な課題。もう一つは60歳以上の教員を大量に抱えている大学が多く、今後、数年以内に大部分の教員が出ていくといって過言ではないが、それを埋める人材の育成が全然イメージされていない。その意味では、教員養成問題をこの部会で現実にどうやるのか考えなければならない。法学部でどういう勉強をしてきたかで既修者の中身が決まるのに、教育に手が抜かれて法科大学院入学試験対策だけを学生がやるようになると、学生のメンタリティーは従来の旧試験の受験生と同じになる。法科大学院はいわば短期間に浅く広く、研究者になるとある意味で狭い点を深く一生懸命勉強する。法学部でそういう習慣を身につけさせることが今後手抜きされていくと、法学教育全体のイメージが変わってしまう。教員確保の問題は、学部教育や研究者養成の博士後期課程の教育と一連のものとして考えなければならない。

【委員】
 本当はもっと未修をたくさんとってマスター方式をやりたいが、教員が足りないから既修でとってきて、一番肝心のところをスキップするというのは、教育の弊害をもたらす大きな原因。

【委員】
 法科大学院をつくるときに年配の人をたくさん連れてきた大学が結構多い。認証評価でチェックして自覚的に対応している大学もあるが、お手上げ状態の大学もあるのが実態。若い人を採るにしても、経験年数の問題がある。

【委員】
 今の状況でこの定員が維持できない大学が、早くノーティスすることで早めの決断ができると思う。暫定措置の延長が無いことを早めに明らかにすれば、そこまで待たずに定員を削減していくという可能性もあるので、早いほうが良い。

【委員】
 現実の問題として、ここにある法科大学院全部を維持することは明らかに不可能。少なくとも展開・先端科目に関しては、各大学が1人ずつ置かなくても、連携授業方式を導入するとか、いろいろな手法がある。基準づくりと併せてやっていくのに4、5年はすぐかかってしまうから、それをやるとしたらこのような制度が必要だという提案と具体策を出す。

【文部科学省】
 今、進めているのは、9月か10月に大学設置基準を改正して、設置者が違っても共同で一つの法科大学院、研究科をつくれるようにする予定。

【委員】
 法科大学院の特別な事情もある。特に多様性とか、地域バランスを確保するということは重要。それからもう一つは、大規模校の集中化現象が次の段階に進んでくると、抽象的な質の確保には寄与するが、活力ある法曹を全国にわたって個性ある形で育てるという点から言うと問題をはらむ。

【委員】
 現段階でそういう法令ができても、国立と私学ではいろいろな面で違うので、あまり強くメッセージを出すのは良くないが、展開・先端科目や基礎法学は一緒にやってプラスのほうが多いと思う。

【委員】
 教員の補充がきちんとされているか第三者評価機関でチェックするということだが、この三機関の報告書を見ると、大学評価・学位授与機構が科目適合性をかなり見ているようだが、認証評価機関は教員審査についてはそれほど体制がとれていないのではないか。

【委員】
 教員審査自体をやる趣旨ではないが、機構は、基準に合わせて業績や経験年数を審査している。博士論文とか研究養成であれば実績がなくても科目担当はできるという形で設置基準の時よりは緩やかだが、教員の研究レベルの維持は結構細かくやっている。

【委員】
 大学基準協会もそういう体制ができてないが、その意味ではちゃんとつくらなければならない。

【委員】
 財団の基準は設置審と形式的には同じ。ただ、実質はある程度機械的に論文の数を数えて、疑問があれば現地調査に行き意見を出す。

【委員】
 いずれにしても、ダブルカウントは今後かなり大変になってくるので、補充人事について評価機関でしっかり見るという体制のほうが良い。

【委員】
 きょうの報告でも業績不足というのがあったが、業績の内容をどう見ていくかという点は相当問題がある。インフォーマルな評価機関の中の議論だけではない。基準を設定するのは良くないが、余りにも非現実的な基準は清算し、幅のあるガイドライン的なものは未来の弊害を予防すると、二方面を選んで、コンセンサスを得ておく必要がある。

【委員】
 各評価機関が年次報告書を出して、そこで問題点があれば指導するような体制になっている。論点整理の仕方で、現状と今後の方向について、2つに分けて論点を整理しているが、現状について、専任教員の確保の問題、それから展開・先端科目や基礎法学隣接科目の教員がほとんど兼任であることが、法学教育の高度化という点から見て適切かという問題がある。また、統廃合などをする時に、法律基本科目だけを念頭に置いて専任教員を問題にするのが適切か。実務家教員は年間6単位で専任とみなされるが、研究者教員に比べると大学に対するコミットメントの仕方が全然違うので、必ずしも実務家教員が多ければ良いというものでもない。専任教員の定義も、実務家教員に関してはもう少し厳格に考えたほうがいい。

【文部科学省】
 文部科学省が制度的にできることは、質を高めるためのシステムを用意すること。共同で研究するシステムを用意するし、質を高めるために入学定員を見直されることもあり得る。

【委員】
 現実的には、統廃合という形で全体の数が減っていくという将来図を持っておけば良いか。

【文部科学省】
 入学定員の見直しを検討しているところが既にいくつか出始めている。大学院設置基準等を改正した共同設置型以外に、事務や一定部分の教育を共同したりする試みは今でもできる。

【委員】
 全体の数が少なくなることが望ましいということをメッセージとしてあまり表に出さないほうがいいのではないか。法科大学院が統廃合していくとか、例えば寡占体制つまり500,600という定員の法科大学院ができてくるということも望ましくない。

【委員】
 法曹人口をもっと増やさなければという話と法科大学院の問題とは直接つながらないところがある。今の法科大学院の基本的な問題点は、各法科大学院が教育能力を超えた学生数と、教育能力を超えたレベルの学生を引き受けてやっているというところに根本的な問題がある。必ずしも定員を減らすことだけが対応策だとは思わないが、この指摘には適切な対応策を考えないと、法科大学院の質向上に対する批判にはこたえられない。

【委員】
 ただ、社会的に見て高度な能力がある人たちが、法科大学院が厳しいということで敬遠しているのも事実。

【委員】
 法科大学院の定員が多ければ優秀な人がたくさん入ってくるというのは違って、今でも、法科大学院に入ってきちんとした教育を受ければ受かる。法曹人口論と法科大学院の定員と多様な人材の確保というのは直接にはつながらない。適正規模の問題。

【委員】
 適正規模は社会が決定するもの。少なくすれば質が良くなるとは、軽々と判断できない。

【委員】
 統合や廃止がどう動くか見通しがつかない。74校のうち、2年間で2桁以上の司法試験合格者を出している大学は26校しかない。ほとんど通っていない大学が50校近くあり、1、2人でも通れば学校の名誉になるという限り、それほど大きな精算は起こらないのでは。ただ、合格率の悪い法科大学院が大学のブランドにかかわる、という発想になると変わってくる。

【委員】
 数を減らす、あるいは撤退に消極的な理由の一つは、3の動機の問題がある。もう一つは、一種の「囚人のジレンマ」状況があって、定員を減らして質を維持するという方策だけでは難しい。

【委員】
 これからは実質的な点で不適合認定という法科大学院が結構出てくるのではないか。その場合、文科省がそれに対してどういう手当てをするのか。そこをきちんとやれば最終的な質の確保が実質的に前進するのでは。

【委員】
 仮に、市場の論理で撤退が始まると、司法制度改革の理念で、全国にあまねく整備をということだったが、東京などの都会中心に残っていくであろう。市場の論理を尊重すれば地方が放ったらしかになる。

【文部科学省】
 地域配置で言えば、全国の適正配置も鑑みながら設置を進めるという基本的な原則の下に設置認可を進めていた。全体の学校数の1割である国立大学法人は、全国の首都圏、近畿圏、中部圏の3都市圏以外に7割が広がっているので、文部科学省で直接、全体の配置状況を見ながらある程度関与できる。私立大学は全体の7割が首都圏、近畿圏、中部圏に集まっているので一定の限界はあるが、地方の大学ではそれぞれ国立大学と連携するというアドバイスなどを通じて、全国的な配置がある程度満たせるような配慮はしていきたい。

【委員】
 文科省がやると権力行使的になるという批難があり得ると思うが、法科大学院協会で自主的に減らそうとか連携しようという動きになるよう、指導をしてはどうか。

【委員】
 法科大学院協会の中で各法科大学院が話し合うということはあるかもしれないが、協会はそういうことを指導する組織とは少し違う。

【委員】
 協会が本来そういう性格でないのはわかるが、そういうことをやろうと思えば何か手助けをすることはできるのでは。

【委員】
 教育体制の強化ができないところは、やめたり数を減らしたり共同でやるという選択もあるので、ぜひそれを勧めるということをここで提言し、その方向へ誘導することはあり得るのか。

【委員】
 それは多分あると思う。こういうシステム、基準で法科大学院の質を維持し、それに対応できない大学は、定員だけではなく存続も踏まえて見直していただくという論調の取りまとめにはならざるを得ないのでは。

【委員】
 ここでの取りまとめが、具体的に各法科大学院が直面しているティピカルな問題をとらえて、こういう問題があり、それをどのように改善し、このレベルを維持する、という一つのメッセージになることがあり得るという理解で良いか。

【委員】
 まだ最終的には詰めていないが、ここで質の評価のシステムをつくれば、各評価機関に評価基準の中にこういう基準も盛り込んでいただきたいということと同時に、各法科大学院が直接これを維持する方向に努力してもらい、それができない大学は統廃合とか撤退とか定員の見直しの方策をとり、質が維持できるよう対応してもらうという両方のメッセージがあるのでは。

【委員】
 マスメディアを通じて、ある程度明確なイメージを社会に対して提示することもあるということで良いか。

【委員】
 基本的にその方向で異存ないが、廃止を目的化するような印象でとられると、日弁連の提言に乗っているというイメージで受け止められることがあると思う。基本的に法科大学院制度そのものには問題は無いし、司法制度改革に則ってそれを維持していくというのが最初の出発点だったが、その点についてぶれはないのか。法科大学院の質を維持するには今の体制では無理で、現実的には定員を削減しなければならないだろうが、あくまでも法科大学院の質の維持、司法制度改革を推進するための方策だということが、正しく受け止められるような内容にしなければいけない。

【委員】
 質の維持がメインであり、法科大学院の数や定員を減らすのは、質を維持するための一つの方策として考えられるということで、数が多すぎるから減らそうという話ではない。

【委員】
 合格者3,000人を減らすというと、まさに懸念されていることになる。3,000人はきちんと維持し、例えば法科大学院のうち現在第三者評価機関の評価の結果、あるいは、これからの教員確保の面から見て維持できない大学に定員を削減してもらうと合格率は上がる。そうすると、法曹の質は間違いなく上がる。3,000人を減らすことは全く考えてないということは前提にしてほしい。

【委員】
 前回、質はそんなに悪くないというメッセージをしている。ただ、司法試験に受かるパーセンテージが低いという現状システムのままだと、質が維持できないかもしれないからだと思う。質が悪いからという言い方は、前回と多少食い違う感じがする。

【委員】
 全体として3,000人の母数になる教育ができていないとは思わないが、全てが十分な教育を受けたり、教育の能力があるかというと、疑わしいと見ざるを得ない。

【委員】
 厳格な進級・卒業認定さえあれば質は上がる。

【委員】
 日弁連の認証評価でも、作為的に卒業させているのはないかというのをチェックする。そういういうことが伝わって、大学が能力のない者を卒業させようとは思わなくなると、法科大学院卒というだけで一つの社会的ステータスになる。それから、厳格な進級・卒業認定をどこまでこの認証評価の中で誘導できるかが一番の問題。

【委員】
 基本的には各法科大学院が自己規律して、法務博士が社会的な信用を得るレベルの品質保証をするということが大事。

【委員】
 厳格な進級・卒業認定をやり、各法科大学院が自校の卒業生に責任を持つことによって全体の卒業生の質を確保する。定員を経営上の観点から維持するということはやってもらったら困る。

【委員】
 質の話は一度メッセージを発しているから、今回の議論は、法科大学院は定員が予想以上にたくさんできてしまって司法試験に受からないという状況に対し、適正規模にしていくのが良いというメッセージを明確に発しても良いのでは。それが3,000人のところに波及するのは困るが、世の中はもう既にそういう印象を持っていて、現在、適性試験の受験者数も減っているという状況がある。

【委員】
 適正規模の話を司法試験の合格者との関係でするのはおかしい。司法試験というのはプロセスとしての評価なので、合格者が3,000人なんていうのはリーズナブルかどうかとかいろいろ問題がある。それでも、バランスを図るために法科大学院を適正規模にするという発想は、この委員会としては出しにくいメッセージだと思う。

【委員】
 社会に与えるメッセージというような話から先ほどから議論になっているので、そこは適正規模の話とリンクする必要はない。法科大学院のシステムとして適正な教育をできるというところを改めて提示していったらいいのではないか。

【委員】
 司法試験に通った後きちんとした法曹になるための教育をやるのが法科大学院。現実にそれは第1期生、第2期生で成果を上げているが、競争率が激しくなればなるほど、試験に通るための技術を身につけたほうが得だというのが蔓延していくのは大変困る。そこで一定の合格率の水準を保たなければならないが、そのために受験者の質を高めて一定の水準にある人だけを受験者集団に提供する。考え方としては、たくさん入れてもしっかりした教育や修了認定できちんと絞れば良い。それができないところは結果として退いていただくということはあり得る。

【委員】
 司法試験の合否だけを基準に教育をやるのではなく、各大学が責任を持って質の保証をできるシステムをつくってもらわないと困る。

【委員】
 研究者養成体制と、(3)に書かれているところは、この委員会の所掌を超えるのではないか。質の良い専任教員の確保、研究をベースにした専任教員を軸にした教員組織をつくることは法科大学院に絶対必要だと思うが、どこでそれを議論するのか。法科大学院を出て法曹で教員になりやすいようなインセンティブを乗せた道筋をつくり、奨学金や助教の制度、法科大学院がどう考えていくかという幾つかのモデルを考えていく。

【委員】
 例えば、法科大学院修了者が研究者になるための制度、あるいは、法科大学院の教員の円滑な確保という形からこの問題に発展する。整理の仕方を変えれば、ここで議論しても問題ない。

【委員】
 問題があることは分かったが、ではどうするのかという答がなければあまりインパクトが無い。また、法科大学院修了者の中から研究者を養成していくシステムが必要。そのために、奨学金の制度の整備や経験年数といった制度の整備など、幾つかそれを助けるシステムを考えて、法科大学院の中から将来の研究者を再生産していく体制をこうやってつくるというような提言にならないか。

【委員】
 法科大学院の修了者と法科大学院の教員の確保、この2つを核にして研究者養成システムとどのようにうまく連携させるかを中心にやっていく。これは問題点が限られているので、各大学の事情を個別に聞いて対応する。そのあたりを中心に実態を見た上で、既存の法学研究科からもクレームがつかないような取りまとめをしなければならない。

【委員】
 私立大学の大部分は独立研究科で、本当はその中で自己完結的に研究者養成できれば良いが、教育歴のない人は法科大学院の専任教員になれない。助教は3年の任期付きなので、残り2年について、制度的にバックアップするにはどうしたら良いか、法科大学院制度として考える部分がある。

【委員】
 今5年という実務経験を、少なくともこの層に限っては3年で良いという道を開くような提言になるのか。

【委員】
 設置基準の話は一応終わって、今は法科大学院の認証評価で、例えば機構の場合には、事実上きっちりとした博士論文があれば、教育経験がなくても共同担保は認めるというような形でゆるやかになってきている。設置基準まで入れるのは少し難しい。

【委員】
 確かに3年と5年という問題がある。それはこの中で運用を変えていこうという具体的な方向づけを打ち出すのはいかがか。

【委員】
 認証評価で世代交代とか新しい教員が確保できるような基準にしたらいいと一言入れておくとやりやすくなる。

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高等教育局専門教育課