法科大学院特別委員会(第19回) 議事録

1.日時

平成20年3月27日(木曜日) 13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省 旧文部省庁舎2階 第2会議室

3.議題

  1. 法科大学院の教育の質の保証について
  2. 認証評価の結果について
  3. その他

4.出席者

委員

臨時委員
 田中委員(座長)
専門委員
 井上(正)委員、井上(宏)委員、小幡委員、鎌田委員、川端委員、川村委員、小島委員、瀬戸委員、永田委員、中谷委員、林委員、諸石委員、山中委員

文部科学省

 清水高等教育局長、久保審議官、藤原専門教育課長、浅野専門職大学院室長、神田専門教育課課長補佐

5.議事録

 事務局より配付資料の説明が行われた後、法科大学院の教育の質の保証及び認証評価結果について意見交換が行われた。

法科大学院の教育の質の保証について

  • 基本的に適性試験は法科大学院における勉強に適する人材を選ぶ試験であり、最終的な司法試験との完全な関連性はなかなか難しい問題がある。アメリカのLSATでも、ロースクール1年次の成績とは非常に相関関係が強いが、最終的なものとは必ずしも相関関係があるわけではないと言われていたと記憶している。
  • この連携というのを数値や相関で見る場合に非常に注意しないといけないのは、どっちをスケールにして質を議論するかである。司法試験の合格率や科目の優劣、成績で法科大学院の教育や入学者選抜の質をはかるという単純な議論になる。逆に、法科大学院の教育のほうから見て司法試験のあり方やその後の司法修習のあり方が適切なのかを双方向で見なければならない。
  • この点は、今後の検討に際して周知・留意しておかなければならない。現在、制度の変わり目であり、双方向的に両制度をにらみながら、全体として社会に応えているかという角度から検証していくのが良いのではないか。
  • 1番の入学者選抜についての調査項目で、適性試験を入学者選抜において利用するのはある意味で義務づけられていて、その基準が各校で違うだけだと思う。むしろ知りたいのは、適性試験がある点数の学生が1年目の終わりにどんな結果になったのかは調査する価値がある。ただ、これもトップ校だと、ものすごく高い適性試験の中で相対評価すると、適性試験の点数と学内のGPAとは関係ない結果しか出てこない。ただ全体として、ある一定レベル以上の適性試験の点数をとっていれば、本来期待される法科大学院教育に十分耐えられることが選抜できるという結果が得られればそれでいいし、全然得られなければ適性試験はおかしいということになる。入り口における質と多様性の確保というのは、一般的にいって非常に優秀な人がたくさん法曹を志望すれば良い人が選べるのは当たり前なので、むしろそのためにどうすればいいのかというのが本質的な問題ではないか。
  • 結局、一番問題なのは、適性試験の使い方も各大学次第ということである。
  • 大学の学業成績と司法試験の合格あるいは司法試験の成績との連関でどちらをスケールにするかは非常に重要だが、もう一つ重要な点は、司法試験ではかれる力量というのは限られていると考えて、新司法試験という点だけではなくプロセスを重視するということである。その意味で、完全に学業成績と連関しなければならない問題ではないと思う。
  • 入り口の問題から適性試験の問題も絡んでいるが、もう一つ未修・既修の問題がある。既修試験にばらつきがあるという問題と、未修の中に法学部出身者の未修とそうでない未修者がいる。
  • 非常に難しいのは、例えば入学者選抜や法学未修者クラスの構成がどうなっているかについて、おそらくクロスリファレンスで全部見ていかなければならないということである。
  • 他学部社会人3割という基準について運営上困ったことがあれば意見を出してもらう。
  • 実施状況調査の結果について、どのように公にするのかを検討してスタンスを決めた方が良い。
  • 今後、検討課題で質の確保、多様性の確保をどういう観点から見ていくかというときに、ここでは選ぶ側の立場からの視点は非常に強いが、応募する学生の側からの視点が今までの議論で足りない気がする。
  • 他学部とか社会人の応募者が少なくなってきているのは、行ってどうなるのかという見通しが大事で、減ったことに対して大学側が幾ら対応しても、対応が的外れということも結構あると思う。それから、全般的に法科大学院は専門職大学院の一つのカテゴリーに入れられているおかげで、法科大学院から博士課程へ進学した場合や教員になった場合、それから教員の所属なんかについて、不必要に不利益を受けている。学術振興会の博士課程の奨学資金でも、法科大学院から進んだ者はいろんな不利益がある。専門職大学院のカテゴリーに余りこだわらずに、本当に多様な学生を教員にするとか、いい教員を確保するということについて、法学の特殊性を踏まえた制度設計についてご検討いただきたい。
  • 検討をする2つの意味があって、1つは、今法科大学院修了者の質が悪いと言われているが、それが実態として何を意味しているか、どれだけの根拠かあるのかを確かめてみることである。しかし、それより大きな意味は、もう丸4年たったので、最初にいろんな考え方でつくったものが本当にそのとおり機能しているのか、学生や教員の実態に合ったものになっているのかを見直してみることである。それで問題を整理して、今後の検討の仕方を考えた方が良い。
  • 法律基本科目でない教育をどれぐらい熱心にやっているか、それが新司法試験の阻害要因になっていないかという視点の調査が良いのではないか。
  • 法科大学院を出た学生で司法試験に受かっていなくても相当使えるから雇いたいという企業も出てきていると聞いたが、企業サイドや地方の市民あるいは裁判所から見たというところで、相当多様性があることで、評価が大きく分かれる可能性がある。
  • 法科大学院の成績と新司法試験の成績の結びつきというのは非常に危険である。とにかく通りさえすればいいという発想はだめだと思う。ただ、例えば法律基本科目に力を入れるのは悪だというのは間違っている。それが基本的に欠けている人も研修所に入ってきているという現実を直視しなければならない。だから、法科大学院による法律基本科目についての教育が完全にうまくいっていると考えるのは現実無視である。それは新司法試験組に特有なのか最近の一般的な現象なのかがわからない部分があるが、もし法科大学院のカリキュラムの立て方や全体のバランスに改善点があれば、それも率直に認めて改めていくべき。
  • 第1期生が卒業し、昨年986人が2回試験を受けて不合格者59人というのを注目されたが、94パーセントが合格しているわけなので、非常に多数の優位な法科大学院修了生が実務に出ていることを重く見ていただきたい。
  • 特に教員養成や教員の教育体制の問題については、各法科大学院で教員がどういう兼担状況なのかを把握しないと議論ができない。早く検討を始めるため、その部分等については早目に調査をかけないといけない。
  • 場合によって急ぐものについては急いで検討のデータを集め、他にどういうデータが要るかという立ち入った検討についてはワーキング・グループで検討したい。

認証評価の結果について

  • 平成19年度の法科大学院認証評価の実施状況について、適格認定が13大学、不適格認定が5大学という結果になっている。
  • 3つの実施機関で結果が分かれていて、ある点は別の機関の評価を受けていれば、これは不適合にならないだろう項目が不適合に上がっている。ここでずれがあるので、こういう問題をどのようにするかということについては、3つの評価機関によく話し合っていただいて、対応していただく必要があるかもしれない。
  • 各評価機関3つで集まってというと、なかなか難しいのではないか。それぞれが認証を受けて、それぞれが自分の基準を持ってやっていただくものなので、その基準自身は良いということになっている。
  • ただ、一通り評価が終わったところで、それぞれの評価機関が全部そうだと思うが、少なくとも日弁連では、いろいろ実際の経験を踏まえてもっといい評価基準を考えようという予定にはなっている。
  • そういう問題点とか、あるいはそれぞれの評価機関が評価されて、これらはやっぱり設置基準自体の問題があるのではないかということを、各評価機関が基準を作る時に感じているところもあるので、そのあたりはここで議論するときにもまた検討せざるを得ない問題だと思う。
  • 基準を満たしていない項目が1つで不適格認定をしていると機関と、改善を要する点にして不適格認定をしていない機関があり、そういうところの不適格の認定の仕方ちょっと3つの機関でずれているという印象がある。これが公表された場合、その辺のところは恐らく問題になると思う。今すぐということではないが、そういう声がいずれ上がってくる可能性が高いので、そうなった場合には、やはりすり合わせのようなものをこういう場で議論せざるを得ない。認証評価機関3つで話し合ってくださいというのでは片づかないのではないか。
  • 基準協会の場合は、法科大学院が立てた目標に沿ってきちっとできているかという点が重視されており、評価基準はこのセッションでは変えないが、そのあたりは少し明確にして対応しようという形で今動いている。ここで基準を認証したわけなので、それぞれ基準が違うということはあり得るのだが、例えば時系列的にもうほぼ改善がなされているものであっても、その基準日を決めて、基準日において評価基準を満たしていなければだめだというのがこの機構のほうだと思うが、基準協会のほうは改善されていればある程度それを考慮している。そういう違いが若干あるので、すり合わせということではないが、このあたりをどうするかという問題はあると思う。

その他

  • 大きな課題の一つが法科大学院の教育の質の保証ということだが、ぜひ法科大学院だけではなく法曹三者におかれても、新司法試験というのが一体その後の法曹としてのパフォーマンスとどういう関連性を持っているのかご配慮をいただけると大変ありがたいということを要望として述べさせていただきたい。
  • 質の確保についてワーキングで考えていくときに、最初の司法制度改革審議会の答申を原点としてキープして行けば良いと思う。
  • あれは制度設計の原点には間違いないが、ここで言われているのはそのような制度設計趣旨で動かし始めたものについて、必ずしもその趣旨を実現するためにうまくいっていない事項もあるし、理想に合わない現実もある。
  • 場合によっては、最初の制度設計自体に問題があったかもしれないということはあり得る。
  • 今の問題は、この法曹養成制度の持続的な成長というか成熟というものを目的としていくということを、当然制度設計のときに司法制度改革審議会が期待していること。そして、そのための具体的な手段をどういうふうにこれからやっていくかということ、これが想定された一つの筋道だろう。しかし、制度の現実の不具合が生じている場合に、直ちにそれは制度のそのままの問題点であると直結して判断するということについては、一つの制度が国家によってある時点で決定されたとき、やはり慎重であるべきで、それこそまさに一つの問題として、そのこと自体を慎重に検討すべきだということではないか。
  • もちろん、司法制度改革だけという訳ではなく、法科大学院の場合には、大学院制度自体の改革として高度専門職大学院の一環としてそもそもスタートしたということがあって、専門職大学院のカテゴリーそのものが法科大学院にとって本当に適切なのかどうかということも問題になってきている。

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