資料5 第7期大学院部会における主な意見

大学院を巡る状況

  • アジア諸国の台頭などグローバル競争の激化、ICT化の第2次産業革命等の産業構造の急速な変化。
  • 超成熟段階に入った知識集約型創造社会において求めらるのは、高度な専門的知識を基礎に自ら考え行動し、価値を生み出し、既存の様々な枠を超えてグローバルに活躍できる知のプロフェッショナル人材。学士課程以上に大学院レベルの教育の必要性が高まっている。
  • 人当たりGDPの低下と低い労働生産性。若年層人口の減少による高度専門人材の枯渇の懸念。他方、諸外国の公的教育投資比率は高く、米中韓等の公的研究投資は、我が国の伸びを超えて急増。

大学院改革の進捗と課題

  • 「大学院重点化」から20年以上が経過した今、現在的課題を見直すべき時。
  • 前期10年で量的拡大、後期10年では教育改革(大学院教育の実質化)が大学院GP、GCOE、博士課程教育リーディングプログラム等の支援等を受けた大学を中心に進展。
  • 博士課程教育リーディングプログラムでは、修士博士一貫のグローバルリーダー養成のためのカリキュラム開発や、専門分野の枠を超えた一流の指導体制の整備が進みつつあり、学生に対する高い評価が報告されている。
  • 近年、大学院在学者数の減少、優秀な人材の博士離れの傾向。1.研究費が基盤的経費から競争的資金と傾斜する中で若手ポストの多くが不安定な任期付き雇用になったこと、2.競争的資金のライフサイエンス等分野への集中などにより、産学間の分野のミスマッチが生じていること、3.企業の雇用慣行の壁など、キャリアパスへの不安が原因。
  • 小規模専攻数が増え、規模の二極化がみられる。卓越性と国際性も不十分。

体系的・組織的な大学院教育と産学連携

● 体系的・組織的な大学院教育の推進

  • 体系的な教育に組織的に取り組む専攻数は、全国調査によれば着実に増加。
  • 「博士課程教育リーディングプログラム」の各大学での取組・成果を踏まえて、俯瞰力、強い意志と科学的判断力等専門性の高い人材を育成できる大学院教育をどの大学院教育でも保証していくことが重要。
     - 専攻の枠を超えてコースワークから研究指導や有機的につながる体系的・組織的な教育研究体制の確立
     - 学位授与・教育課程編成・入学者受入れに関する方針の設定・公表
     - 学生が身に付けることが期待される能力(コンピテンス)の明確化と国際比較
     - 学生が研究・診療の担い手になっている医療等分野では、研究・診療支援体制も整備
  • 大学院教育の新たな共通課題は、1.研究倫理教育の実施、2.博士課程の一部の学生には、将来大学教員となるための意識の涵養や教育手法等の修得。
     - 日本学術振興会やCITI Japan等で開発された教材等の活用
     - 教員養成のための大学共同教育利用拠点等の活用、TA活動の充実   等
  • 人口減対策として、アジア各国から優秀な人材を恒常的に集めることができるよう、国際的に魅力ある大学院教育が重要。
     - ジョイントディグリーの推進
     - 優秀な外国人留学生獲得のための国際的なアドミッション体制や魅力あるカリキュラムの構築
     - 学生・教職員の交流、留学生の日本企業への就職支援
     - 海外サテライトの設置、レジデントハウスの整備、各国の官民の奨学金制度との連携  等

● 産学官民の連携と社会人学び直し

  • 産学官民等の機関が連携した大学院教育に取り組むことが必要。特に、海外事例にみられるように、産学共同研究への学生の参加は、人材の育成・採用や技術移転の促進が期待できる。
     - 産学が連携したプログラム開発、長期インターンシップ
     - 共同研究における企業等の学生RA雇用、知財ルールの学内整備
     - クロスアポイントメント制度の活用等による人事交流
  • 近年、社会人学生数が減少の兆し。産業変化に対応できる高度人材の育成の観点から、学士・修士卒社会人の大学院入学など、社会人の学び直しを促進することが重要。
     - 産学が連携したプログラム開発・実施、社会人が学びやすい短期プログラムなどにより、企業派遣が行いやすい環境の整備
     - 社会人に対する資金援助(教育訓練給付制度 等)
     - 雇用主側の学び直しへの理解促進、知財ルールの学内整備、プログラムの広報
  • 人文・社会分野では、大学院教育改革の取組状況が理学・工学分野と比較すると差があり、学位取得までの期間が長いことや、大学院修了者のキャリアパスが見えにくいことなどから、定員充足が難しくなっている状況がある。従来型の狭い専門分野に閉じた教育から、産学官民の連携による多様なキャリアパスを意識した幅の広いカリキュラムへの変革が必要。
     - プロジェクト型科目、長期インターンシップ等を取り入れたカリキュラムの構築
     - 文理の垣根を越えた教育の提供や研究体制の構築
     -基礎教育カリキュラムの体系化を通じた俯瞰的能力の修得、流動性、開放性を備えた学士修士一貫教育 等
  • 医学分野では、高年齢化・減少傾向にある基礎系研究者や、医療の高度・専門化に対応する医療系人材などの研究及び高度・専門職業人材の養成について、国際的な動向も踏まえつつ、適切な修士・博士課程などにおいて対応することが必要。
     - 基礎系研究者を養成するコースの設定、優秀者への表彰やフェローシップ
     - 平成29年度開始予定の新専門医制度への対応
     - 臨床研究、法医学など人材の不足が指摘される分野の養成
     - 公衆衛生大学院の検証
     - 6年制の薬学教育課程修了者への対応 等

● 大学院修了者の活躍状況の把握と情報公開・評価

  • 大学院修了者の進路や社会での活躍状況を長期にわたり把握し、大学院の教育課程の見直しに活かす仕組みの構築が必要。
     - 修了者の活躍状況等に関する情報の公開
     - 認証評価において修了者の活躍状況等を評価

● 博士論文の信頼性

  • 最近の博士論文取消し事案に鑑み、我が国の博士号に対する国内外からの信頼確保のため、研究倫理教育等に取り組むことが必要。
     - 指導教員と学生に対する研究倫理教育の実施、盗用検索ソフトの活用
     - 所属研究室外の複数の指導教員による論文指導、責任の明確化
     - 研究指導や論文審査における十分に余裕のある体制と学生数の適正化

教育研究環境の強化

●研究指導教員一人当たりの学生数の在り方

  • 大学院重点化後、研究大学では教員1人当たりの大学院生の数が増加。欧米に比べ、教員1人当たりの学生数が多いとの指摘があり、国際競争力強化の観点から、大学院における教職員配置を手厚くすることが必要。

●教育の質を確保するための規模の在り方

  • 諸外国が博士人材を増やす中、我が国の人口当たりの修士・博士学位取得者数は少なく減少傾向。人社系分野の修士課程、人社理工農分野の博士課程や法科等の専門職課程が減少傾向(定員充足率が低い)。
  • 小規模専攻数が増え、規模の二極化が進んでいる。小規模専攻では教育改革の取組は低調。
  • 大学院を重点化した研究大学は学士課程の定員を変えていない。大学院はライフサイエンス分野が多いが産業界は工学分野が多い等、分野のミスマッチが生じている。
  • 学位・分野別の定員のポートフォリオを、社会的・学術的需要等に応じて、各大学が柔軟に自ら変化できるきっかけが必要。教員組織と教育課程の分離等の工夫も重要。

●博士課程学生への経済的支援とキャリアパス

  • グローバルスタンダードに合わせ、大学院生=学生という考え方から、博士課程学生=若手研究者という扱いへ転換すべき。優秀な学生・社会人を国内外から惹き付けられるよう、フェローシップや公的研究プロジェクトからの給与を国際水準の魅力ある質・量に引き上げることが重要。
  • 現行の科学技術基本計画の目標(博士課程(後期)在籍者の2割程度が生活費相当額程度を受給できることを目指す)を早期に達成するため、継続的な財源による安定的な支援を拡大することが重要。
     - 特別研究員事業(DC)の大幅拡充、研究大学による早期採択枠の創設
     - 競争的資金の直接経費・間接経費、基盤経費、企業・公的研究機関等によるRA雇用の充実、RA雇用の報酬は労働時間に見合った適切な対価とする
  • 教員の年齢構成のアンバランスを解消して、自由な研究環境を確保した若手教員やURA等の高度専門職の安定的なテニュアポストを十分に確保することが重要。
     - 人事給与制度改革の推進(年俸制、クロスアポイントメント制度、テニュアトラック制度 等)     
     - 卓越研究員制度
  • 大学院修了者のキャリアパスの多様化を進めるため、組織的な支援を強化することが重要。
     - 多様な院生・留学生に対するガイダンス・個別相談等の支援
     - 各教員や産学共同研究による人的ネットワークを全学的に活用したマッチング

世界的な大学院教育研究拠点群の形成

  • 「資料7 卓越大学院のイメージ」を参照

専門職大学院の質の向上

  • 専門職大学院制度が創設されて10年余り経過したが、「高度専門職業人」の養成に関する社会のコンセンサスが不十分である可能性。在学者数の減少等大学院全体に共通する課題のほか、以下に掲げる課題を含め、今後、制度全体の検証と見直しが必要。
     - 修士課程との関係の整理
     - 研究者教員と実務家教員の連携等教員組織の在り方
     - 国際的に通用する国外の認証評価を受ける取組の促進
     - 長期的にも役立つ専門的能力の涵養
     - 社会人に対する教育プログラムの促進
  • 専門職大学院に関係する国家資格と教育内容との関係整理などが必要。
  • プロセスとしての法曹養成の中核的な教育機関である法科大学院の抜本的な改革を推進することが必要。
     - 入学定員の見直しなど組織見直しの促進
     - 法学未修了者教育の充実、共通到達度確認試験(仮称)の導入など教育の質の向上
     - 時間的・経済的負担への対応など誰もが法科大学院で学べる環境づくり
     ※法科大学院については、法科大学院特別委員会の報告(平成26年10月)を参照。

お問合せ先

高等教育局大学振興課大学改革推進室

大学院係
電話番号:03-5253―4111(内線3312)

-- 登録:平成27年04月 --